(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079644
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240604BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240604BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240604BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20240604BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20240604BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L2/00 B
A23L2/56
A23L29/281
A23L33/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201499
(22)【出願日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2022192391
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】竹下 尚男
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
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4B117LP03
(57)【要約】
【課題】クロロゲン酸類を含有するpH5以下の飲食品組成物でありながら、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑制され、かつ、飲食品本来の鼻抜け香が感じられる飲食品組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.010~0.60質量%
(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下であり、pHが3.0~5.0である飲食品組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.010~0.60質量%
(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下であり、pHが3.0~5.0である飲食品組成物。
【請求項2】
成分(B)の含有量が0.0020×10-4~5.0×10-4質量%である請求項1記載の飲食品組成物。
【請求項3】
飲食品組成物がRTD(Ready to Drink)型飲料、溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物、又はゼリー状食品である請求項1又は2記載の飲食品組成物。
【請求項4】
pHが3.0~5.0である飲食品組成物の風味改善方法であって、0.010~0.60質量%の(A)クロロゲン酸類と、(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とを、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下となる割合で共存させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロゲン酸類は、ポリフェノールの一種であり、抗酸化作用や血圧降下作用、内臓脂肪低減作用等の生理作用を有することが報告されている(例えば、特許文献1及び2)。クロロゲン酸類を多く含む素材としてコーヒー豆が知られており、クロロゲン酸類を含有するコーヒー飲料は広く愛飲されている。一般的に、コーヒー豆抽出物のpHは6程度を示し、当該コーヒー豆抽出物を原料とするクロロゲン酸類を含有するコーヒー飲料は中性飲料である。
【0003】
ところで、飲料には中性飲料の他に酸性飲料がある。酸性飲料としては、果汁飲料やスポーツ飲料等があり、適度な酸味を有し、嗜好性が高い。
従来、クロロゲン酸類を含有する酸性飲料として、特許文献3には、機能性ペプチド、生コーヒー豆抽出物等の酸化防止剤、砂糖及びクエン酸を配合し、機能性ペプチドの苦味・臭いを低減した飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-87977号公報
【特許文献2】特開2008-88187号公報
【特許文献3】特開2006-67874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者は、液性がpH5以下の酸性域にあるクロロゲン酸類を含有する酸性飲料を調製すると、クロロゲン酸類由来の独特の収斂味が生じ、また、酸性飲料本来の鼻抜け香が感じにくくなり飲料の嗜好性が低下することを見出した。飲料以外の食品においても同様の傾向が見られた。
ここで、本明細書において「収斂味」とは舌を刺激するような渋味をいい、「鼻抜け香」とは口に含んだときに喉から鼻に抜けて感じる香りをいう。
【0006】
よって、本発明は、クロロゲン酸類を含有するpH5以下の飲食品組成物でありながら、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑制され、かつ、飲食品本来の鼻抜け香が感じられる飲食品組成物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討したところ、所定のジペプチドを、クロロゲン酸類に対して特定の量比で含有させることで、驚くべきことに、クロロゲン酸類を含有しながらもクロロゲン酸類由来の収斂味を抑制できること、かつ、飲食品の鼻抜け香が増強されることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.010~0.60質量%
(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下であり、pHが3.0~5.0である飲食品組成物を提供するものである。
