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特開2024-79520ファン付き衣服、衣服用ファン、羽根車、およびファン付き衣服の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079520
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ファン付き衣服、衣服用ファン、羽根車、およびファン付き衣服の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 25/08 20060101AFI20240604BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20240604BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F04D25/08 301A
A41D13/002 105
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022201636
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】515013351
【氏名又は名称】村上被服株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰造
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
3H130
【Fターム(参考)】
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC18
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC18
3H130AA12
3H130AB06
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC25
3H130BA96C
3H130DD01Z
3H130DD05X
3H130EA04C
3H130EA04D
3H130EA07C
3H130EA07D
3H130EB01C
3H130EB01D
(57)【要約】
【課題】 ファンの使用環境や着衣の種類、ユーザの体感度合い、あるいは、バッテリ性能などの電力供給状態やファンの使用状態などに応じて、適切な風量を衣服内に送る。
【解決手段】 ファン付衣服100は、衣服110に設けられた開口部120に対し、ファン10を取り付けた衣服である。ファン10は、ケーシング30を備えたファン本体20と、ファン本体20に対して軸回転する羽根車40とを備える。ファン10の羽根車40が、羽根車40の装着部43に設けられた永久磁石60A、60B、60Cと、羽根車支持部材44に設けられた永久磁石70B、70C、70Aとの間で生じる磁力により、着脱自在にモータ50(ファン本体)に対して装着される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車を備えたファンと、
前記ファンを取り付け可能なファン装着部分を設けた衣服とを備え、
前記羽根車が、少なくとも1つの永久磁石によって、ファン本体に対し、着脱自在に装着されることを特徴とするファン付き衣服。
【請求項2】
前記少なくとも1つの永久磁石を覆うカバー部分をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のファン付き衣服。
【請求項3】
前記羽根車と前記ファン本体との間で対向し、係合する係合部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のファン付き衣服。
【請求項4】
前記羽根車を回転させるモータの出力軸に対し、軸回転可能に軸支される羽根車支持部材をさらに備え、
前記少なくとも1つの永久磁石が、前記羽根車支持部材または前記羽根車に設けられることを特徴とする請求項1に記載のファン付き衣服。
【請求項5】
前記羽根車と前記ファン本体との間で対向する少なくとも一対の永久磁石を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のファン付き衣服。
【請求項6】
前記羽根車と前記ファン本体との間で、前記羽根車の回転軸から離れた位置でそれぞれ対向する複数の永久磁石対を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のファン付き衣服。
【請求項7】
前記羽根車の回転軸に関して点対称、線対称または回転対称の位置関係にある複数の永久磁石を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のファン付き衣服。
【請求項8】
