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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079479
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240604BHJP
   H02P 3/22 20060101ALI20240604BHJP
   A01D 34/76 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 H
H02P3/22 B
H02P3/22 A
A01D34/76 B
A01D34/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192453
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】豊田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】河野 祥和
【テーマコード(参考)】
2B083
3C064
5H530
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083DA03
2B083DA07
2B083EA20
2B083HA08
2B083HA17
2B083HA19
2B083HA52
2B083HA60
3C064AA05
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA18
3C064BB01
3C064BB08
3C064CA09
3C064CA10
3C064CA54
3C064CA73
3C064CA76
3C064CA78
3C064CA79
3C064CA80
3C064CA82
3C064CB63
3C064CB64
3C064CB71
3C064CB85
3C064CB91
3C064DA02
3C064DA17
3C064DA20
3C064DA22
3C064DA26
3C064DA28
3C064DA31
3C064DA59
3C064DA68
3C064DA91
5H530AA07
5H530BB34
5H530CC21
5H530CD01
5H530CD23
5H530CD30
5H530CD33
5H530CD34
5H530CE15
5H530CE21
5H530DD03
5H530DD14
5H530EE07
5H530EF04
(57)【要約】
【課題】電源遮断後のブレーキ時間を長くすることの可能な作業機を提供する。
【解決手段】制御部20は、トリガ11がオンであり、かつ電池パック5が装着されている場合、モータ31を駆動する。制御部20は、電池温度検出端子28の電圧が0Vになると、電池パック5が外れたと判断し、スイッチング素子Q1~Q3をオフ、スイッチング素子Q4~Q6をオンとし、モータ31に電気ブレーキをかける。制御部20は、下側ゲート電圧が閾値まで低下すると、スイッチング素子駆動信号H1~H6を全てオフにする。制御部20は、下側ゲート電圧が回復すると、再度ブレーキ制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電力で駆動するモータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
スイッチング素子を有し、前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記モータが回転している状態で前記電源が遮断されると第3のブレーキ制御を実行し、その後、前記スイッチング素子の制御端子に印加される制御電圧が低下すると、前記第3のブレーキ制御とは異なる第4のブレーキ制御を実行するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
前記モータの駆動源となる電池パックが着脱可能なハウジングを備え、
前記制御部は、前記モータが回転している状態で前記ハウジングから前記電池パックが外されると前記第3のブレーキ制御及び前記第4のブレーキ制御を順に実行するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機であって、
前記第4のブレーキ制御は、前記第3のブレーキ制御よりブレーキ力が弱い、
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機であって、
前記駆動部は、上側アームに接続される複数の上側スイッチング素子と、下側アームに接続される複数の下側スイッチング素子と、の複数のスイッチング素子を有するインバータ回路を備え、
前記第3のブレーキ制御と前記第4のブレーキ制御は、導通状態にされる前記複数のスイッチング素子の数が異なる、
ことを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記第3のブレーキ制御は、前記複数の上側スイッチング素子又は前記複数の下側スイッチング素子の少なくとも2つのスイッチング素子を導通状態とし、
前記第4のブレーキ制御は、前記第3のブレーキ制御よりも少ない数の前記スイッチング素子を導通状態とする、
ことを特徴とする作業機。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機であって、
前記第3のブレーキ制御から前記第4のブレーキ制御に切り替えると、これまで導通状態にあった前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子の一方と直列に接続された前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子の他方に並列に接続されたダイオードを介して電流が流れるよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
モータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記モータの駆動源となる電池パックが着脱可能なハウジングと、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記操作部が操作されてその後に前記操作部の操作を解除した第1の状態と、前記モータが回転している状態で前記電池パックが前記ハウジングから外れた第2の状態と、で前記モータにかかるブレーキ力が異なるよう前記駆動部を制御するよう構成した、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項8】
請求項7に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記第1の状態で第1のブレーキ制御を実行し、前記第2の状態で第2のブレーキ制御を実行するよう構成され、
前記第1のブレーキ制御は、前記第2のブレーキ制御よりブレーキ力が大きい、
ことを特徴とする作業機。
【請求項9】
請求項2又は7に記載の作業機であって、
前記電池パックの温度を検出する温度検出端子を備え、
前記制御部は、前記温度端子から入力される情報に基づいて、前記ハウジングから前記電池パックが外れたことを検出する、
ことを特徴とする作業機。
【請求項10】
請求項2又は7に記載の作業機であって、
前記駆動部の入力側の電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、前記電圧検出部で検出した前記電圧の上昇により、前記ハウジングから前記電池パックが外れたことを検出する、
ことを特徴とする作業機。
【請求項11】
請求項2又は7に記載の作業機であって、
前記電池パックと前記駆動部との間の電流経路に設けられ、前記操作部の操作によってオンオフが切り替わるスイッチと、
前記スイッチと並列に接続されたダイオードと、を備え、
前記ダイオードは、前記駆動部側から前記電池パック側へ電流が流れることを許容する向きで接続される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項12】
電源から供給される電力で駆動するモータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
スイッチング素子を有し、前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部の入力側の電圧を検出する電圧検出部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記電圧検出部で検出した前記電圧が上昇すると前記モータにブレーキをかけるよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項13】
請求項12に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記電圧の上昇によって前記電源の遮断を検出するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記電圧が前記電源の電圧より大きい場合に前記モータにブレーキをかけるよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項15】
電源から供給される電力で駆動するモータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
スイッチング素子を有し、前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記電源の温度情報が入力される温度端子と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記温度端子から入力される情報に基づいて前記電源の遮断を検出するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源や直流電源により駆動する作業機が知られている。特許文献1は、直流電源としての蓄電池により駆動する作業機、具体的には電動草刈り機を開示する。特許文献1の作業機は、作業中に蓄電池が脱落すると、電解コンデンサに蓄積された電荷によって制御動作部を動作させ、制御動作部によってスイッチング素子を制御し駆動コイルを短絡させてモータにブレーキをかけ、回転刃を強制的に停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-125056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、電解コンデンサに蓄積された電荷が少なくなった場合(電解コンデンサの電圧が低くなった場合)は考慮されていない。また、特許文献1の構成では、蓄電池の電圧が入力される端子の電圧が所定値以下になると蓄電池の脱落を検出する関係上、モータの回生エネルギーが蓄電池側に流れて誤検出が起きないようにダイオードが設けられている。このダイオードがあると、モータの回生エネルギーによって制御動作部を動作させることができない。一方、このダイオードを外すと、モータの回生エネルギーによる電圧上昇のため、蓄電池の脱落を検出できなくなる。
【0005】
本発明の目的は、以下の課題1~3の少なくとも1つを解決することである。
・課題1…電源遮断後のブレーキ時間を長くすることの可能な作業機を提供すること。
・課題2…電源遮断の検出の確実性を高めることの可能な作業機を提供すること。
・課題3…状況に応じた最適なブレーキを実行可能な作業機を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
電源から供給される電力で駆動するモータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
