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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079629
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】高圧噴射流体用改質剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/12 20060101AFI20240604BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C09K8/12
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200827
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022190878
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭介
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040CA01
2D040CA04
2D040CA05
2D040CA10
2D040CB03
(57)【要約】
【課題】高圧で噴射される流体をより効率良く対象物に作用させる高圧噴射流体用改質剤を提供する。
【解決手段】(a)ポリエチレンオキサイド及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマーを含有する、高圧噴射流体用改質剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエチレンオキサイド〔以下、(a)成分という〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔以下、(b)成分という〕を含有する、高圧噴射流体用改質剤。
【請求項2】
(a)成分の重量平均分子量が、30万以上250万以下である、請求項1に記載の高圧噴射流体用改質剤。
【請求項3】
(b)成分は、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩である、請求項1又は2に記載の高圧噴射流体用改質剤。
【請求項4】
(b)成分の重量平均分子量が、3,000以上20,000以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の高圧噴射流体用改質剤。
【請求項5】
高圧噴射撹拌工法用地盤掘削水用添加剤である、請求項1~4の何れか1項に記載の高圧噴射流体用改質剤。
【請求項6】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、30/70以上95/5以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の高圧噴射流体用改質剤。
【請求項7】
(a)ポリエチレンオキサイド〔以下、(a)成分という〕、(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔以下、(b)成分という〕及び水を含有する、高圧噴射流体。
【請求項8】
前記高圧噴射流体の噴射圧が、1MPa以上2000MPa以下である、請求項7に記載の高圧噴射流体。
【請求項9】
(a)成分を、0.01質量%以上0.7質量%以下含有する、請求項7又は8に記載の高圧噴射流体。
【請求項10】
(b)成分を、0.03質量%以上0.5質量%以下含有する、請求項7~9の何れか1項に記載の高圧噴射流体。
【請求項11】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、30/70以上95/5以下である、請求項7~10の何れか1項に記載の高圧噴射流体。
【請求項12】
水硬性粉体を含まない、請求項7~11の何れか1項に記載の高圧噴射流体。
【請求項13】
(a)ポリエチレンオキサイド及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマーを含有する流体を噴射注入して地盤を掘削し、掘削した地盤に硬化材を充填して地盤内に硬化体を形成する、地盤改良方法。
【請求項14】
前記地盤を掘削する工程の後に、掘削した地盤に硬化材を充填して該地盤内に硬化体を形成する工程を有する、請求項13に記載の地盤改良方法。
【請求項15】
(a)ポリエチレンオキサイド及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマーを含有する水を、洗浄対象に噴射する、高圧洗浄方法。
【請求項16】
前記水の噴射圧が、1MPa以上2000MPa以下である、請求項15に記載の高圧洗浄方法。
【請求項17】
(a)ポリエチレンオキサイド〔以下、(a)成分という〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔以下、(b)成分という〕から選ばれる成分を含む複数の剤から構成される高圧噴射流体用改質剤製造用のキットであって、(a)成分と、(b)成分が別の剤に含まれている、キット。
