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特開2024-79627セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079627
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20240604BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/42
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/451
H01M50/403 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200177
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0164876
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】クォン テ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ベ フン テク
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021BB15
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE06
5H021EE15
5H021EE20
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE24
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH07
5H021HH10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄い厚さでも電池の低電圧不良率を大幅に低減することができるセパレータ、その製造方法、および前記セパレータを含む電気化学素子を提供する。
【解決手段】多孔質基材および多孔質基材の少なくとも一面上にバインダーおよび無機粒子を含む無機粒子層を含み、バインダーは、(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーであり、下記式(1)の値が0.15以上を満足する、セパレータである。
(1)BDV/t
但し、BDVはASTM D3755に従って測定され、セパレータを耐電圧試験機の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材の少なくとも一面上にバインダーおよび無機物粒子を含む無機物粒子層と、を含み、
前記バインダーは、(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーであり、下記式(1)の値が0.15以上を満足する、セパレータ:
(1)BDV/t
(前記式(1)中、
前記BDVはASTM D3755に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、
前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である)。
【請求項2】
前記無機物粒子の粒度分布において、
(D80-D20)/D50値が0.01~2.0である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記多孔質基材の平均厚さをtとしたとき、t/t値は0.65以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記無機物粒子層のパッキング密度は1.45g/(m・μm)以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記セパレータを150℃で60分間放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が2%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記バインダーは、(a)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、(b)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマー重合単位と、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、を含む共重合体である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記共重合体中の(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位は、下記化学式3の構造を含む、請求項7に記載のセパレータ:
[化学式3]
【化1】
(前記化学式3中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルキニル基、のいずれか一つ以上を含む官能基であり、R10は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、アミド基、エーテル基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか一つ以上を含むC1~C10の直鎖状または分岐状の炭化水素基である)。
【請求項9】
前記共重合体は下記化学式4の構造を含む、請求項8に記載のセパレータ:
[化学式4]
【化2】
(前記式4中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルキニル基、のいずれか一つ以上を含む官能基であり、R10は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、アミド基、エーテル基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか一つ以上を含むC1~C10の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、Lは、C1~C6の置換または非置換の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、mは、65~96、nは、4~34、pは、0.001~1である)。
【請求項10】
前記化学式4において、pは、0.01~1である、請求項9に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記バインダーは、重量平均分子量が100,000~2,000,000g/molである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記無機物粒子層の厚さは3μm以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項13】
(s1)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーおよび無機粒子を含むスラリーを用意するステップと、
(s2)製造されたスラリーを、表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子層を形成するステップと、を含む、セパレータの製造方法。
【請求項14】
前記無機物粒子において、
(D80-D20)/D50値が0.01~2.0である、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項15】
前記水溶性バインダーは、
(a)(メタ)アクリルアミド系モノマーと、(b)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーと、の共重合体である、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項16】
前記(s2)ステップは、
調製したスラリーを、表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に塗布した後、5分以上静置するステップと、をさらに含む、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項17】
