(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007934
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】人工股関節用ステム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/36 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A61F2/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109372
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽文
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴文
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC15
4C097DD09
4C097DD10
4C097FF09
4C097MM03
4C097MM07
4C097SC10
(57)【要約】
【課題】Gruen分類における1,2,7,6,8,9,13,14周辺の近位部から大腿骨への荷重伝達を促進し、応力遮蔽抑制効果に優れる人工股関節用ステム及びその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】内部に中空部を有するラティス構造からなる人工股関節用ステムであって、前記ラティス構造は、3D解析モデルにおける下記式(1)の目的関数を用いて大腿骨における応力遮蔽を抑制する部位の総ひずみエネルギーWfが最大になる傾斜機能ラティス構造であることを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空部を有するラティス構造からなる人工股関節用ステムであって、
前記ラティス構造は、3D解析モデルにおける下記式(1)の目的関数を用いて大腿骨における応力遮蔽を抑制する部位の総ひずみエネルギーW
fが最大になる傾斜機能ラティス構造であることを特徴とする人工股関節用ステム。
【請求項2】
前記傾斜機能ラティス構造は、総ひずみエネルギーWfが最大になるように相対密度分布の最適化を図ったものであることを特徴とする請求項1記載の人工股関節用ステム。
【請求項3】
前記傾斜機能ラティス構造は、三重周期極小曲面構造からなることを特徴とする請求項2記載の人工股関節用ステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の人工股関節用ステムは、チタン合金,ステンレス鋼,アルミニウム合金及びコバルトクロムモリブデン合金のうち、いずれか一種以上の金属粉末を用いた積層造形法にて製造されることを特徴とする人工股関節用ステムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工股関節用ステムに関し、特にステム部が埋め込まれる大腿骨に対する応力遮蔽の抑制に有効な人工股関節用ステム及びその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
人工股関節置換術は、日本国内で40年以上前から行われ、年間6万例以上(2017年)行われる整形外科では一般的な治療法であり、侵襲の少ない術式であることから患者の平均年齢は68歳と高く、人口構造の高齢化が進めば、本術式の適用症例数はさらに増加すると予想される。
人工股関節は、大腿骨に挿入されるステムと骨頭の機能をもつボール部に分けられる。
ステムは、生体親和性および使用中の荷重に耐えることが求められ、一般的にはチタン合金、コバルトクロム系合金、SUS系合金等の金属で構成されることが多い。
人工股関節は、大腿骨に埋め込まれるステム部に使用される金属材料の弾性率(約100-200GPa)が、骨の弾性率(15-25GPa)に比べて極めて高いため、荷重の大半を金属が受け止め、荷重が伝達されなくなった部位の骨が萎縮する応力遮蔽が発生する。
これに起因して接合部が緩み大腿部痛や骨折等の症状が発生し、再手術が必要となることが医療現場における課題となっている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には低い弾性係数からなるβ型チタニウム合金を用いた人工股関節用ステム等が記載されている。
しかし、人工股関節用ステム全体を低弾性率化する方法では充分な低弾性率化を実現しようとすると、一部に応力が集中して折損する恐れが生じる。
また、非特許文献1にはラティス構造からなる人工股関節用ステムを開示するが、トポロジーの最適化の目的がステムのコンプライアンスの最大化にあるため、ステム自体の変形量は多くなる方向に最適化されるが、骨への直接の荷重伝達の量を評価していないため、必ずしも骨への荷重伝達が促進されるような構造が得られるわけではない。
