(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007950
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び、ノズル基板
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240112BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/14 607
B41J2/14 301
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109402
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
(72)【発明者】
【氏名】村山 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 まどか
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC42
2C056HA20
2C056HA22
2C056JB10
2C057AF28
2C057AG01
2C057AG09
2C057AG12
2C057AG44
2C057AG75
2C057AM17
2C057AR08
(57)【要約】
【課題】2つの液体の合体に適した液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び、ノズル基板を提供すること。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、第1ノズルと第2ノズルとを備え、第1ノズルは、ノズル基板の吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、ノズル基板の厚さ方向にみたときの断面積が第1下流ノズル部分よりも大きく、第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、第2ノズルは、吐出面に開口した第2下流ノズル部分と、厚さ方向にみたときの断面積が第2下流ノズル部分よりも大きく、第2下流ノズル部分よりも上流に位置する第2上流ノズル部分と、を含み、厚さ方向にみたとき、第1下流ノズル部分の重心位置と第2下流ノズル部分の重心位置との距離は、第1上流ノズル部分の重心位置と第2上流ノズル部分の重心位置との距離よりも長い。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動素子と、
前記第1駆動素子とは異なる第2駆動素子と、
前記第1駆動素子の駆動により液体に圧力を付与する第1圧力室と、
前記第2駆動素子の駆動により液体に圧力を付与する第2圧力室と、
ノズル基板に形成されたノズル列に含まれる複数のノズルの1つであり、前記第1圧力室と連通する第1ノズルと、
前記第1ノズルに隣り合うノズルであって、前記第2圧力室と連通する第2ノズルと、
を備え、
前記ノズル基板は、前記第1圧力室及び前記第2圧力室とは反対に位置する吐出面を有し、
前記第1ノズルは、
前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、
前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの断面積が前記第1下流ノズル部分よりも大きく、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、
前記第2ノズルは、
前記吐出面に開口した第2下流ノズル部分と、
前記厚さ方向にみたときの断面積が前記第2下流ノズル部分よりも大きく、前記第2下流ノズル部分よりも上流に位置する第2上流ノズル部分と、を含み、
前記厚さ方向にみたとき、前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第2下流ノズル部分の重心位置との距離は、前記第1上流ノズル部分の重心位置と前記第2上流ノズル部分の重心位置との距離よりも長い、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1駆動素子及び前記第2駆動素子とは異なる第3駆動素子と、
前記第1駆動素子、前記第2駆動素子、及び、前記第3駆動素子とは異なる第4駆動素子と、
前記第3駆動素子の駆動により液体に圧力を付与する第3圧力室と、
前記第4駆動素子の駆動により液体に圧力を付与する第4圧力室と、
前記複数のノズルの1つであり、前記第3圧力室と連通する第3ノズルと、
前記第3ノズルに隣り合うノズルであって、前記第4圧力室と連通する第4ノズルと、
を更に備え、
前記第3ノズルは、
前記吐出面に開口した第3下流ノズル部分と、
前記厚さ方向にみたときの断面積が前記第3下流ノズル部分よりも大きく、前記第3下流ノズル部分よりも上流に位置する第3上流ノズル部分と、を含み、
前記第4ノズルは、
前記吐出面に開口した第4下流ノズル部分と、
前記厚さ方向にみたときの断面積が前記第4下流ノズル部分よりも大きく、前記第4下流ノズル部分よりも上流に位置する第4上流ノズル部分と、を含み、
前記第3下流ノズル部分の重心位置と前記第4下流ノズル部分の重心位置との距離は、前記第3上流ノズル部分の重心位置と前記第4上流ノズル部分の重心位置との距離よりも長い、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1ノズルと前記第3ノズルとは、互いに隣り合い、
前記第2ノズルと前記第1ノズルと前記第3ノズルと前記第4ノズルとは、前記複数のノズルが配列する配列方向に沿って、この順に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記厚さ方向にみたとき、前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第2下流ノズル部分の重心位置との距離は、前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第3下流ノズル部分の重心位置との距離よりも短く、
前記厚さ方向にみたとき、前記第3下流ノズル部分の重心位置と前記第4下流ノズル部分の重心位置との距離は、前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第3下流ノズル部分の重心位置との距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記厚さ方向にみたとき、前記第1下流ノズル部分の重心位置は、前記第1上流ノズル部分の重心位置よりも前記ノズル列の両端のノズルのうち一端のノズルに近く、
前記厚さ方向にみたとき、前記第2下流ノズル部分の重心位置は、前記第2上流ノズル部分の重心位置よりも前記両端のノズルのうち他端のノズルに近い、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記厚さ方向における前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第1上流ノズル部分の重心位置との距離を第1距離とし、
前記厚さ方向における前記第2下流ノズル部分の重心位置と前記第2上流ノズル部分の重心位置との距離を第2距離としたとき、
前記第1距離と前記第2距離とは、互いに等しい、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1駆動素子と前記第2駆動素子とには、互いに同一の駆動信号が供給される、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記厚さ方向にみたとき、前記第1下流ノズル部分の重心位置は、前記第1上流ノズル部分の重心位置よりも前記ノズル列の両端のノズルのうち一端のノズルに近く、
前記厚さ方向にみたとき、前記第2下流ノズル部分の重心位置は、前記第2上流ノズル部分の重心位置と同一である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1駆動素子と前記第2駆動素子とには、互いに異なる駆動信号が供給される、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1ノズルから吐出される液体と前記第2ノズルから吐出される液体とは、空中で合体する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、
前記第1駆動素子及び前記第2駆動素子に駆動信号を供給する駆動制御部と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
液体が吐出される複数のノズルによって構成されるノズル列を有するノズル基板であって、
液体を吐出する吐出面を有し、
前記複数のノズルのうち第1ノズルは、
前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、
前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの断面積が前記第1下流ノズル部分よりも大きく、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、
前記複数のノズルのうち前記第1ノズルに隣り合う第2ノズルは、
前記吐出面に開口した第2下流ノズル部分と、
前記厚さ方向にみたときの断面積が前記第2下流ノズル部分よりも大きく、前記第2下流ノズル部分よりも上流に位置する第2上流ノズル部分と、を含み、
前記厚さ方向にみたとき、前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第2下流ノズル部分の重心位置との距離は、前記第1上流ノズル部分の重心位置と前記第2上流ノズル部分の重心位置との距離よりも長い、