前記多孔質基材の親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうちいずれか一つ以上を含んで行うものである、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関するものであり、一態様によれば、電池の低電圧不良率を著しく低減したセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境にやさしいエネルギーに対する需要が高まる中、携帯電話、PCなどの電子機器をはじめ、電気自動車など様々な分野で電気化学素子の研究が進められている。正極と負極の間に介在する絶縁性のセパレータは、電気化学素子の高容量/高出力特性のために厚さを薄膜化する方向で研究が進められているが、このようなセパレータの薄膜化傾向により、電池の低電圧不良率が増加するという問題が発生している。数十個の電池で構成された電気自動車の電池パックのうち、1つの電池だけ低電圧不良が発生した場合でも、正常な多数の電池を廃棄しなければならないため、電池の低電圧不良率を下げることが非常に重要な産業上の課題である。
【0003】
電池の低電圧不良は、正常な自己放電率以上の電圧降下挙動を示す現象を指し、セパレータ内の異物、ピンホールなどの欠陥、セラミックコーティングセパレータの場合、無機物層の組成、分布度、セパレータ自体の耐電圧特性など様々な原因によって複合的に引き起こされると推測される。
【0004】
したがって、薄い厚さを持ちながら、前記のような電池の低電圧不良率を抑制できる新しいセパレータの開発が必要である。また、電池の低電圧不良率を抑制すると同時に、従来のセパレータに求められる核心的な特徴である耐熱性、電極との接着性などを全て満足する新しいセパレータの開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
(特許文献1)韓国公開特許公報第10-2014-0011136号(2014.01.28)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記課題を解決するために、本開示の一態様によれば、薄い厚さでも電池の低電圧不良率を大幅に低減することができるセパレータ、その製造方法、および前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【0007】
また、一態様において、前記電池の低電圧不良率を大幅に低減すると同時に、優れた耐熱性、接着性を有するセパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための一手段として、本開示の一態様によれば、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上にバインダーと無機粒子を含む無機粒子層を含み、前記バインダーは、(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーであり、下記式(1)の値が0.15以上を満足する、セパレータを提供することができる。
(1)BDV/t
前記式(1)中、
前記BDVはASTM D3755に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、
前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【0009】
一態様によれば、前記無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値が0.01~2.0であってもよい。
【0010】
一態様によれば、前記多孔質基材の平均厚さをtとすると、t/tの値は0.65以上であってもよい。
【0011】
一態様において、前記無機物粒子層のパッキング密度は1.45g/(m・μm)以上であってもよい。
【0012】
一態様において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含めてもよい。
【0013】
一態様において、前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が2%以下であってもよい。
【0014】
一態様において、前記バインダーは、(a)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、(b)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマー重合単位と、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、を含む共重合体であってもよい。
【0015】
一態様において、前記共重合体中の(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位は、下記化学式3の構造を含めてもよい。
[化学式3]
【化1】
前記化学式3中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルキニル基、のいずれか一つ以上を含む官能基であり、R10は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、アミド基、エーテル基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか一つ以上を含むC1~C10の直鎖状または分岐状の炭化水素基である。
【0016】
一態様において、前記共重合体は、下記化学式4の構造を含めてもよい。
[化学式4]
【化2】
前記化学式4中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルキニル基、のいずれか一つ以上を含む官能基であり、R10は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、アミド基、エーテル基、ケトン基、エステル基、およびアルデヒド基のいずれか一つ以上を含むC1~C10の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、Lは、C1~C6の置換または非置換の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、mは、65~96、nは、4~34、pは、0.001~1である。
【0017】
一態様によれば、前記化学式4において、pは、0.01~1であってもよい。
【0018】
一態様において、前記バインダーは、重量平均分子量が100,000~2,000,000g/molであってもよい。
【0019】
一態様において、前記無機物粒子層の厚さは3μm以下であってもよい。
【0020】
また、前記課題を達成するための他の一手段として、本開示の一態様によれば、(s1)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーおよび無機粒子を含むスラリーを用意するステップと、および(s2)前記製造されたスラリーを、表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に無機粒子層を形成するステップと、を含む、セパレータの製造方法を提供することができる。
【0021】
一態様によれば、前記無機物粒子において、(D80-D20)/D50の値が0.01~2.0であってもよい。
【0022】
一態様において、前記水溶性バインダーは、(a)(メタ)アクリルアミド系モノマーと、(b)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーと、の共重合体であってもよい。
【0023】
一態様において、前記(s2)ステップは、前記用意されたスラリーを、表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に塗布した後、5分以上静置するステップと、をさらに含めてもよい含めてもよい。
【0024】
一態様において、前記多孔質基材の親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで行ってもよい。
【0025】
また、前記の課題を達成するための他の手段として、本開示の一態様によれば、前記の態様のセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、無機物粒子層のバインダーとして本態様の水溶性バインダーを含み、下記式(1)の値が0.15以上、0.153以上または0.155以上を満足するセパレータは、薄い厚さでも目的の電池の電圧で電圧が低下する電池の低電圧不良率を大幅に低減できるだけでなく、同時に優れた耐熱性、接着性を確保することができる。
