(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007941
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】フィルム、及び積層体
(51)【国際特許分類】
B29C 59/04 20060101AFI20240112BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240112BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
B32B3/30
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109384
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 竜也
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐貴泰
(72)【発明者】
【氏名】木村 和輝
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F209
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AH04
4F071BB04
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC08
4F071BC14
4F100AK01A
4F100AK06B
4F100AK42A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100CB00B
4F100DD01A
4F100EH20
4F100EJ17
4F100HB00B
4F100JD02B
4F100JG01B
4F100JJ01B
4F100JK10
4F100JK12B
4F100JL11B
4F100YY00A
4F209AA07
4F209AA24
4F209AE07
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG03
4F209AG05
4F209AH46
4F209AH54
4F209PA04
4F209PB02
4F209PC07
4F209PC12
4F209PG05
4F209PG12
4F209PJ09
4F209PN04
4F209PN06
4F209PQ01
4F209PW43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィルム材料に関わらず、衝撃吸収性を付与することが可能なフィルム及び積層体を提供する。
【解決手段】フィルム1は、一方の面に、所定のピッチで形成された第一の畝構造2と、第一の畝構造に交差する方向に所定のピッチで形成された第二の畝構造3を有し、また前記一方の面と対向する裏面に、前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の畝に対応する位置に、それぞれ第一の溝構造及び第二の溝構造を有し、以下の式(1)を満たし、
(A+B)/(C+D)≧0.9(1)
ただし、A:前記第一の畝構造の側面において露出している領域5の面積、B:前記第二の畝構造の側面において露出している領域7の面積、C:前記第一の畝構造の側面において前記第二の畝構造に内包される領域4の面積、D:前記第二の畝構造の側面において前記第一の畝構造に内包される領域6の面積であり、前記畝構造のピッチが100μm以上、1000μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの一方の面に、所定のピッチで形成された複数の畝を備えた第一の畝構造と、前記第一の畝構造に交差する方向に所定のピッチで形成された複数の畝を備えた第二の畝構造を有し、
また前記一方の面と対向する裏面に、前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の畝に対応する位置に、それぞれ溝を備えた第一の溝構造及び第二の溝構造を有し、
以下の式(1)を満たし、
(A+B)/(C+D)≧0.9 (1)
ただし、
A:前記第一の畝構造の側面において露出している領域の面積
B:前記第二の畝構造の側面において露出している領域の面積
C:前記第一の畝構造の側面において前記第二の畝構造に内包される領域の面積
D:前記第二の畝構造の側面において前記第一の畝構造に内包される領域の面積
であり、
前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造のピッチが100μm以上、1000μm以下である、
