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特開2024-79282リサイクルカーボンブラック、ゴム組成物及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079282
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】リサイクルカーボンブラック、ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/48 20060101AFI20240604BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240604BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240604BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240604BHJP
   C01B 32/05 20170101ALN20240604BHJP
【FI】
C09C1/48
C08K3/04
C08L21/00
B60C1/00 Z
C01B32/05 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192138
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】沖永 祐樹
【テーマコード(参考)】
3D131
4G146
4J002
4J037
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA04
3D131AA06
3D131AA08
3D131AA10
3D131AA11
3D131BA02
3D131BA07
3D131BC09
4G146AA01
4G146AB04
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD37
4G146BA34
4G146BC03
4G146BC23
4G146BC32B
4G146BC33B
4J002AC011
4J002AC021
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB151
4J002BB181
4J002DA036
4J002FD016
4J002GN01
4J037AA02
4J037DD05
4J037DD07
(57)【要約】
【課題】耐破壊性に優れつつ、補強性を向上することができるゴム組成物を得ることができるリサイクルカーボンブラック、該リサイクルカーボンを含むゴム組成物、及び、該ゴム組成物から製造されるタイヤを提供する。
【解決手段】JIS K 6217-6:2008により測定される累積体積百分率が90%となる粒子径(D90)が310nm以下であり、窒素吸着比表面積が50m/g以上85m/g以下であり、JIS K 6217-5に準拠して測定される比着色力が55以上である、リサイクルカーボンブラック。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K 6217-6:2008により測定される累積体積百分率が90%となる粒子径(D90)が310nm以下であり、
窒素吸着比表面積が50m/g以上85m/g以下であり、
JIS K 6217-5に準拠して測定される比着色力が55以上である、リサイクルカーボンブラック。
【請求項2】
カーボン含有量が85質量%以上97質量%以下である、請求項1に記載のリサイクルカーボンブラック。
【請求項3】
灰分量が0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1または請求項2に記載のリサイクルカーボンブラック。
【請求項4】
カーボンブラックを含むゴム製品を熱分解して生成する固形残渣から得られたものである、請求項1または請求項2に記載のリサイクルカーボンブラック。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のリサイクルカーボンブラックを含むゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物から回収して得られるリサイクルカーボンブラックに関する。また本発明は、該リサイクルカーボンブラックを用いたゴム組成物、及び、該ゴム組成物を用いて得られるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会の実現のためにリサイクルに関する研究やサステナブル材料に関する研究が盛んに行われている。使用済タイヤにおいても、リサイクルや有効利用の研究が進められている。特に、有用材料としてカーボンブラックを、使用済タイヤから回収することが重要となっている。使用済タイヤからのカーボンブラックの回収方法として、特許文献1~3に記載される熱分解による処理が挙げられる。
