(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007961
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】燃料デリバリパイプ
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20240112BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20240112BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F02M21/02 T
F02M55/02 360B
F02M21/02 L
B01J20/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109422
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】畠山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】箱田 浩二
【テーマコード(参考)】
3G066
4G066
【Fターム(参考)】
3G066AB05
3G066AD05
3G066BA32
4G066AC26B
4G066BA09
4G066DA09
(57)【要約】
【課題】燃料デリバリパイプ1内に徐々に堆積したオイルが、車両の急加速などの外的要因により燃料噴射弁5内に侵入して、それが作動不良の原因となることを避ける。
【解決手段】
燃料貯留部から送られてくる気体燃料が流れるメイン管路を構成するパイプ本体3と、前記パイプ本体3に交差し、且つ前記パイプ本体3内の気体燃料を、内燃機関の各気筒に対応する燃料噴射弁2にそれぞれ分配する分配管路を構成する複数の分配パイプ部4とを樹脂で一体成形した燃料デリバリパイプ1において、パイプ本体3の内壁面は、気体燃料内に残留するオイルを吸着可能な多孔質樹脂層5で覆われている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料貯留部から送られてくる気体燃料が流れるメイン管路を構成するパイプ本体(3)と、前記パイプ本体(3)に交差し、且つ前記パイプ本体(3)内の気体燃料を、内燃機関の各気筒に対応する燃料噴射弁(2)にそれぞれ分配する分配管路を構成する複数の分配パイプ部(4)とを、合成樹脂で一体に成形した燃料デリバリパイプにおいて、
前記パイプ本体(3)の内壁面は、気体燃料内に残留するオイルを吸着可能な多孔質樹脂層(5)で覆われていることを特徴とする燃料デリバリパイプ。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料デリバリパイプであって、前記多孔質樹脂層(5)は、パイプ本体(3)の内側にモールド成形された円筒成形体(5a)であることを特徴とする燃料デリバリパイプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料デリバリパイプであって、前記多孔質樹脂層(5)を構成する多孔質樹脂は、平均粒径が13~20μmの真球状のポリアミド樹脂であることを特徴とする燃料デリバリパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)等の気体燃料を、複数の気筒を有する内燃機関の各気筒の燃料噴射弁に分配供給する燃料デリバリパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
気体燃料を用いた内燃機関は、例えば特許文献1に示されるように従来公知であり、特許文献1では、気体燃料中に溶け込んで液化しだオイルを異物として除去するための気体用液体トラップ装置が、気体燃料タンクと燃料噴射弁との間に設けられている。また、燃料を複数の気筒の燃料噴射弁に分配供給する燃料デリバリパイプを、樹脂材料の射出成形で形成することも特許文献2で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-130560号公報