【請求項18】
水を含む噴射液に、(a)ポリエチレンオキサイド及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマーを含有させる、噴射液の噴射圧向上方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射流体用改質剤、高圧噴射流体、地盤改良方法、高圧洗浄方法、高圧噴射流体用改質剤製造用キット及び噴射液の噴射圧向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の流体を対象物に噴射して対象物を洗浄又は掘削する方法が知られている。具体的には、高圧洗浄機による洗浄や、ジェットグラウト工法のように、地盤を高圧水等で掘削し、掘削した地盤に硬化材を充填する工法が知られている。
【0003】
特許文献1には、切削領域の土砂の崩落現象を防止することができ、かつ流動化土砂スラリーと硬化材との置換率を向上でき、目的とする径を有する硬化体を造成することができる高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤及び高圧噴射工法を提供することを目的として、所定の割合の増粘剤と流動調整剤とで構成された高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を水に添加し、この水を地盤内に噴射注入して所要の領域内の土砂を切削し、切削領域に硬化材を注入充填或いは高圧噴射して地盤内に硬化体を形成する工法が開示されている。そして、増粘剤としてポリエチレンオキサイド、流動調整剤としてβ-ナフタレンスルホン酸アルデヒド縮合物が例示されている。
特許文献2には、水硬性組成物と粘性土の分散性に優れ、優れた分散保持性を有するとともに、起泡性も低く、硬化性能を損なうこともない地盤改良工法用添加剤、水硬性セメント組成物並びに地盤改良工法を提供することを目的として、(イ)ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、(ロ)オキシカルボン酸もしくはその塩、糖及び糖アルコールからなる群より選ばれた1種以上、(ハ)ポリエチレングリコール、並びに(ニ)(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルを、所定の含有量で含有してなる地盤改良工法用添加剤が開示されている。また、地盤改良工法用添加剤を配合した水硬性セメント組成物が、地盤をウォータージェットによって切削しながらセメント系硬化材を投入し、改良体とする各種ジェットグラウト工法に好適に用いることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-69996号公報
【特許文献2】特開2002-3843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高圧噴射流体による洗浄効率及び掘削効率等を向上させる観点から、高圧噴射流体を効率良く対象物に作用させること、例えば、高圧噴射流体の飛散ロスを低減したり、高圧噴射流体の噴射圧を向上させたりすることが求められる。
これに対して、特許文献1の実施例では、切削に関しては注入管の噴射孔から調整して得られた土砂切削用溶液及びそれを包括する噴射孔から圧縮空気を噴射注入し土砂を切削するとあるが、評価としては、排泥状況の観察であり、高圧噴射流体の飛散ロスや噴射圧の向上については何ら述べられておらず、ポリエチレンオキサイドを用いた例もない。
また、特許文献2の実施例では、マイテイ100(ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物)とポリエチレングリコールなどからなる地盤改良工法用添加剤を含むスラリー状の水硬性セメント組成物の再分散性、分散保持性、硬化性及び起泡性を評価しており、高圧噴射流体の飛散ロスや噴射圧の向上については何ら述べられていない。
本発明は、高圧で噴射される流体をより効率良く対象物に作用させる高圧噴射流体用改質剤、高圧噴射流体、地盤改良方法、高圧洗浄方法、高圧噴射流体用改質剤製造用キット及び噴射液の噴射圧向上方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)ポリエチレンオキサイド〔以下、(a)成分という〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔以下、(b)成分という〕を含有する、高圧噴射流体用改質剤に関する。
【0007】
また、本発明は、(a)成分、(b)成分及び水を含有する、高圧噴射流体に関する。
【0008】
また、本発明は、(a)成分及び(b)成分を含有する流体を噴射注入して地盤を掘削し、掘削した地盤に硬化材を充填して地盤内に硬化体を形成する、地盤改良方法に関する。
【0009】
また、本発明は、(a)成分及び(b)成分を含有する水を、洗浄対象に噴射する、高圧洗浄方法に関する。
