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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079482
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/30 20060101AFI20240604BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240604BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H02J3/30
H02J15/00 A
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192456
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】522468375
【氏名又は名称】株式会社フライホイール・ユナイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】福田 勉
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB08
5G066JA05
5G066JB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】再生可能エネルギーにより作られた電気を、高電圧用の送電線を使用することなく、多数の利用者に安定して供給する。
【解決手段】電力供給システム1は、太陽光発電装置2と、多数のフライホイール蓄電装置f1~fmからなるフライホイール蓄電装置群9と、太陽光発電装置2から出力される電気を分けてフライホイール蓄電装置群9の中の蓄電していないフライホイール蓄電装置及び/又は蓄電量が低下したフライホイール蓄電装置に給電する分電装置6と、多数の電力負荷e1~enに電力を供給する電力供給網と、多数の電力負荷e1~enの消費電力量を計測する電力量計EM1~EMnと、電力量計EM1~EMnが計測する消費電力量に基づいて、フライホイール蓄電装置群8の中から電力を蓄えているフライホイール蓄電装置を放電させて、多数の電力負荷e1~enが必要とする電力を電力供給網に供給するように制御する配電制御装置10と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用した発電装置と、
供給される電力を運動エネルギーに変換して蓄えるフライホイール蓄電装置が多数集合したフライホイール蓄電装置群と、
前記発電装置から出力される電気を分けて前記フライホイール蓄電装置群の中の蓄電していないフライホイール蓄電装置及び/又は蓄電量が低下したフライホイール蓄電装置に給電する分電装置と、
多数の電力負荷に電力を供給する電力供給網と、
前記多数の電力負荷の消費電力量を計測する消費電力量計測手段と、
前記消費電力量計測手段が計測する消費電力量に基づいて、前記フライホイール蓄電装置群の中から電力を蓄えているフライホイール蓄電装置を放電させて、前記多数の電力負荷が必要とする電力を前記電力供給網に供給するように制御する配電制御装置と
を備えたことを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記発電装置から出力される電気は低電圧用の送電線により前記分電装置に送られることを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記電力供給網は、前記フライホイール蓄電装置が放電した電気を多数の変圧器に送る低電圧用の配電線を備えていることを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記フライホイール蓄電装置は、
前記分電装置からの給電により回転するモータと、
前記モータにより回転するフライホイールと、
前記フライホイールの回転により発電する発電機と、
前記モータの回転を前記フライホイールに伝達し遮断する第1クラッチと、
前記フライホイールの回転を前記発電機に伝達し遮断する第2クラッチと、
前記フライホイール蓄電装置の動作を制御する蓄電制御手段と
を備え、
