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特開2024-79602水稲のカーボンフットプリント評価方法、システム、電子機器及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079602
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】水稲のカーボンフットプリント評価方法、システム、電子機器及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240604BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190710
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】202211521094.8
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522434716
【氏名又は名称】浙江大学海南研究院
(71)【出願人】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】何勇
(72)【発明者】
【氏名】呉晴観
(72)【発明者】
【氏名】蒋茜静
(72)【発明者】
【氏名】▲登▼水光
(72)【発明者】
【氏名】孫翠
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水稲のカーボンフットプリント評価方法、システム、電子機器及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】方法は、深層学習アルゴリズム及び畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定することと、取得された対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対応する農場カーボンフットプリントを計算することと、対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントを累加し、対象領域の農場カーボンフットプリントを確定し、かつ前記対象領域の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の製品カーボンフットプリントを確定することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得することと、前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットは、少なくとも気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを含み、
深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定することと、前記農場カーボンフットプリントは、栽培面積あたりによって生成される炭素当量排出量であり、
対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得することと、
前記対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び前記対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリント及び対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントを確定することと、
対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントを累加し、対象領域の農場カーボンフットプリントを確定し、かつ前記対象領域の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の製品カーボンフットプリントを確定することと、を含み、前記製品カーボンフットプリントは、質量あたりの水稲製品を生産するために生成された炭素当量排出量であることを特徴とする水稲のカーボンフットプリント評価方法。
【請求項2】
前記気候データセットには、気温、降水量、蒸発量、相対湿度、風速及び日照が含まれ、前記気温には最低温度と最高温度が含まれ、
前記土壌データセットには、総土壌窒素含有量、土壌有機物含有量、土壌のpH値、土壌品質の割合が含まれ、
前記農業管理実践データセットには、肥料管理、水管理モード、耕作管理、穀稈管理、水稲品種及び栽培モードが含まれ、前記肥料管理には、肥料の種類、施用量、施用回数、および施用時間が含まれ、前記水管理モードには、排水回数、排水時間、排水時間の長さが含まれ、前記耕作管理には、耕作の深さ、耕作回数、耕作時間が含まれ、前記穀稈管理には、穀稈を肥料とする比率、時間、方式が含まれ、前記水稲品種には、インディカ米とうるち米が含まれ、前記栽培モードには、直播き、移植、マルチングがあるかどうかが含まれることを特徴とする請求項1に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法。
【請求項3】
前記深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定することは、具体的には、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌CH排出の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌CH排出量を確定することと、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌NO排出の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌NO排出量を確定することと、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌有機炭素変化量の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌有機炭素変化量を確定することと、
前記対象領域の稲田間土壌CH排出量、前記対象領域の稲田間土壌NO排出量及び前記対象領域の稲田間土壌有機炭素変化量により、対象領域の畑段階の土壌部分の農場カーボンフットプリントを計算することと、
対象領域の畑段階の農業機械操作部分の農場カーボンフットプリントを計算することと、
