(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079355
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】路盤材及び既設路盤材の打換え工法
(51)【国際特許分類】
E01C 3/00 20060101AFI20240604BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
E01C3/00
E01C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192252
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507194017
【氏名又は名称】株式会社高速道路総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 勝一
(72)【発明者】
【氏名】三村 典正
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 大輔
(72)【発明者】
【氏名】瘧師 英利
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】人見 信男
(72)【発明者】
【氏名】安藤 政浩
【テーマコード(参考)】
2D051
2D053
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AG17
2D051AH03
2D051CA10
2D053AD03
(57)【要約】
【課題】既設路盤を打ち換える際にも上層であるアスファルト舗装が短時間で施工可能であり、且つ、疲労耐久性に優れた路盤材及び既設路盤材の打換え工法を提供する。
【解決手段】アスファルト舗装の表層9及び基層8の下層に設けられる路盤材において(メタ)アクリル系樹脂組成物と骨材からなり、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合が4~10質量%、骨材の割合が90~96質量%である路盤材とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装の表層及び基層の下層に設けられる路盤材であって、
(メタ)アクリル系樹脂組成物と骨材からなり、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合が4~10質量%、骨材の割合が90~96質量%であること
を特徴とする路盤材。
【請求項2】
硬化時の発熱温度が50℃以下であり、硬化時間が2時間以内であること
を特徴とする請求項1に記載の路盤材。
【請求項3】
前記骨材は、19mmふるい目の通過質量百分率が95~100質量%、13.2mmふるい目の通過質量百分率が70~90質量%、4.75mmふるい目の通過質量百分率が42~67質量%、2.36mmふるい目の通過質量百分率が30~53質量%、0.075mmふるい目の通過質量百分率が3~8質量%であり、且つ、最大粒径が20mm以下であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の路盤材。
【請求項4】
アスファルト舗装の既設路盤材を撤去し、新設路盤材に打換える既設路盤材の打換え工法であって、
(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合を4~10質量%、骨材の割合を90~96質量%として混合した路盤材を新設路盤材として打換えること
を特徴とする既設路盤材の打換え工法。
【請求項5】
打換え時の施工温度が0~15℃の場合は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物に低温用触媒を含有させ、打換え時の施工温度が10~30℃の場合は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物に中温用触媒を含有させ、打換え時の施工温度が25~45℃の場合は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物に高温用触媒を含有させること
を特徴とする請求項4に記載の既設路盤材の打換え工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打換え用の路盤材及び既設路盤材の打換え工法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2に示すように、重交通路線のアスファルト舗装構造1’に関する一般的技術的基準では、路床2の上にクラッシャラン、鉄鋼スラグ、砂などの粒状路盤からなる下層路盤3を施工し、アスファルト安定処理(瀝青安定処理)などからなる上層路盤4を施工し、加熱アスファルト混合物からなる基層5、表層6のアスファルト舗装を施工することになっている。
【0003】
近年、道路の供用年数が伸びるに従って、アスファルト舗装構造1’の損傷の深層化が目立ってきており、路盤(上層路盤4)からの打換えを強いられることも増えてきている。その場合は、