スイッチング素子を有し、前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記モータが回転している状態で前記電源が遮断されると第3のブレーキ制御を実行し、その後、前記スイッチング素子の制御端子に印加される制御電圧が低下すると、前記第3のブレーキ制御とは異なる第4のブレーキ制御を実行するよう構成される。
【0007】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記モータの駆動源となる電池パックが着脱可能なハウジングと、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記操作部が操作されてその後に前記操作部の操作を解除した第1の状態と、前記モータが回転している状態で前記電池パックが前記ハウジングから外れた第2の状態と、で前記モータにかかるブレーキ力が異なるよう前記駆動部を制御するよう構成される。
【0008】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
電源から供給される電力で駆動するモータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
スイッチング素子を有し、前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部の入力側の電圧を検出する電圧検出部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記電圧検出部で検出した前記電圧が上昇すると前記モータにブレーキをかけるよう構成される。
【0009】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
電源から供給される電力で駆動するモータと、
作業者によって操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
スイッチング素子を有し、前記操作部の操作に応じて前記モータを駆動する駆動部と、
前記電源の温度情報が入力される温度端子と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記温度端子から入力される情報に基づいて前記電源の遮断を検出するよう構成される。
【0010】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記課題1~3の少なくとも1つを解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る作業機1の回路ブロック図。
図2】作業機1のモータ3の断面図。
図3】作業機1においてモータ31の駆動中にトリガ11をオフにする場合のタイムチャート。
図4】作業機1の第1制御例に関するタイムチャート。
図5】作業機1の第2制御例に関するタイムチャート。
図6】作業機1の第3制御例のフローチャート。
図7】作業機1の第4制御例のフローチャート。
図8】作業機1の第3制御例に関するタイムチャート。
図9】作業機1の第4制御例に関するタイムチャート。
図10】作業機1においてモータ31の駆動中にトリガ11をオフにした後の相電流の向きの時間変化を示す図。
図11図8のタイムチャートのA-Fの各区間における相電流の向きを示す図。
図12図9のタイムチャートのA-Fの各区間における相電流の向きを示す図。
図13】作業機1の一例となる携帯丸鋸の側面図。
図14】作業機1の一例となる刈払機の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態は、作業機1に関する。作業機1は、例えば図13に示すような携帯丸鋸あるいは図14に示すような刈払機であり、ハウジング10と、操作部としてのトリガ11と、を有する。ハウジング10には電源となる電池パック5が着脱可能に装着される。携帯丸鋸や刈払機の機械構成は周知なのでここでは説明を省略する。以下、作業機1の回路構成を説明する。
【0014】
図1は、作業機1の回路ブロック図である。作業機1は、モータ31、インバータ回路30、制御部20を備える。
【0015】
モータ31は、電池パック5から供給され電力で駆動する。モータ31は、ここでは図2に示すような4極6スロットのインナーロータ型の三相ブラシレスモータであり、固定子32及び回転子33を有する。固定子32は、スター結線(Y結線)されたU相、V相、W相の固定子巻線34を有する。作業者は、トリガ11の操作によりモータ31の起動及び停止を指示できる。
【0016】
インバータ回路30は、制御部20の制御に従い、トリガ11の操作に応じてモータ31を駆動する駆動部である。インバータ回路30は、電池パック5の出力する直流を交流に変換して固定子32の各固定子巻線34に供給し、モータ31を駆動する。インバータ回路30の入力端子間に、サージ吸収用の電解コンデンサCが設けられる。インバータ回路30は、三相ブリッジ接続されたFETやIGBT等のスイッチング素子Q1~Q6を含む。
【0017】
スイッチング素子Q1~Q3の各ソース及びスイッチング素子Q4~Q6の各ドレインは、互いに接続されると共に、スター結線された固定子巻線U、V、Wに接続される。スイッチング素子Q1~Q6の各々のドレイン、ソース間には寄生ダイオードD1~D6が並列に存在する。
【0018】
スイッチング素子Q1~Q6は、自身のゲート(制御端子)への入力電圧がハイレベルのときにオンとなり、ローレベルのときにオフとなる。スイッチング素子Q1~Q6のオンオフは、制御部20によって制御される。
【0019】
スイッチング素子Q1~Q6の各ゲートは、制御部20のインバータ駆動部25に接続される。スイッチング素子Q1~Q6は、インバータ駆動部25から入力されるスイッチング素子駆動信号H1~H6によってスイッチング動作を行う。これにより、インバータ回路30に印加される電池パック5からの直流電圧が三相交流電圧としてU相、V相及びW相の各固定子巻線に供給される。
【0020】