前記蓄電制御手段は、前記フライホールが設定された蓄電回転数に到達するまで前記モータが回転するように制御することを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記蓄電制御手段は、前記フライホールが設定された放電可能回転数に低下するまで前記発電機が発電するように制御することを特徴とする請求項4記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記配電制御装置は、前記フライホールが前記蓄電回転数に到達したときからの経過時間が長い順に前記フライホイール蓄電装置を放電させるように制御することを特徴とする請求項4記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記消費電力量計測手段は、前記多数の電力負荷の各々に取り付けられて前記電力負荷が消費する電力量を一定時間毎に計測して前記配電制御装置に送信する電力量計であることを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記発電装置は、ソーラーパネルが多数集合したソーラーパネル群が発電した電気を供給する太陽光発電装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載した電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーを利用した電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の電気事業での電力(電気)供給系統においては、発電所(火力、水力、原子力発電所)で作られた電気は、27万5000V~50万Vという非常に高い電圧まで昇圧されて送電線へ送り出され、各地に設けられた超高圧変電所で15万4000Vに変換され、一次変電所で6万6000Vまで引き下げられ、一部の電気は、大量に電気を使用する鉄道会社や大規模工場に送られ、残りの電気は、二次変電所に送られて2万2000Vまで引き下げられ、この二次変電所からの電気のうち一部は大規模工場やコンビナート等に送られ、残りの電気は配電用変電所に送られて6600Vまで引き下げられ、配電用変電所からの電気は、大規模なビルや中規模工場等に配電されると共に、街中の電線に配電され、電柱に設置された柱上変圧器で100Vまたは200Vに変圧され、引き込み線から各家庭に送られる。
ところで、上記のような発電所、超高圧変電所、一次・二次変電所、配電用変電所といった電力供給系統が存在しない地域(例えば離島)においては、上記のような電力供給から独立して、自然エネルギー等を利用した発電設備を設置し、利用者に電力が供給されており、このような独立した発電や電力の供給を安定的に行うための種々のシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平8-107637号公報)には、太陽電池1や風車5の自然エネルギーを利用した発電装置の発電出力回路3(配電線3)に双方向性インバータ12を介してフライホイール14を設けた誘導機13を接続し、自然エネルギー量が所定値以下になると双方向性インバータ12の誘導機13に供給する周波数を基準値よりも低下させることによって発電機として機能させ、自然エネルギー量が所定値以上になると双方向性インバータ12の誘導機13に供給する周波数を基準値に等しくし、または基準値よりも高めることによって電動機として機能させ、さらには、配電線3に原動機駆動の補助発電機20を接続し、自然エネルギー量に変動があっても電力負荷8に対して常に安定した電力が供給できるようにした自然エネルギーを使用した発電装置の安定方法とその装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、自然エネルギーを利用した発電装置で発電した電気(電力)、フライホイール14に蓄勢された電気(電力)及び補助発電機20で発電された電気(電力)は、配電線3から電力負荷8に供給される。
このため、電力の利用者が多く、電力負荷8の電力消費量が大きくなり一般の配電線(6600Vの配電線)の送電容量を超えると、高電圧(2万2000V)用の送電線が必要となり、その設置のための設備費用(鉄塔の建設費他)が膨大となるという問題がある。
【0004】
次に、特許文献2(特表2006-505233号公報)には、各々が整流器20と接続された3個の風力発電所10と、各々がブースト(昇圧)変換器22に接続された3個の光起電力素子12と、各々充電・放電回路26に接続されたアキュムレータのブロック14とコンデンサーのブロック18が、直流電圧中間回路28に並列に接続され、直流電圧中間回路28は(単一の)インバータ24(または並列に接続された複数のインバータ)で終端され、インバータ24の出力側には配電器40が接続され、また、インバータ24の出力側には第2の同期発電機32も接続され、発電機32は、電磁カップリング34により内燃機関30と機械的に接続されて発電すると共に、中間蓄積装置のフライホイール16が連結され、さらに、インバータ24の出力側に、電磁カップリング34により内燃機関30と機械的に接続されて発電する第3の同期発電機36が接続された島ネットワークが開示されている。
