(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079677
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】医療用の変異体アスパラギナーゼポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 9/82 20060101AFI20240604BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240604BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
C12N9/82 ZNA
C12N15/55
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024026564
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2020556768の分割
【原出願日】2019-04-18
(31)【優先権主張番号】62/660,189
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516001834
【氏名又は名称】エランコ・ユーエス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Elanco US Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ハンチュン
(72)【発明者】
【氏名】グェン, ラム
(72)【発明者】
【氏名】チン, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】リー, シー ジアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増強された安定性、薬力学、及び/又は低下した免疫原性を有する変異体アスパラギナーゼポリペプチドに関連する様々な実施態様を提供する。
【解決手段】少なくとも一つのシステイン置換を含む変異体エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi(E.chrysanthemi)・アスパラギナーゼポリペプチドを提供する。変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、ヒト、イヌ、ネコ、及びウマを含む哺乳動物の治療薬として使用することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのシステイン置換を含む変異体エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi(E.chrysanthemi)・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項2】
少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換を含む変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドであって、PEGに結合したとき、対応する野生型E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドと比較して免疫原性が低いか、あるいは抗原性が低い、変異体ポリペプチド。
【請求項3】
対応する野生型E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位又はその空間的に近くのアミノ酸位置に少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換を含む変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項4】
少なくとも一つのシステイン又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸が表面に露出している、請求項1から3の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項5】
野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位が、ヒト又はコンパニオンアニマル種において免疫応答を誘発する、請求項3又は4に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項6】
コンパニオンアニマル種がイヌ、ネコ、又はウマである、請求項5に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項7】
少なくとも一つのアミノ酸置換を含み、置換された該アミノ酸が表面に露出している、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項8】
変異体ポリペプチドがリーダー配列を欠いている、請求項1から7の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項9】
標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸の30%以上が表面に露出している、請求項1から8の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項10】
標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸の35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上が表面に露出している、請求項1から9の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項11】
少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸又は少なくとも一つのアミノ酸が、システイン、リジン、又はPEG結合可能アミノ酸誘導体である、請求項2から10の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項12】
少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸が、三次元タンパク質構造分析によって決定して、免疫原性又は抗原部位から35オングストローム(Å)以下である、請求項1から11の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項13】
少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸が、三次元タンパク質構造解析によって決定して、免疫原性又は抗原部位から30Å以下、25Å以下、20Å以下、15Å以下、10Å以下、又は5Å以下である、請求項1から12の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項14】
配列番号:2など、野生型アスパラギナーゼアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から13の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項15】
野生型E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸配列を含む、請求項2から6及び8から14の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項16】
免疫原性又は抗原性部位が、配列番号:2のアミノ酸位置41、72、265、又は288に対応する、請求項3から6及び8から15の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項17】
少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸置換、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換が、配列番号:2の位置3、4、17、26、37、38、41、42、44、45、47、48、51、53、54、55、56、59、60、68、72、79、82、83、84、85、87、110、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、219、231、239、240、241、243、257、260、261、264、265、267、268、269、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、318、及び322から選択される位置に対応する位置に位置する、請求項1から16の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項18】
少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換又は少なくとも一つのアミノ酸置換が、配列番号:2の位置3、4、17、26、37、38、41、42、44、45、47、48、51、53、54、55、56、59、60、68、72、79、82、83、84、85、87、110、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、219、231、239、240、241、243、257、260、261、264、265、267、268、269、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、318、及び322から選択される位置に対応する位置に位置するシステインである、請求項2から17の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項19】
少なくとも一つのアミノ酸置換又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換が、配列番号:2の位置4、17、26、37、38、41、42、44、45、51、53、54、55、56、59、60、68、79、82、83、84、85、87、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、231、239、240、241、257、260、261、264、267、268、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、及び322から選択される一又は複数のアミノ酸位置に対応する位置のリジンである、請求項2から18の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項20】
配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:8、又は配列番号:9のアミノ酸配列を含む、請求項1から19の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項21】
変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドが、シアル化又はペグ化など、修飾されている、請求項1から20の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項22】
請求項1から21の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドを含む四量体。
【請求項23】
対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドの不対システイン残基に少なくとも一つのアミノ酸置換を含み、少なくとも一つのアミノ酸置換がシステイン以外の任意のアミノ酸を含む、変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項24】
対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位又はその空間的に近くのアミノ酸位置に少なくとも一つのシステイン置換を、又は該アミノ酸位置に少なくとも一対のシステイン置換を含む、請求項23に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項25】
アミノ酸位置に少なくとも一つのシステイン置換又は少なくとも一対のシステイン置換を含む変異体アスパラギナーゼポリペプチドであって、PEGに結合した場合、対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドと比較して免疫原性又は抗原性が低い、変異体ポリペプチド。
【請求項26】
対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位又はその空間的に近くのアミノ酸位置に少なくとも一つのシステイン置換又は該アミノ酸位置に少なくとも一対のシステイン置換を含む変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項27】
少なくとも一つのシステインが部分的に包埋している、請求項24から26の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項28】
システインが部分的に包埋している、少なくとも一つのシステイン置換を含む変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項29】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドがリーダー配列を欠いている、請求項24から28の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項30】
野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位が、ヒト又はコンパニオンアニマル種において免疫応答を誘発する、請求項24から29の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項31】
コンパニオンアニマル種がイヌ、ネコ、又はウマである、請求項30に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項32】
