(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079390
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】保冷容器、およびその保冷容器を用いたブロッコリーの輸送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20240604BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B65D81/26 C
B65D85/50 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192307
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】000140074
【氏名又は名称】株式会社羽根
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩司
(72)【発明者】
【氏名】羽根 隆夫
【テーマコード(参考)】
3E035
3E067
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA01
3E035BB02
3E035BC02
3E035BD05
3E035CA02
3E067AA11
3E067AB08
3E067AC03
3E067BA02A
3E067BB17A
3E067CA18
3E067EA17
3E067EA32
3E067EB17
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA11
3E067GB02
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】ブロッコリーを保管、輸送する際に、ブロッコリーから臭気が発生しづらく、また、十分な保冷性能を有する保冷容器を実現する。
【解決手段】保冷容器(10)では、容器本体(1)と蓋(2)との嵌合によって、保冷容器(10)の外部と内部とを連通する複数の開口部が形成され、保冷容器(10)の内容積1Lに対して、保冷容器(10)の開口部の最も狭い部分の開口面積の合計は、4mm
2/L~12mm
2/Lである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体と嵌合する蓋と、を備えた、箱型の発泡成形体からなる保冷容器であって、
前記容器本体と前記蓋との嵌合によって、前記保冷容器の外部と内部とを連通する複数の開口部が形成され、
前記保冷容器の内容積1Lに対して、前記保冷容器の前記開口部の最も狭い部分の開口面積の合計は、1.5mm2/L~4.5mm2/Lである、保冷容器。
【請求項2】
平面視において、前記開口部は、前記保冷容器の対角位置に配置されている、請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
平面視において、前記開口部は、前記保冷容器の四辺それぞれに配置されている、請求項1または2に記載の保冷容器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の保冷容器内に、ブロッコリーを収容し、さらに氷を充填する工程を含む、ブロッコリーの輸送方法。
【請求項5】
前記保冷容器の内容積に対する前記ブロッコリーおよび氷の容積比率は、70%~95%である、請求項4に記載のブロッコリーの輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷容器、およびその保冷容器を用いたブロッコリーの輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜等を保冷しながら収納するために、容器本体と蓋部材とで構成された、発泡体からなる保冷容器が広く使用されている。特にブロッコリーは時間の経過とともに黄変、劣化しやすい性質であるため、低温で保管、輸送することが重要である。このため、収容物がブロッコリーである場合には、保冷容器の保冷性能が要求される。一方で、ブロッコリーを保冷するために密閉状態で保管した場合、ブロッコリーの嫌気性呼吸によって、容器内でたくわん様の臭気が発生することがある。このため、ブロッコリーの製品価値を下げることが問題となっている。