インバータ回路30による通電方式は、周知の120度通電(矩形波駆動)であり、上側アーム(高電圧ライン)に接続される上側(高電圧側)スイッチング素子Q1~Q3は一周期360度のうち120度ずつ順番にオンされ、下アーム側(低電圧ライン)に接続される下側(低電圧側)スイッチング素子Q4~Q6も一周期360度のうち120度ずつ順番にオンされる。オン期間において上側スイッチング素子Q1~Q3及び下側スイッチング素子Q4~Q6の少なくとも一方は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されてもよい。
【0021】
電流検出回路12は、モータ31の駆動電流(固定子32の各固定子巻線34に流れる電流)の経路に設けられた抵抗Rの電圧により、モータ31の駆動電流を検出し、制御部20に送信する。
【0022】
電圧検出部としての電池電圧検出回路13は、電池パック5の出力電圧(インバータ回路30の入力側の電圧)を検出し、制御部20に送信する。電池電圧検出回路13での電圧検出値は、電池パック5の接続時は電池パック5の出力電圧(以下「電池電圧」)となる。一方、電池電圧検出回路13での電圧検出値は、モータ31の駆動中(回転中)に電池パック5が外れると、モータ31の回生エネルギーにより、電池電圧を超えて上昇する。よって、制御部20は、電池電圧検出回路13で検出した電圧が、想定される電池電圧を超えて上昇すると、電池パック5が外れたと判断すること(電源の遮断を検出すること)ができる。
【0023】
温度検出素子15は、例えばサーミスタであり、モータ31あるいはインバータ回路30の近傍に設けられる。温度検出回路16は、温度検出素子15の出力電圧によりモータ31あるいはインバータ回路30の温度を検出し、制御部20に送信する。
【0024】
ホールIC19は、磁気検出素子の例示であり、図2に示すように周方向に60°間隔で3つ配置される。図2に示すINT1-INT3は、各ホールIC19の出力信号であり、後述の図8図9において波形が示される。回転子位置検出回路17は、ホールIC19の出力信号により回転子33の回転位置(以下「モータ回転位置」)を検出し、制御部20に送信する。制御部20は、回転子位置検出回路17からの信号により、モータ31の回転数(以下「モータ回転数」)を検出できる。
【0025】
スイッチ機構18は、作業者によるトリガ11の操作に応じた連動するスイッチ操作検出信号を制御部20に送信する。またスイッチ機構18は、電池パック5の正極端子と、インバータ回路30の上側入力端子及び電解コンデンサCの高電圧側端子と、の間に設けられた接点スイッチSWを含む。接点スイッチSWは、トリガ11の操作に連動してオンオフが切り替わる。
【0026】
接点スイッチSWにはダイオードD7が並列接続される。ダイオードD7は、インバータ回路30側から電池パック5側へ電流が流れることを許容する向きで接続される。ダイオードD7があることで、接点スイッチSWがオフの状態で電池パック5がハウジング10から外れた場合に、モータ31の回生エネルギーをゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24に流すことができ、制御部20の起動状態を維持できる。
【0027】
ゲート電圧生成回路22は、電池電圧を基に、スイッチング素子Q1~Q3のゲートに印加する上側ゲート電圧と、スイッチング素子Q4~Q6のゲートに印加する下側ゲート電圧とを生成し、インバータ駆動部25に供給する。
【0028】
制御回路電源生成回路24は、ゲート電圧生成回路22の出力電圧を制御部20等の電源電圧に変換し、制御部20等に供給する。ゲート電圧検出回路26は、ゲート電圧生成回路22の出力電圧を検出し、制御部20に送信する。
【0029】
電池温度検出回路27は、電池温度検出端子28の電圧、すなわち電池パック5の温度検出素子7の出力信号により、電池パック5の温度を検出し、制御部20に送信する。電池温度検出端子28は、電池パック5の温度情報が入力される温度端子である。電池温度検出端子28の電圧は、電池パック5の接続時は2.8V前後の電圧値であって電池パック5の温度に応じた電圧値となる。一方、電池温度検出端子28の電圧は、電池パック5の非接続時は0Vとなる。よって、制御部20は、電池温度検出端子28の電圧により、電池パック5の接続の有無、すなわち電源が遮断されたか否かを判別できる。
【0030】
作業機1において、電池温度検出端子28は、電池パック5の温度検出の他に、上記のとおり電池パック5の接続の有無を検出する電池装着検出端子としての機能も有する。更に、電池温度検出端子28は、電池パック5と制御部20との通信端子としての機能も有する。すなわち、作業機1は、制御部20と電池パック5との間でデジタル通信とアナログ通信の双方を行う構成であり、任意のタイミングでデジタル通信とアナログ通信を切り替えることで、電池温度検出端子28を介して温度情報の検出と情報の通信(デジタル通信)を行うことができる。なお、電池パック5の外れの検出精度を向上させるために、制御部20は、電池温度検出端子28を介して温度検出に加えて定期的に電池パック5との通信状態を確認し、通信が不成立の場合にもハウジング10から電池パック5が外れたと判断するようにしてもよい。
【0031】
制御部20は、トリガ11の操作に応じてインバータ回路30を制御し、モータ31の駆動を制御する。制御部20は、演算部21及びインバータ駆動部25(プリドライバ回路)を含む。
【0032】
演算部21は、回転子位置検出回路17からの信号を基にゲート制御信号を生成してインバータ駆動部25に出力する。ゲート制御信号はインバータ回路30のスイッチング素子Q1~Q6に対応して6個あり、その各々は、スイッチング素子Q1~Q6をオンさせるときはハイレベルとなり、オフさせるときはローレベルとなる2値信号である。
【0033】
インバータ駆動部25は、ゲート電圧生成回路22の出力電圧を基に、各ゲート制御信号の電流能力を高めたスイッチング素子駆動信号H1~H6を生成し、インバータ回路30のスイッチング素子Q1~Q6のゲート(制御端子)に出力する。スイッチング素子駆動信号H1~H6は、対応するゲート制御信号がハイレベルであるときにハイレベルとなり、ゲート制御信号がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0034】
