(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007963
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】運動案内装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
F16C29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109425
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】林 勇樹
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA23
3J104BA32
3J104DA20
3J104EA01
3J104EA07
(57)【要約】
【課題】ターン部の繰り返し耐久性や動きなどの性能を向上させることができる運動案内装置を提供する。
【解決手段】運動案内装置は、軌道部材2の転動溝7の壁面とブロック4のターン溝10の壁面との間でボール3を挟み込んで転走路を移動したボール3の軌道を変化させる。軌道部材側挟み込み角をα、ブロック側挟み込み角をβとするとき、α+β<180°を満足する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる転動溝を有する軌道部材と、
前記軌道部材の前記転動溝に対向する転動溝、戻し部、前記転動溝と前記戻し部に接続されるターン部を有するブロックと、
前記軌道部材の前記転動溝と前記ブロックの前記転動溝との間の転走路、前記戻し部、前記ターン部を含む循環路に配置される複数のボールと、を備え、
前記軌道部材の前記転動溝の壁面と前記ブロックの前記ターン部の少なくとも一部のターン溝の壁面との間で前記ボールを挟み込んで前記転走路を移動した前記ボールの軌道を変化させ、
前記軌道部材の前記転動溝の有効端と前記軌道部材の前記転動溝上の前記ボールの中心とを結んだ線と、前記軌道部材の転動溝中心線とのなす軌道部材側挟み込み角をα、
前記ブロックの前記ターン溝と前記ボールとの接点と前記軌道部材の前記転動溝上の前記ボールの中心とを結んだ線と、前記軌道部材の前記転動溝中心線とのなすブロック側挟み込み角をβとするとき、
α+β<180°を満足する運動案内装置。
【請求項2】
前記ブロックの前記ターン溝の前記ボールとの接点が、前記ボールの中心を通り前記軌道部材の前記転動溝中心線と直交する線上又はこの線よりも前記軌道部材側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記軌道部材の断面の輪郭曲線と前記ボールとの接点と前記ボールの中心とを結んだ線と、前記軌道部材の前記転動溝中心線とのなす軌道部材側面の形状角度をγとし、
前記ブロックの前記ターン溝と前記ボールとの接点と前記ボールの中心とを結んだ線と、前記軌道部材の前記転動溝中心線とのなすブロック側挟み込み角をδとするとき、
前記ブロックの前記ターン溝のターン開始点からγが0°になるまでの範囲において、γ+δ<180°を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記ブロックの前記ターン溝のターン開始点からγが0°になるまでの範囲において、前記ブロックの前記ターン溝と前記ボールとの接点が、前記ボールの中心を通り前記軌道部材の前記転動溝中心線と直交する線上又はこの線よりも前記軌道部材側に配置されることを特徴とする請求項3に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記軌道部材の前記転動溝の外側の一対の側面のうち、前記ボールに接する一方の側面が前記ボールに接しない他方の側面よりも前記ブロック側に突出することを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項6】
単一構造体の前記ブロックに少なくとも前記転動溝と前記ターン溝が連続的に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブルなどの可動体の直線運動又は曲線運動を案内するための運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テーブル等の可動体の直線運動又は曲線運動を案内するための運動案内装置が知られている(特許文献1参照)。運動案内装置は、軌道部材と、軌道部材に対して相対移動可能なブロックと、を備える。軌道部材とブロックとの間には、複数のボールが転がり運動可能に介在する。