そこで、従来、保冷容器の内部と外気との間で、ある程度空気の流通を可能にするために、容器本体と蓋部材との間に空気流通路が設けられた保冷容器が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、野菜を収容する発泡箱であって、容器内のエチレンガスや湿気を放出させるために、容器本体と蓋部材との嵌合部に空気流通路を有する発泡箱が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、容器内部の被梱包物を迅速に冷却しつつ、保冷するために、保冷容器の側壁部に外部と収容空間とを連通する貫通孔が形成された保冷容器が開示されている。そして、特許文献2の実施例において、保冷容器および貫通孔の寸法が記載されている。しかし、内容量に対して開口面積が大きく、ブロッコリー輸送時の保冷性能としては不十分であった。
【0005】
また、特許文献3には、容器本体と蓋部材との嵌合部に細い流路が設けられた容器が開示されている。特許文献3の容器は、真空引きにより容器内を脱気し、鮮度保持用ガスに置換できる構造になっている。しかし、常圧の状態では容器内外の空気流通がない構造となっているため、ブロッコリーを保管した場合には嫌気性雰囲気になることを避けられず、ブロッコリーの臭気を抑制するのには適していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-234232号公報
【特許文献2】特開2016―145081号公報
【特許文献3】特開平4-121176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、ブロッコリーを保管、輸送する際に、ブロッコリーからたくわん様の臭気が発生しづらく、また、十分な保冷性能を有する保冷容器、およびその保冷容器を用いたブロッコリーの輸送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を含む。
【0009】
〔1〕容器本体と、前記容器本体と嵌合する蓋と、を備えた、箱型の発泡成形体からなる保冷容器であって、前記容器本体と前記蓋との嵌合によって、前記保冷容器の外部と内部とを連通する複数の開口部が形成され、前記保冷容器の内容積1Lに対して、前記保冷容器の前記開口部の最も狭い部分の開口面積の合計は、1.5mm2/L~4.5mm2/Lである、保冷容器。
【0010】
〔2〕平面視において、前記開口部は、前記保冷容器の対角位置に配置されている、〔1〕保冷容器。
【0011】
〔3〕平面視において、前記開口部は、前記保冷容器の四辺それぞれに配置されている、〔1〕または〔2〕に記載の保冷容器。
【0012】
〔4〕〔1〕~〔3〕の何れかの保冷容器内に、ブロッコリーを収容し、さらに氷を充填する工程を含む、ブロッコリーの輸送方法。
【0013】
〔5〕前記保冷容器の内容積に対する前記ブロッコリーおよび氷の容積比率は、70%~95%である、〔4〕のブロッコリーの輸送方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、ブロッコリーを保管、輸送する際に、ブロッコリーからたくわん様の臭気が発生しづらく、また、十分な保冷性能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る保冷容器の構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る保冷容器の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る保冷容器に備えられた容器本体の構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る保冷容器に備えられた蓋の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る保冷容器の内部と外部とを連通する開口部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。尚、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表わす「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る保冷容器10の構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る保冷容器10の分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係る保冷容器10に備えられた容器本体1の構成を示す断面図である。
