(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079612
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】糸加熱装置
(51)【国際特許分類】
D02J 13/00 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
D02J13/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196236
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022191391
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】今中 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】堀本 尭幸
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA37
4L036PA05
4L036PA17
4L036PA18
4L036PA19
(57)【要約】
【課題】消費電力を削減する。
【解決手段】糸走行溝が形成されており、糸走行溝を走行する糸を加熱する加熱部と、延在方向に沿って延びており、糸走行溝の下端である開放端と対向する位置において、機台長手方向に関して並んで配置された3つの断熱ブロックと、断熱ブロックの延在方向の両側にそれぞれ配置された閉鎖部材79、サイドプレート63a、63b及び中央プレート64と、を備えている。サイドプレート63a、63bと中央プレート64との間のすき間により、糸走行溝に糸を挿入する際に糸が通るスリット67が形成されている。スリット67は、隣り合う断熱ブロックの間に形成された通路と延在方向に関して対向する部分に形成されている。閉鎖部材79は、スリット67を閉鎖する閉鎖位置と、スリット67を閉鎖しない退避位置と、の間で移動可能である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸が走行する糸走行溝が形成された糸加熱装置であって、
前記糸走行溝が延びる方向である第1方向に沿って延びており、前記糸走行溝を走行する糸を加熱する加熱部と、
前記第1方向に沿って延びており、前記糸走行溝の前記第1方向と直交する第2方向における一方側の開放端と対向する位置において、前記第1方向及び前記第2方向の両方に直交する第3方向に関して並んで配置された少なくとも2つの断熱ブロックと、
前記少なくとも2つの断熱ブロックの前記第1方向の少なくとも一方側に配置された閉鎖部材と、
前記少なくとも2つの断熱ブロックの前記第1方向の少なくとも前記一方側に配置された対向壁と、を備えており、
隣り合う前記断熱ブロックの間のすき間は、前記糸走行溝に糸を挿入する際の通路を構成し、
前記対向壁には、前記第1方向に関して前記通路と対向する部分に、前記通路を介して前記糸走行溝に糸を挿入する際に糸が通るスリットが形成されており、
前記閉鎖部材は、前記スリットの少なくとも一部を閉鎖する閉鎖位置と、前記スリットを閉鎖しない退避位置と、の間で移動可能であることを特徴とする糸加熱装置。
【請求項2】
前記閉鎖部材及び前記対向壁は、前記少なくとも2つの断熱ブロックの前記第1方向の両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の糸加熱装置。
【請求項3】
前記閉鎖部材は、前記閉鎖位置にあるとき、前記第1方向から視て前記通路の全域と対向することを特徴とする請求項1又は2に記載の糸加熱装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの断熱ブロックに対して前記糸走行溝と反対側に配置されており、前記少なくとも2つの断熱ブロックと対向する部分に開口が形成された開口壁と、
前記開口を閉鎖する閉位置と、前記開口を開放する開位置と、の間で移動可能に構成された扉とを、を有しており、
前記閉鎖部材は、前記扉の移動に連動して移動可能に構成されており、前記扉が前記開位置に位置しているとき前記閉鎖部材は前記退避位置に位置し、前記扉が前記閉位置に位置しているとき前記閉鎖部材は前記閉鎖位置に位置することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項5】
前記閉鎖部材は、前記扉によって上方に押圧されることで前記退避位置から前記閉鎖位置に移動することを特徴とする請求項4に記載の糸加熱装置。
【請求項6】
前記対向壁における前記第1方向に関して前記糸走行溝と対向する部分に、走行する糸が通過する糸走行孔が形成されており、
前記閉鎖部材は、前記閉鎖位置にあるときに、前記糸走行孔に糸が通過可能な領域を残しつつ、前記糸走行孔の一部を塞ぐことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項7】
前記閉鎖部材の移動方向に関する位置が固定された固定部材を備えており、
前記閉鎖部材及び前記固定部材のいずれかには、前記閉鎖部材の移動方向に沿って延びたガイド溝が形成されており、
前記閉鎖部材及び前記固定部材のうち、前記ガイド溝が形成されている方とは異なる方には、前記ガイド溝内に配置可能な凸部が形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項8】
前記断熱ブロックは、3つ設けられており、
前記第3方向に沿って並んだ前記3つの断熱ブロックのうち中央の断熱ブロックの前記第1方向の両側に、端部部材がそれぞれ配置されており、
前記中央の断熱ブロック及び前記端部部材のいずれか一方が、前記固定部材であり、前記中央の断熱ブロックと前記端部部材とが相対移動することで、前記閉鎖部材が前記閉鎖位置と前記退避位置との間で移動することを特徴とする請求項7に記載の糸加熱装置。
【請求項9】
前記端部部材は、前記固定部材として機能し、且つ、前記第3方向に関する位置を調整可能に構成されており、
前記閉鎖部材は、前記中央の断熱ブロックに対して取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の糸加熱装置。
【請求項10】
前記閉鎖部材は、前記中央の断熱ブロックが前記糸走行溝から離れる方向に移動することで前記閉鎖位置から前記退避位置に移動し、
前記中央の断熱ブロックは、前記第1方向から視て、前記糸走行溝から離れる方向に向かって広がる台形形状を有していることを特徴とする請求項9に記載の糸加熱装置。
【請求項11】
前記閉鎖部材が前記閉鎖位置に位置しているとき、前記中央の断熱ブロックは、隣り合う前記断熱ブロックと接触することを特徴とする請求項10に記載の糸加熱装置。
【請求項12】
前記スリットは、前記閉鎖部材の移動方向に対して傾斜した方向に沿って延びており、
前記閉鎖部材は、前記スリットの伸延方向と平行な方向に延びた縁部を有していることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項13】
前記加熱部及び前記少なくとも2つの断熱ブロックを収容する収容体を備えており、
前記対向壁は、前記収容体に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項14】
前記糸走行溝は、少なくとも一部が前記加熱部で画定されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項15】
前記加熱部は、温めた空気によって前記糸を加熱する非接触方式であることを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を加熱する糸加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維からなる糸に合糸加工や仮撚加工等の種々の加工を施す加工機において走行する糸を加熱する糸加熱装置が、従来から知られている。特許文献1には、糸条走行溝(糸走行溝)が形成されており、且つ、発熱体によって加熱される加熱体(加熱部)と、加熱体における糸通しのための作業面側に配置された作業面側保温材(断熱ブロック)と、加熱体と作業面側保温材との外側に設けられた保温カバーと、を備えた加熱装置(糸加熱装置)が開示されている。作業面側保温材には、加熱体に形成された糸条走行溝に連なる溝(通路)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような糸加熱装置では、保温カバーにおける糸条走行溝が延びる方向に関して作業面側保温材の両側に位置する壁(対向壁)に、作業面側保温材(断熱ブロック)に形成された溝(通路)を介して糸条走行溝に糸を挿入する際に糸が通るスリットが形成されている。したがって、糸を加熱する際に温められた断熱ブロックの通路の空気が、対向壁に形成されたスリットから流出する。これにより、糸を加熱するための消費電力が増大する。
【0005】
