IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーヨーカネツ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079412
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】台車の牽引及び搬送支援装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240604BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20240604BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20240604BHJP
   B60D 99/00 20090101ALI20240604BHJP
【FI】
B61B13/00 S
B62D53/00 G
B62B5/00 C
B60D99/00
B61B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】44
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192350
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】下遠 誠
【テーマコード(参考)】
3D050
3D101
【Fターム(参考)】
3D050KK02
3D101BB43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】牽引車及び被牽引台車とから構成される牽引車両が、正常に動作し、高い自由度と安定性を保持して走行するための台車の牽引及び搬送支援装置を提供する。
【解決手段】駆動輪を備える牽引車と連結する牽引車連結機構と、荷物を運搬する被牽引台車が鉛直方向に作用する全荷重を受動する被牽引台車支持機構と、前記被牽引台車支持機構に備えられる前記牽引車が前記被牽引台車を搬送させる走行機構と、を備えていることを特徴とする台車の牽引及び搬送支援装置。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を備える牽引車と連結する牽引車連結機構と、
荷物を運搬する被牽引台車が鉛直方向に作用する全荷重を受動する被牽引台車支持機構と、
前記被牽引台車支持機構に備えられる前記牽引車が前記被牽引台車を搬送させる走行機構と、
を備えていることを特徴とする台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項2】
駆動輪を備える牽引車と連結する牽引車連結機構と、
荷物を運搬する被牽引台車が鉛直方向に作用する全荷重を受動する被牽引台車支持機構と、
前記被牽引台車支持機構に備えられる前記被牽引台車を昇降する被牽引台車昇降機構と、
前記被牽引台車支持機構に連接し、前記牽引車が前記被牽引台車を搬送させる走行機構と、
を備えていることを特徴とする台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項3】
前記被牽引台車支持機構及び/又は前記台車の牽引及び搬送支援装置を構設するフレームに、前記被牽引台車と連結する被牽引台車連結機構が配備されていることを特徴とする請求項1に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項4】
前記被牽引台車支持機構及び/又は前記台車の牽引及び搬送支援装置を構設するフレームに、前記被牽引台車と連結する被牽引台車連結機構が配備されていることを特徴とする請求項2に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項5】
前記牽引車と前記被牽引台車とを仲介し、前記被牽引台車の2個以下の旋回輪を用い、前記牽引車が前記被牽引台車を牽引して搬送させることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項6】
前記走行機構が旋回輪であることを特徴とする請求項5に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項7】
前記旋回輪が2個以上であることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項8】
前記被牽引台車連結機構が、前記被牽引台車の底部を構成する前記前進方向の前方にある前方ベースフレームに連接されている前方支持パイプに挿入される部材が配備されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項9】
前記被牽引台車支持機構が、前記被牽引台車の底部の前進方向に対して約1/2よりも前記前進方向の位置にある構成部材と接触して前記全荷重を受動するように構設されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項10】
前記構成部材が、前記被牽引台車の底部を構成する前記前進方向の前方にある前方ベースフレームであることを特徴とする請求項9に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項11】
前記牽引車連結機構が、前記牽引車の前記駆動輪の軸心を結ぶ図形の重心よりも前進方向の前方で前記牽引車と回動可能に連結されるように構設されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項12】
前記牽引車連結機構が、前記牽引車の前記駆動輪の軸心を結ぶ図形の重心よりも前進方向の前方で前記牽引車と回動可能に連結されるように構設されていることを特徴とする請求項10に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項13】
前記牽引車連結機構が、前記被牽引台車のベースと前記被牽引台車の搬送面との間の高さの位置にあって、前記牽引車と連結されるように構設されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項14】
前記牽引車連結機構が、前記被牽引台車のベースと前記被牽引台車の搬送面との間の高さの位置にあって、前記牽引車と回動可能に連結されるように構設されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項15】
前記牽引車連結機構が、前記被牽引台車のベースと前記被牽引台車の搬送面との間の高さの位置にあって、前記牽引車と連結されるように構設されていることを特徴とする請求項10に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項16】
前記牽引車連結機構が、前記被牽引台車のベースと前記被牽引台車の搬送面との間の高さの位置にあって、前記牽引車と回動可能に連結されるように構設されていることを特徴とする請求項10に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項17】
前記被牽引台車支持機構に、前記被牽引台車の前進及び後進するロール方向(X軸方向)の旋回、前記被牽引台車が搬送面と接触する水平面上においてX軸と直交するピッチ方向(Y軸方向)の旋回、及び、前記被牽引台車が前記水平面と直交するヨー方向(Z軸方向)の旋回に起因する前記被牽引台車の揺動を防止する揺動防止機構が配備されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項18】
前記被牽引台車支持機構に、前記被牽引台車の前進及び後進するロール方向(X軸方向)の旋回、前記被牽引台車が搬送面と接触する水平面上においてX軸と直交するピッチ方向(Y軸方向)の旋回、及び、前記被牽引台車が前記水平面と直交するヨー方向(Z軸方向)の旋回に起因する前記被牽引台車の揺動を防止する揺動防止機構が配備されていることを特徴とする請求項12に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項19】
前記被牽引台車支持機構に、前記被牽引台車の前進及び後進するロール方向(X軸方向)の旋回、前記被牽引台車が搬送面と接触する水平面上においてX軸と直交するピッチ方向(Y軸方向)の旋回、及び、前記被牽引台車が前記水平面と直交するヨー方向(Z軸方向)の旋回に起因する前記被牽引台車の揺動を防止する揺動防止機構が配備されていることを特徴とする請求項15に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項20】
前記被牽引台車支持機構に、前記被牽引台車の前進及び後進するロール方向(X軸方向)の旋回、前記被牽引台車が搬送面と接触する水平面上においてX軸と直交するピッチ方向(Y軸方向)の旋回、及び、前記被牽引台車が前記水平面と直交するヨー方向(Z軸方向)の旋回に起因する前記被牽引台車の揺動を防止する揺動防止機構が配備されていることを特徴とする請求項16に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項21】
前記揺動防止機構が、複数のレバーであることを特徴とする請求項17に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項22】
前記複数のレバーが、前記被牽引台車の底部を構成する前記前進方向の前方にある前方ベースフレームを係止する機構であることを特徴とする請求項21に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項23】
前記揺動防止機構が、前記Y軸方向に付設される揺動防止手段と、前記揺動防止手段と係合する揺動防止補助手段とが連接されて構成され、前記揺動防止手段と前記揺動防止補助手段とで前記被牽引台車を把持して、前記被牽引台車の揺動を防止する機構であることを特徴とする請求項17に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項24】
前記揺動防止手段が、前記被牽引台車の底部を構成する前記前進方向の前方にある前方ベースフレームの長辺又は短辺方向に接触する剛性体であり、前記揺動防止補助手段が、前記前方ベースフレームに脱着可能で、前記揺動防止手段と係合して、前記被牽引台車を把持して前記被牽引台車の揺動を防止する部材であることを特徴とする請求項23に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項25】
前記剛性体が、柱状剛性体であって、前記前方ベースフレームの長辺及び/又は短辺方向に前記柱状剛性体の側面が接触して、前記被牽引台車の揺動を防止する機能を発現することを特徴とする請求項24に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項26】
前記柱状剛性体の底面の形状が、L字状、コ字状、及び、T字状のいずれかであることを特徴とする請求項25に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項27】
前記剛性体が、突起体が備えられている柱状剛性体であって、前記突起体が、前記前方ベースフレームと接触するように前記柱状剛性体のY軸方向に配備されていることを特徴とする請求項25に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項28】
前記揺動防止補助手段が、前記前方ベースフレームに連接されている前方支持パイプに挿入され、前記揺動防止手段と係合して、前記被牽引台車を把持して前記被牽引台車の揺動を防止する機能を発現する部材であることを特徴とする請求項23に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項29】
前記被牽引台車に積載される前記荷物の落下を防止する落下防止機構が配備されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項30】
