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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007929
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ロックボルト構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20240112BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
E21D20/00 W
G01L5/00 103D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109361
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】大石 一明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔平
(72)【発明者】
【氏名】手塚 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰男
(72)【発明者】
【氏名】井本 厚
(72)【発明者】
【氏名】外川 雄大
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB09
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】トンネルの地山に打設されたロックボルトが補強効果を発揮して地山が安定化していることと、覆工コンクリートのダメージの有無の双方を確認することができる。
【解決手段】トンネルTの覆工コンクリート102を貫通して地山100に形成された削孔101に基端側に中空雄ねじ部13が形成されている鋼管膨張ボル1トが膨張状態で打設され、鋼管膨張ボルト1の凹部14と逆側の外面に長手方向に離間配置して複数の歪ゲージ2が設けられ、各々の歪ゲージ2のゲージリード線21が基端側に向かって延設され、中空雄ねじ部13に先端側から順に外挿される第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6が中空雄ねじ部13に螺合されるナット7で覆工コンクリート102に押圧されるように設けられるロックボルト構造。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの覆工コンクリートを貫通して地山に形成された削孔に基端側に中空雄ねじ部が形成されている鋼管膨張ボルトが膨張状態で打設され、
前記鋼管膨張ボルトの凹部と逆側の外面に前記鋼管膨張ボルトの長手方向に離間配置して複数の歪ゲージが設けられ、
各々の前記歪ゲージのゲージリード線が前記基端側に向かって延設され、
前記中空雄ねじ部に先端側から順に外挿される第1スラストプレート、プレッシャーディスク、第2スラストプレートが前記中空雄ねじ部に螺合されるナットで前記覆工コンクリートに押圧されるように設けられることを特徴とするロックボルト構造。
【請求項2】
前記中空雄ねじ部の前記第1スラストプレートの先端側に溝切プレートが外挿されて前記ナットで押圧されると共に、前記ゲージリード線が前記溝切プレートの溝を介して外部に引き出されることを特徴とする請求項1記載のロックボルト構造。
【請求項3】
前記覆工コンクリートの内周面に座堀り部が形成され、
前記中空雄ねじ部、前記第1スラストプレート、前記プレッシャーディスク、前記第2スラストプレート及び前記ナットが、前記覆工コンクリートの内周側に突出しないように前記座堀り部に収容されることを特徴とする請求項1又は2記載のロックボルト構造。
【請求項4】
ブルドン管式の前記プレッシャーディスクの第1送油管の先に閉塞栓が設けられていると共に前記プレッシャーディスクの第2送油管の先に圧力変換器が設けられ、
前記第1送油管と前記第2送油管のそれぞれをU字状に屈曲して前記閉塞栓と前記圧力変換器が前記第2スラストプレートの前記基端側に配置され、