本発明の目的は、消費電力を削減できる糸加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる糸加熱装置は、糸が走行する糸走行溝が形成された糸加熱装置であって、前記糸走行溝が延びる方向である第1方向に沿って延びており、前記糸走行溝を走行する糸を加熱する加熱部と、前記第1方向に沿って延びており、前記糸走行溝の前記第1方向と直交する第2方向における一方側の開放端と対向する位置において、前記第1方向及び前記第2方向の両方に直交する第3方向に関して並んで配置された少なくとも2つの断熱ブロックと、前記少なくとも2つの断熱ブロックの前記第1方向の少なくとも一方側に配置された閉鎖部材と、前記少なくとも2つの断熱ブロックの前記第1方向の少なくとも前記一方側に配置された対向壁と、を備えている。隣り合う前記断熱ブロックの間のすき間は、前記糸走行溝に糸を挿入する際の通路を構成し、前記対向壁には、前記第1方向に関して前記通路と対向する部分に、前記通路を介して前記糸走行溝に糸を挿入する際に糸が通るスリットが形成されている。前記閉鎖部材は、前記スリットの少なくとも一部を閉鎖する閉鎖位置と、前記スリットを閉鎖しない退避位置と、の間で移動可能である。
【0007】
本発明では、閉鎖部材を閉鎖位置に配置することで、糸を加熱する際に温められた通路(隣り合う断熱ブロックの間のすき間)の空気が対向壁に形成されたスリットから流出するのを抑制することができる。したがって、消費電力を削減することができる。また、閉鎖部材を退避位置とすることで、通路(隣り合う断熱ブロックの間のすき間)を介して糸走行溝に糸を挿入する際に、閉鎖部材により糸の進路が阻まれることがない。
【0008】
第2の発明にかかる糸加熱装置では、第1の発明において、前記閉鎖部材及び前記対向壁は、前記少なくとも2つの断熱ブロックの前記第1方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0009】
本発明では、閉鎖部材により、糸を加熱する際に温められた空気が通路(隣り合う断熱ブロックの間のすき間)における第1方向の両端部からスリットを介して流出するのを抑制することができる。したがって、消費電力を確実に削減することができる。
【0010】
第3の発明にかかる糸加熱装置では、第1及び第2の発明において、前記閉鎖部材は、前記閉鎖位置にあるとき、前記第1方向から視て前記通路の全域と対向する。
【0011】
本発明では、閉鎖部材により、第1方向から視て通路(少なくとも2つの断熱ブロックの間のすき間)の全域を封鎖できる。したがって、スリットを介して通路から空気が流出するのを確実に抑制し、消費電力をいっそう削減することができる。
【0012】
第4の発明にかかる糸加熱装置は、第1~第3のいずれかの発明において、前記少なくとも2つの断熱ブロックに対して前記糸走行溝と反対側に配置されており、前記少なくとも2つの断熱ブロックと対向する部分に開口が形成された開口壁と、前記開口を閉鎖する閉位置と、前記開口を開放する開位置と、の間で移動可能に構成された扉とを、を有している。前記閉鎖部材は、前記扉の移動に連動して移動可能に構成されており、前記扉が前記開位置に位置しているとき前記閉鎖部材は前記退避位置に位置し、前記扉が前記閉位置に位置しているとき前記閉鎖部材は前記閉鎖位置に位置する。
【0013】
本発明では、扉を開位置とし、開口壁の開口及び隣り合う断熱ブロックの間の通路を介して糸走行溝内に糸を挿入することができる。このとき、閉鎖部材は、スリットを閉鎖しない退避位置に位置しているので、糸はスリットを通ることができる。よって、扉を開位置として糸加熱装置に糸をセットする際に、閉鎖部材により糸の進路が阻まれることがない。また、扉を閉位置とすることで、閉鎖部材がスリットの少なくとも一部を閉鎖する閉鎖位置となる。したがって、扉を閉位置として糸を加熱する際は、隣り合う断熱ブロックの間の通路の温められた空気がスリットを介して流出するのを閉鎖部材により抑制し、消費電力を削減することができる。
【0014】
第5の発明にかかる糸加熱装置では、第4の発明において、前記閉鎖部材は、前記扉によって上方に押圧されることで前記退避位置から前記閉鎖位置に移動する。
【0015】
本発明では、閉鎖部材は、扉によって上方に押圧されなくなることで、自重により閉鎖位置から退避位置に移動する。したがって、閉鎖部材を閉鎖位置から退避位置に移動させるための機構が不要となる。
【0016】
第6の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第5のいずれかの発明において、前記対向壁における前記第1方向に関して前記糸走行溝と対向する部分に、走行する糸が通過する糸走行孔が形成されており、前記閉鎖部材は、前記閉鎖位置にあるときに、前記糸走行孔に糸が通過可能な領域を残しつつ、前記糸走行孔の一部を塞ぐ。
【0017】
本発明では、閉鎖部材により、糸走行溝における第1方向の開放端から糸を加熱する際に温められた空気が流出するのを抑制することができる。したがって、消費電力をさらに削減することができる。
【0018】
第7の発明にかかる糸加熱装置は、第1~第6のいずれかの発明において、前記閉鎖部材の移動方向に関する位置が固定された固定部材を備えており、前記閉鎖部材及び前記固定部材のいずれかには、前記閉鎖部材の移動方向に沿って延びたガイド溝が形成されており、前記閉鎖部材及び前記固定部材のうち、前記ガイド溝が形成されている方とは異なる方には、前記ガイド溝内に配置可能な凸部が形成されている。
【0019】
本発明では、ガイド溝により閉鎖部材の移動をガイドすることができる。
【0020】
第8の発明にかかる糸加熱装置では、第7の発明において、前記断熱ブロックは、3つ設けられており、前記第3方向に沿って並んだ前記3つの断熱ブロックのうち中央の断熱ブロックの前記第1方向の両側に、端部部材がそれぞれ配置されており、前記中央の断熱ブロック及び前記端部部材のいずれか一方が、前記固定部材であり、前記中央の断熱ブロックと前記端部部材とが相対移動することで、前記閉鎖部材が前記閉鎖位置と前記退避位置との間で移動する。
【0021】
本発明では、中央の断熱ブロックと端部部材とを相対移動させることで、閉鎖部材を閉鎖位置と退避位置との間で移動させることができる。
【0022】
第9の発明にかかる糸加熱装置では、第8の発明において、前記端部部材は、前記固定部材として機能し、且つ、前記第3方向に関する位置を調整可能に構成されており、前記閉鎖部材は、前記中央の断熱ブロックに対して取り付けられている。
【0023】
例えば、中央の断熱ブロックを固定部材とし、端部部材を閉鎖部材の移動方向に移動させることで、閉鎖部材を閉鎖位置と退避位置との間で移動させる構成とすることが考えられる。すなわち、この場合、端部部材は、第3方向にも閉鎖部材の移動方向にも移動可能に構成されることとなる。端部部材が、第3方向以外にも移動可能である場合は、端部部材の第3方向に関する位置調整の精度が低下するおそれがある。本発明では、端部部材を閉鎖部材の移動方向に関する位置が固定された固定部材とすることで、端部部材による第3方向に関する位置調整を精度良く行うことができる。
【0024】
第10の発明にかかる糸加熱装置では、第9の発明において、前記閉鎖部材は、前記中央の断熱ブロックが前記糸走行溝から離れる方向に移動することで前記閉鎖位置から前記退避位置に移動し、前記中央の断熱ブロックは、前記第1方向から視て、前記糸走行溝から離れる方向に向かって広がる台形形状を有している。
【0025】
本発明では、閉鎖部材を退避位置として糸加熱装置に糸をセットする際に、中央の断熱ブロックに糸が引っ掛かりにくくすることができる。
【0026】
第11の発明にかかる糸加熱装置は、第10の発明において、前記閉鎖部材が前記閉鎖位置に位置しているとき、前記中央の断熱ブロックは、隣り合う前記断熱ブロックと接触する。
【0027】
本発明では、糸を加熱する際に、隣り合う断熱ブロックの間のすき間を極力小さくし、加熱部からの熱が放出される空間を少なくすることができる。したがって、消費電力をより削減することができる。
【0028】
第12の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第11のいずれかの発明において、前記スリットは、前記閉鎖部材の移動方向に対して傾斜した方向に沿って延びており、前記閉鎖部材は、前記スリットの伸延方向と平行な方向に延びた縁部を有している。
【0029】
本発明では、スリットが閉鎖部材の移動方向に沿って延びている場合に比べて、閉鎖部材の閉鎖位置と退避位置との間の移動距離を短くすることができる。
【0030】
第13の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第12のいずれかの発明において、前記加熱部及び前記少なくとも2つの断熱ブロックを収容する収容体を備えており、前記対向壁は、前記収容体に取り外し可能に取り付けられている。
【0031】
本発明では、閉鎖部材を対向壁に近接して配置することで、閉鎖部材と対向壁とが擦れて対向壁が損傷した場合であっても、対向壁を収容体から取り外して交換できる。したがって、閉鎖部材を対向壁に近接して配置し、スリットを確実に閉鎖できる。
【0032】
第14の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第13のいずれかの発明において、前記糸走行溝は、少なくとも一部が前記加熱部で画定されている。
【0033】
本発明では、糸を効率よく加熱することができる。
【0034】
第15の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第14のいずれかの発明において、前記加熱部は、温めた空気によって前記糸を加熱する非接触方式である。
