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特開2024-79476液体噴射ヘッド、液体噴射装置及びフィルター部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079476
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド、液体噴射装置及びフィルター部材
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192449
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡沢 宣昭
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 英徳
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF72
2C057AG12
2C057AG29
2C057AG42
2C057AG44
2C057AG68
2C057AG77
2C057AP02
2C057AP24
2C057AP27
2C057AP31
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】フィルター部材の目を細かくすることで流路抵抗が増大し、フィルター部材を流通する液体の圧力損失が増大するというという問題がある。
【解決手段】ノズルへ供給されるインクが通過する複数のフィルター孔50を有するフィルター部材40を備え、フィルター部材40は、第1貫通孔61が形成される第1フィルター板41と、第2貫通孔62が形成される第2フィルター板42と、を含み、フィルター孔50は、Z1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部とが重なる部分であり第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53と、Z1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さの半分よりも凹む第1部分51と、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルと、
第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材であって、前記ノズルへ供給される液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材と、
を備え、
前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、
前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、
前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第1面から前記第2面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第2部分を含み、
前記貫通部分は、前記第1方向に直交する第2方向に関して前記第1部分と前記第2部分との間に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第1フィルター板は、前記第1面とは反対側の第3面を画定し、
前記第2フィルター板は、前記第2面とは反対側の第4面を画定し、
前記第1フィルター板と前記第2フィルター板とは、前記第3面と前記第4面とが接触するようにして積層され、
前記第1フィルター板の前記第3面には、前記第1方向に見て前記第1貫通孔に隣り合うとともに前記第2貫通孔に重なる第1凹部が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2フィルター板の前記第4面には、前記第1方向に見て前記第2貫通孔に隣り合うとともに前記第1貫通孔と重なる第2凹部が形成され、
前記貫通部分は、前記第1方向に直交する第2方向に関して前記第1凹部と前記第2凹部との間に配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第1凹部の全ては、前記第1方向に見て、前記第2貫通孔に重なり、
前記第2凹部の全ては、前記第1方向に見て、前記第1貫通孔に重なる、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面との最短距離は、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さく、
前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面との最短距離は、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面との前記第1方向に関する距離は、前記貫通部分の前記第2方向に関する最大幅よりも小さい、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記フィルター部材は、第3貫通孔が形成されるとともに前記第1フィルター板と前記第2フィルター板との間に挟まれた第3フィルター板を更に含み、
前記第3貫通孔は、前記第1方向に見て、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔と重なる部分と、前記第2貫通孔と重なるが前記第1貫通孔と重ならない部分と、前記第1貫通孔と重なるが前記第2貫通孔と重ならない部分と、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記第3フィルター板の厚さは、前記第1フィルター板の厚さ及び前記第2フィルター板の厚さよりも厚い、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
1つの前記フィルター孔は、互いに連通する、1つの前記第1貫通孔、1つの前記第2貫通孔及び1つの前記第3貫通孔によって画定されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
前記第3貫通孔のうち前記貫通部分に対して前記第2方向の一方側の部分の全ては、前記第1方向に見て、前記第2貫通孔に重なり、
前記第3貫通孔のうち前記貫通部分に対して前記第2方向の他方側の部分の全ては、前記第1方向に見て、前記第1貫通孔に重なる、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項14】
前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項15】
前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1部分の底面と前記第2部分の底面との最短距離は、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項16】
前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さく、
前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1部分の底面と前記第2部分の底面との最短距離は、前記第1貫通孔の前記直径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項17】
前記第3貫通孔の前記第1方向に関する寸法は、前記貫通部分の前記第2方向に関する最大幅よりも小さい、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項18】
液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、
第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材であって、前記液体噴射ヘッドへ供給される液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材と、
を備え、
前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、
前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、
前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項19】
第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成され、液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材であって、
前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、
前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、
前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む、
ことを特徴とするフィルター部材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射装置、液体中の異物を除去するフィルター部材に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターやプロッターなどのインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置は、インクを噴射するインクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドを備える。例えば、特許文献1には、複数の貫通孔がそれぞれ形成された複数のフィルター板(振動板)を積層することで形成されたフィルター部材を備えるインクジェット式記録ヘッドが開示されている。フィルター部材の目を細かくし、小さな異物を補足するために、積層されたフィルター板のそれぞれに形成された貫通孔同士は部分的に重なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-18662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る液体噴射ヘッドは、フィルター部材の目を細かくすることで流路抵抗が増大し、フィルター部材を流通する液体の圧力損失が増大するという問題がある。このような問題は、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置やインク以外の液体中の異物を流通させるフィルター部材においても同様に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズルと、第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材であって、前記ノズルへ供給される液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材と、を備え、前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む、ことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0006】
また、本発明の他の態様は、液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材であって、前記液体噴射ヘッドへ供給される液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材と、を備え、前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【0007】
また、本発明の他の態様は、第1方向に複数のフィルター板が積層され、液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材であって、液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材であって、前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む、ことを特徴とするフィルター部材にある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
図2】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
図3】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
図4】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
図5】実施形態1に係るフィルター部材を構成する第1フィルター板及び第2フィルター板を接合する前の状態を示す斜視図である。
図6】実施形態1に係るフィルター部材を構成する第1フィルター板及び第2フィルター板を接合した後の状態を示す斜視図である。
図7】実施形態1に係るフィルター部材の平面図及び断面図である。
図8】実施形態2に係るフィルター部材を構成する第1フィルター板及び第2フィルター板を接合する前の状態を示す斜視図である。
図9】実施形態2に係るフィルター部材を構成する第1フィルター板及び第2フィルター板を接合した後の状態を示す斜視図である。
図10】実施形態2に係るフィルター部材の平面図及び断面図である。
図11】実施形態3に係るフィルター部材を構成する第1フィルター板、第2フィルター板及び第3フィルター板を接合する前の状態を示す斜視図である。
図12】実施形態3に係るフィルター部材の平面図及び断面図である。
図13】実施形態4に係るフィルター部材を構成する第1フィルター板の平面図である。
図14】実施形態4に係るフィルター部材を構成する第2フィルター板の平面図である。
図15】実施形態4に係るフィルター孔の平面図である。
図16】実施形態4に係る図15のE-E線断面図である。
図17】実施形態4に係る図15のF-F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。正方向及び負方向を限定せず、それら3つの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向をX1方向、Y1方向、Z1方向、矢印の反対方向をX2方向、Y2方向、Z2方向とする。Y方向(Y1方向及びY2方向)は媒体の搬送方向に相当する。Z2方向は鉛直方向の下向きであり、Z1方向は鉛直方向の上向きである。なお、Z方向は鉛直方向である必要はない。さらに、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交するがこれに限定されず、例えば、80度以上100度以下の範囲内の角度で交差していてもよい。
