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特開2024-79638フィルタ、フィルタ用成形型及びその成形型を用いたフィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079638
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】フィルタ、フィルタ用成形型及びその成形型を用いたフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20240604BHJP
   B21F 27/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B01D39/20 A
B21F27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201362
(22)【出願日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2022191181
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森 昌之
(72)【発明者】
【氏名】田野 正和
【テーマコード(参考)】
4D019
4E070
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA02
4D019BB02
4D019CA02
4D019CA10
4D019CB06
4E070AA03
4E070AB04
4E070AC09
4E070AD04
4E070BC13
4E070EA05
4E070FA01
4E070FA02
(57)【要約】
【課題】フィルタを通過する流体の圧力損失を抑制しつつ濾過面積の増大させることができ、フィルタを構成する部材の簡易化を図ることができるフィルタ、フィルタ用成形型及びその成形型を用いたフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】流路11を流れる流体に含まれる不純物を捕集するフィルタ1であって、流路を流れる流体の流れ方向9の上流側から下流側に向けて窄まる錐体形状の網状体からなるメッシュ部20と、前記メッシュ部の前記上流側の端部2aに設けられるリング部3とを備え、前記メッシュ部は、前記流体の流れ方向に最も突出した頂部21と、頂部に向かって延びる折り目が設けられた複数の襞を有したプリーツ部20とを備え、前記プリーツ部と前記頂部とが前記網状体(4)で形成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体に含まれる不純物を捕集するフィルタであって、
流路を流れる流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて窄まる錐体形状の網状体からなるメッシュ部と、前記メッシュ部の前記上流側の端部に設けられるリング部とを備え、
前記メッシュ部は、前記流体の流れ方向に最も突出した頂部と、前記頂部に向かって延びる折り目が設けられた複数の襞を有したプリーツ部とを備え、前記プリーツ部と前記頂部とが前記網状体で形成されることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記網状体は金属材からなり、
前記メッシュ部は、円形状の前記網状体をプリーツ絞り加工された円錐形状からなることを特徴とするフィルタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記リング部は、金属材からなり、前記メッシュ部の前記端部を表裏両側から挟持した状態でカシメ加工により前記メッシュ部と合体されることを特徴とするフィルタ。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記リング部は、樹脂材からなり、前記メッシュ部とは、インサート成形により一体とされていることを特徴とするフィルタ。
【請求項5】
流路を流れる流体に含まれる不純物を捕集する円錐形状のフィルタを構成する金網に複数の襞を形成するフィルタ用成形型であって、
襞を形成するための複数の凹部及び凸部を有する第1襞形成部と、前記円錐形状の最も突出した部位である頂部を形成し前記金網の略中央が配される第1頂部とを備えた第1型と、前記第1襞形成部の形状に合わせて略同形状に設けられるとともに複数の凹部及び凸部を有する第2襞形成部と、前記第1頂部の形状に合わせて設けられた第2頂部とを備えた第2型とを備え、
前記第1型と前記第2型とは、前記第1襞形成部と前記第2襞形成部との間に前記金網を介在させ型締めされる構成であることを特徴とするフィルタ用成形型。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1型は、前記第2型と接合される第1接合部位を有し、
前記第2型は、前記1型と接合される第2接合部位を有しており、
前記第1接合部位と前記第2接合部位とは、前記型締め時に互いに噛み合って回転しない噛み合わせ構造であることを特徴とするフィルタ用成形型。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のフィルタ用成形型を用いたフィルタの製造方法であって、
前記第1型の前記頂部の上に前記金網の略中央部位を配置する工程と、
前記第1型と前記第2型との間に前記金網を挟み込み、前記第1型と前記第2型とを型締めし、複数の襞を絞り形成する工程と、
前記襞が形成され円錐形状に形成された前記金網を成形型から取り出し、前記金網の縁部を両側から挟持するように金属板を円環状にカシメ加工する工程とを備えることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載のフィルタ用成形型を用いたフィルタの製造方法であって、
前記第1型の前記頂部の上に前記金網の略中央部位を配置する工程と、
前記第1型と前記第2型との間に前記金網を挟み込み、前記第1型と前記第2型とを型締めし、複数の襞を絞り形成する工程と、