また、本発明は、pHが3.0~5.0である飲食品組成物の風味改善方法であって、0.010~0.60質量%の(A)クロロゲン酸類と、(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とを、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下となる割合で共存させる、方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クロロゲン酸類を含有するpH5以下の飲食品組成物でありながら、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑制されて、かつ、飲食品本来の鼻抜け香が感じられる飲食品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の飲食品組成物は、成分(A)としてクロロゲン酸類を含有する。ここで、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルラキナ酸、4-フェルラキナ酸及び5-フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸と、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸及び4,5-ジカフェオイルキナ酸のジカフェオイルキナ酸を併せての総称である。本発明においては上記9種のうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、成分(A)は、塩や水和物の形態であってもよい。塩としては生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩を挙げることができる。
【0011】
成分(A)としては、市販の試薬を用いてもよいが、成分(A)を豊富に含む植物の抽出物を使用することもできる。なお、成分(A)として植物抽出物を用いる場合、植物抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
植物としては、成分(A)が含まれていれば特に限定されないが、例えば、ヒマワリ種子、リンゴ未熟果、コーヒー豆、シモン葉、マツ科植物の球果、マツ科植物の種子殻、サトウキビ、南天の葉、ゴボウ、ナスの皮、ウメの果実、フキタンポポ、ブドウ科植物等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、クロロゲン酸類含量等の観点から、コーヒー豆が好ましい。コーヒー豆は、成分(A)の生理効果を増強させる観点から、生コーヒー豆及び浅焙煎コーヒー豆から選択される1以上が好ましく、生コーヒー豆が更に好ましい。ここで、本明細書において「浅焙煎コーヒー豆」とは、L値が30以上60以下の焙煎コーヒー豆を指し、浅焙煎コーヒー豆のL値は、成分(A)の生理効果を増強させる観点から、好ましくは32以上であり、より好ましくは34以上であり、更に好ましくは36以上であり、より更に好ましくは38以上であり、より更に好ましくは40以上である。なお、コーヒー豆の豆種及び産地は、特に限定されない。また、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。
【0012】
なお、コーヒー豆として、L値30未満の焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆を用いる場合、当該焙煎コーヒー豆の持つ焙煎臭により、クロロゲン酸類由来の収斂味がマスキングされ得るため、本発明は、発明の効果を享受し易いという観点から、好ましくはL値30未満、より好ましくは32未満、更に好ましくは34未満、より更に好ましくは36未満、より更に好ましくは38未満、殊更に好ましくは40未満の焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆の抽出物を用いた飲料を除く飲食品を対象とする。
【0013】
本発明の飲食品組成物中の成分(A)の含有量は0.010~0.60質量%であるが、成分(A)が有する生理効果を増強させる観点から、0.020質量%以上が好ましく、0.030質量%以上がより好ましく、0.050質量%以上が更に好ましく、また、クロロゲン酸類由来の収斂味を抑制する観点から、0.50質量%以下が好ましく、0.30質量%以下がより好ましく、0.20質量%以下がより更に好ましい。そして、本発明の飲食品組成物中の成分(A)の含有量は、0.010~0.60質量%であり、好ましくは0.020~0.50質量%であり、より好ましくは0.030~0.30質量%であり、更に好ましくは0.050~0.20質量%である。ここで、本明細書において、成分(A)の含有量は上記9種の合計量に基づいて定義される。なお、成分(A)が塩又は水和物の形態である場合、成分(A)の含有量は、遊離酸であるクロロゲン酸類に換算した値とする。成分(A)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0014】
本発明の飲食品組成物は、成分(B)としてLeu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上を含有する。
Leu-Proは、ロイシンのカルボキシ基とプロリンの第二級アミノ基とが脱水縮合したジペプチドであり、下記式(1)で表される。
【0015】
【0016】
また、cyclo(Leu-Pro)は、ロイシンとプロリンからなるジペプチドが分子内環化した2,5-ジケトピペラジン骨格を有する化合物(環状ジペプチド)であり、下記式(2)で表される。
【0017】
【0018】
環状ジペプチドは、熱処理、例えば、生コーヒー豆の焙煎により、アミノ酸2分子が脱水縮合して生成すると考えられている(特開2010-166911号公報、特開2013-138631号公報参照)。環状ジペプチドは、焙煎コーヒー豆を原料とするコーヒー飲料の苦味物質として知られている。本発明においては、飲食品組成物において成分(B)を成分(A)に対する質量比が特定の範囲内となるように含有させることで、意外にもクロロゲン酸類由来の収斂味を抑制できること及び飲食品が本来有する鼻抜け香を増強できることを見出したものである。
