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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079324
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】テストシステム、及びテスト方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/36 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G06F11/36 184
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192200
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田代 一稀
(72)【発明者】
【氏名】山崎 圭巳
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042HH17
5B042HH19
5B042HH49
(57)【要約】
【課題】AUTOSARでテストが提供されていないテスト対象に対しても、テスト対象を選別し個別対応を講じることでテストを実行できる環境を構築する。
【解決手段】テストすべきソフトウェアを、ソフトウェアアーキテクチャに準拠した第1テスト対象と、前記ソフトウェアアーキテクチャに準拠していない第2テスト対象とに選別し、第2テスト対象であることを示す付帯情報を生成するテスト対象選別ステップと、第2テスト対象に含まれる標準規格に準拠しないコンフィギュレーションパラメータを、標準規格に準拠した形式に変換する標準変換ステップと、第1ベーステストシナリオから第1テストシナリオを作成し、第1テスト対象をテストする第1テストステップと、第2ベーステストシナリオから第2テストシナリオを作成し、第2テスト対象をテストする第2テストステップと、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の標準規格に基づくソフトウェアアーキテクチャに準拠してソフトウェアをテストするテストシステムであって、
前記テストシステムは、
所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有する計算機を備え、
前記演算装置は、
テストすべきソフトウェアを、前記ソフトウェアアーキテクチャに準拠した第1テスト対象と、前記前記ソフトウェアアーキテクチャに準拠していない第2テスト対象とに選別し、前記第2テスト対象であることを示す付帯情報を生成するテスト対象選別ステップと、
前記第2テスト対象に含まれる前記標準規格に準拠しないコンフィギュレーションパラメータを、標準規格に準拠した形式に変換する標準変換ステップと、
予め登録された第1ベーステストシナリオから第1テストシナリオを作成し、前記第1テスト対象をテストする第1テストステップと、
予め登録された第2ベーステストシナリオから第2テストシナリオを作成し、前記第2テスト対象をテストする第2テストステップと、を実行することを特徴とするテストシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のテストシステムであって、
前記テスト対象選別ステップでは、前記演算装置が、前記第1テスト対象の付帯情報と前記第2テスト対象の付帯情報に基づいて、テスト対象の種別を判断することを特徴とするテストシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のテストシステムであって、
前記標準変換ステップでは、前記演算装置が、前記第2テスト対象に含まれる標準規格に準拠していないコンフィギュレーションパラメータを標準規格へ準拠するコンフィギュレーションパラメータへ変換し、前記変換されたコンフィギュレーションパラメータの特徴を含むコンフィギュレーションリストを作成することを特徴とするテストシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のテストシステムであって、
前記演算装置は、テストシナリオを作成するテストシナリオ作成ステップを実行し、
前記テストシナリオ作成ステップでは、
前記演算装置が、前記コンフィギュレーションリストの共通部の付帯情報に基づいて、前記第1テスト対象に必要なテストを選別し、予め登録された第1ベーステストシナリオを用いて、前記第1テストシナリオを作成し、
前記演算装置が、前記コンフィギュレーションリストの固有部の付帯情報に基づいて、前記第2テスト対象に必要なテストを選別し、予め登録された第2ベーステストシナリオを用いて、前記第2テストシナリオを作成することを特徴とするテストシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のテストシステムであって、
前記演算装置が、前記第2テストシナリオを作成するために使用されるベーステストシナリオに関連する情報を抽出する関連情報抽出ステップを含むことを特徴とするテストシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のテストシステムであって、
前記第1テストステップにおけるテストの結果及び前記第2テストステップにおけるテストの結果に基づいて、前記テストの結果が異常を示すテスト対象を抽出するテスト対象抽出ステップを含むことを特徴とするテストシステム。
【請求項7】
所定の標準規格に基づくソフトウェアアーキテクチャに準拠して計算機がソフトウェアをテストするテスト方法であって、
