(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079603
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 5/06 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B43K5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023190810
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】10 2022 131 776.5
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】507315210
【氏名又は名称】ツェー・ヨーゼフ・ラミー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ベルベリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ハートヴィヒ
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350KC22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンパクトな筆記具の提供。
【解決手段】操作側と、筆記先端13を有する筆記側と、液体の筆記媒体を充填可能なタンク11と、特にタンクを充填するためにタンク内で移動可能なピストン12と、操作側に配置された、タンク内でピストンを軸方向に変位させるための操作要素20とを有する筆記具に関する。筆記具は、操作要素が、ユーザによって第1の軸方向位置、即ち、操作要素が、特にロック下で軸方向に位置を保持されている静止位置から、静止位置とは軸方向に異なる第2の軸方向位置、即ち、操作要素が筆記先端に対して静止位置に比して大きい間隔を備えかつ操作要素がユーザによって把持されてピストンを軸方向に変位させるために移動され得る操作位置に移動可能であること、を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作側と、筆記先端を有する筆記側と、液体の筆記媒体を充填可能なタンク(11)と、特にタンク(11)を充填するためにタンク(11)内で移動可能なピストン(12)と、操作側に配置された、タンク(11)内でピストン(12)を軸方向に変位させるための操作要素(20)とを有する筆記具において、
操作要素(20)が、ユーザによって第1の軸方向位置、即ち、操作要素が、特にロック下で軸方向に位置を保持されている静止位置から、静止位置とは軸方向に異なる第2の軸方向位置、即ち、操作要素(20)が筆記先端に対して静止位置に比して大きい間隔を備えかつ操作要素(20)がユーザによって把持されてピストン(12)を軸方向に変位させるために移動され得る操作位置に移動可能であること、を特徴とする筆記具。
【請求項2】
操作要素(20)は、押しボタンであり、この押しボタンは、押しボタンを操作することによって、即ち圧縮力を押しボタンに加えることによって、ユーザにより、まず静止位置から筆記側の方向に移動可能であり、次いで、特に筆記具のバネ要素のバネ力によって反対方向に操作位置に移動可能又は移動されること、を特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
操作要素(20)は、特に操作要素の偶発的な操作を回避するため、静止位置で、少なくなくとも部分的に、特に軸方向に少なくとも操作要素の長さの3/4、特に好ましくは軸方向に少なくとも操作要素の長さの9/10が、好ましくは筆記具のハウジングによって構成される筆記具の内部空間内に没入しているが、操作要素(20)の他の又は残りの部分は、静止位置で筆記具から突出し、特に操作要素の7mm未満、好ましくは5mm未満、特に好ましくは3mm未満が突出すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
操作要素(20)は、操作位置で、部分的に、好ましくは筆記具のハウジングによって構成される筆記具の1つ又は前記の内部空間内に没入しているが、操作要素(20)の残りの部分は、特に操作要素の操作を可能にするために、操作位置で筆記具から突出し、特に軸方向に操作要素の3mm超、好ましくは5mm超、特に好ましくは7mm超が突出すること、を特徴とする請求項1、2又は3に記載の筆記具。