図3は、作業機1においてモータ31の駆動中にトリガ11をオフにする場合のタイムチャートである。時刻t1以前は、トリガ11がオンであり、制御部20はモータ31を駆動する。
【0035】
時刻t1においてトリガ11がオフになると、第1の状態となり、制御部20は、上側スイッチング素子Q1~Q3のゲートに印加するスイッチング素子駆動信号H1~H3をローレベルとし、下側スイッチング素子Q4~Q6のゲートに印加するスイッチング素子駆動信号H4~H6をハイレベルとする。これにより上側スイッチング素子Q1~Q3がオフ、下側スイッチング素子Q4~Q6がオンとなり、モータ31に電気ブレーキがかけられる。時刻t1において開始されるブレーキ制御は、第1のブレーキ制御に対応する。
【0036】
図4は、作業機1の第1制御例に関するタイムチャートである。時刻t2以前は、トリガ11がオンであり、かつ電池パック5が装着されていて、制御部20はモータ31を駆動する。
【0037】
時刻t2において電池パック5がハウジング10から外れると、電池温度検出端子28の電圧が0V(電源遮断を示す電圧値)になる。電池パック5がハウジング10から外れても、ゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24は電解コンデンサCに蓄えられた電力で動作し、制御部20の起動状態が保たれる。
【0038】
時刻t2において電池パック5がハウジング10から外れたことを電池温度検出端子28の電圧により検出すると、制御部20は、スイッチング素子駆動信号H1~H3をローレベルとし、スイッチング素子駆動信号H4~H6をハイレベルとする。これによりスイッチング素子Q1~Q3がオフ、スイッチング素子Q4~Q6がオンとなり、モータ31に電気ブレーキがかけられる。
【0039】
時刻t2以降、電解コンデンサCに蓄えられたエネルギーは徐々に減少する。下側ゲート電圧は、時刻t3までは15Vに維持されるが、電解コンデンサCに蓄えられたエネルギーの減少が進み、時刻t3以降は15Vから徐々に低下する。下側ゲート電圧は、ハイレベルのときのスイッチング素子駆動信号H4~H6の電圧となる。このため、スイッチング素子駆動信号H4~H6の電圧も、下側ゲート電圧の低下に連動して低下する。
【0040】
時刻t4において下側ゲート電圧が閾値まで低下すると、制御部20は、スイッチング素子駆動信号H1~H6を全てオフにする。これによりモータ31の回生エネルギーで電解コンデンサCが充電され、ゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24への入力電圧が回復し、下側ゲート電圧も回復する。
【0041】
時刻t5において下側ゲート電圧が所定値まで上昇すると、制御部20は、時刻t2において開始したのと同じブレーキ制御を行う。以降、時刻t2~t5と同様の動作が、モータ31が停止するまで繰り返される。
【0042】
図5は、作業機1の第2制御例に関するタイムチャートである。第2制御例は、第1制御例と比較して、電池パック5がハウジング10から外れた後のブレーキ制御においてオンされるインバータ回路30のスイッチング素子の数が異なる。図5における時刻t12までの動作は、図4における時刻t2までの動作と同じである。
【0043】
時刻t12において電池パック5がハウジング10から外れると、第2の状態となる。電池パック5がハウジング10から外れたことを電池温度検出端子28の電圧により検出すると、制御部20は、スイッチング素子駆動信号H1~H3、H6をローレベルとし、スイッチング素子駆動信号H4、H5をハイレベルとする。これによりスイッチング素子Q1~Q3、Q6がオフ、スイッチング素子Q4、Q5がオンとなり、モータ31に電気ブレーキがかけられる。時刻t12において開始されるブレーキ制御(第2のブレーキ制御に対応)は、図4の時刻t2において開始されるブレーキ制御と比較して、オンされるスイッチング素子の数が少ない分、ブレーキ力は小さいが、電解コンデンサCに蓄えられたエネルギーの消費量も小さい。
【0044】
時刻t12以降、電解コンデンサCに蓄えられたエネルギーは徐々に減少する。下側ゲート電圧は、時刻t13までは15Vに維持されるが、電解コンデンサCに蓄えられたエネルギーの減少が進み、時刻t13以降は15Vから徐々に低下する。スイッチング素子駆動信号H4、H5の電圧レベルも、下側ゲート電圧の低下に連動して低下する。時刻t12~t13までの期間は、図4の時刻t2~t3までの期間よりも長い。これは、両期間のブレーキ制御によるエネルギー消費量の差に起因する。
【0045】
時刻t14において下側ゲート電圧が閾値まで低下すると、制御部20は、スイッチング素子駆動信号H1~H6を全てオフにする。これによりモータ31の回生エネルギーで電解コンデンサCが充電され、ゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24への入力電圧が回復し、下側ゲート電圧も回復する。
【0046】
時刻t15において下側ゲート電圧が所定値まで上昇すると、制御部20は、時刻t12において開始したのと同じブレーキ制御を行う。以降、時刻t12~t15と同様の動作が、モータ31が停止するまで繰り返される。
【0047】
図6は、作業機1の第3制御例のフローチャートである。制御部20は、モータ31を駆動し(S1)、トリガ11がオンの状態で(S3のNO)、電池温度検出端子28の電圧が閾値未満に低下すると(S5のYES)、電池パック5がハウジング10から外れたと判断し、ブレーキ制御を行う(S7)。S5における閾値は、電池パック5の接続時に電池温度検出端子28に入力され得る電圧範囲よりも低く設定される。
【0048】
制御部20は、S3においてトリガ11がオフの場合(S3のYES)、ブレーキ制御を行う(S7)。S7におけるブレーキ制御は、図4の時刻t2に開始されるブレーキ制御と同じであり、スイッチング素子Q1~Q3をオフ、スイッチング素子Q4~Q6をオンとして電気ブレーキをかけるものである。
