(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079373
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】細胞培養
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0789 20100101AFI20240604BHJP
【FI】
C12N5/0789
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192281
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】520402672
【氏名又は名称】セレイドセラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 素生
(72)【発明者】
【氏名】小原 洋志
(72)【発明者】
【氏名】石田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】石原 春奈
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB04
(57)【要約】
【課題】 造血幹細胞を効率的に得る方法を提供する。
【解決手段】 (a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートもしくはその塩又はトラニルシプロミンもしくはその塩を含む、組成物を用いる。この組成物を用いて細胞を培養する培養工程を含む、細胞の生産方法を利用してもよい。この組成物は、アルブミンフリーの培地であってもよい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートもしくはその塩又はトラニルシプロミンもしくはその塩を含む、組成物。
【請求項2】
培地である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PI3Kアクチベータは740Y-P又はその塩、及び前記TPO受容体アゴニストはブチザミド又はその塩である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ヒト造血幹細胞の培養用の培地である、請求項1~3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
アルブミンフリーの培地である、請求項1~4いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
造血幹細胞をさらに含む、請求項2~5いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
臍帯血CD34+細胞をさらに含み、インキュベートすることによりCD201+又はCD90+の造血幹細胞が濃縮される、請求項2~6いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
CD201+又はCD90+の造血幹細胞を含み、組成物中の総細胞に対するCD201+又はCD90+の造血幹細胞の割合が5%以上である、請求項2~7いずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項2~8のいずれかに記載の組成物を用いて細胞を培養する培養工程を含む、細胞の生産方法。
【請求項10】
前記培養の前に(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートもしくはその塩又はトラニルシプロミンもしくはその塩を含む組成物を容器に入れる又は容器内に保持する工程、及び前記容器内で前記細胞と前記組成物を接触させる工程を含む、請求項9に記載の生産方法。
【請求項11】
前記PI3Kアクチベータは740Y-P、及び前記TPO受容体アゴニストはブチザミドである、請求項9又は10に記載の生産方法。
【請求項12】
造血幹細胞の生産方法である、請求項9~11いずれかに記載の生産方法。
【請求項13】
前記培養工程において前記細胞は臍帯血CD34+細胞である、請求項9~12いずれかに記載の生産方法。
【請求項14】
前記培養工程において前記細胞は臍帯血CD34+細胞であり、培養することにより前記培地中のCD201+又はCD90+の造血幹細胞が濃縮される、請求項9~13いずれかに記載の生産方法。
【請求項15】
前記培養工程は、請求項2~8のいずれかに記載の組成物を用いて細胞を培養し、CD201+又はCD90+の造血幹細胞が濃縮された細胞集団を生成する工程を含む、請求項9~14いずれかに記載の生産方法。
【請求項16】
前記培養工程は、請求項2~8のいずれかに記載の組成物を用いて細胞を培養し、培地中の総細胞に対するCD201+又はCD90+の造血幹細胞の割合が5%以上である細胞含有培地を生成する工程を含む、請求項9~15いずれかに記載の生産方法。
【請求項17】
前記培養工程において前記細胞は造血幹細胞である、請求項9~16いずれかに記載の生産方法。
【請求項18】
前記培養工程において前記細胞はCD201+又はCD90+の細胞である、請求項9~17いずれかに記載の生産方法。
【請求項19】
前記培養工程において前記細胞はヒト細胞である、請求項9~18いずれかに記載の生産方法。
【請求項20】
請求項9~19いずれかに記載の生産方法で得られる細胞。
【請求項21】
請求項9~19いずれかに記載の生産方法で得られる細胞と、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートもしくはその塩又はトラニルシプロミンもしくはその塩を含む、組成物。
【請求項22】
組成物中の総細胞に対するCD201+又はCD90+の造血幹細胞の割合が5%以上である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項2~8のいずれかに記載の組成物を用いて細胞を培養する培養工程を含む、細胞の培養方法。
【請求項24】
(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートもしくはその塩又はトラニルシプロミンもしくはその塩を混合する工程を含む、組成物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、細胞培養に関する。
【背景技術】
【0002】
造血幹細胞は、血球系細胞に分化可能な幹細胞である。造血幹細胞を移植することによる、がんや免疫不全などの疾患の治療法が知られている。
【0003】
造血幹細胞の供給源として、ヒト臍帯血(CB)が知られている。例えば、特許文献1には、ヒトCBから造血幹細胞を取得する方法が記載されている。具体的には、ヒトCB CD34+細胞の出発集団から、EPCR+細胞の集団を選択及び培養することが記載されている。EPCRは、CD201としても知られている造血幹細胞マーカーである。
【0004】
また、造血幹細胞の培養方法が研究されている。一般的に、造血幹細胞の培養においては、細胞分裂を誘導するためにアルブミン含有培地が用いられてきた。しかし、アルブミンには、安定的な未分化性の阻害や、生物学的コンタミの問題がある。そこで、アルブミンフリーの培養方法に関する研究がされている。例えば、特許文献2には、アルブミンの代わりにPVA又はSoluplus(登録商標)を添加することによって、ヒト造血幹細胞を培養したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2017/205977
