(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079539
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】バリ取り装置
(51)【国際特許分類】
B23D 79/00 20060101AFI20240604BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20240604BHJP
B24B 29/00 20060101ALI20240604BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B23D79/00 A
B24B9/00 602K
B24B29/00 F
B24B1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069996
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】202223214158.8
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523152053
【氏名又は名称】合肥阿雷斯提汽車配件有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】000005256
【氏名又は名称】株式会社アーレスティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 建
【テーマコード(参考)】
3C049
3C050
3C158
【Fターム(参考)】
3C049AA06
3C049AA12
3C049AA18
3C049CA02
3C049CB01
3C049CB03
3C050FB06
3C050FB12
3C158AA06
3C158AA12
3C158AA18
3C158CA02
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB07
(57)【要約】
【課題】バリ取り対象物の孔の内周面に傷を付け難くでき、バリ取り対象物の孔の内周面のバリを除去し易くできるバリ取り装置を提供すること。
【解決手段】バリ取り装置10は、スクレーパ72の内側がロッド81のテーパ部81c及び円柱部81bに乗り上げることにより、スクレーパ72を軸直角方向の外側に拡大する。シリンダブロックA(バリ取り対象物)の孔Ahの内周面に発生したバリBrにスクレーパ72を当てることができる。可動手段20により、軸方向にバリ取り工具40(スクレーパ72)を移動させて、バリBrを除去できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリ取り対象物の孔のバリを除去するバリ取り装置であって、
軸線に沿って軸方向に移動可能な可動手段と、
前記可動手段に接続されて前記軸線の周囲に配置されるスクレーパと、
前記軸線に直交する軸直角方向の外側に前記スクレーパを拡大させた状態、及び、前記軸直角方向の内側へ前記スクレーパを縮小させた状態を切り換える拡縮手段と、を備えることを特徴とするバリ取り装置。
【請求項2】
前記可動手段が移動する前記軸方向が鉛直方向に設定され、
前記可動手段に接続されて前記スクレーパよりも前記軸方向の下側に位置する受けを備え、
前記スクレーパは、少なくとも前記拡縮手段によって拡大した状態で、前記スクレーパよりも上側の空間と前記スクレーパよりも下側の空間とを連通させる隙間を形成することを特徴とする請求項1記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記可動手段に接続される受けを備え、
前記受けは、複数の毛材を備えて複数の前記毛材が前記軸直角方向の外側に広がるブラシであり、
前記軸方向視において、前記拡縮手段によって拡大された前記スクレーパの前記軸直角方向の外縁と前記ブラシの前記軸直角方向の外縁とが同じ位置にあることを特徴とする請求項1記載のバリ取り装置。
【請求項4】
前記受けは、複数の毛材を備えて複数の前記毛材が前記軸直角方向の外側に広がるブラシであり、
前記軸方向視において、前記拡縮手段によって拡大された前記スクレーパの前記軸直角方向の外縁と前記ブラシの前記軸直角方向の外縁とが同じ位置にあることを特徴とする請求項2記載のバリ取り装置。
【請求項5】
前記拡縮手段は、前記スクレーパの前記軸直角方向の内側に配置され、前記軸方向の一方から他方に向かうにつれ外周面が前記軸直角方向の外側へ広がるテーパ部と、
前記スクレーパに対して前記軸方向へ前記テーパ部を移動させる移動部と、を備え、
前記スクレーパは、前記移動部によって前記軸方向の他方から一方へ移動させた前記テーパ部に前記スクレーパの内側が乗り上げることにより拡大し、前記スクレーパの内側の前記テーパ部への乗り上げが解除されることにより縮小することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバリ取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ取り装置に関し、特に、バリ取り対象物の孔の内周面のバリを除去するバリ取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バリ取り対象物(例えば、鋳造品)の孔の内周面にバリが生じることがある。従来は作業員がハンドツールを用いた手作業でバリの除去を行っていた。この場合、バリの除去に工数がかかるという問題や、作業員がバリで傷付くなどの安全面での問題があった。