【請求項5】
特に、操作要素が、操作位置で、好ましくは静止位置でも、特に操作要素(20)の回転時に共に回転する、ピストン(12)と協働するスピンドル装置の第1のスピンドル体(21)と回転方向に不動で操作可能に結合され、第1のスピンドル体(21)の回転がピストン(12)の軸方向移動を生じさせるように、スピンドル装置が形成されていることによって、操作要素(20)が、ピストン(12)を軸方向に変位させるために回転可能に形成されていること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項又は複数項に記載の筆記具。
【請求項6】
スピンドル装置が、ピストン(12)と特に一体的に結合された、ネジを有する第2のスピンドル体(24)を備え、このネジが、操作要素(20)と回転方向に不動で操作可能に結合された第1のスピンドル体(21)の適合するネジに係合すること、を特徴とする請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
第1のスピンドル体(21)は、雌ネジを有するスリーブであるか、特に一体的にピストン(12)と結合された雄ネジを有するネジ付きスピンドルであること、を特徴とする請求項5又は6に記載の筆記具。
【請求項8】
第2のスピンドル体(24)は、雄ネジを有するネジ付きスピンドルであるか、特にハウジングに固定された、雌ネジを有するスリーブであること、を特徴とする請求項6又は7に記載の筆記具。
【請求項9】
操作要素(20)は、ピストン(12)に対して相対的に軸方向に可動に支承され、これにより、ピストン(12)は、静止位置と操作位置の間を操作要素(20)が軸方向に移動する時に、軸方向に共に移動されないこと、を特徴とする請求項1~8のいずれか1項又は複数項に記載の筆記具。
【請求項10】
筆記具が、制御ユニット(27)を備え、この制御ユニットは、操作要素(20)と協働し、操作要素が(軸方向に)ロックされている静止位置から開始して操作要素(20)の操作により操作要素(20)がロック解除され得るように、特に、操作要素が引続きバネ要素のバネ力により操作位置に移動可能であるか移動されるように、形成されている、及び/又は、この制御ユニットは、操作要素(20)が操作位置から開始して操作要素(20)の操作により静止位置に移動されかつ静止位置でロックされ得るように、形成されていること、を特徴とする請求項1~9のいずれか1項又は複数項に記載の筆記具。
【請求項11】
制御ユニット(27)が、第1のロック手段、特にボール又はピンを備え、この第1のロック手段が、操作要素(20)の静止位置で操作要素(20)をロックするために第2のロック手段と協働する、特に、第1のロック手段が好ましくは係合して協働する制御ユニット(27)のスイッチングカーブ(29)のロック部分、又は、第1のロック手段が係合する特に環状のガイドチャネルと協働すること、を特徴とする請求項10に記載の筆記具。
【請求項12】
特にハート形の領域を備えるスイッチングカーブ(29)は、第1のロック手段に対して相対的に移動可能であること、を特徴とする請求項11に記載の筆記具。
【請求項13】
第1のロック手段は、特に、好ましくは横軸方向の平面内に延在する特に環状のガイドチャネルへの係合によって又は特に軸方向に不動に配置又は支承された好ましくは環状の1つ又は複数のストッパ面によって、軸方向に不動に支承されていること、を特徴とする請求項11又は12に記載の筆記具。
【請求項14】
スイッチングカーブ(29)は、回転方向及び軸方向に不動に操作要素(20)と結合されている、及び/又は、操作要素(20)の構成要素であり、特に操作要素の外側に配置されていること、又は、スイッチングカーブ(29)は、ハウジングに不動に配置、特に筆記具ハウジングのハウジング壁の内側に配置されていること、を特徴とする請求項11~13のいずれか1項又は複数項に記載の筆記具。
【請求項15】
スイッチングカーブ(29)が、操作要素(20)の外側に配置され、特にハート形の領域に隣接しかつこの領域と結合されたスイッチングカーブ区間を備え、このスイッチングカーブ区間内に、接続チャネルの終端が存在し、この接続チャネルが、操作要素(20)の外側を、操作要素の内部空間を画成する操作要素の内側に接続し、この接続チャネルの寸法は、筆記具の組立て時に接続チャネルによってボールが内側から外側に移動され得るように形成されていること、を特徴とする請求項11~14のいずれか1項又は複数項に記載の筆記具。