【特許文献2】WO2021/149799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒト造血幹細胞を効率的に得るためには、従来の方法では十分ではなかった。また、ヒト造血幹細胞のアルブミンフリーの培養方法に関する報告は少なく、利用できる培地が限られていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは研究を重ねる中で、造血幹細胞の培養方法を検討した。その結果、従来とは異なる特定の組成のアルブミンフリー培地でヒトCB CD34+細胞を培養することによって、造血幹細胞を良好に増殖させることができた。さらには、得られた培養画分は、CD201+又はCD90+(いずれも造血幹細胞マーカー)の造血幹細胞が濃縮された培養画分であった。本発明者らは、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0008】
本発明の一態様によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(以下、UM729と称することもある)もしくはその塩又はトラニルシプロミン(以下、2-PCPAと称することもある)もしくはその塩を含む、組成物が提供される。この組成物を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0009】
本発明の一態様によれば、上記組成物を用いて細胞を培養する培養工程を含む、細胞の生産方法が提供される。この方法を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】培地A(UM729)で培養10日又は17日後のCD201
+CD45RA
-CD34
+CD38
-Lin
-細胞の細胞収率の測定結果を示す図である。
【
図2】培地B(UM729)で培養10日又は17日後のCD201
+CD45RA
-CD34
+CD38
-Lin
-細胞の細胞収率の測定結果を示す図である。
【
図3】培地B(UM729)、培地C(UM171)又は培地D(UM171(SFEM))で培養10日後の細胞の増殖率(総細胞)の測定結果を示す図である。
【
図4】培地B(UM729)、培地C(UM171)又は培地D(UM171(SFEM))で培養10日後の細胞の増殖率(CD34
+細胞)の測定結果を示す図である。
【
図5】培地A(UM729)で培養10日後の細胞の、CD34及びCD201の発現解析結果を示す図である。
【
図6】培地A(UM729)で培養10日後の細胞の、CD41、CD45RA、CD201及びCD90の発現解析結果を示す図である。解析対象はCD34
+Lin
-細胞である。
【
図7】培地B(UM729)で培養10日後の細胞の、CD34及びLinの発現解析結果を示す図である。
【
図8】培地B(UM729)で培養10日後の細胞の、CD41、CD45RA、CD201及びCD90の発現解析結果を示す図である。解析対象はCD34
+Lin
-細胞である。
【
図9】培地C(UM171)で培養10日後の細胞の、CD34及びLinの発現解析結果を示す図である。
【
図10】培地C(UM171)で培養10日後の細胞の、CD41、CD45RA、CD201及びCD90の発現解析結果を示す図である。解析対象はCD34
+Lin
-細胞である。
【
図11】培地D(UM171(SFEM))で培養10日後の細胞の、CD34及びLinの発現解析結果を示す図である。
【
図12】培地D(UM171(SFEM))で培養10日後の細胞の、CD41、CD45RA、CD201及びCD90の発現解析結果を示す図である。解析対象はCD34
+Lin
-細胞である。
【
図13】培養前コントロール細胞の、CD34及びCD201の発現解析結果を示す図である。
【
図14】培地B(UM729)で培養10日後の細胞の、CD34及びCD201の発現解析結果を示す図である。
【
図15】培地D(UM171(SFEM))で培養10日後の細胞の、CD34及びCD201の発現解析結果を示す図である。
【
図16】培地E(2-PCPA)で培養10日後の細胞の、CD34及びCD201の発現解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
【0012】
(1) 組成物
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(以下、UM729と称することもある)もしくはその塩又はトラニルシプロミン(以下、2-PCPAと称することもある)もしくはその塩を含む、組成物が提供される。ここで、組成物は培地であってもよい。この組成物を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。例えば、後述する実施例には、この組成物を用いてヒトCB CD34+細胞を培養した結果、CD201+細胞又はCD90+細胞が濃縮された培養画分が得られたことが記載されている。また、本発明の一実施形態によれば、この組成物を用いた細胞の生産方法、細胞の培養方法、培地の生産方法、CD201+又はCD90+の細胞の濃縮方法、及びこの組成物を含む容器が提供される。
【0013】
(2) 培地
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む、培地が提供される。この培地を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0014】
(3) 方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む、組成物と、細胞とを接触させる工程を含む、方法が提供される。この方法は、例えば、細胞の生産方法、細胞の培養方法、又はCD201+又はCD90+の細胞の濃縮方法を含む。
【0015】
(4) 生産方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む培地を用いて細胞を培養する培養工程を含む、細胞の生産方法が提供される。この方法を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0016】
(5) 生産方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む培地を用いてCB CD34+細胞を培養する培養工程を含む、細胞の生産方法が提供される。この方法を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0017】
(6) 生産方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む培地を用いてCD201+又はCD90+の細胞を培養する培養工程を含む、細胞の生産方法が提供される。この方法を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を良好に増殖させることができる。
【0018】
(7) 生産方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む培地を用いてヒト造血幹細胞を培養する培養工程を含む、細胞の生産方法が提供される。この方法を用いれば、ヒト造血幹細胞を良好に増殖させることができる。
【0019】
(8) 生産方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を混合する工程を含む、培地の生産方法が提供される。この方法で得られた培地を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0020】
(9) 生産方法