その問題を解決するため、特許文献1記載のバリ取り装置は、回転するブラシと、そのブラシの回転軸方向にスライド可能なテーブルとを備える。このバリ取り装置は、バリ取り対象物を載置固定したテーブルをスライドさせながら、回転するブラシをバリ取り対象物の孔の内周面に当てて自動でバリを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第214237478号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術では、回転するブラシをバリに当てて除去するので、回転するブラシを強く当てた場合、ブラシにより孔の内周面が傷付く虞がある。反対に、孔の内周面に傷を付けないように、回転するブラシを弱く当てた場合、バリを除去し難いという問題点があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、バリ取り対象物の孔の内周面に傷を付け難くでき、バリ取り対象物の孔の内周面のバリを除去し易くできるバリ取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のバリ取り装置は、バリ取り対象物の孔のバリを除去するものであって、軸線に沿って軸方向に移動可能な可動手段と、前記可動手段に接続されて前記軸線の周囲に配置されるスクレーパと、前記軸線に直交する軸直角方向の外側に前記スクレーパを拡大させた状態、及び、前記軸直角方向の内側へ前記スクレーパを縮小させた状態を切り換える拡縮手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のバリ取り装置によれば、以下の効果を奏する。スクレーパは、拡縮手段により軸直角方向の内側への縮小状態から軸直角方向の外側に拡大されるので、バリ取り対象物の孔の内周面に沿わせるように拡大させたスクレーパを、孔のバリに当てることができる。この状態のまま可動手段によりスクレーパを軸方向に移動させることで、スクレーパによってバリをこそげ取ることができる。よって、バリ取り対象物の孔の内周面のバリを除去し易くできる。
【0008】
スクレーパは、孔の内周面に沿わせてバリを除去するので、バリ取り対象物のバリを除去する際に孔の内周面にスクレーパを当たり難くできる。仮に当たったとしても、回転するブラシと比較して、スクレーパを孔の内周面に強く当てる必要がない。よって、バリ取り対象物の孔の内周面を傷付け難くできる。
【0009】
請求項2記載のバリ取り装置によれば、請求項1記載のバリ取り装置の奏する効果に加え、以下の効果を奏する。可動手段が移動する軸方向が鉛直方向に設定される。スクレーパが軸直角方向の外側に拡大した状態で、スクレーパよりも上側の空間とスクレーパよりも下側の空間とを連通させる隙間が形成される。この隙間を通って、スクレーパによって除去された除去バリがスクレーパの鉛直方向下側に落下する。可動手段に接続された受けが、スクレーパよりも軸方向(鉛直方向)の下側に位置するので、落下した除去バリを受けにより回収でき、除去バリを孔に残し難くできる。その結果、バリ取り後の工程において、孔に残った除去バリによって孔の内周面が傷付くことを抑制できる。
【0010】
請求項3記載のバリ取り装置によれば、請求項1記載のバリ取り装置の奏する効果に加え、以下の効果を奏する。バリ取り装置は、可動手段に接続される受けを備える。受けは、複数の毛材を備えて複数の毛材が軸直角方向の外側に広がるブラシである。軸方向視において、拡縮手段によって拡大されたスクレーパの軸直角方向の外縁とブラシの軸直角方向の外縁とが同じ位置にある。そのため、例えば、可動手段でブラシを移動させることにより、バリをブラシでも除去できる。よって、バリ取り対象物の孔の内周面のバリをさらに除去し易くできる。
【0011】
請求項4記載のバリ取り装置によれば、請求項2記載のバリ取り装置の奏する効果に加え、以下の効果を奏する。受けは、複数の毛材を備えて複数の毛材が軸直角方向の外側に広がるブラシである。軸方向視において、拡縮手段によって拡大されたスクレーパの軸直角方向の外縁とブラシの軸直角方向の外縁とが同じ位置にある。そのため、例えば、可動手段でブラシを移動させることにより、バリをブラシでも除去できる。よって、バリ取り対象物の孔の内周面のバリをさらに除去し易くできる。
【0012】
請求項5記載のバリ取り装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載のバリ取り装置の奏する効果に加え、以下の効果を奏する。拡縮手段は、スクレーパの軸直角方向の内側に配置され、軸方向の一方から他方に向かうにつれ外周面が軸直角方向の外側へ広がるテーパ部と、スクレーパに対して軸方向へテーパ部を移動させる移動部とを備える。スクレーパは、移動部によって軸方向の他方から一方へ移動させたテーパ部にスクレーパの内側が乗り上げることにより拡大し、その乗り上げが解除されることにより縮小する。そのため、例えば、テーパ部にスクレーパの内側が乗り上げる程度によって、スクレーパが拡大する大きさを調整できる。よって、孔の大きさが異なる複数のバリ取り対象物があったとしても、それぞれのバリ取り対象物の孔の大きさにスクレーパの大きさを対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態におけるバリ取り装置の模式的な正面図である。
【
図3】(a)は
図2のIIIa-IIIa線におけるバリ取りユニットの模式的な部分断面図であり、(b)は可動手段の下側停止位置におけるバリ取りユニットの模式的な部分断面図である。
