(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000796
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】立ち上がり補助機
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20231226BHJP
A61H 3/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61H1/02 N
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099708
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 智宏
(72)【発明者】
【氏名】輿石 健
(72)【発明者】
【氏名】根本 知幸
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046AA27
4C046AA42
4C046BB07
4C046CC02
4C046CC05
4C046DD02
4C046DD17
4C046DD26
4C046DD33
4C046DD43
4C046DD47
4C046EE05
4C046EE24
4C046EE32
4C046FF11
4C046FF26
(57)【要約】
【課題】利用者による操作、及び補助機にかかる荷重に基づいて立ち上がりの補助を変化し得る立ち上がり補助機を提供する。
【解決手段】基部(10)と、基部(10)に一端が接続され上下動可能な軸部(12)と、軸部(12)の他端に設けられる支持部(14)と、軸部(12)の動きを制御する制御部(56)と、を備え、利用者(J)の両肘部をそれぞれ支持する左右一対の肘当部(31)と、利用者(J)が把持する把持部(16)とを備え、肘当部(31)は利用者(J)の荷重を検出する荷重センサ(54A)を有し、把持部(16)の近傍に利用者操作部(52)が設けられ、制御部(56)は、荷重センサが荷重を検出し、かつ、利用者操作部(52)を操作した場合に、利用者(J)の立ち上がり動作の補助、または着座動作の補助を開始する制御をおこなうことを特徴とする立ち上がり補助機である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部に一端が接続され、少なくとも上下動可能な軸部と、前記軸部の他端に設けられる支持部と、前記軸部の動きを制御する制御部と、を備える立ち上がり補助機において、
利用者の両肘部をそれぞれ支持する左右一対の肘当部と、
前記利用者が把持する把持部と
を備え、
前記肘当部は前記利用者の荷重を検出する荷重センサを有し、
前記把持部の近傍に利用者操作部が設けられ、
前記制御部は、前記荷重センサが荷重を検出し、かつ、前記利用者操作部を操作した場合に、前記利用者の立ち上がり動作の補助、または着座動作の補助を開始する制御をおこなうことを特徴とする立ち上がり補助機。
【請求項2】
前記制御部は、前記立ち上がり動作の補助がおこなわれている場合、前記荷重センサが検出した前記荷重の値にかかわらず立ち上がり動作の補助を継続することを特徴とする請求項1に記載の立ち上がり補助機。
【請求項3】
前記制御部は、前記着座動作の補助がおこなわれている場合、前記荷重センサが検出した前記荷重の値にかかわらず着座動作の補助を継続することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立ち上がり補助機。
【請求項4】
前記制御部は、前記立ち上がり動作又は前記着座動作の補助の動作が一度停止した場合、前記荷重の検出、及び前記利用者操作部の操作に基づいて、前記利用者の立ち上がり動作の補助又は着座動作の補助を再開する制御をおこなうことを特徴とする請求項1に記載の立ち上がり補助機。
【請求項5】
前記荷重センサは、左右の肘当部のそれぞれに設けられ、
前記制御部は、少なくとも一方の荷重センサによって検出された荷重に基づいて、前記利用者の立ち上がり動作の補助、又は着座動作の補助を開始する制御をおこなうことを特徴とする請求項1に記載の立ち上がり補助機。
【請求項6】
前記肘当部は、前記利用者の肘部を支える肘当サポート部材を有し、
前記肘当サポート部材は、側壁と後壁とを有することを特徴とする請求項1に記載の立ち上がり補助機。
【請求項7】
前記把持部と、前記肘当サポート部材との距離を調整する距離調整部を有することを特徴とする請求項6に記載の立ち上がり補助機。
【請求項8】
前記把持部は、前記肘当部より機体内側に向かって斜行するように立設されることを特徴とする請求項1に記載の立ち上がり補助機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立ち上がり補助機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて、交通の安全性や移動の利便性をより一層改善する研究開発が進んでいる。特に膝や足腰の弱った利用者は、座椅子に座り込んだ状態から自力で立ち上がる際に大きな労力を必要とするため、身体にかかる負担が大きい。そこで、座椅子からの立ち上がりを補助する機器が提案されている。特許文献1、及び特許文献2は、この種の機器として、基部と、当基部に対して上下方向に伸縮自在な軸部と、を備え、利用者が把持する部材、或は、利用者を保持する部材を当該軸部の上側に配置し、軸部を伸縮させることで利用者の立ち上がりを補助する機器を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-134430号公報