【請求項16】
接続チャネルの終端が、スイッチングカーブ区間の部分区間内に配置され、この部分区間には、(組み立てられた)筆記具の操作要素の操作により、ボールが相対移動により移動され得ないこと、を特徴とする、請求項15に記載の筆記具。
【請求項17】
操作要素(20)は、筆記具のハウジング内で、少なくとも1つのガイドによって、特に軸方向のガイドチャネルを備えかつ軸方向のガイドチャネルに係合するガイド部分を備えるガイドによって、軸方向に案内されていること、を特徴とする請求項1~16のいずれか1項又は複数項に記載の筆記具。
【請求項18】
ガイド部分は、回転方向及び軸方向に不動に操作要素(20)と結合されているか又は操作要素の構成要素であり、軸方向のガイドチャネルは、軸方向に不動に筆記具のハウジング内に配置されていること、又は、軸方向のガイドチャネルは、回転方向及び軸方向に不動に操作要素(20)と結合されているか又は操作要素(20)の構成要素であり、ガイド部分は、軸方向に不動に筆記具のハウジング内に配置されていること、を特徴とする請求項17に記載の筆記具。
【請求項19】
軸方向のガイドチャネル又はガイド部分は、スリーブとして形成されたキャリア部品(26)の構成要素であること、を特徴とする請求項17又は18に記載の筆記具。
【請求項20】
スリーブとして形成されたキャリア部品(26)は、スリーブとして形成された第1のスピンドル体(21)の外側に取り付けられており、特に、回転方向及び軸方向に不動にスピンドル体と結合されていること、を特徴とする請求項19に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作側と、筆記先端を有する筆記側と、液体の筆記媒体を充填可能なタンクと、特にタンクを充填するためにタンク内で移動可能なピストンと、操作側に配置された、タンク内でピストンを軸方向に変位させるための操作要素とを有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような筆記具のタンクにインクを充填するための様々なメカニズム及び装置が知られている。例えば、いわゆるコンバーターを有する万年筆の場合、通常は、まず、万年筆の後方のハウジング部分は、コンバーターにアクセスすることができように、前方のハウジング部分から取り外す必要があり、次いで、コンバーターの回転ノブを回すことによって、タンク内に存在するピストンをインクを引き上げるために後方に移動させることができる。これは、複雑である。
【0003】
不動に取り付けられたタンクを有する筆記具の場合、特に、筆記具の後方の部分もしくは操作側に、前方のハウジング部分に対して相対的に回転可能な回転ノブを配置することが知られている。次いで、ユーザによる回転ノブの相応の回転運動により、回転ノブと結合されたピストンは、適切に移動させることができる。ここで、特に欠点であるのは、回転ノブが、それぞれ、筆記具の縦方向寸法を決定し、筆記具のコンパクトさに応じて制限が設定されることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに基づいて、本発明の課題は、冒頭で述べた筆記具を発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する筆記具によって解決される。
【0006】
本発明によれる筆記具は、相応に、操作要素が、ユーザによって第1の軸方向位置、即ち、操作要素が、特に操作要素のロック下で軸方向に位置を保持されている静止位置から、静止位置とは軸方向に異なる第2の軸方向位置、即ち、操作要素が筆記先端に対して静止位置に比して大きい間隔を備えかつ操作要素がユーザによって把持されてピストンを軸方向に変位させるために移動され得る操作位置に移動可能であること、を特徴とする。
【0007】
本発明による解決策により、特に、タンク内で移動可能なピストンを有する公知の筆記具に比して、筆記具を、十分に筆記媒体を充填された筆記具が充填される必要がない段階で、著しくコンパクトなもしくは短縮された静止状態-この静止状態で、筆記媒体は、筆記側の近くにあり、例えば筆記具の内部空間に少なくとも部分的に入っている-に移行させることが可能になる。そして、タンクが充填されるべき操作段階でのみ、筆記具は、操作要素がタンクを満たすために一時的に筆記側からさらに遠くに位置決めされた操作位置に移動されることによって、短時間「伸長」することが必要となる。