【0049】
制御部20は、モータ回転数が閾値未満でない場合(S9のNO)、モータ31が停止していないと判断し、S11に進む。制御部20は、下側ゲート電圧が閾値未満でなければ(S11のNO)、スイッチング素子Q4~Q6はハーフオン状態でないと判断し、ブレーキ制御(S7)を継続する。制御部20は、下側ゲート電圧が閾値未満の場合(S11のYES)、スイッチング素子Q4~Q6がハーフオン状態であると判断し、S13以降のオフ制御を行う。ハーフオン状態は、下側ゲート電圧が低いことによりスイッチング素子が完全にオンにならず、オン抵抗が高い状態である。
【0050】
制御部20は、ホールIC19の出力信号の組合せから、モータ回転位置を検出する(S13)。
【0051】
制御部20は、ホールIC19の出力信号の組合せが、
U相(INT1):L、
V相(INT2):H、
W相(INT3):H
になると(S15のYES)、スイッチング素子Q6をオフし(S17)、S11に戻る。
【0052】
制御部20は、ホールIC19の出力信号の組合せが、
U相(INT1):H、
V相(INT2):H、
W相(INT3):L、
になると(S19のYES)、スイッチング素子Q5をオフし(S21)、S11に戻る。
【0053】
制御部20は、ホールIC19の出力信号の組合せが、
U相(INT1):H、
V相(INT2):L、
W相(INT3):H、
になると(S23のYES)、スイッチング素子Q4をオフし(S25)、S11に戻る。
【0054】
図7は、作業機1の第4制御例のフローチャートである。制御部20は、モータ31を駆動し(S1)、トリガ11がオンの状態で(S3のNO)、電池電圧検出回路13での電圧検出値が閾値を超えると(S5aのYES)、電池パック5がハウジング10から外れたと判断し、ブレーキ制御を行う(S7a)。S5aにおける閾値は、電池電圧として想定される電圧範囲よりも高く、例えば55Vである。
【0055】
S7aにおけるブレーキ制御は、図5の時刻t12に開始されるブレーキ制御と同じであり、スイッチング素子Q1~Q3、Q6をオフ、スイッチング素子Q4、Q5をオンとして電気ブレーキをかけるものである。
【0056】
制御部20は、S3においてトリガ11がオフの場合(S3のYES)、ブレーキ制御を行い(S4)、S5aに進む。S4におけるブレーキ制御は、図6のS7と同様のブレーキ制御であり、スイッチング素子Q1~Q3をオフ、スイッチング素子Q4~Q6をオンとして電気ブレーキをかけるものである。S4のブレーキ制御において、スイッチング素子Q4~Q6を間欠的にオン(PWM制御)してもよい。制御部20は、S4におけるブレーキ制御の途中でS5aの条件が満たされると(電池パック5がハウジング10から外れると)、S7aのブレーキ制御に移行する。
【0057】
制御部20は、モータ回転数が閾値未満でない場合(S9のNO)、モータ31が停止していないと判断し、S11に進む。制御部20は、下側ゲート電圧が閾値未満でなければ(S11のNO)、スイッチング素子Q4、Q5はハーフオン状態でないと判断し、ブレーキ制御(S7a)を継続する。制御部20は、下側ゲート電圧が閾値未満の場合(S11のYES)、スイッチング素子Q4、Q5がハーフオン状態であると判断し、S13以降のオフ制御を行う。オフ制御は、図6におけるオフ制御から既にオフとなっているQ6に関する処理(S15、17)を除いたものである。
【0058】
図8は、作業機1の第3制御例に関するタイムチャートである。図示は省略するが、図8においてトリガ11は常時オンである。時刻t21以前は、トリガ11がオンであり、かつ電池パック5が装着されていて、制御部20はモータ31を駆動する。
【0059】
時刻t21において電池パック5がハウジング10から外れると、電池温度検出端子28の電圧が0V(電源遮断を示す電圧値)になる。電池パック5がハウジング10から外れても、ゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24は電解コンデンサCに蓄えられた電力で動作し、制御部20の起動状態が保たれる。
【0060】
時刻t21において電池パック5がハウジング10から外れたことを電池温度検出端子28の電圧により検出すると、制御部20は、スイッチング素子駆動信号H1~H3をローレベルとし、スイッチング素子駆動信号H4~H6をハイレベルとする。これによりスイッチング素子Q1~Q3がオフ、スイッチング素子Q4~Q6がオンとなり、モータ31に電気ブレーキがかけられる。
【0061】
時刻t23において下側ゲート電圧が閾値未満に低下すると、制御部20は、スイッチング素子Q4~Q6を順次オフしていくオフ制御(図6のS13以降の処理に対応)を行う。
【0062】
制御部20は、V相のホールIC19の出力信号(INT2)が立ち上がるタイミング(時刻t25)において、スイッチング素子駆動信号H6をローレベルにする。これによりスイッチング素子Q6がオフとなる。スイッチング素子Q6に流れていた電流は、スイッチング素子Q3のダイオードD3を介して流れるようになる。
【0063】
制御部20は、その後U相のホールIC19の出力信号(INT1)が立ち上がるタイミング(時刻t27)において、スイッチング素子駆動信号H5をローレベルにする。これによりスイッチング素子Q5がオフとなる。スイッチング素子Q5に流れていた電流は、スイッチング素子Q2のダイオードD2を介して流れるようになる。
【0064】
制御部20は、その後W相のホールIC19の出力信号(INT3)が立ち上がるタイミング(時刻t29)において、スイッチング素子駆動信号H4をローレベルにする。これによりスイッチング素子Q4がオフとなる。スイッチング素子Q4に流れていた電流は、スイッチング素子Q1のダイオードD1を介して流れるようになる。
【0065】
なお、スイッチング素子Q4~Q6のオフの順番は、下側ゲート電圧が閾値未満に低下したときのモータ回転位置によって異なる。