図2に示すように、従来の路盤補修方法では、既存の上層路盤4と同等のアスファルト安定処理からなる新設の上層路盤4’に打換える。しかし、疲労耐久性に優れたアスファルト安定処理からなる路盤材で打換えても、重交通路線では疲労損傷により路盤の打換えが必要となる場合がある上、路盤材が冷めてその上層に基層5や表層6のアスファルト舗装を施工できるようになるまで待つ必要があり、早期の交通開放ができないという問題があった。
【0004】
このため、近年、打ち換え回数などのランニングコストを考慮すると費用が多少高くても疲労耐久性に優れた路盤材が要望されるに至った。路盤の疲労耐久性を高める方法として、スティフネスや疲労抵抗性等の各種特性を向上させたアスファルト混合物を路盤材として用いる方法や樹脂混合物と骨材を混合した樹脂舗装材を用いる方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、骨材と、アスファルトと、添加剤と、を含むアスファルト混合物において、前記アスファルトは、その針入度が40~100であり、前記添加剤は石油樹脂、テルペン樹脂、あるいは、石油ピッチからなり、前記アスファルトと当該添加剤との総量に対する重量比で1.0~15.0%添加され、前記アスファルトと前記添加剤との総量は、当該アスファルト混合物に対する重量比で4.0~6.5%添加されているアスファルト混合物が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]~[0036]等参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のアスファルト混合物は、路盤材として加熱された状態のアスファルト混合物を舗設後に、混合物の温度が下がるのを待ってから、アスファルト舗装を復旧する必要がある。このため、新設の道路工事には問題なく適用することができるが、劣化損傷した既設路盤を打ち換える際には、早期の交通開放が困難になるという問題があった。特に、路盤の打ち換えを必要とする路線は、重交通路線である場合も多いため、早期の交通開放が可能であり、且つ疲労耐久性に優れた路盤材が望まれていた。
【0007】
また、特許文献2には、舗装路や橋梁の補修、追加舗装に用いる材料として、樹脂混合物に、a:柔軟構造部を有し、少なくとも両末端にアクリレート残基を有し、分子量が500以上のアクリレート化合物、b:分子量が150~500のアクリレート化合物、c:分子量が150未満のアクリレート化合物、を含有させた樹脂舗装材が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0009]~[0031]等参照)。
【0008】
このような特許文献2に記載の樹脂舗装材は、舗設後に温度が下がるまで待つ必要がない。しかし、特許文献2に記載の発明は、あくまでも樹脂の硬化特性に着目し、舗装路の段差補修、ポットホール補修、轍ぼれ補修、空港滑走路の補修等の補修、追加舗装に少量、舗装材として用いることを意図した発明であり、路盤材としての適用や疲労耐久性は何も具体的に示されていない。特に、路盤材として(メタ)アクリル系樹脂組成物を骨材の結合材に用いた場合は、上層のアスファルト舗装の施工効率を考える必要があるが、特許文献2に記載の発明では、硬化時の発熱の問題や混合物のべたつきの問題が考慮されていなかった。
【0009】
そこで、既設路盤を打ち換える場合でも短時間で上層であるアスファルト舗装が可能であり、且つ、疲労耐久性に優れた路盤材が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2019-157427号公報
【特許文献2】特開2010-242461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、前記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、既設路盤を打ち換える際にも上層であるアスファルト舗装が短時間で施工可能であり、且つ、疲労耐久性に優れた路盤材及び既設路盤材の打換え工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の路盤材は、アスファルト舗装の表層及び基層の下層に設けられる路盤材であって、(メタ)アクリル系樹脂組成物と骨材からなり、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合が4~10質量%、骨材の割合が90~96質量%であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の路盤材は、請求項1に記載の路盤材において、硬化時の発熱温度が50℃以下であり、硬化時間が2時間以内であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の路盤材は、請求項1又は2に記載の路盤材において、前記骨材は、19mmふるい目の通過質量百分率が95~100質量%、13.2mmふるい目の通過質量百分率が70~90質量%、4.75mmふるい目の通過質量百分率が42~67質量%、2.36mmふるい目の通過質量百分率が30~53質量%、0.075mmふるい目の通過質量百分率が3~8質量%であり、且つ、最大粒径が20mm