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特開2024-79683ロボット遠隔マニピュレータを備えた手術ロボットシステム及び統合腹腔鏡手術
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079683
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ロボット遠隔マニピュレータを備えた手術ロボットシステム及び統合腹腔鏡手術
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240604BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024028092
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2020565030の分割
【原出願日】2019-02-06
(31)【優先権主張番号】62/788,781
(32)【優先日】2019-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/627,554
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】520297355
【氏名又は名称】ディスタルモーション エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエン チャスソット
(72)【発明者】
【氏名】マイケル フリードリッヒ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外科医による使用に十分に適合されており、手術室にシームレスに統合可能であり、外科医が手術を通してロボットと患者との間で無菌で作業することを可能にし、比較的低コストであり、かつ/又は統合腹腔鏡手術を可能にする遠隔作動手術ロボットシステムを提供する。
【解決手段】システムは、好ましくは、複数のマスタージョイントによって相互に連結された複数のマスターリンクを有するマスターコンソールと、遠隔マニピュレータを操作するためにマスターコンソールに結合されたハンドルとを含む。システムは、マスターコンソールに動作可能に結合されたスレーブコンソールをさらに含み、該スレーブコンソールは、マスターコンソールでの動きに応答して動いてエンドエフェクタが外科手術を行うことを可能にする複数のスレーブジョイントによって相互に連結された複数のスレーブリンクを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術を行うための遠隔操作用のシステムであって:
複数のマスターリンクを備えるマスターコンソール;
ハンドルで加えられた動きが該複数のマスターリンクの少なくとも1つを動かすように
該マスターコンソールに結合された該ハンドル;
複数のスレーブリンクを備えるスレーブコンソールであって、該マスターコンソールに
動作可能に結合され、該ハンドルで加えられる動きに応答して動くように構成されている
、該スレーブコンソール;及び
該スレーブコンソールに結合されたエンドエフェクタであって、該ハンドルでの作動に
応答して動き、かつ該スレーブコンソールでの動きに応答して動いて該外科手術を行うよ
うに構成されている、該エンドエフェクタを含み;
該スレーブコンソールが、該エンドエフェクタに動作可能に結合された複数のアクチュ
エータを備え、該アクチュエータが、該ハンドルでの作動に応答して作動されると、マク
ロ同期状態中には該複数のスレーブリンクの少なくとも1つにマクロな並進運動を加える
が、マクロ非同期状態では該並進運動を加えず、ミクロ同期状態中には該エンドエフェク
タにミクロな動きを加えるが、ミクロ非同期状態では該ミクロな動きを加えない、前記シ
ステム。
【請求項2】
前記マスターコンソールが、前記外科手術中に無菌を維持するように構成されている、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記ハンドルが、前記外科手術中に無菌であり、かつ追加の外科手術のために取り外さ
れている間も滅菌可能であるように、前記マスターコンソールに取り外し可能に結合され
ている、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記ハンドルが、クリップアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し
可能に結合されている、請求項1~3のいずれか一項記載のシステム。
【請求項5】
前記ハンドルが、ねじアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し可能
に結合されている、請求項1、2、又は3記載のシステム。
【請求項6】
前記ハンドルが、該ハンドルの作動に応答して動く格納式ピストンを備え、前記マスタ
ーコンソールの少なくとも1つのセンサが、該格納式ピストンの動きを検知して、前記複
数のアクチュエータに前記エンドエフェクタで対応するミクロな動きをさせるように構成
されている、請求項1~5のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
前記スレーブコンソールが、前記少なくとも1つのセンサが少なくとも所定程度の前記
格納式ピストンを検知しない限り、前記マスターコンソールでの動きに応答しない、請求
項6記載のシステム。
【請求項8】
前記マスターコンソールが、前記複数のマスターリンクの少なくとも1つのマスターリ
ンクの動きを制限するように構成された機械的制限部を備える、請求項1~7のいずれか一
項記載のシステム。
【請求項9】
前記マスターコンソールに結合されたディスプレイをさらに含み、該ディスプレイが、
前記システムの操作中に使用者が前記エンドエフェクタを視覚化できるように構成されて
いる、請求項1~8のいずれか一項記載のシステム。
【請求項10】
前記複数のスレーブリンク及び複数のスレーブジョイントが、前記スレーブコンソール
のベースが固定されたまま、前記外科手術を行う前に該スレーブコンソールの遠位端部を
所望の水平位置に配置するために近位スレーブジョイントを中心に移動可能であるように
、該スレーブコンソールのベースが、該複数のスレーブジョイントの該近位スレーブジョ
イントを介して該複数のスレーブリンクの近位スレーブリンクに結合されている、請求項
1~9のいずれか一項記載のシステム。
【請求項11】
前記スレーブコンソールのベースが、前記複数のスレーブリンクの近位スレーブリンク
に結合された調整可能な垂直支柱を備え、該調整可能な垂直支柱が、前記外科手術を行う
前に該スレーブコンソールの遠位端部を所望の垂直位置に配置するために該複数のスレー
ブリンク及び前記複数のスレーブジョイントの高さを調整するように構成されている、請
求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記スレーブコンソールの遠位端部と前記外科手術を受けている患者の体内に配置され
たトロカールとの整合を可能にするように構成された取り外し可能な切開ポインタをさら
に含む、請求項1~11のいずれか一項記載のシステム。
【請求項13】
制御装置をさらに含み、該制御装置が、前記複数のアクチュエータが該制御装置によっ
て実行される命令に応答して前記スレーブコンソールの前記複数のスレーブリンクに動き
を加えるように、該複数のアクチュエータに動作可能に結合されている、請求項1~12の
いずれか一項記載のシステム。
【請求項14】
前記制御装置が、前記複数のアクチュエータに前記スレーブコンソールの前記複数のス
レーブリンクをホーム構成に移動させる命令を実行するように構成されており、該ホーム
構成では、該複数のスレーブリンクが、前記外科手術を受けている患者に挿入されたトロ
カール内で前記エンドエフェクタが配置可能であるように後退している、請求項13記載の
システム。
【請求項15】
前記制御装置が、前記複数のアクチュエータに前記複数のスレーブリンクの角度付けス
レーブリンクを、該角度付けスレーブリンク及び該角度付けスレーブリンクの近位側の前
記スレーブコンソールのスレーブリンクが前記システムの操作中に固定されたままである
角度まで移動させる命令を実行するように構成されている、請求項13又は14記載のシステ
ム。
【請求項16】
前記角度付けスレーブリンクの角度では、前記スレーブコンソールの遠位端部により、
前記エンドエフェクタが、該角度付けスレーブリンクの角度に平行な角度で傾けられた半
球形手術作業空間で前記外科手術を行うことが可能である、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
複数のスレーブジョイントのベータジョイントの遠位側の前記複数のスレーブリンクの
うちのスレーブリンクが、該ベータジョイントの近位側の該複数のスレーブリンクのうち
のスレーブリンク及び前記スレーブコンソールのベースが固定されたまま、該ベータジョ
イントに対して移動して該スレーブコンソールの遠位端部を前方手術作業空間と反転手術
作業空間との間で反転させるように構成されている、請求項1~16のいずれか一項記載の
システム。
【請求項18】
前記マスターコンソールが、作動されると前記複数のマスターリンクのマクロな並進運
動を防止するように構成されたクラッチをさらに備える、請求項1~17のいずれか一項記
載のシステム。
【請求項19】
前記ハンドルに結合された少なくとも1つのセンサが、該ハンドルの作動パターンを検
知するように構成され、前記複数のセンサによって検知されたハンドルでの動きが、該少
なくとも1つのセンサが該ハンドルの作動パターンを検知しない限り、前記エンドエフェ
クタによる対応するミクロな動きを引き起こさない、請求項1~18のいずれか一項記載の
システム。
【請求項20】
近位端部及び遠位端部を有する器具をさらに含み、該近位端部が、前記スレーブコンソ
ールに取り外し可能に結合されるように構成された器具ハブを備え、該遠位端部が前記エ
ンドエフェクタを備える、請求項1~19のいずれか一項記載のシステム。
【請求項21】
前記スレーブコンソールの遠位端部が、前記複数のスレーブリンクの角度付けスレーブ
リンクのアルファ軸を中心に回転可能であり、このため、該スレーブコンソールの遠位端
部が、使用者が前記マスターコンソールから移動して前記外科手術を受けている患者に腹
腔鏡手術を手動で行えるように配置可能である、請求項1~20のいずれか一項記載のシス
テム。
【請求項22】
前記マスターコンソールがマスター制御装置を備え、前記スレーブコンソールがスレー
ブ制御装置を備え、該マスター制御装置が、前記ハンドルで検知された動きに基づいて命
令を実行して、該動きに基づいて信号を該スレーブ制御装置に送信するように構成され、
該スレーブ制御装置が、該信号を受信し、命令を実行して、該マスター制御装置から送信
された信号に基づいて前記複数のスレーブリンク若しくは前記エンドエフェクタの少なく
とも1つ、又はその両方を動かすように構成されている、請求項1~21のいずれか一項記載
のシステム。
【請求項23】
前記スレーブコンソールが、右スレーブ遠隔マニピュレータ、右スレーブ制御装置、左
スレーブ遠隔マニピュレータ、及び左スレーブ制御装置を備え、
該マスターコンソールが、右マスター遠隔マニピュレータ、左マスター遠隔マニピュレ
ータ、及びマスター制御装置を備え、
前方手術作業空間構成では、該マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、
該右マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを
動かし、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニ
ピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを動かし、かつ
反転手術作業空間構成では、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、
該右マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを
動かし、該マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニ
ピュレータでの動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを動かす、請求項1~22
のいずれか一項記載のシステム。
【請求項24】
外科手術を行うための遠隔操作用のシステムであって:
マスター制御装置、複数の右マスターリンクを有する右マスター遠隔マニピュレータ、
及び複数の左マスターリンクを有する左マスター遠隔マニピュレータを備えるマスターコ
ンソール;
該右マスター遠隔マニピュレータを操作するために該右マスター遠隔マニピュレータに
結合された右ハンドル;
該左マスター遠隔マニピュレータを操作するために該左マスター遠隔マニピュレータに
結合された左ハンドル;
右スレーブ制御装置、複数の右スレーブリンクを有する右スレーブ遠隔マニピュレータ
、左スレーブ制御装置、及び複数の左スレーブリンクを有する左スレーブ遠隔マニピュレ
ータを備えるスレーブコンソール;
該右スレーブ遠隔マニピュレータに結合された右エンドエフェクタであって、該右又は
左ハンドルでの作動に応答して動いて該外科手術を行うように構成されている、該右エン
ドエフェクタ;並びに
該左スレーブ遠隔マニピュレータに結合された左エンドエフェクタであって、該左又は
右ハンドルでの作動に応答して動いて該外科手術を行うように構成されている、該左エン
ドエフェクタを含み;
前方手術作業空間構成では、該マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、
該右マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを
動かし、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニ
ピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを動かし、かつ反転手術
作業空間構成では、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、該右マスタ
ー遠隔マニピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを動かし、該
マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニピュレータ
での動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを動かす、前記システム。
【請求項25】
前記右スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部が、前記複数の右スレーブリンクの右角
度付けスレーブリンクのアルファ軸を中心に回転可能であり、前記左スレーブ遠隔マニピ
ュレータの遠位端部が、前記複数の左スレーブリンクの左角度付けスレーブリンクのアル
ファ軸を中心に回転可能であり、このため、該右及び左スレーブ遠隔マニピュレータの遠
位端部が、使用者が前記マスターコンソールから移動して前記外科手術を受けている患者
に腹腔鏡手術を手動で行うことができるように配置可能である、請求項1~24のいずれか
一項記載のシステム。
【請求項26】
前記右ハンドルが、前記右マスター遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合され、前
記左ハンドルが、前記左マスター遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合されている、
請求項1~25のいずれか一項記載のシステム。
【請求項27】
外科手術を行うための遠隔操作用のシステムであって:
該外科手術中に無菌を維持するように構成された、複数のマスターリンクを備えるマス
ターコンソール;
ハンドルで加えられた動きが複数のマスターリンクの少なくとも1つを動かすように、
該マスターコンソールに取り外し可能に結合された該ハンドルであって、該外科手術中は
無菌であり、かつ追加の外科手術のために取り外されている間も滅菌可能である、該ハン
ドル;
複数のスレーブリンクを備えるスレーブコンソールであって、前記マスターコンソール
に動作可能に結合され、かつ該ハンドルで加えられる動きに応答して動くように構成され
ている、該スレーブコンソール;及び
該スレーブコンソールに結合されたエンドエフェクタであって、該ハンドルでの作動に
応答して動き、かつ該スレーブコンソールでの動きに応答して動いて該外科手術を行うよ
うに構成されている、該エンドエフェクタを含む、前記システム。
【請求項28】
前記ハンドルが、前記マスターコンソールから取り外されている間の外科手術間の滅菌
を容易にするために、電子機器を備えずに純粋に機械的である、請求項1~27のいずれか
一項記載のシステム。
【請求項29】
前記ハンドルが、クリップアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し
可能に結合されている、請求項1~28のいずれか一項記載のシステム。
【請求項30】
前記ハンドルが、ねじアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し可能
に結合されている、請求項1~29のいずれか一項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれの全内容が引用により本明細書中に組み込まれている、2019年1月5
