IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-吸収性物品 図1
  • 特開-吸収性物品 図2
  • 特開-吸収性物品 図3
  • 特開-吸収性物品 図4
  • 特開-吸収性物品 図5
  • 特開-吸収性物品 図6
  • 特開-吸収性物品 図7
  • 特開-吸収性物品 図8
  • 特開-吸収性物品 図9
  • 特開-吸収性物品 図10
  • 特開-吸収性物品 図11
  • 特開-吸収性物品 図12
  • 特開-吸収性物品 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079552
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
A61F13/49 413
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120938
(22)【出願日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2022192050
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA05
3B200CA06
3B200CB03
3B200DA01
3B200DA21
3B200DC07
3B200DD07
(57)【要約】
【課題】吸収性物品を着用者の胴に当接させる弾性部材が着用者の肌に食い込むのを抑制する。
【解決手段】外表面を形成する外装体と、外装体の幅方向の端部同士が接合されることで形成される、着用者の腹囲を挿通可能な胴周り開口部と、着用者の脚を挿通可能な左右2つの脚周り開口部と、股下領域を含む外装体の肌面側に配置される、吸収コアと、吸収コアを包むコアラップシートと、を有し、排出液を吸収可能な吸収体と、外装体と接合するエンドシートと、外装体の幅方向に伸張状態で延在し、長手方向に所定の間隔を空けて平行に配置された複数の弾性部材と、を、備え、エンドシートと外装体は、幅方向に延在し、長手方向に所定の間隔を空けて平行に配置された複数の接合線で接合され、複数の接合線のうち、複数の弾性部材と重畳しているものよりも、複数の弾性部材と重畳していないもののほうが多い、吸収性物品。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用状態において着用者の腹側に位置する前身頃領域、股下部に位置する股下領域、及び背側に位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、
外表面を形成する外装体と、
前記外装体の前記幅方向の端部同士が接合されることで形成される、前記着用者の腹囲を挿通可能な胴周り開口部と、前記着用者の脚を挿通可能な左右2つの脚周り開口部と、
前記股下領域を含む前記外装体の肌面側に配置される、吸収コアと、前記吸収コアを包むコアラップシートと、を有し、排出液を吸収可能な吸収体と、
前記外装体と接合するエンドシートと、
前記外装体の前記幅方向に伸張状態で延在し、前記長手方向に所定の間隔を空けて平行に配置された複数の弾性部材と、
を、備え、
前記エンドシートと前記外装体は、前記幅方向に延在し、前記長手方向に所定の間隔を空けて平行に配置された複数の接合線によって接合され、前記複数の接合線のうち、前記複数の弾性部材と重畳しているものよりも、前記複数の弾性部材と重畳していないもののほうが多い、
吸収性物品。
【請求項2】
前記複数の接合線と、前記複数の弾性部材は、重畳していない、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記複数の弾性部材のうち最も股下側に配置されているものは、前記複数の接合線のうちの一本と重畳している、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記複数の弾性部材のうち、最も股下側のものは、前記吸収体と重畳している、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記複数の弾性部材のうち、最も股下側のものは、前記吸収コアと重畳している、
請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記エンドシートは、前記吸収体と重畳する範囲において、前記吸収体の前記肌面側に配置されており、
前記吸収体の前記長手方向の端部は、前記エンドシートと接合していない、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体の非肌面側であって前記外装体との間には、非透水性のバックシートが配置されており、
前記吸収コアの前記長手方向の長さは、前記バックシートの前記長手方向の長さよりも短く、前記吸収体の前記長手方向の端部における前記吸収コアが延在していない領域では、前記バックシートの長手方向端部に、端部シート部が形成されている。
請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記端部シート部に、前記肌面側と前記非肌面側を接合された前記コアラップシートが配置されている、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記端部シート部における少なくとも前記長手方向の端部側は、前記外装体と接合して
いない、
請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記端部シート部に形成される1または複数の襞は、前記長手方向の端部において、前記外装体に形成される複数の襞よりも、前記幅方向に幅広である、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
使用状態において、前記エンドシートは、30%~70%の割合で、前記複数の接合線から間欠的に剥離する、
請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記外装体は、少なくとも、
前記外装体の非肌面側に配置された第1のシートと、
前記外装体の肌面側に配置された第2のシートと、
を、有し、
前記胴周り開口部において、前記第1のシートと前記第2のシートは肌面側に屈曲して折り返し部を形成している、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記折り返し部において、前記第2のシートは、前記第2のシートと接着していない、
請求項12に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の一例として、着用者の非肌面側を覆う外装体と、前身頃領域から後身頃領域に渡って着用者の肌面側を覆う吸収体とを有するおむつが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-108336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
おむつには、胴周り方向に延在し、おむつを着用者の胴部に当接させる糸状弾性部材を配置することがある。糸状弾性部材は着用時のずれを抑制し、ずれに伴う排出液の漏れを抑制するため、着用者の胴部としっかりと当接する付勢力を発揮するように配置することが望ましい。その一方、糸状弾性部材の付勢力が強すぎると、着用者に違和感を与えたり、肌面にトラブルを発生させたりすることがある。
【0005】
本発明は、吸収性物品を着用者の胴に当接させる弾性部材が着用者の肌に食い込むのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