本発明の一実施形態によれば、上記(3)~(8)のいずれかに記載の各方法で得られた細胞の集団を含む組成物から造血幹細胞マーカー+の細胞を分取する工程、分取後の造血幹細胞マーカー+の細胞を培養する工程、又は培養後の造血幹細胞マーカー+の細胞を回収する工程を含む、細胞集団の生産方法が提供される。この方法を用いれば、より造血幹細胞を濃縮すること、又はより多くの造血幹細胞を回収することができる。
【0021】
(10) 培養方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む培地で細胞を培養する培養工程を含む、細胞の培養方法が提供される。この方法を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0022】
(11) 濃縮方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む培地で細胞を培養する培養工程を含む、CD201+又はCD90+の細胞の濃縮方法が提供される。この方法を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0023】
(12) 濃縮方法
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む培地で細胞を培養する培養工程を含む、造血幹細胞の濃縮方法が提供される。この方法を用いれば、造血幹細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0024】
(13) 容器
本発明の一実施形態によれば、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む組成物を含む容器が提供される。この容器を用いれば、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産できる。
【0025】
(14) 容器
本発明の一実施形態によれば、上記(3)~(12)のいずれかに記載の各方法で得られた、細胞又はその細胞集団を含む容器が提供される。この容器は、造血幹細胞移植に利用できる。造血幹細胞移植の前に、細胞集団から所望の細胞(例えば造血幹細胞マーカー+の細胞)を分取する工程、分取後の細胞を培養する工程、培養後の細胞を回収する工程、又は回収後の細胞を容器内に保持する工程を実施してもよい。
【0026】
(15) 細胞
本発明の一実施形態によれば、上記(3)~(12)のいずれかに記載の各方法で得られた、細胞又はその細胞集団が提供される。この細胞又はその細胞集団は、造血幹細胞移植に利用できる。造血幹細胞移植の前に、細胞集団から所望の細胞(例えば造血幹細胞マーカー+の細胞)を分取する工程、分取後の細胞を培養する工程、培養後の細胞を回収する工程、又は回収後の細胞を容器内に保持する工程を実施してもよい。
【0027】
(16) 細胞
本発明の一実施形態によれば、CD201+又はCD90+の細胞を5%以上含む、細胞集団が提供される。この細胞集団は、造血幹細胞移植のための医薬組成物の生産に利用できる。
【0028】
(17) 培地
本発明の一実施形態によれば、培地中の総細胞に対するCD201+又はCD90+の細胞の割合が5%以上の、細胞含有培地が提供される。この培地は、造血幹細胞移植のための医薬組成物の生産に利用できる。
【0029】
(18) 組成物
本発明の一実施形態によれば、上記(3)~(12)のいずれかに記載の各方法に用いるための、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む、組成物が提供される。
【0030】
(19) 組成物
本発明の一実施形態によれば、上記(15)又は(16)に記載の細胞又はその細胞集団と、(a)PI3Kアクチベータ又はTPO受容体アゴニスト、及び(b)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む、組成物が提供される。この組成物は、CD201+又はCD90+の細胞を多く含むため、造血幹細胞移植に用いるための医薬組成物を生産するために有用である。
【0031】
(20) 組成物
本発明の一実施形態によれば、上記(3)~(12)のいずれかに記載の各方法で得られた、細胞又はその細胞集団を含む、造血幹細胞移植に用いるための医薬組成物又はその生産方法が提供される。この生産方法は、例えば、上記(15)又は(16)に記載の細胞集団から造血幹細胞を純化する工程を含んでもよい。この生産方法は、例えば、上記(19)に記載の組成物から造血幹細胞マーカー+の細胞を分取する工程、分取後の造血幹細胞マーカー+の細胞を培養する工程、又は培養後の造血幹細胞マーカー+の細胞を回収する工程を含んでもよい。別の側面からは、本発明の一実施形態によれば、造血幹細胞移植に使用するための、上記(15)又は(16)に記載の細胞もしくは細胞集団、又はその細胞もしくは細胞集団を含む医薬組成物が提供される。別の側面からは、本発明の一実施形態によれば、造血幹細胞移植のための医薬組成物の生産における、上記(15)又は(16)に記載の細胞もしくは細胞集団の使用が提供される。
【0032】
(21) 移植方法
本発明の一実施形態によれば、移植方法が提供される。この移植方法は、例えば、上記(15)又は(16)に記載の細胞もしくは細胞集団、又はその細胞もしくは細胞集団を含む医薬組成物を対象に移植する工程を含んでもよい。この移植方法によれば、造血幹細胞が効果的に生着することによって、疾患を治療できる。
【0033】
本発明の実施形態(例えば上記(3)~(12)又は(21)を含む)において方法は、下記(i)~(v)のいずれか1つ以上の工程を含んでいてもよい。(i)培養の前に(a)PI3Kアクチベータ、(b)TPO受容体アゴニスト、及び(c)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を含む組成物を容器に入れる又は容器内に保持する工程、(ii)容器内で、前記細胞と前記組成物を接触させる工程、(iii)容器内で、細胞を培養する工程、(iv)CD201+又はCD90+の細胞が濃縮された細胞集団を生成する工程、又は(v)培地中の総細胞に対するCD201+又はCD90+の細胞の割合が5%以上である細胞含有培地を生成する工程。本発明の実施形態(例えば上記(3)~(12)又は(21)を含む)の方法は、下記(vi)~(xx)のいずれか1つ以上の工程を含んでいてもよい。(vi)造血幹細胞を含む細胞集団を準備する工程、(vii)CB CD34+細胞を含む細胞集団を準備する工程、(viii)細胞集団からCD34+の細胞を分取する工程、(ix)分取後のCD34+の細胞を培養する工程、(x)培養の前に(a)PI3Kアクチベータ、(b)TPO受容体アゴニスト、及び(c)UM729もしくはその塩又は2-PCPAもしくはその塩を混合し、混合成分を含む組成物を生産する工程、(xi)細胞を培養液中でインキュベートする工程、(xii)細胞を容器内の培地に播種しインキュベートする工程、(xiii)細胞集団からCD201+又はCD90+の細胞を分取又は回収する工程、(xiv)細胞集団から造血幹細胞を分取又は回収する工程、(xv)分取又は回収後のCD201+又はCD90+の細胞を培養する工程、(xvi)分取又は回収後の造血幹細胞を培養する工程、(xvii)分取もしくは回収及び培養後のCD201+又はCD90+の細胞を回収する工程、(xviii)分取もしくは回収及び培養後の造血幹細胞を回収する工程、(xix)回収後のCD201+又はCD90+の細胞を保存(例えば凍結保存)する工程、又は(xx)回収後のCD201+又はCD90+の細胞を対象に移植する工程。これらの1つ以上の工程を採用することは、CD201+又はCD90+の細胞を多く含む培養画分を効率的に生産するために有用である。本発明の実施形態(例えば上記(3)~(12)、(21)の方法、又は(i)~(xx)の工程を含む)から2つ以上の工程を採用した場合、順番は任意であり、所望の操作に応じて順番を決定できる。本発明の実施形態(例えば上記(3)~(12)、(21)の方法、又は(i)~(xx)の工程を含む)の各方法又は工程は、in vitro又はex vivoで実施してもよい。