図4は、本実施形態に係る保冷容器10に備えられた蓋2の構成を示す斜視図である。
【0018】
図1~
図4に示すように、本実施形態に係る保冷容器10は、容器本体1と、容器本体1と嵌合する蓋2と、を備えている。また、保冷容器10は、矩形の箱型の発泡成形体からなる。容器本体1は、上方に開口する箱体であり、蓋2は、容器本体1の開口を閉塞する。
【0019】
図2および
図3に示すように、容器本体1の開口部の上端には、凸部1aが設けられている。凸部1aは、容器本体1の開口部の全周に亘って設けられている。また、容器本体1を上側から見たとき、容器本体1は、矩形を成す。
【0020】
また、
図4に示すように、蓋2は、容器本体1の上記矩形に対応して、同様の矩形を構成する。蓋2における容器本体1と対向する面には、凹部2aが設けられている。凹部2aは、容器本体1に形成された凸部1aと嵌合するように、蓋2の全周に亘って設けられている。このように容器本体1と蓋2とが嵌合することにより、保冷容器10内に氷を入れた場合でも、氷が溶解した際に発生する水が外部に漏れにくい。
【0021】
また、凹部2aの外縁の壁に溝2bが形成されている。溝2bは、凹部2aが構成する矩形の辺に対して直交するように伸びている。溝2bは、保冷容器10の外部と内部とを連通する開口部3を構成する壁部を有する。溝2bは、蓋2の外縁の壁が構成する矩形の対角位置(すなわち、角部)に配置されている。さらに、溝2bは、蓋2の外縁の壁が構成する矩形の四辺それぞれの中央に配置されている。
【0022】
また、凹部2aの内側の壁には、凹部2cが形成されている。凹部2cは、凹部2aの内側の壁の側面に対して内側に凹んでいる。凹部2cは、蓋2の内側の壁(すなわち、内縁の壁)が構成する矩形の対角位置(すなわち、角部)に配置されている。さらに、凹部2cは、蓋2の内側の壁が構成する矩形の四辺それぞれの中央に配置されている。また、蓋2の側面から見て、凹部2cは、2つの溝2b間の略中央に位置している。
【0023】
図5は、本実施形態に係る保冷容器10の開口部3の構成を示す断面図である。
図5は、
図1のA-A線断面図である。
図5に示すように、開口部3は、保冷容器10の外部と内部とを連通する。開口部3は、保冷容器10に収容されたブロッコリーから発生する二酸化炭素及び臭気を外部へ逃がす役割がある。容器本体1と蓋2との嵌合により、凸部1aと凹部2aとの間に隙間が生じる。そして、凸部1aと凹部2aとの隙間は、凹部2aに形成された溝2bと介して、外部と連通する。開口部3は、容器本体1と蓋2との嵌合により形成されるものである。具体的には、容器本体1の凸部1a、並びに蓋2の凹部2c、凹部2a、および溝2bによって構成される。このように形成された開口部3は、開口3aを介して外部と連通する。また、開口部3は、荷室側の1つの入口から途中で二股に分かれ、2つの出口(開口3a)を介して外部と連通する。さらに、
図5においては、開口部3の最も狭い部分は、開口部3の上記入口側の部分3cとなる。なお、開口部3は、上述のように二股に分かれた構成に限定されず、荷室側の1つの入口に対して1つの出口(開口3a)を介して外部と連通する構成であってもよい。
【0024】
また、開口部3の最も狭い開口部分は、開口部3の構成などに応じて適宜設定可能である。例えば、開口部3の最も狭い開口部分を、開口部3の開口3aとすることも可能である。
【0025】
保冷容器10においては、開口部3の荷室側の入口は8個設けられ、開口部3の出口(開口3a)は16個設けられている。これら開口部3の中には、平面視において、保冷容器10の対角位置に配置された開口部3がある。また、平面視において、保冷容器10の四辺それぞれに配置された開口部3もある。保冷容器10において、複数の開口部3の配置は、
図1の配置に限定されず、保冷容器10の構成などに応じて適宜設定できる。
【0026】
ここで、本実施形態に係る保冷容器10は、開口部3の最も狭い部分3c(以下、最狭部分3cと称する場合がある)の開口面積に特徴を有する。本発明者らは、保冷容器10に収容されたブロッコリーから発生する臭気の抑制について鋭意検討した結果、開口部3における最も狭い部分3cの面積に着目した。その結果、開口部3の最狭部分3cの面積の合計を特定の範囲とすることによって、効率的に、ブロッコリーから発生する二酸化炭素及び臭気を保冷容器10の外部へ逃がすことができることを見出し、本実施形態に至った。
【0027】
すなわち、保冷容器10の内容積1Lに対して、開口部3の開口面積(最狭部分3cの面積)の合計は、4mm
2/L~12mm