【0066】
時刻t25~t27の期間はスイッチング素子Q4、Q5がオン状態(導通状態)のブレーキ制御、時刻t27~t29の期間はスイッチング素子Q4がオン状態のブレーキ制御となっている。スイッチング素子Q4~Q6がオン状態のブレーキ制御が第3のブレーキ制御に対応し、スイッチング素子Q4、Q5がオン状態のブレーキ制御及びスイッチング素子Q4がオン状態のブレーキ制御が第4のブレーキ制御に対応する。又は、スイッチング素子Q4~Q6がオンの状態のブレーキ制御及びスイッチング素子Q4、Q5がオンの状態のブレーキ制御が第3のブレーキ制御に対応し、スイッチング素子Q4がオン状態のブレーキ制御が第4のブレーキ制御に対応する。第4のブレーキ制御は、第3のブレーキ制御よりブレーキ力が弱い。
【0067】
時刻t29においてスイッチング素子Q4~Q6が全てオフの状態となり、モータ31の回生エネルギーで電解コンデンサCが充電され、ゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24への入力電圧が回復し、下側ゲート電圧も回復する。
【0068】
時刻t31において下側ゲート電圧が閾値以上に上昇すると、制御部20は、時刻t21において開始したのと同じブレーキ制御を行う。以降、時刻t21~t31と同様の動作が、モータ31が停止するまで繰り返される。
【0069】
図9は、作業機1の第4制御例に関するタイムチャートである。時刻t41以前は、トリガ11がオンであり、かつ電池パック5が装着されていて、制御部20はモータ31を駆動する。
【0070】
時刻t41においてトリガ11がオフになると、第1ブレーキ区間となり、制御部20は、スイッチング素子駆動信号H1~H3をローレベルとし、スイッチング素子駆動信号H4~H6を間欠的にハイレベルとする。これによりスイッチング素子Q1~Q3がオフ、スイッチング素子Q4~Q6が間欠的にオンとなり、モータ31に電気ブレーキがかけられる。
【0071】
時刻t41からの第1ブレーキ区間の途中で電池パック5がハウジング10から外れ、インバータ回路30の入力側の電圧(以下「インバータ入力電圧」)が上昇し始める。
【0072】
時刻t43においてインバータ入力電圧が閾値としての55Vを超えると、第2ブレーキ区間となり、制御部20は、スイッチング素子駆動信号H1~H3、H6をローレベルとし、スイッチング素子駆動信号H4、H5をハイレベルとする。これによりスイッチング素子Q1~Q3、Q6がオフ、スイッチング素子Q4、Q5がオンとなり、モータ31に電気ブレーキがかけられる。
【0073】
時刻t45において下側ゲート電圧が閾値未満に低下すると、制御部20は、スイッチング素子Q4、Q5を順次オフしていくオフ制御(図7のS13以降の処理に対応)を行う。
【0074】
制御部20は、U相のホールIC19の出力信号(INT1)が立ち上がるタイミング(時刻t47)において、スイッチング素子駆動信号H5をローレベルにする。これによりスイッチング素子Q5がオフとなる。スイッチング素子Q5に流れていた電流は、スイッチング素子Q2のダイオードD2を介して流れるようになる。
【0075】
制御部20は、その後W相のホールIC19の出力信号(INT3)が立ち上がるタイミング(時刻t49)において、スイッチング素子駆動信号H4をローレベルにする。これによりスイッチング素子Q4がオフとなる。スイッチング素子Q4に流れていた電流は、スイッチング素子Q1のダイオードD1を介して流れるようになる。
【0076】
なお、スイッチング素子Q4、Q5のオフの順番は、下側ゲート電圧が閾値未満に低下したときのモータ回転位置によって異なる。
【0077】
時刻t47~t49の期間はスイッチング素子Q4がオン状態のブレーキ制御となっている。スイッチング素子Q4、Q5がオン状態のブレーキ制御が第3のブレーキ制御に対応し、スイッチング素子Q4がオン状態のブレーキ制御が第4のブレーキ制御に対応する。第4のブレーキ制御は、第3のブレーキ制御よりブレーキ力が弱い。
【0078】
時刻t49においてスイッチング素子Q4、Q5の双方がオフの状態となり、モータ31の回生エネルギーで電解コンデンサCが充電され、ゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24への入力電圧が回復し、下側ゲート電圧も回復する。
【0079】
時刻t51において下側ゲート電圧が閾値以上に上昇すると、制御部20は、時刻t43において開始したのと同じブレーキ制御を行う。以降、時刻t43~t51と同様の動作が、モータ31が停止するまで繰り返される。
【0080】
図10(A)~(F)は、作業機1においてモータ31の駆動中にトリガ11をオフにした後の相電流(回生電流)の向きの時間変化を示す図である。相電流は、モータ31の回転に伴い順次向きが変化する。相電流は、スイッチング素子Q4~Q6と固定子32との間の閉ループ内で流れる。
【0081】
図11(A)~(F)は、図8のタイムチャートのA-Fの各区間における相電流(回生電流)の向きを示す図である。図11(B)、(C)の間に、W相の電流の向きが固定子32側から流出する向きから固定子32側に流入する向きに変わるタイミングがあり、当該タイミングに合わせてスイッチング素子Q6がターンオフされる。また、図11(D)、(E)の間に、V相の電流の向きが固定子32側から流出する向きから固定子32側に流入する向きに変わるタイミングがあり、当該タイミングに合わせてスイッチング素子Q5がターンオフされる。また、図11(F)の後にU相の電流の向きが固定子32側から流出する向きから固定子32側に流入する向きに変わるタイミングがあり、当該タイミングに合わせてスイッチング素子Q4がターンオフされる。
【0082】