前記閉塞栓と前記圧力変換器が前記覆工コンクリートの内周側に突出しないように前記座堀り部に収容されることを特徴とする請求項3記載のロックボルト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの地山に打設されたロックボルトが補強効果を発揮して地山が安定化していることと、トンネルに形成された覆工コンクリートのダメージの有無の双方を確認することができるロックボルト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設のトンネルの覆工コンクリートを貫通して地山に形成された削孔にロックボルトとして鋼管膨張ボルトを挿入し、削孔内で鋼管膨張ボルトを膨張状態にするようにして、覆工内面から周囲の地山に鋼管膨張ボルトを打設して地山の安定化を図ることが行われている(特許文献1参照)。しかし、この地山の安定化では、膨張状態の鋼管膨張ボルトの打設による補強によって、地山の変状が改善されて地山が安定化しているのかが分かりにくいという問題がある。
【0003】
このようなロックボルトの補強効果や地山の安定化をある程度確認できる技術として、特許文献2のロックボルトの定着力測定方法がある。この測定方法は、地山に定着されたロックボルトの突出部に内側スラストプレート、プレッシャーディスクに相当する環状のロードセル、外側スラストプレートを順に外挿し、ロックボルトの突出部の雄ねじ部に螺合するナットを締め付けることによってロードセルを挟圧し、表示荷重を読み取って定着力を把握するものである。この測定方法を用いて、例えば既設のトンネルの覆工コンクリートの内周側に突出する鋼管膨張ボルトの雄ねじ部に内側スラストプレート、プレッシャーディスク、外側スラストプレートを順に外挿してナット締めすることにより、鋼管膨張ボルトの端部の軸力を計測して地山の押出力を推定し、ロックボルトの補強効果や地山の安定化の程度を認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-31726号公報
【特許文献2】特開2001-133392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2の測定方法を用いる場合、図7(a)の太線矢印のように、トンネルTの周囲の地山200が押し出してきて覆工コンクリート201に側圧がかかっている状態においては、地山200に打設した鋼管膨張ボルト202のロックボルトの突出部の軸力を計測することにより、地山200の押出力を正確に推定することができる。従って、ロックボルトの補強効果や地山200の安定化の程度を正確に認識することができる。
【0006】
しかしながら、図7(b)の下向きの太線矢印のように地盤沈下して覆工コンクリート201が変形してしまっている状態においては、周囲の地山200が覆工コンクリート201を押していない状態になっているため、地山200に打設した鋼管膨張ボルト202のロックボルトの突出部で軸力を計測しても、計測した軸力から地山200の押出力を推定することは出来なくなる。即ち、ロックボルトの補強効果や地山200の安定化の程度を認識することは困難となるため、覆工コンクリート201のダメージの有無に拘わらず、ロックボルトの補強効果や地山200の安定化の程度を認識することができる技術が望まれる。加えて、地盤沈下等で覆工コンクリート201がダメージを受けている場合には、覆工コンクリート201にダメージが発生していることを認識することも重要となる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、トンネルの地山に打設されたロックボルトが補強効果を発揮して地山が安定化していることと、トンネルに形成された覆工コンクリートのダメージの有無の双方を確認することができるロックボルト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロックボルト構造は、トンネルの覆工コンクリートを貫通して地山に形成された削孔に基端側に中空雄ねじ部が形成されている鋼管膨張ボルトが膨張状態で打設され、前記鋼管膨張ボルトの凹部と逆側の外面に前記鋼管膨張ボルトの長手方向に離間配置して複数の歪ゲージが設けられ、各々の前記歪ゲージのゲージリード線が前記基端側に向かって延設され、前記中空雄ねじ部に先端側から順に外挿される第1スラストプレート、プレッシャーディスク、第2スラストプレートが前記中空雄ねじ部に螺合されるナットで前記覆工コンクリートに押圧されるように設けられることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張ボルトの長手方向に離間配置された複数の歪ゲージの歪データから鋼管膨張ボルトの軸力を取得することができ、鋼管膨張ボルトの全長に近い範囲で軸力を取得して、ロックボルトに相当する鋼管膨張ボルトの補強効果や地山の安定化の程度を認識し、或いは地山の変状を認識することができる。