前記落下防止機構が、前記フレームから前記被牽引台車の側面に延設されている前記側面の遮蔽体であることを特徴とする請求項29に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項31】
周辺環境検知センサーが配備されていることを特徴とする請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項32】
前記周辺環境検知センサーが、LiDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging
Detection and Ranging)であることを特徴とする請求項31に記載の台車の牽引及び搬送支援装置。
【請求項33】
請求項6に記載の台車の牽引及び搬送支援装置が、前記牽引車と前記被牽引台車とを仲介し、前記被牽引台車の前記2個以下の旋回輪を用い、前記牽引車が前記被牽引台車を牽引して走行することを特徴とする牽引車両。
【請求項34】
前記牽引車が、AGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)又はAMR(Autonomous Mobile Robot、自律走行搬送ロボット)であることを特徴とする請求項33に記載の牽引車両。
【請求項35】
前記AGV又はAMRが、駆動輪を2個以上備えていることを特徴とする請求項34に記載の牽引車両。
【請求項36】
前記被牽引台車が、車輪を3個以上備えていることを特徴とする請求項33に記載の牽引車両。
【請求項37】
前記被牽引台車が、車輪を3個以上備えていることを特徴とする請求項34に記載の牽引車両。
【請求項38】
前記被牽引台車が、六輪天秤台車であることを特徴とする請求項33に記載の牽引車両。
【請求項39】
前記被牽引台車が、六輪天秤台車であることを特徴とする請求項37に記載の牽引車両。
【請求項40】
少なくとも1個以上の周辺環境感知センサーが配備されていることを特徴とする請求項33に記載の牽引車両。
【請求項41】
少なくとも1個以上の周辺環境感知センサーが配備されていることを特徴とする請求項34に記載の牽引車両。
【請求項42】
前記牽引車及び/又は前記被牽引台車に、周辺環境感知センサーが配備されていることを特徴とする請求項37に記載の牽引車両。
【請求項43】
前記周辺環境検知センサーが、LiDARであることを特徴とする請求項41に記載の牽引車両。
【請求項44】
前記周辺環境検知センサーが、LiDARであることを特徴とする請求項42に記載の牽引車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえば台車の牽引及び搬送支援装置に係り、特に、牽引車(トラクター)と被牽引台車(ハンドトラック)とを仲介し、牽引車及び被牽引台車とから構成される牽引車両における、台車の牽引及び搬送支援装置、すなわち、トラクター・ハンドトラック・インターフェースに関する。
【0002】
特に、本発明は、牽引車と被牽引台車とに連結し、牽引車が被牽引台車の2個以下の旋回輪を用いて牽引する牽引車両とすることができ、牽引車の駆動輪の空転を解消して牽引車を正常に機能させると共に、牽引車両の走行の自由度と安定性を高める機能を有する台車の牽引及び搬送支援装置に関する。
【背景技術】
【0003】
消費者の物に対する需要が多種多様化するに伴い、EC(electronic commerce、電子商取引)に代表される社会経済システムが変化し、必要な物を、必要な時に、必要な量を供給するジャストインタイムシステムが展開されるようになってきた。その結果、質的及び量的な物流が益々増大し、配送センター等におけるオペレータの不足及び確保が深刻な問題となり、物流システムの自動化及び無人化が活発に推進されている。
【0004】
特に、近年、スーパーマーケットの効率化に伴う台車の搬送自動化に対する関心が高まっている。スーパーマーケットの各店舗では、従来、店舗の棚に商品を陳列するため、店舗内のバックヤードで陳列に必要な商品の品出し作業を実施していたが、店舗の能率アップを図るため、この品出し作業を配送センターに移行し、品出し作業が完了した品出し商品を積載したカゴ台車を店舗へ配送するという工程変更が進められるようになった。ただし、この工程変更は、店舗での作業は大幅に簡略化されるが、配送センターにおけるオペレータの作業量は顕著に増加するという新たな問題を生起した。
【0005】
まず、一日を通してトラックの発着が頻繁に繰り返される程各店舗向けの配送作業は多く、トラック出発前までの限られた時間内に品出し作業を行った上、品出し商品を積載したカゴ台車をトラックバース前に配送順に整列させる必要があるため、品出し作業の増加は、オペレータに大きな負担を掛けることになった。また、使用するカゴ台車は、狭いスーパーマーケット店舗の通路でスムーズな棚入れ作業を行うため、幅が狭く高積載量の六輪天秤台車を用いるケースが多くなっているが、段ボール箱のまま陳列する商品もあるので、従来からの四輪台車も適宜用いられ、台車によって異なる搬送技術を有するオペレータが必要とされる。このため、多数のカゴ台車の整列作業は経験豊富なベテランオペレータが行うケースが多いが、ベテランオペレータは限られている。しかも、カゴ台車当たり100Kgを超える重量物を短時間に整列させる作業は重労働である。
【0006】
このような新たな問題と共に、配送センターでは、既にカゴ台車の搬送及び整列に係る問題が深刻になっていたこともあり、カゴ台車だけでなく、オペレータに頼る台車の搬送全体の自動化及び無人化が強く望まれている。
【0007】
このような要望に対し、技術進歩が著しいAGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)やAMR(Autonomous Mobile Robot、自律走行搬送ロボット)等を台車の搬送に応用することが、その解決手段の一つとして期待され、これらの範疇に属する無人搬送車による台車の牽引が数多く試みられるようになってきた(例えば、特許文献1~8並びに非特許文献1)。
【0008】
そして、このような試みには、大きく分けて三つの搬送方式が認められる。第一はは、無人搬送車と台車とが連結され、無人搬送車が、そのまま台車を牽引して搬送する方式である(例えば、特許文献1及び2)。第二は、無人搬送車が、台車を昇降させる機能を有し、台車全体を浮揚させた状態で搬送する方式である(例えば、特許文献3)。第三は、無人搬送車が、台車を昇降させる機能を有し、台車の車輪の一部を浮揚させた状態で牽引して搬送する方式である(例えば、特許文献4~8)。
【0009】
第一の台車を連結しそのまま牽引して搬送する方式は、無人搬送車と台車とを連結するだけで搬送可能であるという利便性を備えている。しかし、連結部材によって長くなる全長が、最小旋回半径を増大させると共に、無人搬送車の後進方向への台車の搬送が困難であるため、無人搬送車が台車を牽引して構成される牽引車両の移動範囲や用途等が制限されるという牽引が有する根本的な問題があり、その解決には、連結部材に複雑な機能を付加する必要がある。また、台車の車輪がストッパ等で固定されている場合は、それを解除する必要がある。特に、中央固定輪を備えている六輪天秤台車の場合には、中央固定輪の直進性が高く、オペレータによる搬送においても、方向転換には一端停止した状態で旋回させる必要があるように、旋回可能な連結部材による操舵性の改良及び向上が必要である(特許文献1及び2並びに非特許文献2)。
【0010】
第二の台車全体を浮揚して搬送する方式は、ストッパで固定されている固定輪及び上記六輪天秤台車の中央固定輪の問題も解決でき、台車を無人搬送車の前進及び後進方向へ搬送可能である。しかし、無人搬送車に最大で340Kgもの全荷重が負荷される可能性がある上、台車の底部となるフレーム又は天板とその車輪の接地面との狭い間隙に進入可能な、高さが極端に低い小型無人搬送車が必要であり、昇降機構をはじめとする全ての部材や機構には特殊な技術が求められるものと考えられる。そのため、台車を半支持して半接地状態の台車の車輪を利用した台車の搬送を可能とする無人搬送車が提案されているものと推察される(特許文献1)。しかし、この技術は、昇降機構の精密な制御が必要である上、車輪のストッパの解除が必要で、中央固定輪を備えた上記六輪天秤台車の旋回が困難であるという問題も解決することはできないという浮揚搬送式の特長が相殺されるという問題が再浮上する。更に、台車の車輪が半接地状態ではない場合には、搬送中の台車の転落を防止するための強力で安全性の高い連結部材が必要であるという問題もある。
【0011】
第三の台車の車輪の一部を浮揚させた状態で牽引して搬送する方式は、台車を牽引する無人搬送車の前進する方向と反対側になる台車の後輪二輪、場合によって後輪一輪を用いた搬送で、台車の旋回、前進、及び、後進を含め、極めて自由度の高い操舵性を確保できる搬送方式である。しかも、台車の全荷重が負荷されることがないので、簡単な昇降機構を用いることができる。また、車輪の一部を浮揚させた場合に接地している台車の車輪以外に添設されているストッパを解除することなく搬送できると共に、上記六輪天秤台車の場合の中央固定輪に基づく課題も解決することができるため、トラックバース前の狭い空間に、オペレータに頼ることなく、AGV及びAMR等の無人搬送車が自律的に密度高く整列させる作業が可能となる。しかしながら、従来技術においては、無人搬送車に搭載される昇降機構が台車を浮揚させる際に、台車から無人搬送車に負荷される荷重点が無人搬送車の駆動輪上に位置しないため、無人搬送車の駆動輪が空転して移動できないと考えられ、また、発明者の実験から確認されている。しかし、この問題に言及している技術は認められない(特許文献4、5、7及び、8)。また、無人搬送車と台車の連結に、台車のフレームを利用している場合があるが、オペレータ以上の機械的な力が作用するため、フレームの強度が不足する問題もある(特許文献5、7、及び、8)。
【0012】
このような課題がある第三の台車の車輪の一部を浮揚させた状態で牽引して搬送する方式において、テコの原理を利用して、台車から無人搬送車に負荷される荷重の一部を無人搬送車の駆動輪が安定的に担うことによって、第三の方式の課題である駆動輪の空転を防止する技術が提案されている(特許文献6)。この技術は、台車を昇降する長いアーム(昇降手段)の支点となる一端が、搬送車の駆動輪の前進方向寄り(前方)に設けられ、そのアームの他端が台車を持ち上げる力点として働き、そして、無人搬送車の駆動輪の後進方向寄り(後方)でアームを支持する昇降装置が作用点として無人搬送車に負荷される台車の荷重の一部を担う機構で、テコの原理を用いるものである。しかし、アームの支点上方に働く台車の残存する荷重を無人搬送車の重量で補うことになり、無人搬送車を浮揚させる力が働くと考えられるため、無人搬送車を大型化して重量を高めなければ、無人搬送車の駆動輪の空転が生じる可能性が高いものと考えられる。そのため、その防止方法として、アームの後方一端で台車を浮揚させる杵と呼称される部分の下方に従動車輪が備えられているものと推察している。
【0013】
このように、四輪台車、カゴ台車、及び、六輪又は四輪天秤台車等の台車を搬送する技術が、種々検討されているが、旋回、前進、及び、後進の搬送が自由自在に可能な操舵性に優れた台車の牽引搬送技術は、未だ改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2021-071855号公報
【特許文献2】国際公開第2018/012284号
【特許文献3】特開2021-178561号公報
【特許文献4】特開2011-240781号公報
【特許文献5】特開2018-034633号公報
【特許文献6】特開2020-183149号公報
【特許文献7】特開2021-146936号公報
【特許文献8】特開2021-151857号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ひろしワーク,「六輪台車スルーテナーの特徴と動き|四輪台車と六輪台車の違い」,2021年3月21日更新,[on line],[2022年4月26日検索],インターネット<https://hiroshi.work/six-wheeled-truck/>.