詳細には、本開示の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用状態において着用者の腹側に位置する前身頃領域、股下部に位置する股下領域、及び背側に位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、外表面を形成する外装体と、前記外装体の前記幅方向の端部同士が接合されることで形成される、前記着用者の腹囲を挿通可能な胴周り開口部と、前記着用者の脚を挿通可能な左右2つの脚周り開口部と、前記股下領域を含む前記外装体の肌面側に配置される、吸収コアと、前記吸収コアを包むコアラップシートと、を有し、排出液を吸収可能な吸収体と、前記外装体と接合するエンドシートと、前記外装体の前記幅方向に伸張状態で延在し、前記長手方向に所定の間隔を空けて平行に配置された複数の弾性部材と、を、備え、前記エンドシートと前記外装体は、前記幅方向に延在し、前記長手方向に所定の間隔を空けて平行に配置された複数の接合線で接合され、前記複数の接合線のうち、前記複数の弾性部材と重畳しているものよりも、前記複数の弾性部材と重畳していないもののほうが多い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性物品を着用者の胴に当接させる弾性部材が着用者の肌に食い込むのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
図4図4は、外装体と吸収体の接着状態を示した図である。
図5図5は、外装体と接合した吸収体端部シート部付近の概念図である。
図6図6は、立体ギャザーを含む吸収体の長手方向端部を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るおむつを展開し、伸張した状態を模式的に示した図である。
図9図9は、エンドシートとカバーシートとの接合線と糸ゴムとの関係について示す図である。
図10図10は、エンドシートが外装体から部分的に剥離することにより形成される皺について示す図である。
図11図11は、おむつの外装体の胴開口部端部近傍部分を示す図である。
図12図12は、応用形態に係るおむつの外装体の胴開口部端部近傍部分を示す図である。
図13図13は、更なる応用形態に係るおむつの外装体の胴開口部端部近傍部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本開示はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0010】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るおむつの斜視図である。より具体的には、実施形態に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図である。おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0011】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。また、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0012】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは
股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって、着用者の胴部を挿通可能な胴周り開口部である胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に、左下肢を挿通可能な左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢を挿通可能な右下肢開口部2Rが形成されることで、左右2つの脚周り開口部が形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。なお、本開示における接合とは、おむつ1の構成要素が、通常の使用状態において分離しない程度に接着されている、または融合していることを言い、具体的には、ホットメルト接着剤等の接着剤による接着、熱溶着、超音波溶着による溶着などが含まれる。
【0013】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LL,3LRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LL,3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出物は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0014】
おむつ1の前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合されている。そして、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁も互いに接合されている。接合部分は左下肢開口部2L、右下肢開口部2Rから胴開口部2Tに至るまで延在しており、サイドシール部12L,12Rを形成している。右下肢開口部2Rからサイドシール部12Rを胴開口部2T側に引き裂いて、左下肢開口部2Lからサイドシール部12Lを胴開口部2T側に引き裂くと、おむつ1は平板状となる。このため、着用者または介助者は、おむつ1を円滑に交換可能である。なお、右下肢開口部2Rと、左下肢開口部2Lを総称して、単に下肢開口部と呼ぶことがある。
【0015】
おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の吸収体の更に肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が発生してもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1を長時間使用できる。
【0016】
図2は、第1の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。おむつ1は、カバーシート
4とインナーカバーシート5とを有する。カバーシート4とインナーカバーシート5は、貼り合わされておむつ1の外表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートであり、前身頃領域1F側の端部と後身頃領域1R側の端部以外は同形状である。着用者に着用された状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側、インナーカバーシート5は肌面側に積層されている。カバーシート4とインナーカバーシート5の間には、ウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRを形成するための糸ゴムが設けられている。なお、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。カバーシート4は、本開示における第1のシートの一例であり、インナーカバーシート5は、本開示における第2のシートの一例である。また、カバーシート4とインナーカバーシート5は、本開示における外装体の一例である。
【0017】
本開示では、外装体はおむつ1の全体を覆っているが、おむつ1の前身頃領域1F側とを覆う前身頃外装体と、おむつ1の後身頃領域1R側を覆う後身頃外装体の別体とすることもできる。前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとで外装体を別体とする場合、股下領域1Bにおいて吸収体の非肌面側を覆うパッドカバーシートを別途設け、前身頃外装体と、後身頃外装体の両方と接着していてもよい。なお、本開示のようなおむつ1の全体を覆う外装体を使用する場合においても、便宜上前身頃外装体と後身頃外装体という表現を用いることがある。この場合の前身頃外装体は外装体の前身頃領域1F側の拡幅部分以降長手方向外側において前身頃領域1Fの外表面を形成し、後身頃外装体は外装体の後身頃領域1R側の拡幅部分以降長手方向外側において後身頃領域1Rの外表面を形成する。
【0018】
カバーシート4とインナーカバーシート5は、例えば、排出物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。