(1)BDV/t
前記式(1)において、前記BDVはASTM D3755に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極の間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【0027】
一態様において、前記セパレータを150℃で60分放置した後測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が2%以下、1.5%以下または1.3%以下、具体的な態様で1.0%以下、0.8%以下または0.7%以下であってもよい。
【0028】
具体的な一態様において、前記水溶性バインダーと特定の粒度分布を有する無機粒子を無機粒子層に一緒に適用することで、無機粒子層のパッキング密度(packing density)をさらに高めることができ、同じ厚さのセパレータでも電池の低電圧不良率をさらに減らすことができる。
【0029】
一態様において、前記無機物粒子層のパッキング密度は、1.45g/(m・μm)以上、1.5g/(m・μm)以上、2.5g/(m・μm)以下、2.3g/(m・μm)以下、2.0g/(m・μm)以下または前記数値の間の値であってもよい。
【0030】
一態様において、無機粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値が0.01~2.0である場合、前記水溶性バインダーと組み合わせて、パッキング密度をさらに高め、電池の低電圧不良率をさらに低減することができる。
【0031】
一態様において、前記多孔質基材にコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含む親水性表面処理する場合、無機物粒子層のパッキング密度(packing density)をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで電池の低電圧不良率をさらに減らすことができる。
【0032】
一態様において、前記コロナ放電処理またはプラズマ放電処理によって多孔質基材の表面に極性官能基が設けられ、前記設けられた極性官能基は、無機物粒子層を固定する前記水溶性バインダーと化学的にまたは水素結合などの二次結合力によって密に結合し、電池の低電圧不良率をさらに低減することができる。
【0033】
また、具体的な一態様において、無機粒子層を形成した後、エージングステップを行うことにより、多孔質基材と無機粒子層との接着性をさらに高め、耐熱性をさらに向上させることができる。
【0034】
より具体的な一態様において、前記物性を全て満足する新しいセパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、態様または実施例を通じて本開示をさらに詳細に説明する。ただし、以下の態様または実施例は、本開示を詳細に説明するための一つの参考であって、本開示がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0036】
また、特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本開示に属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本開示において説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。
【0037】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0038】
また、ある部分があるコンポーネントを「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他のコンポーネントを除外するのではなく、他のコンポーネントをさらに含めることができることを意味する。
【0039】
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0040】
本明細書において、「置換または非置換」という表現において、「置換」とは、炭化水素内の水素原子1個以上が、それぞれ独立して、同一または異なる置換基で置換されることを意味する。前記置換基の非限定的な例としては、重水素、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1~C30アミン基、ニトロ基、C1~C30シリル基、C1~C30アルキル基、C1~C30アルキルシリル基、C3~C30シクロアルキル基、C1~C30ヘテロシクロアルキル基、C6~C30アリール基、C1~C30ヘテロアリール基、C1~C20アルコキシ基、C1~C10トリフルオロアルキル基またはシアノ基を挙げることができる。
【0041】
本明細書において「Dn」(nは実数)とは、体積基準の積算分率でn%に相当する粒子の粒径を意味する。例えば、「D80」とは、体積基準の積算分率で80%に相当する粒子の粒径を意味する。「D20」とは、体積基準の積算分率で20%に相当する無機物粒子の粒径を意味する。前記Dnは、測定対象の無機物粒子についてKS A ISO13320-1規格に基づいて試料を採取し、Beckman coulter社のMultisizer 4e Coulter counterを利用して分析された粒度分布結果から導き出すことができる。
【0042】
本明細書において「セパレータの全体平均厚さ(t)」とは、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面に設けられた無機物粒子層を含むセパレータの全体平均厚さを意味する。一態様において、前記セパレータの全体平均厚さt(μm)は、次の方法で求めることができる。セパレータを10層に重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10層のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一のセパレータ全体の平均厚さを導出する。
【0043】
本明細書において「多孔質基材の平均厚さ(t)」とは、無機物粒子層が少なくとも一面に設けられていない多孔質基材のみの平均厚さを意味する。一態様において、前記多孔質基材の平均厚さt(μm)は、次の方法で求めることができる。無機物粒子層が少なくとも片面に設けられていない多孔質基材のみを10層重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10層の多孔質基材の平均厚さを導出し、再び10で割って多孔質基材の平均厚さtを導出する。もし無機物粒子層が少なくとも一面に設けられた多孔質基材の平均厚さtを求める場合、無機物粒子層を当該技術分野で公知の方法を制限なく全て活用して脱離させ、十分に乾燥させた後、無機物粒子層が脱離された多孔質基材の平均厚さtを求める。
【0044】
本明細書で「無機粒子層パッキング密度」とは、多孔質基材の単位面積(m)、単位高さ(μm)にロードされる無機粒子層の密度(g/(m・μm))を意味する。一態様で無機物粒子層のパッキング密度を測定する方法は、以下の方法によって行うことができる。前記方法により、多孔質基材の平均厚さtと、無機物粒子層が多孔質基材上に設けられたセパレータの全体平均厚さtをそれぞれ測定した後、前記セパレータの全体平均厚さtから多孔質基材の平均厚さtを引いて無機物粒子層の厚さ(T、μm)を計算する。前記無機物粒子層が多孔質基材の少なくとも一面に設けられたセパレータを10mm×10mm(0.01m)面積(S、m)に切って重量を測定した後、多孔質基材の重量を引いて無機物粒子層のみの重量(W、g)を計算する。無機物粒子層のパッキング密度はW/(T*S)で計算する。
【0045】
本開示は、セパレータの無機粒子層バインダーとして本態様の水溶性バインダーを含み、下記式(1)の値を特定の範囲に制御する場合、薄い膜厚でも目的の電池の電圧で電圧が低下する低電圧不良率を大幅に低減できるだけでなく、同時に優れた耐熱性、接着性を確保できることに着目して考案されたものである。
【0046】
一態様によれば、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上にバインダーおよび無機粒子を含む無機粒子層を含み、前記バインダーは、(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーであり、下記式(1)の値を特定の範囲に制御する場合、薄い厚さでも電池の低電圧不良率を大幅に低減することができるだけでなく、同時に優れた耐熱性、接着性を有するセパレータを提供することができる。