前記計算機は、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有し、
前記テスト方法は、
前記演算装置が、テストすべきソフトウェアを、前記ソフトウェアアーキテクチャに準拠した第1テスト対象と、前記前記ソフトウェアアーキテクチャに準拠していない第2テスト対象とに選別し、前記第2テスト対象であることを示す付帯情報を記載するテスト対象選別ステップと、
前記演算装置が、前記第2テスト対象に含まれる前記標準規格に準拠しないコンフィギュレーションパラメータを、標準規格に準拠した形式に変換する標準変換ステップと、
前記演算装置が、予め登録された第1ベーステストシナリオから第1テストシナリオを作成し、前記第1テスト対象をテストする第1テストステップと、
前記演算装置が、予め登録された第2ベーステストシナリオから第2テストシナリオを作成し、前記第2テスト対象をテストする第2テストステップと、を含むことを特徴とするテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストツールに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェア開発の効率化のため、種々の分野で標準化が推進され、標準規格が策定されている。そのため標準化の影響はソフトウェア自体には留まらず、ソフトウェアのテストにも適用され、標準規格の項目に基づいたテストが求められている。
【0003】
AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)を対象としたテストでは、AUTOSARの各機能について、AUTOSARから受け入れテスト(Acceptance Test(AT))の仕様が定められ、提供されている。ただし、受け入れテストで対象としているテストは、AUTOSARの基本機能に限定されているため、製品に実装する構成に対するテストシナリオの作成が必要となる。
【0004】
また、AUTOSARでは、コンフィギュレーションパラメータを変更した場合、全てのソースコードが再生成され、なおかつ、生成されるソースコードの量は膨大であるが、品質担保のためテストを行う際には全パターンの検証が必要である。
【0005】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2000-000000号公報)には、ハードウェアを抽象化した抽象化層の環境を設定するコンフィギュレーションパラメータと、APIパラメータと、網羅的にコンフィギュレーションパラメータの組み合わせと、網羅的にAPIパラメータの組み合わせを、それぞれ抽出する組み合わせ抽出手段と、処理シーケンスに含まれる処理に基づき、テストケースを生成するテストケース生成手段と、抽象化層のインタフェースをモデル化したインタフェースモデルと、コンフィギュレーションパラメータの組み合わせ、APIパラメータの組み合わせ、又は、テストケースを抽象化層に適用して抽象化層をテストするテスト実行手段と、を有するテストツールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-221803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたテストツールでは、AUTOSARを対象としたテストにおいてオールペア法を用い、コンフィギュレーションパラメータを当該手法における因子とし、対象となる四つの因子から二つの因子を選択し、選択された二つの因子に対してのテストは100%の組み合わせが得られる仕組みを構築している。しかし、前述の通り、この方法では、全パターンを検証できず、テストカバレッジの低下、選択されたコンフィギュレーションパラメータ・APIパラメータ組み合わせの偏りなどによるテストシナリオの漏れが懸念される。
【0008】
そこで、標準規格に準拠しないコンフィギュレーションパラメータを付帯情報に基づいて変換して標準化する機能と、付帯情報に基づいてテストシナリオを自動的に生成する機能を持つ自動テスト環境の構築が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、所定の標準規格に基づくソフトウェアアーキテクチャに準拠してソフトウェアをテストするテストシステムであって、前記テストシステムは、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有する計算機を備え、前記演算装置は、テストすべきソフトウェアを、前記ソフトウェアアーキテクチャに準拠した第1テスト対象と、前記前記ソフトウェアアーキテクチャに準拠していない第2テスト対象とに選別し、前記第2テスト対象であることを示す付帯情報を生成するテスト対象選別ステップと、前記第2テスト対象に含まれる前記標準規格に準拠しないコンフィギュレーションパラメータを、標準規格に準拠した形式に変換する標準変換ステップと、予め登録された第1ベーステストシナリオから第1テストシナリオを作成し、前記第1テスト対象をテストする第1テストステップと、予め登録された第2ベーステストシナリオから第2テストシナリオを作成し、前記第2テスト対象をテストする第2テストステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、AUTOSAR等の標準規格でテストが提供されていないテスト対象に対しても、テスト対象を選別し個別対応を講じることでテストを実行できる環境を構築することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のテストツールの全体構成図である。
図2】実施例1のリストの構成を示す図である。
