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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079347
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両用熱マネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240604BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240604BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 651B
F25B1/00 399Y
F25B1/10 B
F25B1/10 J
F25B1/00 101F
F25B1/00 387B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192236
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】榎島 史修
(72)【発明者】
【氏名】横井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA23
3L211BA34
3L211BA60
3L211DA26
3L211DA28
3L211DA29
3L211FA23
3L211GA26
3L211GA27
3L211GA28
(57)【要約】
【課題】加熱対象の加熱、あるいは冷却対象の冷却をすることができ、しかもその加熱能力や冷却能力を高めることができる車両用熱マネジメントシステムを提供する。
【解決手段】第1圧縮機10A及び第2圧縮機10B、冷媒Rで加熱用媒体又は外気に放熱を行う凝縮器と、凝縮器5を経由し第1膨張弁11で膨張された冷媒Rで内気から吸熱を行う第1蒸発器4及び凝縮器5を経由し第2膨張弁12で膨張された冷媒Rで冷却用媒体又は外気から吸熱を行う第2蒸発器6を有する冷媒回路1と、加熱用媒体ポンプ16及び加熱用媒体Hで加熱対象に放熱を行う放熱器61を有する加熱用媒体回路2と、冷却用媒体ポンプ36及び冷却用媒体Lで冷却対象から吸熱を行う吸熱器62を有する冷却用媒体回路3との少なくとも一方の媒体回路とを備える。凝縮器5における加熱用媒体への放熱及び第2蒸発器4における冷却用媒体からの吸熱の少なくとも一方を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路により直列に接続され、冷媒を圧縮する第1圧縮機及び第2圧縮機と、前記第2圧縮機で圧縮された冷媒が導入され、冷媒で加熱用媒体又は外気に放熱を行う凝縮器と、前記凝縮器を経由した冷媒を膨張させる第1膨張弁及び第2膨張弁と、前記第1膨張弁で膨張された冷媒が導入され、冷媒で内気から吸熱を行う第1蒸発器と、前記第2膨張弁で膨張された冷媒が導入され、冷媒で冷却用媒体又は外気から吸熱を行う第2蒸発器とを有し、前記第1蒸発器と前記第1流路とが前記第2流路により接続され、前記第2蒸発器と前記第1圧縮機とが第3流路により接続された冷媒回路と、
前記加熱用媒体を循環させる加熱用媒体ポンプと、前記加熱用媒体で加熱対象に放熱を行う放熱器とを有する加熱用媒体回路と、前記冷却用媒体を循環させる冷却用媒体ポンプと、前記冷却用媒体で冷却対象から吸熱を行う吸熱器とを有する冷却用媒体回路との少なくとも一方の媒体回路とを備え、
前記凝縮器における前記加熱用媒体への放熱及び前記第2蒸発器における前記冷却用媒体からの吸熱の少なくとも一方を行うことを特徴とする車両用熱マネジメントシステム。
【請求項2】
前記第2流路と前記第3流路とがバイパス流路により接続され、
前記バイパス流路には第1開閉弁が設けられている請求項1記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項3】
制御装置をさらに備え、
前記冷媒回路は、前記制御装置の制御により、
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱する第1モード、
前記第2蒸発器にて前記冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱する第2モード、
前記第2蒸発器にて前記冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱する第3モード、
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、前記第2蒸発器にて前記冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱する第4モード、及び
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、前記第2蒸発器にて前記冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱する第5モードで作動する請求項2記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項4】
前記第2流路に第2開閉弁が設けられ、
前記第2開閉弁は、前記第2流路と前記バイパス流路との接続部よりも冷媒流れの下流側に配置され、
前記冷媒回路は、前記制御装置の制御により、
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、前記第2蒸発器にて前記冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて前記加熱用媒体又は外気に放熱する第6モードで作動する請求項3記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項5】
前記凝縮器は、冷媒と前記加熱用媒体とのとの間で熱交換が行われる水冷コンデンサである請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項6】
前記第2蒸発器は、冷媒と前記冷却用媒体との間で熱交換が行なわれるチラーである請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項7】
前記第1圧縮機は速度型であり、前記第2圧縮機は容積型である請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項8】
前記第1流路に逆止弁が設けられ、
前記逆止弁は、前記第1流路と前記第2流路との接続部よりも冷媒流れの上流側に配置されている請求項7記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項9】
前記第2圧縮機の冷媒吐出側には、前記第2圧縮機で圧縮された冷媒から潤滑油を分離して前記第2圧縮機の冷媒吸入側に戻す油分離器が設けられている請求項7記載の車両用熱マネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用熱マネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー式の電気自動車(BEV、Battery Electric Vehicle)には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置として、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等が搭載されている。
【0003】
電池は充放電時に発熱し、高温状態が継続すると劣化が促進する。走行用モータやPCU(Power Control Unit)等の電気部品も高速走行時等に過度に高温になると損傷や作動不良の懸念がある。一方、電池が過度に低温になると、電池出力が低下する。このため、電池や電気部品を冷却や加熱することができる電池温調システムが求められる。
【0004】
特許文献1に電池温調が可能な従来の車両用熱マネジメントシステムが開示されている。この車両用熱マネジメントシステムは、電気自動車に搭載され、車室内を空調するとともに、二次電池等の車載電池の温度を調整する。この車両用熱マネジメントシステムは、圧縮機、室外器、第1膨張弁、電池熱交換部、第2膨張弁及び室内器がこの順で冷媒流路によって接続された冷媒回路を備えている。
【0005】
圧縮機は、冷媒を圧縮して冷媒を回路内で循環させる。室外器は、外気と冷媒とを熱交換させる。第1膨張弁及び第2膨張弁は絞り度合いに応じて冷媒を減圧させる。電池熱交換部は、車載電池と冷媒とを熱交換させる。室内器は、車室内に供給される室内空気と冷媒とを熱交換させる。
【0006】
また、この車両用熱マネジメントシステムにおける冷媒回路は、回路内を循環する冷媒の循環方向を切り替える方向切替部をさらに備えている。そして、この冷媒回路における第1膨張弁、第2膨張弁及び方向切替部の作動は制御部によって制御される。
【0007】
この車両用熱マネジメントシステムでは、制御部の制御により、方向切替部が回路内を循環する冷媒の循環方向を切り替えるとともに、第1膨張弁及び第2膨張弁の開度を調整することで、車室内の冷暖房と、車載電池の冷却及び加熱とを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-192968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、地球環境の改善の観点から、自動車業界においては電気自動車が注目され、その普及率も高まっている。このため、電気自動車において電池や電気部品の冷却と車室内の空調とを適切に行えるシステムに関しても新規な開発が求められている。
【0010】
特に、車室内の空調に供される内気や車載電池等の加熱・冷却対象に対する加熱・冷却能力を高めることができれば好都合である。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、加熱対象の加熱、あるいは冷却対象の冷却をすることができ、しかもその加熱能力や冷却能力を高めることができる車両用熱マネジメントシステムを提供することを解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車両用熱マネジメントシステムは、第1流路により直列に接続され、冷媒を圧縮する第1圧縮機及び第2圧縮機と、前記第2圧縮機で圧縮された冷媒が導入され、冷媒で加熱用媒体又は外気に放熱を行う凝縮器と、前記凝縮器を経由した冷媒を膨張させる第1膨張弁及び第2膨張弁と、前記第1膨張弁で膨張された冷媒が導入され、冷媒で内気から吸熱を行う第1蒸発器と、前記第2膨張弁で膨張された冷媒が導入され、冷媒で冷却用媒体又は外気から吸熱を行う第2蒸発器とを有し、前記第1蒸発器と前記第1流路とが前記第2流路により接続され、前記第2蒸発器と前記第1圧縮機とが第3流路により接続された冷媒回路と、
前記加熱用媒体を循環させる加熱用媒体ポンプと、前記加熱用媒体で加熱対象に放熱を行う放熱器とを有する加熱用媒体回路と、前記冷却用媒体を循環させる冷却用媒体ポンプと、前記冷却用媒体で冷却対象から吸熱を行う吸熱器とを有する冷却用媒体回路との少なくとも一方の媒体回路とを備え、
