(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079406
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】脂質含有食品用の日持向上剤、脂質含有食品の製造方法、脂質含有食品の日持向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/3463 20060101AFI20240604BHJP
A23L 3/3562 20060101ALI20240604BHJP
A23L 3/3472 20060101ALI20240604BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240604BHJP
A23L 3/3517 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A23L3/3463
A23L3/3562
A23L3/3472
A23L29/00
A23L3/3517
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192328
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000101215
【氏名又は名称】アサマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 瑞夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 元樹
(72)【発明者】
【氏名】高野 理絵
(72)【発明者】
【氏名】原 昇平
【テーマコード(参考)】
4B021
4B035
【Fターム(参考)】
4B021LW08
4B021MC01
4B021MK05
4B021MK21
4B021MK22
4B021MP01
4B035LC05
4B035LE01
4B035LE02
4B035LE03
4B035LG08
4B035LG12
4B035LG18
4B035LG20
4B035LG37
4B035LK19
4B035LP21
(57)【要約】
【課題】食品に添加した場合でも抗菌性物質の効果を損なわず、かつ、食品の風味を損なわない脂質含有食品用の日持向上剤、該日持向上剤が添加された脂質含有食品の製造方法、並びに、脂質含有食品含有食品の日持向上方法を提供する。
【解決手段】キトサンと疎水性抗菌物質とを有効成分とする、脂質含有食品用の日持向上剤、キトサンと疎水性抗菌物質を添加することを特徴とする、脂質含有食品の製造方法、並びに、キトサンと疎水性抗菌物質とを添加することを特徴とする、脂質含有食品の日持向上方法により解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサンと疎水性抗菌物質とを有効成分とする、脂質含有食品用の日持向上剤。
【請求項2】
前記疎水性抗菌物質が、ホップ抽出物、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、タイム抽出物、明日葉抽出物、甘草油性抽出物、孟宗竹抽出物、フェルラ酸、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1に記載の日持向上剤。
【請求項3】
請求項1又は2項に記載の日持向上剤を含有してなる、脂質含有食品。
【請求項4】
キトサンと疎水性抗菌物質を添加することを特徴とする、脂質含有食品の製造方法。
【請求項5】
前記脂質含有食品が、食品に含まれる脂質が重量ベースで0.1%以上である請求項4に記載の脂質含有食品の製造方法。
【請求項6】
キトサンと疎水性抗菌物質とを添加することを特徴とする、脂質含有食品の日持向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の風味を損なわずに抗菌性を発揮する日持向上剤に関し、特に、脂質含有食品用の日持向上剤、脂質含有食品の製造方法、並びに脂質含有食品の日持向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の微生物による腐敗、変敗を防止することにより、食品の保存性を向上させる日持向上剤が使用されている。日持向上剤の有効成分としては種々あるが、いずれの有効成分であっても、日持ち向上効果のみに着目すると食品の風味に悪影響を及ぼすおそれがある一方、風味を優先すると日持ち向上効果が低くなるという関係があるため、安定した抗菌力を発揮しつつも、食品の風味を損ねないものであることが求められる。
【0003】
醸造酢はpHが2.4~3.2の強酸性を示すため抗菌性が最も高い調味料として知られているが、醸造酢の抗菌性は乳酸菌に対しては働かず、乳酸菌が多くの抗菌物質に対して非常に抵抗性であるか若しくは非感受性のものが多いという問題があった(松田,食品微生物制御の化学,幸書房,1998)。そのため、酢酸耐性乳酸菌に対して優れた抗菌作用を示す抗菌剤組成物が提案されている。
【0004】