【0010】
また、本発明は、(a)成分及び(b)成分から選ばれる成分を含む複数の剤から構成される高圧噴射流体用改質剤製造用のキットであって、(a)成分と、(b)成分が別の剤に含まれている、キットに関する。
【0011】
また、本発明は、水を含む噴射液に、(a)成分及び(b)成分を含有させる、噴射液の噴射圧向上方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高圧噴射流体をより効率良く対象物に作用させる高圧噴射流体用改質剤、高圧噴射流体、地盤改良方法、高圧洗浄方法、高圧噴射流体用改質剤製造用キット及び噴射液の噴射圧向上方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者らは、(b)成分単独では流体の粘度は大きくならないが、(a)成分と(b)成分とを併用することで、(a)成分単独で用いる場合よりも流体の粘度が大きくなることを見出した。また、(a)成分と(b)成分とを併用することで、(a)成分単独で量を増やして粘度を大きくした場合より噴射圧が大きくなることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき更に検討を重ねて完成されるに至ったものである。
本発明の高圧噴射流体用改質剤が、高圧噴射流体を効率良く対象物に作用させることができる機構は定かではないが、以下のように推察される。
(a)成分のポリエチレンオキサイドと(b)成分の芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマーの相乗作用により生じる粘性と曳糸性により、高圧噴射流体の乱流が大幅に抑制され、該流体の噴射圧が向上し、該流体の飛散量が低減されたと推察される。
なお、本発明の高圧噴射流体用改質剤、高圧噴射流体、地盤改良方法、高圧洗浄方法、高圧噴射流体用改質剤製造用キット及び噴射液の噴射圧向上方法は、上記の作用機構になんら限定されるものではない。
【0014】
<高圧噴射流体用改質剤>
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、(a)ポリエチレンオキサイド〔以下、(a)成分という〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔以下、(b)成分という〕を含有する。
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、(a)成分及び(b)成分からなる、高圧噴射流体用改質剤であってよい。
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、高圧噴射液体用、更には高圧噴射水用の改質剤であってよい。また、本発明における改質剤は、高圧噴射流体の飛散量低減剤、及び高圧噴射流体の噴射圧向上剤から選ばれる1以上であってよい。
本発明の高圧噴射流体用改質剤が高圧噴射流体用噴射圧向上剤の場合、該噴射圧向上剤は、噴射対象に吹き付けられる高圧噴射流体の圧力を向上させる剤であってよい。
【0015】
<(a)成分>
(a)成分は、ポリエチレンオキサイドである。(a)成分の重量平均分子量は、噴射圧向上効果の観点から、好ましくは30万以上、より好ましくは35万以上、更に好ましくは40万以上、そして、水への溶解性の観点から、好ましくは250万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは130万以下、より更に好ましくは100万以下である。これらは市販品を用いることができ、(a)成分の市販品として、例えば明成化学工業株式会社製のアルコックスシリーズ等が挙げられる。
【0016】
(a)成分の重量平均分子量は、市販品の場合は商品情報(カタログなど)に基づいた値を採用してよい。また、(a)成分の重量平均分子量が未知の場合、(a)成分の重量平均分子量は、(a)成分の水溶液の粘度と相関があるため、例えば、下記の方法でおよその値を求めることができる。
【0017】
<ポリエチレンオキサイドの重量平均分子量>
測定対象のポリエチレンオキサイドから、下記基準表を参照して、各種濃度の水溶液(以下、サンプル水溶液という)を調製する。サンプル水溶液の粘度を、B型粘度計を用い、25℃、No.2ローター、30rpm、1分後の条件で測定する。ただし、No.2ローターでの測定で1000mPa・sを超える場合はNo.3ローターを用いて上記条件と同じ条件(25℃、30rpm、1分後)で測定する。得られた粘度から、該当する重量平均分子量を求める。なお、この基準表は、重量平均分子量が既知のポリエチレンオキサイドを用いて作成したものである。基準表中、PEOは、ポリエチレンオキサイドの意味である。
【0018】
(a)成分は、ポリエチレンオキサイドの水溶液であっても、固体状であってもよい。
固体状のポリエチレンオキサイドは、粒子状、更に粉末状又は顆粒状であることが好ましい。顆粒は、通常、粉末よりも相対的に粒径が大きい粒子である。
【0019】
<(b)成分>