(1)BDV/t
前記式(1)中、前記BDVはASTM D3755に従って測定され、前記セパレータをドライルーム(露点温度:-60℃)下で耐電圧試験機(Croma社19052モデル)の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAであるときの電圧(kV)である。このときの電圧を絶縁破壊電圧として評価する。前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【0047】
一態様において、前記式(1)の値は、0.15以上または0.153以上、好ましくは0.155以上であることができ、前記式(1)の値の上限は特に限定しないが、例えば0.3以下、0.25以下、0.2以下であってもよい。具体的な実施態様において、前記式(1)の値は、0.15~0.3、0.153~0.25または0.155~0.2であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
一態様によるセパレータは、薄い無機物粒子層を多孔質基材の少なくとも片面、好ましくは両面に設けても、電池の低電圧不良率を大幅に低減することができるだけでなく、高温での優れた耐熱性および高容量/高出力特性を確保することができる。一態様において、前記多孔質基材の平均厚さをtとすると、t/tの値は、0.65以上、0.67以上、0.69以上、1.0未満、0.9以下、0.8以下、または前記数値の間の値であってもよい。具体的な作業態様において、前記t/t値は、0.65以上または0.65以上1.0未満、より具体的には0.67以上または0.67以上0.9以下であってもよい。
【0049】
一態様において、前記多孔質基材にコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含む親水性表面処理する場合、無機物粒子層のパッキング密度(packing density)をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで電池の低電圧不良率をさらに低減することができるが、これに限定されるものではない。前記一態様において、前記コロナ放電処理またはプラズマ放電処理によって多孔質基材の表面に極性官能基が設けられ、前記設けられた極性官能基は、無機物粒子層を固定する前記水溶性バインダーと化学的にまたは水素結合などの二次結合力によって密に結合し、電池の低電圧不良率をさらに低減することができる。
【0050】
以下、本開示の態様によるセパレータの各構成について説明する。
【0051】
一態様によれば、前記多孔質基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを使用することができ、これらからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の樹脂からなるフィルムまたはシートであってもよい。
【0052】
前記ポリオレフィン系多孔質基材は、通常フィルム状に製造され、電気化学素子のセパレータとして一般的に使用されるものであれば限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの共重合体などを例示できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0053】
前記多孔質基材の厚さは特に限定しないが、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、または前記数値の間の値であってもよい。多孔質基材の厚さは、非限定的な例として1~100μm、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~30μmであってもよい。前記多孔質基材は、一例によれば、延伸して製造された多孔質高分子基材であってもよい。
【0054】
一態様において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものであってもよい。前記極性官能基の非限定的な例としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。前記極性官能基は、一例によれば、親水性表面処理で導入されたものであることができ、前記親水性表面処理は、一例によれば、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基と後述する(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーが密に化学的にまたは水素結合などの二次結合によってよりよく結合し、薄い厚さのセパレータで電池の低電圧不良率をさらに向上させることができる。
【0055】
一態様において、無機物粒子層は、バインダーおよび無機物粒子を含むことができ、無機物粒子が前記バインダーによって連結、固定されて気孔を形成した多孔質無機物粒子層であってもよい。一態様において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の少なくとも一面に設けられ、多孔質基材の全表面を基準として、面積割合60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を占めることができる。
【0056】
一態様において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の一面または両面にコーティングされることができ、前記多孔質基材の両面に無機物粒子層がコーティングされる場合、一面と他の一面にコーティングされた無機物粒子層の厚さは、互いに同じか、異なることができる。特に限定されるものではないが、一態様で一面にコーティングされる無機物粒子層の厚さは、0μm超過、0.3μm以上、0.5μm以上、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、または前記数値の間の値であってもよい。具体的な一態様において、前記無機物粒子層の厚さは、0μm超過3μm以下、好ましくは0μm超過2.5μm以下、より好ましくは0μm超過2μm以下であってもよい。
【0057】
一態様において、前記無機物粒子は、この技術分野に使用する無機物粒子であれば限定されない。非限定的な例として、前記無機物粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物のうちの一つまたは二つ以上を含むことができ、またはSiO、SiC、MgO、Y、Al、CeO、CaO、ZnO、SrTiO、ZrO、TiOおよびAlO(OH)のうちの一つまたは二つ以上を含めてもよい含めてもよい。電池の安定性などの観点から、無機物粒子は、好ましくはベーマイト(bohemite)のような金属水酸化物粒子であってもよい。
【0058】
前記金属水酸化物は特に限定しないが、非限定的な例として、ベーマイト(boehmite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)および水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)のいずれか1つまたは2つ以上を含めてもよい含めてもよい。一態様として、前記ベーマイトを使用する場合、例えば比表面積(BET)は10m/g以上または15m/g以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0059】
より好ましくは、前記無機物粒子はベーマイト(boehmite)であることができ、このとき、ベーマイトの比表面積(BET)は10m/g以上、具体的には比表面積は15m/g以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0060】