前記対象領域の畑段階の土壌部分の農場カーボンフットプリント及び前記対象領域の畑段階の農業機械操作部分の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法。
【請求項4】
前記対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリントには、水稲種子生産、肥料生産、エネルギー生産、除草剤の生産、殺虫剤の生産、農業用フイルム生産、包装袋の生産により生成された炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリントには、入力製品を入力製品生産地から対象農地まで輸送し、包装袋を生産地から水稲加工工場まで輸送し、収穫した穀稈を対象農地から穀稈処理工場まで輸送し、収穫した水稲を対象農地から水稲加工工場まで輸送し、水稲製品を水稲加工工場から各水稲ディストリビュータまで輸送して生成された直接又は間接炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントには、稲田土壌の温室効果ガス排出及び土壌有機炭素変化量、各種の農業管理実践を実行する中に、農業機械又は機器によって消費されるエネルギーによって生成される炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリントには、もみの整理とスクリーニング、もみ脱穀及び脱穀後の材料混合物の分離、精米と製品整理中に、機械および機器のエネルギー消費によって生成される直接または間接炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントには、ご飯の調理と残留物の処理によるエネルギーの消費により生成された直接または間接炭素当量排出量が含まれることを特徴とする請求項1に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法。
【請求項5】
前記対象領域の農場カーボンフットプリントの計算式は
【数1】
であり、
ここで、Mは面積あたりの入力製品の質量、Eは質量あたり生産時に入力製品の炭素当量排出量係数、iは製品、i=1,2,…8はそれぞれ水稲種子、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、除草剤、殺虫剤、農業用フイルム、包装袋を示し、
は輸送距離、j=1,2,…7はそれぞれ水稲種子、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、除草剤、殺虫剤、農業用フイルムを生産地から対象農地に輸送する距離、j=8は包装袋を生産地から水稲加工工場に輸送する距離、j=9,10はそれぞれ収穫した穀稈及び水稲果実を対象農地から穀稈処理工場に輸送する及び水稲加工工場に輸送する距離を示し、j=11は水稲製品を水稲加工工場から各ディストリビュータに輸送する距離の和を示し、V(cartype,load)は交通機関が距離あたり走行して消費したエネルギーを示し、cartypeは、車種を示し、loadは、負荷を示し、kは交通機関が選択したエネルギータイプ、k=1,2,3はそれぞれガソリン、ディーゼル及び電力を示し、Ek,lは、対応するタイプのエネルギーを消費する炭素排出係数を示し、l=1,2はそれぞれ直接排出と間接排出係数を示し、
係数265、28はそれぞれNO、CHを100年の時間スケールに変換するグローバル温度増加潜在効果値、44/12は、CとCOとの間の変換を示し、
【数2】
はそれぞれ深層学習モデルから稲田間のNO排出、CH排出、土壌有機炭素変化量の予測関数を表し、xは、気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットにおけるデータを示し、
m,n(ρ,Y)は面積あたりでの特定の農業管理実践の実施によって消費されるエネルギーを示し、m=1,2,…11はそれぞれ耕作、マルチング、播種、施肥、除草剤の散布、殺虫剤の散布、灌漑、排水、収穫、収穫物の粉砕と収穫物の梱包、nは農業機械又は機器が選択したエネルギータイプ、n=1,2はそれぞれディーゼルと電力を示し、そのうち播種密度は、播種時のエネルギー消費に影響を与え、今期の収量は、収穫と収穫物処理時のエネルギー消費に影響を与えるため、Vm,nは播種密度ρ及び今期の収量Yに関する関数であり、En,lは対応してディーゼル・電力を使用する直接・間接排出係数を示し、
(Y)は異なる水稲加工段階の電力消費量、o=1,2,…8はそれぞれもみ一次スクリーニング、脱殻、もみ殻分離、精米、米洗浄、米陰干、精選分類、梱包段階を示し、そのうち今期の収量は、各段階の消費電力に影響を与えるため、Cは今期の収量に関する関数であり、Eelectricityは電気量あたりで生産する炭素当量排出量係数を示し、
(α,Y)はご飯を調理することで消費されたエネルギーを示し、pはご飯を調理することで選択されたエネルギータイプ、p=1,2,3はそれぞれ天然ガス、石炭ガス及び電力を示し、そのうち今期の収量Y及び加工後のもみ品質保存率αは、消耗エネルギーの数値に影響を与えるため、Vは今期の収量Y及び加工後のもみ品質保存率αに関する関数であり、Ep,lは対応するエネルギーを使用して生産する炭素排出係数を示し、
q,n(α,β,Y)は残渣を処理して消費されるエネルギーを示し、βは残渣率、qは残渣処理の方式、q=1,2はそれぞれ残渣埋立及び残渣飼料化処理に必要なエネルギーを示すことを特徴とする請求項1に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法。
【請求項6】
前記対象領域の農場カーボンフットプリントの計算式は、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階、の水稲のカーボンフットプリントの境界により確定されることを特徴とする請求項5に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法。
【請求項7】
前記対象領域の製品カーボンフットプリントの計算式はPCF=FCF/Yであることを特徴とする請求項5に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法。
【請求項8】
対象領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得するために使用される第1データ取得モジュールと、前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットは、少なくとも気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを含み、