【非特許文献2】山本大介,岸伸享,平和樹,「短期間で構築可能な自律移動ロボットシステム」,東芝レビュー,Vol.74,No.4,pp.29-32,2019年7月,[on line],[2022年4月26日検索],インターネット<https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2019/04/74_04pdf/a08.pdf>.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記背景技術に記載した状況に鑑み、牽引車(トラクター)と被牽引台車(ハンドトラック)とを仲介し、牽引車及び被牽引台車とから構成される牽引車両が、正常に動作し、高い自由度と安定性を保持して走行するための台車の牽引及び搬送支援装置を提供すること、旋回、前進、及び、後進の搬送が自由自在に可能な操舵性に優れた四輪台車、カゴ台車、及び、六輪又は四輪天秤台車等の台車の牽引搬送技術を提供することを目的とするものである。
【0017】
それに加え、或いは代替的に、本発明は、牽引車と被牽引台車とに連結し、牽引車が被牽引台車の2個以下の旋回輪を用いて牽引する牽引車両とすることができ、牽引車の駆動輪の空転を解消して牽引車を正常に機能させると共に、牽引車両の走行の自由度と安定性を高める機能を有する台車の牽引及び搬送支援装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に当たって、本発明者は、特に、第三の台車の搬送方式である、台車の車輪の一部を浮揚させた状態で牽引して搬送する方式における課題を解決し得る台車の牽引搬送技術を提供することに着眼した。これは、第三の台車の搬送方式が、前進する方向と反対側になる台車の後輪二輪、場合によって後輪一輪を用いた搬送で、台車の旋回、前進、及び、後進を含め、極めて自由度の高い操舵性が確保できる搬送方式であり、台車の全荷重が負荷されることがないので、簡単な昇降機構を用いることができ、車輪のストッパを解除する必要がなく、六輪天秤台車の中央固定輪に基づく課題も解決できる、有望な無人搬送車による台車の牽引搬送技術であるという考えに基づいている。
【0019】
そこで、発明者らは、第三の台車の搬送方式の課題が、台車を牽引する搬送装置がAGVやAMR等の無人搬送車を利用するために発現する駆動輪の空転にあるという認識に基づいて、その課題を解決するための検討を開始したところ、駆動輪の空転以外にも、新たな課題を有していることが判明した。それは、第三の台車の搬送方式においては、旋回時において、荷物の落下がなく安定した台車の走行を阻害する台車の激しい揺動が生起することである。更に調査したところ、この揺動は、特に六輪天秤台車の場合、六輪全てが設置している場合や無人搬送車ではない被牽引台車を搬送する牽引車にも認められ、台車の進行方向の長さに対するその進行方向と直交する幅方向の長さが小さいこと関係していることが分かった。つまり、オペレータは、この揺動をカバーしつつ、台車を搬送していたのであり、その操作の負担の大きさが想像を超えるものであり、本発明の重要性が再認識された。
【0020】
この揺動は、図1を用いて説明すると、台車の前進及び後進するロール方向(X軸方向)の回動、台車の車輪が接地する水平面上においてX軸と直交するピッチ方向(Y軸方向)の回動、及び、台車の車輪が接地する水平面と直交するヨー方向(Z軸方向)の回動、すなわち、X軸、Y軸、及び、Z軸を中心軸とする回動に起因して揺動が生起するものであり、特に、無人搬送車と被牽引台車とが連結されて構成される牽引車両の旋回時における、X軸及びZ軸を中心軸とするX軸方向及びZ軸方向の回動による揺動が激しいことが明らかとなった。そして、この揺動は、台車の幅が短い程、背が高い程、また、台車の荷重が無人搬送車を含む牽引車に不均一に負荷される程顕著になる。特に、六輪天秤台車のような幅の狭さに加え、背の高い台車を牽引して急激に旋回する場合には、旋回曲線の法線方向に向かって倒れ込んで、商品に大きな損傷をもたらす場合もある。
【0021】
この状況も踏まえ、本発明者は、上記した目的から出発して、さらに考察を深めた結果、特に、被牽引台車が前進する場合の前輪を浮揚させ、前進する方向と反対側になる被牽引台車の後輪二輪、場合によっては後輪一輪を用い牽引して搬送する方式において、無人搬送車のみならず、被牽引台車を搬送する牽引車の駆動輪の空転を解消すると共に、新たな課題である台車の揺動及び倒れ込みも解消し、荷物及び荷物に収容されている商品の損傷を防止でき、台車の旋回、前進、及び、後進における操舵性及び安定性に優れる牽引搬送技術を提供することが可能となることに想到した。本発明の牽引搬送技術は、本質的には、無人搬送車が被牽引台車を浮揚させて牽引して搬送する場合の、無人搬送車の駆動輪の空転を防止することを可能とするものであるが、牽引車両の揺動を防止する技術にもつながる技術思想でもある。これは、搬送される商品の損傷防止、すなわち、搬送物の安全で優しい搬送が可能な物流機器の提供が、技術開発の激しい物流機器の製造・販売・据え付けにおいて、高速化や自動化に目を向けられ、全ての顧客にとって最も重要であるが、忘れられがちな大きな価値であることに起因している。出願人は、常にこの価値を念頭に置いた技術研鑽に取り組んでおり、本発明においても、この価値を含めた牽引搬送技術を創造するための技術思想が含まれている。
【0022】
すなわち、本発明は、被牽引台車の車輪の一部を浮揚させて被牽引台車を傾斜させた状態で、前進する方向と反対側になる被牽引台車の後輪二輪又は後輪一輪を用い牽引して搬送方式において、牽引車の駆動輪の空転を解消すると共に、被牽引台車の揺動を防止し、牽引車と被牽引台車とが連結される牽引車両の旋回、前進、及び、後進に亘り、極めて高い操舵性と安定性を実現することになる。また、本発明は、車輪のストッパ及び六輪又は四輪天秤台車等の中央固定輪を有する被牽引台車の弊害を解決することにもつながるものである。
【0023】
畢竟、発明者らは、新たな課題を含む上記視点に基づいた解決手段の検討を繰り返した結果、被牽引台車の前進方向の車輪を浮揚させるための被牽引台車の昇降機に負荷される鉛直方向の全荷重を受動する牽引及び搬送支援装置と呼称すべき装置を、牽引車と被牽引台車との間に挿入し、牽引車がその牽引及び搬送支援装置を牽引して被牽引台車を搬送することが、牽引車の駆動輪の空転を完全に防止できることを見出した。更に、牽引車、その牽引及び搬送支援装置、並びに、被牽引台車から構成される牽引車両の旋回、前進、及び、後進に亘り、極めて高い操舵性と安定性を実現する手段をその牽引及び搬送支援装置に付加できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0024】
このように、本発明は、牽引車(トラクター)と被牽引台車(ハンドトラック)とを仲介し、牽引車が被牽引台車を牽引する牽引車両が、正常に動作し、高い自由度と安定性を保持して走行するための台車の牽引及び搬送支援装置、すなわち、トラクター・ハンドトラック・インターフェースに関する技術である。そして、本発明は、牽引車と被牽引台車とに連結し、牽引車が被牽引台車の2個以下の旋回輪を用いて牽引する牽引車両を構成することができる台車の牽引及び搬送支援装置であり、牽引車が被牽引台車を浮揚することによって生起する牽引車の駆動輪の空転の問題を解消して牽引車を正常に機能させる空転防止機能と共に、牽引車、牽引及び搬送支援装置、並びに、被牽引台車から構成される牽引車両を正常に機能させ、走行の自由度と安定性を高める揺動防止機能を有する台車の牽引及び搬送支援装置である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明は、少なくとも、駆動輪を備える牽引車と連結する牽引車連結機構と、荷物を運搬する被牽引台車が鉛直方向に作用する全荷重を受動する被牽引台車支持機構と、この被牽引台車支持機構に連接し、牽引車が被牽引台車を搬送させる走行機構とを備えている台車の牽引及び搬送支援装置である。そして、このような台車の牽引及び搬送支援装置は、牽引車連結機構、被牽引台車支持機構、及び、走行機構が有する機能が、それぞれ、合理的及び効果的に発揮されるフレームによって構設されていることが好ましい。ただし、このフレームは、各機構から本発明の台車の牽引及び搬送機構を構成するために、全てに亘って必要とされるものではなく、適材適所に用いるものである。後述するように、被牽引台車支持機構に走行機構を直接据え付け、フレームを必要としないのは、この一例である。
【0026】
この台車の牽引及び搬送支援装置は、牽引車と被牽引台車とを仲介し、牽引車、牽引及び搬送支援装置、並びに、被牽引台車とで牽引車両を構成し、牽引車が被牽引台車を搬送するための装置であって、被牽引台車及び被牽引台車に積載される荷物の鉛直方向に作用する荷重が、牽引及び搬送支援装置を介して牽引車に伝達されるものではなく、この荷重全てを受動するように構成される装置である。このような牽引及び搬送装置とすることによって、牽引車の機能が全て正常に発揮されることができる。
【0027】
特に、このような被牽引台車支持機構には、被牽引台車を昇降する被牽引台車昇降機能を備えていることが好ましい。これは、牽引車が、本発明の牽引及び搬送装置を介して被牽引台車を搬送する際に、被牽引台車を本発明の牽引及び搬送装置の支持機構に載置する昇降機を別途用意する必要がなく、利便性に優れているためである。すなわち、本発明は、駆動輪を備える牽引車と連結する牽引車連結機構と、荷物を運搬する被牽引台車が鉛直方向に作用する全荷重を受動する被牽引台車支持機構と、被牽引台車支持機構に備えられる、被牽引台車を昇降する被牽引台車昇降機構と、被牽引台車支持機構に連接し、牽引車が被牽引台車を搬送させる走行機構とを備えていることを特徴とする台車の牽引及び搬送支援装置である。この場合の台車の牽引及び搬送支援装置も、牽引車連結機構、昇降機を備える被牽引台車支持機構、及び、走行機構が有する機能が、それぞれ、合理的及び効果的に発揮されるフレームによって構設されていることが好ましい。このフレームに関しても、既に説明したように、適材適所に用いられることが好ましく、以下、説明を省略する。
【0028】
更に、本発明の牽引及び搬送装置は、昇降機の有無に関わらず、牽引車と被牽引台車とを仲介し、被牽引台車の2個以下の旋回輪を用い、牽引車が被牽引台車を牽引して走行させる機能を有していることを特徴としている。更に詳しくは、本発明の牽引及び搬送装置は、牽引車、牽引及び搬送支援装置、並びに、被牽引台車とで牽引車両を構成し、被牽引台車が牽引車で搬送される際に、被牽引台車の2個又は1個の旋回輪だけが搬送面と接触して搬送され、その他の、被牽引台車に備えられている固定輪、ストッパ付きの固定輪及び旋回輪、並びに、旋回輪は搬送面から浮揚した状態で、被牽引台車を牽引し、搬送するための装置である。従って、本発明の牽引及び搬送装置は、被牽引台車の前進方向の前方が持ち上げられて、被牽引台車支持機構で支えられ、被牽引台車が傾斜した状態で牽引され搬送される。
【0029】
