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特開2024-79662時計の為のムーブメント、例えばクロノグラフムーブメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079662
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】時計の為のムーブメント、例えばクロノグラフムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04F 7/08 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G04F7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023203268
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】22210664.3
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522286159
【氏名又は名称】フレクサス メカニズムス アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Flexous Mechanisms IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ウィーク,シブレン レンナルト
(72)【発明者】
【氏名】スプルート,ヨハネス ヴィルヘルムス ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルゼンダール,ヤン マールテン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルラー,ロビン フランセス ルイーズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より少ない部品を有する及び/又はより少ない組み立てを必要とするムーブメントを提供する。
【解決手段】時計の為のムーブメントであって、ムーブメントは、回転可能なクロノグラフ秒針又は分カウンタを含むインジケータ、を備えており、インジケータは、順番に、カム2、6と、少なくとも、ブレーキ機構20がインジケータと係合してインジケータを回転位置に維持するところの第1の位置と、ブレーキ機構20がインジケータを解放するところの第2の位置との間で回転可能なブレーキ機構20とを備えている。更に、カム2、6、従ってインジケータをデフォルトの位置、例えばゼロ又は開始位置、に戻す為のリセット機構30を更に備えており、カム2、6、ブレーキ機構20の少なくとも1部、及びリセット機構30の少なくとも1部が同じ層に位置付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の為のムーブメントであって、該ムーブメントは、回転可能なインジケータ(2-4;6,7)、例えば、クロノグラフ秒針(2-4)又は分カウンタ(6,7)を含むインジケータ、を備えており、前記インジケータは、順番に、カム(2;6)と、少なくとも、ブレーキ機構(20;11)が前記インジケータ(2-4;6,7)と係合して前記インジケータを回転位置に維持するところの第1の位置と、前記ブレーキ機構(20;11)が前記インジケータを解放するところの第2の位置との間で回転可能なブレーキ機構(20;11)とを備えており、ここで、前記ムーブメントが、前記カム(2;6)、従って前記インジケータ(2-4;6,7)をデフォルトの位置、例えばゼロ又は開始位置、に戻す為のリセット機構(30)を更に備えており、並びに前記カム(2;6)、前記ブレーキ機構(20)の少なくとも1部、及び前記リセット機構(30)の少なくとも1部が同じ層に位置付けられることを特徴とする、前記ムーブメント。
【請求項2】
前記ブレーキ機構(20,26)が、前記リセット機構(30,38)によって操作可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カム(2;6)が、その上面及び/又はその底面に、内部カム面(2A;6A)を画定する凹部を備えており、前記ブレーキ機構(20)又は前記リセット機構(30)が、前記凹部内に延在するところの、そして、少なくとも前記インジケータのブレーキ又はリセットの間に、前記内部カム面(2A;6A)を係合するところの突起(36A)を備えている、請求項2又は請求項1の序文に記載のムーブメント。
【請求項4】
前記カム(a)の前記ブレーキカム面(2B)が、滑らかであり及び/又は同心であり、及び/又は前記リセットカム面(2A)が偏心である、請求項3に記載のムーブメント。