深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定するために使用される第1農場カーボンフットプリント計算モジュールと、前記農場カーボンフットプリントは、栽培面積あたりによって生成される炭素当量排出量であり、
対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得するために使用される第2データ取得モジュールと、
前記対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び前記対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリント及び対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントを確定するために使用される第2農場カーボンフットプリント計算モジュールと、
対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントを累加し、対象領域の農場カーボンフットプリントを確定し、かつ前記対象領域の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の製品カーボンフットプリントを確定するために使用される製品カーボンフットプリント計算モジュールと、を含み、前記製品カーボンフットプリントは、質量あたりの水稲製品を生産するために生成された炭素当量排出量であることを特徴とする水稲のカーボンフットプリント評価システム。
【請求項9】
メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリは、コンピュータープログラムを保存するために使用され、前記プロセッサは、前記コンピュータープログラムを操作して、前記プロセッサは、前記コンピュータープログラムを操作して、前記電子機器が請求項1から7のいずれか1項に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法を実行できるようにすることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
コンピュータープログラムを保存し、前記コンピュータープログラムは、プロセッサに実行される時に請求項1から7のいずれか1項に記載の水稲のカーボンフットプリント評価方法を実現することを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業生産と生態環境の技術分野、特に水稲のカーボンフットプリント評価方法、システム、電子機器及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
水稲は世界で2番目に大きい食糧用作物であり、人間のほぼ半分の生存に関連するが、水稲栽培は人為CH排出の主な原因の1つでもあり、農業CH総排出量の20%を占めている。水稲畑から直接排出される温室効果ガスに加えて、消費段階を含む水稲生産の他の段階でも大量の温室効果ガスを生成する。上流部分には、肥料の生産、エネルギーの生産、除草剤と殺虫剤の生産、農業用フイルムの生産などの畑入力製品の生産が含まれ、下流部分には、水稲の乾燥と洗浄、脱穀と研削、包装、使用等が含まれ、輸送部分には、農地と各サプライヤーと各販売者の間の交通機関の往復が含まれている。これらの部分によって生成された温室効果ガス総排出量は、畑の直接排出量よりも低くない。
【0003】
現在、農作物のカーボンフットプリントを評価するためのフルライフサイクル法(LCA)の使用は比較的成熟している。ただし、畑の排出部分では、ほとんどのLCAはすべて、国連政府気候変動特別委員会(IPCC)が2006年に提供した国立温室効果ガスリストガイドラインを使用して推定し、これは、さまざまな農地間の気候の違い、土壌の違い、農業管理実践の違いから農地における温室効果ガス排出及び土壌炭素貯留速度への影響を反映しにくいため、この評価方法の精度を保証しにくい。
【0004】
農作物のカーボンフットプリント評価におけるLCA使用の精度を改善するために、IPCC評価の代わりに、農業システムモデル(DNDC、RZWQMなど)の使用により、農作物畑の温室効果ガス排出及び土壌炭素の変化をシミュレートすることは効果的な改善方法である。ただし、農業システムモデルでは、パラメーターのキャリブレーションと結果テストを実行するために大量の観測値が必要である。一方では、大量の観測値では、長年にわたって蓄積する必要があり、時間コストが高くなる。他方では、キャリブレーションテストによる農業システムモデルは、1つの対象農地状況のみをシミュレートでき、対象農地を変更した後、農業システムモデルを再キャリブレーションテストする必要がある。
【0005】
したがって、現在、高速で正確で適応性を統合する、水稲のカーボンフットプリント評価方法が不足し、これは、農業の低炭素の発展には、不利な要因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存の水稲のカーボンフットプリント評価方法の低速度、低精度、および低適応性という問題を解決し、高速、高精度、高適応性の水稲のカーボンフットプリント評価方法、システム、電子機器及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
【0008】
第1態様では、本発明は、水稲のカーボンフットプリント評価方法を提供し、
対象領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得することと、前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットは、少なくとも気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを含み、
深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定することと、前記農場カーボンフットプリントは、栽培面積あたりによって生成される炭素当量排出量であり、
対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得することと、
前記対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び前記対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリント及び対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントを確定することと、