(b)成分は、芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマーである。(b)成分の芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環から選ばれる1種以上が挙げられ、アニオン性の官能基は、スルホン酸基、カルボキシ基、及びリン酸基から選ばれる1種以上が挙げられる。
(b)成分は、上記の芳香環と該芳香環に結合する上記アニオン性の官能基とを有する芳香族アニオンポリマー、更には、上記の芳香環と該芳香環に結合するスルホン酸基とを有する芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩であってよい。
【0020】
(b)成分は、(a)成分との相互作用の観点から、好ましくは、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸を含む縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸を含む縮合物及びそれらの塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩である。これらは市販品を用いることができ、(b)成分の市販品として、例えば、花王株式会社製のデモールシリーズ、マイテイシリーズ等が挙げられる。
【0021】
(b)成分の塩としては、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属の塩、カルシウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、炭素数1以上4以下のアルキル基を1個以上4個以下有するアミンの塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンといったアミノアルコールの塩が挙げられる。(b)成分は、ナトリウム塩又はカルシウム塩が好ましい。
【0022】
(b)成分の重量平均分子量は、(a)成分との相互作用の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは19,000以下、更に好ましくは18,000以下である。
【0023】
(b)成分の重量平均分子量は、下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定する。
[GPC条件]
装置:東ソー株式会社 HLC-8320GPC
カラム:東ソー株式会社 G4000SWXL+G2000SWXL
溶離液:30mMCHCOONa/CHCN=6/4
流量:0.7ml/min
検出器:UV 280nm
サンプルサイズ:3.33mg/ml
標準物質:ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算 SCIENTIFIC POLYMERPRODUCTS,INC.製 SODIUMPOLYSTYRENESULFONATE-narrow distribution-:MW=1,690、7,540、16,000、68,300、126,700、587,600
【0024】
<高圧噴射流体用改質剤の組成等>
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、(a)成分を、増粘性の観点から、(a)成分と(b)成分の合計に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは92質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0025】
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、(b)成分を、増粘性の観点から、(a)成分と(b)成分の合計に対して、好ましくは8質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下含有する。
【0026】
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、(a)成分と(b)成分を合計で、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、そして、例えば、100質量%以下、更には99質量%以下、更には水溶液の場合は、水への溶解性の観点から、好ましくは3質量%以下、更には2質量%以下含有する。本発明の高圧噴射流体用改質剤は、(a)成分と(b)成分のみからなる、すなわち、(a)成分と(b)成分の合計含有量が100質量%である改質剤であってよい。
【0027】
本発明の高圧噴射流体用改質剤において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、噴射圧向上の観点から、好ましくは30/70以上、より好ましくは35/65以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0028】