複数の羽根車の中から、定められた羽根車を選択し、
ファン本体に対し、選択された羽根車を、永久磁石によって着脱自在に装着させ、
前記羽根車を前記ファン本体に装着させたファンを、衣服に取り付けることを特徴とするファン付き衣服の製造方法。
【請求項9】
ファン本体と、
ファン本体に取り付けられるモータと、
前記モータの回転に応じて軸回転する羽根車と、
前記モータに対する前記羽根車の着脱自在な装着を可能にする、少なくとも1つの永久磁石とを備えたことを特徴とする衣服用ファン。
【請求項10】
ハブの外周側面に沿って所定間隔で配列する複数の翼と、
ハブの先端側内面に設置される少なくとも1つの永久磁石とを備え、
衣服用ファンのファン本体に取り付けられるモータに対し、着脱自在に装着され、
前記モータの回転に応じて軸回転することを特徴とする衣服用ファンの羽根車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服に関し、特に外部の空気を内部に導入して身体を冷却するファン付き衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
高温環境下で着用される衣服として、外部の空気を衣服内部に導入し、汗の気化熱などで身体を冷却するファン付き衣服(EF付ウェアともいう)が知られている。ファン付き衣服では、衣服に設けられた開口部にファンを取り付け、バッテリからの電力供給によってファンを動作させることによって、外気を衣服内に取り込む。衣服内に流入した空気は、襟や袖口、あるいは脇の下などから外部に放出され、これによって身体が冷却される。
【0003】
従来では、バッテリの電圧レベルを変更することによってファンの風量を調整することが可能であり、ユーザのボタン操作による風量調整、あるいは自動風量調整が行われる。風量増加によって快適性が得られる一方で消費電力が増加するため、消費電力を抑えながら必要な風量を得ることが必要とされる。
【0004】
例えば、衣服への装着場所を裾の上側または下側に選択的に取り付け可能であって、排気管を有するアダプタ機構を備えた送風装置が知られている(特許文献1参照)。また、ファンの羽根車(プロペラ)の形状を改良し、低電力で風量増加を図った軸流ファンも知られている(特許文献2参照)。一方、高電圧レベルの期間と、低電圧レベルの期間とが交互に現れるように、電源電圧を調整し、消費電力を抑える制御方法も知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-104845号公報
【特許文献2】特開2020-159254号公報
【特許文献3】特開2022-33199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要とされるファンの風量は、使用環境によって様々であり、また、衣服の形態(アウター、シャツ型、ベストタイプなど)によっても相違する。さらに、同じ風量に対する体感も、ユーザによって相違する(暑がりの人など)。そのため、消費電力を抑制しながら風量の最大化を図ったファンを衣服に装着しても、ユーザの使用環境や着衣、体感に適合しない状況が生じる恐れがあり、必ずしもユーザの求める快適性を満たさない。
【0007】
また、近年のバッテリ性能(最大電圧レベル)の向上に伴い、風量最大化に向けた羽根車の形状(翼の枚数を含む)、構造が改良されることによって、消費電力の抑制が困難になる状況も生じ、あるいは、使用しているファンの経年変化、使用中におけるパーツの一部不具合などが生じる場合もある。
【0008】
上記問題点を鑑みて、本発明では、ファンの使用環境や着衣の種類、ユーザの体感度合い、あるいは、バッテリ性能などの電力供給状態やファンの使用状態などに応じて、適切な風量を衣服内に送ることができるファンおよびファン付き衣服の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のファン付き衣服は、羽根車を備えたファンと、ファンを取り付け可能なファン装着部分を設けた衣服とを備える。ファンに関しては、様々な形態のファンで構成することが可能であり、例えば、羽根車がファン本体に対して同軸的に配置される軸流ファンして構成することが可能である。羽根車の構成も、羽根(翼)の枚数を含め任意であり、ファンの形態、ファン本体の形態に応じる。衣服のファン装着部分についても、その形態は任意であり、例えば衣服の所定箇所に形成した開口部によって構成することができる。
【0010】
本発明のファン付き衣服では、羽根車が、少なくとも1つの永久磁石によって、ファン本体に対し、着脱自在に装着される。ここで、「装着される」とは、羽根車が、定められた条件下で回転し、ファンとして機能するように取り付けられることを表す。また、「着脱自在」とは、ファン停止状態で、磁力を上回る力を作用させることによって、羽根車をファン本体から取り外すことが可能であり、取り外し後、同じ羽根車あるいは異なる羽根車を、ファン本体に対して装着させる、取り付けることが可能であることを表す。