また、プレッシャーディスクで覆工コンクリートの内周近傍における鋼管膨張ボルトの基端部の軸力を取得し、覆工コンクリートに負荷される荷重、即ち覆工コンクリートの変形の可能性を予見することが出来る。さらに、覆工コンクリート位置でプレッシャーディスクにより取得した鋼管膨張ボルトの基端部の軸力と、長手方向に離間配置する複数の歪ゲージの歪データから取得した鋼管膨張ボルトのそれぞれの軸力とを対比して、例えば基端部の軸力が鋼管膨張ボルトの長手方向に離間配置する複数の歪ゲージにより検出される軸力よりも小さい場合は覆工コンクリートにダメージがない事、或いは基端部の軸力が複数の歪ゲージよりも大きい場合は覆工コンクリートにダメージが予見されること、等を早期に認識することが出来る。従って、トンネルの地山に打設されたロックボルトが補強効果を発揮して地山が安定化していることと、トンネルに形成された覆工コンクリートのダメージの有無の双方を確認することができる。
【0009】
本発明のロックボルト構造は、前記中空雄ねじ部の前記第1スラストプレートの先端側に溝切プレートが外挿されて前記ナットで押圧されると共に、前記ゲージリード線が前記溝切プレートの溝を介して外部に引き出されることを特徴とする。
これによれば、第1スラストプレートの先端側に設けられる溝切プレートの溝を介して歪ゲージのゲージリード線を引き出すことにより、ゲージリード線がプレッシャーディスクの挟圧構造に干渉することを防止することができる。また、溝切プレートを一方のスラストプレートとして溝切プレートと第2スラストプレートとでプレッシャーディスクを挟圧すると、溝切プレートの溝の断面積分受圧面積が減ってプレッシャーディスクの校正値と異なる値のズレが生じたり、溝によってプレッシャーディスクが変形する可能性があるが、溝切プレート、第1スラストプレート、プレッシャーディスクの積層配置とすることにより、プレッシャーディスクの校正値に対するズレの発生を防止し、又、プレッシャーディスクの変形を防止することができる。
【0010】
本発明のロックボルト構造は、前記覆工コンクリートの内周面に座堀り部が形成され、前記中空雄ねじ部、前記第1スラストプレート、前記プレッシャーディスク、前記第2スラストプレート及び前記ナットが、前記覆工コンクリートの内周側に突出しないように前記座堀り部に収容されることを特徴とする。
これによれば、ロックボルト構造における鋼管膨張ボルトの中空雄ねじ部、第1スラストプレート、プレッシャーディスク、第2スラストプレート及びナットが覆工コンクリートの内周側に突出して邪魔になることを防止することができ、例えば供用中の既設トンネルの内空断面にこれらの部材で入り込むことを防止することができる。
【0011】
本発明のロックボルト構造は、ブルドン管式の前記プレッシャーディスクの第1送油管の先に閉塞栓が設けられていると共に前記プレッシャーディスクの第2送油管の先に圧力変換器が設けられ、前記第1送油管と前記第2送油管のそれぞれをU字状に屈曲して前記閉塞栓と前記圧力変換器が前記第2スラストプレートの前記基端側に配置され、前記閉塞栓と前記圧力変換器が前記覆工コンクリートの内周側に突出しないように前記座堀り部に収容されることを特徴とする。
これによれば、ブルドン管式のプレッシャーディスクの閉塞栓と圧力変換器が覆工コンクリートの内周側に突出して邪魔になることを防止することができ、例えば供用中の既設トンネルの内空断面に閉塞栓や圧力変換器が入り込むことを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロックボルト構造によれば、トンネルの地山に打設されたロックボルトが補強効果を発揮して地山が安定化していることと、トンネルに形成された覆工コンクリートのダメージの有無の双方を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による実施形態のロックボルト構造が施された既設トンネルの模式断面図。
図2】実施形態のロックボルト構造が施された既設トンネルの部分拡大断面図。
図3】実施形態のロックボルト構造が施された既設トンネルの座堀り部周辺の模式拡大断面図。
図4】(a)は実施形態のロックボルト構造における鋼管膨張ボルト、溝切プレート、第1スラストプレート、プレッシャーディスク、第2スラストプレート、ナットの分解斜視図、(b)は同図(a)の鋼管膨張ボルト、溝切プレート、第1スラストプレート、プレッシャーディスク、第2スラストプレート、ナットを組付けた状態の斜視図。
図5】実施形態のロックボルト構造における膨張前状態の鋼管膨張ボルトの斜視説明図。
