(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079344
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】クレーンの遠隔操作システム、制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20240604BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B66C13/40 B
B66C13/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192232
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】師岡 清和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】山口 成久
(72)【発明者】
【氏名】松本 武郎
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA02
3F204CA01
3F204DA08
(57)【要約】
【課題】クレーンの遠隔操作において手動運転をアシストできるようにする。
【解決手段】クレーン(1)を遠隔操作するクレーン(1)の遠隔操作システムであって、予め設定された目標位置にクレーン(1)を自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御手段(103)を備え、アシスト運転制御手段(103)は、クレーン(1)を遠隔操作するための操作部(11)で所定の操作が継続されている間、目標位置にクレーン(1)を自動的に移動させ、所定の操作が解除されると、クレーン(1)の移動を停止させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンを遠隔操作するクレーンの遠隔操作システムであって、
予め設定された目標位置に前記クレーンを自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御手段を備え、
前記アシスト運転制御手段は、前記クレーンを遠隔操作するための操作部で所定の操作が継続されている間、前記目標位置に前記クレーンを自動的に移動させ、前記所定の操作が解除されると、前記クレーンの移動を停止させることを特徴とするクレーンの遠隔操作システム。
【請求項2】
前記所定の操作が継続されるとは、所定のボタンの押下が継続されることであり、前記所定の操作が解除されるとは、前記所定のボタンの押下が解除されることであることを特徴とする請求項1に記載のクレーンの遠隔操作システム。
【請求項3】
前記クレーンは、軌条に沿って走行する走行体と、前記走行体に沿って、前記走行体の走行方向と直交する方向に走行する横行台車と、前記横行台車に搭載された巻上装置とを備えた天井クレーンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーンの遠隔操作システム。
【請求項4】
前記目標位置として、前記走行体の走行位置の目標位置、前記横行台車の横行位置の目標位置、及び前記巻上装置による吊具の高さ位置の目標位置が設定可能であることを特徴とする請求項3に記載のクレーンの遠隔操作システム。
【請求項5】
遠隔操作による指示に従って、クレーンを制御する制御装置であって、
予め設定された目標位置に前記クレーンを自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御手段を備え、
前記アシスト運転制御手段は、前記クレーンを遠隔操作するための操作部で所定の操作が継続されている間、前記目標位置に前記クレーンを自動的に移動させ、前記所定の操作が解除されると、前記クレーンの移動を停止させることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
遠隔操作による指示に従って、クレーンを制御するためのプログラムであって、
予め設定された目標位置に前記クレーンを自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御手段としてコンピュータを機能させ、
前記アシスト運転制御手段は、前記クレーンを遠隔操作するための操作部で所定の操作が継続されている間、前記目標位置に前記クレーンを自動的に移動させ、前記所定の操作が解除されると、前記クレーンの移動を停止させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの遠隔操作システム、制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