しかしながら、特許文献2の島ネットワークでは、風力発電所10や光起電力素子12等からの電気(電力)は、直流電圧中間回路28からインバータ24を介して配電器40に送られ、第2・第3の同期発電機32・36で発電された電気も配電器40に送られ、配電器40から電力の利用者に供給される。
このため、特許文献2の島ネットワークにおいては、特許文献1と同様に、電力の利用者が多くその電力消費量が大きくなると、一般の配電線(6600Vの配電線)では送電できず、配電器40から利用者に電力を供給するための高電圧(2万2000V)用の送電線が必要となり、その設置のための設備費用(鉄塔の建設費他)が膨大となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-107637号公報
【特許文献2】特表2006-505233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、再生可能エネルギーを利用した電力供給システムにおいて、再生可能エネルギーにより作られた電気を、高電圧用の送電線を使用することなく、多数の利用者に安定して供給できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、再生可能エネルギーを利用した発電装置と、供給される電力を運動エネルギーに変換して蓄えるフライホイール蓄電装置が多数集合したフライホイール蓄電装置群と、前記発電装置から出力される電気を分けて前記フライホイール蓄電装置群の中の蓄電していないフライホイール蓄電装置及び/又は蓄電量が低下したフライホイール蓄電装置に給電する分電装置と、多数の電力負荷に電力を供給する電力供給網と、前記多数の電力負荷の消費電力量を計測する消費電力量計測手段と、前記消費電力量計測手段が計測する消費電力量に基づいて、前記フライホイール蓄電装置群の中から電力を蓄えているフライホイール蓄電装置を放電させて、前記多数の電力負荷が必要とする電力を前記電力供給網に供給するように制御する配電制御装置とを備えた電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【0008】
請求項2の発明は、前記発電装置から出力される電気は低電圧用の送電線により前記分電装置に送られる電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【0009】
請求項3の発明は、前記電力供給網は前記フライホイール蓄電装置が放電した電気を多数の変圧器に送る低電圧用の配電線を備えている電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項4の発明は、前記フライホイール蓄電装置は、前記電力分配装置からの給電により回転するモータと、前記モータにより回転するフライホイールと、前記フライホイールの回転により発電する発電機と、前記モータの回転を前記フライホイールに伝達し遮断する第1クラッチと、前記フライホイールの回転を前記発電機に伝達し遮断する第2クラッチと、前記フライホイール蓄電装置の動作を制御する蓄電制御手段とを備え、前記蓄電制御手段は、前記フライホールが設定された蓄電回転数に到達するまで前記モータが回転するように制御する電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項5の発明は、前記蓄電制御手段は前記フライホールが設定された放電可能回転数に低下するまで前記発電機が発電するように制御する電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【0012】
請求項6の発明は、前記配電制御装置は前記フライホールが前記蓄電回転数に到達したときからの経過時間が長い順に前記フライホイール蓄電装置を放電させるように制御する電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【0013】
請求項7の発明は、前記消費電力量計測手段は、前記多数の電力負荷の各々に取り付けられて前記電力負荷が消費する電力量を一定時間毎に計測して前記配電制御装置に送信する電力量計である電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【0014】