図12(A)~(F)は、図9のタイムチャートのA-Fの各区間における相電流(回生電流)の向きを示す図である。図12(A)~(F)では、スイッチング素子Q6が終始オフのため、スイッチング素子Q6のドレイン側からソース側には電流が流れない。図12(D)、(E)の間に、V相の電流の向きが固定子32側から流出する向きから固定子32側に流入する向きに変わるタイミングがあり、当該タイミングに合わせてスイッチング素子Q5がターンオフされる。また、図12(F)の後にU相の電流の向きが固定子32側から流出する向きから固定子32側に流入する向きに変わるタイミングがあり、当該タイミングに合わせてスイッチング素子Q4がターンオフされる。
【0083】
本実施の形態は、下記の作用効果を奏する。
【0084】
(1) 作業機1は、ダイオードD7を接点スイッチSWと並列に有し、接点スイッチSWがオフの状態で電池パック5がハウジング10から外れた場合に、ダイオードD7を経由してモータ31の回生エネルギーをゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24に流す構成のため、制御部20の電源を長く確保し、制御部20の起動状態を長く維持できる。
【0085】
(2) 制御部20は、電池温度検出端子28の電圧あるいはインバータ入力電圧により、電池パック5がハウジング10から外れたか否かを判断する。このため、電池パック5の出力電圧が入力される端子の電圧が所定値以下になった場合に電池パック5がハウジング10から外れたと判断する構成と異なり、モータ31の回生エネルギーが電池パック5側に流れて誤検出が起きないようにダイオード(特許文献1のダイオード51のようなダイオード)を設ける必要が無い。よって、電池パック5がハウジング10から外れた場合に、モータ31の回生エネルギーをゲート電圧生成回路22や制御回路電源生成回路24に流すことができ、制御部20の起動状態を長く維持できる。
【0086】
(3) 図4図6図8に示す第1制御例~第3制御例では、制御部20は、電池温度検出端子28の電圧が閾値以下、例えば0Vになると電池パック5がハウジング10から外れたと判断する。このため、1つの電池温度検出端子28で温度検出、通信、電池装着検出の3つの機能を兼用できる。そのため、端子数を増やすことなく(従来との互換性を維持しつつ)、大型化を抑制しつつ機能を増やすことができる。
【0087】
(4) 図7及び図9に示す第4制御例では、制御部20は、インバータ入力電圧が閾値を超えると電池パック5がハウジング10から外れたと判断する。このため、電池パック5と作業機1の本体との端子接続のがたつきによる誤検出のリスクが抑制される。また、インバータ入力電圧の閾値を例えば55Vに設定することで、電池パック5の定格電圧が18Vの場合も36Vの場合にも好適に対応できる。
【0088】
(5) 制御部20は、電池パック5がハウジング10から外れた後のブレーキ制御の実行中に下側ゲート電圧が閾値未満に低下すると、一旦スイッチング素子Q4~Q6を全てオフにする。これにより、ハーフオン状態で電流が流れることによるスイッチング素子の発熱を抑制してスイッチング素子の破損を抑制できる。さらに、制御部20は、モータ31の回生エネルギーで下側ゲート電圧が回復すると、ブレーキ制御を再開する。これにより、トータルのブレーキ制御の時間を長く確保してモータ31の停止の確実性を高めることができる。
【0089】
(6) 図6図9に示す第3制御例及び第4制御例では、制御部20は、下側ゲート電圧が閾値未満に低下してスイッチング素子Q4~Q6を全てオフにする際、相電流の向きが固定子32側から流出する向きから固定子32側に流入する向きに変わるタイミングで当該相電流が流れるスイッチング素子をオフにする。これにより、回生エネルギーによる電圧上昇を抑制できる。
【0090】
(7) 図5図7図9に示す第2制御例及び第4制御例では、制御部20は、電池パック5がハウジング10から外れた後のブレーキ制御において、スイッチング素子Q1~Q3、Q6をオフ、スイッチング素子Q4、Q5をオンとする。このため、スイッチング素子Q1~Q3をオフ、スイッチング素子Q4~Q6をオンとするブレーキ制御と比較して、下側ゲート電圧の低下を抑制でき、下側ゲート電圧が閾値未満に低下するまでの時間、すなわち1回のブレーキ制御の継続時間を長くすることができる。これにより、下側ゲート電圧が閾値未満に低下してスイッチング素子Q4~Q6を全てオフにするときには相電流が十分に小さくなっていて、回生エネルギーによる電圧上昇が抑制される。さらに、制御部20は、電池パック5がハウジング10から外れていないときにトリガ11がオフされた場合には、スイッチング素子Q1~Q3をオフ、スイッチング素子Q4~Q6をオンとするブレーキ制御とすることで、高いブレーキ力を確保する。このようにして、作業機1の使用状況に応じた適切なブレーキ制御を実行できる。
【0091】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施の形態に限定されない。実施の形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0092】
実施の形態で具体的な数値として例示した電圧値やモータ31の極数やスロット数などは、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。本発明の作業機は、携帯丸鋸や刈払機に限定されず、卓上丸鋸やグラインダ等の他の種類のものであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…作業機、5…電池パック、7…温度検出素子、10…ハウジング、11…トリガ(操作部)、12…電流検出回路、13…電池電圧検出回路、15…温度検出素子、16…温度検出回路、17…回転子位置検出回路、18…スイッチ機構、19…ホールIC、20…制御部、21…演算部、22…ゲート電圧生成回路、24…制御回路電源生成回路、25…インバータ駆動部(プリドライバ回路)、26…ゲート電圧検出回路、27…電池温度検出回路、28…電池温度検出端子(温度端子)、30…インバータ回路(駆動部)、31…モータ(ブラシレスモータ)、32…固定子、33…回転子、34…固定子巻線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14