【0008】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、操作要素は、押しボタンであり得るが、この押しボタンは、押しボタンを操作することによって、即ち圧縮力を押しボタンに加えることによって、ユーザにより、まず静止位置から筆記側の方向に移動可能であり、次いで、特に筆記具のバネ要素のバネ力によって(特に自動的に)反対方向に操作位置に移動可能又は移動される。
【0009】
この場合、好ましくは、操作要素が、ピストンを軸方向に変位させるために回転可能に形成され、特に、少なくとも操作位置で操作要素の回転がタンク内でのピストンの軸方向に変位を生じさせるように、ピストンと連結されていることが、企図され得る。
【0010】
しかしながら、特に、前記の実施形態の場合だけでなく、操作要素は、静止位置で、大部分が、特に、ユーザが筆記具を全く又は難ありでしか把持することができないほど、筆記具の内部空間に没入している場合が、特に有利である。
【0011】
これは、一方では、筆記具を特にコンパクトに形成し得るためである。しかしながら、他方では、必要に応じて、特に、前記の実施形態の場合、必要に応じて可能な偶発的な誤操作を回避するためであり、例えば、静止位置でも操作要素がピストンと連結され、この理由から意図しない操作要素の回転運動が、静止位置でも、意図しないピストンの軸方向の変位運動を生じさせることになる場合に対してである。
【0012】
これに関して、操作要素は、静止位置で、特にこの目的のため、少なくとも部分的に(好ましくは大部分が)、特に軸方向に少なくとも操作要素の長さの3/4、特に好ましくは軸方向に少なくとも操作要素の長さの9/10が、好ましくは筆記具のハウジングによって構成される筆記具の内部空間内に没入することができるが、操作要素の他の又は残りの部分は、静止位置で、(僅かにだけ)筆記具から突出し、例えば操作要素の7mm未満、好ましくは5mm未満、特に好ましくは3mm未満が突出する。
【0013】
更に、操作要素は、操作位置で、部分的に、好ましくは筆記具のハウジングによって構成される筆記具の1つ又は前記の内部空間内に没入しているが、操作要素の(特に大きい/長い)残りの部分は、特に操作要素のできるだけ楽な操作を可能にするために、操作位置で軸方向に筆記具から突出し、特に軸方向に操作要素の3mm超、好ましくは5mm超、特に好ましくは7mm超が突出すること、も企図され得る。
【0014】
更に、操作要素が、操作位置で、好ましくは静止位置でも、特に操作要素の回転時に共に回転する、ピストンと協働するスピンドル装置の第1のスピンドル体と回転方向に不動で操作可能に結合され、第1のスピンドル体の回転がピストンを変位させるためにピストンの軸方向移動を生じさせるように、スピンドル装置が形成されていること、が企図され得る。
【0015】
この場合、スピンドル装置は、ピストンと特に一体的に結合された、ネジを有する第2のスピンドル体を備えることができ、このネジが、操作要素と回転方向に不動で操作可能に結合された第1のスピンドル体の適合するネジに係合する。
【0016】
この実施形態の更なる具体化では、第1のスピンドル体は、例えば、雌ネジを有するスリーブであるか、特に一体的にピストンと結合された雄ネジを有するネジ付きスピンドルであること、ができる。
【0017】
第2のスピンドル体は、更に、雄ネジを有するネジ付きスピンドルであるか、特にハウジングに固定された、雌ネジを有するスリーブであること、ができる。
【0018】
操作要素は、好ましくは更に、ピストンに対して相対的に軸方向に可動に支承することができ、これにより、ピストンは、静止位置と操作位置の間を操作要素が軸方向に移動する時に、軸方向に共に移動されない。
【0019】
これは、操作要素の回転がピストンの軸方向移動を生じさせる実施形態(上記参照)と関連して特に有利であるが、それだけではない。何故なら、このようにして、静止位置から操作位置への(及びその逆の)操作要素の移行のために必要な操作要素の軸方向の移動中に、付加的で不所望のピストンの軸方向移動を回避することができるからである。
【0020】