請求項8の発明は、前記発電装置はソーラーパネルが多数集合したソーラーパネル群が発電した電気を供給する太陽光発電装置である電力供給システムを提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明の電力供給システムにおいては、再生可能エネルギーを利用した発電装置で発電された電気が、分電装置により分けられ、フライホイール蓄電装置群の中の蓄電していないフライホイール蓄電装置及び/又は蓄電量が低下したフライホイール蓄電装置に給電することから、前記発電装置で発電された電気により前記フライホイール蓄電装置群9が効率よく蓄電され、消費電力量計測手段が計測する多数の電力負荷の消費電力量に基づいて、前記フライホイール蓄電装置群の中から電力を蓄えているフライホイール蓄電装置が放電されて、前記多数の電力負荷が必要とする電力が前記電力供給網に供給されることから、電力の無駄をなくし、多数の電力負荷に安定して電力を供給できるという効果を奏する。
【0016】
請求項2に記載の発明の電力供給システムにおいては、さらに、低電圧用の送電線により前記発電装置からの電気が前記分電装置まで送られることから、高電圧用送電線を使用する場合の設備費用が不要になるという効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載の発明の電力供給システムにおいては、さらに、前記フライホイール蓄電装置が放電した電気が低電圧用の配電線により多数の変圧器に送られることから、高電圧用配電線を使用する場合の設備費用が不要になるという効果を奏する。
【0018】
請求項4に記載の発明の電力供給システムにおいては、さらに、フライホールが設定された蓄電回転数に到達するまでモータが回転することから、フライホイール蓄電装置の蓄電を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0019】
請求項5に記載の発明の電力供給システムにおいては、さらに、フライホールが設定された放電可能回転数に低下するまで発電機が発電することから、フライホイール蓄電装置の放電を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0020】
請求項6に記載の発明の電力供給システムにおいては、さらに、フライホールが蓄電回転数に到達したときからの経過時間が長い順にフライホイール蓄電装置群の中のフライホイール蓄電装置が放電することから、前記フライホイール蓄電装置群におけるフライホイールのフリーラン時間を短くしてフリーランによるエネルギー損失を低減するという効果を奏する。
【0021】
請求項7に記載の発明の電力供給システムにおいては、さらに、多数の電力負荷の各々に取り付けられた電力量計が一定時間毎に計測する消費電力量に基づいて、前記フライホイール蓄電装置群の中から電力を蓄えているフライホイール蓄電装置を放電させることから、前記多数の電力負荷が必要とする電力がより的確に供給されるという効果を奏する。
【0022】
請求項8に記載の発明の電力供給システムにおいては、さらに、太陽光発電装置が発電した電気を供給することから、設置する地域に制限がなく、送電設備のない遠隔地の電力供給に適しているという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の電力供給システムの構成を表した構成図である。
図2】フライホイール蓄電装置の構成を表わした構成図であって、フライホイール蓄電装置の概略正面図に制御部分のブロック図を組み合わせた図である。
図3図1に示す配電制御装置に係る制御部分のブロック図である。
図4】分電装置6が送電線PL1により送られた電気を分けてフライホイール蓄電装置群9に給電し、フライホイール蓄電装置f1、f2~fmが蓄電する動作を示したフローチャートである。
図5】蓄電されたフライホイール蓄電装置が放電する動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[電力供給システムの構成]
図1は、本発明の電力供給システムの構成を表した構成図である。
図中、1は電力供給システム、2は太陽光発電装置、3はソーラーパネル群、4は集電部、5はインバータ、6は分電装置、7は制御部、8は分電部、9はフライホイール蓄電装置群、10は配電制御装置、11は変圧器群、12は電力負荷群、f1、f2、fmはフライホイール蓄電装置(フライホイールバッテリー:FWB)、t1、t2、tnは変圧器(トランス)、e1、e2、enは電力負荷、spはソーラーパネル、PL1は送電線、PL2は配電線であり、図1において、送電線・配電線を太線で表し、制御線を一点鎖線で表す。
図1に示すように、電力供給システム1は、太陽光発電装置2、分電装置6、フライホイール蓄電装置群9、配電制御装置10、変圧器群11、電力負荷群12、送電線PL1、配電線PL2等を備え、フライホイール蓄電装置群9は、多数のフライホイール蓄電装置f1、f2~fmからなり、変圧器群11は、多数の変圧器t1、t2~tnからなり、電力負荷群12は、多数の電力負荷e1、e2~enからなる。
【0025】
[太陽光発電装置、送電線、分電装置]
太陽光発電装置2は、ソーラーパネル群3、集電部4及びインバータ5を備えている。