【
図4】(a)はスクレーパが拡大された状態におけるバリ取りユニットの模式的な部分断面図であり、(b)は可動手段の上側停止位置におけるバリ取りユニットの模式的な部分断面図である。
【
図5】(a)は
図3(b)のVa-Va線におけるバリ取りユニットの断面図であり、(b)は
図4(a)のVb-Vb線におけるバリ取りユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態におけるバリ取り装置10の模式的な正面図である。なお、
図1では、バリ取り装置10の左側の図示が省略されている。図中の矢印F-B、矢印U-D及び矢印L-Rは、バリ取り装置10の前後方向、上下方向および左右方向をそれぞれ示す。
【0015】
バリ取り装置10は、本実施形態でのバリ取り対象物であるシリンダブロックAの孔Ahの内周面に発生したバリBrを除去するためのものである(
図4(a)参照)。バリ取り装置10は、スクレーパ72(
図4(a)参照)によって、シリンダブロックAの孔Ahの内周面のバリBrをこそげ取ることで、孔Ahの内周面に傷を付け難くできる。これに加え、シリンダブロックAの孔Ahの内周面のバリBrを除去し易くできる。
【0016】
図1に示すように、バリ取り装置10は、搬送手段11と、テーブル12と、フレーム13と、可動手段20と、バリ取りユニット30とを備える。搬送手段11は、シリンダブロックAをバリ取り位置まで搬送する。テーブル12は、シリンダブロックAが載置され、シリンダブロックAの位置を固定する。フレーム13は、テーブル12の上方に立設される。可動手段20は、フレーム13に接続され上下方向に移動する。バリ取りユニット30は、可動手段20に接続され、シリンダブロックAの孔Ahの内周面のバリBrを除去する。
【0017】
搬送手段11は、搬送方向を左右方向に向けて延びるコンベア11aと、コンベア11aの搬送方向の先端に接続される台11bとを備える。シリンダブロックAは、鋳造工程で鋳造された後、コンベア11aで台11bまで搬送される。その後、シリンダブロックAは、台11bから作業員の手により、又は、ロボットによりバリ取り装置10のテーブル12に載置される。
【0018】
テーブル12は、上面にシリンダブロックAが載置される平面視矩形の載置面12aを備える。載置面12aには、シリンダブロックAの上下方向、左右方向および前後方向への移動を規制するようにシリンダブロックAを固定する位置決め機構(図示しない)を備える。位置決め機構によりシリンダブロックAの孔Ahの各中心軸と、バリ取りユニット30のバリ取り工具40の各軸線O(
図2参照)とを一致させる。軸線Oは、バリ取り工具40の中心を通る線である。軸線Oが延びる軸方向は、本実施形態では、バリ取り装置10の上下方向(矢印U-D方向)に沿う方向であって、鉛直方向に設定される。
【0019】
フレーム13は、載置面12aの四隅から上方に立設する複数の柱と、その複数の柱を上端で接続する複数の梁とを備える。柱および梁により囲まれた内側の領域によってシリンダブロックAのバリBrを除去する領域が形成される。
【0020】
可動手段20は、基部21と、複数のロッド22と、プレート23とを備える。本実施形態では、可動手段20はエアシリンダである。基部21は、フレーム13に固定される。複数のロッド22は、基部21から軸方向の下側に延び、基部21に対して軸方向への移動が可能に構成される。プレート23は、基部21が接続される側の端面とは反対側のロッド22の端面に接続され、且つ、バリ取りユニット30に接続される。プレート23は、ロッド22に接続されるので、基部21に対してロッド22が軸方向に移動することにより、プレート23も軸方向に移動する。
【0021】
次に、
図2及び
図3(a)を参照して、バリ取りユニット30について説明する。
図2はバリ取りユニット30の正面図である。なお、
図2では、可動手段20のプレート23よりも上側の部分の図示が省略されている。
図3(a)は
図2のIIIa-IIIa線におけるバリ取りユニット30の模式的な部分断面図であり、バリ取りユニット30をシリンダブロックAの孔Ah(シリンダボア)に挿入する前の状態が示されている。
図3(a)では、シリンダブロックAのオイル孔hが
図2のX-X線における第1パンチ工具50a(後述する)に対応する部分の断面図として示されている(
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)において同じ)。また、
図3(a)では、シリンダブロックAは、シリンダボアの周辺以外およびオイル孔hの周辺以外の部分が省略されて図示されている(
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)において同じ)。
【0022】
バリ取りユニット30は、複数(本実施形態では4つ)のバリ取り工具40と、複数(本実施形態では6つ)のパンチ工具50とを備え、バリ取り工具40及びパンチ工具50が可動手段20のプレート23に接続される。可動手段20のプレート23が移動することにより、バリ取りユニット30も軸方向に移動する。
【0023】
複数のバリ取り工具40は、前後方向の同じ位置に配置され、左右方向に互いに一定の距離だけ離隔してプレート23に配設される。なお、バリ取り工具40がプレート23に配設される位置および数量は、シリンダブロックAの孔Ahの位置および数量に対応するように設定される。プレート23に配設される複数のバリ取り工具40は、同じものである。
【0024】