図3A】実施例1のリストに記録されるコンフィギュレーションパラメータを示す図である。
図3B】実施例1のリストに記録されるコンフィギュレーションパラメータを示す図である。
図3C】実施例1のリストに記録されるコンフィギュレーションパラメータを示す図である。
図3D】実施例1のリストに記録されるコンフィギュレーションパラメータを示す図である。
図3E】実施例1のリストに記録されるコンフィギュレーションパラメータを示す図である。
図3F】実施例1のリストに記録されるコンフィギュレーションパラメータを示す図である。
図3G】実施例1のリストに記録されるコンフィギュレーションパラメータを示す図である。
図4】実施例1のテスト対象選別ステップを示す図である
図5】実施例1のテストシナリオ作成ステップの全体構成を示す図である。
図6】実施例1のテストシナリオ作成用データテーブルの内容を示す図である。
図7】実施例1のテスト定義ファイルの内容を示す図である。
図8】実施例1のテスト方法とテスト実施可否の情報を示す図である。
図9】実施例1のCANの定義情報を示す図である。
図10】実施例1のテスト結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
以下、図面を用いて実施例を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施例1のテストツールの全体構成図である。
【0014】
以下、実施例1のテストツールについて、テスト対象選別ステップ104、標準変換ステップ107、テストシナリオ作成ステップ113、及びテストステップ117に分けて説明する。
【0015】
テスト対象選別ステップ104において、本実施例のテストツールは、AUTOSAR DCM(Diagnostic Communication Manager)を対象としており、各コンフィギュレーションパラメータに対してテストが必要であり、全パターン検証が必須とされる。そのためコンフィギュレーションパラメータの数だけテストが必要になり、テストシナリオの数が膨大になる。そこで、テスト対象を機能全体のふるまいを定めるコンフィギュレーションパラメータか、要求固有のコンフィギュレーションパラメータかに選別し、テスト対象を扱いやすくする。
【0016】
次に、図2を参照して、本実施例のテストツールが利用するコンフィギュレーションパラメータが記載されるリスト101について説明する。
【0017】
図2は、リスト101の構成を示す図である。リスト101には、Parameters202、session-service203、session-localId204、DID_List(OBD)205、DID_List(OBD)206、RID_List207、及びTID_List208が含まれており、各リストには本実施例のテストツールで使用するコンフィギュレーションパラメータが記録され、それぞれ図3Aから図3Gに示す情報が記入されている。
【0018】
図4は、テスト対象選別ステップ104を示す図である。
【0019】
テスト対象選別ステップ104では、リスト101を第1テスト対象102と第2テスト対象103とに選別する。それぞれの選別されたテスト対象について、第1テスト対象102を共通部とし、第2テスト対象103を固有部とする。共通部である第1テスト対象102には、AUTOSARにて利用される通信の基本部や定数のサイズなど、AUTOSAR DCMとしての動作に必要とされる基本的なコンフィギュレーションパラメータが纏められる。一方、固有部である第2テスト対象103には、AUTOSARの基本コンフィギュレーションパラメータに関連付けられる詳細なコンフィギュレーションパラメータや、製品固有の仕様によって変化するコンフィギュレーションパラメータが纏められる。
【0020】
次に、前述テスト対象選別ステップ104における、共通部と固有部を選別する種別判断ステップ201について説明する。図3Aに示すParameters202に含まれる "Specification" を付帯情報として利用し、この項目にsession-service203、session-localId204、DID_List(UDS)205、DID_List(OBD)206、RID_List207、TID_List208のいずれかが設定されていれば、固有部であると判定する。そして、第2テスト対象103に含まれる図2のParameters202に固有機能であることを示す付帯情報を記載する。選別した結果、図4のように、リスト101が,共通部である第1テスト対象102と固有部である第2テスト対象103に選別される。固有部は、製品固有仕様によって行なわれるテストの数、実施するテストが流動的に変化するため固有部として分離し、管理しやすい構造にする。
【0021】
本実施例では、テストツールを自動実行するための施策として、標準変換ステップ107において、AUTOSARに準拠したリストを作成する。標準変換ステップ107は、前述したリスト101に含まれるテストプラットフォームごとの固有のコンフィギュレーションパラメータを特定し、AUTOSARに準拠したコンフィギュレーションパラメータへ変換できる仕組みを構築する。
【0022】
図1を参照して、標準変換ステップ107の全体構成を説明する。テスト対象選別ステップ104において選別された第1テスト対象102と第2テスト対象103に対し、標準変換ツール105を用いて、複数のリストを纏めてAUTOSARに準拠した一つのコンフィギュレーションリスト106を作成する。例えば、標準変換ツール105は、固有のコンフィギュレーションパラメータと共通のコンフィギュレーションパラメータとの対応表を有し、設計者の操作に従って、固有のコンフィギュレーションパラメータを共通のコンフィギュレーションパラメータに変換する。