前記凝縮器における前記加熱用媒体への放熱及び前記第2蒸発器における前記冷却用媒体からの吸熱の少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の車両用熱マネジメントシステムは、凝縮器における加熱用媒体への放熱及び第2蒸発器における冷却用媒体からの吸熱の少なくとも一方を行う。
【0014】
凝縮器にて冷媒が加熱用媒体に放熱すれば、冷媒によって加熱された加熱用媒体が放熱器にて加熱対象に放熱する。これにより、加熱対象が例えば車室内に供給される内気である場合は、加熱用媒体によって加熱された内気を車室内の暖房に供することができる。また、加熱対象が例えば車載電池である場合は、加熱用媒体によって車載電池を加熱することができる。
【0015】
第2蒸発器にて冷媒が冷却用媒体から吸熱すれば、冷媒によって冷却された冷却用媒体が吸熱器にて冷却対象から吸熱する。これにより、冷却対象が例えば車載電池や電気部品である場合は、冷却用媒体によって車載電池や電気部品を冷却することができる。
【0016】
また、第1蒸発器にて冷媒で内気から吸熱を行うことで、冷媒によって冷却された内気を車室内の冷房に供することができる。
【0017】
そして、この車両用熱マネジメントシステムでは、第1圧縮機で圧縮された冷媒を第2圧縮機でさらに圧縮すれば、冷媒回路における冷媒の圧縮効率を高めることができ、内気や車載電池等に対する加熱・冷却能力を高めることができる。
【0018】
したがって、本発明の車両用熱マネジメントシステムによれば、加熱対象の加熱、あるいは冷却対象の冷却をすることができ、しかもその加熱能力や冷却能力を高めることができる。
【0019】
第2流路と第3流路とがバイパス流路により接続され、バイパス流路には第1開閉弁が設けられていることが好ましい。
【0020】
この場合、第1開閉弁が開放されれば、第1蒸発器から流出する冷媒を第1圧縮機に導入したり、第2圧縮機に導入したりすることができるとともに、第2蒸発器から流出する冷媒を第1圧縮機に導入したり、第2圧縮機に導入したりすることができる。一方、第1開閉弁が閉鎖されれば、バイパス流路が無い場合と同様、第1蒸発器から流出する冷媒は第2圧縮機に導入され、第2蒸発器から流出する冷媒は第1圧縮機に導入される。
【0021】
この車両用熱マネジメントシステムは、制御装置をさらに備えることが好ましい。そして、冷媒回路は、制御装置の制御により、第1モード、第2モード、第3モード、第4モード及び第5モードで作動することが好ましい。
【0022】
第1モードでは、第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する。第2モードでは、第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が第1圧縮機及び第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する。第3モードでは、第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する。第4モードでは、第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が第1圧縮機及び第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する。第5モードでは、第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する。
【0023】
第2流路に第2開閉弁が設けられ、第2開閉弁は、第2流路とバイパス流路との接続部よりも冷媒流れの下流側に配置されていることが好ましい。そして、冷媒回路は、制御装置の制御により、第6モードで作動することが好ましい。
【0024】
第6モードでは、第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が第1圧縮機及び第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が第1圧縮機及び第2圧縮機で圧縮された後、凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する。
【0025】
凝縮器は、冷媒と加熱用媒体とのとの間で熱交換が行われる水冷コンデンサであることが好ましい。
【0026】
この場合、水冷コンデンサにて冷媒が加熱用媒体に放熱することで、加熱用媒体が加熱される。加熱用媒体回路では、冷媒で加熱された加熱用媒体によって、加熱対象である内気、車載電池や電気部品等を加熱することができる。
【0027】
第2蒸発器は、冷媒と冷却用媒体との間で熱交換が行なわれるチラーであることが好ましい。
【0028】
この場合、チラーにて冷媒が冷却用媒体から吸熱することで、冷却用媒体が冷却される。冷却用媒体回路では、冷媒で冷却された冷却用媒体によって、冷却対象である車載電池や電気部品等を冷却することができる。
【0029】
第1圧縮機は速度型であり、第2圧縮機は容積型であることが好ましい。
【0030】
この場合、外気温が極低温で、冷媒回路の冷媒の温度が低くて低密度であるときでも、速度型の圧縮機により大流量の冷媒を冷媒回路に循環させて、暖房能力や暖機能力を上げることができる。
【0031】
第1圧縮機は速度型であり、第2圧縮機が容積型である場合、第1流路に逆止弁が設けられ、逆止弁は、第1流路と第2流路との接続部よりも冷媒流れの上流側に配置されていることが好ましい。
【0032】
この場合、速度型の圧縮機に冷媒が逆流することを逆止弁で防止することができる。
【0033】
第1圧縮機は速度型であり、第2圧縮機が容積型である場合、第2圧縮機の冷媒吐出側には、第2圧縮機で圧縮された冷媒から潤滑油を分離して第2圧縮機の冷媒吸入側に戻す油分離器が設けられていることが好ましい。
【0034】
この場合、潤滑油が速度型の圧縮機に流入することを抑えつつ、容積型の圧縮機の圧縮部等に潤滑油を供給することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の車両用熱マネジメントシステムによれば、加熱対象の加熱、あるいは冷却対象の冷却をすることができ、しかもその加熱能力や冷却能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムを概念的に示すシステム構成図である。
図2図2は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムの全体構成を模式的に示すシステム構成図である。
図3図3は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内冷房モードを説明するシステム構成図である。
図4図4は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内暖房モードを説明するシステム構成図である。
図5図5は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、電池冷却モードを説明するシステム構成図である。
図6図6は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、電池暖機モードを説明するシステム構成図である。
図7図7は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内暖房(極低温時)モードを説明するシステム構成図である。
図8図8は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内暖房(極々低温時)モードを説明するシステム構成図である。
図9図9は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、電池暖機モード(極低温時)を説明するシステム構成図である。
図10図10は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、電池暖機(極々低温時)モードを説明するシステム構成図である。
図11図11は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内冷房電池冷却モードを説明するシステム構成図である。
図12図12は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内冷房電池冷却(強)モードを説明するシステム構成図である。
図13図13は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内暖房電池暖機モードを説明するシステム構成図である。
図14図14は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内暖房電池暖機(極低温時)モードを説明するシステム構成図である。
図15図15は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内暖房電池暖機(極々低温時)モードを説明するシステム構成図である。
図16図16は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内冷房電池冷却(強+冷却対象機器冷却)モードを説明するシステム構成図である。
図17図17は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内除湿暖房(極低温時・暖房要求大)モードを説明するシステム構成図である。
図18図18は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、車室内除湿暖房電池暖機(極低温時・暖房要求大)モードを説明するシステム構成図である。
図19図19は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、冷却対象機器ウォームアップモードを説明するシステム構成図である。
図20図20は、実施例2の車両用熱マネジメントシステムの全体構成を模式的に示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。実施例1、2の車両用熱マネジメントシステムは、バッテリー式の電気自動車に搭載される。実施例1、2の車両用熱マネジメントシステムは、車室内の空調を行うとともに、車載電池及び冷却対象機器の温度調整を行う。
【0038】
車載電池は、走行用モータに電力を供給するための蓄電装置を構成する。車載電池は複数の電池セルを有し、各電池セルはリチウムイオン二次電池等の二次電池よりなる。冷却対象機器は、例えば、走行用モータとしてのモータジェネレータや、モータ制御用のインバータ及び昇圧用のDC-DCコンバータを含むパワーコントロールユニット(PCU)、充電器等の電気部品やその他の車載発熱体のことである。
【0039】
(実施例1)
図1図19に示す実施例1の車両用熱マネジメントシステムは、図1にシステム構成図を概念的に示すように、冷媒回路1と、加熱用媒体回路2と、冷却用媒体回路3と、制御装置9とを備えている。
【0040】
冷媒回路1は、冷媒Rを圧縮する第1圧縮機10A及び第2圧縮機10Bと、凝縮器5Cと、第1膨張弁11と、第2膨張弁12と、第1蒸発器4Eと、第2蒸発器6Eとを有している。第1圧縮機10A及び第2圧縮機10Bは、本発明における「圧縮機の一例である。」
【0041】