ソーラーパネル群3は、ソーラーパネルspが多数集合して形成され、大規模太陽光発電を行うものであり、1MW(メガワット)~500GW(ギガワット)の発電容量を持つ。
集電部4は、集電箱とも呼ばれ、各ソーラーパネルspで発生して接続箱(図示せず)から送られてくる電気(直流)をまとめる装置であり、まとめた電気をインバータ5に送る。
この集電部4には電力量計(図示せず)が設置されており、集電部4がまとめた電力量、すなわちソーラーパネル群3が発電した総発電量が計測され、計測された総発電量は分電装置6の制御部に送られる。
インバータ5は、集電部4から送られてくる直流の電気を交流の電気に変換する装置であり、交流に変換した電気を送電線PL1に出力する。
この場合、集電部4は、ソーラーパネル群3の発電容量に応じた数の装置からなり、インバータ5も集電部4から送られてくる電力量に応じた数の装置からなる。
送電線PL1は、低電圧用(例えば、6600V)の送電線であり、インバータ5から出力される低電圧の電気を分電装置6に送る。
送電線PL1の本数は、インバータ5から出力される電力量に応じて設定される。
分電装置6は、制御部7と分電部8を備えた装置であり、制御部7の制御下で送電線PL1で送られてきた電気を分電部8で分けてフライホイール蓄電装置群9の各フライホイール蓄電装置f1、f2~fmに給電する。
具体的には、制御部7が多数のフライホイール蓄電装置f1、f2~fmのうち、蓄電していない(フライホイールが回転していない)フライホイール蓄電装置あるいは蓄電量(フライホイールの回転数)が低下した(例えば、設定された蓄電回転数の70%以下となった)フライホイール蓄電装置を選択し、分電部8が制御部7で選択されたフライホイール蓄電装置に送電線PL1からの電気を分けて給電する。
この場合、分電部8は、送電線PL1で送られてきた電力量に応じた数の装置からなる。
なお、本発明の電力供給システムにおける発電装置は、太陽光発電装置に限定されず、風力発電装置、水力発電装置、地熱発電装置、バイオマス発電装置等の自然エネルギーを利用した発電装置、または、2種類以上の自然エネルギーを利用した発電装置を組み合わせたもの(例えば、太陽光発電装置と風力発電装置を組み合わせたもの)であってもよい。
【0026】
[フライホイール蓄電装置]
図2は、フライホイール蓄電装置の構成を表わした構成図であって、フライホイール蓄電装置の概略正面図に制御部分のブロック図を組み合わせた図であり、図中、20はフライホイール、20aはフライホイール回転軸、21はモータ、21aはモータ回転軸、22は第1クラッチ、23は第2クラッチ、24は発電機、24aは発電機回転軸、25は蓄電制御装置、25aはモータ制御部、25bはクラッチ制御部、25cは発電機制御部、25dはフライホイール回転数検出部である。
フライホイール蓄電装置群9を構成する多数のフライホイール蓄電装置f1~fmは、同一構造の装置であり、それぞれ図2に示すようにフライホイール20、モータ21、第1クラッチ22、第2クラッチ23、発電機24、蓄電制御装置25を備えている。
フライホイール20は、直径500~1000mm、厚さ50~500mmの円板であり、鉄等の金属からなり、1000~30000rpmで出力10~1000kwの能力を有する。
このフライホイール20は、図2に示すように回転軸20aが水平となるように配置された横型であり、回転軸20aが装置フレームにラジアルベアリング(いずれも図示せず)を介して回転自在に保持される。
このような横型のフライホイールは、フライホイールの自重がスラスト荷重となる縦型(フライホイールの回転軸が鉛直となるもの)に比べて、スラスト荷重による軸受けの摩耗が低減でき、軸受けの寿命を長くすることができる。
モータ21は、出力が100~1000kwの大型三相誘導モータであり、モータ回転軸21aが回転してフライホイール20を回転させる。
発電機24は、出力が100~1000kVAの大型三相交流発電機であり、フライホイール20の回転によって発電機回転軸24aが回転し発電する。
クラッチ22は、本発明の第1クラッチとなるもので摩擦クラッチ、電磁クラッチ等からなり、フライホイール20の回転軸20aとモータ21の回転軸21aの連結・切断を行う。
クラッチ23は、本発明の第2クラッチとなるもので摩擦クラッチ、電磁クラッチ等からなり、フライホイール20の回転軸20aと発電機23の回転軸23aの連結・切断を行う。
なお、本発明のフライホイール蓄発電装置のフライホイールは、横型に限定されず縦型であってもよい。
【0027】
蓄電制御装置25は、モータ制御部25a、クラッチ制御部25b、フライホイール回転数取得部25c、統括制御部等(図示せず)を備えている。
モータ制御部25aは、モータ21の回転、停止等の動作を制御し、クラッチ制御部25bは、クラッチ22、23の連結・切断の動作を制御する。