【特許文献2】国際公開第2017/141372号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし利用者がどのような操作をしているか、及びどのように体重を補助機に預けているかによって、補助を変化させる仕組みを持たないと利用者にとって補助が不快になる場合もあり得る。
本発明は、利用者による操作、及び補助機にかかる荷重に基づいて立ち上がりの補助を変化し得る立ち上がり補助機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、基部と、前記基部に一端が接続され、少なくとも上下動可能な軸部と、前記軸部の他端に設けられる支持部と、前記軸部の動きを制御する制御部と、を備える立ち上がり補助機において、利用者の両肘部をそれぞれ支持する左右一対の肘当部と、前記利用者が把持する把持部とを備え、前記肘当部は前記利用者の荷重を検出する荷重センサを有し、前記把持部の近傍に利用者操作部が設けられ、前記制御部は、前記荷重センサが荷重を検出し、かつ、前記利用者操作部を操作した場合に、前記利用者の立ち上がり動作の補助、または着座動作の補助を開始する制御をおこなうことを特徴とする立ち上がり補助機である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、利用者による操作、及び立ち上がり補助機にかかる荷重に基づいて、立ち上がり動作の補助を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】立ち上がり補助機の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】立ち上がり補助機の可動機構を示す図である。
【
図3】立ち上がり補助機の軸部が可動したときの支持部の軌道を模式的に示す図である。
【
図4】立ち上がり補助機の制御システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】立ち上がり補助機における立ち上がり動作補助処理のフローチャートである。
【
図6】立ち上がり補助機における着座動作補助開始処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る立ち上がり補助機1の全体構成を示す斜視図である。
立ち上がり補助機1は、利用者J(
図3参照)の立ち上がり動作、及び着座動作を補助する機器である。立ち上がり動作は、利用者Jが椅子や寝台などのシートK(
図3参照)に着座した着座状態から体の向きを変えることなくそのまま立ち上がって立位した立位状態に移行するまでの動作を言う。着座動作は、利用者Jが立位状態から体の向きを変えることなく腰を落としシートKに着座して着座状態に移行するまでの動作を言う。
【0009】
なお、以下の説明において、着座状態の利用者Jが立ち上がり動作において立ち上がる方向を前方DFと言い、立位状態の利用者Jが着座動作において腰(臀部)を移動させる方向を後方DBと言う。前方DF及び後方DBに直交する方向のうち、前方DFを向いた利用者Jの左手が位置する側を左方向DLと言い、当該利用者Jの右手が位置する側を右方向DRと言う。鉛直方向の上向きを上方DUと言い、鉛直方向の下向きを下方DDと言う。
【0010】
また、補助を必要としない健常者が立ち上がり動作、及び着座動作を行ったときの身体の動きを「自然動作」と言う。
本実施形態の立ち上がり補助機1は、利用者Jが、この自然動作に近い動きで、立ち上がり動作、及び、着座動作を行えるように補助する構成を備える。利用者Jが自然動作に近い動きで立ち上がり動作、及び着座動作することで、補助に頼り切りにならずに、自身の力を適度に使って立ち上がり、及び着座することができる。
【0011】
かかる立ち上がり補助機1の構造的構成を説明する。
【0012】
図1は、立ち上がり補助機1の全体構成を示す斜視図である。
同図に示すように、立ち上がり補助機1は、基部10と、軸部12と、支持部14と、把持部16と、を備える。
基部10は、立ち上がり補助機1の構造(骨格)のベース部分に相当し、軸部12が立設されるメインフレームであるベース板20を備える。さらに、本実施形態の基部10は、後方DBが開放する平面視略Cの字状のパイプフレーム22と、当該パイプフレーム22を移動可能に支持する車輪24と、を備え、ベース板20は、パイプフレーム22の内側で当該パイプフレーム22に支持されている。車輪24は、パイプフレーム22の前端及び後端のそれぞれに左右に1つずつ設けられており、前後方向、及び左右方向における立ち上がり補助機1のバランスの安定化が図られている。各車輪24は移動方向が自在なキャスターであり、立ち上がり補助機1が、かかる車輪24を備えることで、立位状態の利用者Jの歩行に合わせて移動し、いわゆる歩行補助機の用途にも利用可能となっている。
【0013】
軸部12は、基部10から上方DUに延びた形状の部位であり、下端部12Dが基部10のベース板20に結合され、上端部12Uに支持部14が固定されている。換言すれば、軸部12は、基部10の上方DUで支持部14を支持する部位としても機能する。軸部12は、下端部12Dを中心に前後方向に回動自在であり、かつ、上下方向に伸縮自在となっており、これにより、支持部14が前後方向、及び、上下方向のいずれにも移動可能となっている。かかる軸部12の構成については後述する。