資材の置き場等に対して、天井クレーン等のクレーンが設置される。近年では、省人化を図り、生産性を向上させるべく、クレーンの遠隔操作の実用化が進められている。クレーンの遠隔操作とは、クレーン及びその周辺をカメラで撮影し、その映像が表示されるディスプレイを介してクレーン及びその周辺の様子を見ながら、クレーンを操作することをいう。
【0003】
特許文献1には、天井走行クレーンの移動を、予め設定された所定の走行パターンで走行装置、横行装置を介して自動走行させ、自動走行完了信号により、遠隔指令信号発信器にクレーン操作権を発生させ、吊荷の吊上げ、吊下ろしをそれぞれの遠隔指令信号発信器からの遠隔手動により実施するクレーンの半自動運転方法が開示されている。
特許文献2には、シャシの上方に配置したコンテナを下降させて前記シャシに載せる作業、ならびに前記シャシに載せられた前記コンテナの上方に配置したスプレッダを下降させて前記コンテナを掴む作業をオペレータの手動運転によって実施し、その他の作業を自動運転によって実施するヤードクレーンの運転方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-79659号公報
【特許文献2】特開2005-138952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クレーンの遠隔操作において、オペレータによる手動運転をアシストできるような機能を持つようにすれば、操作性が向上する。
特許文献1、2の技術は、自動運転と手動運転を作業フェーズ/作業エリアで分担した併用方式であり、手動運転をアシストできるようにするものとは異なる。また、自動運転エリアにおいては、立入制限のための入退管理システム等を設ける必要があり、構築コストが高額となる懸念がある。
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、クレーンの遠隔操作において手動運転をアシストできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクレーンの遠隔操作システムは、クレーンを遠隔操作するクレーンの遠隔操作システムであって、予め設定された目標位置に前記クレーンを自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御手段を備え、前記アシスト運転制御手段は、前記クレーンを遠隔操作するための操作部で所定の操作が継続されている間、前記目標位置に前記クレーンを自動的に移動させ、前記所定の操作が解除されると、前記クレーンの移動を停止させることを特徴とする。
本発明の制御装置は、遠隔操作による指示に従って、クレーンを制御する制御装置であって、予め設定された目標位置に前記クレーンを自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御手段を備え、前記アシスト運転制御手段は、前記クレーンを遠隔操作するための操作部で所定の操作が継続されている間、前記目標位置に前記クレーンを自動的に移動させ、前記所定の操作が解除されると、前記クレーンの移動を停止させることを特徴とする。
本発明のプログラムは、遠隔操作による指示に従って、クレーンを制御するためのプログラムであって、予め設定された目標位置に前記クレーンを自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御手段としてコンピュータを機能させ、前記アシスト運転制御手段は、前記クレーンを遠隔操作するための操作部で所定の操作が継続されている間、前記目標位置に前記クレーンを自動的に移動させ、前記所定の操作が解除されると、前記クレーンの移動を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クレーンの遠隔操作において手動運転をアシストすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】天井クレーンの遠隔操作システムの構成例を示す図である。
【
図5】目標位置を入力する入力画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1及び
図2に、天井クレーン1の概略構成を示す。
図1は、天井クレーン1を模式的に示す平面図、
図2は、天井クレーン1を模式的に示す斜視図である。
天井クレーン1は、置き場7に対して設置され、置き場7に置かれた資材を吊り下げて搬送する。
天井クレーン1は、一対の軌条(レール)4と、軌条4に沿って走行する走行体2と、走行体2に沿って走行する横行台車3と、横行台車3に搭載された巻上装置5とを備える。横行台車3は、走行体2の走行方向と直交する方向に走行する。巻上装置5は、フック等の吊具5aを巻上げたり、巻下げたりして、置き場7に置かれた吊荷(資材)を吊り下げる。本願においては、走行方向(軌条4の延伸方向)をx方向、横行台車3の走行方向である横行方向をy方向、高さ方向をz方向と定義する。
