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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079399
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】茶飲料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192319
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 駿介
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FC02
4B027FK02
4B027FP72
(57)【要約】
【課題】非重合体カテキン類を高濃度に含有しつつも、渋味が抑制された茶飲料組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B);
(A)非重合体カテキン類 0.05質量%以上
(B)シメン(b1)、テルピノレン(b2)及びカジネン(b3)
を含有し、(b2)が0.2質量ppb以上、(b3)が0.5質量ppb以上、(b1)+(b2)+(b3)が4質量ppb以上である茶飲料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)非重合体カテキン類 0.05質量%以上
(B)シメン(b1)、テルピノレン(b2)及びカジネン(b3)
を含有し、(b2)が0.2質量ppb以上、(b3)が0.5質量ppb以上、(b1)+(b2)+(b3)が4質量ppb以上である茶飲料組成物。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が20×10~1200×10である請求項1記載の茶飲料組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量が0.05~0.5質量%である請求項1又は2記載の茶飲料組成物。
【請求項4】
成分(B)の含有量が4~1000質量ppbである請求項1~3のいずれか1項記載の茶飲料組成物。
【請求項5】
シメン(b1)及びテルピノレン(b2)の合計含有量に対するカジネン(b3)の含有量の割合(b3)/{(b1)+(b2)}が0.15~3である請求項1~4のいずれか1項記載の茶飲料組成物。
【請求項6】
緑茶飲料組成物である請求項1~5のいずれか1項記載の茶飲料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非重合体カテキン類は、Camellia属の茶葉に含まれるポリフェノールの一種であり、内臓脂肪低減効果等の生理作用を有することが報告されている。非重合体カテキン類を含有する茶飲料は広く愛飲されているが、茶本来の香りが豊かで、甘味が引き立ち、苦味や渋味が抑えられた茶飲料が好まれる傾向がある。
【0003】
一方、テルペン類は、イソプレンを構成単位とする天然有機化合物の総称であり、天然香料の主体となる植物精油の主成分である。従来、ビールテイスト飲料に、δカジネンを添加することにより、麦汁調製過程で生成するトランス-2-ノネナールに起因する酸化劣化臭を低減させたビールテイスト飲料が得られること(特許文献1)、ビール様麦芽飲料製造過程の麦汁にテルペンを添加することにより、麦芽由来のオフフレーバーが低減されたビール様麦芽飲料が得られること(特許文献2)等が報告されている。また、緑茶飲料中には香気成分としてp-シメンやδ-カジネン等のテルペン類が含まれることが知られている(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-217347号公報
【特許文献2】特開2012-105591号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Agric.Food Chem., 2022, 70, 279-288
【非特許文献2】LWT-Food Science and Technology, 2019, 108, 221-232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非重合体カテキン類の生理効果を期待して非重合体カテキン類を高濃度に茶飲料に含有させると、非重合体カテキン類は渋味を有することから、飲用時に強い渋味を伴うことがある。
よって、本発明の課題は、非重合体カテキン類を高濃度に含有しつつも、渋味が抑制された茶飲料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、非重合体カテキン類を高濃度に含有する飲料に、シメン、テルピノレン及びカジネンのテルペン類3種を所定濃度以上含有させることで、渋味を抑制できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B);
(A)非重合体カテキン類 0.05質量%以上
(B)シメン(b1)、テルピノレン(b2)及びカジネン(b3)を含有し、(b2)が0.2質量ppb以上、(b3)が0.5質量ppb以上、(b1)+(b2)+(b3)が4質量ppb以上である茶飲料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非重合体カテキン類を高濃度に含有しつつも、渋味が抑制された茶飲料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の茶飲料組成物は、成分(A)として非重合体カテキン類を含有する。ここで、本明細書において「(A)非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン等の非ガレート体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のガレート体を併せての総称である。本発明においては、上記8種の非重合体カテキン類のうち少なくとも1種を含有すればよい。
成分(A)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、非重合体カテキン類を含有する植物から抽出したものでもよい。
【0011】