ことを特徴とするノズル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び、ノズル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク等の液体を吐出する複数のノズルを有するノズル基板を有し、ノズルから媒体に液体を吐出することで、媒体に画像を形成する液体吐出ヘッドが知られている。液体の吐出時において、液体の尾引きに起因した霧状の微細な液滴が発生することがある。以下、この液滴をミストと記載する。ミストがノズルの周囲に付着することによって吐出特性の劣化及び吐出不良の原因となり得る。ミストの発生を抑制するため、例えば、特許文献1には、ノズルから吐出される第1液滴と、第1液滴の後に、前述のノズルから吐出する第2液滴とを、媒体への着弾前に合体させて、媒体に1つのドットを形成する液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された液体吐出装置では、2つの液滴を合体させることにより、比較的大きな液滴の形成が可能である。しかしながら、媒体に1つのドットを形成するために、1つのノズルから2回液体を吐出する必要があるため、ノズルから1回吐出することにより1つのドットを形成する態様と比較して、1つのドットを形成することにかかる期間が延びてしまう場合ある。また、第1液滴に後続する第2液滴に起因するミストの抑制が難しい場合がある。以上に例示したように、2つの液体を合体させる液体の吐出方法においては、様々な点で改善の余地が残されている。本発明においては、2つの液体の合体に適した液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び、ノズル基板を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、第1駆動素子と、前記第1駆動素子とは異なる第2駆動素子と、前記第1駆動素子の駆動により液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第2駆動素子の駆動により液体に圧力を付与する第2圧力室と、ノズル基板に形成されたノズル列に含まれる複数のノズルの1つであり、前記第1圧力室と連通する第1ノズルと、前記第1ノズルに隣り合うノズルであって、前記第2圧力室と連通する第2ノズルと、を備え、前記ノズル基板は、前記第1圧力室及び前記第2圧力室とは反対に位置する吐出面を有し、前記第1ノズルは、前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの断面積が前記第1下流ノズル部分よりも大きく、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、前記第2ノズルは、前記吐出面に開口した第2下流ノズル部分と、前記厚さ方向にみたときの断面積が前記第2下流ノズル部分よりも大きく、前記第2下流ノズル部分よりも上流に位置する第2上流ノズル部分と、を含み、前記厚さ方向にみたとき、前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第2下流ノズル部分の重心位置との距離は、前記第1上流ノズル部分の重心位置と前記第2上流ノズル部分の重心位置との距離よりも長い、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の好適な態様に係る液体吐出装置は、上述の液体吐出ヘッドと、前記第1駆動素子及び前記第2駆動素子に駆動信号を供給する駆動制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の好適な態様に係るノズル基板は、液体が吐出される複数のノズルによって構成されるノズル列を有するノズル基板であって、液体を吐出する吐出面を有し、前記複数のノズルのうち第1ノズルは、前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの断面積が前記第1下流ノズル部分よりも大きく、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、前記複数のノズルのうち前記第1ノズルに隣り合う第2ノズルは、前記吐出面に開口した第2下流ノズル部分と、前記厚さ方向にみたときの断面積が前記第2下流ノズル部分よりも大きく、前記第2下流ノズル部分よりも上流に位置する第2上流ノズル部分と、を含み、前記厚さ方向にみたとき、前記第1下流ノズル部分の重心位置と前記第2下流ノズル部分の重心位置との距離は、前記第1上流ノズル部分の重心位置と前記第2上流ノズル部分の重心位置との距離よりも長い、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】ノズルN付近をY軸に沿って切断した場合の断面図。
【
図9】第1変形例に係るノズル基板46-Aの平面図の一部を示す図。
【
図10】第1変形例におけるインクの吐出態様を説明する図。
【
図11】液体吐出ヘッド10の構成の一例を示すブロック図。
【
図12】第2変形例に係るノズル基板46-Bの平面図の一部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向及びY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向及びZ2方向である。
【0011】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。言い換えれば、Z2方向は、重力方向である。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよく、鉛直な軸に対して傾斜してもよい。また、X軸、Y軸及びZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80度以上100度以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.液体吐出装置100の概要
図1は、液体吐出装置100の構成例を示す概略図である。液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPは、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルム又は布帛等の任意の印刷対象が媒体PPとして利用され得る。
【0013】
図1に示すように、液体吐出装置100は、駆動信号生成回路2と、液体容器14と、制御モジュール6と、移動機構5と、複数の液体吐出ヘッド10を有する液体吐出モジュールHUとを有する。本実施形態では、液体吐出モジュールHUは、4つの液体吐出ヘッド10を有する。なお、駆動信号生成回路2は、「駆動制御部」の一例である。
【0014】
液体容器14は、インクを貯留する容器である。液体容器14の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器14に貯留されるインクの種類は任意である。
【0015】
制御モジュール6は、例えば、CPU又はFPGA等の1又は複数の処理回路と、半導体メモリー等の1又は複数の記憶回路とを含む。CPUは、Central Processing Unitの略語である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略語である。当該記憶回路には、各種プログラム及び各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
【0016】
移動機構5は、媒体PPと液体吐出モジュールHUとの相対的な位置を変化させる。移動機構5は、搬送機構8と、ヘッド移動機構7とを有する。
【0017】
搬送機構8は、制御モジュール6による制御のもとで、媒体PPをY2方向に搬送する。
図1に示す例では、搬送機構8は、X軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構8は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体PPを外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラム又は無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0018】
ヘッド移動機構7は、制御モジュール6による制御のもとで、液体吐出モジュールHUを、X1方向及びX2方向に往復動させる。本実施形態では、X1方向及びX2方向が主走査方向であり、Y2方向が副走査方向であることとする。このように、第1実施形態における液体吐出装置100は、X軸に沿って往復動させるシリアル方式の液体吐出装置である。
図1に示すように、ヘッド移動機構7は、液体吐出モジュールHUを収容する収納ケース71と、収納ケース71が固定された無端ベルト72とを具備する。なお、液体容器14を液体吐出モジュールHUとともに収納ケース71に収納してもよい。
【0019】
液体吐出モジュールHUは、制御モジュール6による制御のもとで、液体容器14からインクを複数のノズルNの夫々からZ2方向に媒体PPに吐出する。
【0020】
制御モジュール6は、液体吐出ヘッド10の吐出動作を制御する。具体的には、制御モジュール6は、液体吐出ヘッド10を制御するための印刷信号SIと、駆動信号生成回路2を制御するための波形指定信号dComと、搬送機構8を制御するための信号と、ヘッド移動機構7を制御するための信号とを生成する。
【0021】
波形指定信号dComとは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号Comとは、
図2で後述する圧電素子PZを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成回路2は、DA変換回路を含み、波形指定信号dComが規定する波形を有する駆動信号Comを生成する。
【0022】
印刷信号SIとは、圧電素子PZの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、圧電素子PZに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、圧電素子PZの動作の種類を指定する。ここで、圧電素子PZの動作の種類の指定とは、例えば、圧電素子PZを駆動するか否かを指定したり、圧電素子PZを駆動した場合に当該圧電素子PZからインクが吐出されるか否かを指定したり、また、圧電素子PZを駆動した場合に当該圧電素子PZから吐出されるインク量を指定したりすることである。
