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特開2024-79564ミラー扉とキャビネットとを連結する丁番の固定具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079564
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ミラー扉とキャビネットとを連結する丁番の固定具
(51)【国際特許分類】
   E05D 3/06 20060101AFI20240604BHJP
   E05D 5/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
E05D3/06
E05D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148127
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022191404
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522468582
【氏名又は名称】橋本加工硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一
【テーマコード(参考)】
2E030
【Fターム(参考)】
2E030AB02
2E030BB05
2E030DB03
2E030EA02
2E030EB03
(57)【要約】
【課題】 ミラーボックスにおいて公知のスライド丁番を原則そのまま使用でき、しかもミラー扉からフレームをなくしてミラー扉を薄くすることができる、スライド丁番の固定具を提供する。
【解決手段】 ミラー扉とキャビネットとを連結するスライド丁番の固定具であって、前記ミラー扉と前記スライド丁番との間に介在して、前記スライド丁番のカップを受け入れる開口を有するスペーサと、前記ミラー扉に埋め込まれて、前記スペーサと連結する連結部材と、を具備することを特徴とする固定具。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー扉とキャビネットとを連結するスライド丁番の固定具であって、
前記ミラー扉と前記スライド丁番との間に介在して、前記スライド丁番のカップを受け入れる開口を有するスペーサと、
前記ミラー扉に埋め込まれて、前記スペーサと連結する連結部材と、
を具備することを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記ミラー扉が、前記カップを受け入れる凹部を有するフロートガラスと、前記フロートガラスに貼り合わされたミラーパネルと、からなる合わせガラスであり、
前記凹部の深さと前記開口の深さの合計が、前記カップの深さよりも大きいこと、
を特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記連結部材が、前記フロートガラスに形成された穴に埋め込まれる一対の金属ナットであること、
を特徴とする請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記一対の金属ナットのそれぞれが、前記ミラーパネル側の縁部から径方向に延びる拡張部を有すること、
を特徴とする請求項3に記載の固定具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー扉とキャビネットとを連結する丁番の固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラー扉とキャビネットとが丁番を介して連結されたミラーキャビネットないしミラーボックスが知られている。この種のミラーボックスでは、ミラー扉とキャビネットを連結するために、スライド丁番が好んで用いられている。スライド丁番は、外側からは視認できない、装着後に微調整できる等の利点を有する。
スライド丁番はカップと呼ばれる凸部を有しており、カップを、ミラー扉の内面側に形成された凹部に嵌め込んだ状態でミラー扉に固定される。かかるカップは所定の深さを有しているため、カップを受け入れるミラー扉には、使用されるカップの深さに応じた厚みが求められる。それゆえ、従来のミラー扉は、ベースパネル(例えばパーティクルボード)にミラーパネルを止着し、その外周部に縦サッシないしフレームを嵌め込み、所定の厚みを確保している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-121515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のミラー扉はカップの深さに応じた厚みが必要でありまたフレームを有するため、ミラー扉の厚みを薄くすることには限界がある。また、ミラーパネルがベースパネルから落下し、あるいは、貼り合わせたミラーパネル及びベースパネルがずれることがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、公知のスライド丁番を原則そのまま使用でき、しかもミラーボックスのミラー扉からフレームをなくしてミラー扉を薄くすることができる、スライド丁番の固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