【0014】
支持部14は、利用者Jの身体を支える部位であり、本実施形態の支持部14は、後方DBが開放する平面視略Cの字状の棒状部材30を備える。具体的には、棒状部材30は、前後方向に延びる左右一対の肘当部31と、各肘当部31の前端部を連結する連結部32と、を有する。各肘当部31は、利用者Jの肘を支える部位であり、肘が収まるカップ形状の肘当サポート部材33が設けられている。肘当サポート部材33は、左右一対の側壁33Sと、肘の後方DBに位置する後壁33Bとを有し、側壁33Sが肘の左右方向への移動を阻止し、また、後壁33Bが肘を後方DBから支持する。ここで後壁33Bは、後方DBに傾斜していてもよい。利用者Jが起立した後に、立ち上がり補助機1を歩行器として利用する際に肘が90度よりも小さい角度であると、利用者Jにとって違和感がある場合があるからである。
左右両方の肘当部31には、荷重センサ54Aが備えられている。荷重センサ54Aは、肘当部31に対して利用者Jがどの程度、体重を預けているかの情報を取得する。
【0015】
また、支持部14には、利用者Jが手で掴む部位である左右一対の上記把持部16が設けられている。本実施形態において、把持部16は支持部14を構成する棒状部材30に一体に構成されている。具体的には、棒状部材30は、左右のそれぞれの肘当部31の前端部に上方に折れ曲がった部位を有し、これらの部位が把持部16として構成されている。すなわち把持部16は、肘当部31より、立ち上がり補助機の機体内側に向かって斜行するよう立設される。
【0016】
なお、利用者Jが把持可能な形状の部材(例えば棒状の部材)を各肘当部31に立設することで、支持部14を構成する棒状部材30とは別に把持部16を構成してもよい。また、利用者Jの手から肘までの長さに合わせて、肘当サポート部材33の取付位置を前後方向に調整可能な距離調整部(不図示)を有する構成とすることが望ましい。これにより、利用者Jは、肘当サポート部材33に肘を収めた状態で把持部16を常に把持できるように、肘当サポート部材33の取付位置を調整できる。
【0017】
また、支持部14には、左右一対の肘当部31の間に胸当サポート部36が設けられている。胸当サポート部36は、左右一対の肘当部31に架設された板材36Aと、当該板材36Aの左右略中央に固定された膨出形状の胸当材36Bとを備え、この胸当材36Bを含む胸当サポート部36の略全体がウレタンフォームなどの反発性を有する部材によって覆われている。利用者Jが立位状態にあるときや、前屈みの姿勢をとったときに、胸当サポート部36に胸を押し当てて上半身を支えることができる。
【0018】
立ち上がり補助機1は、各種情報を表示して利用者Jに提示する表示装置60と、各種情報を制御部56に入力するための利用者情報入力部58を備える。表示装置60は、支持部14に設けられる。表示装置60は液晶パネルや有機ELパネル等のディスプレイ装置である。利用者情報入力部58は、例えば表示装置60の表面に設けられたタッチパネルスクリーンである。利用者情報入力部58と表示装置60は、立ち上がり補助機1自体とは、独立な装置であって有線や無線の通信手段で制御部56に接続されていてもよい。利用者情報入力部58と表示装置60としていわゆるスマートフォンやタブレットPCが、立ち上がり補助機1の支持部14に固定されるようにしてもよい。
【0019】
利用者操作部52は、立ち上がり動作の補助、及び、着座動作の補助を受けるために利用者Jが操作する部位であり、当該操作を受け付け、制御部56に出力する操作検出デバイスを備える。本実施の形態では、利用者操作部52の操作検出デバイスは、立ち上がり動作の補助を受けるための操作入力、及び、着座動作の補助を受けるための操作入力ごとに、操作入力デバイスの一例であるモーメンタリースイッチを備え、また、それぞれのモーメンタリースイッチの操作入力を検出する立ち上がり指示スイッチ52A及び着座指示スイッチ52Bを備える。モーメンタリースイッチとは、利用者Jがボタンを押している間だけON状態になり、利用者Jがボタンから手を離すとOFF状態に戻るスイッチである。
本実施の形態では、両方のモーメンタリースイッチが支持部14に配設されている。具体的には、右手側の把持部16には、立ち上がり動作の補助に対応するモーメンタリースイッチが配置され、左手側の把持部16には、着座動作の補助に対応するモーメンタリースイッチが配置されている。各モーメンタリースイッチは、肘が肘当サポート部材33で支持された状態であって、両手のひらがそれぞれの把持部16を掴んでいるときに、それぞれの手の親指で操作できる範囲に設けられることが望ましい。
【0020】
肘当検出部54は、利用者Jが肘当サポート部材33に肘を十分に押し当てた姿勢をとることで立ち上がり動作、又は着座動作の補助を受ける準備が出来ていることを、肘当サポート部材33に加わっている荷重に基づいて検出するものであり、当該肘当サポート部材33に配置された荷重センサ54Aを備え、検出情報を制御部56に出力する。
【0021】
図2は、立ち上がり補助機1の可動機構を示す図である。なお、
図2は模式図であり、各部材の寸法や形状、位置が
図1と異なっている。