また、骨の応力遮蔽を抑制するためには、非特許文献2,3等にステム近位部から骨に積極的に荷重伝達されることが有効だとされているが、出力された相対密度分布(Fig8,12等)は、ステム近位部の相対密度が少ないことから、遠位部への伝達が想定されるものとなっており、骨への積極的な荷重伝達による応力遮蔽抑制がなされないと考えられる。
また、ステムの剛性を減少させることは強度の低下につながり、ステムの折損が発生しやすくなるといった問題も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y. Wang et al., Hip Implant Design With Three-Dimensional Porous Architecture of Optimized Graded Density, J.Mech. Des., 140,(2018)
【非特許文献2】野山他, 人工股関節置換後にチタン基インプラントより生じた応力遮蔽にともなうヒト大腿骨の骨損失および骨質劣化, 日本金属学会誌, 76(2012)468-473
【非特許文献3】安藤, 人工股関節における大腿骨近位部に生じるひずみとステム長との関連について, 金沢大学十全医学会雑誌, 119(2010)99-109)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、Gruen分類における1,2,7,6,8,9,13,14周辺の近位部から大腿骨への荷重伝達を促進し、応力遮蔽抑制効果に優れる人工股関節用ステム及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る人工股関節用ステムは、内部に中空部を有するラティス構造からなる人工股関節用ステムであって、前記ラティス構造は、3D解析モデルにおける下記式(1)の目的関数を用いて大腿骨における応力遮蔽を抑制する部位の総ひずみエネルギーW
fが最大になる傾斜機能ラティス構造であることを特徴とする。
【0008】
ここで、傾斜機能ラティス構造は、総ひずみエネルギーWfが最大になるように相対密度分布の最適化を図ったものであるのが好ましい。
また、傾斜機能ラティス構造は、三重周期極小曲面構造からなることが好ましい。
【0009】
三重周期極小曲面は、平均曲率がゼロである曲面として定義される極小曲面のうち、3次元空間で周期的な構造をもつものである。
三重周期極小曲面は陰関数で表現され、パラメータを変えることで単位構造の種類、寸法および相対密度を変化させることが可能である。
また、符号付距離関数で表現されるため、複雑なラティス構造であってもブーリアン演算による形状表現を比較的高速で行うことができる。
三重周期極小曲面構造としては、GyroidやIWP等が例として挙げられる。
【0010】
したがって、本発明に係る人工股関節用ステムは、チタン合金,ステンレス鋼,アルミニウム合金及びコバルトクロムモリブデン合金のうち、いずれか一種以上の金属粉末を用いた積層造形法にて製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るステムの傾斜機能ラティス構造は、ステムを埋め込む大腿骨の総ひずみエネルギーが最大化するようにトポロジー最適化を図ることができ、近位部から大腿骨に荷重を積極的に付加させ、応力遮蔽を抑制することができる。
これにより、人工股関節術後の大腿部痛や骨折等を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(a)はステムの3D-CADモデルを示し、(b)はその断面図を示す。
【
図3】有限要素法を用いたステムの強度試験の説明図を示す。
【
図8】(a)は最適化計算で得られたステム、(b)はその断面図を示す。
【
図12】人工股関節用ステムのX線CT断面図を示す。
【
図15】(a)は実験用治具を示し、(b)は試験片と組み合せた状態の外観図を示す。
【
図16】最適化計算で得られた円錐型試験片の断面図を示す。
【
図19】IWP型ユニットを用いた3Dモデルを示す。
【
図20】IWP型ユニットを用いた等価弾性係数と体積分率の関係を最適化計算に使用する設計変数を変数とした補間関数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づいて人工股関節用ステムの設計及び試作結果について説明する。
図1に示されるようなGyroid型のユニットセルについて、有限要素法による均質化法を用いた均質化弾性係数の計算を行った。
Gyroid型の三重周期極小曲面は下記の陰関数形式で表される。
ここでLはユニットサイズの寸法を変化させるためのパラメータ、tは相対密度を変化させる役割に相当するパラメータである。
本実施例は、ユニットセルを5mm角の正立方体とし、相対密度が30%から70%の範囲となるようにtの値を調整した。
均質化法は、ミクロ構造の応答からマクロ構造における等価な特性を求める手法である。
均質化法では、下記式で示されるように、マクロ構造の応力Σは、ミクロ構造の応力σのユニットセルYにおける平均値であることが理論的に証明されている。
ここで、
は、ユニットセルの体積を表す。
ユニットセルに対してあるマクロひずみEを与え、適切な境界条件で構造解析を行い、式(3)で得られるマクロ応力と下記式を用いてマクロ構造の等価な弾性率D