成分(B)の各アミノ酸残基はいずれもL型であることが好ましいが、アミノ酸残基の片方又は両方がD型であってもよい。また、塩の形態であってもよい。
【0019】
成分(B)としては、市販の試薬を用いても、成分(B)を豊富に含む植物や食品の抽出物の形態で含有させてもよい。なお、植物としては、成分(B)を含み、飲食品の分野において通常使用されているものであれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜選択することができる。また、抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0020】
本発明の飲食品組成物中の成分(B)の含有量は、質量比[(B)/(A)]が後述する範囲内となれば適宜選択可能であるが、クロロゲン酸類由来の収斂味を抑制する観点、飲食品の鼻抜け香を増強させる観点から、0.0020×10-4質量%以上が好ましく、0.0050×10-4質量%以上がより好ましく、0.010×10-4質量%以上が更に好ましく、0.020×10-4質量%以上がより更に好ましく、また、成分(B)に由来する後味の苦味を抑制する観点から、5.0×10-4質量%以下が好ましく、3.0×10-4質量%以下がより好ましく、1.0×10-4質量%以下が更に好ましく、0.75×10-4質量%以下がより更に好ましく、0.50×10-4質量%以下がより更に好ましく、0.10×10-4質量%以下がより更に好ましい。そして、本発明の飲食品組成物中の成分(B)の含有量は、好ましくは0.0020×10-4~5.0×10-4質量%であり、より好ましくは0.0050×10-4~3.0×10-4質量%であり、更に好ましくは0.0050×10-4~1.0×10-4質量%であり、より更に好ましくは0.010×10-4~0.75×10-4質量%であり、より更に好ましくは0.010×10-4~0.50×10-4質量%であり、より更に好ましくは0.020×10-4~0.10×10-4質量%である。
成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0021】
本発明の飲食品組成物は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下であるが、クロロゲン酸類由来の収斂味を抑制する観点、飲食品の鼻抜け香を増強させる観点から、0.050×10-4以上がより好ましく、0.070×10-4以上が更に好ましく、0.10×10-4以上がより更に好ましく、また、成分(B)に由来する後味の苦味を抑制する観点から、30×10-4以下が好ましく、25×10-4以下がより好ましく、10×10-4以下が更に好ましく、6.7×10-4以下がより更に好ましい。そして本発明における、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]は、0.050×10-4以上30×10-4以下であり、好ましくは0.070×10-4~25×10-4であり、より好ましくは0.10×10-4~10×10-4であり、更に好ましくは0.10×10-4~6.7×10-4である。
【0022】
本発明の飲食品組成物のpH(20℃)は、3.0~5.0であるが、容器の腐食と強酸による好ましくない風味の発生を抑制する観点から、3.2以上が好ましく、また、4.7以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.3以下が更に好ましい。そして、本発明の飲食品組成物のpH(20℃)は、3.0~5.0であり、好ましくは3.0~4.7、より好ましくは3.0~4.5、更に好ましくは3.0~4.3、より更に好ましくは3.2~4.3である。
なお、pHは、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定するものとする。飲食品組成物が以下において説明する半固形状である場合は、粉砕後に粉砕物自体のpHを測定する。飲食品組成物が以下において説明する固形状である場合及び濃縮状の場合は、当該組成物を当該組成物自体の指示された濃度での希釈倍率により水で希釈した後の状態でpHを測定する。指示された濃度に幅がある場合はその中心の濃度で測定する。飲食品組成物が炭酸飲料の場合には、100mlビーカー炭酸飲料を50ml入れてスターラーにて200rpmで30分攪拌した後に測定するものとする。
【0023】
飲食品組成物のpH調整には、酸味料を使用することができる。酸味料としては、例えば、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸及びこれらのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。なかでも、クエン酸、クエン酸ナトリウムが好ましい。
【0024】
本発明の飲食品組成物は、所望により、甘味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、エステル、香料、果汁、植物エキス、ゲル化剤、色素、乳化剤、乳成分、保存料、調味料、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0025】
また、本発明の飲食品組成物は、必要に応じて許容される担体を含有することができる。例えば、賦形剤(例えば、澱粉又はデキストリン等の澱粉分解物、グァーガム、キサンタンガム、アラビアガム、タラガム、ローカストビーンガム、ジェランガム等の増粘多糖類、グルコース、ガラクトース、フルクトース等の単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース、パラチノース等の二糖類、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、還元パラチノース等の糖アルコール);結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、メチルセルロース、硬化油等);崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等);滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ素等);嬌味剤(例えば、ステビア等);オリゴ糖、寒天、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、リン酸水素カルシウム、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、希釈剤等の担体が挙げられる。担体の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0026】