2/Lであり、好ましくは5mm
2/L~9mm
2/Lである。ここでいう開口部3の最も狭い部分とは、荷室側の入口から出口(開口3a)に至る開口部3の部分において、開口面積が最も小さくなった部分を意味する。また、開口面積とは、荷室側の入口から出口へ向かって開口部3が伸びる方向に対して垂直な断面において、開口部を形成する壁部により囲まれた領域の面積を意味する。開口部3が伸びる方向とは、例えば
図5に示す矢印の方向を意図している。このような開口部3の最も狭い部分の開口面積は、実測に加えて、保冷容器10の各種部材の寸法設計図等から把握することが可能である。
【0028】
保冷容器10の内容積1Lに対する最狭部分3cの開口面積の合計が1.5mm2/L未満であると、ブロッコリーを入れた際に保冷容器10内が嫌気状態になりやすくなり、臭気が発生しやすくなる。また、保冷容器10の内容積1Lに対する最狭部分3cの開口面積の合計が4.5mm2/Lを超えると、保冷容器10の保冷性能が悪化する傾向にある。
【0029】
また、最狭部分3cの開口面積の合計は、保冷容器10の内容積に応じて、適宜設定可能であるが、例えば、50mm2~200mm2であることが好ましく、75mm2~120mm2であることが好ましい。これにより、ブロッコリーから発生する二酸化炭素及び臭気を外部に逃がすことができる。
【0030】
なお、保冷容器10内の好気状態または嫌気状態は、保冷容器10内の二酸化炭素濃度を測定することにより、評価することができる。二酸化炭素濃度が10%を超える嫌気状態となると、ブロッコリーを保管した際にたくわん臭が発生しやすい。たくわん臭はジメチルジスルフィド、メタンチオールを主成分とした硫黄原子含有化合物であることがわかっており、ブロッコリーの細胞壁の破壊に起因する酵素反応を起点とした化学反応によって発生する。ブロッコリーが嫌気状態におかれることで、細胞壁の破壊が促進され、これらの臭気物質が発生するものと推測される。これら臭気物質は、特にブロッコリーの花蕾の部分にて高濃度で生成しやすく、ブロッコリー外部に拡散することで臭気の問題が発生しやすい。
【0031】
ブロッコリー以外のアブラナ属の野菜についても、ジメチルジスルフィド、メタンチオールを発生するものが多く、それらの野菜に対しても、本実施形態に係る保冷容器10は有効である。ブロッコリー以外のアブラナ属(Byassica属)の野菜の例として、小松菜、カリフラワー、キャベツなどが挙げられる。
【0032】
また、ブロッコリーを保管した際の保冷容器10内の二酸化炭素濃度は、以下のコンパートメントモデル式で見積もることもでき、実測値とよく一致している。
【0033】
(コンパートメントモデル計算式)
C(CO2):CO2濃度、W:CO2発生速度、kr:徐放速度定数、t:時間とし、dC(CO2)/dt=W-kr・C(CO2)から、
保冷容器10内のCO2量=W/kr(1-exp(-kr・t))。
【0034】
上記式において、Wに対してブロッコリーの呼吸による二酸化炭素発生速度、krに対して最狭部分3cの面積の合計に基づく徐放速度定数を入力することで、保冷容器10内の炭酸ガス量を見積もることができる。ブロッコリーの呼吸速度は、品種、季節により変動があるが、20mg/kg・h~35mg/kg・hとされている。
【0035】
保冷容器10の内部と外部とを連通する開口部3の数は、特に限定されない。開口部3の荷室側の入口および出口(開口3a)の数については、当該入口および出口のうち少ない方(
図4に示す蓋2を使用した場合には荷室側の入口)の数が2個~8個が好ましく、より好ましくは4個~6個である。開口部3一個当たりの最狭部分3cの開口面積は、10mm
2~25mm
2であることが好ましく、14mm
2~20mm
2であることがより好ましい。
図1~
図5に示す構成のように、各開口部3は、平面視において、保冷容器10の対角位置に配置されていることが好ましい。また、各開口部3は、平面視において、保冷容器10の四辺それぞれに配置されていることが好ましい。
【0036】
このように開口部3の数、最狭部分3cの開口面積、および開口部3の配置を設定することによって、保冷容器10内を好気状態に保ちやすくなる。
【0037】
本実施形態に係る保冷容器10では、保冷性を発揮するために、少なくとも容器本体1および蓋2が発泡成形体である必要がある。当該発泡成形体の例としては、ポリスチレン系樹脂発泡成形体、ポリオレフィン系樹脂発泡成形体、ポリウレタン系樹脂発泡成形体、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂発泡成形体、等があげられる。成型加工の容易さおよび高発泡倍率による軽量性の観点から、上記発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体であることが好ましい。