【0011】
本発明では、羽根車が、少なくとも1つの永久磁石による磁力の作用によって、ファン本体からの取り外しおよび取り付け、すなわち着脱が自在であり、また、ファン動作中において羽根車が回転し続けるようにファン本体に装着される。永久磁石は、少なくともこれらを満たす範囲で磁力を作用させる特性をもてばよい。
【0012】
永久磁石の形態としては、形状、サイズなどを含めて様々な形態が適用可能である。また、磁石の素材についても任意である。
【0013】
永久磁石の配置に関しては、磁石の数も含めて様々な配置構成にすることができる。例えば、ファン本体と羽根車それぞれに、互いに引き合う永久磁石を対にして設置し、羽根車が、磁力によって、ファン本体に対し軸回転可能に位置決めされ、設置される構成にすることができる。
【0014】
あるいは、ファン本体と羽根車のうちどちらか一方に永久磁石を設置し、他方には、永久磁石との接触あるいは接近によって帯磁し、互いに引き合う磁力が作用する部材や素材(磁性体)を設け、これによって、羽根車がファン本体に対して軸回転可能に位置決めされる部分を設ける構成にしてもよい。
【0015】
永久磁石の設置に関する構成については、ファンの形態、羽根車のファン本体に対する取り付け構造などに応じて、様々な形態を適用することが可能である。例えば、羽根車をモータに軸支して軸回転させる軸流ファンなどの場合、モータの出力軸に対し、軸回転可能に軸支される羽根車支持部材を設け、永久磁石を、羽根車支持部材または羽根車あるいは両方に設けることができる。この場合、例えば、羽根車のハブ先端側内面に、永久磁石を設けて互いに磁力を作用させる構成にすることが可能である。羽根車支持部材は、例えば樹脂などで構成することが可能である。また、磁力作用に影響が生じない範囲で、放熱機能をもつ素材や部材(例えば金属)を、羽根車支持部材に含めることも可能である。
【0016】
羽根車とファン本体とにそれぞれ永久磁石を配置する構成として、例えば、対向する少なくとも一対の永久磁石を備えるように構成することができる。また、一対の永久磁石を配置する場合、羽根車の軸に対して同軸的に配置することが可能である。あるいは、複数の対となる永久磁石を配置することも可能である。この場合、互いに対向するように一対または複数対の永久磁石を配置すればよい。
【0017】
永久磁石を対向配置させる構成として、永久磁石の対向する面サイズ、形状を同一にしてもよく、異なるサイズ、形状にすることも可能である。あるいは、対となる永久磁石が、部分的に対向する配置構成にしてもよい。例えば軸流ファンの場合、羽根車とファン本体との間で羽根車(ファン)の回転軸から離れた位置でそれぞれ対向する複数の永久磁石対を設ける構成にすることが可能である。
【0018】
また、複数の永久磁石を、ファン羽根車(ファン)の回転軸に関して点対称、線対称または回転対称の位置に配置することも可能である。この場合、ファン本体と羽根車との間で複数の永久磁石対を対称的位置に配置してもよく、一方に複数の永久磁石を配置してもよく、さらには、ファン本体と羽根車それぞれに複数の永久磁石を配置してもよい。
【0019】
永久磁石をファン本体や羽根車へ設置する構成としては、嵌合、被覆、はめ込みによる設置を含め、様々な構成を適用することができる。埃、塵、水分などから保護するように設置することも可能である。例えば、ファン本体および羽根車、あるいはどちらか一方に設けられた少なくとも1つの永久磁石に対し、永久磁石を覆うカバー部分を備える構成にすることができる。永久磁石を部分的に覆うことも可能であり、全体を覆う構成にすることも可能である。カバー部分は、例えば上述した羽根車支持部材やハブ先端側内面部分に形成することが可能である。
【0020】
カバー部分の形態としては、例えば、所定の防塵および/または防滴の規格などに応じた機能をもつように、その形態を定めることが可能である。あるいは、羽根車のファン本体に対する位置決めなどを目的として、その形態を定めることができる。一例として、永久磁石の対向面に対し、中心部を露出させるようにカバー部分を形成することが可能である。あるいは、中心部から離れた箇所を部分的に露出させるように、カバー部分を形成することが可能である。
【0021】
羽根車のファン本体に対する装着は、永久磁石による磁力によって可能である。その一方で、位置ずれを抑える、あるいは安定した位置決めを可能にする係合部を設ける構成にしてもよい。例えば、羽根車とファン本体との間で対向し、係合する係合部を設ける構成にすることができる。係合部の形態は様々であり、例えば、凹部と凸部で嵌合する構成、棒状の突出部を穴に挿入する構成も可能である。複数の永久磁石を配置する場合、その間に介在するように複数の係合部を設けることが可能である。例えば、複数の係合部(棒状突出部と穴など)を、回転軸に対して回転対称となるように配置することが可能であり、また、隣り合う磁石との距離間隔が等しくなるように配置することができる。
