(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079573
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】有機無機複合膜およびリチウム電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240604BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240604BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/429
H01M50/443 M
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/426
H01M50/423
H01M50/489
H01M50/451
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023166705
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】111145783
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】呂明怡
(72)【発明者】
【氏名】陳奕璋
(72)【発明者】
【氏名】楊長榮
(72)【発明者】
【氏名】呂奇明
(72)【発明者】
【氏名】張繻文
(72)【発明者】
【氏名】李明學
(72)【発明者】
【氏名】王宗雄
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021EE03
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE10
5H021EE11
5H021EE17
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA18
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA01
5H050EA12
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA02
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】数サイクル後におけるリチウム電池の可逆容量を改善するための有機無機複合膜、および該有機無機複合膜を含むリチウム電池を提供する。
【解決手段】リチウム電池は、正極板、負極板、正極板と負極板との間に配置された電解質、電解質中に配置されたセパレータ、および正極板の表面、負極板の表面、セパレータの表面、またはこれらの組み合わせに配置された有機無機複合膜を含む。有機無機複合膜は、粘土100重量部、リグノセルロース3から35重量部、および第1のバインダー25から270重量部を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土100重量部と、
リグノセルロース3から35重量部と、
第1のバインダー25から270重量部と
を含む有機無機複合膜。
【請求項2】
前記粘土にはモンモリロナイト粘土、バーミキュライト粘土、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の有機無機複合膜。
【請求項3】
前記粘土の直径が1マイクロメーター以下である、請求項1に記載の有機無機複合膜。
【請求項4】
前記第1のバインダーにはポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリビニルピロリドン、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の有機無機複合膜。
【請求項5】
前記リグノセルロースがキレート剤により改質されており、前記リグノセルロースと前記キレート剤との重量比が100:0.1から100:20である、請求項1に記載の有機無機複合膜。
【請求項6】
前記キレート剤には、N,N-ビス(5-ピリドキサールリン酸)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸、N,N’-ビス(3-ヒドロキシ-2-メチル-5-ホスホニルメチル)-4-ピリジルメチル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(DPDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(DCTA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(EDTP)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン三酢酸(DOXA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸三ナトリウム塩(DO3A)、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項5に記載の有機無機複合膜。
【請求項7】
酸化物ナノ粉末0.1から15重量部をさらに含む請求項1に記載の有機無機複合膜。
【請求項8】
前記酸化物ナノ粉末には、酸化アルミニウム、酸化シリコン、ベーマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項7に記載の有機無機複合膜。
【請求項9】
前記酸化物ナノ粉末の直径が1nmから200nmである、請求項1に記載の有機無機複合膜。
【請求項10】
前記有機無機複合膜の厚さが0.1マイクロメーターから10マイクロメーターである、請求項1に記載の有機無機複合膜。
【請求項11】
正極板と、
負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に配置された電解質と、
前記電解質中に配置されたセパレータと、
前記正極板の表面、前記負極板の表面、前記セパレータの表面、またはこれらの組み合わせに配置された請求項1に記載の有機無機複合膜と、
を含むリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野はリチウム電池に関し、より詳細にはリチウム電池中の有機無機複合膜に関する。
【背景技術】
【0002】