本発明の飲食品組成物は、常温(20℃±15℃)において、液状、半固形状、固形状のいずれでもよく、適宜の形態を採り得る。
飲食品組成物の好適な具体例としては、飲料組成物として、希釈しないタイプのRTD(Ready to Drink)型飲料、水やお湯などで溶解、希釈又は抽出して飲用する粉末状、濃縮液状、ティーバッグ、ドリッパー等の溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物がある。また、ヨーグルト、加工乳、発酵乳等の乳飲料又は乳食品、増粘剤、タンパク質などを含むゲル状、スラリー状のゼリー状食品、流動食品、とろみ調製食品、スープ類等が挙げられる。これらは、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等)とすることもできる。なかでも、RTD型飲料、溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物、ゼリー状食品が好ましい。RTD型飲料の形態としては、例えば、液体状、ゲル状、ゼリー状等を挙げることができる。
【0027】
溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物は、所定の用法にしたがい液体にて希釈溶解、または抽出された飲料として飲用に供される還元食品用組成物をいう。溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物は、常温(20℃±15℃)において、固形状でも、濃縮液状でもよく、特に限定されない。固形状としては、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の種々の形状を挙げることができる。溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物中の固形分量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。なお、かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよいが、好ましくは97質量%以下である。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
【0028】
希釈に使用する液体は、飲料に還元できれば特に限定されず、例えば、水、炭酸水、牛乳、豆乳等が挙げられ、当該飲料が飲まれることを念頭に置いた温度でありさえすれば液体の温度は問わない。希釈倍率は、その食品自体の所定の用法にしたがえばよいが、固形状の場合、好ましくは20~600質量倍であり、より好ましくは30~500質量倍であり、さらに好ましくは40~250質量倍である。また、濃縮液状の場合、通常1.5~100質量倍、好ましくは2.0~50質量倍である。その食品自体の所定の用法にしたがって希釈した後の状態で(希釈に幅がある場合はその中心の希釈倍率で)、各成分の含有量、質量比、pHを測定するものとする。
【0029】
飲料は、非茶飲料が好ましい。非茶飲料としては、例えば、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、ゼリー飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、アルコール飲料等を挙げることができる。
本明細書において、スポーツ飲料とは、運動や日常生活等で発汗等によって失われた水分、電解質、ミネラル、エネルギーを効率よく補給することを目的とした清涼飲料水であり、ナトリウム濃度が0.010質量%以上の酸性飲料である。
なお、本明細書において、ゼリー飲料とはゲル状、ゼリー状の形態であって、容器に備え付けられた吸い口やストローから飲料を吸引できることを前提とした飲料のことをいう。
【0030】
本発明の飲食品組成物は、包装体に充填することができる。包装体としては、例えば、瓶、缶、プラスチック容器、紙容器、スティック型包装体、ピロー型包装体等を挙げることができる。本発明の飲食品組成物を包装体に充填する際には、市販の充填機を使用してもよい。本発明の飲食品組成物は、例えば、1回摂取分を小分け包装することが可能である。例えば、瓶等に容器詰し飲食する際に1回摂取分をスプーン等で計量するもの、1回摂取分を収容したカップタイプ、1回摂取分毎に小分け包装したスティックタイプ、1回摂取分毎に小分け包装したポーションタイプ等とすることができる。
なお、容器内及び包材内は窒素ガスを充填してもよく、また包材は酸素透過性の低いものが品質維持の点で好ましい。
【0031】
本発明の飲食品組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方法を採り得るが、例えば、成分(A)及び(B)、必要により他の成分を配合し、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]を調整して製造することができる。成分(A)と成分(B)との混合順序は特に限定されず、一方を他方に添加しても、両者を同時に添加してもよい。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することができるが、混合装置を使用しても構わない。本発明の飲食品組成物が濃縮液状等の濃縮物である場合には、例えば、常圧にて溶媒の蒸発を行う常圧濃縮法、減圧にて溶媒の蒸発を行う減圧濃縮法、膜分離により溶媒を除去する膜濃縮法等の公知の濃縮方法を採用することができる。また、固形状である場合には、所望の形状とするために圧縮成形しても、公知の造粒法により造粒物としてもよい。
【0032】
