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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079641
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】吸収剤
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G02B5/22
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201458
(22)【出願日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2022-0163988
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509179087
【氏名又は名称】エルエムエス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LMS Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒキョン
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吸収剤およびその用途を提供することができる。
【解決手段】有機系吸収剤として多様な溶媒および樹脂成分に対して優れた相溶性や溶解性を示し、耐熱性に優れ、高温条件や高温高湿条件で維持される場合にも光特性を安定に維持できる吸収剤を提供することができる。本出願は、上記吸収剤を適用し、所望の光特性が確保される吸収膜を提供することができる。本出願は、また、上記吸収剤または吸収膜の用途を提供することができ、例えば、上記吸収剤または吸収膜を含む光学フィルター、固体撮像素子および/または赤外線センサーを提供することができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表され、
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、A1~A3は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、L1は、-U1-T1-U2-T2-U3-であり、T1およびT2は、それぞれ独立して、酸素原子である、または存在せず、U1~U3は、それぞれ独立して、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基である、または存在せず、R1~R8のうちR1とR2、R1~R6、R3~R6、またはR5~R8は吸収団を形成し、R1~R8のうち前記吸収団を形成しない置換基は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基であり、前記化学式1の点線は、単結合または二重結合であり、かつ前記化学式1の二つの前記点線が全て二重結合を形成するわけではなく、二つの前記点線が共に単結合である場合には、前記化学式1のカチオン符号は存在しない、吸収剤。
【請求項2】
600nm~950nmの波長範囲内で吸収極大を示す、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項3】
モル質量が400g/mol~2,000g/molの範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項4】
5%熱分解温度が150℃以上である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項5】
前記化学式1中、A1~A3は、それぞれ独立して、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、またはアルコキシ基である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項6】
下記条件1~3のうちいずれか一つを満たす、請求項5に記載の吸収剤:
条件1:前記化学式1中、T1、T2、U1およびU3が存在せず、U2がアルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基;
条件2:前記化学式1中、U1およびU3が存在せず、T1およびT2のうちいずれか一つは酸素であり、他の一つは存在せず、U2がアルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基;
条件3:U3およびT2が存在せず、T1は酸素原子であり、U1およびU2が、それぞれ独立して、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基。
【請求項7】
1~R8のうち前記吸収団を形成しない置換基が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項8】
スクアリリウム系化合物である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項9】
下記化学式2で表され、
[化学式2]
【化2】
前記化学式2中、A4~A9は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基またはアリールアルキル基であり、L2およびL3は、それぞれ独立して、前記化学式1のL1と同じであり、R11~R16およびR21~R26は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアリールアルキルスルホニルアミノ基である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項10】
下記化学式3で表され、
[化学式3]
【化3】
前記化学式3中、A7~A12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、L4およびL5は、それぞれ独立して、化学式1のL1と同じであり、R31~R38およびR41~R48は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアリールアルキルスルホニルアミノ基である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項11】
下記化学式4で表され、
[化学式4]
【化4】
前記化学式4中、A13~A18は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、L6およびL7は、それぞれ独立して、化学式1のL1と同じであり、R51~R57およびR61~R67は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアリールアルキルスルホニルアミノ基である、請求項1に記載の吸収剤。
【請求項12】
樹脂成分と、請求項1に記載の前記吸収剤と、を含む組成物。
【請求項13】
前記樹脂成分が、環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、およびシリコーン樹脂からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記樹脂成分がシリコーン樹脂を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記樹脂成分100重量部に対して0.001~10重量部の前記吸収剤を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
溶媒をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
樹脂成分と、請求項1に記載の前記吸収剤と、を含む吸収膜。
【請求項18】
前記樹脂成分が、環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、およびシリコーン樹脂からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項17に記載の吸収膜。
【請求項19】
前記樹脂成分がシリコーン樹脂を含む、請求項17に記載の吸収膜。
【請求項20】
600nm~950nmの波長範囲内で吸収極大を示す、請求項17に記載の吸収膜。
【請求項21】
下記式1の△Aの絶対値が20%以下であり、
[式1]
△A=100×(Af-Ai)/Ai
前記式1中、Afは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持された前記吸収膜の吸収極大波長における透過率であり、Aiは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持される前の前記吸収膜の吸収極大波長における透過率であり、前記吸収極大波長は、600nm~950nmの波長範囲内に存在する、請求項17に記載の吸収膜:。
【請求項22】
下記式2の△λの絶対値が10%以下であり、
[式2]
△λ=100×(λf-λi)/λi
前記式2中、λfは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持された前記吸収膜の吸収極大波長であり、λiは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持される前の前記吸収膜の吸収極大波長であり、前記吸収極大波長は、600nm~950nmの波長範囲内に存在する、請求項17に記載の吸収膜。
【請求項23】
樹脂成分100重量部に対して0.001~10重量部の吸収剤を含む、請求項17に記載の吸収膜。
【請求項24】
基材層と、
前記基材層の一面または両面に形成された請求項17に記載の吸収膜と、を含む光学フィルター。
【請求項25】
請求項24に記載の光学フィルターを含む撮像装置。
【請求項26】