【0035】
非接触方式の加熱部では、加熱温度が比較的高温であり、糸を加熱する際に温められた空気は比較的高温となる。本発明では、隣り合う断熱ブロックの間のすき間における第1方向の端部から糸を加熱する際に温められた空気が流出するのを抑制することで、消費電力を効果的に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる仮撚加工機の側面図である。
【
図2】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
【
図4】
図3に示す第1加熱装置のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】(a)は
図4に示す加熱部の拡大図であり、(b)は(a)のVb-Vb線に沿う断面図である。
【
図6】
図4に示す第1加熱装置の扉を開位置にした状態を示す図である。
【
図7】
図4に示す第1加熱装置のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図3に示す第1加熱装置を延在方向から視た図である。
【
図9】中央プレートと中央の断熱ブロック及び閉鎖部材との分解斜視図である。
【
図10】隣り合う断熱ブロックの間のすき間と閉鎖部材との間の位置関係を説明するための図であり、(a)は閉鎖部材が閉鎖位置に位置する場合、(b)は閉鎖部材が退避位置に位置する場合を示す。
【
図11】保温ボックスに形成されたスリットと閉鎖部材との位置関係を説明するための図であり、(a)は閉鎖部材が閉鎖位置に位置する場合、(b)は閉鎖部材が退避位置に位置する場合を示す。
【
図12】実施形態の一変形例にかかる加熱部を示す図であり、(a)は延在方向と直交する面での断面図であり、(b)は(a)のXIIb-XIIb線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の好適な一実施形態に係る仮撚加工機1について、
図1を参照しつつ説明する。なお、
図1の紙面垂直方向を機台長手方向とし、紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向とする。機台長手方向及び機台幅方向は、水平方向と略平行な方向である。
【0038】
(仮撚加工機1の全体構成)
仮撚加工機1は、例えばナイロン(ポリアミド系繊維)やポリエステル等の合成繊維からなる糸Yを仮撚加工可能に構成されている。仮撚加工機1は、糸Yを供給するための給糸部2と、給糸部2から供給された糸Yを仮撚加工する加工部3と、加工部3によって加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る巻取部4とを備える。給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成要素は、機台長手方向において複数配列されている(
図2参照)。機台長手方向は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道によって形成される、糸Yの走行面(
図1の紙面)と直交する方向である。
【0039】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド5を有する。給糸部2は、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、給糸パッケージPsから供給された糸Yを仮撚りする。加工部3は、糸走行方向の上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13(本発明の「糸加熱装置」に相当する)、冷却装置14、仮撚装置15、第2フィードローラ16、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成する。
【0040】
仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を置いて配置された主機台8及び巻取台9を有する。主機台8及び巻取台9は、機台長手方向に略同じ長さに延設されている。主機台8及び巻取台9は、機台幅方向において互いに対向するように配置されている。主機台8の上部と巻取台9の上部とは、支持フレーム10によって連結されている。加工部3を構成する各装置は、主に主機台8や支持フレーム10に取り付けられている。巻取部4を構成する各装置は、巻取台9に取り付けられている。主機台8と巻取台9と支持フレーム10とによって、作業者が各装置に対して糸掛け等の作業を行うための作業空間Aが形成されている。糸道は、糸Yが主に作業空間Aの周りを走行するように形成されている。
【0041】
仮撚加工機1は、互いに対向配置された1組の主機台8及び巻取台9を含むスパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンには、加工部3を構成する各装置を通るように糸道が形成されている加工ユニット(錘とも呼ばれる)が、機台長手方向に複数並んで配置されている。これによって、1つのスパンでは、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を行うことができる。仮撚加工機1は、スパンが、主機台8における機台幅方向の中心線Cを対称軸として、紙面左右対称に配置されている。主機台8は左右のスパンで共通のものとなっている。
【0042】
(加工部の構成)
加工部3の構成について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。第1フィードローラ11は、給糸部2に装着された給糸パッケージPsから糸Yを解舒して第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。撚止ガイド12は、仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないように構成されている。
【0043】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを所定の加工温度に加熱するための装置である。第1加熱装置13は、例えば、
図2に示すように、2本の糸Yを加熱可能に構成されている。第1加熱装置13のより詳細については後述する。
【0044】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14は、複数の糸Yを同時に冷却可能に構成されていても良い。
【0045】
仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向下流側に配置されている。仮撚装置15は、糸Yに撚りを付与するように構成されている。仮撚装置15は、例えば、いわゆるディスクフリクション方式の仮撚装置であるが、これには限られない。
【0046】
第2フィードローラ16は、仮撚装置15で処理された糸Yを交絡装置17へ送るように構成されている。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。これにより、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸仮撚される。
【0047】
交絡装置17は、糸Yに交絡を付与するように構成されている。交絡装置17は、例えば、空気流によって糸Yに交絡を付与する公知のインターレースノズルを有する。
【0048】
第3フィードローラ18は、交絡装置17よりも糸走行方向における下流側を走行している糸Yを第2加熱装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを第2加熱装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。なお、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。
【0049】
第2加熱装置19は、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第2加熱装置19は、鉛直方向に沿って延びており、1つのスパンに1つずつ設けられている。
【0050】
第4フィードローラ20は、第2加熱装置19によって加熱された糸Yを巻取装置21へ送るように構成されている。第4フィードローラ20は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを巻取装置21へ送ることが可能に構成されている。第4フィードローラ20は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。第4フィードローラ20による糸Yの搬送速度は、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩される。
【0051】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yが、仮撚装置15によって撚られる。仮撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。仮撚装置15よりも糸走行方向下流側では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって糸Yが波状に仮撚りされた状態が維持される(すなわち、糸Yの捲縮が維持される)。