【0038】
また、上記発泡成形体の発泡倍率は、30倍~75倍であることが好ましく、40倍~65倍であることがより好ましい。発泡倍率が30倍未満であると、発泡倍率が低すぎるので、容器本体1、蓋2等を成形する際に生産性が悪化しやすくなる。また、発泡倍率が75倍を超えると、発泡倍率が高すぎるので、保冷容器10の強度および断熱性能が不足しやすい。
【0039】
保冷容器10の内容量は、特に指定しないが、ブロッコリーを内容物とした場合、ブロッコリーの収納、氷詰め、及び輸送効率のバランスから、20L~50Lが好ましく、30L~40Lが特に好ましい。また、保冷容器10の寸法は、外寸で長さ450mm~560mm、幅350mm~450mm、高さ(蓋込み)250mm~320mm、内寸で長さ400mm~520mm、幅300mm~400mm、深さ200mm~250mmが好ましい。保冷容器10において、内容量および寸法が小さすぎ上記数値範囲未満であると、ブロッコリーの輸送効率が悪くなる。また、保冷容器10において、内容量および寸法が大きすぎ上記数値範囲を超えると、作業性が低下する。
【0040】
また、保冷容器10において、容器本体1の各壁部及び蓋2の厚みは、特に限定されないが、15mm~25mmが好ましい。当該厚みが15mm未満であると、容器本体1の各壁部及び蓋2の厚みが薄くなり、保冷性能および強度が悪化する傾向にある。また、当該厚みが25mmを超えると、容器本体1および蓋2の成形性が悪化する。
【0041】
(ブロッコリーの輸送方法)
本実施形態に係るブロッコリーの輸送方法は、本実施形態に係る保冷容器10内にブロッコリーを収容し、さらに氷を充填する工程(以下、充填工程と称する場合がある)を含む。充填工程において、ブロッコリーの収容量は、保冷容器10の内容量にもよるが、例えば4kg~10kgである。充填工程では、ブロッコリーが収容された保冷容器10に対して、氷を充填する。
【0042】
また、充填工程において、保冷容器10の内容積に対するブロッコリーおよび氷の容積比率(以下、充填率と称する場合がある)は、特に限定されないが、70%~95%であることが好ましく、80%~95%であることがより好ましい。充填率は、保冷容器10に充填されたブロッコリーおよび氷の容積/保冷容器10の内容積×100(%)という式にて算出することができる。
【0043】
上記充填率が70%未満である場合、ブロッコリーの輸送効率が悪化する傾向にある。また、上記充填率が95%を超える場合、ブロッコリーの嫌気性呼吸により、臭気が発生しやすくなる。
【0044】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0045】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
なお、測定評価法は、以下の通りに実施した。
【0047】
<48時間後の保冷容器内部の温度>
雰囲気温度30℃に設定した恒温槽に、ブロッコリーおよび氷を充填した保冷容器一式を入れ、48時間静置した。その後、蓋の中央部に細孔をあけ、細孔を介して測温体を保冷容器の中心部まで挿入することによって、保冷容器内部の温度を測定した。そして、保冷容器内部の温度について、以下の基準に基づき評価を行った。
【0048】
〇:容器内の温度が20℃未満、
△:容器内の温度が20℃以上25℃未満、
×:容器内の温度が25℃以上。
【0049】
<48時間後の保冷容器内部の二酸化炭素濃度>
雰囲気温度30℃に設定した恒温槽に、ブロッコリーおよび氷を充填した保冷容器一式を入れ、48時間後静置した。その後、蓋の中央部に細孔をあけ、細孔を介して、吸引式二酸化炭素測定器の吸引ホースを、その吸引口が保冷容器の中心部まで位置するまで挿入した。そして、吸引口から保冷容器内の空気を吸引し、二酸化炭素濃度を測定した。二酸化炭素濃度の評価については、二酸化炭素濃度が10%未満を合格とした。
【0050】
<48時間後の保冷容器内の臭気>
雰囲気温度30℃に設定した恒温槽に、ブロッコリーおよび氷を充填した保冷容器一式を入れ、48時間後静置した。その後、容器の蓋を開け、容器内の臭気を官能試験によって確認し、以下の基準に基づき評価した。
【0051】
〇:たくわん臭が感じられない、
×:たくわん臭を感じる。
【0052】
<48時間後のブロッコリーの劣化状態>