【0011】
〈実施形態1〉
図1に示すインクジェット式記録装置(以下、単に「記録装置」と称する)1は、液体噴射装置の一例であり、液体の一種であるインクをインク滴として印刷用紙等の媒体Mに噴射・着弾させて、当該媒体Mに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行う印刷装置である。なお、媒体Mとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。
【0012】
記録装置1は、インクジェット式記録ヘッド2(以下、単に「記録ヘッド2」とも称する)と、液体容器3と、制御部4と、媒体Mを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0013】
記録ヘッド2は、液体噴射ヘッドの一例であり、液体容器3から供給されるインクを複数のノズルから媒体Mに噴射する。記録ヘッド2の詳細な構成は後述する。
【0014】
液体容器3は、液体を貯留する液体貯留部の一例であり、記録ヘッド2から噴射される複数種類(例えば、複数色)のインクを個別に貯留する。液体貯留部としては、例えば、記録装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。
【0015】
制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。制御部4は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで記録装置1の各要素、すなわち、記録ヘッド2、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0016】
搬送機構5は、媒体MをX方向に搬送する機構である。具体的には、搬送機構5は、搬送ローラー7を有し、搬送ローラー7が回転することで媒体MをX方向に搬送する。媒体Mを搬送する搬送機構5としては、搬送ローラー7を備える機構に限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Mを搬送する機構であってもよい。
【0017】
移動機構6は、記録ヘッド2をY方向に沿って往復させるための機構であり、搬送体8と搬送ベルト9とを具備する。搬送体8は、記録ヘッド2を収容する略箱形の構造体、いわゆるキャリッジであり、搬送ベルト9に固定される。搬送ベルト9は、Y方向に沿って架設された無端ベルトである。制御部4による制御のもとで搬送ベルト9が回転することで記録ヘッド2が搬送体8と共にY方向で往復移動する。なお搬送体8は、記録ヘッド2と共に液体容器3を搭載する構成であってもよい。
【0018】
記録ヘッド2は、制御部4による制御のもとで、液体容器3から供給されたインクを複数のノズルのそれぞれからインク滴としてZ2方向に媒体Mに噴射する噴射動作を実行する。この記録ヘッド2による噴射動作が、搬送機構5による媒体Mの搬送や移動機構6による記録ヘッド2の往復移動と並行して行われることにより、媒体Mの表面にインクによる画像が形成される、いわゆる印刷が行われる。
【0019】
図2から図4を用いて記録ヘッド2を説明する。図2は記録ヘッド2の分解斜視図であり、図3は記録ヘッド2の平面図であり、図4は記録ヘッドの断面図である。図3では記録ヘッド2を構成する要素のうち圧力室基板10及びフィルター部材40を示し、保護基板30及びケース部材100の図示を省略している。図4図3のA-A線に対応する図である。
【0020】
図示するように、本実施形態に係る記録ヘッド2は、圧力室基板10を具備する。圧力室基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板等からなる。
【0021】
圧力室基板10には、Z2方向側に開口した凹部である圧力室12がX方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、Y方向の位置が同じ位置となるように、X方向に沿った直線上に配置されている。X方向で互いに隣り合う圧力室12は、不図示の隔壁によって区画されている。本実施形態では、圧力室12は、X方向に沿って一列となるように並んで配置されている。このような一列に並んだ複数の圧力室12からなる圧力室の列はY方向に2列設けられている。各列の複数の圧力室12は、Y方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なお、圧力室12の配置は特に限定されない。例えば、X方向に並ぶ複数の圧力室12の配置は、各圧力室12を1つ置きにY方向にずれた位置とする、いわゆる千鳥配置となっていてもよい。
【0022】
圧力室12は、Z方向に見た平面視においてY方向の長さがX方向の長さよりも長い長方形に形成されている。もちろん、圧力室12の形状は特に限定されず、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。なお、ここでいうオーバル形状とは、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状をいい、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれるものとする。
【0023】
圧力室基板10のZ2方向側には、連通板15とノズルプレート20及びコンプライアンス基板110とが順次積層されている。
【0024】
連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15には、複数の圧力室12が連通する共通液室となるマニホールド130の一部を構成する第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ方向に貫通して設けられている。第2マニホールド部18は、連通板15をZ方向に貫通することなく、Z2方向側の面に開口して設けられている。
【0025】
連通板15には、圧力室12のY方向の一方の端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と各圧力室12とを連通して、マニホールド130内のインクを各圧力室12に供給する。
【0026】
連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板等を用いることができる。
【0027】
ノズルプレート20は、連通板15の圧力室基板10とは反対側であるZ2方向側の面に設けられている。ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。
【0028】
複数のノズル21は、各圧力室12に対応して設けられ、X方向に沿って一列となるように並んで配置されている。このような一列に並んだ複数のノズル21からなるノズル列はY方向に2列設けられている。各列の複数のノズル21は、Y方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なおノズル21の配置は特に限定されない。例えば、X方向に並んで配置されるノズル21は、1つ置きにY方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0029】
ノズルプレート20の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板を用いることができる。金属板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。さらにノズルプレート20の材料としては、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることもできる。
【0030】
コンプライアンス基板110は、ノズルプレート20と共に、連通板15の圧力室基板10とは反対側であるZ2方向側の面に設けられている。コンプライアンス基板110は、ノズルプレート20の周囲に設けられ、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18の開口を封止する。コンプライアンス基板110は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜111と、金属等の硬質の材料からなる固定基板112と、を具備する。固定基板112のマニホールド130に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された除去部118となっている。このため、マニホールド130の一方面は、可撓性を有する封止膜111のみで封止されたコンプライアンス部119となっている。
【0031】
圧力室基板10のZ1方向側の面には振動板84及び圧電素子80が設けられている。すなわちZ2方向からZ1方向に向かって圧力室基板10、振動板84及び圧電素子80は、この順で積層されている。
【0032】
振動板84は、圧力室基板10のZ1方向側の面に設けられた弾性膜と、弾性膜のZ1方向側の面に設けられた絶縁体膜とから構成されている。弾性膜は、例えば、酸化シリコン(SiO)で形成される膜である。このような弾性膜は、例えば、圧力室基板のZ1方向側の面を熱酸化することによって形成することができる。絶縁体膜は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)で形成される膜である。このような絶縁体膜は、例えば、スパッタリング法等によりジルコニウム単体の層を形成した後に、当該層を熱酸化することによって形成することができる。なお、振動板は弾性膜及び絶縁体膜で構成されたものに限定されない。例えば、振動板として弾性膜及び絶縁体膜の何れか一方を設けたものであってもよい。また、弾性膜及び絶縁体膜を設けずに、後述する圧電素子80の第1電極を振動板としてもよい。
【0033】
圧電素子80は、圧力室12ごとに形成されている。本実施形態ではX方向に複数並んだ圧力室12の列がY方向に2列あるので、圧電素子80も同様にX方向に複数並んで列をなし、その圧電素子80の列がY方向に2列設けられている。圧電素子80は、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段であり圧電アクチュエーターとも称される。圧電素子80は、振動板84側であるZ2方向側からZ1方向側に向かって順次積層された第1電極81と、圧電体層83と、第2電極82とを具備する。圧電素子80は、第1電極81と第2電極82との間に電圧を印加した際に、圧電体層83に圧電歪みが生じる部分である。
【0034】
一般的には、第1電極81又は第2電極82の一方を圧電素子80毎に独立する個別電極とし、他方を複数の圧電素子80に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極81が個別電極を構成し、第2電極82が共通電極を構成している。
【0035】
具体的には、第1電極81は、圧力室12毎に切り分けられて圧電素子80毎に独立する個別電極を構成する。第1電極81は、X方向において圧力室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、X方向において、第1電極81は、圧力室12の内側に位置している。
【0036】
Y方向において、第1電極81の内側の端部は、圧力室12に対向する領域から圧力室12の外側まで延在しており、第1電極81の外側の端部は、圧力室12に対向する領域に配置されている。第1電極81の内側の端部とは、Y方向において2列の圧電素子80の間の領域に近い側の端部をいう。第1電極81の外側の端部とは、Y方向において2列の圧電素子80の間の領域から遠い側の端部をいう。具体的には、Y方向において2列ある圧電素子80のうちY1側にある圧電素子80については、第1電極81の内側の端部はY2側の端部であり、第1電極81の外側の端部はY1側の端部である。Y方向において2列ある圧電素子80のうちY2側にある圧電素子80については、第1電極81の内側の端部はY1側の端部であり、第1電極81の外側の端部はY2側の端部である。第2電極82及び圧電体層83についても内側及び外側の端部は第1電極81と同様であるとする。
【0037】
このような第1電極81の材料は、特に限定されないが、導電性を有する材料、例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiOX)、チタンタングステン(TiW)等を用いることができる。
【0038】
圧電体層83は、Z方向の厚さを所定の厚さとし、Y方向の長さを所定の長さとし、X方向に沿って連続して設けられている。すなわち圧電体層83は、圧力室12の並設方向に沿って連続して設けられている。圧電体層83のY方向の長さは、圧力室12の長手方向であるY方向の長さよりも長く、圧電体層83は、Y方向において圧力室12の両外側まで延在している。
【0039】
本実施形態では、圧電体層83の外側の端部は、第1電極81の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極81の外側の端部は圧電体層83によって覆われている。また、圧電体層83の内側の端部は、第1電極81の端部よりも圧力室12側に位置しており、第1電極81の内側の端部は、圧電体層83で覆われることなく露出されている。
【0040】
圧電体層83は、一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT;Pb(Zr,Ti)O)を用いることができる。もちろん、圧電材料はチタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、公知のものを適用することができる。
【0041】
第2電極82は、圧電体層83の第1電極81とは反対側であるZ1方向側に連続して設けられており、複数の圧電素子80に共通する共通電極を構成する。第2電極82は、Y方向の長さを所定の長さとし、X方向に沿って連続して設けられている。
【0042】
第2電極82の材料は、特に限定されないが、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料、およびランタンニッケル酸化物(LNO)に代表される導電性酸化物などが用いられる。また、第2電極82は、複数材料が積層されたものであってもよく、その場合、第2電極82の材料として、イリジウム(Ir)とチタン(Ti)とを含むものを用いるのが好ましい。
【0043】
第1電極81から個別リード電極91が引き出され、第2電極82から共通リード電極92が引き出されている。これら個別リード電極91および共通リード電極92には、圧電素子80とは反対側の端部において、可撓性を有する配線基板120が接続されている。本実施形態では、個別リード電極91及び共通リード電極92は、保護基板30に形成された第1配線挿通孔32内に露出するように延設され、この第1配線挿通孔32内で配線基板120と電気的に接続されている。配線基板120には、圧電素子80を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動回路121が実装されている。
【0044】