日に出願された米国仮特許出願第62/788,781号、及び2018年2月7日に出願された米国仮特
許出願第62/627,554号の優先権の利益を主張する。
【0002】
(使用分野)
本出願は、一般に、ロボット遠隔マニピュレータを備える遠隔作動手術ロボットシステ
ムに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
非常に多くの状況及び応用が、遠隔操作外科装置による遠隔作動を必要とする。これら
の応用は、オープンフィールドであるか低侵襲性であるかにかかわらず、微細な操作を行
う能力、限定された空間で操作する能力、危険な環境や汚染された環境、クリーンルーム
又は無菌環境、及び外科的環境で操作する能力を含む。これらの応用は、正確な許容範囲
及び末端使用者の技能レベルなどのパラメータと共に変化するが、それぞれの応用は、高
精度で巧妙な操作を実行する能力などの、遠隔操作システムの多数の同じ機能を必要とす
る。
【0004】
外科的応用を、既知の装置が存在するが既知のシステム及び方法では重大な欠点が明ら
かである遠隔操作装置システムの例示的な応用としてより詳細に以下の開示で説明する。
【0005】
観血手術は、依然として多くの外科処置では好ましい方法である。観血手術は、何十年
にもわたって医学界で使用されており、典型的には、腹部又は体の他の部位に長い切開部
を形成する必要があり、その切開部を介して従来の手術器具が挿入される。そのような切
開部により、この非常に侵襲的なアプローチでは、手術中にかなり失血し、典型的には、
痛みを伴う長い回復期間にわたって入院することになる。
【0006】
低侵襲技術である腹腔鏡手術は、観血手術のいくつかの欠点を克服するために開発され
た。大きな壁貫通切開部の代わりに、いくつかの小さな開口部が患者に形成され、それら
の開口部を介して長くて細い手術器具及び内視鏡カメラが挿入される。腹腔鏡処置の低侵
襲性により、失血及び痛みが軽減され、入院期間が短縮される。経験豊富な外科医によっ
て行われると、腹腔鏡手術手技は、観血手術と同様の臨床結果が得ることができる。しか
しながら、上記の利点にもかかわらず、腹腔鏡手術は、そのような処置で使用される硬く
て長い器具をうまく操作するために高度な技能を必要とする。典型的には、入口切開部は
回転点として機能し、患者の体内で器具を位置決め及び定位のための自由度を低下させる
。この切開点を中心とした外科医の手の動きは、器具先端部では逆になって拡大され(「
支点効果」)、巧みさ及び感度を低下させ、外科医の手の震えを増大させる。加えて、長
くて真直な器具により、外科医は、手、腕、及び体が不快な姿勢での作業が強いられ、こ
れが長時間の処置の際に甚だしく疲労させ得る。従って、腹腔鏡器具のこれらの欠点によ
り、低侵襲技術は、主に単純な外科手術での使用に限定されており、ごく一部の外科医の
みがそのような器具及び方法を複雑な処置で使用することができる。
【0007】
既知のシステムの前述の制限を克服するために、手術ロボットシステムが開発され、複
雑な低侵襲外科手術でより使いやすいアプローチが提供された。コンピュータ化されたロ
ボットインターフェイスにより、それらのシステムは、外科医が2つのマスターマニピュ
レータを操作するコンソールに座って、いくつかの小さな切開部を介して手術を行う遠隔
腹腔鏡手術の実施を可能にする。腹腔鏡手術と同様に、ロボットによるアプローチも低侵
襲性であり、痛み、失血、及び回復時間の低減に関して観血手術よりも上述の利点を提供
する。加えて、ロボットによるアプローチは、観血及び腹腔鏡手術手技と比較して外科医
にとってより優れた人間工学や、巧みさ、精度、及び振戦抑制の改善、並びに支点効果の
解消も提供する。技術的には容易であるが、ロボット外科手術にはまだいくつかの欠点が
ある。既知のロボット手術システムの1つの主な欠点は、このようなシステムの非常に高
度な複雑さに関連し、該既知のロボット手術システムは、外科医及び助手の両方の手に取
って代わる4本~5本のロボットアーム、統合型内視鏡画像システム、及び遠隔外科手術を
行う能力を備え、取得及び維持管理に莫大な資本コストがかかり、世界中の大部分の外科
部門では手頃な価格ではない。これらのシステムのもう1つの欠点は、既知の手術ロボッ
トの嵩張りであり、この嵩張りは、手術室環境内の貴重なスペースを奪い、準備時間が大
幅に増加する。従って、患者へのアクセスが妨げられる恐れがあり、安全上の懸念が生じ
る。
【0008】
例えば、ダビンチ(登録商標)手術システム(IntuitiVe Surgical, Inc., SunnyVale,
California, USAから入手可能)は、外科医による遠隔腹腔鏡手術の実施を可能にするロ
ボット手術システムである。しかしながら、ダビンチ(登録商標)手術システムは非常に
複雑なロボットシステムであり、各システムは、ロボット1台当たり約2,000,000ドル、メ
ンテナンス費用に年間150,000ドル、そして外科手術ごとに手術器具に2,000ドルのコスト
がかかる。ダビンチ(登録商標)手術システムはまた、手術室に多くのスペースを必要と
するため、手術室内の所望の場所に移動させるのが困難であり、前方手術作業空間と反転
手術作業空間とを切り替えるのが困難である(多象限手術(multi-quadrant surgery)と
も呼ばれる)。
【0009】
さらに、外科医の操作コンソールは、典型的には手術部位から離れて配置されるため、
外科医及び操作コンソールは、手術室の無菌ゾーンに存在しない。外科医の操作コンソー
ルが滅菌されていない場合、外科医は、追加の滅菌手順を受けずには、必要に応じて患者
を治療することが許可されない。特定の外科手術の間、外科医は、即座に介入する必要が
あり得るが、現在の嵩張るロボットシステムは、タイムリーに命を救うように患者の手術
部位に外科医が迅速にアクセスするのを妨げ得る。
【0010】
Madhaniの国際公開第97/43942号、Cooperの国際公開第98/25666号、及びBurbankの米国
特許出願公開第2010/0011900号はそれぞれ、患者の体内で外科医の手の動きを再現するよ
うに設計されたロボット遠隔操作手術器具を開示している。コンピュータ化されたロボッ
トインターフェイスにより、手術器具は、コンソールに座って2つのジョイスティックを
操作する外科医がいくつかの小さな切開部を介して手術を行う遠隔腹腔鏡手術の実施を可
能にする。それらのシステムは、外科医によって完全に制御される洗練された手段である
必要がある自律性又は人工知能を有していない。制御コマンドは、複雑なコンピュータ制
御のメカトロニクスシステムによってロボットマスターとロボットスレーブとの間で送信
され、これは、製造及び維持に非常にコストがかかり、さらに病院スタッフのかなりの訓
練を必要とする。
【0011】
その全内容が引用により本明細書中に組み込まれている、Beiraの国際公開第2013/0146
21号は、スレーブユニットの各部品が運動学的に等価なマスターユニットの対応する部品
の動きを模倣するように、該マスターユニットによって駆動される該スレーブユニットを
含むマスター-スレーブ構成を有する遠隔操作用の機械式遠隔操作装置を説明している。
典型的なマスター-スレーブ遠隔マニピュレータは、7自由度の動きを提供する。具体的
には、これらの自由度には、3つのマクロな並進運動、例えば、内側/外側、上方/下方
、及び左/右の自由度と、1つの回転自由度、例えば回内回外運動(pronosupination)、
2つの関節自由度、例えばヨーとピッチ、及び1つの作動自由度、例えば開/閉を含む4つ
のミクロな動きが含まれる。その公開文献に記載されている機械式伝動システムは装置に
よく適合しているが、ハンドルから運動学的チェーン全体を通って器具までケーブルで低
摩擦の経路を指定することは、費用が嵩み、複雑で、嵩張り、そして精密な較正及び慎重
な取り扱いとメンテナンスを必要とする。
【0012】
加えて、既知の純粋に機械的な解決策は、手首の整合、装置の低い複雑度、低い質量と
慣性、高い手術体積、及び優れた触覚フィードバックを提供しない。例えば、純粋に機械
的な遠隔操作装置では、器具の純粋な回内回外運動/ロール運動を行うために、外科医は
、典型的には、自身の手/前腕の回内回外運動/ロール運動の組み合わせ、及び自身の手
首を用いた湾曲した経路での並進運動を行わなければならない。このような運動は、適切
に実行するには複雑であり、適切に実行されないと、エンドエフェクタのピッチとヨーが
望ましくない寄生運動(parasitic movement)を引き起こす。
【0013】
さらに、機械式遠隔マニピュレータを通る関節自由度及び作動自由度のケーブルでの経
路指定は、遠隔マニピュレータのリンクとジョイント構造の様々なジョイントの角度範囲
の巧みさを制限し得る。これにより、患者の体内でアクセス可能な器具の利用可能な手術
体積が制限される。機械式遠隔マニピュレータの素早い動きの最中、遠隔マニピュレータ
の慣性もまた邪魔になり得、標的のオーバーシュート及び外科医の手の疲労をもたらす。
この質量の一部は、作動自由度及び関節自由度の経路を指定するために必要な部品及び構
成要素に起因し得る。
【0014】
従って、外科医による使用に十分に適合されたロボット遠隔マニピュレータを有し、手
術室にシームレスに統合され、外科医がロボットと患者の間で無菌状態で作業することを
可能にし、比較的低コストであり、かつ/又は統合腹腔鏡手術を可能にする遠隔作動手術
ロボットシステムを提供することが望ましいであろう。無菌の方法は、比較的低コストで
あり、及び/又は統合された腹腔鏡手術を可能にする。
【0015】
さらに、機械式及び/又は電気機械式遠隔マニピュレータを有する遠隔作動手術ロボッ
トを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(概要)
本発明は、好ましくは、外科医による使用に十分に適合されており、手術室にシームレ
スに統合可能であり、外科医が手術を通してロボットと患者との間で無菌で作業すること
を可能にし、比較的低コストであり、かつ/又は統合腹腔鏡手術を可能にするロボット遠
隔マニピュレータを有する遠隔作動手術ロボットシステムを提供することによって既知の
システムの欠点を克服する。
【0017】
遠隔操作用の手術ロボットシステムは、複数のマスターリンクを有するマスターコンソ
ールと、ハンドルで加えられた動きが該複数のマスターリンクの少なくとも1つを動かす
ように該マスターコンソールに結合された該ハンドルとを含む。マスターコンソールは、
外科手術中に無菌状態を維持するように設計することができる。一態様によると、ハンド
ルは、外科手術中は無菌であり、かつ追加の手術のために取り外されている間も滅菌可能
であるように、マスターコンソールに取り外し可能に結合することができる。例えば、ハ
ンドルは、例えばクリップアタッチメント又はねじアタッチメントを介してマスターコン
ソールに取り外し可能に結合することができる。取り外し可能なハンドルは、該ハンドル
がマスターコンソールから取り外されている間の外科手術間の滅菌を容易にするために、
回路、センサ、又は電気的に結合されたボタンなどの電子機器を備えずに純粋に機械的で
あり得る。このようにして、マスターコンソールは、外科医がロボットのハンドルとの直
接的な接触から利用可能な触覚フィードバックを有することを可能にしながら、外科手術
中に無菌であり得る(例えば、ハンドルを除いて無菌ドレープで覆われる)。
【0018】
手術ロボットシステムは、複数のスレーブリンクを有するスレーブコンソールをさらに
含む。一態様によると、スレーブコンソールの遠位端部は、複数のスレーブリンクの角度
付けスレーブリンクのアルファ軸を中心に回転可能であり得、このため、該スレーブコン
ソールの遠位端部が、使用者がマスターコンソールから移動して外科手術を受けている患
者に腹腔鏡手術を手動で行えるように配置可能である。
【0019】
加えて、システムは、スレーブコンソールに結合されたエンドエフェクタを含み、該エ
ンドエフェクタは、ハンドルで加えられた動きに応答して動き、かつスレーブコンソール
での動きに応答して動いて外科手術を行う。例えば、スレーブコンソールは、エンドエフ
ェクタに動作可能に結合された複数のアクチュエータ、例えばモータを備えることができ
、該アクチュエータは、ハンドルでの作動に応答して作動されると、マクロ動同期状態中
には複数のスレーブリンクにマクロな並進運動を加えるが、マクロ非同期状態では該並進
運動を加えず、ミクロ同期状態中にはエンドエフェクタにミクロな動きを加えるが、ミク
ロ非同期状態では該ミクロな動きを加えない。さらに、手術ロボットシステムは、近位端
部及び遠位端部を有する器具を含むことができ、該近位端部は、スレーブコンソールの遠
位端部に結合されるように設計された器具ハブを有し、該遠位端部は、エンドエフェクタ
を有する。
【0020】
ハンドルは、その作動に応答して動く格納式ピストンを備えることができる。従って、
マスターコンソールの少なくとも1つのセンサは、格納式ピストンの動きを検知して、複
数のアクチュエータにエンドエフェクタで対応するミクロな動きをさせるように設計され
ている。本発明の一態様によると、スレーブコンソールは、少なくとも1つのセンサが少
なくとも所定程度の格納式ピストンを検知しない限り、マスターコンソールでの動きに応
答しない。さらに、ハンドルに結合された少なくとも1つのセンサは、ロボットをミクロ
非同期状態からミクロ同期状態に移行させるハンドルの作動パターンを検知するように設
計することができる。例えば、ミクロ非同期状態では、複数のセンサによって検知された
該ハンドルでの動きは、少なくとも1つのセンサがハンドルの作動パターンを検知するた
め、ロボットがミクロ同期状態に移行するまでエンドエフェクタによる対応するミクロな
動きを引き起こさない。
【0021】
マスターコンソールは、複数のマスターリンクの少なくとも1つのマスターリンクの動
きを制限するように設計された機械的制限部を備えることができ、作動されると該複数の
マスターリンクのマクロな並進運動を防止するクラッチをさらに備えることができる。手
術ロボットシステムは、使用者が遠隔マニピュレータの操作中にエンドエフェクタを視覚
化することを可能にするマスターコンソールに結合されたディスプレイをさらに備えるこ
とができる。さらに、システムは、スレーブコンソールの遠位端部と外科手術を受けてい
る患者の体内に配置されたトロカールとの整合を可能にする取り外し可能な切開ポインタ
を備えることができる。
【0022】
さらに、スレーブコンソールのベースは、複数のスレーブリンク及びジョイントが、該
スレーブコンソールのベースが固定されたまま、外科手術を行う前に該スレーブコンソー
ルの遠位端部を所望の水平位置に配置するために、該複数のスレーブジョイントの近位ス
レーブジョイントを中心に移動可能であるように、該近位スレーブジョイントを介して該
複数のスレーブリンクの近位スレーブリンクに結合することができる。加えて、スレーブ
コンソールのベースは、複数のスレーブリンクの近位スレーブリンクに結合された調整可
能な垂直支柱を備えることができる。調整可能な垂直支柱は、複数のスレーブリンク及び
ジョイントの高さを調整して、遠隔マニピュレータの操作の前にスレーブコンソールの遠
位端部を所望の垂直位置に配置することができる。
【0023】
本出願の一態様によると、複数のスレーブジョイントのベータジョイントの遠位側の複
数のスレーブリンク及びジョイントのうちのスレーブリンク及びジョイントは、該ベータ
ジョイントの近位側の該複数のスレーブリンクのうちのスレーブリンク及びスレーブコン
ソールのベースが固定されたまま、該ベータジョイントに対して移動して該スレーブコン
ソールの遠位端部を前方手術作業空間と反転手術作業空間との間で反転させるように設計
されている。
【0024】
手術ロボットシステムはまた、複数のアクチュエータが、制御装置によって実行される
命令に応答してスレーブコンソールの複数のスレーブリンクに動きを加えるように、該複
数のアクチュエータに動作可能に結合された制御装置も含むことができる。例えば、制御
装置は、複数のアクチュエータにスレーブコンソールの複数のスレーブリンクをホーム構
成に移動させる命令を実行することができ、該ホーム構成では、該複数のスレーブリンク
が、エンドエフェクタが外科手術を受ける患者に挿入されたトロカール内で配置可能であ
るように後退される。加えて、制御装置は、複数のアクチュエータに複数のスレーブリン
クの角度付けスレーブリンクを、該角度付けスレーブリンク及び該角度付けスレーブリン
クの近位側のスレーブコンソールのスレーブリンクが遠隔マニピュレータの操作中に固定
されたままである角度まで移動させる命令を実行することができる。従って、角度付けス
レーブリンクの角度では、スレーブコンソールの遠位端部により、エンドエフェクタが、
該角度付けスレーブリンクの角度に本質的に平行な角度で傾けられた半球形手術作業空間
で外科手術を行うことが可能である。
【0025】
本発明の別の態様によると、マスターコンソールはマスター制御装置を有し、スレーブ
コンソールはスレーブ制御装置を有し、このため、マスター制御装置は、ハンドルで検知
された動きに基づいて命令を実行し、該動きに基づいて信号を該スレーブ制御装置に送信
することができる。従って、スレーブ制御装置は、信号を受信し、命令を実行して、マス
ター制御装置から送信された信号に基づいて、複数のスレーブリンクの少なくとも1つ又
はエンドエフェクタ、又はその両方を動かすことができる。例えば、スレーブコンソール
は、右スレーブ遠隔マニピュレータ、右スレーブ制御装置、左スレーブ遠隔マニピュレー
タ、及び左スレーブ制御装置を備えることができ、該マスターコンソールは、右マスター
遠隔マニピュレータ、左マスター遠隔マニピュレータ、及びマスター制御装置を備えるこ
とができ、このため、前方手術作業空間構成では、該マスター制御装置が、該右スレーブ