【0019】
おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5の着用者側の面において順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略直方体のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、排出物の漏れを抑制するために、非透水性、すなわち液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排出された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0020】
吸収体8は、吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。吸収コア8cは略砂時計型である。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸収材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排出された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。このように、吸収体8は、排出液を吸収可能である。本実施形態では、吸収コア
8cは中央部付近が括れた略砂時計型である。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収コア8cの形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状が挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る吸収コア8cは、短繊維とSAPの両方を配合しており、短繊維とSAPの特性の違いにより、排出液の吸収性能と保持性能を高めている。しかし、吸収コア8cの構成はこれに限られず、一例としては、SAPを配合せず、短繊維のみから構成することも可能である。吸収コア8cを短繊維のみから構成すると、肌触りが向上する。また、吸収コア8cからのSAPの流出を考量する必要がないため、コアラップシート7を設けない形態とすることも可能である。
【0022】
更に、一例としては、吸収コア8cに短繊維を配合せず、SAPのみから形成してもよい。この形態では、流通状態等の水分を吸収していない状態において、吸収コア8cを非常に薄くすることができる。
【0023】
また、吸収コア8cを、複数の吸収マットから形成することも可能である。この場合、形の異なる吸収マットを重畳して吸収コア8cとしてもよい。一例としては、吸収コア8cを肌面側の上層吸収マットと非肌面側の下層吸収マットの2枚のマットから構成してよい。上層吸収マットの形状を上述の略砂時計型として、下層吸収マットを、上層吸収マットの広幅部よりも幅狭の矩形状とし、下層吸収マットの幅を、上層吸収マットのくびれ部の幅と略同一としてよい。
【0024】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシート7は、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コアの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてよい。コアラップシート7の長手方向長さは、吸収コア8cの長手方向長さと共通であってよい。
【0025】
吸収コア8cは、後述するバックシート6とトップシート9によりその全面を覆われている。このため、これらのシートにより吸収コア8cを保護することも可能であり、コアラップシート7を設けない構成も考えられる。バックシート6は、吸収コア8cよりも長手方向に長い。このため、吸収体8の長手方向端部近傍は、吸収コア8cは延在せず、バックシート6が延在する端部シート部8eが存在している。端部シート部8eには、バックシート6に加えてトップシート9も延在しており、これらのシート同士が接着剤により接着されて構成されていてもよい。
【0026】
本実施形態では、コアラップシート7と吸収コア8cの長手方向長さは共通しているが、コアラップシート7を吸収コア8cよりも長手方向に延長し、端部シート部8eまで延在させる構成も考えられる。この場合、端部シート部8eにおいて、コアラップシート7は、ホットメルト接着剤等の接着剤により、バックシート6と接着していてよい。また、当該構成において、肌面側のコアラップシート7と、非肌面側のコアラップシート7の間にホットメルト等の接着剤が塗布され、肌面側と非肌面側のコアラップシート7同士が接合されていてもよい。
【0027】
バックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域
1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0028】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、カバーシート4の、前身頃領域1Fの左側の縁となる縁4F4と、後身頃領域1Rの左側の縁となる縁4R4とが互いに接合され、且つ、カバーシート4の、前身頃領域1Fの右側の縁となる縁4F5と、後身頃領域1Rの右側の縁となる縁4R5とが互いに接合されてサイドシール部12L,12Rを形成することにより、図1に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。サイドシート10L,10Rは、排出液の横漏れを防ぐ防漏シートとしての機能を有している。なお、サイドシール部12L,12Rの形成方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0029】
図3は、第1の実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。カバーシート4は、図2に示す折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4F1,4F2が接着され、カバーシート4の後身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4R1,4R2が接着されることで形成される。糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に設けられている。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に設けられている。糸ゴム4F1,4R1,4F2,4R2は、幅方向に伸縮する弾性部材を、長手方向に平行に複数本設けることにより形成されている。
【0030】
このため、糸ゴム4F1,4F2は、伸縮方向となる胴周り方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、サイドシール部12L,12Rにおいて縁4F4と縁4R4が互いに接合され、縁4F5と縁4R5が互いに接合されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。複数の糸ゴム4F2,糸ゴム4R2のうち股下領域1B側の一部は、吸収体8と重畳する。
【0031】
糸ゴム4F1,4R1は、図1に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って左右方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、幅方向に延在し、長手方向に所定の間隔をあけて平行に複数配置されている。糸ゴム4F
1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出物が漏出するのを防ぐ機能を担う。糸ゴム4F2,4R2は、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。また、インナーパッドを用いる場合には、インナーパッドのずれを抑制する。