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の断面は台形形状であり、その傾斜角が45deg以上、85deg以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの厚みが10μm以上、100μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フィルムの厚みが10μm以上、100μm以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムを上面から見たときの前記フィルム全体の面積に対する、前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の凸部の合計面積、及び底部の合計面積の比率がそれぞれ20%以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムを上面から見たときの前記フィルム全体の面積に対する、前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の凸部の合計面積、及び底部の合計面積の比率がそれぞれ20%以上である、
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載されたフィルムの少なくとも一方の面に機能層を積層する、
ことを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載されたフィルムの少なくとも一方の面に支持層を積層する、
ことを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能、などの性質がある。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買い物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料が選択される。更にプラスチックフィルムを複数種類重ね、積層体とすることもなされている。
【0003】
保護用フィルムとしては、内容物や装置、部材などを保護するため、様々な衝撃吸収性フィルムが用いられている。
例えば、特許文献1では、包装用途において内容物保護のため、材料やフィルム層構成を工夫することで、衝撃吸収性や剛性の向上を試みている。また、例えば、特許文献2、3においては、表示装置において衝撃からディスプレイパネルを保護するため、材料やフィルム層構成を工夫しており、さらに衝撃吸収性に加え、伸縮可能な柔軟性、収納時等に傷付いたりくっついたりしないなどの表面特性の向上を試みている。
このように、保護する対象により様々な検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018―86843号公報
【特許文献2】特開2016―138267号公報
【特許文献3】特開2021―181219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらのフィルムでは、保護する対象によりフィルムの構成を変更する必要があり、手間やコストがかさんでしまうという問題がある。また、保護する対象ごとに過剰に特化させてしまうと、大量生産に対応できないというフィルムとなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、フィルム材料に関わらず、衝撃吸収性を付与することが可能なフィルム及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のフィルムの一つは、
フィルムの一方の面に、所定のピッチで形成された複数の畝を備えた第一の畝構造と、前記第一の畝構造に交差する方向に所定のピッチで形成された複数の畝を備えた第二の畝構造を有し、
また前記一方の面と対向する裏面に、前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の畝に対応する位置に、それぞれ溝を備えた第一の溝構造及び第二の溝構造を有し、
以下の式(1)を満たし、
(A+B)/(C+D)≧0.9 (1)
ただし、
A:前記第一の畝構造の側面において露出している領域の面積
B:前記第二の畝構造の側面において露出している領域の面積
C:前記第一の畝構造の側面において前記第二の畝構造に内包される領域の面積
D:前記第二の畝構造の側面において前記第一の畝構造に内包される領域の面積
であり、
前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造のピッチが100μm以上、1000μm以下である、ことにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルム材料に関わらず、衝撃吸収性を付与することが可能なフィルム及び積層体を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す上面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す上面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す上面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態及び実施例を説明する。実施形態や実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0011】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0013】