【0023】
制御モジュール6は、まず、パーソナルコンピューター及びデジタルカメラ等のホストコンピューターから供給される印刷データImgを、自身の記憶回路に記憶させる。次に、制御モジュール6は、記憶回路に記憶されている印刷データImg等の各種データに基づいて、印刷信号SI、波形指定信号dCom、搬送機構8を制御するための信号、及び、ヘッド移動機構7を制御するための信号等の各種制御信号を生成する。そして、制御モジュール6は、各種制御信号と、自身の記憶回路に記憶されている各種データに基づいて、液体吐出モジュールHUに対する媒体PPの相対位置を変化させるように搬送機構8及びヘッド移動機構7を制御しつつ、圧電素子PZが駆動されるように液体吐出モジュールHUを制御する。これにより、制御モジュール6は、圧電素子PZからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像を媒体PPに形成する印刷処理の実行を制御する。
【0024】
1-2.液体吐出ヘッド10の概要
以下、
図2及び
図3を参照しつつ、液体吐出ヘッド10の概要を説明する。
図2は、液体吐出ヘッド10の分解斜視図である。
図3は、液体吐出ヘッド10の断面図である。
図3に示す図は、液体吐出ヘッド10を
図2に示すa-a断面で破断し、Y2方向に断面をみた状態を示す。a-a断面は、XZ平面に平行であり、且つ、後述する導入口424を通過する。
【0025】
図2及び
図3に例示される通り、液体吐出ヘッド10は、Y軸に沿って長い略矩形状の連通板32を具備する。連通板32におけるZ1方向の面上には、圧力室基板34と振動板36とM個の圧電素子PZと筐体部42と封止体44とが設置される。言い換えれば、連通板32は、圧力室基板34のZ2方向の面に積層される。Mは、2以上の整数である。連通板32におけるZ2方向の面上には、ノズル基板46とコンプライアンス基板48とが設置される。液体吐出ヘッド10の各要素は、概略的には連通板32と同様にY軸に沿って長い板状部材であり、接着剤を利用して相互に接合される。
【0026】
図2に例示される通り、ノズル基板46は、Y軸に平行なノズル列Lnに沿って配列するM個のノズルNが形成された板状部材である。M個のノズルNが配列する配列方向は、Y軸に沿う方向である。ノズル基板46は、例えば、シリコン基板である。
図3に例示される通り、ノズル基板46は、Z2方向に向く面FN1と、Z1方向に向く面FN2とを有する。面FN2は、面FN1よりも圧力室基板34に近い。なお、面FN1は、「吐出面」の一例である。ノズル基板46の厚さ方向は、Z軸に沿う方向である。本実施形態において、ノズル列Lnは、Y軸に平行であり、M個のノズルNのうち、最もY1方向に位置するノズルNの後述する下流ノズル部分NDの重心から最もY2方向に位置するノズルNの下流ノズル部分NDの重心までの線分である。なお、M個のノズルNがノズル列Lnに沿って配列するとは、M個のノズルNのうちの少なくとも一部がノズル列Lnと交わる方向において、多少ずれて配列されることも含む概念であり、ノズル列Lnに沿ってみたときに、M個のノズルNの夫々の一部又は全部が重なることを意味する。
【0027】
各ノズルNは、インクが通過する貫通孔である。ノズルNの詳細な形状に関して、
図5に基づいて後述する。
【0028】
連通板32は、インクが流通する流路が設けられた板状部材である。
図2及び
図3に例示される通り、連通板32には、開口部322と第2連通路324と第1連通路326とが形成される。開口部322は、Z軸に沿ってみたとき、Y軸に沿ってM個のノズルNに共通して設けられた貫通孔である。以下、Z軸に沿ってみることを、「平面視」と記載することがある。第2連通路324及び第1連通路326は、ノズルN毎に個別に形成された貫通孔である。また、
図3に例示される通り、連通板32のうちZ2方向の表面には、M個の第2連通路324にわたる共通流路328が形成される。共通流路328は、開口部322とM個の第2連通路324とを連通させる流路である。
【0029】
なお、連通板32と圧力室基板34とは、シリコンの単結晶基板をエッチング等の半導体製造技術により加工することで形成される。ただし、液体吐出ヘッド10の各要素の製法は任意である。
【0030】
筐体部42は、例えば樹脂材料の射出成形で製造された構造体であり、連通板32におけるZ1方向の表面に固定される。
図3に例示される通り、筐体部42には収容部422と導入口424とが形成される。収容部422は、連通板32の開口部322に対応した外形の凹部である。導入口424は、収容部422に連通する貫通孔である。
図3から理解される通り、連通板32の開口部322と筐体部42の収容部422とを相互に連通させた空間が液体貯留室RSとして機能する。液体容器14から供給されて導入口424を通過したインクが液体貯留室RSに貯留される。
【0031】
コンプライアンス基板48は、液体貯留室RS内のインクの振動を緩衝する機能を有する。コンプライアンス基板48は、例えば弾性変形が可能な可撓性のシート部材を含む。具体的には、連通板32の開口部322と共通流路328と複数の第2連通路324とを封止して液体貯留室RSの底面を構成するように、連通板32におけるZ2方向の表面にコンプライアンス基板48が設置される。
【0032】
図2及び
図3に例示される通り、圧力室基板34は、M個のノズルNに夫々対応するM個の圧力室CVが形成された板状部材である。M個の圧力室CVは、Y軸に沿って相互に間隔をあけて配列する。各圧力室CVは、X軸に沿って延在する開口である。圧力室CVのX1方向の端部は、平面視で1個の第2連通路324に重なり、圧力室CVのX2方向の端部は、平面視で連通板32の1個の第1連通路326に重なる。
【0033】
圧力室基板34のうち連通板32に対向する表面とは反対方向の表面には振動板36が設置される。振動板36は、弾性的に変形可能な板状部材である。
図3に例示される通り、振動板36は、弾性膜361と絶縁膜362との積層で構成される。絶縁膜362は、弾性膜361からみて圧力室基板34とは反対方向に位置する。弾性膜361は、例えば酸化シリコンで形成される。絶縁膜362は、例えば酸化ジルコニウムで形成される。
【0034】
図3から理解される通り、連通板32と振動板36とは、各圧力室CVの内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室CVは、連通板32と振動板36との間に位置し、当該圧力室CV内に収容されたインクに圧力を付与するための空間である。振動板36は、圧力室CVの壁面の一部を構成する。液体貯留室RSに貯留されたインクは、共通流路328から各第2連通路324に分岐してM個の圧力室CVに並列に供給され、及び収容される。すなわち、液体貯留室RSは、複数の圧力室CVにインクを供給するための共通液室として機能する。
【0035】
図2及び
図3に例示される通り、振動板36における圧力室基板34とは反対方向の表面には、M個のノズルNに夫々対応するM個の圧電素子PZが設置される。各圧電素子PZは、駆動信号Comの供給により変形するアクチュエーターであり、X軸に沿う長い形状に形成される。M個の圧電素子PZは、M個の圧力室CVに対応するようにY軸に沿って配列する。圧電素子PZの変形に連動して振動板36が振動すると、圧力室CV内の圧力が変動する。圧電素子PZは、振動板36を振動させる駆動素子である。
【0036】
以下では、M個の圧電素子PZの各々を区別するために、順番に、1番目、2番目、…、M番目と称することがある。また、m番目の圧電素子PZを、圧電素子PZ[m]と称する場合がある。変数mは、1以上M以下を満たす整数である。また、液体吐出装置100の構成要素や信号等が、圧電素子PZに対応するものである場合には、当該構成要素や信号等を表すための符号に、m番目に対応していることを示す添え字[m]を付して表現することがある。例えば、m番目のノズルNを、ノズルN[m]と表現することがある。
図2に示すように、M個のノズルNのうち、最もY2方向に位置するノズルNをノズルN[1]とし、最もY1方向に位置するノズルNをノズルN[M]として表現する。
【0037】
圧電素子PZの変形に連動して振動板36が振動すると、圧力室CV内の圧力が変動し、圧力室CVに充填されたインクが第1連通路326とノズルNとを通過して吐出される。
【0038】
図2及び
図3の封止体44は、M個の圧電素子PZを外気から保護するとともに圧力室基板34及び振動板36の機械的な強度を補強する構造体である。封止体44は、振動板36の表面に例えば接着剤で固定される。封止体44のうち振動板36との対向面に形成された凹部の内側に複数の圧電素子PZが収容される。
【0039】
図3に例示される通り、振動板36の表面には配線基板50が接合される。配線基板50は、制御モジュール6と液体吐出ヘッド10とを電気的に接続するための複数の配線が形成された実装部品である。例えばFPC又はFFC等の可撓性の配線基板50が好適に採用される。FPCは、Flexible Printed Circuitの略である。FFCは、Flexible Flat Cableの略である。配線基板50には、駆動回路51が実装される。駆動回路51は、印刷信号SIによる制御のもとで、圧電素子PZに対して、駆動信号Comを供給するか否かを切り替える電気回路である。
【0040】
図4は、駆動信号Comの一例である。駆動信号Comは、圧電素子PZを駆動させるための吐出波形PXを有する。吐出波形PXは、保持要素DC1と、膨張要素DC2と、保持要素DC3と、収縮要素DC4と、保持要素DC5と、膨張要素DC6と、保持要素DC7とを有する。
【0041】