【0052】
仮撚りが施された糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、交絡装置17によって交絡が付与された後、糸走行方向下流側へ案内される。さらに、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱処理される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Yは、巻取装置21によって巻き取られる。
【0053】
(巻取部の構成)
巻取部4の構成について、
図2を参照しつつ説明する。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、1つの巻取ボビンBwに糸Yを巻取可能に構成されている。巻取装置21は、支点ガイド41と、トラバース装置42と、クレードル43とを有する。支点ガイド41は、糸Yが綾振りされる際の支点となるガイドである。トラバース装置42は、トラバースガイド45によって糸Yを綾振りすることが可能に構成されている。クレードル43は、巻取ボビンBwを回転自在に支持するように構成されている。クレードル43の近傍には、接触ローラ46が配置されている。接触ローラ46は、巻取パッケージPwの表面に接触して接圧を付与する。以上のように構成された巻取部4では、上述した第4フィードローラ20から送られた糸Yが各巻取装置21によって巻取ボビンBwに巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。
【0054】
(第1加熱装置)
次に、第1加熱装置13のより具体的な構成について、
図3~
図9をさらに参照しつつ説明する。
図3に示すように、第1加熱装置13は、機台長手方向と直交する所定の延在方向(本発明の「第1方向」に相当する)に延びている。本実施形態においては、延在方向は機台幅方向と平行である。延在方向は、機台幅方向に対して傾斜していても良い。
【0055】
第1加熱装置13には、
図5(b)に示すように、延在方向に沿って延びる糸走行溝56が形成されている。第1加熱装置13は、糸走行溝56を走行する糸Yを加熱するように構成されている。本実施形態では、第1加熱装置13は、2本の糸Y(糸Ya、Yb:
図4及び
図6参照)を加熱可能に構成されている。
【0056】
第1加熱装置13は、
図4、6、7に示すように、加熱部50、断熱ブロック71、72、73、閉鎖部材79及び保温ボックス60を主に備えている。加熱部50には、延在方向に沿って延びた糸走行溝56(56a、56b)が形成されている。2つの糸走行溝56a、56bの配列方向は、機台長手方向である。加熱部50は、糸走行溝56(56a、56b)を走行する糸Y(糸Ya、Yb)を加熱する。断熱ブロック71、72、73は、加熱部50の下方に配置されている。閉鎖部材79は、断熱ブロック72に取り付けられている(
図7、9参照)。保温ボックス60は、加熱部50及び断熱ブロック71、72、73を収容する。保温ボックス60の内壁面と保温ボックス60内に収容された加熱部50及び断熱ブロック71、72、73との間のすき間を埋めるように、断熱材70が配置されている。断熱材70は、例えばロックウールやセラミックファイバー等からなる。
【0057】
加熱部50は、延在方向に沿って延びている。加熱部50は、熱源51、2つの加熱ブロック52(52a、52b)及び2つの接糸部54(54a、54b)を主に有している。熱源51は、例えば、シーズヒータである。熱源51は、延在方向に沿って延びている。加熱ブロック52及び接糸部54は、熱源51が生成する熱によって加熱されるように構成されている。加熱ブロック52及び接糸部54は、熱源51に沿って延在方向に延びている。
【0058】
加熱ブロック52a及び接糸部54aは、糸Yaを加熱するための部材である。加熱ブロック52b及び接糸部54bは、糸Ybを加熱するための部材である。糸Yaを加熱するための部材と糸Ybを加熱するための部材は、機台長手方向において、熱源51を挟んで互いに反対側の位置に配置されている。
【0059】
糸Yaを加熱するための部材について説明する。加熱ブロック52aは、例えば、黄銅などの比熱が大きい金属材料によって構成されている。加熱ブロック52aは、熱源51に接触するように配置されている。加熱ブロック52aは、熱源51の機台長手方向における一方側(
図4の紙面左側)に配置されている。加熱ブロック52aには、延在方向に延びた凹部53(53a)が形成されている。凹部53aは、下方側に開口している。凹部53a内には、接糸部54(54a)が収容されている。
【0060】
接糸部54aは、例えばSUS製の長尺の部材である。接糸部54aは、加熱ブロック52aと接触した状態で加熱ブロック52aに固定されている。接糸部54aは、加熱ブロック52aを介して熱源51から伝わる熱によって昇温される。接糸部54aは、糸Yを接触させるための接糸面55(55a)を有する。接糸面55aは、下方を向いている。接糸面55aは、
図5(b)に示すように、機台長手方向と直交する断面において、下側に突出するように湾曲している。接糸面55aは、
図5(a)に示すように、延在方向から視たときに、上側に突出するように湾曲している。
【0061】
糸走行溝56(56a)は、加熱ブロック52aの凹部53aを画定する壁面と、接糸部54aの接糸面55aと、によって画定されている。すなわち、本実施形態においては、糸走行溝56(56a)の全体が加熱部50に画定されている。糸走行溝56(56a)は、下側に開放されている。つまり、糸走行溝56(56a)の下方側(本発明の「第2方向における一方側」に相当する)の端部は、開放端となっている。
【0062】
また、糸Ybを加熱するための部材について説明する。加熱ブロック52bは、熱源51の機台長手方向における他方側(
図4の紙面右側)に配置されている。加熱ブロック52bは、熱源51と接触している。加熱ブロック52bは、凹部53aと同様の形状の凹部53bが形成されている。凹部53b内には、接糸部54aと同様の構造の接糸部54bが収容されている。接糸部54bは、接糸面55aと同様の形状の接糸面55bを有する。糸走行溝56bは、加熱ブロック52bの凹部53bを画定する壁面と、接糸部54bの接糸面55bと、によって画定されている。さらなる詳細については省略する。
【0063】
第1加熱装置13内に送り込まれた糸Y(Ya、Yb)は、糸走行溝56(56a、56b)において接糸面55(55a、55b)に接触しつつ走行する。これにより、糸Y(Ya、Yb)は、接糸面55(55a、55b)を介して加熱ブロック52(52a、52b)から熱を受け取り、加熱される。糸Yの種類、糸Yの銘柄(太さ)、糸Yの走行速度及び加熱温度を適切に設定することにより、糸Yの温度を最適な加工温度にすることができる。
【0064】
断熱ブロック71、72、73は、例えば石膏ボード等からなる。断熱ブロック71、72、73は、いずれも延在方向に沿って延びている。断熱ブロック71、72、73は、加熱部50と保温ボックス60の後述する下壁61aとの間において、機台長手方向(本発明の「第3方向」に相当する)に沿って並んでいる。
【0065】
断熱ブロック71、72、73は、この順で機台長手方向の一方側から他方側に向かって並んでいる。
図6に示すように、断熱ブロック71、72、73間に形成されたすき間は、糸走行溝56に糸Yを挿入して第1加熱装置13に糸Yをセットする際に糸Yを通すための通路として機能する。隣り合う断熱ブロック71、72の間のすき間は、糸走行溝56aに糸Yaを挿入する際の通路を構成する。隣り合う断熱ブロック72、73の間のすき間は、糸走行溝56bに糸Ybを挿入する際の通路を構成する。
【0066】
図4及び
図6に示すように、機台長手方向に並んだ3つの断熱ブロック71、72、73のうち中央の断熱ブロック72は、延在方向から視て、上方から下方に向かって(糸走行溝56から離れる方向に向かって)広がる略台形形状を有している。断熱ブロック72における機台長手方向の両側の面72a、72bは、機台長手方向と直交する仮想垂直面に対して傾斜している。断熱ブロック72における機台長手方向の一方側(
図4の紙面左側)の面72aは、上端が下端よりも機台長手方向の他方側に位置するように傾斜している。断熱ブロック72における機台長手方向の他方側(
図4の紙面右側)の面72bは、上端が下端よりも機台長手方向の一方側に位置するように傾斜している。
【0067】
断熱ブロック71における機台長手方向の他方側(
図4の紙面右側)の面71aは、断熱ブロック72における機台長手方向の一方側(
図4の紙面左側)の面72aと略平行である。断熱ブロック73における機台長手方向の一方側(
図4の紙面左側)の面73aは、断熱ブロック72における機台長手方向の他方側(
図4の紙面右側)の面72bと略平行である。
【0068】
閉鎖部材79は、
図7及び
図9に示すように、中央の断熱ブロック72の延在方向の両側にそれぞれ取り付けられている。閉鎖部材79は、板状の部材である。閉鎖部材79は、その厚み方向が延在方向と平行となる姿勢で断熱ブロック72に取り付けられている。
【0069】
保温ボックス60は、