フライホイール回転数取得部25cは、回転軸20aに取り付けられた回転センサ(ロータリーエンコーダ等)が計測するフライホイール20の回転数を取得する。
統括制御部は、フライホイール回転数取得部25cが取得するフライホイール20の回転数を分電装置6の制御部7と配電制御装置10に送る指令等を行うと共に蓄電制御装置25を統括的に制御する。
その他蓄電制御装置25は、発電機23の出力電圧等を制御する発電機制御部(図示せず)を備えている。
そして、蓄電制御装置25は、フライホイール20が設定された蓄電回転数(例えば、15000rpm)に到達するまで、分電部8から給電が継続してモータ21の回転が継続するように制御する。
【0028】
[配電制御装置]
図3は、図1に示す配電制御装置に係る制御部分のブロック図であり、図中、10aはフライホイール回転数取得管理部、10bはフライホイール放電順序決定部、10cは電力消費量取得部、10dは配電電力調整部、25f1、25f2、25fmは蓄電制御装置、EM1、EM2、EMnは電力量計である。
図3に示すようにフライホイール蓄電装置群9の各フライホイール蓄電装置f1、f2~fmは、蓄電制御装置25として蓄電制御装置25f1、25f2~25fmを備え、電力負荷群12の各電力負荷e1、e2~enは、電力量計EM1、EM2~EMnを備えている。
配電制御装置10は、フライホイール回転数取得部10a、フライホイール放電順序決定部10b、電力消費量取得管理部10c、配電電力調整部10d、統括制御部等(図示せず)を備えている。
フライホイール回転数取得管理部10aは、各蓄電制御装置20f1、20f2~20fmから送られてくる各フライホイール蓄電装置f1、f2~fmのフライホイール20の回転数を取得し、その回転数と設定された蓄電回転数に到達したときからの経過時間(以下「蓄電時間」という)を管理する。
フライホイール放電順序決定部10bは、フライホイール回転数取得管理部10aが管理する各フライホイール蓄電装置f1、f2~fmのフライホイール20の回転数と蓄電時間に基づいて、フライホイール蓄電装置の放電順序を決定する。
具体的には、蓄電してから未だ放電していないフライホイール20であって蓄電時間が長いものから放電するようにする放電順序を決定する。
電力消費量取得管理部10cは、各電力量計EM1、EM2~EMnから一定時間おきに送られてくる各電力負荷e1、e2~enの電力消費量を取得し、各電力負荷e1、e2~enの電力消費量を管理する。
配電電力調整部10dは、フライホイール放電順序決定部10bが決定する放電するフライホイール蓄電装置の順序と、電力消費量取得管理部10cが管理する各電力負荷e1、e2~enの電力消費量に基づいて、各フライホイール蓄電装置f1、f2~fmから蓄電した電気を放電し、電力負荷e1、e2~enが必要とする電力を配電線PL2に供給ように制御する。
【0029】
[配電線、変圧器、電力負荷]
配電線PL2は、低電圧用(例えば、6600V)の配電線であり、フライホイール蓄電装置群9が供給する低電圧の電気(フライホイール蓄電装置f1、f2~fmが放電する電気)を変圧器群11の各変圧器t1、t2~tnに送る。
配電線PL2の本数は、フライホイール蓄電装置群9から供給される電力量と電力負荷e1、e2~enの電力消費量等に応じて設定される。
変圧器t1、t2~tnは、配電線PL2から送られてくる低電圧(例えば、6600V)の電気を、各電力負荷e1、e2~enが使用する電圧(例えば、100Vまたは200V)に引き下げる装置である。
電力負荷e1、e2~enは、一般住宅、工場、商業施設、公共施設等の電力消費体であり、各電力負荷e1、e2~enには、図3に示すように電力量計EM1、EM2~EMnが設置されている。
電力量計EM1、EM2~EMnは、一定時間(例えば、30分)おきに各電力負荷e1、e2~enの電力消費量を計測して、通信回線等を介して配電制御装置10に送る。
【0030】
[電力供給システムの動作]
次に、電力供給システム1において、太陽光発電装置2で発電された電気を多数の電力負荷e1、e2~enに供給する動作を説明する。
最初に、太陽光発電装置2において、ソーラーパネル群3の各ソーラーパネルspが発電した直流の電気は、集電部4でまとめられた後インバータ5に送られ、インバータ5で直流から交流の電気に変換され、変換された交流の電気が送電線PL1により分電装置6に送られる。
この場合、太陽光発電装置2(ソーラーパネル群3)の設置場所から距離のない場所に分電装置6とフライホイール蓄電装置群9を設置して、送電線PL1の長さを短くすれば、太陽光発電装置2で発電した大容量の電気を、送電損失を最小限にして低電圧用の送電線で送電することができる。