保持要素DC1は、基準電位V0を保持する。膨張要素DC2は、保持要素DC1の直後に、圧力室CVの容積が膨張するように電位を基準電位V0から保持電位Vc1に変化させる。保持電位Vc1は、基準電位V0よりも低い。保持要素DC3は、膨張要素DC2の直後に、期間Pwh1の間、保持電位Vc1を保持する。収縮要素DC4は、保持要素DC3の直後に、圧力室CVの容積を収縮するように電位を保持電位Vc1から保持電位Vc2に変化させる。保持電位Vc2は、基準電位V0よりも高い。保持要素DC5は、収縮要素DC4の直後に、期間Pwh2の間、保持電位Vc2を保持する。膨張要素DC6は、保持要素DC5の直後に、圧力室CVの容積が膨張するように電位を保持電位Vc2から基準電位V0に変化させる。保持要素DC7は、膨張要素DC6の直後に、基準電位V0を保持する。圧力室CVの容積を収縮することは、圧力室CV内のインクの圧力を上昇させることを意味する。圧力室CVの容積を膨張することは、圧力室CV内のインクの圧力を下降させることを意味する。
【0042】
本実施形態において、M個の圧電素子PZには、同一の駆動信号Comが供給される。
【0043】
1-3.ノズルNの形状について
図5は、ノズルN付近をY軸に沿って切断した場合の断面図である。
図6は、ノズルN付近の平面図である。
図5及び
図6に示すように、ノズルNは、下流ノズル部分NDと、下流ノズル部分NDよりも上流に位置する上流ノズル部分NUとを有する。上流ノズル部分NUは、面FN2に開口した供給開口U1と、供給開口U1に対向する底面U2と、を含む。より具体的には、上流ノズル部分NUは、供給開口U1及び底面U2を底面とし、壁面WUを側面とする略円柱状の空間である。底面U2は、Z軸を法線ベクトルとする面である。言い換えれば、底面U2は、XY平面に平行な面である。但し、底面U2は、XY平面に交差する面であってもよい。第1実施形態において、供給開口U1及び底面U2の形状は、略同一である。略同一とは、完全に同一である場合の他に、製造上の誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む。
【0044】
下流ノズル部分NDは、面FN1に開口した吐出開口D2と、底面U2に開口した接続部D1とを含む。より具体的には、下流ノズル部分NDは、吐出開口D2と接続部D1とを底面とし、壁面WDを側面とする略円柱状の空間である。
図6では、供給開口U1、底面U2、接続部D1、及び、吐出開口D2の形状は、円形であるが、円形に限らず任意の形状でよく、例えば、楕円形状又は矩形形状等でもよい。接続部D1及び吐出開口D2の直径は、例えば、10[μm]から30[μm]までの間である。供給開口U1及び底面U2の直径は、例えば、15[μm]から、液体吐出装置100の解像度に応じた上限値と、第1連通路326の幅とのうち小さい値までである。液体吐出装置100の解像度に応じた上限値は、例えば、液体吐出装置100の解像度が600dpiである場合、25.4[mm]/600で求められ、約0.0423[mm]であり、言い換えれば約42.3[μm]である。[μm]は、マイクロメートルを意味する。[mm]は、ミリメートルを意味する。dpiは、dots per inchの略語である。
【0045】
図6に示すように、平面視において、吐出開口D2及び接続部D1は、供給開口U1及び底面U2の内側に位置する。従って、平面視において、上流ノズル部分NUの断面積は、下流ノズル部分NDの断面積よりも大きい。但し、平面視において、吐出開口D2及び接続部D1は、略同一の面積であるが、異なる面積でもよい。例えば、下流ノズル部分NDは、Z2方向に向かうことに応じて断面積が小さくなるテーパー形状であってもよい。同様に、供給開口U1及び底面U2が略同一の面積であるが、異なる面積でもよい。例えば、上流ノズル部分NUは、Z2方向に向かうことに応じて断面積が小さくなるテーパー形状であってもよい。
【0046】
平面視において、下流ノズル部分NDの重心GDと上流ノズル部分NUの重心GUとが互いに離れることによってインクの吐出方向が変化することが、発明者の実験によって得られた。重心は、対象の形状において断面1次モーメントの総和がゼロになる地点である。例えば、対象の形状が円形である場合、重心は、円の中心であり、対象の形状が平行四辺形である場合、重心は、平行四辺形が有する2つの対角線の交点である。以下の記載では、平面視における重心GDの位置に対する重心GUの位置のずれを、「同軸度」と記載することがある。平面視における重心GDと重心GUとの距離を「同軸度のずれの大きさ」と記載することがある。重心GDと重心GUとが互いに近いことを、同軸度が高いと記載することがある。また、重心GUから重心GDに向かう方向を、同軸度のずれの方向と記載することがある。
【0047】
同軸度のずれによって、インクの吐出方向は、平面視において重心GDから重心GUに向かうように傾斜する。言い換えれば、同軸度のずれの方向とは反対の方向にずれるように、インクが吐出する。
図5の例では、同軸度のずれの方向がY2方向であり、ノズルNから、Y1方向にずれたH1方向にインクが吐出される。H1方向は、X1方向に見たときに、Z2方向を反時計回りにθ度回転した方向である。但し、本実施形態では、ノズルNによって、同軸度が異なる。同軸度のずれによってインクの吐出方向が傾斜する理由として、ノズルNに形成されるインクのメニスカスの揺れが吐出タイミング時に重心GUからずれることと、メニスカスがZ1方向に引き込まれ、上流ノズル部分NUに到達した場合に、メニスカスが片方向に寄ることと、下流ノズル部分ND内でZ軸とは垂直方向において圧力勾配が発生することとが考えられる。ノズル基板46を製造する作業者は、シリコンウェハーに下流ノズル部分NDを形成した後に、シリコンウェハーに上流ノズル部分NUを形成する。例えば、平面視において、作業者は、重心GDと重心GUとの距離が、例えば、3[μm]以上15[μm]以下離れるように、好ましくは4[μm]以上11[μm]以下離れるように形成する。
【0048】
1-4.ミストについて
ノズルNからインクを吐出すると、インクの尾引きに起因した霧状の微細な液滴、いわゆるミストが発生することがある。ノズルNの周囲にミストが付着してインクが堆積すると、インクの吐出方向及び吐出量等の吐出特性が劣化する場合がある。また、累積的に付着したミストによりノズルNが部分的又は全体的に閉塞され、結果的にインクを吐出できない可能性もある。すなわち、ミストは、吐出特性の誤差及び吐出不能等の吐出不良の原因となり得る。ミストを抑制する方法として、ノズルNから吐出される第1液滴と、第1液滴の後に、前述のノズルNから吐出する第2液滴とを、媒体PPへの着弾前に合体させて、媒体PPに1つのドットを形成する態様が考えられる。第1液滴より生じた尾引きを後続の第2液滴によって吸収するので、ミストが発生することを抑制できる。しかしながら、この態様では、また、第2液滴より生じた尾引きに起因するミストは抑制できない場合があるうえ、媒体上に1つのドットを形成するために、1つのノズルNから2回インクを吐出する必要があるため、ノズルNから1回吐出することにより1つのドットを形成する態様と比較して、1つのドットを形成することにかかる期間が延びてしまう、言い換えれば、吐出周波数が低下してしまう。
【0049】
そこで、本実施形態では、同軸度をずらすことによりインクの吐出方向がずれることを利用して、隣り合う2つのノズルNから吐出される液滴同士を合体させる。但し、M個のノズルNのうち、少なくとも2つの隣り合うノズルNから吐出される液滴同士を合体させればよく、液滴を合体させないノズルNがあってもよい。
【0050】
1-5.ノズルNの配列態様
図7は、ノズル基板46の平面図の一部を示す図である。
図7では、Mを4以上の整数とし、M個のノズルNのうち、ノズルN[m1]と、ノズルN[m2]と、ノズルN[m3]と、ノズルN[m4]という4つのノズルNを表示して第1実施形態におけるノズルNの配列態様を説明する。なお、
図7では、図面が煩雑になることを避けるため、供給開口U1、底面U2、接続部D1、吐出開口D2の符号の図示を省略する。m1、m2、m3、及び、m4は、1以上且つM以下の整数であり、以下の関係がある。
m2=m1-1=m3-2=m4-3
【0051】
ノズル列Lnの配列方向であるY軸に沿って、ノズルN[m2]とノズルN[m1]とノズルN[m3]とノズルN[m4]とがこの順に設けられる。更に、ノズルN[m2]とノズルN[m1]とは、互いに隣り合う。ノズルN[m1]とノズルN[m3]とは、互いに隣り合う。ノズルN[m3]とノズルN[m4]とは、互いに隣り合う。
【0052】
図7に示すように、距離LD12は、距離LU12よりも長い。距離LD12は、平面視において、下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]の位置と下流ノズル部分ND[m2]の重心GD[m2]の位置との距離である。距離LU12は、平面視において、上流ノズル部分NU[m1]の重心GU[m1]の位置と上流ノズル部分NU[m2]の重心GU[m2]の位置との距離である。また、
図7に示すように、平面視において、重心GD[m1]と重心GD[m2]との間に、重心GU[m1]と重心GU[m2]とが位置するとも言える。なお、平面視における重心GD[m1]と重心GD[m2]との間とは、ノズル列Lnに対して直交し、且つ、重心GD[m1]を通る直線Lm1と、ノズル列Lnに対して直交し、且つ、重心GD[m2]を通る直線Lm2との間である。
【0053】
また、
図7に示すように、距離LD34は、距離LU34よりも長い。距離LD34は、平面視において、下流ノズル部分ND[m3]の重心GD[m3]の位置と下流ノズル部分ND[m4]の重心GD[m4]の位置との距離である。距離LU34は、平面視において、上流ノズル部分NU[m3]の重心GU[m3]の位置と上流ノズル部分NU[m4]の重心GU[m4]の位置との距離である。
【0054】
また、
図7に示すように、距離LD12は、距離LD13よりも短い。距離LD13は、平面視において、下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]の位置と下流ノズル部分ND[m3]の重心GD[m3]の位置との距離である。更に、距離LD34は、距離LD13よりも短い。
【0055】
また、