特に好ましくは、筆記具が、本発明によるコンセプトを実施するために制御ユニットを備え、この制御ユニットは、操作要素と協働し、操作要素がロックされている静止位置から開始して操作要素の操作により操作要素がロック解除され得るように、形成されている。この場合、好ましくは、操作要素が引続き、即ちロック解除後に、バネ要素のバネ力により(特に自動的に)操作位置に移動可能であるか移動されること、が企図され得る。
【0021】
選択的又は付加的に、この制御ユニットは、操作要素が操作位置から開始して操作要素の操作により静止位置に移動されかつ静止位置でロックされ得るように、形成され得る。
【0022】
この場合、制御ユニットが、第1のロック手段、特にボール又はピンを備え得るが、この第1のロック手段が、操作要素の静止位置で操作要素をロックするために第2のロック手段と協働する。例えば、第1のロック手段が好ましくは係合して協働する制御ユニットのスイッチングカーブのロック部分、又は、第1のロック手段が係合する、リング溝のような特に環状のガイドチャネルと協働する。
【0023】
第1のロック手段は、更に、軸方向に不動に、即ち軸方向の移動能力がないように、支承され得る。例えば、これは、好ましくは横軸方向の平面内に延在する例えばリング溝のような好ましくは環状のガイドチャネルへの係合による。又は、特に軸方向に不動に配置又は支承された好ましくは環状の1つ又は複数のストッパ面の配置又は使用にもよる。
【0024】
スイッチングカーブは、更に、好ましくはハート形の領域を備えることができ、第1のロック手段に対して相対的に移動可能であり得る。
【0025】
スイッチングカーブは、更に、回転方向及び軸方向に不動に、即ち操作要素に対して相対的な回転能力と操作要素に対して相対的な軸方向の移動能力の両方がないように、操作要素と結合され得る。
【0026】
スイッチングカーブは、特に、操作要素の構成要素であり得る。スイッチングカーブは、特に、操作要素の外側に配置すること又はハウジングに不動に、即ち筆記具のハウジングに対して相対的な移動能力がないように、配置され得る。スイッチングカーブは、例えば、筆記具ハウジングのハウジング壁の内側に配置され得る。
【0027】
更に、スイッチングカーブが、操作要素の外側に配置され、特にハート形の領域に隣接しかつこの領域と結合されたスイッチングカーブ区間を備え、このスイッチングカーブ区間内に、接続チャネルの終端が存在し、この接続チャネルが、操作要素の外側を、操作要素の内部空間を画成する操作要素の内側に接続し、この接続チャネルの寸法は、筆記具の組立て時に接続チャネルによってボールが内側から外側に移動され得るように形成されていること、が企図され得る。
【0028】
この場合、接続チャネルの終端が、スイッチングカーブ区間の部分区間内に配置され得、この部分区間には、(組み立てられた)筆記具の操作要素の操作により、ボールが移動され得ない。
【0029】
操作要素は、筆記具のハウジング内で、更に、少なくとも1つのガイドによって、特にガイド溝のような軸方向のガイドチャネルを備えかつ軸方向のガイドチャネルに係合する、特に寸法に関してこの軸方向のガイドチャネルに適合するガイド部分を備えるガイドによって、軸方向に案内され得る。
【0030】
この場合、軸方向のガイドチャネルは、例えば、回転方向及び軸方向に不動に操作要素と結合され得るか又は操作要素の構成要素であり得るが、ガイド部分は、軸方向に不動に筆記具のハウジング内に配置され得る。
【0031】
選択的に、ガイド部分は、回転方向及び軸方向に不動に操作要素と結合されているか又は操作要素の構成要素であり得、軸方向のガイドチャネルは、軸方向に不動に筆記具のハウジング内に配置され得る。
【0032】
特に、軸方向のガイドチャネル又はガイド部分は、スリーブとして形成されたキャリア部品の構成要素であり得る。例えば、スリーブとして形成されたキャリア部品は、スリーブとして形成された第1のスピンドル体の外側に取り付けられており、特に、回転方向及び軸方向に不動にスピンドル体と結合されている。
【0033】
ここで、念のために、本発明によるコンセプトに従って、更に前で述べた押しボタン以外に、ピストンを変位させるための操作要素並びに必要に応じて操作要素と協働する制御ユニットの様々な他のバリエーションが考えられるが、それは、それぞれの操作要素が、前述のように、第1の軸方向位置もしくは静止位置(この位置で、操作要素が、好ましくは更にロックされ得る)と筆記側から更に離れた第2の軸方向位置もしくは操作位置との間を移動され得る場合に限る。
【0034】