請求項17に記載の吸収膜を含む赤外線センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、吸収剤およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収剤、例えば赤外線領域の光を吸収できる吸収剤は、多様な用途に適用することができる。
【0003】
例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサーなどを用いた撮像装置や赤外線センサーなどは、近赤外線領域に対して感度を有するシリコンフォトダイオードなどを含むので、上記吸収剤を用いることができる。
【0004】
このような吸収剤を適用する方式は多様に存在するが、通常、溶剤に溶解した吸収剤と樹脂成分を混合したコーティング液を用いる方式を適用する。したがって、吸収剤は、上記溶剤および樹脂成分に対して優れた溶解性や相溶性を示すことが必要である。吸収剤の溶剤または樹脂成分に対する溶解性や相溶性が劣ると、上記吸収剤を適用した吸収膜に対して所望の分光特性を得ることができないか、吸収膜内で吸収剤が析出する現象などによって光特性の低下が発生する。しかしながら、多様な種類の溶媒および樹脂成分に対して同時に優れた溶解性や相溶性を示す吸収剤を確保することは難しい課題である。
【0005】
吸収剤は、無機系吸収剤と有機系吸収剤とに区分できるが、有機系吸収剤の場合、適用が容易であり、かつ吸収される光の波長の制御も容易であるため、効率的に目的とする光の透過率を減少させることができる。しかしながら、有機系吸収剤は、無機系吸収剤と比較して耐熱性が低いので、高温条件や高温高湿条件に晒した後、吸収剤または吸収剤を含む膜の光特性が劣化することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、吸収剤およびその用途を提供することを目的とする。本出願は、有機系吸収剤として多様な溶媒および樹脂成分に対して優れた相溶性や溶解性を示し、耐熱性に優れ、高温条件や高温高湿条件で維持される場合にも、光特性を安定に維持できる吸収剤を提供することを目的とする。また、本出願は、上記吸収剤を適用し、所望の光特性を確保することを目的とする。また、本出願は、上記吸収剤の用途を提供することを目的とし、例えば、上記吸収剤を用いて形成した吸収膜、光学フィルター、固体撮像素子および/または赤外線センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において言及する物性のうち、測定温度が結果に影響を及ぼす物性は、特に明記しない限り、常温で測定した結果である。用語常温とは、加温および減温しない自然そのままの温度であり、例えば、10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書において、温度の単位は、別段の定めがない限り、摂氏(℃)である。
【0008】
本明細書において言及する物性のうち、測定圧力が結果に影響を及ぼす物性は、特に明記しない限り、常圧で測定した結果である。用語常圧は、加圧および減圧しない自然そのままの圧力であり、通常、大気圧レベルの約740mmHg~780mmHg程度を意味する。
【0009】
本明細書において湿度が物性の測定結果に影響を及ぼす場合、当該物性は、常温および/または常圧状態で特に調節しない自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0010】
本出願において言及する光学特性(例えば、屈折率)が波長によって変わる場合、別段の定めがない限り、当該光学特性は、520nm波長の光に対する特性である。
【0011】
本出願において用語透過率、反射率、または吸収率とは、別段の定めがない限り、特定波長または所定領域の波長範囲内で確認した実際の透過率(実測透過率)、実際の反射率(実測反射率)または実際の吸収率(実測吸収率)を意味する。本明細書において用語透過率、反射率、または吸収率は、別段の定めがない限り、入射角0度を基準とする透過率、反射率または吸収率である。
【0012】
本出願において用語平均透過率とは、別段の定めがない限り、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら各波長の透過率を測定した後、測定された透過率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した透過率の算術平均である。
【0013】
本明細書において用語最大透過率とは、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の透過率を測定したときの最大透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した透過率のうち最も高い透過率である。
【0014】
本出願において用語平均反射率とは、別段の定めがない限り、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の反射率を測定し、測定された反射率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均反射率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した反射率の算術平均である。
【0015】
本明細書において用語最大反射率とは、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の反射率を測定したときの最大反射率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大反射率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した反射率のうち最も高い反射率である。
【0016】
本出願において用語平均吸収率は、別段の定めがない限り、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の吸収率を測定した後、測定された吸収率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均吸収率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した吸収率の算術平均である。
【0017】
本明細書において用語最大吸収率とは、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の吸収率を測定したときの最大吸収率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大吸収率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した吸収率のうち最も高い吸収率である。
【0018】
本明細書において入射角とは、評価対象表面の法線を基準とする角度である。例えば、光学フィルターの入射角0度における透過率は、光学フィルター表面の法線と実質的に平行な方向に入射した光に対する透過率を意味する。また、例えば、入射角40度は、上記法線と時計または反時計回りの方向に実質的に40度の角度を成す入射光に対する値である。このような入射角の定義は、透過率など他の特性にも同一に適用する。
【0019】
本明細書において用語アルキル基とは、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8、または炭素数1~4のアルキル基を意味する。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、または環状であってもよい。アルキル基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルキル基に対して適用する。
【0020】
本明細書において用語アルコキシ基とは、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8、または炭素数1~4のアルコキシ基を意味する。アルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルコキシ基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルコキシ基に対して適用する。
【0021】
本明細書において用語アルケニル基とは、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8、または炭素数2~4のアルケニル基を意味する。アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルケニル基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルケニル基に対して適用する。
【0022】
本明細書において用語アルキニル基とは、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8、または炭素数2~4のアルキニル基を意味する。アルキニル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルキニル基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルキニル基に対して適用する。
【0023】
本明細書において用語アリール基とは、芳香族炭化水素に由来する1価残基を意味し、アリール基は、炭素数6~36、炭素数6~30、炭素数6~24、炭素数6~18、または炭素数6~12のアリール基であってもよく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、またはナフチル基などであってもよい。アリール基も、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアリール基に対して適用する。
【0024】
本明細書において用語アリールアルキル基とは、少なくとも一つ以上のアリール基で置換されたアルキル基を意味し、この際、アルキル基とアリール基の具体的な種類は、それぞれ前述した通りである。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアリールアルキル基に対して適用する。