上述した圧電素子80は、第1電極81を圧電素子80毎の個別電極とし、第2電極を各圧電素子80に共通した共通電極としているが、このような構成に限定されない。すなわち、第1電極81を各圧電素子80に共通した共通電極とし、第2電極を圧電素子80毎の個別電極としてもよい。
【0045】
圧力室基板10のZ1方向側の面には、圧力室基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電素子80を保護する空間である保持部31を有する。保持部31は、X方向に並んで配置された圧電素子80の列毎に独立して設けられたものであり、Y方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、Y方向に並んで配置された2つの保持部31の間にZ方向に貫通する第1配線挿通孔32が設けられている。
【0046】
連通板15のZ1方向側の面には、フィルター部材40が接合されている。図2及び図3ではフィルター部材40のZ1方向側の面のうちフィルター孔50が設けられた領域Rをハッチングのみで示し、個々のフィルター孔50の図示は省略している。
【0047】
本実施形態では、Z2方向に見た平面視において、フィルター部材40の外形は連通板15の外形と略同一形状を有する。また、フィルター部材40は、圧力室基板10に対向する領域がZ方向に除去された開口部45を有している。フィルター部材40は、開口部45の内側に圧力室基板10が配置された状態で連通板15のZ1方向側の面に設けられている。
【0048】
フィルター部材40は、Z2方向に見た平面視において第1マニホールド部17に対向する領域Rにフィルター孔50が設けられている。フィルター部材40やフィルター孔50の詳細な構成については後述する。
【0049】
フィルター部材40のZ1方向側の面には、ケース部材100が固定されている。ケース部材100は、Z方向に見た平面視においてフィルター部材40の外形と略同一形状を有する。また、ケース部材100は、圧力室基板10及び保護基板30を収容可能な深さの空間である収容部101を有する。収容部101は、保護基板30の圧力室基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部101に圧力室基板10及び保護基板30が収容された状態で収容部101の圧力室基板10側の開口面が振動板84によって封止されている。さらにケース部材100には、保護基板30の第1配線挿通孔32に連通して配線基板120が挿通される第2配線挿通孔103が設けられている。ケース部材100には、Y方向における収容部101の両外側に、インク導入部102がそれぞれ画成されている。ケース部材100には、インク導入部102に連通して各インク導入部102にインクを供給するための導入口104が設けられている。
【0050】
フィルター部材40が連通板15に設けられることで、第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18とによってマニホールド130が構成されている。マニホールド130は、X方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド130とを連通する供給連通路19は、X方向に並んで配置されている。
【0051】
フィルター部材40は、連通板15とケース部材100との間に設けられており、それらは接着剤によって接着されている。このようにZ2方向からZ1方向に向かって連通板15、フィルター部材40、ケース部材100がこの順で接着剤で積層されることで、マニホールド130とインク導入部102はフィルター部材40のフィルター孔50を介して連通している。
【0052】
このような本実施形態の記録ヘッド2では、図示しない外部インク供給手段と接続した導入口104からインク導入部102にインクが供給される。インク導入部102のインクはフィルター部材40によって異物が除去され、マニホールド130に供給される。そして、マニホールド130からノズル21に至るまで内部をインクで満たされた後、駆動回路121からの記録信号に従い、圧力室12に対応するそれぞれの圧電素子80に電圧を印加する。これにより圧電素子80と共に振動板84がたわみ変形して各圧力室12内の圧力が高まり、各ノズル21からインク滴が噴射される。
【0053】
図5から図7を用いてフィルター部材40及びフィルター孔50について説明する。図5はフィルター部材40を構成する第1フィルター板41及び第2フィルター板42を接合する前の状態を示す斜視図である。図6はフィルター部材40を構成する第1フィルター板41及び第2フィルター板42を接合した後の状態を示す斜視図である。図7はフィルター部材40の平面図及び断面図である。図5及び図6は、フィルター部材40に設けられた一つのフィルター孔50とその周辺を拡大した図である。
【0054】
フィルター部材40は、複数のフィルター板として第1方向に第2フィルター板42と第1フィルター板41がこの順で積層されて構成され、インクが通過する複数のフィルター孔50を有する部材である。また、フィルター部材40は、第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面S1及び第2面S2を含む。第1面S1及び第2面S2は、フィルター部材40の外面を画定する。
【0055】
本実施形態では、第1方向はZ1方向であり、第1方向に関する反対方向はZ2方向である。したがって第1面S1はZ1方向を向き、第2面S2はZ2方向を向く。なお、第1方向はZ1方向に限定されない。第1方向は、インクを噴射する方向とは関係なく任意の方向とすることができる。例えば、インクの流れる方向や記録ヘッド2の構成に応じて、第1フィルター板41と第2フィルター板42とが積層される方向をインクの噴射方向と交差する方向としてもよい。
【0056】
第1フィルター板41は、第1貫通孔61が形成されるとともにフィルター部材40の第1面S1を画定する。また、第1フィルター板41の第1面S1とは反対側の第3面S3を画定する。第2フィルター板42は、第2貫通孔62が形成されるとともにフィルター部材40の第2面S2を画定する。また、第2フィルター板42の第2面S2とは反対側の第4面S4を画定する。
【0057】
第1フィルター板41及び第2フィルター板42は、図2に示したように開口部45が設けられたX方向に長尺な枠状に形成されている。例えば、SUSでX方向に長尺であり、Z方向に貫通した開口部45を有する枠状の部材を形成し、その部材の表面にNi-Pd合金めっきを設けることで第1フィルター板41及び第2フィルター板42を形成することができる。
【0058】
第1フィルター板41は、Z1方向に見た平面視にてマニホールド130に対向する領域R(図3参照)に、Z方向に貫通した複数の第1貫通孔61が形成されている。第1貫通孔61の開口形状は特に限定はないが、本実施形態では円形状となっている。
【0059】
第2フィルター板42は、Z1方向に見た平面視にてマニホールド130に対向する領域R(図3参照)に、Z方向に貫通した複数の第2貫通孔62が形成されている。第2貫通孔62の開口形状は特に限定はないが、本実施形態では円形状となっている。また、第2貫通孔62は、第1貫通孔61と同じ開口形状としてあるが異なる開口形状であってもよい。
【0060】
また、第1フィルター板41の領域Rに形成される第1貫通孔61の個数や配置は特に限定はない。本実施形態では、第1フィルター板41の領域Rには、X方向及びY方向に沿って等間隔で所定個数の第1貫通孔61が形成されている。また、第2フィルター板42の領域Rに形成される第2貫通孔62の個数や配置は特に限定はない。本実施形態では、第2フィルター板42の領域Rには、X方向及びY方向に沿って等間隔で所定個数の第2貫通孔62が形成されている。
【0061】
フィルター孔50は、フィルター部材40に設けられてインクを通過させるが異物を捕捉するための孔である。フィルター孔50は、第1部分51、第2部分52及び貫通部分53を含んで構成されている。フィルター孔50は、第1方向であるZ1方向に直交する第2方向であるX1方向に関して、貫通部分53が第1部分51と第2部分52との間に配置されている。
【0062】
本実施形態では、第2方向はX1方向である。もちろん第2方向はX1方向に限定されない。第2方向は、第1方向に対して直交する方向であればよく、記録ヘッド2のノズル21や圧力室12等が並設されるX1方向に関係なく任意の方向とすることができる。
【0063】
貫通部分53は、第1貫通孔61及び第2貫通孔62のそれぞれの一部が重なって形成されている。具体的には、第1フィルター板41と第2フィルター板42とが積層されたフィルター部材40は、Z1方向に見た平面視にて第1貫通孔61と第2貫通孔62とは完全には重ならず一部が重なる。このようにZ1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部とが重なった部分は、フィルター部材40の第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53となっている。
【0064】
第1部分51は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、Z1方向に見て、第1部分51は、貫通部分53のX2方向側に隣り合った部分であって、後述する第1凹部71と、第2貫通孔62のうち貫通部分53以外の部分であって第1凹部71と重なる部分とから構成される部分である。第1部分51は、フィルター部材40の厚さTの半分よりも第1凹部71の厚さの分だけ凹んでいる。フィルター部材40の厚さTは、フィルター孔50のZ方向に関する寸法に等しい。また、本実施形態では、第1フィルター板41の厚さT1と第2フィルター板42の厚さT2とは等しい。そのため、フィルター部材40の厚さTの半分は、厚さT1及び厚さT2のそれぞれに等しい。なお、第1フィルター板41の厚さT1及び第2フィルター板42の厚さT2は、異なる厚さであってもよい。
【0065】
Z1方向に見て、第2部分52は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第1面S1から第2面S2に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、第2部分52は、貫通部分53のX1方向側に隣り合った部分であって、後述する第2凹部72と、第1貫通孔61のうち貫通部分53以外の部分であって第2凹部72と重なる部分とから構成される部分である。第2部分52は、フィルター部材40の厚さTの半分よりも第2凹部72の厚さの分だけ凹んでいる。
【0066】
第1凹部71は、第1フィルター板41に形成されている。具体的には、第1フィルター板41の第3面S3には、第1方向であるZ1方向に見て第1貫通孔61に隣り合うとともに第2貫通孔62に重なる第1凹部71が形成されている。本実施形態では、Z1方向に見て、Y方向における第1凹部71の幅が第1貫通孔61の幅よりも狭く形成されている。また、Z1方向に見て、第1凹部71は、第1貫通孔61との境界からX2方向に向けて延在しており、X2方向側の端部が第2貫通孔62に内接するよう弧状に形成されている。
【0067】
第2凹部72は、第2フィルター板42に形成されている。具体的には、第2フィルター板42の第4面S4には、第1方向であるZ1方向に見て第2貫通孔62に隣り合うとともに第1貫通孔61に重なる第2凹部72が形成されている。本実施形態では、Z1方向に見て、Y方向における第2凹部72の幅が第2貫通孔62の幅よりも狭く形成されている。また、Z1方向に見て、第2凹部72は、第2貫通孔62との境界からX1方向に向けて延在しており、X1方向側の端部が第1貫通孔61に内接するよう弧状に形成されている。なお、本実施形態では第2凹部72は、Z1方向にみた平面視においてY方向について第1凹部71の鏡像となるような形状としてあるが、このような形状に限定されない。
【0068】
このように第1凹部71は、Z1方向に見て、全体が第2貫通孔62に重なっている。また、第2凹部72は、Z1方向に見て、全体が第1貫通孔61に重なっている。もちろん、第1凹部71及び第2凹部72はこのような構成に限定されない。第1凹部71の一部はZ1方向に見て第2貫通孔62に重なっておらず、第2貫通孔62よりも外側に延在された構成としてもよい。同様に、第2凹部72の一部はZ1方向に見て第1貫通孔61に重なっておらず、第1貫通孔61よりも外側に延在された構成としてもよい。
【0069】
上述したフィルター孔50を構成する各要素である第1フィルター板41の第1貫通孔61及び第1凹部71、並びに第2フィルター板42及び第2凹部72は、電鋳法により形成することができる。また、電鋳法に限定されず、例えばSUS等の部材をエッチングすることでも形成することができる。
【0070】
第1フィルター板41と第2フィルター板42とは、第3面S3と第4面S4とが接触するようにして積層されている。第1フィルター板41と第2フィルター板42とは、接着剤による接着又は接合によって一体化されている。具体的な接合方法としては、拡散接合を用いることが好ましい。拡散接合とは、第1フィルター板41及び第2フィルター板42を溶融させることなく加熱及び加圧し、接合界面の原子を拡散させて接合することをいう。
【0071】
第1フィルター板41と第2フィルター板42とが積層されることで、第1貫通孔61及び第2貫通孔62のそれぞれの一部が重なって貫通部分53が形成される。また、第1凹部71と第2貫通孔62の貫通部分53以外の部分であって第1凹部71と重なる部分とから第1部分51が形成される。第2凹部72と第1貫通孔61の貫通部分53以外の部分であって第2凹部72と重なる部分とから第2部分52が形成される。第2方向であるX1方向における第1凹部71と第2凹部72との間に貫通部分53が配置されたフィルター孔50が形成される。
【0072】
本実施形態のフィルター孔50は、互いに連通する、1つの第1貫通孔61、1つの第2貫通孔62によって画定されている。しかしながら、このように各貫通孔が1対1で構成されたフィルター孔50に限定されない。
【0073】
例えば、フィルター孔50は、1つの第1貫通孔61が複数の第2貫通孔62にそれぞれ連通していてもよいし、1つの第2貫通孔62が複数の第1貫通孔61にそれぞれ連通していてもよい。このように一つの貫通孔が他の複数の貫通孔に共通していてもよい。
【0074】
なお、フィルター孔50は、フィルター部材40のマニホールド130に対向する領域Rに複数形成され、全て同一形状のものを図示したが、個々のフィルター孔50はそれぞれ形状が異なっていてもよい。
【0075】
Z2方向に見て、第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径をD1とする。本実施形態では第1貫通孔61は円形状であるので、第1貫通孔61の開口の直径がD1となる。Z1方向に見て、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径をD2とする。本実施形態では第2貫通孔62は円形状であるので、第2貫通孔62の開口の直径がD2となる。
