(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079598
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】レーザーダイオード及びレーザーダイオードの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20240604BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20240604BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240604BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/183
H01S5/343
H01S5/323
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187998
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】111145948
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517370630
【氏名又は名称】晶呈科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】劉 埃森
(72)【発明者】
【氏名】馮 祥▲アン▼
(72)【発明者】
【氏名】鍾 承育
(72)【発明者】
【氏名】陳 亞理
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA08
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC35
5F173AC42
5F173AC53
5F173AF96
5F173AH08
5F173AK08
5F173AK20
5F173AQ03
5F173AR23
5F173AR72
5F173MC12
5F173MD16
(57)【要約】
【課題】レーザーダイオードを提供する。
【解決手段】基板熱膨張率を有する原始基板と、原始基板に形成されるエピタキシャル構造と、原始基板の下方に設けられ且つ少なくとも、互いに重ねて設けられ且つ材質が異なる第1の金属層及び第2の金属層を含み、変調熱膨張率を有する複合多層金属プレートと、を備え、原始基板は、エピタキシャル構造を成長させる場合に初期厚さを有し、結合厚さまで薄肉化されてから複合多層金属プレートに結合され、且つ複合多層金属プレートの変調熱膨張率と基板熱膨張率とが近いレーザーダイオード。これにより、レーザーダイオードの放熱能力及び出光効率を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板熱膨張率を有する原始基板と、
前記原始基板に形成されるエピタキシャル構造と、
前記原始基板の下方に設けられ且つ少なくとも、互いに重ねて設けられ且つ材質が異なる第1の金属層及び第2の金属層を含み、変調熱膨張率を有する複合多層金属プレートと、
を備え、
前記原始基板は、前記エピタキシャル構造を成長させる場合に初期厚さを有し、結合厚さまで薄肉化されてから前記複合多層金属プレートに結合され、且つ前記複合多層金属プレートの前記変調熱膨張率と前記基板熱膨張率とが近いレーザーダイオード。
【請求項2】
前記レーザーダイオードは、垂直共振器型面発光レーザーダイオード構造を有する請求項1に記載のレーザーダイオード。
【請求項3】
前記原始基板の材質はヒ化ガリウムであり、前記エピタキシャル構造はエピタキシャル熱膨張率を有し、前記基板熱膨張率は前記エピタキシャル熱膨張率に近似している請求項2に記載のレーザーダイオード。
【請求項4】
前記エピタキシャル構造は、
前記原始基板に設けられる第1の反射器と、
前記第1の反射器に設けられる活性層と、
前記活性層に設けられる第2の反射器と、
を含む請求項2に記載のレーザーダイオード。
【請求項5】
前記第1の反射器は複数のN型反射層から重ね合わせられ、前記第2の反射器は複数のP型反射層から重ね合わせられ、前記P型反射層の層数は前記N型反射層の層数よりも多い請求項4に記載のレーザーダイオード。
【請求項6】
前記レーザーダイオードは、端面発光レーザーダイオード構造を有する請求項1に記載のレーザーダイオード。
【請求項7】
前記複合多層金属プレートは、第3の金属層を更に含み、前記第2の金属層が前記第1の金属層と前記第3の金属層との間に設けられ、且つ前記第3の金属層と前記第1の金属層とは材質が同一である請求項1に記載のレーザーダイオード。