【0025】
本明細書において用語アルキリデン基とは、アルカンから2つの水素が除去された2価の官能基であり、水素原子がアルカンの一つの炭素から除去された官能基を意味する。このようなアルキリデン基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8、または炭素数1~4のアルキリデン基であってもよい。アルキリデン基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルキリデン基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルキリデン基に対して適用する。
【0026】
本明細書において用語アルキレン基とは、アルカンから2つの水素が除去された2価の官能基であり、水素原子がアルカンの互いに異なる2つの炭素からそれぞれ一つずつ除去された官能基を意味する。このようなアルキレン基は、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8、または炭素数2~4のアルキレン基であってもよい。アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルキレン基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルキレン基に対して適用する。
【0027】
本明細書において用語アルケニレン基とは、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8、または炭素数2~4のアルケニレン基であってもよい。アルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルケニレン基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルケニレン基に対して適用する。
【0028】
本明細書において用語アルキニレン基とは、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8、または炭素数2~4のアルキニレン基であってもよい。アルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルキニレン基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。この点は、特に明記しない限り、本明細書において言及するすべてのアルキニレン基に対して適用する。
【0029】
本出願は、吸収剤に関する。用語吸収剤は、任意の波長範囲の光を吸収できる化合物を意味する。
【0030】
本出願の吸収剤は、下記化学式1で表される化合物であるか、あるいは、化学式1で表される部位を含む化合物であってもよい。化学式1において、窒素原子に連結されているシリル基により、本吸収剤は、優れた耐熱性と共に目的とする光特性を示し、樹脂成分および/または溶媒と優れた相溶性を示すことができる。
[化学式1]
【0031】
【化1】
【0032】
化学式1中、A1~A3は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールアルキル基であってもよい。
【0033】
化学式1中、L1は、-U1-T1-U2-T2-U3-で表される2価の官能基であってもよい。上記2価の官能基において、T1およびT2は、それぞれ独立して、酸素原子であるか、存在せず、U1~U3は、それぞれ独立して、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基であるか、存在しなくてもよい。いずれかの符号が存在しないということは、当該符号の両側の原子が直接連結されることを意味する。例えば、T1が存在せず、他の要素が存在する場合、上記2価の官能基は、-U1-U2-T2-U3-で表される。
【0034】
化学式1のR1~R8のうち、R1とR2、またはR1~R6、またはR3~R6、またはR5~R8は、吸収団と連結される、あるいは、共に上記吸収団を形成してもよい。
【0035】
「吸収団と連結される、あるいは、吸収団を形成する」ということは、R1とR2、またはR1~R6、またはR3~R6、またはR5~R8が連結あるいは形成する構造によって本出願の吸収剤が全体的に所望の波長の光を吸収する特性を示すことを意味する。吸収団については後述する。
【0036】
化学式1のR1~R8のうち、上記吸収団と連結される、あるいは吸収団を形成しない他の置換基は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基でもよい。
【0037】
化学式1中、点線は、窒素と炭素の単一結合、または窒素と炭素の二重結合である。ただし、化学式1中、二つの点線がいずれも二重結合を形成するわけではない。すなわち、二重結合が存在する場合、二つの点線のうちいずれか一つは二重結合であり、他の一つは単結合である。また、化学式1の二つの点線が全て単結合である場合には、化学式1のカチオン符号は存在しない。
【0038】
上記吸収団とは、収剤が全体的に所望の波長の光を吸収可能な構造を有するための部位を意味する。例えば、吸収団は、いわゆる共鳴(Resonance)構造および/または共役(Conjugated)結合を有する骨格や構造であってもよい。
【0039】
吸収剤、特に有機系吸収剤による光の吸収は、基底状態(Ground state)と励起状態(Excited state)のエネルギー差△Eに起因するものと説明され、この差は、HOMO(Highest Unoccupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)のエネルギー差とも説明される。
【0040】
一般的に、有機系吸収剤は、光吸収効果を示すことができる吸収団として共鳴構造および/または共役結合を含む。このため、上記R1~R8のうち、R1とR2、またはR1~R6、またはR3~R6、またはR5~R8は、共鳴構造および/または共役結合を含んでおり、上記吸収剤が全体的に所望の光吸収特性を示すための骨格と連結される、あるいは共にこのような骨格を形成する。
【0041】
本出願において上記吸収団または骨格の具体的な種類は、特に制限されない。よく知られているように、共鳴効果(resonance effect)は、分子の孤立電子対と隣接するπ結合電子対間の相互作用を意味し、このような共鳴効果を起こす置換基または骨格は公知である。また、共役結合は、2個以上の二重結合が一つの単結合を間に置いて構成される系(system)であり、このような共役結合が増加するほど上記エネルギー差が小さくなり、吸収帯が長波長側に移動することが知られている。
【0042】
例えば、吸収団は、本出願の化合物が600nm~950nmの波長範囲内で吸収極大を示すための骨格や構造であってもよい。すなわち、上記化合物は、600nm~950nmの範囲内で吸収極大波長を示すことができる。吸収極大波長の下限は、他の例において600nm、610nm、620nm、630nm、640nm、650nm、660nm、670nm、680nm、690nm、700nm、710nm、720nm、730nm、740nm、750nm、760nm、770nm、780nm、または790nmであってもよい。また、吸収極大波長の上限は、950nm、940nm、930nm、920nm、910nm、900nm、890nm、880nm、870nm、860nm、850nm、840nm、830nm、820nm、810nm、800nm、790nm、780nm、770nm、760nm、750nm、740nm、730nm、720nm、710nm、700nm、690nm、680nm、670nm、660nm、650nm、640nm、630nm、620nm、または610nm程度であってもよい。吸収極大波長は、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下にあってもよい。
【0043】
前述したように、共鳴構造および共役結合は、化合物の基底状態(Ground state)と励起状態(Excited state)のエネルギー差△EまたはHOMO(Highest Unoccupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)のエネルギー差を決定し、このエネルギー差によって吸収極大波長が決定されるので、上述した範囲の吸収極大波長を本化合物が有することができるように吸収団の構造を決定することができる。
【0044】
化学式1のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、およびアミノ基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよいが、この際、置換される置換基としては、フッ素や塩素のようなハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0045】
化学式1中、A1~A3は、適切な例において、それぞれ独立して、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、またはアルコキシ基であるか、アルキル基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0046】
化学式1中、-U1-T1-U2-T2-U3-で表される2価の官能基は、適切な例において、下記条件1~3のうちいずれか一つを満たすことができる。
【0047】
例えば、上記2価の官能基は、T1、T2、U1、およびU3が存在せず、U2がアルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基またはアルキニレン基である官能基でもよい(条件1)。この場合、上記2価の官能基は、-U2-で表されてもよい。
【0048】