例えば、特開2012-111704号公報には、油相部と水相部を含有し、水相部の20℃でのpHが4.1以下、かつ水相部の食塩濃度が3.5~15質量%である酸性組成物用の、酢酸耐性乳酸菌に対する抗菌剤組成物であって、キトサン及びチアミンラウリル硫酸塩を有効成分として含有する抗菌剤組成物が、酢酸耐性乳酸菌に対して優れた抗菌作用を示すことが開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、特開2005-27563号公報には、食品用静菌剤として、(1)HLB値が13以上のショ糖脂肪酸エステル、(2)リゾチーム、(3)アミノ酸、有機酸及び有機酸塩から選ばれる1種以上を必須成分として含む惣菜用の静菌剤が、澱粉や蛋白質を含む食品に対して抗菌性を発揮し、加熱殺菌後の耐熱性菌の発育を抑制することができ、かつ、惣菜の風味や味に影響を与えないことが記載されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-111704号公報
【特許文献2】特開2005-27563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
研究者の間では、抗菌性物質の評価試験で、インビトロ(試験管実験)とインビボ(食品系での試験)との間で、結果にギャップがあることが経験的に知られている。すなわち、インビトロ(試験管実験)のようなシンプルな条件下では抗菌性物質の抗菌効果が十分に認められても、これを実際の食品に添加したときは同様の効果が認められないというものである。
【0008】
このような問題を解決するひとつの手段として、食品に添加する抗菌性物質の濃度を高める方法があるが、防菌、防カビ効果が発揮される濃度にまで高めると、有効成分由来の酸味やえぐ味等が強くなり食品の風味を損なうという問題があった。
【0009】
キトサンは食品関係への利用も一時盛んになったが、アレルゲン表示の義務化がきっかけで使用は限られてきた。最近、発酵生産技術が向上し、カビ由来のキトサンが商品化されるようになった。キトサンはタンク培養による発酵生産物でもあることから、資源的にも見通しがたつという点で鮭プロタミンに代わる機能性物質として期待される。しかしながら、キトサンには特有の収斂味があり(松田,食品危害微生物のターゲット制御,幸書房,2009)、調味料や食品用日持向上剤として使用するにはその収斂味がネックとなっていた。
【0010】
そこで本発明は、食品に添加した場合でも抗菌性物質の効果を損なわず、かつ、食品の風味を損なわない脂質含有食品用の日持向上剤、該日持向上剤が添加された脂質含有食品の製造方法、並びに、脂質含有食品の日持向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため種々の検討を行ったところ、細菌などの対象微生物に接触する前に、食品に含まれる脂質に、日持向上剤の有効成分である疎水性抗菌物質が吸着することにより抗菌効果が低下してしまうこと、そして、キトサンを添加することによりその抗菌効果が発現するとの知見を得た。
【0012】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、キトサンと、疎水性抗菌物質とを有効成分とする、脂質含有食品用の日持向上剤を提供するものである。
【0013】
本発明はまた、キトサンと疎水性抗菌物質を添加することを特徴とする、脂質含有食品の製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明はさらに、キトサンと疎水性抗菌物質を添加することを特徴とする、脂質含有食品の日持向上方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、脂質に疎水性抗菌物質が吸着することで低下する抗菌効果をキトサンが回復させるため、食品に添加した場合でも抗菌性物質の効果を損なわず、かつ、食品の風味を損なわない脂質含有食品用の日持向上剤、該日持向上剤が添加された脂質含有食品の製造方法、脂質含有食品の日持向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る脂質含有食品用の日持向上剤について説明する。本実施形態の日持向上剤は、キトサンと、疎水性抗菌物質とを有効成分とする。
【0017】
疎水性抗菌物質は疎水性であるがゆえに食品成分である脂質などに吸着しやすい。そのため従来の疎水性抗菌物質からなる日持向上剤は、細菌などの対象微生物に接触する前に、食品に含まれる脂質に、疎水性抗菌物質が吸着することにより静菌効果が低下してしまう。
【0018】
これに対し本実施形態の日持向上剤はキトサンと疎水性抗菌物質を併用することで、食品に含まれる脂質によって損なわれる疎水性抗菌物質の効果をキトサンにより発現させることができる。
【0019】
キトサンは麹カビ(Aspergillus niger)やケカビ(Mucor属)などのカビの細胞壁に含まれているため、発酵により生産されたものを使用することができる。また、キトサンはエビ、カニなどのキチンを濃アルカリで脱アセチル化することにより製造されたものを使用してもよい。
【0020】
本実施形態において、疎水性抗菌物質としては、食品添加物として認可・承認されている成分、又は認可・承認されていなくても古くから食経験があり、一般的に安全であると認識されている成分であればよく、ホップ抽出物、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、タイム抽出物、明日葉抽出物、甘草油性抽出物、孟宗竹抽出物、フェルラ酸、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