【請求項5】
前記インジケータ(2-4;6,7)が、減速部を介して前記カムに接続されている、請求項1~4のいずれか1項に記載又は請求項1の序文に記載のムーブメント。
【請求項6】
前記カム(2;6)が、複数の前記突出部間に3以上、好ましくは4以上、の凸部と、複数の凹部とを備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載のムーブメント。
【請求項7】
前記ブレーキ機構(20)が前記凸部と係合し、及び前記リセット機構(30)が前記凹部と係合する、請求項6に記載のムーブメント。
【請求項8】
前記ブレーキ機構(20)は、前記カム(2;6)に向かって移動可能な及び該カムから離れる方向に移動可能な2以上のブレーキ要素(23,23A,23B)を備えている、請求項1~7のいずれか1項に記載又は請求項1の序文に記載のムーブメント。
【請求項9】
前記ブレーキ要素(23,23A,23B)が前記カム(2)に向かって動かされたときに、前記ブレーキ要素の、前記カムに面する表面がリングを形成し、好ましくは滑らかなブレーキ面を提供する、請求項8に記載のムーブメント。
【請求項10】
前記ブレーキ機構(20)の前記第2の位置において、前記ブレーキ要素(23,23A,23B)が、前記カム(2)と相互作用する為の更なる要素(37)の為の通路を提供する、請求項8又は9に記載のムーブメント。
【請求項11】
少なくとも2つの安定位置を有するコントローラ機構(40)であって、該ブレーキ機構をその第1の位置と第2の位置との間で移動させる為に前記ブレーキ機構(20)に接続されるところの前記コントローラ機構(40)を備えており、該コントローラ機構は好ましくは、(人間の)ユーザが前記コントローラ機構を作動させることを可能にするところのプッシャー(46)に接続される、請求項1~10のいずれか1項に記載のムーブメント。
【請求項12】
前記ムーブメントがフレーム(10)を備えており、前記ブレーキ機構(20)及び/又は前記リセット機構(30)及び/又は存在する場合、前記コントローラ(40)が、前記フレーム(10)によって及び/又は前記フレーム(10)内に、好ましくは屈曲部(22,42,34,35)によって、支持される、請求項1~11のいずれか1項に記載のムーブメント。
【請求項13】
前記フレーム、前記ブレーキ機構(20)、前記リセット機構(30)及び/又は存在する場合、前記コントローラ(40)及び/又は前記屈曲部(22,42,34,35)が、モノリシックであり、好ましくはケイ素から作られている、請求項12に記載のムーブメント。
【請求項14】
ブレーキ機構(20)及びリセット機構(30)を画定するモノリシック層、及び存在する場合に、請求項1~13のいずれか1項に記載の、フレーム、コントローラ(40)及び/又は屈曲部(22,42,34,35)を備えている、時計ムーブメントの為のモジュール。
【請求項15】
腕時計、例えばクロノグラフ、であって、請求項1~13のいずれか1項に記載のムーブメントを備えている、前記腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の為のムーブメントに関し、該ムーブメントは、回転可能なインジケータ、例えば、クロノグラフ秒針(chronograph seconds hand)又は分カウンタ針(minute counter hand)を含むインジケータ、を備えている。該インジケータは、順番に、カムを備えており、典型的には該クロノグラフ秒針又は分カウンタ針と同じシャフト上にカムを備えており、又は該カムに結合されており、該カムは例えば、ハート形(heart-shaped)、星形(star-shaped)、葉形(lobbed)、ペタロイド(petaloid)、又はギヤ(gear)であることができる。該ムーブメントは、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で移動可能なブレーキ機構(brake mechanism)を更に備えており、ここで、該ブレーキ機構はインジケータに係合し、従来のクロノグラフの場合に、該ブレーキ機構は典型的には、該クロノグラフ秒針と同じシャフト上のギヤに係合して、該インジケータを(選択された)回転位置に(一時的に)維持し、ここで、該ブレーキが該インジケータを解放する、例えば係合解除(disengage)する。
【背景技術】
【0002】
クロノグラフムーブメント(chronograph movements)の詳細な記述は、2015年12月15日付けの“How Column-Wheel Chronographs work (とりわけ、the Lange L951 movements)”<https://www.watchprosite.com/a.-lange-and-s%C3%B6hne/how-column-wheel-chronographs-work-notably-the-lange-l951-movements-/10.1026673.7293393/>に記載されている。