【0023】
標準変換ステップ107において、変換対象となるのは、テストプラットフォームごとの固有の仕様を利用するためのコンフィギュレーションパラメータであり、これらコンフィギュレーションパラメータをそのままリストに反映した場合、AUTOSARとして標準的なリストでなくなる。
【0024】
前述のようなコンフィギュレーションパラメータに関して、図2のParameters202に記載される付帯情報を見て、設計者は、固有機能のコンフィギュレーションパラメータについて、図2に示すコンフィギュレーションパラメータの各設定値を検討し、コンフィギュレーションリスト106の作成時に検討した値に変換する。
【0025】
また、前述の通り、固有仕様を有効にした場合、標準化したリストではなくなってしまうが、利用される場合もあるため、設定自体を有効にすることは可能としている。また一方で、変換する必要のないコンフィギュレーションパラメータに関しては、共通部と固有部ともにコンフィギュレーションリスト106へ転記する。
【0026】
次に、テストシナリオ作成ステップ113において、コンフィギュレーションリスト106の付帯情報を利用し、第1テスト対象102と第2テスト対象103それぞれに対してテストシナリオを作成する。例えば、ベースとなるテストシナリオを予め作成し、コンフィギュレーションリスト106に登録された内容に基づいてテストシナリオを作成するとよい。
【0027】
テストステップ117において、ツールより得られた結果を自動的に判定するために、各ベーステストシナリオに期待値を予め組み込む。ベーステストシナリオの期待値は、ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)やAUTOSARの規格301に基づいて設計者が作成するとよい。期待値は、コンフィギュレーションリスト106に登録されるコンフィギュレーションパラメータに従って、利用する期待値が自動的に設定される。
【0028】
図5は、テストシナリオ作成ステップ113の全体構成を示す図である。コンフィギュレーションリスト106に基づいて、予め用意してあるAUTOSAR規格301から作成された第1ベーステストシナリオ109を用いて、第1テスト対象102(共通部)に対して第1テストシナリオ111を作成し、テストシナリオ作成用データテーブル302から作成した第2ベーステストシナリオ110を用いて、第2テスト対象103(固有部)に対して第2テストシナリオ112を作成する。以下にそれぞれのテストシナリオ作成方法を示す。
【0029】
第1テストシナリオ111は、テスト対象選別ステップにおけるAUTOSARでのふるまいに必要とされるコンフィギュレーションパラメータを対象としているテストシナリオであり、AUTOSAR規格301から作成された第1ベーステストシナリオ109に基づいて作成される。更にテストシナリオ作成ツール108では、コンフィギュレーションリスト106に登録されるコンフィギュレーションパラメータに従って、第1ベーステストシナリオ109から必要なテストシナリオと期待値が選択され、第1テストシナリオ111を作成する。
【0030】
第2テストシナリオ112は、コンフィギュレーションリスト106の情報に基づいて、第2ベーステストシナリオ110を用いて作成される。第2ベーステストシナリオ110は、コンフィギュレーションリスト106に含まれるリストのうち、session-service203、DID_List(UDS)205、DID_List(OBD)206、RID_List207、TID_List208のそれぞれに対してテストシナリオ作成用データテーブル302を用意する。
【0031】
ここで、テストシナリオ作成用データテーブル302について説明する。図6に、session-service203、DID_List(UDS)205、DID_List(OBD)206、RID_List207、TID_List208に対するテストシナリオ作成用データテーブル302の内容を示す。図6に示すように、各テストシナリオ作成用データテーブル302は、有効なIDの数、データサイズ、コンフィギュレーションリスト106に存在しているかに基づいて、構造体として定義できる構造を予め用意する。そのため、コンフィギュレーションリスト106に無効な値が入力されているコンフィギュレーションパラメータは、不要なテストシナリオとして判定する。また、session-service203は、実施するテスト領域の定義であるため、実施しないIDをテストシナリオから除外する。
【0032】
また、テストステップ117において、テストツールで利用するCAN(Controller Area Network)通信のIDとアドレッシング方法を定義する必要があるため、図7に示すテスト定義ファイル303を作成する。図7に示すテスト定義ファイル303は、テスト情報401とIDリスト402とCAN定義リスト403を含む。テスト情報401は、図8に示すテスト方法とテスト実施可否の情報に基づいて作成され、テスト情報401にテストシナリオ名が登録される。テスト情報401に登録されたテストシナリオは、後のテストステップ117において実施される。CAN IDリスト402とCAN定義リスト403は、テストステップ117におけるツールとの通信に使用されるCANの定義情報である。これら定義情報は図9に示すCANの定義情報に基づいて、テストシナリオごとにCANのID、アドレッシング方法を定義する。これらの情報も、テストシナリオ作成用データテーブル302に組み込まれ、テスト定義ファイル303が作成される。
【0033】