〔飲食品組成物の風味改善方法〕
本発明の飲食品組成物の風味改善方法は、飲食品組成物中に0.010~0.60質量%の(A)クロロゲン酸類と、(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とを、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下となる割合で共存させるものである。ここで、風味の改善は、好ましくは、飲食品組成物におけるクロロゲン酸類由来の収斂味の抑制及び飲食品本来の鼻抜け香の付与である。本発明の飲食品組成物の風味改善方法においては、(A)クロロゲン酸類と、(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とが最終的に飲食品組成物中に共存した状態にあればよく、共存させるタイミングや配合順序は特に限定されない。
(A)クロロゲン酸類、(B)Leu-Pro及びcyclo(Leu-Pro)の具体的構成及び含有量等は、上記した飲食品組成物について説明したのと同様である。
【0033】
本発明の飲食品組成物は、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑えられること、飲食品の鼻抜け香が増強されることから、次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.020~0.50質量%
(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.070×10-4~30×10-4であり、pHが3.0~5.0である飲食品組成物であることが好ましい。
【0034】
本発明の飲食品組成物は、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑えられること、飲食品の鼻抜け香が増強されること、後味の苦味が抑えられることから、次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.020~0.50質量%
(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上 0.0020×10-4~3.0×10-4質量%
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.070×10-4~30×10-4であり、pHが3.0~4.3である飲食品組成物であることが好ましい。
【0035】
本発明の飲食品組成物は、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑えられること、飲食品の鼻抜け香が増強されること、後味の苦味が抑えられることから、次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.020~0.20質量%
(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.10×10-4~10×10-4であり、pHが3.0~4.3である飲食品組成物であることが好ましい。
【0036】
本発明の飲食品組成物の風味改善方法は、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑えられること、飲食品の鼻抜け香が増強されることから、pHが3.0~5.0である飲食品組成物の風味改善方法であって、0.020~0.50質量%の(A)クロロゲン酸類と、(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とを、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.070×10-4~30×10-4となる割合で共存させる、方法であることが好ましい。
【0037】
本発明の飲食品組成物の風味改善方法は、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑えられること、飲食品の鼻抜け香が増強されること、後味の苦味が抑えられることから、pHが3.0~4.3である飲食品組成物の風味改善方法であって、0.020~0.50質量%の(A)クロロゲン酸類と、0.0020×10-4~3.0×10-4質量%の(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とを、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.070×10-4~30×10-4となる割合で共存させる、方法であることが好ましい。
【0038】
本発明の飲食品組成物の風味改善方法は、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑えられること、飲食品の鼻抜け香が増強されること、後味の苦味が抑えられることから、pHが3.0~4.3である飲食品組成物の風味改善方法であって、0.020~0.20質量%の(A)クロロゲン酸類と、(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とを、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.10×10-4~10×10-4となる割合で共存させる、方法であることが好ましい。
【0039】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の態様をさらに開示する。
【0040】
<1>次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.010~0.60質量%
(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上
を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下であり、pHが3.0~5.0である飲食品組成物。
【0041】