Hを求める。
有限要素法を用いた計算を行う場合の手順を説明する。
ユニットセルの周囲境界は周期境界条件を与え、ユニットセルのX方向またはXY方向に単位量のひずみを与えた有限要素解析を行う。
その後、求めたい弾性係数に対応する応力成分のユニットセル内における積分値を計算し,体積で割り平均値を求める。
三重周期極小曲面ユニットセルの弾性特性解析を目的として、異なる相対密度における均質化弾性係数を求めた。
加えて、3次多項式で近似することで、弾性係数と相対密度の補間関数を求めた。
【0014】
図2に、最適化計算対象とするステムの3D-CADモデルを示す。
寸法は市販されているステムを基にした。
ステムの内部をラティス構造に置き換えると、中実構造に比べて機械的強度は減少することが予測されることから、強度への影響が少ない設計領域の大きさを決定する必要がある。
そこで、ステムの疲労強度試験ISO7206-4をシミュレーションで行うことにより評価することにした。
図3に、ISO7206-4を解析するモデルおよび境界条件を示す。
図3に示されるように、ステムをXZ断面で10°、YZ断面で9°傾けた状態で上部骨頭中心から80mmの位置以下の部分を固定し、骨頭から鉛直下向きに2.3kNの荷重を負荷した。
設計領域は厚み1.5mmで囲まれた
図2(b)に示される領域とし、設計領域のヤング率をGyroidの相対密度30%の弾性率(14.3GPa)として第一主応力を評価した。
大腿骨を模擬した3D-CADモデルにステムの3D-CADモデルを埋め込んだ解析モデルを
図4に示す。
骨頭にステムの軸方向に対し45°の角度で1800N負荷した。
加えて外転筋力としてステムに接続された大腿骨の小転子にステムの軸方向に対し60°の角度で1440Nの荷重を牽引させ、大腿骨の下部を固定拘束条件とした。
最適化計算は
図4に示される大腿骨の領域の総ひずみエネルギーWfを最大化するように下記式に基づいて行った。
ここで、U、KおよびFは系の変位、剛性マトリクスおよび節点荷重ベクトルである。
V(ρ),V
totalおよびV
fは設計領域の体積,初期体積および体積制約である。
本実施例は、V
fは50%とした。
大腿骨の総ひずみエネルギーを最大化することで、ステムから大腿骨への積極的な荷重伝達となる構造を得ることが期待できる。
三重周期極小曲面はポリゴンデータとして得られるため、CADで作図したステムおよび大腿骨の3D-CADをブーリアン演算可能な形式に変換する必要がある。
ここでは、符号付距離関数に変換した。
符号付距離関数は、領域内の位置xにおける、物体境界からの距離関数で表される。
物体に占められている領域をΩ+、物体のない領域をΩ-、物体の境界を∂Ωとすれば、符号付距離関数は下記式で表される。
ここで、d(x)は距離関数であり次式で定義される。
関数fまたはgで定義される領域Dを考えると、領域同士のブーリアン演算は下記式で行うことができる。
三重周期極小曲面およびステムの符号付距離関数のブーリアン演算は(10)-(12)式に基づいて行った。
金属積層造形装置(EOS、EOSINT-M280)を用いてステムの作製を行った。
材料はEOS Stainless Steel 316Lとし、造形パラメータは装置メーカー提供の標準条件を用いた。
【0015】
図5に均質化法を用いて計算されたGyroid型ユニットセルの相対密度毎の均質化弾性係数とその近似関数をプロットしたものを示す。
図5に示されるように、相対密度の低下に伴い均質化弾性係数は低下する傾向がある。
均質化弾性係数と相対密度の関係を3次多項式で最小2乗近似した数式を式(13)-(15)に示す。
上記の補間関数を等方弾性体の物性値として構造最適化に入力して相対密度の最適化を行う。
また、式(16)を用いて設計領域の体積を計算する。
図6に、ISO7204-4を有限要素法でシミュレーションした結果のうち第1主応力分布を示す。
第1主応力はネックと骨頭の接続部で約15MPa、固定部分近傍で約5MPaである。
ステムに使用する材料の疲労強度は、積層造形用のSUS316Lにおいて200MPa程度であり、材料の疲労強度に比べて低い値を示していることがわかる。
以上の結果より、設計領域をラティス構造に置き換えた場合においてもステムの強度は保たれることがわかった。
図7(a)に、最適化計算で得られた相対密度分布を示し、
図7(b)にはそのXZおよびYZ断面を示す。
加えて、
図8に相対密度分布から作図された傾斜ラティス構造のステムのSTLモデルを示す。
図8(a)は外観で、
図8(b)にその断面を示す。
図7に示されるように、近位部の相対密度は遠位部と比較して高くなっていることがわかる。
一般的には、剛性の高い部分は低い部分よりも優先して荷重が伝達されると考えられていることから、相対密度の最適化されたステムは遠位部に比べて近位部から骨への荷重伝達が促進されるものと考えられる。
加えて
図8に示されるように、ステムのような曲面を有する形状であっても、形状に矛盾なく3D-CADモデルを作成できていることがわかる。