【0003】
ところで、リサイクルにより回収されたカーボンブラック(以下、「リサイクルカーボンブラック」と称する)には、タイヤに含まれていた金属成分、無機成分、有機成分などが不純物として含まれる。リサイクルカーボンブラックをゴムの製造に用いると、不純物の影響により、リサイクル品ではないカーボンブラック(所謂「新品の」カーボンブラック)と比較して補強性や耐破壊性能など種々の機械的特性が低下することが知られている。このような物性の低下を抑制するために、これまで種々の検討がなされている。
【0004】
例えば特許文献1は、ゴム材料等の高分子系廃棄物を均一かつ効率的に熱分解させることにより、ゴム組成物に配合した場合に補強性を向上させることができるリサイクルカーボンブラックを製造する方法を開示している。
特許文献2は、亜鉛化合物の含有量が所定値以下であるリサイクルカーボンブラックを用いることにより、ゴム組成物の耐摩耗性及び加工性が向上することを開示している。
また、特許文献3は、ゴム廃棄物を熱分解して生成するゴム分解油から得たカーボンブラックを製造することを開示している。特許文献3のカーボンブラックは、灰分が0.1~10質量%であり、このようなカーボンブラックを用いることにより、ゴム組成物の耐破壊性能が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-162672号公報
【特許文献2】特開2012-1682号公報
【特許文献3】特開2017-8223号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、耐破壊性を維持しつつ、補強性を向上させることができるゴム及びタイヤを得ることができるリサイクルカーボンブラックを提供することを目的とする。また本発明は、該リサイクルカーボンを含むゴム組成物、及び、該ゴム組成物から製造されるタイヤを提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]JIS K 6217-6:2008により測定される累積体積百分率が90%となる粒子径(D90)が310nm以下であり、窒素吸着比表面積が50m/g以上85m/g以下であり、JIS K 6217-5に準拠して測定される比着色力が55以上である、リサイクルカーボンブラック。
[2]カーボン含有量が85質量%以上97質量%以下である、[1]に記載のリサイクルカーボンブラック。
[3]灰分量が0.5質量%以上10質量%以下である、[1]または[2]に記載のリサイクルカーボンブラック。
[4]カーボンブラックを含むゴム製品を熱分解して生成する固形残渣から得られたものである、[1]~[3]の何れかに記載のリサイクルカーボンブラック。
[5][1]~[4]の何れかに記載のリサイクルカーボンブラックを含むゴム組成物。
[6][5]に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明に依れば、耐破壊性を維持しつつ、補強性を向上させることができるタイヤを得ることができるリサイクルカーボンブラックを得ることができる。当該リサイクルカーボンブラックを含むゴム組成物を用いることにより、耐破壊性を維持しつつ、補強性を向上させることができるタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[リサイクルカーボンブラック]
本発明のリサイクルカーボンブラックは、JIS K 6217-6:2008により測定される累積体積百分率が90%となる粒子径(D90)が310nm以下であり、窒素吸着比表面積が50m/g以上85m/g以下であり、JIS K 6217-5に準拠して測定される比着色力が55以上である。上記物性を有するリサイクルカーボンブラックを用いることにより、耐破壊性を維持しつつ、補強性を向上させることができるタイヤを得ることができる。
【0010】
本発明において、「リサイクルカーボンブラック」とは、リサイクルに供された廃棄物である原材料から回収して得られるカーボンブラックを指す。上記リサイクルに供された廃棄物とは、使用済ゴム及び使用済タイヤに代表される、カーボンブラックを含むゴム製品である。「リサイクルカーボンブラック」は、石油や天然ガスなどの炭化水素を原材料から直接製造されるカーボンブラック、すなわち、リサイクル品ではないカーボンブラックとは異なる。なお、ここでの「使用済」とは、実際に使用された後で廃棄されたものだけではなく、製造されたものの実際には使用されずに廃棄されたものも含む。
【0011】
また、本発明のリサイクルカーボンブラックは、上記カーボンブラックを含むゴム製品を熱分解して生成する固形残渣から得られるリサイクルカーボンブラックである。カーボンブラックを含むゴム製品を熱分解した際に、固形残渣と揮発成分(オイル)とが得られ、いずれからもリサイクルカーボンブラックを回収することが可能である。しかし、本発明のリサイクルカーボンブラックには、オイルから回収されるカーボンブラックは含まれない。