本発明の茶飲料組成物中の成分(A)の含有量は0.05質量%以上であるが、非重合体カテキン類の強化、生理効果の観点から、0.08質量%以上が好ましく、0.13質量%以上がより好ましく、また、渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.3質量%が更に好ましい。そして、本発明の茶飲料組成物中の成分(A)の含有量は、0.05質量%以上であり、好ましくは0.05~0.5質量%、より好ましくは0.08~0.4質量%、更に好ましくは0.13~0.3質量%である。ここで、本明細書において、成分(A)の含有量は上記8種の非重合体カテキン類の合計量に基づいて定義される。成分(A)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィーで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0012】
本発明の茶飲料組成物は、成分(B)としてシメン(b1)、テルピノレン(b2)及びカジネン(b3)を含有する。
シメンは、分子式C1014のモノテルペンである。シメンには、o-,m-,p-シメンの3種類の異性体が存在する。本発明のシメンは、いずれかの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、好ましくはp-シメン又はp-シメン混合物である。
テルピノレンは、分子式C1016のモノテルペンである。
カジネンは、分子式C1524の二環性のセスキテルペンである。二重結合の位置により,α-、β-、γ-、γ1-、γ2-、δ-、ε-及びω-カジネンがある。本発明のカジネンは、いずれかの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、好ましくはδ-カジネン又はδ-カジネン混合物である。
成分(B)としては、市販の試薬を用いても、成分(B)を豊富に含む植物抽出物の形態で含有させてもよい。なお、植物としては、成分(B)を含み、飲食品の分野において通常使用されているものであれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜選択することができる。また、抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0013】
本発明の茶飲料組成物中の成分(B)の含有量、すなわちシメン(b1)、テルピノレン(b2)及びカジネン(b3)の合計含有量は4質量ppb以上であるが、渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、5質量ppb以上が好ましく、8質量ppb以上がより好ましく、12質量ppb以上が更に好ましく、また、同様の観点から、1000質量ppb以下が好ましく、700質量ppb以下がより好ましく、250質量ppb以下が更に好ましく、100質量ppb以下がより更に好ましい。そして、本発明の茶飲料組成物中の成分(B)の含有量は、4質量ppb以上であって、好ましくは4~1000質量ppb、より好ましくは5~700質量ppb、更に好ましくは8~250質量ppb、より更に好ましくは12~100質量ppbである。
成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0014】
本発明の茶飲料組成物中の成分(b2)の含有量、すなわちテルピノレン(b2)の含有量は0.2質量ppb以上であるが、渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、0.8質量ppb以上が好ましく、2.5質量ppb以上がより好ましく、4質量ppb以上が更に好ましく、また、同様の観点から、400質量ppb以下が好ましく、300質量ppb以下がより好ましく、200質量ppb以下が更に好ましく、180質量ppb以下がより更に好ましい。そして、本発明の茶飲料組成物中の成分(b2)の含有量は、0.2質量ppb以上であって、好ましくは0.2~400質量ppb、
より好ましくは0.8~300質量ppb、更に好ましくは2.5~200質量ppb、より更に好ましくは4~180質量ppbである。
【0015】
本発明の茶飲料組成物中の成分(b3)の含有量、すなわちカジネン(b3)の含有量は0.5質量ppb以上であるが、渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、1質量ppb以上が好ましく、3質量ppb以上がより好ましく、5質量ppb以上が更に好ましく、また、同様の観点から、400質量ppb以下が好ましく、300質量ppb以下がより好ましく、200質量ppb以下が更に好ましく、180質量ppb以下がより更に好ましい。そして、本発明の茶飲料組成物中の成分(b3)の含有量は、0.5質量ppb以上であって、好ましくは0.5~400質量ppb、より好ましくは1~300質量ppb、更に好ましくは3~200質量ppb、より更に好ましくは5~180質量ppbである。
【0016】
本発明の茶飲料組成物中の成分(b1)の含有量、すなわちシメン(b1)の含有量は渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、0.8質量ppb以上が好ましく、2.5質量ppb以上がより好ましく、4質量ppb以上が更に好ましく、また、同様の観点から、300質量ppb以下が好ましく、200質量ppb以下がより好ましく、180質量ppb以下が更に好ましい。そして、本発明の茶飲料組成物中の成分(b1)の含有量は、好ましくは0.8~300質量ppbであって、より好ましくは2.5~200質量ppb、更に好ましくは4~180質量ppbである。
【0017】
シメン(b1)とテルピノレン(b2)とカジネン(b3)の比率は適宜設定できるが、渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、シメン(b1)とテルピノレン(b2)の合計含有量に対するカジネン(b3)の含有量の割合(b3)/{(b1)+(b2)}が0.15以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましく、1.4以上がより更に好ましく、また、同様の観点から、3以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2以下が更に好ましく、1.8以下がより更に好ましい。そして、本発明のシメン(b1)とテルピノレン(b2)の合計含有量に対するカジネン(b3)の含有量の割合(b3)/{(b1)+(b2)}は、好ましくは0.15~3であって、より好ましくは0.25~2.5、更に好ましくは0.4~2、より更に好ましくは1.4~1.8である。
【0018】