前記襞が形成され円錐形状に形成された前記金網を成形型から取り出した後、樹脂成形型内に前記金網を設置し、インサート成形により円環状の樹脂製リング部と前記金網とを一体成形する工程とを備えることを特徴とするフィルタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を流れる流体に含まれる不純物を捕集するフィルタ、フィルタ用成形型及びその成形型を用いたフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなフィルタとしては、下記特許文献1及び下記特許文献2が挙げられる。 下記特許文献1には、エアーの導入側となる一方端部に設けられる環状固定蓋と、他方端部に設けられ環状固定蓋より大径の基台とを備え、環状固定蓋と基台との間に円錐台形状で複数の襞を有するフィルタ芯が設けられたフィルタが開示されている。下記特許文献2には、金属製のメッシュ体と、メッシュ体の一端部を閉じ内側に流体を導くための円孔が設けられた導入部と、メッシュ体の他端部を閉じる支持部とを備え、メッシュ体の径が一端部から他端部に向けて漸減しているフィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3107301号公報
【特許文献2】特開2021-30143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのようなフィルタの課題として、フィルタを通過する流体の圧力損失を極力抑えつつ濾過面積をできる限り大きく確保すること及びフィルタを構成する部材を簡易化することが挙げられる。
【0005】
上記特許文献1に開示されているフィルタは、フィルタ芯に襞があるため、濾過面積を襞がないものに比べて大きく確保できるが、当該フィルタは、流体の圧力損失を抑制するため、フィルタ芯に至る前のエアーの導入側に渦巻き状の導流片が放射状に設置された環状部を備えることを前提としている。また上記特許文献1に開示されているフィルタは、プラスチックからなる基台の底縁に形成された環状溝に接着剤を注ぎこみ、そこにフィルタ芯を固定することが必要な上、フィルタの部品点数が多い構成である。
【0006】
上記特許文献2に開示されているフィルタは、メッシュ本体とメッシュ本体を支持する樹脂製の支持体とがインサート成形によって形成され、支持体には複数の支柱部が設けられているため、流体が気体であると支柱部や下流側の支持部の存在によって流体の圧力損失を低減することが難しい。また上記特許文献2に開示されているフィルタは、導入部側に設けられたフランジ部にOリングを装着し流路に組付けられる構成としているので、導入部の内径が小さくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルタを通過する流体の圧力損失を抑制しつつ濾過面積を増大させることができ、フィルタを構成する部材の簡易化を図ることができるフィルタ、フィルタ用成形型及びその成形型を用いたフィルタの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のフィルタは、流路を流れる流体に含まれる不純物を捕集するフィルタであって、流路を流れる流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて窄まる錐体形状の網状体からなるメッシュ部と、前記メッシュ部の前記上流側の端部に設けられるリング部とを備え、前記メッシュ部は、前記流体の流れ方向に最も突出した頂部と、前記頂部に向かって延びる折り目が設けられた複数の襞を有したプリーツ部とを備え、前記プリーツ部と前記頂部とが前記網状体で形成されることを特徴とする。
【0009】
上記フィルタにおいて、前記網状体は金属材からなり、前記メッシュ部は、円形状の前記網状体をプリーツ絞り加工された円錐形状からなるものとしてもよい。また上記フィルタにおいて、前記リング部は、金属材からなり、前記メッシュ部の前記端部を表裏両側から挟持した状態でカシメ加工により前記メッシュ部と合体されてもよい。さらに上記フィルタにおいて、前記リング部は、樹脂材からなり、前記メッシュ部とは、インサート成形により一体とされてもよい。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るフィルタ用成形型は、流路を流れる流体に含まれる不純物を捕集する円錐形状のフィルタを構成する金網に複数の襞を形成するフィルタ用成形型であって、襞を形成するための複数の凹部及び凸部を有する第1襞形成部と、前記円錐形状の最も突出した部位である頂部を形成し前記金網の略中央が配される第1頂部とを備えた第1型と、前記第1襞形成部の形状に合わせて略同形状に設けられるとともに複数の凹部及び凸部を有する第2襞形成部と、前記第1頂部の形状に合わせて設けられる第2頂部とを備えた第2型とを備え、前記第1型と前記第2型とは、前記第1襞形成部と前記第2襞形成部との間に前記金網を介在させ型締めされる構成であることを特徴とする。
【0011】
上記フィルタ用成形型は、前記第1型は、前記第2型と接合される第1接合部位を有し、前記第2型は、前記1型と接合される第2接合部位を有しており、前記第1接合部位と前記第2接合部位とは、前記型締め時に互いに噛み合って回転しない噛み合わせ構造としてもよい。
【0012】
上記フィルタ用成形型を用いた本発明のフィルタの製造方法は、前記第1型の前記頂部の上に前記金網の略中央部位を配置する工程と、前記第1型と前記第2型との間に前記金網を挟み込み、前記第1型と前記第2型とを型締めし、複数の襞を絞り形成する工程と、前記襞が形成され円錐形状に形成された前記金網を成形型から取り出し、前記金網の縁部を両側から挟持するように金属板を円環状にカシメ加工する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