制御装置と通信して、該右マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該右スレーブ
遠隔マニピュレータを動かし、該マスター制御装置が、該左スレーブ制御装置と通信して
、該左マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータ
を動かす。加えて、いくつかの実施態様によると、反転手術作業空間構成では、マスター
制御装置が、左スレーブ制御装置と通信して、右マスター遠隔マニピュレータでの動きに
応答して左スレーブ遠隔マニピュレータを動かし、該マスター制御装置が、右スレーブ制
御装置と通信して、左マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して右スレーブ遠隔マ
ニピュレータを動かす。
【0026】
従って、右スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部は、複数の右スレーブリンクの右角
度付けスレーブリンクのアルファ軸を中心に回転可能であり得、左スレーブ遠隔マニピュ
レータの遠位端部は、複数の左スレーブリンクの左角度付けスレーブリンクのアルファ軸
を中心に回転可能であり得、このため、右及び左スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部
が、使用者がマスターコンソールから移動して外科手術を受けている患者に腹腔鏡手術を
手動で行うことができるように配置可能である。加えて、右ハンドルは、右マスター遠隔
マニピュレータに取り外し可能に結合することができ、左ハンドルは、左マスター遠隔マ
ニピュレータに取り外し可能に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、本発明の原理に従って構成された、ロボット遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボットシステムを示す。
【0028】
図2A図2Aは、本発明の原理に従って構成された例示的なマスターコンソールを示す。
【0029】
図2B図2Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なディスプレイを示す。
【0030】
図3図3Aは、座位構成にある図2Aのマスターコンソールを示し、図3B及び図3Cは、立位構成にある図2Aのマスターコンソールを示す。
【0031】
図4図4は、本発明の原理に従って構成された例示的なマスターコンソールのハンドルを示す。
【0032】
図5図5Aは、本発明の原理に従って構成された例示的なハンドルグリップを示す。図5B及び図5Cは、本発明の原理に従った、図4Aのマスターコンソールのハンドルに取り外し可能に結合している図5Aのハンドルグリップを示す。
【0033】
図6A-6C】図6A図6Cは、本発明の原理に従った、クリップアタッチメントを介してマスターコンソールのハンドルに取り外し可能に結合する例示的なハンドルグリップを示す。
【0034】
図7図7は、本発明の原理に従った、ねじアタッチメントを介してマスターコンソールハンドルに取り外し可能に結合する例示的なハンドルグリップを示す。
【0035】
図8A-8C】図8A図8Cは、本発明の原理に従った、図5Aのハンドルグリップの作動工程を示す。
【0036】
図9A-9B】図9A及び図9Bは、マスターコンソールハンドルに結合された図5Aのハンドルグリップの断面図である。
【0037】
図10A-10C】図10A図10Cは、本発明の原理に従って構成された別の例示的なマスターコンソールのハンドルを示す。
【0038】
図11A-11B】図11A及び図11Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なスレーブコンソールを示す。
【0039】
図12図12は、本発明の原理に従って構成された左スレーブコンソールを示す。
【0040】
図13図13は、遠隔作動手術ロボットシステムの例示的な制御装置を示す。
【0041】
図14A-14E】図14A図14Eは、本発明の原理に従ったスレーブコンソールのScaraの動きを示す。
【0042】
図15A-15C】図15A図15Cは、本発明の原理に従ったスレーブコンソールの垂直調整を示す。
【0043】
図16図16は、本発明の原理に従ったホーム構成にあるスレーブコンソールを示す。
【0044】
図17A-17D】図17A図17Dは、スレーブコンソールの0度の角度付けの際の前方構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な並進器具インターフェイスの動きを示す。
【0045】
図18A-18D】図18A図18Dは、図17A図17Dの前方手術作業空間を示す。
【0046】
図18E図18Eは、図18A図18Dのスレーブコンソールの前方手術作業空間の背面図である。
【0047】
図19A-19C】図19A図19Cは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際の前方構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な器具の前方手術作業空間を示す。
【0048】
図20A-20C】図20A図20Cは、スレーブコンソールの40度の角度付けの際の前方構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な器具の前方手術作業空間を示す。
【0049】
図21A-21J】図21A図21Jは、本発明の原理に従った、前方構成と反転構成との間のスレーブコンソールの反転を示す。
【0050】
図21K-21L】図21K及び図21Lはそれぞれ、本発明の原理に従った、前方構成及び反転構成の際のマスターコンソールの概略図及びスレーブコンソールの概略図である。
【0051】
図22A-22C】図22A図22Cはそれぞれ、スレーブコンソールの0度、20度、及び40度の角度付けの際の反転構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な並進器具インターフェイスを示す。
【0052】
図23A-23C】図23A図23Cは、図22A図22Cの反転手術作業空間を示す。
【0053】
図24A-24D】図24A図24Dは、本発明の原理に従った、統合腹腔鏡手術用のスレーブコンソールの調整を示す。
【0054】
図25図25は、本発明の原理に従った、図1の遠隔作動手術ロボットシステムの使用を例示するフローチャートである。
【0055】
図26図26は、本発明の原理に従った、図25の外科医がコンソールを配置する工程を例示するフローチャートである。
【0056】
図27図27は、本発明の原理に従った、図25の準備工程を例示するフローチャートである。
【0057】
図28図28は、本発明の原理に従った、図25の器具の準備工程を例示するフローチャートである。
【0058】
図29図29は、本発明の原理に従った、図25の操作の準備工程を例示するフローチャートである。
【0059】
図30図30は、本発明の原理に従った、図25の操作工程を例示するフローチャートである。
【0060】
図31A-31B】図31A及び図31Bは、本発明の原理に従って構成された、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボットシステムを示す。
【0061】
図32A-32B】図32A及び32Bは、図31A及び図31Bの手術ロボットシステムの部分組立分解斜視図を示す。
【0062】
図33図33は、本発明の原理に従って構成された例示的な機械的伝動システムの部分的に組立分解された上面図を示す。
【0063】
図34A-34B】図34A及び図34Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なマスターユニットの側面斜視図を示す。
【0064】
図34C-34D】図34C及び図34Dは、図34A及び図34Bに描かれたマスターユニットと共に使用するのに適したハンドルの代替の実施態様を示す。
【0065】
図35A-35B】図35A及び図35Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なスレーブユニットの側面斜視図を示す。
【0066】
図36A-36B】図36A及び図36Bはそれぞれ、例示的なスレーブハブの端部断面図及び側面内部斜視図を示す。
【0067】
図36C-36D】図36C及び図36Dはそれぞれ、本発明の原理に従って構成されたスレーブ器具の斜視側面図及びエンドエフェクタの詳細な内部図である。
【0068】
図36E図36Eは、例示的なエンドエフェクタの代替の実施態様の詳細図である。
【0069】
図37図37は、選択されたエンドエフェクタの運動学を識別するための例示的な方法工程を例示するフローチャートを示す。
【0070】
図38図38は、本発明の遠隔作動手術ロボットシステムの代替の例示的な実施態様を示す。
【0071】
図39図39は、図38の遠隔作動手術ロボットシステムのマスターユニットの内部側面斜視図を示す。
【0072】
図40A-40B】図40A及び図40Bは、図38の遠隔作動手術ロボットシステムのスレーブユニットの前方斜視図及び後方斜視図である。
【0073】
図41A-41B】図41A及び図41Bは、本発明の手術ロボットシステムでの使用に適した制御システムの代替の概略図である。
【0074】
図42A-42B】図42A及び図42Bは、本発明の原理に従って構成された遠隔マニュピレータの代替の実施態様の側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
(詳細な説明)
本発明の原理に従って構成された、低侵襲外科処置又は他の応用で使用できる、ロボッ
ト遠隔マニピュレータを有する遠隔作動手術ロボットシステム及び統合腹腔鏡手術につい
て本明細書で説明する。手術ロボットシステムは、縫合及び切開などの時間のかかる困難
な手術作業にロボット工学の有用性を提供し、使用者、例えば外科医が、血管の閉鎖及び
ステープル留めなどの短時間の特殊な手術作業のために統合腹腔鏡手術に効率的に切り替
えることを可能にする。十分に多関節の器具は、複雑な手術作業を単純にし、手の動きの
再現により精度が向上する。使用者は、外科医の集中力及び能力を向上させるために、リ
ラックスした人間工学的作業姿勢で座る又は立つことができる。
【0076】
図1を参照すると、ロボット遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボッ
トシステム10が示されている。手術ロボットシステム10は、例えば電気ケーブルを介して
スレーブコンソール50に電気的かつ動作可能に結合されたマスターコンソール20を含む。
以下にさらに詳細に説明されるように、手術ロボットシステム10は、スレーブコンソール
50に結合された複数のアクチュエータ、例えば、好ましくはモータが、プロセッサ駆動制
御システムを介してマスターコンソール20に加えられる動きに応答してスレーブコンソー
ル50のエンドエフェクタにマクロな並進運動を加えるマクロ同期状態と、スレーブコンソ
ール50に結合された複数のアクチュエータ、例えば、好ましくはモータが、プロセッサ駆
動制御システムを介してマスターコンソール20のハンドルで加えられた動きに応答してス
レーブコンソール50のエンドエフェクタにミクロな動きを加えるミクロ同期状態とを有す
る。
【0077】
制御システムは、マスターコンソール20の右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マ
スター遠隔マニピュレータ22bに動作可能に結合されたマスター制御装置2、並びにスレー
ブコンソール50の右スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び左スレーブ遠隔マニピュレータ5
1bに動作可能に結合されたスレーブ制御装置4a及び4bをそれぞれ備えることができる。例
えば、マスター制御装置2は、その1つ又は複数のプロセッサによって実行されるとマスタ
ーコンソール20の操作を可能にする命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、
例えばメモリを備えることができる。同様に、スレーブ制御装置4a、4bはそれぞれ、それ
らのそれぞれの1つ又は複数のプロセッサによって実行されるとスレーブコンソール50の
操作を可能にする命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばメモリを備
えることができる。マスター制御装置2は、ケーブル(例示されている)などの通信リン
クを介して、又は無線通信部品を介してスレーブ制御装置4a及びスレーブ制御装置4bに動
作可能に結合されている。
【0078】
マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサに動作可能に結合
することができ、スレーブ制御装置4a、4bは、スレーブコンソール50の1つ又は複数のア
クチュエータに動作可能に結合することができ、このため、マスター制御装置2は、マス
ターコンソール20の1つ又は複数のセンサによってマスターコンソール20で加えられた動
きを示す信号を受信し、そしてそこに格納された命令を実行してスレーブコンソール50の
1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を実行し、そこに格納
された命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4a、4bに処理された信号を送信して、
この処理された信号に基づいてスレーブコンソール50をマスターコンソール20の動きに対
応するように動かすことができる。例えば、1つ又は複数のアクチュエータは、1つ又は複
数のモータを備えることができる。別法では、マスター制御装置2は、マスターコンソー
ル20の1つ又は複数のセンサから信号を受信し、その信号を処理し、この処理された信号
を、それぞれのスレーブ制御装置4a、4bに送信し、該スレーブ制御装置4a、4bが、そこに
格納された命令を実行して該処理された信号に基づいて座標変換を実行し、そして命令を
実行してスレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させて、該変換さ
れた処理信号に基づいてマスターコンソール20の動きに対応するようにスレーブコンソー
ル50を動かすことができる。好ましくは、スレーブコンソール50のスレーブリンク及びス
レーブジョイントは、以下にさらに詳細に説明されるように、エンドエフェクタ/器具先
端部が、手術ロボットシステム10の動作中に遠隔運動中心から逸脱することなく、マスタ
ーコンソール20のハンドルで加えられた動きを再現するように動く。従って、並進自由度
、例えば左/右、上方/下方、内側/外側、関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由
度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動は、以下にさらに詳細に説明さ
れるように、センサ、アクチュエータ、及び制御システムを介して電気機械的に再現され
る。
【0079】
マスターコンソール20は、使用者、例えば外科医が位置し得る手術室内、及び外科手術
を受けている患者が位置し得るスレーブコンソール50に近接して、例えば無菌ゾーンに配
置することができるため、該使用者は、必要に応じて、外科手術中にマスターコンソール
20とスレーブコンソール50との間を素早く移動して腹腔鏡手術を手動で行うことができる
。従って、スレーブコンソール50は、以下にさらに詳細に説明されるように、外科医が患
者の手術部位にアクセスすることを可能にする構成に効率的に後退するように設計されて
いる。マスターコンソール20は、無菌ドレープで覆うことができ、かつ外科手術間に取り
外して滅菌することができる取り外し可能なハンドルを備えることができ、このため、該
ハンドルは、外科手術中に無菌であり、該ハンドルと外科医の手との間に物理的な障壁が
なく、これにより該外科医による制御及び成績が向上する。取り外し可能なハンドルは、
回路、センサ、又は電気的に結合されたボタンなどの電子器具を備えずに純粋に機械的に
することができ、このため、該取り外し可能なハンドルは、外科手術間で容易に滅菌可能
である。このようにして、マスターコンソールは、手術中に無菌であり得るが、外科医が
ロボットのハンドルとの直接接触から得られる触覚フィードバックを有することを可能に
する。
【0080】
図1に例示されているように、マスターコンソール20は、右マスター遠隔マニピュレー
タ22a及び左マスター遠隔マニピュレータ22bを備える。右マスター遠隔マニピュレータ22
a及び左マスター遠隔マニピュレータ22bは、外科医がマスターコンソール20にいるときに
右マスター遠隔マニピュレータ22aを該外科医の右手によって操作することができ、かつ
左マスター遠隔マニピュレータ22bを該外科医の左手によって操作することができるよう
に単一マスターコンソール上に配置することができる。従って、マスターコンソール20は
、手術室内での移動のための車輪、及び、例えば保管中又は外科手術中の外科医による使
用中に、遠隔マニピュレータを所定の位置にロックするために作動させることができる車
輪ロックを備えることができる。加えて、右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マス
ター遠隔マニピュレータ22bは、例えば外科医の右手及び左手によって、同時に、かつ他
方に対して独立に操作することができる。好ましくは、手術ロボットシステム10は、外科
処置での使用のために最適化される。
【0081】