本発明の茶飲料組成物は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が、渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、20×10以上が好ましく、30×10以上がより好ましく、50×10以上が更に好ましく、90×10以上がより更に好ましく、また、同様の観点から、1200×10以下が好ましく、600×10以下がより好ましく、400×10以下が更に好ましく、120×10以下がより更に好ましい。そして本発明における、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]は、好ましくは20×10~1200×10であり、より好ましくは30×10~600×10、更に好ましくは50×10~400×10、より更に好ましくは90×10~120×10である。
【0019】
本発明の茶飲料組成物は、所望により、甘味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、エステル、色素、乳化剤、乳成分、保存料、調味料、品質安定剤、香料等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0020】
本発明の茶飲料組成物のpH(20℃)は、限定されないが、渋味を抑制し好ましい風味を飲料に付与する観点から、4~7.5が好ましく、5~7がより好ましく、5.4~6.4が更に好ましい。pHは、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定するものとする。
【0021】
本明細書において「茶飲料組成物」とは、Camellia属の茶葉を茶原料として含む飲料をいう。Camellia属の茶葉としては、例えば、C.sinensis var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis var.assamica又はそれらの雑種から得られる茶葉が挙げられる。茶葉は、摘採された生茶葉の他、これを乾燥、凍結等させたもの、又はこれらを製茶したものが包含される。
茶葉は、その加工方法により、不発酵茶葉、半発酵茶葉、発酵茶葉に分類される。不発酵茶葉としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶葉が挙げられる。半発酵茶葉としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶葉が挙げられる。発酵茶葉としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶葉が挙げられる。茶葉は、1種又は2種以上を使用することできる。また、茶葉の他、茎を使用してもよい。
【0022】
本発明の茶飲料組成物は、Camellia属の茶葉以外の茶原料を使用してもよい。Camellia属の茶葉以外の茶原料としては、例えば、穀物(例えば、大麦、小麦、ハト麦、ライ麦、燕麦、裸麦等の麦;玄米等の米;大豆、黒大豆、ソラマメ、インゲン豆、小豆、エビスクサ、ササゲ、ラッカセイ、エンドウ、リョクトウ等の豆;ソバ、トウモロコシ、白ゴマ、黒ゴマ、粟、稗、黍、キヌワ等の雑穀等)、イチョウの葉、柿の葉、ビワの葉、大麦若葉、明日葉、桑の葉、ケール、クコの葉、杜仲の葉、小松菜、ルイボス、クマザサ、ドクダミ、アマチャヅル、スイカズラ、ツキミソウ、カキドオシ、カワラケツメイ、ギムネマ・シルベスタ、黄杞茶(クルミ科)、甜茶(バラ科)、キダチアロエ、カモミール、ハイビスカス、ペパーミント、レモングラス、レモンピール、レモンバーム、ローズヒップ、ローズマリー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することできる。
【0023】
茶原料の抽出方法は特に限定されず、ニーダー抽出、撹拌抽出、ドリップ抽出、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。抽出溶媒としては、水、エタノール等の有機溶剤、水とエタノール等の有機溶剤水溶液等が挙げられるが、水が好ましい。搾汁等のように非溶媒の抽出法であってもよい。また、抽出条件は特に限定されず、抽出方法により適宜選択することができる。得られた抽出物は、ろ過や遠心分離処理により、夾雑物等を分離してもよい。また、必要により、抽出物を濃縮又は希釈して濃度調整してもよい。
【0024】
本発明において、好適な茶飲料組成物は、本発明の効果を享受しやすい点から、緑茶飲料組成物である。茶飲料組成物が緑茶飲料組成物である場合、全茶原料中で緑茶葉を最も多く使用する緑茶飲料がより好ましく、茶原料として緑茶葉のみを使用する緑茶飲料が更に好ましい。
【0025】
本発明の茶飲料組成物は、例えば、液状でも、固形状でもよく、適宜の形態を採り得る。
本発明の茶飲料組成物が液状である場合、飲料の形態は、希釈しないタイプのRTD(Ready to Drink)、濃縮還元飲料、ゼリー状、濃縮液状、スラリー状等の形態でもよい。ゼリー状である場合、容器に備え付けられた吸い口やストローから飲料組成物を吸引できればよく、その固形分濃度は特に限定されず、適宜選択可能である。また、本発明の茶飲料組成物が固形状である場合、常温(20℃±15℃)において固体であればその形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の種々の形状とすることができる。固形状の茶飲料組成物中の固形分量は通常95質量%以上、好ましくは97質量%以上である。かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。なお、本発明の茶飲料組成物が濃縮物又は固形物の形態である場合、前述の成分(A)の含有量が上記範囲内となるように水で希釈してRTDとしたときに、成分(B)の含有量が、好ましくは質量比[(B)/(A)]が上記要件を満たせばよい。
なかでも、飲料の形態としては、利便性の観点から、液状が好ましく、RTDがより好ましい。
【0026】
本発明の茶飲料組成物は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して容器詰飲料とすることができる。
また、本発明の茶飲料組成物は、加熱殺菌を加えてもよい。殺菌方法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合するものであれば特に限定されない。例えば、茶飲料組成物を容器に充填し、密栓若しくは密封した後殺菌するか、又は自記温度計をつけた殺菌器等で殺菌したもの若しくはろ過器等で除菌したものを自動的に容器に充填した後、密栓若しくは密封すればよい。より具体的には、レトルト殺菌法、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)等を挙げることができる。