【0012】
使用済ゴム及び使用済タイヤに代表される廃棄物を熱分解して得られる固形残渣には、カーボンブラックの他、灰分が含まれる。灰分は、ゴムやタイヤに含まれる不揮発成分に由来する。このため、当該固形残渣から得られるリサイクルカーボンブラックは、相対的にカーボンブラックの含有量が低くなる。一方で、リサイクルカーボンブラックを用いて製造されるタイヤに要求される諸物性を考慮すると、カーボン含有量は高いほど好ましい。本発明のリサイクルカーボンブラックにおいて、カーボン含有量は、85質量%以上であることが好ましく、87質量%以上であることがより好ましく、89質量%以上であることがより好ましく、91質量%以上であることが更に好ましい。本発明のリサイクルカーボンブラックにおけるカーボン含有量の上限は、97質量%であることが好ましい。従って、本発明のリサイクルカーボンブラックは、カーボン含有量が85質量%以上97質量%以下であることが好ましく、87質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、89質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、91質量%以上97質量%以下であることがより好ましい。なお、上記カーボン含有量は、吸着水分を含まない値である。
【0013】
灰分には、具体的に、酸化亜鉛、硫化亜鉛、シリカ、鉄化合物(酸化鉄)、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が含まれる。廃棄物を熱分解して得られる固形残渣から製造されるリサイクルカーボンブラックの場合、灰分を除去する種々の工程を行っても、灰分が一定量残留する。本発明においては、リサイクルカーボンブラックに灰分が含まれることを許容する。本発明のリサイクルカーボンブラックは、灰分量の下限値は0.5質量%であっても良い。一方、タイヤに要求される諸物性、リサイクルカーボンブラックの品質等を考慮すると、リサイクルカーボンブラックに含まれる灰分量は、10質量%以下であることが好ましく、6.5質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることが更に好ましい。従って、本発明のリサイクルカーボンブラック中の灰分量は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上6.5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0014】
熱分解により生成される揮発成分(オイル)から回収されるリサイクルカーボンブラックは、揮発成分に含まれる不純物量が少ないために、灰分量が少なく、相対的にカーボン含有量が高い。炭化水素を原料として製造される、リサイクル品ではないカーボンブラック(以下、「通常のカーボンブラック」と称することもある)も、カーボン含有量が高い。これらのカーボンブラックのカーボン含有量は、凡そ98質量%以上(吸着水分を含まず)である。従って、本発明のリサイクルカーボンブラックは、通常のカーボンブラック及び製造方法が異なるリサイクルカーボンブラックと異なると言える。
【0015】
本発明のリサイクルカーボンブラックは、JIS K 6217-6:2008(ディスク遠心沈降法)により測定される累積体積百分率が90%となる粒子径(D90)が310nm以下であることを要する。D90が310nmを超える場合、十分な耐破壊性を有するゴムを得ることができない。D90は、305nm以下であることが好ましく、295nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましい。
【0016】
また、本発明のリサイクルカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上85m/g以下であることを要する。
窒素吸着比表面積が50m/g未満であると、十分な耐破壊性を有するゴムを得ることができない。耐破壊性を考慮すると、57m/g以上であることが好ましく、65m/g以上であることがより好ましい。
通常、カーボンブラックの粒子径が小さくなるほど、窒素吸着比表面積は大きくなる傾向がある。窒素吸着比表面積が大きいカーボンブラックを用いることにより、耐破壊性に優れるゴムを得ることが可能となる。しかし、リサイクルカーボンブラックの窒素吸着比表面積が85m/gを超えて高くなると、ゴムの転がり抵抗が悪化する傾向がある。リサイクルカーボンブラックの窒素吸着比表面積は、80m/g以下であることが好ましい。
本発明のリサイクルカーボンブラックの窒素吸着比表面積は、57m/g以上85m/g以下であることが好ましく、65m/g以上85m/g以下であることがより好ましく、65m/g以上80m/g以下であることが更に好ましい。