【0011】
また、天井クレーン1において、図示は省略するが、レーザ距離計等の計測手段により、天井クレーン1の位置情報(走行体2の走行位置、横行台車3の横行位置、巻上装置5による吊具5aの高さ位置)を取得できるようになっている。これにより、天井クレーン1を遠隔操作する遠隔操作システムにおいて、天井クレーン1の位置情報を保有することができる。
【0012】
図3に、天井クレーン1の遠隔操作システムの構成例を示す。
天井クレーン1側には、カメラ6が設置される。
図1及び
図2では図示を省略するが、天井クレーン1や置き場7の適所にカメラ6が設置され、天井クレーン1及びその周辺を撮影する。カメラ6は、通信装置8を介して、遠隔操作室側のディスプレイ9等と通信を行う。なお、一台のカメラ6だけを図示するが、複数台のカメラが設置されるようにしてもよい。
【0013】
また、天井クレーン1側には、遠隔操作による指示に従って、天井クレーン1を制御する制御装置100が設置される。制御装置100は、遠隔操作による指示に従って、天井クレーン1の作動装置(不図示の走行装置や横行装置、巻上装置5)に駆動指示を出力して、天井クレーン1を移動させ、その移動を停止させるように制御する。また、本実施形態では、制御装置100は、予め設定された目標位置に天井クレーン1を自動的に移動させるアシスト運転を制御するアシスト運転制御を実行する。アシスト運転制御の詳細については後述する。なお、
図3では、天井クレーン1側に制御装置100が設置されるとしたが、制御装置100の設置箇所は限定されるものではない。例えば遠隔操作室側、或いは天井クレーン1側及び遠隔操作室側とは別の場所に制御装置100が設置されて、通信を介して天井クレーン1を制御するように構成してもよい。
【0014】
遠隔操作室には、カメラ6で撮影した映像を表示するディスプレイ(モニタ)9が設置される。ディスプレイ9は、通信装置10を介して、天井クレーン1側のカメラ6等と通信を行う。なお、一台のディスプレイ9だけを図示するが、複数台のディスプレイが設置されるようにしてもよい。
【0015】
また、遠隔操作室には、天井クレーン1を遠隔操作するための操作部として、ペンダントスイッチ等の操作器具11が設置される。操作器具11には、アシスト運転を実行、停止するための所定のボタン(アシスト運転ボタンと呼ぶ)11aが設けられている。操作器具11は、通信装置10を介して、制御装置100と通信を行う。
【0016】
このように、天井クレーン1及びその周辺をカメラ6で撮影し、遠隔操作室では、オペレータが、カメラ6の映像が表示されるディスプレイ9を介して天井クレーン1及びその周辺の様子を見ながら、操作器具11を用いて天井クレーン1を操作することができる。
【0017】
なお、天井クレーン1の遠隔操作システムにおいては、ここで述べた構成要素だけでなく、他の構成要素が存在していてもよい。例えば現場である天井クレーン1側にもペンダントスイッチ等の操作器具(不図示)があり、所定の切り替え条件で、現場での操作と遠隔操作とが切り替わるようにしてもよい。
【0018】
図4に、制御装置100の機能構成例を示す。制御装置100は、遠隔操作による指示に従って、天井クレーン1を制御するが、ここでは、制御装置100によるアシスト運転制御を中心に説明する。
図4でも、制御装置100の機能のうち、アシスト運転制御を実現するための機能構成だけを示す。
制御装置100は、入力部101と、格納部102と、アシスト運転制御部103とを備える。
【0019】
入力部101は、上位システムからの自動入力、又はオペレータによる手動入力により、アシスト運転の任意の目標位置を入力する。目標位置として、走行体2の走行位置の目標位置X、横行台車3の横行位置の目標位置Y、及び巻上装置5による吊具5aの高さ位置の目標位置Zが設定可能である。
図1において、目標位置を「×」で示す。
また、入力部101は、操作器具11での操作の情報を入力する。例えばアシスト運転ボタン11aの押下及び押下の解除といった情報が入力される。
【0020】
格納部102は、入力部101で入力した目標位置(X,Y,Z)を格納する。格納部102では、例えば一つの目標位置だけを格納するようにしてもよいし、複数の目標位置を例えばリスト化して格納しておき、アシスト運転に際してオペレータが任意の目標位置を選択してセットするようにしてもよい。
【0021】
アシスト運転制御部103は、操作器具11のアシスト運転ボタン11aの押下があると、その押下が継続されている間、現在セットされている目標位置(X,Y,Z)に天井クレーン1を自動的に移動させる。
図1の矢印A
x,A