標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステインの5%~25%が表面に露出している、請求項24から31の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項33】
標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステインの5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、又は10%~30%が表面に露出している、請求項24から32の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項34】
少なくとも一つのシステインが、又は少なくとも一対のシステインが、三次元タンパク質構造解析によって決定して、免疫原性又は抗原性部位から35オングストローム(Å)以下である、請求項24から33の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項35】
少なくとも一つのシステイン、又は少なくとも一対のシステインが、三次元タンパク質構造解析によって決定して、免疫原性又は抗原性部位から30Å以下、25Å以下、20Å以下、15Å以下、10Å以下、又は5Å以下である、請求項24から34の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項36】
配列番号:2、配列番号:11、又は配列番号14など、野生型アスパラギナーゼアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項23から35の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項37】
野生型アスパラギナーゼポリペプチドが野生型大腸菌アスパラギナーゼポリペプチドである、請求項23から35の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項38】
野生型アスパラギナーゼポリペプチドが、配列番号:2、配列番号:11、又は配列番号:14を含む、請求項23から37の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項39】
免疫原性又は抗原性部位が、配列番号:11のアミノ酸位置55、56、57、58、114、115、116、117、118、119、201、202、203、204、205、206、207、252、253、254、255、256、257、又は258に対応する、請求項24から38の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項40】
少なくとも一つのシステインが、配列番号:11の51、52、118、119、196、206、285、及び311から選択される一又は複数のアミノ酸位置に対応する位置に位置する、請求項24から39の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項41】
システインの少なくとも一対のそれぞれが、表5に列挙されたC1-C2対のシステイン置換から選択される、請求項24から40の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項42】
システインの少なくとも一対が、配列番号:11のアミノ酸位置116及び120、アミノ酸位置196及び200、又はアミノ酸位置225及び252に対応する位置に位置する、請求項24から41の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項43】
配列番号:12のアミノ酸配列を含む、請求項23から42の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項44】
不対システイン残基が、配列番号:14のアミノ酸位置45、67、及び/又は242に対応する位置に位置する、請求項23から24、27、及び29から42の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項45】
配列番号:15のアミノ酸配列を含む、請求項23から44の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項46】
請求項23から45の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチドを含む四量体。
【請求項47】
請求項23から45の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチドを含む二量体。
【請求項48】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドが、シアル化又はペグ化など、修飾されている、請求項1から47の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項49】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドがチオールペグ化又はアミンペグ化されている、請求項1から48の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
【請求項50】
請求項1から20、及び23から45の何れか一項に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項51】
請求項50に記載の核酸を含むベクター。
【請求項52】
請求項51に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項53】
細胞が原核細胞である、請求項52に記載の宿主細胞。
【請求項54】
原核細胞が、E.クリサンテミ細胞、大腸菌細胞、又はシュードモナス細胞である、請求項53に記載の宿主細胞。
【請求項55】
細胞が真核細胞である、請求項52に記載の宿主細胞。
【請求項56】
真核細胞が酵母細胞である、請求項55に記載の宿主細胞。
【請求項57】
リーダー配列を欠く変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼを発現する大腸菌細胞を培養することを含む、大腸菌細胞において変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼを産生する方法。
【請求項58】
請求項51から56の何れか一項に記載の宿主細胞を培養することを含む、変異体アスパラギナーゼポリペプチドを産生する方法。
【請求項59】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドが細胞ライセートから単離される、請求項57又は請求項58に記載の方法。
【請求項60】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドがペリプラズムから単離される、請求項57から59の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドが、陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、混合モードカラムクロマトグラフィー、及び/又は疎水性相互作用カラムクロマトグラフィーによって単離される、請求項57から60の何れか一項に記載の方法。
【請求項62】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドが還元剤と組み合わされる、請求項57から61の何れか一項に記載の方法。
【請求項63】
還元剤がDTTである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
変異体アスパラギナーゼポリペプチドが、ポリオキシエチレン化合物又はシアル酸化合物と組み合わされる、請求項62から63の何れか一項に記載の方法。
【請求項65】
ポリオキシエチレン化合物が、α-[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ,ポリオキシエチレン又はα-スクシンイミジルオキシグルタリル-ω-メトキシ,ポリオキシエチレンである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
請求項1から50の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチドと薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項67】
筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、又は動脈内経路によって、請求項1から50の何れか一項に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド又は請求項66に記載の薬学的組成物を投与することを含む、変異体アスパラギナーゼポリペプチドを対象に送達する方法。
【請求項68】
請求項1から50の何れか一項に記載の治療上有効な量の変異体アスパラギナーゼポリペプチド、又は請求項66に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、リンパ腫を有する対象を治療する方法。
【請求項69】
請求項1から50の何れか一項に記載の治療上有効な量の変異体アスパラギナーゼポリペプチド、又は請求項66に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、急性リンパ芽球性白血病を有する対象を治療する方法。
【請求項70】
対象がヒト又はコンパニオンアニマル種である、請求項67から69の何れか一項に記載の方法。
【請求項71】
コンパニオンアニマル種がイヌ、ネコ、又はウマである、請求項70に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
この出願は、あらゆる目的のためにその全体が出典明示によりここに援用される、2018年4月19日に出願された米国仮出願第62/660189号の優先権の利益を主張する。
【0002】
[配列表]
本出願は、電子形式の配列表とともに出願されている。配列表は、2019年4月15日に作成された2019-04-15_01157-0013-00PCT_Seq_List_ST25.txtという名称のサイズ42Kbのファイルとして提供される。電子形式の配列表における情報は、その全体が出典明示によりここに援用される。
【0003】
[分野]
本開示は、免疫原性が低下し、安定性及び薬物動態が増強された変異体アスパラギナーゼポリペプチド、並びに、例えばヒトの急性リンパ芽球性白血病及びコンパニオンアニマルのリンパ腫を治療するために、同ポリペプチドを産生し使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
その天然の形態では、L-アスパラギナーゼ(ここではアスパラギナーゼとも呼ぶ)は、L-アスパラギンのアスパラギン酸及びアンモニアへの転換を触媒する同一のサブユニット(各サブユニット約35kDa)から構成される細菌酵素である。大腸菌(エシェリキア・コリ)(Escherichia coli又はE.coli)アスパラギナーゼはホモ二量体又はホモ四量体であり得、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi又はE.chrysanthemi)(Dickeya dadantii、D.dadantii、Dickeya chrysanthemi、D.chrysanthemi等々とも呼ばれる)アスパラギナーゼは四量体である。アスパラギナーゼは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者の治療と、リンパ腫のイヌ及びネコの治療に使用される。一部の白血病細胞はアスパラギンを合成することができず、生存のために循環アスパラギンに依存している。治療薬として、アスパラギナーゼは、そのような細胞から循環アスパラギンを取り除くことができ、細胞死を引き起こさせる。正常細胞はアスパラギンを合成できるため、アスパラギナーゼの影響を受けにくくなっている。
【0005】
残念ながら、アスパラギナーゼに対する過敏症が一般的に報告されている有害事象であり、アスパラギナーゼ治療の終了がしばしば必要となる。天然の大腸菌アスパラギナーゼは、治療量でヒトに導入される場合、免疫原性である場合がある。アスパラギナーゼに対する抗体は排出速度を高める可能性があり、中和抗体は、存在する場合、酵素の有効性を制限する場合がある。
【発明の概要】
【0006】
実施態様1. 少なくとも一つのシステイン置換を含む変異体エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi(E.chrysanthemi)アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様2. 少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換を含む変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドであって、PEGに結合したとき、対応する野生型E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドと比較して免疫原性又は抗原性が低い、変異体ポリペプチド。