図1~3に示すように、本実施形態のフィルム1は、Y方向に沿って平行に延在する複数の畝が所定間隔で並んでいる第一の畝構造2と、Y方向に直交するX方向に沿って延在する複数の畝が所定間隔で並んでいる第二の畝構造3とを備えている。第一の畝構造2と第二の畝構造3の高さは略同じであり、畝の交差部にて両構造は互いに融合している。Z方向は、フィルム1の厚さ方向である。「畝」とは、一方向に沿って細長く延在する隆起部をいい、その頂面(すなわち凸部9及び凸部16の頂面)は平面である。
【0014】
フィルム1は、表面23と裏面24を有する。フィルム1をY方向に見たZX断面形状(
図2)、及びフィルム1をX方向に見たZY断面形状(
図3)において、第一の畝構造2の畝及び第二の畝構造3の畝の長手方向に直交する断面は、ここでは台形形状を有するが、形状が共通しなくてもよい。
【0015】
フィルム1を平面上に載置した状態で、第一の畝構造2の側面において露出している領域5と、第二の畝構造3の側面において露出している領域7は、台形の斜辺に対応する傾斜部分であり、第一の畝構造2の凸部9、及び第二の畝構造3の凸部16は台形の上辺に対応する上面部分であり、その頂面は同一平面にある。底部8は隣接する2つの台形の斜辺をつなぐ下面部分となり、第一の畝構造2と第二の畝構造3とに共通する。傾斜部分とはフィルムの平面(XY平面)方向に対して±5deg以上の角度がついている部分を示し、上面部分及び下面部分とは、フィルムの平面方向に対して±5deg以内の範囲である部分を示すものとする。
【0016】
図2に示すように、畝の延在方向(Y方向)と直交する方向(X方向)における断面形状において、第一の畝構造2の凸部9の平坦部分の長さを凸部幅11とし、第一の畝構造2における隣接する畝同士の平坦部分(底部8)の長さを底部幅12とする。また、
図3に示すように、畝の延在方向(X方向)と直交する方向(Y方向)における断面形状における第二の畝構造3の凸部16の平坦部分の長さを凸部幅18とし、第二の畝構造3における隣接する畝同士の平坦部分(底部8)の長さを底部幅19とする。
【0017】
例えば、傾斜部分と上面部分又は下面部分とを接続する遷移部分が曲面状であるときは、平坦部分とは、フィルムの平面(XY平面)方向に対して±5deg以内の範囲である部分を示すものとする。また、複数の畝を並べることで凹凸が周期的に繰り返される凹凸形状が、X方向及びY方向に沿って生じる。この凹凸形状の周期ピッチを、それぞれ第一の畝構造2のピッチ15及び第二の畝構造3のピッチ22としている。凸部9と底部8のフィルム厚み方向における高さの差を高低差13とし、本実施形態では、凸部16と底部8の高さの差も、等しく高低差13となる。
【0018】
このフィルム1は、一方の表面と対向する裏面に、第一の畝構造2及び第二の畝構造3に対応する位置に、X方向に沿って延在する複数の溝を備えた第一の溝構造と、Y方向に沿って延在する複数の溝を備えた第二の溝構造を有している。溝の深さは同じであり、両構造は、溝の交差部で互いに融合している。従って、
図2,3に示すように、第一の畝構造2の凸部9や、第二の畝構造3の凸部16の裏面側には、断面が角錐台形状の空間10もしくは空間17が存在している。
【0019】
フィルム1の上面方向から外力が付与された際に、フィルム1の裏面24側に存在する空間10もしくは空間17が形成されていること、及び第一の畝構造2の側面において露出している領域5や第二の畝構造3の側面において露出している領域7が支柱(又は支持壁)のような役割を果たすため、このフィルム1は衝撃を吸収する機能を備える。衝撃吸収性の因子としては、上記の支柱の数は多い方が良く、支柱の一つあたりの面積は大きい方が良い。
【0020】
図8に示すように、支柱となる部分すなわち第一の畝構造2の側面において露出している領域5の面積と、第二の畝構造3の側面において露出している領域7の面積が、比較的大きい場合、衝撃吸収性の効果は大きくなる。一方で、
図9に示すように、支柱となる部分すなわち第一の畝構造2の側面において露出している領域5の面積と第二の畝構造3の側面において露出している領域7の面積が、比較的小さい場合、衝撃吸収性は損なわれる。
【0021】
衝撃吸収性の効果を発揮するためには、面積比率Δが以下の式(1)を満たすことが望ましい
(面積比率の式)
面積比率Δ=(A
+B)/(C+D)≧0.9 (1)
ここで、
A:第一の畝構造2の側面において露出している領域5の面積
B:第二の畝構造3の側面において露出している領域7の面積
C:第一の畝構造2の側面において第二の畝構造3に内包される領域4の面積(領域4とは、領域5をY方向に延長したときに、第二の畝構造3に内包される仮想面であり、フィルム1の寸法・形状から計算で求めることができる)
