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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079480
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240604BHJP
   H02P 29/68 20160101ALI20240604BHJP
【FI】
B25F5/00 C
H02P29/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192454
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 悟史
【テーマコード(参考)】
3C064
5H501
【Fターム(参考)】
3C064AA03
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA18
3C064BB02
3C064BB08
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA25
3C064CA35
3C064CA54
3C064CA72
3C064CA77
3C064CA78
3C064CA79
3C064CA81
3C064CA82
3C064CB06
3C064CB07
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB63
3C064CB69
3C064CB71
3C064DA02
3C064DA23
3C064DA31
3C064DA43
3C064DA65
3C064DA95
5H501AA11
5H501BB08
5H501CC04
5H501DD08
5H501HA08
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501LL10
5H501LL22
5H501LL35
5H501LL38
5H501MM05
5H501PP02
(57)【要約】
【課題】コンデンサの破損や寿命低下を抑制可能な作業機を提供する。
【解決手段】作業機1において、演算部50は、インバータ回路40をPWM制御する。演算部50は、トリガ操作量が小さい第1の状態において、トリガ操作量が大きい第2の状態のときよりも、PWM制御のスイッチング周波数を高くすることがあるよう構成される。演算部50は、電解コンデンサ41の温度が高いことを、第1の状態において第2の状態のときよりもスイッチング周波数を高くするための条件とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
作業者に操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
前記モータと接続され、複数のスイッチング素子を有し前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部の入力側に接続されるコンデンサと、
前記操作部の操作量に応じて前記モータの回転数を変更するよう前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記操作部の操作量が小さい第1の状態において、前記操作量が大きい第2の状態のときよりも、前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数を高くすることがあるよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記コンデンサの温度が高いことを、前記第1の状態において前記第2の状態のときよりも前記スイッチング周波数を高くするための条件とする、
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
モータと、
作業者に操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
前記モータと接続され、複数のスイッチング素子を有し前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部の入力側に接続されるコンデンサと、
前記操作部の操作量に応じて前記モータの回転数を変更するよう前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記操作部の操作量が小さい第1の状態において、前記コンデンサの温度が高いときには前記コンデンサの温度が低いときよりも前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数を高くするよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記駆動部をPWM制御し、前記モータに流れる電流とPWM制御のデューティ比から前記コンデンサの温度を推定する、
ことを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の作業機であって、
前記制御部は、
前記スイッチング周波数が低い状態において前記コンデンサの温度が第1所定温度以上になると前記スイッチング周波数を高くし、