次に、関連情報抽出ステップについて説明する。関連情報抽出ステップは、コンフィギュレーションリスト106を参照して実施される。コンフィギュレーションリスト106は、記載されたコンフィギュレーションパラメータごとに特徴が分かるように記載されているため、設計者がテストシナリオの変更や確認を行う際に、該当テストシナリオのコンフィギュレーションパラメータを容易に選択できる。また、コンフィギュレーションリスト106は、AUTOSARのコンフィギュレーションパラメータごとに整理されたリストであるため、設計者によるテストシナリオ関連情報を容易に確認できる。
【0034】
本実施例では、テストステップ117において、テストシナリオ作成ステップ113で作成したテストシナリオを実施する。テストはテスト定義ファイル303に基づいて、ファイル記載内容に従って実施される。テストの実施によって得られた結果であるテスト結果116は、ベーステストシナリオに定義された期待値と比較され、それぞれのテストシナリオごとにテスト判定結果が通知される。
【0035】
図5を参照して、テストステップ117の全体構成を説明する。テストステップ117では、テストシナリオ作成ステップ113で作成された第1テストシナリオ111を、テスト定義ファイル303に基づいて第1テストステップ114においてテストを実施し、第1ベーステストシナリオ109に記載された期待値とテスト結果116を比較し、テスト判定を行う。また、テストシナリオ作成ステップ113で作成された第2テストシナリオ112を、テスト定義ファイル303に基づいて第2テストステップ115においてテストを実施し、第2ベーステストシナリオ110に記載された期待値とテスト結果116を比較し、テスト判定を行う。
【0036】
図10は、テスト実施結果が記載されるファイルであるテスト結果116を示す図である。図中の期待値の下部がベーステストシナリオから得られた期待値であり、実測値がテストの結果である。結果判定は、それぞれCANデータを比較し、送受信データが一致しているかをツールで判定し、正常か不正かを表中の判定の項目に記載する。
【0037】
また、全てのテストシナリオは、コンフィギュレーションリスト106に関連付けられていることから、テスト判定結果が不正となったコンフィギュレーションパラメータのテストに関して、対応関係が明らかであり、不正となった設定値、原因の解析にコンフィギュレーションリスト106の情報を用いることが可能である。
【0038】
また、テストステップ117では、前記第1テストステップにおけるテストの結果及び前記第2テストステップにおけるテストの結果に基づいて、前記テストの結果が異常を示すテスト対象を抽出するとよい。このようにすると、テスト結果が異常であるテスト対象を抽出でき、設計者の不具合対策の作業効率を向上できる。
【0039】
次に、本実施例のテストツールが動作する計算機について説明する。本実施例のテストツールは、プロセッサ(CPU)、メモリ、補助記憶装置、及び通信インタフェースを有する計算機で実行されるプログラムである。テストツールが実行される計算機は、テストシステムを構成する。
【0040】
プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサが、各種プログラムを実行することによって、テストツールの各機能が実現される。なお、プロセッサがプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア)で実行してもよい。
【0041】
メモリは、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサ1が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0042】
補助記憶装置は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、補助記憶装置は、プロセッサがプログラムの実行時に使用するデータ、及びプロセッサが実行するプログラムを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置から読み出されて、メモリにロードされて、プロセッサによって実行されることによって、テストツールの各機能を実現する。
【0043】
通信インタフェースは、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインタフェース装置である。計算機は、入力インタフェース及び出力インタフェースを有してもよい。
【0044】
プロセッサが実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介して計算機に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置に格納される。このため、計算機は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインタフェースを有するとよい。
【0045】
本実施例の計算機が実行するテストツールは、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。例えば、各機能部は、各々別個の物理的又は論理的計算機上で動作するものでも、複数が組み合わされて一つの物理的又は論理的計算機上で動作するものでもよい。
【0046】