負極材となる黒鉛の1グラム当たりの実容量はその理論値(372mAh/g)に近い。1グラム当たりの容量をより高めるために、シリコン粒子、酸化シリコン、リチウム金属等(1グラム当たり容量が高いもの)を導入することができる。現在主流の技術は、酸化シリコン、シリコン粒子等のようなシリコン負極材の導入を必要とする。黒鉛層間に挿入されるだけと比べ、リチウムは、シリコンとは合金を形成することができる。このため、従来の黒鉛に比べ、負極材としてシリコンを導入することにより1グラム当たりの容量は明らかに高まる。例えば、酸化シリコン材料およびシリコン粒子の1グラム当たりの理論容量はそれぞれ1970mAh/gおよび4190mAh/gである。しかしながら、合金化プロセスは劇的な体積膨張を引き起こすことがあり、例えば酸化シリコンおよびシリコン粒子はそれぞれ約120%および300%膨張し得る。加えて、シリコンの初回のクーロン効率は黒鉛のそれよりも低い。体積膨張は、導電経路のネットワークを切断し得る構造クラックにつながる可能性があり、これによりサイクル寿命が短縮され、電池の品質が深刻な影響を受け得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許第200733878A号明細書
【特許文献2】台湾特許第200724603A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
数サイクル後における(シリコン負極を含む)リチウム電池の可逆容量を改善するための新規な材料および構造設計が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、粘土100重量部、リグノセルロース3から35重量部、および第1のバインダー25から270重量部を含む有機無機複合膜を提供する。
【0006】
本開示の一実施形態は、正極板、負極板、正極板と負極板との間に配置された電解質、電解質中に配置されたセパレータ、および正極板の表面、負極板の表面、セパレータの表面、またはこれらの組み合わせに配置された有機無機複合膜を含むリチウム電池を提供する。
【発明の効果】
【0007】
有機無機複合膜を含むリチウム電池は、数サイクル後における可逆容量により優れる。
【0008】
以下の実施形態において詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態がより充分に理解されるよう、多数の特定の詳細が示される。しかしながら、これら特定の詳細が無くとも1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であるということは明らかであろう。
【0010】
本開示の一実施形態は、粘土100重量部と、リグノセルロース3から35重量部と、第1のバインダー25から270重量部と、を含む有機無機複合膜を提供する。いくつかの実施形態において、リグノセルロースは原形(original)の(例えば改質されていない)リグノセルロースまたは改質リグノセルロースであってよい。リグノセルロースは主にセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンからなる。リグノセルロースは複数の極性基、例えばアルコール(alcohols)、アルデヒド(aldehydes)、ケトン(ketones)、酸(acids)、フェノール(phenolics)、エステル(esters)、およびタンニン(tannins)を含んでいる。よって、リグノセルロースは2価金属イオンを捕捉することができる。有機無機複合膜はエネルギー貯蔵素子に用いられ得る。有機無機複合膜がリチウム電池に用いられると、2価金属イオンがリチウム電池の正極板から放出されて、セパレータを透過し、化学的に還元されて負極板上に結晶核として堆積されるのを阻止することができる。結晶核はリチウムデンドライトの問題を引き起こしやすい。
【0011】
粘土の層構造は1価イオンを効率的に輸送することができるため、リチウムイオンがスムーズに粘土を通過することができ、リチウム電池の動作には影響しない。粘土の量が多すぎると、粘土が有機無機複合体中に均一に分散され得ず、有機無機複合膜の特性が低下してしまう。粘土の量が少なすぎると、負極の体積膨張と劣化を有効に抑制することができなくなる。いくつかの実施形態において、天然粘土には、モンモリロナイト粘土、バーミキュライト粘土、高いカチオン伝導性を有する別の粘土、またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、粘土の直径は1マイクロメーター以下であってよい。例えば、粘土の直径は0.02マイクロメーターから1マイクロメーターの間であってよい。粘土の直径が大きすぎると、複合溶液中に均一に分散しにくくなる。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1のバインダーはリグノセルロースと粘土とを有効に結合させて均一混合物を形成させることができる。第1のバインダーの量が多すぎると、リグノセルロースおよび/または粘土の量が少なすぎることになって、上記した問題を生じさせてしまう。第1のバインダーの量が少なすぎると、有機無機複合体中のリグノセルロースと粘土が層剥離する、または剥がれてしまい得る。第1のバインダーには、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリビニルピロリドン、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、改質リグノセルロースはキレート剤により改質されたリグノセルロースであってよい。いくつかの実施形態において、リグノセルロースとキレート剤との重量比は100:0.1から100:20である。キレート剤によって改質されたリグノセルロースは、有機無機複合膜の2価金属イオンを捕捉する効果をさらに高めて、リチウムデンドライトの問題を防止することができる。キレート剤の量が少なすぎると、その効果が、キレート剤によって改質されていないリグノセルロースのそれと似たようなものとなる。キレート剤の量が多すぎると、電気特性を阻害する。いくつかの実施形態において、キレート剤にはN,N-ビス(5-ピリドキサールリン酸)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸、N,N’-ビス(3-ヒドロキシ-2-メチル-5-ホスホニルメチル)-4-ピリジルメチル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(DPDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(DCTA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(EDTP)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン三酢酸(DOXA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸三ナトリウム塩(DO3A)、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0014】