実施態様3. 対応する野生型E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位又はその空間的に近くのアミノ酸位置に少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換を含む変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様4. 少なくとも一つのシステイン又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸が表面に露出している、実施態様1から3の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様5. 野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位が、ヒト又はコンパニオンアニマル種において免疫応答を誘発する、実施態様3又は4に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様6. コンパニオンアニマル種がイヌ、ネコ、又はウマである、実施態様5に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様7. 少なくとも一つのアミノ酸置換を含み、置換された該アミノ酸が表面に露出している、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様8. 変異体ポリペプチドがリーダー配列を欠いている、実施態様1から7の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様9. 標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸の30%以上が表面に露出している、実施態様1から8の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様10. 標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸の35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上が表面に露出している、実施態様1から9の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様11. 少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸又は少なくとも一つのアミノ酸が、システイン、リジン、又はPEG結合可能アミノ酸誘導体である、実施態様2から10の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様12. 少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸が、三次元タンパク質構造分析によって決定して、免疫原性又は抗原部位から35オングストローム(Å)以下である、実施態様1から11の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様13. 少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸が、三次元タンパク質構造解析によって決定して、免疫原性又は抗原部位から30Å以下、25Å以下、20Å以下、15Å以下、10Å以下、又は5Å以下である、実施態様1から12の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様14. 配列番号:2など、野生型アスパラギナーゼアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様1から13の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様15. 野生型E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸配列を含む、実施態様2から6及び8から14の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様16. 免疫原性又は抗原性部位が、配列番号:2のアミノ酸位置41、72、265、又は288に対応する、実施態様3から6及び8から15の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様17. 少なくとも一つのシステイン、少なくとも一つのアミノ酸置換、又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換が、配列番号:2の位置3、4、17、26、37、38、41、42、44、45、47、48、51、53、54、55、56、59、60、68、72、79、82、83、84、85、87、110、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、219、231、239、240、241、243、257、260、261、264、265、267、268、269、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、318、及び322から選択される位置に対応する位置に位置する、実施態様1から16の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様18. 少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換又は少なくとも一つのアミノ酸置換が、配列番号:2の位置3、4、17、26、37、38、41、42、44、45、47、48、51、53、54、55、56、59、60、68、72、79、82、83、84、85、87、110、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、219、231、239、240、241、243、257、260、261、264、265、267、268、269、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、318、及び322から選択される位置に対応する位置に位置するシステインである、実施態様2から17の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様19. 少なくとも一つのアミノ酸置換又は少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換が、配列番号:2の位置4、17、26、37、38、41、42、44、45、51、53、54、55、56、59、60、68、79、82、83、84、85、87、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、231、239、240、241、257、260、261、264、267、268、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、及び322から選択される一又は複数のアミノ酸位置に対応する位置のリジンである、実施態様2から18の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様20. 配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:8、又は配列番号:9のアミノ酸配列を含む、実施態様1から19の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様21. 変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドが、シアル化又はペグ化など、修飾されている、実施態様1から20の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様22. 実施態様1から21の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドを含む四量体。
実施態様23. 対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドの不対システイン残基に少なくとも一つのアミノ酸置換を含み、少なくとも一つのアミノ酸置換がシステイン以外の任意のアミノ酸を含む、変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様24. 対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位又はその空間的に近くのアミノ酸位置に少なくとも一つのシステイン置換を、又は該アミノ酸位置に少なくとも一対のシステイン置換を含む、実施態様23に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様25. アミノ酸位置に少なくとも一つのシステイン置換又は少なくとも一対のシステイン置換を含む変異体アスパラギナーゼポリペプチドであって、PEGに結合した場合、対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドと比較して免疫原性又は抗原性が低い、変異体ポリペプチド。
実施態様26. 対応する野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位又はその空間的に近くのアミノ酸位置に少なくとも一つのシステイン置換又は該アミノ酸位置に少なくとも一対のシステイン置換を含む変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様27. 少なくとも一つのシステインが部分的に包埋している、実施態様24から26の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様28. システインが部分的に包埋している、少なくとも一つのシステイン置換を含む変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様29. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドがリーダー配列を欠いている、実施態様24から28の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様30. 野生型アスパラギナーゼポリペプチドの免疫原性又は抗原性部位が、ヒト又はコンパニオンアニマル種において免疫応答を誘発する、実施態様24から29の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様31. コンパニオンアニマル種がイヌ、ネコ、又はウマである、実施態様30に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様32. 標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステインの5%から25%が表面に露出している、実施態様24から31の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様33. 標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、少なくとも一つのシステインの5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、又は10%~30%が表面に露出している、実施態様24から32の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様34. 少なくとも一つのシステインが、又は少なくとも一対のシステインが、三次元タンパク質構造解析によって決定して、免疫原性又は抗原性部位から35オングストローム(Å)以下である、実施態様24から33の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様35. 少なくとも一つのシステイン、又は少なくとも一対のシステインが、三次元タンパク質構造解析によって決定して、免疫原性又は抗原性部位から30Å以下、25Å以下、20Å以下、15Å以下、10Å以下、又は5Å以下である、実施態様24から34の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様36. 配列番号:2、配列番号:11、又は配列番号14など、野生型アスパラギナーゼアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様23から35の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様37. 野生型アスパラギナーゼポリペプチドが野生型大腸菌アスパラギナーゼポリペプチドである、実施態様23から35の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様38. 野生型アスパラギナーゼポリペプチドが、配列番号:2、配列番号:11、又は配列番号:14を含む、実施態様23から37の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様39. 免疫原性又は抗原性部位が、配列番号:11のアミノ酸位置55、56、57、58、114、115、116、117、118、119、201、202、203、204、205、206、207、252、253、254、255、256、257、又は258に対応する、実施態様24から38の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様40. 少なくとも一つのシステインが、配列番号:11の51、52、118、119、196、206、285、及び311から選択される一又は複数のアミノ酸位置に対応する位置に位置する、実施態様24から39の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様41. システインの少なくとも一対のそれぞれが、表5に列挙されたC1-C2対のシステイン置換から選択される、実施態様24から40の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様42. システインの少なくとも一対が、配列番号:11のアミノ酸位置116及び120、アミノ酸位置196及び200、又はアミノ酸位置225及び252に対応する位置に位置する、実施態様24から41の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様43. 配列番号:12のアミノ酸配列を含む、実施態様23から42の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様44. 不対システイン残基が、配列番号:14のアミノ酸位置45、67、及び/又は242に対応する位置に位置する、実施態様23から24、27、及び29から42の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様45. 配列番号:15のアミノ酸配列を含む、実施態様23から44の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様46. 実施態様23から45の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチドを含む四量体。