また上記フィルタ用成形型を用いた本発明のフィルタの製造方法は、前記第1型の前記頂部の上に前記金網の略中央部位を配置する工程と、前記第1型と前記第2型との間に前記金網を挟み込み、前記第1型と前記第2型とを型締めし、複数の襞を絞り形成する工程と、前記襞が形成され円錐形状に形成された前記金網を成形型から取り出した後、樹脂成形型内に前記金網を設置し、インサート成形により円環状の樹脂製リング部と前記金網とを一体成形する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィルタ、フィルタ用成形型及びその成形型を用いたフィルタの製造方法は、フィルタを通過する流体の圧力損失を抑制しつつ濾過面積を増大させることができ、フィルタを構成する部材の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るフィルタを模式的に示す概略側面図である。
図2】同実施形態に係るフィルタを構成する各部材及び製造工程を説明するための模式図である。(a)は金網打ち抜き工程前の金網を示す平面図、(b)は金網打ち抜き工程後の金網を示す平面図、(c)はメッシュ部形成工程を経て得たメッシュ部を示す斜視図、(d)はリング部形成工程を経て得たリング部を示す斜視図、(e)は一体加工工程を経て得たフィルタを示す斜視図である。
図3】同実施形態に係るフィルタを構成するリング部の製造工程を説明するための模式図である。(a)は金属板打ち抜き工程前の金属板を示す平面図、(b)は金属板打ち抜き工程後の金属板を示す平面図、(c)は金属板打ち抜き工程で打ち抜かれた金属板を示す斜視図、(d)は折り曲げ加工工程を経て得たリング部を示す側面図及び一部拡大断面図である。
図4】同実施形態に係るフィルタ用成形型を説明するために当該成形型を模式的に示した斜視図である。
図5】(a)は同実施形態に係るフィルタ用成形型の第1型を説明するための図であり、図4のX-X’線矢視図、(b)は同フィルタ用成形型の第2型を説明するための図であり、図4のY-Y’線矢視図である。
図6】同実施形態に係るフィルタの製造工程を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係るフィルタを模式的に示す概略断面図であり、(a)はZ部拡大断面図、(b)はリング部3の変形例を示す図であり、Z部に対応する断面図である。
図8図7(a)に示すフィルタを構成する各部材及び製造工程を説明するための模式図である。(a)は金網打ち抜き工程前の金網を示す平面図、(b)は金網打ち抜き工程後の金網を示す平面図、(c)はメッシュ部形成工程を経て得たメッシュ部を示す斜視図、(d)はリング部一体成形工程を経て得たフィルタを示す斜視図である。
図9図7(a)に示すフィルタ用成形型を説明するために当該成形型を模式的に示した斜視図である。
図10図7(a)に示すフィルタの製造工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0017】
本実施形態に係るフィルタ1は、流路11を流れる流体に含まれる不純物を捕集するフィルタである。フィルタ1は、流路11を流れる流体の流れ方向9(図1参照)の上流側から下流側に向けて窄まる錐体形状の網状体からなるメッシュ部2と、メッシュ部2の上流側の端部2aに設けられるリング部3とを備える。メッシュ部2は、流体の流れ方向9に最も突出した頂部21と、頂部21に向かって延びる折り目が設けられた複数の襞を有したプリーツ部20とを備え、プリーツ部20と頂部21とが網状体(4)で形成される。以下、詳述する。
【0018】
<第1実施形態>
まず、図1図3を参照しながら本実施形態に係るフィルタ1について説明する。図に示すフィルタ1は、適用例のひとつとして、車両用の燃料電池エアフィルタに適用されるフィルタの一例を示している。フィルタ1は、中空の円筒状の配管10内に、リング部3の外筒部30の側面30aが当接して内嵌めされて装着される。よって、配管10内への組み付けにおいて、リング部3の側面30aを内壁面10aに弾接させて強固に装着するためのOリングなどが不要となるため、流体の導入側の開口(後記するメッシュ部2の内径)が狭まらず大きく確保できる。配管10内には、大風量で吸気用の空気が流体として流通し、フィルタ1は、配管10内を流通する空気中に含まれる異物を捕捉する。フィルタ1は、金属材製(具体的には、ステンレス製或いは真鍮製)で円錐体形状の網状体からなるメッシュ部2と、メッシュ部2の上流側の端部2aに設けられる円環状のリング部3とを備える。よってフィルタ1を装着する際には、リング部3がメッシュ部2よりも上流側に配置されるように装着する。メッシュ部2は、流体の流れ方向9に最も突出した頂部21と、複数の襞20aを有したプリーツ部20とを備える。襞20aには、流体の流れ方向9に沿うとともに頂部21に向かって延びる折り目が設けられている。また、頂部21には、折り目が設けられておらず、椀状に形成されている。
【0019】
メッシュ部2は、円形状の網状体(4)をプリーツ絞り加工された円錐形状からなり、プリーツ部20は、山部20aa、谷部20ab及び側面部20acにより構成される複数の襞20aと、上流側の端部2aに設けられる複数のマチ(襠)部20bとを備える、。プリーツ部20に設けられる襞20a及びマチ部20bの数は、装着される配管10の内径寸法に応じて設けられ、プリーツ部20を構成する襞20aの数は限定されない。襞20aの幅寸法は、端部2a側の幅寸法を最大とし、頂部21に向けて漸次細くなるように(幅小になるように)また均等な幅のプリーツとなるように形成される。プリーツ部20の側面部20acの形状は、略三角形状に形成されている。山部20aaと谷部20abの間またメッシュ部2の端部2a側は、谷部20abとなる折り目の端部で隙間が形成されないようにマチ(襠)部20bが複数設けられ、マチ部20bによって折り目がふさがれている。図では、プリーツ部20を構成する襞20aの数が16本(山部20aa、谷部20ab及びマチ部20bのそれぞれが16本)で、内径が40mmの配管10に装着されるフィルタ1を示している。
【0020】
