(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000793
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電気ヒータ
(51)【国際特許分類】
F27B 3/20 20060101AFI20231226BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20231226BHJP
H05B 3/44 20060101ALI20231226BHJP
H05B 3/78 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F27B3/20
F27D11/02 A
H05B3/44
H05B3/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099704
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】加茂川 伸征
【テーマコード(参考)】
3K092
4K045
4K063
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092PP13
3K092QA02
3K092QB02
3K092QB26
3K092RA03
3K092RB14
3K092RC16
3K092TT07
3K092VV28
4K045AA04
4K045AA06
4K045BA03
4K045DA02
4K045RB04
4K045RB19
4K063AA04
4K063AA12
4K063BA03
4K063CA01
4K063CA05
4K063FA02
4K063FA10
4K063FA14
4K063FA16
4K063FA27
(57)【要約】
【課題】高出力で断線を抑え、しかも効率よく溶湯に熱量を伝える。
【解決手段】溶解炉200又は溶解保持炉おいて、溶解または温度保持に使用される溶湯Mを加熱する電気ヒータ100で、上下方向に延び下部が溶湯Mに浸漬され、内部に導電材40が挿入された縦型パイプ材10と、縦型パイプ材10の下端に連結され左右水平に延び、溶湯Mに完全に浸漬され、内部に導電材40から通電される発熱体50が設けられた連結パイプ材30とからなり、全体がL字状に形成され、連結パイプ材30の縦型パイプ材10側端には、左右に伸縮し発熱体50に電気的に接続されたバネ材61が設けられ、バネ材61に導電材40の下端に設けられた薄板片41が上方から押し付けられた状態で接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解炉又は溶解保持炉おいて、溶解または温度保持に使用される溶湯を加熱する電気ヒータであって、
上下方向に延び下部が前記溶湯に浸漬され、内部に導電材が挿入された縦型パイプ材と、
前記縦型パイプ材の下端に連結され左右水平に延び、前記溶湯に完全に浸漬され、内部に前記導電材から通電される発熱体が設けられた連結パイプ材とからなり、全体がL字状に形成され、
前記連結パイプの前記縦型パイプ側端には、左右に伸縮し前記発熱体に電気的に接続されたバネ材が設けられ、
前記バネ材に前記導電材の下端に設けられた薄板片が上方から押し付けられた状態で接続されていることを特徴とする電気ヒータ。
【請求項2】
前記バネ材は、複数の皿バネが連結されたものであり、前記薄板片は隣接する皿バネ間に押し付けられ接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電気ヒータ。
【請求項3】
前記縦型パイプ材には、上方から不活性ガスが封入されていることを特徴とする請求項1又は2つに記載の電気ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解または温度保持に使用される溶湯を加熱する電気ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、
図4に示すように、発熱部7が設けられ溶湯内に浸漬される本体部6Aとそれを支持する支持部6Bを交差するように設けたL字型の電気ヒータ6が知られている(例えば、特許文献1)。
この電気ヒータ6は、本体部6Aと支持部6Bが接合管6CによってL字型に接合されたものであり、発熱部7は、本体部6A内において螺旋状に密に巻かれて円筒状となった1本のニクロム線で、支持部6B内に上方から挿入されたリード線8を接合管6C内で水平方向に折り曲げ、その先端を発熱部7に接続して発熱部7に電力が供給されている。
【0003】
これによれば、縦型の電気ヒータ1のように溶湯の深さを深くする必要がなく、溶湯の深さが浅かったとしても効率的に溶湯を加熱することができる。しかも、本体部6Aの重量は、溶湯中に浸漬された本体部6Aが溶湯から受ける浮力とつり合う重力を呈するものとされ、これにより本体部6Aと支持部6Bが接合管6CによってL字型に接合された屈曲部分における応力割れの発生を抑制することができるというものである。
【0004】
特許文献1によると、リード線8の先端は発熱部7の対応する端部に電気的に接続されていると記載されているが(段落番号(0010))、具体的に示されていない。これについては、リード線8が長期の累積使用時間等により断線した場合の対処方法が記載されていることから(段落番号(0023))、特殊な接続方法ではなく一般的な接続のものであると考えられる。一般的な接続な場合、溶湯内に浸漬された本体部6Aが熱膨張するので本体部6Aと支持部6Bの接続部に負荷がかかりリード線8が断線しやすいといった問題がある。