【0003】
軌道部材は、長手方向に延びる転動溝を有する。ブロックは、軌道部材の転動溝に対向する転動溝を有すると共に、戻し部、ターン部を有する。
【0004】
軌道部材の転動溝とブロックの転動溝との間の転走路、戻し部、ターン部によって循環路が構成される。循環路には、複数のボールが配置される。軌道部材に対してブロックを相対移動させると、ボールが転走路を移動する。転走路を移動したボールは、ターン部に導かれ、その後、戻し部を反対方向に移動し、その後、もう一つのターン部から転走路に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2008/041589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の運動案内装置においては、ターン部におけるボールの動きが良好でないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、ターン部におけるボールの動き、ターン部の繰り返し耐久性などの性能を向上させることができる運動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、長手方向に延びる転動溝を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動溝に対向する転動溝、戻し部、前記転動溝と前記戻し部に接続されるターン部を有するブロックと、前記軌道部材の前記転動溝と前記ブロックの前記転動溝との間の転走路、前記戻し部、前記ターン部を含む循環路に配置される複数のボールと、を備え、前記軌道部材の前記転動溝の壁面と前記ブロックの前記ターン部の少なくとも一部のターン溝の壁面との間で前記ボールを挟み込んで前記転走路を移動した前記ボールの軌道を変化させ、前記軌道部材の前記転動溝の有効端と前記軌道部材の前記転動溝上の前記ボールの中心とを結んだ線と、前記軌道部材の転動溝中心線とのなす軌道部材側挟み込み角をα、前記ブロックの前記ターン溝と前記ボールとの接点と前記軌道部材の前記転動溝上の前記ボールの中心とを結んだ線と、前記軌道部材の前記転動溝中心線とのなすブロック側挟み込み角をβとするとき、α+β<180°を満足する運動案内装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、軌道部材からボールに働く反力とブロックからボールに働く反力の合力に、ターン溝の軌道方向への合力成分を発生させることができる。転走路を移動したボールを円滑にターン溝に導くことができるので、ターン溝におけるボールの動き、ターン溝の繰り返し耐久性などの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の運動案内装置の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は本実施形態の運動案内装置の平面図、
図2(b)は側面図である。
【
図4】
図4(a)は本実施形態のブロックの底面側斜視図を示し、
図4(b)は反転させた本実施形態のブロックの上面側斜視図を示す。
【
図5】本実施形態のブロックの加工方法を示す模式図である。
【
図6】本実施形態のブロックのターン溝の断面形状の変化を示す断面図である。
【
図7】本実施形態のαとβを説明する図(
図6(a)の要部拡大図)である。
【
図9】本実施形態のγとδを説明する図(
図6(b)の要部拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の運動案内装置を詳細に説明する。ただし、本発明の運動案内装置は種々の形態で具体化することができ、明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の運動案内装置1の斜視図を示す。
図2は、本実施形態の運動案内装置1の側面図を示す。
図3は、本実施形態の運動案内装置1の正面図を示す。本実施形態の運動案内装置1は、軌道部材2と、軌道部材2に対して相対移動可能なブロック4と、を備えるリニアガイドである。軌道部材2とブロック4との間には、複数のボール3が転がり運動可能に介在する。ブロック4には、複数のボール3を循環させる循環路5が形成される。
【0013】
なお、以下では説明の便宜上、水平面に取り付けた軌道部材2を長手方向から見たときの方向、すなわち