実施態様47. 実施態様23から45の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチドを含む二量体。
実施態様48. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドが、シアル化又はペグ化など、修飾されている、実施態様1から47の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様49. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドがチオールペグ化又はアミンペグ化されている、実施態様1から48の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド。
実施態様50. 実施態様1から20、及び23から45の何れか一に記載の変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドをコードする単離された核酸。
実施態様51. 実施態様50に記載の核酸を含むベクター。
実施態様52. 実施態様51に記載のベクターを含む宿主細胞。
実施態様53. 細胞が原核細胞である、実施態様52に記載の宿主細胞。
実施態様54. 原核細胞が、E.クリサンテミ細胞、大腸菌細胞、又はシュードモナス細胞である、実施態様53に記載の宿主細胞。
実施態様55. 細胞が真核細胞である、実施態様52に記載の宿主細胞。
実施態様56. 真核細胞が酵母細胞である、実施態様55に記載の宿主細胞。
実施態様57. リーダー配列を欠く変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼを発現する大腸菌細胞を培養することを含む、大腸菌細胞において変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼを産生する方法。
実施態様58. 実施態様51から56の何れか一に記載の宿主細胞を培養することを含む、変異体アスパラギナーゼポリペプチドを産生する方法。
実施態様59. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドが細胞ライセートから単離される、実施態様57又は実施態様58に記載の方法。
実施態様60. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドがペリプラズムから単離される、実施態様57から59の何れか一に記載の方法。
実施態様61. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドが、陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、混合モードカラムクロマトグラフィー、及び/又は疎水性相互作用カラムクロマトグラフィーによって単離される、実施態様57から60の何れか一に記載の方法。
実施態様62. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドが還元剤と組み合わされる、実施態様57から61の何れか一に記載の方法。
実施態様63. 還元剤がDTTである、実施態様62に記載の方法。
実施態様64. 変異体アスパラギナーゼポリペプチドが、ポリオキシエチレン化合物又はシアル酸化合物と組み合わされる、実施態様62から63の何れか一に記載の方法。
実施態様65. ポリオキシエチレン化合物が、α-[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ,ポリオキシエチレン又はα-スクシンイミジルオキシグルタリル-ω-メトキシ,ポリオキシエチレンである、実施態様64に記載の方法。
実施態様66. 実施態様1から50の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチドと薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
実施態様67. 筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、又は動脈内経路によって、実施態様1から50の何れか一に記載の変異体アスパラギナーゼポリペプチド又は実施態様66に記載の薬学的組成物を投与することを含む、変異体アスパラギナーゼポリペプチドを対象に送達する方法。
実施態様68. 実施態様1から50の何れか一に記載の治療上有効な量の変異体アスパラギナーゼポリペプチド、又は実施態様66に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、リンパ腫を有する対象を治療する方法。
実施態様69. 実施態様1から50の何れか一に記載の治療上有効な量の変異体アスパラギナーゼポリペプチド、又は実施態様66に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、急性リンパ芽球性白血病を有する対象を治療する方法。
実施態様70. 対象がヒト又はコンパニオンアニマル種である、実施態様67から69の何れか一に記載の方法。
実施態様71. コンパニオンアニマル種がイヌ、ネコ、又はウマである、実施態様70に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、実施例4に記載されているように、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)の陽イオン交換精製に使用される洗浄及び溶出緩衝液を列挙する表である。
【0008】
【
図1B】
図1Bは、大腸菌細胞内発現及び精製後に、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)を示している、クーマシーで染色された非還元SDS-PAGEである。
【0009】
【
図2A】
図2Aは、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)及びタンパク質標準マーカーのサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す。
【
図2B】
図2Bは、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)及びタンパク質標準マーカーのサイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間を列挙する。
【0010】
【
図3】
図3は、還元(+DTT)及び非還元(-DTT)条件下、異なる反応時間(5分及び60分)と異なる反応温度(室温及び37℃)での、未ペグ化並びにチオールペグ化された変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号5)のSDS-PAGEを示す。レーン1:未ペグ化、-DTT;レーン2:未ペグ化、+DTT;レーン3:チオールペグ化、反応時間5分、RT、-DTT;レーン4:チオールペグ化、反応時間5分、RT、+DTT;レーン5:チオールペグ化、反応時間60分、RT、-DTT;レーン6:チオールペグ化、反応時間60分、RT、+DTT;レーン7:チオールペグ化、反応時間60分、37℃、-DTT;レーン8:チオールペグ化、反応時間60分、37℃、+DTT。
【0011】
【
図4】
図4は、配列番号:12の変異体大腸菌アスパラギナーゼポリペプチドを示す。追加のシステイン対が同定される。
【0012】
[配列の説明]
表1はここで参照される所定の配列の表を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
生体分子のペグ化は、循環時間を延長し、タンパク質分解による不活化から保護し、免疫原性又は抗原性部位をマスクし、及び/又は免疫原性を低下させうる。ONCOSPAR(登録商標)(ペグアスパルガーゼ,Shire)は、大腸菌由来のFDA承認のペグ化アスパラギナーゼである。ONCASPAR(登録商標)の添付文書に基づくと、アスパラギナーゼの各分子は平均69~82のリジン結合PEG分子を有しており、およそ483~548kDaである。しかし、ランダムなペグ化が不均一な生成物をもたらす可能性があり、大腸菌由来のペグ化アスパラギナーゼに対する過敏症が依然として発症する可能性がある。
【0014】
E.クリサンテミから単離されたアスパラギナーゼもまた研究されている。 E.クリサンテミ由来の天然アスパラギナーゼであるERWINAZE(登録商標)(Jazz Pharmaceuticals)は、大腸菌由来アスパラギナーゼに対する過敏症を発症した患者のためのペグアスパラガーゼ及び天然大腸菌アスパラギナーゼの代替品としてFDAに承認されている。ERWINAZE(登録商標)の添付文書を参照のこと;Gervais, D. Validation of a 30-year-old process for the manufacture of L-asparaginase from Erwinia chrysanthemi. Bioprocess Biosyst Eng (2013) 36:453-60。ERWINAZE(登録商標)は不足していると報告されている。2018年2月26日付けのfiercepharma.com/manufacturing/jazz-releases-some-erwinaze-children-s-leukemia-drug-has-been-shortageを参照のこと。
【0015】
ペグ化された組換えE.クリサンテミ・アスパラギナーゼは、ランダムな一級アミンペグ化を使用して報告されている。この生成物は免疫原性が低く、有効性が改善されている。Chien, W., Pharmacology, immunogenicity, and efficacy of a novel pegylated recombinant Erwinia chrysanthemi-derived L-asparaginase. Invest New Drugs (2014) 32: 795-805。しかし、ランダムなペグ化により、不均一な生成物になりうる。従って、細菌アスパラギナーゼへのPEG結合性アミノ酸の部位特異的取り込みは有利ではあるが、問題がないわけではない。
【0016】
E.クリサンテミ及び大腸菌アスパラギナーゼの抗原性エピトープが同定され、マッピングされている。Moola, Z.B.等 Epitope mapping and antigenic modification of L-asparaginase. Biochem J. (1994) 302: 921-927及びWerner A.等 Mapping of B-cell epitopes in E. coli asparaginase II, an enzyme used in leukemia treatment. Biol. Chem. (2005) 386: 535-540を参照のこと。それにもかかわらず、文献は、(例えば、チオール特異的結合の部位特異的システイン置換を介して)免疫原性又は抗原性部位を遮蔽するための、ランダムではなく、部位特異的なペグ化を有する変異体細菌アスパラギナーゼ産物は全くないように思われる。ペリプラズムにおける変異体アスパラギナーゼポリペプチドの組換え発現は困難な場合がある。例えば、ペリプラズムの酸化環境が、適切なタンパク質フォールディングのためのペアのシステイン残基間のジスルフィド結合の形成に重要であるが、不対システイン残基がまた酸化され、ペグ化技術を妨げる。
【0017】
免疫原性の問題、臨床アスパラギナーゼ産物の不足、及び非効率的な製造方法のために、免疫原性が低下し、代替供給源に由来し、より効率的な製造方法を使用して製造されるアスパラギナーゼ産物が必要とされる。これらの問題に対処する変異体アスパラギナーゼポリペプチド及び方法は、ここに記載される。
【0018】
本開示は、免疫原性が低下し、安定性及び薬物動態が増強された変異体アスパラギナーゼポリペプチド、並びに、例えばヒトの急性リンパ芽球性白血病及びコンパニオンアニマルのリンパ腫を治療するために同ポリペプチドを産生し使用する方法に関する。読者の便宜のために、ここで使用される用語の次の定義を提供する。
【0019】
ここで使用される場合、「a」又は「an」は、特に明記しない限り、「少なくとも一つ」又は「一又は複数」を意味する。ここで使用される場合、「又は」という用語は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。複数の従属請求項の文脈では、他の請求項を引用するときの「又は」の使用は、その請求項を選択的にのみ引用する。
【0020】
[例示的アスパラギナーゼポリペプチド]
変異体アスパラギナーゼポリペプチド、例えば、免疫原性を低下させるためのシステイン及びリジン置換などの、PEG結合可能なアミノ酸置換を含む変異体アスパラギナーゼポリペプチドが提供される。
【0021】
「アミノ酸配列」は、ペプチド又はタンパク質中のアミノ酸残基の配列を意味する。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用され、最小長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、天然又は非天然のアミノ酸残基を含み得、限定されないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体を含む。完全長タンパク質とその断片の両方が定義に包含される。その用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアル酸付加、アセチル化、リン酸化等々を含む。更に、本開示の目的では、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然(又は野生型)配列に対する欠失、付加、及び置換(一般には本質的に保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発などの意図的なものである場合もあれば、タンパク質を産生する宿主の変異又はPCR増幅によるエラーなどの偶発的なものである場合もある。
【0022】