そして、リード線8が断線した場合には、本体部6A,支持部6B及び接合管6Cを分解してリード線8を外し新たなものを入れて組み立て、そのときにはフィラを、浸漬時の浮力とのつり合いを考慮した所定量だけ充填させる必要があるので緻密な作業が要求され交換作業に時間がかかり煩わしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、高出力で断線を抑え、しかも効率よく溶湯に熱量を伝えることのできる電気ヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電気ヒータは、溶解炉(200)又は溶解保持炉おいて、溶解または温度保持に使用される溶湯(M)を加熱する電気ヒータ(100)であって、
上下方向に延び下部が前記溶湯(M)に浸漬され、内部に導電材(40)が挿入された縦型パイプ材(10)と、
前記縦型パイプ材(10)の下端に連結され左右水平に延び、前記溶湯(M)に完全に浸漬され、内部に前記導電材(40)から通電される発熱体(50)が設けられた連結パイプ材(30)とからなり、全体がL字状に形成され、
前記連結パイプ材(30)の前記縦型パイプ材(10)側端には、左右に伸縮し前記発熱体(50)に電気的に接続されたバネ材(61)が設けられ、
前記バネ材(61)に前記導電材(40)の下端に設けられた薄板片(41)が上方から押し付けられた状態で接続されていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記バネ材(61)は、複数の皿バネ(63)が連結されたものであり、前記薄板片(41)は隣接する皿バネ(63,63)間に押し付けられ接続されることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記縦型パイプ材(10)には、上方から不活性ガスが封入されていることを特徴とする。
【0010】
なお、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶解炉又は溶解保持炉おいて、溶解または温度保持に使用される、例えばアルミ溶湯などの溶湯を加熱する電気ヒータは、縦型パイプ材とそれに連結される連結パイプ材からなるL字状に形成され、連結パイプ材は溶湯に完全に浸漬されそこに発熱体が設けられているため、仮に溶湯が浅い場合においても電気ヒータを使用することができる。
【0012】
また本発明によれば、連結パイプ材の縦型パイプ材側端には、左右に伸縮し発熱体に電気的に接続されたバネ材が設けられているので、熱膨張によって連結パイプ材が左右に動き縦型パイプ材との連結部に負荷がかかる場合であっても、連結パイプ材の左右方向の動きはバネ材の伸縮によって緩和されるので熱膨張は吸収される。
これにより、導電材から発熱体に供給される電力が断線等によって途絶えることが抑制される。
しかも、導電材は、バネ材に対して導電材の下端に設けられた薄板片が上方から押し付けられた状態で接続されているので安定した状態で接続され、断線の可能性を極力抑えることができる。
【0013】
また本発明によれば、バネ材は、複数の皿バネが連結されたものであり、薄板片は隣接する皿バネ間に押し付けられるように接続されるので、バネ材が縮むと薄板片が皿バネで左右から挟まれるようにして保持され、一層接続強度が高まる。
【0014】
また本発明によれば、縦型パイプ材には、上方から不活性ガスが封入されているので、縦型パイプ材と連結パイプ材の連結部から溶湯が侵入することが防止される。
【0015】
このように全体としてL字状に形成された電気ヒータにおいて連結パイプ材の熱膨張をバネ材で吸収するような構成を有するものが、溶解炉又は溶解保持炉おいて採用されたケースはなく特異なもので、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気ヒータを示す側面図である。
【
図2】
図1に示す電気ヒータが取付けられた溶解炉の要部を示す部分断面図である。
【
図3】
図1に示す電気ヒータの要部を示す拡大側面図である。
【
図4】従来例に係る電気ヒータを示す部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施形態に係る電気ヒータについて説明する。
【0018】
本実施形態に係る電気ヒータ100は、
図1に示すように、縦型パイプ材10と連結パイプ材30が連結され、全体がL字状に形成されたもので、
図2に示すように、アルミニウムなどの非鉄金属の溶解炉200(溶解保持炉であってもよい)において、溶解または温度保持に使用される溶湯Mを加熱するものである。
【0019】
溶解炉200は、側壁201と底壁202からなり上部の開口は天井蓋300によって覆われていて、その天井蓋300に電気ヒータ100が差し込まれるようにして取付けられている。天井蓋300は全体が蓋になっているが、一部が蓋になったものであってもよい。
【0020】
電気ヒータ100は、
図2に示すように、縦型パイプ材10と、その縦型パイプ材10の下端に連結され左右方向に延びる連結パイプ材30からなる。なお、ここでいう左右方向とは、
図2における左右方向(紙面を表側からみたときの左右方向)で便宜的にしたものであり特に限定されるものではない。
縦型パイプ材10は、低熱伝導率のセラミックパイプからなり、連結パイプ材30は、高熱伝導率のセラミックパイプからなる。
【0021】
縦型パイプ材10は、上下方向に延び下部が溶湯Mに浸漬され、内部には導電材40が挿入されている。
導電材40は、
図3に示すように、熱膨張を吸収できる素材(例えば、ニッケル)で構成された電極棒40で下端には薄板片41が設けられている。薄板片41は導電性のもので、電極棒40と一体で下端が薄板状に形成されたものでも、電極棒40とは別体のものであってもよい。
また、縦型パイプ材10には電極棒40の周りを取り囲むように絶縁パイプ11(例えばアルミナパイプ)が挿入されている。電極棒40は絶縁パイプ11に対して挿入されているだけで固定はされてなく熱膨張を吸収できるようになっている。