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、任意に、消泡剤、分散剤及び流動化剤を含有することができる。また、本発明の高圧噴射流体用改質剤は、粉末状とすることができるが、計量や添加の作業性の観点から、水を含有させて水溶液とすることができる。水は、(a)成分、(b)成分及び前記任意成分を除いた残部として用いることができる。
【0029】
本発明の高圧噴射流体用改質剤において、高圧噴射流体とは、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、更に好ましくは5MPa以上、更により好ましくは8MPa以上、更により好ましくは10MPa以上、そして、噴射対象物の変形などを抑制する観点から、例えば、2000MPa以下、更には1500MPa以下、更には1000MPa以下、更には80MPa以下、更には70MPa以下、更には60MPa以下、更には40MPa以下、更には30MPa以下、更には20MPa以下、更には10MPa以下の圧力で噴射される液体であってよい。なお、高圧噴射流体の圧力は、高ければ高いほど好ましいので、その上限は特に限定されるものではない。
この高圧噴射流体の噴射圧は、噴射口から2mの地点で測定することが挙げられる。高圧噴射流体の噴射圧の測定は、例えば、噴射口から2mの地点に流体が垂直に衝突するように圧力測定フィルムを配置し、流体を衝突させた圧力測定フィルムの色濃度から圧力に換算する方法が挙げられる。
高圧噴射流体の噴射圧は、用途によって異なり、例えば、高圧洗浄用途であれば、洗浄性の観点から、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、更に好ましくは5MPa以上、更により好ましくは8MPa以上、更により好ましくは10MPa以上、そして、例えば、好ましくは80MPa以下、更に好ましくは70MPa以下、更に好ましくは60MPa以下、更に好ましくは40MPa以下、更に好ましくは20MPa以下である。
また、高圧噴射流体の噴射圧は、例えば、地盤掘削用途であれば、掘削の観点から、好ましくは100MPa以上、より好ましくは300MPa以上、更に好ましくは600MPa以上、そして、例えば、掘削により生じる土の飛散抑制の観点から、好ましくは2000MPa以下、更に好ましくは1500MPa以下、更に好ましくは1000MPa以下である。
【0030】
<高圧噴射流体>
本発明は、(a)成分、(b)成分及び水を含有する高圧噴射流体を提供する。すなわち、本発明は、(a)ポリエチレンオキサイド〔(a)成分である〕、(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔(b)成分である〕及び水を含有する高圧噴射流体を提供する。本発明の高圧噴射流体は、高圧噴射液、更には高圧噴射水であってよい。
本発明の高圧噴射流体において、(a)成分及び(b)成分の好ましい態様は、本発明の高圧噴射流体用改質剤で記載した態様と同じである。
本発明の高圧噴射流体は、高圧洗浄機、高圧掘削機、又は高圧充填機において高圧で噴射される流体に適用できる。
【0031】
<高圧噴射流体の組成及び任意成分>
本発明の高圧噴射流体は、(a)成分を、増粘性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上、そして、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.35質量%以下、更に好ましくは0.25質量%以下含有する。本発明の高圧噴射流体中の(a)成分の含有量が上記範囲となるように、本発明の高圧噴射流体用添加剤を用いることができる。
【0032】
本発明の高圧噴射流体は、(b)成分を、増粘性の観点から、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.35質量%以下、更に好ましくは0.25質量%以下含有する。本発明の高圧噴射流体中の(b)成分の含有量が上記範囲となるように、本発明の高圧噴射流体用添加剤を用いることができる。
【0033】
本発明の高圧噴射流体において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、噴射圧向上の観点から、好ましくは30/70以上、より好ましくは35/65以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。本発明の高圧噴射流体中の(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比(a)/(b)が上記範囲となるように、本発明の高圧噴射流体用添加剤を用いることができる。
【0034】
本発明の高圧噴射流体は、水を含有することができる。水は、(a)成分、(b)成分及び任意成分以外の残部として用いることができる。水は、例えば、水道水、地下水、湖沼水、河川水、海水、イオン交換水等を使用できる。
【0035】
本発明の高圧噴射流体は、高圧噴射流体の吐出量の観点から、水を、好ましくは95.0質量%以上、より好ましくは98.0質量%以上、更に好ましくは99.0質量%以上、そして、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.8質量%以下、更に好ましくは99.7質量%以下含有できる。