いくつかの実施形態において、有機無機複合膜は酸化物ナノ粉末0.1から15重量部をさらに含んでいてよい。酸化物ナノ粉末は、有機無機複合膜の機械強度をさらに高めることができ、かつ粘土の層構造を支えることができる。酸化物ナノ粉末の量が少なすぎると、その効果が、酸化物ナノ粉末を有さない有機無機複合膜と似たようなものとなる。酸化物ナノ粉末の量が多すぎると、過度に多い量の酸化物ナノ粉末が粘土の層構造外に分布してしまい、かつ不十分な接着力のために非常に多くの無機材料が剥がれ易くなってしまう。その結果、電池は保護作用を失ってしまう。一実施形態において、酸化物ナノ粉末には酸化アルミニウム、酸化シリコン、ベーマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、またはこれらの組み合わせが含まれ、酸化物ナノ粉末の形態(configuration)は粒子、繊維、ワイヤーまたは網であってよい。いくつかの実施形態において、酸化物ナノ粉末の直径は1nmから200nmである。酸化物ナノ粉末の直径が大きすぎると、酸化物ナノ粉末が粘土の層構造中に有効に分散され得ず、支えることができなくなり、かつ複合溶液が均一に分散されにくいものとなってしまう。これにより、リチウムイオンの伝導性が影響を受け、リチウムデンドライトが形成される確率が高まり、かつ2価イオンを捕捉する効果が低下してしまう。酸化物ナノ粉末の直径が小さすぎると、酸化物ナノ粉末は、分散しにくいために凝集してしまう。
【0015】
いくつかの実施形態において、有機無機複合膜の厚さは、その応用に応じて0.1マイクロメーターから10マイクロメーターとすることができる。有機無機複合膜がリチウム電池に用いられる場合、有機無機複合膜が厚すぎると、イオン伝導率が低下してインピーダンスが増加してしまい、電気的劣化(electrical degradation)、例えば電池容量の低下等を招いてしまう。有機無機複合膜が薄すぎると、活物質が保護されなくなり、層剥離が起こり、キレート効果が低下してしまう。
【0016】
本開示の一実施形態は、正極板と、負極板と、正極板と負極板との間に配置された電解質と、電解質中に配置されたセパレータと、正極板の表面、負極板の表面、セパレータの表面、またはこれらの組み合わせに配置された有機無機複合膜とを含むリチウム電池を提供する。例えば、有機無機複合膜は、(1)負極板の表面だけに(直接接触して、もしくは直接接触せずに)形成され、かつ負極板とセパレータとの間に配置される、(2)正極板の表面だけに(直接接触して、もしくは直接接触せずに)形成され、かつ正極板とセパレータとの間に配置される、(3)セパレータの1つの表面だけに(直接接触して、もしくは直接接触せずに)形成され、かつセパレータと負極板との間に配置される、(4)セパレータの1つの表面だけに(直接接触して、もしくは直接接触せずに)形成され、かつセパレータと正極板との間に配置される、または(5)これらの組み合わせ(例えば、負極板の表面、正極板の表面、およびセパレータの2つの表面に(直接接触して、もしくは直接接触せずに)形成される)であってよい。有機無機複合膜がどこに位置しようとも、リチウム電池の性能は改善され得る。実際には、電解質は正極板を腐食し、例えばマンガンイオン、コバルトイオン、またはニッケルイオンのような2価金属イオンを解離させ得る。リチウム電池が有機無機複合膜を含まない場合、2価金属イオンはセパレータを透過して負極板に堆積され得るため、リチウムデンドライトがそこに形成されやすくなり、リチウム電池の性能を低下させてしまう。いくつかの実施形態において、負極板はシリコン負極板であってよい。有機無機複合膜がシリコン負極板上に形成されると、それは充電/放電サイクル時におけるシリコン負極板の体積膨張を抑制する助けとなり、電池劣化を軽減すると共に、電池のサイクル寿命を延長する。いくつかの実施形態において、負極板は黒鉛負極板であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、正極板はリチウム金属複合酸化物、第1の導電添加剤、および第2のバインダーを含み、リチウム金属複合酸化物にはLiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、Li2Cr2O7、Li2CrO4、LiNiO2、LiFeO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)、LiMPO4(Mは遷移金属)、LiMn0.5Ni0.5O2、LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、LiNixCoyAlzO2(x+y+z=1)、LiMc0.5Mn1.5O4(Mcは2価金属)、またはこれらの組み合わせが含まれ、第1の導電添加剤にはカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ニッケル粉末、アルミニウム粉末、チタン粉末、ステンレス鋼粉末、またはこれらの組み合わせが含まれ、第2のバインダーにはポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、ポリアミド、メラミン樹脂、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0018】
例えば、正極板は次のように作製されてよい。例えばリチウムニッケルコバルトマンガン金属酸化物であるリチウム金属複合酸化物65から75重量部、例えばN-メチルピロリドン(NMP)である溶媒25から35重量部、導電添加剤としての導電カーボンブラック2から5重量部、およびカーボンナノチューブ0.1から1重量部を数時間撹拌して混合する。次いで、PVDFのNMP溶液(PVDF1から5重量部含有)をその混合物に加え、引き続き数時間撹拌して混合し、正極スラリーを得る。その正極スラリーを集電体(例えばアルミニウム箔)上に塗布してから、150℃に加熱して乾燥させ、次いで圧延し、厚さ51マイクロメーターから65マイクロメーターの正極活性層を集電体上に形成する。こうして正極板が完成する。上述のプロセスのステップは単に説明のためのものに過ぎず、必要であれば当業者は正極板の材料の組成および作製の方法を調整することができ、上述の記載に限定されることはない、という点が理解されなければならない。
【0019】
いくつかの実施形態において、セパレータにはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの多層構造(例えばPE/PP/PE)が含まれる。
【0020】
いくつかの実施形態において、シリコン負極板は、シリコン負極活物質、第2の導電添加剤、および第3のバインダーを含む。シリコン負極活物質には酸化シリコン、シリコンと黒鉛との混合物、またはこれらの組み合わせが含まれる。第2の導電添加剤にはカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ニッケル粉末、アルミニウム粉末、チタン粉末、ステンレス鋼粉末、またはこれらの組み合わせが含まれる。第3のバインダーにはポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、ポリアミド、メラミン樹脂、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0021】