【0022】
本発明では、以上説明したようなファン付き衣服に関し、製造方法を提供することができる。すなわち、本発明のファン付き衣服の製造方法は、複数の羽根車の中から、定められた羽根車を選択し、ファン本体に対し、選択された羽根車を、永久磁石によって着脱自在に装着させ、羽根車をファン本体に装着させたファンを、衣服に取り付ける。羽根車の選択に関しては、例えば、バッテリ性能や電源に関するアップグレードや規格、仕様、要求されるファン動作時間、要求される風量、羽根(翼)の枚数などに応じて、所定の羽根車を選択することが可能である。あるいは、ファン本体の故障やアップグレード、羽根車のメンテナンスに応じて、所定の羽根車を選択することも可能である。
【0023】
本発明の他の態様である衣服用ファンは、ファン本体と、ファン本体に取り付けられるモータと、モータの回転に応じて軸回転する羽根車と、モータに対する羽根車の着脱自在な装着を可能にする、少なくとも1つの永久磁石とを備える。また、本発明の他の態様である衣服用ファンの羽根車は、ハブの外周側面に沿って所定間隔で配列する複数の翼と、ハブの先端側内面に設置される少なくとも1つの永久磁石とを備え、衣服用ファンのファン本体に取り付けられるモータに対し、着脱自在に装着され、モータの回転に応じて軸回転する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ファンの使用環境や着衣の種類、ユーザの体感度合い、あるいは、バッテリ性能などの電力供給状態やファンの使用状態などに応じて、適切な風量を衣服内に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】 第1の実施形態である衣服付きファンの衣服およびファンを概略的に示した図である。
図2】 第1の実施形態における羽根車の概略的断面図である。
図3】 第1の実施形態における羽根車を、吐出口側から見た平面図である。
図4】 第1の実施形態における、羽根車が装着される部材を吸入口側から見た平面図である。
図5】 第2の実施形態における羽根車を、吐出口側から見た平面図である。
図6】 第2の実施形態における羽根車支持部材の概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態である衣服付きファンについて説明する。
【0027】
図1は、第1の実施形態である衣服付きファンの衣服およびファンを概略的に示した図である。
【0028】
ファン付き衣服100は、衣服110に設けられた開口部(装着部分)120に対して衣服用ファン(以下、ファンという)10を装着させた衣服であり、ファン10を動作させることによって外気が衣服110内に取り込まれ、襟周りなどから排出される。開口部120は、衣服110の背面側における対称的位置で対になって形成され、2つのファン10がそれぞれ取り付けられる。なお、図1では、1つのファン10および1つの開口部120のみ図示している。
【0029】
ファン10は、ここでは軸流式ファンとして構成され、図示していない羽根車(プロペラ)を収容する筒状のケーシング30を含むファン本体20を備える。ケーシング30は、ファン背面側(吐出口側)にリブ構造の開口部30Rを形成し、図示しないモータ装着部を備える。ファン本体20の吸入口側(ファン正面側)には、図示しないリブ構造の環状蓋が着脱自在に装着される。環状蓋の端部にはフランジが形成され、ケーシング30のフランジ30Fとの間に衣服110を挟み、ファン10を衣服110に取り付ける。
【0030】
ファン10を衣服110に取り付けるため、図示しない環状蓋とケーシング30には、互いに螺合する雄ネジ、雌ネジがそれぞれ形成されているが、突起部などを設けて嵌合するように構成してもよい。また、環状部材(スリーブ)を吐出口側からケーシング30に嵌装させ、フランジ30Fと管状部材との間に衣服110を挟みこみ、螺合などによってファン10を衣服110に取り付けてもよい。このようなファン10の衣服110に対する取付手段は、いずれも公知である。
【0031】
ケーシング30内部では、開口部30Rの中央部に形成されたモータハウジング(図示せず)にモータが同軸配置されている。図示しないバッテリとケーブル接続部32との間に電源ケーブルを接続し、電源を供給することにより、羽根車が回転する。
【0032】
図2は、羽根車の概略的断面図である。図3は、羽根車を吐出口側から見た平面図である。図4は、羽根車が装着される部材を吸入口側から見た平面図である。図2~4を用いて、羽根車の着脱自在な装着について説明する。
【0033】