立ち上がり補助機1の軸部12は、第1軸部材41と第2軸部材42を備え、それぞれが上下方向に伸縮自在であり、かつ、それぞれの下端部が基部10に結合されている。本実施の形態では、第1軸部材41は、中空筒状の外筒41Aと、当該外筒41Aに同軸に直動可能に収められたロッド41Bとを備え、当該ロッド41Bが直線的に進退することで全体が伸縮する直動装置を有する。第2軸部材42も同様に、中空筒状の外筒42Aと、当該外筒42Aに同軸に直動可能に収められたロッド42Bとを備え、当該ロッド42Bが直線的に進退することで全体が伸縮する直動装置を有する。本実施の形態において、これら直動装置には、ボールねじと、当該ボールねじを回転駆動するモータとを有した電動のシリンダが用いられる。立ち上がり動作を補助するときの可動と、当該立ち上がり動作と略逆の動きとなる着座動作を補助するときの可動とは、略正逆の関係にあり、ボールねじ及びモータを有したシリンダを直動装置に用いることで、かかる正逆の可動を簡単に実現でき、また、位置決めや速度制御が可能となる。なお、直動装置には、他の構成の周知又は公知の機構を用いることができる。
【0022】
第1軸部材41および第2軸部材42は前後方向に並べて配置されており、それぞれの外筒41A、42Aが前後方向に回動自在に基部10(ベース板20)に設けられており、また、第1軸部材41および第2軸部材42のそれぞれが第1アクチュエータ51A及び第2アクチュエータ51B(
図1、
図4参照)によって互いに個別に駆動される。本実施形態において、第1軸部材41および第2軸部材42のそれぞれは、下端部41AD、42ADが回動自在に基部10に軸支されることで、それぞれの回動の回動軸O1、O2が下端部41AD、42ADに設けられている。
【0023】
ここで、第1軸部材41のロッド41Bの先端は、軸部12の上記上端部12Uに相当し、当該先端に支持部14が固定される。これにより、支持部14は、第1軸部材41によって支持された高さ位置において、第1軸部材41の回動に伴って回動軸O1を中心とした円弧Eに沿って移動する。この円弧Eの長さは、回動半径である第1軸部材41の長さ(高さ)に比例して大きくなるため、例えば、上記特許文献1、及び特許文献2のように、回動不能に基部に立設された軸部の先端で支持部を回動可能に支持する構成に比べ、支持部14の可動範囲を大幅に拡張することができる。
また、支持部14と第1軸部材41との固定箇所(軸部12の上端部12U)は、溶接やボルト、ネジ等の任意の締結手段によって支持部14が軸部12に対して回動不能に固定されている。これにより、利用者が把持部16を把持した状態において、支持部14が軸部12に対して意図せずに回動してしまい、当該回動の力が利用者の手首に作用して、利用者が手首を痛める、といった事態を防止できる。
【0024】
第2軸部材42は、ロッド42Bの先端が第1軸部材41の非可動部である外筒41Aに回動可能に結合されている。具体的には、前掲
図1に示すように、第1軸部材41の外筒41Aには、左右一対の板状の結合片44が設けられており、
図2に示すように、当該結合片44に第2軸部材42のロッド42Bの先端がピン等で軸支されることで、当該先端が第1軸部材41及び第2軸部材42の回動及び伸縮に応じて受動的に回動する。
【0025】
なお、本実施の形態では、前掲
図1に示すように、立ち上がり補助機1は、安定感の向上、及び、ガタ付き防止のために、第1軸部材41の全周を覆うカバー部材49を備え、第2軸部材42は、当該カバー部材49を介して第1軸部材41に結合されている。具体的には、カバー部材49は、第1軸部材41の外筒41Aを内包し、当該外筒41Aに対して不動の第1カバー部材49Aと、ロッド41Bを内包する第2カバー部材49Bとを備え、第1カバー部材49Aに上記結合片44が設けられ、当該結合片44に第2軸部材42のロッド42Bの先端が結合されている。
【0026】
図3は、立ち上がり補助機1の軸部12が可動したときの支持部14の軌道を模式的に示す図である。
立ち上がり補助機1は、第1軸部材41が下端部41ADの回動軸O1で回動し、かつ、上下方向に伸縮することで、支持部14は、着座姿勢の利用者Jに対応する位置(以下、着座用ポジションという)PAと、立位姿勢の利用者Jに対応する位置(以下、立位用ポジションという)PBとの間を、様々な軌道で移動可能となっている。かかる軌道には、
図3に示すように、第1軌道F1、第2軌道F2、第3軌道F3、及び第4軌道F4などがある。
【0027】
第1軌道F1は、着座用ポジションPAと立位用ポジションPBとの間を斜めに直線的に結ぶ軌道である。
第2軌道F2は、斜めに直線的に延びる第1軌道F1において、立ち上がり動作の開始時に前方F1に延びる区間F2Aを含み、かつ、立ち上がり動作の終了時に真上へ延びる区間F2Bを含む軌道である。
第3軌道F3は、第1軌道F1及び第2軌道F2とは異なり、斜め方向に直線的に延びる軌道を殆ど含まない軌道である。すなわち、第3軌道F3は、着座用ポジションPAから立位用ポジションPBの直下位置Pαに延びる区間F3Aと、当該直下位置Pαから真上の立位用ポジションPBに延びる区間F3Bと、から成る軌道である。
第4軌道F4は、着座用ポジションPAから立位用ポジションPBの直下位置Pαを超えて更に前方DFの所定前端位置Pβまで延びる区間F4Aと、当該所定前端位置Pβから前方斜め上方へ直線的に延びる区間F4Bと、移動軌道F4の上端から立位用ポジションPBに延びる区間F4Cとを含む軌道である。