本実施形態において、「食品」とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等を幅広く含むものである。
【0022】
本実施形態において「脂質含有食品」とは、食品に含まれる脂質が重量ベースで0.1%以上であるものをいう。本実施形態に係る日持向上剤は脂質が重量ベースで0.1%未満の食品に対しても適用しうるが、脂質の割合が少ない食品はもともと疎水性抗菌物質が吸着する程度も低いため、脂質が重量ベースで0.1%以上の食品において、本実施形態の日持向上剤の特徴がより出やすい。
【0023】
本実施形態に係る日持向上剤は、前記キトサンと前記疎水性抗菌物質とを混合することにより製造することきる。配合割合としては任意の割合に配合することができるが、キトサンと疎水性抗菌物質が1:0.1~20であることが好ましい。
【0024】
本実施形態の日持向上剤の形態は特に限定されない。例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠剤、液状、ペースト状としてよい。粉末状、粒状又は顆粒状とした場合、保管コストや輸送コストを大きく減少させることができるので好ましい。
【0025】
本実施形態に係る脂質含有食品は、上述した日持向上剤を含有してなるものである。
【0026】
上述した日持向上剤を含有してなる脂質含有食品は、食品中に含まれる脂質による抗菌効果の低下が抑制され、所望の日持向上効果を得ることができる。食品は脂質が混ざった物も多く、それらは脂質単独と同じ挙動を示す。
【0027】
脂質含有食品に対する日持向上剤の添加量は、食品の重量を基準として0.01~2重量%となるように配合するのが好ましい。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る脂質含有食品の製造方法について説明する。本実施形態に係る脂質含有食品の製造方法は、キトサンと疎水性抗菌物質を添加することを特徴とする。
【0029】
疎水性抗菌物質は疎水性であるがゆえに食品成分である脂質などに吸着しやすい。そのため従来の疎水性抗菌物質を添加する脂質含有食品の製造方法は、細菌などの対象微生物に接触する前に、食品に含まれる脂質に、疎水性抗菌物質が吸着することにより静菌効果が低下してしまう。
【0030】
これに対し本実施形態の脂質含有食品の製造方法はキトサンと疎水性抗菌物質を併用することで、食品に含まれる脂質によって損なわれる疎水性抗菌物質の効果をキトサンにより発現させることができる。
【0031】
キトサンの添加量は、食品の重量を基準として0.001~0.03重量%であることが好ましい。
【0032】
本実施形態において、疎水性抗菌物質としては、食品添加物として認可・承認されている成分、又は認可・承認されていなくても古くから食経験があり、一般的に安全であると認識されている成分であればよく、ホップ抽出物、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、タイム抽出物、明日葉抽出物、甘草油性抽出物、孟宗竹抽出物、フェルラ酸、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
疎水性抗菌物質の添加量は、食品の重量を基準として0.001~1重量%であることが好ましい。
【0034】
なお、「食品」、「脂質含有食品」の意味は上述したものと同義である。
【実施例0035】
1.脂質が疎水性抗菌物質の抗菌性に及ぼす影響
食品成分である脂質に疎水性抗菌性物質が吸着することによる疎水性抗菌物質の抗菌力への影響を検討するため、吸着物質として脂質を用い、疎水性抗菌物質の抗菌性に及ぼす影響を、細菌、乳酸菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を指標として抗菌力を測定した。
【0036】
(1)キトサン及び疎水性抗菌性物質
キトサンは発酵由来のセティ社製「キトグリーン」(商標)を用いた。疎水性抗菌物質としてホップ抽出物(アサマ化成社製「ホップイン」(商標))、ローズマリー抽出物(油性抽出物40%含有、アサマ化成社製)、グリセリン脂肪酸エステル(太陽化学社製)、ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル社製)、甘草油性抽出物(常盤植物化学研究所製)を用いた。
【0037】
(2)モデル食品の調製
寒天1重量%のTYG培地(pH5.9~6.0)を調製した。また、牛乳を脂質食品として採用した。すなわち、寒天0.8%、牛乳3.0%(別滅菌で添加)のTYG培地(pH6.0)を調製した。実施例1~6の培地にはキトサンをそれぞれ100ppmずつ添加した。
【0038】
(3)指標菌
代表的な細菌として、バチルス・ズブチルス(B. sub.)、スタフィロコッカス・アウレウス(S. aur.)を、また、代表的な乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルム(L. pla.)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(P. acid.)、ロイコノストック・メセンテロイデス(L. mes.)を、指標菌としてそれぞれ供試した。
【0039】
(4)試験方法