【0032】
更に、カバーシート4には糸ゴム4F3と糸ゴム4R3が接着されている。糸ゴム4F3,糸ゴム4R3は、カバーシート4のうち糸ゴム4F2,4R2よりも股下領域1B側の領域に設けられる伸縮部材である。ただし、糸ゴム4F3,4R3は、カバーシート4の左端から右端まで屈曲することなく接着されている他の糸ゴムとは異なり、股下領域1Bの方向に湾曲して配置されている。このように、糸ゴム4F3,4Rが湾曲して配置されていることで、糸ゴム4F3,4R3の配置領域は、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rを含む脚周り開口部の周囲を着用者の肌面と当接させる、レグギャザーとしての機能を有している。
【0033】
前身頃領域1F側における糸ゴム4F3は、吸収体8を幅方向に横断し、幅方向に連続している。糸ゴム4F3が吸収体8を幅方向に横断している部分は、着用者の恥骨付近に対応する。なお、着用者の尿道口は、糸ゴム4F3が吸収体8を横断している部位から更に股下側で、おむつ1の肌面側に当接する。
【0034】
一方、後身頃領域1R側における糸ゴム4R3は、砂時計型の吸収コアの括れ部分で、吸収コア8cの幅方向外側と重畳しているが、吸収体8を幅方向に横断していない。糸ゴム4R3の配置領域は、吸収体8付近で着用者の臀部と当接する。後身頃領域1Rでは、おむつ1は着用者の臀部にかかる圧力により、前身頃領域1Fよりも強く押圧される。このため、糸ゴム4R3を吸収体8の幅方向中央部には設けずに、吸収体8の幅方向端部同士を引き離すように付勢しておくことで、おむつ1は、着用者に対して、適切な密着力で当接する。
【0035】
カバーシート4は、折り返し線4FF、4RFで折り返され、折り返し部分で糸ゴム4F1,4F2,4R1,4R2の配置領域を補強している。
【0036】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、インナーカバーシート5、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0037】
図4は、外装体と吸収体の接着状態を示した図である。より具体的には、インナーカバーシート5とバックシート6との間に塗布されているホットメルト接着剤を図示したものである。外装体と吸収体8側のバックシート6は、吸収体8の延在領域の大部分において、長手方向に所定の間隔で、吸収体8側よりも幅方向にやや幅狭に塗布されたホットメルト接着剤等の接着剤HMにより、接着されている。吸収体8と外装体は、当該接着剤HMにより接着されることで、おむつ1の構成として相互に効果的に機能を発揮する。本実施形態では、前身頃領域側の糸ゴム4F3の延在領域では、インナーカバーシート5と吸収体側のバックシート6は接着されておらず、非接着領域15となっている。吸収体8と重畳する糸ゴム4F3の延在領域において非接着領域15を設けると、非接着領域15の近傍において吸収体8の剛性は低下する。当該部分に厚み方向に重畳する糸ゴム4F3の付勢力が伝わることにより、吸収体8は着用者の尿道口に接近しやすくなる。糸ゴム4F3
の延在領域に非接着領域15を設けると、おむつ1の吸収性能を高めることができる。
【0038】
一方、非着用状態では、糸ゴム4F3の収縮力は吸収体8を幅方向に収縮させるように伝わり、吸収体8の変形や型崩れの要因となる可能性がある。糸ゴム4F3の延在範囲において、外装体を構成するインナーカバーシート5と、吸収体8側のバックシート6との間に非接着領域15を設けることで、非着用状態において糸ゴム4F3の付勢力が吸収体8に過度に伝わることを抑制できる。非接着領域15を適切に設けることで、糸ゴム4F3と吸収体8とを厚み方向に重畳させつつも、非着用状態における吸収体8の変形や型崩れを抑制可能となる。
【0039】
なお、後身頃領域1R側における糸ゴム4R3は、砂時計型の吸収コアの括れ部分で、吸収コア8cの幅方向外側と厚み方向に重畳しており、吸収体8を幅方向に横断していない。このため、非着用状態においても、吸収体8に糸ゴム4R3の付勢力が伝わり、吸収体8が変形や型崩れを起こすことを考慮する必要はない。このため、後身頃領域1R側には非接着領域は設けられていない。糸ゴム4R3の延在範囲でも、バックシート6とインナーカバーシート5は、その他の部位と同様に、長手方向に所定の間隔で塗布された接着剤HMによって接着されている。
【0040】
なお、前身頃領域1F側において、糸ゴム4F3が吸収体8を横断しないようにすることも考えられる。この場合には、非着用状態における吸収体8の変形や型崩れを抑制可能であることから、非接着領域15を設けないことも考えられ、おむつ1の構成は後身頃領域1R側に近くなる。
【0041】
少なくとも、端部シート部8eの長手方向端部では、バックシート6と外装体との間には、接着剤HMが塗布されていない。図4に示したように、端部シート部8e全体において、外装体との間に接着剤HMが塗布されていなくてもよい。接着剤HMが塗布されていないため、端部シート部8eの長手方向端部は、外装体と接合していない。吸収体8の長手方向端部である端部シート部8eの長手方向端部は、着用者の肌面側に起立する自由端となる。
【0042】
図3図4に示すように、端部シート部8eに対応する領域の外装体には、糸ゴム4F2,4R2のうちの一部が延在している。糸ゴム4F2,4R2は、伸張状態で外装体に貼り付けられている。おむつ1の非着用時において、外装体は幅方向内側に収縮する。この際、端部シート部8eの長手方向端部は外装体と接合していない。端部シート部8eは、糸ゴム4F2,4R2の付勢力を受けて多少収縮はするものの外装体ほど収縮せず、肌面側に浮き上がった状態となる。
【0043】
おむつ1の着用時において糸ゴム4F2,4R2は伸張し、端部シート部8eを着用者の肌面側に押圧する。このため、端部シート部8eの長手方向端部は肌面と面で当接し、防漏壁として機能する。本実施形態に係るおむつ1は、排出液の長手方向端部側への移動を効果的に阻害して、腹漏れ、背漏れを抑制する。端部シート部8eと重畳する糸ゴム4F2,4R2は、本開示における複数の弾性部材の一例である。
【0044】
また、吸収体8は、その長手方向外側の一部が糸ゴム4F2,4R2と重畳している。糸ゴム4F2,4R2は、接着剤HMが塗布された範囲において、吸収体8を幅方向内側に収縮させる。吸収体8は吸収コア8cを有している。吸収コア8cを短繊維とSAPで構成する場合も、短繊維のみから構成する場合にも、SAPのみから構成する場合にも、吸収コア8cは剛性を有している。吸収コア8cの延在範囲において、吸収体8はその幅方向中央部が着用者の肌面側に弓なりに湾曲し、所謂ドーム形状を形成する。
【0045】
吸収体8の長手方向端部近傍にドーム形状が形成されることにより、吸収体8が着用者の肌面と当接する割合は高まる。この結果、長手方向に移動する排出液が吸収体8の長手方向端部に達する前に流動を抑制できる。また、トップシート9、コアラップシート7は液透過性を有しており、吸収コア8cは液吸収性を有している。このため、吸収体8は、長手方向端部近傍において流動を抑制した排出液を吸収でき、排出液が長手方向端部に移動するのを防止可能である。
【0046】
一方、吸収コア8cが肌面側に屈曲することにより、逆に吸収体8の非肌面側とバックシート6との間に空間が生じ得る。排出液は、当該空間を流動して長手方向端部に到達することが考えられる。本実施形態に係るおむつ1では、吸収コア8cの延在領域の更に長手方向端部側に、端部シート部8eが設けられている。吸収体8の内部を長手方向に移動する排出液は、端部シート部8eと吸収コア8cの端部との間に到達してそれ以上の流動を抑制され、吸収コア8cに順次吸収される。
【0047】
また、吸収体8の長手方向端部近傍において、糸ゴム4F2,4R2の付勢力、外圧、着用者の体型などにより、吸収体8に皺が寄り、必ずしも肌面側に屈曲したドーム形状とならないことがある。このような場合、排出液は皺部分を通過して長手方向端部に達することがあるが、端部シート部8eの長手方向端部が着用者の肌面側に起立して着用者の肌と面で当接して防漏壁を形成していることにより、排出液が吸収体8の長手方向端部から漏出するのを抑制できる。
