(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079473
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ウェアラブルチェア
(51)【国際特許分類】
A47C 9/00 20060101AFI20240604BHJP
A47C 9/02 20060101ALI20240604BHJP
A47C 4/28 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A47C9/00 Z
A47C9/02
A47C4/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192444
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(71)【出願人】
【識別番号】593168798
【氏名又は名称】株式会社Asahicho
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】蒋 天賜
(72)【発明者】
【氏名】孫 源徽
【テーマコード(参考)】
3B095
【Fターム(参考)】
3B095AA06
3B095AA10
3B095AC01
3B095AC03
3B095CA01
(57)【要約】
【課題】使用者に対して安定して着座させることができ、また、起立時に装着させたままでも使用者の歩行の妨げとならずに安定した歩行を実現させることができるウェアラブルチェアを提供する。
【解決手段】ウェアラブルチェアは、使用者Hを着座させる際には、左脚部26及び右脚部22と、使用者Hの左右の下肢とで形成される支持多角形46の略中心部49に、着座姿勢の使用者Hの重心が位置するため、使用者Hに対して安定して着座させることができる。また、ウェアラブルチェアは、使用者Hが起立姿勢に移行した際には、使用者Hの下肢を拘束することがなく折り畳まれることから、その分、起立時に装着させたままでも使用者Hの歩行の妨げとならずに安定した歩行を実現させることができる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の下半身に着脱自在に装着され、前記使用者が起立姿勢のときに折り畳まれ、前記使用者が着座姿勢のときに展開されて前記使用者を着座させるウェアラブルチェアであって、
前記使用者の腰に着脱自在に取り付けられる腰ベルトと、
前記腰ベルトに連結され、かつ表面が前記使用者の左右の大腿部の後側に各々着脱自在に取り付けられる左座面及び右座面と、
前記使用者が着座姿勢になったときに地面に接地する左脚部及び右脚部と、
前記左座面及び前記右座面の裏面に各々設けられた左リンク機構及び右リンク機構と、
を備え、
前記左リンク機構及び前記右リンク機構は、
前記使用者が着座姿勢になったときには、前記左脚部及び前記右脚部を、前記左座面及び前記右座面からそれぞれ展開して前記使用者の左右の大腿部の後下方に向けて各々突出させ、前記左座面及び前記右座面に対して着座姿勢となった前記使用者を前記左脚部及び前記右脚部で支持させ、前記使用者が起立姿勢になったときには、前記左脚部及び前記右脚部を前記左座面及び前記右座面に各々折り畳む機構を備え、
前記左脚部及び前記右脚部によって着座姿勢の前記使用者を支持する際に、前記左脚部及び前記右脚部が前記地面に接地した接地点と、前記使用者の左右の下肢の接地点とを結んだ辺で前記地面上に形成される支持多角形の略中心部に、着座姿勢の前記使用者の重心が位置する、ウェアラブルチェア。
【請求項2】
前記左脚部及び前記右脚部は、前記地面に接地される足部を先端に有するとともに、前記左座面及び前記右座面から各々前記地面の接地点までの長さを調整可能な構成を有する、請求項1に記載のウェアラブルチェア。
【請求項3】
前記左リンク機構及び前記右リンク機構は、
前記左座面及び前記右座面の裏面の各々に一端が回転可能に連結され、他端には前記左脚部及び前記右脚部が各々回転自在に連結されている左第1リンク棒及び右第1リンク棒と、
前記左座面及び前記右座面の裏面の各々に一端が回転可能に連結され、前記左第1リンク棒及び前記右第1リンク棒と各々交差するように展開する左第2リンク棒及び右第2リンク棒と、
前記左脚部及び前記右脚部の末端と先端との間に各々後方に向けて突出して設けられ、かつ、前記左第2リンク棒及び前記右第2リンク棒の他端の各々が回転可能に連結された左支点部及び右支点部と、
前記左支点部及び前記右支点部に各々取り付けられ、かつ、前記使用者が着座時に前記左第1リンク棒及び前記右第1リンク棒の各々に当接して前記左第1リンク棒及び前記右第1リンク棒に対する前記左脚部及び前記右脚部の角度を規定する左角度制限ブロック及び右角度制限ブロックと、
を備える、請求項1に記載のウェアラブルチェア。
【請求項4】
前記使用者が起立姿勢にあるときに、前記左リンク機構及び前記右リンク機構を各々に折り畳んだ状態にロックする左ロック部及び右ロック部を備えている、請求項1に記載のウェアラブルチェア。
【請求項5】
前記左支点部及び前記右支点部には、
前記左脚部及び前記右脚部を各々前記腰ベルトに向けて引き寄せる右ワイヤー及び左ワイヤーが設けられている、請求項1に記載のウェアラブルチェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルチェアに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、少子高齢化が進み、病院や介護現場では、コロナ禍が追い打ちをかけてスタッフ一人当たりの負担が増加している。また、建設現場、組立工場、農業、物流等の現場作業では、密を避けるために作業者数を減らし、一人当たりの負担が増加している。特に、職業疾病の6割、かつ第1位の要因が腰痛であり、持ち上げ動作を補助する装置や器具が各種開発・製品化がなされている。
