(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079323
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/04 20060101AFI20240604BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240604BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B05D1/04 J
B05D7/00 K
B05D3/00 G
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192199
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敬二
(72)【発明者】
【氏名】野田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】赤荻 隆斗
(72)【発明者】
【氏名】渡部 世大
(72)【発明者】
【氏名】谷川 達也
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 倫也
(72)【発明者】
【氏名】市岡 俊賢
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 里佳
(72)【発明者】
【氏名】戸上 れいな
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AA09
4D075AA37
4D075AA78
4D075AA81
4D075AA85
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA23
4D075DA31
4D075DA34
4D075DB35
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB43
4D075DB61
4D075DC13
4D075EA05
(57)【要約】
【課題】プライマー塗料を塗装することなく静電霧化塗装を実施する。
【解決手段】絶縁体製の被塗物1の表面2を塗装する塗装方法であって、接地接続されている導電体4を配置するとともに、ノズルと導電体4との間に被塗物1を配置する配置工程と、被塗物1の表面2の少なくとも一か所21の接地接続を確保する接地工程と、配置工程および接地工程より後に、被塗物1の表面2に塗装を施す塗装工程と、を含み、塗装工程において、電圧が印加されているノズルと導電体4との間に形成される電場の作用によって塗料を霧化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体製の被塗物の表面を塗装する塗装方法であって、
接地接続されている導電体を配置するとともに、ノズルと前記導電体との間に前記被塗物を配置する配置工程と、
前記被塗物の表面の少なくとも一か所の接地接続を確保する接地工程と、
前記配置工程および前記接地工程より後に、前記被塗物の表面に塗装を施す塗装工程と、を含み、
前記塗装工程において、電圧が印加されている前記ノズルと前記導電体との間に形成される電場の作用によって塗料を霧化する塗装方法。
【請求項2】
前記被塗物が、少なくとも二つの隣接する面と、当該二つの面の会合部に形成されるエッジ部分と、を有し、
前記導電体の、前記エッジ部分の裏面に対向して配置される部分に、当該裏面から離間して、曲面部分および面取り部分の少なくとも一つが形成されている請求項1に記載の塗装方法。
【請求項3】
前記曲面部分および前記面取り部分の少なくとも一つは、電気力線の集中を避けうる形状である請求項2に記載の塗装方法。
【請求項4】
前記被塗物が、開口部、凹部、および凸部の少なくとも一つを含む特定部分を有し、
前記導電体が、前記特定部分の周辺の裏面に対向して配置される湾曲部分と、前記湾曲部分に連設されている平面部分と、を有し、
前記塗装工程において、前記ノズルの前記湾曲部分に対向する部分における吐出量が、当該ノズルの前記平面部分に対向する部分における吐出量より小さくなるように、当該ノズルを制御する請求項1に記載の塗装方法。
【請求項5】
前記湾曲部分と前記平面部分との接続部に丸め加工および面取り加工の少なくとも一つが施されている請求項4に記載の塗装方法。
【請求項6】
前記被塗物が、開口部、凹部、および凸部の少なくとも一つを含む特定部分を有し、