以上に説明したように、本実施例のテストツールは、AUTOSARを対象とした膨大なテストシナリオの全パターンを検証するために効率的にテストシナリオを作成する方法と環境を提案するもので、演算装置が、テストすべきソフトウェアを、ソフトウェアアーキテクチャ(例えば、標準規格であるAUTOSAR)に準拠し、当該ソフトウェアアーキテクチャの基本コンフィギュレーションパラメータ203~208を対象としたテスト対象である第1テスト対象102と、ソフトウェアアーキテクチャに準拠しておらず、基本コンフィギュレーションパラメータ203~208に関連付けられる詳細なコンフィギュレーションパラメータを対象とした第2テスト対象103とに選別し、前記第2テスト対象であることを示す付帯情報を生成するテスト対象選別ステップ104と、演算装置が、第2テスト対象103に含まれる標準規格に準拠しないコンフィギュレーションパラメータを、標準規格に準拠した形式に変換する標準変換ステップ107と、演算装置が、予め登録された第1ベーステストシナリオ109から第1テストシナリオ111を作成し、第1テスト対象102をテストする第1テストステップ114と、演算装置が、予め登録された第2ベーステストシナリオ110から第2テストシナリオ112を作成し、第2テスト対象103をテストする第2テストステップ115と、を含むので、リスト101中のテスト対象のうち、ソフトウェアアーキテクチャに準拠しているかで選別し、更に、ソフトウェアアーキテクチャに準拠しないテスト対象をソフトウェアアーキテクチャに準拠する形式に変換して、ソフトウェアテストの自動化の範囲を拡大し、テストシナリオ作成工数を低減し、設計者の負荷を低減し、テスト期間を短縮できる。
【0047】
また、コンフィギュレーションリストの設定値に応じて、ベーステストシナリオからテストシナリオを作成するので、全パターン検証が可能であり、テストシナリオの漏れを抑制でき、テストカバレッジの低下を抑制できる。換言すると、各コンフィギュレーションパラメータに対して全パターン検証を行うとテストシナリオが膨大になるが、コンフィギュレーションパラメータとテストシナリオ作成において工夫を加えたので、テストの効率化を実現できる。
【0048】
また、テスト対象選別ステップ104は、演算装置が、第1テスト対象102の付帯情報と第2テスト対象103の付帯情報に基づいて、テスト対象の種別を判断する種別判断ステップ201を含むので、付帯情報に基づいて、簡便かつ高精度に選別できる。
【0049】
また、標準変換ステップ107では、演算装置が、種別が判断されたテスト対象に対して、標準規格に準拠していないコンフィギュレーションパラメータを標準規格へ準拠するコンフィギュレーションパラメータへ変換し、変換されたコンフィギュレーションパラメータの特徴を含むコンフィギュレーションリスト106を作成する。例えば、CAN通信を使用するDCMであれば、CAN ID等をソフトウェアアーキテクチャに準拠した形式に変換する。このため、テスト対象の種別に応じて変換して、変換精度や変換効率を向上できる。
【0050】
また、テストシナリオ作成ステップ113では、演算装置が、コンフィギュレーションリスト106の共通部の付帯情報に基づいて、第1テスト対象102に必要なテストを選別し、予め登録された第1ベーステストシナリオ109を用いて、第1テストシナリオ111を作成し、コンフィギュレーションリスト106の固有部の付帯情報に基づいて、第2テスト対象103に必要なテストを選別し、予め登録された第2ベーステストシナリオ110を用いて、前記第2テストシナリオを作成するので、コンフィギュレーションリスト106に記載されているかによって、必要テストを自動的に選別して、テストシナリオを作成できる。
【0051】
また、関連情報抽出ステップでは、演算装置が、第2テストシナリオ112を作成するために使用されるベーステストシナリオに関連する情報を抽出するので、設計者がハンドコーディングにより第2テストシナリオを作成する際、自動的に抽出された関連情報を使用でき、作業効率を向上できる。
【0052】
また、テスト対象抽出ステップでは、第1テストステップ114におけるテストの結果及び第2テストステップ115におけるテストの結果に基づいて、前記テストの結果が異常を示すテスト対象を抽出するので、テスト結果が異常であるテスト対象を抽出でき、設計者の不具合対策の作業効率を向上できる。
【0053】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0054】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0055】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0056】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0057】
101 コンフィギュレーションリスト
102 第1テスト対象
103 第2テスト対象
104 テスト対象選別ステップ
105 コンフィギュレーションパラメータ標準変換ツール
106 コンフィギュレーションリスト
107 標準変換ステップ
108 テストシナリオ作成ツール
109 第1ベーステストシナリオファイル
110 第2ベーステストシナリオファイル
111 第1テストシナリオファイル
112 第2テストシナリオファイル
113 テストシナリオ作成ステップ
114 第1テストステップ
115 第2テストステップ
116 テスト結果
117 テストステップ
201 種別判断ステップ
202、202、203、204、205、206、207、208 コンフィギュレーションパラメータファイル
301 AUTOSAR規格
302 テストシナリオ作成用データテーブル
303 テスト定義ファイル
401 テスト情報
402 CAN IDリスト
403 CAN定義リスト
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10