図1の上下、左右、前後の方向を用いて、運動案内装置1の構成を説明する。もちろん、運動案内装置1の配置はこれに限られるものではなく、軌道部材2を垂直面に取り付けてもよいし、運動案内装置1を上下反転させてもよい。
【0014】
図1に示すように、軌道部材2は、直線状に延びるレールである。軌道部材2は、上面2a、左右一対の側面2b、底面2cを有する。軌道部材2の側面2bには、長手方向に延びる転動溝7が形成される。転動溝7はゴシックアーチ形状である。転動溝7はサーキュラーアーク形状でもよい。軌道部材2の上面2aには、軌道部材2をベースに取り付けるための複数の取付け穴6が形成される。なお、軌道部材2は曲線状に延びていてもよい。転動溝7の数は2条、4条等適宜設定することができる。また、転動溝7の配置も適宜設定することができる。
【0015】
図3に示すように、ブロック4は、断面略U字状であり、軌道部材2を跨るように形成される。ブロック4は、軌道部材2の上面2aに対向するウェブ部4aと、ウェブ部4aの左右方向の両端部から垂下し、軌道部材2の側面2bに対向する一対の袖部4bと、を有する。本実施形態の運動案内装置1のブロック4は、単一構造体である。
図1に示すように、ブロック4には、転動溝8、戻し部9、ターン部10が形成される。転動溝8が軌道部材2の転動溝7に対向する。
【0016】
図4(a)はブロック4の底面側斜視図を示し、
図4(b)は反転させたブロック4の上面側斜視図を示す。ブロック4の袖部4bには、転動溝8が形成される。転動溝8はゴシックアーチ形状である。転動溝8はサーキュラーアーク形状でもよい。
【0017】
ブロック4のウェブ部4aには、転動溝8と略平行に戻し部9が形成される。戻し部9は、軌道部材2に向かって開口する溝である。以降、戻し部9を戻し溝9という。ブロック4には、転動溝8と戻し溝9に接続されるターン部10がブロック4の袖部4bからウェブ部4aに至って形成される。ターン部10は、軌道部材2に向かって開口する溝である。以降、ターン部10をターン溝10という。
【0018】
なお、戻し溝9は貫通穴であってもよい。また、ターン溝10は、少なくともターン開始点(
図6(a)参照)からターン頂点(
図6(e)参照)までの区間で溝であればよく、ターン頂点(
図6(e)参照)から戻し溝9までの区間は貫通穴であってもよい。
【0019】
図3に示すように、軌道部材2の転動溝7の外側の一対の側面11,12のうち、ボール3に接する上側の側面11がボール3に接しない下側の側面12よりもブロック4側に突出する。軌道部材2の上側の側面11の断面形状は、略円弧状である。ブロック4のターン溝10は、この上側の側面11に沿って湾曲する。ターン溝10は略J字状である。
【0020】
図5に示すように、ブロック4の転動溝8(
図4参照)、戻し溝9、ターン溝10は、エンドミル等の切削工具14を用いてブロック4に連続的に形成される。転動溝8、ターン溝10、戻し溝9の接続部分は、シームレスであり、継ぎ目は存在しない。詳しくは後述するが、ターン溝10は開口部に向かってアンダーカット形状に形成される。このため、切削工具14には、略球状の頭部とくびれた首部とを有するロリポップエンドミルを用いるのが望ましい。なお、切削工具14はエンドミルに限られることはない。また、切削以外に鍛造、プレスなどの塑性加工によってブロック4に転動溝8、ターン溝10、戻し溝9を連続的に形成してもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すように、軌道部材2の転動溝7とブロック4の転動溝8の間の転走路、戻し溝9、ターン溝10によって、循環路5が構成される。循環路5には、複数のボール3が配置される。軌道部材2に対してブロック4を相対移動させると、ボール3が転走路を転がる。転走路の一端まで移動したボール3は、ターン溝10に導かれ、戻し溝9を反対方向に移動した後、もう一つのターン溝10から転走路の他端に導かれる。
【0022】
図6は、ブロック4のターン溝10の断面形状の変化を示す。
図6(a)は
図2(b)のa-a線断面図を示し、
図6(b)は
図2(b)のb-b線断面図を示し、
図6(c)は
図2(b)のc-c線断面図を示し、
図6(d)は
図2(b)のd-d線断面図を示し、
図6(e)は
図2(b)のe-e線断面図を示す。
【0023】
図6(a)は、ターン溝10のターン開始点を示す。転走路を移動したボール3は、