【0076】
また、Z1方向に見て、ノズル21に内接する最大の内接円の直径をDNとする。Z1方向にみたノズル21の形状を図示してはいないが、本実施形態のノズル21は円形状であるので、図4に示すようにノズル21の開口の直径がDNとなる。なお、ノズル21の形状は、図4に示すように、ノズルプレート20の厚さ方向であるZ方向に関して同じでない場合がある。つまり、Z1方向に見て、ノズル21に内接する最大の内接円の直径は、ノズルプレート20の厚さ方向に関して同じでない場合がある。したがって、そのような場合には、ノズルプレート20の厚さ方向に関して、Z1方向にみたノズル21に内接する最大の内接円の直径が最小となる位置でのノズル21に内接する最大の内接円の直径をDNとする。
【0077】
直径D1、直径D2及び直径DNの大小関係に制限はないが、直径D1及び直径D2は、いずれも直径DNより小さくすることが好ましい。このようにノズル21の直径DNよりも直径D1及び直径D2を小さくすることで、インク中のより小さい異物を捕捉できるとともに、単位面積あたりのフィルター孔50の数を増やすことができるので、フィルター部材40を通過するインクの圧力損失を低減することができる。もちろん、直径D1又は/及び直径D2は、ノズル21の直径DNよりも大きくてもよい。
【0078】
第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2との最短距離をL2とする。最短距離L2は、貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置で、フィルター部材40をZ1方向及びX2方向に沿って切断した断面における、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2との最短距離をいう。
【0079】
本実施形態では、第1貫通孔61及び第2貫通孔62は円形状であり、X方向にずれて重なって貫通部分53が形成されている。したがって、貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置は、Z2方向に見た平面視にて、貫通部分53のY方向における中心位置になる。当該中心位置で、Z1方向及びX1方向に沿って切断した断面は図7のB-B線断面となっている。このような断面において、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2の最も近い点同士を結んだ長さが最短距離L2となっている。
【0080】
最短距離L2は、直径D1よりも小さい。このように最短距離L2を直径D1よりも小さくすることで、直径D1よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。また、最短距離L2は、直径D2よりも小さい。このように最短距離L2を直径D2よりも小さくすることで、直径D2よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。
【0081】
図7のB-B線断面図に示すように、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する距離をL1とする。本実施形態では、第1凹部71の底面BS1や第2凹部72の底面BS2が平坦ではない場合は、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する最大の距離をL1とする。また、貫通部分53のX1方向に関する最大幅をL3とする。
【0082】
距離L1は、距離L3よりも小さい。このように距離L1を距離L3よりも小さくすることで、第2部分52から貫通部分53へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0083】
以上のように本実施形態に係る記録ヘッド2は、インクを噴射するノズル21と、Z1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材40であって、ノズル21へ供給されるインクが通過する複数のフィルター孔50を有するフィルター部材40と、を備え、フィルター部材40は、Z方向に関して互いに反対方向であるZ1方向及びZ2方向を向く第1面S1及び第2面S2を含み、複数のフィルター板は、第1貫通孔61が形成されるとともに第1面S1を画定する第1フィルター板41と、第2貫通孔62が形成されるとともに第2面S2を画定する第2フィルター板42と、を含み、フィルター孔50は、Z1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部とが重なる部分であり第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53と、Z1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む第1部分51と、を含む。
【0084】
このような構成とすることで、第1貫通孔61と第2貫通孔62とが部分的に重なることでフィルター孔50を小さくすることが可能となる。すなわちZ1方向に見てフィルター孔50の貫通部分53は、第1貫通孔61の開口面積よりも小さく、第2貫通孔62の開口面積よりも小さい。このように、フィルター孔50の実質的な目の大きさは、第1貫通孔61や第2貫通孔62よりも小さな貫通部分53によって規定されることになる。したがって、第1貫通孔61又は第2貫通孔62のみでフィルター孔50を構成した場合と比較して、より小さな異物や細長い長尺状の異物を捕捉することが可能となる。
【0085】
さらに、フィルター孔50は第1部分51を含んでいる。このような構成としたことで、フィルター孔50を流通するインクの流れに対する断面積が第1部分51によって拡張されることになるので、フィルター孔50の流路抵抗の増加を抑制することができる。
【0086】
このように本実施形態の記録ヘッド2は、第1貫通孔61と第2貫通孔62とが部分的に重なることでフィルター孔50の実質的な目の大きさを細かくしてインク中の異物をより確実に捕捉するとともに、フィルター孔50に第1部分51を設けることでフィルター孔50の流路抵抗の増加を抑制してインクの圧力損失を抑制することができる。
【0087】
フィルター孔50は、Z1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第1面S1から第2面S2に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む第2部分52を含み、貫通部分53は、Z1方向に直交するX1方向に関して第1部分51と第2部分52との間に配置されている。このような構成とすることで、第1部分51から第2部分52、もしくは第2部分52から第1部分51へのインクの流れが生じるので、圧力損失をより顕著に抑制することができる。
【0088】
第1フィルター板41は、第1面S1とは反対側の第3面S3を画定し、第2フィルター板42は、第2面S2とは反対側の第4面S4を画定し、第1フィルター板41と第2フィルター板42とは、第3面S3と第4面S4とが接触するようにして積層され、第1フィルター板41の第3面S3には、Z1方向に見て第1貫通孔61に隣り合うとともに第2貫通孔62に重なる第1凹部71が形成されている。
【0089】
このような構成とすることで、第1凹部71を有する第1フィルター板41に第2フィルター板42を積層することで第1部分51を形成することができる。すなわち、フィルター部材40に第1部分51を形成するためには、第1凹部71を有する第1フィルター板41と、第2フィルター板42とがあればよく、第1部分51を形成するための別部材を要することがない。したがって部品点数を削減することができる。また、3枚以上のフィルター板を積層したフィルター部材の剛性と、第1フィルター板41及び第2フィルター板42を積層した本実施形態のフィルター部材40の剛性とが同じであるとしたとき、本実施形態のフィルター部材40はフィルター板の点数が少ない分、第1フィルター板41及び第2フィルター板42のそれぞれの剛性を高めることができる。
【0090】
第2フィルター板42の第4面S4には、Z1方向に見て第2貫通孔62に隣り合うとともに第1貫通孔61と重なる第2凹部72が形成され、貫通部分53は、Z1方向に直交するX1方向に関して第1凹部71と第2凹部72との間に配置されている。
【0091】
このような構成とすることで、第1凹部71を有する第1フィルター板41と、第2凹部72を有する第2フィルター板42とを積層することで第1部分51及び第2部分52を形成することができる。すなわち、フィルター部材40に第1部分51及び第2部分52を形成するためには、第1凹部71を有する第1フィルター板41と、第2凹部72を有する第2フィルター板42とがあればよく、第1部分51及び第2部分52を形成するための別部材を要することがない。したがって部品点数を削減することができる。また、3枚以上のフィルター板を積層したフィルター部材の剛性と、第1フィルター板41及び第2フィルター板42を積層した本実施形態のフィルター部材40の剛性とが同じであるとしたとき、本実施形態のフィルター部材40はフィルター板の点数が少ない分、第1フィルター板41及び第2フィルター板42のそれぞれの剛性を高めることができる。
【0092】
第1凹部71の全ては、Z1方向に見て、第2貫通孔62に重なり、第2凹部72の全ては、Z1方向に見て、第1貫通孔61に重なっている。
【0093】
仮に、第1凹部71が第2貫通孔62に重ならない場合、すなわち、Z1方向に見て第1凹部71が第2貫通孔62よりも外側に延在されていると、第1凹部71のうち第2貫通孔62よりも外側に延在した部分が小さな隙間となり、その隙間に入り込んでしまった気泡が排出しにくくなる。第2凹部72についても同様である。
【0094】
しかしながら、本実施形態では、第1凹部71が第2貫通孔62に重なり、第2凹部72が第1貫通孔61に重なることで小さな隙間が形成されなくなるので、フィルター孔50から気泡を排出させやすくすることができる。また、Z1方向にみた第1凹部71は第2貫通孔62よりも小さく、第2凹部72は第1貫通孔61よりも小さくなるため、第1凹部71や第2凹部72に気泡が滞留しにくくなる効果も奏する。
【0095】
第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径D1は、ノズル21に内接する最大の内接円の直径DNよりも小さい。このような構成とすることで、ノズル21を詰まらせるような異物を、フィルター孔50でより確実に捕捉することができる。また、直径D1は直径DNよりも小さいのでフィルター孔50の目の大きさが小さくなり、フィルター部材40の領域Rにおける単位面積当たりのフィルター孔50の数を増やすことができ、インクの圧力損失をより一層低減することが可能となる。
【0096】
また、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径D2は、ノズル21に内接する最大の内接円の直径DNよりも小さい。このような構成とすることで、ノズル21を詰まらせるような異物を、フィルター孔50でより確実に捕捉することができる。また、直径D2は直径DNよりも小さいのでフィルター孔50の目の大きさが小さくなり、フィルター部材40の領域Rにおける単位面積当たりのフィルター孔50の数を増やすことができ、インクの圧力損失をより一層低減することが可能となる。
【0097】
貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置で、フィルター部材40をZ1方向及びX2方向に沿って切断した断面において、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2との最短距離L2は、第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径D1よりも小さい。このような構成とすることで、直径D1よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。
【0098】
貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置で、フィルター部材40をZ1方向及びX2方向に沿って切断した断面において、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2との最短距離L2は、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径D2よりも小さい。このような構成とすることで、直径D2よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。
【0099】
第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する距離L1は、貫通部分53のX1方向に関する最大幅である距離L3よりも小さい。このような構成とすることで、第2部分52から貫通部分53へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0100】
また、本実施形態に係るフィルター部材40は、Z1方向に複数のフィルター板が積層されて構成され、ノズル21へ供給されるインクが通過する複数のフィルター孔50を有するものであって、Z方向に関して互いに反対方向であるZ1方向及びZ2方向を向く第1面S1及び第2面S2を含み、複数のフィルター板は、第1貫通孔61が形成されるとともに第1面S1を画定する第1フィルター板41と、第2貫通孔62が形成されるとともに第2面S2を画定する第2フィルター板42と、を含み、フィルター孔50は、Z1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部とが重なる部分であり第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53と、Z1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さの半分よりも凹む第1部分51と、を含む。
【0101】
このような構成とすることで、第1貫通孔61と第2貫通孔62とが部分的に重なることでフィルター孔50の実質的な目の大きさを細かくしてインク中の異物をより確実に捕捉するとともに、フィルター孔50に第1部分51を設けることでフィルター孔50の流路抵抗の増加を抑制してインクの圧力損失を抑制することができるフィルター部材40が提供される。
【0102】
また、本実施形態においては、フィルター部材40は記録ヘッド2の連通板15とケース部材100との間に挟まれた構成を例示したが、このような構成に限定されない。フィルター部材40は、インクが流通する任意の位置に設けることができる。つまり、フィルター部材40は、記録ヘッド2の外部に設けられていてもよく、具体的には記録ヘッド2と液体容器3との間に設けられたフィルターユニットの一部として設けられていてもよい。
【0103】