具体的な一態様は、特定の粒度分布を有する無機粒子と後述する(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーを無機粒子層に一緒に適用することにより、薄い厚さのセパレータで電池の低電圧不良率をさらに低減することができるが、これに限定されるものではない。前記一態様によれば、前記無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値は、0.01以上、0.03以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、2.0以下、1.8以下、1.5以下、1.3以下、1.2以下、または前記数値の間の値であってもよい。非限定的な例として、前記(D80-D20)/D50値は、0.01~2.0、または好ましくは0.01~1.8、またはさらに好ましくは0.01~1.5であってもよい。前記具体的な一態様において、無機物粒子が前記範囲の粒度分布を満たす場合、電池の低電圧不良率をさらに低減することができる。
【0061】
前記粒度分布を満足する限り特に限定されないが、前記無機物粒子のD50値の非限定的な例としては、1.0μm以下または0.7μm以下であってもよい。
【0062】
一態様において、前記無機物粒子層のパッキング密度は、1.45g/(m・μm)以上、1.5g/(m・μm)以上、2.5g/(m・μm)以下、2.3g/(m・μm)以下、2.0g/(m・μm)以下または前記数値の間の値であることができ、具体的には、1.45~2.5g/(m・μm)、1.5~2.3g/(m・μm)または1.5~2.0g/(m・μm)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
次に、前記無機物粒子を連結して気孔が形成された無機物粒子層を形成するバインダーの態様を説明する。本開示の一態様によれば、前記バインダーとしては、(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーをバインダーとして使用することができる。
【0064】
一態様において、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーは、(a)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、(b)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマー重合単位と、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、を含む共重合体であってもよい。一態様において、前記共重合体は、ブロック共重合体またはランダム共重合体であってもよいが、特に限定されるものではない。
【0065】
一態様によると、前記水溶性バインダーを使用する場合、従来の水分酸系バインダーに比べて製造されたセパレータの高温収縮率を低減させる効果を達成することができ、無機物粒子層内の無機物粒子が離れて分離する問題を改善し、低減された界面抵抗特性を示すセパレータを提供することができる。また、前記セパレータを使用して製造された電気化学素子は、電気的抵抗が低減され、容量および出力の面で改善された性能を示すことができる。
【0066】
一態様において、前記(a)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位は、下記化学式1の構造を含めてもよい。
【0067】
[化学式1]
【化3】
【0068】
前記式1中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルキニル基、のいずれか1つ以上を含む官能基である。
【0069】
一態様において、前記(b)ヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート系モノマー重合単位は、下記化学式2の構造を含めてもよい。
【0070】
[化学式2]
【化4】
【0071】
前記式2において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルカイニル基、のうち1つ以上を含む官能基であり、Lは、C1~C6の置換または非置換の直鎖状または分岐状のアルキレン基である。
【0072】
一態様において、前記(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位は、下記化学式3の構造を含めてもよい。
【0073】
[化学式3]
【化5】
【0074】
前記式3において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルキニル基、のいずれか一つ以上を含む官能基であり、R10は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、アミド基、エーテル基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか一つ以上を含むC1~C10の直鎖状または分岐状の炭化水素基である。
【0075】
一態様において、前記(a)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、(b)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマー重合単位と、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、を含む共重合体は、下記化学式4の構造を含めてもよい。
【0076】
[化学式4]
【化6】
【0077】
前記式4において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルキル基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC1~C6のアルコキシ基、置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルケニル基、および置換または非置換の直鎖状または分岐状のC2~C6のアルキニル基、のうち1つ以上を含む官能基であり、R10は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、アミド基、エーテル基、ケトン基、エステル基、およびアルデヒド基のうち1つ以上を含むC1~C10の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、Lは、C1~C6の置換または非置換の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、mは、65~96、nは、4~34、pは、0.001~1である。前記化学式4のm、n、pは、それぞれ前記化学式4の共重合体中の(a)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、(b)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマー重合単位と、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位と、の全モル量に対する含有率(mol%)を意味する。
【0078】
前記m、n、p含有率範囲を満たすバインダーは、電池の低電圧不良率をさらに低減することができるだけでなく、同時に接着強度をさらに向上させることができ、高温での熱収縮率をさらに低減することができ、抵抗がより低いセパレータを提供することができる。一態様において、前記m、n、p含有率の合計m+n+pの値は100であってもよい。
【0079】
具体的な一態様において、前記共重合体中の前記(a)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位の含有率mは、65以上、67以上、68以上、70.5以上、96以下、94以下、93以下、91.5以下、または前記数値の間の値であってもよい。より具体的には、mは、65~96、67~94、68~93または70.5~91.5であってもよい。
【0080】
具体的な一態様において、前記共重合体中の前記(b)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマー重合単位の含有率nは、4以上、5以上、6以上、8以上、34以下、33以下、32以下、31以下、29以下、または前記数値の間の値であってもよい。より具体的には、nは、4~34、5~33、6~32、8~31または8~29であってもよい。
【0081】