例えば、特に、操作側の方向に操作要素を把持及び引き寄せることによりユーザによって静止位置から操作位置に移行されるバリエーションが考えられるが、即ち、このバリエーションの場合、操作要素は、例えば操作要素が場合によっては(部分的に/大部分が)没入した内部空間からユーザによって(少なくとも部分的に)引き出される。
【0035】
この解決策の場合、制御ユニットは、操作要素を(軸方向に)ロックするため、静止位置で、例えば第2のロック手段として、特に環状の溝又は特に環状のガイドチャネルを備えることができ、このガイドチャネルに、第1のロック手段としてバネで支承されたボールが係合し(スナップメカニズム)、操作要素の引出し時に、このバネ力は、ユーザによって克服されなければならない。
【0036】
制御ユニットが、静止位置で操作要素を軸方向に固定もしくは軸方向にロックするためにバヨネットロックを有する解決策も考えられる。
【0037】
また、制御ユニットが、例えば特にそれぞれ1つの押しボタンを備えるボールペンによって知られているようなスイッチングクラウンを有する解決策も考えられる。換言すれば、操作要素は、この場合、スイッチングクラウンを備える制御ユニットを使用して静止位置から操作位置に、もしくは逆に操作位置から静止位置に移行すること、及び、加えて必要に応じて静止位置でロックすることができる。
【0038】
本発明の更なる特徴は、添付の特許請求の範囲、後続の好ましい実施例の説明並びに添付の図面からわかる。後続の実施例が、主に本発明の選択された態様を説明するために使用されるが、それ以外は出願の対象をいかようにも限定しないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】筆記具のピストンを移動させるための操作要素が静止位置にある本発明による筆記具の縦断面図
【
図2】操作要素がオーバーストローク位置にある、ユーザにより圧縮力を操作要素に加えた直後の
図1の筆記具
【
図4】
図1による状態の、但し90°だけ回転させた筆記具の縦断面図
【
図6】
図3による状態の、ただし90°だけ回転させた筆記具の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面には、模範的に本発明による筆記具10として、部分的に概略的にのみ図示した、不動に一体化されタンク11とタンク内で縦軸方向に摺動可能に配置されたピストン12とを有するピストン式万年筆が示されている。
【0041】
本発明が、このような筆記具に限定されていないことは言うまでもない。むしろ、本発明は、例えば筆記のために使用されるインク又は他の液体のような筆記媒体を含む又は筆記媒体のためのピストンを備えたタンクを有する全ての形式の筆記具を含む。
【0042】
この場合、タンク11は、更に、当然、いわゆるピストン式万年筆の場合は普通であるように筆記具10内に不動に取り付ける必要もない。むしろ、タンクは、例えばいわゆるコンバーター式万年筆がそうであるように、必要に応じて筆記具10の他の構成要素と共に取外し可能であってもよい。
【0043】
図面に図示した筆記具10は、その筆記側もしくはその前端に、ここでは例えばペンの先端によって構成された筆記先端13を有する。
【0044】
この場合、筆記先端13は、それ以外は概略的にのみ図示した筆記具10の筆記ユニット14の前端を構成し、この筆記ユニットは、更に、筆記具10の筆記部分15の一部であり、この筆記部分は、筆記ユニット14以外に、筆記具10のマルチピースのハウジング16の前方の(外側の)ハウジング部分17を有し、このハウジング部分は、グリップとして使用され、筆記時に相応にユーザによって把持されるか、もしくは把持され得る。
【0045】
筆記ユニット14は、液体の筆記媒体、ここではインクを供給される。筆記媒体は、知られたように、筆記ユニット14のインク誘導路等を介してペンの筆記先端に案内される。本発明によれば、筆記ユニット14の正確な形成は重要でない。
【0046】
液体の筆記媒体は、筆記具10が筆記のために利用され得る前に、充填過程の範囲内で、筆記先端13が充填過程中に浸漬される外部容器から、負圧によりタンク11内に入れられる。
【0047】