前記スイッチング周波数が高い状態において前記コンデンサの温度が前記第1所定温度よりも低い第2所定温度以下になると前記スイッチング周波数を低くするよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記駆動部をPWM制御し、前記第1の状態では、前記第2の状態のときよりも前記PWM制御のデューティ比を小さくするよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機であって、
前記第1の状態における前記操作量は、前記デューティ比が50%以下となる操作量である、
ことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガスイッチの操作量に応じてモータの回転数を変更する作業機が知られている(下記特許文献1)。この作業機は、モータを駆動する駆動部(インバータ回路)の入力側に平滑用、サージ吸収用ないしノイズ除去用のコンデンサを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-069559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トリガスイッチを少しだけ操作してモータを低速回転させると、コンデンサへのリプル電流が大きく、コンデンサの温度が上昇しやすい。その結果、コンデンサの破損や寿命低下につながる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、コンデンサの破損や寿命低下を抑制可能な作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
作業者に操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
前記モータと接続され、複数のスイッチング素子を有し前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部の入力側に接続されるコンデンサと、
前記操作部の操作量に応じて前記モータの回転数を変更するよう前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記操作部の操作量が小さい第1の状態において、前記操作量が大きい第2の状態のときよりも、前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数を高くすることがあるよう構成される。
【0007】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
作業者に操作され、前記モータの起動及び停止を指示する操作部と、
前記モータと接続され、複数のスイッチング素子を有し前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部の入力側に接続されるコンデンサと、
前記操作部の操作量に応じて前記モータの回転数を変更するよう前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた作業機であって、
前記制御部は、前記操作部の操作量が小さい第1の状態において、前記コンデンサの温度が高いときには前記コンデンサの温度が低いときよりも前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数を高くするよう構成される。
【0008】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンデンサの破損や寿命低下を抑制可能な作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る作業機1の断面図。
図2】作業機1の回路ブロック図。
図3】作業機1のインバータ回路40のPWM制御のオン期間における電流の流れを示す図であり、インバータ回路40のスイッチング素子Q1、Q5がオンの状態における電流の流れを示す図。
図4図3の状態の後に続くオフ期間における電流の流れを示す図。
図5】作業機1の制御フローチャート。
図6】作業機1における電解コンデンサ41の温度算出値Tc、電解コンデンサ41に流れるリプル電流ic、モータ30に流れる電流i1、インバータ回路40の駆動信号のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業機1の断面図である。図1により、作業機1の互いに直交する前後、上下方向を定義する。前後方向は、モータ30の回転軸と平行な方向である。上下方向は、スピンドル38の回転軸と平行な方向である。作業機1は、コードレスアングルドリルである。
【0012】
作業機1は、ハウジング10を備える。ハウジング10は、モータ収容部11、ハンドル部12、電池パック装着部13を有する。
【0013】
モータ収容部11は、モータ30及び制御基板25等を収容保持する。制御基板25には、図2に示すインバータ回路40や演算部50等が搭載される。
【0014】
作業機1は、モータ収容部11の前部に接続されたギヤケース14を備える。ギヤケース14は、第1減速機構35、第2減速機構37、スピンドル38等を収容保持する。
【0015】