第4軌道F4は、上記自然動作に対応する軌道であり、この第4軌道F4と自然動作との関係については後述する。
【0028】
図4は、立ち上がり補助機1の可動に係る制御システム50の機能的構成を示すブロック図である。
立ち上がり補助機1は、駆動部51と、利用者操作部52と、肘当検出部54と、制御部56と、利用者情報入力部58と、表示装置60を備える。
駆動部51は、軸部12を回転駆動、及び、伸縮駆動するものであり、第1軸部材41及び第2軸部材42のそれぞれごとの駆動源である第1アクチュエータ51A及び第2アクチュエータ51Bを備えている。これら第1アクチュエータ51A及び第2アクチュエータ51Bは、前掲
図1に示すように、第1軸部材41及び第2軸部材42のそれぞれの下端部41AD、42ADに配置されており、これにより、立ち上がり補助機1の重心が下がり、安定度が高められている。なお、第1アクチュエータ51A及び第2アクチュエータ51Bは、第1軸部材41及び第2軸部材42のそれぞれの下端部41AD、42ADの側であり、重心を下げる位置であれば、例えば下端部41AD、42BDの近傍などの任意の位置に配置できる。
【0029】
制御部56は、利用者操作部52に対する利用者Jの操作に応じて駆動部51を制御する。具体的には、制御部56は、立ち上がり指示スイッチ52Aによって立ち上がり指示が検出されると、支持部14が着座用ポジションPAから立位用ポジションPBに移動するように駆動部51を制御する。また、着座指示スイッチ52Bによって着座の指示が検出されると、支持部14が立位用ポジションPBから着座用ポジションPAに移動するように駆動部51を制御する。ただし、制御部56は、肘当検出部54の検出情報に基づいて、肘当サポート部材33に所定の荷重が加わっておらず、利用者Jが肘部を肘当サポート部材33に十分に押し当てていないと判定した場合、利用者操作部52が操作されても、駆動部51を駆動させない。これにより、利用者Jが立ち上がり動作、又は着座動作の補助を受けるための姿勢を取っていない状態において、支持部14が移動してしまい、把持部16を把持する利用者Jの手だけが支持部14の移動に引きつられてしまい、その移動に胴体部が追いつかない(例えば、立ち上がり動作の補助においては、胴体部がシートKの側に残る)といった事態を防止できる。
【0030】
なお荷重センサ54Aは、左右の肘当部31のそれぞれに設けられ、制御部56は、少なくとも一方の荷重センサによって検出された荷重に基づいて、利用者Jの立ち上がり動作の補助、又は着座動作の補助を開始する制御をおこなってよい。
【0031】
かかる制御部56は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置を有する記憶部70と、センサ類や周辺機器などを接続するための入出力インターフェースI/F部68と、を備えたコンピュータを有し、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することで、各種の機能を実現する。なお入出力インターフェースI/F部68は、各種周辺機器との間の入出力を行うためのインターフェース回路を備える。
【0032】
CPUは、記憶部70等に記憶されたプログラムを実行することで、各種演算を行う演算部62の機能と、制御における判定をおこなう判定部64の機能と、駆動部51を制御する駆動制御部66の機能を実現する。
【0033】
ここで、本実施形態の立ち上がり補助機1において、制御部56は、立ち上がり動作、及び、着座動作の補助が利用者Jによって指示されると、いずれの指示においても、上記第4軌道F4に沿って支持部14が移動するように駆動部51(第1アクチュエータ51A、及び第2アクチュエータ51Bのそれぞれ)を制御することで、利用者Jが自然動作に近い動きで、立ち上がり、又は着座するように動作を補助する。
【0034】
図5は、立ち上がり補助機1における立ち上がり動作の補助についてのフローチャートである。制御部56が、利用者操作部52から操作情報を取得する(ステップSA1)。具体的には立ち上がり指示スイッチ52AがON状態になったかどうかの情報を、入出力I/F部68を通じて取得する。判定部64が、立ち上がり指示スイッチ52Aの操作がなされてON状態になったか否かを判定する(ステップSA2)。立ち上がり指示スイッチ52AがON状態であると判定された場合(ステップSA2:YES)、制御部56は入出力I/F部68を通じて荷重センサ54Aが検出した荷重情報を取得する(ステップSA3)。
【0035】
判定部64は、荷重センサ54Aで取得された荷重情報と記憶部70に記憶された第1所定値を比較して、荷重が第1所定値以上か否かを判定する(ステップSA4)。ここで、第1所定値は、利用者情報入力部58から入力された利用者Jの体重に基づいて演算部62が演算を行って記憶部70に記憶した情報でもよく、あらかじめ利用者Jに紐付けられた情報であって記憶部70に記憶されたものでもよい。
【0036】
判定部64が、荷重は第1所定値以上であると判定した場合(ステップSA4:YES)、制御部56は立ち上がり動作の補助を開始する(ステップSA5)。具体的には、例えば駆動制御部66が駆動部51を制御して、第1軌道F1、第2軌道F2、第3軌道F3、及び第4軌道F4等の軌道(
図3参照)で支持部14等を動かし、利用者Jの立ち上がり動作を補助する。