【0003】
米国特許出願公開第US2018/151317号明細書は、2つの安定位置結合状態と非結合状態との間で交互に切り替えられることができる操作部材(operating member)とスイッチング部材(switching member)とを備えている結合装置を有するクロノグラフ機構に関する。それは磁気システムを備えており、該磁気システムは、スイッチング部材に固定された第1の双極磁石(first bipolar magnet)と、該第1の双極磁石との磁気相互作用を継続的に提供する為にスイッチングデバイスの支持体に固定された第2の双極磁石(second bipolar magnet)と、及び操作部材を形成し且つ2つの操作位置の間で往復運動を受けることができるところの少なくとも1つの高透磁性要素(highly magnetically permeable element)とから形成されている。
【0004】
オランダ国特許出願第NL2023822号明細書及びオランダ国特許出願第NL2023823号明細書は、これらの公報の各図5において、「… another embodiment in which the wheel 3 does not only dictate the positions of a horizontal clutch 25 and a brake lever 24, but wherein these two levers are incorporated in the wheel 3. The wheel 3 according this embodiment also has at least two stable positions, making it possible to mesh the gear of a running gear train 21, 23 with another gear train 22 of the chronograph and to release the brake lever 24 on the chronograph hand 22.」(訳:別の実施形態では、ホイール3が水平クラッチ25及びブレーキレバー24の位置を決定するだけでなく、これら2つのレバーがホイール3内に組み込まれている。この実施態様に従うホイール3はまた、少なくとも2つの安定位置を有し、これにより、走行ギヤ列(running gear train)21及び23のギヤをクロノグラフの別のギヤ列22と噛合させること及びクロノグラフ針22のブレーキレバー24を解放することを可能にする。)である旨を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より少ない部品を有する及び/又はより少ない組み立てを必要とするムーブメント、例えばクロノグラフムーブメント、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の為に、本発明に従うムーブメントはカム、従って該インジケータをデフォルトの位置、例えばゼロ又は開始位置、に戻す為のリセット機構によって特徴付けられ、並びに該カム、該ブレーキ機構、及び該リセット機構が同じ層に位置付けられることによって特徴付けられる。
【0007】
本発明は、同じカム、すなわちブレーキ機構(brake mechanism)及びリセット機構(reset mechanism)の両方によって作動される単一のカム、によって、インジケータの解除(始動の間)、停止及びリセットを可能にする。従って、該ムーブメントがより少ない部品で構成されることができ、より少ない組み立てを必要とし、及び/又はより薄くされることができる。
【0008】
1つの実施態様において、該ブレーキ機構が該リセット機構によって操作されることができ、好ましくは直接操作されることができる。このことにより、(クロノ秒カムからのブレーキを同時に係合解除することによる)リセット、例えばクロノ秒インジケータのリセット、を容易にし、及び構成に依存して、伝統的に複雑な機構、すなわちクロノグラフにおける所謂フライバック機能(flyback function)、の直接的な実装を可能にする。
【0009】