【0003】
しかし、中腰作業や立ち作業を補助する器具は十分に開発されていない。例えば、入浴介助時に被介護者の頭や体を洗う介護者は、持ち上げ動作を行わずとも常に中腰姿勢を維持しなければならない。また、様々な角度から作業と確認が必要な理髪店・美容院のスタッフ、歯科医等は、作業をしながら自身で椅子を移動させており、負担が増加している。また、高齢者は、加齢に伴い筋力が低下し、コロナ禍もあいまって外出が億劫になり、脳卒中発生率を高めかねない。このような背景から、座りたい時にどこでも座れると、様々な業種の作業者や、高齢者等に効果が見込めることが容易に想像できる。
【0004】
近年、高齢者は、疲れた時に一度座って休憩し、また歩き出すことができれば行動範囲を広げることができる、シルバーカートと呼ばれる着座可能な手押し車を利用している。しかし、この手押し車は、行動範囲が限定されるおそれがある。
【0005】
このような欠点を補うために、すでに種々のウェアラブルチェアが製品化されている。例えば、非特許文献1に提示されているウェアラブルチェアは、腿裏に2本の脚を付加し、2本の脚部と自身の2脚を結んで支持多角形(支持脚多角形)を作り、即座に着座姿勢を取ることができる。支持多角形は、支持脚の接地点を結んだ辺で構成される凸多角形を水平面上に投影したものである。
【0006】
また、非特許文献2や、非特許文献3に提示されているウェアラブルチェアは、足全体に3kg強のフレームを取り付け、わずかに膝を曲げた姿勢で立脚姿勢を保持することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「LEX|まるで体の一部のように持ち運び可能なポータブルウェアラブルチェア「レックス」、[令和4年11月1日検索]、インターネット <URL:https://www.rakunew.com/items/80696>
【非特許文献2】「チェアレスチェア 2.0 - 新世代(ChairlessChair)」、[令和4年11月1日検索]、インターネット <URL:https://www.noonee.com/der-chairless-chair-2-0/>
【非特許文献3】「最新モデル archelis FX スティック(Archelis)」、[令和4年11月1日検索]、インターネット <URL:https://www.archelis.com/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に提示されているウェアラブルチェアは、構造的に使用者の重心位置が付加脚の直上に位置するため、わずかな上半身の揺れで、着座時のバランスを崩し易く、安定して着座させることが難しいという問題がある。また、非特許文献2や非特許文献3に提示されているウェアラブルチェアは、使用者が起立して歩行する際に、使用者の下肢を拘束してしまうことから、その分、歩行し難いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、使用者に対して安定して着座させることができ、また、起立時に装着させたままでも使用者の歩行の妨げとならずに安定した歩行を実現させることができるウェアラブルチェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のウェアラブルチェアは、使用者の下半身に着脱自在に装着され、前記使用者が起立姿勢のときに折り畳まれ、前記使用者が着座姿勢のときに展開されて前記使用者を着座させるウェアラブルチェアであって、前記使用者の腰に着脱自在に取り付けられる腰ベルトと、前記腰ベルトに連結され、かつ表面が前記使用者の左右の大腿部の後側に各々着脱自在に取り付けられる左座面及び右座面と、前記使用者が着座姿勢になったときに地面に接地する左脚部及び右脚部と、前記左座面及び前記右座面の裏面に各々設けられた左リンク機構及び右リンク機構と、を備え、前記左リンク機構及び前記右リンク機構は、前記使用者が着座姿勢になったときには、前記左脚部及び前記右脚部を、前記左座面及び前記右座面からそれぞれ展開して前記使用者の左右の大腿部の後下方に向けて各々突出させ、前記左座面及び前記右座面に対して着座姿勢となった前記使用者を前記左脚部及び前記右脚部で支持させ、前記使用者が起立姿勢になったときには、前記左脚部及び前記右脚部を前記左座面及び前記右座面に各々折り畳む機構を備え、前記左脚部及び前記右脚部によって着座姿勢の前記使用者を支持する際に、前記左脚部及び前記右脚部が前記地面に接地した接地点と、前記使用者の左右の下肢の接地点とを結んだ辺で前記地面上に形成される支持多角形の略中心部に、着座姿勢の前記使用者の重心が位置する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウェアラブルチェアによれば、使用者を着座させる際には、左脚部及び右脚部と、使用者の左右の下肢とで形成される支持多角形の略中心部に、着座姿勢の使用者の重心が位置するため、使用者に対して安定して着座させることができる。また、本発明のウェアラブルチェアによれば、使用者が起立姿勢に移行した際には、使用者の下肢を拘束することがなく折り畳まれることから、その分、起立時に装着させたままでも使用者の歩行の妨げとならずに安定した歩行を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態であるウェアラブルチェアを示す後方視の概略図である。