電極棒40の上端は、図示しない制御装置を介して単相交流タイプの電源に接続されている。
なお、
図1乃至
図3では、縦型パイプ材10及び連結パイプ材30の内部を実線で示している。
【0022】
連結パイプ材30は、縦型パイプ材10の下端右側に連結されたもので、左右水平に延びている。連結パイプ材30は、溶湯Mに完全に浸漬され、内部には導電材40から通電される発熱体50が設けられている。
発熱体50は螺旋状に巻かれた複数のニクロム線(図示を省略)であり、ニクロム線周りには、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムと、窒化ホウ素との混合物が充填されている。
【0023】
連結パイプ材30の左端には、左右に伸縮し発熱体50に電気的に接続されたバネ材61が設けられている。バネ材61は複数の皿バネ63が左右に連結されてなる。
【0024】
縦型パイプ材10と連結パイプ材30の連結について説明する。
バネ材61は、
図3に示すように、連結パイプ材30の左端からさらに左側に突出するように設けられている。連結パイプ材30の左端には、内部に充填された酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムと、窒化ホウ素との混合物がこぼれ落ちないように絶縁材で形成された蓋体31が取付けられ、さらにその左側には穴あきの電極プレート32が取付けられている。そして電極プレート32の左端に、バネ材61の右端が接続されている。電極プレート32の穴には発熱体50として構成されるニクロム線が通されバネ材61と電気的に接続されている。また、バネ材61の左端は、絶縁材で形成された凹状の受け部33に納められ固定されている。
このとき、電極棒40の下端に設けられた薄板片41は、隣接する皿バネ63,63間に差し込まれ、左右から皿バネ63,63で強力に挟まれるとともに、薄板片41は上方から下方に押し付けられるようにして皿バネ63,63間に接続されている。
【0025】
そして、受け部33とバネ材61の真上に縦型パイプ材10の下端が位置するように配置され、L型で低熱伝導率のセラミック製のエルボ35によって縦型パイプ材10と連結パイプ材30は接続される。縦型パイプ材10の下部は、上方に開口したエルボ35の上部35aにネジ式により固定され、その間はモルタルでシールされている。このとき、縦型パイプ材10の下端は、受け部33の上面に載置されるように配置される。
これに対して右側に向けて開口したエルボ35の下部35bには、連結パイプ材30の左側がネジ式により固定され、その間はモルタルでシールされている。さらにスミセラムなどの耐熱接着剤を使用して固定することもできる。このとき、受け部33の左端はエルボ35の左側内面に突き当てられるように配置されている。
【0026】
なお縦型パイプ材10には、上方から不活性ガス(窒素ガス又はアルゴンガス)が封入され、溶湯の浸入を防止している。
【0027】
本実施形態に係る溶解炉(電気炉)200の場合、発熱体50が設けられた連結パイプ材30を溶湯Mの内に浸漬させるには炉床202Aからの高さを、縦型の電気ヒータの場合と比較して小さく抑えることができるため、アルミ溶湯の有効出湯量は、溶湯Mの表面から連結パイプ材30の上方までの高さとなる距離により決定される。これにより、アルミ溶湯の有効出湯量を、縦型の電気ヒータの場合と比較して大きくすることができ、これに対応して残湯量を大幅に減らすことができる。
【0028】
このように構成された電気ヒータ100によれば、縦型パイプ材10とそれに連結される連結パイプ材30からなるL字状に形成され、連結パイプ材30は溶湯Mに完全に浸漬されそこに発熱体50が設けられているため、仮に溶湯Mが浅い場合においても電気ヒータ100を使用することができる。
また、電気ヒータ100としてより高出力のものを使用する場合に、縦型の電気ヒータの場合のように、溶湯Mを深くするといった制限がなく効率的に溶湯Mを熱することができる。溶湯Mの温度を、短時間で1200度(℃)以上にすることも容易に行える。
【0029】
また、連結パイプ材30の左端には、左右に伸縮し発熱体50に電気的に接続されたバネ材61が設けられているので、熱膨張によって連結パイプ材30が左右に動き縦型パイプ材10との連結部に負荷がかかる場合であっても、連結パイプ材30の左右方向の動きはバネ材61の伸縮によって緩和されるので熱膨張は吸収される。
これにより、導電材40から発熱体50に供給される電力が断線等によって途絶えることが抑制される。
しかも、導電材40は、バネ材61に対して導電材40の下端に設けられた薄板片41が上方から押し付けられた状態で接続されているので安定した状態で接続され、断線の可能性を極力抑えることができる。
【0030】
また、バネ材61は、複数の皿バネ63が連結されたものであり、薄板片41は隣接する皿バネ63,63間に押し付けられるように接続されるので、バネ材61が縮むと薄板片41が皿バネ63,63で左右から挟まれるようにして保持され、一層接続強度が高まる。
【0031】
なお、本実施形態では、発熱体50にニクロム線を使用した例を示したがこれに限定されるものではない。また、バネ材61として皿バネ63を連結したものを例に示したが他のものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
6 電気ヒータ
6A 本体部
6B 支持部
6C 接合管
7 発熱部
8 リード線
10 縦型パイプ材
11 絶縁パイプ
30 連結パイプ材
31 蓋体
32 電極プレート
33 受け部
35 エルボ
35a 上部
35b 下部
40 導電材
41 薄板片
50 発熱体
61 バネ材
63 皿バネ
100 電気ヒータ
200 溶解炉
201 側壁
202 底壁
202A 炉床
300 天井蓋
M 溶湯