本発明の牽引及び搬送支援装置は、このような被牽引台車の牽引及び搬送であるため、被牽引台車支持機構が被牽引台車の全荷重を受動して生起する接触摩擦力により、牽引及び搬送支援装置と被牽引台車とが接続されて、牽引車、牽引及び搬送支援装置、及び、被牽引台車から牽引車両が編成されるので、必ずしも、牽引及び搬送支援装置と被牽引台車との連結機構を設けておく必要はない。しかし、搬送面の段差や傾斜等による衝撃や不可抗力等も想定され、被牽引台車を支障なく安定して牽引及び搬送するためには、何らかの牽引及び搬送支援装置と被牽引台車との連結機構を牽引及び搬送支援装置側及び/又は被牽引台車側に備えている必要があることが好ましい。例えば、牽引及び搬送支援装置側に設ける場合、被牽引台車支持機構及び/又はフレームに、被牽引台車と連結する被牽引台車連結機構が配備されていることが好ましい。
【0030】
この被牽引台車連結機構としては、特別な機構である必要はなく、レバー等で被牽引台車のフレーム等に着脱可能に配備されていればよい。しかし、積載する荷物の重量が大きい場合、被牽引台車の荷物を囲うように備えられているガードフレームや棚受けフレーム等では強度が不足している場合があるため、被牽引台車の底部を構成する前進方向の前方にある前方ベースフレームに連接されている前方支持パイプに挿入可能な柱状の突起体のような部材が、被牽引台車連結機構に配備されて、その前方支持パイプに牽引荷重が負荷され牽引されることが好ましい。また、前方ベースフレームに係止される構造又は前方ベースフレームを把持する構造が形成されている被牽引台車連結機構であることが好ましい。
【0031】
また、被牽引台車支持機構は、被牽引台車の2個又は1個の旋回輪だけが搬送面と接触して、その他の、被牽引台車に備えられている固定輪、ストッパ付きの固定輪及び旋回輪、並びに、旋回輪は搬送面から浮揚した状態を生成することが可能であれば、被牽引台車の前方であれば問題ないが、被牽引台車の安定した浮揚状態を保持するためには、被牽引台車の底部の前進方向に対して約1/2よりも前進方向側の位置にある構成部材と接触して全荷重を受動する支持機構であることが好ましい。特に、上記前方ベースフレームであることが、安定性に加え、強度の点で好ましい。
【0032】
一方、本発明の牽引及び搬送支援装置は、牽引車と連結する牽引車連結機構が、牽引車の駆動輪の軸心を結ぶ図形の重心よりも前進方向の前方で回動可能に枢結される機構であると共に、牽引車の車両本体上部で枢結される機構であることを特徴としている。このような前者の連結位置とすることによって、牽引車、牽引及び搬送支援装置、並びに、被牽引台車で構成される牽引車両の全長が短縮され、旋回半径が縮小されるので、旋回、前進、及び、後進に亘る走行における操舵性という観点から好ましい。また、後者の枢結位置とすることによって、被牽引台車が倒れることなく、安定して牽引され搬送されることができる。
【0033】
更に、このような牽引車連結機構は、牽引車、牽引及び搬送支援装置、及び、被牽引台車が連結して構成される牽引車両が安定した走行を実現するためには、牽引車の被牽引台車を牽引する力が、牽引車両の低い位置で作用するように装備されることが好ましい。すなわち、本発明の台車の牽引及び搬送支援装置の牽引車連結機構は、被牽引台車のベースと被牽引台車の搬送面との間の高さの位置にあって、牽引車と連結されるように構設されていることを特徴としている。この場合にも、このような牽引車両の旋回、前進、及び、後進に亘る走行における操舵性という観点から、台車の牽引及び搬送装置が回動可能に装着されていることが好ましい。
【0034】
また、牽引車連結機構が連結される牽引車に、牽引車連結機構と枢結可能な凹部又は凸部を構設しておくことは好ましい。しかし、このような牽引車と牽引車連結機構のそれぞれに配備される枢結機構は、必ずしも必要ではなく、牽引車連結機構に、牽引及び搬送支援装置が回動する回動機構及び牽引車との連結する連結機構を内蔵するように内設しておくことが可能であり、牽引車を選択することがなくより好ましい。
【0035】
このように、本発明の牽引及び搬送支援装置は、牽引車(トラクター)と被牽引台車(ハンドトラック)とを仲介して牽引車及び被牽引台車とから構成される牽引車両が、被牽引台車の2個以下の車輪を用いて走行する際に、被牽引台車の前進方向の車輪を浮揚させることによって作用する鉛直方向の荷重を100%受動し、牽引車にその荷重を伝達しないため、牽引車の駆動輪の空転がないと共に、牽引車両の全長を短縮する位置での牽引車との連結されるため、牽引車両が正常に動作し、高い自由度と安定性を保持して走行することができるトラクター・ハンドトラック・インターフェースとして機能する。
【0036】
しかしながら、本発明の牽引及び搬送支援装置を用いた被牽引台車の搬送は、被牽引台車を傾斜して牽引し、二輪車又は一輪車の走行となるため、牽引車両の揺動が激しく、それを防止することが、被牽引台車に積載されている荷物を保護するために必要である。
【0037】
そのため、本発明の牽引及び搬送支援装置は、その被牽引台車支持機構に、被牽引台車の前進及び後進するロール方向(X軸方向)の回動、被牽引台車が搬送面と接触する水平面上においてX軸と直交するピッチ方向(Y軸方向)の回動、及び、被牽引台車が接触する水平面と直交するヨー方向(Z軸方向)の回動に起因する被牽引台車の揺動を防止する揺動防止機構が配備されていることを特徴としている。
【0038】
揺動防止機構としては、被牽引台車支持機構に、被牽引台車の部材を係止する複数のレバーであることが好ましく、更に、揺動防止効果を高めるため、複数のレバーが被牽引台車の前進方向に対して搬送面上で直交するY軸方向にスライド可能な構成であることがより好ましい。また、そのレバーが被牽引台車に作用する位置は、被牽引台車の底部を構成する前進方向の前方にある前方ベースフレームであって、そのベースフレームを係止する機構であることが好ましい。
【0039】
また、揺動防止機構は、レバーに限定されず、被牽引台車の前進方向に対して搬送面上で直交するY軸方向に添設される揺動防止手段と、この揺動防止手段と係合する揺動防止補助手段とが連接されて構成され、揺動防止手段と揺動防止補助手段とで被牽引台車を挟持して把持する揺動防止機構であってもよい。
【0040】
より具体的には、上記揺動防止手段が、被牽引台車の底部を構成する前進方向の前方にある前方ベースフレームの長辺又は短辺方向に接触する剛性体であり、上記揺動防止補助手段が、前方ベースフレームに脱着可能で、この剛性体と係合して、被牽引台車を前方ベースフレームで挟持して把持することによって、被牽引台車の揺動を防止する部材であることを特徴としている。
【0041】
剛性体の好ましい形状は、柱状剛性体であって、前方ベースフレームの長辺及び/又は短辺方向に柱状剛性体の側面が接触して、被牽引台車の揺動を防止する機能を効果的に発現することができる。特に、柱状剛性体の中でも、その底面の形状が、L字状、コ字状、及び、T字状のいずれかであることが揺動防止効果を発揮するためにより好ましい形状である。
【0042】
このような柱状剛性体の側面が、前方ベースフレームの長辺及び/又は短辺方向に接触して揺動を防止する効果をより高めるためには、このような柱状剛性体に突起体が備えられ、更に、この突起体も、前方ベースフレームと接触するように柱状剛性体のY軸方向に配備される方法が好ましい。
【0043】
一方、揺動防止手段と係合して揺動を防止する揺動防止補助手段は、被牽引台車の構成部材が、揺動防止手段とによって挟持されるように把持され、揺動を防止する部材であれば、特に限定されないが、前方ベースフレームに連接されている前方支持パイプに挿入され、揺動防止手段と係合して、被牽引台車を挟持するように把持して揺動を防止する機能を発現する部材であることが好ましい。これは、被牽引台車の種類による制約を受けるが、六輪天秤台車において適用することができる。
【0044】
揺動防止機構は、被牽引台車の揺動防止を目的とする記載になっているが、被牽引台車の揺動が防止されると、自ずから、それと連結され牽引車両を構成する牽引車と牽引及び搬送支援装置の揺動が減少するので、牽引車両全体の揺動防止を目的としたものでもある。このように牽引車両全体の揺動が防止されることによって、牽引車両の走行安定性が高まり、操舵性も向上する効果を奏する。
【0045】
また、揺動防止機構は、上記説明から明らかなように、牽引及び搬送支援装置と被牽引台車を連結する機能を有しているため、牽引台車連結機構と同等であり、牽引台車連結機構を兼備している技術でもある。
【0046】
このように、本発明の牽引及び搬送支援装置に揺動防止機構が備えられる場合、被牽引台車に積載される荷物の落下を十分に防止することができるが、搬送面には、構造物特有の段差や配管等の突起物等があり、それらを跨ぐように本発明の牽引及び搬送支援装置を含む牽引車両が走行する可能性がある。そのため、牽引及び搬送支援装置のフレームから被牽引台車の側面に延設されて、側面を囲むような遮蔽体が落下防止機構として配備されていることが必要とされる場合がある。特に、荷物が精密機器やワレモノ等が数多く含まれている場合には落下防止機構を配備することが好ましい。
【0047】
更に、本発明の牽引及び搬送支援装置には、周辺環境検知センサーが配備されていることが好ましい。第一に、被牽引台車の前方ベースフレーム又は天板と搬送面との狭い間隔に挿入されて牽引車及び被牽引台車と牽引車両が構設されるため、牽引及び搬送支援装置の後方で、被牽引台車方向の状況の検知が容易となるように、周辺環境検知センサーが配備されていることが、被牽引台車との円滑な連結を実現できる。第二に、牽引車両の中央に位置する牽引及び搬送支援装置は、牽引車両が狭い空間を走行する場合に、蛇行して狭い空間を形成する構造物等との衝突が考えられ、牽引及び搬送支援装置の側面で、その衝突を回避するように、周辺環境検知センサーが配備されていることが、牽引車両の円滑な走行を実現できる。この周辺環境検知センサーの方式は限定されないが、精度の高いLiDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)であることが好ましい。
【0048】
本発明の主体は、牽引及び搬送支援装置であるが、牽引車と被牽引台車とを仲介し、被牽引台車の2個以下の旋回輪を用い、牽引車が被牽引台車を牽引して走行し、被牽引台車が搬送される牽引車両には、牽引及び搬送支援装置の機能が全て反映されるため、本発明は、説明した牽引及び搬送支援装置を含む牽引車両を含むものである。
【0049】
また、牽引車両を構成する牽引車としては、冒頭で説明したように、物流システムに要求されている無人化及び自動化に対し、それに即した無人自動搬送車であることが好ましい。特に、AGV又はAMRであることが好ましい。
【0050】
そして、本発明の牽引及び搬送支援装置は、四輪台車、カゴ台車、六輪又は四輪天秤台車、ドーリー等、3個以上の車輪を有する台車全てについて、牽引車による牽引及び搬送に適用できるが、特に、積載量に優れ、オペレータに係る問題を解決することができる六輪天秤台車に対して有効で、中央固定輪及びストッパ解除の問題も解消でき、効果的である。これは、牽引車両を構成する被牽引台車として、六輪天秤台車であることが望ましい形態であることをも意味する。
【0051】