例えば、シリコン負極板は次のように作製することができる。酸化シリコン/黒鉛負極活物質SiOC40から55重量部、脱イオン水50から60重量部、導電添加剤としての導電カーボンブラック(例えばSuper-PもしくはKS6)またはカーボンナノチューブ0.1から1重量部、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム0.2から2重量部、および増粘剤としてのカルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)0.2から2重量部を数時間攪拌して混合し、シリコン負極スラリーを得る。そのシリコン負極スラリーを集電体(例えば銅箔)上に塗布してから、50℃から90℃に加熱して乾燥させ、次いで圧延し、厚さ55マイクロメーターから56マイクロメーターのシリコン負極活性層を集電体上に形成する。こうしてシリコン負極板が完成する。上述のプロセスのステップは単に説明のためのものに過ぎず、当業者は必要であればシリコン負極板の材料の組成および作製の方法を調整することができ、上述の記載に限定されることはない、という点が理解されなければならない。
【0022】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極板は黒鉛負極活物質、第2の導電添加剤、および第3のバインダーを含む。黒鉛負極活物質には人造黒鉛、天然黒鉛、改質黒鉛、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(graphitized mesocarbon microbead,MCMB)、またはこれらの組み合わせが含まれる。第2の導電添加剤にはカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ニッケル粉末、アルミニウム粉末、チタン粉末、ステンレス鋼粉末、またはこれらの組み合わせが含まれる。第3のバインダーにはポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、ポリアミド、メラミン樹脂、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0023】
電解質は液体タイプ、ゲルタイプ、または擬固体タイプであってよい。液体タイプの電解質溶液を例にとると、その主要な成分は有機溶媒、リチウム塩、およびその他の適用可能な添加剤である。有機溶媒はγ-ブチロラクトン(GBL)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、酢酸プロピル(PA)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、またはこれらの組み合わせであってよい。リチウム塩はLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、LiAlCl4、LiGaCl4、LiNO3、LiC(SO2CF3)3、LiN(SO2CF3)2、LiSCN、LiO3SCF2CF3、LiC6F5SO3、LiO2CCF3、LiSO3F、LiB(C6H5)4、LiCF3SO3、LiB(C2O4)2、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0024】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者に容易に理解されるよう、例示的な実施形態を詳細に説明する。ここに示された例示的な実施形態に限定されることなく、本発明概念は様々な形で具体化され得る。
【実施例0025】
以下の実施例では、正極板を次のように作製した。リチウム金属複合酸化物としてのリチウムニッケルコバルトマンガン金属酸化物(LNMC,Ronbayより市販されている S85E)67.6重量部、N-メチルピロリドン(NMP)30重量部、導電添加剤としての導電カーボンブラックSuper-P(TAIWAN MAXWAVE CO., LTD.より市販されている)1重量部、および単層カーボンナノチューブ(Tuballより市販されているSWCNT)0.25重量部を数時間攪拌して混合した。次いで、PVDFのNMP溶液(PVDF1.5重量部含有)(Solvayより市販されているSolef(登録商標)5130)をその混合物に加え、引き続き数時間攪拌して混合し、正極スラリーを得た。その正極スラリーをアルミニウム箔に塗布してから、150℃に加熱して乾燥させ、次いで圧延し、厚さ60マイクロメーターの正極活性層をアルミニウム箔上に形成した。こうして正極板が完成した。
【0026】
以下の実施例では、シリコン負極板を次のように作製した。酸化シリコン/黒鉛負極活物質SiOC 500(BTRより市販されているS500A)41.6重量部、脱イオン水56.9重量部、導電添加剤としての導電カーボンブラックSuper-P(TAIWAN MAXWAVE CO., LTD.より市販されている)0.129重量部、およびカーボンナノチューブ(Tuballより市販されているWater)0.1重量部、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム0.546重量部(SBR,Zeonより市販されている451B)、ならびに増粘剤としてのカルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)0.56重量部を数時間攪拌して混合し、シリコン負極スラリーを得た。そのシリコン負極スラリーを銅箔上に塗布してから、90℃に加熱して乾燥させ、次いで圧延し、厚さ55マイクロメーターの負極活性層を銅箔上に形成した。こうしてシリコン負極板が完成した。
【0027】
以下の実施例において、セパレータは三層セパレータ2320(PP/PE/PP, Celgardより市販されている)とした。NMC811/SiOC用のFEC含有電解質はShenzhen Capchem Technology Co., Ltd.より市販されているものとした。
【0028】
以下の実施例において、リグノセルロースを次のように作製した。竹繊維を粉砕し、600℃の高温で5時間焼結して炭化させてから、再度粉砕してリグノセルロースを形成した。キレート剤で改質したリグノセルロースは次のように作製した。DTPA(Mitsubishi Chemicalより市販されている。99%)0.9重量部およびリグノセルロース9重量部を、窒素下、エタノール(99.9%)90.1重量部中で混合してから、110℃のオーブンに入れて完全に乾燥させ、次いで粉砕し、キレート剤で改質したリグノセルロースを得た。
【0029】
比較例1
酸化アルミニウム(UNI-ONWARD Co.より市販されているUR-IALU001。直径約13nm)1.5gおよび粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)13.5gをアセトン185g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)35gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0030】