対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントを累加し、対象領域の農場カーボンフットプリントを確定し、かつ前記対象領域の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の製品カーボンフットプリントを確定することと、を含み、前記製品カーボンフットプリントは、質量あたりの水稲製品を生産するために生成された炭素当量排出量である。
【0009】
任意選択で、前記気候データセットには、気温、降水量、蒸発量、相対湿度、風速及び日照が含まれ、前記気温には最低温度と最高温度が含まれ、
前記土壌データセットには、総土壌窒素含有量、土壌有機物含有量、土壌のpH値、土壌品質の割合が含まれ、
前記農業管理実践データセットには、肥料管理、水管理モード、耕作管理、穀稈管理、水稲品種及び栽培モードが含まれ、前記肥料管理には、肥料の種類、施用量、施用回数、および施用時間が含まれ、前記水管理モードには、排水回数、排水時間、排水時間の長さが含まれ、前記耕作管理には、耕作の深さ、耕作回数、耕作時間が含まれ、前記穀稈管理には、穀稈を肥料とする比率、時間、方式が含まれ、前記水稲品種には、インディカ米とうるち米が含まれ、前記栽培モードには、直播き、移植、マルチングがあるかどうかが含まれる。
【0010】
任意選択で、前記深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定することは、具体的には、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌CH排出の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌CH排出量を確定することと、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌NO排出の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌NO排出量を確定することと、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌有機炭素変化量の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌有機炭素変化量を確定することと、
前記対象領域の稲田間土壌CH排出量、前記対象領域の稲田間土壌NO排出量及び前記対象領域の稲田間土壌有機炭素変化量により、対象領域の畑段階の土壌部分の農場カーボンフットプリントを計算することと、
対象領域の畑段階の農業機械操作部分の農場カーボンフットプリントを計算することと、
前記対象領域の畑段階の土壌部分の農場カーボンフットプリント及び前記対象領域の畑段階の農業機械操作部分の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定することと、を含む。
【0011】
任意選択で、前記対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリントには、水稲種子生産、肥料生産、エネルギー生産、除草剤の生産、殺虫剤の生産、農業用フイルム生産、包装袋の生産により生成された炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリントには、入力製品を入力製品生産地から対象農地まで輸送し、包装袋を生産地から水稲加工工場まで輸送し、収穫した穀稈を対象農地から穀稈処理工場まで輸送し、収穫した水稲を対象農地から水稲加工工場まで輸送し、水稲製品を水稲加工工場から各水稲ディストリビュータまで輸送して生成された直接又は間接炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントには、稲田土壌の温室効果ガス排出及び土壌有機炭素変化量、各種の農業管理実践を実行する中に、農業機械又は機器によって消費されるエネルギーによって生成される炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリントには、もみの整理とスクリーニング、もみ脱穀及び脱穀後の材料混合物の分離、精米と製品整理中に、機械および機器のエネルギー消費によって生成される直接または間接炭素当量排出量が含まれ、
前記対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントには、ご飯の調理と残留物の処理によるエネルギーの消費により生成された直接または間接炭素当量排出量が含まれる。
【0012】
任意選択で、前記対象領域の農場カーボンフットプリントの計算式は
【数1】
であり、
ここで、Mは面積あたりの入力製品の質量、Eは質量あたり生産時に入力製品の炭素当量排出量係数、iは製品、i=1,2,…8はそれぞれ水稲種子、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料除草剤、殺虫剤、農業用フイルム、包装袋を示し、
は輸送距離、j=1,2,…7はそれぞれ水稲種子、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、除草剤、殺虫剤、農業用フイルムを生産地から対象農地に輸送する距離、j=8は包装袋を生産地から水稲加工工場に輸送する距離、j=9,10はそれぞれ収穫した穀稈及び水稲果実を対象農地から穀稈処理工場に輸送する及び水稲加工工場に輸送する距離を示し、j=11は水稲製品を水稲加工工場から各ディストリビュータに輸送する距離の和を示し、V(cartype,load)は交通機関が距離あたり走行して消費したエネルギーを示し、cartypeは、車種を示し、loadは、負荷を示し、kは交通機関が選択したエネルギータイプ、k=1,2,3はそれぞれガソリン、ディーゼル及び電力を示し、Ek,lは対応するタイプのエネルギーを消費する炭素排出係数を示し、l=1,2はそれぞれ直接排出と間接排出係数を示し、
係数265、28はそれぞれNO、CHが100年の時間スケールに変換するグローバル温度増加潜在効果値、44/12は、CとCOとの間の変換を示し、
【数2】
はそれぞれ深層学習モデルから稲田間のNO排出、CH排出、土壌有機炭素変化量の予測関数を表し、xは、気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットにおけるデータを示し、