前記導電体が、前記特定部分の周辺の裏面に対向し、かつ前記被塗物の裏面から離間して配置される平面状の傾斜部分を有し、
前記塗装工程において、前記ノズルと前記傾斜部分とが正対するように、当該ノズルを制御する請求項1に記載の塗装方法。
【請求項7】
前記導電体が、前記傾斜部分に連設されている平面部分と、を有し、
前記傾斜部分と前記平面部分との接続部に丸め加工または面取り加工が施されている請求項6に記載の塗装方法。
【請求項8】
前記被塗物が曲面部分を有し、
前記導電体の、前記曲面部分の裏面に対向して配置される部分が、平面状に形成されている請求項1に記載の塗装方法。
【請求項9】
前記塗装工程において、前記ノズルと前記導電体との距離に基づいて、前記ノズルの掃引速度を制御する請求項1~8のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項10】
前記接地工程において、前記被塗物の表面の少なくとも一か所と前記導電体とを接続し、当該導電体を介して当該一か所を接地接続する請求項1~8のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項11】
前記塗装工程において、前記ノズルと前記導電体との距離を60mm以上140mm以下とする請求項1~8のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項12】
前記塗装工程において、前記ノズルと前記被塗物の表面との距離を60mm以上140mm以下とする請求項1~8のいずれか一項に記載の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電霧化塗装は、帯電したノズルと当該ノズルに対向して設けられる導電体との間に形成される電場の作用によって塗料を微細な液滴にして、これを被塗物に噴霧する塗装方法である。塗料が帯電状態で飛翔して被塗物の表面に付着することから、被塗物が絶縁体製であると、被塗物の表面に液滴粒子が付着したときに、液滴粒子が有する電荷がその場に留まる他なく、当該表面に蓄積されることになる。すると、塗装が進行すると被塗物の表面ノズルとが同じ極性に帯電し、やがて塗料の霧化を行えなくなる場合があった。
【0003】
この事態を避けるため、従来は、静電霧化塗装に先立って導電性のプライマー塗料を塗装しておくという方法が汎用されていた。たとえば特許文献1および特許文献2には、絶縁性の被塗物の表面に導電性を付与するためのプライマー塗料が開示されており、これらのプライマー塗料を静電霧化塗装の下塗りとして使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/054352号
【特許文献2】国際公開第2021/132132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、加飾のための塗料の塗装に先立って下塗りを要することは、塗装工程の煩雑化を招いていた。
【0006】
そこで、プライマー塗料を塗装することなく静電霧化塗装を実施できる塗装方法の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塗装方法は、絶縁体製の被塗物の表面を塗装する塗装方法であって、接地接続されている導電体を配置するとともに、ノズルと前記導電体との間に前記被塗物を配置する配置工程と、前記被塗物の表面の少なくとも一か所の接地接続を確保する接地工程と、前記配置工程および前記接地工程より後に、前記被塗物の表面に塗装を施す塗装工程と、を含み、前記塗装工程において、電圧が印加されている前記ノズルと前記導電体との間に形成される電場の作用によって塗料を霧化することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、被塗物の表面を接地接続し、当該接地接続を介して塗料が有する電荷を逃がすことができるので、プライマー塗料を塗装することなく静電霧化塗装を実施できる。
【0009】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る塗装方法の実施状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態のうちエッジ部分を塗装する場合の第一の例を示す図である。
【
図3】従来技術によりエッジ部分を塗装する場合の例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態のうちエッジ部分を塗装する場合の第二の例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態のうち開口部を塗装する場合の第一の例を示す図である。