バリ取り工具40は、介設部材60と、複数(本実施形態では6つ)の揺動部材70と、拡縮手段80と、ブラシ90とを備える。介設部材60は、プレート23の下側に接続され、軸方向に延びる円筒状の部材である。揺動部材70は、介設部材60の軸線Oに直交する軸直角方向の外側に配設され、介設部材60に対して揺動可能に軸を介して支持される部材である。拡縮手段80は、揺動部材70のスクレーパ72を軸直角方向の外側に拡大させる、又は、スクレーパ72を軸直角方向の内側に縮小させる。ブラシ90は、拡縮手段80の下側に接続される。
【0025】
介設部材60は、軸方向の上側の外周面に配置されるばね61を備える。ばね61は、伸縮する方向を軸直角方向の外側に向けて介設部材60に配置される。介設部材60の軸方向の下側の外周面には、支持部62が形成される。ばね61及び支持部62の数量および位置は、揺動部材70の数量および位置に対応している。ばね61は、揺動部材70の軸方向の一端側と介設部材60の外周面とに挟まれ、揺動部材70の一端を軸直角方向の外側に向けて付勢する。ばね61の内側には、軸直角方向以外へのばね61の変形および移動を規制する芯材が配設される。支持部62は、軸を介して軸直角方向に揺動可能に揺動部材70を支持する。
【0026】
揺動部材70は、介設部材60に接続される揺動部71と、揺動部71に接続され平面視扇状のスクレーパ72とを備える。揺動部71の軸方向の上側の部分には、ばね61を介して介設部材60が接続される。揺動部71は、スクレーパ72が接続される部分と、ばね61が配置される部分との間が、介設部材60の支持部62に軸を介して支持される。揺動部71は、ばね61が配置される部分より下側が軸直角方向の内側に向かって屈曲している。スクレーパ72は、軸線Oの周囲に配置され、ねじによって揺動部71の軸方向の下側に固定される。よって、スクレーパ72が損耗した場合に、容易に交換することができる。スクレーパ72の弧状の外縁72aは、軸直角方向の外側を向く。スクレーパ72の上面72bは、介設部材60の下面よりも軸方向の下側に位置する。
【0027】
本実施形態では、スクレーパ72は、金属材料から構成される。スクレーパ72の材料は、そのほかにも、アルミニウム合金、マグネシウム合金などのシリンダブロックAに採用される材料よりも硬い材料から構成されても良い。この場合、シリンダブロックAの孔Ahの内周面とスクレーパ72との間にバリBrを挟み込んだとしても、スクレーパ72に傷を付け難い。よって、スクレーパ72の耐久性を向上できる。
【0028】
拡縮手段80は、介設部材60の内側に挿入され、軸方向への移動が可能に構成されるロッド81と、そのロッド81を軸方向へ移動させる移動部82と、移動部82をプレート23に固定する枠83とを備える。枠83は、複数のバリ取り工具40に共通して複数の移動部82をプレート23に固定する。ロッド81は、スクレーパ72よりも軸直角方向の内側に位置する。ロッド81は、移動部82に対して軸線Oを中心とした回転方向の移動ができないように移動部82に固定される。
【0029】
ロッド81は、上側軸部81aと、円柱部81bと、テーパ部81cと、下側軸部81dとを備える。上側軸部81aは、介設部材60の内側に挿入される部分であって、プレート23を軸方向に貫通し、移動部82に接続される部分である。円柱部81bは、上側軸部81aの軸方向の下側に形成され、上側軸部81a及び下側軸部81dよりも軸直角方向の外形が大きい円柱状の部分である。テーパ部81cは、円柱部81bの軸方向の下側に形成され、軸方向の下側から上側に向かうにつれ外周面が軸直角方向の外側へ広がる部分である。下側軸部81dは、テーパ部81cの軸方向の下側に形成され、下側にブラシ90が接続される部分である。
【0030】
ブラシ90は、拡縮手段80のロッド81(下側軸部81d)の下側先端にねじにより交換可能に固定される。ブラシ90は、ロッド81に固定される軸部と、その軸部に配置される複数の樹脂製の毛材とを有する。ブラシ90は、軸部に複数の樹脂製の毛材が配置される配置領域を周方向の全周とする平面視円形の部材である。ブラシ90は、そのほかにも金属製の毛材が採用され得る。ブラシ90は、スクレーパ72よりも軸方向の下側に位置する。ブラシ90の複数の毛材は、軸直角方向の外側に広がる。
【0031】
パンチ工具50は、スクレーパ72によりバリBrが除去される孔Ah以外のシリンダブロックAの孔のバリを除去する工具である。例えば、シリンダブロックAの鋳造時の型合わせによってオイル孔hに発生するバリBhを除去するものである。オイル孔hは、孔Ahの周囲のシリンダブロックAに形成され、軸方向に貫通している。オイル孔hに発生するバリBhは、オイル孔hの内周面からオイル孔hの中心に向かって張り出している。
【0032】
パンチ工具50は、プレート23の下面のうちの隣り合うバリ取り工具40の左右方向(矢印L-R方向)の間に配設され、且つ、バリ取り工具40の前後方向(矢印F-B方向)の両側に対向するように配設される。本実施形態では、バリ取りユニット30の左右方向の左側から右側に向かって順に第1パンチ工具50a、第2パンチ工具50b、第3パンチ工具50cが配設され、第1パンチ工具50a、第2パンチ工具50b、第3パンチ工具50cの前後方向にそれぞれ対向する第4パンチ工具、第5パンチ工具、第6パンチ工具(いずれも図示しない)が配設される。なお、パンチ工具50がプレート23に配設される位置、形状および数量は、シリンダブロックAのオイル孔hの位置、形状および数量に対応するように設定される。
【0033】
揺動部材70(スクレーパ72)は、介設部材60を介して可動手段20のプレート23に接続される。ブラシ90及びロッド81(テーパ部81c)は、移動部82及び枠83を介して可動手段20のプレート23に接続される。