【0048】
図5は、外装体と接合した吸収体端部シート部付近の概念図である。吸収体8の長手方向端部近傍において、インナーカバーシート5を含む外装体には、幅方向に延在する糸ゴム4F2,4R2が、長手方向に所定の間隔を開けて設けられている。糸ゴム4F2,4R2が幅方向内側に収縮することにより、糸ゴム4F2,4R2を構成する各糸ゴムの間には、細かい襞状の凹凸が形成される。当該凹凸はクッションとして機能し、糸ゴム4F2,4R2が着用者の肌面に違和感を与えるのを抑制する。
【0049】
吸収体8は、外装体と厚み方向に重畳しており、その長手方向端部近傍において糸ゴム4F2,4R2の一部とも重畳している。吸収体8は、吸収コア8cの延在領域において外装体と接合しており、その一部において糸ゴム4F2,4R2の一部とも重畳している。吸収コア8cは剛性を有しているため、糸ゴム4F2,4R2の付勢力によって幅方向内側に変形するものの、少なくともその肌面側では襞状の凹凸が形成されることはない。吸収コア8cの延在領域において、吸収体8は幅方向内側に屈曲し、その幅方向中央部が肌面側にドーム状に膨らんで着用者の肌面と当接する。この構成により、吸収コア8cの長手方向端部領域が着用者の肌面と当接する割合は高まり、長手方向に移動する排出液が吸収体8の長手方向端部に達する前にその流動を抑制可能である。
【0050】
一方、吸収体8の端部シート部8eはトップシート9とバックシート6とにより形成されている。端部シート部8eにコアラップシート7を延在させる場合には、肌面側をトップシート9に接合され、非肌面側をバックシート6に接合されたコアラップシート7から形成されている。これら端部シート部8eを形成するシートは液体吸収性を有していないものの、吸収コア8cと比較すると剛性が低く、屈曲しやすい。また、端部シート部8eも、糸ゴム4F2,4R2の一部と厚み方向に重畳している。しかし、端部シート部8e全体、或いは端部シート部8eの少なくとも長手方向端部は、外装体と接合しておらず、端部シート部8eが受ける糸ゴム4F2,4R2に由来する付勢力は、少なくともその長手方向端部において低減される。
【0051】
端部シート部8eには、複数の襞が形成されはするものの、一つ一つの襞は外装体に形成される襞状の凹凸と比べると幅広となっており、また、深さも外装体に形成される襞状
の凹凸と比較すると浅い。また、端部シート部8eが受ける糸ゴム4F2,4R2に由来する付勢力は股下領域1B側においてより強いため、複数の襞は、股下領域1B側において幅方向に狭く、長手方向端部において幅方向に広い所謂ラッパ型となる。
【0052】
端部シート部8eの長手方向端部において襞が浅く、一つ一つの襞も幅方向に広いため、端部シート部8eの長手方向端部と着用者の肌面との当接割合は大きくなる。このため、端部シート部8eは、長手方向に流動する排出液が外装体にまで到達するのを防ぐ防漏壁としての機能を効果的に発揮する。
【0053】
図6は、立体ギャザーを含む吸収体の長手方向端部を示す図である。本図では、前身頃領域1F側について示すが、吸収体8の構造は長手方向両側において共通しているため、後身頃領域1R側についてもその構成は同様である。吸収体8の幅方向端部には、サイドシート10L,10Rが重畳している。サイドシート10L,10Rは、幅方向内側に配置され、長手方向に延在する糸ゴムの付勢力によって着用者の肌面側に立ち上がり、排出液の幅方向外側への漏出を防止する防漏壁として機能する立体ギャザー3BL,3BRを形成する。
【0054】
立体ギャザー3BL,3BRは、長手方向端部において吸収体8の長手方向端部と、熱溶着等により接合している。立体ギャザー3BL,3BRが吸収体8の長手方向両端部と接合していることにより、当該接合部分が立体ギャザー3BL,3BRの立ち上がりの起点となり、股下領域1Bを中心として立体ギャザー3BL,3BRを起立させて防漏壁として機能させることができる。
【0055】
サイドシート10L,10Rと吸収体8とは、吸収体8の延在領域全域に渡って重畳しており、接合部分も端部シート部8eにまで及ぶ。このため、端部シート部8eの幅方向端部の剛性は、サイドシート10L,10Rが接合していることにより強化されている。端部シート部8eの幅方向端部の剛性が高いことにより、端部シート部8eは、その全体が肌面側に屈曲しやすくなる。また、端部シート部8eの幅方向端部の剛性が高いことにより、糸ゴム4F2,4R2によって間接的に付加される、端部シート部8eを幅方内側に屈曲させようとする付勢力により容易に対抗可能となる。この構成により、端部シート部8eの長手方向端部の屈曲は起こらないか、または非常に緩やかになり、仮に皺が形成されたとしても、皺の深さは軽減され、皺の大きさも幅方向に大きくなる。結果として端部シート部8eの長手方向端部は着用者の肌面に高面積で当接し、長手方向への防漏壁としての機能をより効果的に発揮可能となる。
【0056】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。第2の実施形態では、各図中、第1の実施形態と実質的に同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。第2の実施形態では、おむつ1は、第1の実施形態の構成に加えて、カバーシート4の前身頃領域1Fにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1Rにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Rとを有している。
【0057】
エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4に重ねられる短冊状で非透水性のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴周り当接部分においてカバーシート4を補強する。また、エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L、10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の端が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。
【0058】
図8は、第2の実施形態に係るおむつを展開し、伸張した状態を模式的に示した図である。第2の実施形態では、折り返し線4FF,4RFで折り返されたカバーシートは、糸ゴム4F1,4R1の延在領域の肌面側を覆ってはいるものの、糸ゴム4F2,4R2の延在領域の肌面側は覆っていない。エンドシート11F,11Rは、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2,糸ゴム4R2の配置領域に設けられ糸ゴム4F2,4R2の配置領域を補強している。
【0059】
エンドシート11F,11Rは、吸収体8が延在していない領域において、インナーカバーシート5と接合している。しかし、エンドシート11F,11Rは、吸収体8の端部シート部8eの長手方向端部とは接合していない。この構成により、端部シート部8eの肌面側への立ち上がりは、エンドシート11F,11Rによっては阻害されない。この構成により、端部シート部8eは、肌面側をエンドシート11F,11Rに覆われていながらも、防漏壁としての機能を喪失せず、排出液の腹漏れ、背漏れを抑制することができる。
【0060】
吸収体8が延在していない領域では、エンドシート11F,11Rは、インナーカバーシート5と接合しており、糸ゴム4F2,4R2の付勢力受けやすい。この領域では、エンドシート11F,11Rには、糸ゴム4F2,4R2の付勢力に起因する幅方向に小さな皺が並列して形成される。一方、エンドシート11F,11Rは、吸収体8の延在領域においてインナーカバーシート5と直接接合しておらず、糸ゴム4F2,4R2から受ける付勢力の影響は低減される。吸収体8の延在領域では、エンドシート11F,11Rには皺は形成されないか、仮に形成されたとしてもインナーカバーシート5と接合している領域よりも幅方向に大きくなり、肌面との接触割合も大きくなる。このように、第2の実施形態に係るおむつ1では、端部シート部8eとエンドシート11F,11Rの相乗効果により、長手方向に向けて流動する排出液の動きを抑制するため、腹漏れ、背漏れをより効果的に抑制可能である。