図9に、目的関数である大腿骨の総ひずみエネルギーを、最適化されたラティス構造(Graded lattice)、相対密度50%の均一なGyroid型ラティス構造とした場合(Uniform lattice)、および中実構造とした場合(Solid)と比較したものを示す。
傾斜ラティス構造を挿入した骨の総ひずみエネルギーは、中実構造ステムを挿入した場合に比べて約9.3%増加した。
また、均一ラティス構造の場合に比べても3.7%増加しており、最適化計算によって総ひずみエネルギーの増加する方向に相対密度が最適化計算されたことがわかる。
応力遮蔽を定量的に評価する指標として、下記式のStress Shielding Increase(SSI)を用い、傾斜ラティス構造ステムの応力遮蔽抑制効果を検証した。
ここで、
および
は、それぞれ人工股関節置換前および後の大腿骨のフォン・ミーゼス応力の平均である。
SSI、は、置換後と置換後の体積平均のフォン・ミーゼス応力の差を、置換前の値で割ることで求められる指標であり、SSIの値が高いほど、人工股関節置換による応力遮蔽が大きいことを表すとされている。
式(17)により計算された、傾斜機能ラティス構造(Graded lattice)、均一ラティス構造(Uniform lattice)および中実構造(Solid)のSSIを
図10に示す。
なお、SSIの計算は
図4に示す荷重条件において行った。
傾斜ラティス構造ステムのSSIは、中実構造に比べて8%、均一ラティス構造に比べて2%低い値を示しており、傾斜ラティス構造ステムは応力遮蔽抑制効果があるものと考えられる。
中実構造に比べて均一ラティス構造の方が低いSSIとなったのは、ステム全体の弾性率低下に伴い、骨にかかる応力が置換前の状態から維持されたためと考えられ、均一ラティス構造に比べて傾斜機能ラティス構造の方が高いSSIとなったのは、骨の総ひずみエネルギーが最大となるように最適化されたことに伴い、骨に負荷される応力が全体としてさらに高くなったためと考えられる。
また、傾斜機能ラティス構造では、骨のフォン・ミーゼス応力の最大値および変動係数は中実構造に比べてともに低い値となったことを確認しており、傾斜機能ラティス構造にしたことによる骨への過度な荷重負荷は発生しないものと考えられる。
金属積層造形装置で作製されたステムを
図11に示す。X線CT装置を用いて、作製されたステムの欠陥および形状の確認を行った。
図12に断層画像を示す。
積層造形により作製されたステムは大きな欠陥および設計との形状誤差は特に確認されなかった。
【0016】
ここで用いた最適化手法の有効性検証を行うために、円錐形試験片を用いた実験を行った。
図13に、試験片の形状を示す。
また、
図14には、最適化計算を行う解析モデルの断面図を示す。
円錐型試験片のうち、
図14に示されるような厚み1.5mmで囲まれた内部をラティス構造に置き換える領域とした。
図14に示される支持部材のうち、円錐型試験片と接する箇所の総ひずみエネルギーを最大化するように設計領域内のGyroid型ラティス構造の相対密度を最適化した。
図15に、圧縮試験用の治具および作製された試験片と治具を組み合わせた様子を示す。
試験片は(a)に示される2種類のアルミ製の治具に、(b)のように固定され、鉛直方向に荷重が負荷される。
治具と下部圧縮盤の間に、発色の濃度が応力の大きさに応じて変化する応力フィルム(富士フイルム、プレスケールLW)を敷くことで、外側および内側の治具と下部圧縮盤の間の圧力分布を確認した。
荷重の負荷は万能試験機を用いて行い、10kNの荷重を5秒間負荷した。
円錐型試験片の材質はPLA(Flash Forge)とし、3Dプリンター(Flash Forge, Creator Pro2)を用いて造形した。
【0017】
金属積層造形装置で作製されたステムを大腿骨に挿入し、応力遮蔽の効果を実験によって検証することは、実験の複雑さから行うことは難しいと考えられたため、円錐型試験片を用いて最適化手法の効果検証を行った。
円錐型試験片を、支持部材の総ひずみエネルギーを最大化することを目的関数として最適化し、最適化による支持部材への荷重伝達の影響評価を行った。
図16に、最適化計算で得られた傾斜機能ラティス構造の円錐試験片の断面図を示す。
図16に示されるように、傾斜機能ラティス構造は、上部は下部に比べて相対密度が高くなっていることがわかる。
図17に、圧縮試験により得られた応力フィルムの濃度分布写真を示す。
図17に示されるように、傾斜機能ラティス構造とした試験片は均一ラティス構造および中実の試験片と比べて外側の治具への荷重伝達がわずかに多いことが示される。
以上の結果は、形状および材料の違いはあるものの、同じ最適化計算の手法で得られた傾斜機能ラティス構造ステムにおいても、遠位部よりも近位部において大腿骨への積極的な荷重伝達が行われることを示唆するものと考えられる。
【0018】
参考として、
図18に示したIWP型のユニットを用いてGyroid型ユニットと同様に設計したステムの3Dモデルを
図19に示す。
また、トポロジーの最適化に用いる補間関数を
図20に示す。
このようなIWP型のユニットを用いても、Gyroid型と同様の結果が得られることを確認した。