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の既設路盤材の打換え工法は、アスファルト舗装の既設路盤材を撤去し、新設路盤材に打換える既設路盤材の打換え工法であって、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合を4~10質量%、骨材の割合を90~96質量%として混合した路盤材を新設路盤材として打換えることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の既設路盤材の打換え工法は、請求項4に記載の既設路盤材の打換え工法において、打換え時の施工温度が0~15℃の場合は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物に低温用触媒を含有させ、打換え時の施工温度が10~30℃の場合は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物に中温用触媒を含有させ、打換え時の施工温度が25~45℃の場合は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物に高温用触媒を含有させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1~5に係る発明によれば、NAT(Nottinham AsphaltTester)による疲労試験において硬化物の疲労破壊回数が1万5千回以上の高疲労耐久性を達成できるとともに、既設路盤を打ち換える際にも上層であるアスファルト舗装を短時間で施工可能となり、早期の交通開放が可能となる。
【0018】
特に、請求項2に係る発明によれば、硬化時の発熱温度が50℃以下であり、硬化時間が2時間以内であるので、上層であるアスファルト舗装を短時間で施工可能となり、早期の交通開放が可能となる。
【0019】
特に、請求項3に係る発明によれば、骨材が、骨材の最大粒径が20mmの密粒度アスファルト混合物であるので、疲労破壊回数が1万5千回以上の高疲労耐久性を達成することができる。
【0020】
特に、請求項5に係る発明によれば、打換え時の施工温度にかかわらず、特に、打換え時の施工温度が30℃を超える場合でも、30分以上の可使時間を確保することができるとともに、2時間以内の硬化時間を達成することができ、既設路盤材の打換え時の施工性を向上させることができ、早期の交通開放が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る路盤材を用いたアスファルト舗装の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、重交通路線のアスファルト舗装構造1及び従来の路盤補修方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る路盤材及び既設路盤材の打換え工法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
<アスファルト舗装構造>
先ず、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る路盤材を用いた重交通路線のアスファルト舗装構造1について簡単に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る路盤材を用いた重交通路線のアスファルト舗装構造1を示す模式図である。重交通路線のアスファルト舗装構造1は、路床2の上層に形成された下層路盤3と、この下層路盤3の上層に打ち換えられた新設の上層路盤7と、この新設の上層路盤7の上層に新たに形成されたアスファルト舗装の基層8及び表層9など、から構成されている。
【0024】
下層路盤3は、(1)クラッシャラン、砂利、砂、(2)再生クラッシャラン、(3)高炉徐冷スラグ、又は(4)製鋼スラグなど、からなる粘土塊、有機物、ごみ等を有害量含まない粒状路盤である。
【0025】
上層路盤7が、本発明に係る路盤材からなる路盤であり、後で詳述するように、(メタ)アクリル系樹脂組成物と骨材からなり、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合が4~10質量%、骨材の割合が90~96質量%(以下、%は、質量%を指す)である。
【0026】
アスファルト舗装の基層8及び表層9は、既設のアスファルト舗装と同様の密粒度アスファルト混合物(20,13)、細粒度アスファルト混合物(13)、密粒度ギャップアスファルト混合物(13)、密粒度アスファルト混合物(20F,13F)、細粒度ギャップアスファルト混合物(13F)、細粒度アスファルト混合物(13F)、密粒度ギャップアスファルト混合物(13F)、開粒度アスファルト混合物(13)、ポーラスアスファルト混合物(20,13)などのアスファルト混合物からなる。
【0027】
アスファルト混合物は、使用する骨材の粒度によって区分されていて、骨材の最大粒径は、一般に、20mmと13mmのものがよく用いられている。骨材の最大粒径が20mmのものと13mmのものとを比較すると、一般に、前者は耐流動性、耐摩耗性、すべり抵抗性などの性能に優れ、後者は耐水性やひび割れに対する抵抗性に優れている。
【0028】