牽引及び搬送支援装置に、周辺環境感知センサーが配備されていることが好ましい第二の理由と同じ理由により、牽引車及び/又は被牽引台車に、周辺環境感知センサーが配備されている牽引車両であることが好ましい。牽引車及び/又は被牽引台車に配備される周辺環境感知センサーも、その方式に制限はないが、精度の高いLiDARであることが好ましい。なお、この場合にも、上記第一の理由があるため、牽引及び搬送支援装置に周辺環境感知センサーが配備されている牽引車両であることが好ましい。
【発明の効果】
【0052】
本発明の牽引及び搬送支援装置によれば、牽引車と被牽引台車とに連結し、牽引車が被牽引台車の2個以下の旋回輪を用いて牽引する牽引車両を構成することができ、牽引車が被牽引台車を浮揚することによって生起する牽引車の駆動輪の空転の問題を解消して牽引車を正常に機能させる空転防止機能を発揮することができる。そして、牽引車、牽引及び搬送支援装置、並びに、被牽引台車から構成される牽引車両として、高い操舵性と安定性の走行を実現し、被牽引台車を傾斜した状態で牽引して搬送するにもかかわらず、揺動が少なく、被牽引台車に積載される荷物を保護した搬送ができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明を説明するため、被牽引台車の一例として選択した六輪天秤台車の斜視模式図と本発明の一態様に係る機能の一つである揺動防止機能の揺動を明確にする座標軸である。
図2図1に示す六輪天秤台車の正面模式図(a)及び側面模式図(b)である。
図3図1に示す六輪天秤台車の搬送面と接触する前方旋回輪の間から、六輪天秤台車の後方旋回輪方向を視て撮影した写真をディザリング処理した図で、六輪天秤台車の前方から後方にかけた下面の構造を示している。
図4図1に示す六輪天秤台車の前方ベースフレーム付近の、搬送面から視た下面の模式図である。
図5】無人搬送車が、台車を傾斜させて牽引し搬送する場合に生起する、無人搬送車の駆動輪の空転を説明する二つの従来技術の側面模式図である。(a)被牽引台車を持ち上げる昇降機とレバーを一端に備え、その他端を無人搬送車の駆動輪の対称の中心に枢結されるアームを無人搬送車に添設した牽引台車浮上型無人自動牽引車の一例で、被牽引台車の前方を持ち上げた状態の側面模式図である。(b)被牽引台車を持ち上げるレバーを一端に備え、他端を無人搬送車の前方に設けた連結部に枢結されるアームと、アームを持ち上げる昇降機を無人搬送車の後方に添設した牽引台車浮上型無人自動牽引車の一例で、被牽引台車の前方を持ち上げた状態の側面模式図である。いずれの牽引台車浮上型無人自動牽引車の前輪も、僅かに搬送面から離れている。
図6】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、被牽引台車のベースとその搬送面との間の位置で牽引車本体の側部に連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図7】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、牽引車の回動軸より前方の上部で連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図8】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えていない被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、被牽引台車のベースとその搬送面との間の位置で牽引車本体の側部に連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図9】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えていない被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、牽引車の回動軸より前方の上部で連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図10】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されている牽引及び搬送支援装置が、無人自動牽引車(AGV)と被牽引台車とを仲介して牽引車両を構成し、被牽引台車を持ち上げる寸前の接地状態を示す側面模式図(a)と平面模式図(b)である。図10に示す牽引車両は、駆動輪2輪と従動輪4輪を備え回動軸を駆動輪の対称の中心に有するAGV(以下、「本AGV」と呼称)、図8に示す牽引及び搬送支援装置、及び、六輪天秤台車から構成されている一実施例である。
図11】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されている牽引及び搬送支援装置が、AGVと被牽引台車とを仲介して牽引車両を構成し、被牽引台車を持ち上げる寸前の接地状態を示す側面模式図(a)と平面模式図(b)である。図10に示す牽引車両は、本AGV、図9に示す牽引及び搬送支援装置、及び、六輪天秤台車から構成されている実施例である。
図12図10に示す牽引車両において、本発明の一実施形態に係る牽引及び搬送支援装置が、六輪天秤台車を持ち上げている状態の側面模式図である。
図13図11に示す牽引車両において、本発明の一実施形態に係る牽引及び搬送支援装置が、六輪天秤台車を持ち上げている状態の側面模式図である。
図14】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、被牽引台車のベースとその搬送面との間の位置で牽引車本体の底部二箇所で連結して回動可能な器械であり、走行機構が、二輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置と、本AGVとが連結している状態とを示す側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図15】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、被牽引台車のベースとその搬送面との間の位置で牽引車本体の底部三箇所で連結して回動可能な器械であり、走行機構が、三輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置と、本AGVとが連結している状態とを示す側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図16】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、牽引車本体の前部、側部、及び、後部に亘りを把持するように連結して回動可能な器械であり、走行機構が、一輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置と、本AGVとが連結している状態とを示す側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図17】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、走行機構、及び、被牽引台車連結機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、被牽引台車のベースとその搬送面との間の位置で牽引車本体の側部に連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置を示す側面模式図(a)と、(a)に示す牽引及び搬送支援装置が、本AGVと六輪天秤台車とを仲介して構成される牽引車両の側面模式図(b)である。
図18】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、被牽引台車のベースとその搬送面との間の位置で牽引車本体の底部三箇所で連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪であり、被牽引台車支持機構に位置可変レバー式揺動防止体が含まれていることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図19図18に示す牽引及び搬送支援装置で、位置可変レバー式揺動防止機構に備えられている揺動防止レバーが、被牽引台車(b)の幅方向に移動して、揺動防止機能を高めることが可能であることを示す平面模式図(a)である。
図20図18及び19に示す牽引及び搬送支援装置が、本AGVと六輪天秤台車とを仲介して構成している牽引車両の側面模式図である。
図21】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されており、牽引車連結機構が、牽引車の回動軸より前方の上部で連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪であり、被牽引台車支持機構にスライド式L字型柱状揺動防止体が含まれていることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。
図22図21に示す牽引及び搬送支援装置で、L字型柱状体挟持式揺動防止機構に備えられているL字型柱状揺動防止体が、被牽引台車(b)の幅方向に伸張して、揺動防止機能を高めることが可能であることを示す平面模式図(a)である。
図23図21及び22に示す牽引及び搬送支援装置が、本AGVと六輪天秤台車とを仲介して構成している牽引車両の側面模式図である。
図24】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、走行機構、及び、揺動防止機構が、フレームにより構設されている牽引及び搬送支援装置において、被牽引台車支持機構の揺動防止機能が、被牽引台車の構成部材を挟持して揺動を防止すると共に被牽引台車とを連結することが可能な、揺動防止体及び揺動防止補助体の平面模式図とその断面模式図である。(a)は、逆L字型柱状揺動防止体と角柱状揺動防止補助体とから構成される揺動防止機構の平面模式図であり、(a-1)はその断面模式図である。(b)は、円柱突起型柱状揺動防止体と角柱状揺動防止補助体とから構成される揺動防止機構の平面模式図であり、(b-1)はその断面模式図である。(c)は、角柱突起型柱状揺動防止体と咬合型揺動防止補助体とから構成される揺動防止機構の平面模式図であり、(c-1)はその断面模式図である。
図25】本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構、昇降機を備えた被牽引台車支持機構、及び、走行機構が、フレームにより構設されている牽引及び搬送支援装置が、本AGVと六輪天秤台車とを仲介して構成している牽引車両であって、牽引車連結機構が、牽引車本体の前部、側部、及び、後部に亘りを把持するように連結して回動可能な器械であり、走行機構が、四輪の旋回輪を備えている牽引及び搬送支援装置であり、本AGV、牽引及び搬送支援装置、並びに、六輪天秤台車に、それぞれ、LiDAR周辺環境検知センサーが添設されていることを特徴とする牽引車両の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面に示した実施形態を用い、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0055】