上記範囲で水を含む高圧噴射流体は、高圧洗浄用途及び高圧掘削用途の高圧噴射流体として好ましい。すなわち、上記範囲で水を含む高圧噴射流体は、後に詳細に説明する水硬性粉体を含まない高圧噴射流体における水の好ましい含有量である。
【0036】
本発明の高圧噴射流体は、水硬性粉体を含まない高圧噴射流体であってよいが、本発明の高圧噴射流体は、任意に、水硬性粉体を含むことができる。水硬性粉体は、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJISR 5214等)が挙げられる。これらの中でも、改良体の強度の観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
【0037】
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、無水石膏等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてもよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。
【0038】
本発明の高圧噴射流体は、任意に、骨材を含むことができる。骨材は、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。骨材は細骨材が含まれることが好ましい。細骨材は、JISA 0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材は、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材は、JISA 0203-2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材は、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
本発明の高圧噴射流体は、骨材として細骨材を含有することが好ましい。本発明の高圧噴射流体での細骨材の使用量は、好ましくは800kg/m以上、より好ましくは900kg/m以上、そして、好ましくは1300kg/m以下、より好ましくは1200kg/m以下である。
本発明の高圧噴射流体では、細骨材率が好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上、そして、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下である。ここで細骨材率は、全骨材中の細骨材の容積含有率である。
【0039】
本発明の高圧噴射流体が水硬性粉体を含む場合、本発明の高圧噴射流体は、水/水硬性粉体比(W/C)が、高圧噴射流体の吐出量の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%以上であり、そして、改良体の強度の観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは150質量%以下、更に好ましくは120質量%以下である。
この水/水硬性粉体比(W/C)は、本発明の高圧噴射流体中の水硬性粉体に対する水の質量百分率(質量%)であり、(水/水硬性粉体)×100で算出される。
また、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
【0040】
本発明の高圧噴射流体用改質剤は、水/水硬性粉体(W/C)比が上記範囲の流体に使用される高圧噴射流体用改質剤であってよい。
【0041】
本発明の高圧噴射流体は、必要に応じて、任意に、消泡剤、分散剤、遅延剤及び流動化剤等を含有できる。
【0042】
<地盤改良方法>
本発明は、(a)ポリエチレンオキサイド〔(a)成分である〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔(b)成分である〕を含有する流体を噴射注入して地盤を掘削し、掘削した地盤に硬化材を充填して地盤内に硬化体を形成する、地盤改良方法を提供する。
また、本発明は、(a)成分及び(b)成分を含有する流体を噴射注入して地盤を掘削する工程の後に、掘削した地盤に硬化材を充填して該地盤内に硬化体を形成する工程を有する、地盤改良方法を提供する。
本発明の地盤改良方法において、(a)成分、(b)成分及び任意成分は、本発明の高圧噴射流体用改質剤及び本発明の高圧噴射流体で記載した好ましい態様を適宜適用することができる。
【0043】
本発明の地盤改良方法は、本発明の高圧噴射流体用改質剤を含有する水を噴射注入して地盤を掘削し、掘削した地盤に硬化材を充填して地盤内に硬化体を形成する、地盤改良方法であってよい。
また、本発明の地盤改良方法は、本発明の高圧噴射流体を噴射注入して地盤を掘削し、掘削した地盤に硬化材を充填して地盤内に硬化体を形成する、地盤改良方法であってよい。本発明の地盤改良方法では、高圧噴射流体が、硬化材であってよい。