図8に示すように、収容体61、扉62、サイドプレート63a、63b及び中央プレート64を主に有している。保温ボックス60には、保温ボックス60への糸の出入口66が形成されている。出入口66は、保温ボックス60において、延在方向に関して糸走行溝56の両端とそれぞれ対向する箇所に設けられている。走行する糸Yは、出入口66を通過する。すなわち、出入口66は、本発明の「糸走行孔」に相当する。また、保温ボックス60には、一端が出入口66に繋がっており、且つ、他端が開放されたスリット67が形成されている。
【0070】
収容体61は、延在方向を長手方向とする略直方体形状を有する中空の部材である。収容体61は、加熱部50及び断熱ブロック71、72、73を収容する。
図4に示すように、収容体61の下壁61aには、開口68が形成されている。下壁61aは、断熱ブロック71、72、73に対して糸走行溝56とは反対側に位置している。すなわち、下壁61aは、本発明の「開口壁」に相当する。開口68は、下壁61aにおいて断熱ブロック71、72、73と対向する部分に形成されている。開口68は、延在方向に関して収容体61の全長にわたって形成されている。
【0071】
また、
図7及び
図8に示すように、収容体61における延在方向の両端の側壁61bには、開口69がそれぞれ形成されている。開口69は、側壁61bにおける機台長手方向の中央に形成されている。開口69は、下側が開放されている。側壁61bは、断熱ブロック71、72、73の延在方向の両側にそれぞれ位置している。
【0072】
扉62は、延在方向に沿って延びる板状の部材である。扉62は、収容体61の下壁61aの下面に取り付けられている。扉62は、延在方向に沿って延びる軸62aを中心に搖動可能に構成されている。軸62aは、扉62における機台長手方向における他方側(
図4の紙面右側)の端部に取り付けられている。
図4に示すように、扉62が閉位置に位置しているとき、収容体61の開口68は扉62によって閉鎖される。閉位置に位置する扉62が軸62aを中心に下方(
図4及び
図6中反時計回り方向)に搖動して、
図6に示す開位置となったとき、収容体61の開口68は開放される。すなわち、扉62は、収容体61の開口68を閉鎖する閉位置(
図4参照)と、開口68を開放する開位置(
図6参照)と、の間で移動可能に構成されている。
【0073】
扉62には、
図8に示すように、一端が収容体61に固定されたバネ65の他端が固定されている。扉62は、バネ65により開位置から閉位置に向かう方向に付勢されている。閉位置に位置する扉62は、バネ65により上方に付勢されている。
【0074】
サイドプレート63a、63b及び中央プレート64からなる3枚のプレートは、収容体61における延在方向の両端の側壁61bの外面にそれぞれ取り外し可能に取り付けられている。サイドプレート63a、63b及び中央プレート64は、本発明の「対向壁」に相当する。中央プレート64は、断熱ブロック72の延在方向の両側にそれぞれ配置されている。すなわち、中央プレート64は、本発明の「端部部材」に相当する。
【0075】
サイドプレート63aは、収容体61の側壁61bにおける機台長手方向に関して開口69の一方側(
図8の紙面左側)の部分に取り付けされている。サイドプレート63bは、収容体61の側壁61bにおける機台長手方向に関して開口69の他方側(
図8の紙面右側)の部分に取り付けされている。サイドプレート63a、63bは、いずれもネジ等によって収容体61に対して取り外し可能に取り付けられている。サイドプレート63a、63bは、いずれも開口69を部分的に塞ぐように配置されている。サイドプレート63a、63bは、機台長手方向に関して離隔して配置されている。中央プレート64は、ボルト82により、収容体61の側壁61bにおける開口69の上側の部分に取り外し可能に取り付けられている。中央プレート64は、開口69を部分的に塞ぐように配置されている。中央プレート64は、機台長手方向に関してサイドプレート63a、63bの間に配置されている。中央プレート64は、機台長手方向に関してサイドプレート63a、63bと離隔して配置されている。
【0076】
保温ボックス60への糸Y(Ya、Yb)の出入口66(66a、66b)は、サイドプレート63aと中央プレート64との間のすき間、及び、サイドプレート63bと中央プレート64との間のすき間により構成されている。延在方向に関して糸走行溝56aの端部と対向する箇所に、サイドプレート63aと中央プレート64との間のすき間で構成された出入口66aが形成されている。延在方向に関して糸走行溝56bの端部と対向する箇所に、サイドプレート63bと中央プレート64との間のすき間で構成された出入口66bが形成されている。
【0077】
スリット67(67a、67b)は、サイドプレート63aと中央プレート64との間のすき間、及び、サイドプレート63bと中央プレート64との間のすき間により構成されている。2つのスリット67a、67bは、いずれも延在方向と直交する面内において延びている。スリット67a、67bは、上下方向に対して傾斜している。スリット67aは、上端が下端よりも機台長手方向の他方側(
図8の紙面右側)に位置するように傾斜している。スリット67bは、は、上端か下端よりも機台長手方向の一方側(
図8の紙面左側)に位置するように傾斜している。スリット67aは、上端が出入口66aに繋がっており、且つ、下端が開放されている。スリット67bは、上端が出入口66bに繋がっており、且つ、下端が開放されている。
【0078】
延在方向に関して、断熱ブロック71、72の間のすき間と対向する箇所に、サイドプレート63aと中央プレート64との間のすき間で構成されたスリット67aが形成されている。延在方向に関して、断熱ブロック72、73の間のすき間と対向する箇所に、サイドプレート63bと中央プレート64との間のすき間で構成されたスリット67bが形成されている。
【0079】
中央プレート64には、ボルト82を挿通するための2つの孔64aが形成されている。2つの孔64aは、機台長手方向に沿って並んでいる。各孔64aは、機台長手方向に関して長尺な楕円形状を有している。これにより、中央プレート64は、各孔64aに挿通されたボルト82を緩めることで、機台長手方向にスライド可能である。中央プレート64は、収容体61に対して上下方向に関する位置が固定された状態で、機台長手方向にスライドする。すなわち、中央プレート64は、本発明の「固定部材」に相当する。
【0080】
中央プレート64における開口69を塞いでいる部分には、上下方向に沿って延びる開口64bが形成されている。開口64b内には、閉鎖部材79の後述する凸部78が配置されている。開口64bは、閉鎖部材79の上下方向に関する移動をガイドする。すなわち、開口64bは、本発明の「ガイド溝」に相当する。
【0081】
続いて、閉鎖部材79の機能及び動きについて、
図10及び
図11をさらに参照しつつ説明する。
図10は、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間と閉鎖部材79との間の位置関係を説明するための図である。
図11は、保温ボックス60に形成されたスリット67と閉鎖部材79との位置関係を説明するための図である。
図10及び
図11において、閉鎖部材79は破線で示す。
【0082】
閉鎖部材79は、
図9~
図11に示すように、延在方向から視て、上方から下方に向かって広がる略台形形状を有している。閉鎖部材79は、上下方向に対して傾斜した縁部79a、79bを有している。縁部79aは、上端が下端よりも機台長手方向の他方側(
図10及び
図11の紙面右側)に位置するように傾斜している。縁部79aは、保温ボックス60に形成されたスリット67aの伸延方向と平行な方向に延びている。縁部79bは、上端か下端よりも機台長手方向の一方側(
図10及び
図11の紙面左側)に位置するように傾斜している。縁部79bは、保温ボックス60に形成されたスリット67bの伸延方向と平行な方向に延びている。
【0083】
閉鎖部材79は、上下に移動可能に構成されている。閉鎖部材79は、上下に移動することで、
図10(a)及び
図11(a)に示す閉鎖位置と、
図10(b)及び
図11(b)に示す退避位置と、の間で移動可能である。
【0084】
図10(a)に示すように、閉鎖部材79が閉鎖位置にあるとき、閉鎖部材79は、延在方向から視て、断熱ブロック71、72、73の間のすき間の全域と対向する位置に位置している。閉鎖部材79が閉鎖位置にしているとき、閉鎖部材79の縁部79aが、延在方向に関して断熱ブロック71、72の間のすき間と対向する。また、閉鎖部材79が閉鎖位置にしているとき、閉鎖部材79の縁部79bが、延在方向に関して断熱ブロック72、73の間のすき間と対向する。
【0085】
図10(b)に示すように、閉鎖部材79が退避位置にあるとき、閉鎖部材79は、延在方向に関して断熱ブロック71、72、73の間のすき間における機台長手方向の少なくとも一部と対向しない位置に位置している。閉鎖部材79が退避位置にあるとき、閉鎖部材79は、延在方向に関して、断熱ブロック72に対向する一方、断熱ブロック71、73には対向しない。本実施形態においては、閉鎖部材79が退避位置にあるとき、閉鎖部材79は、延在方向に関して断熱ブロック71、72、73の間のすき間における機台長手方向の一部と対向する。閉鎖部材79が退避位置にあるとき、閉鎖部材79は、延在方向に関して断熱ブロック71、72、73の間のすき間における機台長手方向の全域と対向しない位置に位置してもよい。