図2に示すように、羽根車40は、有底筒状のハブ42を有し、ハブ42の外周側面42Sに沿って翼(羽根)40Rを配列させたプロペラ構造になっている。ここでは、6枚の翼40Rが等間隔で並んで配置されている(図3参照)。図2に示すように、モータケーシング52の一部(出力軸側部分)は、ハブ42の内部に収容されている。
【0034】
ハブ42の内部42Rには、モータ50側、すなわちファン本体側と接続するための装着部43が形成されている。図3に示すように、装着部43は、ハブ42の先端側内周面全体を覆う円板状構造であり、例えば樹脂などによって成形されている。そして、3つの永久磁石60A、60B、60Cが、装着部43の磁石収納用凹部に嵌め込まれ、磁石表面が装着部表面43Sと面一となるように設置されている。羽根車40は、一点鎖線で示すモータ50の出力軸51に対し同軸的に配置される。ここでは、永久磁石60A、60B、60Cが、円板状に形成されている。
【0035】
一方、モータケーシング52の出力軸51側には、モータ50の出力軸51に軸支される円板状の部材(以下、羽根車支持部材という)44が設けられている(図4参照)。羽根車支持部材44は、例えば樹脂などによって成形される。羽根車支持部材44は、モータ50の回転に伴って軸回転し、そして羽根車支持部材44には、3つの永久磁石70A、70B、70Cが、図示しない底部側の磁石収納用凹部に嵌め込まれ、磁石表面が羽根車支持部材表面44Sと面一となるように設置されている。ここでは、永久磁石70A、70B、70Cが、円板状に形成されている。
【0036】
永久磁石70A、70B、70Cの露出している表面部分は、装着部43に設けられた永久磁石60A、60B、60Cの露出している表面部分と磁極が異なり、永久磁石70A、70B、70Cと永久磁石60A、60B、60Cとの間には、互いに引き合う磁力が発生する。
【0037】
図3に示すように、ハブ42の装着部43に設けられた永久磁石60A、60B、60Cの設置位置は、その中心Cすなわち回転軸(モータ出力軸)Eに対して回転対称であり、等間隔に配置されている。また、図4に示すように、モータ50側の羽根車支持部材44に設けられた永久磁石70A、70B、70Cの接設置位置も、回転軸Eに対して回転対称であって、等間隔に配置されている。
【0038】
ここでは、永久磁石60A、60B、60Cおよび永久磁石70A、70B、70Cのサイズが等しく、また、中心C、軸Eからの距離も等しい。したがって、装着部43と羽根車支持部材44とを互いに同軸的に向かい合わせたとき、永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70A、70B、70Cを、それぞれ真正面に対向する位置に定めることができる。
【0039】
一方、装着部43には、3つの穴65A、65B、65Cが形成されている。また、羽根車支持部材44には、3つの突出部75A、75B、75Cが設けられている。穴65A、65B、65Cは、中心C(回転軸E)に対して回転対称な位置関係にあり、中心Cから等距離に形成されている。また、突出部75A、75B、75Cも、回転軸Eに対して回転対称な位置関係にあり、突出部75A、75B、75Cの回転軸Eからの距離は、穴65A、65B、65Cの中心C(回転軸E)からの距離と等しい。
【0040】
さらに、装着部43における穴65A、65B、65Cと永久磁石60A、60B、60Cとの間に置ける距離間隔は、羽根車支持部材44における突出部75A、75B、75Cと永久磁石70A、70B、70Cとの間に置ける距離間隔と等しい。永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70A、70B、70Cとがそれぞれ対向するように、装着部43と羽根車支持部材44とを向かい合わせたとき、穴65A、65B、65Cは、突出部75A、75B、75Cとそれぞれ対向する。
【0041】
したがって、永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70A、70B、70Cとの位置関係を定めながら、装着部43と羽根車支持部材44とを接近させると、永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70A、70B、70Cとが互いに引き合い、磁石表面同士が接触する。それとともに、突出部75A、75B、75Cが穴65A、65B、65Cに嵌合する。その結果、羽根車40が、羽根車支持部材44に接続、装着されることになる。また、突出部75A、75B、75Cと穴65A、65B、65Cとの係合状態によって、羽根車40が羽根車支持部材44に対して確実に位置決めされる。
【0042】
なお、上述した回転対称配置の構成から、永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70B、70C、70Aをそれぞれ対向配置させることも可能であり、また、永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70C、70A、70Bとをそれぞれ対向配置させることも可能である。これらの場合でも、突出部75A、75B、75Cいずれも、穴65A、65B、65Cいずれかに嵌まる状態になる。