この目的のため、筆記具10は、その後端もしくはその操作側に、ハウジング16の中央のハウジング部分18の延長部として、操作要素20が軸方向に移動可能に配置もしくは支承された後方のハウジング部分19を備える。操作要素20は、一般に言えば、タンク11の充填時にタンク11内のピストン12を適切に前方から後方に向かってもしくは筆記側から操作側に移動し得るために使用され、それにより、タンク11内に相応の負圧を発生させることができ、そうして、この負圧は、知られたように、筆記媒体が筆記先端13もしくは筆記ユニット14を介してタンク11に流入することを生じさせる。
【0048】
この場合、操作要素20は、押しボタンとして形成され、この押しボタンは、ユーザにより、操作要素20がロック下で軸方向に保持されかつ部分的にハウジングもしくはこの場合後方のハウジング部分19の内部空間内に没入している
図1に示した第1の軸方向位置から筆記側の方向に押すことができる(
図2の操作要素20の位置参照)。
【0049】
次に、ユーザが、操作要素20を解放するか、もしくはもはや圧縮力を筆記側の方向に加えなくなり次第、後方のハウジング部分19内に支持されるバネ要素33の力は、筆記側もしくは筆記先端13に対する操作要素20の(軸方向の)間隔がその第1の軸方向位置におけるよりも大きい第2の軸方向位置に操作要素20が移動されることを保証する。
【0050】
この場合、第1の軸方向位置は、操作要素20の静止位置に相当し、この静止位置で、操作要素20は、ハウジング16もしくは後方のハウジング部分19内に没入しており、こうして、操作要素の未だ突出する部分は、操作要素20をユーザが把持することができないか、非常に困難でしかないほど短く、これにより、偶発的な誤操作が十分に排除されている。好ましくは、操作要素20は、その静止位置で、少なくとも操作要素の長さの3/4までが、後方のハウジング部分19の相応の内部空間内に没入している。この場合、同様に好ましくは、操作要素20の3mm未満が軸方向に後方のハウジング部分19から突出する。
【0051】
これに対して、第2の軸方向位置は、操作要素20の操作位置に相当し、この操作位置で、操作要素20は、ユーザが操作要素を容易に把持及び操作することができ、これにより、操作要素の移動によってピストン12をタンク11内で容易に相応に軸方向に移動し得るほどに、後方のハウジング部分19から突出する。
【0052】
好ましくは、操作要素20は、この操作位置で、少なくとも操作要素の長さの3/4までが、後方のハウジング部分19の相応の内部空間内に没入している。この場合、同様に好ましくは、操作要素20の5mm超が、軸方向に後方のハウジング部分19から突出する。
【0053】
他の有利な寸法もしくは長さ比も考えられることは言うまでもない(明細書導入部参照)。
【0054】
この実施例では、操作要素20は、回転可能に形成され、静止位置と操作位置の両方で回転方向に不動にスピンドル装置22の第1のスピンドル体21と、しかも回転方向及び軸方向に不動に第1のスピンドル体21と結合されたスリーブ状のキャリア部品26を介して、結合されている。
【0055】
しかしながら、操作要素20が静止位置でも第1のスピンドル体21と回転方向に不動に結合されていること、が必須でないことは言うまでもない。回転方向に不動の結合が操作位置でのみ与えられている解決策も考えられる。例えば、操作要素20と第1のスピンドル体21の間に適当なカップリングを使用する場合には、回転方向に不動の結合が操作位置でのみ形成され、これに対して静止位置では形成されない。
【0056】
操作要素20は、更に、一方では、回転方向に不動にキャリア部品26と結合されているが、他方では、このキャリア部品に縦方向に可動に支承されているので、キャリア部品26に対して相対的な操作要素20の軸方向の移動は、キャリア部品26の軸方向の移動を生じさせず、相応に第1のスピンドル体21の軸方向の移動も生じさせない。
【0057】
ここでは、操作要素20の2つのガイド部分31のそれぞれ一方は、それぞれのガイド部分31の横寸法に適合する、即ち僅かにのみ広いもしくは僅かにのみ大きい横寸法を備える2つの対応付けられた軸方向のガイドチャネル32(ここではガイド溝)のそれぞれ一方内で縦方向に可動に、しかしながら回転方向に不動に配置もしくは支承されている。
【0058】
第1のスピンドル体21は、ここでは、スピンドル装置22の第2のスピンドル体24、即ち、ここではネジ付きスピンドル、の雄ネジ25と協働する雌ネジ23を有するスリーブとして形成されている。この場合、第1のスピンドル体の回転は、ピストン12の軸方向移動を、しかも回転方向に応じて、後方に、即ち操作側に向かうか、又は反対方向に前方に、即ち筆記側に向かうかのどちらかに、生じさせる。