m,n(ρ,Y)は面積あたりでの特定の農業管理実践の実施によって消費されるエネルギーを示し、m=1,2,…11はそれぞれ耕作、マルチング、播種、施肥、除草剤の散布、殺虫剤の散布、灌漑、排水、収穫、収穫物の粉砕と収穫物の梱包、nは農業機械又は機器が選択したエネルギータイプ、n=1,2はそれぞれディーゼルと電力を示し、そのうち播種密度は、播種時のエネルギー消費に影響を与え、今期の収量は、収穫と収穫物処理時のエネルギー消費に影響を与えるため、Vm,nは播種密度ρ及び今期の収量Yに関する関数であり、En,lは対応してディーゼル・電力を使用する直接・間接排出係数を示し、
(Y)は異なる水稲加工段階の電力消費量、o=1,2,…8はそれぞれもみ一次スクリーニング、脱殻、もみ殻分離、精米、米洗浄、米陰干、精選分類、梱包段階を示し、そのうち今期の収量は、各段階の消費電力に影響を与えるため、Cは今期の収量に関する関数であり、Eelectricityは電気量あたりで生産する炭素当量排出量係数を示し、
(α,Y)はご飯を調理することで消費されたエネルギーを示し、pはご飯を調理することで選択されたエネルギータイプ、p=1,2,3はそれぞれ天然ガス、石炭ガス及び電力を示し、そのうち今期の収量Y及び加工後のもみ品質保存率αは、消耗エネルギーの数値に影響を与えるため、Vは今期の収量Y及び加工後のもみ品質保存率αに関する関数であり、Ep,lは対応するエネルギーを使用して生産する炭素排出係数を示し、
q,n(α,β,Y)は残渣を処理して消費されるエネルギーを示し、βは残渣率、qは残渣処理の方式、q=1,2はそれぞれ残渣埋立及び残渣飼料化処理に必要なエネルギーを示す。
【0013】
任意選択で、前記対象領域の農場カーボンフットプリントの計算式は、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の、水稲のカーボンフットプリントの境界により確定される。
【0014】
任意選択で、前記対象領域の製品カーボンフットプリントの計算式はPCF=FCF/Yである。
【0015】
第2態様では、本発明は、水稲のカーボンフットプリント評価システムを提供し、
対象領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得するために使用される第1データ取得モジュールと、前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットは、気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを含み、
深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定するために使用される第1農場カーボンフットプリント計算モジュールと、前記農場カーボンフットプリントは、栽培面積あたりによって生成される炭素当量排出量であり、
対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得するために使用される第2データ取得モジュールと、
前記対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び前記対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリント及び対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントを確定するために使用される第2農場カーボンフットプリント計算モジュールと、
対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントを累加し、対象領域の農場カーボンフットプリントを確定し、かつ前記対象領域の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の製品カーボンフットプリントを確定するために使用される製品カーボンフットプリント計算モジュールと、を含み、前記製品カーボンフットプリントは、質量あたりの水稲製品を生産するために生成された炭素当量排出量である。
【0016】
第3態様では、本発明は電子機器を提供し、メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリは、コンピュータープログラムを保存するために使用され、前記プロセッサは、前記コンピュータープログラムを操作して、前記電子機器が第1態様による水稲のカーボンフットプリント評価方法を実行できるようにする。
【0017】
第4態様では、本発明は、コンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータープログラムを保存し、前記コンピュータープログラムは、プロセッサに実行される時に第1態様による水稲のカーボンフットプリント評価方法を実現する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって提供される具体的な実施例によれば、本発明は、以下の技術的効果を開示する。
本発明は、LCAに基づいて、深層学習モデルを通じて、稲田間の土壌の温室効果ガスの排出と土壌炭素の変化量を予測し、IPCC推定アルゴリズムの精度を効果的に改善することができるだけでなく、農業システムモデルの確立の高い時間コストと不十分な移植性の問題を十分に解決でき、そして、農業管理実践の観点から、ゆりかごから墓までの水稲のカーボンフットプリントが評価され、水稲のカーボンフットプリントの大規模な評価の可能性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をさらに明確に説明するために、次に実施例における使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、次の説明における図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的努力をすることなく、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0020】
図1】本発明の実施例により提供される水稲のカーボンフットプリント評価方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例により提供される深層学習アルゴリズム予測プロセス図である。
図3】本発明の実施例により提供される水稲農場カーボンフットプリント評価モデルの構造概略図である。
図4】本発明の実施例により提供される水稲のカーボンフットプリント評価システムの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な努力をすることなく取得されたすべての他の実施例は、すべて本発明の保護範囲に属する。