図6(a)に示すターン溝10のターン開始点に至る。ターン開始点に至ったボール3は、軌道部材2の転動溝7の壁面とブロック4のターン溝10の壁面との間に挟まれて、
図6(a)から
図6(b)に示すように、その軌道を図中右側に変化させる。
【0024】
図7は、
図6(a)の要部拡大図を示す。軌道部材2の転動溝7はゴシックアーチ形状である。すなわち、転動溝7は、ボール3の半径よりもわずかに大きい半径rの2つの円弧を備える。半径rの2つの円弧の中心はdである。ボール3は転動溝7に2点で接触する。Oは転動溝7上にあるボール3の中心である。転動溝7に対するボール3の接触角はθである。転動溝7の有効範囲は、半径rが一定の円弧部分である。eは転動溝7の有効端(有効範囲の端)である。転動溝中心線Gは、転動溝7の中心線である。この実施形態では、半径rの2つの円弧の交点fとボール3の中心Oとを結んだ線である。
【0025】
本実施形態の運動案内装置1は、下記の(1)式を満足する。
α+β<180°…(1)
【0026】
(1)式において、αは、軌道部材2の転動溝7の有効端eと軌道部材2の転動溝7上のボール3の中心Oとを結んだ線Hと、軌道部材2の転動溝中心線Gとのなす軌道部材側挟み込み角である。なお、ボール3は軌道部材2の転動溝7に接触角θで接触するが、ターン溝10の軌道方向への合力成分B(
図6(a)参照)を確実に発生させるために、αには、軌道部材2の転動溝7の有効端eと軌道部材2の転動溝7上のボール3の中心Oとを結んだ線Hと、軌道部材2の転動溝中心線Gとのなす角αを使用する。
【0027】
βは、軌道部材2の転動溝7上のボール3の中心Oとブロック4のターン溝10とボール3との接点aとを結んだ線Iと、軌道部材2の転動溝中心線Gとのなすブロック側挟み込み角である。
【0028】
本実施形態の運動案内装置1は、(1)式を満足することにより、ボール3をターン溝10に円滑に導くことができる。以下にその理由を説明する。
【0029】
図6(a)に示すように、軌道部材2の転動溝7の壁面とブロック4のターン溝10の壁面との間に挟み込まれたボール3には、軌道部材2側から矢印A1で示す反力が働き、ブロック4側から矢印A2で示す反力が働く。(1)式を満足することにより、2つの反力の合力には、ターン溝10の軌道方向への合力成分Bが発生する。この合力成分Bによって、転走路を移動したボール3を円滑にターン溝10に導くことができるのである。
【0030】
図8は、(1)式を満足しない比較例を示す。α+β≧180°の場合、軌道部材2側からボール3に働く反力とブロック4側からボール3に働く反力の合力は、ターン溝10の軌道方向と反対方向の合力成分B´を有する。このため、ボール3をターン溝10の軌道方向に導きにくくなる。
【0031】
再び
図7に示すように、本実施形態の運動案内装置1において、ブロック4のターン溝10のボール3との接点aは、ボール3の中心Oを通り軌道部材2の転動溝中心線Gと直交する線J上又はこの線Jよりも軌道部材2側に配置される。このため、ターン溝10の断面形状は、開口部に向かってアンダーカット形状になる。ターン溝10の断面形状には、図中クロスハッチングで示すアンダーカット部15(凸部)が形成される。そして、転動溝中心線Gと接点aとの距離Xは、ボール半径D/2以下になる。
【0032】
このように接点aを軌道部材2側に近づけることで、ブロック側挟み込み角βを小さくできるので、ターン溝10の軌道方向への合力成分Bをより大きくすることができる。
【0033】
図6に示すように、本実施形態の運動案内装置1は、ブロック4のターン溝10のターン開始点(
図6(a)参照)から軌道部材側面の形状角度γが0°になる(
図6(e)参照)までの範囲において、下記の(2)式を満足する。
γ+δ<180°…(2)
【0034】
(2)式において、
図6(b)及びその要部拡大図である
図9に示すように、γは、軌道部材2の断面の輪郭曲線とボール3との接点kとボール3の中心Oとを結んだ線Lと、軌道部材2の転動溝中心線Gとのなす角である。γの最大値はαである。δは、ブロック4のターン溝10とボール3との接点aとボール3の中心Oとを結んだ線Mと、軌道部材2の転動溝中心線Gとのなすブロック側挟み込み角である。
【0035】
本実施形態の運動案内装置1は、ターン開始点からγが0°になるまで(2)式を満足するので、ターン開始点からγが0°、すなわち線Lと転動溝中心線Gが平行になる(
図6(e)参照)までボール3にターン溝10の軌道方向への合力成分Bを働かせることができる。
【0036】
また、