ここで使用される「アミノ酸誘導体」とは、ヒトに見出される20の一般的な天然アミノ酸の一つではない任意のアミノ酸、修飾アミノ酸、及び/又はアミノ酸アナログを指す。例示的なアミノ酸誘導体には、ヒトに見出されない天然アミノ酸(例えば、幾つかの微生物に見出されうるセレノシステイン及びピロールリジン)及び非天然アミノ酸が含まれる。限定されないが、例示的なアミノ酸誘導体には、化学製品の製造業者及び販売業者を通じて市販されているアミノ酸誘導体が含まれる(例えば、出典明示によりここに援用される、2017年5月6日にアクセスされた、sigmaaldrich.com/chemistry/chemistry-products.html?TablePage=16274965)。宿主細胞、真正細菌シンテターゼに由来する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ、直交tRNA、及びアミノ酸誘導体を利用する翻訳系を使用して、一又は複数のアミノ酸誘導体をポリペプチドの特定の位置に組み込むことができる。更なる説明については、例えば、米国特許第9624485号を参照のこと。
【0023】
ここで使用される「アスパラギナーゼ」又は「L-アスパラギナーゼ」は、変異体ポリペプチド、前駆体ポリペプチド、成熟ポリペプチド、四量体、二量体、単量体、又は他の任意の形態を含む、アスパラギナーゼの全体又は断片を含むポリペプチドである。
【0024】
例えば、「アスパラギナーゼ」は、特に明記しない限り、植物、哺乳動物(例えば、ブタ及びげっ歯類)、及び細菌(例えば、大腸菌、E.クリサンテミ、アエロバクター・アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、A.リクファシエンス(A. liquefaciens)、A.サルモニシダ(A. salmonicida)、A.シヌオサ(A. sinuosa)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、B.スブチリス(B. subtilis)、エルウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)、E.アラオイデエ(E. araoideae)、E.カロトボラ(E. carotovora)、E.ディゾルベンス(E. dissolvens)、E.フロインデイ(E. freundii)、ハイドロジェノモナス・オイトロファ(Hydrogenomonas eutropha)、H.パントトロファ(H. pantotropha)、フォトバクテリウム・フィシェリ(Photobacterium fischeri)、プロテウス・アメリカヌス(Proteus americanus)、P.ミラビリス(P. mirabilis)、P.モルガニー(P. morganii)、P.パラメリカヌス(P. paramericanus)、P.シュードバレリー(P. psudovaleriei)、P.シンギデス(P. shingides)、P.ブルガリス(P. vulgaris)、スードモナス・アシドボランス(Psudomonas acidovorans)、P.アンモニアゲネス(P. ammoniagenes)、P.アスプレニー(P. asplenii)、P.オーレオファシエンス(P. aureofaciens)、P.キャビエ(P. caviae)、P.コンベクサ(P. convexa)、P.ダクンヘ(P. dacunhae)、P.フルオレッセンス(P. fluorescens)、Pゲニクラータ(Pgeniculata)、P.レモンニエリ(P. lemonnieri)、P.パボナセア(P. pavonacea)、P.プチダ(P. putida)、P.レプティリボラ(P. reptilivora)、シュードモナス属(Pseudomonas)、P.スツッツェリ(P. stutzeri)、P.シンキサンタ(P. synxantha)、P.タエトロレンス(P. taetrolens)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、キサントモナス・カンペストリルス(Xanthomonas campestrils)等々;Peterson RE and Ciegler A, L-asparaginase production by various bacteria. Applied Microbiol (1969) 17:929-930を参照)を含む、任意の供給源由来のアスパラギナーゼポリペプチドを意味する。幾つかの実施態様では、アスパラギナーゼは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、又は配列番号:15のアミノ酸配列を含む。
【0025】
「野生型」は、天然に存在するポリペプチドの非変異型、又はその断片を指す。野生型ポリペプチドは、組換え的に又は天然に産生されうる。天然に産生される野生型ポリペプチドはまた天然ポリペプチドとも呼ばれる。
【0026】
「変異体」とは、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しないで、野生型(又は天然)配列ポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのような変異体には、例えば、ポリペプチドのN末端又はC末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加され、欠失されているポリペプチドが含まれる。
【0027】
幾つかの実施態様では、変異体は、野生型(又は天然)配列ポリペプチドと、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、又は少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0028】
「生物学的に活性な」エンティティ、又は「生物学的活性」を有するエンティティとは、代謝又は生理的プロセスに関連し又は付随する任意の機能を有し、及び/又は天然に生じる分子の構造的、調節的、又は生化学的機能を有するエンティティである。生物学的に活性なポリペプチド又はその断片には、限定されないが、酵素反応、リガンド-受容体相互作用、又は抗原-抗体結合を含む生物学的反応に関与しうるものが含まれる。生物学的活性は、所望の活性の改善、又は望ましくない活性の減少を含みうる。エンティティは、別の分子との分子相互作用に関与する場合、病状を緩和するのに治療的価値がある場合、免疫応答を誘導するのに予防的価値がある場合、分子の存在を決定する際に診断的及び/又は予後的価値がある場合に、生物学的活性を示しうる。
【0029】
ここで使用される場合、ペプチド、ポリペプチド、又は抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、特定のペプチド又はポリペプチド配列において、配列を整列させ、必要に応じて、ギャップを導入して、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しないで、最大配列同一性パーセントを達成した後の、アミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的でのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、CLUSTAL OMEGA、ALIGN、又はMEGALIGNTM(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技量の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のパラメーターを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0030】
ここで使用される場合、「アミノ酸位置nに対応する部位」又は「アミノ酸位置nに対応する位置」(ここで、nは任意の数又は数の範囲である)は、対象及び参照ポリペプチドのアミノ酸配列を整列させ、ギャップを導入した後に、参照ポリペプチドの位置nと整列する対象ポリペプチドのアミノ酸位置を指す。対象ポリペプチドの位置が参照ポリペプチドの位置nに対応するかどうかの目的のための整列化は、例えば、BLAST、BLAST-2、CLUSTAL OMEGA、ALIGN、又はMEGALIGNTM(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技量の範囲内の様々な方法で達成することができる。当業者は、比較されている二つの配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のパラメーターを含む、アラインメントのための適切なパラメーターを決定することができる。幾つかの実施態様では、対象ポリペプチドと参照ポリペプチドは、異なる長さである。
【0031】
アミノ酸置換には、限定されないが、ポリペプチド中のあるアミノ酸の別のアミノ酸による置換が含まれうる。例示的な置換を表2に示す。アミノ酸置換を目的のタンパク質に導入し、産生物を所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善又は免疫原性の低下についてスクリーニングすることができる。
【0032】
【0033】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従ってグループ化できる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0034】
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを必要とする。
【0035】
幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:12、及び配列番号:15のアミノ酸配列を含んでいた。
【0036】
「PEG結合可能」アミノ酸は、少なくとも一つのPEG分子と会合するか、又は共有的にもしくは非共有的に結合することができるアミノ酸又はアミノ酸誘導体を指す。
【0037】
幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換を含む。幾つかの実施態様では、PEG結合可能アミノ酸は、リジン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、又はそれらアミノ酸の何れかのアミノ酸誘導体を含む。
【0038】
ここで使用される「PEG」は、ポリエチレングリコール部分を指す。
【0039】
ここで使用される「ペグ化」は、一又は複数のPEG部分が会合しているか、共有的又は非共有的に結合しているポリペプチドを指す。
【0040】
ここで使用される「シアル酸付加」は、一又は複数のシアル酸部分が共有的に結合しているポリペプチドを指す。
【0041】
グリコシル化及びシアル酸付加タンパク質を産生するための様々なアプローチが開発されている。例えば、Savinova等 Applied Biochem & Microbiol. (2015) 51(8): 827-833を参照のこと。
【0042】
幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、ペグ化及び/又はシアル酸付加される。幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、システイン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、又はそれらアミノ酸の任意のもののアミノ酸誘導体、例えばシステイン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシンのアミノ酸誘導体で、ペグ化及び/又はシアル酸付加される。
【0043】
「表面露出アミノ酸」は、当該技術分野で理解されている任意の標準的タンパク質モデリングソフトウェア、例えば、Swiss-Model、MOE(Molecular Operating Environment)、Rosetta、及びModellerを使用して決定して、その表面の30%以上が溶媒にアクセスできるアミノ酸を指す。
【0044】
幾つかの実施態様では、表面露出アミノ酸は、標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、30%以上の表面露出を有する(又はその表面の30%以上が溶媒にアクセス可能である)アミノ酸を含む。幾つかの実施態様では、表面露出アミノ酸は、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の表面露出を有するアミノ酸を含む。
【0045】
「部分的に包埋されたアミノ酸」は、当該技術分野で理解されている標準的タンパク質モデリングソフトウェア、例えば、Swiss-Model、MOE(Molecular Operating Environment)、Rosetta、及びModellerを使用して決定して、その表面の5%~30%が溶媒にアクセスできないアミノ酸残基を指す。
【0046】
幾つかの実施態様では、部分的に包埋されたアミノ酸は、標準的タンパク質モデリングソフトウェアによって決定して、5%~30%の表面露出(又はその表面の5%~30%が溶媒にアクセス可能)を有するアミノ酸を含む。幾つかの実施態様では、表面露出アミノ酸は、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、又は10%~30%の表面露出を有するアミノ酸を含む。
【0047】
ここで使用される「免疫原性又は抗原性部位」は、免疫反応の誘発に関与するポリペプチド内の任意のアミノ酸又は任意のアミノ酸群を指す。
【0048】
幾つかの実施態様では、免疫原性又は抗原性部位は、エピトープ内の任意のアミノ酸である。幾つかの実施態様では、免疫原性又は抗原性部位は、免疫原性又は抗原性部位、あるいは免疫原性又は抗原性部位に空間的に近いアミノ酸がPEGにコンジュゲートされている場合、免疫原性又は抗原性が低い。
【0049】
別のアミノ酸に「空間的に近い」アミノ酸とは、三次元タンパク質モデリングによって決定して、それらの間の三次元の近接を意味する。二つのアミノ酸間の距離が35オングストローム(Å)以下、30Å以下、25Å以下、20Å以下、15Å以下、10Å以下、又は5Å以下ならば、アミノ酸は別のアミノ酸に空間的に近いということができる。
【0050】