上記構成によれば、円錐形状とすることで捕集した異物を頂部21に集束させることができる。またメッシュ部2が金網からなるので、強度を確保できる。さらにメッシュ部2が円形状の金網をプリーツ絞りされた円錐形状からなるので、溶接部位や接着による接合部位等、継ぎ目のないものにすることができ、メッシュ部2での圧力損失を抑えることができる。また円形状の金網を本実施形態のように均等なプリーツ加工せず、円錐形に絞ると金網に重なり部(皺)が多く生じ、結果として濾過面積を減らすことになり、かえって圧力損失を大きくしてしまうが、本実施形態のフィルタ1は後記する成形型によって均等に設けられたプリーツ部20を有するので、濾過面積の増大、圧力損失の低減を図ることができる。
【0021】
リング部3は、金属材製(具体的には、ステンレス製或いは真鍮製)で配管10の内壁面10a(図1参照)に内嵌めされる中空の円環状部材とされている。リング部3は、図2(d)及び図3(d)に示すように、流路11に装着された際に配管10の内壁面10aに当接する外筒部30と、内径側に絞りカシメ加工されるしぼり部31と、メッシュ部2の端部2aが挟み込まれる狭小の空間である空所部32と、流路11の内を流通する流体が通じる側に設けられる内筒部33とをを備える。メッシュ部2の端部2aは、リング部3の外筒部30と内筒部33との間に設けられる空所部32内に挿入され、外筒部30と内筒部33とによって、メッシュ部2の端部2aを表裏両側から挟持された状態でカシメ加工されることによりリング部3とメッシュ部2とが合体し、一体に形成されている。しぼり部31は、外筒部30の外径より小径とされ、メッシュ部2に大きな吸気圧がかかってもリング部3から外れないように設けられる。外筒部30は、外筒部30の最も大きい外径が配管10の内径より若干大とし、その側面30aが緩いテーパー加工(下流側に向けて次第に縮径する加工)が施されるものとすれば、配管10内に締まり嵌めされ、配管10に強固に固定される。しぼり部31には、下流側に向けて次第に縮径するテーパー加工が施されており、これにより、しぼり部31が配管10内にリング部3を挿入し装着する際に入れ易くするための導入部となる。空所部32の寸法は、メッシュ部2の端部2aが挟持される空間を確保できる大きさであればよい。
【0022】
上記構成によれば、メッシュ部2の端部2aを両側からリング部3の外筒部30が端部2aを挟持した状態でカシメ加工されるので、網状体のメッシュ部2の端部2aがほつれることなく、リング部3と強固に一体化できる。またリング部3が金属材からなるので、流路11内に内嵌される場合は、流路11内にフィルタ1を強固に固定することができる。さらにリング部3が金属材からなるので、配管10が樹脂製である場合の変形を抑制することができる。
【0023】
発明者は、プリーツ部20の襞20aの本数を変えたフィルタを複数用意し、内径が同じ配管を用いて、 2000l/min の高流量の空気を配管内に送り、フィルタを通じる空気の圧力損失及び濾過面積を評価する試験を行った。試験の結果、プリーツ部20の襞20aの数を増やせば増やすほど、濾過面積は増え、圧力損失も低減することがわかった。またフィルタ1としての強度も襞20aの数を増やせば増やすほど、強度が増すこともわかった。しかし、山部20aaと谷部20abとが明確な折り目を有し、それぞれを均等に形成するには、襞20aの数を増やすにも限度がある。発明者が複数試作したところ、リング部3から頂部21までの高さ寸法が50mm~55mmでリング部3の径が40mm~50mmの場合、襞20aの数は16本程度とすると、図1等に示す均等なプリーツ部20を構成でき、上記効果を発揮するものが得られた。また発明者は、扇型の金属材製の網状体を用意し円錐形状とし接合部分を重ねてシーム溶接し、リング部3に相当する部位をインジェクション成型した内径が40mmの配管10に内嵌可能なフィルタを用意し、図1等に示す襞20aが16本のフィルタ1と同条件下で比較試験を行った。比較試験を行ったところ、圧力損失はフィルタ1の方が低い値を示した。濾過面積はフィルタ1の方が倍以上の濾過面積を確保できた。上記比較試験によって、網状体に重なった接合部位があることでフィルタを通過する流体に圧力損失が生じてしまうことがわかった。また上記比較試験によって、同じ円錐形状のフィルタであっても、襞20aを有することで濾過面積を増大できフィルタ機能の向上が図れることがわかった。
【0024】
本実施形態に係るフィルタ1によれば、流路11を流れる流体に含まれる不純物を捕集するメッシュ部2が円錐形状の金網2’(図2(c)参照)とされ、メッシュ部2を構成するプリーツ部20と頂部21とが一枚の金網2’で一体に形成されているため、流体の流れを阻害する部材がない。よって、フィルタ1を構成する部材の簡易化を図ることができるとともに、メッシュ部2を通過する流体の圧力損失を抑制することができ、不純物が錐体形状のメッシュ部2の頂部21に自ずと集まり、効率よく不純物を捕集することができる。またメッシュ部2が、複数の襞20aを有したプリーツ部20を備えているので、不純物を濾過する濾過面積を襞のない錐体形状のものと比べて大きく確保することができ、フィルタ性能の向上を図ることができる。さらに上記のとおり、メッシュ部2を構成するプリーツ部20と頂部21とが金網2’で形成されるので、フィルタ1を構成する部材の簡易化を図ることができ、メッシュ部2が複数の襞20aを有したプリーツ部20を備えているので、メッシュ部2の強度を確保できる。よって、流路11内に吸気圧の脈動が生じても、メッシュ部2が変形することを抑制できる。またメッシュ部2は流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて漸次窄まる円錐形状とされるので、流路11内にコンパクトにフィルタ1を構成することができる。
【0025】
次に図2図6を参照しながら、本実施形態に係るフィルタ1の製造に用いられる成形型及び製造方法について説明する。
【0026】