【請求項8】
前記第1の金属層及び前記第3の金属層の厚さは、前記第2の金属層の厚さよりも小さい請求項7に記載のレーザーダイオード。
【請求項9】
前記第1の金属層及び前記第3の金属層の材質は銅であり、前記第2の金属層の材質はニッケル鉄合金である請求項7に記載のレーザーダイオード。
【請求項10】
初期厚さを有する原始基板にエピタキシャル構造を形成するエピタキシャル構造成長工程と、
薄肉化プロセスを行って、前記原始基板を結合厚さまで薄肉化する原始基板薄肉化工程と、
少なくとも、前記原始基板と第2の金属層との間に位置する第1の金属層、及び前記第2の金属層を含む複合多層金属プレートを前記原始基板の下方に設ける複合多層金属プレート設置工程と、
を備えるレーザーダイオードの製造方法。
【請求項11】
前記エピタキシャル構造の一部を除去するメサエッチング工程と、
前記エピタキシャル構造が前記原始基板に順次に重ねて設けられた第1の反射器、活性層及び第2の反射器を含み、前記第2の反射器に対して酸化プロセスを行って、中空状となり且つ内縁を有する酸化部を形成する酸化工程と、
を更に備える請求項10に記載のレーザーダイオードの製造方法。
【請求項12】
前記原始基板薄肉化工程において、仮基板を前記エピタキシャル構造の上方に貼り付け、且つ研磨するように薄肉化プロセスを行う請求項11に記載のレーザーダイオードの製造方法。
【請求項13】
前記複合多層金属プレート設置工程において、前記仮基板を除去する請求項12に記載のレーザーダイオードの製造方法。
【請求項14】
前記複合多層金属プレート設置工程の後で、P型金属層を前記第2の反射器に設ける電極形成工程を更に備える請求項13に記載のレーザーダイオードの製造方法。
【請求項15】
前記P型金属層に接続される金属パッドを形成する金属パッド形成工程を更に備える請求項14に記載のレーザーダイオードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオード及びダイオードの製造方法に関し、特に、発光可能なレーザーダイオード及びレーザーダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイオード(Laser Diode)は、半導体から製造され、そのエピタキシャル構造が分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector;DBR)を含み、光子を反射する光共振器を形成することができ、他の発光ダイオードよりも高効率のメリットを有する。
【0003】
レーザーダイオードが作動する場合、エピタキシャル構造が熱エネルギーを大量に発生させてエピタキシャル構造の下方の原始基板に伝導し、原始基板が一般的にヒ化ガリウムから製造され、熱伝導係数が割に低いので、放熱不良の課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、上記課題を解決するために、如何にレーザーダイオードの構造を改善するかは、関連業者の努力して追求する目標となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、レーザーダイオード及びレーザーダイオードの製造方法を提供し、その構造配置によって、レーザーダイオードの放熱能力の増加及びその効能の向上に寄与することができる。
【0006】
本発明の一実施形態によると、基板熱膨張率を有する原始基板と、原始基板に形成されるエピタキシャル構造と、原始基板の下方に設けられ且つ少なくとも、互いに重ねて設けられ且つ材質が異なる第1の金属層及び第2の金属層を含み、変調熱膨張率を有する複合多層金属プレートと、を備え、原始基板は、エピタキシャル構造を成長させる場合に初期厚さを有し、結合厚さまで薄肉化されてから複合多層金属プレートに結合され、且つ複合多層金属プレートの変調熱膨張率と基板熱膨張率とが近いレーザーダイオードを提供する。
【0007】
これにより、複合多層金属プレートによってレーザーダイオードの放熱能力を増加させることができ、且つ原始基板が薄肉化されたため、その熱伝導の垂直距離が短縮され、熱エネルギーの複合多層金属プレートへの伝導時間を早めることができる。なお、複合多層金属プレートが異なる材質の第1の金属層及び第2の金属層を含むので、変調熱膨張率と基板熱膨張率とが近くなるように厚さを制御することで、原始基板と複合多層金属プレートとが接合した後で熱膨張率の差異が大きすぎて分離することを避けることができる。なお、複合多層金属プレートを接合させることで、出光効率を効果的に向上させることができる。