【0022】
本発明は、既存の水稲のカーボンフットプリント評価方法の低速度、低精度、および低適応性という問題を解決し、高速、高精度、高適応性の水稲のカーボンフットプリント評価方法、システム、及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【0023】
本発明の技術的問題は、以下の技術的解決手段によって解決される。
A1、稲田の温室効果ガス排出、稲田の土壌炭素貯留のデータベースを構築し、構築されたデータベースに基づいて深層学習モデルを構築して、稲田間の温室効果ガス排出状況及び土壌炭素貯留状況を予測する。A2、さまざまな農業管理実践に基づいて、水稲のカーボンフットプリントの計算境界を確定し、水稲のライフサイクル全体における各段階の製品と活動のカーボンフットプリント評価のデータセットを構築する。A3、迅速かつ正確で適応な水稲のカーボンフットプリント評価フレームワークを構築し、深層学習モデルを利用して従来のIPCC推定を置き換え、農業システムモデルで、稲田間の土壌における温室効果ガスの排出と土壌炭素貯留状況を予測することをシミュレーションする。
【0024】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかで分かりやすくするために、以下に図面及び発明の実施の形態を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0025】
実施例1
図1に示すように、本発明の実施例は、水稲のカーボンフットプリント評価方法を提供し、具体的には以下を含む。
ステップ100:対象領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得する。前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットは、少なくとも気候データセット(climate)、土壌データセット(soil)及び農業管理実践データセットを含む。
ここで、気候データセットには、気温(最高温及び最低温)、降水量、蒸発量、相対湿度、風速、日照が含まれ、土壌データセットには、総土壌窒素含有量(TN)、土壌有機物含有量(SOM)、土壌のpH値、土壌品質の割合(sand、silt、clayのそれぞれの割合)が含まれ、農業管理実践データセットには、肥料管理(肥料種類、施用量、施用回数、施用時間)、具体的な水管理モード(排水回数、排水時間、排水時間の長さ)、耕作管理(耕作深さ、耕作回数、耕作時間)、穀稈管理(穀稈を肥料とする比率、時間、方式)、水稲品種(インディカ米、うるち米)及び栽培モード(直播き、移植、マルチングがあるかどうか)が含まれる。
ステップ200:深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定する。前記農場カーボンフットプリントは、栽培面積あたりによって生成される炭素当量排出量である。
【0026】
ここで、ステップ200は具体的には以下を含む。
ステップ201:前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌CH排出の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌CH排出量を確定し、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌NO排出の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌NO排出量を確定し、
前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにおける気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを深層学習アルゴリズムによって確定された稲田間土壌有機炭素変化量の深層学習モデルに入力し、対象領域の稲田間土壌有機炭素変化量を確定する。
【0027】
ここで、図2に示すように、稲田間の土壌CH排出深層学習モデル、稲田間土壌NO排出深層学習モデル及び稲田間土壌有機炭素変化量ΔSOC深層学習モデルの確定プロセスは以下のとおりである。
ステップA:トレーニングデータセットを構築する。
さまざまなプラットフォーム(Web of Science、CNKI等)が発行した論文からサンプル領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及びラベルデータを抽出し、該サンプル領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットは即ち後続モデルトレーニングの入力データである。
入力データには、時間情報、地理位置情報、土壌条件データセット、農業管理実践データセットが含まれる。ここで、時間情報及び地理位置情報により、国家気象情報中心から対応する気候データセットを取得し、該気候データセットは同様に、気温(最高温及び最低温)、降水量、蒸発量、相対湿度、風速、日照が含まれ、土壌条件データセットには同様に、総土壌窒素含有量(TN)、土壌有機物含有量(SOM)、土壌のpH値、土壌品質の割合が含まれ、農業管理実践データセットには同様に、肥料管理(肥料種類、施用量、施用回数、施用時間)、具体的な水管理モード(排水回数、排水時間、排水時間の長さ)、耕作管理(耕作深さ、耕作回数、耕作時間)、穀稈管理(穀稈を肥料とする比率、時間、方式)、水稲品種(インディカ米、うるち米)及び栽培モード(直播き、移植、マルチングがあるかどうか)が含まれる。
【0028】
ラベルデータには、サンプル領域の畑段階の稲田成長期の期間内の土壌CH排出、NO排出及び土壌有機炭素変化量が含まれる。
【0029】
深層学習モデルの構築にはサポートのために大量のサンプルが必要なため、サンプルの数量の最小しきい値を以下に制限する必要がある。
【数3】
ここでS(i=1,2,3)はそれぞれ稲田間の土壌CH排出深層学習モデル、稲田間の土壌NO排出深層学習モデル、稲田間の土壌有機炭素変化量ΔSOC深層学習モデルの最小サンプル数量、Nj,iは第j文献に記録した出力指標iのサンプルの数量を示す。
【0030】
ステップB:前記トレーニングデータセットに応じて、深層学習モデルをトレーニングし、稲田間の土壌CH排出深層学習モデル、稲田間土壌NO排出深層学習モデル及び稲田間土壌有機炭素変化量ΔSOC深層学習モデルを取得する。
【0031】
評価指標Rの最小しきい値を限定することにより対応する深層学習モデルをスクリーニングし、具体的には
【数4】
であり、