【0043】
このように本実施形態では、ファン10の羽根車40が、永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70B、70C、70Aとの間で生じる磁力により、着脱自在にモータ40(ファン本体)に対して装着される。このような構成は、衣服100に取り付けるファン10のバリエーションを大きく展開させることができる。
【0044】
例えば、翼の枚数、翼形状などが相違し、風量などがそれに応じて相違する複数の羽根車をあらかじめ用意し、使用環境、バッテリ性能、電源電圧制御、バッテリの充電残量、あるいはファン動作時間などに応じて、所望する風量が得られるように、所定の羽根車を装着させることができる。
【0045】
また、ファン本体の改良、改善が生じた場合、あるいはファン本体の劣化、手洗いや回転を伴う洗浄を含むメンテナンス、故障などが生じた場合でも、羽根車自体はそのまま利用し、他のファン本体に取り付けることも可能となる。逆に、羽根車が破損、故障、劣化した場合には、他の羽根車を用意してファン本体に取り付け可能となる。このような羽根車の利用は、近年のサステナビリティの要求を満たし、また、ユーザの嗜好性を反映させるカスタム化にも適応することができる。
【0046】
以上説明したファンのバリエーション展開は、羽根車40の着脱自在なファン本体20への装着を、永久磁石を用いることによってはじめて実現できるといえる。すなわち、ネジ回しや専用工具の使用といった煩雑さがなく、羽根車40を羽根車支持部材44へ接近させるだけで確実に正確な位置に位置決めされる。このとき、ユーザは、羽根車40を羽根車支持部材44と最終的に接触するまで相対的位置関係を確認する必要がなく、磁力の作用によって羽根車40が所望する位置へ自動的に位置決めされることになる。
【0047】
一方で、専用工具などを用いることなく羽根車40を損傷させることなく取り外すことができるため、様々な種類の羽根車を試験的に装着し、適切な羽根車を最終的に選ぶことも容易に行うことができる。したがって、ファン付き衣服の製造方法として、所望する羽根車を選択的にファン本体に取り付ける工程と、ファンを衣服に取り付ける工程を取り入れた製造方法を提供することができる。
【0048】
本実施形態では、複数の磁石を対にした状態で、羽根車40、羽根車支持部材44にそれぞれ配置している。これによって、羽根車40を確実に位置決めしながらファン本体20へ取り付けることが可能となる。また、永久磁石を回転対称配置にしているため、様々な位置(角度)で羽根車40を羽根車支持部材44に接近させても、確実に取り付けることが可能である。なお、永久磁石を、点対称、線対称配置にすることも可能である。
【0049】
さらに本実施形態では、棒状の突出部を穴に嵌める係合状態を作り出している。これにより、より確実な羽根車40の位置決めを可能にし、ファン動作中においても、羽根車40の位置ずれを抑制することができる。係合状態を作り出す構成については、例えば、凹部と凸部を装着部43、羽根車支持部材44にそれぞれ形成するなど、他の構成にすることも可能である。
【0050】
永久磁石60A、60B、60Cと永久磁石70B、70C、70Aの磁気、磁力の特性については、羽根車40がモータ50の駆動に伴って一体的に軸回転する間、羽根車40が羽根車支持部材44から外れず、接続し続けるように、定められている。その一方で、ファン停止状態で、ユーザが指などによって羽根車40に対して外そうとする力を作用させたとき、羽根車40を羽根車支持部材44から取り外することが可能なように、定められている。
【0051】
なお、永久磁石の数、配置は、上述した構成に限定されず、例えば1つの永久磁石対を中心付近に配置してもよい。あるいは、4つ以上の磁石対を互いに回転対称の位置関係で配置する構成にしてもよい。
【0052】
また、上述した軸流ファン以外のファン構造を採用することも可能である。永久磁石によって、羽根車がファン本体に対して着脱自在に装着されればよい。
【0053】
次に、図5、6を用いて、第2の実施形態であるファン付き衣服のファンについて説明する。第2の実施形態では、永久磁石がカバーされる構成になっている。
【0054】
図5は、第2の実施形態におけるファンの羽根車を、吐出口側から見た平面図である。図6は、第2の実施形態における羽根車支持部材の概略的斜視図である。羽根車と羽根車支持部材の配置関係は、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0055】