【0086】
図11(a)に示すように、閉鎖部材79は、閉鎖位置に位置するとき縁部79a、79bによりスリット67a、67bを閉鎖する。より詳細には、縁部79aがスリット67aを閉鎖し、縁部79bがスリット67bを閉鎖する。閉鎖部材79は、スリット67a、67bの下端部以外を閉鎖する。また、閉鎖部材79が閉鎖位置にあるとき、閉鎖部材79は、延在方向から視て、出入口66に糸Yが通過可能な領域を残しつつ出入口66の一部を塞ぐ。さらに、
図11(b)に示すように、閉鎖部材79は、退避位置に位置するときスリット67a、67bを閉鎖しない。
【0087】
図7及び
図9に示すように、閉鎖部材79における延在方向に関して断熱ブロック72側とは反対側の面には、凸部78が形成されている。凸部78は、上下方向に沿って延びている。
図8に示すように、凸部78は、中央プレート64の開口64b内に配置されている。このとき、閉鎖部材79と中央プレート64とは延在方向に関して接触する。すなわち、閉鎖部材79における延在方向に関して断熱ブロック72側とは反対側の面と、中央プレート64における延在方向に関して断熱ブロック72側の面とが、接触する。
【0088】
開口64b内に配置された凸部78は、その側面78aが開口64bの上下方向に沿って延びる縁部と接触する。中央プレート64を機台長手方向にスライドさせることで、凸部78が形成された閉鎖部材79と共に断熱ブロック72が機台長手方向に移動する。したがって、中央プレート64を機台長手方向にスライドさせることで、断熱ブロック72の機台長手方向に関する位置を調整することができる。凸部78は、開口64b内で上下にスライド可能である。
【0089】
図4に示すように、扉62が閉位置に位置しているとき、断熱ブロック72は、扉62によって上方に押圧されている。
図6に示すように、扉62が閉位置から開位置に移動することで、断熱ブロック72は上方に押圧されることがなくなる。これにより、断熱ブロック72は、閉鎖部材79と共に自重により下方に移動する。そして、扉62が開位置から閉位置に移動することで、断熱ブロック72は再び扉62により上方に押圧される。これにより、断熱ブロック72は、閉鎖部材79と共に上方に移動する。
【0090】
断熱ブロック72は、扉62の移動に連動して中央プレート64に対して上下に移動する。断熱ブロック72が上下に移動するとき、凸部78が中央プレート64に形成された開口64b内で上下にスライドする。開口64bにより、断熱ブロック72及び閉鎖部材79の上下方向の移動がガイドされる。
【0091】
扉62が閉位置に位置しているときは、
図10(a)に示すように、閉鎖部材79は閉鎖位置に位置する。このとき閉鎖部材79は、
図11(a)に示すように、縁部79a、79bよりスリット67a、67bを閉鎖する。扉62が開位置に位置しているときは、
図10(b)に示すように、閉鎖部材79は退避位置に位置する。このとき閉鎖部材79は、
図11(b)に示すように、スリット67a、67bを閉鎖しない。このように、閉鎖部材79は、扉62の移動に連動して閉鎖位置と退避位置との間で移動可能である。
【0092】
また、
図4に示すように、扉62が閉位置に位置しているとき(閉鎖部材79が閉鎖位置に位置しているとき)、断熱ブロック72は隣り合う断熱ブロック71、73と接触する。具体的には、断熱ブロック72の面72aは、断熱ブロック71の面71aと接触する。断熱ブロック72の面72bは、断熱ブロック73の面73aと接触する。断熱ブロック72が隣り合う断熱ブロック71、73と接触した場合であっても、断熱ブロック71の面71a及び断熱ブロック72の面72a並びに断熱ブロック72の面72b及び断熱ブロック73の面73aの平行度や平面性の誤差等により、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間にはわずかにすき間が存在する。ただし、このとき、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間は、最小限に抑えることができる。
【0093】
さらに、
図6に示すように、扉62が開位置に位置しているとき(閉鎖部材79が退避位置に位置しているとき)、断熱ブロック72は隣り合う断熱ブロック71、73と接触しない。このとき、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間に、糸Yを糸走行溝56に挿入する際に糸Yを通すための通路として十分機能する幅をもったすき間が形成される。
【0094】
(糸Yのセット手順)
次に、第1加熱装置13への糸Yのセット手順について説明する。まず、作業者は、扉62を閉位置から開位置に移動させる。これにより、
図6に示すように、収容体61の開口68が開放される。扉62を開位置とすることで、断熱ブロック72が閉鎖部材79と共に下方に移動する。このとき、閉鎖部材79は、閉鎖位置から退避位置に移動する。すなわち、
図11(b)に示すように、保温ボックス60に形成されたスリット67a、67bが、閉鎖部材79によって閉鎖されない状態となる。また、このとき、
図6に示すように、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間に、糸Yの通路として機能するすき間が形成される。
【0095】
続いて、作業者は、保温ボックス60の下方に配置された糸Yを上方に引き上げることで、開口68を介して保温ボックス60内に糸Yを挿入する。このとき、糸Yは、保温ボックス60に形成されたスリット67と、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間に形成されたすき間を通って、糸走行溝56の開放端(下端)から糸走行溝56内に挿入される。なお、このとき、閉鎖部材79は退避位置にしており、スリット67を閉鎖しない位置に位置している。したがって、閉鎖部材79がスリット67を通る糸Yの進路を阻むことがない。
【0096】
最後に、作業者は、扉62を開位置から閉位置に移動させる。これにより、
図4に示すように、収容体61の開口68が閉鎖される。扉62を閉位置とすることで、断熱ブロック72が閉鎖部材79と共に上方に移動する。このとき、閉鎖部材79は、退避位置から閉鎖位置に移動する。すなわち、
図11(a)に示すように、保温ボックス60に形成されたスリット67a、67bが、閉鎖部材79によって閉鎖された状態となる。また、このとき、
図4に示すように、断熱ブロック72は、隣り合う断熱ブロック71、73と接触する。
【0097】
第1加熱装置13においては、上述のような手順で糸Yをセットした後に、糸Yの加熱を行う。すなわち、第1加熱装置13において糸Yを加熱する際、閉鎖部材79は、延在方向に関して断熱ブロック71、72、73の間のすき間の全域と対向する位置に位置している。また、このとき、閉鎖部材79は、保温ボックス60に形成されたスリット67a、67bを閉鎖する。さらに、このとき、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間が最小限となっている。
【0098】
(実施形態の特徴)
以上のように、本実施形態の第1加熱装置13は、延在方向に沿って延びた糸走行溝56が形成されており、糸走行溝56を走行する糸Yを加熱する加熱部50と、延在方向に沿って延びており、糸走行溝56の下端である開放端と対向する位置において、機台長手方向に関して並んで配置された断熱ブロック71、72、73と、断熱ブロック71、72、73の延在方向の側方に配置された閉鎖部材79、サイドプレート63a、63b、中央プレート64と、を備えている。隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間は、糸走行溝56に糸Yを挿入する際の通路を構成する。サイドプレート63a、63bと中央プレート64との間のすき間により、糸走行溝56に糸Yを挿入する際に糸Yが通るスリット67が形成されている。スリット67は、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間に形成された通路と延在方向に関して対向する部分に形成されている。閉鎖部材79は、スリット67を閉鎖する閉鎖位置と、スリット67を閉鎖しない退避位置と、の間で移動可能である。
【0099】
上述の構成によると、閉鎖部材79を閉鎖位置に配置することで、糸Yを加熱する際に温められた隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間(通路)の空気がスリット67から流出するのを抑制することができる。したがって、消費電力を削減することができる。また、閉鎖部材79を退避位置とすることで、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間(通路)を介して糸走行溝56に糸Yを挿入する際に、閉鎖部材79により糸Yの進路が阻まれることがない。
【0100】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、閉鎖部材79と、サイドプレート63a、63b及び中央プレート64とは、断熱ブロック71、72、73の延在方向の両側にそれぞれ配置されている。したがって、閉鎖部材79により、糸Yを加熱する際に温められた空気が通路(隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間)における延在方向の両端部からスリット67を介して流出するのを抑制することができる。よって、消費電力を確実に削減することができる。