【
図6】従来技術により開口部を塗装する場合の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態のうち開口部を塗装する場合の第二の例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態のうち曲面部分を塗装する場合の例を示す図である。
【
図9】従来技術により曲面部分を塗装する場合の例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態のうち塗膜を介して接地接続を確保する場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態の概要〕
本発明に係る塗装方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る塗装方法を、自動車用のバンパー1(被塗物の一例である。)に適用した例について説明する。
【0012】
バンパー1は、ポリプロピレン、繊維強化プラスチック、ABS樹脂などの絶縁体により形成されており、車体に装着されたときに外側に配置される表面2と、その裏側の裏面3と、を有する。本実施形態に係る塗装方法において塗装対象とするのは、バンパー1の表面2である。
【0013】
本実施形態に係る塗装方法は、バンパー1の裏面3に接触する導電体4を配置する配置工程と、バンパー1の表面2を接地接続する接地工程と、バンパー1の表面2に塗装を施す塗装工程と、を含む。
【0014】
〔配置工程〕
配置工程では、接地接続されている導電体4を配置するとともに、ノズルヘッドH(ノズルN)と導電体4との間にバンパー1を配置する(
図1)。本実施形態に係る塗装方法は、塗料を吐出するノズルヘッドHと、バンパー1の裏面3側に配置される導電体4と、の間に形成される電場の作用によって塗料Pを霧化することによって、塗料Pを均一に微粒化するものであり、いわゆる静電霧化塗装の技術分野に属する。なお、ノズルヘッドHの位置は、産業用ロボット等によって制御される。
【0015】
静電霧化塗装では、形成される電場の均一性が、塗料Pを均一に微粒化するための重要な要素となりうる。たとえば、ノズルヘッドHと導電体4とが正対しているときは、ノズルヘッドHに設けられている複数のノズルNの先端の導電体4からの距離が均一になるので、各ノズルNと導電体4との間に形成される電場が均一になりやすく、塗料Pを均一に微粒化しやすい。なお、ノズルヘッドHと導電体4とが正対しているとは、ノズルNの基端が接続されている面と導電体4とが実質的に平行であることをいう。一方、導電体4に角部や凸部などがある場合は、これらの部分に電気力線が集中するため、電場が不均一になりやすく、塗料の粒径が不均一になる場合がある。
【0016】
そこで本実施形態に係る塗装方法では、導電体4の形状を工夫して、電場の均一性を高めている。特に、対向するバンパー1の部分形状に応じて導電体4を設計することが好ましいため、塗装対象のバンパー1の種類ごとに用意された専用の金型などが、導電体4として好適である。また、導電体4は接地接続されている必要がある。
【0017】
(エッジ部分の塗装の場合)
第一に、バンパー1のエッジ部分11を塗装する場合の例について説明する(
図2)。ここでエッジ部分11とは、少なくとも二つの隣接する面12の会合部に形成される稜線状の部分である。この場合、導電体4の、エッジ部分11の裏面31に対向して配置される部分に、裏面31から離間する曲面部分41が形成されている。
【0018】
従来技術では、被塗物の裏面側の形状に沿って導電体を設けることが一般的だった。この方法を、バンパー1のエッジ部分11を塗装する場合に適用すると、エッジ部分11の裏側に配置される導電体4にエッジ部分42が設けられることになる(
図3)。このようなエッジ部分42は、電気力線の集中により不均一な電場を形成しうる。
【0019】
本実施形態では、エッジ部分42に替えて曲面部分41を設けた導電体4を用いることで、電気力線の集中を避けている。これによって、バンパー1のエッジ部分11の周囲に均一な電場が形成されやすいので、塗料Pを均一に微粒化しやすい。なお、曲面部分41の曲率半径は、電気力線の集中を避けうる限度で特に限定されないが、たとえば10mm以上でありうる。
【0020】
なお、曲面部分41に替えて、面取り部分43を設けた導電体4を用いてもよい(