【0027】
本発明の茶飲料組成物は適宜の方法で製造することができる。例えば、成分(A)及び成分(B)、必要により他の成分を、成分(A)と成分(B)の含有量が上記範囲内となるように混合して製造することができる。各成分の混合順序は特に限定されず、任意の順序で添加しても、同時に添加してもよい。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することが可能であり、混合装置を使用しても構わない。容器詰飲料とする際は、更に殺菌・充填工程を経て製造することができる。
【実施例0028】
(1)非重合体カテキン類の分析
純水で溶解希釈した試料を、高速液体クロマトグラフ(型式SCL-10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L-カラムODS、4.6mmφ×250mm 粒子径5μm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラジエント条件は以下の通りである。
【0029】
濃度勾配条件(体積%)
時間 A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
60分 97% 3%
【0030】
(2)シメン、テルピノレン及びカジネンの分析
試料5mLをGC用ヘッドスペースバイアル(20mL)に採取し、塩化ナトリウム3gを添加した。その後、SPMEファイバー(シグマアルドリッチ社製、50/30μm、DVB/CAR/PDMS)に含有成分を吸着させた。吸着後、SPMEファイバーを注入口で加熱脱着し、GC/MS測定を行った。分析機器は、Agilent7890A/5975Cinert(アジレント・テクノロジー社製)を使用した。
分析条件は次のとおりである。
・カラム :VF-WAX(60m(長さ)、0.25mm(内径)、1.0μm(膜厚))
・カラム温度 :40℃ (3min)→ 20℃/min→ 250℃
・カラム圧力 :定流量モード(31kPa)
・カラム流量 :lmL/min(He)
・注入口温度 :250℃
・注入方式 :スプリットレス
・検出器 :MS
・イオン源温度:230℃
・イオン化方法:EI(70eV)
・スキャン範囲:m/z10~500
・定量イオン :シメン m/z119、テルピノレン m/z136、カジネン m/z161
定量は以下の手順にて行った。
各成分の標準試薬をエタノールで溶解し、段階希釈して標品を調製した。所定濃度の標品を試料に添加し、試料単体と同様にSPMEファイバーに吸着させ、GC/MS測定を行った。そして、測定された各成分の定量イオンのピーク面積と調製濃度から検量線を作成し、試料中のシメン、テルピノレン及びカジネンの含有量を求めた。
【0031】
(3)pHの測定
pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて、試料を20℃に温度調整をして測定した。
【0032】
実施例1~3及び比較例1~7
表2に示す各成分を配合し、次いで重曹でpH6.0となるように調整し、次いでイオン交換水にて全量を100質量%に調整して緑茶飲料を得た。
各緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。その結果を表2に併せて示す。渋味改善効果は比較例1に対する評点の差である。
【0033】
[官能評価]
各実施例及び比較例で得られた緑茶飲料を飲用したときの「渋味」について、専門パネル3名が官能試験を行った。官能試験は、次の手順で行った。先ず、イオン交換水に表1に示す量のエピガロカテキンガレート(EGCG、Teavigo(太陽化学製))を配合して「渋味」の強さを15段階に調整した「渋味標準飲料」を調製した。そして、専門パネル3名が各濃度の「渋味標準飲料」について、表1に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネルがEGCG濃度の低い「渋味標準飲料」から順に摂取し、「渋味」の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各緑茶飲料を摂取し、「渋味」の程度を評価し、「渋味標準飲料」の中から「渋味」が最も近いものを決定した。そして、専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。なお、評点は、数値が大きいほど、「渋味」が強く感じられることを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
実施例4~6及び比較例8
表3に示す各成分を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。各緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同様に評価した。その結果を表3に併せて示す。渋味改善効果は比較例8に対する評点の差である。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例7~14及び比較例9~15
表4に示す各成分を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。各緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同様に評価した。その結果を表4に併せて示す。渋味改善効果は比較例9に対する評点の差である。
【0039】
【表4】
【0040】
実施例15~17及び比較例16
表5に示す各成分を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により緑茶飲料を得た。各緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同様に評価した。その結果を表5に併せて示す。渋味改善効果は比較例16に対する評点の差である。
【0041】
【表5】
【0042】
表2~表5から、茶飲料組成物にシメン、テルピノレン及びカジネンのテルペン類3種を合計で所定量以上含有させることで、非重合体カテキン類を高濃度に含有しつつも、渋味が抑制された茶飲料組成物が得られることがわかる。