【0061】
なお、エンドシート11F,11Rは、吸収体8の端部シート部8eの長手方向端部とは接合していないため、端部シート部8eに対して相対的に移動可能である。第2の実施形態に係るおむつ1では、端部シート部8eの長手方向端部が着用者の肌面に食い込むことも抑制可能であり、肌当たりを向上させることができる。
【0062】
図9は、エンドシートとカバーシートとの接合線と糸ゴムとの関係について示す図である。本図は、おむつ1の前身頃領域1Fにおけるエンドシート11Fの延在領域の片側を肌面側から見た場合を例示した拡大図である。本実施形態に係るおむつ1は左右対称の構成を有しており、その構成は逆側においても同様である。また、図9で説明する構成は、後身頃領域1R側においても同様である。おむつ1の前身頃領域1F,後身頃領域1Rには、糸ゴム4F2,4R2が、長手方向に所定の間隔を開けて幅方向に延在するように配置されている。糸ゴム4F2,4R2は、カバーシート4とインナーカバーシート5との間に配置され、一例としては糸ゴム4F2,4R2に塗布されたホットメルト接着剤等の接着剤により、カバーシート4,インナーカバーシート5の両シートと接合している。
【0063】
そして、エンドシート11F,11Rも、ホットメルト接着剤等の接着剤HMで形成された複数の接合線により、外装体、より具体的にはインナーカバーシート5と接合している。接合線は、長手方向に所定の間隔を開けて互いに離間し、幅方向に延在するように複数配置されている。ここで、エンドシート11F,11Rと外装体とを接合する接合線は、糸ゴム4F2,4R2と重畳しているものよりも、糸ゴム4F2,4R2と重畳していないものの方が多くなるように配置されている。
【0064】
エンドシート11F,11Rは、着用者の肌面と当接する。そして、エンドシート11
F,11Rは、接合線でインナーカバーシート5と接着していない範囲において、糸ゴム4F2,4R2の収縮力を分散するクッションとしての役割を果たす。糸ゴム4F2,4R2は、おむつ1を着用者の肌面に押し当ててずれを抑制する。また、おむつ1とインナーパッドを併用する場合には、インナーパッドを適切な位置に保持する役割を有しており、一定の付勢力でおむつを着用者の肌面に押し当てることが望ましい。その一方、糸ゴムの付勢力が直接着用者の肌面に伝わると、糸ゴム4F2,4R2が着用者の肌面に食い込むことになる。糸ゴムが着用者の肌面に食い込むと、おむつの着用感は低下し、肌面トラブルの原因にもなる。
【0065】
第2の実施形態に係るおむつ1では、エンドシート11F,11Rの接合線と糸ゴム4F2,4R2の位置が重畳しないものの方が、重畳するものよりも少なくなっている。この結果、重畳しない部分ではエンドシート11F,11Rが肌面側でクッションとして機能し、糸ゴム4F2,4R2の付勢力が着用者の肌面に直接作用するのを防ぎ、肌当たりを向上させることができる。一方、糸ゴム4F2,4R2のうちの一部とエンドシート11F,11Rの接合線の位置は重畳しており、重畳部13となる。糸ゴム4F2,4R2の付勢力は重畳部13において着用者の肌面に直接伝わる。このため、おむつ1は、全体としては着用者の胴回りに対する付勢力を維持可能であり、ずれ落ちを適正に防止できる。
【0066】
重畳部13の配置の仕方の一例としては、糸ゴム4F2,4R2のうち3本ないし4本に一本が重畳部13となるようにエンドシート11F,11Rの接合線を配置することができる。重畳部13を複数箇所設けることで、おむつ1のずれ落ちはより抑制される。また重畳部13が出現する位置を長手方向に十分に離すことで、着用感の低下を抑制可能であり、より好適である。
【0067】
なお、エンドシート11F,11Rの接合線が全て糸ゴム4F2,4R2と重畳しない、すなわち重畳部13を設けない構成も考えられる。この構成では、着用者の肌面側において、エンドシート11F,11Rは糸ゴム4F2,4R2に対するクッションとして機能し、糸ゴム4F2,4R2の付勢力を分散させて、肌面への食い込みを抑制する。このように構成することで、肌当たりが非常に良好なおむつを提供可能であり、着用感の低下を抑制可能である。糸ゴム4F2,4R2が肌面と当接しないことによるずれ落ち抑制性能の低下は、糸ゴム4F2,4R2の付勢力を一定程度強くする、または、糸ゴム4F2,4R2の配置間隔を狭めることにより代替できる。
【0068】
図9では、重畳部13の配置として最も好適な形態を示している。すなわち、複数の糸ゴム4F2,4R2のうち、最も股下側に配置されているものと、エンドシート11F,11Rと外装体との接合線を重畳させて、重畳部13をこの位置にのみ設ける構成である。複数の弾性部材である糸ゴム4F2,4R2のうち最も股下側の一か所に重畳部13を設けることにより、おむつ1は着用者の腰骨付近に強く当接し、ずれ落ちを強力に抑制可能である。
【0069】
図10は、エンドシートが外装体から部分的に剥離することにより形成される皺について示す図である。糸ゴム4F1,4R1,4F2,4R2が胴回り方向に収縮することにより、外装体とエンドシート11F,11Rには、長手方向に延在する皺が形成される。この際、エンドシート11F,11Rと外装体を、一定の割合で部分的に剥離可能とすることが好適である。
【0070】
糸ゴム4F2,4R2の延在範囲では、エンドシート11F,11Rと外装体は、ホットメルト接着剤HM等の接着剤によって形成された複数の接合線によって接合されているが、図10に示す形態では、エンドシート11F,11Rは、接合線と完全に接合してお
らず、所定の割合で間欠的に剥離するようになっている。エンドシート11F,11Rには、糸ゴム4F2,4R2の付勢力により、長手方向に延在する複数の皺Wが形成されている。皺Wの端部は、任意の接合線となるが、図10では、エンドシート11F,11Rが各接合線と幅方向に互い違いに剥離するので、形成される皺Wは、接合線の長手方向配置間隔よりも大きくなる。
【0071】
エンドシート11F,11Rは、その配置範囲において外装体よりも肌面側に配置されるシートであり、着用者の肌面と直接当接することがある。エンドシート11F,11Rが外装体から部分的に剥離せず、各接合線が全ての皺の端部となっていると、接合線が肌面と当接し、着用者に違和感を与えることがある。
【0072】
図10に示すように、エンドシート11F,11Rが各接合線と幅方向に互い違いに剥離するように構成すると、エンドシート11F,11Rと接合していることにより肌面側に露出する接合線は、その幅方向両側に形成される皺Wにより、肌面と当接しにくくなる。この結果、エンドシート11F,11Rの延在領域において、おむつ1の肌触りが向上する。エンドシート11F,11Rと接合線との剥離割合は、エンドシート11F,11R全体のうち、30%~70%であることが望ましい。
【0073】
上述の通り、使用状態において、エンドシート11F,11Rが一定程度剥離することは着用感を向上させる点で好適である。一方で、エンドシート11F,11Rが外装体から完全にめくれ上がるように大きく剥離すると、エンドシート11F,11Rはその機能を適切に発揮しなくなる。この条件を満たすため、外装体からエンドシート11F,11Rの一部が剥離するものの、完全には剥離しない剥離強度を有することが望ましい。
【0074】
最適な剥離強度を測定するため、JIS K 6854-2:1999に準じ、180度はく離試験を実施して、剥離接着強さを計測した。剥離する際の移動速度は100mm±10mmとし、剥離方向は、ホットメルト接着剤等の接着剤HMの塗布方向、すなわち、図10における左右方向と同一とした。はく離強度は、接着剤HMの塗布面積当たりの最大試験力(N/mm)を算出することにより求めた。実験の結果、好適な剥離強度は、0.01N/mmであった。
【0075】