図1にさらに例示されているように、スレーブコンソール50は、右マスター遠隔マニピ
ュレータ22aに動作可能に結合された右スレーブ遠隔マニピュレータ51a、及び左マスター
遠隔マニピュレータ22bに動作可能に結合された左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを備え
る。右及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び51bは、右スレーブ遠隔マニピュレータ
51aを外科手術を受けている患者の右側に配置することができ、かつ左スレーブ遠隔マニ
ピュレータを該患者の左側に配置できるように別々のコンソールに配置することができる
。従って、右及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び51bはそれぞれ、手術室内での移
動のための車輪、及び、例えば保管中に所定の位置に又は手術中に患者の近くに遠隔マニ
ピュレータをロックするために作動させることができるフロアロックを備えることができ
る。加えて、右及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び51bはそれぞれ、手術室内で遠
隔マニピュレータを押したり引いたりするためのプルバーを備えることができる。
【0082】
さらに、カメラシステムを、手術ロボットシステム10で使用することができる。例えば
、スレーブコンソール50に位置するアシスタントによって操作されるカメラ、例えば内視
鏡は、スレーブコンソール50で操作することができ、かつ/又は所定の位置に保持するこ
とができる。従って、カメラシステムは、外科処置中に外科医が容易に観察可能な位置で
マスターコンソール20に取り付けられたディスプレイ21を備えることができる。ディスプ
レイ21は、手術ロボットシステム10に関する状態情報を表示し、かつ/又は内視鏡カメラ
によって捕捉された手術部位を外科医にリアルタイムで表示することができる。
【0083】
ここで図2Aを参照すると、例示的なマスターコンソール20が示されている。上述のよう
に、マスターコンソール20は、右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マスター遠隔マ
ニピュレータ22bを備える。左マスター遠隔マニピュレータ22bは、例示されているように
右マスター遠隔マニピュレータ22aの構造的鏡像型とすることができるため、右マスター
遠隔マニピュレータ22aの以下の説明は、左マスター遠隔マニピュレータ22bにも当てはま
る。
【0084】
マスター遠隔マニピュレータ22aは、複数のマスタージョイント、例えば、第1のマスタ
ージョイント25、第2のマスタージョイント27、第3のマスタージョイント29、第4のマス
タージョイント31、及び第5のマスタージョイント34によって相互に連結された複数のマ
スターリンク、例えば、第1のマスターリンク26、第2のマスターリンク28、第3のマスタ
ーリンク30、及び第4のマスターリンク、例えば、誘導マスターリンク32を備える。図1
示されているように、ハンドル部分35は、ジョイント34を介してマスター遠隔マニピュレ
ータ22aに連結され、かつマスター遠隔マニピュレータ22aを操作するための複数のハンド
ルジョイントによって相互に連結された複数のハンドルリンクを備える。加えて、マスタ
ー遠隔マニピュレータ22aは、伸縮ベース23a及び23bを有するベース部と、伸縮ベース23a
及び23bの上に固定されたベースキャップ24とを備える。リンク26は、ジョイント25を介
してベースキャップ24に回転可能に結合されている。従って、リンク26、従ってリンク26
の遠位側のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント25で軸δ1を中心にベ
ースキャップ24に対して回転することができる。図1に示されているように、リンク28、
従ってリンク28の遠位側のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント27で軸
δ2を中心にリンク26に対して回転することができ、リンク30、従ってリンク30の遠位側
のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント29で軸δ3を中心にリンク28に
対して回転することができ、誘導マスターリンク32、従って誘導マスターリンク32の遠位
側のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント31で軸δ4を中心にリンク30
に対して回転することができる。
【0085】
マスターコンソール20は、マスター遠隔マニピュレータ22a内に配置された複数のセン
サを備え、このため、任意のマスターリンク及びジョイントに加えられたあらゆる動きを
検知して制御システムに送信することができ、次いで、該制御システムが命令を実行して
図12を参照して下にさらに詳細に説明されるように、スレーブコンソール50に結合され
た1つ又は複数のアクチュエータに、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの対応するスレーブ
リンク及びジョイントで動きを再現させる。
【0086】
引き続き図2Aを参照すると、マスター遠隔マニピュレータ22aは、機械的制限部33を備
え、該機械的制限部33は、リンク26内に開口部を備え、該開口部は、誘導マスターリンク
32をそこに通して配置することを可能にするサイズ及び形状であり、これにより、マスタ
ー遠隔マニピュレータ22aのそのピボット点を中心とする動きを制限する。例えば、機械
的制限部33は、マスター遠隔マニピュレータ22aが作動されたときに、誘導マスターリン
ク32が長手方向軸δ5に沿って並進することを保証する。加えて、機械的制限部33により
、誘導マスターリンク32が、互いに垂直な軸δ1及びδ6を中心に回転することができ、誘
導マスターリンク32の向きとは無関係に、固定ピボット点Pで長手方向軸δ5と交差する平
面を形成する。結果として、スレーブ遠隔マニピュレータは、対応する動きを生成し、こ
れにより、例えば、トロカールが患者の腹部に入る患者の固定切開点で、マスター遠隔マ
ニピュレータのピボット点を事実上維持する。
【0087】
手術ロボットシステム10が、遠隔の運動中心Vが患者の切開部と整合するように配置さ
れると、ハンドル部分35に加えられる並進運動が、患者の体内に配置されたエンドエフェ
クタによって再現される。エンドエフェクタは、ハンドル部分35に加えられる動きを再現
するため、この構成は、ハンドルとエンドエフェクタとの間の支点効果を有利に排除する
【0088】
加えて、マスターコンソール20は、例えばベースキャップ24に結合されたアーム支持体
12を備えることができ、該アーム支持体12は、マスターコンソール20の操作中に外科医が
アーム支持体にその腕を休ませることができるようなサイズ及び形状である。従って、ア
ーム支持体12は、マスター遠隔マニピュレータ22aの操作中は静止したままである。マス
ターコンソール20は、以下にさらに詳細に説明されるように、作動されると手術ロボット
システム10のマクロ同期を防止するクラッチ11、例えばフットペダルをさらに備えること
ができる。
【0089】
ここで図2Bを参照すると、ディスプレイ21が示されている。ディスプレイ21は、文章を
含まない単純な設計を有することができ、可視グラフィック要素及びLED、例えば白色、
黄色、及び赤色の光のみを利用する。例えば、白色光は、構成要素が適切に機能している
ことを伝え、黄色光は、外科医が不適切な動作を行ったことを伝え、赤色光は、構成要素
にエラーがあることを伝える。図2Bに示されているように、ディスプレイ21は、スレーブ
コンソール50の様々な構成要素及びその状態をグラフィック表示する。アイコン2laは、
システムの起動に対応し、アイコン2lbは、システムの警告に対応し、アイコン2lhは、作
業限界に達していることに対応し、そしてアイコン2ljは、スレーブコンソール50のそれ
ぞれのスレーブ遠隔マニピュレータが前方手術作業空間又は反転手術作業空間にあるか否
かに対応し、これらのアイコンはすべて、照明されていない場合は目に見えないようにす
ることができ、他のすべてのアイコンは、照明されていない場合でも目に見えるグラフィ
ック要素を有する。アイコン2lcは、スレーブコンソール50のホーミング、例えばホーム
構成に対応し、アイコン2ldは、器具82の状態に対応し、アイコン2leは、変換器具インタ
ーフェイス81の無菌インターフェイスに対応し、アイコン2lfは、マクロ同期に対応し、
アイコン2lgは、ミクロ同期に対応し、アイコン2liは、スレーブコンソール50の車輪がロ
ックされているか又はロック解除されているか対応し、これらのすべての機能は、以下に
さらに詳細に説明する。当業者には理解されるように、ディスプレイ21は、外科医に情報
を伝達することができる当技術分野で公知の任意のディスプレイとすることができる。
【0090】
ここで図3A図3Cを参照すると、マスターコンソール20は、伸縮ベース23a及び23bを介
して、座位構成と立位構成との間で調整することができる。例えば、図3Aに例示されてい
るように、マスターコンソール20は、伸縮ベース23a及び23bが垂直高さD1を有するように
座位構成に調整することができる。この座位構成では、外科医は、マスターコンソール20
の操作中に座っていることができる。図3B及び図3Cに例示されているように、マスターコ
ンソール20は、伸縮ベース23a及び23bが垂直高さD2を有するように立位構成に調整するこ
とができる。この構成では、外科医は、マスターコンソール20の操作中は立っていること
ができる。加えて、伸縮ベース23a及び23bの垂直高さは、マスターコンソール20、例えば
マスターリンク26に配置されたアクチュエータを介して調整することができる。例えば、
アクチュエータは、作動されると伸縮ベース23a及び23bの垂直高さを増加させる上昇ボタ
ン又は減少させる下降ボタンを備えることができる。当業者には理解されるように、伸縮
ベース23a及び23bの垂直高さは、外科医の要求通りにD1とD2との間の任意の垂直高さに調
整することができる。
【0091】
ここで図4を参照すると、マスターコンソールのハンドル部分35が示されている。マス
ターコンソールのハンドル部分35は、複数のハンドルジョイント、例えばハンドルジョイ
ント37及びハンドルジョイント39によって相互に連結された複数のハンドルリンク、例え
ばハンドルリンク36及びハンドルリンク38を備える。図4に例示されているように、ハン
ドルリンク36は、ジョイント34を介して誘導マスターリンク32に回転可能に結合され、従
って、軸δ7を中心に誘導マスターリンク32に対して回転することができる。加えて、ハ
ンドルリンク38は、ハンドルジョイント37を介してハンドルリンク36に回転可能に結合さ
れ、従って、軸δ8を中心にハンドルリンク36に対して回転することができる。さらに、
ハンドルグリップ40は、ジョイント39でマスターコンソールのハンドル部分35に取り外し
可能に結合することができ、このため、ハンドルグリップ40は、軸δ9を中心にハンドル
リンク37に対して回転することができる。図4に示されているように、ハンドルグリップ4
0は、外科医の指、例えば親指及び人差し指に係合するためのフィンガーストラップ41を
備えることができる。
【0092】
ハンドル部分35の内側/外側への動きにより、誘導マスターリンク32が長手方向軸δ5
に沿って内側/外側に動き、この動きが、マスター遠隔マニピュレータ22aに結合された1
つ又は複数のセンサによって検知され、制御システムに伝達され、次いで、該制御システ
ムが命令を実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合された1つ又は複数のアクチ
ュエータにより、対応するスレーブリンクに仮想長手方向軸ω9に沿った内側/外側への
動きを再現させる。同様に、ハンドル部分35の上方/下方への動きは、誘導マスターリン
クを長手方向軸δ6に沿って上方/下方に動かし、この動きが、マスター遠隔マニピュレ
ータ22aに結合された1つ又は複数のセンサによって検知され、制御システムに伝達され、
次いで、該制御システムが命令を実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合され
た1つ又は複数のアクチュエータにより、対応するスレーブリンクに仮想長手方向軸ω10
を中心とする上方/下方側への動きを再現させる。最後に、ハンドル部分35の左/右への
動きにより、誘導マスターリンクが長手方向軸δ1に沿って左/右に動かし、この動きが
、マスター遠隔マニピュレータ22aに結合された1つ又は複数のセンサによって検知され、
制御システムに伝達され、次いで、該制御システムが命令を実行して、スレーブ遠隔マニ
ピュレータ51aに結合された1つ又は複数のアクチュエータにより、対応するスレーブリン
クに仮想長手方向軸ω5を中心とする左/右への動きを再現させる。
【0093】
引き続き図4を参照すると、マスター遠隔マニピュレータ22aのハンドル部分35に加えら
れる動きにより、関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回
転自由度、例えば回内回外運動が、センサ、アクチュエータ、及び制御システムを介して
電気機械的に行われる。マスター遠隔マニピュレータ22aは、好ましくは、ハンドル部分3
5の動きを検出するためにハンドル部分35に結合された1つ又は複数のセンサを備える。理
解されるように、センサは、角度及び位置を測定することで回転を測定するために一側に
磁石を他側にセンサを備える磁気ベースの回転センサなどの、回転運動を検出するように
設計された任意のセンサであり得る。センサは、該センサによって測定された回転を示す
信号を生成し、該信号をスレーブコンソール50に結合された1つ又は複数のアクチュエー
タに送信するための制御システムに結合され、該スレーブコンソール50は、ハンドル部分
35に加えられる動きをエンドエフェクタで再現することができる。例えば、電気ケーブル
を、ハンドル部分35から制御システム、例えば、制御電子器具を含むユニットまで延ばす
ことができ、追加の電気ケーブルを、該制御システムから、スレーブコンソール50に結合
された1つ又は複数のアクチュエータまで延ばすことができる。
【0094】
図5Aに例示されているように、ハンドルグリップ40は、開放構成に向かって付勢されて
いるトリガ41a、41bを備える。従って、トリガ41a、41bを作動させて、制御システムを介
して送信される信号を生成することができ、該制御システムが命令を実行して、スレーブ
コンソール50に結合されたアクチュエータにエンドエフェクタを開/閉させる。
【0095】
図4に戻って参照すると、ハンドルグリップ40は、ハンドル軸δ9を中心に回転可能であ
り得、このため、該ハンドルグリップ40の回転が、制御システムを介して信号を生成及び
送信するセンサによって検出され、該制御システムが命令を実行して、スレーブコンソー
ル50に結合されたアクチュエータにエンドエフェクタを回内回外運動自由度で回転させる
【0096】
ハンドル部分35はまた、ハンドル軸δ8を中心に回転可能であり、このため、ハンドル
軸δを中心とする回転が、制御システムを介して信号を生成及び送信するセンサによって
検出され、該制御システムが命令を実行して、スレーブコンソール50に結合されたアクチ
ュエータに、エンドエフェクタをヨー自由度で回転させる。加えて、ハンドル部分35は、
ハンドル軸δ7を中心に回転可能であり得、このため、ハンドル軸δ7を中心とするハンド
ル部分35の回転が、制御システムを介して信号を生成及び送信するセンサによって検出さ
れ、該制御システムが命令を実行して、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエー
タに、エンドエフェクタをピッチ自由度で回転させる。
【0097】
図5B及び図5Cに例示されているように、ハンドルグリップ40は、ジョイント39を介して
マスター遠隔マニピュレータ22aのハンドル部分35に取り外し可能に結合することができ
る。従って、ハンドルグリップ40は、滅菌するために手術間に取り外し、手術直前にマス
ター遠隔マニピュレータ22aに再び連結することができる。従って、手術ロボットシステ
ム10の操作中、マスターコンソール20全体を無菌ドレープで覆うことができるため、ハン
ドルグリップ40は無菌となり、該無菌ドレープの外側でマスターコンソール20に連結する
ことができる。これにより、外科医が、ハンドルグリップ40との間に物理的な障壁なしに
該ハンドルグリップ40に直接接触することができ、これにより、触覚フィードバック及び
全体の性能が向上する。
【0098】
ここで図6A図6Cを参照すると、ハンドルグリップ40は、クリップアタッチメントを介
してマスターコンソール20のハンドル部分35に取り外し可能に結合することができる。図
6A~図6Cに示されているように、アタッチメントに予荷重をかけて固定バックラッシュを
なくすために、ばね43を、ハンドル部分35のジョイント39及びハンドルグリップ40のクリ
ップ部分42に連結することができる。本発明の別の態様によると、図7に示されているよ
うに、ハンドルグリップ40'は、ねじアタッチメントを介してマスターコンソール20のハ
ンドル部分35'に取り外し可能に結合することができる。図7に示されているように、雌ね
じ部分44aを有するハンドルグリップ40'のねじ部分42'は、ハンドル部分35'のジョイント
39'の雄ねじ部分44bに螺合することができ、このため、該ハンドルグリップ40'が該ハン
ドル部分35'にねじ留めされる。
【0099】