図4)。この場合の面取りの形状は、電気力線の集中を避けうる程度の形状として適宜設定されうる。
【0021】
(開口部等の塗装の場合)
第二に、バンパー1の開口部14(特定部分の一例である。)を塗装する場合の例について説明する(
図5)。この場合、導電体4の、開口部14の裏面34に対向して配置される部分に、裏面34から離間する湾曲部分44が形成されている。また、バンパー1の開口部14に連接されている平面部分15に対向する導電体4の部分として、湾曲部分44に連設されている平面部分45が形成されている。
【0022】
開口部14は、寸法や位置などの条件によりノズルヘッドHが進入できず、開口部14の一部(特に奥の方)に対して、ノズルヘッドHを正対させることができない場合がある。そのため、導電体4の形状を裏面34に沿う形状とすると、開口部14の周辺において各ノズルNの先端の導電体4からの距離が急峻に変化することになる場合がある(
図6)。
【0023】
本実施形態では、湾曲部分44を設けた導電体4を用いることで、開口部14の周辺における各ノズルNの先端の導電体4からの距離の変化率を抑制している。これによって、開口部14の周辺における電場の変化が小さくなるため、塗装が均一になりやすい。なお、湾曲部分44の曲率半径は、たとえば被塗物表面の曲率半径の2倍以上でありうる。
【0024】
また、湾曲部分44に替えて、平面状の傾斜部分46を設けた導電体4を用いてもよい(
図7)。この形態によっても、開口部14の周辺における各ノズルNの先端の導電体4からの距離の変化率を抑制できるので、湾曲部分44を設ける場合と同様に塗料Pを均一に微粒化しやすい。
【0025】
なお、湾曲部分44または傾斜部分46と平面部分45との接続部分47が鋭利であると、前述の電気力線の集中が生じうるため、接続部分47に丸め加工または面取り加工が施されていることが好ましい。
【0026】
また、バンパー1の凹部または凸部を塗装する場合にも、開口部14を塗装する場合と同様である。すなわち、導電体として、凹部または凸部の裏面に対向して配置される湾曲部分または傾斜部分を有するものを用いればよい。
【0027】
(曲面部分の塗装の場合)
第三に、バンパー1の曲面部分18を塗装する場合の例について説明する(
図8)。この場合、導電体4の、曲面部分18の裏面38に対向して配置される部分に、裏面38から離間する、平面状の平面部分48が形成されている。
【0028】
導電体4の形状を曲面部分18の裏面38に沿う形状にすると、導電体4が曲面形状になる(
図9)。そのため、曲面部分18の周辺において各ノズルNの先端の導電体4からの距離を一定にすることが難しくなるため、曲面部分18の塗装を均一に行うことが難しい。
【0029】
本実施形態では、平面部分48を設けた導電体4を用いることで、曲面部分18の周辺における各ノズルNの先端の導電体4からの距離を一定にしやすくしてある。これによって、曲面部分18の周辺における電場の変化が小さくなるため、塗料Pを均一に微粒化しやすい。
【0030】
〔接地工程〕
接地工程は、バンパー1の表面2の少なくとも一箇所の接地接続を確保するする工程である。その方法は限定されず、たとえば、導電体4の一部を延ばして表面2の接地点21に到達させることによって、表面2の一か所を、導電体4を介して接地接続する方法(
図1)や、導電体4の一部をバンパー1からはみ出す態様で配置し、そのはみ出し部分とバンパー1の表面2とを一体に塗装することで塗膜Cを介して表面2を接地接続する方法(
図10)、などが例示される。
【0031】
本実施形態に係る塗装方法は、原理として、ノズルヘッドH(ノズルN)と導電体4の間に形成される電場の作用によって塗料を帯電した液滴粒子と化し、これをバンパー1の表面2に付着させることによって塗装を施すものである。塗料の液滴粒子はノズルNと同じ極性に帯電した状態で、接地されている(または反対の極性に帯電している)導電体4に引き寄せられる形で、バンパー1に向けて飛翔する。ここで、バンパー1の表面2が接地接続されていない場合、バンパー1が絶縁体製であることから、バンパー1の表面2に液滴粒子が付着したときに、液滴粒子が有する電荷がその場に留まる他なく、表面2に蓄積されていた。すると、塗装が進行するとノズルNと表面2とが同じ極性に帯電し、やがて塗料の霧化を行えなくなる場合があった。この事態を避けるため、従来は、静電霧化塗装に先立って導電性のプライマー塗料を塗装しておくという方法が汎用されていた。
【0032】