なお、窒素吸着比表面積(NSA)は、ISO 4652-1に準拠して測定される値である。
【0017】
また、本発明のリサイクルカーボンブラックは、JIS K 6217-5に準拠して測定される比着色力が55以上であることを要する。比着色力は、カーボンブラックの粒子径及び比表面積に関連するパラメータの
1つである。比着色力が55未満である場合、十分な耐破壊性を得ることができない。比着色力は、60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましく、70以上であることが更に好ましく、80以上であることが特に好ましい。
【0018】
[リサイクルカーボンブラックの製造方法]
本発明のリサイクルカーボンブラックは、カーボンブラックを含むゴム製品を熱分解して生成する固形残渣から製造される。
本発明のリサイクルカーボンブラックの製造方法は、カーボンブラックを含むゴム製品を熱分解する工程と、固形残渣からリサイクルカーボンブラックを得る工程とを含む。
【0019】
本発明において、原料となるカーボンブラックを含むゴム製品は、例えば、使用済タイヤである。使用済タイヤは、トラック、バス等の大型車両、あるいは、乗用車から回収されたものであることが好ましい。
ゴム製品は、熱分解工程の前に、予め粉砕されていてもよい。
【0020】
熱分解工程では、公知の装置を用いて、カーボンブラックを含むゴム製品の熱分解を行うことができる。例えば、熱分解炉内に、燃料、窒素、及びゴム製品を導入し、熱分解を行う。この熱分解工程の結果、ゴム製品から固形残渣と揮発成分とが生成する。
【0021】
熱分解工程の後、公知の方法により固体残渣と揮発成分とを分離する。なお、揮発成分は、冷却することによりオイル(分解油)となる。
【0022】
分離後の固形残渣を回収し、この固形残渣から、酸化亜鉛、シリカ、鉄化合物(酸化鉄)等の不純物を除去し、リサイクルカーボンブラックを回収する。不純物の除去方法としては、公知の方法を用いることができる
【0023】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、上記のリサイクルカーボンブラックを含むのであれば、タイヤの製造に一般的に使用されるものを適用することができる。各成分については、以下で説明する。
【0024】
<ゴム成分>
本発明のゴム組成物において、ゴムの種類は特に限定されない。例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、及び、これらを組み合わせたゴム等が挙げられる。
【0025】
<充填剤>
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物を補強する充填剤を含有する。
本発明において、ゴム組成物は、上述したリサイクルカーボンブラックを含む。ゴム組成物中のリサイクルカーボンブラックの配合量は、得られるゴムを適用するタイヤの部位などにより、適宜調整することができる。例えば、リサイクルカーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して1~150質量部の範囲内で調整することができる。
本発明のリサイクルカーボンを含むゴム組成物を用いることにより、タイヤの耐破壊性を向上でき、補強性を向上させることができる。
【0026】
本発明においては、ゴム組成物が、上記リサイクルカーボンブラックの他、通常のカーボンブラックを含むことを許容する。通常のカーボンブラックを使用する場合、グレードは特に制限されない。再生原料の利用促進の観点から、通常のカーボンブラックの配合量は、できる限り少ないことが好ましく、含まないことが特に好ましい。また、通常のカーボンブラックの配合量は、リサイクルカーボンブラックの配合量よりも少ないことが好ましい。ただし、ゴム製品に要求される仕様に依っては、リサイクルカーボンブラックに対して通常のカーボンブラックの配合量を多くしてもよい。例えば、通常のカーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して0~150質量部の範囲内で調整することができる。この場合、通常のカーボンブラックとリサイクルカーボンブラックとの質量比(通常のカーボンブラック/リサイクルカーボンブラック)は、95/5~0/100の範囲内とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明のゴム組成物は、充填剤として、シリカ、シリカ以外の無機充填剤を含むことができる。カーボンブラック以外の配合する充填剤の種類、及び、各種充填剤の配合量は、適用されるタイヤの部位などにより、適宜選定することができる。
【0028】
本発明において、シリカの種類は特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