【0034】
介設部材60及び拡縮手段80がプレート23に固定されるので、バリ取り工具40(スクレーパ72,ブラシ90)は、シリンダブロックAの孔Ahの内周面に対する周方向の位置が変わらないように設定される。
【0035】
図3(a)から
図4(b)を参照して、バリ取り装置10のバリ取り動作について説明する。
図3(b)は可動手段20の下側停止位置におけるバリ取りユニット30の模式的な部分断面図である。
【0036】
図4(a)はスクレーパ72が拡大された状態におけるバリ取りユニット30の模式的な部分断面図であり、
図4(b)は可動手段20の上側停止位置におけるバリ取りユニット30の模式的な部分断面図である。なお、
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)は、
図3(a)と同様に
図2のIIIa-IIIa線で切断した断面により図示されている。
【0037】
シリンダブロックAは、アルミニウム合金製の鋳造品である。シリンダブロックAには、孔Ahの内周面の一部を形成する鉄製のライナA1が鋳込まれている。シリンダブロックAは、ライナA1の内側にボアピンを挿入した状態で鋳造される。鋳造時、ボアピンとライナA1との隙間にアルミニウム合金の原料が侵入し、その部分がバリBrとなる。従って、孔Ahの上側部分の内周面には、下側に向かってバリBrが形成され、孔Ahの下側部分の内周面には、上側に向かってバリBrが形成される。孔Ahの軸方向の中央部分の内周面には、孔Ahの上側部分および下側部分に比べてバリBrが少なく、又は、薄く形成され易い。鉄製のライナA1のほうがアルミニウム合金製のシリンダブロックAよりも融点が高いので、鉄製のライナA1にはアルミニウム合金からなるバリBrが固着し難い。
【0038】
図3(a)に示すように、バリ取り工具40の各軸線Oは、シリンダブロックAの孔Ahの各中心軸と一致する。バリ取り工具40が孔Ahに挿入される前の状態では、スクレーパ72の内側が下側軸部81dの外周面に接している。このとき、スクレーパ72の外縁72aは、孔Ahの内周面より軸直角方向の内側に位置する。さらに、ブラシ90の外縁92の軸直角方向の位置は、孔Ahの内周面と同じ位置になる。なお、孔Ahの内周面とは、孔Ahの入口(軸方向の上部)側の内径が小さくなっている部分(以下、入口部と称す)を除いた部分である。ここで、ブラシ90の外縁92の軸直角方向の位置と孔Ahの内周面とが同じ位置とは、ブラシ90の外縁92の位置が孔Ahの内周面の位置から軸直角方向の外側に偏る距離が孔Ahの内周面の直径の5%以内であると定義される。
【0039】
図3(b)に示すように、
図3(a)の状態から、可動手段20によりプレート23を軸方向の下側停止位置まで移動させて、バリ取りユニット30を軸方向の下側に移動させる。このとき、孔Ahの入口部からバリ取り工具40が挿入される。可動手段20の軸方向の下側停止位置では、スクレーパ72が軸直角方向の内側に縮小した状態(
図3(b)参照)において、スクレーパ72の外縁72aがライナA1の軸方向の中央部分に位置する。また、ブラシ90はライナA1内に位置する。
【0040】
ブラシ90の外縁92の軸直角方向の位置と孔Ahの内周面とが同じ位置にあるため、ブラシ90の外縁92をバリBrに当てることができる。孔Ahの入口部からバリ取り工具40が挿入されると、ブラシ90の外縁92がライナA1の中央部分を通過するので、ライナA1の中央部分の内周面の薄いバリBrをブラシ90によって除去できる。このとき、ブラシ90によって除去されたライナA1(孔Ah)の中央部分のバリBrである除去バリBeが孔Ahよりも下側に落下する。
【0041】
揺動部71は、ばね61が配置される部分よりも下側が軸直角方向の内側に向かって屈曲している。さらに、孔Ahの入口部からバリ取り工具40が挿入された状態で、軸直角方向の内側に向かって屈曲している部分が孔Ahの入口部よりも上側に位置する。よって、孔Ahの入口部からバリ取り工具40を挿入しても、孔Ahの入口部に揺動部71が当たり難い。
【0042】
バリ取り工具40がシリンダブロックAの孔Ahに挿入されるときに、第1パンチ工具50aは、シリンダブロックAの対応するオイル孔hに挿入される。これにより、第1パンチ工具50aは、オイル孔hの内側に張り出したバリBhを軸方向の上側から下側に向かって貫き除去する。
【0043】
次に、
図4(a)に示すように、プレート23が下側停止位置まで移動した状態で、移動部82によりロッド81をスクレーパ72に対して軸方向の下側に移動させる。この移動中に、下側軸部81dの外周面に接していたスクレーパ72の内側がテーパ部81cの外周面に乗り上げることで、スクレーパ72が軸直角方向の外側に拡大する。
【0044】
さらに、ブラシ90の外縁92がライナA1の軸方向の下端まで移動する。これにより、ライナA1の軸方向の下側の内周面のバリBrが除去される。ライナA1の軸方向の下側の内周面のバリBrは下側から上側に向かって形成されるので、上側から下側に向かって移動するブラシ90によって除去し易い。ブラシ90によって除去された孔Ahの下側のバリBrである除去バリBeが孔Ahよりも下側に落下する。
【0045】
スクレーパ72の内側は、ロッド81のテーパ部81cに乗り上げた後、さらに下側停止位置で円柱部81bに乗り上げる。
【0046】