本発明の地盤改良方法としては、例えば、高圧噴射撹拌工法(ジェットグラウト工法)が挙げられる。
【0044】
本発明の地盤改良方法として、高圧噴射流体を使って地盤を掘削する地盤改良工法、いわゆるジェットグラウト工法を挙げて説明する。ジェットグラウト工法には、硬化材そのものに超高圧をかけて地盤を掘削(土を切削)すると同時に地盤を硬化材で撹拌混合し、円柱状の改良体を造成する「JSG工法」と、超高圧水で地盤を掘削(土を切削)し、そのスライムを地表に排出させると同時に硬化材を填充し、円柱状の改良体を造成する「コラムジェットグラウト工法」がある。
なお、本発明の地盤改良方法は、実施形態に係る地盤改良工法になんら限定されるものではない。
【0045】
これら「JSG工法」及び「コラムジェットグラウト工法」のいずれの工法において、高圧噴射される流体に、本発明の高圧噴射流体用改質剤を添加することで、高圧噴射流体による地盤(土)の掘削効率が向上する。したがって、本発明の高圧噴射流体用改質剤は、高圧噴射撹拌工法用地盤掘削水用添加剤、及び/又は高圧噴射撹拌工法用固化材用添加剤として好適に用いることができる。
【0046】
<高圧洗浄方法>
本発明は、(a)ポリエチレンオキサイド〔(a)成分である〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔(b)成分である〕を含有する水を、洗浄対象に噴射する、高圧洗浄方法を提供する。
本発明の高圧洗浄方法において、(a)成分、(b)成分及び任意成分は、本発明の高圧噴射流体用改質剤及び本発明の高圧噴射流体で記載した好ましい態様を適宜適用することができる。
【0047】
本発明の高圧洗浄方法は、本発明の高圧噴射流体用改質剤を含有する水を、洗浄対象に噴射する、高圧洗浄方法であってよい。
本発明の高圧洗浄方法は、本発明の高圧噴射流体を、洗浄対象に噴射する、高圧洗浄方法であってよい。
高圧噴射流体を噴射させる装置としては、市販の家庭用又は業務用の高圧洗浄機を使用することができる。また、洗浄対象としては、野外設備、自動車、重機及び建造物等が挙げられる。
【0048】
<高圧噴射流体用改質剤製造用のキット>
本発明は、(a)成分及び(b)成分から選ばれる成分を含む複数の剤から構成される高圧噴射流体用改質剤製造用のキットであって、(a)成分と、(b)成分が別の剤に含まれている、キットを提供する。すなわち、本発明は、(a)ポリエチレンオキサイド〔(a)成分である〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔(b)成分である〕から選ばれる成分を含む複数の剤から構成される高圧噴射流体用改質剤製造用のキットであって、(a)成分と、(b)成分が別の剤に含まれている、キットを提供する。
本発明のキットの例としては、(a)成分を含み(b)成分を含まない剤と、(b)成分を含み(a)成分を含まない剤と、から構成されるキットが挙げられる。
【0049】
本発明のキットにおける、(a)成分及び(b)成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の高圧噴射流体用改質剤と同じである。本発明の高圧噴射流体用改質剤で述べた事項は、本発明のキットに適宜適用することができる。
【0050】
本発明のキットを構成する各剤において、(a)成分及び(b)成分の含有量は、例えば、前記範囲の含有量や質量比でこれらの成分を含有する本発明の高圧噴射流体用改質剤が製造できるような量であってよい。
【0051】
(a)成分及び(b)成分から選ばれる成分を含む複数の剤は、高圧噴射流体に混合され、又は水で希釈されて、所定の高圧噴射流体が調製される。
本発明の高圧噴射流体用改質剤製造用のキットは、本発明の高圧噴射流体の調製に好適に用いられる。
【0052】
(a)成分を含む剤は、(a)成分を、3質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
また、(b)成分を含む剤は、(b)成分を、5質量%以上、更に10質量%以上、更に20質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
【0053】
<噴射液の噴射圧向上方法>
本発明は、水を含む噴射液に、(a)ポリエチレンオキサイド〔(a)成分である〕及び(b)芳香環と該芳香環に結合するアニオン性の官能基とを有するポリマー〔(b)成分である〕を含有させる、噴射液の噴射圧向上方法を提供する。
また、本発明の噴射液の噴射圧向上方法は、水を含む噴射液に、本発明の高圧噴射流体用改質剤を含有させる、噴射液の噴射圧向上方法であってよい。
【0054】
本発明の噴射圧向上方法において、(a)成分、(b)成分及び任意成分は、本発明の高圧噴射流体用改質剤及び本発明の高圧噴射流体で記載した好ましい態様を適宜適用することができる。
また、本発明の噴射圧向上方法に用いられる噴射液における(a)成分、(b)成分の好ましい使用量は、本発明の高圧噴射流体における(a)成分又は(b)成分の含有量又は含有量の質量比を、使用量又は使用量の質量比と読み替えて適用することができる。