【0034】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)においてCD201は、造血幹細胞マーカーとして知られている蛋白質である(例えば、WO2017/205977にはCD201をマーカーとしてヒトCB CD34+細胞から造血幹細胞を得たことが記載されている)。CD201はNCBI RefSeq Accession番号がNP_006395.2又はUniProt IDがQ9UNN8で示される蛋白質のアミノ酸配列を有する蛋白質を含む。CD201はcluster of differentiation 201又はEPCRと表記されることもある。
【0035】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)においてCD90は、造血幹細胞マーカーとして知られている蛋白質である(例えば、Rix et al., Front Physiol. 2022 Sep 30;13:1009160には造血幹細胞マーカーとしてCD90が記載されている)。CD90はNCBI RefSeq Accession番号がNP_001298089.1又はUniProt IDがP04216で示される蛋白質のアミノ酸配列を有する蛋白質を含む。CD90はCluster of Differentiation 90と表記されることもある。
【0036】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)においてPI3Kアクチベータは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼのアクチベータを含む。PI3Kアクチベータは、PI3Kのアゴニストを含み、例えば、740Y-P又はその塩を含む。740Y-PはCAS登録番号が1236188-16-1又はPubChem CIDが90488730の化合物を含む。
【0037】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)においてTPO受容体アゴニストは、トロンボポエチン受容体のアゴニストを含む。TPO受容体アゴニストは、例えば、ブチザミド又はその塩を含む。ブチザミドは、(E)-3-[2,6-ジヒドロ-4-[[4-[3-(2,2-ジメチル-1-プロポキシプロピル)-2-メトキシフェニル]-1,3-チアゾール-2-イル]カルバモイル]フェニル]-2-メチルプロップ-2-エン酸で表すことができる。ブチザミドはPubChem CIDが44602781の化合物を含む。
【0038】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)においてメチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートは、CAS登録番号が1448723-60-1又はPubChem CIDが71714933の化合物を含む。メチル4-(3-ピペリジン-1-イルプロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートは、UM729と呼ばれることもある。本明細書では、省略のためにUM729で表記することがあるが、それらは互換的に使用可能である。
【0039】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)においてトラニルシプロミンは、CAS登録番号が155-09-9又はPubChem CIDが96025309の化合物を含む。トラニルシプロミンは、2-PCPAと呼ばれることもある。トラニルシプロミンは(1R,2S)-2-フェニルシクロプロパン-1-アミンを含む。本明細書では、省略のために2-PCPAで表記することがあるが、それらは互換的に使用可能である。
【0040】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において培養は、細胞を増殖又は維持に適した条件下でインキュベートすることを含む。培養は、培地及び細胞を接触させ、細胞含有組成物を生成する工程、及び細胞含有組成物をインキュベートする工程を含んでもよい。インキュベートする工程は、細胞含有組成物を静置又は攪拌しながら実施してもよい。インキュベートは、約37℃および約5%CO2雰囲気下において行ってもよい。接触は、例えば、細胞を培地に播種すること又は細胞と培地を混合することを含む。培養は、アルブミンフリー又は血清フリーの培地で実施してもよい。フリーは、対象成分が培地に添加されていない状態、培地が対象成分を完全に含まない状態、又は培地が成分を検出限界以上の濃度で含まない状態を含む。アルブミンフリーは実質的にアルブミンフリーであることを含む。
【0041】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において培養は、細胞接着因子(例えばフィブロネクチン)存在下で実施してもよい。培養は、造血幹細胞と細胞接着因子とが接触可能な条件下で実施してもよい。培養は、例えば、培養容器の内側(例えば底面)が細胞接着因子でコーティングされた状態で実施してもよい。
【0042】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において培養は、造血幹細胞を造血幹細胞の維持又は増殖に十分な条件下で増殖させることを含んでもよい。増殖は、例えば、造血幹細胞を、培養開始時から10倍以上に増殖させることを含んでもよい。この倍数は10、50、100、200、300、400、又は500倍以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
【0043】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において培養に用いる細胞は、臍帯血(CB)細胞、末梢血細胞、骨髄細胞、又はその細胞集団であってもよい。細胞は、CBから採取した細胞、末梢血から採取した細胞、骨髄から採取した細胞を含む。これらの細胞又は細胞集団は、CD34+細胞であってもよい。細胞は、例えば、CB CD34+細胞(CB由来のCD34+細胞)、末梢血CD34+細胞(末梢血由来のCD34+細胞)又は骨髄CD34+細胞(骨髄由来のCD34+細胞)であってもよい。これらの細胞は、製造又は販売会社(例えば、StemExpress又はLonza)から購入してもよく、CB、末梢血、又は骨髄からCD34+細胞を分取することで得てもよい。本発明の別の実施形態において培養に用いる細胞又は培養で得られる細胞は、幹細胞、造血幹細胞、又はCD34+、CD201+、もしくはCD90+の細胞を含む。培養に用いる細胞又はその細胞集団は、出発細胞又は出発細胞集団と称することもできる。本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において培養に用いる細胞又は培養で得られる細胞は、哺乳動物の細胞であってもよい。哺乳動物は、例えば、ヒト、サル、ネズミ目の動物(マウス、ハムスター等)、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、マーモセット等を含む。本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において細胞は、細胞集団の状態で存在していてもよい。