ここで使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば、抗体、抗体断片、又は抗体結合領域を含むスキャホールドタンパク質)が結合する標的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物又は脂質などの抗原)上の部位を指す。エピトープは、アミノ酸、ポリペプチド又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グループを含むことが多く、特異的三次元構造特性並びに特異的電荷特性を有している。エピトープは、標的分子の隣接又は並置された非隣接残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)の両方から形成されうる。隣接残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露の際、保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理の際に失われる。エピトープは、限定されないが、少なくとも3つ、少なくとも5つ又は8~10の残基(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)を含みうる。幾つかの例では、エピトープは、長さが20残基(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)未満、15残基未満、又は12残基未満である。二つの抗体は、抗原に対して競合的結合を示す場合、抗原内の同じエピトープに結合しうる。幾つかの実施態様では、エピトープは、抗原結合分子上のCDR残基までの所定の最小距離によって特定されうる。幾つかの実施態様では、エピトープは、上記の距離によって特定され得、そして更に、抗体残基と抗原残基との間の結合(例えば、水素結合)に関与する残基に限定されうる。エピトープは、様々なスキャンによっても同定でき、例えばアラニン又はアルギニンスキャンは、抗原結合分子が相互作用できる一又は複数の残基を示すことができる。明示的に示されない限り、エピトープとしての残基セットは、特定の抗体のエピトープの一部であることから他の残基を除外するものではない。むしろ、そのようなセットの存在は、エピトープの最小シリーズ(又は種のセット)を示す。従って、幾つかの実施態様では、エピトープとして特定された残基セットは、抗原上のエピトープの残基の排他的リストではなく、抗原に関連する最小のエピトープを指定する。
【0051】
幾つかの実施態様では、免疫原性又は抗原性部位は、当該技術分野で理解されているエピトープスキャニング法によって決定されうる。例えば、Moola, ZB, Erwinia chrysanthemi L-asparaginase: epitope mapping and production of antigenically modified enzymes. Biochem J. (1994) 921-927に記載されている方法による。
【0052】
幾つかの実施態様では、免疫原性又は抗原性部位は、配列番号:2のアミノ酸位置37~40又は205~212に対応するエピトープである。幾つかの実施態様では、免疫原性又は抗原性部位は、配列番号:2のアミノ酸位置37、38、39、40、41、72、205、206、207、208、209、210、211、212、265、又は288に対応する。幾つかの実施態様では、免疫原性又は抗原性部位は、配列番号:11のアミノ酸位置55、56、57、58、114、115、116、117、118、119、201、202、203、204、205、206、207、252、253、254、255、256、257、又は258に対応する。
【0053】
幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、配列番号:2の位置3、4、17、26、37、38、41、42、44、45、47、48、51、53、54、55、56、59、60、68、72、79、82、83、84、85、87、110、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、219、231、239、240、241、243、257、260、261、264、265、267、268、269、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、318、及び322から選択される位置に対応する少なくとも一つの位置に少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換又は少なくとも一つのシステイン置換を含む。
【0054】
幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、配列番号:2の位置4、17、26、37、38、41、42、44、45、51、53、54、55、56、59、60、68、79、82、83、84、85、87、112、123、124、125、127、180、190、191、192、198、202、205、206、208、210、212、213、215、216、231、239、240、241、257、260、261、264、267、268、270、280、286、287、288、289、312、313、315、316、317、及び322から選択される位置に対応する少なくとも一つの位置に少なくとも一つのPEG結合可能アミノ酸置換又は少なくとも一つのリジン置換を含む。
【0055】
幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、配列番号:11の51、52、118、119、196、206、285、及び311から選択される位置に対応する少なくとも一つの位置に位置する少なくとも一つのシステインを含む。幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、表5に列挙されたC1-C2対システイン置換の何れか一つ又は組み合わせから選択される少なくとも一対のシステインを含む。例えば、変異体アスパラギナーゼポリペプチドは、配列番号:11のアミノ酸位置116及び120、アミノ酸位置196及び200、又はアミノ酸位置225及び252に対応する位置に位置する一又は複数対のシステインを含みうる。
【0056】
「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを意味する。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般に解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、例えば、イムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、又は表面プラズモン共鳴装置などの当該技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。
【0057】
「KD」、「Kd」、「Kd」又は「Kd値」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すために交換可能に使用される。幾つかの実施態様では、抗体のKdは、供給業者の指示に従って、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC, Fremont, CA)などのバイオセンサーを使用するバイオレイヤー干渉法アッセイを使用することによって測定される。簡単に説明すると、ビオチン化抗原をセンサーチップに結合させ、抗体の結合が90秒間モニターされ、解離が600秒間モニターされる。希釈及び結合工程用の緩衝液は、20mMのリン酸、150mMのNaCl、pH7.2である。ドリフトを補正するために、緩衝液のみのブランク曲線を差し引く。データは、ForteBioデータ解析ソフトウェアを使用して2:1結合モデルに適合させ、結合速度定数(kon)、解離速度定数(koff)、及びKdを決定する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比率として計算される。「kon」という用語は、抗体の抗原への結合の速度定数を指し、「koff」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数を指す。
【0058】
「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIAcoreTMシステム(BIAcore International AB, a GE Healthcare company, Uppsala, Sweden and Piscataway, N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を意味する。更なる説明については、Jonsson等 (1993) Ann. Biol. Clin. 51: 19-26を参照のこと。
【0059】
「バイオレイヤー干渉法」とは、バイオセンサーチップ上の固定化タンパク質の層と内部参照層から反射された光の干渉パターンを分析する光学分析技術を意味する。バイオセンサーチップに結合した分子の数の変化は、リアルタイムで測定できる干渉パターンのシフトを引き起こす。バイオレイヤー干渉法のための非限定的な例示的装置は、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC)である。例えば、 Abdiche等, 2008, Anal. Biochem. 377: 209-277を参照のこと。
【0060】
「低減させる」又は「阻害する」とは、参照と比較して、活性、機能、又は量を減少させ、低減させ、又は停止させることを意味する。幾つかの実施態様では、「低減させる」又は「阻害する」とは、20%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、「低減させる」又は「阻害する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、「低減させる」又は「阻害する」とは、75%、85%、90%、95%、又はそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、上記の量は、同じ期間にわたり対照用量(プラセボなど)と比較して、ある期間にわたって阻害され又は減少される。ここで使用される「参照」とは、比較目的で使用される任意のサンプル、標準、又はレベルを指す。参照は、健康な又は罹患していないサンプルから取得されうる。幾つかの例では、参照は、コンパニオンアニマルの非罹患又は未治療のサンプルから得られうる。幾つかの例では、参照は、試験又は治療されている動物ではない特定の種の一又は複数の健康な動物から得られる。
【0061】
ここで使用される「実質的に低減された」という用語は、当業者が二つの値の差を、該値によって測定される生物学的特性の文脈において統計的に有意であるとみなすような、数値と参照数値との間の十分に高度な低減を意味する。幾つかの実施態様では、実質的に低減された数値は、参照値と比較しておよそ10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の何れか一よりも多く低減される。
【0062】
[例示的な発現及び産生]
リーダー配列の有無にかかわらず、アスパラギナーゼポリペプチドの全部又は一部をコードするポリヌクレオチド配列が提供される。相同リーダー配列(すなわち、野生型アスパラギナーゼのリーダー配列)が核酸分子の構築に使用されない場合、別の細菌リーダー配列が使用されうる。
【0063】
典型的には、ここに記載のアスパラギナーゼポリペプチドなどの目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、選択された宿主細胞での発現に適した発現ベクター中に挿入される。
【0064】
「ベクター」という用語は、クローン化されたポリヌクレオチド又は宿主細胞内で増殖させることができるポリヌクレオチドを含むように操作することができるポリヌクレオチドを記述するために使用される。ベクターは、次のエレメント:複製起点、目的のポリペプチドの発現を調節する一又は複数の調節配列(例えば、プロモーター又はエンハンサーなど)、又は一又は複数の選択可能マーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子及び比色分析で使用できる遺伝子、例えば、β-ガラクトシダーゼなど)の一又は複数を含みうる。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞において目的のポリペプチドを発現させるために使用されるベクターを指す。
【0065】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離されたポリヌクレオチドのレシピエントでありうるか、又はレシピエントであった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞でありうる。例示的な原核細胞には、大腸菌、桿菌、及びシュードモナスが含まれる。例示的な真核細胞には、霊長類又は非霊長類動物細胞などの哺乳動物細胞;酵母などの真菌細胞;植物細胞;及び昆虫細胞が含まれる。非限定的な例示的哺乳動物細胞には、限定されないが、NS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、293細胞、及びCHO細胞、並びにそれらの派生体、例えば、293-6E、DG44、CHO-S、及びCHO-K細胞が含まれる。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、自然、偶発的、又は意図的な変異のために、必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態又はゲノムDNA相補体において)であるとは限らない。宿主細胞は、ここで提供されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドでインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0066】