具体的な一態様において、前記共重合体中の前記(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位の含有率pは、0.001以上、0.002以上または0.003以上、高温での熱収縮率をさらに低減するために好ましくは0.01以上または0.02以上であることができ、1以下、0.9以下、0.5以下または前記数値の間の値であってもよい。より具体的には、pは、0.001~1、0.002~0.9または0.003~0.5であることができ、高温での熱収縮率をさらに低減するために0.01~1、0.02~0.9であってもよい。
【0082】
一態様において、前記バインダーは、重量平均分子量が100,000g/mol以上、200,000g/mol以上、2,000,000g/mol以下、1,000,000g/mol以下、500,000g/mol以下、または前記数値の間の値であってもよい。具体的には、前記バインダーは、重量平均分子量が100,000~2,000,000g/mol、200,000~1,000,000g/mol、または200,000~500,000g/molであってもよい。一態様によれば、バインダーの重量平均分子量が前記範囲を満たすと、接着性がさらに向上することができる。前記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを使用して測定したポリエチレングリコール換算平均分子量である。
【0083】
前記態様によるバインダーを提供できる限り、バインダーの製造方法を特に限定しないが、一態様において、前記バインダーは、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、バルク重合またはこれらの組み合わせなど、公知の様々な重合方法によって調製することができる。
【0084】
本発明の態様は、電池の低電圧不良率を大幅に低減すると同時に、優れた耐熱性を有するセパレータを提供することができる。一態様によれば、150℃で60分間放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が2%以下、1.5%以下または1.3%以下、具体的な態様では1.0%以下、0.8%以下または0.7%以下であるセパレータを提供することができる。
【0085】
より具体的な一態様は、前述の態様の物性をすべて満足する新しいセパレータを提供することができる。
【0086】
次に、前記セパレータの製造方法の態様を説明する。
【0087】
一態様によれば、(s1)(メタ)アクリルアミド系モノマー重合単位を含む水溶性バインダーおよび無機粒子を含むスラリーを用意するステップと、(s2)前記製造されたスラリーを表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に無機粒子層を形成するステップと、を含むセパレータの製造方法を提供することができる。
【0088】
以下、前記一態様によるセパレータの製造方法の各ステップについて説明する。前記各多孔質基材、無機物粒子層、無機物粒子、バインダーについての説明は前述と同様であるため、便宜上省略する。
【0089】
一態様において、前記水溶性バインダーは、(a)(メタ)アクリルアミド系モノマーと、(b)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーと、の共重合体であってもよい。
【0090】
前記(a)(メタ)アクリルアミド系モノマーは、前記化学式1構造を含む重合単位を提供できる限り特に限定されないが、一態様において、前記(a)(メタ)アクリルアミド系モノマーは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドのうち1種以上を含むことができ、具体的な一態様においてアクリルアミドを含めてもよい。
【0091】
前記(b)ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート系モノマーは、前記式2の重合単位を提供できる限り特に限定されないが、一態様において、前記(b)ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート系モノマーは、2-ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのうち1つ以上を含むことができ、具体的な一態様として2-ヒドロキシエチルアクリレートを含めてもよい。
【0092】
前記(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、前記化学式3構造を含む重合単位を提供できる限り特に限定されないが、一態様において、前記(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]メタアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシ-3、3-ビス(ヒドロキシメチル)ブチルメタアクリルアミド、N-(4-ヒドロキシ-3、3-ビス(ヒドロキシメチル)ブチルアクリルアミド、N、N’-メチレンビスアクリルアミド、N、N’-ヘキサメチレンビスアクリルアミドおよびN、N’-(1、2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドのうち一つ以上を含むことができ、具体的な一態様としてN、N’-メチレンビスアクリルアミドを含めてもよい。
【0093】
具体的な一態様において、前記水溶性バインダーは、(a)(メタ)アクリルアミド系モノマーと、(b)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなるモノマー成分と、重合開始剤と、を含む混合物から共重合反応させて得られるものであってもよい。
【0094】
一態様において、前記重合開始剤の種類としては、前記共重合体を得ることができる限り特に限定されないが、一態様において、重合開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系重合開始剤であってもよい。
【0095】
一態様によれば、前記混合物から共重合して得られる水溶性バインダーは、重量平均分子量が100,000g/mol以上、200,000g/mol以上、250,000g/mol以上、2,000,000g/mol以下、または前記数値の間の値であってもよい。具体的には、前記バインダーは、重量平均分子量が100,000~2,000,000g/mol、200,000~2,000,000g/molまたは250,000~2,000,000g/molであってもよい。一態様によれば、バインダーの重量平均分子量が前記範囲を満たすと、接着性がさらに向上することができる。前記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを使用して測定したポリエチレングリコール換算平均分子量である。
【0096】
特に限定されないが、一態様において、前記水溶性バインダーは、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、バルク重合またはこれらの組み合わせなど、公知の様々な重合方法によって調製することができる。
【0097】
一態様によれば、前記水溶性バインダーは、(a)(メタ)アクリルアミド系モノマーと、(b)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(c)多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーと、を含むモノマー成分を蒸留水に投入した後、50~90℃または60~80℃に昇温させた後、重合開始剤を投入して重合反応させて得られるものであってもよい。
【0098】
一態様において、重合反応が完了した後、温度を常温(20±5℃)に下げ、塩基性溶液などを添加して中性状態に調整した水溶性バインダー水溶液で製造することができる。一態様において、前記水溶性バインダー水溶液の粘度は、3000cps以下、2500cps以下、または2000cps以下であることができ、具体的には1500cps以下であってもよいが、これに限定されるものではない。前記粘度範囲において、後日無機物粒子と混合してスラリーを製造したとき、スラリーの粘度をさらに下げることができ、塗布性をさらに向上させることができる。
【0099】
スラリーを製造する方法は、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なく全て適用することができ、特に制限はないが、非限定的な例によれば、0~60℃で1時間~5日間攪拌して前記粒度分布を有する無機物粒子を分散してスラリーを製造することができ、ボールミルを利用して凝集した無機物粒子を分散することもできる。