【0008】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、レーザーダイオードは、垂直共振器型面発光レーザーダイオード構造を有してよい。
【0009】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、原始基板の材質はヒ化ガリウムであってよく、エピタキシャル構造はエピタキシャル熱膨張率を有し、基板熱膨張率がエピタキシャル熱膨張率に近似している。
【0010】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、エピタキシャル構造は、原始基板に設けられる第1の反射器と、第1の反射器に設けられる活性層と、活性層に設けられる第2の反射器と、を含んでよい。
【0011】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、第1の反射器は複数のN型反射層から重ね合わせられてよく、第2の反射器は複数のP型反射層から重ね合わせられてよく、P型反射層の層数はN型反射層の層数よりも多くてよい。
【0012】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、レーザーダイオードは、端面発光レーザーダイオード構造を有してよい。
【0013】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、複合多層金属プレートは、第3の金属層を更に含んでよく、第2の金属層が第1の金属層と第3の金属層との間に設けられ、且つ第3の金属層と第1の金属層とは材質が同一である。
【0014】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、第1の金属層及び第3の金属層の厚さは、第2の金属層の厚さよりも小さくてよい。
【0015】
前記実施形態のレーザーダイオードによると、第1の金属層及び第3の金属層の材質は銅であってよく、第2の金属層の材質はニッケル鉄合金であってよい。
【0016】
本発明の別の実施形態によると、初期厚さを有する原始基板にエピタキシャル構造を形成するエピタキシャル構造成長工程と、薄肉化プロセスを行って、原始基板を結合厚さまで薄肉化する原始基板薄肉化工程と、少なくとも、原始基板と第2の金属層との間に位置する第1の金属層、及び第2の金属層を含む複合多層金属プレートを原始基板の下方に設ける複合多層金属プレート設置工程と、を備えるレーザーダイオードの製造方法を提供する。
【0017】
前記のレーザーダイオードの製造方法によると、エピタキシャル構造の一部を除去するメサエッチング工程と、エピタキシャル構造が原始基板に順次に重ねて設けられた第1の反射器、活性層及び第2の反射器を含み、第2の反射器に対して酸化プロセスを行って、中空状となり且つ内縁を有する酸化部を形成する酸化工程と、を更に備えてよい。
【0018】
前記のレーザーダイオードの製造方法によると、原始基板薄肉化工程において、仮基板をエピタキシャル構造の上方に貼り付け、且つ研磨するように薄肉化プロセスを行ってよい。
【0019】
前記のレーザーダイオードの製造方法によると、複合多層金属プレート設置工程において、仮基板を除去してよい。
【0020】
前記のレーザーダイオードの製造方法によると、複合多層金属プレート設置工程の後で、P型金属層を第2の反射器に設ける電極形成工程を更に備えてよい。
【0021】
前記のレーザーダイオードの製造方法によると、P型金属層に接続される金属パッドを形成する金属パッド形成工程を更に備えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施例によるレーザーダイオードを示す前面模式図である。
【
図2】本発明の第2実施例によるレーザーダイオードを示す斜視模式図である。
【
図3】本発明の第3実施例によるレーザーダイオードの製造方法を示すブロックフローチャートである。
【
図4】
図3の第3実施例のレーザーダイオードの製造方法を示す製造流れ図である。
【
図5】
図3の第3実施例のレーザーダイオードの製造方法を適用して製造されたレーザーダイオードを示す上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。明らかに説明するために、多くの実際の細部を下記の叙述で合わせて説明する。しかしながら、読者は、これらの実際の細部が、本発明を制限するためのものではないことを理解すべきである。つまり、本発明の一部の実施例においては、これらの実際の細部は、必要なものではない。また、図面を簡略化するために、ある従来慣用の構造及び素子は、図面において簡単で模式的に示される。また、重複した素子を、同一の番号又は類似の番号で表すことができる。