D:第二の畝構造3の側面において第一の畝構造2に内包される領域6の面積(領域6とは、領域7をX方向に延長したときに、第一の畝構造2に内包される仮想面であり、フィルム1の寸法・形状から計算で求めることができる)
である。
【0022】
面積比率Δを求めるときは、領域5と領域4を同数とし、領域7と領域6を同数とする。フィルム1の面積比率Δが0.9未満の場合、衝撃吸収をするための支柱となる各畝構造の側面において露出している領域の面積が小さくなるため、形状が潰れやすくなる。
【0023】
フィルム1の第一の畝構造2のピッチ15及び第二の畝構造3のピッチ22は、100μm以上、1000μm以下の範囲である。ピッチ15またはピッチ22が100μm未満の場合、フィルムの構造形成が困難となるおそれがある。ピッチ15またはピッチ22が1000μm以上の場合、衝撃吸収性が損なわれるおそれがある。ピッチ15及びピッチ22は、より好ましくは、150μm以上、800μm以下であると良い。さらに好ましくは、第一の畝構造2のピッチ15及び第二の畝構造3のピッチ22の少なくとも一方のピッチは、400μm以下であるとより良い。
【0024】
フィルム1は、第一の畝構造2の断面形状の凸部9及び第二の畝構造3の断面形状の凸部16、底部8、第一の畝構造2の側面において露出している領域5もしくは第二の畝構造3の側面において露出している領域7からなる台形形状を有することが好ましい。
【0025】
第一の畝構造2の台形形状の凸部幅11及び第二の畝構造3の台形形状の凸部幅18が、50μm以上、300μm以下であると良い。凸部幅11もしくは凸部幅18が、50μm未満の場合、衝撃吸収性の効果が弱まる。またこのフィルムは貼り合わせで使うことも想定されるが、基材と貼り合わせる際に接着剤の接着面積がなくなるため、貼り合わせが行えない不具合が発生することがある。凸部幅11もしくは凸部幅18が、300μm以上の場合、上述したように第一の畝構造2のピッチ15及び第二の畝構造3のピッチ22は、100μm以上、800μm以下である条件と、面積比率Δが式(1)を満たす条件との両立を図るのが難しくなることがある。第一の畝構造2の台形形状の凸部幅11及び第二の畝構造3の台形形状の凸部幅18は、より好ましくは、70μm以上、250μm以下であると良い。
【0026】
図4に示すように、フィルム1を上面から上面視したときの凸部9と凸部16を合わせた凸部全体の合計面積における、フィルム1全体の面積に対する面積の割合、及び底部8全体の合計面積における、フィルム1全体の面積に対する面積の割合がそれぞれ20%以上であると良い。これにより、衝撃を吸収させるために、面で外力を受け止めることができ、衝撃吸収性を向上させることができる。また、フィルム1と基材と貼り合わせて積層体を形成する際に、接着剤の接着面積を稼ぐことができて接着性を向上させられる。
【0027】
図2,3に示すように、フィルム1を載置した面に対する、第一の畝構造2の台形形状の傾斜角14及び第二の畝構造3の台形形状の傾斜角21は、45deg以上、85deg以下であることが好ましい。領域5及び領域7の傾き角に相当する傾斜角14及び傾斜角21が45deg未満の場合、第一の畝構造2の側面において露出している領域5及び第二の畝構造3の側面において露出している領域7がなだらかになることでフラットフィルムに近い形状になり、支柱としての機能が低下するため、衝撃吸収性が損なわれることがある。一方、傾斜角14及び傾斜角21が85deg以上の場合、後述するように凹凸構造を形成する際の金型への構造転写や金型からの剥離が困難となることがある。傾斜角14及び傾斜角21はより好ましくは、60deg以上、81deg以下が良い。第一の畝構造2の台形形状の傾斜角14と第二の畝構造3の台形形状の傾斜角21は、同一の角度でなくても良い。
【0028】
フィルム1の厚み25は、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。フィルム1の厚み25が小さい場合、フィルム剛性が低下し衝撃吸収性が損なわれることがある。フィルム1の厚み25が厚い場合、空間10もしくは空間17の体積が小さくなり、衝撃吸収性が低下することがある。フィルム1の厚み25はより好ましくは等しく、15μm以上、80μm以下が良い。
【0029】
フィルム1の高低差13は、フィルム1の厚み25よりも大きく、200μm以下であることが好ましい。台形の高さに相当する高低差13が厚み25よりも低い場合、衝撃を吸収するための空間10もしくは空間17の体積が小さくなるため、衝撃吸収性が損なわれることがある。高低差13が200μmよりも高い場合、フィルム剛性が高くなり屈曲面に積層して使用する場合に追従せずに剥がれるといった不具合が発生することがある。
【0030】
第一の畝構造2及び第二の畝構造3の交差する角度は、
図4のように90degである必要はなく、
図5のように第一の畝構造2と第二の畝構造3のなす角度の内、狭い方の角度が60deg以上、90deg以下までの角度であれば効果を発揮する。60deg未満の場合、特定の方向からの衝撃に弱くなることがある。
【0031】