1つの実施態様において、該カムは、その上面及び/又はその底面に、内部偏心カム面(internal,eccentric cam surface)、例えば「スネール」(snail)面の円形偏心面(circular eccentric surface)、を画定する凹部、例えばキャビティ(cavity)又は溝(groove)、を備えており、並びに該リセット機構は、前記凹部内に延在するところの、そして、少なくとも該インジケータのリセットの間に、該カム面を係合するところの突起を、例えばアーム(arm)又はレバー(lever)の端部に備えている、1つの実施態様において、該カムの外面は滑らかであり、及び/又は同心である。この実施態様はまた、該ブレーキ機構と該リセット機構とが、異なる層内に配置される実施態様の為に適している。
【0010】
従って、該カムは、単一の要素において、該ブレーキ機構の為の及び該リセット機構の為の別個のカム面を提供し、並びに、これらの面の各々は、それらの特定の目的、ブレーキ又はリセットの為に最適化されることができる。
【0011】
別の実施態様において、該インジケータが減速部(reduction)、例えばギヤ減速部(gear reduction)、を介して該カムに接続される。これにより、該減速部を介して、及び該インジケータ、例えばクロノ秒、と異なる位置から、該インジケータの起動、停止及びリセットが可能になる。また、該減速部は、該カムそれ自体のよりコンパクトな設計を可能にする。
【0012】
1つの実施態様において、該カムは、3以上、好ましくは4以上、の凸部、例えば、(三角形の(triangular))点(points)、ローブ(lobes)、又はペタル(petals)、と、複数の凸部間の複数の凹部とを備えている。
【0013】
1つの実施態様において、該ブレーキ機構は、ブレーキの間、該凸部と係合し、及び該リセット機構は、リセットの間、該凹部と係合する。
【0014】
1つの実施態様において、該凸部の数は縮小比に等しく、例えば、縮小比は5であり、及び該凸部の数は5である。従って、相対的に小さいブレーキ(シュー(shoe))であっても、係合された位置において少なくとも1つの凸部で常に接触し、及び該複数の凹部の各々は該インジケータのゼロ位置に対応する。
【0015】
別の実施態様において、該ブレーキ機構は、該カムに向かって移動可能な及び該カムから離れる方向に移動可能な2以上のブレーキ要素を備えている。従って、該ブレーキは、(多くの)異なる形状の複数のカムの為に適したものとされることができる。
【0016】
1つの改良の態様において、該ブレーキ要素がカムに向かって移動されたときに、該ブレーキ要素の、該カムに面する表面がリングを形成する。該リングは360°回動に沿った任意の位置で該インジケータをブレーキし、そして、該インジケータを選択された位置に維持する。
【0017】
1つの実施態様において、該ブレーキ要素の、該カムに面する表面が滑らかである。ギヤをギザギザのあるブレーキ面(jagged braking surface)を有するレバーと係合させることによって、従来の個別ブレーキとは対照的に、連続ブレーキが提供される。
【0018】
1つの実施態様において、該ブレーキ機構の該第2の位置において、該ブレーキ要素が、該カムと相互作用する更なる要素の為の通路を提供する。
【0019】
1つの実施態様において、該インジケータをデフォルト位置にリセットする為に該ブレーキがその第2の(開)位置にあるときに、該リセット要素は、該カムに向かって移動可能であり及び該カムから離れる方向に移動可能である。
【0020】
1つの実施態様において、複数の該ブレーキ要素のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、が2つの安定位置を有する。1つの改良の態様において、複数の該ブレーキ要素のうちの少なくとも2つは、複数の該ブレーキ要素のうちの別のものによって操作され、好ましくは第1の位置と第2の位置との間で半径方向に移動する。
【0021】
別の実施態様は、少なくとも2つの安定位置を有し且つ該ブレーキ機構に接続されて、該ブレーキ機構をその第1の位置と第2の位置との間で移動させるところのコントローラ機構を備えており、該コントローラ機構は、好ましくは(人間の)ユーザが該コントローラ機構を作動させることを可能にするところのプッシャー(pusher)に接続される。
【0022】
別の実施態様はフレームを備えており、該ブレーキ機構及び/又は該リセット機構及び/又は存在する場合、該コントローラが、該フレームによって及び/又は該フレーム内に、好ましくは屈曲部によって、支持される。
【0023】
1つの改良の態様において、該フレーム、該ブレーキ機構、該リセット機構及び/又は存在する場合、該コントローラ及び/又は該屈曲部が、モノリシック(monolithic)であり、すなわち単一の素材から作成され、好ましくはケイ素原子から作られている。
【0024】