【0024】
なお、本明細書では、第1の、第2の、第3の等の用語が単に異なる素子又は成分を述べるためのものであるが、素子・成分自体に対して制限するものではないので、第1の素子・成分は第2の素子・成分と呼ばれてもよい。且つ、本明細書における素子・成分・機構・モジュールの組み合わせは、この領域における一般的な周知、常規又は習知の組み合わせではなく、素子・成分・機構・モジュール自体が習知されるかに応じて、その組み合わせ関係が簡単に当業者により容易に完成されるかを判定するわけにはいかない。
【0025】
本発明の第1実施例によるレーザーダイオード100を示す前面模式図である
図1を参照されたい。レーザーダイオード100は、原始基板110と、エピタキシャル構造120と、複合多層金属プレート130と、を備える。原始基板110が基板熱膨張率を有し、エピタキシャル構造120が原始基板110に形成される。複合多層金属プレート130は、原始基板110の下方に設けられ且つ少なくとも、互いに重ねて設けられ且つ材質が異なる第1の金属層131及び第2の金属層132を含み、変調熱膨張率を有する。原始基板110は、エピタキシャル構造120を成長させる場合に初期厚さを有し、結合厚さまで薄肉化されてから複合多層金属プレート130に結合され、且つ複合多層金属プレート130の変調熱膨張率と基板熱膨張率とが近い。
【0026】
これにより、複合多層金属プレート130によってレーザーダイオード100の放熱能力を増加させることができ、且つ原始基板110が既に薄肉化されるため、その熱伝導の垂直距離が短縮され、熱エネルギーの複合多層金属プレート130への伝導を早めることができる。なお、複合多層金属プレート130が異なる材質の第1の金属層131及び第2の金属層132を含むので、変調熱膨張率と基板熱膨張率とが近くなるように厚さを制御することで、原始基板110と複合多層金属プレート130とが接合した後で熱膨張率の差異が大きすぎて分離しないようにすることができる。なお、複合多層金属プレート130を接合することで、出光効率を効果的に向上させることができ、特に光出力及び光変換効率を向上させることができる。レーザーダイオード100の細部については、後で詳しく説明する。
【0027】
第1実施例のレーザーダイオード100は、垂直共振器型面発光レーザーダイオード構造(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser;VCSEL)を有してよい。そのため、エピタキシャル構造120は、第1の反射器121と、活性層123と、第2の反射器122と、を含んでよい。第1の反射器121が原始基板110に設けられ、活性層123が第1の反射器121に設けられ、第2の反射器122が活性層123に設けられる。
【0028】
第1の反射器121は、複数のN型反射層1211から重ね合わせられてよく、材料がN型ドーパントのドープされたN型半導体であってよい。活性層123としては、量子井戸(quantum well)を採用してよい。第2の反射器122は、複数のP型反射層1221から重ね合わせられてよく、材料がP型ドーパントのドープされたP型半導体であってよく、P型反射層1221の層数はN型反射層1211の層数よりも多くてよい。なお、エピタキシャル構造120は、第2の反射器122内に位置し且つ内縁1241を有する酸化部124を含んでよい。レーザーダイオード100のエピタキシャル構造120については、習知であり且つ本発明の重点ではないので、その細部を詳しく説明しないが、且つ他の実施例において、エピタキシャル構造は上記開示により限定されない。
【0029】
原始基板110は、材質がヒ化ガリウム(GaAs)であってよく、その基板熱膨張率が約5.73ppm/Kであり、熱伝導係数が約52W/(mK)であるが、エピタキシャル構造120は、エピタキシャル熱膨張率を有してよく、エピタキシャル熱膨張率が約5.5ppm/K~5.8ppm/Kであってよいので、基板熱膨張率がエピタキシャル熱膨張率に近似している。原始基板110は、初期に、例えば430μmの初期厚さを有してよく、第1の反射器121、活性層123及び第2の反射器122を順次に成長させる。その後、原始基板110を例えば研磨するように薄肉化し、初期厚さを例えば150μmよりも小さい結合厚さまで縮小して、複合多層金属プレート130に結合させてよい。一実施例において、結合厚さは120μmであってよいが、別の実施例において、結合厚さは100μmであってよいが、これらに限定されない。なお、原始基板110の結合厚さが薄いほど、光出力及び光変換効率の向上に更に寄与することができる。