このような場合、記録装置1は、インクを噴射するノズル21を有する記録ヘッド2と、Z1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材40であって、ノズル21へ供給されるインクが通過する複数のフィルター孔50を有するフィルター部材40と、を備え、フィルター部材40は、Z方向に関して互いに反対方向であるZ1方向及びZ2方向を向く第1面S1及び第2面S2を含み、複数のフィルター板は、第1貫通孔61が形成されるとともに第1面S1を画定する第1フィルター板41と、第2貫通孔62が形成されるとともに第2面S2を画定する第2フィルター板42と、を含み、フィルター孔50は、Z1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部とが重なる部分であり第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53と、Z1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む第1部分51と、を含む。
【0104】
このような構成とすることで、第1貫通孔61と第2貫通孔62とが部分的に重なることでフィルター孔50の実質的な目の大きさを細かくしてインク中の異物をより確実に捕捉するとともに、フィルター孔50に第1部分51を設けることでフィルター孔50の流路抵抗の増加を抑制してインクの圧力損失を抑制した記録装置1が提供される。
【0105】
〈実施形態2〉
図8はフィルター部材40を構成する第1フィルター板41及び第2フィルター板42を接合する前の状態を示す斜視図である。図9はフィルター部材40を構成する第1フィルター板41及び第2フィルター板42を接合した後の状態を示す斜視図である。図10はフィルター部材40の平面図及び断面図である。図8及び図9は、フィルター部材40に設けられた一つのフィルター孔50とその周辺を拡大した図である。実施形態1と同一の部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0106】
本実施形態のフィルター部材40は、第1フィルター板41に第1貫通孔61が形成され、第2フィルター板42に第2貫通孔62が形成されている。これらの第1貫通孔61及び第2貫通孔62は、実施形態1と同様に円形状となっている。
【0107】
フィルター孔50は、第1部分51、第2部分52及び貫通部分53を含んで構成されている。フィルター孔50は、第1方向であるZ1方向に直交する第2方向であるX1方向に関して、貫通部分53が第1部分51と第2部分52との間に配置されている。
【0108】
貫通部分53は、第1貫通孔61及び第2貫通孔62のそれぞれの一部が重なって形成されている。具体的には、第1フィルター板41と第2フィルター板42とが積層されたフィルター部材40は、Z1方向に見た平面視にて第1貫通孔61と第2貫通孔62とは完全には重ならず一部が重なる。このようにZ1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部とが重なった部分は、フィルター部材40の第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53となっている。
【0109】
第1部分51は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、第1部分51は、貫通部分53のX2方向側に隣り合った部分であって、第2貫通孔62のうち貫通部分53以外の部分と、後述する第1凹部71とから構成される部分である。第1部分51は、フィルター部材40の厚さTの半分よりも第1凹部71の厚さの分だけ凹んでいる。
【0110】
第2部分52は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第1面S1から第2面S2に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、第2部分52は、貫通部分53のX1方向側に隣り合った部分であって、第1貫通孔61のうち貫通部分53以外の部分と、後述する第2凹部72とから構成される部分である。第2部分52は、フィルター部材40の厚さTの半分よりも第2凹部72の厚さの分だけ凹んでいる。
【0111】
第1凹部71は、第1フィルター板41に形成されている。具体的には、第1フィルター板41の第3面S3には、第1方向であるZ1方向に見て第1貫通孔61に隣り合うとともに第2貫通孔62に重なる第1凹部71が形成されている。本実施形態では、Z1方向に見て、Y方向における第1凹部71の幅が第1貫通孔61の幅と同じになるように形成されている。また、Z1方向に見て、第1凹部71は、第1貫通孔61との境界からX2方向に向けて延在しており、X1方向側の端部が第1貫通孔61の円弧に一致するように弧状に形成され、且つ、X2方向側の端部が第2貫通孔62の円弧に一致するように弧状に形成されている。
【0112】
第2凹部72は、第2フィルター板42に形成されている。具体的には、第2フィルター板42の第4面S4には、第1方向であるZ1方向に見て第2貫通孔62に隣り合うとともに第1貫通孔61に重なる第2凹部72が形成されている。本実施形態では、Z1方向に見て、Y方向における第2凹部72の幅が第2貫通孔62の幅と同じになるように形成されている。また、Z1方向に見て、第2凹部72は、第2貫通孔62との境界からX1方向に向けて延在しており、X2方向側の端部が第2貫通孔62の円弧に一致するように弧状に形成され、且つ、X1方向側の端部が第1貫通孔61の円弧に一致するように弧状に形成されている。なお、本実施形態では第2凹部72は、Z1方向にみた平面視においてY方向について第1凹部71の鏡像となるような形状としてあるがこのような形状に限定されない。
【0113】
本実施形態の第1凹部71は、Z1方向に見て、全体が第2貫通孔62に重なっていない。具体的には、第1凹部71のうち、第2貫通孔62との境界部分のY1方向及びY2方向の端部においては、第2貫通孔62に重なっていない隙間Vとなっている。同様に、第2凹部72も、Z1方向に見て、全体が第1貫通孔61に重なっていない。具体的には、第2凹部72のうち、第1貫通孔61との境界部分のY1方向及びY2方向の端部においては、第1貫通孔61に重なっていない隙間Vとなっている。隙間Vは、Z方向に見て、第1凹部71と第2凹部72とが重なっている部分である。つまり、隙間Vは、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とに挟まれた隙間である。
【0114】
第1フィルター板41と第2フィルター板42とが積層されることで、第1貫通孔61及び第2貫通孔62のそれぞれの一部が重なって貫通部分53が形成される。また、第1凹部71と第2貫通孔62の貫通部分53以外の部分とから第1部分51が形成される。第2凹部72と第1貫通孔61の貫通部分53以外の部分とから第2部分52が形成される。第2方向であるX1方向における第1凹部71と第2凹部72との間に貫通部分53が配置されたフィルター孔50が形成される。
【0115】
本実施形態のフィルター孔50は、互いに連通する、1つの第1貫通孔61、1つの第2貫通孔62によって画定されている。しかしながら、このように各貫通孔が1対1で構成されたフィルター孔50に限定されない。
【0116】
例えば、フィルター孔50は、1つの第1貫通孔61が複数の第2貫通孔62にそれぞれ連通していてもよいし、1つの第2貫通孔62が複数の第1貫通孔61にそれぞれ連通していてもよい。このように一つの貫通孔が他の複数の貫通孔に共通していてもよい。
【0117】
また、フィルター孔50は、フィルター部材40のマニホールド130に対向する領域Rに複数形成されるが、個々のフィルター孔50はそれぞれ形状が異なっていてもよい。領域Rに形成された複数のフィルター孔50は、全て同一形状のものを図示したが、これに限定されずそれぞれ異なる形状であってもよい。
【0118】
Z2方向に見て、第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径をD1とする。本実施形態では第1貫通孔61は円形状であるので、第1貫通孔61の開口の直径がD1となる。Z1方向に見て、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径をD2とする。本実施形態では第2貫通孔62は円形状であるので、第2貫通孔62の開口の直径がD2となる。また、実施形態1と同様に、Z1方向に見て、不図示のノズル21に内接する最大の内接円の直径をDNとする。
【0119】
直径D1、直径D2及び直径DNの大小関係に制限はないが、直径D1及び直径D2は、いずれも直径DNより小さくすることが好ましい。このようにノズル21の直径DNよりも直径D1及び直径D2を小さくすることで、インク中のより小さい異物を捕捉できるとともに、単位面積あたりのフィルター孔50の数を増やすことができるので、フィルター部材40を通過するインクの圧力損失を低減することができる。もちろん、直径D1又は/及び直径D2は、ノズル21の直径DNよりも大きくてもよい。
【0120】
第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2との最短距離をL2とする。最短距離L2は、貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置で、フィルター部材40をZ1方向及びX2方向に沿って切断した断面における、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2との最短距離をいう。
【0121】
本実施形態では、第1貫通孔61及び第2貫通孔62は円形状であり、X方向にずれて重なって貫通部分53が形成されている。したがって、貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置は、Z2方向に見た平面視にて、貫通部分53のY方向における中心位置になる。当該中心位置で、Z1方向及びX1方向に沿って切断した断面は図10のC-C線断面となっている。このような断面において、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2の最も近い点同士を結んだ長さが最短距離L2となっている。
【0122】
最短距離L2は、直径D1よりも小さい。このように最短距離L2を直径D1よりも小さくすることで、直径D1よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。また、最短距離L2は、直径D2よりも小さい。このように最短距離L2を直径D2よりも小さくすることで、直径D2よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。
【0123】
第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する距離をL1とする。本実施形態では、図10のC-C線断面図に示すように、距離L1は、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する距離である。第1凹部71の底面BS1や第2凹部72の底面BS2が平坦ではない場合は、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する最大の距離をL1とする。また、貫通部分53のX1方向に関する最大幅をL3とする。
【0124】
距離L1は、距離L3よりも小さい。このように距離L1を距離L3よりも小さくすることで、第2部分52側から貫通部分53側へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0125】
実施形態1に係る記録ヘッド2は、第1凹部71の全ては、Z1方向に見て、第2貫通孔62に重なっており、第2凹部72の全ては、Z1方向に見て、第1貫通孔61に重なっている。一方、本実施形態に係る記録ヘッド2は、第1凹部71の全ては、Z1方向に見て、第2貫通孔62に重なっておらず、第2凹部72の全ては、Z1方向に見て、第1貫通孔61に重なっておらず、第1凹部71の一部及び第2凹部72の一部が隙間Vとなっている。
【0126】
本実施形態の記録ヘッド2は、このような小さな隙間Vにより気泡が若干排出しにくくなるものの、それ以外の作用効果については実施形態1の記録ヘッド2と同様の作用効果を奏する。
【0127】
〈実施形態3〉
図11はフィルター部材40を構成する第1フィルター板41、第2フィルター板42及び第3フィルター板43を接合する前の状態を示す斜視図である。図12はフィルター部材40の平面図及び断面図である。図11は、フィルター部材40に設けられた一つのフィルター孔50とその周辺を拡大した図である。実施形態1と同一の部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0128】
フィルター部材40は、複数のフィルター板として第1方向に第2フィルター板42と、第3フィルター板43と、第1フィルター板41がこの順で積層されて構成され、インクが通過する複数のフィルター孔50を有する部材である。また、フィルター部材40は、第1方向であるZ1方向を向く第1面S1及び第1方向とは反対のZ2方向を向く第2面S2を含む。第1フィルター板41と第2フィルター板42と第3フィルター板43とは、接着剤による接着又は接合によって一体化されている。本実施形態では接合によって、それらを一体化している。
【0129】
第3フィルター板43は、第3貫通孔63が形成されるとともに第1フィルター板41と第2フィルター板42との間に挟まれた部材である。また、第3フィルター板43は、第1フィルター板41の第3面S3に接合される第5面S5と、第2フィルター板42の第4面S4に接合される第6面S6を有する。
【0130】
第3フィルター板43は、第1フィルター板41及び第2フィルター板42と同様に、図2に示したように開口部45が設けられたX方向に長尺な枠状に形成されている。例えば、SUSでX方向に長尺であり、Z方向に貫通した開口部45を有する枠状の部材を形成し、その部材の表面にNi-Pd合金めっきを設けることで第3フィルター板43を形成することができる。
【0131】
本実施形態のフィルター部材40は、第1フィルター板41に複数の第1貫通孔61が形成され、第2フィルター板42に複数の第2貫通孔62が形成されている。これらの第1貫通孔61及び第2貫通孔62は、実施形態1と同様に円形状となっている。
【0132】
第3フィルター板43は、Z方向に貫通した複数の第3貫通孔63を有する。第3貫通孔63は、Z1方向に見て、第1貫通孔61及び第2貫通孔62と重なる部分である第3貫通部63Cと、第2貫通孔62と重なるが第1貫通孔と重ならない部分である第1貫通部63Aと、第1貫通孔61と重なるが第2貫通孔62と重ならない部分である第2貫通部63Bと、を有する。第1貫通部63Aは第1部分51の一部であり、第2貫通部63Bは第2部分52の一部であり、第3貫通部63Cは貫通部分53の一部である。第3貫通孔63は、Z1方向に見た形状について特に限定はないが、本実施形態では長方形状を基本として長手方向であるX方向の両端部を半円状とした角丸長方形となっている。