その有機無機複合塗布材料をシリコン負極板上に塗布してから乾燥させ、シリコン負極板の表面に有機無機複合膜を形成した。正極板およびシリコン負極板(その表面に有機無機複合膜を含む)をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜はシリコン負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0031】
電池の1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の放電容量は183.8mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の1サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は149mAh/gであった(可逆容量100%と定義した)。電池の100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は118mAh/g(可逆容量79.6%)であった。電池の300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は91.5mAh/g(可逆容量61.3%)であった。電池の500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は68.78mAh/g(可逆容量46%)であった。
【0032】
実施例1
リグノセルロース1.5gおよび粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)13.5gをアセトン185g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)35gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0033】
その有機無機複合塗布材料をシリコン負極板上に塗布してから乾燥させ、シリコン負極板の表面に有機無機複合膜を形成した。正極板およびシリコン負極板(その表面に有機無機複合膜を含む)をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜はシリコン負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0034】
電池の1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の放電容量は185.37mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の1サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は156.185mAh/gであった(可逆容量100%と定義した)。電池の100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は138.23mAh/g(可逆容量88.51%)であった。電池の300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は114.65mAh/g(可逆容量73.4%)であった。電池の500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は110.28mAh/g(可逆容量70.61%)であった。
【0035】
実施例2
実施例1の有機無機複合塗布材料を正極板上に塗布してから乾燥させ、正極板の表面に有機無機複合膜を形成した。その正極板(その表面に有機無機複合膜を含む)およびシリコン負極板をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜は正極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0036】
電池の1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の放電容量は183.60mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の可逆容量は90.4%であった。電池の300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の可逆容量は81.41%であった。電池の500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の可逆容量は74.66%であった。
【0037】
実施例3
実施例1の有機無機複合塗布材料をセパレータに塗布してから乾燥させ、セパレータの表面に有機無機複合膜を形成した。リン酸鉄リチウム正極板および黒鉛負極板をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータ(その表面に有機無機複合膜を含む)を正極板と負極板との間に配置した。有機無機複合膜は負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板と負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で3.65Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0038】
実施例4
リグノセルロース1.5gおよび粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)13.5gをアセトン185g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)35gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0039】
その有機無機複合塗布材料を半透膜に塗布してから乾燥させ、半透膜上に有機無機複合膜を形成した。その半透膜(その表面に有機無機複合膜を含む)を、左管と右管との間の連結管中に配置した。左管には500ppmのMn2+イオンおよびシュウ酸ナトリウムのマゼンタ色の水溶液が入っており、右管には脱イオン水が入っていた。6時間後、右管は依然として澄んでおり(Mn2+イオンが検出されなかった)、左管中の溶液の色は薄くなった。明らかに、有機無機複合膜がMn2+イオンを吸着できており、そのために左管中のMn2+イオンが有機無機複合膜を透過できなくなっていた。また、半透膜(その表面に有機無機複合膜がない)を左管と右管との間の連結管中に配置した。左管には、500ppmのMn2+イオンおよびシュウ酸ナトリウムのマゼンタ色の水溶液が入っており、右管には脱イオン水が入っていた。6時間後、右管は淡いマゼンタ色に変わり(Mn2+イオンが検出された)、左管中の溶液の色は薄くなった。明らかに、Mn2+イオンが半透膜を透過できたのである。