図6】実施形態のロックボルト構造における膨張状態の鋼管膨張ボルトの斜視説明図。
図7】(a)は地山が押し出してきて覆工コンクリートに側圧がかかっている状態の既設トンネルの模式断面図、(b)は地盤沈下して覆工コンクリートが変形してしまっている状態の既設トンネルの模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態のロックボルト構造〕
本実施形態のロックボルト構造は、例えば既設トンネルの覆工コンクリート102から地山100に打設するように設けられ、図1図6に示すように、鋼管膨張ボルト1を有する。鋼管膨張ボルト1は、軸方向の中間部が断面視略C字状に形成され、軸方向に延びる空間が内部に設けられている膨張管11と、膨張管11の両端部の膨張を規制するように膨張管11の両端部に外嵌されている筒体12と、膨張管11の基端側に突出するように形成され、その中空部が膨張管11の内部空間に連通している中空雄ねじ部13を備える。膨張管11の先端部に外嵌されている筒体12は先端面が閉塞された有底筒状になっており、又、膨張管11の基端部に外嵌されている筒体12は軸方向に貫通する筒状になっている。尚、「先端側」は地山100の削孔101の孔奥側、「基端側」は削孔101の口元側を意味する。また、図1において、1aは本実施形態のロックボルト構造を設置する前に既設トンネルに既に打設されていた既設ロックボルトである。
【0015】
鋼管膨張ボルト1の膨張管11は、中空雄ねじ部13の中空部を介して内部空間に加圧水のような加圧流体が注入されることで膨張状態となる(図5図6参照)。鋼管膨張ボルト1は、トンネルTの覆工コンクリート102を貫通して地山100に形成された削孔101に挿入され、加圧流体の注入によって膨張状態にされて地山100に打設される。
【0016】
鋼管膨張ボルト1の凹部14と逆側の外面には、鋼管膨張ボルト1の長手方向に離間配置されるようにして複数の歪ゲージ2が設けられている。複数の歪ゲージ2は、図2の矢印で示される位置に設けられ、鋼管膨張ボルト1の長手方向に略同一間隔を開けて配置されている。各々の歪ゲージ2のゲージリード線21は、鋼管膨張ボルト1の凹部14と逆側の外面において鋼管膨張ボルト1の基端側に向かって延設されている。本実施形態では、鋼管膨張ボルト1の凹部14と逆側の外面に一対の棒状の保護材22が鋼管膨張ボルト1の長手方向に延設され、一対の保護材22の間の隙間にゲージリード線21が設けられ、一対の保護材22の間でゲージリード線21を覆うように合成樹脂等の保護コーティング材23が設けられている(図5参照)。
【0017】
地山100に打設された鋼管膨張ボルト1の中空雄ねじ部13には、先端側から順に溝切プレート3、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6が外挿されて、第2スラストプレート6の基端側で中空雄ねじ部13に螺合されるナット7で締め付けられ、溝切プレート3、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6が覆工コンクリート102に押圧されるようにして設けられる。溝切プレート3、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6は、それぞれ中心に貫通穴を有する形状で形成されており、又、溝切プレート3には、半径方向に延びて中心の貫通穴に連通する溝31が形成されている。
【0018】
そして、本実施形態では、図3に示すように、覆工コンクリート102の内周面に座堀り部103が形成されており、鋼管膨張ボルト1の中空雄ねじ部13と、中空雄ねじ部13に外挿された溝切プレート3、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5及び第2スラストプレート6と、中空雄ねじ部13に螺合されたナット7が、覆工コンクリート102の内周側に突出しないように、換言すればトンネルTのトンネル空間に突出しないようにして座堀り部103に収容されている。
【0019】
鋼管膨張ボルト1の中空雄ねじ部13まで延設された各々の歪ゲージ2のゲージリード線21は、溝切プレート3の溝31に入り込むようにして溝切プレート3の外周縁に向かって延ばされ、座堀り部103の周壁と、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6との間を通されて覆工コンクリート102の内周側のトンネル空間に引き出される。換言すれば、ゲージリード線21は、溝切プレート3の溝31を介して覆工コンクリート102や座堀り部103の外部に引き出される。ゲージリード線21の先には、歪ゲージ2の歪を軸力に変換して表示する読取器(図示省略)が軸力を計測、取得する際に設けられ、計測後に取り外される。