【0100】
一態様によれば、(s2)ステップで親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面に無機物粒子層を設けることができる。前記スラリーを塗布する方法としては、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なく全て適用することができ、非限定的な例によれば、ロールコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、スリットコーティング、インクジェット印刷およびこれらを組み合わせた方法を適用することができる。前記無機物粒子層を形成するための乾燥は特に限定されないが、100℃以下、または30~60℃で乾燥することができる。
【0101】
通常、多孔質基材上にスラリーを塗布した後、乾燥機に1分以内に直ちに搬送して乾燥するステップとは異なり、本開示の一態様によれば、前記(s2)ステップにおいて、電池の低電圧不良率をさらに低減できる手段として、前記スラリーを塗布した後、常温で5分以上静置するステップを含めてもよい。これは、前記5分以上政治するステップにより、スラリー内の無機物粒子と水溶性バインダーが再配列される時間を付与することができ、これにより、電池の低電圧不良率をさらに低減することができる。静置時間は一定時間以上付与することが適切であるが、長すぎる場合、工程効率を阻害する可能性があるため好ましくない。これを考慮して、前記政治時間は5分以上、8分以上、10分以上、30分以下、25分以下、20分以下、または前記数値の間の値であってもよい。政治時間の非限定的な具体例としては、5~30分、5~25分であってもよい。
【0102】
一態様において、多孔質基材の親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで行うことができ、前記親水性表面処理でカルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などの極性官能基を導入することができる。多孔質基材の表面に極性官能基を含む場合、無機物粒子層を固定する前記水溶性バインダーと前記多孔質基材上の極性官能基が化学的にまたは水素結合などで相互作用してより密に結合し、薄い厚さのセパレータで電池の低電圧不良率をさらに減らすことができる。
【0103】
具体的な一態様において、無機物粒子層を形成するための乾燥を行った後、前記無機物粒子層が形成された多孔質基材をエージングするステップをさらに含めてもよい。具体的には、前記エージングは50~150℃、好ましくは65℃~120℃で行うことができ、エージング時間は2時間~24時間行うことができ、好ましくは10~20時間行うことができる。より好ましくは70~120℃の温度範囲で10~15時間行うことができる。前記エージングを通じて、多孔質基材と無機物粒子層間の接着性を増加させ、高温での耐熱性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0104】
一態様によれば、前記態様のうち一態様に係るセパレータを含む電気化学素子を提供することができ、前記電気化学素子は、公知のあらゆるエネルギー貯蔵装置であることができ、特に限定されないが、非限定的な一例としてリチウム二次電池を挙げることができる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も知られているので、本開示では具体的に説明しない。
【0105】
一態様によるリチウム二次電池は、正極と負極の間に前記セパレータを含むものであってもよい。このとき、前記正極および負極は、通常リチウム二次電池に使用されるものであれば、限定されず使用することができる。
【0106】
以下、実施例および比較例に基づいて本開示をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本開示をより詳細に説明するための一例であり、本開示が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0107】
まず、セパレータの物性測定、評価方法について説明する。
【0108】
[重量平均分子量]
重量平均分子量はGPC(Tosoh社 EcoSEC HLC-8320 GPC Reflective Index detector)を用いて測定する。GPC ColumnはTskgel guard PWx、2つのTSKgel GM PWxlおよびTSKgel G2500 PWxl(7.8×300mm)を使用し、溶媒は0.1M NaNO水溶液を使用し、標準物はポリエチレングリコールを使用し、40℃、1mL/minの流速(flow rate)で分析する。
【0109】
[セパレータの平均厚さ(t、t)]]
セパレータの全体平均厚さt(μm)は以下の方法で求める。セパレータを10枚重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社の厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一セパレータ全体の平均厚さを導出する。
【0110】
多孔質基材の平均厚さt(μm)は、以下の方法で求める。無機粒子層が少なくとも片面に設けられていない多孔質基材のみを10層重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚の多孔質基材の平均厚さを導出し、再び10で割って多孔質基材の平均厚さtを導出する。もし無機物粒子層が少なくとも一面に設けられた多孔質基材の平均厚さtを求める場合、無機物粒子層を当該技術分野で公知の方法を制限なく全て活用して脱離させ、十分に乾燥させた後、無機物粒子層が脱離された多孔質基材の平均厚さtを求める。
【0111】
[無機物粒子層のパッキング密度]
無機物粒子層のパッキング密度は以下の方法により測定される。
【0112】
前記方法により、多孔質基材の平均厚さtと、無機粒子層が多孔質基材上に設けられたセパレータの全体平均厚さtをそれぞれ測定し、前記セパレータの全体平均厚さtから多孔質基材の平均厚さtを引いて無機粒子層の厚さ(T、μm)を計算する。無機物粒子層が多孔質基材上に設けられたセパレータを10mm×10mm(0.01m)面積(S、m)に切って重量を測定した後、多孔質基材のみの重量を引いて無機物粒子層のみの重量(W、g)を計算する。無機物粒子層のパッキング密度はW/(T*S)(g/(mμm・μm))で計算する。
【0113】
[粘度測定]
粘度はASTM D2196を参照するが、具体的には25℃でブルックフィールド(Brookfield)粘度計(モデルRVDV2)、スピンドルCPA-52Z、torque 60-70%になるようにrpmを設定して測定する。
【0114】
[BDV/t]
絶縁破壊電圧(BDV)はASTM D3755に従って測定され、セパレータをドライルーム(露点温度:-60℃)下で耐電圧試験機(Croma社19052モデル)の電極間に配置し、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)で評価する。
【0115】
セパレータの全体平均厚さt(μm)は、前記のようにセパレータを10枚重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社の厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一のセパレータ全体の平均厚さを導出する。
【0116】
その後、厚さに対して確保された絶縁破壊電圧を比較するために、セパレータの全体平均厚さtに対する前記測定された絶縁破壊電圧BDVの比であるBDV/tの値を求める。
【0117】
[低電圧不良率]
製造された電池を初期抵抗測定後、50%充電状態で電圧を測定し、3週間後の電圧降下を測定し、20mV以上の電圧降下が発生したものを低電圧不良と評価する。
【0118】
製造された二次電池20個を対象に、前記の方法でそれぞれの電池について低電圧不良を判断した後、低電圧不良の発生頻度に応じて、以下のグレードを通じて電池の低電圧不良率を評価する。
A:低電圧不良発生頻度が低い。
B:低電圧不良発生頻度が高い。
C:低電圧不良発生頻度が非常に高い。
【0119】
[熱収縮率]