他の例において上記2価の官能基は、U1およびU3が存在せず、T1およびT2のうちいずれか一つが酸素であり、他の一つは存在せず、U2がアルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基でもよい(条件2)。この場合に、上記2価の官能基は、-O-U2-または-U2-O-で表される官能基となる。
【0049】
他の例において、上記2価の官能基は、U3およびT2が存在せず、T1は、酸素原子であり、U1およびU2が、それぞれ独立して、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基でもよい(条件3)。このような場合、上記官能基は、-U1-O-U2-で表される官能基となる。
【0050】
化学式1のR1~R8のうち、吸収団を形成しない、または吸収団と連結されない置換基は、適切な例において、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基であるか、水素、アルキル基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0051】
このような本出願の上記化合物(吸収剤)は、適切なレベルのモル質量(molar weight)を有していてもよい。例えば、上記モル質量の下限は、400g/mol、450g/mol、500g/mol、550g/mol、600g/mol、650g/mol、700g/mol、または750g/mol程度であってもよい。モル質量の上限は、2,000g/mol、1,900g/mol、1,800g/mol、1,700g/mol、1,600g/mol、1,500g/mol、1,400g/mol、1,300g/mol、1,200g/mol、1,100g/mol、1、000g/mol、950g/mol、900g/mol、850g/mol、または800g/mol程度であってもよい。モル質量は、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下であってもよい。
【0052】
上記吸収剤は、優れた耐熱性を有していてもよい。例えば、上記吸収剤は、5%熱分解温度(以下、「Td5%」という)が所定範囲内であってもよい。例えば、上記吸収剤のTd5%の下限は、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、255℃、または260℃程度であってもよい。上記Td5%の上限は、400℃、380℃、360℃、340℃、320℃、300℃、280℃、275℃、270℃、265℃、260℃、255℃、または240℃程度であってもよい。上記Td5%は、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下でもよい。
【0053】
Td5%とは、TGA(Thermogravimetric analysis)分析を通じて求められる値であり、25℃~800℃の温度範囲、昇温速度10℃/分、および60cm3/分の窒素(N2)雰囲気の条件で確認される重量減少(Weight loss)95%における値(Td5%)である。
【0054】
本出願の吸収剤は、一例において、いわゆるスクアリリウム(squarylium)系化合物であってもよい。すなわち、化学式1の構造は、上記吸収団と共にスクアリリウム(squarylium)系化合物の骨格を与えることができる。
【0055】
この場合に、上記吸収剤は、一つの例において、下記化学式2で表される化合物であってもよい。
[化学式2]
【0056】
【化2】
【0057】
化学式2の構造は、化学式1の構造においてR1~R6、R3~R6、またはR5~R8が吸収団と連結される、あるいは、吸収団を形成することで構成される構造であってもよい。
【0058】
化学式2中、A4~A9は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールアルキル基であってもよい。
【0059】
化学式2中、L2およびL3は、それぞれ独立して、化学式1のL1と同じ置換基(適切な例を含む)であってもよい。
【0060】
化学式2中、R11~R16およびR21~R26は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アミノ基、またはアリールアルキルスルホニルアミノ基であってもよい。
【0061】
化学式2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、およびアミノ基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよいが、この際、置換される置換基としては、フッ素や塩素のようなハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0062】
化学式2中、A4~A9は、適切な例において、それぞれ独立して、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、若しくはアルコキシ基である、またはアルキル基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0063】
化学式2中、R11~R16およびR21~R26は、適切な例において、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、若しくはアミノ基である、または水素、アルキル基、アルキルスルホニルアミノ基、若しくはアミノ基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0064】
化学式2の化合物は、上述した吸収極大波長、モル質量、および/またはTd5%を示してもよい。
【0065】
他の例において上記吸収剤は、下記化学式3で表される化合物であってもよい。
[化学式3]
【0066】
【化3】
【0067】
化学式3の構造は、化学式1の構造においてR1~R6、R3~R6、またはR5~R8が吸収団と連結される、または吸収団を形成することで構成される構造であってもよい。
【0068】
化学式3中、A7~A12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールアルキル基であってもよい。
【0069】
化学式3中、L4およびL5は、それぞれ独立して、化学式1のL1と同じ置換基(適切な例を含む)であってもよい。
【0070】
化学式3中、R31~R38およびR41~R48は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリール基、またはアリールアルキル基であってもよい。
【0071】
化学式3のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、およびアミノ基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよいが、この際、置換される置換基としては、フッ素や塩素のようなハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0072】
化学式3中、A7~A12は、適切な例において、それぞれ独立して、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、若しくはアルコキシ基である、またはアルキル基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0073】
化学式3中、R31~R38およびR41~R48は、適切な例において、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、若しくはアミノ基である、または水素、アルキル基、アルキルスルホニルアミノ基、若しくはアミノ基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0074】
化学式3の化合物は、上述した吸収極大波長、モル質量および/またはTd5%を示してもよい。
【0075】
他の例において上記吸収剤は、下記化学式4で表される化合物であってもよい。
[化学式4]
【0076】
【化4】
【0077】
化学式4の構造は、化学式1の構造においてR1とR2が吸収団と連結される、または吸収団を形成することによって構成される構造であってもよい。
【0078】
化学式4中、A13~A18は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールアルキル基であってもよい。
【0079】
化学式4中、L6およびL7は、それぞれ独立して、化学式1のL1と同じ置換基(適切な例を含む)であってもよい。
【0080】
化学式4中、R51~R57およびR61~R67は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、ハロアルキルスルホニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、またはアリールアルキル基であってもよい。
【0081】
化学式4のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルカルボニルアミノ基、アリールアルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、およびアミノ基は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよいが、この際、置換される置換基としては、フッ素や塩素のようなハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、またはアミノ基などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0082】
化学式4中、A13~A18は、適切な例において、それぞれ独立して、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、若しくはアルコキシ基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0083】