図4及び図5には、図1等に示すフィルタ1を構成するメッシュ部2にプリーツ絞り加工するための成形型6を示している。成形型6は、相対して設けられ接離自在に構成された第1型7と第2型8とを備えている。第1型7は、中型7Aと外型7Bとを有し、中型7Aと外型7Bとは別体で構成されている。外型7Bは、円筒形状をベースとした基台73と、基台73の一方面に設けられ第2型8と接合される第1接合部位72とを備える。第1接合部位72は、複数の第1凹部70bと、複数の第1凸部70aとを有する。基台73の中央部位には、円形状に刳り抜かれた貫通孔74が設けられる。中型7Aは、貫通孔74内に挿通されるとともに外型7Bに対して軸方向(図4の白抜き矢印D1参照)に相対移動自在に設けられる。基台73の下方側には、外型7Bをエアーで上下動させるための外筒(不図示)との隙間を塞ぐOリング(不図示)を嵌め込む溝部75が設けられている。中型7Aは、略円錐形状とされ、複数の均等な襞20aを有するプリーツ部20を形成する第1襞形成部70と、最も突出した部位であり金網2’ (図2(b)参照)の略中央が配されるとともに円錐形状のメッシュ部2の頂部21を形成する第1頂部71と、を備える。第2型8は、第1型7と接合される第2接合部位82と、第1襞形成部70の形状に合わせて略同形状に設けられるとともに複数の第2凹部80b及び第2凸部80aを有する第2襞形成部80と、第1頂部71の形状に合わせて設けられる第2頂部81とを備える。第1型7と第2型8との間に金網2’(図2(b)参照)を挟み込んで型締めすることで均等な襞20aを型押しする。
【0027】
第1襞形成部70は、金網2’の裏面側(フィルタ1となった後は、メッシュ部2の内面側)に直接接触し、メッシュ部2を構成する金網2’に折り目を付与し襞20aを形成する。第1襞形成部70は、山部20aaを形成するため突出して設けられた第1凸部70aと、谷部20abを形成するため窪んで設けられた第1凹部70bと、側面部20acを形成するため第1頂部71に向けて漸次先細となる略三角形で平坦面とされた第1側面形成部70cと、マチ部20bを形成するため第1凹部70bを頂点とした略2等辺三角形で平坦面とされた第1マチ形成部70dとを備える。第1頂部71は、円錐形状からなるメッシュ部2の最も突出した部位である頂部21を形成するため、円形状で平坦面とされ、この第1頂部71にメッシュ部2となる金網2’の略中央が配される。第1接合部位72は、第2型8の第2接合部位82と型締め時に互いに噛み合って回転しない噛み合わせ構造をなすように設けられる。第1型7の第1接合部位72には、側面視において略三角形状をなす第1接合凸部72aと第1接合凹部72bとが交互に連続して等間隔に設けられている。そして第2型8の第2接合部位82の第2接合凸部82aと、第1型7の第1接合部位72の第1接合凹部72bとが接合され、第2型8の第2接合部位82の第2接合凹部82bと、第1型7の第1接合部位72の第1接合凸部72aとが接合(凸と凹の接合)されるように構成される。
【0028】
第2襞形成部80は、金網2’の表面側(フィルタ1となった後は、メッシュ部2の外面側)に直接接触してメッシュ部2を構成する金網2’に折り目を付与し襞20aを形成する。第2襞形成部80は、図5(b)に示すように山部20aaを形成するため第1型7の第1凸部70aの形状に合わせて設けられる第2凸部80aと、谷部20abを形成するため第1凹部70bの形状に合わせて設けられる第2凹部80bと、側面部20acを形成するため第2頂部81に向けて漸次先細となり第1側面形成部70cの形状に合わせて設けられる第2側面形成部80cと、マチ部20bを形成するため第2凹部80bを頂点とした略2等辺三角形で平坦面とされた第2マチ形成部80dとを備える。第2頂部81は、円錐形状からなるメッシュ部2の最も突出した部位である頂部21を形成するため、円形状で平坦面とされ、型締め時には、この第2頂部81にメッシュ部2となる金網2’(4)の略中央が押し当てられる。
【0029】
以上の成形型6によれば、中型7Aの第1襞形成部70の上に金網2’をセンター合わせしてのせ、第1型7と第2型8とを型締めし、第1頂部71を備える中型7Aを第2型8内に押し上げれば、円錐形状で複数の襞20aを有する金網2’を皺や折り目を崩れさせることなく、一気に容易に成形することができる。具体的には、型締めにより、第1頂部71と第2頂部81の間に金網2’を挟んで、頂部21を形成することができる。また第1襞形成部70と第2襞形成部80との間に金網2’が挟まれることで、第1凸部70aと第2凸部80aとで襞20aの山部20aaを形成することができるとともに、第1凹部70bと第2凹部80bとで襞20aの谷部20abを形成することができる。さらに第1襞形成部70と第2襞形成部80との間に金網2’が挟まれることで、第1側面形成部70cと第2側面形成部80cとで皺の発生を抑制させながら襞20aの側面部20acを形成することができるとともに、第1マチ形成部70dと第2マチ形成部80dとでマチ部20bを形成することができる。またこの型締めにより、第2接合凸部82aと第1接合凹部72bとが接合され、第2接合凹部82bと第1接合凸部72aとが接合される。つまり、第1型7と第2型8とは型締め時に互いに噛み合って接合され成形型6が回転しない噛み合わせ構造であるので、金網2’に複数の襞20aを精度よく形成することができる。
【0030】
以上のフィルタ用成形型6を用いたフィルタ1の製造方法について、以下説明する。
<メッシュ部形成工程(S100~S103)>
帯状の長尺な金網4を用意し(図2(a)参照)、図2(b)に示すように円形状に打ち抜き加工する(金網打ち抜き工程・S100)。そして、この打ち抜いて形成された円形状(真円)の金網2’(4)を第1型7の第1襞形成部70の上に配置する。このとき、金網2’の略中央部位が第1頂部71の位置になるように載置する(金網設置工程・S101)。次に第1型7の上に第2型8を移動し第1型7と第2型8とを接合させ、金網2’を両者間に介在させた状態で、型締めを行う。これにより、金網2’は第1型7と第2型8との間に挟まれた状態となり、円形状の金網2’から一気に円錐形状のメッシュ部2を形成できるとともに、プリーツ絞り加工がなされ、金網2’に均等な襞20aを形成することができる(型締め・S102,襞形成工程・S103)。襞形成工程・S103を経て型開きし、第1型7から金網2’を取り出せば、図2(c)に示すメッシュ部2を得ることができる。
【0031】
<リング部形成工程(S200,S201)>