また、本発明において、使用するシリカの物性、例えば、BET比表面積、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積(CTAB)は、特に制限はされず、ゴム組成物から得られるタイヤの性能に応じて適宜選択することができる。
また、ゴム組成物中のシリカの配合量は、特に限定はされず、タイヤに要求される性能に応じて適宜選択することができる。
【0029】
本発明において、無機充填剤の種類は特に制限はなく、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を用いることができる。これらの無機充填剤の諸物性を考慮して、適宜選定することができる。
【0030】
<各種成分>
本発明に用いられるゴム組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される各種成分を含有していてもよい。各種成分としては、例えば、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤、樹脂、オイル、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0031】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、上述したリサイクルカーボンブラックを含むゴム組成物を用いて製造される。本発明のゴム組成物は、特に、トレッド、ベース、サイド、インナーライナー、ビード、スティフナーなどに適用されることが好ましいが、これらに限るものではない。本発明のリサイクルカーボンブラックを用いることにより、タイヤの耐破壊性を向上させることができるとともに、補強性を向上させることができる。
【0032】
本明細書に記載されているリサイクルカーボンブラック以外の化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0033】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は、「No.7_エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」、「No.9_産業と技術革新の基盤を作ろう」、「No.12_つくる責任、つかう責任」及び「No.13_気候変動に具体的な対策を」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【実施例0034】
[原料用ゴムの製造]
下記表1に示す配合組成で各成分を混練し、ゴム組成物を調製した。混練は2段階で行った。表1に、混練の各段階で配合する各成分の量を表した。表1中の配合処方の数値の単位は質量部である。調製したゴム組成物を、145℃で加硫して、原料用ゴムを製造した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1中の成分の詳細は以下のとおりである。
NR:天然ゴム、RSS#3
CB1:カーボンブラック、東海カーボン株式会社製、Seast 3
CB2:カーボンブラック、東海カーボン株式会社製、Seast F
CB3:カーボンブラック、N660
ステアリン酸:日油株式会社製、桐印ステアリン酸
ワックス:精工化学株式会社製、サンタイトA
酸化亜鉛:ハクスイテック株式会社製、酸化亜鉛2種
老化防止剤1:住友化学株式会社製、アンチゲン6C
老化防止剤2:精工化学株式会社製、ノンフレックスRD
加硫促進剤1:三新化学工業株式会社製、サンセラーCM-G
硫黄:細井化学工業株式会社製、HK200-5
リターダー:東レファインケミカル株式会社製、リターダーCTP
【0037】
[リサイクルカーボンブラックの製造]
原料用ゴムA,Bを用いて、以下の工程によりリサイクルカーボンブラック2~7を製造した。
原料用ゴムAまたは原料用ゴムBを、それぞれ、窒素置換した金属容器に充填した。その後、表2に示す温度に加熱した電気炉内に金属容器を入れ、窒素気流下で熱分解を行った。加熱中に熱分解により生成するオイルをトラップで捕集し、オイル生成が目視で停止した時点で加熱を停止した。停止後、室温まで冷却してから、電気炉内から金属用機を取り出して熱分解を停止した。金属容器内の残渣を回収し、リサイクルカーボンブラック2~7を得た。
リサイクルカーボンブラック1として、熱分解により製造された市販のリサイクルカーボンブラックを準備した。
なお、表2では、「リサイクルカーボンブラック」を、「r-CB」と表記した。
【0038】
[リサイクルカーボンブラックの評価]
1.粒度分布
リサイクルカーボンブラック1~7から測定用のサンプルを採取した。各サンプルの粒度分布を、JIS K 6217-6:2008(ディスク遠心沈降法)により測定した。測定装置として、Brookhaven Instruments製、BI-DCP Particle Size Analyzerを用いた。得られた粒度分布から、累積体積百分率が90%となる粒子径(D90)を求めた。結果を表2に示す。表2において、小数点以下は四捨五入して表記した。