化学式4中、R51~R57およびR61~R67は、適切な例において、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、若しくはアミノ基である、または水素、アルキル基、アルキルスルホニルアミノ基若しくはアミノ基であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0084】
化学式4の化合物は、上述した吸収極大波長、モル質量および/またはTd5%を示してもよい。
【0085】
本出願において上記吸収剤、例えば、化学式2~4の吸収剤を製造する方法は、特に制限されない。当業界では、スクアリリウム系化合物を製造できる多様な方法が知られており、本出願では、このような公知の方式を参照して目的とする構造の化合物を合成することができる。
【0086】
本出願は、また、上記吸収剤を含む吸収剤組成物に関する。用語吸収剤組成物とは、吸収剤と他の成分を含む混合物または2種以上の吸収剤を含む混合物を意味することがある。このような吸収剤組成物は、化学式1の吸収剤を基本的に含み、必要な他の成分をさらに含んでもよい。例えば、上記組成物は、バインダーの役割をする樹脂成分をさらに含んでもよい。このような場合に適用する樹脂成分の種類には特別な制限はなく、吸収膜、例えば、近赤外線吸収膜を形成するために用いられる公知の樹脂成分を適用することができる。本出願において上記吸収剤成分は、公知の多様な樹脂成分に対して適切な相溶性や溶解性を示すことができる。
【0087】
樹脂成分の例としては、環状オレフィン(COP、Cycloolefin)系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、またはシリコーン樹脂などや、その他多様な有機樹脂または有機・無機ハイブリッド系の樹脂のうち1種以上が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0088】
特に制限されるものではないが、本出願の吸収剤は、バインダーの役割をする公知の樹脂成分のうち、シリコーン樹脂と混合されて優れた性能を示す吸収膜を形成することができる。したがって、一つの例において上記樹脂成分は、シリコーン樹脂であってもよい。
【0089】
樹脂成分を適用する場合、その割合にも特別な制限はない。例えば、樹脂成分100重量部に対する吸収剤の重量比が0.001重量部~10重量部の範囲となるように樹脂成分が存在してもよい。樹脂成分100重量部に対する吸収剤の重量比の下限は、他の例において0.001重量部、0.005重量部、0.01重量部、0.05重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、または1.4重量部程度であってもよく、その上限は、10重量部、9重量部、8重量部、7重量部、6重量部、5重量部、4重量部、3重量部、2重量部、または1.5重量部程度であってもよい。上記割合は、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下でもよい。
【0090】
例えば、吸収剤組成物は、吸収剤および/または樹脂成分を分散する溶媒をさらに含むこともできる。このような場合に適用する溶媒の種類には特別な制限はなく、吸収膜、例えば、近赤外線吸収膜を形成するために用いられる公知の溶媒を適用することができる。本出願において吸収剤成分は、公知の多様な溶媒に対して適切な相溶性や溶解性を示すことができる。
【0091】
溶媒の例には、メチレンクロリド、シクロヘキサノン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル3-メトキシブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ガンマブチロラクトン、シクロヘキサノン、ピリドン、クロロホルム、1、4-ジオキサン、シクロヘキサノン、オルト-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、炭素数2以上の脂肪族アルコール(例えば、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、またはキシレンなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0092】
溶媒を適用する場合、その割合にも特別な制限はなく、吸収剤および/または樹脂成分などの適切な分散が可能な範囲で割合を調節することができる。
【0093】
吸収剤組成物は、上述した成分にさらに必要な他の成分、例えば、化学式1の吸収剤と異なる種類の吸収剤など)を含むこともできる。
【0094】
本出願は、また、上記吸収剤組成物または上記吸収剤の用途に関する。例えば、本出願は、上記吸収剤組成物または吸収剤を適用した吸収膜に関する。このような吸収膜は、少なくとも樹脂成分と上記吸収剤を含んでもよい。この場合、樹脂成分の具体的な種類および樹脂成分と吸収剤との割合などは、吸収剤組成物の項目で記述した通りである。
【0095】
吸収膜は、所定範囲の波長領域内の光を吸収できる膜であってもよい。一つの例において、吸収膜は赤外線吸収膜または近赤外線吸収膜であってもよい。このような吸収膜は、例えば、約600nm~950nmの範囲内の波長領域のうち少なくとも一部の波長領域で吸収特性を示すことができる。
【0096】
例えば、上記吸収膜は、600nm~950nmの範囲内で吸収極大波長を示すことができる。上記吸収極大波長の下限は、他の例において600nm、610nm、620nm、630nm、640nm、650nm、660nm、670nm、680nm、690nm、700nm、710nm、720nm、730nm、740nm、750nm、760nm、770nm、780nm、または790nmであってもよい。また、上記吸収極大波長の上限は、950nm、940nm、930nm、920nm、910nm、900nm、890nm、880nm、870nm、860nm、850nm、840nm、830nm、820nm、810nm、800nm、790nm、780nm、770nm、760nm、750nm、740nm、730nm、720nm、710nm、700nm、690nm、680nm、670nm、660nm、650nm、640nm、630nm、620nm、または610nm程度であってもよい。吸収極大波長は、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下でもよい。
【0097】
このような特性によい、上記吸収膜は、多様な光学フィルターや赤外線センサーなどの機器に適用でき、入射角によるシフト現象を防止できるなどの優れた光特性を有し、優れた耐熱性などの物性を有することができる。
【0098】
例えば、上記吸収膜は、下記式1の△Aの絶対値が20%以下であってもよい。
[式1]
△A=100×(Af-Ai)/Ai
式1中、Afは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持された上記吸収膜の吸収極大波長における透過率であり、Aiは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持される前の上記吸収膜の吸収極大波長における透過率であり、吸収極大波長は、600nm~950nmの波長範囲内に存在する。
【0099】
式1の△Aの絶対値の上限は、他の例において19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、または7%程度であり、下限は、0%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、または8%程度であってもよい。△Aの絶対値は、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下でもよい。
【0100】
式1中、AfおよびAiは、それぞれ20%以下程度であってもよい。式1中、AfおよびAiそれぞれの上限は、他の例において19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、または7%程度であり、下限は、0%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、または8%程度であってもよい。AfおよびAiのそれぞれは、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下でもよい。
【0101】
上記吸収膜は、下記式2の△λの絶対値が10%以下であってもよい。
[式2]
△λ=100×(λf-λi)/λi
式2中、λfは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持された上記吸収膜の吸収極大波長であり、λiは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持される前の上記吸収膜の吸収極大波長であり、吸収極大波長は、600nm~950nmの波長範囲内に存在する。
【0102】
式2の△λの絶対値の上限は、他の例において10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%程度であり、下限は、0%、0.5%、または1%程度であってもよい。△λの絶対値は、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上述した上限のうち任意のいずれか一つの上限以下でもよい。
【0103】