帯状の長尺な金属板5を用意し(図3(a)参照)、図3(b)及び図3(c)に示すようにドーナツ状(円形状の略中央を円形状に打ち抜いた形状)に打ち抜き加工(ブランク加工)する(金属板打ち抜き工程・S200)。打ち抜き加工の手法は特に限定されず、金型を用いてもよいし、レーザー加工で行ってもよい。次にドーナツ状の金属板3’の幅方向略中央部位から外径側と内径側とを折り曲げる折り曲げ加工(折り曲げ加工工程)と、しぼり部31を形成する絞り加工を行う。この折り曲げ加工により外筒部30と内筒部33の折り曲げ部位は、図3(d)に示す略U字形状となり、外筒部30と内筒部33との隙間が空所部32となる。以上により、外筒部30と、しぼり部31と、空所部32と、内筒部33とを備えたリング部3を得ることができる。
【0032】
<一体加工形成工程(S104,S105)>
こうして得たメッシュ部2の端部2aに、リング部3を端部2aの両側(表裏)から挟持した状態に被せて嵌め込む(はめ込み工程・S104)。そしてリング部3のしぼり部31をカシメ加工し端部2aが外れないようにメッシュ部2とリング部3とを一体にする(カシメ加工工程・S105)。
【0033】
以上の製造方法によれば、メッシュ部2を形成するための溶接加工等が不要なので、製造が容易であり、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0034】
<第2実施形態>
次にまずは図7、8を参照しながら、上記実施形態とは異なる実施形態に係るフィルタ1Aについて説明する。上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し同様の効果・構成について、詳細な説明は省略し、主に異なる点について説明する。
【0035】
フィルタ1Aは、中空で円筒状の配管10内に配される点は、第1実施形態と同様であるが、配管10の内壁面10aに段差部10cが設けられており、フィルタ1Aは段差部10cに係止される点で異なる。具体的には、図7(a)のZ部拡大断面図に示すように、配管10の内壁面10aは、段差部10cより上流側が下流側より大径に形成された大径面10bと、段差部10cより下流側が上流側よりも小径に形成された小径面10dとを有する。大径面10bの段差部10c近傍には、丸みを帯びた凹状に窪んだ窪み部10baが周方向に設けられている。この窪み部10baには、リング部3Aの本体部34の側面に形成された凸部35が嵌合し、これにより配管10内にフィルタ1Aが組付けられる構造(スナップフィット構造)になっている。よって、配管10内への組み付けにおいて、リング部3Aの側面を大径面10bに弾接させて強固に装着するためのOリングなどが不要となるため、流体の導入側の開口(メッシュ部2の内径)が狭まらず大きく確保できる。また、上記構造となっているので、配管10内に大風量の吸気用空気が流体として流通しても、フィルタ1Aが外れることなく、しっかりと配管10内に装着させることができる。なお、配管10内を流通する空気中に含まれる異物を捕捉する点は第1実施形態と同様である。
【0036】
フィルタ1Aは、金属材製(具体的には、ステンレス製或いは真鍮製)で円錐体形状の網状体からなるメッシュ部2と、メッシュ部2の上流側の端部2aに設けられる円環状で樹脂製のリング部3Aとを備える。よってフィルタ1Aを装着する際には、リング部3Aがメッシュ部2よりも上流側に配置されるように流路11に装着される。
【0037】
メッシュ部2は、頂部21と、複数の襞20aを有したプリーツ部20とを備え、円形状の金網2’(図8(a)及び図8(b)参照)をプリーツ絞り加工された円錐形状からなる点で第1実施形態と同様であるが、鍔状部22を備えている点で異なる。プリーツ部20は、山部20aa、谷部20ab及び側面部20acにより構成される複数の襞20aと、上流側の端部2aに設けられる複数のマチ(襠)部20bとを備える。プリーツ部20に設けられる襞20a及びマチ部20bの数は、装着される配管10の内径寸法に応じて設けられ、プリーツ部20を構成する襞20aの数は限定されない。襞20aの幅寸法は、端部2a側の幅寸法を最大とし、頂部21に向けて漸次細くなるように(幅小になるように)また均等な幅のプリーツとなるように形成され、プリーツ部20の側面の形状は、略三角形状に形成されている。鍔状部22は、図7(a)及び図8(c)に示すとおり、外向湾曲部22bと、挟持部22cとを有する。外向湾曲部22bは、メッシュ部2の外周側を外向きに山状となるように湾曲して折り曲げて形成されている。挟持部22cは、周方向の少なくとも表裏両面が一体成形されるリング部3Aによって挟み込まれるように平面状に形成されている。外向湾曲部22bの湾曲程度は、特に限定されない。
【0038】
上記構成によれば、第1実施形態と同様に円錐形状とすることで捕集した異物を頂部21に集束させることができる。またメッシュ部2が金網2’からなるので、強度を確保できる。さらにメッシュ部2が円形状の金網2’をプリーツ絞りされた円錐形状からなるので、溶接部位や接着による接合部位等、継ぎ目のないものにすることができ、メッシュ部2での圧力損失を抑えることができる。また本実施形態のフィルタ1Aは後記する成形型によって均等に設けられたプリーツ部20を有するので、濾過面積の増大、圧力損失の低減を図ることができる。
【0039】
リング部3Aは、樹脂材からなり、メッシュ部2とはインサート成形により一体とされている。リング部3Aは、図7(a)及び図8(d)に示すように、環状体からなる本体部34と、流路11に装着された際に配管10の大径面10bに形成された窪み部10baに嵌合する凸部35とを備える。凸部35は、本体部34の側面に周方向に沿って凸状に形成されている。メッシュ部2の端部2a及び挟持部22cは、リング部3Aによって完全に覆われ、一体に形成されている。上記構成によれば、メッシュ部2の端部2a及び挟持部22cはリング部3Aとインサート成形により一体とされているため、のメッシュ部2の端部2aがほつれることなく、リング部3と強固に一体化できる。
【0040】