ここで、R (i=1,2,3)はそれぞれ稲田間の土壌CH排出深層学習モデル、稲田間の土壌NO排出深層学習モデル、稲田間の土壌有機炭素変化量ΔSOC深層学習モデルの、テストセットでのR分数を示し、yj,iはグループjのサンプル指標iの真理値(取得されたサンプルの出力)であり、
【数5】
は対応する深層学習モデルに対応する予測値、
【数6】
は指標iに対応する真理値の平均値である。
【0032】
ステップ202:前記対象領域の稲田間土壌CH排出量、前記対象領域の稲田間土壌NO排出量及び前記対象領域の稲田間土壌有機炭素変化量により、対象領域の畑段階の土壌部分の農場カーボンフットプリントを計算する。
ステップ203:対象領域の畑段階の農業機械操作部分の農場カーボンフットプリントを計算する。
ステップ204:前記対象領域の畑段階の土壌部分の農場カーボンフットプリント及び前記対象領域の畑段階の農業機械操作部分の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定する。
ステップ300:対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得する。
ステップ400:前記対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び前記対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリント及び対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントを確定する。
ステップ500:対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントを累加し、対象領域の農場カーボンフットプリントを確定し、かつ前記対象領域の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の製品カーボンフットプリントを確定する。前記製品カーボンフットプリントは、質量あたりの水稲製品を生産するために生成された炭素当量排出量である。
【0033】
ここで、前記対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリントは、入力製品(水稲種子生産、肥料(窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料)の生産、エネルギー生産(ガソリン、ディーゼル、天然ガス、石炭ガス、電力)、除草剤の生産、殺虫剤の生産、農業用フイルムの生産、包装袋の生産)により生成された炭素当量排出量が含まれる。
【0034】
前記対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリントは、(1)入力製品(包装袋を含まない)を入力製品生産地から対象農地まで輸送し、(2)包装袋を生産地から水稲加工工場まで輸送し、(3)収穫した穀稈を対象農地から穀稈処理工場まで輸送し、(4)収穫した水稲を対象農地から水稲加工工場まで輸送し、(5)水稲製品を水稲加工工場から各水稲ディストリビュータまで輸送し、以上プロセスに、輸送機関により、エネルギーを消費して生成される直接または間接炭素当量排出量を含む。
【0035】
前記対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントは、(1)稲田土壌の温室効果ガス排出及び土壌有機炭素変化量、(2)各種の農業管理実践(耕作、マルチング、播種、施肥、薬の噴霧、灌漑排水、収穫、収穫物の処理)を実行するプロセスに、農業機械又は機器がエネルギーを消費して生成された炭素当量排出量を含む。
【0036】
前記対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリントは、もみの整理及びスクリーニング、もみ脱穀及び脱穀後の材料混合物の分離、精米(精米、米洗浄、米陰干)及び製品整理(スクリーニング分類及び包装)プロセスに、機械設備が消費したエネルギーにより生成された直接又は間接炭素当量排出量を含む。
前記対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントは、ご飯を調理する及び残渣を処理して消費したエネルギーにより生成された直接又は間接炭素当量排出量を含む。
【0037】
本発明の実施例において、炭素計量機能ユニットを統一する必要があるので、農場カーボンフットプリントFCF:kg CO eq/ha、栽培面積あたりによって生成される炭素当量排出量、製品カーボンフットプリントPCF:kg CO eq/kg、質量あたりの水稲製品を生産して生成された炭素当量排出量、を用いる。
【0038】
対象領域の、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントに基づき、図3に示す迅速かつ正確で適応な水稲農場カーボンフットプリント評価モデルワークを構築し、そのモデルの式は、上流段階、輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階、の水稲のカーボンフットプリントの境界により確定され、該モデルの式は即ち対象領域の農場カーボンフットプリントの計算式であり、前記対象領域の農場カーボンフットプリントの計算式は
【数7】
であり、
ここで、Mは面積あたりの入力製品の質量、Eは質量あたり生産時に入力製品の炭素当量排出量係数、iは製品、i=1,2,…8はそれぞれ水稲種子、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、除草剤、殺虫剤、農業用フイルム、包装袋を示す。
【0039】
は輸送距離、j=1,2,…7はそれぞれ水稲種子、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、除草剤、殺虫剤、農業用フイルムを生産地から対象農地に輸送する距離、j=8は包装袋を生産地から水稲加工工場に輸送する距離、j=9,10はそれぞれ収穫した穀稈及び水稲果実を対象農地から穀稈処理工場に輸送する及び水稲加工工場に輸送する距離を示し、j=11は水稲製品(もみ)を水稲加工工場から各ディストリビュータに輸送する距離の和を示し、V(cartype,load)は交通機関が距離あたり走行して消費したエネルギーを示し、これは車種(cartype)及び負荷(load)に関する関数であり、kは交通機関が選択したエネルギータイプ、k=1,2,3はそれぞれガソリン、ディーゼル及び電力を示し、Ek,lは、対応するタイプのエネルギーを消費する炭素排出係数を示し、l=1,2はそれぞれ直接排出(エネルギーを使用)と間接排出(エネルギーを生産)係数を示す。