【
図2】(A)は、使用者が起立しているときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図であり、(B)~(E)は、使用者が起立姿勢から着座姿勢に移るときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図であり、(F)は、使用者が着座しているときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図である。
【
図3】(A)は、使用者が着座しているときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図であり、(B)~(E)は、使用者が着座姿勢から起立姿勢に移るときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図であり、(F)は、使用者が起立しているときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図である。
【
図4】ウェアラブルチェアを構成する右ユニットの外方側面の構成を示す側面図である。
【
図5】右ユニットの内方側面の構成を示す側面図である。
【
図10】ウェアラブルチェアを装着した使用者が起立した状態を示す概略図である。
【
図11】ウェアラブルチェアを装着した使用者が着座した状態を示す概略図である。
【
図12】ウェアラブルチェアを使用した使用者が着座したときに形成される支持多角形を真上から見たときの概略図である。
【
図13】ウェアラブルチェアを装着した使用者が着座したときに形成される支持多角形を説明するための説明図である。
【
図14】他の実施形態に係る足部の構成(1)を示す概略図である。
【
図15】他の実施形態に係る足部の構成(2)を示す概略図である。
【
図16】他の実施形態に係る足部の構成(3)を示す概略図である。
【
図17】他の実施形態に係る足部の構成(4)を示す概略図である。
【
図18】(A)は、使用者が起立しているときの他の実施形態に係るウェアラブルチェアの状態を示す概略図であり、(B)~(E)は、使用者が起立姿勢から着座姿勢に移るときにウェアラブルチェアが展開されてゆく状態を示す概略図であり、(F)は、使用者が着座しているときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図である。
【
図19】(A)は、使用者が着座しているときの他の実施形態に係るウェアラブルチェアの状態を示す概略図であり、(B)~(E)は、使用者が着座姿勢から起立姿勢に移るときに右ワイヤーを用いてウェアラブルチェアが折り畳まれてゆく状態を示す概略図であり、(F)は、使用者が起立しているときのウェアラブルチェアの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面について本発明の一実施の形態を詳述する。以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態、及び一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0014】
また、以下の説明において「前」、及び「後」は、使用者が前進、及び後進する方向をいう。また、使用者がウェアラブルチェアを装着した状態を側方から見た状態を側方視といい、前方から見た状態を前方視といい、後方から見た状態を後方視という。したがって、前方視は、使用者の顔が見え、後方視は使用者の背中が見える方向である。使用者の左右の大腿部は、単に左大腿部、右大腿部と称する。
【0015】
(1)<第1実施形態>
(1-1)<ウェアラブルチェアの概要>
使用者に装着された本発明に係るウェアラブルチェアの構成を
図1に示す。
図1は、ウェアラブルチェア10の全体構成を示す概略図を後方視で示す。なお、
図1では、ウェアラブルチェア10が装着される使用者Hの下半身を二点鎖線で示している。本実施形態に係るウェアラブルチェア10は、使用者Hの下半身に着脱自在に装着される。ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢のときに使用者Hの大腿部の後側周辺に折り畳まれ、当該使用者Hが着座姿勢に移ることで大腿部の後側周辺から展開可能な構成を有し、着座姿勢の使用者Hの左右の大腿部を、右脚部22及び左脚部26を備える右ユニット13及び左ユニット16でそれぞれ地面に支持することで、使用者Hに着座姿勢を維持させ得る。
【0016】
本実施形態に係るウェアラブルチェア10は、使用者Hの腰に巻き付けて装着される腰ベルト11と、腰ベルトに吊るされた右座面20及び左座面24とを有し、当該右座面20に右ユニット13が設けられ、当該左座面24に左ユニット16が設けられている。ウェアラブルチェア10は、腰ベルト11が使用者Hの腰に装着され、右座面20及び左座面24が使用者Hの左右の大腿部の後側に右腿ベルト14及び左腿ベルト17により装着される。
【0017】
図2の(A)~(F)は、本実施形態に係るウェアラブルチェア10を装着させた使用者Hが起立姿勢から着座姿勢に移るときに、折り畳まれていたウェアラブルチェア10が展開してゆくときの様子を側方視で示した概略図である。また、
図3の(A)~(F)は、本実施形態に係るウェアラブルチェア10を装着した使用者Hが着座姿勢から起立姿勢に移るときに、展開していたウェアラブルチェア10が折り畳まれてゆくときの様子を側方視で示した概略図である。
【0018】