ここで使用される「単離された」という用語は、それが典型的には天然に見出されるか又は産生される成分の少なくとも幾つかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の成分の少なくとも幾つかから分離される場合、「単離された」と呼ばれる。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合、ポリペプチドを含む上清をそれを産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」とみなされる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的には天然に見出される大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合における、ゲノムDNA又はミトコンドリアDNAなど)の一部ではない場合、あるいは、例えばRNAポリヌクレオチドの場合、それが産生された細胞の成分の少なくとも幾つかから分離されている場合、「単離された」と呼ばれる。従って、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と呼ばれうる。幾つかの実施態様では、アスパラギナーゼは、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びCHTクロマトグラフィー又は混合モードクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを使用して精製される。
【0067】
[例示的な薬学的組成物]
「薬学的製剤」及び「薬学的組成物」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象に対して容認できないほど毒性のある追加の成分を含まない調製物を指す。
【0068】
「薬学的に許容される担体」とは、対象への投与のための「薬学的組成物」を一緒に含む治療剤と共に使用するための、当該分野で一般的な非毒性固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、又は担体を指す。薬学的に許容される担体は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、製剤の他の成分と適合性がある。薬学的に許容される担体は、用いられる製剤に適切である。薬学的に許容される担体の例には、アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、イヌ又は他の動物アルブミン;緩衝液、例えばリン酸塩、クエン酸塩、トロメタミン又はHEPES緩衝液;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物;水;塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、又は三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン、セルロース系物質;ポリエチレングリコール;スクロース;マンニトール;又はアルギニンを含むがこれに限定されないアミノ酸が含まれる。
【0069】
薬学的組成物は、凍結乾燥形態で保存することができる。従って、幾つかの実施態様では、調製方法は、凍結乾燥工程を含む。次に、凍結乾燥された組成物は、対象への投与の前に、典型的には非経口投与に適した水性組成物として、再処方されうる。他の実施態様では、特にポリペプチドが熱的及び酸化的変性に対して非常に安定である場合、薬学的組成物は、対象に直接又は適切な希釈で投与されうる液体として、すなわち水性組成物として保存されうる。凍結乾燥された組成物は、注射用滅菌水(WFI)で再構成することができる。ベンジルアルコールなどの静菌試薬が含まれる場合がある。従って、本発明は、固体又は液体の形態の薬学的組成物を提供する。
【0070】
薬学的組成物のpHは、投与される場合、約pH5から約pH8の範囲でありうる。本発明の組成物は、それらが治療目的で使用される場合、無菌である。無菌性は、除菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)による濾過を含む、当該技術分野で知られている幾つかの手段の何れかによって達成することができる。無菌性は、抗菌剤の有無にかかわらず維持されうる。
【0071】
[変異体アスパラギナーゼポリペプチドの使用例]
本発明の変異体アスパラギナーゼポリペプチド又は変異体アスパラギナーゼポリペプチドを含む薬学的組成物は、リンパ腫又は白血病などのがんを含む様々な病状を治療するために有用でありうる。幾つかの実施態様では、本発明の変異体アスパラギナーゼポリペプチド又は変異体アスパラギナーゼポリペプチドを含む薬学的組成物は、ヒトのALL又はコンパニオンアニマル種のリンパ腫の治療に使用されうる。
【0072】
「コンパニオンアニマル種」という用語は、ヒトのコンパニオンになるのに適した動物を指す。幾つかの実施態様では、コンパニオンアニマル種は、小型哺乳動物、例えばイヌ科動物(canine)、ネコ科動物(feline)、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、フェレット、モルモット、げっ歯類などである。幾つかの実施態様では、コンパニオンアニマル種は家畜、例えばウマ、ウシ、ブタ等々である。
【0073】
ここで使用される場合、「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。ここで使用される「治療」は、コンパニオンアニマルを含む哺乳動物における疾患の治療薬の任意の投与又は適用を包含する。この開示の目的では、有益な又は望ましい臨床結果には、限定されないが、次の何れか一又は複数が含まれる:一又は複数の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の広がりの防止又は遅延化、疾患の再発の防止又は遅延化、疾患の進行の遅延又は緩徐化、病状の回復、疾患又は疾患進行の阻害、疾患又はその進行の阻害又は緩徐化、その発症の停止、及び寛解(部分又は完全)。「治療」にまた包含されるものは、増殖性疾患の病理学的帰結の軽減である。ここで提供される方法は、治療のこれらの態様の何れか一又は複数を企図している。上記に沿って、治療という用語は、障害の全ての態様を100パーセント除去することを要しない。
【0074】
物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療上有効な量」は、治療される疾患のタイプ、疾患状態、疾患の重症度及び経過、治療目的のタイプ、何らかの以前の治療法、臨床歴、前治療への反応、担当獣医の裁量、動物の年齢、性別、及び体重、並びに動物において所望の反応を誘発する物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの能力などの要因によって変化しうる。治療上有効な量は、物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの何らかの毒性又は有害な作用よりも治療上有益な効果がよりまさる量でもある。治療上有効な量は、一又は複数回の投与で送達されうる。治療上有効な量とは、所望の治療又は予防結果を達成するための、必要な投薬量及び期間での有効な量を意味する。
【0075】
幾つかの実施態様では、ここに記載される、変異体アスパラギナーゼポリペプチド又は変異体アスパラギナーゼポリペプチドを含む薬学的組成物は、皮下投与、静脈内注入、又は筋肉内注射によって非経口的に投与される。幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチド又は薬学的組成物は、ボーラス注射として、又は一定期間にわたる持続注入によって投与される。幾つかの実施態様では、変異体アスパラギナーゼポリペプチド又は薬学的組成物は、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、動脈内、滑液嚢内、髄腔内、又は吸入経路によって投与される。
【0076】
幾つかの実施態様では、用量は、少なくとも二週間又は三週間連続して週一回投与され、幾つかの実施態様では、この治療サイクルが二回以上繰り返され、任意選択的に一又は複数週の無治療期間が組み入れられる。他の実施態様では、治療上有効な用量は、二日から五日間連続して一日一回投与され、幾つかの実施態様では、この治療サイクルが二回以上繰り返され、任意選択的に一又は複数日又は週の無治療期間が組み入れられる。
【0077】
一又は複数種の更なる治療剤「と組み合わせて」の投与は、同時(同時的)と任意の順序での連続又は逐次的投与を含む。「同時に」という用語は、ここでは、投与の少なくとも一部が時間的に重複し、又は一方の治療剤の投与が他方の治療剤の投与に対して短期間内にある、二種以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、二種以上の治療剤が、ほぼ指定された分数以下の時間分離で投与される。「逐次に」という用語は、ここでは、一又は複数種の薬剤の投与が、一又は複数種の他の薬剤の投与を中止した後に続くか、又は一又は複数種の薬剤の投与が、一又は複数種の他の薬剤の投与前に始まる、二種以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、二種以上の治療剤の投与は、ほぼ指定された分数を超える時間分離で投与される。ここで使用される場合、「と組み合わせて」は、別の治療モダリティに加えての、ある治療モダリティの投与を指す。而して、「と組み合わせて」とは、動物への他の治療モダリティの投与の前、最中、又は後に、ある治療モダリティの投与を指す。
【0078】
次の実施例は、本開示の特定の態様を例証しており、決して本開示を限定することを意図するものではない。
【実施例0079】
実施例1
大腸菌におけるE.クリサンテミ・アスパラギナーゼの発現
その天然宿主細胞で発現される天然E.クリサンテミ・アスパラギナーゼは典型的には、処理され、ペリプラズム又は培地に分泌される。大腸菌細胞におけるE.クリサンテミ・アスパラギナーゼの発現を調べた。リーダー配列を含む天然E.クリサンテミ・アスパラギナーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号:1)を、T7プロモーター及びカナマイシン耐性遺伝子を有する大腸菌発現ベクターであるpET28a(+)(Novagen)のXba1及びHindIII部位間にクローン化した。得られたプラスミドを大腸菌BL21(DE3)細胞中に形質転換した後、600nmでの光学密度がおよそ1に達するまで、細胞を37℃においてインキュベートした。次に、1mMのIPTGを培地に添加し、細胞を37℃において2時間インキュベートし、E.クリサンテミ・アスパラギナーゼタンパク質の発現を誘導した。
【0080】
細胞を浸透圧ショックに供し、ペリプラズムからタンパク質を放出させた。細胞を遠心分離し、上清(浸透圧画分とも呼ぶ)を単離した。細胞ペレットを再懸濁させ、超音波処理に供して細胞を溶解させた。細胞を遠心分離し、ライセート(可溶性画分とも呼ぶ)をペレット(不溶性画分とも呼ぶ)から分離させた。三種の画分(浸透圧、可溶性、及び不溶性画分)をSDS-PAGEで分離し、クーマシー染色を使用して視覚化した。
【0081】
バンド強度と分子量の違いに基づいて、浸透圧画分には処理されたアスパラギナーゼの収量が非常に低いように見えた一方、全長アスパラギナーゼ生成物の大部分が細胞ペレット(不溶性画分)で観察された。ライセート画分(可溶性画分)には、未処理のアスパラギン生成物が少量観察された。これらの結果は、大腸菌におけるE.クリサンテミ・アスパラギナーゼのペリプラズム発現は非効率的であり、未処理のアスパラギナーゼ生成物の大部分が、おそらくリーダー配列のプロセシングの失敗のために、不溶性の形態(例えば、凝集体、封入体など)で細胞内に閉じ込められたことを示唆している。
【0082】
実施例2
E.クリサンテミ・アスパラギナーゼの細胞内発現
大腸菌細胞におけるリーダー配列を欠くE.クリサンテミ・アスパラギナーゼの発現をまた調べた。そのリーダー配列を欠く天然E.クリサンテミ・アスパラギナーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号:3)をpET28a(+)(Novagen)のXba1及びHindIII部位間にクローン化し、大腸菌BL21(DE3)細胞に形質転換し、実施例1に記載のように1mMのIPTGの存在下で培養した。細胞を超音波処理によって溶解させ、遠心分離し、ライセート(可溶性画分)及びペレット(不溶性画分)をSDS-PAGEによって分離し、クーマシー染色を使用して視覚化した。驚くべきことに、より高い収量の溶解性の細胞内発現アスパラギナーゼがライセートで観察された。
【0083】
実施例3
部位特異的チオールコンジュゲーションのための変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド
グラム陰性菌の分泌タンパク質は、典型的には、ペリプラズム内のチオール-ジスルフィドオキシドレダクターゼによってシステイン残基で触媒されるジスルフィド結合を含んでいる。例えば、天然大腸菌アスパラギナーゼには、タンパク質のただ二つシステイン残基間に一つのジスルフィド結合がある。しかし、E.クリサンテミ・アスパラギナーゼの一次アミノ酸配列を調べたところ、このタンパク質にはシステイン残基がないことが明らかになった。この知見は、天然E.クリサンテミ・アスパラギナーゼがジスルフィド結合を欠いており、ペリプラズムの酸化環境がこのタンパク質の折り畳みには必要ではない可能性があることを示唆している。
【0084】
細菌タンパク質は、ヒトに対して非常に免疫原性がある。細菌タンパク質のペグ化は、免疫原性の位置を遮蔽し、免疫原性を低下させうる。加えて、ペグ化はタンパク質の生体内半減期を延長しうる。ONCASPAR(登録商標)(ペグアスパラガーゼ、Shire)では、大腸菌由来アスパラギナーゼは、表面に露出した第一級アミン(例えば、リジン残基)でペグ化される。残念ながら、そのような非特異的なペグ化は、不均一な生成物を生じうる。タンパク質全体ではなく、特定の免疫原性部位でのペグ化が有利でありうる。
【0085】
天然E.クリサンテミ・アスパラギナーゼはシステイン残基を含まないので、一又は複数のシステイン置換を含む変異体はそれらの位置で特異的にペグ化されうる。E.クリサンテミ・アスパラギナーゼの免疫原性又は抗原性部位又はその近くへの一又は複数のシステイン残基の導入を調べた。四量体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼの三次元タンパク質構造解析を使用して、ペグ化がその活性部位に影響を与えることなく部位を遮蔽しうる潜在的な免疫原性又は抗原性部位又はその近くの表面露出アミノ酸の位置を特定した。潜在的な免疫原性又は抗原性部位には、成熟アミノ酸配列(配列番号:2)のアミノ酸位置37~41、72、205~212、265、及び288が含まれる。表2は、免疫原性低下のための部位特異的ペグ化のためにシステイン残基が導入されうる配列番号:2のアミノ酸位置を列挙している。
【0086】
【0087】