【0133】
第1貫通部63Aは、第3貫通孔63のうち貫通部分53に対して第2方向の一方側であるX2方向側の部分に相当する。第2貫通部63Bは、第3貫通孔63のうち貫通部分53に対して第2方向の他方側であるX1方向側の部分に相当する。
【0134】
また、第1貫通部63Aの全ては、Z1方向に見て第2貫通孔62に重なっている。第2貫通部63Bの全ては、Z1方向に見て第1貫通孔61に重なっている。もちろん、第1貫通部63Aの全てがZ1方向に見て第2貫通孔62に重なっていなくてもよく、第2貫通孔62よりも外側に向けて延在していてもよい。同様に、第2貫通部63Bの全てがZ1方向に見て第1貫通孔61に重なっていなくてもよく、第1貫通孔61よりも外側に向けて延在していてもよい。
【0135】
フィルター孔50は、第1部分51、第2部分52及び貫通部分53を含んで構成されている。フィルター孔50は、第1方向であるZ1方向に直交する第2方向であるX1方向に関して、貫通部分53が第1部分51と第2部分52との間に配置されている。
【0136】
貫通部分53は、第1貫通孔61及び第2貫通孔62のそれぞれの一部と、第3貫通部63Cとが重なって形成されている。具体的には、第1フィルター板41と第2フィルター板42と第3フィルター板43とが積層されたフィルター部材40は、Z1方向に見た平面視にて第1貫通孔61と第2貫通孔62とは完全には重ならず一部が重なる。さらに、第1貫通孔61と第2貫通孔62とが重なった一部に、第3フィルター板43の第3貫通孔63の第3貫通部63Cが重なって貫通部分53が形成されている。このようにZ1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部と、第3貫通部63Cが重なった部分は、フィルター部材40の第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53となっている。
【0137】
第1部分51は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、Z1方向に見て、第1部分51は、貫通部分53のX2方向側に隣り合った部分であって、第3貫通孔63のうち第3貫通部63CよりもX2方向側の第1貫通部63Aと、第2貫通孔62のうち貫通部分53以外の部分であって第1貫通部63Aと重なる部分とから構成される部分である。第1部分51は、フィルター部材40の厚さTの半分よりも凹んでいる。
【0138】
第2部分52は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第1面S1から第2面S2に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、Z1方向に見て、第2部分52は、貫通部分53のX1方向側に隣り合った部分であって、第3貫通孔63のうち第3貫通部63CよりもX1側の第2貫通部63Bと、第1貫通孔61のうち貫通部分53以外の部分であって第2貫通部63Bと重なる部分と、から構成される部分である。第2部分52は、フィルター部材40の厚さTの半分よりも凹んでいる。
【0139】
第1フィルター板41と第2フィルター板42と第3フィルター板43とが積層されることで、第1貫通孔61及び第2貫通孔62のそれぞれの一部と、第3貫通部63Cとが重なって貫通部分53が形成される。また、第1貫通部63Aと第2貫通孔62の貫通部分53以外の部分であって第1貫通部63Aと重なる部分とから第1部分51が形成される。第2貫通部63Bと第1貫通孔61の貫通部分53以外の部分であって第2貫通部63Bと重なる部分とから第2部分52が形成される。第2方向であるX1方向における第1部分51と第2部分52との間に貫通部分53が配置されたフィルター孔50が形成される。
【0140】
本実施形態の1つのフィルター孔50は、互いに連通する、1つの第1貫通孔61、1つの第2貫通孔62、1つの第3貫通孔63によって画定されている。しかしながら、このように各貫通孔が1対1対1で構成されたフィルター孔50に限定されない。
【0141】
例えば、フィルター孔50は、1つの第3貫通孔63が複数の第1貫通孔61にそれぞれ連通していてもよいし、1つの第3貫通孔63が複数の第2貫通孔62にそれぞれ連通していてもよい。他にも、1つの第1貫通孔61が複数の第3貫通孔63に連通していてもよしし、1つの第2貫通孔62が複数の第3貫通孔63に連通してもよい。このように一つの貫通孔が他の複数の貫通孔に共通していてもよい。
【0142】
また、フィルター孔50は、フィルター部材40のマニホールド130に対向する領域Rに複数形成され、全て同一形状のものを図示したが、個々のフィルター孔50はそれぞれ形状が異なっていてもよい。
【0143】
Z2方向に見て、第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径をD1とする。本実施形態では第1貫通孔61は円形状であるので、第1貫通孔61の開口の直径がD1となる。Z1方向に見て、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径をD2とする。本実施形態では第2貫通孔62は円形状であるので、第2貫通孔62の開口の直径がD2となる。また、Z1方向に見て、不図示のノズル21に内接する最大の内接円の直径をDNとする。
【0144】
直径D1、直径D2及び直径DNの大小関係に制限はないが、直径D1及び直径D2は、いずれも直径DNより小さくすることが好ましい。このようにノズル21の直径DNよりも直径D1及び直径D2を小さくすることで、インク中のより小さい異物を捕捉できるとともに、単位面積あたりのフィルター孔50の数を増やすことができるので、フィルター部材40を通過するインクの圧力損失を低減することができる。もちろん、直径D1又は/及び直径D2は、ノズル21の直径DNよりも大きくてもよい。
【0145】
第1部分51の底面BS1と第2部分52の底面BS2との最短距離をL2とする。最短距離L2は、貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置で、フィルター部材40をZ1方向及びX2方向に沿って切断した断面における、第1部分51の底面BS1と第2部分52の底面BS2との最短距離をいう。第1部分51の底面BS1は、第1フィルター板41の第3面S3のうち第1部分51を画定する部分に相当する。同様に、第2部分52の底面BS2は、第2フィルター板42の第4面S4のうち第2部分52を画定する部分に相当する。
【0146】
本実施形態では、第1貫通孔61及び第2貫通孔62は円形状であり、第1貫通孔61及び第2貫通孔62がX方向にずれて重なった部分の一部によって貫通部分53が形成されている。したがって、貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置は、Z2方向に見た平面視にて、貫通部分53のY方向における中心位置になる。当該中心位置で、Z1方向及びX1方向に沿って切断した断面は図12のD-D線断面となっている。このような断面において、第1部分51の底面BS1と第2部分52の底面BS2の最も近い点同士を結んだ長さが最短距離L2となっている。
【0147】
最短距離L2は、直径D1よりも小さい。このように最短距離L2を直径D1よりも小さくすることで、直径D1よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。また、最短距離L2は、直径D2よりも小さい。このように最短距離L2を直径D2よりも小さくすることで、直径D2よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。
【0148】
第3貫通孔63のZ1方向に関する寸法を距離L1と称する。この距離L1は、換言すれば、第3フィルター板43のZ1方向に関する厚さT3である。距離L1は、貫通部分53のX1方向に関する最大幅である距離L3よりも小さい。このように距離L1を距離L3よりも小さくすることで、第2部分52から貫通部分53へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0149】
以上のように本実施形態に係る記録ヘッド2は、インクを噴射するノズル21と、Z1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材40であって、ノズル21へ供給されるインクが通過する複数のフィルター孔50を有するフィルター部材40と、を備え、フィルター部材40は、Z方向に関して互いに反対方向であるZ1方向及びZ2方向を向く第1面S1及び第2面S2を含み、複数のフィルター板は、第1貫通孔61が形成されるとともに第1面S1を画定する第1フィルター板41と、第2貫通孔62が形成されるとともに第2面S2を画定する第2フィルター板42と、を含み、フィルター孔50は、Z1方向に見て第1貫通孔61の一部と第2貫通孔62の一部とが重なる部分であり第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53と、Z1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さTの半分よりも凹む第1部分51と、を含む。
【0150】
このような構成とすることで、実施形態1の記録ヘッド2と同様の効果を奏する。
【0151】
さらに、フィルター部材40は、第3貫通孔63が形成されるとともに第1フィルター板41と第2フィルター板42との間に挟まれた第3フィルター板43を更に含み、第3貫通孔63は、Z1方向に見て、第1貫通孔61及び第2貫通孔62と重なる部分である第3貫通部63Cと、第2貫通孔62と重なるが第1貫通孔61と重ならない部分である第1貫通部63Aと、第1貫通孔61と重なるが第2貫通孔62と重ならない部分である第2貫通部63Bと、を有する。
【0152】
このような構成とすることで、実施形態1の記録ヘッド2と同様の効果を奏する。
【0153】
さらに、フィルター部材40は、それぞれ貫通孔のみが形成された3枚の第1フィルター板41、第2フィルター板42、及び第3フィルター板43を積層することで構成されている。したがって、それぞれのフィルター板には貫通孔のみを形成すればよいのでフィルター板を製造しやすいという効果を奏する。
【0154】
第3フィルター板43の厚さは、第1フィルター板41の厚さ及び第2フィルター板42の厚さよりも厚い。このような構成とすることで第3フィルター板43の剛性を高くすることができる。特に、フィルター孔50を通過するインクの圧力損失を低減する為に、Z1方向に見て、第3貫通孔63が、第1貫通孔61および第2貫通孔62のそれぞれよりも大きい場合には、第3フィルター板43の剛性が第1フィルター板41及び第2フィルター板42に比べて低下しやすくなるが、第3フィルター板43の厚さT3を第1フィルター板41の厚さT1及び第2フィルター板42の厚さT2よりも厚くすることで、第3フィルター板43の剛性の低下を抑制することができる。なお、本実施形態のように、Z1方向に見て、第1貫通孔61および第2貫通孔62のそれぞれが、第3貫通孔63よりも大きい場合には、第1フィルター板41及び第2フィルター板42の剛性を向上させるために、第1フィルター板41の厚さT1及び第2フィルター板42の厚さT2のそれぞれを、第3フィルター板43の厚さT3よりも厚くしても構わない。但し、この場合でも、フィルター孔50を通過するインクの圧力損失を低減する為、換言すれば、距離L1を大きくする為に、第3フィルター板43の厚さT3を第1フィルター板41の厚さT1及び第2フィルター板42の厚さT2よりも厚くしても構わない。
【0155】
1つのフィルター孔50は、互いに連通する、1つの第1貫通孔61、1つの第2貫通孔62及び1つの第3貫通孔63によって画定されている。このような構成とすることで、フィルター孔50同士に隔壁が設けられることになるので、例えば、第3貫通孔63が複数の第1貫通孔61及び複数の第2貫通孔62に共通である構成と比べて剛性を高めることが出来る。
【0156】
第3貫通孔63のうち貫通部分53に対してX方向の一方側の部分である第1貫通部63Aの全ては、Z1方向に見て、第2貫通孔62に重なり、第3貫通孔63のうち貫通部分53に対してX方向の他方側の部分である第2貫通部63Bの全ては、Z1方向に見て、第1貫通孔61に重なる。
【0157】
このような構成とすることで、第1貫通部63Aが第2貫通孔62に重なり、第2貫通部63Bが第1貫通孔61に重なることで、実施形態2の図10に示したような小さな隙間Vが形成されなくなるので、気泡を排出させやすくすることができる。また、Z1方向にみた第1貫通部63Aは第2貫通孔62よりも小さく、第2貫通部63Bは第1貫通孔61よりも小さくなるため、第1貫通部63Aや第2貫通部63Bに気泡が滞留しにくくなる効果を奏する。
【0158】
第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径D1は、ノズル21に内接する最大の内接円の直径DNよりも小さい。このような構成とすることで、実施形態1の記録ヘッド2と同様の効果を奏する。
【0159】
また、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径D2は、ノズル21に内接する最大の内接円の直径DNよりも小さい。このような構成とすることで、実施形態1の記録ヘッド2と同様の効果を奏する。
【0160】
貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置で、フィルター部材40をZ1方向及びX2方向に沿って切断した断面において、第1部分51の底面BS1と第2部分52の底面BS2との最短距離L2は、第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径D1よりも小さい。このような構成とすることで、直径D1よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。
【0161】
貫通部分53のX1方向に関する幅が最大となる位置で、フィルター部材40をZ1方向及びX2方向に沿って切断した断面において、第1部分51の底面BS1と第2部分52の底面BS2との最短距離L2は、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径D2よりも小さい。このような構成とすることで、直径D2よりも小さいが最短距離L2より大きいインク中の異物をフィルター孔50で捕捉することができる。
【0162】
第3貫通孔63のZ1方向に関する寸法である距離L1は、貫通部分53のX1方向に関する最大幅である距離L3よりも小さい。このような構成とすることで、第2部分52から貫通部分53へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0163】
〈実施形態4〉