ミラー扉とキャビネットとを連結するスライド丁番の固定具であって、
前記ミラー扉と前記スライド丁番との間に介在して、前記スライド丁番のカップを受け入れる開口を有するスペーサと、
前記ミラー扉に埋め込まれて、前記スペーサと連結する連結部材と、
を具備することを特徴とする固定具、を提供する。
【0007】
本発明の固定具においては、前記ミラー扉が、前記カップを受け入れる凹部を有するフロートガラスと、前記フロートガラスに貼り合わされたミラーパネルと、からなる合わせガラスであり、前記凹部の深さと前記開口の深さの合計が、前記カップの深さよりも大きいこと、が好ましい。
【0008】
また、本発明の固定具においては、前記連結部材が、前記フロートガラスに形成された穴に埋め込まれる一対の金属ナットであること、が好ましい。
【0009】
また、本発明の固定具においては、前記一対の金属ナットのそれぞれが、前記ミラーパネル側の縁部から径方向に延びる拡張部を有すること、が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、公知のスライド丁番を原則そのまま使用でき、しかもミラーボックスのミラー扉からフレームをなくしてミラー扉を薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る固定具10が適用される例示的なミラーボックス1における閉じた状態及び開いた状態を示す斜視図である。
図2】ミラー扉3をキャビネット5と連結するスライド丁番7の斜視図である。
図3】ミラー扉3におけるスライド丁番7の取付機構の説明図である。
図4】スペーサ11の斜視図、正面図、側面図、背面図及び底面図である。
図5】金属ナット13,14の上面図及び側面図である。
図6】ミラー扉3の組立て及びスライド丁番7の取付けの手順を示す図である。
図7】ミラー扉3に取付されたスライド丁番7の可動域を説明する図である。
図8】本実施形態の変形例において用いられるミラー扉4の組立図である。
図9】変形例において用いられる樹脂ナット23の正面図、上面図、底面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る固定具の代表的な実施形態について、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示されるものに限られない。また、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0013】
図1(A),(B)及び図2に示すように、本実施形態に係る固定具10は、ミラーボックス1においてミラー扉3とキャビネット5をつなぐスライド丁番7を固定するものである。
固定具10の説明に先立ち、ミラーボックス1の概略を述べる。
【0014】
ミラーボックス1は、鏡として機能しながら、収納も兼ね備えた住宅設備であり、単独で設置されてもよいし、例えば洗面台とともに設置されてもよい。
図1(A),(B)に示すように、ミラーボックス1は、ミラー扉3とキャビネット5とを含む。ミラーボックス1は、例えば、前面に中央及び両サイドのミラー扉3を有する三面鏡として構成することができるが、これに限られず、例えば一面鏡、二面鏡、四面鏡等でもよい。
【0015】
キャビネット5は、天板、両側板、背板及び底板で囲まれた空間部を有する。例えば三面鏡では、この空間部が縦板により、中央及び両サイドの収納空間に仕切られ、これらの収納空間の前面にそれぞれ中央及び両サイドのミラー扉3が取り付けられている。
キャビネット5を構成する天板、両側板、背板及び底板として、例えば、パーティクルボードからなるメラミン化粧板を好適に用いることができるが、これに限られない。
【0016】
図3(C),(D)に示すように、ミラー扉3は、ベースとなるフロートガラス31にミラーパネル32を中間膜33により止着した合わせガラスである。つまり、ミラー扉3にはフレームがない。したがって、ミラー扉3は、フレームを有する一般的なミラー扉3に比べて薄い。
ここではベースとしてフロートガラス31を例にとっているが、ミラーボックスのミラー扉を薄くしてミラー扉からフレームをなくすという本発明の目的に合致する限りにおいて他の材料を用いることもできる。他の材料としてはアクリル樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などの樹脂板、アルミニウム合金板などの軽量金属板、天然木又は合板などがあげられる。なお、以下、フロートガラスを代表例として本発明を説明する。