ここで、図8A図8Cを参照すると、ハンドルグリップ40の作動工程が示されている。図
8B及び図8Cに例示されているように、ハンドルグリップ40は、その中心管腔内に配置され
た格納式ピストン45を備える。格納式ピストン45は、コネクタ46aを介してハンドルグリ
ップ40のトリガ41aに機械的に結合され、コネクタ46bを介して該ハンドルグリップ40のト
リガ41bに機械的に結合されている。図8Aに示されているように、トリガ41a、41bが弛緩
状態にある、例えば、開放構成に付勢されているときは、格納式ピストン45は、完全にハ
ンドルグリップ40の中心管腔内にある。図8B及び図8Cに示されているように、ハンドルグ
リップ40が作動されると、例えば、トリガ41a、41bが互いに向かって押されると、コネク
タ46a、46bにより、格納式ピストン45がハンドルグリップ40の中心管腔から突き出る。ハ
ンドルグリップ40の中心管腔を越えた格納式ピストン45の動きは、ハンドル部分35内のセ
ンサによって検知することができる。
【0100】
例えば、図9A及び図9Bに示されているように、ハンドルグリップ40がハンドル部分35に
取り外し可能に結合される場所に隣接したマスターコンソールの部分は、ハンドル部分35
での動きを検知するための1つ又は複数のセンサ47を備えることができる。従って、1つ又
は複数のセンサ47は、格納式ピストン45の動きを示す信号を制御システムに送信すること
ができ、該制御システムが命令を実行して、1つ又は複数のアクチュエータにより、エン
ドエフェクタを動かすことができる。センサ47が格納式ピストン45の動きを検知しないと
、制御システムがアクチュエータによりエンドエフェクタを動かす命令をしないため、こ
れはフェイルセーフとして機能し得る。例えば、ハンドグリップ40のトリガ4la、4lbが弛
緩した状態のときは、トリガ4la、4lbの小さな偶発的な動きを考慮して、トリガ4la、4lb
が外科医によって意図的に作動されるまで動きが検知されない。従って、格納式ピストン
45がハンドルグリップ40の中心管腔を越えて突き出るためには、トリガ4la、4lbは少なく
とも予め指定された程度まで作動されなければならないであろう。加えて、図9A及び図9B
に例示されているように、ハンドル部分35は、格納式ピストン45を押して、コネクタ46a
、46bを介してトリガ41a、41bを開放構成に付勢するためのばね48を備えることができる
【0101】
本発明の別の態様によると、図10A図10Cに例示されているように、ハンドルグリップ
40''は、マスター遠隔マニピュレータ22aのハンドル部分35に取り外し可能に結合するこ
とができる。例えば、ハンドルグリップ40''は、所望の手術作業を行うためにハンドル及
びトリガ49を含むピストル形状を有し得る。当業者には理解されるように、様々な形状の
ハンドルグリップをマスター遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合して、スレーブ遠
隔マニピュレータのエンドエフェクタに所望の動きをさせることができる。従って、ハン
ドルグリップは、統合された識別子要素、例えばRFIDタグを有することができ、このため
、制御システムは、識別子要素を検出し、ハンドルグリップが手術ロボットシステム10で
の使用を許可されているか否かを確認する。
【0102】
ここで図11A及び図11Bを参照すると、スレーブコンソール50が示されている。図11A
示されているように、スレーブコンソール50は、右スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び
左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを備える。左スレーブ遠隔マニピュレータ51bは、例示
されているように右スレーブ遠隔マニピュレータ51aの構造的鏡像型であり得るため、右
スレーブ遠隔マニピュレータ51aの以下の説明は、左スレーブ遠隔マニピュレータ51bにも
当てはまる。
【0103】
図12に例示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aは、複数のスレーブジ
ョイント、例えば第1のスレーブジョイント、例えば近位Scaraジョイント54、第2のスレ
ーブジョイント、例えば中央Scaraジョイント56、第3のスレーブジョイント、例えば遠位
Scaraジョイント58、第4のスレーブジョイント、例えば角度付けジョイント60、第5のス
レーブジョイント、例えばアルファジョイント62、第6のスレーブジョイント、例えばベ
ータジョイント64、第7のスレーブジョイント、例えばガンマジョイント66、及び第8のス
レーブジョイント、例えばシータジョイント68によって相互に連結された複数のスレーブ
リンク、例えば第1のスレーブリンク55、第2のスレーブリンク57、第3のスレーブリンク5
9、第4のスレーブリンク、例えば角度付けリンク61、第5のスレーブリンク63、第6のスレ
ーブリンク65、第7のスレーブリンク67、及び第8のスレーブリンク、例えばスレーブハブ
69を備える。図12に示されているように、並進器具インターフェイス81は、シータジョイ
ント68を介してスレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合されている。
【0104】
並進器具インターフェイス81は、その全内容が引用により本明細書中に組み込まれてい
る、本出願の譲受人に譲渡されたChassotの米国特許出願公開第2018/0353252号に記載さ
れているように構成することができる。例えば、並進器具インターフェイス81は、スレー
ブハブ69及び手術器具を備える。図11Bに示されているように、スレーブハブ69は、スレ
ーブ遠隔マニピュレータ51aのリンク67に取り付けることができる。手術器具は、そのシ
ャフトの遠位端部に配設されたエンドエフェクタを備え、かつスレーブハブ69に結合する
ことができる。例えば、エンドエフェクタは、スレーブハブ69に取り外し可能に結合する
ことができる。無菌インターフェイスを、スレーブハブ69と手術器具の間に配置すること
ができる。加えて、並進器具インターフェイス81は、スレーブハブ69内に配置された1つ
又は複数のアクチュエータからエンドエフェクタの構成要素まで延びた並進伝動システム
を備える。例えば、エンドエフェクタは、並進器具インターフェイス81の並進伝動システ
ムに結合された複数のエンドエフェクタジョイントによって相互に連結された複数のエン
ドエフェクタリンクを備え、このため、1つ又は複数のアクチュエータによる並進伝動シ
ステムの作動により、複数のエンドエフェクタのリンク及びジョイントを介してエンドエ
フェクタが動く。
【0105】
加えて、スレーブ遠隔マニピュレータ51aは、調整可能な支柱を有するベース部分52、
及び該調整可能な支柱の上に固定されたスレーブ支持体53を備える。リンク55は、近位Sc
araジョイント54を介してスレーブ支持体53に回転可能に結合されている。従って、リン
ク55、従ってリンク55の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、近位Scara
ジョイント54の軸ω1を中心にスレーブ支持体53に対して回転することができる。図12
示されているように、リンク57、従ってリンク57の遠位側のすべてのスレーブジョイント
及びリンクは、中央Scaraジョイント56の軸ω2を中心にリンク55に対して回転することが
でき、リンク59、従ってリンク59の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、
遠位Scaraジョイント58の軸ω3を中心にリンク57に対して回転することができ、角度付け
リンク61、従って角度付けリンク61の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは
、角度付けジョイント60の軸ω4を中心にリンク59に対して回転することができ、リンク6
3、従ってリンク63の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、アルファジョ
イント62のアルファ軸ω5を中心に角度付けリンク61に対して回転することができ、リン
ク65、従ってリンク65の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、ベータジョ
イント64のベータ軸ω6を中心にリンク63に対して回転することができ、リンク67、従っ
てリンク67の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、ガンマジョイント66の
ガンマ軸ω7を中心にリンク65に対して回転することができ、スレーブハブ69、従って並
進器具インターフェイス81がスレーブハブ69に結合されたときの並進器具インターフェイ
ス81は、シータジョイント68のシータ軸ω8を中心にリンク67に対して回転することがで
きる。
【0106】
スレーブ支持体53と一体化した支柱は、該支柱の伸長及び引き込みを可能にし、これに
より地面に対するスレーブ支持体53の遠位側のすべてのリンクの高さを調整するアクチュ
エータ、例えば、電気モータを備える。別法では、スレーブ支持体53と一体化した支柱の
代わりに、スレーブ支持体53は、カウンターウェイトに基づくカウンターバランスシステ
ムを有する機械的線形誘導システム、及び垂直移動を阻止するための電気ブレーキを備え
ることができる。従って、電気ブレーキが解除されると、スレーブ支持体53の遠位側のす
べてのリンクの垂直高さを地面に対して調整することができる。近位Scaraジョイント54
、中央Scaraジョイント56、及び遠位Scaraジョイント58はそれぞれ、それぞれのブレーキ
が係合しているときは対応するジョイントの動きを阻止することができ、それぞれのブレ
ーキが解除されているときはそれぞれのジョイントの手動での動きを可能にする電気ブレ
ーキを備える。角度付けジョイント60は、リンク59を中心とするリンク61の角度位置の調
整を可能にするアクチュエータ、例えば電磁モータを備える。アルファジョイント62、ベ
ータジョイント64、ガンマジョイント66、及びシータジョイント68はそれぞれ、専用の電
磁モータとブレーキの対に連結され、このため、制御システムが、それぞれのモータに位
置コマンドを出すことによって各ジョイントの角度位置を調整し、それぞれのブレーキを
作動させることによってジョイントのすべての動きを停止することができる。
【0107】
当業者には理解されるように、スレーブコンソール50は、複数のセンサを備えることが
でき、マスターコンソール20は、複数のアクチュエータを備えることができ、このため、
スレーブコンソール50で加えられた動きが、マスターコンソール20で加えられるべき動き
を引き起こすことができ、これにより触覚フィードバックを提供する。
【0108】
ここで図13を参照すると、制御装置70が示されている。制御装置70は、遠隔制御装置、
又は手術ロボットシステム10の制御システムに動作可能に結合されたグラフィカルユーザ
インターフェイス、又は左及び右の遠隔マニピュレータ51a及び51bにそれぞれ組み込まれ
た一連のアクチュエータであり得る。従って、制御装置70は、複数のアクチュエータ、例
えば、ボタン、又はタッチスクリーンインターフェイスを備えることができ、それによっ
て、使用者は、タッチにより複数の選択肢を選択することができる。例えば、制御装置70
は、以下のコマンドの少なくとも1つを選択するための選択肢を使用者に提供することが
できる:Scaraブレーキの係合及び解除、スレーブコンソールの垂直調整、垂直支柱ブレ
ーキの解除、ホーム構成、前方角度付けの増減、前進ギアから後退ギア又は後退ギアから
前進ギアへの反転、腹腔鏡手術構成、及び停止位置構成。制御装置70は、スレーブ制御装
置及び/又はマスター制御装置の一方又は両方に動作可能に結合されている。制御装置70
での使用者の入力に応答して、それぞれのスレーブ制御装置は、そこに格納された命令を
実行して、該使用者によって入力された以下で説明されるコマンド(複数可)を実行する
。各スレーブコンソールは、それ自体の専用制御装置70を備えてもよいし、又は両方のス
レーブコンソール用の共用制御装置70を使用してもよい。
【0109】
例えば、図14A図14Eに例示されているように、制御装置70は、使用者が近位Scaraジ
ョイント54、中央Scaraジョイント56、及び遠位Scaraジョイント56のブレーキを解除する
ことを可能にすることができ、このため、外科医は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレ
ーブ支持体53が固定されたまま、近位Scaraジョイント54の遠位側のスレーブアームリン
クを掴んで保持し、そして押す/引くことによってスレーブアームを手動で水平に再配置
することができる。具体的には、Scaraが動く際に、スレーブ遠隔マニピュレータのスレ
ーブ支持体53が固定されたまま、かつスレーブリンク59の遠位側のスレーブジョイント及
びリンクがスレーブリンク59に対して固定されたまま、スレーブリンク55、57、59は、ジ
ョイント54、56、58の軸ω1、ω2、ω3を中心に動くことができる。従って、使用者は、
スレーブ遠隔マニピュレータ、例えばスレーブハブ69の遠位端部を、外科手術を受けてい
る患者に対して所望の位置に調整することができる。
【0110】
図15A図15Cに例示されているように、制御装置70は、使用者がスレーブコンソールの
コマンドの垂直調整を選択することを可能にすることができ、それによって制御システム
が命令を実行して、スレーブ支持体53の支柱に結合されたアクチュエータ、例えば、モー
タを伸長又は後退させる。具体的には、スレーブ遠隔マニピュレータの垂直調整中に、ス
レーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の相対距離を
調整することができる。例えば、図15Aに例示されているように、スレーブ遠隔マニピュ
レータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の垂直距離はH1であり、図15B
示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とスレーブベース
部分52の上面との間の垂直距離はH2であり、図15Cに示されているように、スレーブ遠隔
マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の垂直距離はH3である。
従って、使用者は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上
面との間の相対距離を、外科手術を受けている患者に対して所望の高さに調整することが
できる。スレーブコンソールが、カウンターウェイトに基づいたカウンターバランスシス
テムを有する機械的線形誘導スシステムを備える実施態様では、制御装置70は、使用者が
スレーブコンソールのコマンドの垂直調整を選択することを可能にすることができ、それ
によって制御システムが、機械的カウンターバランス線形誘導システムを上下に移動でき
るように支柱の電気ブレーキを解除させる命令を実行し、これにより、スレーブ遠隔マニ
ピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の相対距離を、外科手術を受
けている患者に対して所望の高さに調整することができる。
【0111】
図16に例示されているように、制御装置70は、使用者がホーム構成コマンドを選択する
ことを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して、ベータジョ
イント64、ガンマジョイント66、及びシータジョイント68に結合されたアクチュエータに
スレーブリンク及びジョイントを後退位置に移動させて、スレーブ遠隔マニピュレータの
スレーブハブ69が、外科手術を受けている患者の体内のトロカール内の並進器具インター
フェイス81のシャフトを位置決めするために所望の位置に来るようにする。ホーム位置で
は、スレーブハブ69が、器具82がスレーブハブ69に挿入されてそこに結合されるように患
者の体内のトロカールに対して配置され、このため、器具先端部84が該トロカール内をス
ライドするが通過しないため、外科医が、内視鏡を使用した該トロカールの遠位端部の監
視を必要とすることなく安全に器具を挿入することができる。
【0112】
加えて、制御装置70は、使用者が角度付けコマンドを選択することを可能にすることが
でき、それによって制御システムが命令を実行して、角度付けジョイント60に結合された
アクチュエータに、角度付けジョイント60の軸ω4を中心とした角度付けリンク61の角度
付けをスレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52に対して所望の角度付け角度、例えば0
度~45度に調整させる。具体的には、角度付けコマンドが実行されると、スレーブリンク
59及びその近位側のすべてのスレーブリンク及びジョイント並びにスレーブ遠隔マニピュ
レータのベース部分52が固定されたまま、角度付けリンク61、従って角度付けリンク61の
遠位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが、角度付けジョイント60の軸ω4を中
心に回転する。スレーブ遠隔マニピュレータの角度付け角度を調整することにより、該ス
レーブ遠隔マニピュレータの手術作業空間の角度が調整されるため、並進器具インターフ
ェイス81を介した外科医による患者へのアクセスが容易になる。
【0113】
例えば、図17A図17Dは、スレーブコンソールの0度の角度付けの際の、スレーブ遠隔