冷媒回路1は、各構成部品を接続する流路として、第1環状流路14と、中間流路15とを有している。
【0042】
第1環状流路14においては、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B、凝縮器5C、第2膨張弁12、第2蒸発器6Eがこの順で接続、配置されている。第1環状流路14は、その一部として第1流路14Aと第3流路14Bとを有している。第1流路14Aは、第1圧縮機10Aと第2圧縮機10Bとを接続する。第3流路14Bは、第2蒸発器6Eと第1圧縮機10Aとを接続する。
【0043】
中間流路15においては、第1膨張弁11、第1蒸発器4Eがこの順で接続、配置されている。中間流路15は、第1環状流路14における凝縮器5Cと第2膨張弁12との間の接続部14aと、第1環状流路14における第1圧縮機10Aと第2圧縮機10Bとの間の接続部14bとに接続されている。これにより、第1膨張弁11と第2膨張弁12は、凝縮器5Cに対して、互いに並列に配置されている。中間流路15は、その一部として第2流路15Aを有している、第2流路15Aは、第1蒸発器4Eの出口と第1流路14Aとを接続する。第1膨張弁11及び第2膨張弁12は、本発明における「膨張弁」の一例である。
【0044】
第1圧縮機10Aは、第2蒸発器6Eから導入される冷媒Rを圧縮する。第2圧縮機10Bは、第1圧縮機10Aで圧縮された冷媒Rが導入され、その冷媒Rを圧縮する。凝縮器5Cは、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rが導入され、冷媒Rで加熱用媒体Hに放熱を行う。第1膨張弁11及び第2膨張弁12は、凝縮器5Cを経由した冷媒Rを膨張させる。第1蒸発器4Eは、第1膨張弁11で膨張された冷媒Rが導入され、冷媒Rで内気から吸熱を行う。第2蒸発器6Eは、第2膨張弁12で膨張された冷媒Rが導入され、冷媒Rで冷却用媒体Lから吸熱を行う。
【0045】
加熱用媒体回路2は、加熱用媒体Hを循環させる加熱用媒体ポンプ16と、加熱用媒体Hで加熱対象に放熱を行う放熱器61とを有している。この加熱対象としては、例えば、車室内に供給される内気や車載電池である。
【0046】
冷却用媒体回路3は、冷却用媒体Lを循環させる冷却用媒体ポンプ36と、冷却用媒体Lで冷却対象から吸熱を行う吸熱器62とを有している。冷却対象としては、例えば、車載電池や電気部品である。
【0047】
この熱マネジメントシステムでは、加熱用媒体回路2又は冷却用媒体回路3の一方を省いてもよい。加熱用媒体回路2を省く場合は、凝縮器5Cにて冷媒Rが外気に放熱する。この場合は、冷却用媒体回路3において、吸熱器62にて冷却用媒体Lが車載電池や電気部品等を冷却する。冷却用媒体回路3を省く場合は、第2蒸発器6Eにて冷媒Rが外気から吸熱する。この場合は、加熱用媒体回路2において、放熱器61にて加熱用媒体Hが内気や車載電池等を加熱する。
【0048】
以下、この熱マネジメントシステムを利用して、車室内の冷房・暖房と、車載電池の冷却・暖機とを行う場合について、具体的に説明する。
【0049】
この熱マネジメントシステムは、図2にシステム構成図を模式的に示すように、冷媒回路1と、加熱用媒体回路2と、冷却用媒体回路3と、エバポレータ4と、水冷コンデンサ5と、チラー6と、電池熱交換器7と、ラジエータ8と、制御装置9とを備えている。エバポレータ4は、本発明における「第1蒸発器」の一例である。水冷コンデンサ5は、本発明における「凝縮器」の一例である。チラー6は、本発明における「第2蒸発器」の一例である。電池熱交換器7は、本発明における「放熱器」の一例であり、本発明における「吸熱器」の一例でもある。ラジエータ8は、本発明における「放熱器」の一例であり、本発明における「吸熱器」の一例でもある。
【0050】
ここに、図2図19において、冷媒回路1及び加熱媒体用回路2の各構成部品を接続する流路(配管)を実線で示し、冷却用媒体回路3の各構成部品を接続する流路(配管)を一点鎖線で示す。運転モードを説明する図3図19においては、冷媒回路1で冷媒が流れていない流路(配管)を破線で示し、加熱用媒体回路2で加熱用媒体が流れていない流路(配管)を破線で示し、冷却用媒体回路3で冷却用媒体が流れていない流路(配管)を破線で示し、また、熱の流れを太い二点鎖線の矢印で示す。なお、図3図19においては、制御装置9の図示を省略する。
【0051】
水冷コンデンサ5は、冷媒回路1及び加熱用媒体回路2の双方に組み込まれて、冷媒回路1と加熱用媒体回路2とを連結している。チラー6は、冷媒回路1及び冷却用媒体回路3の双方に組み込まれて、冷媒回路1と冷却用媒体回路3とを連結している。
【0052】
冷媒回路1は、回路内を循環する冷媒Rと車室内へ送られる室内空気である内気との熱交換により、車室内の冷房を行う。また、冷媒回路1は、回路内を循環する冷媒Rと加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hとの熱交換により、冷媒Rで加熱用媒体Hに放熱を行い、加熱用媒体Hを加熱したり、回路内を循環する冷媒Rと冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lとの熱交換により、冷媒Rで冷却用媒体Lから吸熱を行い、冷却用媒体Lを冷却したりする。加熱用媒体H及び冷却用媒体Lは、エチレングリコールやプロピレングリコールを主成分とするLLC(ロングライフクーラント)である。
【0053】
冷媒回路1は、第1圧縮機10Aと、逆止弁64と、第2圧縮機10Bと、油分離器65と、水冷コンデンサ5と、第1膨張弁11と、第2膨張弁12と、エバポレータ4と、チラー6と、蒸発圧力調整弁(EPR)13とを有している。また、冷媒回路1は、各構成部品を接続する流路として、第1環状流路14と、中間流路15と、バイパス流路63を有している。
【0054】
第1環状流路14においては、第1圧縮機10A、逆止弁64、第2圧縮機10B、油分離器65、水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6がこの順で接続、配置されている。中間流路15においては、第1膨張弁11、エバポレータ4、蒸発圧力調整弁13がこの順で接続、配置されている。第1環状流路14は、その一部として第1流路14Aと第3流路14Bとを有している。第1流路14Aは、第1圧縮機10Aと第2圧縮機10Bとを接続する。第3流路14Bは、チラー6と第1圧縮機10Aとを接続する。
【0055】
中間流路15は、第1環状流路14における水冷コンデンサ5と第2膨張弁12との間の接続部14aと、第1環状流路14における逆止弁64と第2圧縮機10Bとの間の接続部14bとに接続されている。これにより、第1膨張弁11と第2膨張弁12は、水冷コンデンサ5に対して、互いに並列に配置されている。中間流路15は、その一部として第2流路15Aを有している。第2流路15Aは、エバポレータ4の出口と第1流路14Aとを接続する。
【0056】
バイパス流路63は、第2流路15Aと第3流路14Bとを接続している。バイパス流路63には、第1開閉弁66が設けられている。第2流路15Aには、第2開閉弁67が設けられている。第2開閉弁67は、第2流路15Aとバイパス流路63との接続部15aよりも冷媒流れの下流側に配置されている。第1開閉弁66及び第2開閉弁67は、制御装置9により開閉制御される。
【0057】
第1圧縮機10A及び第2圧縮機10Bは、制御装置9により制御され、冷媒Rを圧縮して第1循環流路14及び中間流路15に冷媒Rを循環させる。冷媒回路1における冷媒Rの循環方向は図1の反時計回り方向である。すなわち、第1圧縮機10Aで圧縮された冷媒Rは逆止弁64に向かい、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rは油分離器65に向かう。第1圧縮機10Aは速度型であり、具体的には遠心型圧縮機である。第2圧縮機10Bは容積型であり、具体的にはスクロール型圧縮機である。
【0058】
逆止弁64は、第1流路14Aに設けられている。逆止弁64は、第1流路14Aと第2流路15Aとの接続部14bよりも冷媒流れの上流側に配置されている。
【0059】
油分離器65は、第2圧縮機10Bの冷媒吐出側に、具体的には第1環状流路14における第2圧縮機10Bの出口の近傍に配置されている。油分離器65は、第2圧縮機10Bから吐出された冷媒Rから潤滑油を分離して、図示しない戻し流路を介して第2圧縮機10Bの冷媒吸入側に、具体的には第2圧縮機10B内の吸入通路に戻す。
【0060】
第1膨張弁11及び第2膨張弁12はいずれも、弁開度が0%~100%の範囲で調整可能な電子式の膨張弁である。第1膨張弁11及び第2膨張弁12の弁開度は制御装置9により制御される。
【0061】
エバポレータ4は、図示しない送風ファンによって車室内に送られる内気と冷媒Rとを熱交換させる。すなわち、エバポレータ4にて、冷媒Rで内気から吸熱を行う。冷媒Rとの熱交換によって冷却された内気は、図示しない送風ファンによって車室内に送られて車室内の冷房に供される。第1膨張弁11の弁開度が0%のときは、エバポレータ4には冷媒Rが導入されず、エバポレータ4の機能は停止する。
【0062】
蒸発圧力調整弁13は、エバポレータ4内の冷媒の蒸発圧力が設定値よりも下がるのを防止する。
【0063】
チラー6は、冷却用媒体回路3を循環する冷却用媒体Lと冷媒Rとを熱交換させる。すなわち、チラー6にて、冷媒Rで冷却用媒体Lから吸熱を行う。冷媒Rとの熱交換によって冷却された冷却用媒体Lは、冷却用媒体回路3内に配置された電池熱交換器7にて車載電池を冷却する。第2膨張弁12の弁開度が0%のときは、チラー6には冷媒Rが導入されず、チラー6の機能は停止する。
【0064】
加熱用媒体回路2は、加熱用媒体ポンプ16と、水冷コンデンサ5と、ヒータコア17と、電池熱交換器7と、ラジエータ8と、冷却器18とを有している。また、加熱用媒体回路2は、各構成部品を接続する流路として、第2環状流路19と、第4流路20と、第5流路21と、第6流路22と、第7流路23と、第8流路24と、第9流路25、第10流路26とを有している。
【0065】
第4流路20と第5流路21との接続部には第1三方弁27が配置され、第5流路21と第6流路22との接続部には第2三方弁28が配置されている。また、第2環状流路19と第4流路20との接続部19aと、第2環状流路19と第6流路22との接続部19bとの間における第2環状流路19には、第3開閉弁29が配置されている。第5流路21には、電池熱交換器7と、第4開閉弁30とがこの順で配置されている。なお、第5流路21における電池熱交換器7と第4開閉弁30との配置順はこの逆であってもよい。
【0066】
第7流路23と第8流路24との接続部には第3三方弁31が配置され、第8流路24と第9流路25との接続部には第4三方弁32が配置されている。また、第2環状流路19と第7流路23との接続部19cと、第2環状流路19と第9流路25との接続部19dとの間における第2環状流路19には、第5開閉弁33が配置されている。第8流路24には、第6開閉弁34と、ラジエータ8とがこの順で配置されている。なお、第8流路24における第6開閉弁34とラジエータ8との配置順はこの逆であってもよい。
【0067】