【0037】
さて立ち上がり動作の補助を立ち上がり補助機1がおこなっているとき、判定部64が、立ち上がり指示スイッチ52AがON状態になっているか否かを判定する(ステップSA6)。判定部64が、立ち上がり指示スイッチ52AはON状態であると判定した場合(ステップSA6:YES)、制御部56は、立ち上がり動作の補助を継続する(ステップSA7)。
【0038】
立ち上がり指示スイッチ52AがON状態ではないと、判定部64が判定した場合(ステップSA2:NO)、ステップSA1に戻る。また判定部64が、荷重は第1所定値未満であると判定した場合(ステップSA4:NO)、ステップSA1に戻る。
【0039】
また立ち上がり動作の補助を立ち上がり補助機1がおこなっているとき、判定部64が、立ち上がり指示スイッチ52AはON状態ではないと判定した場合(ステップSA6:NO)、制御部56は、立ち上がり動作の補助を中止する(ステップSA8)。次に制御部56が、利用者操作部52から操作情報を取得する(ステップSA9)。判定部64は、立ち上がり指示スイッチ52AがON状態になっているか否かを判定する(ステップSA10)。判定部64が、立ち上がり指示スイッチ52AはON状態であると判定した場合(ステップSA10:YES)、制御部56は入出力I/F部68を通じて荷重センサ54Aが検出した荷重情報を取得する(ステップSA11)。判定部64は、荷重センサ54Aで取得された荷重情報と記憶部70に記憶された第1所定値を比較して、荷重が第1所定値以上か否かを判定する(ステップSA12)。判定部64が、荷重は第1所定値以上であると判定した場合(ステップ12:YES)、制御部56は立ち上がり動作の補助を再開する(ステップSA13)。
【0040】
判定部64が、立ち上がり指示スイッチ52AはON状態ではないと判定した場合(ステップSA10:NO)、ステップSA9に戻る。また判定部64が、荷重は第1所定値未満であると判定した場合(ステップ12:NO)、ステップSA11に戻る。
【0041】
なお変形実施例として、上記ステップSA12の判定において、判定部64が、荷重センサ54Aで取得された荷重情報と記憶部70に記憶された第3所定値を比較して、荷重が第3所定値以上か否かを判定してもよい。ここで第3所定値は、第1所定値よりも小さい値である。立ち上がり動作の補助を再開する際には、利用者Jは立ち上がりかけているので、肘に預けられる荷重が小さくなることが考えられるからである。
【0042】
図6は、立ち上がり補助機1における着座動作の補助についてのフローチャートである。制御部56が、利用者操作部52から操作情報を取得する(ステップSB1)。具体的には着座指示スイッチ52BがON状態になったかどうかの情報を、入出力I/F部68を通じて取得する。判定部64が、着座指示スイッチ52Bの操作がなされてON状態になったか否かを判定する(ステップSB2)。着座指示スイッチ52BがON状態であると判定された場合(ステップSB2:YES)、制御部56は入出力I/F部68を通じて荷重センサ54Aが検出した荷重情報を取得する(ステップSB3)。
【0043】
判定部64は、荷重センサ54Aで取得された荷重情報と記憶部70に記憶された第2所定値を比較して、荷重が第2所定値以上か否かを判定する(ステップSB4)。ここで、第2所定値は、利用者情報入力部58から入力された利用者Jの体重に基づいて演算部62が演算を行って記憶部70に記憶した情報でもよく、あらかじめ利用者Jに紐付けられた情報であって記憶部70に記憶されたものでもよい。
【0044】
判定部64が、荷重は第2所定値以上であると判定した場合(ステップSB4:YES)、制御部56は着座動作の補助を開始する(ステップSB5)。具体的には、例えば駆動制御部66が駆動部51を制御して、第1軌道F1、第2軌道F2、第3軌道F3、及び第4軌道F4等の軌道(
図3参照)で支持部14等を動かし、利用者Jの着座動作を補助する。
【0045】
さて着座動作の補助を立ち上がり補助機1がおこなっているとき、判定部64が、着座指示スイッチ52BがON状態になっているか否かを判定する(ステップSB6)。判定部64が、着座指示スイッチ52BはON状態であると判定した場合(ステップSB6:YES)、制御部56は、着座動作の補助を継続する(ステップSB7)。
【0046】
着座指示スイッチ52BがON状態ではないと、判定部64が判定した場合(ステップSB2:NO)、ステップSB1に戻る。また判定部64が、荷重は第2所定値未満であると判定した場合(ステップSB4:NO)、ステップSB1に戻る。
【0047】
また着座動作の補助を立ち上がり補助機1がおこなっているとき、判定部64が、着座指示スイッチ52BはON状態ではないと判定した場合(ステップSB6:NO)、制御部56は、着座動作の補助を中止する(ステップSB8)。次に制御部56が、利用者操作部52から操作情報を取得する(ステップSB9)。再び判定部64が、着座指示スイッチ52BがON状態になっているか否かを判定する(ステップSB10)。判定部64が、着座指示スイッチ52BはON状態であると判定した場合(ステップSB10:YES)、制御部56は入出力I/F部68を通じて荷重センサ54Aが検出した荷重情報を取得する(ステップSB11)。判定部64は、荷重センサ54Aで取得された荷重情報と記憶部70に記憶された第2所定値を比較して、荷重が第2所定値以上か否かを判定する(ステップSB12)。判定部64が、荷重は第2所定値以上であると判定した場合(ステップ12:YES)、制御部56は着座動作の補助を再開する(ステップSB13)。