【0020】
更に、本実施形態では、図3及び図4に示すように、ブルドン管式のプレッシャーディスク5の第1送油管51の先に閉塞栓52が設けられていると共に、プレッシャーディスク5の第2送油管53の先に油圧を電圧信号のような電気信号に変換する圧力変換器54が設けられ、圧力変換器54に電気ケーブル55が接続されている。電気ケーブル55の先には、プレッシャーディスク5に加えられている電気信号に対応する軸力を読み取って表示し、記録するデータロガー(図示省略)が設けられており、圧力変換器54から電気ケーブル55を介して送信される電気信号がデータロガーに取り込まれる。
【0021】
プレッシャーディスク5の第1送油管51と第2送油管53は当初直線状になっており、第1送油管51からプレッシャーディスク5に油を注入した後に第1送油管51を閉塞栓52で閉塞し、その後、第2スラストプレート6の基端側に向かって、第1送油管51と第2送油管53のそれぞれをU字状に屈曲する。即ち、第1送油管51と第2送油管52のそれぞれがU字状に屈曲されて、閉塞栓52と圧力変換器54が第2スラストプレート6の基端側に配置される。第2スラストプレート6の基端側に配置された閉塞栓52と圧力変換器54は、覆工コンクリートの内周側に突出しないように座堀り部103に収容される(図3図4参照)。
【0022】
本実施形態のロックボルト構造の地山100に膨張状態で打設された鋼管膨張ボルト1を取得する際には、鋼管膨張ボルト1の長手方向に離間配置された複数の歪ゲージ2の歪データから読取器で軸力を取得し、各歪ゲージ2の設置箇所における鋼管膨張ボルト1の軸力を取得することによって、鋼管膨張ボルト1の全長に亘る軸力を近似的に取得することができる。また、プレッシャーディスク5で覆工コンクリート102の内周近傍における鋼管膨張ボルト1の基端部の軸力をデータロガーで取得する。
【0023】
尚、プレッシャーディスク5によって鋼管膨張ボルト1の基端部の軸力を計測、取得した後には、溝切プレート3、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6を取り外し、中空雄ねじ部13に通常のワッシャーを外挿してナット7で締着する。取り外したプレッシャーディスク5等は高価であるため、再度、別箇所のロックボルト構造において使用し、施工コストの低減を図る。
【0024】
本実施形態のロックボルト構造によれば、鋼管膨張ボルト1の長手方向に離間配置された複数の歪ゲージ2の歪データから鋼管膨張ボルト1の軸力を取得することができ、鋼管膨張ボルト1の全長に近い範囲で軸力を取得して、ロックボルトに相当する鋼管膨張ボルト1の補強効果や地山の安定化の程度を認識し、或いは地山の変状を認識することができる。また、プレッシャーディスク5で覆工コンクリート102の内周近傍における鋼管膨張ボルト1の基端部の軸力を取得し、覆工コンクリート102に負荷される荷重、即ち覆工コンクリート102の変形の可能性を予見することが出来る。さらに、覆工コンクリート102位置でプレッシャーディスク5により取得した鋼管膨張ボルト1の基端部の軸力と、長手方向に離間配置する複数の歪ゲージ2の歪データから取得した鋼管膨張ボルト1のそれぞれの軸力とを対比して、例えば基端部の軸力が鋼管膨張ボルト1の長手方向に離間配置する複数の歪ゲージ2により検出される軸力よりも小さい場合は覆工コンクリート102にダメージがない事、或いは基端部の軸力が複数の歪ゲージ2よりも大きい場合は覆工コンクリート102にダメージが予見されること、等を早期に認識することが出来る。即ち、膨張性地山などで鋼管膨張ボルト1に軸力が発生している場合であっても長手方向に離間配置している歪ゲージ2のうち最も覆工コンクリート102に近い位置の歪ゲージ2が検知した軸力よりも基端部のプレッシャーディスク5が検知した軸力が小さい場合には、地山100から覆工コンクリート102へ負荷される力は鋼管膨張ボルト1によって十分に抑えられていると評価すべきであり、一方、基端部の軸力が最も覆工コンクリート102に近い歪ゲージ2で検知する軸力よりも大きくなってしまう場合には覆工コンクリート102にかかる負荷が過大であると評価される。従って、トンネルTの地山100に打設されたロックボルトが補強効果を発揮して地山が安定化していることと、トンネルTに形成された覆工コンクリート102のダメージの有無の双方を確認することができる。