第10流路26は、第2環状流路19における加熱用媒体ポンプ16と水冷コンデンサ5との間の接続部と、第2環状流路19における水冷コンデンサ5とヒータコア17との間の接続部とに接続されている。第10流路26には、冷却器18が配置されている。これにより、水冷コンデンサ5と冷却器18とが並列に設けられている。第2環状流路19における加熱用媒体ポンプ16と水冷コンデンサ5との間の接続部には、三方流量調整弁35が配置されている。
【0068】
三方流量調整弁35は、制御装置9により制御され、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体Hを、水冷コンデンサ5又は冷却器18の一方に選択的に流通させたり、水冷コンデンサ5及び冷却器18の双方に流量を調整しつつ流通させたりする。
【0069】
加熱用媒体ポンプ16は、制御装置9により制御され、第2環状流路19及び第4~第10流路20~26に加熱用媒体Hを循環させる。加熱用媒体回路2における加熱用媒体Hの循環方向は図1の時計回り方向である。
【0070】
水冷コンデンサ5は、冷媒回路1を循環する冷媒Rと、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体Hとを熱交換させる。
【0071】
ヒータコア17は、ヒータコア17の近傍に設けられヒータコア17に内気を送風する図示しない送風ファンによって車室内に送られる内気と加熱用媒体Hとを熱交換させる。すなわち、ヒータコア17にて、加熱用媒体Hで内気に放熱を行う。ヒータコア17は、本発明における「放熱器」の一例である。ヒータコア17にて加熱用媒体Hが放熱する内気は、本発明における「加熱対象」の一例である。加熱用媒体Hとの熱交換によって加熱された内気は、図示しない送風ファンによって車室内に送られて車室内の暖房に供される。図示しない送風ファンを停止したり、ヒータコア17の近傍に設けられヒータコア17への送風を調整するダンパ17Aの作動によりヒータコア17への送風を停止したりすることで、ヒータコア17の機能は停止する。
【0072】
電池熱交換器7は、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体Hと車載電池とを熱交換させる。第5流路21は車載電池に隣接された温調用流路に接続されている。電池熱交換器7内において、この温調用流路を流通する加熱用媒体Hと車載電池とが熱交換することで、加熱用媒体Hから車載電池への放熱が行われ、車載電池が暖機される。また、電池熱交換器7は冷却用媒体回路3を循環する冷却用媒体Lと車載電池とを熱交換させる。電池熱交換器7内において、温調用流路を流通する冷却用媒体Lと車載電池とが熱交換することで、冷却用媒体Lによる車載電池からの吸熱が行われ、車載電池が冷却される。車載電池は、本発明における「加熱対象」の一例であり、本発明における「冷却対象」の一例でもある。
【0073】
ラジエータ8は、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体Hと外気とを熱交換させる。ラジエータ8における加熱用媒体Hと外気との熱交換により、加熱用媒体Hで外気への放熱を行う。また、ラジエータ8は、冷却用媒体回路3を循環する冷却用媒体Lと外気とを熱交換させる。ラジエータ8における冷却用媒体Lと外気との熱交換により、冷却用媒体Lで外気からの吸熱を行う。ラジエータ8の近傍には、ラジエータ8に外気を送風する図示しない冷却ファンと、ラジエータ8への送風を調整するダンパ8Aとが設けられている。図示しない冷却ファンを停止したり、ダンパ8Aの作動によりラジエータ8への送風を停止したりすることで、ラジエータ8の機能は停止する。
【0074】
冷却器18は、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体Hと冷却対象機器とを熱交換させる。第10流路26は冷却対象機器に隣接された温調用流路に接続されている。冷却器18内において、この温調用流路を流通する加熱用媒体Hと冷却対象機器とが熱交換することで、加熱用媒体Hによる冷却対象機器からの吸熱が行われ、冷却対象機器が冷却される。
【0075】
冷却用媒体回路3は、冷却用媒体ポンプ36と、ラジエータ8と、電池熱交換器7と、チラー6とを有している。また、冷却用媒体回路3は、各構成部品を接続する流路として、第3環状流路37と、第4流路20と、第5流路21と、第6流路22と、第7流路23と、第8流路24と、第9流路25とを有している。
【0076】
第3環状流路37と第7流路23との接続部37aと、第3環状流路37と第9流路25との接続部37bとの間における第3環状流路37には、第7開閉弁38が配置されている。また、第3環状流路37と第4流路20との接続部37cと、第3環状流路37と第6流路22との接続部37dとの間における第3環状流路37には、第8開閉弁39が配置されている。
【0077】
冷却用媒体ポンプ36は、制御装置9により制御され、第3環状流路37及び第4~第9流路20~25に冷却用媒体Lを循環させる。冷却用媒体回路3における冷却用媒体Lの循環方向は図1の反時計回り方向である。
【0078】
第1三方弁27、第2三方弁28、第3三方弁31、第4三方弁32、三方流量調整弁35、第1開閉弁66、第2開閉弁67、第3開閉弁29、第4開閉弁30、第5開閉弁33、第6開閉弁34、第7開閉弁38、第8開閉弁39は、制御装置9により制御される。第1三方弁27、第2三方弁28、第3三方弁31、第4三方弁32、第3開閉弁29、第4開閉弁30、第5開閉弁33、第6開閉弁34、第7開閉弁38及び第8開閉弁39のことを、以下の説明において弁群と称する。
【0079】
制御装置9は、電子制御装置よりなり、冷媒回路1、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3の作動を制御する。詳しくは、制御装置9は、冷媒回路1において、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B、第1膨張弁11、第2膨張弁12、第1開閉弁66及び第2開閉弁67の作動を制御する。制御装置9は、加熱用媒体回路2において、加熱用媒体ポンプ16、ヒータコア17、 第1三方弁27、第2三方弁28、第3三方弁31、第4三方弁32、三方流量調整弁35、第3開閉弁29、第4開閉弁30、第5開閉弁33、第6開閉弁34及びラジエータ8の作動を制御する。制御装置9は、冷却用媒体回路3において、冷却用媒体ポンプ36、第1三方弁27、第2三方弁28、第3三方弁31、第4三方弁32、第4開閉弁30、第6開閉弁34、第7開閉弁38、第8開閉弁39及びラジエータ8の作動を制御する。
【0080】
ヒータコア17及びラジエータ8は、制御装置9により、以下のように切替制御される。
【0081】
すなわち、加熱用媒体回路2におけるヒータコア17は、図示しない送風ファンが作動するとともにダンパ17Aが開放されることで、ヒータコア17に内気が送風される作動状態と、図示しない送風ファンが停止するか、あるいはダンパ17Aが閉鎖されることで、ヒータコア17に内気が送風されない停止状態とに切替制御される。ヒータコア17の作動状態では、加熱用媒体Hと内気とが熱交換され、加熱用媒体Hが内気に放熱する。
【0082】
加熱用媒体回路2におけるラジエータ8は、図示しない冷却ファンが作動するとともにダンパ8Aが開放されることで、ラジエータ8に外気が送風される作動状態と、図示しない冷却ファンが停止するか、あるいはダンパ8Aが閉鎖されることで、ラジエータ8に外気が送風されない停止状態とに切替制御される。加熱用媒体回路2におけるラジエータ8の作動状態では、加熱用媒体Hと外気とが熱交換され、加熱用媒体Hが外気に放熱する。
【0083】
冷却用媒体回路3におけるラジエータ8は、図示しない冷却ファンが作動するとともにダンパ8Aが開放されることで、ラジエータ8に外気が送風される作動状態と、図示しない冷却ファンが停止するか、あるいはダンパ8Aが閉鎖されることで、ラジエータ8に外気が送風されない停止状態とに切替制御される。冷却用媒体回路3におけるラジエータ8の作動状態では、冷却用媒体Lと外気とが熱交換され、冷却用媒体Lが外気から吸熱する。
【0084】
冷媒回路1における冷媒Rの流れは、制御装置9により第1開閉弁66及び第2開閉弁67の開閉制御によって、以下の第1~第6モードで作動する。
【0085】
図3に示す第1モードでは、エバポレータ4にて内気から吸熱した冷媒Rが第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱する。
【0086】
図7、8、9、10、14、15に示す第2モードでは、チラー6にて冷却用媒体Lから吸熱した冷媒Rが第1圧縮機10A及び第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱する。
【0087】
図4、5、6、13に示す第3モードでは、チラー6にて冷却用媒体Lから吸熱した冷媒Rが第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱する。
【0088】
図17、18に示す第4モードでは、エバポレータ4にて内気から吸熱した冷媒Rが第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱するとともに、チラー6にて冷却用媒体Lから吸熱した冷媒Rが第1圧縮機10A及び第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱する。
【0089】
図11に示す第5モードでは、エバポレータ4にて内気から吸熱した冷媒Rが第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱するとともに、チラー6にて冷却用媒体Lから吸熱した冷媒Rが第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱する。
【0090】
図12、16に示す第6モードでは、エバポレータ4にて内気から吸熱した冷媒Rが第1圧縮機10A及び第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱するとともに、チラー6にて冷却用媒体Lから吸熱した冷媒Rが第1圧縮機10A及び第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5にて加熱用媒体Hに放熱する。
【0091】
加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は、制御装置9の制御により、以下の第1~第5接続状態とされる。
【0092】
図3に示すように第1接続状態では、第3開閉弁29及び第6開閉弁34が開状態とされ、第4開閉弁30、第5開閉弁33、第7開閉弁38及び第8開閉弁39が閉状態とされる。また、第3三方弁31及び第4三方弁32は、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lではなく、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hがラジエータ8を流れる状態とされる。これにより、加熱用媒体回路2においては、加熱用媒体Hが電池熱交換器7を流れず、ラジエータ8を流れる。なお、このとき、冷却用媒体回路3においては、冷却用媒体Lが電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れず、第7開閉弁38及び第8開閉弁39の開閉はどちらでもよい。