【0048】
判定部64が、着座指示スイッチ52BはON状態ではないと判定した場合(ステップSB10:NO)、ステップSB9に戻る。また判定部64が、荷重は第2所定値未満であると判定した場合(ステップ12:NO)、ステップSB11に戻る。ここで第2所定値は、第1所定値よりも小さい値であってもよい。着座動作時には、利用者Jの脚部に多くの荷重がかかり、サポート部材33に掛かる荷重は比較的小さい場合がありえるからである。
【0049】
なお変形実施例として、上記ステップSB12の判定において、判定部64が、荷重センサ54Aで取得された荷重情報と記憶部70に記憶された第4所定値を比較して、荷重が第4所定値以上か否かを判定してもよい。ここで第4所定値は、第1所定値と異なる値である。着座動作の補助を再開する際には、利用者Jは着座しかけているので、肘に預けられる荷重が変化することが考えられるからである。
【0050】
以上説明したように本実施形態に係る立ち上がり補助機1によれば、利用者Jの両肘部をそれぞれ支持する左右一対の肘当部31と、利用者Jが把持する把持部16とを備え、肘当部31は利用者Jの荷重を検出する荷重センサ54Aを有し、把持部16の近傍に利用者操作部52が設けられ、制御部56は、荷重センサ54Aが荷重を検出し、かつ、利用者操作部52を操作した場合に、利用者Jの立ち上がり動作の補助、または着座動作の補助を開始する制御をおこなうことが可能になった。このため利用者Jによる操作、及び立ち上がり補助機1にかかる荷重に基づいて、立ち上がりの補助を変化させることができる立ち上がり補助機1が実現できる。膝や足腰の弱った利用者Jは、座椅子に座り込んだ状態から自力で立ち上がる際に、適切な補助を受けられるという優れた効果を奏し得る。
【0051】
本実施形態に係る立ち上がり補助機1によれば、立ち上がり補助機1が利用者Jの立ち上がり動作の補助をしている間は、補助の運転制御について荷重センサ54Aの値を利用せず、荷重の値にかかわらず立ち上がり動作の補助を継続する。
利用者Jが立ち上がるにつれて、自然に肘部から立ち上がり補助機1に預けられる荷重は小さくなっていくので、荷重センサの検出した荷重の値によらず動作の補助を継続する方が利用者Jにとって、補助を必要としない健常者が立ち上がり動作を行ったときの身体の動きに近い動作が可能になる。また制御部56による動作補助の制御も簡単になるという効果もある。
【0052】
本実施形態に係る立ち上がり補助機1によれば、立ち上がり補助機1が利用者Jの着座動作の補助をしている間は、補助の運転制御について荷重センサ54Aの値を利用せず、荷重の値にかかわらず着座動作の補助を継続する。
利用者Jが立ち上がった姿勢から着座するにつれて、自然に肘部から立ち上がり補助機1に預けられる荷重は大きくなっていくので、荷重センサの検出した荷重の値によらず動作の補助を継続する方が利用者Jにとって、補助を必要としない健常者が着座動作を行ったときの身体の動きに近い動作が可能になる。また制御部56による動作補助の制御も簡単になるという効果もある。
【0053】
本実施形態に係る立ち上がり補助機1によれば、制御部56は、立ち上がり動作の補助又は着座動作の補助が一度停止した場合、荷重、及び利用者操作部52でおこなわれた操作に基づいて、利用者Jの立ち上がり動作の補助又は着座動作の補助を再開する制御をおこなう。
立ち上がり動作の補助や着座動作の補助中に一度停止し再始動する際、利用者Jの準備が整っていることを担保するために荷重センサ54Aの値と利用者Jが利用者操作部52でおこなった操作の有無等の情報を利用することは利用者Jの安全性をさらに高める効果がある。
【0054】
本実施形態に係る立ち上がり補助機1によれば、荷重センサ54Aは、左右の肘当部31のそれぞれに設けられ、制御部56は、少なくとも一方の荷重センサ54Aによって検出された荷重に基づいて、利用者Jの立ち上がり動作の補助、又は着座動作の補助を開始する制御をおこなう。
片方の腕の力が弱い利用者Jや片麻痺の場合にも立ち上がり補助機1による補助が受けやすくなるという効果を奏する。
【0055】
本実施形態に係る立ち上がり補助機1によれば、肘当部31は、利用者Jの肘部を支える肘当サポート部材33を有し、肘当サポート部材は、側壁33Sと後壁33Bとを有する。
このような構成によれば、利用者Jの肘部が固定されやすくなり、荷重の検出を容易にするとともに肘部の安定性を高め、利用者Jの安全度が増すという優れた効果を奏する。
【0056】
本実施形態に係る立ち上がり補助機1は、把持部16と、肘当サポート部材33との距離を調整する距離調整部を有する。
把持部16と肘当てサポート部材33との距離を調整可能にすることで、利用者Jの体格に応じた調整が容易にできるようになる。このため利用者Jの体格に応じた立ち上がり動作の補助や着座動作の補助が可能になるという効果を奏し得る。
【0057】
本実施形態に係る立ち上がり補助機1は、把持部16が、肘当部31より機体内側に向かって斜行するように立設されることを特徴とする。
このような構造によれば、利用者Jが把持部16をつかんだまま前屈みになりやすくなり、利用者の姿勢が安定する。このため利用者Jが立ち上がり動作や着座動作の補助を受けやすくなるという効果を奏し得る。
【0058】