<路盤材>
次に、本発明の実施形態に係る路盤材について詳細に説明する。本発明の実施形態に係る路盤材は、重交通路線のアスファルト舗装構造1の既設路盤材の打換え用に用いられる路盤材であり、骨材の結合材としてアスファルトの代わりに速硬化性の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いる。速硬化性の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いることにより、舗設後に温度が下がるまで待つ必要がなく、速硬化性であるため混合物が硬化するまでの養生時間も短くて済む。このため、すぐに次工程のアスファルト舗装の舗設を行うことができ、早期の交通開放につながる。
【0029】
本実施形態に係る路盤材は、重交通路線のアスファルト舗装構造1の既設路盤材の打換え用に用いられる路盤材であるため、前述のように、上層のアスファルト舗装を短時間で直ぐに施工して早期の交通開放を可能とする必要がある。そこで、本実施形態に係る路盤材は、30分以上の可使時間を確保するとともに、2時間以内の硬化時間を達成することを目標とした。
【0030】
((メタ)アクリル系樹脂組成物)
(メタ)アクリル系樹脂組成物とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、又はこれらの誘導体を単量体単位として有する(メタ)アクリル系重合体を含有する樹脂組成物(MMA樹脂混合物)のことを指している。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物は、硬化剤などの必要な添加剤を含んでいる。硬化剤としては、ジベンゾイルパーオキサイドなどを例示することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る(メタ)アクリル系樹脂組成物は、前述のように、30分以上の可使時間を確保するとともに、2時間以内の硬化時間を達成することを目標としている。
【0032】
ここで、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化時には発熱を伴うが、混合物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂組成物を10%以下に抑えることにより、硬化発熱を抑えることができる。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を10%以下とすることで、混合物のべたつきを抑えることができ、取り扱いが容易となる。
【0033】
また、(メタ)アクリル系樹脂組成物があまりに少ないと骨材同士の接着が不十分となり、硬化物の疲労耐久性が低下するため、(メタ)アクリル系樹脂組成物を4%以上とする必要がある。このため、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合は4~10%とする必要があり、より好ましくは4~6%である。また、このような(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合とするには、骨材との混合性の観点から(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度は20℃において100~500mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0034】
つまり、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合が4~10質量%、骨材の割合が90~96質量%とすることにより、後述のように、硬化時の発熱温度を50℃以下とするとともに、可使時間を30分以上、硬化時間を2時間以内とした。
【0035】
それに加え、後述のように、NAT(Nottinham AsphaltTester)による疲労試験において疲労破壊回数が、既設路盤材であるアスファルト安定処理(
図2参照)の10倍以上となる15,000回以上の高疲労耐久性を達成した。
【0036】
しかし、(メタ)アクリル系樹脂組成物は、可使時間を確保するために硬化剤の添加量を減量して調整する必要があるが、減量にも限界があるため、特に30℃を超える夏期における施工では、十分な可使時間を確保することが困難であった。そこで、本実施形態に係る(メタ)アクリル系樹脂組成物においては、それぞれの温度条件に適した触媒を配合することにより、高温の条件下においても、十分な可使時間を確保することができるとともに、2時間以内の硬化時間を達成した。つまり、0℃~45℃の環境温度で30分以上の可使時間を確保するとともに、2時間以内の硬化時間を達成することを目標とした。
【0037】
具体的には、環境温度(打換え時の施工温度)が0~15℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に低温用触媒を含有させ、環境温度(打換え時の施工温度)が10~30℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に中温用触媒を含有させ、環境温度(打換え時の施工温度)が25~45℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に高温用触媒を含有させる。