少なくとも該ブレーキ機構と該リセット機構とを含む層、及び任意的にまた、該フレーム、該コントローラ機構、及び/又は該屈曲部が、1000μm未満、好ましくは800μm未満、好ましくは700μm未満、好ましくは600μm未満、例えば300μm~550μmの範囲、250μm~500μmの範囲、の厚さを有することが好ましい。
【0025】
1つの実施態様において、トルク及びエネルギーを脱進機(escapement)及び振動子(oscillator)に伝達する為に、該ムーブメントが、エネルギー貯蔵器(energy storage)(例えば、バレル式ぜんまい(barrelled mainspring))、並びにギヤ列、例えば、中央ホイールと、第3のホイールと第4のホイールとを備えている歯車列、を備えており、ここで、該回転可能なインジケータは、好ましくは該コントローラ機構の手段によって、該ギヤ列に接続可能(始動/停止)である。
【0026】
本発明はまた、時計ムーブメントの為のモジュールに関し、該モジュールはブレーキ機構とリセット機構とを画定するモノリシック層、並びに存在する場合には、上述された、該フレーム、該コントローラ、及び/又は該屈曲部を備えている。時計ムーブメント中に一旦設置されると、該ブレーキ機構及びリセット機構、並びに存在する場合、該コントローラは、上記で説明された様式で、1以上の該インジケータ及び1以上の該カムと協働する。該モジュールは該ブレーキ機構及びリセット機構を提供し、並びに存在する場合に、好ましくは、単一のコンプライアントコンポーネント(compliant component)として、フレーム、コントローラ、及び/又は屈曲部をまた提供する。該コンポーネント内の複数の要素の個々の組み立て及び位置合わせは、原則として必要とされない。
【0027】
本発明はまた、上記されたムーブメントを備えている腕時計、例えばクロノグラフ、に関する。
【0028】
1つの実施態様において、グラウンド(ground)、少なくとも1つの弾性リンク(resilient link)、及び質量体(mass)はコンプライアント機構(compliant mechanism)を形成し、及び/又はモノリシックであり、すなわち、単一の素材から作成される。
【0029】
好適な材料の例は、ケイ素、ベリリウム銅、及び鋼を包含する。
【0030】
本発明はまた、上記されたムーブメントを備えている腕時計に関する。
【0031】
本発明のフレーム枠組み内において、機構が運動、力、又はエネルギーを伝達又は変換する為に使用される機械的デバイスである。コンプライアントメカニズムは可動ジョイントのみからではなく、可撓性部材の撓みから、それらの可動性の少なくとも一部を獲得する。語「カム」は、1以上の突起(projections or)又は凸部(protrusions)を有する及び/又は1以上の偏心空洞を有する回転可能な部品を備えている。1以上の突起、凸部及び/又は偏心空洞に加えて、1以上の該カムは、同心カム面を有することができる。語「減速」(reduction)は、回転速度の減少(従って、トルク(torque)の増加)及びトルクの減少(従って、速度の増加)を包含する。
【0032】
以下、本発明の実施態様が示されている添付の図面を参照しながら、本発明は以下で更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明に従うクロノグラフモジュールの第1の実施態様の上面図であり、凹型ブレーキ・リセット・カム(recessed brake-and-reset cam)を含む。
図2A図2Aは、図1のクロノグラフモジュールの様々な状態(開始(start)/実行(running)、停止(stop)、リセット(reset)、フライバック(flyback))の上面図である。
図2B図2Bは、図1のクロノグラフモジュールの様々な状態(スタート(start)/実行(running)、停止(stop)、リセット(reset)、フライバック(flyback))の上面図である。
図2C図2Cは、図1のクロノグラフモジュールの様々な状態(開始(start)/実行(running)、停止(stop)、リセット(reset)、フライバック(flyback))の上面図である。
図2D図2Dは、図1のクロノグラフモジュールの様々な状態(開始(start)/実行(running)、停止(stop)、リセット(reset)、フライバック(flyback))の上面図である。
図2E図2Eは、図1のクロノグラフモジュールの様々な状態(開始(start)/実行(running)、停止(stop)、リセット(reset)、フライバック(flyback))の上面図である。
図3A図3Aは、本発明に従う、ブレーキ・リセット・カム及びリセットレバー(reset lever)の斜視図及び断面図である。
図3B図3 Bは、本発明に従う、ブレーキ・リセット・カム及びリセットレバー(reset lever)の斜視図及び断面図である。