なお、ウェアラブルチェア10に設けた右ユニット13及び左ユニット16は、使用者Hが起立姿勢から着座姿勢に移るときの動作や、着座姿勢から起立姿勢に移るときの動作が同じである。
図2及び
図3は、側方視であるため、右座面20や右ユニット13、右脚部22等のみを図示している。
【0019】
図2の(A)に示すように、ウェアラブルチェア10は、起立姿勢にある使用者Hの腰周辺から左右の大腿部にかけて配置される。ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢から着座姿勢に移る際に、使用者Hによって右ユニット13及び左ユニット16を地面Gに向けて移動させることで、折り畳まれた右ユニット13及び左ユニット16が展開し、右ユニット13及び左ユニット16に備える右脚部22及び左脚部26を地面Gに接地させることができる。
【0020】
これにより、
図2の(F)に示すように、ウェアラブルチェア10は、使用者Hが着座した右座面20及び左座面24を右ユニット13及び左ユニット16を介して地面G上に支持することにより、使用者Hに対して右座面20及び左座面24上に着座した状態を維持させ得る。
【0021】
一方、
図3に示すように、ウェアラブルチェア10は、使用者Hが右座面20及び左座面24上に着座した着座姿勢から起立姿勢に移る際に、使用者Hによって右ユニット13及び左ユニット16を使用者Hの腰周辺に向けて移動させることで、展開された右ユニット13及び左ユニット16が折り畳まれ、右ユニット13及び左ユニット16に備える右脚部22及び左脚部26を使用者Hの大腿部周辺に近接するように配置させることができる。
【0022】
これにより、
図3の(F)に示すように、ウェアラブルチェア10は、使用者Hの下肢全体に配置されることはなく、使用者Hが起立したまま歩行を始めても歩行の妨げとはならずに、使用者Hに装着させた状態のまま容易に移動させることができる。
【0023】
(1-2)<ウェアラブルチェアの全体構成>
ウェアラブルチェア10は、
図1に示すように、腰ベルト11、複数の吊り下げベルト12(12a,12b)、使用者Hの右大腿部の後側に配置される右ユニット13、右腿ベルト14、右ベルト15、使用者Hの左大腿部の後側に配置される左ユニット16、左腿ベルト17、及び左ベルト18等を備えている。
【0024】
腰ベルト11は、長尺状の布部材等でなり、使用者Hの腰に巻かれて、当該腰に着脱自在に取り付けられる。腰ベルト11は、例えば、面ファスナー等の着脱固定部を有しており、使用者Hの腰に巻き付けられた状態で当該着脱固定部によって固定される。なお、面ファスナーは、複数の微細なループが設けられたル-プ面と、複数の微細なカギ状部が設けられたフック面とを強く押し当てることで、フック面のカギ状部がループ面に係止されることで着脱自在に固着される。
【0025】
腰ベルト11には、長尺状の布部材等でなる複数の吊り下げベルト12が取り付けられており、当該吊り下げベルト12を介して後述する右ユニット13及び左ユニット16が吊り下げられている。複数の吊り下げベルト12は、腰ベルト11に右ユニット13を吊り下げる右吊り下げベルト12aと、腰ベルト11に左ユニット16を吊り下げる左吊り下げベルト12bとで構成される。この場合、右吊り下げベルト12a及び左吊り下げベルト12bの一端は、腰ベルト11に取り付けられ、右吊り下げベルト12a及び左吊り下げベルト12bの他端は、それぞれ対応する右ユニット13及び左ユニット16に取り付けられている。本実施形態では、右吊り下げベルト12a及び左吊り下げベルト12bを設けたが、本発明はこれに限らず、さらに複数の吊り下げベルト12を設けるようにしてもよい。
【0026】
次に右ユニット13の構成について説明する。
図4は、右ユニット13の外方側面の構成を示す側面図であり、
図5は、右ユニット13の内方側面の構成を示す側面図であり、
図6は、右ユニット13の上面構成を示す上面図であり、
図7は、右ユニット13の底面構成を示す底面図であり、
図8は、右ユニット13の背面構成を示す背面図であり、
図9は、右ユニット13の正面構成を示す正面図である。
図4~
図9に示すように、右ユニット13は、右座面20、右リンク機構21、及び右脚部22を備える。
【0027】
なお、左ユニット16は、右ユニット13と同じ構成の左座面24、左リンク機構25、及び左脚部26を備えており、右ユニット13と左ユニット16は後方視にて左右対称の形状になっている。ここでは、説明の重複を避けるため、右ユニット13に着目してその構成を説明し、左ユニット16の詳しい説明は省略する。
【0028】
右座面20は、厚みの薄い矩形状の板部材からなり、使用者Hが起立姿勢のとき当該使用者Hの右大腿部の後側(例えば、臀部下側付近から大腿直筋付近まで)が右座面20の表面20aに密着可能な構成を有する。右座面20は、複数の右下リング28と複数の右上リング29とを有する。各右上リング29には、各右吊り下げベルト12aが通され、当該右吊り下げベルト12aが取り付けられている。各右下リング28には、右座面20の裏面20bを使用者Hの右大腿部に取り付けるための右腿ベルト14が通されている。
【0029】
本実施形態に係る右座面20は、長手方向を使用者Hの右大腿部の長さ方向に沿わせ、右座面20の表面20aを当該右大腿部の後側に当てた状態で、右下リング28を介して裏面20bに取り付けられた右腿ベルト14を、使用者Hの右大腿部に巻き付けさせる。右腿ベルト14は、面ファスナー等の着脱固定部を有しており、使用者Hの右大腿部に巻き付けられた状態で当該着脱固定部によって固定される。このようにして、右座面20は、使用者Hの腰に装着された腰ベルト11に右吊り下げベルト12aを介して使用者Hの右大腿部の位置で吊り下げられるとともに、右腿ベルト14で使用者Hの右大腿部に取り付けられることで、右大腿部の後側に装着される。これにより、右座面20は、使用者Hが起立姿勢から着座姿勢に移ったり、或いは着座姿勢から起立姿勢に移っても、使用者Hの右大腿部の後側に装着された状態を維持し得る。