雰囲気温度30℃に設定した恒温槽に、ブロッコリーおよび氷を充填した保冷容器一式を入れ、48時間後静置した。その後、容器の蓋を開け、保冷容器内のブロッコリーの劣化状態を目視観察し、以下の基準に基づき評価した。
【0053】
〇:ブロッコリーの花蕾部分の蕾がほぼ開いていない、
△:ブロッコリーの花蕾部分の蕾が3割以上開いている、
×:ブロッコリーの花蕾部分の蕾が開き、3割以上が黄色く変色している。
【0054】
<製造例1>
加圧式予備発泡機を用いて、発泡性スチレン系樹脂粒子(株式会社カネカ「カネパールTG」)を水蒸気で加熱することにより、嵩倍率64倍(嵩密度15.6g/L)の予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子を一晩静置して養生し、保冷容器の型内発泡成形に使用した。当該型内発泡成形では、保冷容器の容器本体部分の金型が搭載された成形機、および蓋部分の金型が搭載された成形機それぞれに、養生した予備発泡粒子を充填し、水蒸気によって加熱することによって、所望の保冷容器を成形した。成形する保冷容器の構成は、表1に示す実施例1~7、比較例1~6の通りである。
【0055】
(実施例1)
内容積32Lの容器本体に、収穫から12時間以内のブロッコリー5kgを充填した。そして、容器本体を振動させながら、容器本体の空間容積が3Lとなるまで粉砕氷を充填した。ここで、空間容積とは、容器本体の内容積に対してブロッコリーおよび氷が占める容積を差し引いた容積ともいえる。そこに、容器本体に蓋を取り付け、容器本体と蓋とをしっかりと嵌合させて、ブロッコリー及び氷が充填された保冷容器を得た。得られた保冷容器の内容積は、容器本体と同様の32Lであった。その後、得られた保冷容器を、雰囲気温度30℃に設定した恒温槽に導入し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0056】
ここで、蓋は、当該蓋と容器本体との嵌合によって、保冷容器の角部に外部と内部とを連通する開口部が形成され、当該開口部の荷室側の入口が4つである構成となっており、これら開口部はそれぞれ、最も狭い部分(最狭部分)の開口面積が20mm2であった。なお、保冷容器の辺部には、開口部が設けられていない。
【0057】
(実施例2~実施例7、比較例1~比較例6)
表1および表2に示すように、保冷容器の内容積と、保冷容器の角部および辺部における開口部の配置と、開口部の荷室側の入口の数と、開口部1つ当たりの最も狭い部分の開口面積と、ブロッコリーおよび氷の充填量と、を替えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価を行った。
【0058】
(比較例7)
容量44Lの箱用段ボールを組み立て、底の折り畳み部分を外部からビニールテープを一直線に貼り、上部が開いた箱形状の容器を作成した。当該箱形状の容器の中に容量45Lのビニール袋を入れ、その中にブロッコリー7kgを充填した。箱形状の容器を振動させながら、空間容積が4Lとなるまで粉砕氷を充填した。その後、箱の上部を折りたたんで外部からビニール袋で一直線に貼ることで、蓋が開かないようにした。その後、雰囲気温度30℃に設定した恒温槽に導入し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
ブロッコリーを保管、輸送する際に、ブロッコリーが独特の臭気(たくわんのような臭気)を発生させることがある。このような臭気の発生は、温度の上昇や嫌気雰囲気下で加速する傾向があり、輸送における保冷性能や発生する二酸化炭素の外部放出が重要となる。実施例1~7で示すように、保冷容器の内容積1Lに対する開口部の開口面積(最狭部分の面積)の合計値を特定の範囲とすることで、ブロッコリーから発生する二酸化炭素を効率的に保冷容器の外部へ逃がすことができるため、容器内の二酸化炭素濃度の上昇を防ぐことができる。また、保冷容器の外部と内部とを連通する開口部は容器本体と蓋との嵌合によって構成されている、すなわち、保冷容器の嵌合部に開口部が設けられていることで、保冷容器内に充填された氷が解けた場合であっても、水漏れが起こりにくい構造となっている。特に、容器本体及び蓋がポリスチレン系樹脂発泡成形体で構成されている保冷容器に氷を充填して使用することで、開口部が設けられていない保冷容器と同等程度の保冷効果を維持できると共に、開口部があることで二酸化炭素や臭気の放出だけでなく酸素の取り込み(吸引)も期待できるため、鮮度を維持しつつ輸送での臭気を抑制することがで、食品ロスの軽減にも役立つと考える。