式2中、λfおよびλiは、それぞれ600nm~950nmの範囲内にあってもよい。λfおよびλiそれぞれの下限は、他の例において600nm、610nm、620nm、630nm、640nm、650nm、660nm、670nm、680nm、690nm、700nm、710nm、720nm、730nm、740nm、750nm、760nm、770nm、780nm、または790nmであってもよい。また、λfおよびλiそれぞれの上限は、950nm、940nm、930nm、920nm、910nm、900nm、890nm、880nm、870nm、860nm、850nm、840nm、830nm、820nm、810nm、800nm、790nm、780nm、770nm、760nm、750nm、740nm、730nm、720nm、710nm、700nm、690nm、680nm、670nm、660nm、650nm、640nm、630nm、620nm、または610nm程度であってもよい。λfおよびλiそれぞれは、上述した下限のうち任意のいずれか一つの下限以上であり、上限のうち任意のいずれか一つの上限以下でもよい。
【0104】
上記吸収特性を通じて、上記吸収膜は、多様な光学フィルターや赤外線センサーなどの機器に適用することができ、目的とする特性を効率的に達成することができる。
【0105】
本出願において上記吸収膜は、本出願の吸収剤組成物または吸収剤を適用する限り、公知の方式で形成することができる。例えば、上記吸収剤組成物を適切な方式でコートし、必要な場合に、硬化や乾燥工程を行い、上記吸収膜を形成することができる。上記吸収膜の厚さには特別な制限はなく、目的とする特性を考慮して調節することができる。一例において、吸収膜は、略0.5~20μm程度の範囲内の厚さを有してもよい。
【0106】
本出願は、また、光学フィルターに関する。光学フィルターは、基材層と基材層の一面または両面に形成された上記吸収膜を含んでもよい。図1は、光学フィルターの一つの例として、基材層100の一面に吸収膜200が形成された場合を示す図である。このような本出願の光学フィルターは、前述した吸収膜を含むことによって優れた性能を示すことができ、例えば、光学フィルターは、不要な赤外線光を効率よくかつ正確に遮断しつつ、高い透過率の可視光透過バンドを実現することができる。
【0107】
光学フィルターに適用する透明基板の種類には特別な制限はなく、公知の光学フィルター用透明基板を用いることができる。一つの例において、基材層は、いわゆる赤外線吸収基板であってもよい。赤外線吸収基板は、赤外線領域のうち少なくとも一部の領域で吸収特性を示す基板である。銅を含むことで上記特性を示すいわゆるブルーガラス(Blue Glass)は、赤外線吸収基板の代表的な例である。このような赤外線吸収基板は、赤外線領域の光を遮断する光学フィルターを構成するに際して有用であるが、上記吸収特性によって可視光領域で高い透過率を確保する点において不利であり、また、耐久性の点から不利である。本出願では、赤外線吸収基板を選択し、これを特定の上記吸収膜と組み合わせることによって、所望の光を効率的に遮断しつつ、可視光領域で高い透過率特性を示し、耐久性に優れた光学フィルターを提供することができる。
【0108】
赤外線吸収基板としては、425nm~560nmの範囲内で75%以上の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例において77%以上、79%以上、81%以上、83%以上、85%以上、87%以上、若しくは89%以上の範囲内、および/または98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、若しくは90%以下の範囲内であってもよい。
【0109】
赤外線吸収基板としては、425nm~560nmの範囲内で80%以上の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例において82%以上、84%以上、86%以上、88%以上、若しくは90%以上の範囲内および/または100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、若しくは90%以下の範囲内であってもよい。
【0110】
赤外線吸収基板としては、350nm~390nmの範囲内で75%以上の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例において77%以上、79%以上、81%以上、若しくは83%以上の範囲内、および/または98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下、88%以下、86%以下、若しくは84%以下の範囲内であってもよい。
【0111】
赤外線吸収基板としては、350nm~390nmの範囲内で80%以上の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例において、82%以上、84%以上、86%以上、若しくは87%以上の範囲内、および/または100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下、若しくは88%以下の範囲内であってもよい。
【0112】
赤外線吸収基板としては、波長700nmにおける透過率が10%~45%の範囲内の基板を用いることができる。透過率は、他の例において43%以下、41%以下、39%以下、37%以下、35%以下、33%以下、31%以下、若しくは29%以下程度である、または12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、若しくは28%以上程度であってもよい。
【0113】
赤外線吸収基板としては、700nm~800nmの範囲内で5%~30%の範囲内の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例において、7%以上、9%以上、11%以上、13%以上、15%以上、15.5%以上、16%以上、若しくは16.5%以上の範囲内、および/または28%以下、26%以下、24%以下、22%以下、20%以下、18%以下、若しくは17%以下の範囲内であってもよい。
【0114】
赤外線吸収基板としては、700nm~800nmの範囲内で10%~45%の範囲内の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例において、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、若しくは28%以上の範囲内、および/または43%以下、41%以下、39%以下、37%以下、35%以下、33%以下、31%以下、若しくは29%以下の範囲内であってもよい。
【0115】
赤外線吸収基板としては、800nm~1000nmの範囲内で3%~20%の範囲の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例において、5%以上、7%以上、9%以上、若しくは11%以上の範囲内、および/または18%以下、16%以下、14%以下、若しくは12%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0116】
赤外線吸収基板としては、800nm~1000nmの範囲内で5%~30%の範囲の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例において、7%以上、9%以上、11%以上、13%以上、若しくは15%以上の範囲内、および/または28%以下、26%以下、24%以下、22%以下、20%以下、18%以下、若しくは16%以下の範囲内であってもよい。
【0117】
赤外線吸収基板としては、1000nm~1200nmの範囲内で10%~50%の範囲の平均透過率を示す基板を適用することができる。平均透過率は、他の例において、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、若しくは25%以上の範囲内、および/または48%以下、46%以下、44%以下、42%以下、40%以下、38%以下、36%以下、34%以下、32%以下、30%以下、28%以下、若しくは26%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0118】
赤外線吸収基板としては、1000nm~1200nmの範囲内で10%~70%の範囲の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例において、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、若しくは36%以上の範囲内、および/または68%以下、66%以下、64%以下、62%以下、60%以下、58%以下、56%以下、54%以下、52%以下、50%以下、48%以下、46%以下、44%以下、42%以下、40%以下、38%以下、若しくは37%以下の範囲内であってもよい。
【0119】
赤外線吸収基板は、本出願の吸収膜と組み合わせて目的とする光学フィルターを形成することができる。このような基板としては、いわゆる赤外線吸収ガラスと知られている基板を用いることができる。このようなガラスは、フッ化リン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスなどにCuOなどを添加して製造した吸収型ガラスである。したがって、一例において、本出願では、赤外線吸収基板としては、CuO含有フッ化リン酸塩ガラス基板またはCuO含有リン酸塩ガラス基板を用いてもよい。リン酸塩ガラスには、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成される硅酸リン酸塩ガラスも含まれる。このような吸収型ガラスは公知となっており、例えば、韓国登録特許第10-2056613号などに開示されたガラスやその他市販の吸収型ガラス(例えば、ホヤ、ショット、PTOT社などの市販製品)を用いることができる。
【0120】
このような赤外線吸収基板は、銅を含む。本出願では、銅の含有量が1重量%~7重量%の範囲内の基板を用いることができる。銅含有量は、他の例において、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、2.6重量%以上、2.7重量%以上、若しくは2.8重量%以上程度である、または6.5重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、若しくは2.9重量%以下程度であってもよい。このような銅含有量を有する基板は、前述した光学特性を示しやすく、上記吸収膜と組合わせて所望の特性の光学フィルターを形成することができる。