マニピュレータ51aに結合された並進器具インターフェイス81の動きを例示する。図17A
図17Dに示されているように、角度付けリンク61、従って角度付け軸ω5は、スレーブ遠隔
マニピュレータ51aのベース52の長手方向軸と平行であり、かつ地面に垂直である。スレ
ーブ遠隔マニピュレータ51aの操作中に、制御システムは、スレーブコンソール20に結合
されたアクチュエータに、角度付けリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジョイントを
動かす命令のみを実行する。従って、図18A図18Dに示されているように、スレーブ遠隔
マニピュレータ51aの並進器具インターフェイス81は、前方手術作業空間FSW、例えば、ス
レーブコンソールの0度の角度付けの際に並進器具インターフェイス81が前方構成で到達
できる範囲を有する。図18Eは、図18A図18Dのスレーブコンソールの前方手術作業空間F
SWの背面図である。
【0114】
図19A図19Cは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際のスレーブ遠隔マニピュレ
ータ51aに結合された並進器具インターフェイス81の動きを例示する。図19Aに示されてい
るように、角度付けリンク61、従って角度付け軸ω5は、スレーブ遠隔マニピュレータ51a
のベース52の長手方向軸に対して20度の角度に調整されている。スレーブ遠隔マニピュレ
ータ51aの操作中に、制御システムは、スレーブコンソール20に結合されたアクチュエー
タに、角度付けリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジョイントを動かす命令のみを実
行する。従って、図19Bに示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの並進器
具インターフェイス81は、前方手術作業空間FSW、例えば、スレーブコンソールの20度の
角度付けの際に並進器具インターフェイス81が前方構成で到達できる範囲を有する。図19
Cは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際の図19Bのスレーブコンソールの前方手術
作業空間FSWの背面図である。
【0115】
図20A図20Cは、スレーブコンソールの40度の角度付けの際のスレーブ遠隔マニピュレ
ータ51aに結合された並進器具インターフェイス81の動きを例示する。図20Aに示されてい
るように、角度付けリンク61、従って角度付け軸ω5は、スレーブ遠隔マニピュレータ51a
のベース52の長手方向軸に対して40度の角度に調整されている。スレーブ遠隔マニピュレ
ータ51aの操作中に、制御システムは、スレーブコンソール20に結合されたアクチュエー
タに、角度付けリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジョイントを動かす命令のみを実
行する。従って、図20Bに示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの並進器
具インターフェイス81は、前方手術作業空間FSW、例えば、スレーブコンソールの40度の
角度付けの際に並進器具インターフェイス81が前方構成で到達できる範囲を有する。図20
Cは、スレーブコンソールの40度の角度付けの際の図19Bのスレーブコンソールの前方手術
作業空間FSWの背面図である。
【0116】
図21A図21Jに例示されているように、制御装置70は、使用者が反転コマンドを選択す
ることを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して、スレーブ
コンソールに結合された複数のアクチュエータに、スレーブ遠隔マニピュレータ51aを前
方手術作業空間と反転手術作業空間との間で移動させる。例えば、制御システムは、スレ
ーブコンソールに結合された複数のアクチュエータに、スレーブ遠隔マニピュレータ51a
を前方手術作業空間から反転手術作業空間に、及びその逆に反転させることができる。具
体的には、反転コマンドの実行中に、リンク65、従ってリンク65の遠位側のすべてのスレ
ーブリンク及びスレーブジョイントが、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベータジョイ
ント64を中心に回転する。加えて、リンク65がベータジョイント64を中心に回転すると、
スレーブ遠隔マニピュレータ51aが反転手術作業空間構成になるまで、リンク67がガンマ
ジョイント66でリンク65に対して回転し、スレーブハブ69がシータジョイント68を中心に
リンク67に対して回転する。図22B図22Hに例示されているように、並進器具インターフ
ェイス81が患者を負傷させないようにするために、該並進器具インターフェイス81は、反
転コマンドの実行前にスレーブハブ69から取り外される。スレーブ遠隔マニピュレータ5l
aは、そのロックを解除して該スレーブ遠隔マニピュレータ5laを手術室を移動させる必要
も、Scaraブレーキ解除コマンド及び垂直調整のスレーブコンソールコマンドを実行する
必要もなく、並進器具インターフェイス81を取り外して反転コマンドを実行するだけで前
方手術作業空間と反転手術作業空間との間で反転させることができるため、使用者は、多
くの時間を節約でき、別の手術作業空間で患者の手術を速やかに継続することができる。
【0117】
ここで図21K及び図21Lを参照すると、それぞれ前方手術作業空間及び反転手術作業空間
を有するマスターコンソール及びスレーブコンソールの概略図が示されている。図21K
示されているように、スレーブコンソール50の遠隔マニピュレータが前方手術作業空間を
有する場合、マスターコンソール20のマスター制御装置2は、右マスター遠隔マニピュレ
ータ22aが右スレーブ遠隔マニピュレータ51aと通信し、左マスター遠隔マニピュレータ22
bが左スレーブ遠隔マニピュレータ51bと通信するようにプログラムされている。従って、
マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサによって右マスター
遠隔マニピュレータ22aに加えられた動きを示す信号を受信し、そこに格納された命令を
実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必
要な座標変換を実行し、そこに格納された命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4a
に処理された信号を送信して、該処理された信号に基づいて右マスター遠隔マニピュレー
タ22aの動きに対応するように右スレーブ遠隔マニピュレータ51aを動かすことができる。
同様に、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサによって左
マスター遠隔マニピュレータ22bに加えられた動きを示す信号を受信し、そしてそこに格
納されている命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを
作動させるために必要な座標変換を実行し、そこに格納された命令を実行するそれぞれの
スレーブ制御装置4bに処理された信号を送信して、該処理された信号に基づいて左マスタ
ー遠隔マニピュレータ22bの動きに対応するように左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを動
かすことができる。
【0118】
図21Lに示されているように、スレーブコンソール50の遠隔マニピュレータが反転手術
作業空間を有する場合、マスターコンソール20のマスター制御装置2は、スイッチボード
として機能し、右マスター遠隔マニピュレータ22aが左スレーブ遠隔マニピュレータ51bと
通信し、左マスター遠隔マニピュレータ22bが右スレーブ遠隔マニピュレータ5laと通信す
るようにプログラムされている。これは、マスターコンソール20に位置して、ディスプレ
イ21を介して手術部位を見ている外科医が、「右」スレーブ遠隔マニピュレータ(反転手
術作業空間における左スレーブ遠隔マニピュレータ51b)として該外科医に見えるものを
右マスター遠隔マニピュレータ22aで操作できるようにし、かつ「左」スレーブ遠隔マニ
ピュレータ(反転手術作業空間における右スレーブ遠隔マニピュレータ51a)として該外
科医に見えるものを左マスター遠隔マニピュレータ22aで操作できるようにするために必
要である。従って、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサ
によって右マスター遠隔マニピュレータ22aに加えられた動きを示す信号を受信し、そこ
に格納された命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを
作動させるために必要な座標変換を実行し、処理された信号をそこに格納された命令を実
行するそれぞれのスレーブ制御装置4bに送信して、該処理された信号に基づいて右マスタ
ー遠隔マニピュレータ22aの動きに対応するように左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを動
かすことができる。同様に、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数
のセンサによって左マスター遠隔マニピュレータ22bに加えられた動きを示す信号を受信
し、そこに格納された命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュ
エータを作動させるために必要な座標変換を実行し、処理された信号をそこに格納された
命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4aに送信して、該処理された信号に基づいて
左マスター遠隔マニピュレータ22bの動きに対応するように右スレーブ遠隔マニピュレー
タ51aを動かすことができる。
【0119】
従って、前方手術作業空間構成では、マスター制御装置2は、右スレーブ制御装置4aと
通信して、右マスター遠隔マニピュレータ22aにおける動きに応答して右スレーブ遠隔マ
ニピュレータ51aを動かし、かつ該マスター制御装置2は、左スレーブ制御装置4bと通信し
て、左マスター遠隔マニピュレータ22bにおける動きに応答して左スレーブ遠隔マニピュ
レータ51bを動かす。さらに、反転手術作業空間構成では、マスター制御装置2は、左スレ
ーブ制御装置4bと通信して、右マスター遠隔マニピュレータ22aにおける動きに応答して
左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを動かし、かつ該マスター制御装置2は、右スレーブ制
御装置4aと通信して、左マスター遠隔マニピュレータ22bにおける動きに応答して右スレ
ーブ遠隔マニピュレータ51aを動かす。
【0120】
図22Aは、スレーブコンソールの0度の角度付けの際の反転構成におけるスレーブ遠隔マ
ニピュレータ51aを例示し、図22Bは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際の反転構
成におけるスレーブ遠隔マニピュレータ51aを例示し、図22Cは、スレーブコンソールの40
度の角度付けの際の反転構成におけるスレーブ遠隔マニピュレータ51aを例示する。加え
て、図23A図23Cに示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの並進器具イ
ンターフェイス81は、反転手術作業空間RSW、例えば、スレーブコンソールの0度の角度付
け、20度の角度付け、及び40度の角度付けそれぞれの際に並進器具インターフェイス81が
反転構成で到達できる範囲を有する。
【0121】
図24A図24Dに例示されているように、制御装置70は、使用者が腹腔鏡手術構成コマン
ドを選択することを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して
、スレーブコンソールに結合された複数のアクチュエータに、スレーブハブ69を外科手術
を受けている患者から遠ざけさせ、このため、外科医は、迅速かつ安全にマスターコンソ
ール20から患者の手術部位に移動して、該患者に対して腹腔鏡手術作業を手動で実行する
ことができる。具体的には、腹腔鏡手術構成コマンドの実行により、角度付けリンク61、
従ってスレーブ遠隔マニピュレータ5laのベース52を含む角度付けリンク61の近位側のす
べてのスレーブリンク及びジョイントが固定されたまま、リンク63、従ってリンク63の遠
位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが、図24Dに示されているようにスレーブ
ハブ69が患者に背を向けるまで、ジョイント62のアルファ軸ω3を中心に回転する。従っ
て、腹腔鏡手術構成コマンドの実行の前に、並進器具インターフェイス81をスレーブハブ
69から取り外さなければならない。
【0122】
ここで図25図30を参照すると、制御システムを介して手術ロボットシステム10を使用
するための例示的な方法90が示されている。当業者には理解されるように、本明細書で説
明される方法の工程は、使用者の入力に応答して1つ又は複数のメモリ構成要素に格納さ
れた命令を実行する制御システムの(例えば、マスター制御装置、第1のスレーブ制御装
置、及び/又は第2のスレーブ制御装置における)1つ又は複数のプロセッサによって実行
することができる。図25に示されているように、工程91で、システム10に電源を入れる。
工程92で、図27にさらに例示されているように、スレーブコンソール50を、外科手術を受
けている患者に対する手術の準備のために準備し、図26にさらに例示されているように、
工程93で、マスターコンソール20を、手術中に外科医の所望の構成に配置する。
【0123】
例えば、図26は、マスターコンソール20を外科医の所望の構成に配置する工程93を例示
している。マスターコンソール20は、車輪がロック解除されているときはそのベースにあ
る車輪によって手術室を移動させることができる。手術室内の所望の位置に到達したら、
車輪ロックを作動させて、マスターコンソール20を所定の位置に維持する。図26に示され
ているように、工程93Aで、マスター遠隔マニピュレータは固定されており、伸縮ベース2
3a、23bは初期高さを有する。次いで、マスターコンソール20に動作可能に結合された制
御装置、例えばボタンを作動させて、工程93Bでマスターコンソール20が外科医の所望の
高さになるまで、伸縮ベース23a、23bの高さを調整する、例えば、伸縮ベース23a、23bの
高さを増減することができる。例えば、マスターコンソール20を調整して、マスターコン
ソール20の操作中に外科医が座っていることができる座位構成にする、又はマスターコン
ソール20の操作中に外科医が立っていることができる立位構成にすることができる。従っ
て、例えば保管目的のために、制御装置を作動させてマスターコンソール20を初期高さに
戻すことができる。
【0124】
ここで図27を参照すると、スレーブコンソール50の準備の工程92が示されている。図27
に示されているように、工程92Aで、スレーブコンソール50を患者に対して所望の位置ま
で手術室を移動させることができるように、スレーブ遠隔マニピュレータの車輪ロックを
解除する。車輪ロックは、患者が負傷しないようにするために、器具82がスレーブハブ69
に挿入されていないときにのみ解除することができる。複数のスレーブ遠隔マニピュレー
タを使用することができるため、各スレーブ遠隔マニピュレータが工程92Aの間に配置さ
れる。スレーブコンソール50が、外科手術を受けている患者に隣接した手術室内の所望の
位置にある場合、工程92Bで、スレーブコンソール50が車輪により手術室でそれ以上移動
しないように、スレーブコンソール50のその車輪をロックする。従って、スレーブコンソ
ール50を異なる所望の位置に移動させる必要がある場合、工程92Aで、車輪ロックを再び
解除することができる。
【0125】
工程92Cで、Scaraブレーキ解除コマンドは実行されておらず、スレーブコンソール50の
Scaraブレーキは解除されていない。工程92Dで、Scaraブレーキ解除コマンドを使用者が
実行して、スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部、例えばリンク59の遠位側のスレーブ
リンクを、外科手術を受けている患者に対して所望の位置に配置することができる。具体
的には、Scaraブレーキ解除コマンドが実行されると、スレーブ遠隔マニピュレータのス
レーブ支持体53が固定されたまま、かつスレーブリンク59の遠位側のスレーブジョイント
及びリンクがスレーブリンク59に対して固定されたまま、スレーブリンク55、57、59が、
ジョイント54、56、58の軸ω1、ω2、ω3を中心に回転することが可能になる。スレーブ
遠隔マニピュレータの遠位端部が患者に対して所望の位置にあると、工程92Cで、Scaraブ
レーキ解除コマンドの実行が終了する。加えて、図15A図15Cを参照して上で説明された
ように、スレーブ遠隔マニピュレータの垂直高さは、該スレーブ遠隔マニピュレータの遠
位端部が患者の体内のトロカールに対して所望の高さに来るように調整することができる
。Scaraブレーキ解除コマンドは、患者が負傷しないようにするためにスレーブハブ69に
器具82が存在しない場合にのみ有効にすることができる。
【0126】
図27を再び参照すると、工程92Eで、スレーブ遠隔マニピュレータの角度付けリンク61
が、スレーブリンク59に対して固定されている。例えば、スレーブ遠隔マニピュレータは
、最初は0度の角度付け角度を有し得る。工程92Fで、角度付けコマンドを実行して、角度