【0039】
2.窒素吸着比表面積
リサイクルカーボンブラック1~7の窒素吸着比表面積を、ISO 4652-1に準拠して測定した。結果を表2に示す。表2において、小数点以下は四捨五入して表記した。
【0040】
3.比着色力
リサイクルカーボンブラック1~7について、JIS K 6217-5に準拠して測定し、検量線と補正項を用いて調整することにより、比着色力を得た。結果を表2に示す。表2において、小数点以下は四捨五入して表記した。
【0041】
4.カーボン含有量及び灰分量
リサイクルカーボンブラック1~7に含まれるカーボン含有量を、熱重量分析(TGA)により測定した。
窒素雰囲気下において室温から550℃まで試料を加熱し、続いて、空気雰囲気下にて550℃で維持するように加熱を行い、加熱減量を測定した。窒素雰囲気下で室温から550℃まで試料を加熱した際の加熱減量(質量%)を「加熱減量1」とし、空気雰囲気下で550℃に維持して加熱した際の加熱減量(質量%)を「加熱減量2」とした。加熱減量2を、カーボン含有量とした。また、灰分量を、以下の式により求めた。
灰分量(質量%)=100-加熱減量1-加熱減量2
結果を表2に示す。表2において、カーボン含有量は小数点以下第1位で表記した。灰分量は有効数字2桁で表記した。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示すように、リサイクルカーボンブラック1(r-CB1、市販のリサイクルカーボンブラック)は、D90が大きいものであった。また、リサイクルカーボンブラック2~7(r-CB2~7)に対して、リサイクルカーボンブラック1の灰分量は大きかった。
リサイクルカーボンブラック2は、窒素吸着比表面積が小さいものであった。リサイクルカーボンブラック3~7は、D90が310nm以下を満たし、窒素吸着比表面積が50m/g以上85m/g以下の範囲内にあり、かつ、比着色力が55以上を満たした。
【0044】
[リサイクルカーボンブラックを用いたゴムの製造]
下記表3に示す配合組成で各成分を混錬し、ゴム組成物を調製した。混練は2段階で行った。表3に、混練の各段階で配合する各成分の量を表した。表3中の配合処方の数値の単位は質量部である。調整したゴム組成物を145℃で加硫して、実施例及び比較例のゴムを得た。
【0045】
表3中の成分の詳細は以下のとおりである。
SBR:スチレンブタジエンゴム、SBR1500
r-CB1~7:上述したリサイクルカーボンブラック1~7
ステアリン酸:日油株式会社製、桐印ステアリン酸
ワックス:精工化学株式会社製、サンタイトA
老化防止剤1:住友化学株式会社製、アンチゲン6C
老化防止剤2:精工化学株式会社製、ノンフレックスRD
酸化亜鉛:ハクスイテック株式会社製、酸化亜鉛2種
加硫促進剤2:住友化学株式会社製、ソクシノールD
加硫促進剤3:三新化学工業株式会社製、サンセラーNS-G
加硫促進剤4:三新化学工業株式会社製、サンセラーDM-TG
硫黄:細井化学工業株式会社製、HK200-5
【0046】
[加硫ゴムの性能評価]
1.耐破壊性
各実施例及び比較例の加硫ゴムについて、JIS K6251:2017に準拠して室温で引張試験を行い、引張強さ(TB)を測定した。比較例1の試験片の引張強さを100とし、耐破壊性を下記式により指数表示した。
耐破壊性指数=(比較例1以外の試験片の引張強さ/比較例1の試験片の引張強さ)×100
耐破壊性指数が大きい程、加硫ゴムが破壊しにくく、耐破壊性が優れていることを示す。結果を表3に示す。
【0047】
2.補強性
各実施例及び比較例の加硫ゴムについて、JIS K6251:2017に準拠して室温で引張試験を行い、引張強さ(TB)を測定した。各実施例及び比較例の加硫ゴムの歪300%での引張強さを用い、比較例1を基準として以下の式により補強性を表した。
補強性指数=(比較例1以外の試験片の歪300%での引張強さ/比較例1の試験片の歪300%での引張強さ)×100
補強性指数が大きい程、補強性が優れていることを示す。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
耐破壊性が100以上、補強性が160以上を満たす場合を、「合格」と判定した
表3に示すように、D90が310nm以下、窒素吸着比表面積が50m/g以上85m/g以下、かつ、比着色力が55以上を満たすリサイクルカーボンブラック(リサイクルカーボンブラック3~7)を用いた実施例1~5は、耐破壊性指数が100以上、補強性160以上を満たしている。すなわち、実施例1~5では、比較例1と同等以上の耐破壊性が得られつつ、補強性を大幅に向上できることが分かる。
一方、窒素吸着比表面積が小さいリサイクルカーボンブラック2を用いた比較例2では、補強性を十分に向上させることができなかった。