【0121】
銅含有量は、X線蛍光分析装備(WD XRF、Wavelength Dispersive X-Ray Fluorescence Spectrometry)を用いて確認することができる。上記装備を用いて試験片(基材層)にX線を照射すると、試験片の個別元素から特徴的な二次X線が発生し、装備は、二次X線を各元素別の波長によって検出する。二次X線の強度は、元素含有量に比例し、したがって、元素別の波長によって測定された二次X線の強度を通じて定量分析を行うことができる。
【0122】
赤外線吸収基板の厚さは、例えば、約0.03mm~5mmの範囲内で調節することができるが、これらに制限されるものではない。
【0123】
本出願の光学フィルターは、上記基材層と吸収膜にさらに必要な公知の他の構成を含むこともできる。例えば、光学フィルターは、誘電体膜をさらに含んでもよい。光学フィルターは、例えば、基材層の一面または両面にいわゆる誘電体膜をさらに含んでもよい。
【0124】
図2および図3は、誘電体膜300が追加された光学フィルターの例であり、基材層100と吸収膜200を含む積層構造の一面または両面に誘電体膜300が形成された場合を示す。このような誘電体膜は、低屈折率の誘電体材料と高屈折率の誘電体材料を反復積層して構成された膜であり、いわゆるIR反射層およびAR(Anti-reflection)層を形成するために用いられ、本出願でも、このような公知のIR反射層やAR層の形成のための誘電体膜を適用することができる。したがって、誘電体膜は、それぞれ互いに屈折率が異なる少なくとも2種のサブ層を含む多層構造であってもよく、2種のサブ層が繰り返して積層された多層構造を含んでもよい。
【0125】
誘電体膜を形成する材料、すなわち各サブ層を形成する材料の種類は特に制限されず、公知の材料を適用することができる。通常、低屈折サブ層の製造には、SiO2またはNa5Al3F14、Na3AlF6、若しくはMgF2などのフッ化物を適用し、高屈折サブ層の製造には、非晶質シリコン、TiO2、Ta25、Nb25、ZnSまたはZnSeなどを適用することができるが、本出願において適用する材料が上記に制限されるものではない。
【0126】
誘電体膜を形成する方式は特に制限されず、例えば、公知の蒸着方式を適用して形成することができる。当業界では、サブ層の蒸着厚さや層数などを勘案して誘電体膜の反射や透過特性を制御する方式が公知となっており、本出願では、このような公知の方式によって上記誘電体膜を形成することができる。
【0127】
一つの例において、本出願の光学フィルターに含まれる誘電体膜は、600nm~900nmの波長範囲内で50%の反射率を示す最短波長が710nm以上である、あるいは上記波長が存在しなくてもよい。また、上記波長が存在しない場合に、600nm~900nmの波長範囲で誘電体膜の最大反射率が50%未満である。上記波長が存在する場合、50%の反射率を示す最短波長は、他の例において、715nm以上、720nm以上、725nm以上、730nm以上、735nm以上、740nm以上、745nm以上、750nm以上または754nm以上であるか、900nm以下、850nm以下、800nm以下、790nm以下、780nm以下、770nm以下、または760nm以下程度であってもよい。50%の反射率を示す最短波長は、上述した下限のうちいずれかの一つの下限と上限の範囲内であってもよく、この際、上限は、900nmであってもよい。
【0128】
上記のように誘電体膜の反射特性を制御することによって、いわゆるペタルフレア(petal flare)現象を防止することができる。ペタルフレア現象は、発光体などを撮影するとき、目視で観察されなかった赤色線などが写真に映りこむ現象を意味し、発光体を基準として赤色線があたかも花びらのように形状を帯びる場合が多く、ペタルフレアと呼ばれる。撮像装置に含まれるセンサーの感度が増大し、より鮮明な写真を得るために光学フィルターなどの透過率を高めることで、ペタルフレアの発生頻度が増加している。
【0129】
ペタルフレア現象の原因の一つとして、光学フィルターが装着された撮像装置内で近赤外光の反射が繰り返されることが考えられる。通常、光学フィルターに形成される誘電体膜のうち、特にいわゆるIR膜は、近赤外線領域の光を反射することで遮断するために形成されるものであるため、誘電体膜が50%の反射率を示す最短波長は可視光近くにあり、通常710nm未満である。しかしながら、このような誘電体膜により撮像装置内で近赤外光の反射が促進され、それによって、ペタルフレア現象が発生する。
【0130】
しかしながら、本出願では、上記吸収膜の適用を通じ、誘電体膜が50%の反射率を示す最短波長を710nm以上に調節する場合においても、赤外光を効果的に遮断することができ、また、ペタルフレア現象も防止することができる。誘電体膜の反射特性を調節する設計方式は公知となっている。
【0131】
上記光学フィルターは、上記吸収膜と区別される吸収膜として紫外線に対して吸収特性を示す吸収膜(以下、紫外線吸収膜)をさらに含んでもよい。ただし、このような吸収膜は、必須構成ではなく、例えば、後述する紫外線吸収剤を化学式1の吸収剤などと共に一つの吸収膜に導入することもできる。一つの例において、紫外線吸収膜は、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示すように設計することができる。紫外線吸収膜は、紫外線吸収剤のみを含むこともでき、必要な場合、2種以上の紫外線吸収剤を含むこともできる。
【0132】
例えば、紫外線吸収剤としては、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示す公知の吸収剤を適用することができ、その例としては、Exiton社のABS 407;QCR Solutions Corp社のUV381A、UV381B、UV382A、UV386A、VIS404A;H.W.Sands社のADA1225、ADA3209、ADA3216、ADA3217、ADA3218、ADA3230、ADA5205、ADA3217、ADA2055、ADA6798、ADA3102、ADA3204、ADA3210、ADA2041、ADA3201、ADA3202、ADA3215、ADA3219、ADA3225、ADA3232、ADA4160、ADA5278、ADA5762、ADA6826、ADA7226、ADA4634、ADA3213、ADA3227、ADA5922、ADA5950、ADA6752、ADA7130、ADA8212、ADA2984、ADA2999、ADA3220、ADA3228、ADA3235、ADA3240、ADA3211、ADA3221、ADA5220、ADA7158;CRYSTALYN社のDLS381B、DLS381C、DLS382A、DLS386A、DLS404A、DLS405A、DLS405C、DLS403Aなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0133】
このような紫外線吸収膜を構成する材料および構成方式は、特に制限されず、公知の材料および構成方式を適用することができる。通常、紫外線吸収膜は、目的とする吸収極大を示すことができる紫外線吸収剤を透明な樹脂と配合した材料を用いて形成する。この際、透明樹脂としては、上記吸収剤組成物に適用する樹脂成分を適用することができる。
【0134】
光学フィルターは、上述した層の他にも、必要な多様な層を目的とする効果を損なわない範囲で追加することができる。
【0135】
本出願は、また、上記光学フィルターを含む撮像装置に関する。この際、撮像装置の構成方式や光学フィルターの適用方式は、特に制限されず、公知の構成と適用方式を適用することができる。また、本出願の光学フィルターの用途が撮像装置に制限されるものではなく、その他、近赤外線カットが必要な多様な用途(例えば、PDPなどのディスプレイ装置など)に適用することができる。
【0136】
本出願は、また、上記吸収膜を含む赤外線センサーに関する。赤外線センサーの構成は、本出願の吸収膜が含まれる限り特に制限されず、例えば、公知のモーションセンサー、近接センサー、またはジェスチャーセンサーに本出願の吸収膜を導入して構成することができる。
【0137】
また、本出願の吸収剤組成物または吸収膜の用途は、光学フィルター、赤外線センサーおよび/または撮像装置に制限されるものではなく、その他、赤外線カットが必要な多様な用途(例えば、PDPなどのディスプレイ装置など)に適用することができる。
【発明の効果】
【0138】
本出願は、吸収剤およびその用途を提供することができる。本出願は、有機系吸収剤として多様な溶媒および樹脂成分に対して優れた相溶性や溶解性を示し、耐熱性に優れ、高温条件や高温高湿条件で維持される場合にも光特性を安定的に維持できる吸収剤を提供することができる。本出願は、上記吸収剤を適用し、所望の光特性が確保される吸収膜を提供することができる。本出願は、また、上記吸収剤または吸収膜の用途を提供することができ、例えば、上記吸収剤または吸収膜を含む光学フィルター、固体撮像素子および/または赤外線センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
図1】本出願の光学フィルターの例示的な構造を示す図。
図2】本出願の光学フィルターの例示的な構造を示す図。
図3】本出願の光学フィルターの例示的な構造を示す図。
図4】実施例または比較例で製造された吸収剤の吸光スペクトル。
図5】実施例または比較例で製造された吸収剤の吸光スペクトル。
図6】実施例または比較例で製造された吸収剤の吸光スペクトル。
図7】実施例または比較例の吸収剤を含む吸収膜の高温高湿評価前後の吸光特性を示す図。
図8】実施例または比較例の吸収剤を含む吸収膜の高温高湿評価前後の吸光特性を示す図。
図9】実施例または比較例の吸収剤を含む吸収膜の高温高湿評価前後の吸光特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0140】