図7(b)には、図7(a)に示すリング部3Aの変形例を示す。図7(a)に示すリング部3Aは、片側一部断面の形状が略方形状であるが、ここに示すリング部3A’は、流体の導入側の開口に位置する部位が湾曲して形成されている湾曲部36を備えている点で図7(a)のリング部3Aと異なる。よって図7(b)に示すリング部3A’は、メッシュ部2の鍔状部22の表裏全体を挟持するように形成されている。湾曲部36の湾曲度合いは特に限定されないが、メッシュ部2の外向湾曲部22bの湾曲度合いに応じるようにして形成してもよい。なお、メッシュ部2の構成は、図7(a)と同様であるので、説明を省略する。このようにリング部3A’に湾曲部36を備えたものであっても、フィルタ1Aを通過する流体をスムーズにメッシュ部2へと誘導でき、当該流体の圧力損失の低減を図ることができる。
【0041】
次に図8図10を参照しながら、第2実施形態に係るフィルタ1Aの製造に用いられる成形型及び製造方法について説明する。ここでも上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し同様の効果・構成について、詳細な説明は省略し、主に異なる点について説明する。
【0042】
まず図9には、図7(a)等に示すフィルタ1Aを構成するメッシュ部2にプリーツ絞り加工するための成形型6Aを示している。成形型6Aは、相対して設けられ接離自在に構成された第1型7と第2型8とを備えている。第1型7及び第2型8の構造、構成は、基本的に図4に示す成形型6と同様であるが、金網2’ (図8(b)参照)に鍔状部22を形成するための第1湾曲形成部70e及び第1鍔形成部70fを備えている点で相違する。第1型7は、中型7Aと外型7Bとを有し、外型7Bは、基台73と、第1接合部位72とを備える点、第1接合部位72は、第1接合凹部72bと、第1接合凸部72aとを有し、基台73の中央部位に、貫通孔74が設けられる点は上述の成形型6と同様である。中型7Aは、貫通孔74内に挿通されるとともに外型7Bに対して軸方向(図9の白抜矢印D2参照)に相対移動自在に設けられる。中型7Aは、略円錐形状とされ、複数の均等な襞20aを有するプリーツ部20を形成する第1襞形成部70と、最も突出した部位であり円形に刳り抜かれた金網2’の略中央が配されるとともに円錐形状のメッシュ部2の頂部21を形成する第1頂部71と、を備える。第2型8の基本的な構成も、上述の成形型6と同様であるので、説明を省略するが、第1型7と第2型8との間に金網2’を挟み込んで型締めしたときに鍔状部22を備えたものになるように、第2型8には、第1湾曲形成部70e及び第1鍔形成部70fに対応した第2湾曲形成部(不図示)及び第2鍔形成部(不図示)が形成されている点は成形型6の第2型8と相違する。
【0043】
第1襞形成部70は、金網2’の裏面側(フィルタ1Aとなった後は、メッシュ部2の内面側)に直接接触し、メッシュ部2を構成する金網2’に折り目を付与し襞20aを形成する。第1襞形成部70は、第1凸部70aと、第1凹部70bと、第1側面形成部70cと、第1マチ形成部70dと、第1湾曲形成部70eと、第1鍔形成部70fとを有する。第1凸部70a、第1凹部70b、第1側面形成部70c、第1マチ形成部70dは、上述の成形型6と同様であるので、説明を省略する。第1湾曲形成部70eは、鍔状部22の外向湾曲部22bを形成するため、内向きに窪んだ湾曲面に形成されている。第1鍔形成部70fは、メッシュ部2の鍔状部22の挟持部22cを形成するため、周方向に沿って環状の平坦状に形成されている。第1凸部70aと接合されるように第2凸部が形成されている。また、同様に第2襞形成部(不図示)には、第1凹部70bに対応して第2凹部が、第1側面形成部70cに対応して第2側面形成部が、形成されている。さらに第2襞形成部(不図示)には、第1マチ形成部70dに対応して第2マチ形成部が設けられ、第1湾曲形成部70eに対応して第2湾曲形成部が設けられている。
【0044】
第1頂部71は、円錐形状からなるメッシュ部2の最も突出した部位である頂部21を形成するため、円形状の平坦面に形成され、この第1頂部71にメッシュ部2となる円形状の金網2’の略中央が配される。第1接合部位72は、第2型8の第2接合部位82と型締め時に互いに噛み合って回転しない噛み合わせ構造をなすように設けられる。第1型7の第1接合部位72には、側面視において略三角形状をなす第1接合凸部72aと第1接合凹部72bとが交互に連続して等間隔に設けられている。そして第2型8の第2接合部位82の第2接合凸部82aと、第1型7の第1接合部位72の第1接合凹部72bとが接合され、第2型8の第2接合部位82の第2接合凹部82bと、第1型7の第1接合部位72の第1接合凸部72aとが接合(凸と凹の接合)されるように構成される。
【0045】
以上の成形型6Aによれば、上記成形型6と同様に中型7Aの第1襞形成部70の上に金網2’をセンター合わせしてのせ、第1型7と第2型8とを型締めし、第1頂部71を備える中型7Aを第2型8内に押し上げれば、円錐形状で複数の襞20aを有する金網2’を皺や折り目を崩れさせることなく、一気に容易に成形することができる。またこの型締めにより、第2接合凸部82aと第1接合凹部72bとが接合され、第2接合凹部82bと第1接合凸部72aとが接合される。つまり、第1型7と第2型8とは型締め時に互いに噛み合って接合され、成形型6Aが回転しない噛み合わせ構造であるので、金網2’に複数の襞20aとマチ部20bとを有するプリーツ部20と、外向湾曲部22bと挟持部22cとを有する鍔状部22を精度よく形成することができる。
【0046】
以上の成形型6Aを用いたフィルタ1Aの製造方法について、以下説明する。なお、以下では、図7(a)に示すリング部3Aについての製造方法について説明するが、図7(b)に示すリング部3A’も同様の製造方法を適用することができ、フィルタ1Aとして同様の効果を奏することは言うまでもない。
<メッシュ部形成工程(S300~S303)>