図7に示すように、平面視において、下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]の位置は、上流ノズル部分NU[m1]の重心GU[m1]の位置よりもノズル列Lnの両端のノズルNのうち一端のノズルNであるノズルN[M]に近い。言い換えれば、ノズルN[m1]の同軸度のずれの方向は、Y1方向である。従って、平面視において、重心GD[m1]の位置は、重心GU[m1]よりも、重心GU[m2]に対して遠くに位置するとも言える。ノズルN[M]は、両端のノズルNのうち、重心GU[m1]から重心GD[m1]に向かう方向に位置するともいえる。また、平面視において、下流ノズル部分ND[m2]の重心GD[m2]の位置は、上流ノズル部分NU[m2]の重心GU[m2]の位置よりも両端のノズルNのうち他端のノズルNであるノズルN[1]に近い。言い換えれば、ノズルN[m2]の同軸度のずれの方向は、Y2方向である。従って、ノズルN[m1]とノズルN[m2]との同軸度のずれの方向は、互いに逆方向である。ノズルN[1]は、両端のノズルNのうち、重心GU[m2]から重心GD[m2]に向かう方向に位置するともいえる。
【0056】
また、
図7に示すように、距離LDU[m1]と距離LDU[m2]とは、互いに等しい。ただし、距離LDU[m1]と距離LDU[m2]との差が、1[μm]以下である場合は、製造誤差であるとして、互いに等しいと看做す。距離LDU[m1]は、平面視において、下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]と上流ノズル部分NU[m1]の重心GU[m1]との距離である。距離LDU[m2]は、平面視において、下流ノズル部分ND[m2]の重心GD[m2]と上流ノズル部分NU[m2]の重心GU[m2]との距離である。
【0057】
なお、
図7の例では、ノズルN[m1]が「第1ノズル」に相当し、ノズルN[m2]が「第2ノズル」に相当し、ノズルN[m3]が「第3ノズル」に相当し、ノズルN[m4]が「第4ノズル」に相当する。ノズルN[m1]に連通する圧力室CV[m1]が「第1圧力室」に相当する。圧力室CV[m1]内のインクに圧力を付与する圧電素子PZ[m1]が、「第1駆動素子」に相当する。ノズルN[m2]に連通する圧力室CV[m2]が「第2圧力室」に相当する。圧力室CV[m2]内のインクに圧力を付与する圧電素子PZ[m2]が、「第2駆動素子」に相当する。ノズルN[m3]に連通する圧力室CV[m3]が「第3圧力室」に相当する。圧力室CV[m3]内のインクに圧力を付与する圧電素子PZ[m3]が、「第3駆動素子」に相当する。ノズルN[m4]に連通する圧力室CV[m4]が「第4圧力室」に相当する。圧力室CV[m4]内のインクに圧力を付与する圧電素子PZ[m4]が、「第4駆動素子」に相当する。ノズルN[M]が「両端のノズルのうち一端のノズル」に相当し、ノズルN[1]が「両端のノズルのうち他端のノズル」に相当する。ノズルN[m1]が「第1ノズル」に相当する場合、下流ノズル部分ND[m1]が、「第1下流ノズル部分」に相当し、上流ノズル部分NU[m1]が、「第1上流ノズル部分」に相当し、距離LDU[m1]が「第1距離」に相当する。ノズルN[m2]が「第2ノズル」に相当する場合、下流ノズル部分ND[m2]が、「第2下流ノズル部分」に相当し、上流ノズル部分NU[m2]が、「第2上流ノズル部分」に相当し、距離LDU[m2]が「第2距離」に相当する。ノズルN[m3]が「第3ノズル」に相当する場合、下流ノズル部分ND[m3]が、「第3下流ノズル部分」に相当し、上流ノズル部分NU[m3]が、「第3上流ノズル部分」に相当する。ノズルN[m4]が「第4ノズル」に相当する場合、下流ノズル部分ND[m4]が、「第4下流ノズル部分」に相当し、上流ノズル部分NU[m4]が、「第4上流ノズル部分」に相当する。
【0058】
図8は、インクの吐出態様を説明する図である。
図8では、重心GD[m1]及び重心GD[m2]を通り、Y軸に沿ってノズル基板46を切断した断面の周囲と、ノズルN[m1]から吐出した液滴DR[m1]とノズルN[m2]から吐出した液滴DR[m2]とが合体する前と、この2つの液滴DRが合体した後の状態とを示す。但し、
図8では、図示の簡略化のため、ノズル基板46よりもZ1方向に位置する部材、具体的には連通板32の表示を省略してある。
【0059】
ノズルN[m1]から吐出された液滴DR[m1]は、Y2方向にずれて飛翔する。ノズルN[m2]から吐出された液滴DR[m2]は、Y1方向にずれて飛翔する。液滴DR[m1]と液滴DR[m2]とは、空中の位置BPで合体して液滴DR12となり、媒体PPに着弾する。なお、液滴DR[m1]は、「第1ノズルから吐出される液体」の一例である。液滴DR[m2]は、「第2ノズルから吐出される液体」の一例である。
【0060】
位置BPは、理想的には、ノズルN[m1]とノズルN[m2]との間の中央であり、Z軸に平行な直線LZ上に位置する。Z軸に対する液滴DR[m1]の吐出方向がなす角度θ1は、例えば、0.5度である。距離LDU[m1]と距離LDU[m2]とが等しいため、Z軸に対する液滴DR[m2]の吐出方向がなす角度θ2は、角度θ1に等しい。面FN1と媒体PPとの距離PGは、例えば、5[mm]である。Y軸における、液滴DR12の着弾位置と、ノズルN[m1]との距離OFは、例えば、42[μm]である。
【0061】
1-6.第1実施形態のまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、圧電素子PZ[m1]と、圧電素子PZ[m1]とは異なる圧電素子PZ[m2]と、圧電素子PZ[m1]の駆動によりインクに圧力を付与する圧力室CV[m1]と、圧電素子PZ[m2]の駆動によりインクに圧力を付与する圧力室CV[m2]と、ノズル基板46に形成されたノズル列Lnに含まれる複数のノズルNの1つであり、圧力室CV[m1]と連通するノズルN[m1]と、ノズルN[m1]に隣り合うノズルNであって、圧力室CV[m2]と連通するノズルN[m2]と、を備え、ノズル基板46は、圧力室CV[m1]及び圧力室CV[m2]とは反対に位置する面FN1を有し、ノズルN[m1]は、面FN1に開口した下流ノズル部分ND[m1]と、ノズル基板46の厚さ方向にみたときの断面積が下流ノズル部分ND[m1]よりも大きく、下流ノズル部分ND[m1]よりも上流に位置する上流ノズル部分NU[m1]と、を含み、ノズルN[m2]は、面FN1に開口した下流ノズル部分ND[m2]と、Z軸に沿ってみたときの断面積が下流ノズル部分ND[m2]よりも大きく、下流ノズル部分ND[m2]よりも上流に位置する上流ノズル部分NU[m2]と、を含み、Z軸に沿ってみたとき、下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]の位置と下流ノズル部分ND[m2]の重心GD[m2]の位置との距離LD12は、上流ノズル部分NU[m1]の重心GU[m1]位置と上流ノズル部分NU[m2]の重心GU[m2]の位置との距離LU12よりも長い。
距離LD12が距離LU12よりも長いことは、同軸度のずれの方向が互いに離れる方向であることを意味する。同軸度のずれの方向とは反対方向にインクが吐出するため、ノズルN[m1]から吐出する液滴DR[m1]とノズルN[m2]から吐出する液滴DR[m1]とは、互いに近づく方向に飛翔するので、この2つの液滴DRを空中で合体させることが可能になる。ここで、別な合体方法の例として、1つのノズルから連続的に吐出した液滴同士を合体させる場合がある。こうした場合においては、後に吐出される液滴の吐出速度は、先に吐出された液滴に追いつかせる観点から、比較的速く設定する必要があるため、尾引きが長くなりやすく、ミストが生じやすい場合がある。これに対し、本実施形態においては、異なるノズルから吐出した2つの液滴DRを合体させるため、液滴の吐出速度を速く設定する必要がない。このことにより、尾引きを短くすることができ、ミストの発生を抑制し易い。また、2つのノズルNから吐出された液滴DRを合体させるため、ノズルNから1回吐出することにより1つのドットを形成する態様と比較しても、1つのドットを形成することにかかる期間は変わらない。すなわち、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、1つのドットを形成する態様と比較しても、吐出周波数を維持できる。すなわち、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、吐出周波数を維持しつつ、ミストの発生を抑制できるため、比較的大きな液滴を好適に吐出することが可能である。以上により、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10によるインクの吐出方法は、1つのノズルから連続的に吐出した液滴同士を合体させる態様と比較して、2つの液滴の合体に適している。
【0062】
また、隣り合う2つのノズルNから吐出される2つの液滴DRを合体させることにより、合体後の液滴DRの重量は合体前の夫々の液滴DRの重量よりも大きい。ノズルNから吐出された液滴DRは、インクの吐出、及び、移動機構5による媒体PPと液体吐出モジュールHUとの相対的な位置の変化によって発生する気流の影響を受けて、吐出方向がずれる。気流の影響は、液滴の重量が小さくなることに応じて大きくなる。従って、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10では、2つの液滴DRを空中で合体させることにより液滴DRの重量を大きくできるので、液滴DRの吐出方向が気流によってずれることを抑制できる。
【0063】
また、ノズルNから吐出される第1液滴と、第1液滴の後に、前述のノズルNから吐出する第2液滴とを、媒体PPへの着弾前に合体させて媒体PPに1つのドットを形成する比較態様では、第2液滴が空中で第1液滴に追いつくために、第1液滴が吐出した後に第2液滴を吐出するまでの期間を短くする必要があり、且つ、第2液滴の吐出速度が第1液滴の吐出速度よりも速くする必要がある。従って、第1液滴を吐出させるための駆動信号Comと第2液滴を吐出させるための駆動信号Comとには、設計上制限がかかる。一方、第1実施形態における駆動信号Comには、媒体PPに着弾するまでに2つの液滴DRが合体すればよいため、比較態様と比較して、駆動信号Comの設計の自由度が高くなる。