【0044】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において細胞集団は、例えば、細胞分裂によって生じた複数の細胞を含む。本発明の実施形態において培養後の培地中の総細胞に対するCD201+又はCD90+の細胞の割合は、例えば、5%以上であってもよい。この割合は、例えば、2、3、4、5、8、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この割合は、例えば、5~50%、15~40%、又は25~40%であってもよい。CD201+細胞の割合は、造血幹細胞を効率的に得るために、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。CD90+細胞の割合は、造血幹細胞を効率的に得るために、13%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。本発明の実施形態において培養後の細胞集団におけるCD201+又はCD90+の細胞の割合は、培養前に比べて5倍以上であってもよい。この倍数は、例えば、10、20、50、100、又は200倍以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。細胞の割合は、後述の培養時間、細胞を培養したときの割合であってもよい。
【0045】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において造血幹細胞は、血球系細胞に分化することができる幹細胞を含む。造血幹細胞は、臍帯、骨髄、胎盤、及び末梢血から採取することができる。ヒト造血幹細胞はCD34+の細胞を含む。ヒト造血幹細胞はCD34+CD38-であってもよい。ヒト造血幹細胞はCD34+CD201+CD90+又はCD34+CD201+であってもよい。ヒト造血幹細胞マーカーはCD34+、CD201+又はCD90+を含む。造血幹細胞は長期造血幹細胞を含む。
【0046】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において細胞の培養時間は、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、17、18、20、30又は35日以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この培養時間は、例えば、1~20日、3~17日、4~16、5~14日であってもよい。培養は、細胞を含む培地をインキュベートする時間を含む。
【0047】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において培養時の細胞の播種密度は1000cells/mLであってもよい。この値は、1000、3000、5000、10000、30000、50000、70000、100000又は150000以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
【0048】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地は、細胞の培養のために用いられる培地を含む。培地のベース成分は、一般的な任意のベース成分を用いてもよく、その組成は限定されない。培地のベース成分は、例えば、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、無機塩、ビタミン、ミネラル、又は炭素源(例えば、グルコース)を含んでもよい。培地のベース成分は、例えば、GlutaMAX、L-アラニンL-グルタミンジペプチド、L-グルタミン、ITS-X、インスリン、トランスフェリン(アポ)、亜セレン酸ナトリウム、エタノールアミン、又はFlt3リガンドを含んでもよい。培地は、例えば、細胞培養用の基本培地を含んでもよい。基本培地は、例えば、S-clone SF-3培地、F12培地、StemSpan(Stem Cell technologies)、STEMα(STEM ALPHA)、StemPro-34無血清培地(Gibco Invitrogen)、StemPro MSC無血清培地(Invitorogen)、HSC-CFU培地(Miltenyl Biotech)、S-Clone無血清培地(SF-02、SF-03、CM-B、SF-B)(三光純薬)、HPGM培地(三光純薬)、AIM V培地(Invitorogen)、Marrow MAX骨髄培地(Invitrogen)、KnockOut DMEM/F-12培地(Invtrogen)、Stemline造血幹細胞増殖培地(Sigma)、SYN無血清培地(SYN H、SYN B)(AbCys SA)、SPE IV培地(AbCys SA)、MyeloCult培地(StemCell Technologies)、HPG無血清培地(Lonza)、UltraCULTURE培地(Lonza)、Opti-MEM培地(Gibco Invitrogen他)、MEM培地(Gibco Invitrogen他)、MEMα(Gibco Invitrogen他)、DMEM培地(Gibco Invitrogen他)、IMDM培地(Wako Pure Chemical他)、PRMI1640培地(Gibco Invitrogen他)、Ham F-12培地(Gibco他)、RD培地等を含む。培地は、アルブミン(例えばGenBank登録番号AAN17825.1)フリー又は血清フリーの培地が好ましい。この場合、安定的な未分化性の阻害や、生物学的コンタミの問題を抑制できる。培地は、Soluplus(登録商標)(CAS登録番号402932-23-4)を含んでもよい。培地は、抗生物質(例えばペニシリン又はストレプトマイシン)を含んでもよい。培地は、造血幹細胞、CD201+細胞、CD90+細胞、CB細胞を含んでもよい。培地は、これらの細胞を培養するための培地であってもよい。培地は、液体培地又は固体培地であってもよい。細胞を培地を用いて培養することは、細胞を培地中で培養することを含む。
【0049】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地は、CB CD34+細胞をさらに含んでもよい。この組成物又は培地は、インキュベートすることによりCD201+又はCD90+の細胞が濃縮される、組成物又は培地を含む。
【0050】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地中のPI3Kアクチベータの濃度は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、又は50μM以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この濃度は、例えば、1~25μM、2~20μM、又は3~10μMであってもよい。この濃度は、造血幹細胞を効率的に得るために、2μM以上が好ましく、3μM以上がより好ましく、4μM以上がさらに好ましい。
【0051】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地中のTPO受容体アゴニストの濃度は、例えば、0.01、0.03、0.05、0.08、0.1、0.12、0.15、0.2、0.3、0.5、1、又は2μM以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この濃度は、例えば、0.01~0.3μM、0.05~0.2μM、0.08~0.15μMであってもよい。この濃度は、造血幹細胞を効率的に得るために、0.03μM以上が好ましく、0.05μM以上がより好ましく、0.08μM以上がさらに好ましい。