【0040】
係数265、28はそれぞれNO、CHを100年の時間スケールに変換するグローバル温度増加潜在効果値、44/12は、CとCOとの間の変換を示し、
【数8】
はそれぞれ深層学習モデルから稲田間のNO排出、CH排出、土壌有機炭素変化量(ΔSOC)の予測関数を表し、xはそれぞれ気候(最高温、最低温等)、土壌(pH、SOC等)AMPからの入力であり、これらはすべて上記で言及され、ここでセットの形で表され、fはモデルの数式を表し、fの下付き文字はモデルの出力指標を示す。
【0041】
m,n(ρ,Y)は面積あたりで、特定の農業管理実践の実施によって消費されるエネルギーを示し、m=1,2,…11はそれぞれ耕作、マルチング、播種、施肥、除草剤の散布、殺虫剤の散布、灌漑、排水、収穫、収穫物(穀稈)の粉砕と収穫物の梱包、nは農業機械又は機器が選択したエネルギータイプ、n=1,2はそれぞれディーゼルと電力を示し、そのうち播種密度は、播種時のエネルギー消費に影響を与え、今期の収量は、収穫と収穫物処理時のエネルギー消費に影響を与えるため、Vm,nは播種密度ρ及び今期の収量Yに関する関数であり、En,lは対応してディーゼル・電力を使用する直接・間接排出係数を示す。
【0042】
(Y)は異なる水稲加工段階の電力消費量、o=1,2,…8はそれぞれもみ一次スクリーニング、脱殻、もみ殻分離、精米、米洗浄、米陰干、精選分類、梱包段階を示し、そのうち今期の収量は、各段階の消費電力に影響を与えるため、Cは今期の収量Yに関する関数であり、Eelectricityは電気量あたりで生産する炭素当量排出量係数を示す。
【0043】
(α,Y)はご飯を調理することで消費されたエネルギーを示し、pはご飯を調理することで選択されたエネルギータイプ、p=1,2,3はそれぞれ天然ガス、石炭ガス及び電力を示し、そのうち今期の収量Y及び加工後のもみ品質保存率αは、消耗エネルギーの数値に影響を与えるため、Vは今期の収量Y及び加工後のもみ品質保存率αに関する関数であり、Ep,lは対応するエネルギーを使用して生産する炭素排出係数を示す。
【0044】
q,n(α,β,Y)は残渣(廃棄物/不十分利用物)を処理して消費されるエネルギーを示し、βは残渣率、qは残渣処理の方式、q=1,2はそれぞれ残渣埋立及び残渣飼料化処理に必要なエネルギーを示す。
【0045】
対応して、対象領域の製品カーボンフットプリントの計算方式は、
PCF=FCF/Yである。
【0046】
実施例2
対応する機能と技術的効果を達成するために、上記の実施例1に対応する方法を実行するために、以下、水稲のカーボンフットプリント評価システムを提供する。
【0047】
図4に示すように、該水稲のカーボンフットプリント評価システムは、
対象領域の畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得するために使用される第1データ取得モジュールと、前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットは、少なくとも気候データセット、土壌データセット及び農業管理実践データセットを含む。
深層学習アルゴリズム及び前記畑段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の畑段階の農場カーボンフットプリントを確定する第1農場カーボンフットプリント計算モジュール2と、前記農場カーボンフットプリントは、栽培面積あたりによって生成される炭素当量排出量である。
対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットを取得するために使用される第2データ取得モジュール3と、
前記対象領域の上流段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の輸送段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット、前記対象領域の生産加工段階の稲田カーボンフットプリント評価データセット及び前記対象領域の消費段階の稲田カーボンフットプリント評価データセットにより、対象領域の上流段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の輸送段階の農場カーボンフットプリント、対象領域の生産加工段階の農場カーボンフットプリント及び対象領域の消費段階の農場カーボンフットプリントを確定するために使用される第2農場カーボンフットプリント計算モジュール4と、
対象領域の、上流段階、輸送段階輸送段階、畑段階、生産加工段階及び消費段階の農場カーボンフットプリントを累加し、対象領域の農場カーボンフットプリントを確定し、かつ前記対象領域の農場カーボンフットプリントにより、対象領域の製品カーボンフットプリントを確定するために使用される製品カーボンフットプリント計算モジュール5と、を含む。前記製品カーボンフットプリントは、質量あたりの水稲製品を生産するために生成された炭素当量排出量である。
【0048】
実施例3
本発明の実施例は、メモリ及びプロセッサを含む電子機器を提供し、該メモリは、コンピュータープログラムを保存するために使用され、該プロセッサは、コンピュータープログラムを操作して、電子機器が実施例1による水稲のカーボンフットプリント評価方法を実行できるようにする。
【0049】
任意選択で、上記電子機器は、サーバであってもよい。
【0050】
また、本発明の実施例はまた、コンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータープログラムを保存し、該コンピュータープログラムは、プロセッサに実行される時に実施例1による水稲のカーボンフットプリント評価方法を実現する。
【0051】
本明細書における各実施例は段階的に説明されており、各実施例が主に説明することはすべて、他の実施例との相違点であり、各実施例間で同一または同様の部分は、互いに参照すればよい。実施例に開示されたシステムについては、実施例に開示された方法に対応するので、説明は比較的簡単であり、関連情報は、方法部分の説明を参照すればよい。
【0052】
本明細書において具体的な例を使用して本発明の原理及び実施態様を説明するが、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核となる考え方を理解するように寄与するだけであり、同時に、当業者にとって、本発明の考えによると、発明を実施するための形態および応用範囲にすべて、変更がある。要約すると、本明細書の内容は本発明への制限であると理解すべきではない。
図1
図2
図3
図4