ハンドル部12は、モータ収容部11の後方に連なる。作業機1は、ハンドル部12にトリガスイッチ6を備える。トリガスイッチ6は、無段変速スイッチであり、作業者に操作されてモータ30の起動及び停止を指示する操作部である。
【0016】
電池パック装着部13は、ハンドル部12の後端部に設けられる。電池パック装着部13は、作業機1の電源となる電池パック7を着脱可能に装着する。
【0017】
モータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータである。第1減速機構35は、モータ30の回転を減速する。第2減速機構37は、第1減速機構35の出力側の回転を減速すると共に回転方向を90°変換し、スピンドル38に伝達する。
【0018】
スピンドル38の下端部には、先端工具保持部39が接続される。先端工具保持部39は、図示しないドリルビット等の先端工具を保持する。スピンドル38によって先端工具が回転駆動される。
【0019】
図2は、作業機1の回路ブロック図である。インバータ回路40は、モータ30と接続されてモータ30を駆動する駆動部である。インバータ回路40は、三相ブリッジ接続されたFET等のスイッチング素子Q1~Q6(図3)を有する。
【0020】
電池パック7の正極端子とインバータ回路40の入力端子との間に接点スイッチ6aが設けられる。接点スイッチ6aは、トリガスイッチ6の構成要素である。トリガスイッチ6のオンオフ操作に連動して接点スイッチ6aのオンオフが切り替わる。
【0021】
電解コンデンサ41は、平滑用、サージ吸収用ないしノイズ除去用のコンデンサであって、インバータ回路40の入力端子間に設けられる。抵抗Rは、モータ30に流れる電流i1(以下「モータ電流i1」とも表記)の経路に設けられる。
【0022】
電流検出回路42は、抵抗Rの電圧によりモータ電流i1を検出し、演算部50に送信する。スイッチ操作検出回路43は、トリガスイッチ6の操作及び操作量を検出し、演算部50に送信する。
【0023】
ロータ位置検出回路44は、モータ30の近傍に設けられたホールIC19の出力信号によりモータ30のロータの回転位置(以下「モータ回転位置」)を検出し、演算部50に送信する。演算部50は、ロータ位置検出回路44の出力信号によりモータ30の回転数(以下「モータ回転数」)を検出できる。インバータ駆動回路45は、演算部50の制御に従い、インバータ回路40のスイッチング素子Q1~Q6(図3)をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0024】
演算部50は、例えばMCU(マイクロコントローラ)であり、作業機1の全体の動作を制御する制御部である。演算部50は、トリガスイッチ6の操作量(以下「トリガ操作量」)に応じてモータ回転数を変更するように、インバータ駆動回路45を介してインバータ回路40を制御し、モータ30の駆動を制御する。
【0025】
演算部50は、トリガ操作量が大きいほど、PWM制御のデューティ比(以下「デューティ比」)を大きくする。これにより、トリガ操作量が大きいほどモータ回転数が高くなる。
【0026】
演算部50は、トリガ操作量が小さい第1の状態において、トリガ操作量が大きい第2の状態のときよりも、PWM制御のスイッチング周波数、すなわちスイッチング素子Q1~Q6(図3)のスイッチング周波数(以下「スイッチング周波数」)を高くすることがあるよう構成される。
【0027】
第1の状態におけるトリガ操作量は、デューティ比が例えば50%以下となるトリガ操作量である。第2の状態におけるトリガ操作量は、デューティ比が例えば50%を超えるトリガ操作量である。
【0028】
演算部50は、電解コンデンサ41の温度が高いことを、第1の状態において第2の状態のときよりもスイッチング周波数を高くするための条件とする。
【0029】
演算部50は、第1の状態において、電解コンデンサ41の温度が高いときには電解コンデンサ41の温度が低いときよりもスイッチング周波数を高くするよう構成される。
【0030】
演算部50は、図6において後述するように、モータ電流i1の履歴により電解コンデンサ41の温度を推定する。
【0031】
演算部50は、スイッチング周波数が低い状態において電解コンデンサ41の温度算出値Tc(以下「コンデンサ温度算出値Tc」)が第1所定温度T1(例えば70度)以上になるとスイッチング周波数を高くし、スイッチング周波数が高い状態においてコンデンサ温度算出値Tcが第1所定温度T1よりも低い第2所定温度T2(例えば50度)以下になるとスイッチング周波数を低くするよう構成される。
【0032】
図3は、インバータ回路40のPWM制御のオン期間における電流の流れを示す図であり、スイッチング素子Q1、Q5がオンの状態における電流の流れを示す図である。図3の状態では、電池パック7又は電解コンデンサ41、スイッチング素子Q1、モータ30、スイッチング素子Q5、電池パック7又は電解コンデンサ41、という閉ループで電流が流れる。図3の状態において電解コンデンサ41は放電される。
【0033】
図4は、図3の状態の後に続くオフ期間における電流の流れを示す図である。図4の状態では、モータ30の回生エネルギーにより、モータ30、スイッチング素子Q2、電池パック7又は電解コンデンサ41、スイッチング素子Q4、モータ30、という閉ループで電流が流れる。図4の状態において電解コンデンサ41は放電される。