ここで、バリ取り時には、その抵抗によって、スクレーパ72を軸直角方向の内側に戻す力が作用する。テーパ部81cに乗り上げた状態でバリ取りを行うと、スクレーパ72を軸直角方向の内側に戻す力がテーパ部81cに作用することによって、ロッド81には軸方向の上側へ向く分力が発生する。バリ取り時の抵抗が大きい場合、この分力によりロッド81が軸方向の上側に移動し、テーパ部81cへのスクレーパ72の内側の乗り上げが解除される虞がある。
【0047】
これに対して、円柱部81bにスクレーパ72の内側が乗り上げた状態では、スクレーパ72を軸直角方向の内側に戻す力が作用したとしても、ロッド81に対する軸方向の分力が発生し難い。よって、円柱部81bにスクレーパ72が乗り上げた状態では、バリ取り時の抵抗などによりスクレーパ72が軸直角方向の内側に縮小することを抑制できる。
【0048】
軸直角方向の外側に拡大したスクレーパ72の外縁72aは、ライナA1の内周面に沿って、ライナA1の内周面のバリBrに当たる。
【0049】
その後、
図4(b)に示すように、可動手段20によりプレート23を上側停止位置まで移動させる。スクレーパ72を含むバリ取りユニット30は、軸直角方向の外側に拡大したスクレーパ72の外縁72aがバリBrに当たったまま、可動手段20により軸方向の上側に移動する。これにより、ブラシ90で除去できなかったバリBrをスクレーパ72でこそげ取り、孔Ah(ライナA1)の内周面からバリBrを除去することができる。
【0050】
図5(a)及び
図5(b)を参照して、スクレーパ72の縮小状態と、拡大状態とにおけるスクレーパ72、ロッド81及びブラシ90との関係について説明する。
図5(a)は
図3(b)のVa-Va線におけるバリ取りユニット30の断面図であり、
図5(b)は
図4(a)のVb-Vb線におけるバリ取りユニット30の断面図である。ここで、スクレーパ72の縮小状態(
図5(a)参照)とは、スクレーパ72の内側がロッド81の下側軸部81dの外周面に接している状態である。スクレーパ72の拡大状態(
図5(b)参照)とは、スクレーパ72の内側がロッド81の円柱部81bに乗り上げている状態である。
【0051】
スクレーパ72の縮小状態では、軸方向視において隣り合うスクレーパ72の間の隙間72cは小さい。また、スクレーパ72の外縁72aは、ブラシ90の外縁92よりも軸直角方向の内側に位置する。隙間72cは、スクレーパ72よりも上側の空間と、スクレーパ72よりも下側の空間とを連通する。
【0052】
反対に、スクレーパ72の拡大状態では、隣り合うスクレーパ72の間の隙間72cが縮小状態よりも大きくなる。その状態で、バリ取りユニット30が軸方向の上側に移動すると、スクレーパ72によって除去されたバリBrである除去バリBeが、隙間72cを通って軸方向の下側のブラシ90の上面91に落下する。特に、ブラシ90は最下端の位置にあってもブラシ90の上面91が孔Ah内にあるので、孔Ahから除去バリBeを落下させ難い。よって、除去バリBeをブラシ90の上面91で回収することができる(
図4(b)参照)。除去バリBeを孔Ahに残し難くできるので、バリ取り後の工程において、孔Ahに残った除去バリBeによる孔Ahの内周面の傷付けを抑制できる。
【0053】
回収された除去バリBeは、可動手段20の上側停止位置において、次のシリンダブロックAが搬送されるまでに、バリ取り装置10に設けられたエアブロー(図示しない)により吹き飛ばされる。よって、次にバリ取りされるシリンダブロックAの孔Ahの内周面とスクレーパ72との間に除去バリBeが挟まれることに起因してその孔Ahの内周面が傷付くことを抑制できる。
【0054】
スクレーパ72の拡大状態において、スクレーパ72の外縁72aには周方向に隙間72cが形成され、バリBrと直接当たらない部分が生じる。しかし、バリBrは十分に剛性があり、且つ、周方向につながっているので、隙間72c部分に位置するバリBrも、スクレーパ72に当たって除去されるバリBrと一緒に除去される。
【0055】
スクレーパ72の拡大状態では、スクレーパ72の外縁72aは、ブラシ90の外縁92と軸方向視で同じ位置になる。さらに、ブラシ90は、スクレーパ72よりも軸方向の下側に位置するので、バリ取りユニット30を軸方向の上側に移動させれば、スクレーパ72によって除去しきれなかったバリBrをブラシ90により除去することができる。ここで、スクレーパ72の外縁72aとブラシ90の外縁92とが軸方向視で同じ位置とは、スクレーパ72の外縁72aの位置が軸直角方向の内側に偏る距離がブラシ90の直径の5%以内であると定義される。ただし、この場合、拡大状態におけるスクレーパ72の外縁72aは、孔Ahの内周面よりも軸直角方向の外側に位置しないように設定される。
【0056】
図4(b)に戻って説明する。バリ取り動作が完了した後、ロッド81は、移動部82によって、スクレーパ72に対し軸方向の上側に移動する。スクレーパ72の内側は、円柱部81bからテーパ部81cを通り、下側軸部81dに接するように、円柱部81b及びテーパ部81cへの乗り上げが解除される。これにより、スクレーパ72は、軸直角方向の内側に縮小する。このとき、ばね61が軸直角方向の外側へ揺動部71の上側を付勢するので、支持部62を中心にして揺動部71の下側(スクレーパ72側)を軸直角方向の内側に移動させ易くする。このとき、バリ取りユニット30は、
図3(a)に図示された状態に戻る。
【0057】
スクレーパ72が挿入されるシリンダブロックAの孔Ahの入口部の内周は、孔Ah(ライナA1)の内周よりも小径になっている。バリ取り工具40を孔Ahに挿入し、その後、ライナA1の内周と同じ大きさに拡大させたスクレーパ72を可動手段20により軸方向の上側に移動させて引き抜くと、孔Ahの入口部にスクレーパ72の外縁72aが当たって傷を付けることがある。しかし、入口部は、この後の工程で面取り加工され除去されるので完成品としては、傷が残らない。