【0038】
低温用触媒としては、p-トリルジエタノールアミンが挙げられ、中温用触媒としては、ジメチルアニリンが挙げられ、高温用触媒としては、ジエチルアニリンが挙げられる。
【0039】
骨材は、最大粒径が20mmの表層用混合物である密粒度アスファルト混合物に使用する骨材であることが好ましい。具体的には、骨材の配合設計粒度は、19mmふるい目の通過質量百分率が95~100質量%、13.2mmふるい目の通過質量百分率が70~90質量%、4.75mmふるい目の通過質量百分率が42~67質量%、2.36mmふるい目の通過質量百分率が30~53質量%、0.075mmふるい目の通過質量百分率が3~8質量%であり、その最大粒径が20mm以下であることが好ましい。
【0040】
但し、骨材は、密粒度アスファルト混合物に使用するものに限られず、細粒度アスファルト混合物、及び、粗粒度アスファルト混合物に使用するものにすることも可能である。
【0041】
<既設路盤材の打換え工法>
次に、本発明の実施形態に係る既設路盤材の打換え工法について説明する。
【0042】
(アスファルト舗装撤去工程)
本実施形態に係る既設路盤材の打換え工法では、切削機等を使用して切削してアスファルト舗装の表層及び基層を剥ぎ取って撤去するアスファルト舗装撤去工程を行う。勿論、本工程では、アスファルト舗装を撤去できればよく、切削して撤去する場合に限られず、バックホウなどで剥ぎ取って撤去しても構わない。
【0043】
(既設路盤材撤去工程)
次に、本実施形態に係る既設路盤材の打換え工法では、前述のアスファルト安定処理(瀝青安定処理)からなる上層路盤4(
図2参照)を撤去する既設路盤材撤去工程を行う。
【0044】
(新設路盤材敷設工程)
次に、本実施形態に係る既設路盤材の打換え工法では、前述の本発明の実施形態に係る路盤材を敷設して上層路盤7を構築する新設路盤材敷設工程を行う。具体的には、前述のように、(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合を4~10質量%、骨材の割合を90~96質量%として混合した路盤材を新設路盤材として打換える。
【0045】
(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合が4~10質量%、骨材の割合が90~96質量%とすることにより、硬化時の発熱温度を50℃以下とするとともに、可使時間を30分以上、硬化時間を2時間以内とすることができる。
【0046】
また、本工程では、打換え時の施工温度が0~15℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に低温用触媒を含有させ、打換え時の施工温度が10~30℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に中温用触媒を含有させ、打換え時の施工温度が25~45℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に高温用触媒を含有させる。このように、施工時の温度に応じて触媒を変えることにより、30℃を超える夏期における施工でも、30分以上の十分な可使時間を確保することができるとともに、2時間以内の硬化時間を達成し、しかも疲労破壊回数が15,000回以上の高疲労耐久性を達成することができる。
【0047】
以上説明した本発明の実施形態に係る路盤材及び既設路盤材の打換え工法によれば、NAT(Nottinham AsphaltTester)による疲労試験において疲労破壊回数が1万5千回以上の高疲労耐久性を達成できるとともに、既設路盤を打ち換える際にも上層であるアスファルト舗装を短時間で施工可能となり、早期の交通開放が可能となる。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る路盤材及び既設路盤材の打換え工法によれば、打換え時の施工温度が0~45℃の広範囲の温度帯において、30分以上の可使時間を確保することができるとともに、2時間以内の硬化時間を達成することができる。よって、既設路盤材の打換え時の施工性を向上させることができ、早期の交通開放が可能となる。
【0049】
<効果確認実験>
次に、本発明の効果を確認するために行った幾つかの実験結果について説明する。
【0050】
(硬化時間)
樹脂組成物打設直後にマーシャルランマーにて片面10回突固め供試体を実施例及び比較例の複数作製し、2時間後に脱型して形状を保っていた場合を〇、未硬化で形状を保てない場合を×とし、硬化時間の実験を行った。
【0051】
(疲労破壊回数)
また、NAT(Nottinham AsphaltTester)において疲労破壊回数が15,000回以上である場合を〇、15,000回未満である場合を×とした。具体的には、混合物製造直後にマーシャルランマーにて片面10回突固め、樹脂が完全硬化した後、疲労破壊回数を測定した。試験条件としては、試験温度20℃で繰返荷重500kPaで行った。なお、この15,000回数は、従来の路盤材であるアスファルト安定処理(瀝青安定処理)(技術提案書の値)の疲労破壊回数の1,500回の10倍を設定している。