また、吐出方向をずらすことは、同軸度をずらす態様以外にも、下流ノズル部分NDを、面FN1に対して傾斜させる態様によっても実現可能ではある。しかしながら、下流ノズル部分NDを面FN1に対して傾斜させる態様は、特にエッチング等を用いた微細加工においては、同軸度をずらす態様よりも製造することが困難である。従って、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、下流ノズル部分NDを面FN1に対して傾斜させる態様と比較して、容易に製造できる。但し、本実施形態において、下流ノズル部分NDが面FN1に対して傾斜してもよい。
【0064】
また、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、圧電素子PZ[m1]及び圧電素子PZ[m2]とは異なる圧電素子PZ[m3]と、圧電素子PZ[m1]、圧電素子PZ[m2]、及び、圧電素子PZ[m3]とは異なる圧電素子PZ[m4]と、圧電素子PZ[m3]の駆動によりインクに圧力を付与する圧力室CV[m3]と、圧電素子PZ[m4]の駆動によりインクに圧力を付与する圧力室CV[m4]と、複数のノズルNの1つであり、圧力室CV[m3]と連通するノズルN[m3]と、ノズルN[m3]に隣り合うノズルであって、圧力室CV[m4]と連通するノズルN[m4]と、を更に備え、ノズルN[m3]は、面FN1に開口した下流ノズル部分ND[m3]と、Z軸に沿ってみたときの断面積が下流ノズル部分ND[m3]よりも大きく、下流ノズル部分ND[m3]よりも上流に位置する上流ノズル部分NU[m3]と、を含み、ノズルN[m4]は、面FN1に開口した下流ノズル部分ND[m4]と、Z軸に沿ってみたときの断面積が下流ノズル部分ND[m4]よりも大きく、下流ノズル部分ND[m4]よりも上流に位置する上流ノズル部分NU[m4]と、を含み、下流ノズル部分ND[m3]の重心GD[m3]の位置と下流ノズル部分ND[m4]の重心GD[m4]の位置との距離LD34は、上流ノズル部分NU[m3]の重心GU[m3]の位置と上流ノズル部分NU[m4]の重心GU[m4]の位置との距離LU34よりも長い。
ノズルN[m3]とノズルN[m4]とについても、ノズルN[m1]とノズルN[m2]と同様に、ノズルN[m3]から吐出する液滴DR[m3]とノズルN[m4]から吐出する液滴DR[m4]とは、互いに近づく方向に飛翔するので、この2つの液滴DRを空中で合体させることができる。2つの液滴DRを合体させることにより、尾引きが短くなるためミストの発生を抑制できる。
【0065】
また、ノズルN[m1]とノズルN[m3]とは、互いに隣り合い、ノズルN[m2]とノズルN[m1]とノズルN[m3]とノズルN[m4]とは、複数のノズルNが配列する配列方向に沿って、この順に設けられる。
言い換えれば、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、液滴DRを合体させる2つのノズルNごとに、ノズル列Lnに沿って配列する。但し、液滴DRを合体させる2つのノズルNと、液滴DRを合体させる他の2つのノズルNとの間に、液滴DRを合体させないノズルNが存在してもよい。具体的には、ノズルN[m1]とノズルN[m3]との間に、ノズルN[m1]から吐出される液滴DR[m1]及びノズルN[m3]から吐出される液滴のいずれにも合体させない液滴DR[m]を吐出するノズルN[m]があってもよい。
【0066】
Z軸に沿ってみたとき、距離LD12は、下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]の位置と下流ノズル部分ND[m3]の重心GD[m3]の位置との距離LD13よりも短く、Z軸に沿ってみたとき、下流ノズル部分ND[m3]の重心GD[m3]の位置と下流ノズル部分ND[m4]の重心GD[m4]位置との距離LD34は、距離LD13よりも短い。
第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、距離LD12及び距離LD34が距離LD13よりも長い態様と比較して、液滴DRを合体させるノズルN同士の距離を短くできるため、液滴DRが合体するタイミングを早くできる。液滴DRが合体するタイミングを早くなることにより、尾引きが短くなるタイミングが早くなるため、ミストの発生をより抑制できる。また、液滴DRが合体するタイミングが早くなることにより、2つの液滴DRが合体する位置BPがZ1方向に近づくため、距離LD12及び距離LD34が距離LD13よりも長い態様と比較して、面FN1と媒体PPとの距離PGが短くても本実施形態を適用できる可能性が高くなる。
【0067】
Z軸に沿ってみたとき、下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]の位置は、上流ノズル部分NU[m1]の重心GU[m1]の位置よりもノズル列Lnの両端のノズルNのうち一端のノズルNであるノズルN[M]に近く、厚さ方向にみて、下流ノズル部分ND[m2]の重心GD[m2]の位置は、上流ノズル部分NU[m2]の重心GU[m2]の位置よりも両端のノズルNのうち他端のノズルNであるノズルN[1]に近い。
第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、液滴DRが合体する2つのノズルNのうち、一方のノズルNから吐出される液滴DRがZ2方向にずれなく吐出し、他方のノズルNから吐出される液滴DRがZ2方向からずれて吐出される態様と比較して、液滴DRが合体するタイミングを早くできる。このため、ミストの発生をより抑制できる。また、面FN1と媒体PPとの距離PGが短くても本実施形態を適用できる可能性が高くなる。
【0068】
また、Z軸に沿う方向における下流ノズル部分ND[m1]の重心GD[m1]の位置と上流ノズル部分NU[m1]の重心GU[m1]の位置との距離LDU[m1]と、Z軸に沿う方向における下流ノズル部分ND[m2]の重心GD[m2]の位置と上流ノズル部分NU[m2]の重心GU[m2]の位置との距離LDU[m2]とは、互いに等しい。
距離LDU[m1]と距離LDU[m2]とが等しいため、
図8の例では、X1方向に見て、液滴DR[m1]のずれる角度θ1と液滴DR[m2]のずれる角度θ2とが等しい。従って、
図8から理解されるように、ノズルN[m1]から位置BPまでの液滴DR[m1]の飛翔距離と、ノズルN[m2]から位置BPまでの液滴DR[m2]の飛翔距離とが同一である。液滴DR[m1]の飛翔距離と液滴DR[m2]の飛翔距離とが異なる場合、空中で合体させるためには、圧電素子PZ[m1]と圧電素子PZ[m2]に供給する駆動信号Comを別々の信号にして、夫々の駆動信号Comの調整が必要となる。具体的な調整内容は、液滴DR1[m1]の吐出速度と液滴DR[m2]の吐出速度とのうち、飛翔距離が長い方の吐出速度を、飛翔距離が短い方の吐出速度よりも早くすること、及び、ノズルN[m1]とノズルN[m2]とから液滴DRを吐出するタイミングをずらすことの一方又は両方である。しかしながら、第1実施形態では、液滴DR[m1]の飛翔距離と液滴DR[m2]の飛翔距離とが同一であるため、ノズルN[m1]とノズルN[m2]とから吐出されるタイミングを同一とし、液滴DR1[m1]の吐出速度と液滴DR[m2]の吐出速度とが同一とすればよく、駆動信号Comの設計自由度を向上できる。
【0069】
また、圧電素子PZ[m1]と圧電素子PZ[m2]とには、互いに同一の駆動信号Comが供給される。
第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、圧電素子PZ[m1]と圧電素子PZ[m2]とに供給する駆動信号Comを別々の信号にする態様と比較して、駆動回路51の構成を簡素化できる。
【0070】
また、ノズル[m1]から吐出される液滴DR[m1]とノズル[m2]から吐出される液滴DR[m2]とは、空中で合体する。
【0071】
また、第1実施形態に係る液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド10と、圧電素子PZ[m1]及び圧電素子PZ[m2]に駆動信号Comを供給する駆動信号生成回路2とを有する。
【0072】
また、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、第1実施形態に係るノズル基板46を有する。第1実施形態に係るノズル基板46は、隣り合う2つのノズルから吐出される。
【0073】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0074】
2-1.第1変形例
図9は、第1変形例に係るノズル基板46-Aの平面図の一部を示す図である。第1変形例に係る液体吐出ヘッド10-Aは、ノズル基板46の替わりにノズル基板46-Aを有する点で、液体吐出ヘッド10と相違する。ノズル基板46-Aは、M個のノズルNの替わりにM個のノズルN-Aを有する点で、ノズル基板46と相違する。
図9では、Mを2以上の整数とし、M個のノズルN-Aのうち、ノズルN-A[m1]と、ノズルN-A[m2]という2つのノズルNを表示して第1変形例におけるノズルN-Aの配列態様を説明する。m1、m2は、1以上M以下の整数であり、以下の関係がある。
m2=m1-1
【0075】
M個のノズルN-Aは、同軸度のずれがないノズルN-Aを含む点で、M個のノズルNと相違する。
図9の例では、ノズルN-A[m1]には同軸度のずれがあり、ノズルN-A[m2]には同軸度のずれがない。即ち、距離LDU-A[m1]は、0より大きく、距離LDU-A[m2]は0である。距離LDU-A[m1]は、平面視において、ノズルN-A[m1]の下流ノズル部分ND-A[m1]の重心GD-A[m1]と上流ノズル部分NU-A[m1]の重心GU-A[m1]との距離である。距離LDU-A[m2]は、平面視において、下流ノズル部分ND-A[m2]の重心GD-A[m2]と上流ノズル部分NU-A[m2]の重心GU[m2]との距離である。ノズルN-A[m1]の同軸度の方向は、Y1方向である。
【0076】
ノズルN-A[m2]に同軸度のずれがないことは、平面視において、ノズルN-A[m2]の下流ノズル部分ND-A[m2]の重心GD-A[m2]の位置と上流ノズル部分NU-A[m2]の重心GU[m2]の位置とが同一であることと同義である。但し、平面視において、重心GD-A[m2]の位置と、重心GU[m2]の位置との距離が1[μm]以下である場合は、製造誤差であるとして、重心GD-A[m2]の位置と、重心GU[m2]の位置とが同一であると看做す。