【0034】
なお、PWM制御のオン期間にオンされるスイッチング素子の組合せはモータ回転位置によって異なるが、いずれの組合せにおいても、PWM制御のオン期間に電解コンデンサ41は放電され、PWM制御のオフ期間に電解コンデンサ41は充電される。
【0035】
図5は、作業機1の制御フローチャートである。このフローチャートは、演算部50の起動により開始される。演算部50は、トリガスイッチ6がオンになるまで待機する(S1のNO)。演算部50は、トリガスイッチ6がオンになると(S1のYES)、スイッチング周波数をfsw1に設定し(S3)、モータ30を駆動する(S5)。fsw1は、例えば10kHzである。
【0036】
演算部50は、スイッチング周波数がfsw1でトリガスイッチ6のオン状態が継続している場合において(S7のYES)、デューティ比が50%以下でない場合(S9のNO)、又はコンデンサ温度算出値Tcが第1所定温度T1以上でない場合(S11のNO)、S7に戻る(スイッチング周波数をfsw1に維持してモータ30の駆動を継続する)。
【0037】
演算部50は、スイッチング周波数がfsw1でトリガスイッチ6のオン状態が継続している場合において(S7のYES)、デューティ比が50%以下であり(S9のYES)、かつコンデンサ温度算出値Tcが第1所定温度T1以上の場合(S11のYES)、スイッチング周波数をfsw2(fsw2>fsw1)に設定してモータ30を駆動する(S13)。fsw2は、例えば20kHzである。
【0038】
演算部50は、スイッチング周波数がfsw2でトリガスイッチ6のオン状態が継続している場合において(S15のYES)、コンデンサ温度算出値Tcが第2所定温度T2以下でない場合(S17のNO)、S15に戻る(スイッチング周波数をfsw2に維持してモータ30の駆動を継続する)。
【0039】
演算部50は、スイッチング周波数がfsw2でトリガスイッチ6のオン状態が継続している場合において(S15のYES)、コンデンサ温度算出値Tcが第2所定温度T2以下になると(S17のYES)、スイッチング周波数をfsw1に設定してモータを駆動し(S19)、S7に戻る。
【0040】
演算部50は、トリガスイッチ6がオフになると(S7のNO又はS15のNO)、モータ30を停止する。
【0041】
図6は、作業機1におけるコンデンサ温度算出値Tc、電解コンデンサ41に流れるリプル電流ic(以下「コンデンサ電流ic」)、モータ電流i1、インバータ回路40の駆動信号のタイムチャートである。なお、インバータ回路40の駆動信号は、通電相は問わず、PWM制御のオン期間をハイレベル、オフ期間をローレベルで示している。
【0042】
図6において、区間(1)~(4)でのデューティ比、スイッチング周波数を以下に示す。
・区間(1) デューティ比80%、スイッチング周波数fsw1。
・区間(2) デューティ比50%、スイッチング周波数fsw1。
・区間(3) デューティ比50%、スイッチング周波数fsw2。
・区間(4) デューティ比50%、スイッチング周波数fsw1。
【0043】
区間(1),(2)の対比から明らかなように、スイッチング周波数が同じであれば、デューティ比が小さいほうが、PWM制御の各周期におけるコンデンサ電流ic及びモータ電流i1のピーク値が大きく、またコンデンサ電流icの時間平均値も大きい。コンデンサ電流icの時間平均値が大きいほど、電解コンデンサ41の温度上昇速度が大きくなる。
【0044】
区間(2),(3)の対比から明らかなように、デューティ比が同じであれば、スイッチング周波数が高いほうが、PWM制御の各周期におけるコンデンサ電流ic及びモータ電流i1のピーク値が小さく、またコンデンサ電流icの時間平均値も小さい。
【0045】
演算部50は、PWM制御の各周期において、コンデンサ温度算出値Tcを以下の式により算出する。
Tc=a×t+T0
=(kΔi/DUTY)×t+T0
={k(i1-i0)/DUTY}×t+T0
DUTY=ton/T
=ton×fsw
【0046】
上記式において、
a:傾き
t:PWM周期
T0:直前のPWM周期におけるコンデンサ温度算出値Tc
k:調整用係数
i0:電流基準値
Δi:各周期におけるモータ電流i1のピーク値とi0との差
fsw:スイッチング周波数
である。
【0047】
区間(1)では、デューティ比が80%であって50%よりも大きいため、演算部50はスイッチング周波数をfsw1に設定する。区間(1)では、Δi>0のためコンデンサ温度算出値Tcは時間の経過と共に上昇するが、コンデンサ温度算出値Tcは第1所定温度T1以上にはならない。トリガ操作量が小さくなってデューティが50%になったところで区間(1)が終わる。
【0048】
区間(2)では、デューティ比は50%であるが、コンデンサ温度算出値Tcが第1所定温度T1以上ではないため、演算部50はスイッチング周波数をfsw1に維持する。区間(2)では、Δi>0のためコンデンサ温度算出値Tcは時間の経過と共に上昇する。区間(2)では、区間(1)と比較してデューティ比が小さいため、区間(1)と比較してコンデンサ温度算出値Tcの上昇速度(傾き)が大きくなる。コンデンサ温度算出値Tcが第1所定温度T1に上昇したところで区間(2)が終わる。