本発明に係る台車には、様々な用途で使い分けられている、四輪台車、カゴ台車、六輪天秤台車、四輪天秤台車、及び、ドーリー等があり、本発明の牽引及び搬送支援装置は、これらの台車いずれにも適用可能な機構を有している。ただし、本発明を実施するための形態を説明するに当たっては、自動化・無人化が最も求められ、搬送車による牽引が最も困難であった六輪天秤台車を被牽引台車として選択したので、本発明を理解し易いものとするため、まず、六輪天秤台車の機構を図1~4に示す模式図を用いて説明する。一方、牽引車としては、本発明の社会的、経済的、又は、産業的な要請が、オペレータの負荷の軽減であり、無人化であることから、AGVを選択して、無人搬送車の改造車も含め、無人自動牽引車と呼称して説明する。ただし、本発明は、六輪天秤台車及び無人自動牽引車に限定されるものではなく、各種台車及びAGVに類するAMRにも適用可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想のみによって限定されるものである。
【0056】
図1は、本発明を説明するため、被牽引台車の一例として選択した六輪天秤台車10の斜視模式図と本発明の機能の一つである揺動防止機能の揺動を明確にする座標軸であり、図2は、図1に示す六輪天秤台車10の正面模式図(a)及び側面模式図(b)である。図3は、図1に示す六輪天秤台車10の搬送面と接触する前方旋回輪13-2の間から、六輪天秤台車10の後方旋回輪13-3方向を視て撮影した写真をディザリング処理した図で、六輪天秤台車10の前方から後方にかけた下面の構造を示している。また、図4は、図1に示す六輪天秤台車10の前方ベースフレーム11-1付近の、搬送面から視た下面の模式図である。
【0057】
図1~4から分かるように、一般的な六輪天秤台車10は、前方ベースフレーム11-1、後方ベースフレーム11-2、センターフレーム11-3、サイドフレーム11-4、支持パイプ連結フレーム11-5、並びに、前方支持パイプ12-1及び後方支持パイプ12-2から構設されて、六輪天秤台車10の車輪13の足回りとなるベース11が形成され、前方旋回輪13-2、後方旋回輪13-3、及び、中央固定輪13-1が、それぞれ、前方ベースフレーム11-1、後方ベースフレーム11-2、及び、センターフレーム11-3の下方に固設されている。そして、これらの車輪13の全輪を固定するストッパ17が備えられている。また、物体との衝突における損傷防止・衝撃吸収のための前方バンパー11-6及び後方バンパー11-7が、それぞれ、前方ベースフレーム11-1及び後方ベースフレーム11-2に装着されている。一方、ベース11上方には、天板14が設置され、前方支持パイプ12-1及び後方支持パイプ、並びに、前方ベースフレーム11-1及び後方ベースフレーム11-2には、棚受けフレーム16を介挿し固定しているガードフレーム15が嵌装されている。
【0058】
六輪天秤台車10は、このような構成に基づいて、次のような特徴を有している。第一に、前進及び後進方向に長く、その水平面の垂直方向が短い細長い平面形状で、ガードフレーム15があるため、荷物を高く積載することできるので、耐荷重が大きく設計されている。荷物を積載した最大重量は340Kgにも及び、人力による操作には大きな負荷が掛かるため、自動化・無人化に対する要求が高い。しかし、この細長くて高い、耐荷重の大きい六輪天秤台車の特徴が、六輪天秤台車10の前方旋回輪13-2を浮揚させ、傾斜した六輪天秤台車10の中央固定輪13-1を搬送面と接触させることなく、後方旋回輪13-3だけを搬送面に接触させた牽引方式における、牽引車の駆動輪の空転の原因であり、揺動の原因となっている。第二に、車輪13の中央に、中央固定輪13-1が設けられていることである。積載量が少ない場合には、中央固定輪13-1と、前方旋回輪13-2又は後方旋回輪13-3のいずれか一方の四輪だけが接地し、積載量が多い場合には、全ての車輪13が搬送面と接触するように設計されており、荷物の軽い場合には、小回りが利き、段差スロープを上りやすい利点がある。しかし、積載量が多い場合には、直進性が高い中央固定輪13-1のため、旋回することが極めて困難であり、オペレータでは、一端停止した状態で旋回する必要性がある。この中央固定輪13―1が原因で、六輪天秤台車10を牽引車で牽引して旋回することが極めて困難であるという問題が生じる。この問題に対しては、上記六輪天秤台車10を傾斜させた牽引方式が解決手段として有効であり、実質的に二輪車の走行であるため、旋回、前進、及び、後進を含めた走行の自由度が高く、操舵性に優れた六輪天秤台車の牽引方法であると考えられる。第三に、前方旋回輪13-2の一方に配備されているストッパー17は、六輪天秤台車の待機や保管等に欠くことができないが、牽引車で牽引して搬送する場合には、その解除が余分な操作となる。この問題も、上記六輪天秤台車10を傾斜させた牽引方式が解決手段として有効である。
【0059】
六輪天秤台車を、牽引車により牽引して搬送する技術は、オペレータの負荷の軽減及び無人化が最大の目的であるが、上記六輪天秤台車の特徴に基づいた解決すべき技術課題が存在する。まず、その課題を解決する基本方針として、本発明は、段落0008~0012で説明した三つの牽引及び搬送方式の中で最も合理的であるという判断に基づき、傾斜させた六輪天秤台車を牽引して搬送する方式を選択している。そこには、主として、二つの課題がある。第一に、小型軽量の牽引車や無人搬送車等で搬送する場合に、牽引車や無人搬送車の駆動輪が空回りするという問題である。第二に、本発明者らの検討の結果により、傾斜させた六輪天秤台車が揺動して、積載している荷物が落下する可能性を否定できないという問題である。
【0060】
第一の課題は、従来技術の代表例を用いて図5に示した。図5は、無人搬送車が、台車を傾斜させて牽引し搬送する場合に生起する、無人搬送車の駆動輪の空転を説明する二つの従来技術の側面模式図である。図5(a)は、被牽引台車である六輪天秤台車10を持ち上げる昇降機(1)24-1とレバー(1)24-3を一端に備え、その他端を無人搬送車の駆動輪の対称の中心に枢結されるアーム(1)24-2を無人搬送車に添設した牽引台車浮上型無人自動牽引車(1)20の一例で、六輪天秤台車10の前方を持ち上げた状態の側面模式図であり、図5(b)は、被牽引台車として六輪天秤台車10を持ち上げるレバー(2)34-3を一端に備え、他端を無人搬送車の前方に設けた支持機構連結部(2)35に枢結されるアーム(2)34-2と、アーム(2)34-2を持ち上げる昇降機(2)34-1を無人搬送車の後方に添設した牽引台車浮上型無人自動牽引車(2)30の一例で、被牽引台車の前方を持ち上げた状態の側面模式図である。
【0061】
図5(a)及び(b)のいずれもが、六輪天秤台車10の鉛直方向に掛かる荷重を被牽引台車支持機構(1)24、被牽引台車支持機構(2)34のレバー(1)24-3、レバー(2)34-3で受動し、アーム(1)24-2、アーム(2)34-2を介して、牽引車(1)20、牽引車(2)30を上方への浮揚力として作用するため、牽引車(1)20、牽引車(2)30の全ての荷重が搬送面に作用することができず、駆動輪(1)22、駆動輪(2)32が、搬送面との間で空転するという現象を引き起こすのである。
【0062】
このような現象は、本発明者らも、実験により確認したので、被牽引台車を持ち上げる際に鉛直方向に作用する被牽引台車の荷重を全て受動させ、その荷重が無人自動牽引車に作用させることがない機構を無人自動牽引車内に設計することを検討した。その結果、被牽引台車の前方を持ち上げて、牽引し搬送する方式の無人自動牽引車においては、このような被牽引台車の鉛直方向の荷重を無人自動牽引車に作用させることがない機構を実現することが困難であることが分かった。
【0063】
第二の課題は、この原因を調査した結果、図1に示すように、六輪天秤台車100の前進及び後進する方向をX軸方向(ロール方向)、後輪が接地する水平面上にあり、X軸と直交する方向をY軸方向(ピッチ方向)、水平面と直交する方向をZ軸方向(ヨー方向)と定義するとき、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向を中心軸とした回動が、六輪天秤台車の旋回によって揺動として生起することが明らかとなった。
【0064】
そこで、まず、第一の課題を克服する解決手段として、被牽引台車を持ち上げる際に鉛直方向に作用する被牽引台車の荷重を全て受動させる装置を、無人自動牽引車とは分離し、無人自動牽引車と被牽引台車とを仲介して連結するような構成の、牽引車(トラクター)と被牽引台車(ハンドトラック)の仲介となるトラクター・ハンドトラック・インターフェースとも呼称すべき牽引及び搬送支援装置とすることを着想し、本発明に至った。その発明の代表例を図6及び図7に示す。
【0065】
図6は、本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構300、昇降式支持機構100である被牽引台車支持機構100、及び、走行機構400が、フレーム500により構設されており、牽引車連結機構300が、被牽引台車のベースとその搬送面との間の位置で牽引車本体の側部に連結して回動可能な器械であり、走行機構400が、四輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。この牽引及び搬送支援装置は、低位置牽引型昇降支持式の台車牽引及び搬送支援装置1000の範疇に入る側面連結四輪式の台車牽引及び搬送支援装置1100として記載している。
【0066】
図6の牽引車連結機構300は、側面連結機構310である。両端部に側面圧縮コイルばね式固定部材313と、中央部にフレーム500と旋回可能に枢設されるためのコの字アーム旋回軸312を備えた無人自動牽引車に連結する側面連結コの字アーム311が、側面連結機構310の中心的役割を担っており、側面連結コの字アーム311が無人自動牽引車の側面に挿入され、側面圧縮コイルばね式固定部材313で連接される。被牽引台車の鉛直方向の全ての荷重は、被牽引台車支持機構100で受動し、無人自動牽引車と連結するための着脱可能な側面圧縮コイルばね式固定部材313から、フレーム500に枢設される旋回点を介して、無人自動牽引車に牽引されるので、被牽引台車の鉛直方向の荷重を無人自動牽引車に伝達されることはなく、無人自動牽引車の駆動輪の空転の問題は生じない。また、無人自動牽引車及び被牽引台車の低い位置で牽引力が作用するため、安定した走行が可能である。また、被牽引台車支持機構100は、昇降単機能の昇降機構110であって、昇降機支持台111とそこに設置される昇降機112から構成され、走行機構400は、旋回輪で、車輪410と衝撃を吸収するサスペンション420を備え、昇降機支持台111に回動可能に四輪が固設されている。そして、フレーム500が、これらの機構を備える牽引及び搬送支援装置全体をバランスよく構設している。なお、この側面連結機構310では、無人自動牽引車の車両本体の側面部の凹部に装着されるように設計されているが、この方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0067】