【0030】
なお、左座面24は、右座面20と同じ構成のものであり、複数の左上リング30と複数の左下リング31とを有し、左下リング31に左腿ベルト17が通されている。左座面24も、使用者Hの腰に装着された腰ベルト11に左吊り下げベルト12bを介して使用者Hの左大腿部の位置で吊り下げられるとともに、左腿ベルト17で使用者Hの左大腿部に取り付けられることで、左大腿部の後側に装着される。これにより、左座面24も、使用者Hが起立姿勢から着座姿勢に移ったり、或いは着座姿勢から起立姿勢に移っても、使用者Hの左大腿部の後側に装着された状態を維持し得る。
【0031】
右リンク機構21は、右座面20の裏面20bに取り付けられる機構であり、右第1リンク棒33、右第2リンク棒34、右支点部35、及び右角度制限ブロック36を備える。右第1リンク棒33、右第2リンク棒34、右支点部35及び右角度制限ブロック36は、それぞれ木材等により形成してもよいが、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、マグネシウム、チタン、及びカーボン等の軽量で高剛性を有する材料で形成されることが望ましい。
【0032】
右第1リンク棒33は、右座面20の裏面20bの上部に回転部44を介して一端33aが回転可能に連結され、右脚部22の末端に回転部41を介して他端33bが回転自在に連結されている。右第2リンク棒34は、右脚部22を展開させた際に右第1リンク棒33に対して略X字状に交差する位置に移動可能に設けられており、右座面20の裏面20bに回転部43を介して一端34aが回転可能に連結され、右脚部22の側面に突出形成された右支点部35に回転部42を介して他端34bが回転可能に連結されている。
【0033】
右支点部35は、右脚部22の末端22aと先端22bとの間に、後方に向けて突出するように右脚部22と一体形成されている。右第2リンク棒34の他端34bは、右支点部35の先端に設けられた回転部42を介して回転可能に連結されている。
【0034】
右角度制限ブロック36は、右支点部35に取り付けられており、使用者Hが着座姿勢となり右リンク機構21により右脚部22が展開された際に当該右脚部22の展開を規制する機能を有する。具体的には、右角度制限ブロック36は、使用者Hが着座姿勢となり、回転部44を基点として右第1リンク棒33の他端33bが右座面20から遠ざかる方向に向けて回転してゆくと、当該右第1リンク棒33に当接して、右第1リンク棒33に対する右脚部22の角度θを規定する。
【0035】
ここで、右第1リンク棒33に対する右脚部22の角度θは、回転部41を中心にした右第1リンク棒33と右脚部22との間の前方側での角度であり、回転部41が前方に突出すように右第1リンク棒33と右脚部22とが、180度以上の角度(例えば、優角の範囲で折れ曲がった状態)で制限される。
【0036】
また、本実施形態では、右第2リンク棒34の他端34bと回動自在に連結する右支点部35が、右脚部22の末端22aと先端22bとの間において末端22aから約3分の1以内の位置に配置されている例を示す。右リンク機構21は、右支点部35の位置と突出長さを調整することで、右脚部22の後方への折れ曲がりの角度を決めることができる。右脚部22の末端22aに近い位置に右支点部35を設けた場合、右支点部35の突出長さを小さくし得、右リンク機構21により右脚部22を折り畳んだ際に右リンク機構21及び右支点部35の右座面20からの突出量を小さくできる。なお、左支点部は、右支点部35と同じ構成であるため、ここではその説明は省略する。
【0037】
右脚部22は、先端22bに、地面に接地される右足部38を備える。右足部38は、地面に接地する接地部38aと右脚部22の外側に嵌まる枠部38bとを有し、右脚部22と枠部38bとに設けられたネジ穴同士が合う位置で複数の蝶ネジ39により締め付けられる。この場合、複数の蝶ネジ39を外し、右脚部22に対して枠部38bをずらして当該枠部38bの突出長さを変えてネジ穴同士が合う位置で蝶ネジ39を締める。これにより、右脚部22は、先端22bに設けた右足部38の位置を長手方向に沿って移動させ、先端22bの位置を可変可能となる。このように、右脚部22は、末端22aから先端22bまでの長さを調整可能に構成されている。なお、左脚部26は、右脚部22と同じ構成であるためここではその説明は省略する。
【0038】
(1-3)<ウェアラブルチェアの折り畳み状態から展開状態への移行>
次に、ウェアラブルチェア10の折り畳み状態から展開状態への移行について説明する。なお、右ユニット13及び左ユニット16の動作は同じであるため、説明の便宜上、主に右ユニット13に着目して以下説明する。
【0039】
図10に示すように、ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢にあるとき、右第1リンク棒33が回転部44を介して時計回りに回転されて、右第1リンク棒33の他端33bが回転部44の上方に位置して腰ベルト11に近接した位置に移動している。この際、右第2リンク棒34は、回転部43を介して時計回りに回転されて、右第2リンク棒34の他端34bが回転部43の上方に位置して腰ベルト11に近接した位置に移動している。