【0052】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地中のUM729又はその塩の濃度は、例えば、0.1、0.3、0.5、0.8、1、1.3、1.5、1.8、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、又は30μM以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この濃度は、例えば、0.1~3μM、0.5~2μM、又は0.8~1.5μMであってもよい。この濃度は、造血幹細胞を効率的に得るために、0.3μM以上が好ましく、0.5μM以上がより好ましく、0.8μM以上がさらに好ましい。
【0053】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地中の2-PCPA又はその塩の濃度は、例えば、1、3、5、8、10、13、15、18、20、30、40、又は50μM以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この濃度は、例えば、1~30μM、5~20μM、又は8~15μMであってもよい。この濃度は、造血幹細胞を効率的に得るために、3μM以上が好ましく、5μM以上がより好ましく、8μM以上がさらに好ましい。2-PCPA又はその塩は、例えば、トラニルシプロミンヒドロクロリドであってもよい。
【0054】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地は、他の蛋白質成分として、1ng/mL以上の蛋白質成分を含んでもよい。この濃度は、例えば、1、5、8、10、15、20、30、又は50ng/mL以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この濃度は、例えば、1~30μM、5~20μM、又は8~12ng/mLであってもよい。他の蛋白質成分は、例えば、Flt3リガンドであってもよい。
【0055】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物又は培地は、他の添加成分として、修飾ポリアルキレングリコールを含んでもよい。修飾ポリアルキレングリコールの濃度は、例えば、0.001、0.005、0.008、0.01、0.012、0.015、0.02、0.03、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、又は5%(w/v)以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この濃度は、例えば、0.001~0.1%(w/v)、0.005~0.05%(w/v)、0.005~0.02%(w/v)、0.008~0.02%(w/v)又は0.008~0.015%(w/v)であってもよい。修飾ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリビニルカプロラクタムブロックおよびポリビニルアセタートブロックの共重合体により修飾されたポリアルキレングリコールであってもよい。ポリビニルカプロラクタムブロックおよびポリビニルアセタートブロックの共重合体により修飾されたポリアルキレングリコールは、例えば、ポリビニルカプロラクタムブロックおよびポリビニルアセタートブロックの共重合体により修飾されたポリエチレングリコールであってもよい。修飾ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフト共重合体であってもよい。修飾ポリアルキレングリコールは、例えば、(i)N-ビニルカプロラクタム、(ii)ビニルアセテート、及び(iii)ポリエーテルから得られるグラフトコポリマーであってもよい。ポリエーテルはポリエチレングリコールであってもよい。修飾ポリアルキレングリコールは、例えば、上記(i)~(iii)の混合物のフリーラジカル重合によって得られる化合物であってもよい。例えば、(i)は40~60wt%、(ii)は15~35wt%、及び(iii)は10~30wt%であってもよい。(i)は例えば、40、45、50、55、57又は60wt%であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。(ii)は例えば、15、20、25、30、又は35wt%であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。(iii)は例えば、10、13、15、20、25、又は30wt%であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記(i)~(iii)は、合計で100wt%であってもよい。修飾ポリアルキレングリコールは、例えば、下記の構造式で示される化合物又はその塩であってもよい。
【化1】
ここで、l、m、nのwt%は、例えば、それぞれ40~60wt%、15~35wt%、及び10~30wt%であってもよい。lのwt%は、例えば、40、45、50、55、57又は60であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。mのwt%は、例えば、15、20、25、30、又は35であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。nのwt%は、例えば、10、13、15、20、25、又は30であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記l、m、nのwt%は、は、合計で100wt%であってもよい。l、m、nのwt%は、例えば、それぞれ約57、約30、約13wt%であってもよい。l、m、nの重合度は、例えば、それぞれ60~160、470~1110、480~1130であってもよい。lの重合度は、は例えば、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150又は160であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。mの重合度は、例えば、470、500、550、600、650、700、750、780、800、850、900、950、1000、1050又は1110であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。nの重合度は、例えば、480、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050又は1130であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。重合度は、平均重合度であってもよい。修飾ポリアルキレングリコールの質量平均分子量(Mw)は、例えば、70000g/mol以上であってもよい。この値は、例えば、70000、80000、90000、100000、120000、140000、150000、160000、又は170000g/molであってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この値は、例えば、70000~170000g/mol、80000~160000g/mol、90000~140000g/mol、100000~130000g/mol、又は110000~125000g/molであってもよい。この値は、約118000g/molであってもよい。修飾ポリアルキレングリコールは、例えば、Soluplusであってもよい。Soluplusは上記式(1)の構造を有する化合物である。Soluplusのl、m、nは上記のwt%又は重合度を有していてもよい。修飾ポリアルキレングリコールの生産方法は、例えば、US 2008/0293828 A1、US 2010/0204425 A1又はUS 2018/0305636 A1に記載の方法を採用してもよい。また上記(i)~(iii)の成分は、これらの文献に記載の成分を使用してもよい。