【0030】
複合多層金属プレート130は、第3の金属層133を更に含んでよく、第2の金属層132が第1の金属層131と第3の金属層133との間に設けられ、且つ第3の金属層133と第1の金属層131とは材質が同一である。第1の金属層131及び第3の金属層133の材質は例えば銅であってよく、第2の金属層132の材質は例えばニッケル鉄合金であってよいが、これらに限定されない。
【0031】
なお、第1の金属層131及び第3の金属層133の厚さは、第2の金属層132の厚さよりも小さくてよく、且つ第1の金属層131、第2の金属層132及び第3の金属層133の厚さの比率は1:3:1~1:9:1に介在してよく、このように、異なる材質の原始基板110に応じて異なる変調熱膨張率を配置することができ、例えば複合多層金属プレート130の変調熱膨張率を約5.8ppm/K~6.0ppm/Kにし、基板熱膨張率に対して正負5%の間にし、且つ効果的に放熱させるように熱伝導係数を約180W/(mK)にし、また熱抵抗を習知のレーザーダイオードよりも約20%低下させてよい。なお、複合多層金属プレート130の抵抗率が約10-11MΩ・cmであり、ヒ化ガリウムから製造された原始基板110の抵抗率が約0.01MΩ・cm~100MΩ・cmであるため、原始基板110が薄肉化されて複合多層金属プレート130を貼り付けられると、レーザーダイオード100全体の抵抗値が低下して、電流密度が向上し、更に光出力を効果的に増加させることができる。また、複合多層金属プレート130のヤング弾性率が130Gpaであり、ヒ化ガリウムから製造された原始基板110のヤング弾性率は83Gpaであるので、複合多層金属プレート130によって支持エピタキシャル構造120を強化させることができる。
【0032】
本発明の第2実施例によるレーザーダイオード200を示す斜視模式図である
図2を参照されたい。レーザーダイオード200は、同様に、原始基板210と、エピタキシャル構造220と、複合多層金属プレート230と、を備え、複合多層金属プレート230が第1の金属層231、第2の金属層232及び第3の金属層233を含んでよいが、レーザーダイオード200は、端面発光レーザーダイオード構造(Edge Emitting Laser;EEL)を有してよいことに、第1実施例と異なっている。そのため、エピタキシャル構造220は、例えば、N型緩衝層(Buffer layer)、N型被覆層(N-Cladding Layer)、下部分離閉じ込めヘテロ構造層(Separated Confinement Hetero-structure;SCH)、活性層、上部分離閉じ込めヘテロ構造層、P型被覆層(P-Cladding Layer)及び接触層(Contact)を含み、且つリッジ(ridge)構造を有してよい。なお、第2実施例の原始基板210は、リン化インジウム(InP)であってよく、また複合多層金属プレート230の第1の金属層231、第2の金属層232及び第3の金属層233の厚さを調整することで、複合多層金属プレート230の変調熱膨張率と基板熱膨張率とを近くすることができる。
【0033】
図3、
図4及び
図5を参照されたく、
図3は本発明の第3実施例によるレーザーダイオードの製造方法S300を示すブロックフローチャートであり、
図4は
図3の第3実施例のレーザーダイオードの製造方法S300を示す製造流れ図であり、
図5は
図3の第3実施例のレーザーダイオードの製造方法S300を適用して製造されたレーザーダイオード300を示す上面模式図である。レーザーダイオードの製造方法S300は、エピタキシャル構造成長工程S01と、原始基板薄肉化工程S02と、複合多層金属プレート設置工程S03と、を備える。
【0034】
エピタキシャル構造成長工程S01において、初期厚さD1を有する原始基板310に、エピタキシャル構造320を形成する。
【0035】
原始基板薄肉化工程S02において、薄肉化プロセスを行って、原始基板310を結合厚さD2まで薄肉化する。
【0036】
複合多層金属プレート設置工程S03において、少なくとも、原始基板310と第2の金属層332との間に位置する第1の金属層331、及び第2の金属層332を含む複合多層金属プレート330を原始基板310の下方に設ける。
【0037】
これにより、原始基板310を薄肉化してから複合多層金属プレート330に貼り付けると、レーザーダイオード300の発光性能及び放熱能力を効果的に向上させることができる。
【0038】