また、本発明の噴射液の噴射圧向上方法は、特に使用用途を限定するものではないが、本発明の高圧洗浄方法や本発明の地盤改良方法に用いられる高圧噴射流体などの噴射液の噴射圧を向上さる方法として適している。
【実施例0055】
1.高圧噴射流体の調製
表1に記載の割合で増粘剤、助剤及び水を含有する高圧噴射流体を10L調製した。なお、実施例の高圧噴射流体用改質剤は、増粘剤として(a)成分、助剤として(b)成分を合計で100質量%含有する。
<増粘剤:(a)成分>
・PEO(分子量40~55万):ポリエチレンオキサイド、アルコックス E-30、重量平均分子量40~55万(カタログ値)、明成化学工業株式会社製
・PEO(分子量60~100万):ポリエチレンオキサイド、アルコックス E-45、重量平均分子量60~100万(カタログ値)、明成化学工業株式会社製
・PEO(分子量約200万):ポリエチレンオキサイド、アルコックス E-75、重量平均分子量約200万(カタログ値)、明成化学工業株式会社製
<増粘剤:(a)成分の比較成分>
・ポリアクリル酸:平均分子量 約250,000、試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製
・CMC:カルボキシメチルセルロース、試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製 水溶液粘性3.4mPa・s(0.1%水溶液、20℃)
・HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、試薬、Alfa Aesar製 水溶液粘性1.5mPa・s(0.1%水溶液、20℃)
・HEC:ヒドロキシエチルセルロース、試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製 水溶液粘性1.7mPa・s(0.1%水溶液、20℃)
<助剤:(b)成分>
・ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(MW 4,000):β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、重量平均分子量4,000、花王株式会社製
・ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(MW 13,000)、花王株式会社製
<水>
・水道水
【0056】
2.溶解性の評価
上記1.で高圧噴射流体を調製する際、高圧噴射流体用改質剤を添加後、高圧噴射流体における溶け残りを目視で観察し、該改質剤の溶解性の評価を行った。高圧噴射流体用改質剤の溶解性の評価は、下記の溶解性の評価指標にしたがって行った。溶解性の評価指標が、Aであれば、高圧噴射流体用改質剤の溶解性が良好であるといえる。
[溶解性の評価指標]
A:改質剤を加えた後40分未満で溶け残りが観察されなくなった。
B:改質剤を加えた後40分以上80分未満で溶け残りが観察されなくなった。
C:改質剤を加えた後80分経過後に溶け残りが確認された。
【0057】
3.高圧噴射流体の粘度の測定
高圧噴射流体の粘度をB型粘度計で測定した。
<粘度の測定方法>
測定用ビーカーに表1の高圧噴射流体を300mL入れ、B型粘度計(VISCOMETER、MODEL BM、東京計器株式会社製)を用いて、高圧噴射流体の粘度を測定した。ローターNo.2(回転数:60rpm)を用いた。測定温度は20℃であり、測定開始後3分後の粘度を測定した。
【0058】
4.噴射圧及び噴射幅の評価
上記1.で調製した高圧噴射流体をタンク式高圧洗浄機(SBT-512N、アイリスオーヤマ(株)製)を用いて、高圧噴射流体の噴射口(口径φ=約1mm、拡張可変ランスを直噴に設定して使用)から水平方向に2m離間して設けられた圧力測定フィルム(プレスケール 低圧用 LW-PS、測定範囲2.5MPa~10MPa、富士フイルム(株)製)に2分間噴射した。タンク式高圧洗浄機の常用吐出圧力は6.5MPa、常用吐出水量は220L/hであった。また、圧力測定フィルムは、樹脂製のコンテナの底に張り付けて使用した。
高圧噴射流体を圧力測定フィルムに吹付けた後、着色した圧力測定フィルムの色濃度を圧力に換算した値を、表1の「噴射圧(2m地点)」に示す。この噴射圧が高いほど、高圧噴射流体の噴射圧が向上しているといえ、効率良く高圧噴射流体を対象表面に作用させることができる。
【0059】
また、高圧噴射流体の噴射口から50cm離間した位置にカメラ(iPhone13Pro、Apple製)を設置し、該噴射口から噴射される高圧噴射流体を、該高圧噴射流体の噴射方向に対して垂直方向から撮影した。撮影された画像に基づいて、高圧噴射流体の噴出幅を算出した。
この噴出幅が小さいほど、高圧噴射流体の飛散率が小さくなり、対象表面に噴射される高圧噴射流体の量が増加するといえる。よって、この噴出幅が小さいほど、効率良く高圧噴射流体を対象表面に作用させることができる。
なお、高圧洗浄機における高圧噴射流体の噴射圧及び噴射幅の傾向は、高圧掘削機において、掘削水や掘削固化材における高圧噴射流体の噴射圧及び噴射幅についても当てはまる。
【0060】
【表1】