【0093】
図4、7、8、17に示すように第2接続状態では、第3開閉弁29、第5開閉弁33、第6開閉弁34及び第8開閉弁39が開状態とされ、第4開閉弁30及び第7開閉弁38が閉状態とされる。また、第1三方弁27及び第2三方弁28は、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lではなく、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hが電池熱交換器7を流れる状態とされる。また、第3三方弁31及び第4三方弁32は、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hではなく、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lがラジエータ8を流れる状態とされる。これにより、加熱用媒体回路2においては、加熱用媒体Hが電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れない。一方、冷却用媒体回路3においては、冷却用媒体Lがラジエータ8を流れるが、電池熱交換器7を流れない。なお、第2接続状態では、第1三方弁27及び第2三方弁28は、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hではなく、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lが電池熱交換器7を流れる状態とされてもよい。
【0094】
図5、11、12、16に示すように第3接続状態では、第3開閉弁29、第4開閉弁30、第6開閉弁34及び第7開閉弁38が開状態とされ、第5開閉弁33及び第8開閉弁39が閉状態とされる。また、第1三方弁27及び第2三方弁28は、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hではなく、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lが電池熱交換器7を流れる状態とされる。また、第3三方弁31及び第4三方弁32は、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lではなく、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hがラジエータ8を流れる状態とされる。これにより、加熱用媒体回路2においては、加熱用媒体Hが電池熱交換器7を流れず、ラジエータ8を流れる。一方、冷却用媒体回路3においては、冷却用媒体Lがラジエータ8を流れず、電池熱交換器7を流れる。
【0095】
図6、9、10、13、14、15、18に示すように第4接続状態では、第4開閉弁30、第5開閉弁33、第6開閉弁34及び第8開閉弁39が開状態とされ、第3開閉弁29及び第7開閉弁38が閉状態とされる。また、第1三方弁27及び第2三方弁28は、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lではなく、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hが電池熱交換器7を流れる状態とされる。また、第3三方弁31及び第4三方弁32は、加熱用媒体回路2の加熱用媒体Hではなく、冷却用媒体回路3の冷却用媒体Lがラジエータ8を流れる状態とされる。これにより、加熱用媒体回路2においては、加熱用媒体Hが電池熱交換器7を流れるが、ラジエータ8を流れない。一方、冷却用媒体回路3においては、冷却用媒体Lがラジエータ8を流れ、電池熱交換器7を流れない。
【0096】
図19に示すように第5接続状態では、第3開閉弁29及び第5開閉弁33が開状態とされ、第4開閉弁30、第6開閉弁34、第7開閉弁38及び第8開閉弁39が閉状態とされる。これにより、加熱用媒体回路2においては、加熱用媒体Hが電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れない。なお、このとき、冷却用媒体回路3においては、冷却用媒体Lが電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れず、第7開閉弁38及び第8開閉弁39の開閉はどちらでもよい。
【0097】
こうして、制御装置9は、電池熱交換器7及びラジエータ8に対する加熱用媒体H及び冷却用媒体Lの流通を制御する。すなわち、制御装置9は、電池熱交換器7及びラジエータ8に対して、加熱用媒体H又は冷却用媒体Lの一方を選択的に流通させたり、どちらも流通させないようにしたりする。
【0098】
上記構成を有する実施例1の車両用熱マネジメントシステムは、制御装置9の制御により、例えば、以下に説明するように、車室内冷房モード、車室内暖房モード、電池冷却モード、電池暖機モード、車室内暖房(極低温時)モード、車室内暖房(極々低温時)モード、電池暖機(極低温時)モード、電池暖機(極々低温時)モード、車室内冷房電池冷却モード、車室内冷房電池冷却(強)モード、車室内暖房電池暖機モード、車室内暖房電池暖機(極低温時)モード、車室内暖房電池暖機(極々低温時)モード、車室内冷房電池冷却(強+冷却対象機器冷却)モード、車室内除湿暖房(極低温時・暖房要求大)モード、車室内除湿暖房電池暖機(極低温時・暖房要求大)モード、冷却対象機器ウォームアップモードの各運転モードで作動する。極低温とは、例えば氷点下未満の所定範囲の温度のことであり、極々低温とは、極低温より更に低い温度のことである。
【0099】
(車室内冷房モード)
図3に示すように、車室内冷房モードでは、冷媒回路1において、第2圧縮機10B、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が作動状態とされ、第1圧縮機10A及び第2膨張弁12が停止状態とされ、第1開閉弁66が閉状態とされ、第2開閉弁67が開状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17及び冷却用媒体ポンプ36が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は第1接続状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが冷却器18が配置された第10流路26ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0100】
これにより、冷媒回路1では、第1モードで作動する。すなわち、第2圧縮機10Bで圧縮されて吐出された冷媒Rは、水冷コンデンサ5、第1膨張弁11、エバポレータ4、蒸発圧力調整弁13をこの順で流通する。この際、逆止弁64によって、冷媒Rが第1圧縮機10Aに逆流することが防止される。第2圧縮機10Bから吐出された冷媒Rは、水冷コンデンサ5を経由して第1膨張弁11にて膨張された後、エバポレータ4に導入される。そして、エバポレータ4にて冷媒Rと内気との熱交換により、内気が冷媒Rに放熱する。その結果、内気が冷却される。冷媒Rによって冷却された内気は車室内の冷房に供される。エバポレータ4から流出した冷媒Rは第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0101】
冷媒回路1を冷媒Rが循環する際、第2圧縮機10Bの冷媒吐出側に油分離器65が設けられており、油分離器65で分離された潤滑油は図示しない戻し流路を介して第2圧縮機10Bの冷媒吸入側に戻される。このため、容積型の第2圧縮機10B内の潤滑油が速度型の第1圧縮機10Aに流入することを抑えることができる。このことは、以下の各モードでも同様である。
【0102】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが、水冷コンデンサ5、停止状態のヒータコア17、作動状態のラジエータ8をこの順で流通する。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体Hとの間で熱交換が行われ、冷媒Rが加熱用媒体Hに放熱する。その結果、冷媒Rが冷却される。冷媒Rにより加熱された加熱用媒体Hは、ラジエータ8にて外気に放熱する。
【0103】
こうして、冷媒回路1の冷却能力に応じて車室内を冷房することができる。
【0104】
(車室内暖房モード)
図4に示すように、車室内暖房モードでは、冷媒回路1において、第2圧縮機10B、第2膨張弁12が作動状態とされ、第1圧縮機10A、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が開状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36、ヒータコア17及びラジエータ8が作動状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は第2接続状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが冷却器18が配置された第10流路26ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0105】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ36で圧送された冷却用媒体Lが、作動状態のラジエータ8、チラー6をこの順で流通する。ラジエータ8では、冷却用媒体Lと外気との熱交換により、冷却用媒体Lが外気から吸熱する。外気によって加熱された冷却用媒体Lはチラー6に導入される。
【0106】
冷媒回路1では、第3モードで作動する。すなわち、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体Lと冷媒Rとの熱交換により、冷媒Rが冷却用媒体Lから吸熱する。冷却用媒体Lによって加熱された冷媒Rは、第2圧縮機10Bで圧縮されてさらに加熱された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0107】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが、水冷コンデンサ5、作動状態のヒータコア17をこの順で流通する。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体Hとの熱交換により、加熱用媒体Hが冷媒Rから吸熱する。その結果、加熱用媒体Hが加熱される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体Hは、ヒータコア17に導入される。ヒータコア17では、加熱用媒体Hと内気との熱交換により、内気が加熱用媒体Hから吸熱する。その結果、内気が加熱されて、車室内の暖房に供される。
【0108】
こうして、空気熱を利用しつつ、冷媒回路1の暖房能力に応じて車室内を暖房することができる。
【0109】
(電池冷却モード)