図6に示すように、本実施形態の運動案内装置1において、ブロック4のターン溝10のターン開始点(
図6(a)参照)からγが0°になる(
図6(e)参照)まで、ブロック4のターン溝10とボール3との接点aは、ボール3の中心Oを通り軌道部材2の転動溝中心線Gと直交する線J上又はこの線Jよりも軌道部材2側に配置される。
【0037】
こうすることで、ブロック側挟み込み角δを小さくできるので、ターン溝10の軌道方向への合力成分Bを大きくすることができる。
【0038】
γが0°以下になると、ボール3は、
図6(e)に示すターン頂点を乗り超え、ブロック4のターン溝10によってのみ拘束されるようになる。ボール3は、後続のボール3に押されてターン溝10を移動し、戻し溝9に至る(
図3参照)。
【0039】
なお、軌道部材2の転動溝7はサーキュラーアーク形状でもよい。この場合、軌道部材2の転動溝中心線Gは、接触角線によって定義される。
【0040】
以上に本実施形態の運動案内装置1の構成と作用を説明した。本実施形態の運動案内装置1によれば以下の効果を奏する。
【0041】
転走路を移動してターン溝10のターン開始点(
図6(a)参照)に至ったボール3を軌道部材2の転動溝7とブロック4の転動溝8とで挟み込み、ボール3にターン溝10の軌道方向への合力成分Bを働かせることができる。このため、ターン溝10の繰り返し耐久性やボール3の動きなどの性能を向上させることができる。
【0042】
ターン溝10のボール3との接点aを線J上又は線Jよりも軌道部材2側に配置するので、ターン溝10の軌道方向への合力成分Bを大きくすることができる。
【0043】
ターン溝10のターン開始点からγが0°になるまでの範囲において、ボール3にターン溝10の軌道方向への合力成分Bを働かせることができる。
【0044】
ターン溝10のターン開始点からγが0°になるまでの範囲において、ブロック4のターン溝10とボール3との接点aが、線J上又は線Jよりも軌道部材2側に配置されるので、ターン溝10の軌道方向への合力成分Bを大きくすることができる。
【0045】
軌道部材2の転動溝7の外側の一対の側面11,12のうち、ボール3に接する一方の側面11がボール3に接しない他方の側面12よりもブロック4側に突出するので、ボール3に軌道方向への合力成分Bを働かせ易くなる。
【0046】
単一構造体のブロック4に転動溝8とターン溝10を連続的に形成するので、これらを継ぎ目なく繋げることができる。このため、ボール3の動きを良くすることができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化できる。
【0048】
例えば上記実施形態では、単一構造体のブロックに転動溝とターン溝を形成しているが、ブロックをブロック本体とブロック本体の端面に取り付けられる蓋部材とで構成し、ブロック本体に転動溝を形成し、蓋部材にターン溝を形成してもよい。
【0049】
上記実施形態では、総ボールの例を説明したが、ボール間にスペーサを介在させてもよい。
【0050】
上記実施形態では、軌道部材に断面略U字状のブロックが跨るアウターブロック式のリニアガイドの例を説明したが、断面略U字状のアウターレール内にインナーブロックが配置されるインナーブロック式のリニアガイドでもよい。
【0051】
上記実施形態では、運動案内装置がリニアガイドの例を説明したが、運動案内装置はボールスプラインでもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…運動案内装置、2…軌道部材、3…ボール、4…ブロック、7…軌道部材の転動溝、8…ブロックの転動溝、9…戻し溝(戻し部)、10…ターン溝(ターン部)、11…軌道部材の転動溝の外側の一方の側面、12…軌道部材の転動溝の外側の他方の側面、e…有効端、O…ボールの中心、H…軌道部材の転動溝の有効端eと軌道部材の転動溝上のボールの中心Oとを結んだ線、G…軌道部材の転動溝中心線、α…軌道部材側挟み込み角、a…ブロックのターン溝とボールとの接点、I…ブロックのターン溝とボールとの接点aと軌道部材の転動溝上のボールの中心Oとを結んだ線、β…ブロック側挟み込み角、J…ボールの中心Oを通り軌道部材の転動溝中心線Gと直交する線、k…軌道部材の断面の輪郭曲線とボールとの接点、L…軌道部材の断面の輪郭曲線とボールとの接点kとボールの中心Oとを結んだ線、γ…軌道部材側面の形状角度、M…ブロックのターン溝とボールとの接点aとボールの中心Oとを結んだ線、δ…ブロック側挟み込み角