【0025】
また、第1スラストプレート4の先端側に設けられる溝切プレート3の溝31を介して歪ゲージ2のゲージリード線21を引き出すことにより、ゲージリード線21がプレッシャーディスク5の挟圧構造に干渉することを防止することができる。また、溝切プレート3を一方のスラストプレートとして溝切プレート3と第2スラストプレート6とでプレッシャーディスク5を挟圧すると、溝切プレート3の溝の断面積分受圧面積が減ってプレッシャーディスク5の校正値と異なる値のズレが生じたり、溝31によってプレッシャーディスク5が変形する可能性があるが、溝切プレート3、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5の積層配置とすることにより、プレッシャーディスク5の校正値に対するズレの発生を防止し、又、プレッシャーディスク5の変形を防止することができる。
【0026】
また、鋼管膨張ボルト1の中空雄ねじ部13、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6及びナット7を、覆工コンクリート102の内周側に突出しないように座堀り部103に収容することにより、中空雄ねじ部13、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6及びナット7が覆工コンクリート102の内周側に突出して邪魔になることを防止することができ、例えば供用中の既設トンネルの内空断面にこれらの部材で入り込むことを防止することができる。
【0027】
また、ブルドン管式のプレッシャーディスク5の第1送油管51と第2送油管53のそれぞれをU字状に屈曲して閉塞栓52と圧力変換器54を第2スラストプレート6の基端側に配置し、閉塞栓53と圧力変換器54を覆工コンクリート102の内周側に突出しないように座堀り部103に収容することにより、ブルドン管式のプレッシャーディスク5の閉塞栓52と圧力変換器54が覆工コンクリート102の内周側に突出して邪魔になることを防止することができ、例えば供用中の既設トンネルの内空断面に閉塞栓52や圧力変換器54が入り込むことを防止することができる。
【0028】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものであり、下記変形例も包含する。
【0029】
例えば上記実施形態では、鋼管膨張ボルト1の中空雄ねじ部13、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6及びナット7を、覆工コンクリート102の内周側に突出しないように座堀り部103に収容する構成としたが、鋼管膨張ボルト1の中空雄ねじ部13、第1スラストプレート4、プレッシャーディスク5、第2スラストプレート6及びナット7を、覆工コンクリート102の内周側に突出して設けるロックボルト構造も本発明に含まれる。
【0030】
また、上記実施形態のロックボルト構造におけるプレッシャーディスク5はブルドン管式のプレッシャーディスク5としたが、本発明のロックボルト構造におけるプレッシャーディスクは、ディスク状で圧力を検出可能なものであれば本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば圧電素子が配置されたシート状のセンサ等としてもよい。また、本発明のロックボルト構造の使用は、既設トンネルへの適用に限定されず、新たにトンネルを形成する場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、トンネルの地山にロックボルトを打設して地山を安定化する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…鋼管膨張ボルト 11…膨張管 12…筒体 13…中空雄ねじ部 14…凹部 1a…既設ロックボルト 2…歪ゲージ 21…ゲージリード線 22…保護材 23…保護コーティング材 3…溝切プレート 31…溝 4…第1スラストプレート 5…プレッシャーディスク 51…第1送油管 52…閉塞栓 53…第2送油管 54…圧力変換器 55…電気ケーブル 6…第2スラストプレート 7…ナット 100…地山 101…削孔 102…覆工コンクリート 103…座堀り部 T…トンネル 200…地山 201…覆工コンクリート 202…鋼管膨張ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7