以下、実施例に基づいて本出願の光学フィルターを具体的に説明するが、本出願の光学フィルターの範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0141】
1.吸収極大の測定方法
吸収極大は、通常の方法で評価した。具体的には、試料をクロロホルム溶媒に約10-5Mの濃度で溶解させた後に、測定装備(Agilent、Varian cary 4000)を用いて評価した。
【0142】
2.透過率スペクトルの評価
透過率スペクトルは、測定対象(例えば、吸収膜)を横および縦がそれぞれ10mmおよび10mmとなるように裁断して得られた試験片を用い、分光光度計(製造社:Perkinelmer社、製品名:Lambda750分光光度計)を用いて測定した。透過率スペクトルは、上記装備のマニュアルによって波長別および入射角別に測定した。試験片を分光光度計の測定ビームとディテクターとの間の直線上に配置し、測定ビームの入射角を0度から40度まで変更しながら透過率スペクトルを確認した。特に明記しない限り、本実施例における透過率スペクトルの結果は、入射角が0度である場合の結果である。入射角0度とは、試験片の表面法線方向と実質的に平行な方向である。
【0143】
透過率スペクトルにおいて、所定波長領域内の平均透過率は、上記波長領域における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら各波長の透過率を測定し、測定された透過率の算術平均を求めた結果であり、最大透過率は、1nmずつ波長を増加させながら測定した透過率のうち最大透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した透過率の算術平均であり、350nm~360nmの波長範囲内の最大透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、および360nmの波長で測定した透過率のうち最も高い透過率である。
【0144】
3.溶解性の測定方法
吸収剤の溶解性を評価した。溶解性は、常温(約25℃)で吸収剤の溶媒(MC、Methylene Chloride)に対する溶解度を評価し、下記基準によって判断した。
【0145】
<溶解性の判断基準>
A:溶解度が1質量%以上である場合
B:溶解度が0.5質量%以上1質量%未満である場合
C:溶解度が0.2質量%以上0.5質量%未満である場合
D:溶解度が0.2質量%未満である場合
【0146】
4.熱分解温度(Td5%)の分析
TGA(Thermogravimetric analysis)分析は、Scinco社のTGA N-1000を用いて行った。試料(吸収剤)約3mgを用いて分析を行い、25℃~800℃の温度範囲、昇温速度10℃/分、および60cm3/分の窒素(N2)雰囲気の条件で分析を行った。Td分解温度としては、重量減少(Weight loss)95%における値(Td5%)を用いた。
【0147】
5.Mass分析(Maldi-tof)
合成された化合物に対するMass分析は、MALDI TOF Voyager DE-STR(Applied Biosystems、USA)で行い、Reflector modeからPositive modeで測定し、Dithranol matrixを用いて分析した。
【0148】
実施例1.化合物(A1)の製造
下記化学式A1の化合物は、下記反応式1によって合成した。
[反応式1]
【0149】
【化5】
【0150】
反応式1の化合物A1.5g(0.0054mol)、スクアリン酸(squaric acid)0.4g(0.0027mol)、およびトリエチルオルトホルメート(Triethyl Orthoformate)1.5gをn-ブタノール15mLに溶解し、95℃で4時間反応させた。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを加え、6時間以上撹拌して得られた沈殿物を減圧フィルターすることで目的化合物(化学式A1)(0.7g、40%)を得た(Maldi-tof m/z 629.52[M+H]+)。
【0151】
図4は、化学式A1の化合物の吸収(Absorbance)スペクトルである。図4より、化学式A1の化合物は、約652nmの吸収極大波長を示すことが分かる。
【0152】
実施例2.化合物(A2)の製造
下記化学式A2の化合物は、下記反応式2によって合成した。
[反応式2]
【0153】
【化6】
【0154】
反応式2の化合物B2.5g(0.0076mol)、スクアリン酸(squaric acid)0.43g(0.0038mol)、およびトリエチルオルトホルメート(Triethyl Orthoformate)2.5gをn-ブタノール25mLに溶解し、95℃で4時間反応させた。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを加え、6時間以上撹拌して得られた沈殿物を減圧フィルターすることで目的化合物(化学式A2)(1.3g、47.6%)を得た(Maldi-tof m/z 729.8[M+H]+)。
【0155】
図5は、化学式A2の化合物の吸収(Absorbance)スペクトルである。図5より、化学式A2の化合物は、約772nmの吸収極大波長を示すことが分かる。
【0156】
比較例1.化合物(A3)の製造
下記化学式A3の化合物は、下記の反応式3によって合成した。
[反応式3]
【0157】
【化7】
【0158】
反応式3の化合物C3.9g(0.015mol)、スクアリン酸(squaric acid)0.9g(0.0079mol)、およびトリエチルオルトホルメート(Triethyl Orthoformate)2gをn-ブタノール30mLに溶解し、95℃で4時間反応させた。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを加え、6時間以上撹拌して得られた沈殿物を減圧フィルターすることで目的化合物(化学式A3)(1.2g、27.2%)を得た(maldi-tof m/z 568.90[M+H]+)。
【0159】
図6は、化学式A3の化合物の吸収(Absorbance)スペクトルである。図6より、化学式A3の化合物は、約738nmの吸収極大波長を示すことが分かる。
【0160】
表1は、実施例1と2、および比較例1の吸収剤の特性を整理した結果である。表1において、Td5%は5%熱分解温度を意味する。
【0161】
【表1】
【0162】
試験例1.
樹脂成分としてシリコーン樹脂(Dow Chemical、RSN-0217)、吸収剤、および溶媒(Cyclohexanone)を混合し、コーティング液を調製した。樹脂成分、吸収剤、および溶媒の混合割合は、重量比(樹脂:吸収剤:溶媒)で69.3:0.99:29.7とした。上記コーティング液を透明基板(SCHOTT社、ガラス基板)上にコートし、140℃で2時間程度維持し、厚さが約6μmの吸収膜を作製した。吸収剤としては、実施例1、実施例2、または比較例1の吸収剤を適用した。
【0163】
表2は、吸収膜の紫外光および近赤外線領域における信頼性評価前後の透過率を整理したものである。信頼性評価は、吸収膜を85℃および85%の相対湿度で120時間維持する評価である。表2で、Bは信頼性評価を行う前の結果であり、Aは信頼性評価を行った後の結果を意味する。また、表2で、Λmaxは吸収極大における透過率を意味する。
【0164】
表2において、△は信頼性評価前後のそれぞれの特性の変化率(%)であり、100×(A-B)/Bで計算された結果である。ここでAは、表2でAで表示された数値であり、Bは表2でBで表示された数値である。表2において、Tmaxは、当該波長領域内の最高透過率、Taveは、当該波長領域内の平均透過率、Tminは、当該波長領域内の最小透過率を意味する。
【0165】
【表2】
【0166】
試験例2.
試験例1で作製された吸収膜として、実施例1の吸収剤を用いて作製した吸収膜の吸光スペクトルが図7に示されており、実施例2の吸収剤を用いて作製した吸収膜の吸光スペクトルが図8に示されており、比較例1の吸収剤を用いて作製した吸収膜の吸光スペクトルが図9に示されている。図7図9において、A-1、A-2、およびA-3は、それぞれ実施例1と2、および比較例1の吸収膜に対する評価を意味し、高温高湿前と表示された結果は、上記吸収膜を作製した直後の結果であり、高温高湿後と表示された結果は、上記吸収膜に対して高温高湿評価を行った後の結果である。高温高湿評価は、上記吸収膜を85℃の温度および85%の相対湿度で120時間維持する評価である。
【0167】
図7図9の比較より、実施例の吸収剤を用いた吸収膜は、高温高湿評価前後で吸光特性がほとんど変化せず、同一の特性が維持されるのに対し、比較例の吸収剤を適用した場合には、高温高湿評価後に吸光特性がほとんど失われることを確認することができる。
【0168】
図7図9に示された主要な結果を整理すると、表3の通りである。表3において、Afは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持された上記吸収膜の吸収極大波長における透過率であり、λfは、このときの吸収極大波長であり、Aiは、85℃および85%の相対湿度で120時間維持される前の上記吸収膜の吸収極大波長における透過率であり、λiは、このときの吸収極大波長である。表3において、△Aは、100×(Af-Ai)/Aiで計算された値であり、△λは、100×(λf-λi)/λiで計算された値である。
【0169】
【表3】
【0170】
図4図6図7図9、および表3の結果を比較すると、実施例の吸収剤と比較例の吸収剤は、吸収剤自体の分光特性は類似しているが、吸収膜に適用したとき、吸収特性と高温高湿評価後の吸収特性において大きな差を示すことが分かる。このような点から、本出願の吸収剤は、その特有の構造によって吸収膜を形成する樹脂成分との相溶性に優れ、耐熱性に優れ、優れた性能の吸収膜を効果的に形成できるという点を確認することができる。
【符号の説明】
【0171】
100 基材層
200 吸収膜
300 誘電体膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9