図5に示すように、電池冷却モードでは、冷媒回路1において、第2圧縮機10B及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1圧縮機10A、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が開状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は第3接続状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが冷却器18が配置された第10流路26ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0110】
これにより、冷却用媒体回路3では、第3モードで作動する。すなわち、冷却用媒体ポンプ36で圧送された冷却用媒体Lが、電池熱交換器7、チラー6をこの順で流通する。電池熱交換器7では、冷却用媒体Lと車載電池との熱交換により、車載電池が冷却用媒体Lに放熱する。その結果、車載電池が冷却される。車載電池によって加熱された冷却用媒体Lはチラー6に導入される。
【0111】
冷媒回路1では、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体Lと冷媒Rとの熱交換により、冷却用媒体Lが冷媒Rに放熱する。その結果、冷却用媒体Lが冷却される。冷却用媒体Lによって加熱された冷媒Rは、チラー6から第2圧縮機10Bに導入され、第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0112】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが、水冷コンデンサ5、停止状態のヒータコア17、作動状態のラジエータ8をこの順で流通する。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体Hとの熱交換により、冷媒Rが加熱用媒体Hに放熱する。その結果、冷媒Rが冷却される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体Hは、作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、加熱用媒体Hと外気との熱交換により、加熱用媒体Hが外気に放熱する。その結果、加熱用媒体Hが冷却される。
【0113】
こうして、冷媒回路1の冷却能力に応じて車載電池を冷却することができる。
【0114】
(電池暖機モード)
図6に示すように、電池暖機モードでは、冷媒回路1において、第2圧縮機10B及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1圧縮機10A、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が開状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は第4接続状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが冷却器18が配置された第10流路26ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0115】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ36で圧送された冷却用媒体Lが、作動状態のラジエータ8、チラー6をこの順で流通する。ラジエータ8では、冷却用媒体Lと外気との熱交換により、冷却用媒体Lが外気から吸熱する。その結果、冷却用媒体Lが加熱される。外気によって加熱された冷却用媒体Lはチラー6に導入される。
【0116】
冷媒回路1では、第3モードで作動する。すなわち、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体Lと冷媒Rとの熱交換により、冷媒Rが冷却用媒体Lから吸熱する。その結果、冷媒Rが加熱される。冷却用媒体Lによって加熱された冷媒Rは、チラー6から第2圧縮機10Bに導入され、第2圧縮機10Bで圧縮されてさらに加熱された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0117】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが、水冷コンデンサ5、停止状態のヒータコア17、電池熱交換器7をこの順で流通する。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体Hとの熱交換により、加熱用媒体Hが冷媒Rから吸熱する。その結果、加熱用媒体Hが加熱される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体Hは、電池熱交換器7に導入される。電池熱交換器7では、加熱用媒体Hと車載電池との熱交換により、車載電池が加熱用媒体Hから吸熱する。その結果、車載電池が加熱される。
【0118】
こうして、空気熱を利用しつつ、冷媒回路1の暖機能力に応じて車載電池を暖機することができる。
【0119】
(車室内暖房(極低温時)モード)
図7に示すように、車室内暖房(極低温時)モードでは、冷媒回路1において、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が閉状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36、ヒータコア17及びラジエータ8が作動状態とされる。
【0120】
これにより、冷媒回路1では、第2モードで作動する。すなわち、チラー6にて冷却用媒体Lで加熱された冷媒Rは第1圧縮機10Aに導入される。そして、第1圧縮機10Aで圧縮された冷媒Rが第2圧縮機10Bでさらに圧縮される。このため、冷媒回路1における冷媒Rの圧縮効率が高まるので、暖房能力が高まる。
【0121】
しかも、第1圧縮機10Aが速度型であるため、第1圧縮機10Aの大型化を避けつつ暖房能力を高めることができる。
【0122】
その他の構成及び作用は、図4に示す車室内暖房モードと同様である。
【0123】
(車室内暖房(極々低温時)モード)
図8に示すように、車室内暖房(極々低温時)モードでは、加熱用媒体回路2において、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5側を流れるとともに冷却器18が配置された第10流路26を流れる状態とされる。
【0124】
これにより、加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5、作動状態のヒータコア17をこの順で流通するとともに、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが冷却器18、作動状態のヒータコア17をこの順で流通する。冷却器18では、加熱用媒体Hと冷却対象機器としての走行用モータやPCU等の電気部品との熱交換により、加熱用媒体Hが冷却対象機器から吸熱する。その結果、加熱用媒体Hが加熱される。こうして走行用モータ等から吸熱した熱を利用することで、暖房能力が一層高まる。なお、冷媒回路1では、第2モードで作動する。また、冷却器18にて、加熱用媒体Hが冷却対象機器から吸熱することで、冷却対象機器が冷却される。
【0125】
その他の構成及び作用は、図7に示す車室内暖房(極低温時)モードと同様である。
【0126】
(電池暖機(極低温時)モード)
図9に示すように、電池暖機(極低温時)モードでは、図7に示す車室内暖房(極低温時)モードと同様、冷媒回路1において、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が閉状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。
【0127】
これにより、冷媒回路1では、第2モードで作動する。すなわち、チラー6にて冷却用媒体Lで加熱された冷媒Rは第1圧縮機10Aに導入される。そして、第1圧縮機10Aで圧縮された冷媒Rが第2圧縮機10Bでさらに圧縮される。このため、冷媒回路1における冷媒Rの圧縮効率が高まるので、暖機能力が高まる。
【0128】
しかも、第1圧縮機10Aが速度型であるため、第1圧縮機10Aの大型化を避けつつ暖機能力を高めることができる。
【0129】
その他の構成及び作用は、図6に示す電池暖機モードと同様である。
【0130】
(電池暖機(極々低温時)モード)
図10に示すように、電池暖機(極々低温時)モードでは、図8に示す車室内暖房(極々低温時)モードと同様、加熱用媒体回路2において、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5側を流れるとともに冷却器18が配置された第10流路26を流れる状態とされる。
【0131】
これにより、加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5、作動状態の電池熱交換器7をこの順で流通するとともに、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが冷却器18、作動状態の電池熱交換器7をこの順で流通する。冷却器18では、加熱用媒体Hと冷却対象機器としての走行用モータやPCU等の電気部品との熱交換により、加熱用媒体Hが冷却対象機器から吸熱する。その結果、加熱用媒体Hが加熱される。こうして走行用モータ等から吸熱した熱を利用することで、暖機能力が一層高まる。なお、冷媒回路1では、第2モードで作動する。
【0132】
その他の構成及び作用は、図9に示す電池暖機(極低温時)モードと同様である。
【0133】
(車室内冷房電池冷却モード)
図11に示すように、車室内冷房電池冷却モードでは、第2圧縮機10B、第1膨張弁11、第2膨張弁12及び蒸発圧力調整弁13が作動状態とされ、第1圧縮機10Aが停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が開状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は第3接続状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが冷却器18が配置された第10流路26ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0134】
その他の構成及び作用は、図5に示す電池冷却モードと同様である。
【0135】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ36で圧送された冷却用媒体Lが、電池熱交換器7、チラー6をこの順で流通する。電池熱交換器7では、冷却用媒体Lと車載電池との熱交換により、車載電池が冷却用媒体Lに放熱する。その結果、車載電池が冷却される。車載電池によって加熱された冷却用媒体Lはチラー6に導入される。
【0136】