【0040】
また、右脚部22の末端22aと、右第1リンク棒33の他端33bと、右支点部35と、右第2リンク棒34の他端34bとが、使用者Hの腰周辺に引き寄せられた状態になっている。このため、右第1リンク棒33と右脚部22との間の回転部41は、上方に突出するように配置されている。この際、回転部41を中心にした右第1リンク棒33と右脚部22との間の角度θは、90度以下(例えば、鋭角の範囲であり、折り畳み時の小型化の観点から小さい角度が好ましい)の角度で折れ曲がった状態となっている。また、この際、右第2リンク棒34と右脚部22はX字状に交差するか、或いは並走した状態となり得る。
【0041】
このようにして、ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢にあるとき、右第1リンク棒33、右第2リンク棒34及び右脚部22が右座面20に近接した状態となり、使用者Hの腰や臀部周辺に沿って折り畳まれた状態となる。そして、
図2の(B)~(F)に示すように、ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢から膝を曲げて腰を下げてゆく過程で、右第1リンク棒33、右第2リンク棒34又は右脚部22が使用者Hにより下方に引かれることで展開状態となる。
【0042】
具体的には、右第1リンク棒33が回転部44を介して他端33bが反時計回りで下方に回転移動するとともに、右第2リンク棒34が回転部43を介して他端34bが反時計回りに下方に回転移動することにより、連動して右脚部22の先端22bが地面Gに近づく方向に移動してゆく。そして、ウェアラブルチェア10は、右第1リンク棒33及び右第2リンク棒34がX字状に交差した状態になるまで反時計回りに回転すると、右角度制限ブロック36に右第1リンク棒33が当接し、当該右角度制限ブロック36によって右第1リンク棒33が右脚部22に対して角度θ(優角)で位置決めされる。
【0043】
これにより、ウェアラブルチェア10は、
図11に示すように、使用者Hが着座姿勢になったときに、使用者Hの臀部周辺から大腿部根本部分が右座面20上に位置し、右第1リンク棒33、右第2リンク棒34又は右脚部22で地面G上に支えた右座面20上に使用者Hを着座させることができる。本実施形態では、右脚部22の長さの設定により、右座面20の表面20aが前方に向けて下がるように傾斜していることから、右座面20に着座した使用者Hの着座姿勢を中腰に近い姿勢にさせることができる。これにより、ウェアラブルチェア10は、着座姿勢から起立姿勢へ移行する際に使用者Hに生じる負担を軽減させることができる。
【0044】
なお、
図10に示すように、本実施形態に係る右リンク機構21には、右第1リンク棒33と右脚部22とを回転自在に連結する右支点部35に、紐状又は長尺状の右ベルト15の一端15aが取り付けられている。右ベルト15の他端15bは、腰ベルト11に取り付けられている。右ベルト15は、右第1リンク棒33の他端33bと右第2リンク棒34の他端34bとが右座面20から離れる方向に移動して右脚部22が展開状態にあるとき、腰ベルト11から右支点部35までを連結させる長さを有する。
【0045】
また、右ベルト15は、右第2リンク棒34と右脚部22とが鋭角に折り畳まれたときに、当該右ベルト15の一端15a側と他端15b側とを連結可能なバックル等の連結部材(図示せず)を有する。右ベルト15は、
図10に示すように、右第1リンク棒33の他端33bと右第2リンク棒34の他端34bとが右座面20に接近するようにして右リンク機構21が折り畳まれた状態になり、当該右ベルト15の一端15a側と他端15b側とが近づいたときに連結部材を連結させることで、右第2リンク棒34と右脚部22とが鋭角に折り畳まれた状態をロックすることができる。なお、左ベルト18は、右ロック部として機能する右ベルト15と同じ構成になっており、左ロック部としても機能する。
【0046】
なお、右ベルト15は、ウェアラブルチェア10が展開状態にあるとき、使用者Hによって腰ベルト11側に向けて引かれた状態で腰ベルト11に係止され、右支点部35及び腰ベルト11の間に張架させるようにしてもよい。これにより、右ベルト15は、右支点部35を後上方(右支点部35を基点として時計回り方向)に向けて引くことで、右角度制限ブロック36を右第1リンク棒33に当接させた状態を維持させ、右第1リンク棒33が右脚部22に対して角度θ(優角)で位置決めされた状態を維持させることができる。なお、右第1リンク棒33と右脚部22との間の回転部41に、例えば、ねじりバネ等の展開用の弾性部材を設け、右ベルト15の連結部材が解除されたときに当該弾性部材の弾性力によって、右第1リンク棒33と右脚部22との角度θを優角で折れ曲がった状態へと導き維持させるようにしてもよい。
【0047】
なお、ここでは、右ベルト15に連結部材を設け、右ベルト15を弛ませて一端15a側と他端15b側とが近づいたときに連結部材を連結させることで、右第2リンク棒34と右脚部22とが鋭角に折り畳まれた状態をロックさせるようにしたが、本発明はこれに限らず、連結部材を設けずに、鋭角に折り畳まれた状態の右第2リンク棒34と右脚部22とに右ベルト15を巻き付けて右第2リンク棒34と右脚部22とが鋭角に折り畳まれた状態をロックさせるようにしてもよい。
【0048】
なお、ウェアラブルチェア10の展開状態から折り畳み状態への移行については、上述したウェアラブルチェアの折り畳み状態から展開状態への移行と逆の動作となるため、ここでは詳細な説明は省略するが、例えば、使用者Hが頭を前方に下げながら腰を浮かせていくと、右脚部22が下方に垂れ下がった状態で右リンク機構21が右座面20とともに持ち上がる。そして、