また、ミラーパネル32としてはクリアガラスに鏡面を形成したクリアミラーが一般的である。そのほか、アクリル樹脂系のミラーパネルも使用できる。
さらにフロートガラスとクリアミラーの組合せの場合、中間膜33はガラス同士を接着または密着することができる材料であれば限定されず、なかでもEVAが一般的である。また、ガラス同士の組合せ以外の場合は、それらの適切な接着剤または膜(シートまたはフィルム)などが使用できる。
【0017】
図3(A),(B)に示すように、ミラー扉3には、左右いずれかの側縁に沿って、スライド丁番7のカップ74に対応する凹部35が形成されている。この凹部35は、ミラー扉3の裏面(内面)側からフロートガラス31を貫通しているが、ミラーパネル32には達していない。したがって、凹部35の深さはスライド丁番7のカップ深さよりも浅いが、追って述べるとおり、不足する深さはスペーサ11によって補われる。なお、凹部35の内径はスライド丁番7のカップ74を受け入れるのに足りるものであればよい。
本発明者は、固定具10を含むミラーボックス1の試作を繰り返すことによって鋭意検討した結果、後述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、凹部35の内径は33~40mmであるのが好ましいことを確認している。
【0018】
ミラー扉3は、一対の穴部36,37を有する。穴部36,37は、凹部35の近傍で、かつ、ミラー扉3の左右の側縁に略平行に並んでいる。あるいは、穴部36,37は、スペーサ11の穴112,113に対応する位置に配置されているとも言える。
穴部36,37は、凹部35と同様に、ミラー扉3の内面側からフロートガラス31を貫通しているが、ミラーパネル32には達していない。穴部36,37の内径は、フロートガラス31の厚み方向にわたって略同一であるが、ミラーパネル32側の縁部は、金属ナット13,14の裾部132(図5参照)に対応してテーパー状に広がっている。
本発明者は、固定具10を含むミラーボックス1の試作を繰り返すことによって鋭意検討した結果、後述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、穴部36,37の内径は10~15mmであるのが好ましいことを確認している。また、本発明者は、後述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、穴部36,37に形成されたテーパーの角度は40~60°であり、テーパーの最大内径が穴部36,37の内径より1~3mmほど大きいことが好ましいことを確認している。
【0019】
ミラー扉3の穴部36,37には、金属ナット13,14が嵌め込まれる。金属ナット13,14は同一の仕様を持つので、これらを区別する必要がない場合には、単に金属ナット13という。
【0020】
金属ナット13は、図5に示すように、略円柱状の本体131から構成され、その中央にタップ穴133が形成されている。タップ穴133をスペーサ11の穴112,113に合わせ、ネジ等で固定することによって、ミラー扉3とスペーサ11とが固定される(図6(C),(D)参照)。
【0021】
金属ナット13(本体131)の外径は厚み方向にわたって略同一であり、ミラー扉3の穴部36,37の内径よりも小さい。ただし、本体131のミラーパネル側の裾部132はテーパー状(乃至はフランジ状)に広がった延長部として構成されており、ミラー扉3の穴部36,37の内径よりも大きくなる。したがって、金属ナット13が穴部36(37)に嵌め込まれたときに、裾部132が穴部36,37の内面に接触し、金属ナット13が外れることを防止する脱落防止部となる(図3(D)参照)。
本発明者は、固定具10を含むミラーボックス1の試作を繰り返すことによって鋭意検討した結果、後述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、金属ナット13の外径は穴部36(37)の内径に対して1~2mmほど小さく、裾部132の最大外径は穴部36(37)(テーパーを除く部分)の内径に対して1~3mmほど大きいことが好ましいことを確認している。また、本発明者は、後述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、金属ナット13の裾部132の角度は穴部36(37)に形成されたテーパーの角度と略同一か、わずかに小さいことが好ましいことを確認している。
【0022】
金属ナット13は、フロートガラス31(穴部36,37)に嵌め込まれたときにフロートガラス31とミラーパネル32とが適切に止着するように、あるいは、スペーサ11がミラー扉3に接触した状態で固定される(間に隙間を生じない)ように、フロートガラス31の厚みと略同一であるか、やや薄い厚みを有することによって、表面が略面一になるように構成されていることが好ましい。
なお、金属ナット13は、例えばアルミニウム等の金属材料で作製されてよい。