これに対し本実施形態では、バンパー1の表面2を接地接続することによって、プライマー塗装が施されていないバンパー1であっても、液滴粒子が有する電荷を逃がすことができる。そのため、塗装が進行しても表面2に電荷が蓄積することがなく、静電霧化塗装を継続することができる。
【0033】
〔塗装工程〕
塗装工程は、上記の配置工程および接地工程を行った後に、バンパー1の表面2に塗装を施す工程である。
【0034】
本実施形態では、バンパー1の表面2のうち接地点21から塗装を開始する。一般的に、静電霧化塗装に用いられる塗料はバンパー1を構成する絶縁体に比べて電気抵抗率が低い(たとえば10MΩcm以下である。)ため、接地点21と塗装面とを接触させることで、電荷の経路を確保するのである。これによって、塗装中に表面2が帯電することを防ぎやすい。
【0035】
また、本実施形態では、ノズルヘッドH(ノズルN)と導電体4との距離に基づいて、ノズルヘッドHの掃引速度を制御する。ノズルヘッドHと導電体4との距離と塗料を霧化する能力とは負の相関関係にあるため、塗料Pを均一に微粒化するためには、ノズルヘッドHと導電体4との距離が一定になるようにノズルヘッドHの動作を制御することが好ましい。しかし、前述のエッジ部分11、開口部14、曲面部分18等を塗装する際には、バンパー1とノズルヘッドHとの干渉を避けるなどの目的により、ノズルヘッドHと導電体4との距離を一定に保つことが難しい場合がある。そこで、これらの場所を塗装する際に、他の場所(たとえば平面部分15)を塗装する場合に比べてノズルヘッドHと導電体4との距離が大きくなる場合は、塗料吐出量を下げて塗料の微粒化低下を防ぐ、ノズルヘッドHの掃引速度を落として当該場所に対する塗装時間を長くする、などの方法により、他の場所を同等の膜厚を確保できるようにする。なお、ノズルヘッドHの位置は、たとえばノズルヘッドHが装着されている産業ロボットの制御量に基づいて特定可能であり、バンパー1および導電体4の位置は、あらかじめ用意されているバンパー1の図面を、塗装ブース内に設けられたカメラの撮影画像に基づいて補正することにより特定可能であるので、これらに基づいてノズルヘッドHと導電体4との距離を特定できる。
【0036】
なお、バンパー1、導電体4、およびノズルヘッドHの形状が許す限りにおいて、ノズルヘッドHと導電体4とができる限り正対するようにノズルヘッドHを制御するとよい。たとえば、導電体4に傾斜部分46が設けられている場合は、ノズルヘッドHと傾斜部分46とを正対させるとよい。また、導電体4に湾曲部分44が設けられている場合も、湾曲部分44の湾曲方向に合わせてノズルヘッドHの角度を変更すると良い。これによって、各ノズルNの先端の導電体4からの距離が一定になりやすいので、塗料Pを均一に微粒化しやすい。
【0037】
塗装工程において、ノズルNと導電体4との距離が60mm以上140mm以下になるように、ノズルヘッドHの動作を制御することが好ましい。ノズルNと導電体4との距離が60mm以上であると、ノズルNと導電体4との間にスパークが生じにくい。また、ノズルNと導電体4との距離が140mm以下であると、塗料Pを均一に微粒化しやすい。
【0038】
塗装工程において、ノズルNとバンパー1の表面2との距離が60mm以上140mm以下になるように、ノズルヘッドHの動作を制御することが好ましい。ノズルNと表面2との距離が上記の範囲であると、塗料Pを均一に微粒化しやすい。
【0039】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る塗装方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0040】
上記の実施形態では、バンパー1のエッジ部分11、開口部14、および曲面部分18を塗装する場合について、導電体4にそれぞれ特徴的な構造を設けることを説明した。しかし本発明において、プライマー塗装を省略するという観点からは、被塗物の表面の少なくとも一か所の接地接続を確保できる限りにおいて、導電体の構造は任意である。
【0041】
上記の実施形態では、バンパー1の表面2の接地点21を導電体4と接続し、導電体4を介して接地点21を接地接続する構成を例として説明した。しかし、本発明において被塗物の表面の少なくとも一か所を接地接続する方法は上記に限定されず、たとえば、被塗物の裏面に接地される導電体とは別の導電体を介して被塗物の表面を接地接続してもよい。
【0042】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 :バンパー
2 :表面
21 :接地点
3 :裏面
4 :導電体