図13はフィルター部材40を構成する第1フィルター板41の平面図である。図14はフィルター部材40を構成する第2フィルター板42の平面図である。図15はフィルター孔50の平面図である。図16図15のE-E線断面図である。図17図15のF-F線断面図である。図13から図15は、フィルター部材40に設けられた一つのフィルター孔50とその周辺を拡大した図である。図15については貫通部分53、第1部分51、第2部分52にハッチングを付してある。実施形態1と同一の部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0164】
本実施形態のフィルター部材40は、複数のフィルター板としてZ1方向に第2フィルター板42と第1フィルター板41がこの順で積層されて構成され、インクが通過する複数のフィルター孔50を有する部材である。また、フィルター部材40は、第1方向であるZ1方向を向く第1面S1及び第1方向とは反対のZ2方向を向く第2面S2を含む。
【0165】
第1フィルター板41は、第1貫通孔61が形成されるとともにフィルター部材40の第1面S1を画定する。また、第1フィルター板41の第1面S1とは反対側の第3面S3を画定する。第2フィルター板42は、第2貫通孔62が形成されるとともにフィルター部材40の第2面S2を画定する。また、第2フィルター板42の第2面S2とは反対側の第4面S4を画定する。
【0166】
第1フィルター板41及び第2フィルター板42は、図2に示したように開口部45が設けられたX方向に長尺な枠状に形成されている。例えば、SUSでX方向に長尺であり、Z方向に貫通した開口部45を有する枠状の部材を形成し、その部材の表面にNi-Pd合金めっきを設けることで第1フィルター板41及び第2フィルター板42を形成することができる。第1フィルター板41及び第2フィルター板42の厚さは本実施形態では同じ厚さとしてあるが異なる厚さとしてもよい。
【0167】
第1フィルター板41は、Z1方向に見た平面視にてマニホールド130に対向する領域Rに、Z方向に貫通した複数の第1貫通孔61が形成されている。本実施形態の第1貫通孔61は、同じ半径の円形状をY方向に中心をずらして重ねた形状となっている。
【0168】
第2フィルター板42は、Z1方向に見た平面視にてマニホールド130に対向する領域Rに、Z方向に貫通した複数の第2貫通孔62が形成されている。本実施形態の第2貫通孔62は、同じ半径の円形状をX方向に中心をずらして重ねた形状となっている。
【0169】
また、第1フィルター板41の領域Rに形成される第1貫通孔61の個数や配置は特に限定はない。本実施形態では、第1フィルター板41の領域Rには、X方向及びY方向に沿って等間隔で所定個数の第1貫通孔61が形成されている。また、第2フィルター板42の領域Rに形成される第2貫通孔62の個数や配置は特に限定はない。本実施形態では、第2フィルター板42の領域Rには、X方向及びY方向に沿って等間隔で所定個数の第2貫通孔62が形成されている。
【0170】
フィルター孔50は、第1部分51、第2部分52及び貫通部分53を含んで構成されている。フィルター孔50は、貫通部分53が第1部分51と第2部分52とに囲まれるようにして配置されている。
【0171】
貫通部分53は、第1貫通孔61及び第2貫通孔62が重なって形成されている。具体的には、第1フィルター板41と第2フィルター板42とが積層されたフィルター部材40は、Z1方向に見た平面視にて第1貫通孔61と第2貫通孔62とは完全には重ならず一部が重なる。このようにZ1方向に見て第1貫通孔の一部と第2貫通孔62の一部とが重なった部分は、フィルター部材40の第1面S1から第2面S2に貫通する貫通部分53となっている。
【0172】
第1部分51は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第2面S2から第1面S1に向かってフィルター部材40の厚さの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、第1部分51は、貫通部分53のX1方向側とX2方向側の双方に隣り合った部分であって、第2貫通孔62のうち貫通部分53以外の部分と、第1凹部71とから構成される部分である。第1部分51は、フィルター部材40の厚さの半分よりも第1凹部71の厚さの分だけ凹んでいる。
【0173】
第2部分52は、フィルター孔50をZ1方向に見て貫通部分53に隣り合うとともに第1面S1から第2面S2に向かってフィルター部材40の厚さの半分よりも凹む部分である。本実施形態では、第2部分52は、貫通部分53のY1方向側とY2方向側の双方に隣り合った部分であって、第1貫通孔61のうち貫通部分53以外の部分と、第2凹部72とから構成される部分である。第2部分52は、フィルター部材40の厚さの半分よりも第2凹部72の厚さの分だけ凹んでいる。
【0174】
第1凹部71は、第1フィルター板41に形成されている。具体的には、第1フィルター板41の第3面S3には、第1方向であるZ1方向に見て第1貫通孔61に隣り合うとともに第2貫通孔62に重なる第1凹部71が形成されている。第1凹部71は、貫通部分53よりもX1方向側に1つ、X2方向側に1つ形成されている。また、Z1方向に見て、Y方向における第1凹部71の幅が第1貫通孔61の幅よりも狭く形成されている。さらに、X1方向側の第1凹部71は、第1貫通孔61との境界からX1方向に向けて延在しており、X1方向側の端部が第2貫通孔62の円弧に一致するよう弧状に形成されている。同様に、X2方向側の第1凹部71は、第1貫通孔61との境界からX2方向に向けて延在しており、X2方向側の端部が第2貫通孔62の円弧に一致するよう弧状に形成されている。なお、本実施形態では2つの第1凹部71は、Z1方向にみた平面視においてY方向について鏡像となるような形状としてあるがこのような形状に限定されない。
【0175】
第2凹部72は、第2フィルター板42に形成されている。具体的には、第2フィルター板42の第4面S4には、第1方向であるZ1方向に見て第2貫通孔62に隣り合うとともに第1貫通孔61に重なる第2凹部72が形成されている。第2凹部72は、貫通部分53よりもY1方向側に1つ、Y2方向側に1つ形成されている。また、Z1方向に見て、X方向における第2凹部72の幅が第2貫通孔62の幅よりも狭く形成されている。さらに、Y1方向側の第2凹部72は、第2貫通孔62との境界からY1方向に向けて延在しており、Y1方向側の端部が第1貫通孔61に接するよう弧状に形成されている。Y2方向側の第2凹部72は、第2貫通孔62との境界からY2方向に向けて延在しており、Y2方向側の端部が第1貫通孔61に接するよう弧状に形成されている。なお、本実施形態では2つの第2凹部72は、Z1方向にみた平面視においてX方向について鏡像となるような形状としてあるがこのような形状に限定されない。
【0176】
このように第1凹部71は、Z1方向に見て、全体が第2貫通孔62に重なっている。また、第2凹部72は、Z1方向に見て、全体が第1貫通孔61に重なっている。もちろん、第1凹部71及び第2凹部72はこのような構成に限定されない。第1凹部71の一部はZ1方向に見て第2貫通孔62に重なっておらず、第2貫通孔62よりも外側に延在された構成としてもよい。同様に、第2凹部72の一部はZ1方向に見て第1貫通孔61に重なっておらず、第1貫通孔61よりも外側に延在された構成としてもよい。
【0177】
第1フィルター板41と第2フィルター板42とは、第3面S3と第4面S4とが接触するようにして積層されている。第1フィルター板41と第2フィルター板42とは、接着剤による接着又は接合によって一体化されている。
【0178】
第1フィルター板41と第2フィルター板42とが積層されることで、第1貫通孔61及び第2貫通孔62のそれぞれの一部が重なって貫通部分53が形成される。また、第1凹部71と第2貫通孔62の貫通部分53以外の部分とから第1部分51が形成される。第2凹部72と第1貫通孔61の貫通部分53以外の部分とから第2部分52が形成される。このようにしてX1方向においては2つの第1凹部71の間に、Y1方向においては2つの第2凹部72の間に貫通部分53が配置されたフィルター孔50が形成される。
【0179】
本実施形態のフィルター孔50は、互いに連通する、1つの第1貫通孔61、1つの第2貫通孔62によって画定されている。
【0180】
なお、フィルター孔50は、フィルター部材40のマニホールド130に対向する領域Rに複数形成されるが、個々のフィルター孔50はそれぞれ形状が異なっていてもよい。領域Rに形成された複数のフィルター孔50は、全て同一形状のものを図示したが、これに限定されずそれぞれ異なる形状であってもよい。
【0181】
Z2方向に見て、第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径をD1とする。本実施形態では第1貫通孔61は同じ半径の2つの円形状をY方向に中心をずらして重ねた形状である。したがって、最大の内接円C1は、元の円形状のうちの一つと同形状となり、その円形状の直径が第1貫通孔61に内接する最大の内接円の直径D1となる。
【0182】
Z1方向に見て、第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径をD2とする。本実施形態では第2貫通孔62は同じ半径の2つの円形状をX方向に中心をずらして重ねた形状である。したがって、最大の内接円C2は、元の円形状のうちの一つと同形状となり、その円形状の直径が第2貫通孔62に内接する最大の内接円の直径D2となる。
【0183】
本実施形態では、円形状以外の第1貫通孔61及び第2貫通孔62として、2つの円形状を重ねた形状を例示したが、これに限定されない。第1貫通孔61及び第2貫通孔62は、矩形や楕円形など、最大の内接円を規定できる任意の開口形状とすることができる。
【0184】
また、Z1方向に見て、不図示のノズル21に内接する最大の内接円の直径をDNとする。なお、ノズル21についてもZ1方向にみた形状が円形に限定されず、最大の内接円を規定できる任意の開口形状とすることができる。
【0185】
直径D1、直径D2及び直径DNの大小関係に制限はないが、直径D1及び直径D2は、いずれも直径DNより小さくすることが好ましい。このようにノズル21の直径DNよりも直径D1及び直径D2を小さくすることで、インク中のより小さい異物を捕捉できるとともに、単位面積あたりのフィルター孔50の数を増やすことができるので、フィルター部材40を通過するインクの圧力損失を低減することができる。もちろん、直径D1又は/及び直径D2は、ノズル21の直径DNよりも大きくてもよい。
【0186】
第1凹部71のBS1底面と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する距離をL1とする。本実施形態では、図16のE-E線断面図に示すように、距離L1は、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する距離である。第1凹部71の底面BS1や第2凹部72の底面BS2が平坦ではない場合は、第1凹部71の底面BS1と第2凹部72の底面BS2とのZ1方向に関する最大の距離をL1とする。また、貫通部分53の最大幅をL3とする。本実施形態ではX1方向に関する幅とY1方向に関する幅が同じであり、最大幅となっている。
【0187】
距離L1は、距離L3よりも小さい。このように距離L1を距離L3よりも小さくすることで、図17の矢印Gに示すように、第2部分52から貫通部分53へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0188】
以上のように本実施形態に係る記録ヘッド2は、第1貫通孔61及び第2貫通孔62が円形状でない点で実施形態1に係る記録ヘッド2と相違するものの、実施形態1の記録ヘッド2と同様の作用効果を奏する。
【0189】
〈他の実施形態〉
【0190】
上記実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドを対象としたものであり、インク以外の液体を吐出する液体噴射ヘッドにも適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0191】
上記実施形態において、圧力室に圧力変化を生じさせる駆動素子として圧電アクチュエーターを用いて説明したが、特にこれに限定されない。例えば、駆動素子として、圧力室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルからインク滴を吐出させるものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルからインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0192】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施形態の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施形態の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施形態の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施形態の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施形態として開示されるものである。
【0193】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0194】
好適な態様である態様1に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズルと、第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材であって、前記ノズルへ供給される液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材と、を備え、前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む。
【0195】
態様1によれば、第1貫通孔と第2貫通孔とが部分的に重なることでフィルター孔を小さくすることが可能となる。すなわち第1方向に見てフィルター孔の貫通部分は、第1貫通孔の開口面積よりも小さく、第2貫通孔の開口面積よりも小さい。このように、フィルター孔の実質的な目の大きさは、第1貫通孔や第2貫通孔よりも小さな貫通部分によって規定されることになる。したがって、第1貫通孔又は第2貫通孔のみでフィルター孔を構成した場合と比較して、より小さな異物や細長い長尺状の異物を捕捉することが可能となる。
【0196】
さらに、フィルター孔は第1部分を含んでいる。このような構成としたことで、フィルター孔を流通する液体の流れに対する断面積が第1部分によって拡張されることになるので、フィルター孔の流路抵抗の増加を抑制することができる。
【0197】