yに示すように、走行体2及び横行台車3をそれぞれの目標位置X,Yまで移動させ、その後、巻上装置5により吊具5aを目標位置Zに移動させる。アシスト運転制御部103は、
図1に仮想線で示すように、走行体2の走行位置、横行台車3の横行位置、及び巻上装置5による吊具5aの高さ位置が目標位置(X,Y,Z)に達すると、そのことをユーザに通知する。通知の仕方は限定されるものではない。例えば操作器具11に振動を発生させたり、操作器具11に設けたランプを点灯させたりして目標位置に達したことを通知してもよい。また、ディスプレイ9で目標位置に達したことを通知してもよい。
また、アシスト運転制御部103は、アシスト運転中に、アシスト運転ボタン11aの押下が解除されると、アシスト運転を停止する、すなわち天井クレーン1の移動を停止させる。このようにアシスト運転ボタン11aから指を離すといった簡易な操作で、即座に天井クレーン1を停止させることができる。
【0022】
以上述べたように、目標位置に天井クレーン1を自動的に移動させるアシスト運転を実行できるようにしたので、天井クレーン1の遠隔操作において手動運転をアシストすることが可能になり、操作性が向上する。
また、自動運転化ではなく、手動運転をアシストするものであり、また、アシスト運転中の簡易な操作(アシスト運転ボタン11aの押下の解除)で、即座に天井クレーン1を停止させることができるので、立入制限のための入退管理システム等を設ける必要はなく、構築コストを抑えることができる。
【0023】
以下では、
図5を参照して、アシスト運転の目標位置の入力の仕方の例を説明する。
図5は、目標位置を入力する入力画面501の例を示す図である。入力画面501は、例えばディスプレイ9に表示されて、不図示のキーボードやマウス等の入力機器を使って、目標位置を入力することができる。
入力画面501には、平面視した建屋のレイアウトを模式的に表したマップ502が表示される。マップ502上には、走行体2を表す第1の表示パーツ503と、横行台車3を表す第2の表示パーツ504とが表示される。このように走行体2の走行位置及び横行台車3の横行位置をグラフィカルに表示する。
また、マップ502の周囲には、数値及びインジケータ表示により、走行体2の走行位置を表示する表示部505が表示される。
また、マップ502の周囲には、数値及びインジケータ表示により、横行台車3の横行位置を表示する表示部506が表示される。
また、マップ502の周囲には、数値及びインジケータ表示により、吊具5aの高さ位置を表示する表示部507が表示される。
【0024】
このようにした入力画面501において、オペレータが、入力機器を使って、表示部505~507に任意の位置の数値を入力することにより、目標位置を設定できるようにする。
また、オペレータが、入力機器を使って、マップ502上で第1の表示パーツ503、第2の表示パーツ504を移動させるという直感的な操作により、目標位置を設定できるようにしてもよい。
なお、第1の表示パーツ503、第2の表示パーツ504の位置と、表示部505、506が表示する位置とは連動して、いずれか一方が変わると、他方がそれに対応して変わるようにすればよい。
【0025】
なお、ここでは、
図5に示す画面を入力画面501として使う例を説明したが、例えば第1の表示パーツ503、第2の表示パーツ504の位置、及び表示部505~507が表示する位置で、現在セットされている目標位置(X,Y,Z)をオペレータに明示する画面として使うようにしてもよい。
【0026】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本実施形態では、所定の操作としてアシスト運転ボタン11aの押下を説明したが、これに限定されるものではない。例えばレバーを所定の位置に移動させる操作が継続されている間、目標位置に天井クレーン1を自動的に移動させ、レバーを元の位置に戻すと、天井クレーン1の移動を停止させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、天井クレーン1を説明したが、天井クレーン以外のクレーンにも本発明は適用可能である。
【0027】
本発明を適用する制御装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により構成され、CPUが所定のプログラムを実行することにより、その機能が実現される。
また、本発明は、本発明のアシスト運転制御機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:天井クレーン、2:走行体、3:横行台車、4:軌条、5:巻上装置、6:カメラ、7:置き場、8、10:通信装置、9:ディスプレイ、11:操作器具、11a:アシスト運転ボタン、100:制御装置、101:入力部、102:格納部、103:アシスト運転制御部