<2>pHが3.0~5.0である飲食品組成物の風味改善方法であって、0.010~0.60質量%の(A)クロロゲン酸類と、(B)Leu-Pro、及びcyclo(Leu-Pro)から選ばれる1種以上とを、成分(A)と成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.050×10-4以上30×10-4以下となる割合で共存させる、方法。
【0042】
<3><1>又は<2>において、(A)の含有量は、好ましくは0.020質量%以上、より好ましくは0.030質量%以上、更に好ましくは0.050質量%以上であり、また、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下、更に好ましくは0.20質量%以下であり、また、好ましくは0.020~0.50質量%、より好ましくは0.030~0.30質量%、更に好ましくは0.050~0.20質量%である。
<4><1>~<3>において、成分(B)の含有量は、好ましくは0.0020×10-4質量%以上、より好ましくは0.0050×10-4質量%以上、更に好ましくは0.010×10-4質量%以上、より更に好ましくは0.020×10-4質量%以上であり、また、好ましくは5.0×10-4質量%以下、より好ましくは3.0×10-4質量%以下、更に好ましくは1.0×10-4質量%以下、より更に好ましくは0.75×10-4質量%以下、より更に好ましくは0.50×10-4質量%以下、より更に好ましくは0.10×10-4質量%以下であり、また、好ましくは0.0020×10-4~5.0×10-4質量%、より好ましくは0.0050×10-4~3.0×10-4質量%、更に好ましくは0.0050×10-4~1×10-4質量%、より更に好ましくは0.010×10-4~0.75×10-4質量%、より更に好ましくは0.010×10-4~0.50×10-4質量%、より更に好ましくは0.020×10-4~0.10×10-4質量%である。
<5><1>~<4>において、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]は、好ましくは0.050×10-4以上、より好ましくは0.070×10-4以上、更に好ましくは0.10×10-4以上であり、また、好ましくは30×10-4以下、より好ましくは25×10-4以下、更に好ましくは10×10-4以下、より更に好ましくは6.7×10-4以下であり、また、好ましくは0.050×10-4以上30×10-4以下、より好ましくは0.070×10-4~25×10-4、更に好ましくは0.10×10-4~10×10-4、より更に好ましくは0.10×10-4~6.7×10-4である。
<6><1>~<5>において、飲食品組成物のpH(20℃)は、好ましくは3.2以上であり、また、好ましくは4.7以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4.3以下であり、また、好ましくは3.0~4.7、より好ましくは3.0~4.5、更に好ましくは3.0~4.3、より更に好ましくは3.2~4.3である。
<7><1>~<6>において、飲食品組成物は、好ましくはRTD(Ready to Drink)型飲料、溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物、乳飲料又は乳食品、ゲル状又はスラリー状のゼリー状食品、流動食品、とろみ調製食品、スープ類であり、より好ましくはRTD型飲料、溶解、希釈又は抽出型飲料用組成物、ゼリー状食品である。
<8><1>~<7>において、飲食品組成物中の固形分量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは97質量%以下である。
【実施例0043】
(1)クロロゲン酸類の分析
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
・UV-VIS検出器:SPD-20A((株)島津製作所)
・カラムオーブン:CTO-20AC((株)島津製作所)
・ポンプ:LC-20AD((株)島津製作所)
・オートサンプラー:SIL-20AC((株)島津製作所)
・カラム:Cadenza CD-C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト社)
【0044】
分析条件は次の通りである。
・サンプル注入量:10μL
・流量:1.0mL/min
・UV-VIS検出器設定波長:325nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:50mM酢酸、0.1mM 1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
・溶離液B:アセトニトリル
【0045】
濃度勾配条件(体積%)
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0046】
・3-カフェオイルキナ酸 : 5.3min
・5-カフェオイルキナ酸 : 8.8min
・4-カフェオイルキナ酸 :11.6min
・3-フェルラキナ酸 :13.0min
・5-フェルラキナ酸 :19.9min
・4-フェルラキナ酸 :21.0min
・3,4-ジカフェオイルキナ酸:36.6min
・3,5-ジカフェオイルキナ酸:37.4min
・4,5-ジカフェオイルキナ酸:44.2min
ここで求めたarea%から5-カフェオイルキナ酸(東京化成工業社)を標準物質とし、クロロゲン酸類の含有量(質量%)を求めた。
【0047】
(2)ジペプチドの分析
分析機器はLC/MS(Waters,Acquity UPLC/Xevo G2-XS QTOF)を使用した。カラムは、Atlantis T3 内径3.0mm×長さ150mm、粒子径3μm(Waters社製)を使用した。
【0048】
分析条件は次の通りである。
・サンプル注入量:2μL
・流量:0.5mL/min
・カラム温度 :40℃
・カラム流量 :0.5mL/min
・溶離液A:0.1%ギ酸水溶液
・溶離液B:アセトニトリル
・濃度勾配条件(体積%)
時間 溶離液A 溶離液B
0.00分 100% 0%
15.00分 50% 50%
15.01分 0% 100%
20.00分 0% 100%
・注入量 :2μL
・検出器 :MS(ESI-Posi.)