【0023】
ミラー扉3の具体な数値例を挙げると、本発明者は、固定具10を含むミラーボックス1の試作を繰り返すことによって鋭意検討した結果、後述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、フロートガラス31の厚みは3~6mmであること、ミラーパネル32の厚みは3~6mmであること、及び、中間膜33の厚みは0.3~1.6mmであること、が好ましいことを確認している。
なかでもフロートガラス31として4mmガラスを、ミラーパネル32としてクリアーミラー3mmを、中間膜33としてEVA0.39mmを、それぞれ用いると確実に本発明の効果を奏する固定具10が実現できる。
【0024】
次いで、スライド丁番7の説明に移る。
図2に示すように、ミラー扉3は、スライド丁番7を介して、キャビネット5に取り付けられている。なお、スライド丁番7は、ミラー扉3を広角度で開放可能とするための展伸・折り畳み可能な平行リンクプレートを備えてもよい(図7参照)。
本発明において、公知の構造のスライド丁番を原則そのまま使用できる。したがって、本発明の固定具を適用するためだけに新たな加工をスライド丁番に加えることは特に必要としない。なお、本発明の固定具をより効果的に活用するためにスライド丁番を修飾することを排除するものではない。
【0025】
スライド丁番7は、カップ74を含む本体71と、本体71をキャビネット5に取り付けるための座金72と、を含む。
カップ74は、本体71に対して回動可能に取り付けられて、ミラー扉3の凹部35及びスペーサ11の開口111に対応する凸部である(図6(E)参照)。カップ74の周縁部75には、ネジを介してスペーサ11と結合するための穴76が形成されている。
座金72は例えばネジ等の固定手段によりキャビネット5に固定され、固定された座金72に対して本体が取り付けられる(図2参照)。本体71の座金72への取付方式は、ワンタッチのスライドタイプでもよいし、ネジによる取り外しタイプでもよい。
【0026】
スライド丁番7は、閉じたミラー扉3がキャビネット5の側板に全て被さる全カブセタイプであることが好ましい(図1(A)参照)が、半分被さる半カブセタイプでも、被らないインセットタイプでもよい。
【0027】
スライド丁番7は、ソフトクローズダンパーを備えることが好ましい。ミラー扉3が完全に閉じる手前で、ソフトクロージングダンパーが作動し、ゆっくりと静かにミラー扉3が閉まる。また、スライド丁番7は、プッシュオープン機能を備えていてもよい。その場合には、併せてプッシュオープンキャッチが設けられることが好ましい。
ここで、ミラーボックス1に使用されるスライド丁番7としては、キャビネット5の種類や大きさにもよるが、通常ヘティヒ、ブルム及びハーフェレ等のスライド丁番が挙げられる。これらのスライド丁番の形状に関しては全かぶせ、半かぶせ及びインセット等があり、サイズに関しては26mmカップ、35mmカップ及び42mmカップ等があるが、これらに限定されるものではない。なお、上述の具体的なサイズの記載はいずれのスライド丁番を用いる場合でも好適なサイズであるが、それらに限定されるものではない。
【0028】
次いで固定具10について説明する。
固定具10は、スペーサ11と金属ナット13,14とを含んで構成される。金属ナット13,14については既に説明したので、以下、スペーサ11について説明する。
【0029】
スペーサ11はミラー扉3とスライド丁番7との間に介在している(図2参照)。すなわち、スライド丁番7は、スペーサ11を介してミラー扉3に取り付けられている。
【0030】
例えば図6(D),(E)に示すように、スペーサ11は、ミラー扉3の凹部35の深さとスライド丁番7のカップ深さとの差を埋め合わせるための板状の部材である。すなわち、スペーサ11を設けることで、ミラー扉3を薄くすることができ、かつミラー扉3からフレームをなくすことができる。
スペーサ11は、板金加工でケーシングの形態に、あるいは所定の厚さのある板状の材料を成型加工(射出成型)や切削加工して作製することができる。材料として例えば亜鉛合金ニッケルメッキ/アルミ合金などの金属材料、ABS、アクリル、PC、PBTなどの合成樹脂材料、天然木や合板などの木質材料などで作製されるが、これに限られない。
【0031】
図4に示すように、スペーサ11は、スライド丁番7のカップ74を陥入するための開口111を有している。開口111の内径は、ミラー扉3の凹部35の内径と略同一であり、スライド丁番7のカップ径と略同一かやや大きいことが好ましい。また、開口111の深さ(厚さ)は、ミラー扉3の凹部35の深さとスライド丁番7のカップ深さとの差分と略同一であるか、かかる差分よりもやや大きい。
本発明者は、固定具10を含むミラーボックス1の試作を繰り返すことによって鋭意検討した結果、上述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、スペーサ11の厚みは7~11mmであるのが好ましいことを確認している。