図4は、分電装置6が送電線PL1により送られた電気を分けてフライホイール蓄電装置群9に給電し、フライホイール蓄電装置f1、f2~fmが蓄電する動作を示したフローチャートであり、以下、送電線PL1で送られる電気でフライホイール蓄電装置f1、f2~fmが蓄電する動作を説明する。
まず、分電装置6の制御部7が、集電部4の電力量計から送られてくるソーラーパネル群3が発電した総発電量と、蓄電制御装置25から送られてくるフライホイール蓄電装置f1、f2~fmのフライホイール20の回転数を取得する(S1)。
次いで、制御部7が、フライホイール蓄電装置群9の中から、フライホイールが回転していないフライホイール蓄電装置、あるいは、フライホイールの回転数が低下した(例えば、設定された蓄電回転数の70%以下となった)フライホイール蓄電装置を選択し、選択したフライホイール蓄電装置に給電するように分電部8に給電指令を出す(S2)。
この場合、制御部7は、フライホイール蓄電装置に給電する電力の総合計が、ソーラーパネル群3の総発電量を超えない範囲で給電指令を出す。
次いで、分電部8が、送電線PL1で送電された電気を分けて、制御部7が給電指令を出したフライホイール蓄電装置に給電する(S3)。
【0031】
分電部8から給電を受けたフライホイール蓄電装置では、蓄電制御装置25のモータ制御部25aが給電によりモータ21が回転するようし、クラッチ制御部25bが、フライホイール20の回転軸20aとモータ21の回転軸21aが連結するようにクラッチ22を動作させ、これによりフライホイール20が回転する(S4)。
蓄電制御装置25では、統括制御部等が、フライホイール20の回転数が設定された蓄電回転数に到達したか否を判断する(S5)。
そして、蓄電回転数に到達していないと判断した場合は、分電部8からの給電が継続してモータ21の回転が継続し、フライホイール20の回転数が増加する(S6)。
また、蓄電回転数に到達したと判断した場合は、クラッチ制御部25bが、フライホイール20の回転軸20aとモータ21の回転軸21aを遮断するようにクラッチ22を動作させ、統括制御部等が、制御部7に給電停止信号を送り、これにより制御部7が給電停止指令を分電部8に送って分電部8からの給電が停止し、モータ21の回転が停止する(S7)。
これにより、フライホイール蓄電装置での蓄電処理が終了し、フライホイール20が蓄電回転数で無負荷回転(フリーラン)するようになる。
このようにして、分電部8から給電される電気により、フライホイール蓄電装置群9のフライホイール蓄電装置f1、f2~fmの各フライホイール20が蓄電回転数で回転し、フライホイール蓄電装置f1、f2~fmに運動エネルギーが蓄積され、所定の電力が蓄電(充電)される。
【0032】
図5は、蓄電されたフライホイール蓄電装置が放電する動作を示したフローチャートであり、以下、フライホイール蓄電装置が発電して放電する動作を説明する。
まず、配電制御装置10において、フライホイール放電順序決定部10bが、フライホイール回転数取得管理部10aが管理する各フライホイール蓄電装置f1、f2~fmのフライホイール20の回転数と蓄電時間をみて、未放電(回転数が蓄電回転数に近いもの)であって蓄電時間の長いものから放電(発電)するように、フライホイール蓄電装置の放電順序を決定する(S11)。
次いで、配電電力調整部10dが、電力消費量取得管理部10cが管理する各電力負荷e1、e2~enの電力消費量に基づいて、各電力負荷e1、e2~enが消費すると予測される電力量(例えば直近の電力消費量)を満たすように、フライホイール放電順序決定部10bが決定した放電順序にしたがって、フライホイール蓄電装置に放電指令を出す(S12)。
具体的には、各電力負荷e1、e2~enが消費すると予測される電力量が10GWであり、1台のフライホイール蓄電装置が放電する電力が500kwであるとすると、配電電力調整部10dが、フライホイール放電順序決定部10bが決定した放電順序にしたがって、2万台のフライホイール蓄電装置に放電指令を出す。
【0033】
配電電力調整部10dから放電指令を受けたフライホイール蓄電装置では、クラッチ制御部25bが、フライホイール20の回転軸20aと発電機24の回転軸24aが連結するようにクラッチ23を動作させ、フライホイール20の回転が回転軸24aに伝達し発電機24が発電してフライホイール蓄電装置が放電する(S13)。
蓄電制御装置25では、統括制御部等が、フライホイール20の回転数が設定された放電可能回転数(例えば、蓄電回転数の30%)まで低下したか否を判断する(S14)。
そして、設定された放電可能回転数まで低下していないと判断した場合は、回転軸24aの回転が継続して発電機24が発電してフライホイール蓄電装置が放電を継続する(S15)。