【0056】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において容器は、培養容器又は医療用容器を含む。培養に用いる場合は培養容器を、造血幹細胞移植に用いる場合は医療用容器を用いてもよい。培養容器は、例えば、プレート型、シャーレ型、フラスコ型、又はボトル型であってもよい。医療用容器は、例えば、ボトル型、バッグ型、又はシリンジ型であってもよい。
【0057】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において回収する工程は、例えば、細胞又は細胞集団を含む容器から、所望の細胞又は細胞集団を別の容器に移動させることを含んでもよい。回収は、分取又は精製する工程を含んでもよい。回収する工程は、無菌環境下で実施してもよい。
【0058】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において組成物は、例えば、培地又は添加剤を含む。培地は、例えば、造血幹細胞培養用又はCB CD34+細胞培養用の培地であってもよい。添加剤は、基本培地に追加の栄養素を供給するための添加剤であってもよい。
【0059】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において医薬組成物は、細胞(例えば造血幹細胞)と薬学的に許容される1つ以上の担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造してもよい。医薬組成物は、安定剤、緩衝剤、又はpH調整剤を含んでもよい。投与量、投与間隔、投与方法、投与経路は、特に限定されず、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択できる。医薬組成物は、治療上有効量、又は所望の作用を発揮する有効量の造血幹細胞を含むことが好ましい。本発明の一実施形態において治療上有効量は、患者における症状の改善又は抑制が臨床的に観察されるために必要な量を含む。本発明の一実施形態において薬学的に許容されるとは、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合って使用するのに適した状態を含む。
【0060】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において、対象(患者を含む)は、ヒト又はヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、又はチンパンジー等の1種以上)を含む。また患者は、疾患(例えばがん又は免疫不全)を発症していると診断された患者、又は疾患の治療を必要としている患者であってもよい。
【0061】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において濃縮されるとは、培地中又は細胞集団中の特定の種類の細胞の割合が増加することを含む。CD201+又はCD90+の細胞が濃縮された培養画分は、培地中の総細胞に対するCD201+又はCD90+の細胞の割合が、例えば、5%以上であってもよい。この割合は、例えば、2、3、4、5、8、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%以上であってもよく、それらのいずれか2つの値の範囲内であってもよい。この割合は、例えば、8~50%、15~40%、又は25~40%であってもよい。CD201+細胞の割合は、造血幹細胞を効率的に得るために、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。CD90+細胞の割合は、造血幹細胞を効率的に得るために、13%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。培養画分は、細胞を培養して得られた細胞含有組成物を含む。培養画分は、細胞を培養後、選別又は精製処理を実施する前の画分を含む。
【0062】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において塩は、特に限定されず、例えば、無機塩又は有機塩を含む(例えば、"Bharate et al., Drug Discov Today. 2021 Feb;26(2):384-398."又は"Berge et al., J Pharm Sci. 1977 Jan;66(1):1-19."参照)。塩は、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩等を含む。金属塩は、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩等を含む。有機塩基との塩は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩を含む。無機酸との塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩を含む。有機酸との塩は、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、メシル酸、トシル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩を含む。塩基性アミノ酸との塩は、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩を含む。酸性アミノ酸との塩は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩を含む。塩は薬学的に許容可能な塩を含む。本発明の一実施形態において薬学的に許容可能とは、薬学的使用のために妥当なベネフィットを有する形態を含む。
【0063】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(21)を含む)において+は、その直前に存在する用語で特定される分子に対して細胞が陽性であると認められることを含む。
【0064】
本明細書において引用しているあらゆる刊行物は、その全体を参照により援用する。本明細書において「又は」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。例えば、CD201+又はCD90+はCD201+、CD90+、CD201+及びCD90+のいずれかを含む。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。本明細書において「A~B」は、A及びBを含む。本明細書において「上記(1)~(21)」は、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)、(20)、又は(21)のいずれか1つ以上への言及を含む。
【0065】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明に含まれ得る形態の例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また本発明は、上記実施形態に記載の各構成又は特徴を組み合わせて、又は独立して採用することもできる。
【実施例0066】
以下、実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
<実施例1>
1. 造血幹細胞の増殖
1.1 方法
1.1.1 培地A