レーザーダイオードの製造方法S300は、メサエッチング工程S06と、酸化工程S07と、を更に備えてよい。メサエッチング工程S06において、エピタキシャル構造320の一部を除去する。酸化工程S07において、エピタキシャル構造320が原始基板310に順次に重ねて設けられる第1の反射器321、活性層323、第2の反射器322を含み、第2の反射器322に対して酸化プロセスを行って、中空状となり且つ内縁3241を有する酸化部324を形成する。
【0039】
図3及び
図4に示すように、最初に、エピタキシャル構造成長工程S01を行って、エピタキシャル構造320を原始基板310に成長させ、且つこの場合原始基板310がまだ薄肉化されていないので、初期厚さD1は結合厚さD2よりも大きい。その後、原始基板薄肉化工程S02を行って、まず、仮基板T1をエピタキシャル構造320の上方に貼り付け、且つ研磨するように薄肉化プロセスを行って、仮基板T1の配置によって、研磨機によってエピタキシャル構造320ではなく仮基板T1を挟み、エピタキシャル構造320が破壊しないようにする。
【0040】
後で複合多層金属プレート設置工程S03を行ってよく、複合多層金属プレート330を原始基板310の下方に設ける以外、更に、仮基板T1を除去してよい。複合多層金属プレート330は、第1実施例のように、互いに重ね合わせられた第1の金属層331、第2の金属層332及び第3の金属層333を順次に含んでよく、また第1の金属層331、第2の金属層332及び第3の金属層333は、複合多層金属プレート330の変調熱膨張率が原始基板310の基板熱膨張率に近くなるように、前もって配置されてよい。
【0041】
レーザーダイオードの製造方法S300は、複合多層金属プレート設置工程S03の後で、ダイボンド金属層形成工程S04及び電極形成工程S05を更に備えてよい。ダイボンド金属層形成工程S04としては、複合多層金属プレート330の下方に、後でダイボンドに用いられるダイボンド金属層350を形成する。電極形成工程S05としては、P型金属層340を第2の反射器322に設け、且つP型金属層340は中空リングであってよい。その後、またメサエッチング工程S06を行って、第1の反射器321、活性層323及び第2の反射器322の一部をエッチングして、メサ(Mesa)を形成する。そして、酸化工程S07を行って、第2の反射器322内に酸化部324を形成してよい。他の実施例において、ダイボンド金属層を制作せずに、ダイボンド金属層形成工程を省略してもよい。
【0042】
レーザーダイオードの製造方法S300は、消光特性を持つ保護層380を形成する金属パッド形成工程S08を更に備えてよく、保護層380の材質は例えばポリフェニレンオキシド(Polyphenylene Oxide;PPO)であり、また保護層380に金属パッド370を形成してよく、金属パッド370がP型金属層340に接続され、またP型金属層340の中空部分に窒化ケイ素層360が充填される。最後に、
図5に示すようなレーザーダイオード300が形成される。
【0043】
上記説明から分かるように、本発明のレーザーダイオードは、良好な性能を有することができ、且つ原始基板を保留するままに、エピタキシャル構造と原始基板との間にAlAsから製造されたエッチング停止層を別に設ける必要はない。このように、AlAsの高抵抗値による電流集中効果、及びAlAsの熱膨張率と複合多層金属プレートとの変調熱膨張率の不整合の課題を避けることができる。
【0044】
本発明は実施例を前記の通りに開示したが、当該実施例は本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0045】
100、200、300:レーザーダイオード
110、210、310:原始基板
120、220、320:エピタキシャル構造
121、321:第1の反射器
1211:N型反射層
122、322:第2の反射器
1221:P型反射層
123、323:活性層
124、324:酸化部
1241、3241:内縁
130、230、330:複合多層金属プレート
131、231、331:第1の金属層
132、232、332:第2の金属層
133、233、333:第3の金属層
340:P型金属層
350:ダイボンド金属層
360:窒化ケイ素層
370:金属パッド
380:保護層
S300:レーザーダイオードの製造方法
S01:エピタキシャル構造成長工程
S02:原始基板薄肉化工程
S03:複合多層金属プレート設置工程
S04:ダイボンド金属層形成工程
S05:電極形成工程
S06:メサエッチング工程
S07:酸化工程
S08:金属パッド形成工程
D1:初期厚さ
D2:結合厚さ
T1:仮基板