図7は、本発明の一実施形態に係る、牽引車連結機構300、昇降式支持機構100である被牽引台車支持機構100、及び、走行機構400が、フレーム500により構設されており、牽引車連結機構300は、無人自動牽引車の車両本体の前方の上部で旋回可能に連結され、走行機構400が、四輪の旋回輪であることを特徴とする牽引及び搬送支援装置の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。この牽引及び搬送支援装置は、高位置牽引型昇降支持式の台車牽引及び搬送支援装置2000の範疇に入る一点連結式の台車牽引及び搬送支援装置2100として記載している。
【0068】
図7の牽引及び搬送支援装置は、連結機構300が、主に、上面連結アーム321と上面旋回軸322とから構成される上面連結機構320であることを除き、図6の牽引及び搬送支援装置と同様である。従って、この場合も、牽引台車の鉛直方向の全ての荷重は、被牽引台車支持機構100で受動し、無人自動牽引車と連結する上面旋回軸322及び被牽引台車を牽引するだけの上面連結アーム111を介して被牽引台車を牽引するので、被牽引台車の鉛直方向の荷重を無人自動牽引車に伝達せず、無人自動牽引車の空転の問題を解決することができる。なお、この上面連結機構320は、無人自動牽引車に連結する上面旋回軸322の凸形状が、無人自動牽引車の凹部に係合され、搬送面で回動可能に枢結されているが、必ずしも無人自動牽引車側に上面旋回軸322との枢結機構を設ける必要はない。牽引車連結機構320に、旋回軸322と共に、無人自動牽引車と枢結可能な連結部材を添設しておけばよい。従って、本発明の牽引及び搬送支援装置は、無人自動牽引車の種類を選ぶことはない。
【0069】
また、本発明の牽引及び搬送支援装置の主眼は、被牽引台車の鉛直方向の荷重を無人自動牽引車に負荷させないということにあるので、それ自体に昇降機能を必ずしも必要としない。例えば、図8及び9に示すように、支持台210、高さ調整台220、及び、被牽引台車を安定して支持する形状の台車支持レバー230とから構成される固定式支持機構200を備えている昇降機のない牽引及び搬送支援装置であっても、牽引及び搬送支援装置の固定式支持機構200に被牽引台車を積載するという操作を別途設ける必要であること以外、図6及び7に示した牽引及び搬送支援装置と全く同様の機能を発揮できる。ただし、昇降機522を備えている方が利便性に優れており好ましい。連結機構300の差異により、図6の連結機構を採用した場合が、図8に示す低位置牽引型固定支持式の台車の牽引及び搬送支援装置3000であり、図7の連結機構を採用した場合が、図9に示す高位置牽引型固定支持式の台車の牽引及び搬送支援装置4000である。
【0070】
図10及び11は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る側面連結四輪式の台車牽引及び搬送支援装置1100及び一点連結式の台車牽引及び搬送支援装置2100が、無人自動牽引車40と被牽引台車である六輪天秤台車10とを仲介し、六輪天秤台車10を持ち上げる寸前の接地状態を示す側面模式図(a)と平面模式図(b)である。また、本発明の一実施形態である、無人自動牽引車40、本発明の各種牽引及び搬送支援装置、及び、六輪天秤台車10とから構成される牽引車両の側面模式図(a)と平面模式図(b)でもある。
【0071】
図12及び13は、それぞれ、図10及び11の状態から、牽引及び搬送支援装置の昇降機112が六輪天秤台車10を持ち上げた状態の側面模式図であり、図5及び6に示したような駆動輪220、320の浮揚による空転が解消されていることを示している。図12及び13から分かるように、六輪天秤台車10の鉛直方向の全ての荷重は、牽引及び搬送支援装置1100、2100の被牽引台車の昇降式支持機構100及び固定式支持機構200に負荷され、連結機構300によることなく無人自動牽引車40に伝達されないので、無人自動牽引車40の駆動輪42は空転することなく、無人自動牽引車40及び本発明の牽引車両は、正常に動作する。
【0072】
このように、本発明の牽引及び搬送支援装置は、支持機構が被牽引台車の鉛直方向の全ての荷重は、牽引車との連結機構によることなく牽引車に伝達されないので、牽引車の駆動輪の空転は解消される。しかし、既に説明したように、牽引車の牽引力は、低い位置にある方が、被牽引台車を安定して牽引することができるので、図6に示した側面連結四輪式の台車牽引及び搬送支援装置1100を包含する低位置牽引型昇降支持式の台車牽引及び搬送支援装置1000の範疇に入る、底面二点連結二輪式の台車牽引及び搬送支援装置1200、底面三点連結三輪式の台車牽引及び搬送支援装置1300、及び、把持連結一輪式の台車牽引及び搬送支援装置1400を、それぞれ、図14、15、及び、16に示す。
【0073】
図14の底面二点連結二輪式の台車牽引及び搬送支援装置1200は、牽引車連結機構300として、係止部材334が先端に備えられている二本のアームを捩じりコイルバネ式固定部材333で一本のアームの両端に枢結して構成される連結三本アーム331が、中央アーム旋回軸332でフレーム500に枢設されている底面二点連結機構330を採用している。捩じりコイルバネ式固定部材333により、無人自動牽引車40の車両本体41の搬送面側から挿入されて、無人自動牽引車40と台車牽引及び搬送支援装置1200が連結される。
【0074】
図15の底面三点連結三輪式の台車牽引及び搬送支援装置1300は、牽引車連結機構300として、エアスプリング式固定部材343が先端に設けられている三本のアームから成る分離アーム341が、分離アーム旋回軸342でフレーム500に枢設されている底面三点連結機構340を採用している。エアスプリング式固定部材343のスプリングにより、無人自動牽引車40の車両本体41の底面に沿って挿入され、無人自動牽引車40と台車牽引及び搬送支援装置1300が連結される。
【0075】
図16の把持連結一輪式の台車牽引及び搬送支援装置1400は、牽引車連結機構300として、一端に係止部が形成されている二本のアームの他端を捩りコイルバネ式固定部材353で一本のアームの両端に枢結されている牽引車把持アーム351が、把持アーム旋回軸352でフレーム500に枢設されている把持連結機構350を採用している。捩りコイルバネ式固定部材353により、牽引車把持アーム351が、鉛直方向に回動するので、無人自動牽引車40の上から車両本体41の側面に沿って挿入され、無人自動牽引車40を把持するように連結する。
【0076】
低位置牽引型昇降支持式の台車牽引及び搬送支援装置1000の例として、側面連結四輪式の台車牽引及び搬送支援装置1100、底面二点連結二輪式の台車牽引及び搬送支援装置1200、底面三点連結三輪式の台車牽引及び搬送支援装置1300、及び、把持連結一輪式の台車牽引及び搬送支援装置1400を挙げたが、これらに限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。
【0077】
本発明の牽引及び搬送支援装置を用いて構成される牽引車両は、牽引及び搬送支援装置に被牽引台車との連結機構を特別に設けなくても、被牽引台車の鉛直方向の全ての荷重が牽引及び搬送支援装置の被牽引台車支持機構に負荷されるため、牽引及び搬送支援装置と被牽引台車との摩擦力による牽引は支障なく動作する。しかし、搬送面の段差や傾斜等による牽引車両への衝撃や軽量な荷物の積載が、このような連結を破壊する場合が想定される。そのため、確実な連結のためには、被牽引台車連結機構を牽引及び搬送支援装置に添設することが好ましい。
【0078】
図17には、本発明の一実施形態に係る、被牽引台車連結機構600を添設していること以外は、図6と同様の側面連結四輪式の台車連結機能を有する台車牽引及び搬送支援装置1500の側面模式図を(a)に示し、(a)に示す牽引及び搬送支援装置1500が、無人自動牽引車40と六輪天秤台車10を仲介し、それぞれ、牽引車連結機構300と台車連結機構600で連結されている牽引車両の側面模式図を(b)に示した。台車連結機構600は、六輪天秤台車10の前方ベースフレーム11-1に係合する構造が一端に設けられている台車連結バー610が、その他端でネジ固定式枢着部材612でフレーム500に回動可能にかつ固定可能に配備されている。ここでは、手動式の例を挙げているが、自動式とすることも可能である。このように、台車連結機構600を用い、無人自動牽引車40及び六輪天秤台車10と連結した図10(b)の牽引車両も、本発明の一実施形態に含まれる。
【0079】
更に、本発明の牽引及び搬送支援装置は、段落0017、0018、及び、0060等において説明した、揺動の問題を解決する揺動防止機構を被牽引台車の支持機構に備えていることが好ましい。図18には、揺動防止機構として、位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120を設け、図15と同様の底面三点連結機構340を備え、走行機構400が四輪である底面三点連結四輪式の揺動防止機能を有する台車牽引及び搬送支援装置1600の側面模式図を(a)に、平面模式図を(b)に示した。位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120は、3本の揺動防止レバー121~123が、スライド式揺動防止レバー支持台124に装着されており、昇降機112の上昇によって、被牽引台車を支持し、3本のレバーで揺動を防止するものである。
【0080】
図18に示した位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120は、揺動防止機能を高めることができる。その状態を、図19に示した。(a)は、図18に示した位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120に備えられている揺動防止レバー121~123の内、第一揺動防止レバー121と第三揺動防止レバー123が、(b)に示す六輪天秤台車10の幅方向に移動して、揺動防止機能を高めることが可能であることを示す平面模式図である。図に示すような揺動防止レバーの拡幅が、小型軽量の無人自動牽引車40による六輪天秤台車10の牽引時におけるX軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向の回動によって生起する揺動を防止する効果を高めることができた。特に、X軸及びZ軸方向の回動による揺動の防止に効果的である。
【0081】