変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドは、表2に列挙されているアミノ酸位置の何れか一又は何れかの組み合わせに一又は複数のシステイン残基を導入することによって調製することができる。例えば、2、3、4、5、6、又はそれ以上のシステイン残基が、E.クリサンテミ・アスパラギナーゼに導入されうる。
【0088】
例として、成熟アミノ酸配列の位置41、72、及び265に3つのシステインアミノ酸置換を有する(配列番号:4)か、又は位置41、72、265、及び288に4つのシステインアミノ酸置換を有する(配列番号:7)変異体前駆体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドを調製することができる。
【0089】
実施例4
変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドの細胞内発現
ペリプラズムの酸化環境はシステイン残基間のジスルフィド結合を触媒するが、システインチオール基は細胞質の還元環境において酸化から保護される。免疫原性又は抗原性部位にシステイン置換を含む変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドの細胞内発現を、大腸菌細胞で探求した。リーダー配列の代わりにN末端ポリHisタグを有し、成熟アミノ酸配列の位置41、72、及び265に3つのシステインアミノ酸置換を有する変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号:5)をpET28a(+)(Novagen)にクローン化した。得られたプラスミドを大腸菌BL21(DE3)細胞に形質転換した後、600nmでの光学密度がおよそ1に達するまで、細胞を37℃においてインキュベートした。次に、1mMのIPTGを培地に添加し、細胞を37℃において2時間インキュベートし、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼタンパク質の発現を誘導した。
【0090】
細胞を超音波処理によって溶解させ、遠心分離し、Niセファロースエクセルヒスチンタグ付きタンパク質精製樹脂(GE Healthcare、カタログ番号17371201)を使用するアフィニティークロマトグラフィーと、続くスルホプロピルセファロースファストフロー(SP FF)陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare、カタログ番号17072901)を使用する陽イオン交換クロマトグラフィーによってライセートから変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号5)を精製した。SP FFカラムをpH6、続いてpH7の0.1Mのリン酸ナトリウムで洗浄し、タンパク質を0.1Mのリン酸ナトリウム(pH7)と1Mの塩化ナトリウムの溶液で溶出させた。
図1Aを参照のこと。非還元SDS-PAGEを使用して精製タンパク質を分離し、クーマシー染色を使用して可視化した(
図1B)。
【0091】
加えて、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、精製された変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)の流体力学的半径をNovex Sharp Prestained Protein Standardマーカー(ThermoFisher、カタログ番号LC5800)のものと比較し、精製されたタンパク質が四量体であったことを確認した。精製したタンパク質を、毎分0.5mLの一定流量で、Agilentの1100クロマトグラフィーシステムと、0.1Mのリン酸ナトリウムpH6.6と1Mの塩化ナトリウムのランニングバッファーを使用して、KW-Gガードカラムを備えたShodex KW803カラム(8mm×300mm)にロードした。溶出した物質を、214nmの波長での吸光度によってモニターした。精製した変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ生成物(配列番号:5)は16.5分で溶出し、溶液中のタンパク質の四量体型の予測分子量(~117.4kDa)と一致した。
図2A及び
図2Bを参照のこと。
【0092】
実施例5
変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドの部位特異的ペグ化
精製された変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)のコンジュゲーションを、(1)α-スクシンイミジルオキシグルタリル-ω-メトキシ,ポリオキシエチレン(m.w.5kD;SUNBRIGHT(登録商標)ME-050GS;NOF Corporation)を用いるランダムアミンペグ化、(2)α-[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ,ポリオキシエチレン(m.w.10kD;SUNBRIGHT(登録商標)ME-100MA;NOF Corporation)を用いるチオール特異的ペグ化、又は(3)両方の方法を、製造元の指示に従って、使用して実施した。
【0093】
チオール特異的ペグ化については、異なる反応時間(5分と60分)と異なる反応温度(室温と37℃)を試験した。ペグ化タンパク質を、還元(+DTTあり)及び非還元(DTTなし)条件下でSDS-PAGEによって分離し、クーマシー染色を使用して可視化した(
図3)。非ペグ化タンパク質は、還元(
図3、レーン2)及び非還元条件(
図3、レーン3)下で約35kDaで流れ、精製された変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)にジスルフィド結合が存在しないことを示唆している。ペグ化サンプル(
図3、レーン4~9)は、タンパク質のペグ化と一致したより高い分子量で流れた。
【0094】
上記のように、ランダムアミンペグ化及び/又はチオール特異的ペグ化を介してコンジュゲートした変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)のアスパラギナーゼ活性を、アスパラギナーゼ活性アッセイキット(BioVision;カタログ番号K754-100)を、製造元の指示に従って二通り使用して、測定した。アッセイの結果を以下の表3に示す。結果は、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼ(配列番号:5)がペグ化後に酵素活性を維持したことを示している。
【0095】
【0096】
実施例6
部位特異的アミンコンジュゲーションのための変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチド
表面に露出した第一級アミン(例えば、リジン)は、アミン反応性PEG誘導体にコンジュゲートされうる。ペグ化は特異性が低く、生成物が不均一である場合がある。表面に露出した位置に一又は複数の追加のリジン残基を導入すると、アミン反応性ペグ化のための追加の部位を提供できる。例えば、変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドは、成熟アミノ酸配列(配列番号:2)のアミノ酸位置41、72、265、及び288などの潜在的な免疫原性又は抗原性部位又はその近くにおいて一又は複数のリジン残基を置換することによって調製することができる。表4には、部位特異的ペグ化のためにリジン残基が導入されうる、成熟アミノ酸配列(配列番号:2)のアミノ酸位置41、72、265、及び288又はその近くのE.クリサンテミ・アスパラギナーゼの例示的な表面露出アミノ酸位置を列挙する。
【0097】
【0098】
変異体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドは、表4に列挙されているアミノ酸位置の何れか一又は何れかの組み合わせに一又は複数のリジン残基を導入することによって調製することができる。例えば、2、3、4、5、6、又はそれ以上のリジン残基を、E.クリサンテミ・アスパラギナーゼに導入することができる。
【0099】
例として、成熟アミノ酸配列の位置41(配列番号8)又は位置41及び288(配列番号:9)にリジンアミノ酸置換を有する変異体前駆体E.クリサンテミ・アスパラギナーゼポリペプチドを調製することができる。
【0100】
実施例7
部位特異的アミン結合のための変異大腸菌アスパラギナーゼポリペプチド
大腸菌L-アスパラギナーゼII(配列番号:10)は現在、急性リンパ芽球性白血病の治療薬として承認されている。残念ながら、免疫反応が重大な有害な副作用である。部位特異的ペグ化は、免疫学的副作用を低減させるのに有利であろう。天然大腸菌アスパラギナーゼタンパク質には、リーダー配列と、単一のジスルフィド結合を形成する、2つのシステイン残基がある。タンパク質は処理されペリプラズムに分泌され、ジスルフィド結合を形成すると考えられる。E.クリサンテミ・アスパラギナーゼとは異なり、大腸菌アスパラギナーゼは、ペリプラズム内でのジスルフィド結合が適切なタンパク質フォールディングに必要でありうるため、細胞内発現には適さない場合がある。大腸菌アスパラギナーゼの部位特異的ペグ化のための異なるアプローチを調べた。
【0101】
大腸菌アスパラギナーゼに特定のペグ化部位を導入するための一つのアプローチは、潜在的な免疫原性又は抗原性部位又はその近くに部分的に包埋されている位置に不対システインを置換することを含む。部分的に包埋されている部位の不対システインのチオール基は、ペリプラズムでの酸化から遮蔽されうるが、ペグ化などのコンジュゲーション反応に十分に曝露されている。四量体大腸菌L-アスパラギナーゼIIの三次元タンパク質構造解析を使用して、ペグ化がその活性部位に影響を与えることなくその部位を遮蔽しうる潜在的な免疫原性又は抗原性部位又はその近くに部分的に包埋されているアミノ酸の位置を特定した。例えば、一又は複数の不対システイン残基は、成熟アミノ酸配列(配列番号:11)のアミノ酸位置55~58、114~119、201~207、及び252~258などの免疫原性又は抗原性部位又はその近くの部分的に包埋されている部位で置換されうる。例として、変異大腸菌アスパラギナーゼポリペプチドは、成熟アミノ酸配列(配列番号:11)に基づく次のアミノ酸位置の何れか一又は複数で一又は複数の不対システイン残基を置換することによって調製することができる:E51C、Q52C、S118C、T119C、K196C、S206C、D285C、及びT311C。
【0102】
特定のペグ化部位を大腸菌アスパラギナーゼに導入するための第二の方法は、潜在的な免疫原性又は抗原性部位又はその近くに一又は複数の対のシステイン残基を導入することを含む。置換システイン対のチオール基がペリプラズムで酸化されるのではなく、対がジスルフィド結合を形成する必要がある。次に、ジスルフィド結合(元々の結合を含む)を、DTTなどの還元剤を使用して還元し、結合を可能にすることができる。ペグ化又は標識化は、チオール-インカップリング反応などの様々な化学反応を使用して、対になったシステインを再架橋させることによって達成されうる。Griebenow N.等, Site-specific conjugation of peptides and proteins via rebridging of disulfide bonds using the thiol-yne coupling reaction. Bioconjug Chem (2016) 4: 911-917を参照のこと。
【0103】
四量体大腸菌L-アスパラギナーゼIIの三次元タンパク質構造解析を使用して、ペグ化がその活性部位に影響を与えることなくその部位を遮蔽しうる潜在的な免疫原性又は抗原性部位又はその近くに対のシステイン残基を導入するための位置を特定した。対になったシステインは、四量体タンパク質の同じドメイン内又はドメイン間で導入されうる。例えば、表5は、同じドメイン内又はドメイン間で四量体大腸菌アスパラギナーゼに導入されうる対のシステイン残基(C1及びC2)の組み合わせのリストを示している。例として、
図4は、配列番号:11(配列番号:12)の位置8及び32に導入されたシステイン対を有する変異大腸菌アスパラギナーゼポリペプチドの仮想的な三次元構造を示している。追加のシステイン対が図において特定されている。
【0104】
【0105】
大腸菌アスパラギナーゼに特定のペグ化部位を導入するための第三のアプローチは、成熟アミノ酸配列(配列番号:11)のアミノ酸位置55~58、114~119、201~207、及び252~258又は空間的にその近くなど、潜在的な免疫原性又は抗原性部位又は空間的にその近くの表面露出位置に一又は複数の追加のリジン残基を導入することを含む。例えば、次のリジン置換の一又は複数を有する変異体大腸菌アスパラギナーゼポリペプチドを調製することができる:S58K、R116K、及び/又はD240K。
【0106】
実施例8
変異体大腸菌K-12アスパラギナーゼポリペプチドELSPAR(登録商標)は、ALLの治療に適用される大腸菌L-アスパラギナーゼであり、イヌとネコのリンパ腫の治療のために獣医師によって処方されている。ELSPAR(登録商標)は大腸菌K-12株に由来し、5つのシステイン残基を有している。前駆体アミノ酸配列は配列番号:13として提供され、成熟配列は配列番号:14によって提供される。四量体ELSPAR(登録商標)の三次元タンパク質構造解析を使用して、配列番号:14の位置67及び200の二つのシステインがおそらくジスルフィド結合を形成し、配列番号:14の位置45、67、及び242の残りの三つのシステインはおそらく対になっていないことを特定した。タンパク質凝集の可能性及び/又は他の分子への反応性を低減させるために、不対システインの一つ、二つ、又は三つ全てをセリンなどの他のアミノ酸で置換することができる。例えば、配列番号:14のアミノ酸位置45、67、及び242に三つの不対システインの代わりにセリンを有する変異体大腸菌アスパラギナーゼを調製することができる(配列番号:15)。一又は複数の不対システイン残基を有するアスパラギナーゼポリペプチド(例えば、配列番号:14のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号:14の一つ又は二つのシステイン残基のみが置換されているポリペプチド)をコンジュゲーションに使用することができる。
少なくとも一つのシステイン置換を含む変異体エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi(E.chrysanthemi)・アスパラギナーゼポリペプチド。