【特許文献2】特開2014-29150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に示されたような気体燃料を用いた内燃機関では、気体燃料を圧縮する際の圧縮機の潤滑オイルが燃料配管に混入する等して、気体燃料中にオイルが混入しており、気体燃料を貯留する燃料タンクと燃料噴射弁との間にオイルフィルタを有するものであっても、オイルフィルタの機能が必ずしも充分ではない場合には、燃料デリバリパイプ内に徐々に堆積したオイルが車両の急加速などの外的要因により燃料噴射弁内に侵入し、それが作動不良の原因となることが想定される。そしてそのような場合には、燃料デリバリパイプを分解して洗浄し、燃料デリバリパイプ内のオイルを除去しなければならないので、燃料デリバリパイプにおけるオイル除去のためのメンテナンス頻度の増加が避けられなくなってしまう。
【0005】
また、上記特許文献2に開示されたものは、燃料デリバリパイプのパイプ本体と分配パイプ部とを合成樹脂で一体に成形することは開示していても、燃料デリバリパイプ内に堆積したオイルを除去することについては、何ら言及していない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、気体燃料を用いた内燃機関において、燃料デリバリパイプ内に堆積したオイルが、車両の急加速などの外的要因により燃料噴射弁内に侵入する頻度を低減し、燃料デリバリパイプにおけるオイル除去のためのメンテナンス頻度を低減し得る、燃料デリバリパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、燃料貯留部から送られてくる気体燃料が流れるメイン管路を構成するパイプ本体と、前記パイプ本体に交差し、且つ前記パイプ本体内の気体燃料を、内燃機関の各気筒に対応する燃料噴射弁にそれぞれ分配する分配管路を構成する複数の分配パイプ部とを、合成樹脂で一体に成形した燃料デリバリパイプにおいて、前記パイプ本体の内壁面は、気体燃料内に残留するオイルを吸着可能な多孔質樹脂層で覆われていることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記多孔質樹脂層は、パイプ本体の内側にモールド成形された円筒成形体であることを第2の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記多孔質樹脂層を構成する多孔質樹脂は、平均粒径が13~20μmの真球状のポリアミド樹脂であることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、燃料デリバリパイプのメイン管路を構成するパイプ本体の内壁面が、気体燃料内に残留するオイルを吸着可能な多孔質樹脂層で覆われているので、パイプ本体の内部にオイルが残留しても、そのオイルをパイプ本体の内部に配置された空隙を有する多孔質樹脂に吸収することができるから、オイル除去のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0011】
また、請求項2の構成によれば、前記多孔質樹脂層は、パイプ本体の内側にモールド成形された円筒成形体であるので、パイプ本体および分配パイプ部を合成樹脂で一体成形するときに、パイプ本体を成形するための中子に多孔質樹脂の円筒成形体を巻き付けるだけで、多孔質樹脂層をパイプ本体の内側に簡単にモールド成形することができる。
【0012】
また更に、請求項3の構成によれば、前記多孔質樹脂層を構成する多孔質樹脂は、平均粒径が13~20μmの真球状のポリアミド樹脂であるので、高い融点と、高い給油量と、すぐれた機械的強度を備えた燃料デリバリパイプを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る燃料デリバリパイプを斜め上方から見た斜視図と、その燃料デリバリパイプにおける燃料噴射弁との接続部の断面図である。
【
図2】
図1の燃料デリバリパイプを、外管であるパイプ本体の一部を破断して示す図である。
【
図3】パイプ本体および分配パイプ部を合成樹脂で一体成形するときの成形型に多孔質樹脂の円筒成形体をセットした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態の燃料デリバリパイプ1は、図示せぬ内燃機関の各気筒に対応して配置された複数(本実施の形態では3つ)の燃料噴射弁2に、気体燃料を分配するものであり、内部を気体燃料が通過するメイン管路を構成するパイプ本体3と、前記パイプ本体3に交差し、且つ前記パイプ本体3内の気体燃料を、前記燃料噴射弁2にそれぞれ分配する分配管路を構成する複数の分配パイプ部4とが合成樹脂で一体に成形されて成る。
【0015】