上記のように、本発明は、材料特有の効果ではなく、フィルム形態、形状による効果により、衝撃吸収性を付与することが可能である。そのため、フィルム1の材料としては、何ら制限をされるものではない。例えば、剛性の高い樹脂にて、式(1)を満たすことで、剛性と衝撃吸収性の両立も可能であり、タック性はなくて輝度が表面硬さの樹脂を用いることで、柔軟性、衝撃吸収性に加え、傷付きや張り付きを抑えることも可能である。
【0032】
フィルム1の少なくとも一方の面には、支持層26が積層されて積層体を構成しても良い。
図6(a)のように形状を埋めるように支持層26が積層されていても良いし、
図6(b)のように空隙を有して支持層26が積層されていても良い。
図6(a)の場合、衝撃力を第一の畝構造2の側面において露出している領域5もしくは第二の畝構造3の側面において露出している領域7にて分散させるためには、支持層26はフィルム1よりも柔軟性の高い材料を使う必要がある。一方で、
図6(b)の場合は、支持層26の材料は特に限定されない。どちらの場合も、フィルムとしてのコシ、剛性を持たせる効果や、片面を平坦な面にする効果を期待できる。
【0033】
図6(b)のように、支持層26との貼り合わせを考える場合には、フィルム1の表面23もしくは裏面24のどちらを積層させても良い。積層させるためには凸部9もしくは凸部16や底部8の裏面が平坦となっていると良い。こうすることで、フィルム1と支持層26との接着面積を増やすことができ、接着強度を向上させることができる。
【0034】
フィルム1は、必ずしも単層構成である必要はなく
図7のように複数の層から構成されて積層体を構成しても良いし、フィルム1の一方の面に機能層27を積層して積層体を構成しても良い。機能層とは、例えば、ハードコート層、伸縮補助層、導電層、熱伝導層、バリア層、印刷層、粘着層などが挙げられる。
【0035】
フィルム1を構成する材料としては、熱やUV光等による硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂としては例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び、これらの誘導体等が挙げられる。ただし、これらの材料は特に限定されるものではなく、さらにこれらの材料は単独で用いられても良いし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられても良い。
【0036】
本実施形態のフィルム1については、例えば、熱プレスや押出成形により作製することが出来る。
【0037】
熱プレスによる方法では、フラットなフィルムに、別のフラットフィルム(支持層)を重ね、凹凸形状を設けた加熱ロール間もしくは加熱した平板状のプレス機に通した後、支持層を剥離することで、形状の付いたフィルム1を得ることが可能である。この際、プレス深さやプレス圧、プレス温度、各フィルム材料、各フィルム厚みを調整することによって、フィルム1と支持層との間の界面、つまり、支持層剥離後の裏面24に、所望の凹凸構造を付与することができる。なお、
図6(a)のような支持層26を積層した構成を得たい場合は剥離する必要はない。
【0038】
また、押出成形による方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の別の樹脂をフィードブロック法、又はマルチマニホールド法により共押出することで、2層以上の多層構成のフィルムを得ることができる。この多層構成フィルムの冷却工程において、フィルム1の形状に対応する凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、多層構成フィルムに凹凸形状を付与することが出来る。この時、ニップ圧力、樹脂温度、冷却ロール温度、各層の樹脂材料、樹脂厚みを調整することによって、多層構成フィルムの層界面にも所望の凹凸構造を付与することができる。この多層構成フィルムのフィルム化後、冷却ロール側の層を剥離することで、フィルム1を得ることができる。なお、
図6(a)のような支持層26を積層した構成を得たい場合は剥離する必要はない。
【0039】
その他、凹凸形状を設けた1対の加熱ロール間もしくは加熱した平板状のプレス機を通して作製することも出来るし、冷却ロールおよびニップロールの両方に凹凸形状を付けた押出成形にて作製するなど、特に製造方法が限定されるものではない。
【0040】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例0041】
以下、本発明者らが作成した実施例を、比較例と比較して詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
フィルム1の材料として株式会社ベルポリエステルプロダクツ製のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂「ベルペットEFG70」を用い、また、支持層として日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(PE)樹脂「ノバテックLD LC600A」を用い、共押出成形により二層を積層し、PET樹脂側を凹凸の付いたロールにてニップしながら製膜することで、支持層の付いたフィルム1を得た。その後、支持層を剥離することで、フィルム1を得た。