以上、本発明の実施形態に係る立ち上がり補助機1について説明したが、本発明は上記説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、変形実施例として、把持部16のDR側及びDL側の両方に、立ち上がり指示スイッチ52A及び着座指示スイッチ52Bを一組ずつ備える立ち上がり補助機1が考えられる。この構成により片手だけで操作が可能になるので使用者が片麻痺であっても運転が可能になる。
【0059】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成の具体例である。
【0060】
(構成1)基部と、基部に一端が接続され、少なくとも上下動可能な軸部と、前記軸部の他端に設けられる支持部と、前記軸部の動きを制御する制御部と、を備える立ち上がり補助機において、利用者の両肘部をそれぞれ支持する左右一対の肘当部と、前記利用者が把持する把持部とを備え、前記肘当部は前記利用者の荷重を検出する荷重センサを有し、前記把持部の近傍に利用者操作部が設けられ、前記制御部は、前記荷重センサが荷重を検出し、かつ、前記利用者操作部を操作した場合に、前記利用者の立ち上がり動作の補助、または着座動作の補助を開始する制御をおこなうことを特徴とする立ち上がり補助機。
このような構成によれば、利用者による操作、及び立ち上がり補助機にかかる荷重に基づいて、立ち上がりの補助を変化させることができる立ち上がり補助機が実現できる。このため膝や足腰の弱った利用者は、座椅子に座り込んだ状態から自力で立ち上がる際に、適切な補助を受けられるという優れた効果を奏し得る。
【0061】
(構成2)前記制御部は、前記立ち上がり動作の補助がおこなわれている場合、前記荷重センサが検出した前記荷重の値にかかわらず立ち上がり動作の補助を継続することを特徴とする構成1に記載の立ち上がり補助機。
このような構成によれば、立ち上がり動作の補助が行われている状態で、利用者が肘当部に体重を預ける割合が減ったとしても、継続的に立ち上がり動作の補助が続く。そのため利用者がスムーズに立ち上がり動作を続けることができるという効果を奏する。
【0062】
(構成3)前記制御部は、前記着座動作の補助がおこなわれている場合、前記荷重センサが検出した前記荷重の値にかかわらず着座動作の補助を継続することを特徴とする構成1又は構成2に記載の立ち上がり補助機。
このような構成によれば、着座動作の補助が行われている状態で、利用者が肘当部に体重を預ける割合が減ったとしても、継続的に着座動作の補助が続く。そのため利用者がスムーズに着座動作を続けることができるという効果を奏する。
【0063】
(構成4)前記制御部は、前記立ち上がり動作の補助又は前記着座動作の補助が一度停止した場合、前記荷重、及び前記利用者操作部でおこなわれた操作に基づいて、前記利用者の立ち上がり動作の補助又は着座動作の補助を再開する制御をおこなうことを特徴とする構成1に記載の立ち上がり補助機。
利用者の都合により立ち上がり動作や着座動作が中断されることがある。この際、動作の補助も中断される。その後、利用者が再び立ち上がり動作や着座動作を続けたい場合が考えられる。このような構成によれば利用者の都合に合わせた動作補助を実現することができる。そのため利用者がスムーズに立ち上がり動作や着座動作を続けることができるという効果を奏する。
【0064】
(構成5)前記荷重センサは、左右の肘当部のそれぞれに設けられ、前記制御部は、少なくとも一方の荷重センサによって検出された荷重に基づいて、前記利用者の立ち上がり動作の補助、又は着座動作の補助を開始する制御をおこなうことを特徴とする構成1に記載の立ち上がり補助機。
このような構成によれば片方の腕の力が弱い人や、左右いずれかの上肢が片麻痺のために荷重をかけることが危険な人でも、立ち上がり補助機を利用し易くなるという効果を奏する。
【0065】
(構成6)前記肘当部は、前記利用者の肘部を支える肘当サポート部材を有し、前記肘当サポート部材は、側壁と後壁とを有することを特徴とする構成1に記載の立ち上がり補助機。
このような構成によれば、利用者の肘部が固定されやすくなり、荷重の検出を容易にするとともに肘部の安定性を高め、利用者の安全度が増すという優れた効果を奏する。
(構成7)前記把持部と、前記肘当サポート部材との距離を調整する距離調整部を有することを特徴とする構成6に記載の立ち上がり補助機。
このような構成によれば、把持部と肘当てサポート部材との距離を調整可能にすることで、体格に応じた調整が容易にできるようになる。このため利用者の体格に応じた立ち上がり動作や着座動作の補助が可能になるという効果を奏し得る。
【0066】
(構成8)前記把持部は、前記肘当部より機体内側に向かって斜行するように立設されることを特徴とする構成1に記載の立ち上がり補助機。
このような構成によれば、利用者が把持部をつかんだまま前屈みになりやすくなり、利用者の姿勢が安定する。このため利用者が立ち上がり動作や着座動作の補助を受けやすくなるという効果を奏し得る。
【0067】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0068】
1 立ち上がり補助機
10 基部
12 軸部
14 支持部
16 把持部
31 肘当部
33 肘当サポート部材
33B 後壁
33S 側壁
52 利用者操作部
54A 荷重センサ
56 制御部
58 利用者情報入力部
J 利用者