【0049】
区間(3)では、デューティ比が50%(すなわち50%以下)であり、かつコンデンサ温度算出値Tcが第1所定温度T1以上のため、演算部50はスイッチング周波数をfsw2に切り替える。区間(3)では、Δi<0のためコンデンサ温度算出値Tcは時間の経過と共に低下する。コンデンサ温度算出値Tcが第2所定温度T2に低下したところで区間(3)が終わる。
【0050】
区間(4)では、デューティ比は50%であるが、コンデンサ温度算出値Tcが第2所定温度T2以下のため、演算部50はスイッチング周波数をfsw1に切り替える。区間(4)では、Δi>0のためコンデンサ温度算出値Tcは時間の経過と共に上昇する。
【0051】
本実施の形態は、下記の作用効果を奏する。
【0052】
(1) 演算部50は、電解コンデンサ41の温度が高い場合、トリガ操作量が小さい第1の状態において、トリガ操作量が大きい第2の状態のときよりもスイッチング周波数を高くする。これにより、スイッチング周波数を高くしない場合と比較して、コンデンサ電流icが抑制され、また電解コンデンサ41の周波数特性によりインピーダンスが低下し、電解コンデンサ41の温度上昇が抑制される。よって、電解コンデンサ41の破損や寿命低下を抑制できる。
【0053】
(2) 演算部50は、電解コンデンサ41の温度が低い場合は、トリガ操作量が小さい第1の状態においても、トリガ操作量が大きい第2の状態と同等のスイッチング周波数でインバータ回路40を制御する。これにより、電解コンデンサ41の温度に余裕があるときはスイッチング周波数を低くしてスイッチングロスを抑制する制御となり、効率が高められると共にインバータ回路40の発熱を抑制できる。
【0054】
(3) 演算部50は、トリガ操作量が小さい第1の状態において、電解コンデンサ41の温度が高いときは電解コンデンサ41の温度が低いときよりもスイッチング周波数を高くする。これにより、スイッチング周波数を高くしない場合と比較して電解コンデンサ41の温度上昇が抑制され、電解コンデンサ41の破損や寿命低下を抑制できる。
【0055】
(4) 演算部50は、トリガ操作量が大きい第2の状態では、電解コンデンサ41の温度が高くても、電解コンデンサ41の温度が低い場合と同等のスイッチング周波数でインバータ回路40を制御する。これにより、トリガ操作量が大きくてデューティ比が高いために電解コンデンサ41の温度上昇が抑制されるときはスイッチング周波数を低くしてスイッチングロスを抑制する制御となり、効率が高められると共にインバータ回路40の発熱を抑制できる。
【0056】
(5) 演算部50は、モータ電流i1とデューティ比からコンデンサ温度算出値Tcを算出する。このため、コンデンサ温度算出値Tcを算出するために回路部品を追加する必要が無く、部品点数の増大を抑制できる。なお、コンデンサ電流icを直接監視するために電解コンデンサ41と直列に抵抗を接続すると、電解コンデンサ41の本来の機能(サージ吸収ないしノイズ除去)の機能に悪影響を及ぼすリスクがある。本実施の形態ではそうしたリスクを抑制しつつコンデンサ温度算出値Tcを算出できる。また、電解コンデンサ41の近くにサーミスタ等の温度検出素子を配置しても電解コンデンサ41の内部温度は検出しにくいが、本実施の形態ではサーミスタ等での温度検出が難しい場合でもコンデンサ温度算出値Tcを好適に算出できる。
【0057】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施の形態に限定されない。実施の形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0058】
演算部50は、電解コンデンサ41の温度によらず、トリガ操作量が小さい第1の状態において、トリガ操作量が大きい第2の状態のときよりもスイッチング周波数を高くしてもよい。この場合、スイッチングロスは増大するものの、電解コンデンサ41の温度の余裕がある段階から電解コンデンサ41の温度上昇を抑制できる。
【0059】
実施の形態ではスイッチング周波数を2段階としたが、電解コンデンサ41やトリガ操作量に応じてスイッチング周波数を3段階以上としてもよい。
【0060】
実施の形態で具体的な数値として例示したデューティ比やスイッチング周波数fsw1,fsw2等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。
【0061】
本発明の作業機は、コードレスアングルドリルに限定されず、インパクトドライバやハンマドリル等の他の種類のものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…作業機、6…トリガスイッチ(操作部)、6a…接点スイッチ、7…電池パック、10…ハウジング、11…モータ収容部、12…ハンドル部、13…電池パック装着部、14…ギヤケース、19…ホールIC、25…制御基板、30…モータ、35…第1減速機構、37…第2減速機構、38…スピンドル、39…先端工具保持部、40…インバータ回路(駆動部)、41…電解コンデンサ、42…電流検出回路、43…スイッチ操作検出回路、44…ロータ位置検出回路、45…インバータ駆動回路、50…演算部(制御部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6