PI3Kアクチベータの5μM 740Y-P、TPO受容体アゴニストの0.1μMブチザミド、合成低分子の1μM UM729を、1xGlutaMAX、1xITS-X、及び10ng/ml Flt3-リガンドを含むIMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Media)に添加した。得られた培地(培地A)に製造元の指示に従い解凍したヒト臍帯血CD34+細胞を懸濁し、96ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。培地を3~4日おきに交換した。10日目と17日目に、ウェル内の全てのCD34+細胞の子孫をフローサイトメトリー解析のために回収した。サンプルの解析にFACSVerse(Becton Dickinson, CA, USA)を使用した。サンプルの免疫染色に表3に示す抗体を使用した。CD34の発現をCD34+細胞の増殖率を決定するために使用した。その他のマーカーをex vivoで増殖したCD34+細胞の特性を確認するために使用した。
【0068】
1.1.2 培地B
上記1.1.1において、培地を培地Aにさらに終濃度で0.01%(w/v)のSoluplus(登録商標)を添加した培地(培地B)に変えて、同じ手順を実施した。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
1.2 結果
結果を
図1及び2に示す。培地A及びBのいずれを使用した場合も、CD201
+CD45RA
-CD34
+CD38
-Lin
-細胞が良好に増殖した。CD201
+CD45RA-CD34
+CD38
-Lin
-は造血幹細胞に特徴的なマーカーである。このことから、740Y-P又はブチザミド、及びUM729を使用することで、造血幹細胞の良好な増殖を実施できることが示された。
【0073】
<実施例2>
2. 造血幹細胞の増殖及び造血幹細胞マーカーの解析
2.1 方法
2.1.1 培地A
PI3Kアクチベータの5μM 740Y-P、TPO受容体アゴニストの0.1μMブチザミド、合成低分子の1μM UM729を、1xGlutaMAX、1xITS-X、及び10ng/ml Flt3-リガンドを含むIMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Media)に添加した。得られた培地(培地A)に製造元の指示に従い解凍したヒト臍帯血CD34+細胞を懸濁し、96ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。培地を3~4日おきに交換した。10日目と17日目に、ウェル内の全てのCD34+細胞の子孫をフローサイトメトリー解析のために回収した。サンプルの解析にFACSVerse(Becton Dickinson, CA, USA)を使用した。サンプルの免疫染色に表3に示す抗体を使用した。CD34の発現をCD34+細胞の増殖率を決定するために使用した。その他のマーカーをex vivoで増殖したCD34+細胞の特性を確認するために使用した。
【0074】
2.1.2 培地B
上記2.1.1において、培地を培地Aにさらに終濃度で0.01%(w/v)のSoluplus(登録商標)を添加した培地(培地B)に変えて、同じ手順を実施した。
【0075】
2.1.3 培地C
上記2.1.1において、培地中の1μM UM729を35nM UM171(Stemcell Technologies)に変えた培地(培地C)を用いて、同じ手順を実施した。
【0076】
2.1.4 培地D
上記2.1.1において、培地を35nM UM171、10μg/mL ヒトlow-density lipoprotein、100ng/mL Flt3-リガンド、100ng/mL stem cell factor、及び50ng/mL thrombopoietinを添加したStemSpanTM Serum-Free Expansion Medium(SFEM)(ST-09600, STEMCELL Technologies)(培地D)に変えて、同じ手順を実施した。
【0077】
2.2 結果
増殖率の測定結果を
図3及び4に示す。総細胞数及びCD34
+細胞数の増殖率は、培地B及びC間では大きな差は見られなかった。培地Dの増殖率は比較的大きかった。
【0078】
発現解析の測定結果を
図5-12に示す。培地AではCD201
+細胞及びCD90
+細胞の割合が顕著に高かった(
図5、それぞれ27.6%、22.9%)。培地BではCD201
+細胞及びCD90
+細胞の割合が顕著に高かった(
図8、それぞれ36.5%、19.7%)。培地CではCD201
+細胞及びCD90
+細胞の割合は非常に少なかった(
図10、それぞれ0.81%、3.27%)。培地DではCD201
+細胞及びCD90
+細胞の割合は非常に少なかった(
図12、それぞれ0.27%、0.65%)。以上から、740Y-P又はブチザミド、及びUM729を使用することで、CD201
+又はCD90
+の造血幹細胞が濃縮された培養画分が得られることが示された。
【0079】
<実施例3>
3. 造血幹細胞の増殖及び造血幹細胞マーカーの解析
3.1 方法
3.1.1 培地B
PI3Kアクチベータの5μM 740Y-P、TPO受容体アゴニストの0.1μMブチザミド、合成低分子の1μM UM729、0.01%(w/v) Soluplusを、1xGlutaMAX、1xITS-X、及び10ng/ml Flt3-リガンドを含むIMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Media)に添加した。得られた培地(培地B)に製造元の指示に従い解凍したヒト臍帯血CD34+細胞を縣濁し、96ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。培地を3~4日おきに交換した。10日目と17日目に、ウェル内の全てのCD34+細胞の子孫をフローサイトメトリー解析のために回収した。サンプルの解析にFACSVerse(Becton Dickinson, CA, USA)を使用した。サンプルの免疫染色に表3に示す抗体を使用した。CD34の発現をCD34+細胞の増殖率を決定するために使用した。その他のマーカーをex vivoで増殖したCD34+細胞の特性を確認するために使用した。
【0080】
3.1.2 培地D
上記3.1.1において、培地を35nM UM171、10μg/mL ヒトlow-density lipoprotein、100ng/mL Flt3-リガンド、100ng/mL stem cell factor、及び50ng/mL thrombopoietinを添加したStemSpanTM Serum-Free Expansion Medium(SFEM)(ST-09600, STEMCELL Technologies)(培地D)に変えて、同じ手順を実施した。
【0081】
3.1.3 培地E
上記3.1.1において、培地中の1μM UM729をLSD1阻害剤の10μM 2-PCPA(Selleck Chemicals, S4246)に変えた培地(培地E)を用いて、同じ手順を実施した。
【0082】
3.2 結果
発現解析の測定結果を
図13-16に示す。培地BではCD201
+細胞の割合が顕著に高かった(
図14、33.0%)。培地DではCD201
+細胞の割合は非常に少なかった(
図15、0.95%)。培地EではCD201
+細胞の割合が顕著に高かった(
図16、11.4%)。以上から、740Y-P又はブチザミド、及び2-PCPAを使用することで、CD201
+の造血幹細胞が濃縮された培養画分が得られることが示された。
【0083】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。