【0077】
図9に示すように、距離LD12-Aは、距離LU12-Aよりも長い。距離LD12-Aは、平面視において、下流ノズル部分ND-A[m1]の重心GD-A[m1]の位置と下流ノズル部分ND-A[m2]の重心GD-A[m2]の位置との距離である。距離LU12-Aは、平面視において、上流ノズル部分NU-A[m1]の重心GU-A[m1]の位置と上流ノズル部分NU-A[m2]の重心GU-A[m2]の位置との距離である。
【0078】
図10は、第1変形例におけるインクの吐出態様を説明する図である。
図10では、重心GD-A[m1]及び重心GD-A[m2]を通り、Y軸に沿ってノズル基板46を切断した断面の周囲と、ノズルN-A[m1]から吐出した液滴DR-A[m1]とノズルN-A[m2]から吐出した液滴DR-A[m2]とが合体する前と、この2つの液滴DRが合体した後の状態とを示す。但し、
図10では、図示の簡略化のため、ノズル基板46よりもZ1方向に位置する部材、具体的には連通板32の表示を省略してある。
【0079】
ノズルN-A[m1]から吐出された液滴DR-A[m1]は、Y2方向にずれて飛翔する。一方、ノズルN-A[m2]から吐出された液滴DR-A[m2]は、Z2方向に飛翔する。液滴DR-A[m1]と液滴DR-A[m2]とは、空中の位置BP-Aで合体して液滴DR12-Aとなり、媒体PPに着弾する。
【0080】
位置BP-Aは、重心GD-A[m2]及び重心GU-A[m2]を通る直線LZ-A上に位置する。
図10から理解されるように、ノズルN-A[m1]から位置BP-Aまでの液滴DR-A[m1]の飛翔距離と、ノズルN-A[m2]から位置BP-Aまでの液滴DR-A[m2]の飛翔距離とが異なる。具体的には、液滴DR-A[m1]の飛翔距離は、液滴DR-A[m2]の飛翔距離よりも長い。従って、空中で合体させるためには、圧電素子PZ[m1]と圧電素子PZ[m2]に供給する駆動信号Comの調整が必要となる。以下の説明では、駆動信号Comが、駆動信号Com-Aと、駆動信号Com-Bという2系統の信号を有する場合を例として説明する。駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとは、互いに異なる信号である。制御モジュール6は、液滴DR-A[m1]と液滴DR-A[m2]とを空中で合体させるために、例えば、駆動信号Com-Aを圧電素子PZ[m1]に供給させ、駆動信号Com-Bを圧電素子PZ[m2]に供給させる。具体的には、制御モジュール6は、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとを生成する波形指定信号dComを駆動信号生成回路2に供給する。更に、制御モジュール6は、圧電素子PZ[m1]に駆動信号Com-Aを供給させ、圧電素子PZ[m2]に駆動信号Com-Bを供給させることを指示する印刷信号SIを、液体吐出ヘッド10に送信する。
【0081】
駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとは、例えば、以下に示す2つの特徴の一方又は両方の特徴を有する。第1の特徴は、駆動信号Com-Aによって吐出される液滴DRの吐出速度が、駆動信号Com-Bによって吐出される液滴DRの吐出速度よりも早いことである。第2の特徴は、駆動信号Com-Aによって液滴DRが吐出されるタイミングが、駆動信号Com-Bによって液滴DRが吐出されるタイミングよりも早いことである。液体吐出ヘッド10の構成について、
図11を用いて説明する。
【0082】
図11は、液体吐出ヘッド10の構成の一例を示すブロック図である。液体吐出ヘッド10は、駆動信号生成回路2から駆動信号Com-Aが供給される内部配線LHaと、駆動信号生成回路2から駆動信号Com-Bが供給される内部配線LHbと、定電位信号Vbsが供給される内部配線LHdと、を備える。圧電素子PZは、共通電極Quと、個別電極Qdと、共通電極Qu及び個別電極Qdの間に設けられた圧電体Qmと、を有する。内部配線LHdは、共通電極Quに電気的に接続される。
【0083】
図11に示すように、駆動回路51は、M個のスイッチSWa[1]~SWa[M]と、M個のスイッチSWb[1]~SWb[M]と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路52と、を備える。なお、各スイッチとしては、例えば、トランスミッションゲートを採用することができる。
接続状態指定回路52は、制御モジュール6から供給される印刷信号SI、吐出波形PXの期間を指定するラッチ信号LAT、の少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチSWa[1]~SWa[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLa[1]~SLa[M]と、スイッチSWb[1]~SWb[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLb[1]~SLb[M]と、を生成する。
1からMまでの任意の整数mについて、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]に応じて、内部配線LHaと、圧電素子PZ[m]の個別電極Qd[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
1からMまでの任意の整数mについて、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]に応じて、内部配線LHbと、圧電素子PZ[m]の個別電極Qd[m]との、導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
【0084】
印刷信号SIは、ラッチ信号LATによって指定される期間ごとの圧電素子PZ[1]~PZ[M]の駆動の態様を指定する個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。第1変形例では、印刷信号SIは、圧電素子PZ[m1]に駆動信号Com-Aを供給することを指定する個別指定信号Sd[m1]と、圧電素子PZ[m2]に駆動信号Com-Bを供給することを指定する個別指定信号Sd[m2]とを含む。駆動信号Com-Aを供給することを指定する個別指定信号Sd[m1]を受け付けた場合、接続状態指定回路52は、接続状態指定信号SLa[m1]を、ハイレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m1]を、ローレベルに設定する。これにより、圧電素子PZ[m1]には、駆動信号Com-Aが供給される。駆動信号Com-Bを供給することを指定する個別指定信号Sd[m2]を受け付けた場合、接続状態指定回路52は、接続状態指定信号SLa[m2]を、ローレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m2]を、ハイレベルに設定する。これにより、圧電素子PZ[m2]には、駆動信号Com-Bが供給される。
【0085】
以上説明したように、第1変形例に係る液体吐出ヘッド10-Aにおいて、Z軸に沿う方向にみて、下流ノズル部分ND-A[m1]の重心GD[m1]の位置は、上流ノズル部分NU-A[m1]の重心GU-A[m1]の位置よりもノズル列Ln-Aの両端のノズルのうち一端のノズルであるノズルN-A[M]に近く、Z軸に沿う方向にみて、下流ノズル部分ND-A[m2]の重心GD-A[m2]の位置は、上流ノズル部分NU-A[m2]の重心GU-A[m2]の位置と同一である。
平面視において、重心GD-A[m2]の位置と重心GU-A[m2]の位置とが同一であるため、
図10に示すように液滴DR-A[m2]は、吐出方向がずれることなくZ2方向に飛翔する。従って、第1変形例に係る液体吐出ヘッド10-Aは、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10と比較して、2つの液滴DRが合体する位置のばらつきによる着弾位置のずれを抑制できる場合がある。着弾位置のずれについてより具体的に説明する。第1実施形態では、
図8から理解されるように、液滴DR[m1]の吐出方向及び液滴DR[m2]の吐出方向に、Y軸に沿う方向の成分が含まれる。従って、液滴DR[m1]の飛翔速度と液滴DR[m2]の飛翔速度とに多少の差がある場合、又は、液滴DR[m1]が吐出されるタイミングと液滴DR[m2]が吐出されるタイミングとが多少異なる場合に、液滴DR[m1]と液滴DR[m2]とが合体できたとしても、合体する位置BPが、直線LZ上にない場合が発生する。位置BPが直線LZ上にないと、合体後の液滴DR12が媒体PPに着弾する位置が理想の着弾位置からずれるため、画像の質が低下する。液滴DR[m1]の飛翔速度と液滴DR[m2]の飛翔速度との差、及び、液滴DR[m1]が吐出されるタイミングと液滴DR[m2]が吐出されるタイミングとの差は、例えば、ノズルN[m1]の形状とノズルN[m2]の形状との製造誤差、又は、ノズルN[m1]の周囲の粘度とノズルN[m2]の周囲の粘度との差等がある場合に発生し得る。
一方、第1変形例では、液滴DR-A[m2]の吐出方向には、理想的にはZ2方向であって、X軸やY軸に沿う方向の成分を有さない。従って、液滴DR-A[m1]の飛翔速度及び液滴DR-A[m1]の飛翔速度が夫々の理想の飛翔速度とから多少異なる場合でも、液滴DR-A[m1]と液滴DR-A[m2]とが合体する位置BP-Aは、直線LZ上に位置する。液滴DR-A[m1]が吐出されるタイミング及び液滴DR-A[m2]が吐出されるタイミングが夫々の理想のタイミングとは異なる場合でも同様に、位置BP-Aは、直線LZ上に位置する。以上により、第1変形例に係る液体吐出ヘッド10-Aは、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10と比較して、2つの液滴DRが合体する位置のばらつきによる着弾位置のずれを抑制できる場合がある。
【0086】