図4A図4Aは、本発明に従うクロノグラフモジュールの第2の実施形態の様々な状態(開始/実行、停止、リセット)の上面図である。
図4B図4Bは、本発明に従うクロノグラフモジュールの第2の実施形態の様々な状態(開始/実行、停止、リセット)の上面図である。
図4C図4Cは、本発明に従うクロノグラフモジュールの第2の実施形態の様々な状態(開始/実行、停止、リセット)の上面図である。
図5A図5Aは、本発明に従うクロノグラフモジュールの第3の実施形態の様々な状態(開始/実行、停止、リセット)の上面図である。
図5B図5Bは、本発明に従うクロノグラフモジュールの第3の実施形態の様々な状態(開始/実行、停止、リセット)の上面図である。
図5C図5Cは、本発明に従うクロノグラフモジュールの第3の実施形態の様々な状態(開始/実行、停止、リセット)の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
類似若しくは同一である又は類似若しくは同一の機能を果たすところの異なる実施態様における要素は、同じ参照番号によって参照される。
【0035】
図1は、クロノグラフ時計の為のムーブメントにおけるクロノグラフモジュール1の第1の実施態様を示す。該モジュールは、下記を備えている:
クロノグラフ秒ホイール4及び針の為にシャフト3上に取り付けられた第1のカム2(他方では、ムーブメントのダイヤル側;該針は図示されていない)、並びに分カウンタの為にシャフト7上に取り付けられた第2のカム6(該ムーブメントの他方の側上の針でもある;図示されていない);
少なくとも第1又は停止位置(図1、2C、及び2F)の間で移動可能なブレーキ機構20、ここで、該ブレーキ機構は、回転位置、例えばゼロ位置又は経過時間、及び第2又は開始(解放された)位置(図2A、2B、2D、2E及び2G)、にクロノ秒針を(一時的に)維持する為にクロノ秒針のカムと係合し、ここで、該ブレーキ機構が該カムと係合解除する;
クロノ秒針と分カウンタとの両方のカムを、夫々のデフォルトの位置、例えば、針/カウンタの各々のゼロ又は開始位置、に戻す為のリセット機構30;並びに、
少なくとも2つの安定位置を有するコントローラ機構40であって、該ブレーキ機構をその第1の位置と第2の位置との間で移動させる為に該ブレーキ機構に動作可能に接続されるところの上記コントローラ機構40、ここで、該コントローラ機構は好ましくは、(人間の)ユーザが該コントローラ機構を作動させることを可能にするところのプッシャーに接続される。
【0036】
ブレーキ機構(brake)、リセット(reset)機構、及びコントローラ(controller)機構は、以下に詳述されているようにフレーム(10)に、好ましくは屈曲部によってフレーム(10)に取り付けられる。上述された機構、フレーム、及び屈曲部はモノリシックであり、300~800μmの範囲の厚さを有する単層中に完全に配置され、好ましくはシリコンから、例えば、シリコンウェハ内で製造されるシリコンから、エッチングの手段によって、例えばDRIE、によって製造される。
【0037】
この例において、カム2及び6の各々は、カム、従って対応する針又はカウンタをリセットする為の内部偏心カム面2A及び6Aと、カム2及び6をブレーキ又はロックする為の外部、すなわち円周、及び同心(円形)面2B及び6Bとを有する。より具体的には分カウンタの外面には、複数の歯、例えば30又は60の歯、が設けられているが、クロノグラフ秒針の外面はノッチ2Cを除いて滑らかである。
【0038】
分カウンタを前進させる為のレバー11はフレーム10に取り付けられ、例えば、2つの平行な屈曲部12によって並進可能に取り付けられ、ここで、レバーの第1の端部13はクロノ秒針の為にカム2の外面に対して付勢され(urged)、第2の端部は分カウンタのカム6の歯のうちの1つと係合するところのフック14を有する。クロノ秒針及びカムが完全に回転する毎に、レバーの第1の端部がノッチ2C内に落ち、そして、外レバーの第2の端部上のフック14が1ステップにわたって分カウンタのカムを前方に、例えば、時計のダイヤル上の分の間、サブダイヤル上の1分に対応する。ラチェット(ratchet)15は、ステップ/増加の後に該カムを所定の位置にロックする。
【0039】
該ブレーキ機構は、該フレームに取り付けられた主要素又は中央要素、例えば2つの平行な屈曲部22によって該フレームに並進可能に取り付けられた主要素又は中央要素、を備えており、それは、サブ要素を画定するか又はそれに下記のものが取り付けられる:
ブレーキ、例えばブレーキシュー(brake shoe)23、ここで、該ブレーキは、クロノグラフ秒の為の、該カムの外部カム面と同じ半径を有する平滑な湾曲したブレーキ面を有する、