図20は、本発明の一実施形態に係る、このような位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120を設け、底面三点連結四輪式の揺動防止機能を有する台車牽引及び搬送支援装置1600が、無人自動牽引車40と六輪天秤台車10とを仲介し構成されている牽引車両の側面模式図である。この図から、位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120が、揺動防止機構のみならず、被牽引台車連結機構として機能していることが分かる。
【0082】
揺動防止機構は、位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120以外にも、形態を変更した各種揺動防止機構を適用することができる。その代表例を図21及び22に示す。
【0083】
図21は、揺動防止機構として、L字型柱状体挟持式揺動防止機能を有する支持機構130が採用されていること以外は図7と同様の一点連結式の揺動防止機能を有する台車牽引及び搬送支援装置2200の側面模式図(a)と平面模式図(b)である。L字型柱状体挟持式揺動防止機能を有する支持機構130は、スライド式L字型柱状揺動防止体131と、それに係合して六輪天秤台車10の前方ベースフレーム11-1を挟持するように配備されている円柱状揺動防止補助体132から構成されている。スライド式L字型柱状揺動防止体131は、被牽引台車の前方ベースフレーム11-1の長辺に接触し、それと係合する円柱状揺動防止補助体132が、前方ベースフレーム11-1に連接されている前方支持パイプ12-1に挿入され、両者で六輪天秤台車10の前方ベースフレーム11-1を挟持して揺動防止機能を発現する。この様子は、後程説明する図23を参照されるとよく理解することができる。そして、円柱状揺動防止補助体132は、六輪天秤台車10を連結する機能も有しているため、符号の説明では、被牽引台車連結部材を兼備するものとして、円柱状揺動防止補助体兼被牽引台車連結部材と記載している。
【0084】
このL字型柱状体挟持式揺動防止機能を有する支持機構130も、位置可変レバー式揺動防止機構を有する支持機構120同様、スライド式L字型柱状揺動防止体131が、六輪天秤台車10の幅方向に伸張され、揺動防止機能を高めることができる。その様子は、図22に示した。(a)に示すように、スライド式L字型柱状揺動防止体131が、(b)に示す六輪天秤台車10の幅方向に伸張して、揺動防止機能を高めることができた。
【0085】
更に、図23には、本発明の一実施形態に係る、L字型柱状体挟持式揺動防止機能を有する支持機構130が採用されていること以外は図7と同様の一点連結式の揺動防止機能を有する台車牽引及び搬送支援装置2200が、無人自動牽引車40と六輪天秤台車10とを仲介して構成される牽引車両の側面模式図を示した。この図から、スライド式L字型柱状揺動防止体131は、前方ベースフレーム11-1の長辺に接触し、それと係合する円柱状揺動防止補助体132が、前方ベースフレーム11-1に連接されている前方支持パイプ12-1に挿入され、両者で六輪天秤台車10の前方ベースフレーム11-1を挟持して揺動防止機能を発現する様子が分かると同時に、円柱状揺動防止補助体132が、六輪天秤台車10を連結する機能も有していることも理解される。
【0086】
このような揺動防止体と揺動防止補助体とから成る挟持式揺動防止機構140は、図21に示すようなスライド式L字型柱状揺動防止体131と円柱状揺動防止補助体132との組合せに限定されるものではなく、様々な形態の構造体で形成することができる。その一例を図24に示す。
【0087】
挟持式揺動防止機構140として、(a)は、逆L字型柱状揺動防止体141と角柱状揺動防止補助体142とが連結される揺動防止体-揺動防止補助体連結基材147を介して係合する形態、(b)は、円柱突起型柱状揺動防止体143と角柱状揺動防止補助体144とが連結される揺動防止体-揺動防止補助体連結基材147を介して係合する形態、そして、(c)は、角柱突起型柱状揺動防止体145と咬合型揺動防止補助体146とが連結される揺動防止体-揺動防止補助体連結基材147を介して係合する形態が示されている。いずれの形態も効果に顕著な差異があるものではなく、被牽引台車の種類や構造に応じて設計されることが好ましい。
【0088】
以上、説明した本発明の牽引及び搬送支援装置が、実際に使用されるに当たっては、牽引及び搬送支援装置と被牽引台車とを連結するために、また、牽引車両が円滑に走行するために、必要に応じて、無人自動牽引車と被牽引台車とを仲介して構成される牽引車両に周辺環境検知センサーが添設されていることが好ましい。そのセンサーの種類、数量、及び、位置等は、使用される条件や環境等に応じて設定される必要があるが、、一例として、図16の把持連結一輪式の台車牽引及び搬送支援装置1400と同様の牽引車連結機構300であるが、走行機構400が四輪である把持連結四輪式の周辺環境感知機能を有する台車牽引及び搬送支援装置1700によって、周辺環境検知センサーが備えられている無人自動牽引車両40と六輪天秤台車10とが連結されている牽引車両を取り上げ、図17にはその側面模式図を示した。
【0089】
周辺環境検知センサーは、感度や信頼性に優れているLiDARが好ましく用いられる。図17では、無人自動牽引車取付LiDAR710、台車牽引及び搬送支援装置取付LiDAR720、及び、被牽引台車取付LiDAR730が、それぞれ、無人自動牽引車40、台車の牽引及び搬送支援装置1700、及び、六輪天秤台車10の所定の位置に添設されているが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、位置及び数等が設定されることが好ましい。ここでは、台車牽引及び搬送支援装置取付LiDAR720が、牽引及び搬送支援装置1700と六輪天秤台車10との連結を目的として、無人自動牽引車取付LiDAR710及び被牽引台車取付LiDAR730が、牽引車両が、狭い空間を安全で無駄がない走行経路の設定、障害物の回避、前進及び後進の動作、並びに、被牽引台車の整列等を目的として配備されている。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の台車の牽引及び搬送支援装置、及び、それを用いて牽引車と被牽引台車とから構成される牽引車両は、物流センター内等を頻繁に往来している、商品を収容している段ボール箱やコンテナ等の荷物を積載した、四輪台車、カゴ台車、六輪又は四輪天秤台車、及び、ドーリー等の台車のオペレータによる搬送作業に掛かる多大な負担を解消し、オペレータを削減することができ、極めて産業上の利用可能性が高い。
【0091】
一方、本発明の牽引及び搬送技術は、荷物の安全で優しい搬送ができる物流機器を創造するための要素技術であり、物流システムの多岐に亘って応用できる可能性が高く、物流システムの進歩に大きく貢献できるものと期待される。
【符号の説明】
【0092】
10 六輪天秤台車
11 ベース
11-1 前方ベースフレーム
11-2 後方ベースフレーム
11-3 センターフレーム
11-4 サイドフレーム
11-5 支持パイプ連結フレーム
11-6 前方バンパー
11-7 後方バンパー
12 支持パイプ
12-1 前方支持パイプ
12-2 後方支持パイプ
13 車輪
13-1 中央固定輪
13-2 前方旋回輪
13-3 後方旋回輪
13-4 シャフト
13-5 フォーク
14 天板
15 ガードフレーム
16 棚受けフレーム
17 ストッパー
20 牽引台車浮上型無人自動牽引車(1)
21 車両本体(1)
22 駆動輪(1)
23 従動輪(1)
23-1 前方従動輪(1)
23-2 後方従動輪(1)
24 被牽引台車支持機構(1)
24-1 昇降機(1)
24-2 アーム(1)
24-3 レバー(1)
25 支持機構連結部(1)
30 牽引台車浮上型無人自動牽引車(2)
31 車両本体(2)
32 駆動輪(2)
33 従動輪(2)
33-1 前方従動輪(2)
33-2 後方従動輪(2)
34 被牽引台車支持機構(2)
34-1 昇降機(2)
34-2 アーム(2)
34-3 レバー(2)
35 支持機構連結部(2)
40 台車の牽引及び搬送支援装置と連結する無人自動牽引車
41 車両本体
42 駆動輪
43 従動輪
43-1 前方従動輪
43-2 後方従動輪
1000 低位置牽引型昇降支持式の台車牽引及び搬送支援装置
1100 側面連結四輪式の台車牽引及び搬送支援装置
1200 底面二点連結二輪式の台車牽引及び搬送支援装置
1300 底面三点連結三輪式の台車牽引及び搬送支援装置
1400 把持連結一輪式の台車牽引及び搬送支援装置
1500 側面連結四輪式の台車連結機能を有する台車牽引及び搬送支援装置
1600 底面三点連結四輪式の揺動防止機能を有する台車牽引及び搬送支援装置
1700 把持連結四輪式の周辺環境感知機能を有する台車牽引及び搬送支援装置
2000 高位置牽引型昇降支持式の台車牽引及び搬送支援装置
2100 一点連結式の台車牽引及び搬送支援装置
2200 一点連結式の揺動防止機能を有する台車牽引及び搬送支援装置
3000 低位置牽引型固定支持式の台車の牽引及び搬送支援装置
4000 高位置牽引型固定支持式の台車の牽引及び搬送支援装置
5000 牽引車両
100 昇降式支持機構
110 昇降単機能の支持機構
111 昇降機支持台
112 昇降機
120 位置可変レバー式揺動防止機能を有する支持機構
121 第一揺動防止レバー
122 第二揺動防止レバー
123 第三揺動防止レバー
124 スライド式揺動防止レバー支持台
130 L字型柱状体挟持式揺動防止機能を有する支持機構
131 スライド式L字型柱状揺動防止体
132 円柱状揺動防止補助体兼被牽引台車連結部材
140 各種挟持式揺動防止機構
141 逆L字型柱状揺動防止体
142 角柱状揺動防止補助体兼被牽引台車連結部材
143 円柱突起型柱状揺動防止体
144 角柱状揺動防止補助体兼被牽引台車連結部材
145 角柱突起型柱状揺動防止体
146 咬合型揺動防止補助体兼被牽引台車連結部材
147 揺動防止体-揺動防止補助体連結基材
200 固定式支持機構
210 支持台
220 高さ調整台
230 台車支持レバー
300 牽引車連結機構
310 側面連結機構
311 側面連結コの字アーム
312 コの字アーム旋回軸
313 側面圧縮コイルバネ式固定部材
320 上面連結機構
321 上面連結アーム
322 上面旋回軸
330 底面二点連結機構
331 連結三本アーム
332 中央アーム旋回軸
333 捩じりコイルバネ式固定部材
334 係止部材
340 底面三点連結機構
341 分離アーム
342 分離アーム旋回軸
343 エアスプリング式固定部材
350 把持連結機構
351 牽引車把持アーム
352 把持アーム旋回軸
353 捩りコイルバネ式固定部材
400 走行機構(旋回車輪)
410 車輪
420 サスペンション
500 フレーム
600 台車連結機構
610 台車連結レバー
611 掛止部材
612 ネジ固定式枢着部材
700 LiDAR周辺環境感知センサー
710 無人自動牽引車取付LiDAR
720 台車の牽引及び搬送支援装置取付LiDAR
730 台車取付LiDAR
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25