【0058】
スクレーパ72は、拡縮手段80により軸直角方向の内側に縮小されるので、シリンダブロックAの孔Ahの内径よりも孔Ahの入口部が小径である場合であっても、スクレーパ72を入口部に干渉させずにバリ取り工具40を孔Ahに挿入することができる。これにより、バリ取り工具40の挿入時に入口部に干渉してその部分が脱落することを抑制できる。そのため、孔Ahの内周面とスクレーパ72の外縁72aとの間に挟まれる異物を生じ難くできる。よって、異物を挟むことによる孔Ahの内周面の傷付けを抑制できる。
【0059】
本実施形態では、バリ取りユニット30は、ブラシ90が回転しないので、スピンドルを不要にでき、部品点数を減らすことができる。よって、バリ取りユニット30のメンテナンスをし易くできる。また、シリンダブロックAの孔Ahの内周面にブラシ90が回転することによる衝突力が加わらない。よって、ブラシ90を孔Ahの内周面に沿って軽く当てながら引き抜いても、シリンダブロックAの孔Ahの内周面に傷を付け難くできる。
【0060】
本実施形態では、スクレーパ72でバリBrをこそげ取ることができるので、スクレーパ72の外縁72aをシリンダブロックAの孔Ahの内周面に強く当てなくても、バリBrを除去し易い。たとえ、バリBrが厚肉であっても除去し易い。スクレーパ72の外縁72aを孔Ahの内周面に強く当てる必要がないので、シリンダブロックAの孔Ahの内周面に傷を付け難くできる。
【0061】
本実施形態では、シリンダブロックAの孔Ahの内周面にブラシ90が当たっても、ブラシ90は複数の毛材を有するので、孔Ahの内周面に対してブラシ90が変形し易い。よって、シリンダブロックAの孔Ahの内周面をブラシ90で傷付け難くできる。
【0062】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0063】
本実施形態では、シリンダブロックAの孔Ahの断面が円形である場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。シリンダブロックAの孔Ahの断面が矩形や楕円形であっても良い。この場合、スクレーパ72が拡大したときの外縁72aの形状と、ブラシ90の外縁92の形状とを孔Ahの断面形状に対応させる。
【0064】
本実施形態では、シリンダブロックAの孔Ahが上下方向の上側に開口する場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。孔Ahは、左右方向の左側または右側に開口するものであっても良い。また、孔Ahは、下側に開口するものであっても良い。この場合、開口する部分からバリ取り工具40が挿入されるように、バリ取りユニット30が移動される。
【0065】
本実施形態では、シリンダブロックAはライナA1を鋳込んだものである場合について説明したが、ライナA1は省略しても良い。
【0066】
本実施形態では、バリ取り対象物がシリンダブロックAである場合について説明したが、バリ取り対象物は、シリンダブロックA以外のものであっても良い。
【0067】
本実施形態では、可動手段20は、バリ取りユニット30側を移動させるものを説明したが、必ずしもこれに限られない。可動手段20は、シリンダブロックA側を移動させるものであっても良い。この場合、テーブル12がバリ取りユニット30に対して軸方向に移動する。バリ取りユニット30側に可動手段20を設けなくても良いので、バリ取りユニット30側の構造を簡略化できる。
【0068】
本実施形態では、ばね61によってスクレーパ72を縮小する方向に付勢する場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。ばね61に代えて、ゴムなどの弾性体によってスクレーパ72を縮小する方向に付勢するものであっても良い。
【0069】
本実施形態では、1つのバリ取り工具40に配設されるスクレーパ72の数量が6つである場合(
図5(a)参照)について説明したが、必ずしもこれに限られない。1つのバリ取り工具40に配設されるスクレーパ72の数量は、1つであっても、6つ以外の複数であっても良い。
【0070】
本実施形態では、テーパ部81cが軸方向の下側から上側に向かうにつれて外周面が軸直角方向の外側へ広がる場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。テーパ部が軸方向の上側から下側に向かうにつれて外周面が軸直角方向の外側に広がるものであっても良い。この場合、ロッド81が上昇するとスクレーパ72がテーパ部に乗り上げて軸直角方向の外側に拡大するように、縮小状態のスクレーパ72は、テーパ部の上側に位置する。
【0071】
本実施形態では、拡縮手段80がロッド81と移動部82とを備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。拡縮手段は、ロッド81と移動部82とに代えて、各スクレーパ72の内側に接続され、各スクレーパ72を軸直角方向の外側および内側に移動させるアクチュエータ(例えばエアシリンダ)を備えるものであっても良い。この場合、アクチュエータは軸直角方向に伸縮する。
【0072】
本実施形態では、スクレーパ72の下側にブラシ90が配置される場合について説明したが、ブラシ90は省略しても良い。また、ブラシ90に代えて、金属製や樹脂製の受けが配置されても良い。受けがシリンダブロックAの孔Ahの内周面に対して比較的硬い場合、受けの外縁は孔Ahの内周面に当たらない位置に設定される。反対に、受けがゴムや軟質の樹脂などからなり、孔Ahの内周面に対して比較的柔らかい場合、受けの外縁は、孔Ahの内周面に当てても良い。