また、第1変形例において、圧電素子PZ[m1]と圧電素子PZ[m2]とには、互いに異なる駆動信号Comが供給される。
圧電素子PZ[m1]と圧電素子PZ[m2]とに個別の駆動信号Comを供給することにより、液滴DR-A[m1]と液滴DR-A[m2]とを適切に合体させることができる。
【0087】
2-2.第2変形例
上述の各態様では、ノズル列Lnの配列方向に沿って隣り合う2つのノズルNの夫々から吐出された液滴DRを合体させたが、これに限らない。例えば、1つのノズル基板46が、第1ノズル列Ln1と第2ノズル列Ln2とを有する場合、第1ノズル列Ln1に含まれるノズルN1とから吐出される液滴DRと、第2ノズル列Ln2に含まれるノズルN2とから吐出される液滴DRとを合体させてもよい。
【0088】
図12は、第2変形例に係るノズル基板46-Bの平面図の一部を示す図である。但し、図面の煩雑化を防ぐため、
図12に示す符号を適宜省略してある。第2変形例に係る液体吐出ヘッド10-Bは、平面視において、Y軸に対して交差するV軸に沿って延在する点と、ノズル基板46-Bとを有する点で、液体吐出ヘッド10と相違する。V軸に沿う一方向がV1方向であり、V1方向と反対の方向がV2方向である。液体吐出ヘッド10-Bの詳細については省略するが、液体吐出ヘッド10-Bは、例えば、
図3に示した配線基板50を軸として、
図3に示した各要素のうち配線基板50及び駆動回路51以外の要素が線対称となるように配置されたヘッドである。従って、液体吐出ヘッド10-Bは、2個の液体貯留室RSと、2M個の圧力室CVと、2M個のノズルNとを有する。なお、配線基板50を軸として形成された2M個の圧力室CVは、1つの圧力室基板34によって区画されてもよいし、別々の圧力室基板34によって区画されてもよい。
【0089】
ノズル基板46-Bは、Y軸に沿って延在する。ノズル基板46-Bには、M個のノズルN1と、M個のノズルN2とが設けられる。M個のノズルN1の夫々は、2M個のうちのM個の圧力室CVのいずれかに連通する。M個のノズルN2の夫々は、2M個のうちの残余のM個の圧力室CVのいずれかに連通する。M個のノズルN1によって第1ノズル列Ln1が構成される。M個のノズルN2によって第2ノズル列Ln2が構成される。第1ノズル列Ln1と第2ノズル列Ln2との配列方向は、V軸に沿う方向である。
【0090】
M個のノズルN1の夫々は、上流ノズル部分NU1と、下流ノズル部分ND1とを有する。M個のノズルN2の夫々は、上流ノズル部分NU2と、下流ノズル部分ND2とを有する。
図12では、M個のノズルN1のうちノズルN1[m1]、ノズルN1[m2]、ノズルN1[m3]、ノズルN1[m4]、及び、ノズルN1[m5]を表示してあり、M個のノズルN2のうちノズルN2[m1]、ノズルN2[m2]、ノズルN2[m3]、ノズルN2[m4]、及び、ノズルN2[m5]を表示してある。m1、m2、m3、m4、及び、m5は、1以上且つM以下の整数であり、以下の関係がある。
m1=m2-1=m3-2=m4-3=m5-4
【0091】
図12に示すように、平面視において、上流ノズル部分NU1[m1]の重心GU1[m1]の位置と、下流ノズル部分ND1[m1]の重心GD1[m1]の位置とは、ずれて配置される。より具体的には、重心GD1[m1]は、重心GU1[m1]に対してY2方向にずれて配置される。ノズルN1[m1]以外のノズルN1についても同様に、下流ノズル部分ND1の重心GD1は、上流ノズル部分NU1の重心GU1に対して、Y2方向にずれて配置される。
【0092】
また、
図12に示すように、平面視において、上流ノズル部分NU2[m2]の重心GU2[m2]の位置と、下流ノズル部分ND2[m2]の重心GD2[m2]の位置とは、ずれて配置される。より具体的には、重心GD2[m2]は、重心GU2[m2]に対してY1方向にずれて配置される。また、ノズルN2[m2]以外のノズルN2についても同様に、下流ノズル部分ND2の重心GD2は、上流ノズル部分NU2の重心GU2に対して、Y1方向にずれて配置される。
【0093】
図12に示すように、ノズルN1[m1]とノズルN2[m2]とは、ノズル列Lnの延在方向であるV軸に沿う方向に交差するY軸に沿って隣り合う。平面視において、重心GD1[m1]と重心GU1[m1]と、重心GU2[m2]と重心GD2[m2]とは、この順に、Y軸に平行な直線LY1に沿って存在する。同様に、平面視において、重心GD1[m2]と重心GU1[m2]と、重心GU2[m3]と重心GD2[m3]とは、この順に、Y軸に平行な直線LY2に沿って存在する。平面視において、重心GD1[m3]と重心GU1[m3]と、重心GU2[m4]と重心GD2[m4]とは、この順に、Y軸に平行な直線LY3に沿って存在する。平面視において、重心GD1[m4]と重心GU1[m4]と、重心GU2[m5]と重心GD2[m5]とは、この順に、Y軸に平行な直線LY4に沿って存在する。
【0094】
図12に示すように、距離LD12-Bは、距離LU12-Bよりも長い。距離LD12-Bは、平面視において、下流ノズル部分ND1[m1]の重心GD1[m1]の位置と下流ノズル部分ND2[m2]の重心GD2[m2]の位置との距離である。距離LU12-Bは、平面視において、上流ノズル部分NU1[m1]の重心GU1[m1]の位置と上流ノズル部分NU2[m2]の重心GU2[m2]の位置との距離である。第2変形例において、ノズルN1[m1]が「第1ノズル」の一例であり、ノズルN2[m2]が「第2ノズル」の一例である。
【0095】
ノズルN1[m1]の同軸度がずれる方向は、Y2方向であるから、ノズルN1[m1]からは、同軸度のずれる方向の逆方向であるY1方向に液滴DRが吐出される。ノズルN2[m2]の同軸度がずれる方向は、Y1方向であるから、ノズルN2[m2]からは、同軸度がずれる方向の逆方向であるY2方向に液滴DRが吐出される。ノズルN1[m1]から吐出された液滴DRとノズルN2[m2]から吐出された液滴DRとが合体することにより、第2変形例に係る液体吐出ヘッド10-Bは、ミストの発生を抑制できる。
【0096】
2-3.第3変形例
第1実施形態では、M個の圧電素子PZには、同一の駆動信号Comが供給されるが、第1変形例と同様に、互いに異なる駆動信号Comが供給されてもよい。
【0097】
2-4.第4変形例
第1実施形態では、距離LDU[m1]と距離LDU[m2]とは、互いに等しいが、距離LDU[m1]と距離LDU[m2]とが互いに異なってもよい。距離LDU[m1]と距離LDU[m2]とが互いに異なる場合、圧電素子PZ[m1]に供給する駆動信号Comと、圧電素子PZ[m2]に供給する駆動信号Comとを互いに異なる信号とすることにより、ノズルN[m1]から吐出された液滴DR[m1]と、ノズルN[m2]から吐出された液滴DR[m2]とを適切に合体させることができる。
【0098】
2-5.第5変形例
第1実施形態において、距離LD12は距離LD13よりも短く、距離LD34は、距離LD13よりも短いが、距離LD13は、距離LD12及び距離LD34以下であってもよい。距離LD13と、距離LD12と、距離LD34とが全て等しい場合とは、隣り合う2つの上流ノズル部分NUの間隔が一定であることを意味する。
【0099】
2-6.第6変形例
上述の各態様では、隣り合う2つのノズルNから夫々吐出される2つの液滴DRが空中で合体したが、3つ以上のノズルNから夫々吐出される3つ以上の液滴DRが空中で合体してもよい。例えば、第1変形例において、液滴DR12-Aは、更に、ノズルN-A[m2-1]から吐出された液滴DRと結合してもよい。
【0100】
2-7.第7変形例
上述の各態様における液体吐出ヘッド10は、圧電素子PZに替えて圧力室CV内のインクを加熱する発熱素子を有してもよい。第7変形例において、発熱素子が、「駆動素子」の一例である。
【0101】
2-8.第8変形例
上述した各態様では、液体吐出モジュールHUを、X軸方向に往復同させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体吐出装置は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。
【0102】
2-9.その他の変形例
上述の液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0103】
2…駆動信号生成回路、5…移動機構、6…制御モジュール、7…ヘッド移動機構、8…搬送機構、10,10-A,10-B…液体吐出ヘッド、14…液体容器、32…連通板、34…圧力室基板、36…振動板、42…筐体部、44…封止体、46,46-A,46-B…ノズル基板、48…コンプライアンス基板、50…配線基板、51…駆動回路、52…接続状態指定回路、71…収納ケース、72…無端ベルト、100…液体吐出装置、322…開口部、324…第2連通路、326…第1連通路、328…共通流路、361…弾性膜、362…絶縁膜、422…収容部、424…導入口、CV…圧力室、Com,Com-A,Com-B…駆動信号、D1…接続部、D2…吐出開口、DC1…保持要素、DC2…膨張要素、DC3…保持要素、DC4…収縮要素、DC5…保持要素、DC6…膨張要素、DC7…保持要素、DR,DR-A,DR1,DR12,DR12-A…液滴、FN1,FN2…面、GD,GD-A,GD1,GD2,GU,GU-A,GU1,GU2…重心、HU…液体吐出モジュール、Img…印刷データ、LAT…ラッチ信号、LD12,LD12-A,LD12-B,LD13,LD34,LDU,LDU-A…距離、LHa,LHb,LHd…内部配線、LU12,LU12-A,LU12-B,LU34…距離、Ln,Ln-A…ノズル列、Ln1…第1ノズル列、Ln2…第2ノズル列、N,N-A,N1,N2…ノズル、ND,ND-A,ND1,ND2…下流ノズル部分、NU,NU-A,NU1,NU2…上流ノズル部分、OF,PG…距離、PP…媒体、PX…吐出波形、PZ…圧電素子、Pwh1,Pwh2…期間、Qd…個別電極、Qm…圧電体、Qu…共通電極、RS…液体貯留室、SI…印刷信号、SLa,SLb…接続状態指定信号、SWa,SWb…スイッチ、Sd…個別指定信号、U1…供給開口、U2…底面、V0…基準電位、Vbs…定電位信号、Vc1,Vc2…保持電位、WD,WU…壁面、dCom…波形指定信号、θ1,θ2…角度。