図9に示す形態では、糸ゴム4F2,4R2と、接合線とが重畳している重畳部13は、同時に吸収体8とも重畳している。より好ましくは、吸収コア8cの延在範囲と重畳している。吸収体8は、外装体の肌面側と重畳している。重畳部13を設けると、重畳部13において糸ゴム4F2,4R2が着用者の肌面に食い込む可能性がある。一方、吸収コア8cを短繊維とSAPから構成する場合、短繊維のみから構成する場合、またSAPのみから構成する場合のいずれにおいても、吸収コア8cの剛性は高い。外装体の肌面側に吸収コア8cが重畳している部分に重畳部13を設ければ、吸収体8の延在領域において、糸ゴム4F2,4R2が着用者の肌面に食い込むのを抑制可能である。
【0076】
吸収コア8cが延在している範囲においては、吸収体8の剛性が十分に高いため、当該位置に重畳部13を設けることで、糸ゴム4F2,4R2の食い込みを抑制可能である。また、例え吸収コア8cが延在していない端部シート部8eにおいても、吸収体8の剛性はエンドシート11F,11Rよりも高い。一例としては、端部シート部8eはバックシート6、または、バックシート6とトップシート9とが接合して構成されているが、バックシート6は非透水性フィルムであるため、エンドシート11F,11Rよりも高い剛性を有している。なお、端部シート部8eに更にコアラップシート7を延在させる場合には、その剛性はより高くなる。このため、端部シート部8eが存在する領域に重畳部13を設けても、糸ゴム4F2,4R2の食い込みを抑制可能である。
【0077】
なお、第1の実施形態において説明した通り、端部シート部8eの長手方向端部において、端部シート部8eは外装体と接合しておらず、エンドシート11F,11Rとも接合していない。また、端部シート部8eの端部は防漏壁として肌面側に起立する。このため、端部シート部8eの長手方向端部近傍において、糸ゴム4F2,4R2の付勢力を肌面側に伝えないクッションとしての機能は大きくなる。当該位置に重畳部13を設けることで、ずれ落ちを防止しつつ、糸ゴム4F2,4R2が肌面への食い込みを効果的に抑制できる。
【0078】
このように、吸収体8と重畳する位置に重畳部13を設けることにより、ずれ落ちを防止しつつも、肌当たりがよいおむつを提供することができ、好適である。
【0079】
図11は、おむつの外装体の胴開口部端部近傍部分を示す図である。より具体的には、図8(A)に示すおむつ1の内部構造を模式的に示した図の前身頃領域1F側に長手方向端部の拡大図である。図11~13では、前身頃領域1F側の構成について例示するが、後身頃領域1R側も同様の構成を有しているため省略する。図11図13に示す形態では、おむつ1の構造を明瞭化するため、各構成の間に大きな隙間を設けて描写しているが、実際のおむつ1の各構成の間の隙間は非常に小さく、その長手方向端部はより肉薄である。
【0080】
図11に示す形態では、糸ゴム4F2は、外装体の非肌面側に設けられたカバーシート4と、外装体の肌面側に設けられたインナーカバーシート5とに覆われている。糸ゴム4F2の延在領域において、カバーシート4とインナーカバーシート5は接着されている。そして、カバーシート4とインナーカバーシート5は、図7に示す折り返し線4FFにおいて一端側が折り返されて肌面側に屈曲している。当該折り返し線4FFは、完成状態のおむつ1の胴開口部2Tの端縁となる。折り返されたカバーシート4は、外装体の肌面側において、長手方向内側に延在し、その端部との間に折り返し部20を形成している。
【0081】
インナーカバーシート5は、折り返し線4FFにおいて屈曲し、その長手方向端部は長手方向内側を向いている。また、折り返されたインナーカバーシート5は相互に接着されておらず、胴開口部2T側の端縁近傍において、折り返し部20の曲げ応力に起因する空間21を形成している。
【0082】
カバーシート4の折り返し部20とインナーカバーシート5の間には、糸ゴム4F1が延在している。換言すれば、カバーシート4と、インナーカバーシート5は、複数の弾性部材である糸ゴム4F1のうち最も胴開口部2T側に配置されているものよりも更に胴開口部2T側で肌面側に屈曲して折り返し部20を形成している。糸ゴム4F1は、カバーシート4の折り返し部20と、インナーカバーシート5との間に接着されている。一方、折り返されたインナーカバーシート5は、折り返し部20の胴開口部2T側の一部において、カバーシート4の非肌面側に延在しているものの、糸ゴム4F1の延在領域にまでは達していない。
【0083】
一般的に、おむつの胴開口部の端縁は、衣類や着用者の手との摩擦により破れる虞がある。より具体的には、おむつの胴開口部の端縁は、着用者の肌に直接触れており、着用者の身体に食い込んで、肌との強い摩擦によって摩耗することがある。また、胴開口部近傍におけるウェストギャザーの締付力は比較的強く、締付により着用者の胴部に痒みを生じることがある。痒みを感じた着用者は、胴開口部の端縁を指で強くこすることがあり、この面でも胴開口部の端縁は摩耗しやすい。
【0084】
そして、胴開口部の端縁が破れると、内部のウェストギャザーを構成するための糸ゴムが外部に露出することがある。露出した糸ゴムは、着用者の肌面に食い込んで着用感を大
きく損なう虞がある。また、糸ゴムが外部に露出すると、糸ゴムは前述の摩耗に直接晒されるため、その一部が破断してしまう虞もある。ウェストギャザーの締め付け力は、糸ゴムによって規定されている。ウェストギャザーを構成するための糸ゴムの一部が破断すると、ウェストギャザーが適切な締め付け力を発揮できなくなり、ずれ落ちが発生することがある。ずれ落ちにより着用感は低下する。また、ずれ落ちにより吸収体が着用者の肌面と正しく当接しなくなるため、おむつが排出液を適切に受け止めることができなくなる虞もある。
【0085】
図11に示す形態では、本開示に係るおむつ1は、胴開口部2Tの端縁において、カバーシート4に加えてインナーカバーシート5を折り返している。このため、おむつ1の胴開口部の端縁に配置されているシートは、カバーシート4とインナーカバーシート5の2重になっている。例えカバーシート4が摩耗したり破断したりして内部構造が露出したとしても、糸ゴム4F1との間には更にインナーカバーシート5が存在しているため、カバーシート4の摩耗や破断は、即座に糸ゴム4F1の露出に繋がることはない。このため、本実施形態に係るおむつ1は、長時間に渡って着用感を維持し、その機能を保つことができる。
【0086】
また、本実施形態では、インナーカバーシート5は、糸ゴム4F1の肌面側を覆ってはいないものの肌面側に折り返されている。このため、折り返し部20の糸ゴム4F1の延在領域では、おむつ1の外装体はシートが3層重ねられているが、糸ゴム4F1の延在領域の更に胴開口部2Tの端縁側では、インナーカバーシート5が折り返されていることによりシートが4層重ねられた状態となる。
【0087】
また、折り返されたインナーカバーシート5は、逆U字型または略コの字型に屈曲しているもののその内側では相互に接着されておらず、胴開口部2Tの端縁近傍において空間21を形成しているため、厚み方向に膨らんでいる。これらの構成により、おむつ1は、その長手方向端部を厚み方向に見た場合、糸ゴム4F1が存在しない胴開口部2Tの端縁においてより肉厚であり、更に具体的には、肌面側においてより肉厚である。
【0088】
伸張状態の糸ゴム4F1は、一定の付勢力を有している。このため、おむつ1の着用状態において、糸ゴム4F1の延在領域は、外装体を肌面側に屈曲させつつ着用者の肌面と当接する。一方、糸ゴム4F1の延在領域よりも更に胴開口部2Tの端縁側において、外装体は、外装体を肌面側と当接させる付勢力を有していない。
【0089】
胴開口部の端縁に付勢力を有していない一般的なおむつは、胴開口部の端縁側が非肌面側に反って、肌面との間に隙間を形成することがある。着用者の指が当該隙間に挿入されてしまった場合、意図しないおむつの引き上げ、引き下ろしに繋がることがある。更に、着衣の一部が当該隙間に入った場合、ウェストギャザーの糸ゴムの付勢力が不足し、ずれ落ちを発生させることがある。このように、当該隙間はおむつの機能と着用感の低下要因となる。
【0090】