【0032】
スペーサ11はまた、スペーサ11をフロートガラス31へ固定するための穴112,113を有している。すなわち、穴112,113にボルトを挿入し、フロートガラス31に嵌め込まれた金属ナット13,14と結合することで、スペーサ11をフロートガラス31へ固定することができる(図6(C)参照)。ここでは、穴112,113は段差穴であるが、これに限られない。
【0033】
スペーサ11は更に、スペーサ11をスライド丁番7のカップ74と結合するための穴114,115を有している(図6(D)参照)。
【0034】
図6を中心に参照しながら、固定具10(スペーサ11及び金属ナット13,14)の使用方法を説明する。
【0035】
まず、ミラー扉3を準備する。すなわち、図6(A),(B)に示すように、穴部36,37に金属ナット13,14を嵌入したフロートガラス31とミラーパネル32とを中間膜33により止着することで、ミラー扉3を形成する。
【0036】
次いで、ミラー扉3にスペーサ11を取り付ける。すなわち、図6(C)に示すように、スペーサ11の穴112,113と金属ナット13,14のタップ穴133とが重なるようにスペーサ11をミラー扉3上に載置し、ネジやボルト等の取付具で固定する。
【0037】
そして、スペーサ11にスライド丁番7を取り付ける。すなわち、図6(D),(E)に示すように、スペーサ11の開口111にカップ74を嵌入し、スペーサ11の穴114,115とスライド丁番7の穴76,77とが重なるようにスライド丁番7をスペーサ11上に載せて、ネジやボルト等の取付具で固定する。
【0038】
このようにして、固定具10を介してスライド丁番7が回動自在にミラー扉3に取り付けられる(図7参照)。
そして、ミラー扉3をキャビネット5に取り付けると、ミラーボックス1が完成する。
【0039】
本実施形態では、固定具10を用いることにより、ミラー扉3からフレームを無くすことができる。したがって、スライド丁番7を使用するにもかかわらずミラー扉3を薄くすることが可能となる。
また、ミラー扉3がフレームを含まないことから、ミラー扉3からミラーパネル32が脱落することがない。また、ミラーパネル32とフロートガラス31とが貼り付け時にズレることもない。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【0041】
例えば、図8に示すように、金属ナット13,14の代わりに樹脂ナット23を用いて、スペーサ11とミラー扉4とを連結してもよい。
図9に示すように、樹脂ナット23は、フロートガラス31の穴部36,37に嵌入されるナット部231,232と、ナット部231,232動詞を接続するシート材233を含む。
樹脂ナット23を用いたミラー扉4は、穴部36,37に樹脂ナット23のナット部231,232を嵌め込んだフロートガラス31とミラーパネル32とを中間膜33にて止着することで作製できる(図8(A),(B)参照)。
なお、シート材233の厚みの分だけミラー扉4の中間膜33を除去することで、フロートガラス31とミラーパネル32とを歪みなく貼り合わせることができる。
【0042】
樹脂ナット23は、樹脂ナット23がミラー扉3の開閉等に伴ってスペーサ11から引っ張られたときに変形し、穴部36,37に大きな応力が生ずるのを抑制する。また、シート材233は、ミラー扉4の開閉等に伴って樹脂ナット23がスペーサ11によって引っ張られたときに、穴部36,37の周囲に生ずる応力を穴部36,37の間の領域に分散する役割を果たす。
樹脂ナット23を構成する材料としては、上記のように、樹脂ナット23がミラー扉4の開閉等に伴ってスペーサ11から引っ張られたときに変形し、穴部36,37に大きな応力が生ずるのを抑制する効果を奏するものであればよい。例えば、ABS樹脂、PC樹脂、PP樹脂及びPBT樹脂等が挙げられる。
【0043】
また、本発明者は、固定具10を含むミラーボックス1の試作を繰り返すことによって鋭意検討した結果、上述するサイズのスライド丁番を使用する場合、薄さ、強度、耐久性及び取扱性等の観点から、樹脂ナット23の長さ(即ちシート材233の長さ)は50~60mmであること、樹脂ナット23の厚みは0.3~1.6mmであること、及び、樹脂ナット23の幅は10~15mmであること、が好ましいことを確認している。
【符号の説明】
【0044】
1 ミラーボックス
3,4 ミラー扉
31 フロートガラス
32 ミラーパネル
33 中間膜
35 凹部
36,37 穴部
5 キャビネット
7 スライド丁番
71 本体
72 座金
74 カップ
10 固定具
11 スペーサ
111 開口
112,113 穴
114,115 穴
13,14 金属ナット
23 樹脂ナット
231,232 ナット部
233 シート材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9