・検出m/z :211.14(cyclo(Leu-Pro))
:229(Leu-Pro)
・Cone電圧 :40V
【0049】
(3)pHの測定
pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて、試料を20℃に温度調整をして測定した。
【0050】
(4)コーヒー豆抽出物の製造
L値50のコーヒー豆(ベトナム産)400gをドリップ抽出器に仕込み、ドリップ抽出器下部に底湯0.25Lをはった後、ドリップ抽出器上部からシャワーにより1.02Lの温水を供給し、10分間その状態を保持した。保持後にシャワーにより温水を供給しながら、ドリップ抽出器下部から12.5g/10秒の速度で引抜を行った。採液量が2.4Lに達したときに採液を止め、本採液を抽出液とした。得られた抽出液を、スプレードライヤーを用いて乾燥し、粉末状のコーヒー豆抽出物を得た。粉末状のコーヒー豆抽出物中のクロロゲン酸類量は36質量%、cyclo(Leu-Pro)量は3質量ppmであった。
【0051】
〔スポーツ飲料〕
実施例1~12、比較例1~3及び参考例1
表1に示す各成分を配合し、撹拌してスポーツ飲料を製造した。各飲料について分析及び官能評価を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0052】
[官能評価]
各実施例、比較例及び参考例で得られた飲食品を飲食したときの「クロロゲン酸類由来の収斂味」、各飲食品の「鼻抜け香」及び「後味の苦味」について、専門パネル2名が官能試験を行った。官能試験は、各パネリストが「クロロゲン酸類由来の収斂味」、各飲食品の「鼻抜け香」及び「後味の苦味」の評価基準を、下記の評価基準とすることに合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。
【0053】
クロロゲン酸類由来の収斂味の評価基準
クロロゲン酸類由来の収斂味は、飲食したときにクロロゲン酸類由来の収斂味が感じられるか否かを観点に、比較例1飲料のクロロゲン酸類由来の収斂味の評点を「5」とし、参考例1の飲料のクロロゲン酸類由来の収斂味の評点を「1」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。
評点5:クロロゲン酸類由来の収斂味をかなり強く感じる(比較例1相当)
4:クロロゲン酸類由来の収斂味をやや強く感じる
3:クロロゲン酸類由来の収斂味を感じるが気にならない
2:クロロゲン酸類由来の収斂味をわずかに感じる
1:クロロゲン酸類由来の収斂味をほとんど感じない(参考例1相当)
【0054】
各飲食品の鼻抜け香の評価基準
各飲食品の鼻抜け香は、飲食したときに各飲食品特有の香りが感じられるか否かを観点に、参考例1の飲料の鼻抜け香評点を「5」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。
評点5:強く感じる(参考例1相当)
4:やや強く感じる
3:少し強く感じる
2:わずかに感じる
1:ほとんど感じない
【0055】
後味の苦味の評価基準
後味の苦味は、飲食したときに各飲食品特有の香味とは異なる苦味が感じられるか否かを観点に、比較例2の後味の苦味評点を「5」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。
評点5:強く感じる(比較例2相当)
4:やや強く感じる
3:少し強く感じる
2:わずかに感じる
1:ほとんど感じない
【0056】
【0057】
【0058】
実施例13、比較例4及び参考例2
表2に示す各成分を配合し、撹拌してスポーツ飲料を製造した。各飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、参考例2の飲料の鼻抜け香評点を「5」として評価した以外は、実施例1と同様に評価した。
その結果を表2に併せて示す。
【0059】
【0060】
実施例14、比較例5及び参考例3