冷媒回路1では、第5モードで作動する。すなわち、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第1膨張弁11、エバポレータ4、蒸発圧力調整弁13をこの順で流通するとともに、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体Lと冷媒Rとの熱交換により、冷却用媒体Lが冷媒Rに放熱する。その結果、冷却用媒体Lが冷却される。冷却用媒体Lによって加熱された冷媒Rは、チラー6から第2圧縮機10Bに導入され、第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。また、エバポレータ4では、第1膨張弁11で膨張された冷媒Rと内気との熱交換により、内気が冷媒Rに放熱する。その結果、内気Rが冷却される。冷媒Rによって冷却された内気は車室内の冷房に供される。エバポレータ4から流出した冷媒Rは第2圧縮機10Bに導入され、第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0137】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが、水冷コンデンサ5、停止状態のヒータコア17、作動状態のラジエータ8をこの順で流通する。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体Hとの熱交換により、冷媒Rが加熱用媒体Hに放熱する。その結果、冷媒Rが冷却される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体Hは、作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、加熱用媒体Hと外気との熱交換により、加熱用媒体Hが外気に放熱する。その結果、加熱用媒体Hが冷却される。
【0138】
こうして、冷媒回路1の冷房能力に応じて車室内を冷房することができるとともに、冷媒回路1の冷却能力に応じて車載電池を冷却することができる。
【0139】
(車室内冷房電池冷却(強)モード)
図12に示すように、車室内冷房電池冷却(強)モードでは、冷媒回路1において、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B、第1膨張弁11、第2膨張弁12及び蒸発圧力調整弁13が作動状態とされ、第1開閉弁66が開状態とされ、第2開閉弁67が閉状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが冷却器18が配置された第10流路26ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0140】
これにより、冷媒回路1では、第6モードで作動する。すなわち、エバポレータ4から流出する冷媒R及びチラー6から流出する冷媒Rの双方が第1圧縮機10Aに導入され、第1圧縮機10Aで圧縮された後、さらに第2圧縮機10Bで圧縮される。このため、冷媒回路1における冷媒Rの圧縮効率が高まるので、冷房・冷却能力が高まる。
【0141】
しかも、第1圧縮機10Aが速度型であるため、第1圧縮機10Aの大型化を避けつつ冷房・冷却能力を高めることができる。
【0142】
その他の構成及び作用は、図11に示す車室内冷房電池冷却モードと同様である
【0143】
(車室内暖房電池暖機モード)
図13に示すように、車室内暖房電池暖機モードでは、第2圧縮機10B、第2膨張弁12が作動状態とされ、第1圧縮機10A、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が開状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36、ヒータコア17及びラジエータ8が作動状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は第4接続状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが冷却器18が配置された第10流路26ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0144】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ36で圧送された冷却用媒体Lが、作動状態のラジエータ8、チラー6をこの順で流通する。ラジエータ8では、冷却用媒体Lと外気との熱交換により、冷却用媒体Lが外気から吸熱する。外気によって加熱された冷却用媒体Lはチラー6に導入される。
【0145】
冷媒回路1では、第3モードで作動する。すなわち、第2圧縮機10Bで圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体Lと冷媒Rとの熱交換により、冷却用媒体Lが冷媒Rに放熱する。冷却用媒体Lによって加熱された冷媒Rは、チラー6から第2圧縮機10Bに導入され、第2圧縮機10Bでさらに圧縮されて加熱された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0146】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが、水冷コンデンサ5、作動状態のヒータコア17、電池熱交換器7をこの順で流通する。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体Hとの熱交換により、加熱用媒体Hが冷媒Rから吸熱する。その結果、加熱用媒体Hが加熱される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体Hは、ヒータコア17に導入される。ヒータコア17では、加熱用媒体Hと内気との熱交換により、内気が加熱用媒体Hから吸熱する。その結果、内気が加熱されて、車室内の暖房に供される。また、ヒータコア17を通過した加熱用媒体Hは電池熱交換器7に導入される。電池熱交換器7では、加熱用媒体Hと車載電池との熱交換により、車載電池が加熱用媒体Hから吸熱する。その結果、車載電池が加熱される。
【0147】
こうして、空気熱を利用しつつ、冷媒回路1の暖房能力に応じて車室内を暖房することができるとともに、冷媒回路1の暖機能力に応じて車載電池を暖機することができる。
【0148】
(車室内暖房電池暖機(極低温時)モード)
図14に示すように、車室内暖房電池暖機(極低温時)モードでは、図7に示す車室内暖房(極低温時)モードと同様、冷媒回路1において、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされ、第1開閉弁66及び第2開閉弁67が閉状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36、ヒータコア17及びラジエータ8が作動状態とされる。
【0149】
これにより、冷媒回路1では、第2モードで作動する。すなわち、チラー6にて冷却用媒体Lで加熱された冷媒Rは第1圧縮機10Aに導入される。そして、第1圧縮機10Aで圧縮された冷媒Rが第2圧縮機10Bでさらに圧縮される。このため、冷媒回路1における冷媒Rの圧縮効率が高まるので、暖房・暖機能力が高まる。
【0150】
しかも、第1圧縮機10Aが速度型であるため、第1圧縮機10Aの大型化を避けつつ暖房・暖機能力を高めることができる。
【0151】
その他の構成及び作用は、図13に示す車室内暖房電池暖機モードと同様である。
【0152】
(車室内暖房電池暖機(極々低温時)モード)
図15に示すように、車室内暖房電池暖機(極々低温時)モードでは、図8に示す暖房(極々低温時)モードと同様、加熱用媒体回路2において、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5側を流れるとともに冷却器18が配置された第10流路26を流れる状態とされる。
【0153】
これにより、加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5、作動状態のヒータコア17をこの順で流通するとともに、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが冷却器18、作動状態のヒータコア17をこの順で流通する。冷却器18では、加熱用媒体Hと冷却対象機器としての走行用モータやPCU等の電気部品との熱交換により、加熱用媒体Hが冷却対象機器から吸熱する。その結果、加熱用媒体Hが加熱される。こうして走行用モータ等から吸熱した熱を利用することで、暖房・暖機能力が一層高まる。なお、冷媒回路1では、第2モードで作動する。
【0154】
その他の構成及び作用は、図14に示す車室内暖房電池暖機(極低温時)モードと同様である。
【0155】
(車室内冷房電池冷却(強+冷却対象機器冷却)モード)
図16に示すように、車室内冷房電池冷却(強+冷却対象機器冷却)モードでは、図12に示す車室内冷房電池冷却(強)モードと同様、冷媒回路1において、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B、第1膨張弁11、第2膨張弁12及び蒸発圧力調整弁13が作動状態とされ、第1開閉弁66が開状態とされ、第2開閉弁67が閉状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。一方、三方流量調整弁35は、図8に示す車室内暖房(極々低温時)モードと同様、加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5側を流れるとともに冷却器18が配置された第10流路26を流れる状態とされる。
【0156】
これにより、冷媒回路1では、第6モードで作動する。すなわち、エバポレータ4から流出する冷媒R及びチラー6から流出する冷媒Rの双方が第1圧縮機10Aに導入され、第1圧縮機10Aで圧縮された後、さらに第2圧縮機10Bで圧縮される。このため、冷媒回路1における冷媒Rの圧縮効率が高まるので、冷房・冷却能力が高まる。
【0157】
しかも、第1圧縮機10Aが速度型であるため、第1圧縮機10Aの大型化を避けつつ冷房・冷却能力を高めることができる。
【0158】
加えて、加熱用媒体回路2では、ラジエータ8にて外気に放熱して冷却された加熱用媒体Hが冷却部18に導入される。冷却部18では、加熱用媒体Hと冷却対象機器との熱交換によって、加熱用媒体Hが冷却対象機器から吸熱する。その結果、冷却対象機器が冷却される。
【0159】
その他の構成及び作用は、図12に示す車室内冷房電池冷却(強)モードと同様である。
【0160】
(車室内除湿暖房(極低温時・暖房要求大)モード)
図17に示すように、車室内除湿暖房(極低温時・暖房要求大)モードでは、冷媒回路1において、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B、第1膨張弁11、第2膨張弁12及び蒸発圧力調整弁13が作動状態とされ、第1開閉弁66が閉状態とされ、第2開閉弁67が開状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ36、ヒータコア17及びラジエータ8が作動状態とされる。
【0161】
これにより、冷媒回路1では、第4モードで作動する。すなわち、チラー6にて冷却用媒体Lで加熱された冷媒Rは第1圧縮機10Aに導入される。そして、第1圧縮機10Aで圧縮された冷媒Rが第2圧縮機10Bでさらに圧縮される。このため、冷媒回路1における冷媒Rの圧縮効率が高まるので、暖房能力が高まる。また、エバポレータ4では、第1膨張弁11で膨張された冷媒Rと内気との熱交換により、内気が冷媒Rに放熱する。その結果、内気が除湿される。冷媒Rによって除湿された内気は車室内の除湿に供される。エバポレータ4から流出した冷媒Rは第2圧縮機10Bに導入され、第2圧縮機10Bで圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0162】