また、設定された放電可回転数まで低下していないと判断した場合は、クラッチ制御部25bが、フライホイール20の回転軸20aと発電機24の回転軸24aを遮断するようにクラッチ23を動作させ、回転軸24aの回転が停止し発電機24の発電が停止してフライホイール蓄電装置が放電を停止する(S16)。
これにより、フライホイール蓄電装置での発電による放電処理が終了し、フライホイール20は、が放電可回転数以下の回転数で無負荷回転(フリーラン)する。
このようにして、配電制御装置10の制御の下に、フライホイール蓄電装置群9のフライホイール蓄電装置f1、f2~fmの各フライホイール20により発電機24が発電し、フライホイール蓄電装置f1、f2~fmが放電して、配電線PL2と変圧器群11を介して、各電力負荷e1、e2~enに必要な電力が供給にされる。
【0034】
以上のように、電力供給システム1は、太陽光発電装置2、低電圧用の送電線PL1、分電装置6、多数のフライホイール蓄電装置f1、f2~fmからなるフライホイール蓄電装置群9、配電制御装置10、低電圧用の配電線PL2、多数の変圧器t1、t2~tnからなる変圧器群11、多数の電力負荷e1、e2~enからなる電力負荷群12等から構成され、分電装置6は、制御部7と分電部8を備え、フライホイール蓄電装置は、フライホイール20、モータ21、第1クラッチ22、第2クラッチ23、発電機24及び蓄電制御装置25を備え、配電制御装置10は、フライホイール回転数取得部10a、フライホイール放電順序決定部10b、電力消費量取得管理部10c及び配電電力調整部10dを備えている。
この電力供給システム1においては、太陽光発電装置2で発電された電気が送電線PL1により分電装置6に送られ、分電装置6の制御部7が、フライホイール蓄電装置群9の中から、フライホイールが回転していないフライホイール蓄電装置、あるいは、フライホイールの回転数が一定以下フライホイール蓄電装置を選択し、分電部8が、送電線PL1で送電された電気を分けて、制御部7が選択したフライホイール蓄電装置に給電し、これによりフライホイール蓄電装置f1、f2~fmの各フライホイール20が蓄電回転数で回転し、フライホイール蓄電装置f1、f2~fmに運動エネルギーが蓄積され、所定の電力が蓄電(充電)されることから、太陽光発電装置2で発電された電気が、低電圧用の送電線PL1を使用して送電されてフライホイール蓄電装置群9に効率よく蓄電される。
【0035】
そして、フライホイール蓄電装置群9では、配電制御装置10のフライホイール放電順序決定部10bが、各フライホイール蓄電装置のフライホイール20の回転数と蓄電時間からフライホイール蓄電装置の放電順序を決定し、配電電力調整部10dが、計測された各電力負荷e1、e2~enの電力消費量に基づいて、フライホイール放電順序決定部10bが決定した放電順序にしたがって、フライホイール蓄電装置が放電するように制御することから、フライホイール蓄電装置群9が蓄電する電気が効率よく放電されて、低電圧用の配電線PL2と変圧器群11を介して、各電力負荷e1、e2~enに必要な電力が無駄なく供給にされる。
すなわち、電力供給システム1では、太陽エネルギーにより作られた電気が、一旦、多数のフライホイール蓄電装置に蓄えられ、蓄えられた電気はフライホイール蓄電装置から順次放電されて、高電圧用の送電線を使用することなく、多数の利用者に安定して供給される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の電力供給システムは、発電された電気を高電圧用の送電線を使用することなく、多数の利用者に安定して供給でき、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーを利用した電力供給システムに利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 電力供給システム
2 太陽光発電装置
3 ソーラーパネル群
4 集電部
5 インバータ
6 分電装置
7 制御部
8 分電部
9 フライホイール蓄電装置群
10 配電制御装置
10a フライホイール回転数取得管理部
10b フライホイール放電順序決定部
10c 電力消費量取得部
10d 配電電力調整部、
11 変圧器群
12 電力負荷群
20 フライホイール
20a フライホイール回転軸
21 モータ
21a モータ回転軸
22 第1クラッチ
23 第2クラッチ
24 発電機
24a 発電機回転軸
25 蓄電制御装置
25a モータ制御部
25b クラッチ制御部
25c 発電機制御部
25d フライホイール回転数検出部
EM1、EM2、EMn 電力量計
PL1 送電線
PL2 配電線
f1、f2、fm フライホイール蓄電装置
t1、t2、tn 変圧器
e1、e2、en 電力負荷
sp ソーラーパネル
図1
図2
図3
図4
図5