セパレータの熱収縮率はASTM D1204に基づき測定するが、次の方法で測定する。セパレータに一辺が10cmの正方形に2cm間隔で格子点を表示する。この正方形の一辺は幅方向(TD、Transverse Direction)、もう一辺は機械方向(MD、Machine Direction)である。試験片を正中間に位置させ、試験片の上下に紙を5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包む。紙で包まれた試験片を150℃の熱風乾燥オーブンに60分間放置する。その後、試験片を取り出し、セパレータをカメラで観察し、下記数学式1の縦方向収縮率および下記数学式2の横方向収縮率を計算する。
【0120】
数学式1
長手方向収縮率(%)=(加熱前の長手方向長さ-加熱後の長手方向長さ)×100/加熱前の長手方向長さ
【0121】
数学式2
幅方向収縮率(%)=(加熱前の幅方向の長さ-加熱後の幅方向の長さ)×100/加熱前の幅方向の長さ
【0122】
[接着性]
セパレータを幅50mm×長さ50mmの大きさに切り、無機物粒子層が上になるように配置する。動摩擦係数が0.15の黒色画用紙(幅20mm×長さ150mm×厚さ0.25mm)をその上に置き、押圧装置を使用して一定圧力(200g/cm)をかけた後、黒色画用紙を強制的に横に引き抜き、表面上に付着した無機物の程度を確認し、付着の程度によって次のGradeを見てA/B/C/D/Fまで判定する。
A:染み出るものがない
B:無機物が少量付着している。
【0123】
C~Fはバインダーおよび無機物が一緒に付着するレベルであり、Fになるほどその程度が激しい。
【0124】
{実施例}
[実施例1]
バインダー製造
1.0Lフラスコを窒素で置換した後、(a)アクリルアミド932mmol、(b)2-ヒドロキシエチルメタクリレート89mmol、(c)N、N’-メチレンビスアクリルアミド0.058mmolのモノマー成分、蒸留水700gをフラスコに投入し、75℃に昇温した。その後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.789mmolをフラスコに追加投入した混合物の重合反応をフラスコを密閉して進行させた。前記重合反応を12時間行った後、密閉したフラスコを大気中に開放して温度を常温に下げ、1M水酸化ナトリウム溶液を添加してpH7に調整してバインダー水溶液を製造した。前記バインダーおよびバインダー水溶液の物性を以下の表1に示した。
【0125】
スラリー製造
固形分全重量を基準に無機物粒子としてベーマイト(γ-AlO(OH)、boehmite)(D20:0.17μm、D50:0.28μm、D80:0.55μm、(D80-D20)/D50:1.36)を96.5重量%および前記製造したバインダー3.5重量%を水に添加した後、攪拌して固形分濃度28wt%のスラリーを製造した。
【0126】
多孔質基材の前処理
【0127】
多孔質基材フィルムとして、9μm平均厚さ(t)のポリエチレン多孔質フィルム(気孔率:40%、ガリ透過率:159秒/100cc、引張強度MD2、430kgf/cm、TD1、877kgf/cm)の両面をコロナ放電処理(電力密度2W/mm)して表面極性基を導入し、この時、コロナ表面処理は速度3から20mpm(meter per minute)とした。
【0128】
セパレータの製造
前記前処理された多孔質基材の両面に前記スラリーを塗布した後、5分間静置した。その後乾燥し、両面にそれぞれ2μmの平均厚さで無機物粒子層を形成した(t=13μm)。無機物粒子層が設けられた多孔質基材を100℃で12時間エージングするステップを経てセパレータを製造した。t/tは0.69であった。セパレータの物性を下記表3に示した。
【0129】
二次電池の製造
アノード活物質としてLiCoOを94重量%、融着剤としてポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride)を2.5重量%、導電剤としてカーボンブラック(Carbon-black)を3.5重量%、溶媒であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加し、攪拌して均一なアノードスラリーを製造した。前記製造されたスラリーを30μm厚のアルミニウム箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の正極を製造した。負極活物質として人工黒鉛を95重量%、融着剤としてTgが-52℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)を3重量%、増粘剤としてCMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%、溶媒である水に添加して攪拌して均一な負極スラリーを製造した。前記製造されたスラリーを20μm厚の銅箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の負極を製造した。前記製造された正極、負極およびセパレータを前記正極および負極の間に積層(stacking)する方式でポーチ型電池を組み立てた後、正極、負極およびセパレータを互いに融着させるために、組み立てられた電池を熱プレス機で80℃、1MPaで熱融着した。その後、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのヘキサフロロリン酸リチウム(LiPF)が溶解した電解液を注入した後、密封して容量2Ahの二次電池を製造した。
【0130】
[実施例2~4]
下記表1の組成でバインダーを製造した以外は実施例1と同様にバインダーを製造し、下記表2の粒度分布を有するベーマイトを使用した以外は実施例1と同様にスラリーを製造し、セパレータ、二次電池に製造した。セパレータの物性を下記表3に示した。
【0131】
[比較例1~3]
下記表1の組成でバインダーを製造した以外は実施例1と同様にバインダー、スラリー、セパレータ、二次電池を製造した。セパレータの物性を下記表3に示した。
【0132】
[比較例4]
下記表2の粒度分布を有するベーマイト粒子を用いた以外は実施例1と同様にスラリー、セパレータ、二次電池を製造した。セパレータの物性を下記表3に示した。
【0133】
[比較例5]
水溶性バインダーではなく、市販のアクリル系水分酸型バインダーでラテックス含有量が20重量%の水分酸系バインダーを使用した以外は実施例1と同様にバインダー、スラリー、セパレータ、二次電池を製造した。セパレータの物性を下記表3に示した。
【表1】
前記表1において、AM:アクリルアミド、2-HEMAは2-ヒドロキシエチルメタクリレート、MBAAはN、N’-メチレンビスアクリルアミドである。
【表2】
[評価例]セパレータの物性
【0134】
本開示の前記実施例および比較例のセパレータの物性評価結果を下記表3にまとめて示した。
【表3】
本開示の態様である実施例1~4は、比較例1~5と比較してBDV/t値が0.15以上を満足した結果、薄い厚さでも電池の低電圧不良率を大幅に低減することができ、150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が2%以下で耐熱性に優れていることを確認することができ、ボール紙接着力がAで接着性を大幅に改善することができたことを確認することができた。
【0135】
特に、実施例2は、多官能性(メタ)アクリルアミド系モノマーであるMBAAの含有量が0.01mol%以上で、実施例の中でMD方向およびTD方向の熱収縮率が0.2%以下で最も優れた耐熱性を示した。
【0136】
一方、比較例1~3は、BDV/t値が0.15以下の結果、電池の低電圧不良率が高く、MD方向およびTD方向の熱収縮率が2%以上で耐熱性が劣っていた。
【0137】
比較例4は、BDV/t値が0.15以下の結果、電池の低電圧不良率が高く、耐熱性および接着性が実施例に比べて劣っていた。
【0138】
比較例5は、市販のアクリル系水分酸型バインダーを使用し、BDV/t値が0.15以下の結果、電池の低電圧不良が非常に高く、耐熱性も非常に劣っていた。
【0139】
以上のように本開示では特定の事項と限定された実施例によって説明したが、これは本開示のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本開示は前記の実施例に限定されるものではなく、本開示が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0140】
したがって、本開示は、前記説明した実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等または等価な変形がある全てのものは、本開示の範疇に属するといえる。