帯状の長尺な金網4を用意し(図8(a)参照)、図8(b)に示すように円形状に打ち抜き加工する(金網打ち抜き工程・S300)。そして、この打ち抜いて形成された円形状(真円)の金網2’を第1型7の第1襞形成部70の上に配置する。このとき、金網2’の略中央部位が第1頂部71の位置になるように載置する(金網設置工程・S301)。次に第1型7の上に第2型8を移動し第1型7と第2型8とを接合させ、金網2’を両者間に介在させた状態で、型締めを行う。これにより、金網2’は第1型7と第2型8との間に挟まれた状態となり、円形状の金網2’から一気に円錐形状のメッシュ部2を形成できるとともに、プリーツ絞り加工がなされ、複数の襞20a、複数のマチ部20bを皺や折り目を崩れさせることなく、一気に容易に成形することができる。またこのとき、メッシュ部2の端部2a側は、第1湾曲形成部70eと第2湾曲形成部(不図示)とによって外向きに湾曲して反って折り曲げ加工されるとともに第1鍔形成部70fと第2鍔形成部(不図示)によって平坦状の部位が形成され、外向湾曲部22b及び挟持部22cを有する鍔状部22を形成することができる(型締め・S302,襞形成工程・S303)。そして襞形成工程・S303を経て型開きし、第1型7から金網2’を取り出せば、図8(c)に示すメッシュ部2を得ることができる。
【0047】
<リング部一体成形工程(S304~S308)>
次にメッシュ部2とリング部3Aとをインサート成形により一体成形する成形型を用意し、この成形型(不図示)内にメッシュ部2を設置する(S304)。成形型を型閉めし(S305)、溶融樹脂を成形型のキャビティ内に充填し射出成形を行う(S306)。そしてリング部3Aを固化させ(S307)、その後、成形型を型開きし(S308)、メッシュ部2と一体に成形されたリング部3Aを取り出せば、フィルタ1Aを得ることができる。
【0048】
以上によれば、メッシュ部2とリング部3Aとを強固に一体成形することができる。またリング部3Aに設けられた凸部35の形成も成形型によって容易に形成することができる。またメッシュ部2の端部2aは樹脂材で覆われるので、ほつれが生じることを心配しなくてよい。さらにリング部3Aを樹脂材とすることで、種々形状のリング部3Aを形成することができ、組み付けられる配管10の構成に応じた形状とすることができる。
【0049】
本実施形態に係るフィルタ1Aにおいても、流路11を流れる流体に含まれる不純物を捕集するメッシュ部2が円錐形状の金網2’とされ、メッシュ部2を構成するプリーツ部20と頂部21とが一枚の金網2’で一体に形成されているため、流体の流れを阻害する部材がない。よって、フィルタ1Aを構成する部材の簡易化を図ることができるとともに、メッシュ部2を通過する流体の圧力損失を抑制することができ、不純物が錐体形状のメッシュ部2の頂部21に自ずと集まり、効率よく不純物を捕集することができる。また上記のとおり、メッシュ部2を構成するプリーツ部20と頂部21とが金網2’で形成されるので、フィルタ1Aを構成する部材の簡易化を図ることができ、メッシュ部2が複数の襞20aを有したプリーツ部20を備えているので、メッシュ部2の強度を確保できる。よって、流路11内に吸気圧の脈動が生じても、メッシュ部2が変形することを抑制できる。またメッシュ部2は流体の流れ方向の上流側から下流側に向けて漸次窄まる円錐形状とされるので、流路11内にコンパクトにフィルタ1Aを構成することができる。
【0050】
上述したフィルタ1,1Aの形状・構成は、図例に限定されるものではない。例えば、メッシュ部2は、一枚の網状体(4)からなるものであれば、金網に限定されず、合成樹脂材製であってもよいし、ゴム材製などであってもよい。またメッシュ部2は円錐形状に限定されず、先細の錐体状であってもよいため、角錐形状のメッシュ部2としてもよく、その形状は、装着される流路11の形状に応じて形成される。よって流路11を構成するものは図例の円筒状の配管10に限定されるものではない。また、リング部3,3A,3A’の形状・構成も図例に限定されない。例えばリング部3の外筒部30と内筒部33とによる断面形状は、上記実施形態のようなU字形状に限定されず、V字形状、J字形状としてもよく、要はメッシュ部2の端部2aを表裏両側から挟持できればよい。またリング部3A,3A’は、樹脂材からなるため、配管10の形状・構成に応じて、また配管10を流れる流体の圧力損失の低減を考慮して種々形状とすることができ、反り等の変形を防止し剛性を付与するリブを適宜設けてもよい。凸部35の形状も断面視において丸みのあるものに限定されない。要は、リング部3A,3A’の配管10への嵌合力を保持できる形状・構造であればよい。
【0051】
フィルタ1,1Aの製造方法も上述の製造方法に限定されず、さらに別の工程が加わってもよい。例えば、第1実施形態におけるフィルタ1の場合は、メッシュ部2とリング部3の製造工程の順番を限定するものではない。またメッシュ部2の製造方法についても、メッシュ部2を形成するための金網2’は方形状に切り、プリーツ絞り加工した後に、不要な箇所を切り取り、リング部3,3A,3A’と一体にしてもよい。またフィルタ1,1Aのメッシュ部2を形成する成形型6,6Aの構成・構造も図例に限定されず、第1接合部位72と第2接合部位82の構成・構造も、図例に限定されない。例えば、メッシュ部形成工程では、第1型7及び第2型8の外径部に切断刃を組み込み、型締めと同時に円形状にカットすることで、金網打ち抜き工程S100,S300、金網設置工程S101,S301、型締めS102,S302、襞形成工程S103,S303を同時に行うようにしてもよい。この場合、金網2’と中型7Aのセンター合わせの工程が不要になる。また、第1接合部位72と第2接合部位82の構成・構造は、型締め時に互いに噛み合って回転しない噛み合わせ構造であればよい。さらに上記実施形態では、外型7Bをエアーで上下動させる例を説明したが、エアーに限定されず、スプリングで上下動させてもよい。そして外型7Bが可動するのではなく、第2型8が可動する構成であってもよい。また配管10を流通する流体は、気体に限定されず、液体であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1A フィルタ
11 流路
2 メッシュ部
2a (上流側の)端部
20 プリーツ部
21 頂部
3,3A,3A’ リング部
4 金網(網状体)
5 金属板(鋼板)
6,6A 成形型
7 第1型
70 第1襞形成部
71 第1頂部
72 第1接合部位
8 第2型
80 第2襞形成部
81 第2頂部
82 第2接合部位
9 流れ方向


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10