【0040】
実施例5
キレート剤で改質されたリグノセルロース1.5gおよび粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)13.5gをアセトン185g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)35gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0041】
その有機無機複合塗布材料を半透膜に塗布してから乾燥させ、半透膜上に有機無機複合膜を形成した。その半透膜(その表面に有機無機複合膜を含む)を、左管と右管との間の連結管中に配置した。左管には、500ppmのMn2+イオンおよびシュウ酸ナトリウムのマゼンタ色の水溶液が入っており、右管には脱イオン水が入っていた。12時間後、右管は依然として澄んでおり(Mn2+イオンが検出されなかった)、左管中の溶液の色は薄くなった。明らかに、有機無機複合膜がMn2+イオンを吸着できており、そのために左管中のMn2+イオンが有機無機複合膜を透過できなくなっていた。また、半透膜(その表面に有機無機複合膜がない)を左管と右管との間の連結管中に配置した。左管には、500ppmのMn2+イオンおよびシュウ酸ナトリウムのマゼンタ色の水溶液が入っており、右管には脱イオン水が入っていた。12時間後、右管は淡いマゼンタ色に変わり(Mn2+イオンが検出された)、左管中の溶液の色は薄くなった。明らかに、Mn2+イオンが半透膜を透過できたのである。
【0042】
実施例6
キレート剤で改質されたリグノセルロース1.5gおよび粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)13.5gをアセトン185g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)35gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0043】
その有機無機複合塗布材料をシリコン負極板に塗布してから乾燥させ、シリコン負極板の表面に有機無機複合膜を形成した。正極板およびシリコン負極板(その表面に有機無機複合膜を含む)をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜はシリコン負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0044】
1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の電池の放電容量は187.3mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。1サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は163.53mAh/gであった。
【0045】
実施例7
実施例6の有機無機複合塗布材料を正極板に塗布してから乾燥させ、正極板の表面に有機無機複合膜を形成した。その正極板(その表面に有機無機複合膜を含む)およびシリコン負極板をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜は正極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0046】
電池の1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の放電容量は184.02mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の可逆容量は99.98%であった。電池の300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の可逆容量は93.26%であった。電池の500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の可逆容量は88.31%であった。
【0047】
実施例8
実施例6の有機無機複合塗布材料をセパレータに塗布してから乾燥させ、セパレータの表面に有機無機複合膜を形成した。リン酸鉄リチウム正極板および黒鉛負極板をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータ(その表面に有機無機複合膜を含む)を正極板と負極板との間に配置した。有機無機複合膜は負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板と負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で3.65Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0048】
1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の電池の充電容量は120.8mAh/g、放電容量は116.1mAh/gであった。初回サイクルの充電/放電において電池の不可逆容量は3.9%であり、電池のインピーダンスは260mohmであった。
【0049】
実施例9
リグノセルロース1.5g、粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)13.5g、および酸化アルミニウム粉末1.5gをアセトン185g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)35gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0050】
その有機無機複合塗布材料をシリコン負極板に塗布してから乾燥させ、シリコン負極板の表面に有機無機複合膜を形成した。正極板およびシリコン負極板(その表面に有機無機複合膜を含む)をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜はシリコン負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0051】
1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の電池の放電容量は188.6mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の1サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は152.16mAh/gであった(可逆容量100%と定義した)。100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は143.4mAh/g(可逆容量94.25%)であった。300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は121.65mAh/gであった(可逆容量79.95%)。500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は114.61mAh/gであった(可逆容量75.32%)。