【0101】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、閉鎖部材79は、閉鎖位置にあるとき、延在方向から視て、断熱ブロック71、72、73の間のすき間の全域と対向する。したがって、閉鎖部材79により、断熱ブロック71、72、73の間のすき間(通路)における機台長手方向及び上下方向の全域を封鎖できる。よって、該すき間から空気が流出するのを確実に抑制し、消費電力をいっそう削減することができる。
【0102】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、加熱部50及び断熱ブロック71、72、73を収容する保温ボックス60の下壁61aにおける断熱ブロック71、72、73と対向する部分に、開口68が形成されている。保温ボックス60の扉62は、開口68を閉鎖する閉位置と開口68を開放する開位置との間で移動可能に構成されている。閉鎖部材79は、扉62の移動に連動して移動可能に構成されている。扉62が開位置に位置しているとき閉鎖部材79は退避位置に位置し、扉62が閉位置に位置しているとき閉鎖部材79は閉鎖位置に位置する。
【0103】
上述の構成によると、扉62を開位置とし、開口68を介して保温ボックス60内に糸Yを挿入して、糸走行溝56の開放端から糸走行溝56内に糸Yを挿入することができる。このとき、閉鎖部材79はスリット67を閉鎖しない退避位置に位置しているので、糸Yはスリット67を通ることができる。よって、第1加熱装置13に糸Yをセットする際に、閉鎖部材79により糸Yの進路が阻まれることがな。また、扉62を閉位置とすることで、閉鎖部材79がスリット67を閉鎖する閉鎖位置となる。したがって、糸Yを加熱する際は、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間(通路)の温められた空気がスリット67を介して流出するのを閉鎖部材79により抑制し、消費電力を削減することができる。
【0104】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、閉鎖部材79は、扉62によって上方に押圧されることで退避位置から閉鎖位置に移動する。したがって、閉鎖部材79は、扉62によって上方に押圧されなくなることで、自重により閉鎖位置から退避位置に移動する。よって、閉鎖部材79を閉鎖位置から退避位置に移動させるための機構が不要となる。
【0105】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、サイドプレート63a、63bと中央プレート64との間のすき間により、走行する糸Yが通過する出入口66が形成されている。出入口66は、延在方向に関して糸走行溝56と対向する部分に形成されている。閉鎖部材79は、閉鎖位置にあるとき、出入口66に糸Yが通過可能な領域を残しつつ出入口66の一部を塞ぐ。したがって、糸走行溝56における延在方向の開放端から糸Yを加熱する際に温められた空気が流出するのを抑制することができる。よって、消費電力をさらに削減することができる。
【0106】
加えて、本実施形態の第1加熱装置13では、上下方向(閉鎖部材79の移動方向)に関する位置が固定された中央プレート64を備えている。中央プレート64には、上下方向に沿って延びる開口64bが形成されている。閉鎖部材79には、中央プレート64に形成された開口64bに配置可能な凸部78が形成されている。したがって、開口64bにより、閉鎖部材79の上下方向に関する移動をガイドすることができる。
【0107】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、機台長手方向に沿って並んだ3つの断熱ブロック71、72、73のうち中央の断熱ブロック72の延在方向の両側に、中央プレート64がそれぞれ配置されている。閉鎖部材79は、断熱ブロック72に対して取り付けられている。そして、断熱ブロック72が、中央プレート64に対して上下に移動することで、閉鎖部材79が閉鎖位置と退避位置との間で移動する。したがって、断熱ブロック72を中央プレート64に対して移動させることで、閉鎖部材79を閉鎖位置と退避位置との間で移動させることができる。
【0108】
加えて、本実施形態の第1加熱装置13では、中央プレート64は機台長手方向に関する位置を調整可能に構成されている。例えば、断熱ブロック72の上下方向の位置を固定し、中央プレート64を上下方向に移動させることで、スリット67を閉鎖する構成とすることが考えられる。すなわち、この場合、中央プレート64は、機台長手方向にも上下方向にも移動可能に構成されることとなる。中央プレート64が、機台長手方向以外にも移動可能である場合は、中央プレート64の機台長手方向に関する位置調整の精度が低下するおそれがある。本構成では、中央プレート64は上下方向に関する位置が固定されているので、中央プレート64による機台長手方向に関する位置調整を精度良く行うことができる。
【0109】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、閉鎖部材79は、下方に移動することで閉鎖位置から退避位置に移動する。断熱ブロック72は、延在方向から視て、上方から下方に向かって広がる台形形状を有している。したがって、閉鎖部材79を退避位置として第1加熱装置13に糸をセットする際に、断熱ブロック72の上端部に糸Yが引っ掛かりにくい。
【0110】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、閉鎖部材79が閉鎖位置に位置しているとき、断熱ブロック72は、隣り合う断熱ブロック71、73と接触する。したがって、糸Yを加熱する際に、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間を極力小さくし、加熱部50からの熱が放出される空間を少なくすることができる。よって、消費電力をより削減することができる。
【0111】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、スリット67a、67bは、上下方向に対して傾斜した方向に沿って延びている。そして、閉鎖部材79は、スリット67a、67bの伸延方向と平行な方向に延びた縁部79a、79bを有している。したがって、スリット67a、67bが閉鎖部材79の移動方向(上下方向)に沿って延びている場合に比べて、閉鎖部材79の閉鎖位置と退避位置との間の移動距離を短くすることができる。
【0112】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、サイドプレート63a、63b及び中央プレート64は、加熱部50及び断熱ブロック71、72、73を収容する収容体61に取り外し可能に取り付けられている。本構成では、閉鎖部材79をサイドプレート63a、63b及び中央プレート64に近接して配置することで、閉鎖部材79とサイドプレート63a、63b及び中央プレート64とが擦れてサイドプレート63a、63b及び中央プレート64が損傷した場合であっても、サイドプレート63a、63b及び中央プレート64を収容体61から取り外して交換できる。したがって、閉鎖部材79をサイドプレート63a、63b及び中央プレート64に近接して配置し、スリット67を確実に閉鎖できる。
【0113】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、糸走行溝56の全体が加熱部50に画定されている。したがって、糸Yを効率よく加熱することができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0115】
上述の実施形態においては、閉鎖部材79が閉鎖位置にあるとき、閉鎖部材79がスリット67の下端部以外を閉鎖する場合について説明したが、これには限定されない。閉鎖部材79が閉鎖位置にあるとき、閉鎖部材79はスリット67の少なくとも一部を閉鎖すればよい。閉鎖部材79が閉鎖位置にあるとき、閉鎖部材79はスリット67の全域を閉鎖してもよい。
【0116】
さらに、上述の実施形態においては、閉鎖部材79が、断熱ブロック71、72、73の延在方向の両側にそれぞれ配置されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、閉鎖部材79は、断熱ブロック71、72、73の延在方向の少なくとも一方側に配置されていればよい。
【0117】
また、上述の実施形態においては、サイドプレート63a、63b及び中央プレート64が、断熱ブロック71、72、73の延在方向の両側にそれぞれ配置されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、サイドプレート63a、63b及び中央プレート64は、断熱ブロック71、72、73の延在方向の少なくとも一方側に配置されていればよい。
【0118】