前記パイプ本体3は、その長手方向の一端部3aが燃料タンクに連続する図示せぬ燃料配管に接続されており、そのパイプ本体3から分岐して前記燃料噴射弁2に向けて伸びる前記分配パイプ部4の先部の内周に、前記燃料噴射弁2の燃料入口筒2aを受け入れる受入部4aが形成されている。
【0016】
図2を併せて参照して、前記パイプ本体3は、その内壁面が気体燃料内に残留するオイルを吸着可能な多孔質樹脂層5で覆われて二層構造となっている。本発明は、パイプ本体3の内壁面をこのような多孔質樹脂層5で覆っているので、パイプ本体3内にオイルが残留する場合でも、残留するオイルを空隙を有する樹脂材に吸収させることができて、該オイルの燃料噴射弁内への侵入を防止することができる。
【0017】
この多孔質樹脂層5を構成する多孔質樹脂は、平均粒径が13~20μmのポリアミド樹脂(ナイロン6)の真球状の微粒子で構成されることが望ましく、そのような樹脂を用いることで、高い融点と、高い給油量と、すぐれた機械的強度を備えた多孔質樹脂層5を構成することができる。なお本発明では、そのような微粒子を、触媒を使って強制的に円筒状に硬化させることで、パイプ本体3の内壁面に配置される多孔質樹脂の円筒成形体5aを形成する。
【0018】
次に、パイプ本体3の内壁面を、このような多孔質樹脂の円筒成形体5aで覆う方法を、
図3により説明する。
【0019】
図3は、本発明における燃料デリバリパイプ1の成形用金型6を示すもので、上型6aと、下型6bと、キャビティ7内に配置されるパイプ本体用中子6cおよび分配パイプ部用中子6dとを有しており、樹脂注入口8より樹脂材料を注入することで、キャビティ7内のパイプ本体用中子6cの周囲の部分7aにパイプ本体3を成形し、分配パイプ部用中子6dの周囲の部分7bに分配パイプ部4を成形するものである。
【0020】
燃料デリバリパイプ1の成形に当たっては、先ず、前述した多孔質樹脂の円筒成形体5aを、パイプ本体用中子6cの外周に、分配パイプ部4の分岐部に対応する部分6c1を除いて巻き付けておく。次に、上下型6a、6bを開いて、前記円筒成形体5aを巻き付けた前記パイプ本体用中子6cを、分配パイプ部4の分岐部に対応する部分6c1が分配パイプ部用中子6dの先端に当接するようにしながら前記キャビティ7内にセットし、その後、上下型6a、6bを閉じて前記樹脂注入口8より樹脂材料を注入することで、パイプ本体3の内壁面に、気体燃料内に残留するオイルを吸着可能な多孔質樹脂層5がモールド成形された燃料デリバリパイプ1を簡単に形成することができる。
【0021】
なお、前述したように、多孔質樹脂層5を構成する多孔質樹脂は、平均粒径が13~20μmのポリアミド樹脂(ナイロン6)の真球状の微粒子で構成することが望ましいが、この多孔質樹脂は、高い融点と、高い給油量と、すぐれた機械的強度を備えた微粒子で構成されるものであれば、それ以外の樹脂を用いたものであってもよい。
【0022】
次にこの実施の形態の作用効果について説明する。
【0023】
本発明の実施の形態では、燃料デリバリパイプ1のメイン管路を構成するパイプ本体3の内壁面が、気体燃料内に残留するオイルを吸着可能な多孔質樹脂層5で覆われているので、パイプ本体3の内部にオイルが残留しても、そのオイルをパイプ本体3の内部に配置された空隙を有する多孔質樹脂に吸収することができる。そのため、燃料デリバリパイプ内に徐々に堆積したオイルが車両の急加速などの外的要因により燃料噴射弁内に侵入し、それが作動不良の原因となることが極力避けられるから、オイル除去のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0024】
また、本発明の実施の形態では、多孔質樹脂層5がパイプ本体3の内側にモールド成形された円筒成形体5aであるので、パイプ本体3および分配パイプ部4を合成樹脂で一体成形するときに、パイプ本体3を成形するための中子に多孔質樹脂の円筒成形体5aを巻き付けるだけで、多孔質樹脂層5をパイプ本体3の内側に簡単にモールド成形することができる。
【0025】
また更に、本発明の実施の形態では、多孔質樹脂層5を構成する多孔質樹脂は、平均粒径が13~20μmの真球状のポリアミド樹脂であるので、高い融点と、高い給油量と、すぐれた機械的強度を備えた燃料デリバリパイプを容易に形成することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・・燃料デリバリパイプ
2・・・・燃料噴射弁
3・・・・パイプ本体
4・・・・分配パイプ部
5・・・・多孔質樹脂層
5a・・・円筒成形体