図3の(D)~(F)に示すように、使用者Hの上半身を起立させる際に、使用者Hが右リンク機構21を折り畳んでゆき、、腰ベルト11の近傍に位置した右支点部35から、腰ベルト11までを右ベルト(
図3に図示せず)で直線的につなげるように右ベルトの連結部材を連結して右リンク機構21を折り畳み状態にロックする。
【0049】
(1-4)<ウェアラブルチェアに着座した際の使用者の重心位置>
次に上記構成を有するウェアラブルチェア10に使用者Hが着座したときの使用者Hの重心位置について説明する。本実施形態に係るウェアラブルチェア10は、
図13に示すように、使用者Hに着座させた際、使用者Hの左右の大腿部が僅かに外側方側に傾くことから、これに連動して右座面20及び左座面24も逆ハ字状に僅かに外側方側に向けて裏面20bが傾く。このため、右脚部22は、使用者Hに対して右後側方に向けて広がるように突出し、左脚部26は、使用者Hに対して左後側方に向けて広がるように突出する。ここで、ウェアラブルチェア10の右脚部22が地面Gに接地する接地点P1と、左脚部26が地面Gに接地する接地点P2と、使用者Hの右の下肢が地面Gと接地する接地点H1と、使用者Hの左の下肢が地面Gと接地する接地点H2とを地面G上でそれぞれ結んだ辺で形成される形状を支持多角形46と称し、支持多角形46を用いて使用者Hの着座時における重心位置を説明する。
【0050】
この場合、支持多角形46は、右脚部22の接地点P1と左脚部26の接地点P2とを結んだ辺と、右脚部22の接地点P1と使用者Hの右の下肢の接地点H1とを結んだ辺と、左脚部26の接地点P2と使用者Hの左の下肢の接地点H2とを結んだ辺と、使用者Hの左右の下肢の接地点H1,H2を結んだ辺との4辺でなる台形状の形状を有する。ウェアラブルチェア10は、右脚部22及び左脚部26が使用者Hから放射状に延びるように外方に向けて突出しているため、支持多角形46の面積S1において使用者Hの後方での領域が大きくなる。
【0051】
ウェアラブルチェア10は、支持多角形46の面積S1の略中心部49に、着座時の使用者Hの重心47を位置させることができる。これにより、ウェアラブルチェア10は、使用者Hに対して安定した着座姿勢を維持させることができる。なお、支持多角形46の面積S1の略中心部49とは、支持多角形46の面積S1の中心部だけでなく、当該中心部から誤差程度にずれている位置も含まれる。
【0052】
(1-5)<作用及び効果>
以上の構成において、ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢から着座姿勢になったときには、左脚部26及び右脚部22を、左座面24及び右座面20からそれぞれ展開して使用者Hの左右の大腿部の後下方に向けて各々突出させ、左座面24及び右座面20に対して着座姿勢となった使用者Hを左脚部26及び右脚部22で支持させる左リンク機構25及び右リンク機構21を備える。この左リンク機構25及び右リンク機構21は、使用者Hが着座姿勢から起立姿勢になったときには、左脚部26及び右脚部22を左座面24及び右座面20に各々折り畳む。
【0053】
そして、ウェアラブルチェア10は、左脚部26及び右脚部22によって着座姿勢の使用者Hを支持する際に、左脚部26及び右脚部22が地面Gに接地した接地点P1,P2と、使用者Hの左右の下肢の接地点H1,H2と、を結んだ4辺で地面G上に形成される支持多角形46の略中心部49に、着座姿勢の使用者Hの重心47が位置するようにした。
【0054】
このように、ウェアラブルチェア10は、使用者Hを着座させる際には、左脚部26及び右脚部22と、使用者Hの左右の下肢とで形成される支持多角形46の略中心部49に、着座姿勢の使用者Hの重心47が位置するため、使用者Hに対して安定して着座させることができる。また、ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢に移行した際には、使用者Hの下肢を拘束することがなく折り畳まれることから、その分、起立時に装着させたままでも使用者Hの歩行の妨げとならずに、安定した歩行を実現させることができる。
【0055】
(2)<他の実施形態>
右足部38は、断面円形の一部をカットしたD型状のコロ形状となっており、着座時に回転はしない。以下では右足部38の別例を説明する。なお、左足部は、右足部38の別の例と同じ形状であるため、説明を省略する。
【0056】
図14は、右足部38の代わりに、円形状にした右円形足部50を示す。この場合は、右円形足部50は回転しない。
図15は、右足部38の代わりに、矢じり状にした右突起足部51を示す。この場合は、ぬかるんだ土や芝、砂利等の地面Gであっても突き刺さるため安定して着座することができる。
図16は、右足部38の代わりに、円柱の台座状に右第1台座足部52を示す。右第1台座足部52は、右脚部22に対して前方又は後方の一方向に回転可能になっている。
図17は、
図16に示した右第1台座足部52に対して前方又は後方、及び左方右方の二方向に回転可能になっている。このように右脚部22の長さを可変とし、かつ右足部38(右円形足部50、右突起足部51、右第1台座足部52)の形を地面Gに応じて変えることで、地面Gに対し角度を与えて座ることができ、よって支持多角形を拡大することができる。これにより、安定して着座できる。
【0057】
上記構成のウェアラブルチェア10では、弾性部材の弾性力を利用して、右リンク機構21を折り畳み状態から展開状態へと移行させるようにしてもよい。