さらに、上述の実施形態においては、閉鎖部材79が閉鎖位置に位置しているとき、閉鎖部材79は、延在方向から視て、断熱ブロック71、72(断熱ブロック72、73)の間のすき間の全域と対向する場合について説明したが、これには限定されない。閉鎖部材79が閉鎖位置に位置しているとき、閉鎖部材79は、延在方向から視て、断熱ブロック71、72(断熱ブロック72、73)の間のすき間の一部のみと対向していてもよい。
【0119】
加えて、上述の実施形態においては、閉鎖部材79が閉鎖位置にあるとき、閉鎖部材79が出入口66の一部を塞ぐ場合について説明したが、これには限定されない。閉鎖部材79が閉鎖位置にあるとき、閉鎖部材79は出入口66の一部を塞がなくてもよい。
【0120】
また、上述の実施形態においては、保温ボックス60への糸の出入口66a、66bとスリット67a、67bとが、収容体61に取り外し可能に取り付けられた3枚のプレート(サイドプレート63a、63b、中央プレート64)間のすき間により構成されている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、これら出入口66a、66bとスリット67a、67bとは、収容体61に取り外し可能に取り付けられた1枚のプレート(対向壁)に形成された開口により構成されていてもよい。さらに、出入口66a、66bとスリット67a、67bとは、保温ボックス60の収容体61自体に形成された開口により構成されていてもよい。
【0121】
また、上述の実施形態においては、閉鎖部材79は、扉62の移動に連動して移動可能に構成されている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、閉鎖部材79に把持部が設けられており、作業者が把持部を把持して、閉鎖部材79を移動可能に構成されていてもよい。
【0122】
さらに、上述の実施形態においては、閉鎖部材79は、扉62によって上方に押圧されることで退避位置から閉鎖位置に移動する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、閉鎖部材79は、下方に押圧されることで退避位置から閉鎖位置に移動してもよい。この場合、閉鎖位置から退避位置に戻すための付勢機構等を備えていることが好ましい。なお、付勢機構等を備えていなくても、作業者により手動で閉鎖位置から退避位置に戻す構成であってもよい。
【0123】
加えて、上述の実施形態においては、中央プレート64に形成された開口64bに、閉鎖部材79に形成された凸部78が配置され、開口64bが閉鎖部材79の移動をガイドするガイド溝として機能する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、ガイド溝は、開口に替えて凹部により構成されていてもよい。また、ガイド溝は閉鎖部材79に形成されており、中央プレート64にガイド溝内に配置可能な凸部が形成されていてもよい。
【0124】
さらに、上述の実施形態においては、加熱部50に2つの糸走行溝56が設けられている場合について説明したが、加熱部50に設けられる糸走行溝56の個数はこれには限定されるものではない。糸走行溝56の個数は1つであってもよい。糸走行溝56の個数は3つ以上であってもよい。
【0125】
加えて、上述の実施形態においては、3つの断熱ブロック71、72、73が設けられている場合につい説明したが、断熱ブロック71、72、73の個数はこれに限定されるものではない。断熱ブロック71、72、73は、少なくとも2つ設けられていればよい。
【0126】
さらに、上述の実施形態においては、閉鎖部材79が断熱ブロック72に取り付けられており、中央プレート64に対して断熱ブロック72が上下に移動することで、閉鎖部材79が閉鎖位置と退避位置との間で移動する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、断熱ブロック72は上下方向の位置が固定されており、断熱ブロック72の延在方向の両側にそれぞれ配置された上下に移動可能な端部部材に閉鎖部材79が取り付けられていてもよい。かかる端部部材は、例えば、収容体61に対して上下に移動可能に取り付けられていてもよい。
【0127】
また、上述の実施形態においては、中央プレート64は、機台長手方向に関する位置を調整可能に構成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、中央プレート64は機台長手方向に移動しないように構成されていてもよい。
【0128】
さらに、上述の実施形態においては、断熱ブロック72は、延在方向から視て、上方から下方に向かって広がる台形形状を有している場合について説明したが、これには限定されない。例えば、断熱ブロック72は、延在方向から視て、長方形形状であってもよい。
【0129】
加えて、上述の実施形態においては、閉鎖部材79が閉鎖位置に位置しているとき、断熱ブロック72は、隣り合う断熱ブロック71、73と接触する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、閉鎖部材79が閉鎖位置に位置しているとき、断熱ブロック72は、隣り合う断熱ブロック71、73と離隔していてもよい。
【0130】
また、上述の実施形態においては、スリット67a、67bは、上下方向に対して傾斜した方向に沿って延びている。そして、閉鎖部材79は、スリット67a、67bの伸延方向と平行な方向に延びた縁部79a、79bを有している場合について説明したが、これには限定されない。例えば、スリット67a、67bは、上下方向に沿って延びていてもよい。この場合、閉鎖部材79の閉鎖位置と退避位置との間の距離を短くすることを考えると、閉鎖部材79は機台長手方向に沿って移動可能に構成されていることが好ましい。
【0131】
さらに、上述の実施形態においては、閉鎖部材79が断熱ブロック72に取り付けられている場合について説明したが、これには限定されない。断熱ブロック72と同様に、保温ボックス60の収容体61に対して上下に移動可能な部材に閉鎖部材79を取り付けることで、扉62の移動に連動して閉鎖部材79を移動可能とすることができる。また、閉鎖部材79は、収容体61に対して直接取り付けられていてもよい。また例えば、閉鎖部材79は、扉62に取り付けられていてもよい。この場合、閉鎖部材79は、扉62と共に移動して閉鎖位置と退避位置との間で移動可能となる。
【0132】
また、上述の実施形態においては、糸走行溝56全体が加熱部50で画定されている場合について説明したが、これには限定されない。糸走行溝56は、少なくとも一部が加熱部50で画定されていればよい。すなわち例えば、糸走行溝56の底面は加熱部50で画定されており、糸走行溝56の側面は加熱部50以外の部材で画定されていてもよい。
【0133】
また、上述の実施形態では、糸Yは、接糸面55と接触することにより、接糸面55を介して加熱ブロック52から熱を受け取る場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、
図12(a)、(b)に示すように、上述の実施形態の一変形例にかかる加熱部150においては、複数の糸ガイド154が、糸走行溝156内において延在方向に沿って並んで配置されている。より具体的には、糸走行溝156a内には、複数の糸ガイド154aが配置されている。糸走行溝156b内には、複数の糸ガイド154bが配置されている。糸ガイド154(154a、154b)によってガイドされつつ糸走行溝156(156a、156b)内を走行する糸Y(Ya、Yb)は、加熱ブロック152(152a、152b)により温められた空気から熱を受け取る。すなわち、加熱部150は、温めた空気によって糸Yを加熱する非接触方式である。非接触方式の加熱部150では、加熱温度が比較的高温である。具体的には、上述の実施形態の加熱部50の加熱温度は350℃程度であるが、本変形例の加熱部150の加熱温度は600℃程度である。したがって、非接触方式の加熱部150では、糸Yを加熱する際に温められた空気は比較的高温となる。本構成では、隣り合う断熱ブロック71、72、73の間のすき間における延在方向の両端部から糸Yを加熱する際に温められた空気が流出するのを抑制することで、消費電力を効果的に削減することができる。
【0134】
加えて、上述の実施形態では、加熱部50は、熱源51と、熱源51により加熱される加熱ブロック52と、を備えている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、加熱部は、中空の部材の内部にダウサム等の熱媒体を循環させる構造であってもよい。
【0135】
さらに、上述の実施形態では、本発明にかかる糸加熱装置を糸Yに仮撚加工を施す仮撚加工機1に適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明の糸加熱装置は、仮撚加工に限定されず、合糸加工等の種々の加工を合成繊維からなる糸に施す加工機に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0136】
13 第1加熱装置(糸加熱装置)
50 加熱部
56 糸走行溝
61 収容体
61a 下壁(開口壁)
61b 側壁
62 扉
63a、63b サイドプレート(対向壁)
64 中央プレート(固定部材、端部部材、対向壁)
64b 開口(ガイド溝)
66 出入口(糸走行孔)
67 スリット
68 開口
71、72、73 断熱ブロック
78 凸部
79 閉鎖部材
Y 糸