第1の停止面24及び第2の停止面25、ここで、これらの停止面は、コントローラ機構(以下に説明されている)との相互作用を可能にする、並びに、
第3の停止面26、ここで、該停止面は、フライバック機能(flyback-function)を共に可能にし、以下に説明されているように、該リセット機構によって該カムからブレーキ面を係合解除する。
【0040】
該コントローラ機構40は、2つの安定位置を定義する半径方向に延在する屈曲部42によって、時計ムーブメントの秒ギヤと同心で、時計の文字盤上の連続した且つ典型的には中央の秒針(図示せず)を担持して、フレームに回転可能に取り付けられる。該コントローラ機構は更に、クロノグラフの所謂、中間ホイール(intermediate wheel)44を担持する延在部、例えばアーム43、を有し、ここで、該ホイールは、該クロノグラフの開始位置又は走行位置において、クロノグラフ秒ホイール(chronograph seconds wheel)を連続秒ホイール(continuous seconds wheel)に接続する。
【0041】
該コントローラ機構は開始/停止レバー46によって操作されることができるところのスイッチ45を備えており、それは、順番に、クロノグラフ時計のハウジング内の押しボタンによって操作されることができる。該開始/停止レバーは該フレームに取り付けられ、例えば、2つの平行な屈曲部47によって並進可能に取り付けられ、及びカンチレバー屈曲部(cantilevered flexure)48を備えている。この例においてスイッチが2つの窪み(indentations)を有し、及び該カンチレバー屈曲部の自由端には小さなディスク49又は丸い端部が備えられている。
【0042】
該コントローラは更に、該ブレーキ機構と相互作用するカンチレバー屈曲部50を有する。この例において、該カンチレバー屈曲部の端部には、ブレーキ機構20上の第1の停止面24に当接しながら、ブレーキシュー23をクロノ秒カム2から引き離す為のブロック51が設けられている。
【0043】
開始/停止レバー46が押し込まれるときに、カンチレバー屈曲部48の自由端は複数のインデントのうちの1つと係合し、そして続いて、スイッチ45を安定停止位置から安定開始位置に押し(図2A)、ブレーキ機構20及びシューを該カム面から引き離す。再び押されるときに、該カンチレバー屈曲部の自由端は凹部の他方と係合し、そして続いて、該スイッチを安定開始位置から安定停止位置に押し(図2C)、ブレーキ機構20のサスペンション22は、ブレーキシュー23をカム面2B上に付勢する(urge)。
【0044】
この例におけるリセット機構30は、主レバー31と、作動レバー32、例えば屈曲部33による相互接続部である作動レバー32、とを備えている。レバー31及び32の両方が、屈曲部34及び35によってフレーム10に回転可能に取り付けられる。該主レバーは少なくとも4つの操作セクション、例えばアーム36及び37、を備えており、そのうちの2つには、該カム中の凹部内へと延在し且つ少なくともクロノグラフ秒及び分カウンタの再設定の間に、夫々の内部カム面と係合するところの凸部(36A)が設けられている。図3A及び図3Bはクロノ秒針の為のカム2の例を示し、ここで、該カムは、該クロノ秒のシャフト3と同心の円形外面2B、及びシャフト3と偏心の円形内面2Aとを有する。外部カム面には、分カウンタを前進させる為のレバー11の遠位端の為のノッチ2Cが設けられている。内部カム面には、クロノ秒のゼロ位置を規定するノッチ2Dが設けられている。すなわち、アーム36はその突出部を該内部カム面上に引っ張り、ここで、該カム及びクロノ秒針は、該内部カム面の最大半径がシャフト3に相対的に最大となる位置まで回転し、そしてノッチ2D内に入る。カム2、アーム36、及び突起36Aは全て、アーム36の上面を含む仮想平面と、カム2の下端を含む仮想平面との間の同じ層中に位置する。更に、この例において、該カムがクロノ秒のギヤ4とモノリシックである。当然のことながら、該カム及びギヤは、別個の部品として提供されることができる。
【0045】
リセット機構30の第3のセクション38は該ブレーキ機構が停止位置にあるときに、該ブレーキ機構を直接動作させることを可能にする為に、該ブレーキ機構上の第3の停止面26に向かって延在する。
【0046】
第4のセクション39はコントローラ機構40に向かって延在し、以下でより詳細に説明されるフライバック機能(flyback function)を提供する。
【0047】