このように態様1の液体噴射ヘッドは、第1貫通孔と第2貫通孔とが部分的に重なることでフィルター孔の実質的な目の大きさを細かくして液体中の異物をより確実に捕捉するとともに、フィルター孔に第1部分を設けることでフィルター孔の流路抵抗の増加を抑制して液体の圧力損失を抑制することができる。
【0198】
また態様1の具体例である態様2において、前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第1面から前記第2面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第2部分を含み、前記貫通部分は、前記第1方向に直交する第2方向に関して前記第1部分と前記第2部分との間に配置される。このような態様2によれば、第1部分から第2部分、もしくは第2部分から第1部分への液体の流れが生じるので、圧力損失をより顕著に抑制することができる。
【0199】
また態様1の具体例である態様3において、前記第1フィルター板は、前記第1面とは反対側の第3面を画定し、前記第2フィルター板は、前記第2面とは反対側の第4面を画定し、前記第1フィルター板と前記第2フィルター板とは、前記第3面と前記第4面とが接触するようにして積層され、前記第1フィルター板の前記第3面には、前記第1方向に見て前記第1貫通孔に隣り合うとともに前記第2貫通孔に重なる第1凹部が形成される。このような態様3によれば、第1凹部を有する第1フィルター板に第2フィルター板を接合することで第1部分を形成することができる。すなわち、フィルター部材に第1部分を形成するためには、第1凹部を有する第1フィルター板と、第2フィルター板とがあればよく、第1部分を形成するための別部材を要することがない。したがって部品点数を削減することができる。また、3枚以上のフィルター板を積層したフィルター部材の剛性と、第1フィルター板及び第2フィルター板を積層した態様3のフィルター部材の剛性とが同じであるとしたとき、態様3のフィルター部材はフィルター板の点数が少ない分、第1フィルター板及び第2フィルター板のそれぞれの剛性を高めることができる。
【0200】
また態様3の具体例である態様4において、前記第2フィルター板の前記第4面には、前記第1方向に見て前記第2貫通孔に隣り合うとともに前記第1貫通孔と重なる第2凹部が形成され、前記貫通部分は、前記第1方向に直交する第2方向に関して前記第1凹部と前記第2凹部との間に配置される。このような態様4によれば、第1凹部を有する第1フィルター板と、第2凹部を有する第2フィルター板とを接合することで第1部分及び第2部分を形成することができる。すなわち、フィルター部材に第1部分及び第2部分を形成するためには、第1凹部を有する第1フィルター板41と、第2凹部を有する第2フィルター板とがあればよく、第1部分及び第2部分を形成するための別部材を要することがない。したがって部品点数を削減することができる。また、3枚以上のフィルター板を積層したフィルター部材の剛性と、第1フィルター板及び第2フィルター板を積層した態様4のフィルター部材の剛性とが同じであるとしたとき、態様4のフィルター部材はフィルター板の点数が少ない分、第1フィルター板及び第2フィルター板のそれぞれの剛性を高めることができる。
【0201】
また態様4の具体例である態様5において、前記第1凹部の全ては、前記第1方向に見て、前記第2貫通孔に重なり、前記第2凹部の全ては、前記第1方向に見て、前記第1貫通孔に重なる。このような態様5によれば、第1凹部が第2貫通孔に重なり、第2凹部が第1貫通孔に重なることで小さな隙間が形成されなくなるので、気泡を排出させやすくすることができる。また、第1方向にみた第1凹部は第2貫通孔よりも小さく、第2凹部は第1貫通孔よりも小さくなるため、第1凹部や第2凹部に気泡が滞留しにくくなる効果を奏する。
【0202】
また態様3の具体例である態様6において、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さい。このような態様6によれば、ノズルを詰まらせるような異物を、フィルター孔でより確実に捕捉することができる。また、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径はノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さいのでフィルター孔の目の大きさが小さくなり、フィルター部材における単位面積当たりのフィルター孔の数を増やすことができ、液体の圧力損失をより一層低減することが可能となる。
【0203】
また態様4の具体例である態様7において、前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面との最短距離は、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さい。このような態様7によれば、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さいが最短距離より大きい液体中の異物をフィルター孔で捕捉することができる。
【0204】
また態様4の具体例である態様8において、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さく、前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面との最短距離は、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さい。このような態様8によれば、ノズルを詰まらせるような異物を、フィルター孔でより確実に捕捉することができる。また、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径はノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さいのでフィルター孔の目の大きさが小さくなり、フィルター部材における単位面積当たりのフィルター孔の数を増やすことができ、液体の圧力損失をより一層低減することが可能となる。さらにこのような態様8によれば、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さいが最短距離より大きい液体中の異物をフィルター孔で捕捉することができる。
【0205】
また態様4の具体例である態様9において、前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面との前記第1方向に関する距離は、前記貫通部分の前記第2方向に関する最大幅よりも小さい。このような態様9によれば、第2部分側から貫通部分側へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0206】
また態様2の具体例である態様10において、前記フィルター部材は、第3貫通孔が形成されるとともに前記第1フィルター板と前記第2フィルター板との間に挟まれた第3フィルター板を更に含み、前記第3貫通孔は、前記第1方向に見て、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔と重なる部分と、前記第2貫通孔と重なるが前記第1貫通孔と重ならない部分と、前記第1貫通孔と重なるが前記第2貫通孔と重ならない部分と、を有する。このような態様10によれば、第1貫通孔と第2貫通孔とが部分的に重なることでフィルター孔の実質的な目の大きさを細かくして液体中の異物をより確実に捕捉するとともに、フィルター孔に第1部分を設けることでフィルター孔の流路抵抗の増加を抑制して液体の圧力損失を抑制することができる。さらに、フィルター部材は、それぞれ貫通孔のみが形成された3枚の第1フィルター板、第2フィルター板、及び第3フィルター板を積層することで構成されている。したがって、それぞれのフィルター板には貫通孔のみを形成すればよいのでフィルター板を製造しやすい。
【0207】
また態様10の具体例である態様11において、前記第3フィルター板の厚さは、前記第1フィルター板の厚さ及び前記第2フィルター板の厚さよりも厚い。このような態様11によれば、第3フィルター板の剛性を高くすることができる。
【0208】
また態様10の具体例である態様12において、1つの前記フィルター孔は、互いに連通する、1つの前記第1貫通孔、1つの前記第2貫通孔及び1つの前記第3貫通孔によって画定されている。このような態様12によれば、フィルター孔同士に隔壁が設けられることになるので、例えば、第3貫通孔が複数の第1貫通孔及び複数の第2貫通孔に共通である構成と比べて剛性を高めることが出来る。
【0209】
また態様10の具体例である態様13において、前記第3貫通孔のうち前記貫通部分に対して前記第2方向の一方側の部分の全ては、前記第1方向に見て、前記第2貫通孔に重なり、前記第3貫通孔のうち前記貫通部分に対して前記第2方向の他方側の部分の全ては、前記第1方向に見て、前記第1貫通孔に重なる。このような態様13によれば、フィルター孔に小さな隙間が形成されなくなるので、気泡を排出させやすくすることができる。また、第1方向にみた、第3貫通孔のうち貫通部分に対して第2方向の一方側の部分、及び第3貫通孔のうち前記貫通部分に対して前記第2方向の他方側の部分に気泡が滞留しにくくなる。
【0210】
また態様10の具体例である態様14において、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さい。このような態様14によれば、ノズルを詰まらせるような異物を、フィルター孔でより確実に捕捉することができる。また、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径はノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さいのでフィルター孔の目の大きさが小さくなり、フィルター部材における単位面積当たりのフィルター孔の数を増やすことができ、液体の圧力損失をより一層低減することが可能となる。
【0211】
また態様10の具体例である態様15において、前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1部分の底面と前記第2部分の底面との最短距離は、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さい。このような態様15によれば、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さいが最短距離より大きい液体中の異物をフィルター孔で捕捉することができる。
【0212】
また態様10の具体例である態様16において、前記第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径は、前記ノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さく、前記貫通部分の前記第2方向に関する幅が最大となる位置で、前記フィルター部材を前記第1方向及び前記第2方向に沿って切断した断面において、前記第1部分の底面と前記第2部分の底面との最短距離は、前記第1貫通孔の前記直径よりも小さい。このような態様16によれば、ノズルを詰まらせるような異物を、フィルター孔でより確実に捕捉することができる。また、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径はノズルに内接する最大の内接円の直径よりも小さいのでフィルター孔の目の大きさが小さくなり、フィルター部材における単位面積当たりのフィルター孔の数を増やすことができ、液体の圧力損失をより一層低減することが可能となる。さらにこのような態様16によれば、第1貫通孔に内接する最大の内接円の直径よりも小さいが最短距離より大きい液体中の異物をフィルター孔で捕捉することができる。
【0213】
また態様10の具体例である態様17において、前記第3貫通孔の前記第1方向に関する寸法は、前記貫通部分の前記第2方向に関する最大幅よりも小さい。このような態様17によれば、第2部分側から貫通部分側へ流入しようとする異物を捕捉し易くすることができる。
【0214】
また、好適な他の態様である態様18に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成されたフィルター部材であって、前記液体噴射ヘッドへ供給される液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材と、を備え、前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む。
【0215】
態様18によれば、第1貫通孔と第2貫通孔とが部分的に重なることでフィルター孔の実質的な目の大きさを細かくして液体中の異物をより確実に捕捉するとともに、フィルター孔に第1部分を設けることでフィルター孔の流路抵抗の増加を抑制して液体の圧力損失を抑制することができる。
【0216】
また、好適な他の態様である態様19に係るフィルター部材は、第1方向に複数のフィルター板が積層されて構成され、液体が通過する複数のフィルター孔を有するフィルター部材であって、前記フィルター部材は、前記第1方向に関して互いに反対方向を向く第1面及び第2面を含み、前記複数のフィルター板は、第1貫通孔が形成されるとともに前記第1面を画定する第1フィルター板と、第2貫通孔が形成されるとともに前記第2面を画定する第2フィルター板と、を含み、前記フィルター孔は、前記第1方向に見て前記第1貫通孔の一部と前記第2貫通孔の一部とが重なる部分であり前記第1面から前記第2面に貫通する貫通部分と、前記第1方向に見て前記貫通部分に隣り合うとともに前記第2面から前記第1面に向かって前記フィルター部材の厚さの半分よりも凹む第1部分と、を含む。
【0217】
態様19によれば、第1貫通孔と第2貫通孔とが部分的に重なることでフィルター孔の実質的な目の大きさを細かくして液体中の異物をより確実に捕捉するとともに、フィルター孔に第1部分を設けることでフィルター孔の流路抵抗の増加を抑制して液体の圧力損失を抑制することができる。
【符号の説明】
【0218】
BS1、BS2…底面、C1、C1…内接円、D1、D2、DN…直径、L1…距離、L2…最短距離、L3…距離、S1…第1面、S2…第2面、S3…第3面、S4…第4面、S5…第5面、S6…第6面、1…記録装置(液体噴射装置)、2…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、10…圧力室基板、12…圧力室、20…ノズルプレート、21…ノズル、40…フィルター部材、41…第1フィルター板、42…第2フィルター板、43…第3フィルター板、50…フィルター孔、51…第1部分、52…第2部分、53…貫通部分、61…第1貫通孔、62…第2貫通孔、63…第3貫通孔、63A…第1貫通部、63B…第2貫通部、63C…第3貫通部、71…第1凹部、72…第2凹部、80…圧電素子、100…ケース部材、110…コンプライアンス基板、120…配線基板、121…駆動回路、130…マニホールド

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