その他の構成及び作用は、図7に示す車室内暖房(極低温時)モードと同様である。
【0163】
(車室内除湿暖房電池暖機(極低温時・暖房要求大)モード)
図17に示す車室内除湿暖房(極低温時・暖房要求大)モードでは、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群が第2接続状態であったのに対し、図18に示すように、車室内除湿暖房電池暖機(極低温時・暖房要求大)モードでは、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群が第4接続状態とされる。
【0164】
これにより、加熱用媒体回路2において、ヒータコア17にて内気を加熱した後の加熱用媒体Hは、電池熱交換器7に導入される。電池熱交換器7では、加熱用媒体Hと車載電池との熱交換により、車載電池が加熱用媒体Hから吸熱する。その結果、車載電池が加熱される。なお、冷媒回路1では、第4モードで作動する。
【0165】
その他の構成及び作用は、図17に示す車室内除湿暖房(極低温時・暖房要求大)モードと同様である。
【0166】
(冷却対象機器ウォームアップモード)
図19に示すように、冷却対象機器ウォームアップモードでは、第1圧縮機10A、第2圧縮機10B、第1膨張弁11、第2膨張弁12及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16が作動状態とされ、冷却用媒体ポンプ36、ヒータコア17及びラジエータ8が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群は第5接続状態とされる。また、三方流量調整弁35は、加熱用媒体Hが水冷コンデンサ5側ではなく、冷却器18が配置された第10流路26を流れる状態とされる。
【0167】
これにより、加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体Hが、冷却器18、停止状態のヒータコア17をこの順で流通する。冷却器18では、加熱用媒体Hと冷却対象機器との熱交換により、冷却対象機器同士を均温化して冷却対象機器をウォームアップすることができる。
【0168】
以上のとおり、実施例1の車両用熱マネジメントシステムでは、冷媒回路1において、水冷コンデンサ5における加熱用媒体Hへの放熱及びチラー6における冷却用媒体Lからの吸熱の双方が行なわれる。
【0169】
水冷コンデンサ5にて冷媒Rが加熱用媒体Hに放熱することで、冷媒Rによって加熱された加熱用媒体Hがヒータコア17にて内気に放熱したり、電池熱交換器7にて車載電池に放熱したりする。これにより、車室内の暖房や車載電池の加熱が可能になる。
【0170】
チラー6にて冷媒Rが冷却用媒体Lから吸熱することで、冷媒Rによって冷却された冷却用媒体Lが電池熱交換器7にて車載電池から吸熱する。これにより車載電池の冷却が可能になる。
【0171】
また、エバポレータ4にて冷媒Rで内気から吸熱を行うことで、車室内の冷房が可能になる。
【0172】
そして、この車両用熱マネジメントシステムでは、第1圧縮機10Aで圧縮された冷媒Rを第2圧縮機10Bでさらに圧縮することができる。これにより、冷媒回路1における冷媒の圧縮効率が高まるので、内気や車載電池等に対する加熱・冷却能力を高めることができる。
【0173】
したがって、実施例1の車両用熱マネジメントシステムによれば、加熱対象の加熱、あるいは冷却対象の冷却をすることができ、しかもその加熱能力や冷却能力を高めることができる。
【0174】
また、この車両用熱マネジメントシステムでは、第2流路15Aと第3流路14Bとがバイパス流路63により接続されるとともに、バイパス流路63には第1開閉弁66が設けられている。さらに、第2流路15Aには第2開閉弁67が設けられている。これにより、第1開閉弁66及び第2開閉弁67の開閉制御により、エバポレータ4から流出する冷媒R及びチラー6から流出する冷媒Rの双方について、第1圧縮機10Aに導入させたり、第2圧縮機10Bに導入させたりすることができる。その結果、冷媒回路1における冷媒Rの作用を第1~第6モードに切り替えることができ、車両用熱マネジメントシステムを種々の運転モードで作動させることが可能になる。
【0175】
第1圧縮機10Aが速度型であるため、第1圧縮機10Aの大型化を避けつつ、車室内の冷暖房や車載電池の温調の能力を高めることができる。そして、容積型の第2圧縮機10B内の潤滑油が速度型の第1圧縮機10Aに流入することを油分離器65によって抑えることができる。また、速度型の第1圧縮機10Aに冷媒Rが逆流することを逆止弁64によって防ぐことができる。
【0176】
(実施例2)
図20に示す実施例2の車両用熱マネジメントシステムは、実施例1の車両用熱マネジメントシステムにおいて、冷媒回路1の構成を変更している。
【0177】
実施例2の車両用熱マネジメントシステムにおける冷媒回路40は、第2開閉弁67を省いている。その他の構成は実施例1の車両用熱マネジメントシステムと同様である。
【0178】
この冷媒回路40では、第6モードで作動しない。このため、この車両用熱マネジメントシステムは、車室内冷房電池冷却(強)モード及び車室内冷房電池冷却(強+冷却対象機器冷却)モードで作動しない。
【0179】
その他の構成及び作用は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムと同様である。
【0180】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0181】
例えば、実施例1及び2では、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における弁群の接続状態を制御することにより、電池熱交換器7及びラジエータ8に対する、加熱用媒体H及び冷却用媒体Lの流通を制御するが、本発明はこれに限らず、種々の弁機構を適宜組み合わせることで、電池熱交換器7及びラジエータ8に対する、加熱用媒体H及び冷却用媒体Lの流通を制御してもよい。
【0182】
(付記1)
第1流路により直列に接続され、冷媒を圧縮する第1圧縮機及び第2圧縮機と、前記第2圧縮機で圧縮された冷媒が導入され、冷媒で加熱用媒体又は外気に放熱を行う凝縮器と、前記凝縮器を経由した冷媒を膨張させる第1膨張弁及び第2膨張弁と、前記第1膨張弁で膨張された冷媒が導入され、冷媒で内気から吸熱を行う第1蒸発器と、前記第2膨張弁で膨張された冷媒が導入され、冷媒で冷却用媒体又は外気から吸熱を行う第2蒸発器とを有し、前記第1蒸発器と前記第1流路とが前記第2流路により接続され、前記第2蒸発器と前記第1圧縮機とが第3流路により接続された冷媒回路と、
前記加熱用媒体を循環させる加熱用媒体ポンプと、前記加熱用媒体で加熱対象に放熱を行う放熱器とを有する加熱用媒体回路と、前記冷却用媒体を循環させる冷却用媒体ポンプと、前記冷却用媒体で冷却対象から吸熱を行う吸熱器とを有する冷却用媒体回路との少なくとも一方の媒体回路とを備え、
前記凝縮器における前記加熱用媒体への放熱及び前記第2蒸発器における前記冷却用媒体からの吸熱の少なくとも一方を行うことを特徴とする車両用熱マネジメントシステム。
【0183】
(付記2)
前記第2流路と前記第3流路とがバイパス流路により接続され、
前記バイパス流路には第1開閉弁が設けられている付記1記載の車両用熱マネジメントシステム。
【0184】
(付記3)
制御装置をさらに備え、
前記冷媒回路は、前記制御装置の制御により、
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する第1モード、
前記第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する第2モード、
前記第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する第3モード、
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、前記第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する第4モード、及び
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、前記第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する第5モードで作動する付記2記載の車両用熱マネジメントシステム。
【0185】
(付記4)
前記第2流路に第2開閉弁が設けられ、
前記第2開閉弁は、前記第2流路と前記バイパス流路との接続部よりも冷媒流れの下流側に配置され、
前記冷媒回路は、前記制御装置の制御により、
前記第1蒸発器にて内気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱するとともに、前記第2蒸発器にて冷却用媒体又は外気から吸熱した冷媒が前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機で圧縮された後、前記凝縮器にて加熱用媒体又は外気に放熱する第6モードで作動する付記3記載の車両用熱マネジメントシステム。
【0186】
(付記5)
前記凝縮器は、冷媒と加熱用媒体とのとの間で熱交換が行われる水冷コンデンサである付記1乃至4のいずれか1項記載の車両用熱マネジメントシステム。
【0187】
(付記6)
前記第2蒸発器は、冷媒と冷却用媒体との間で熱交換が行なわれるチラーである付記1乃至5のいずれか1項記載の車両用熱マネジメントシステム。
【0188】
(付記7)
前記第1圧縮機は速度型であり、前記第2圧縮機は容積型である付記1乃至6のいずれか1項記載の車両用熱マネジメントシステム。
【0189】
(付記8)
前記第1流路に逆止弁が設けられ、
前記逆止弁は、前記第1流路と前記第2流路との接続部よりも冷媒流れの上流側に配置されている付記7記載の車両用熱マネジメントシステム。
【0190】
(付記9)
前記第2圧縮機の冷媒吐出側には、前記第2圧縮機で圧縮された冷媒から潤滑油を分離して前記第2圧縮機の冷媒吸入側に戻す油分離器が設けられている付記7又は8記載の車両用熱マネジメントシステム。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の車両用熱マネジメントシステムは、例えばバッテリー式の電池自動車に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0192】
1、40…冷媒回路
2…加熱用媒体回路
3…冷却用媒体回路
4…エバポレータ(第1蒸発器)
5…水冷コンデンサ(凝縮器)
6…チラー(第2蒸発器)
7…電池熱交換器(放熱器、吸熱器)
8…ラジエータ(放熱器、吸熱器)
9…制御装置
10A…第1圧縮機(圧縮機)
10B…第2圧縮機(圧縮機)
11…第1膨張弁(膨張弁)
12…第2膨張弁(膨張弁)
14A…第1流路
14B…第3流路
15A…第2流路
16…加熱用媒体ポンプ
17…ヒータコア(放熱器)
36…冷却用媒体ポンプ
63…バイパス流路
64…逆止弁
65…油分離器
66…第1開閉弁
67…第2開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20