図5に示すように、羽根車140のハブ142の先端側内面には、装着部143が形成されている。装着部143は、3つの永久磁石160A、160B、160Cを備え、また、3つの穴165A、165B、165Cが形成されている。永久磁石160A、160B、160Cの形状、中心C(回転軸E)に対する回転対称な位置関係は、第1の実施形態と同じである。装着部143は、例えば樹脂によって成形可能であり、また、放熱機能を備えた金属などの素材あるいは部材を、部分的に装着部143に含めるようにしてもよい。
【0056】
図6に示す羽根車支持部材144は、3つの永久磁石170A、170B、170Cを備え、3つの突出部175A、175B、175Cが形成されている。回転軸Eに対する回転対称な位置関係は、第1の実施形態と同じである。したがって、羽根車140を羽根車支持部材144へ近づけると、第1の実施形態と同様、羽根車140が磁力によって羽根車支持部材144に接続し、位置決めされる。羽根車支持部材144に関しても、例えば樹脂によって成形し、また、金属などの素材あるいは部材を、部分的に含める構成にしてもよい。
【0057】
第2の実施形態では、装着部143に設けられた永久磁石160A、160B、160Cが、装着部143の外表面143Sに覆われている。例えば、装着部143を2つの板状部材で構成し、ハブ内面(底面)側に形成された磁石収納用凹部に永久磁石160A、160B、160Cを収め、2つの板状部材によって挟みこむことで被覆することができる。羽根車支持部材144においても、永久磁石170A、170B、170Cが、羽根車支持部材144の外表面144Sに覆われている。例えば、羽根車支持部材144を2つの板状部材で構成し、モータ側に形成された磁石収納用凹部に永久磁石160A、160B、160Cを収め、2つの板状部材に挟みこむことで被覆することができる。したがって、第1の実施形態のように、永久磁石160A、160B、160Cと永久磁石170A、170B、170Cとが互いに対向する表面同士で接触せず、装着部143、羽根車支持部材144の一部分を間に介在させながら、羽根車140が磁力によって羽根車支持部材144に取り付けられる。
【0058】
このように、装着部143、羽根車支持部材144が永久磁石を被覆するカバー部分として機能することにより、ファンを防塵・防滴構造にすることが可能となり、磁石に錆などが生じるのを抑制することができる。例えば、電源ケーブルの接続および羽根車140の装着の下、IEC規格で機器の保護等級を表すIP(International Protection)に対し、IP54などに応じた防塵・防滴構造にすることが可能となる。また、JIS規格に従って防塵・防滴構造にすることもできる。
【0059】
一方、第2の実施形態では、装着部143、羽根車支持部材144に対し、永久磁石位置決め用の開口部が形成されている。具体的には、羽根車支持部材144の永久磁石170A、170B、170Cの各中心位置に合わせて、円状の開口部144Rが外表面144Sに形成されている。一方、装着部143の永久磁石170A、170B、170Cには、その中心位置に対して回転対称な位置関係にある3つの矩形状開口部143Rが、それぞれ外表面143Sに形成されている。
【0060】
このような開口部143R、144Rを形成することにより、羽根車140を羽根車支持部材144に近づけた時、磁石間の対応位置関係を容易に確認しながら装着することができる。なお、ハブ42の外表面側に開口部143Rと同様の開口部を設けることも可能である。
【0061】
一方、開口部143R、144Rを設けることで、装着部143、羽根車支持部材144を介在させることによる磁力低下の影響を大きく受けることなく、第1の実施形態と同様の磁力作用によって、羽根車140が羽根車支持部材144に引き寄せられる。
【0062】
また、特定の永久磁石が塵、水分などにより磁気性能が劣化しても、他の永久磁石との間で磁力が作用し、確実に位置決め、取り付けることが可能となる。なお、開口部143R、144Rを設けない構成にすることも可能である。さらに、装着部143、羽根車支持部材144いずれか一方に関して永久磁石を覆わずに露出させてもよい。
【0063】
衣服用ファンのみならず、サーキュレータ、他の送風機、扇風機などに対しても、同様の構成にすることが可能である。すなわち、サーキュレータ、衣服用ファン以外の送風機や扇風機の羽根車を、永久磁石による磁力の作用によって、それら本体に対し、着脱自在に装着させることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 ファン
20 ファン本体
30 ケーシング
40 羽根車
42 ハブ
43 装着部
44 羽根車支持部材
50 モータ
51 モータ出力軸
60A、60B、60C 永久磁石
65A、65B、65C 穴
70A、70B、70C 永久磁石
75A、75B、75C 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6