図11に示す形態では、長手方向端部における糸ゴム4F1の延在領域の更に胴開口部2Tの端縁側は、肌面側に肉厚である。このため、着用中に胴開口部2Tの端縁側が非肌面側に屈曲した場合でも、胴開口部2Tの端縁側と着用者の肌面との間には、指や衣類などが入り込むことができる大きさの隙間が形成されない。よって、おむつ1の胴開口部2Tの端縁と着用者の肌面との間には指や衣類などが入り込むことはなく、おむつ1の機能は保持される。また、おむつ1の胴開口部2Tの端縁と着用者の肌面との間に隙間が形成されないことで、おむつ1の着用感も向上する。
【0091】
また、当該肉厚部分が肌面に当接して応力を発揮することで、特に、最も胴開口部2T
の側に配置された糸ゴム4F1が着用者の肌面に伝える付勢力を緩和することができる。このため、糸ゴム4F1が着用者の肌面に食い込むのを抑制可能である。
【0092】
図11に示す形態のおむつ1でも、図9に示すように、エンドシート11F,11Rの接合線と糸ゴム4F2,4R2の位置が重畳しないものの方が、重畳するものよりも少なくなっている。重畳しない部分ではエンドシート11F,11Rが肌面側でクッションとして機能し、糸ゴム4F2,4R2の付勢力が着用者の肌面に直接作用するのを防ぎ、肌当たりを向上させることができる。また、エンドシート11F,11Rの存在しない胴開口部2Tの端縁近傍において空間21を形成しているため、胴開口部2T近傍が糸ゴム4F1,4F2の付勢力によって、着用者の肌面と強く当接することもない。このため、全体として肌当たりの良いおむつ1を提供可能である。
【0093】
図12は、応用形態に係るおむつの外装体の胴開口部近傍部分を示す図である。応用形態では、屈曲して折り返し部20の一部に延在するインナーカバーシート5は、糸ゴム4F1のうちの胴開口部2T側の一部、より具体的には、少なくとも最も胴開口部2T側の一本または胴開口部2T側の複数本と重畳している。図12では空間21を図示していないが、この構成でも、インナーカバーシート5は、胴開口部2T側の端部において逆U字型または略コの字型に屈曲しているもののその内側では相互に接着されておらず、その内側には空間21が形成され得る。
【0094】
糸ゴム4F1は、そのそれぞれの配置位置において、外装体を肌面側に屈曲させるように付勢する。おむつ1の長手方向内側には比較的剛性の高い吸収体8が存在するため、外装体は、糸ゴム4F1の付勢力を受けても、着用者の肌面側にそれほど強く屈曲しない。一方、胴開口部2T側には剛性の高い構造が存在しないため、糸ゴム4F1は、外装体を、着用者の肌面側により強く屈曲させる。一般的なおむつにおいても、胴開口部側に剛性の高い構造が存在していないことから、外装体の胴開口部近傍の肌面側において、ウェストギャザーを構成する糸ゴムの付勢力に起因する凹凸が長手方向に形成されることがある。そして、当該凹凸の凸部は、着用者の肌面に強く当接し、着用感の低下をもたらす。また、凹部が着用者の肌面に当接しないことで、おむつの胴開口部近傍と着用者の肌面との間には適切な摩擦力が働かず、ずれ落ちの原因となることもある。
【0095】
そこで、本応用形態では、折り返し部20の一部に延在するインナーカバーシート5を、糸ゴム4F1の胴開口部2T側の一部と重畳させる。本実施形態に係るおむつ1は、胴開口部2T側に設けられた糸ゴム4F1の肌面側に、カバーシート4に加えてインナーカバーシート5が重畳するようにすることで、肌面側において、糸ゴム4F1の付勢力を長手方向に分散させて凹凸の形成を防ぎ、着用感を向上させることができる。また、ずれ落ちを防止することもできるため、おむつ1の機能も保たれやすくなる。
【0096】
図13は、更なる応用形態に係るおむつの外装体の胴開口部近傍部分を示す図である。図13に示す形態では、図12に示す形態と同様に、インナーカバーシート5が折り返し部20の一部に延在しており、糸ゴム4F1のうちの胴開口部2T側の一部と重畳している。そして、折り返し部20において、カバーシート4とインナーカバーシート5は、ホットメルト接着剤HM等の接着剤によって、接着されている。
【0097】
胴開口部2T側に設けられた糸ゴム4F1の肌面側にカバーシート4とインナーカバーシート5とを重畳させることで、胴開口部2T近傍において、肌面側に凹凸が形成されるのを防ぐことができる。更に、第3の実施形態では、折り返し部20の胴開口部2T側において、カバーシート4とインナーカバーシート5は接着されている。このため、胴開口部2T近傍の肌面側において、外装体の剛性は強化される。外装体の剛性が強化されることにより、胴開口部2T近傍において、外装体の肌面側には糸ゴム4F1の付勢力に起因
する凹凸が形成されず、平面状となる。外装体の肌面側が平面状になっていることで、外装体は、着用者の胴部と、広面積で面として当接する。
【0098】
本実施形態に係るおむつ1は、肌側が平面状となっていることにより、外装体と着用者の肌面との密着性は向上する。このため、当該更なる応用形態に係るおむつ1は、応用形態よりも更にずれ落ちを抑制することができ、装着感も高くなる。また、着用者が高齢者であって排出液の速度が遅い場合には、排出液がトップシート9に達して吸収体8に流入せず、着用者の肌面をそのまま流れておむつの長手方向端部に達することがある。本実施形態に係るおむつ1では、胴開口部2Tの近傍において、外装体と着用者の肌面との密着性が高いため、着用者の肌面を伝って移動してきた排出液の移動を抑制することができる。このように、本実施形態に係るおむつ1は、ずれ落ちを抑制可能であって装着感が高く、速度が遅い排出液が胴開口部2Tから漏出するのを防ぐことができるため、好適である。
【0099】
以上、各実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施形態に限られるものではない。例えば、吸収体8の延在領域全域において、吸収体8と厚み方向に重畳するエンドシート11F,11Rを、吸収体8と接合しないことも考えられる。この場合、吸収体8の延在領域において、エンドシート11F,11Rは、吸収体8との間に袋状の空間を形成する。長手方向端部に移動した排出液は、当該袋状の空間に落ち込んで腹漏れ、背漏れを抑制されて、やがて吸収体8が有する吸収コア8cに吸収される。エンドシート11F,11Rと吸収体8とが接合していないため、吸収体8はエンドシート11F,11Rの影響を受けにくくなり、吸収コア8cや端部シート部8eに形成される変形や皺は、第1の実施形態と同様に形成される。このため、排出液の流動を抑制可能である。
【0100】
また、エンドシート11F,11Rが排出液の長手方向への移動を抑制するポケット部として機能するように構成する場合、吸収体8と重畳する位置において、エンドシート11F,11Rにはホットメルト接着剤が塗布されておらず、接合線も設けられていない。この構成では、糸ゴム4F2,4R2の着用者の肌面への食い込みは、吸収体8に加えて、吸収体と重畳する位置において他の構成を接合されていないエンドシート11F,11Rによっても抑制され、おむつ1のずれ落ちの防止と肌当たりの向上をより良好に両立できる。
【0101】
以上で開示した実施形態は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0102】
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L・・左下肢開口部
2R・・右下肢開口部
2T・・胴開口部
3BL,3BR・・立体ギャザー
3LL,3LR・・レグギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4F1,4F2,4F3・・糸ゴム
4F4,4F5・・縁
4FF・・折り返し線
4R1、4R2、4R3・・糸ゴム
4R4、4R5・・縁
4RF・・折り返し線
5・・インナーカバーシート
6・・バックシート
7・・コアラップシート
8・・吸収体
8c・・吸収コア
8e・・端部シート部
9・・トップシート
10L,10R・・サイドシート
11F,11R・・エンドシート
13・・重畳部
HM・・ホットメルト接着剤
W・・皺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13