【0059】
筆記具10は、更に制御ユニット27を有し、この制御ユニットは、特に、操作要素20が、静止位置で軸方向に位置を保持されるか、もしくはこの位置で相応に軸方向にロックされていること、を保証する。
【0060】
この目的のため、制御ユニット27は、この場合特に第1のロック手段を、即ちボール28を有し、このボールは、第2のロック手段と、即ちボール28が案内されているか、もしくはボール28が係合する制御ユニット27のスイッチングカーブ29のロック区間29aと協働する。
【0061】
この場合、ボール28は、軸方向に不動に横軸方向の平面内に、即ちハウジングに固定された環状のガイドチャネル、即ち、ボールが循環するように移動し得る、後方のハウジング部分19内のリング溝30内に支承されている。
【0062】
この実施例では、制御ユニット27のスイッチングカーブ29は、操作要素20の構成要素であり、この操作要素の外側に、スイッチングカーブは配置されている。しかしながら、このようなスイッチングカーブ29を筆記具10内に配置する様々な他のバリエーションがあることは言うまでもない。特に、スイッチングカーブは、ハウジングに不動に配置、例えば後方のハウジング部分19の内側又は別個のスリーブの一方の側等に配置することもできる。
【0063】
スイッチングカーブ29は、実質的にハート形に形成されているか、もしくはハート形の領域を備え、ロック区間29aは、スイッチングカーブの部分区間を構成する。このロック区間29a内に、ボール28は位置することになるが、操作要素20は静止位置にある(
図4及び5参照)。
【0064】
この場合、ロック区間29aは、操作要素20の加圧操作とこれにより生じる
図2に示した操作要素位置への操作要素の移行とが、ロックを解消するか、もしくは操作要素20のロック解除を可能にするように、ボール28と協働する。この場合、ボール28は、ロック区間29aから出て、スイッチングカーブ区間29bに沿って案内され、これは、ロック解除を伴い、既に説明した繰り出された位置もしくは操作位置への操作要素20の軸方向移動を可能にする(ピストン12を軸方向に変位させるための回転運動が容易に実施され得る
図3参照)。
【0065】
次に、操作要素20が、
図3の操作位置でピストンの充填後に新たにユーザによって加圧操作される、即ち筆記側の方向に圧力を作用されると、ボール28は、スイッチングカーブ区間29cに沿って案内され、これは、次に、結果として、ボール28を再びロック区間29aに移行させ、相応に操作要素を新たにロックする(
図1参照)。
【0066】
図4及び5から、更に、ハート形の領域に連結もしくは隣接しかつこの領域と接続された別のスイッチングカーブ区間29dが認められる。スイッチングカーブ区間29dには、示してない接続チャネルの終端が存在するが、この接続チャネルは、操作要素20の外側を、操作要素20の内部空間を画成する操作要素の内側に接続し、この接続チャネルの寸法は、筆記具10の組立て時に接続チャネルによってボール28が内側から外側に移動され得るように形成されている。
【0067】
スイッチングカーブ区間29dは、ボール28が(組み立てられた)筆記具10の操作要素20の操作によりスイッチングカーブ区間に向かって移動され得るのではなく、ボール28が、スイッチングカーブ区間により一度だけ筆記具10の組立ての範囲内で移動されるように位置決めされている。これにより、ボール28が、筆記具10の操作中に偶発的に接続チャネルによって操作要素20の内側に偶発的に到達し、これにより、制御ユニット27が動作不能になること、が防止される。
【符号の説明】
【0068】
10 筆記具
11 タンク
12 ピストン
13 筆記先端
14 筆記ユニット
15 筆記部分
16 ハウジング
17 前方のハウジング部分
18 中央のハウジング部分
19 後方のハウジング部分
20 操作要素
21 第1のスピンドル体
22 スピンドル装置
23 第1のスピンドル体の雌ネジ
24 第2のスピンドル体
25 雄ネジ
26 キャリア部品
27 制御ユニット
28 ボール
29 スイッチングカーブ
29a スイッチングカーブ区間
29b スイッチングカーブ区間
29c スイッチングカーブ区間
29d スイッチングカーブ区間
30 環状のガイドチャネル
31 ガイド部分
32 軸方向のガイドチャネル
33 バネ
【外国語明細書】