【0052】
比較例2
正極板およびシリコン負極板をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0053】
1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の放電容量は183.8mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の1サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は149mAh/g(可逆容量100%と定義した)であった。100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は118mAh/gであった(可逆容量79.6%)。300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は91.5mAh/gであった(可逆容量61.3%)。500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は68.7mAh/gであった(可逆容量46%)。
【0054】
比較例3
リン酸鉄リチウム正極板および黒鉛負極板をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板と負極板との間に配置した。電解質を正極板と負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で3.65Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0055】
電池の1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の充電容量は118.4mAh/g、放電容量は111.3mAh/gであった。初回サイクルの充電/放電における電池の不可逆容量は6%であり、電池のインピーダンスは280mohmであった。
【0056】
比較例4
粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)15gをアセトン185g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)35gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0057】
その有機無機複合塗布材料をシリコン負極板に塗布してから乾燥させ、シリコン負極板の表面に有機無機複合膜を形成した。正極板およびシリコン負極板(その表面に有機無機複合膜を含む)をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜はシリコン負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0058】
1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の電池の放電容量は184.2mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の1サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は142.4mAh/g(可逆容量100%と定義した)であった。100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は116.7mAh/gであった(可逆容量81.93%)。300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は92.95mAh/gであった(可逆容量65.3%)。500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は73.2mAh/gであった(可逆容量51.43%)。
【0059】
比較例5
粘土としてのモンモリロナイト粘土(Southern clayより市販されている。直径0.5マイクロメーター未満)40gをアセトン160g中に分散した。PVDF粉末(ARKEMより市販されているKynar HSV900)10gをその分散液に加えてから、撹拌して完全に分散させることにより、有機無機複合塗布材料を得た。
【0060】
その有機無機複合塗布材料をシリコン負極板に塗布してから乾燥させ、シリコン負極板の表面に有機無機複合膜を形成した。正極板およびシリコン負極板(その表面に有機無機複合膜を含む)をそれぞれ適度なサイズにカットし、セパレータを正極板とシリコン負極板との間に配置した。有機無機複合膜はシリコン負極板とセパレータとの間に配置した。電解質を正極板とシリコン負極板との間のスペースに注入し、セパレータが電解質中に配されるようにした。上記構造を1日静置し、電解質を拡散させ、正極板および負極板に含浸させた。次いで、上記構造を0.1Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。この充電/放電サイクルを3回繰り返し、フォーメーションプロセスを終了し、これによりリチウム電池を完成した。
【0061】
1サイクルの充電/放電(0.1C/0.1C)後の電池の放電容量は180mAh/gであった。さらなるサイクルテストを次のように行った。電池を0.5Cの電流で4.2Vまで充電してから、0.5Cの電流で2.5Vまで放電し、1サイクルを完了した。電池の1サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の放電容量は99.5mAh/g(可逆容量100%と定義した)であった。100サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は88.5mAh/gであった(可逆容量94.25%)。300サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は79.8mAh/gであった(可逆容量80.1%)。500サイクルの充電/放電(0.5C/0.5C)後の電池の放電容量は84.6mAh/gであった(可逆容量は85%)。
【0062】
開示された方法および物質に様々な変更および変化を加え得るということが、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例として見なされるよう意図されており、本開示の真の範囲は以下のクレームおよびそれらの均等物によって示される。