付けジョイント60の軸ω4を中心とする角度付けリンク61の角度付けを所望の角度付け角
度、例えば、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52に対して0~45度に調整すること
ができる。具体的には、角度付けコマンドの実行時に、スレーブリンク59及びスレーブリ
ンク59の近位側のすべてのスレーブリンク及びジョイント、並びにスレーブ遠隔マニピュ
レータのベース部分52が固定されたまま、角度付けリンク61、従って角度付けリンク61の
遠位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが、角度付けジョイント60の軸ω4を中
心に回転する。スレーブ遠隔マニピュレータの所望の角度の角度付けが達成されると、ス
レーブ遠隔マニピュレータの角度付け作リンク61がスレーブリンク59に対して固定される
ように、工程92Eで角度付けコマンドの実行が終了する。角度付けコマンドは、1つは角度
付けを増加させ、もう1つは角度付けを減少させる2つのボタンを有し得る。
【0127】
工程92Gで、スレーブ遠隔マニピュレータは、前方手術作業空間を有するか、あるいは
、工程92Hで、該スレーブ遠隔マニピュレータは、反転手術作業空間を有する。工程92G及
び工程92Hの両方の間、器具82がスレーブハブ69内にあってはならない。工程92Gで、スレ
ーブ遠隔マニピュレータが前方手術作業空間を有し、使用者が反転手術作業空間を望む場
合、反転コマンドを実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aを前方手術作業空間から
反転手術作業空間に反転させることができる。具体的には、反転コマンドの実行時に、リ
ンク65、従ってリンク65の遠位側のすべてのスレーブリンク及びスレーブジョイントが、
スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベータジョイント64を中心に回転する。加えて、リン
ク65がベータジョイント64を中心に回転すると、スレーブ遠隔マニピュレータ5laが反転
手術作業空間構成になるまで、リンク67が、ガンマジョイント66でリンク65に対して回転
し、スレーブハブ69が、シータジョイント68でリンク67に対して回転する。同様に、工程
92Hで、スレーブ遠隔マニピュレータが反転手術作業空間を有し、使用者が前方手術作業
空間を望む場合、反転コマンドを実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aを前方手術
作業空間から反転手術作業空間に反転させることができる。
【0128】
工程92Iでは、並進器具インターフェイス81は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレー
ブハブ69に結合されていない。工程92Jで、一時的切開ポインタをスレーブ遠隔マニピュ
レータに取り外し可能に結合することができる。例えば、一時的切開ポインタは、軸ω5
上の所定の点に位置する仮想遠隔運動中心Vを指すようにスレーブ遠隔マニピュレータに
取り外し可能に結合され、このため、仮想遠隔運動中心Vが、外科切開点と一致すること
になり得、患者の外傷が減少し、手術の美容上の結果が向上する。一時的切開ポインタは
、必要に応じて、並進器具インターフェイス81の装着の前に取り外すことができる。準備
工程92の間、器具82は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合するべきで
はない。従って、器具82がスレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合に結合さ
れている場合、工程92Kで、制御システムは、並進器具インターフェイス81が取り外され
るまではさらなる動作を防止する。
【0129】
工程92Lで、スレーブ遠隔マニピュレータのリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジ
ョイントは任意の位置にあり得る。従って、工程92Mで、ホーム構成コマンドを実行して
、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69が外科手術を受けている患者の体内のト
ロカール内の器具先端部84を位置決めするために所望の位置に来るようにスレーブリンク
及びジョイントを後退位置に移動させることができる。工程92Nで、スレーブ遠隔マニピ
ュレータはホーム位置にあり、スレーブハブ69は、器具82をスレーブハブ69を介して挿入
して結合できるように患者の体内の該トロカールに対して配置され、器具先端部84は該ト
ロカール内をスライドするが、該トロカールを通過しない。
【0130】
工程92Oで、腹腔鏡手術構成コマンドを実行して、スレーブハブ69を外科手術を受けて
いる患者から遠ざけることができ、このため、外科医が、マスターコンソール20から該患
者の手術部位に迅速かつ安全に移動して、該患者に対して腹腔鏡手術作業を手動で行うこ
とができる。具体的には、腹腔鏡手術構成コマンドの実行時に、スレーブハブ69が患者か
ら背を向けるまで、角度付けリンク61、従ってスレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース5
2を含む角度付けリンク61の近位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが固定され
たまま、リンク63、従ってリンク63の遠位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが
、ジョイント62のアルファ軸ω3を中心に回転する。工程92Pでは、スレーブハブ69は後退
位置にある。
【0131】
工程92Qでは、並進器具インターフェイス81の無菌インターフェイスは、スレーブ遠隔
マニピュレータのスレーブハブ69に結合されていない。工程92Rで、無菌インターフェイ
スがスレーブハブに結合され、制御システムが、例えば無菌インターフェイスに組み込ま
れたRFIDタグを読み取ることによって、無菌インターフェイスが識別されたか否かを判断
する。無菌インターフェイスが識別されない場合、工程92Sで、制御システムは、該無菌
インターフェイスが工程92Qでスレーブハブ69から取り外されるまで該無菌インターフェ
イスの取り外しを待つ。無菌インターフェイスが識別された場合、工程92Tで、該無菌イ
ンターフェイスは正常に装着される。
【0132】
工程92Uで、停止位置コマンドを実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51bを輸送及び
保管に適した位置に移動させることができる。具体的には、停止位置コマンドの実行時に
、スレーブ支持体53の垂直支柱が最小の高さまで引き込み、Scaraブレーキが解除されてS
caraアームが折りたたみ位置に折りたたまれ、角度付けが0度の角度付けに戻り、そして
ジョイント62の遠位側のジョイントが移動してスレーブアームがコンパクトな位置に折り
たたまれる。工程92の後に、必要に応じて、手術ロボットシステム10の電源を切ることが
できる。
【0133】
工程92の後で手術ロボットシステム10の電源が切られていない場合、工程94で、制御シ
ステムが、無菌インターフェイスが正常に装着されているか否か、及びフロアロックが作
動しているか否かを判断する。無菌インターフェイスが正常に設置されていないか、又は
フロアロックが解除されていると判断された場合、手術ロボットシステム10は、上記を修
正するために準備工程92に戻らなければならない。工程94で無菌インターフェイスが正常
に装着され、かつフロアロックが作動していると判断された場合、手術ロボットシステム
10は、工程95に進むことができる。
【0134】
工程95では、図28に示されているように、手術ロボットシステムは器具82の準備ができ
ている。例えば、工程95Aで、スレーブコンソール50の制御システムは、器具82が該スレ
ーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合されるまで器具82を待つ。従って、器具
82が選択されて、スレーブハブ69内に挿入される。器具がスレーブハブから絶対に脱落し
ないようにするために、使用者は、該器具の近位端部を回転させることによって該器具を
スレーブハブ69に機械的にロックすることができる。スレーブハブ69は、器具がロックさ
れているか否かを検出する一体型センサを有する。工程95Bで、スレーブハブ69内に配置
されたセンサは、選択された器具、例えば選択された器具の識別情報を有するRFIDタグに
組み込まれた識別子要素を読み出す。工程95Cで、制御システムは、RFIDタグの検出に基
づいて、選択された器具が許可されているか否かを判断する。選択された器具が許可され
ていない場合、工程95Dで、制御システムは、該選択された器具が取り外されるまで待機
する。許可されていない器具が取り外されると、工程95Dから工程95Aに戻る。工程95Eで
、選択された器具が許可されたものであり、かつスレーブ遠隔マニピュレータのスレーブ
ハブ69内にロックされている場合、方法90は工程96に進むことができる。工程95のいかな
る時点でも、無菌インターフェイスが取り外される、フロアロックが解除される、反転コ
マンドが実行される、Scaraブレーキ解除コマンドが実行される、ホーム構成コマンドが
実行される、又は切開ポインタが挿入されると、方法90は準備工程92に戻ることができる
【0135】
工程96で、手術ロボットシステム10は、操作の準備ができている。図29に示されている
ように、工程96Aで、制御システムは、器具82がスレーブ遠隔マニピュレータのスレーブ
ハブ69に結合されているかを確認する。工程96Bで、制御システムは、外科医がハンドル
部分35のハンドルグリップ40を掴んだ際に検出する。図9A及び図9Bに示されているように
、ハンドル内のセンサは、外科医がハンドルを掴んだことを検出することができる。工程
96Cで、クラッチ11を作動させて、工程97Aに示されているようにマクロ同期のために制御
システムを準備する。
【0136】
図30に示されているように、手術ロボットシステム10を直ちに操作することができる。
例えば、工程97Aで、手術ロボットシステム10は、マクロ同期状態にあるが、ミクロ同期
状態にはない。マクロ同期状態では、マスターコンソール20で加えられたマクロな並進運
動が検知されて制御システムに送信され、該制御システムが、スレーブコンソール50に結
合されたアクチュエータに命令して、器具先端部84のマクロな動き(すなわち、上方/下
方、左/右、内側/外側)がマスターコンソール20におけるハンドルのマクロな動きに対
応するように、対応するスレーブリンク及びジョイントを移動させる。しかしながら、マ
クロ非同期状態では、制御システムは、マスターコンソール20で加えられたマクロな動き
を、対応するようにスレーブコンソール50で引き起こさない。ミクロ同期状態では、マス
ターコンソール20のハンドル部分35で加えられたミクロな動きが検知されて制御システム
に送信され、該制御システムが、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエータに命
令して、器具先端部84を、マスターコンソール20のハンドル部分35で加えられたミクロな
動きに対応するように移動させる。しかしながら、ミクロ非同期状態では、制御システム
は、マスターコンソール20/ハンドル部分35で加えられたミクロな動きを、対応するよう
にスレーブコンソール50/エンドエフェクタで引き起こさない。従って、工程97Aで、マ
クロな並進運動は再現されるが、ミクロな動きは同期されない。工程97Bで、クラッチ11
を作動させて手術ロボットシステム10をマクロ非同期状態に移行させることができ、マク
ロな並進運動をマスターコンソール20によって防止することができ、従って、スレーブコ
ンソール50によって再現されない。例えば、クラッチ11は、踏まれると手術ロボットシス
テム10をマクロ非同期状態に維持するフットペダルとすることができる。クラッチ11が解
除されると、工程97Aで、手術ロボットシステム10がマクロ同期状態に戻る。
【0137】
加えて、制御システムは、該制御システムが作動パターンを検出しない限り、ハンドル
部分35におけるミクロな動きがエンドエフェクタによって再現されないように、ハンドル
部分35によって作動パターンを検出するようにプログラムすることができる。例えば、作
動パターンは、ハンドルグリップ40の迅速な二重作動を含み得る。従って、工程97Cで使
用者がハンドルグリップ40を繰り返し2回押すと、制御システムが作動パターンを検出し
、手術ロボットシステム10がミクロ同期状態になり、ハンドル部分35でのミクロな動きが
エンドエフェクタによって再現されることになる。ミクロ非同期状態からミクロ同期状態
に移行すると、制御システムが命令を実行して、器具先端部84のミクロな位置が、器具シ
ャフト82に対して、マスター遠隔マニピュレータ22aの対応するリンク32に対するハンド
ル部分35の空間的定位と同じ空間的定位を有するようにする。工程97Dで、例えば、エン
ドエフェクタが手術の目標位置にあり、かつ外科医が手術作業を行うために手術ロボット
システム10を使用することができる場合、手術ロボットシステム10は、十分にマクロ同期
状態及びミクロ同期状態の両方にある。クラッチ11の作動時、工程97Eで、手術ロボット
システム10はミクロ同期状態にあるが、マクロ同期状態にない。
【0138】
本発明の別の態様によると、本発明の原理に従って構成された、低侵襲外科処置又は他
の用途で使用することができる、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する遠隔作動手術
ロボットシステムが本明細書で説明される。
【0139】
図31A及び図31Bを参照すると、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔
作動手術ロボットシステム100が示されている。手術ロボットシステム100は、例示的に、
可動カート101の上部に取り付けられ、該可動カート101には、手術室内での移動及び輸送
を容易にするためにハイブリッド遠隔マニピュレータも取り付けることができる。手術ロ
ボットシステム100は、外科医がシステム100を操作するために位置し得るマスター領域40
0、及び外科手術を受ける患者が配置され得る無菌ゾーンに近接した遠隔スレーブ領域500
を備える。図31Bに示されているように、手術を行う外科医は、好ましくは、マスター領
域400にすぐにアクセスできる状態で座るが、別の外科医又は助手は、患者の上に位置す
るスレーブ領域500の近傍に位置し得る。図31A及び図31Bの実施態様では、マスター領域4
00は、スレーブ領域500に隣接して横方向に位置する。加えて、カメラシステム102は、手
術ロボットシステム100と共に使用することができる、例えば、スレーブ領域500に位置す
るアシスタントによって操作される内視鏡を操作し、かつ/又は図31Bに示されている位
置に保持することができる。カメラシステム102はまた、カメラ102によって捕捉された手
術部位をリアルタイムで外科医に表示するためのディスプレイ103を含み得る。ディスプ
レイ103は、マスター領域400に、又は外科処置中に外科医が容易に観察可能なマスター領
域400に近接した任意の場所に取り付けることができる。
【0140】
再び図31Aを参照すると、システム100は、外科医の左手で操作される左ハイブリッド遠
隔マニピュレータ104、及び外科医の右手で操作される右ハイブリッド遠隔マニピュレー
タ105を含む、2つのハイブリッド遠隔マニピュレータ104及び105を備える。ハイブリッド
遠隔マニピュレータ104及び105は、例えば外科医の左手及び右手によって、他方と同時か
つ独立に操作することができる。好ましくは、遠隔操作される遠隔作動手術ロボットシス
テム100は、外科処置での使用に最適化される。
【0141】
各ハイブリッド遠隔マニピュレータは、マスタースレーブ構成への入力を提供し、複数
の剛性スレーブリンク及びスレーブジョイントからなるスレーブユニットは、複数の剛性
マスターリンク及びマスタージョイントからなるマスターユニットによって運動学的に駆
動される。例えば、左ハイブリッド遠隔マニピュレータ104は、マスターユニット401及び
対応するスレーブユニット501を備え、右ハイブリッド遠隔マニピュレータ105は、マスタ
ーユニット402及び対応するスレーブユニット502を備える。マスターユニット401及び402
は、システム100のマスター領域400内に配設されている一方、スレーブユニット501及び5
02は、システム100のスレーブ領域500内にある。好ましくは、スレーブユニット501及び5
02はそれぞれ、以下でさらに詳細に説明されるように、装置の操作中に遠隔運動中心から
逸脱することなく、マスターユニット401及び402の対応する部分の動きを模倣する。
【0142】
引き続き図31Aを参照すると、エンドエフェクタ107を有する遠隔操作手術器具106、例
えば並進器具インターフェイスが、スレーブユニット501の遠位端部に結合され、ハンド
ルが、該ハンドルに加えられた動きがプロセッサ駆動制御システムを介してエンドエフェ
クタ107の対応するミクロな動きを誘導するようにマスターユニット401の遠位端部に結合
されている。例えば、制御システムは、ハンドルに結合された1つ又は複数のセンサによ
って該ハンドルで加えられた動きを示す信号を受信し、エンドエフェクタ107に動作可能
に結合された1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を実行し
て、該エンドエフェクタの対応する動きを再現することができる。並進器具インターフェ