図18は、右バネ付きワイヤー58を使用して右リンク機構21を折り畳み状態から展開状態へと移行可能なウェアラブルチェア10を示す。
図18の(A)~(F)は、使用者Hが起立姿勢から着座姿勢へ移る際のウェアラブルチェア10の様子を示す概略図である。なお、
図18に示す例では、図示していないが、右バネ付きワイヤー58と同じ構成の左バネ付きワイヤー(図示なし)を左側にも備えている。
図18に示すように、右バネ付きワイヤー58は、例えば、一端58aが回転部42を備える右支点部35に接続され、他端58bが腰ベルト11に取り付けられている。
【0058】
図18の(A)に示すように、右バネ付きワイヤー58は、バネ59の弾性力に抗して右リンク機構21が折り畳まれる。これにより、ウェアラブルチェア10は、起立姿勢から着座姿勢に移る際に、折り畳まれた右リンク機構21を、右バネ付きワイヤー58に有するバネ59が自然長へと戻る弾性力によって展開させることができる。ウェアラブルチェア10は、右バネ付きワイヤー58に有するバネ59の弾性力によって右リンク機構21を展開することで、右リンク機構21を展開させる際に生じる使用者Hの作業負担を軽減させることができる。
【0059】
また、このウェアラブルチェア10は、
図18の(F)に示すように、右リンク機構21が展開された状態のとき、右バネ付きワイヤー58のバネ59が自然長よりも長くなることが望ましい。これにより、ウェアラブルチェア10は、右リンク機構21が展開された状態のとき、右バネ付きワイヤー58のバネ59が自然長に戻る弾性力によって、右支点部35が後上方(回転部42を基点として時計回り方向)に向けて引っ張られる。これにより、右バネ付きワイヤー58は、バネ59が自然長に戻る弾性力によって右角度制限ブロック36を右第1リンク棒33に当接させ、右第1リンク棒33が右脚部22に対して角度θ(優角)で位置決めされた状態を維持させることができる。
【0060】
図19は、右ワイヤー55を使用して右リンク機構21を折り畳んだ状態でロックするウェアラブルチェア10を示す。この場合、図示していないが、右ワイヤー55と同一構成の左ワイヤー(図示なし)を左側にも備える。
図19に示すように、右ワイヤー55は、一端55aが回転部42を備える右支点部35に接続され、他端55bが腰ベルト11に設けられたリング部56を通して前方に向けて引き出されている。この際、右ワイヤー55は、他端55bが前方に向けて引かれることで、右リンク機構21に対して時計回り方向への力が加わるように、右支点部35及び腰ベルト11の間で引き回されている。
【0061】
右ワイヤー55は、リング部56から引き出された他端55bが輪状に加工されている。
図19の(A)~(F)は、使用者Hが着座姿勢から起立姿勢へと移る際の様子を示す概略図である。このように、使用者Hが起立するとき、右ワイヤー55の他端55bを使用者Hに持たせて、当該右ワイヤー55を前方に向けて引っ張らせることで、右リンク機構21を折り畳む方向へ力が加わり、当該右リンク機構21が折り畳まれた状態になる。その後、右ワイヤー55が戻らないように、腰ベルト11等に止めておく。なお、右ワイヤー55と左ワイヤー(図示なし)との先端同士を結んで止めおく(ロック)処置が好適である。
【0062】
ウェアラブルチェア10は、使用者Hが起立姿勢から着座姿勢への移る際に、右ワイヤー55のロックを解除させることで、右脚部22が自重により下方に下がり、展開状態となるようにしてもよく、この場合、使用者Hに対して早期に着座させることが可能となる。
図19に示した例のウェアラブルチェア10では、
図12に示したウェアラブルチェア10と比べて、使用者Hに対して後方へ振り向かせる動作をさせる必要がなくなり、使用者Hに対して着座姿勢から起立姿勢への移行を迅速に行わせることができる。
【0063】
なお、右ワイヤー55としては、金属を細長く紐状に伸ばしたものであってもよく、また、布製や、繊維製、ゴム製、又は樹脂製等の材料で作った紐状のものであってもよい。
【0064】
また、右ベルト15や右ワイヤー55等の線状体を、ゼンマイバネ等の弾性力により自動で巻き取り可能な右巻尺部を腰ベルト11に設けるようにしてもよい。この場合、使用者Hが着座姿勢から起立姿勢へと移る際に、右巻尺部及び左巻尺部における線状体に対する係止をそれぞれ解除することで、右巻尺部及び左巻尺部により線状体を自動的に巻き取らせて、各線状体で右脚部22及び左脚部26を引っ張り、右脚部22及び左脚部26を展開状態から折り畳み状態へと移行させることもできる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。例えば、右座面20を、平面状ではなく、右大腿部の後に沿うように湾曲状に形成してもよい。この場合、左座面24は、右座面20と同じに湾曲状に形成すればよい。
【0066】
また、上述した実施形態に係るウェアラブルチェア10では、右第1リンク棒33及び右脚部22を、右第2リンク棒34よりも外側方向に配置させ(
図9)、左第1リンク棒及び左脚部26を、左第2リンク棒よりも外側方向に配置させたが、本発明はこれに限らず、右第1リンク棒33及び右脚部22を、右第2リンク棒34よりも内側方向に配置させ、左第1リンク棒及び左脚部26を、左第2リンク棒よりも内側方向に配置させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 ウェアラブルチェア
11 腰ベルト
15 右ベルト(右ロック部)
20 右座面
21 右リンク機構
22 右脚部
24 左座面
25 左リンク機構
26 左脚部
46 支持多角形
47 重心
55 右ワイヤー
58 右バネ付きワイヤー(右ワイヤー)