【0043】
フィルム形状は
図1のような、X方向及びY方向に延在した断面形状が台形形状とした。台形形状の詳細は、第一の畝構造2のピッチ15及び第二の畝構造3のピッチ22をそれぞれ719μmとし、第一の畝構造2の凸部幅11及び第二の畝構造3の凸部幅18をそれぞれ200μmとし、第一の畝構造2の底部幅12及び第二の畝構造3の底部幅19をそれぞれ450μmとし、第一の畝構造2の傾斜角14及び第二の畝構造3の傾斜角21をそれぞれ60degとし、第一の畝構造2の形状高さ13及び第二の畝構造3の形状高さ20をそれぞれ60μmとした。この時の面積比率Δは2.06となった。
【0044】
(実施例2~7,比較例1~6)
実施例2~7,比較例1~6は、断面台形形状の形状パラメータであるピッチ15及びピッチ22、凸部幅11及び凸部幅18、底部幅12及び底部幅19、傾斜角14及び傾斜角21、形状高さ13及び形状高さ20を、表1のように変更し、表1に示す面積比率Δのフィルム1を得た。なお形状パラメータ以外は実施例1と同様とした。
【0045】
(フィルムの評価)
各実施例及び比較例の性能評価として、衝撃吸収性の評価を実施した。
コンクリート上に、松浪硝子工業株式会社製の大型スライドグラス「大型スライド水縁磨t1.3」を置き、その上に、各実施例及び比較例のフィルムを重ね、その上から距離をあけて、株式会社ツバキ・ナカシマ製の鋼球(精密ボール)3/4インチサイズ「SBI―SUJ―1-3/4」を落下させた。このとき、スライドグラスが割れなければ鋼球の落下距離を10mm大きくし、再度落下試験を行った。初期の落下距離を10mmとし、スライドグラスが割れるまで、落下距離を上げていき、最終的に、割れなかった中での最高高さを落球耐久高さとして記録した。
【0046】
畝を付与していない比較例6のフラットフィルムの落球耐久高さ(40mm)に対して落球耐久高さが130%以上を達成したものを〇とした。落球耐久高さが130%未満のものを×とした。
【0047】
各実施例及び比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表1に示す。
【0048】
【0049】
(評価結果)
表1の実施例と比較例を比べると、上述したように第一の畝構造2のピッチ15及び第二の畝構造3のピッチ22が100μm以上、1000μm以下の条件と、面積比率Δが0.9以上の条件が満たされる場合は、「〇」となり、満たせないものは「×」になっていることが分かる。
【0050】
以上のように、第一の畝構造2のピッチ15及び第二の畝構造3のピッチ22が100μm以上、1000μm以下の条件と、面積比率Δが0.9以上の条件が満たされるか否かで衝撃吸収性の効果が得られるか判断できることが分かる。
【0051】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(発明1)
フィルムの一方の面に、所定のピッチで形成された複数の畝を備えた第一の畝構造と、前記第一の畝構造に交差する方向に所定のピッチで形成された複数の畝を備えた第二の畝構造を有し、
また前記一方の面と対向する裏面に、前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の畝に対応する位置に、それぞれ溝を備えた第一の溝構造及び第二の溝構造を有し、
以下の式(1)を満たし、
(A+B)/(C+D)≧0.9 (1)
ただし、
A:前記第一の畝構造の側面において露出している領域の面積
B:前記第二の畝構造の側面において露出している領域の面積
C:前記第一の畝構造の側面において前記第二の畝構造に内包される領域の面積
D:前記第二の畝構造の側面において前記第一の畝構造に内包される領域の面積
であり、
前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造のピッチが100μm以上、1000μm以下である、
ことを特徴とするフィルム。
【0052】
(発明2)
前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の断面は台形形状であり、その傾斜角が45deg以上、85deg以下である、
ことを特徴とする発明1に記載のフィルム。
【0053】
(発明3)
前記フィルム厚みが10μm以上、100μm以下である、
ことを特徴とする発明1または2に記載のフィルム。
【0054】
(発明4)
前記フィルムを上面から見たときの前記フィルム全体の面積に対する、前記第一の畝構造及び前記第二の畝構造の凸部の合計面積、及び底部の合計面積の比率がそれぞれ20%以上である、
ことを特徴とする発明1~発明3のいずれかに記載のフィルム。
【0055】
(発明5)
発明1~発明4のいずれかに記載されたフィルムの少なくとも一方の面に機能層を積層する、
ことを特徴とする積層体。
【0056】
(発明6)
発明1~発明5のいずれかに記載されたフィルムの少なくとも一方の面に支持層を積層する、
ことを特徴とする積層体。