クロノグラフの動作は、下記の通りである。図1は、クロノ秒が時計の連続秒から係合解除され、クロノ秒と分カウンタがゼロであり、クロノ秒カムのカム面上にブレーキシューがあるところのクロノグラフである。クロノグラフ腕時計のスタート/ストップの押しボタンが押されるときに(図2A)、カンチレバー屈曲部(48)はスイッチ(45)と係合し、そして、コントローラ機構(40)のモーメントに打ち勝ち、次に、それは第2の安定位置に移動し、ここで、ブレーキ(20)はクロノ秒のカム(2)を係合解除し、中間ホイール(44)又はクラッチはクロノ秒ホイールを係合し、すなわち、クロノ秒ホイール(4)を連続秒ホイール(41)に接続し、該クロノグラフは走行を開始する。該クロノ秒がフルターン(full turn)を完了すると(図2B)、分レバー(11)がノッチ(2C)内にはまり、そして、分カウンタを更に1つ引き上げる。ラチェット(ratchet)(15)は、分カウンタが反対方向に回転することを防止する。
【0048】
クロノグラフ時計のスタート/ストップの押しボタンが再び押されるときに(図2C)、カンチレバー屈曲部(48)はスイッチ(45)と係合し、そして、コントローラ機構(40)のモーメントに打ち勝ち、次に、それは第1の安定位置に戻り、ここで、該ブレーキは該クロノ秒のカム(2)と係合し、中間ホイール(44)又はクラッチはクロノ秒ホイール(4)を係合解除し、即ち、クロノ秒ホイール(4)を連続秒ホイール(41)から切り離し、そして、該クロノグラフは停止する。
【0049】
次に、リセット機構(30)の作動レバー(32)が押される(図2D)。その結果、リセット機構(30)の第3のアーム(38)はブレーキ機構(20)をクロノ秒カム(2)から持ち上げ、そして、カム(2;6)はクロノ秒及び分カウンタのゼロ位置に引っ張られる。
【0050】
本実施例はまた、フライバック機能(flyback function)の追加の「複雑化」(complication)、すなわち、該クロノグラフを最初に停止すること無しに、実行中のクロノグラフをリセット及び再起動する選択肢、を提供する。該クロノグラフが動作している間にリセットボタンが押される場合に(図2E)、リセット機構(30)は該クロノグラフが停止されたとき(図2D)のような動作を実行し、そして、これらの機能を実行する直前に、リセット機構の第4のセクション又はアーム(39)はコントローラ機構(40)の延長されたアーム(43)をクロノ秒カム(2)から離れるように押し、中間ホイール(44)をクロノ秒ホイール(4)から係合解除する。該リセットボタンが離される場合に、ゼロ位置から、スタート/ストップのボタンを押すこと無しに、該クロノグラフは再び動作を開始する。
【0051】
図4A図4C図1図2Eの例に多くの観点で対応するところの、本発明に従うクロノグラフモジュールの別の例を示すが、複数の該インジケータは各々、減速部(reduction)、例えばギヤ減速機(gear reduction)、を介して夫々のカムに接続される。該カムは、クロノ秒及び分カウンタを担持するギヤ(gears)の直径よりも大きい直径を有するギヤ上にある。この例において、該カムは星形であり、3以上、例えば5つの三角形の点と、これらの点の間の凹部の窪みとを備えている。該クロノ秒の減速比がまた5であり、同心ブレーキシューは、少なくとも(360/5=)72度の円弧に及ぶ。該クロノグラフが停止するときに(図4B)、該ブレーキ機構は三角形の点のうちの1つ又は場合によっては2つに係合して、該ギヤと該クロノ秒インジケータとを選択された位置に維持する。
【0052】
リセットの間に(図4C)、該リセット機構は凹部のうちの1つと係合し、そして、星形カムを、該インジケータのゼロ位置に各々対応する5つのカム位置のうちの1つに押す。
【0053】
図5A図5Cは、図1図2Eにおける例に対する多くの観点で対応するところの、本発明に従うクロノグラフモジュールの別の例を示すが、該ブレーキ機構はこの例において単一の点又は頂点を有するところの、カム2に向かって移動可能な及び該カム2から離れて移動可能な2以上のブレーキ要素23、23A及び23Bを備えている。該ブレーキ要素が該カムに向かって移動されるときに(図5A)、該ブレーキ要素の、該カムに面する表面が、滑らかな内表面を有するリングを形成する。該リングは360°回動に沿って、該カム上の点又は頂点の任意の位置で該インジケータのブレーキを提供し、及び該インジケータを選択された位置に維持する。リセットの間(図5B)、ブレーキ要素23、23A及び23Bは、リセット要素、例えば、弾性的且つ並進可能に取り付けられたピン37、の為の通路を提供し、該カムと相互作用して、該インジケータをデフォルト位置にリセットする(図5C)。
【0054】
本発明は、記載された実施態様に限定されず、特許請求の範囲内で変更されることができる。例えば、クロノグラフの代わりに、本機構は例えば、逆行デート(retrograde date)又はキーレスワーク(keyless works)にまた適用されることができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
【外国語明細書】