上記のように調製したモデル食品に、疎水性抗菌物質を1%水懸濁液にして、25~1000ppm濃度になるように添加した。そして、脂質食品をカバーする食品として市販の牛乳(重量ベースで脂質3.6%)を用いて、疎水性抗菌物質の食品への吸着による欠滅(抗菌力の低下)と、キトサンによる疎水性抗菌物質の吸着阻害効果(抗菌力の保持、回復)を抗菌力(MIC)を指標にして判定した。なお、MICの測定法は常法に従った。
【0040】
(5)結果
結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
比較例1はTYG培地での各種指標菌に対するグリセリン脂肪エステルのMICである。比較例2はTYG培地に牛乳を1%添加した時のグリセリン脂肪エステルのMICである。そして実施例1は、比較例2にキトサンを100ppm添加したしたときのグリセリン脂肪エステルのMICである。
【0043】
比較例2では、牛乳にグリセリン脂肪エステルが吸着して、グリセリン脂肪エステルの抗菌力は400ppm以上に低下したが、実施例1のキトサン添加により200~400ppmに回復した。
【0044】
比較例3はTYG培地での各種指標菌に対するショ糖脂肪酸エステルのMICである。比較例4はTYG培地に牛乳を1%添加した時のショ糖脂肪酸エステルのMICである。そして実施例2は、比較例4にキトサンを100ppm添加したしたときのショ糖脂肪酸エステルのMICである。
【0045】
比較例4では、牛乳にショ糖脂肪酸エステルが吸着して、ショ糖脂肪酸エステルの抗菌力は200ppm以上に低下したが、実施例2のキトサン添加により200ppmに回復した。
【0046】
比較例5はTYG培地での各種指標菌に対するホップ抽出物のMICである。比較例6はTYG培地に牛乳を1%添加した時のホップ抽出物のMICである。そして実施例3は、比較例6にキトサンを100ppm添加したしたときのホップ抽出物のMICである。
【0047】
比較例6では、牛乳にホップ抽出物が吸着して、ホップ抽出物の抗菌力は100ppm以上に低下したが、実施例3のキトサン添加により25~50ppmに回復した。
【0048】
比較例7はTYG培地での各種指標菌に対するローズマリー抽出物のMICである。比較例8はTYG培地に牛乳を1%添加した時のローズマリー抽出物のMICである。そして実施例4は、比較例8にキトサンを100ppm添加したしたときのローズマリー抽出物のMICである。
【0049】
比較例8では、牛乳にローズマリー抽出物が吸着して、ローズマリー抽出物の抗菌力は200ppm以上に低下したが、実施例4のキトサン添加により200ppmに回復した。
【0050】
比較例9はTYG培地での各種指標菌に対する甘草油性抽出物のMICである。比較例10はTYG培地に牛乳を1%添加した時の甘草油性抽出物のMICである。そして実施例5は、比較例10にキトサンを100ppm添加したしたときの甘草油性抽出物のMICである。
【0051】
比較例10では、牛乳に甘草油性抽出物が吸着して、甘草油性抽出物の抗菌力は200ppm以上に低下したが、実施例5のキトサン添加により200ppmに回復した。
【0052】
表1の比較例、実施例の結果から、キトサンの効果として、6種類の疎水性抗菌物質が脂質食品である牛乳に吸着して抗菌作用の減殺(ロス)することを防ぐことがわかった。本試験に供した疎水性抗菌物質はグリセリン脂肪エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ホップ抽出物、ローズマリー抽出物、甘草油性抽出物であり、それぞれが代表的な食品用疎水性抗菌物質である。
【0053】
2.官能試験及び保存試験
以下の要領で食品系での官能試験と保存試験を行った。まず、醤油100重量部、砂糖10重量部、胡麻油3重量部、豆板醤3重量部、おろしニンニク2重量部、おろし生姜2重量部の配合で焼肉のタレを調製した。この焼肉のタレに、比較例11としてグリセリン脂肪酸エステル無添加対照、比較例12としてグリセリン脂肪酸エステル400ppm、実施例6としてグリセリン脂肪酸エステル400ppmにキトサン100ppmを添加した。比較例13として、より日持ち向上効果を高める目的でグリセリン脂肪酸エステル400ppmにキトサン400ppmを添加した試験区を用意した。4試験区ともタレ10gを3袋ずつ詰め、80℃、10分間殺菌したものをサンプルとした。
【0054】
結果を表2に示す。官能試験では比較例12、実施例6が、比較例11の無添加対対照品と差がなく、好ましい風味であった。比較例13ではキトサンのえぐ味が出て官能的に不適な風味となった。
【0055】
20℃における保存試験(目視による膨れの発生の観察で、3袋のうち2袋に膨れの観察された日を保存日数とした)では、比較例11が4日、比較例12が8日、実施例6が15日、比較例13が18日であった。官能試験による味の確認と保存試験の結果から、キトサンと疎水性抗菌物質、グリセリン脂肪エステルによる、脂肪の含まれた焼肉のタレの系、実施例6で確認できた。
【0056】
以上の結果から、総合評価として比較例11、12は日持ち向上の観点から好ましくなため「×」とした。また、比較例13は日持ち向上効果は良好であったものの、キトサン由来の収斂味を感じたため総合評価は「×」とした。これに対し、実施例6は官能評価も良好で保存試験も比較例11、12に比較して日持ち向上効果が顕著に向上したため、総合評価を「○」とした。
【0057】