表3に示す各成分を配合し、撹拌してスポーツ飲料を製造した。各飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、参考例3の飲料の鼻抜け香評点を「5」として評価した以外は、実施例1と同様に評価した。
その結果を表3に併せて示す。
【0061】
【0062】
〔炭酸飲料〕
実施例15、比較例6及び参考例4
表4に示す各成分を配合し、二酸化炭素をガスボリュームが2.3GV(20℃の時)になるように吹き込み炭酸飲料を製造した。各飲料について分析及び官能評価を行った。なお、成分の分析、pH値の測定は、完成した炭酸飲料を前記の条件に従い攪拌後に測定するものとする。官能評価は炭酸が含まれる状態において評価するものとし、参考例4の飲料の鼻抜け香評点を「5」として評価した以外は、実施例1と同様に評価した。
その結果を表4に併せて示す。
【0063】
【0064】
〔乳酸菌飲料〕
実施例16~18、比較例7及び参考例5
表5に示す各成分を配合した後、適宜クエン酸を加えて表5に示すpHに調整して乳酸菌飲料を製造した。各飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、参考例5の飲料の鼻抜け香評点を「5」として評価した以外は、実施例1と同様に評価した。
その結果を表5に併せて示す。
【0065】
【0066】
〔果汁飲料〕
実施例19~22、比較例8及び参考例6
表6に示す各成分を配合した後、適宜クエン酸を加えて表6に示すpHに調整して果汁飲料を製造した。各飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、参考例6の飲料の鼻抜け香評点を「5」として評価した以外は、実施例1と同様に評価した。
その結果を表6に併せて示す。
【0067】
【0068】
〔果汁ゼリー〕
実施例23~25、比較例9及び参考例7
オレンジジュースを電子レンジで80℃以上に加熱し、攪拌しながら、ゼラチンを加え溶解させた。その後、クロロゲン酸及びcyclo(Leu-Pro)を表7に示す指定量加えて溶解させた。4℃で3時間冷却し、ゼリーを製造した。各ゼリーについて分析及び官能評価を行った。官能評価は冷蔵庫から取り出してすぐの状態で評価するものとし、参考例7のゼリーの鼻抜け香評点を「5」として評価した以外は、実施例1と同様に評価した。pH及び分析は室温に戻して粉砕後に測定するものとする。なお、分析については、破砕した試料を15mlの遠沈管へ約10ml入れ、20℃、3000rpmで遠心分離後、上澄み液をさらに0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した液を用いた。
その結果を表7に併せて示す。
【0069】
【0070】
〔スポーツ飲料〕
実施例26~28
表8に示す各成分を配合し、撹拌してスポーツ飲料を製造した。各飲料について分析及び官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同様に評価した。
その結果を表8に併せて示す。
【0071】
【0072】
実施例29~30
ぶどう糖2g、クエン酸0.15g、クエン酸ナトリウム0.1g、食塩0.2g、グレープフルーツ香料0.1g、コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸(Chlorogenic Acid Hydrate、東京化成工業(株))、cyclo(Leu-Pro)(富士フィルム和光純薬(株))をイオン交換水中に加えた後、攪拌して、表9に示す組成のスポーツ飲料を100g製造した。各飲料について官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同様に評価した。
分析及び官能評価の結果を表9に併せて示す。
【0073】
【0074】
表1~表9から、クロロゲン酸類に対して所定のジペプチドを特定の質量比で含有させることで、クロロゲン酸類を含有しながらも、クロロゲン酸類由来の収斂味が抑制され、かつ、飲食品本来の鼻抜け香が感じられる飲食品組成物が得られることがわかる。