【0052】
(最高発熱温度)
さらに、最高発熱温度として樹脂組成物の硬化時の最高発熱温度を測定し、最高発熱温度が50℃以下である場合を〇、50℃を超える場合を×とした。50℃を超えると次工程の上層のアスファルト舗装の施工を、従来のアスファルト安定処理と同様に冷めるまで待つ必要が生じるからである。上記3つの実験結果を表1及び表2に示す。
【0053】
【0054】
【0055】
(メタ)アクリル系樹脂組成物の割合が4~10質量%、骨材の割合が90~96質量%とすることにより、硬化時の発熱温度を50℃以下とするとともに、硬化時間を2時間以内とすることができている。その上、実施例6を除き、疲労破壊回数の15,000回以上の極めて高い疲労耐久性能を達成できている。また、実施例6でもアスファルト安定処理(技術提案書の値)の疲労破壊回数の1,500回の10倍となる疲労破壊回数の15,000回以上は達成できていないものの、アスファルト安定処理と同等の疲労破壊回数の1,500回以上は達成できている。
【0056】
(温度に応じた触媒を含有させる実験)
出願人らの(メタ)アクリル系樹脂組成物の室内実験等により、30℃を超える高温域での30分の可使時間の確保と、硬化時間を2時間以内に抑えることの両立が困難であることが判明していた。そして、それらの実験により、高温域では可使時間を確保するため硬化剤の量を少なく設定していることから発生するラジカル発生量が過少となり、樹脂の硬化が不安定になることが確認された。この解決策として、出願人らは、高温域においても必要なラジカル発生量を確保できるよう、主剤に含まれる触媒を変更する方法を試みた。
【0057】
具体的には、触媒を変更することで可使時間を確保しつつ硬化剤の量を多く設定することを試みた。触媒の種類は高温用、中温用、低温用の3種類を温度によって使い分け、触媒を含んでいない樹脂組成物に触媒を後添加する手法とした。低温用触媒は、p-トリルジエタノールアミンとイソプロピルアルコールを質量比40:60で混合した溶液を使用し、中温用触媒は成分としてジメチルアニリンを含有するDICマテリアル株式会社製の「促進剤RP-195」を使用し、高温用触媒は、成分としてジエチルアニリンを含有するDICマテリアル株式会社製の「促進剤RP-76」を使用した。
【0058】
(可使時間)
可使時間は、各温度で混合物製造30分後にマーシャルランマーにて片面10回突固め供試体を作成し、樹脂が完全硬化した後、NAT(Nottinham AsphaltTester)により疲労破壊回数を測定した。試験条件としては、試験温度20℃、繰返荷重500kPaで行った。疲労回数が15,000回以上である場合は◎とし、疲労破壊回数が15,000回以上を達成できない場合を×とした。
【0059】
(硬化時間)
硬化時間は、各温度で混合物製造直後にマーシャルランマーにて片面10回突固め供試体を作成し、材齢60分又は材齢120分で圧縮試験により圧縮強度を測定し、圧縮強度1.0MPa以上であることを確認した。試験条件としては、試験速度:30mm/minで行った。材齢60分で圧縮強度1.0MPa以上を達成した場合を◎、材齢120分で圧縮強度1.0MPa以上を達成した場合を〇、材齢120分で圧縮強度1.0MPa以上を達成できない場合を×とした。
【0060】
試験結果を次表3に示す。
【0061】
【0062】
環境温度が0~15℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に低温用触媒を含有させ、硬化剤の添加量を1.5%~4.5%の範囲で適宜変更することで、可使時間30分、硬化時間1時間以内又は2時間以内を達成できるとともに、疲労破壊回数の15,000回以上の極めて高い疲労耐久性能を達成できている。なお、硬化剤は、株式会社NIPPO社製の「スマートモルタル」硬化剤を用いた。
【0063】
また、環境温度が10~30℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に中温用触媒を含有させ、硬化剤の添加量を2.0%~5.0%の範囲で適宜変更することで、可使時間30分、硬化時間1時間以内又は2時間以内を達成できるとともに、疲労破壊回数の15,000回以上の極めて高い疲労耐久性能を達成できている。
【0064】
そして、環境温度が25~45℃の場合は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に高温用触媒を含有させ、硬化剤の添加量を1.5%~5.0%の範囲で適宜変更することで、可使時間30分、硬化時間1時間以内又は2時間以内を達成できるとともに、疲労破壊回数の15,000回以上の極めて高い疲労耐久性能を達成できている。
【0065】
以上、本発明の実施の形態に係る路盤材及びついて詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明に係る技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0066】
1,1’:アスファルト舗装構造
2:路床
3:下層路盤
4:上層路盤
4’:新設の上層路盤(アスファルト安定処理)
7:新設の上層路盤((メタ)アクリル系樹脂組成物)
5,8:基層(アスファルト舗装)
6,9:表層(アスファルト舗装)