【0073】
本実施形態では、ブラシ90の複数の毛材の配置領域が周方向の全周である場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。ブラシ90の複数の毛材、又は、上述した金属製や樹脂製の受けの配置領域は、周方向の一部であっても良い。例えば、ブラシ90又は上述した金属製や樹脂製の受けは、軸線Oを円弧の中心とする1つ又は複数の平面視扇状、又は、軸線Oを中心として径方向外側に放射状に延びる1つ又は複数の軸状または板状とされる。また、ブラシ90又は上述した金属製や樹脂製の受けは、配置領域内に軸方向に貫通する部分を含む形状(例えば、網状)であっても良い。これらの場合であっても、スクレーパ72で除去した除去バリBeをブラシ90又は上述した金属製や樹脂製の受けに引っかけたり、接触させたりして、回収することができる。除去バリBeを孔Ahに残し難くできるので、バリ取り後の工程において、孔Ahに残った除去バリBeによる孔Ahの内周面の傷付けを抑制できる。
【0074】
本実施形態では、ブラシ90の複数の毛材が軸直角方向の外側に広がる場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。ブラシ90の複数の毛材は、ブラシ90の毛材が植えられる軸部分から広がるものであれば、ブラシ90の複数の毛材が軸方向に螺旋状にねじれながら外側に広がるものであっても良い。また、複数の毛材の向く方向が一定の方向に決まっておらず、複数の毛材が互いに絡み合っているものであっても良い。
【0075】
本実施形態では、スクレーパ72は、拡大状態において、軸方向視で周方向に隙間72cを形成するものを説明したが必ずしもこれに限られない。スクレーパ72は、拡大状態においても、軸方向視で周方向に隙間を形成しないものであっても良い。例えば、スクレーパは、軸方向に互いに違いに配置され、軸方向に重なりながら軸直角方向の外側に拡大する。この場合、シリンダブロックAの孔Ahの内周面の全周に亘ってバリBrを除去し易くできる。
【0076】
本実施形態では、ロッド81にテーパ部81c及び円柱部81bが1か所形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。複数のテーパ部と円柱部とが形成されるものであっても良い。例えば、ロッド81には、第1テーパ部と、第1円柱部と、第2テーパ部と、第2円柱部とが形成される。第1テーパ部は、下側軸部81dの軸方向の上側に形成され、下側から上側に向かうにつれ外周面が軸直角方向の外側に広がる。第1円柱部は、第1テーパ部の軸方向の上側に形成される円柱状の部分である。第2テーパ部は、第1円柱部の軸方向の上側に形成され、第1円柱部から上側に向かうにつれ外周面が軸直角方向の外側に広がる。第2円柱部は、第2テーパ部の軸方向の上側に形成される円柱状の部分である。この場合、シリンダブロックAの孔Ahの内周の大きさに合わせて、スクレーパ72の内側を第1円柱部、第2円柱部のどちらかに乗り上げさせることができる。よって、大きさの異なる孔を有する複数のシリンダブロックAのそれぞれに、スクレーパ72が軸直角方向の外側に拡大する量を対応させることができる。
【0077】
本実施形態では、ロッド81が、移動部82により軸方向に移動する場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。ロッド81は、プレート23及び介設部材60に固定され、スクレーパ72が軸方向に移動するものであっても良い。
【0078】
本実施形態では、ロッド81にテーパ部81cが形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。ロッド81の外周面と対向するスクレーパの内側に、テーパ部を設けても良い。スクレーパの内側のテーパ部は、ロッド81が移動部82により軸方向に移動することにより、ロッド81の外周面がスクレーパの内側のテーパ部に当たる。スクレーパは、介設部材60に対して揺動可能に接続される揺動部71に接続されるので、ロッド81の外周面により軸直角方向の外側に拡大される。
【0079】
本実施形態では、バリ取り工具40(スクレーパ72)はシリンダブロックAに対して周方向の位置が変わらないように設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。周方向の位置を変えれても良い。この場合、スクレーパ72の周方向の位置を変えて、可動手段20により、バリ取りユニット30を複数回軸方向に往復させる。孔Ahの周方向においてスクレーパ72が当たらない部分を少なくできるので、孔Ahの内周面のバリBrをさらに除去し易くできる。
【0080】
本実施形態では、スクレーパ72は、孔Ahの中央から上側に上昇する場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。スクレーパ72を孔Ahの下端から上側に上昇させても良い。この場合、スクレーパ72によって孔Ahの下端から上端までのバリBrを除去できるので、ブラシ90によるバリBrの除去を不要にできる。
【符号の説明】
【0081】
10 バリ取り装置
20 可動手段
72 スクレーパ
72a 外縁
80 拡縮手段
81c テーパ部
82 移動部
90 ブラシ(受け)
92 外縁
A シリンダブロック(バリ取り対象物)
Ah 孔
Br バリ
O 軸線