イスのスレーブ器具106は、スレーブユニット501に取り外し可能に取り付けられ、該スレ
ーブユニット501によって操作することができ、このため、並進自由度、例えば、左/右
、上方/下方、内側/外側が直接的な機械的結合によって得られるが、関節自由度、例え
ばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動は、
以下でさらに詳細に説明されるように、センサ、アクチュエータ、及び制御システムを介
して電気機械的に再現される。
【0143】
ここで図32A及び図32Bを参照すると、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する例示的
な遠隔作動手術ロボットシステム100の機構が示され、図31に示されている外部カバーは
、分かりやすくするために省略されている。図32A及び図32Bでは、機械式伝動装置300は
、スレーブユニット501をマスターユニット401に直接結合するように配置され、このため
、マスターユニット401の複数のマスタージョイントに加えられるマクロな並進運動が、
スレーブユニット501の複数のスレーブジョイントの対応するそれぞれのジョイントによ
って再現される。同様に、機械式伝動装置300はまた、スレーブユニット502をマスターユ
ニット402に直接結合し、このため、マスターユニット402の複数のマスタージョイントに
加えられるマクロな並進運動が、スレーブユニット502の複数のスレーブジョイントの対
応するそれぞれのジョイントによって再現される。伝動装置300は、スレーブユニット501
及び502の4自由度のうちの1自由度を制御するために、1つ又は複数のプーリによってマス
ターユニット401からスレーブユニット501まで経路指定された1本又は複数本のケーブル3
01、及び1つ又は複数のプーリによってマスターユニット402からスレーブユニット502ま
で経路指定された1本又は複数本のケーブル303を例示的に備える。マスターユニット401
の機械的制限部200は、運動の自由度をなくすことによりマスターユニット401の動きを制
限し、これにより、3つの並進自由度、例えば左/右、上方/下方、内側/外側の動きを
制限する。
【0144】
例えば、1本又は複数本のケーブル301は、マスターユニット401に結合されたプーリP1
で始まり、プーリP2、P3、P4、P5、P6、張力システム302、プーリP7を通り、そしてスレ
ーブユニット501に結合されたプーリP8の周りを回り、そしてプーリP7、張力システム302
、プーリP6、P5、P4、P3、P2を介して戻り、そしてプーリP1で終了する1つ又は複数の閉
ループを形成することができる。従って、プーリP1の時計回り又は反時計回りの回転によ
り、1本又は複数本のケーブル301のうちの1本のケーブルがプーリP8を回転させ、これに
より、スレーブユニット501が4自由度のうちの1自由度で作動される。しかしながら、マ
スターユニット401の機械的制限部200は、動きの1自由度をなくすことによってマスター
ユニット401の動きを制限し、これにより、スレーブユニット501の動きを3つの並進自由
度、例えば左/右、上方/下方、内側/外側に制限する。プーリP1、P2、P3、P4、P5、P6
、P7、及びP8のそれぞれは、マスターユニット401によるスレーブユニット501の作動可能
な動きの自由度数に対応するいくつかの個々のプーリを含み得る。同様に、1本又は複数
本のケーブル301は、マスターユニット401によるスレーブユニット501の作動可能な動き
の自由度数に対応するいくつかのケーブルの閉ループを含み得る。
【0145】
同様に、1本又は複数本のケーブル303は、マスターユニット402に結合されたプーリP9
で始まり、張力システム304、プーリP10、P11、P12、P13、P14を通り、そしてスレーブユ
ニット502に結合されたプーリP15の周りを回り、そしてプーリP14、P13、P12、P11、P10
、張力システム304を通って戻り、そしてプーリP9で終了する1つ又は複数の対応する閉ル
ープを形成することができる。このようにして、プーリP9の時計回り又は反時計回りの回
転により、1本又は複数本のケーブル303のうちの1本のケーブルがプーリP15を回転させる
ことができ、これにより、スレーブユニット502が4自由度のうちの1自由度で作動される
。マスターユニット402の機械的制限部201(図32Aを参照)は、同様に、動きの自由度を
なくすことによってマスターユニット402の動きを制限し、これにより、スレーブユニッ
ト502の動きを3つの並進自由度、例えば左/右、上方/下方、内側/外側に制限する。プ
ーリP9、P10、P11、P12、P13、P14、及びP15のそれぞれは、マスターユニット402による
スレーブユニット502の作動可能な動きの自由度数に対応するいくつかの個々のプーリを
含み得る。同様に、1本又は複数本のケーブル303は、マスターユニット402によるスレー
ブユニット502の作動可能な動きの自由度数に対応するいくつかのケーブルの閉ループを
含み得る。
【0146】
当業者には理解されるように、プーリP1とP8との間でケーブル301を経路指定するため
に利用されるプーリP2~P7の数、及びプーリP9とP15との間でケーブル303を経路指定する
ために利用されるプーリP10~P14の数はそれぞれ、右及び左ハイブリッド遠隔マニピュレ
ータの構造によって決まる。
【0147】
ここで図33を参照すると、機械式伝動装置300の1本又は複数本のケーブル301が張力シ
ステム302を通り、かつ1本又は複数本のケーブル303が張力システム304を通っている。張
力システム302は、ケーブル301に所定の張力を加えるように設計され、張力システム304
は、ケーブル303に所定の張力を加えるように設計されている。例えば、張力システム302
は、張力リンク305を介してプーリP17に結合されたプーリP16、及び張力リンク306を介し
てプーリP19に結合されたプーリP18を含み得る。張力リンク305は、軸307を通る垂直軸を
中心に張力リンク306に対して調整可能かつ回転可能に結合され、このため、所定の張力
がプーリP16、P17、P18、及びP19によってケーブル301に加えられる。加えて、張力シス
テム302を使用して機械式伝動装置300を較正することができ、これにより、対応するマス
タージョイント及びスレーブジョイントの角度が確実に同一となる。張力システム304は
、張力システム302と構造が同一であってもよい。
【0148】
また、図33では、右ハイブリッド遠隔マニピュレータの機械式伝動装置のプーリP11、P
12、及びP13は、スレーブリンク309を介して位置決めシステム310に回転可能に結合され
たスレーブリンク308に結合されている。位置決めシステム310は、例えば、スレーブユニ
ット502のスレーブユニット501に対する単一平面に沿った動きを制限する油圧装置であり
得る。例えば、プーリP8の位置を固定することができ、このため、P15の位置が、水平面
(x方向及びy方向)に沿ってP8に対して移動可能である。
【0149】
ここで図34A及び図34Bを参照すると、システム100の例示的なマスターユニットの構成
要素が示されている。マスターユニット401はそれぞれ、構造がマスターユニット402と同
一であるため、マスターユニット401の以下の説明は、マスターユニット402にも当てはま
る。
【0150】
マスターユニット401は、複数のマスタージョイントによって相互に連結された複数の
マスターリンク、例えば、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、第3の
マスターリンク405c、及び第4のマスターリンク、例えば誘導マスターリンク404を備える
。ハンドル403は、誘導マスターリンク404、例えばマスターロッドを介してマスターユニ
ット401の遠位端部に連結され、ハイブリッド遠隔マニピュレータを操作するための複数
のハンドルジョイントによって相互に連結された複数のハンドルリンクを備える。例えば
、ハンドル403に加えられたマクロな並進運動は、複数のマスターリンクを介して複数の
マスタージョイントの対応する動きを引き起こし、この動きが、機械式伝動装置300を介
してスレーブユニット501の対応するスレーブジョイントに伝達され、これにより、マク
ロな並進運動がスレーブユニット501で再現される。ハンドル403の並進運動により、誘導
マスターリンク404が、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、及び第3の
マスターリンク405cを介してこの運動をプーリP1に伝達し、これにより、スレーブユニッ
ト501が、機械式伝動装置300を介して並進運動を模倣する。第1のマスターリンク405a、
第2のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリンク404は、
例えば、1つ又は複数のプーリ407によって経路指定された1つ又は複数の歯付きベルト406
を含む伝動システムを介してプーリP1に結合されている。別法では、プーリP1とマスター
ユニット501の複数のマスターリンク及びジョイントとを結合する伝動システムは、ケー
ブルとプーリのシステム、及び/又は剛性伝達リンクを含み得る。
【0151】
図34A及び図34Bでは、マスターユニット40lの機械的制限部408は、誘導マスターリンク
404上をスライドするスリーブに旋回可能に結合されたヨークを備え、該スリーブは、患
者の切開点、例えばトロカールが患者の腹部を通過する点と整合する遠隔運動中心に一致
するスレーブユニット501の遠位端部の動きを制限する。例えば、機械的制限部408は、ハ
イブリッド遠隔マニピュレータが作動すると、マスターユニット401の誘導マスターリン
ク404が長手方向軸θ1に沿って並進することを確実にし、このため、図35A及び図35Bに示
されているように、スレーブユニット501の対応するスレーブリンク、例えば、スレーブ
ユニット501の遠位端部に結合された並進器具インターフェイスも同様に、遠隔操作の近
傍の誘導マスターリンク404の長手方向軸θ1に平行な仮想軸θ4に沿って並進する。加え
て、機械的制限部408は、誘導マスターリンク404が、互いに垂直な第2の軸θ2及び第3の
軸θ3を中心に回転することを可能にする。引き続き図34A及び図34Bを参照すると、軸θ3
は、プーリP1の軸と同軸である。誘導マスターリンク404の長手方向軸θ1と第2の軸θ2
よって画定される平面は、マスターリンク404の向きとは無関係に静止単一点409で第3の
軸θ3と交差する。この構成により、スレーブユニット501の対応するスレーブリンクが、
互いに垂直な第5の仮想軸θ5及び第6の仮想軸θ6を中心に回転することが可能になる。対
応するスレーブリンクの長手方向軸θ4と第5の仮想軸θ5と第6の仮想軸θ6は常に、患者
の切開部の近傍の仮想静止単一点509、例えば、遠隔運動中心で互いに交差している。
【0152】
手術ロボットシステム100が、遠隔運動中心509が患者の切開部と整列するように配置さ
れると、ハンドル403に加えられた並進運動は、患者の体内に配置されたエンドエフェク
タによって再現される。エンドエフェクタは、ハンドル403に加えられた動きを完全に再
現するため、この配置は、ハンドルとエンドエフェクタとの間の支点効果を有利に排除し
、器具が常に遠隔運動中心を通過することを保証する。既に知られている手術ロボットで
は、患者の切開部を通過するときに手術器具の動きの固定点を維持するためには複雑な制
御電子器具が必要であるが、本発明のシステムでは、機械的制限部408が、器具が常に遠
隔運動中心509を通過することを保証する、マスターユニット401とスレーブユニット501
との間での並進運動の再現を実現する。
【0153】
図34A及び図34Bの実施態様のハンドル403の内側/外側への動きにより、第1のマスター
リンク405a、第2のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリ
ンク404が、誘導マスターリンク404の長手方向軸θ1に沿って内側/外側に動く。この動
きは、複数のマスターリンクを介してプーリP1に伝達され、これにより、スレーブユニッ
ト501が、機械式伝動装置300並びに複数のスレーブリンク、ジョイント、及びタイミング
ベルトを介して長手方向軸θ4に沿った内側/外側への動きを再現する。同様に、ハンド
ル403の上方/下方への動きにより、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405
b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリンク404が第2の軸θ2を中心に上方/
下方に回転する。この動きは、複数のマスターリンクを介してプーリP1に伝達され、これ
により、スレーブユニット501が、機械式伝動装置300並びに複数のスレーブリンク、ジョ
イント、及びタイミングベルトを介して第5の軸θ5を中心とする上方/下方への動きを再
現する。最後に、ハンドル403の左/右への動きにより、第1のマスターリンク405a、第2
のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリンク404が第3の
軸θ3を中心に左/右に回転する。この動きは、複数のマスターリンクを介してプーリP1
に伝達され、これにより、スレーブユニット501が、機械式伝動装置300並びに複数のスレ
ーブリンク、ジョイント、及びタイミングベルトを介して第6の軸θ6を中心とする左/右
への動きを再現する。
【0154】
引き続き図34A及び図34Bを参照すると、マスターユニット401のハンドル403に加えられ
た動きは、センサ、モータ、及び制御システムを介して電気機械的に関節自由度、例えば
ピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動を引き
起こす。マスターユニット401は、好ましくは、ハンドル403の動きを検出するために回路
基板411を介してハンドル403に結合された1つ又は複数のセンサ410を備える。理解される
ように、センサ410は、回転運動を検出するように設計された任意のセンサ、例えば、角
度と位置を測定することによって回転を測定するために一側に磁石及び反対側にセンサを
含む磁気式回転センサであり得る。回路基板411は、センサ410によって測定された回転を
示す信号を生成し、該信号をスレーブユニット501に結合された1つ又は複数のモータに送
信するために制御システムに結合され、該スレーブユニット501は、ハンドル403に加えら
れた動きをエンドエフェクタで再現することができる。例えば、電気ケーブルを、ハンド
ル403から制御システム、例えば制御電子機器を含むユニットまで延ばすことができ、追
加の電気ケーブルを、制御システムから、スレーブユニット501に結合された1つ又は複数
のモータまで延ばすことができる。
【0155】
ハンドル403のトリガ412の作動により、制御システムを介して、スレーブユニット501
に結合されたモータに送信される信号が生成され、これにより、スレーブユニット501に
結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作動され、次に、該並進器具
インターフェイスのエンドエフェクタが作動されて開く/閉じる。
【0156】
ハンドル403はまた、外科医が容易に握れるように設計された、外科医の手首をマスタ
ーユニット401と整合させるボール413を備えることができる。ボール413は、ハンドル軸
θ7を中心に回転可能であり得、このため、信号を生成し、該信号をスレーブユニット501
に接続されたモータに制御システムを介して送信するセンサによってボール413の回転が
検出される。スレーブユニットにおける制御システムから受信した信号により、スレーブ
ユニット501に接続された並進器具インターフェイスが回転し、従って、該並進器具イン
ターフェイスのエンドエフェクタが回内回外運動自由度で回転する。
【0157】
ハンドル403はまた、ハンドル軸θ8を中心に回転可能であり、このため、ハンドル軸θ
8を中心とする回転がセンサによって検出され、該センサは、信号を生成し、該信号を制
御システムを介してスレーブユニット501のモータに送信する。この信号により、スレー
ブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作動し、こ
れにより、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタがヨー自由度で動く。加えて
、ハンドル403は、ハンドル軸θ9を中心に回転可能であり得、このため、ハンドル軸θ9
を中心とするハンドル403の回転がセンサによって検出され、該センサが、信号を生成し
、該信号を制御システムを介してスレーブユニット501のモータに送信する。この信号に
より、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システム
が作動し、これにより、並進器具インターフェイスのエンドエフェクタがピッチ自由度で
動く。
【0158】
ここで図34C及び図34Dを参照すると、マスターユニット401のハンドルの代替実施態様
が示されている。図34Cでは、ハンドル403'は、ハンドル軸θ7、ハンドル軸θ8、及びハ
ンドル軸θ9を中心に回転可能であり、このため、該ハンドル軸を中心とするハンドル403
'の回転が1つ又は複数のセンサ410によって検出され、該センサ410は、信号を生成し、該
信号を制御システムを介してスレーブユニット501のモータに送信する。この信号により
、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作
動し、これにより、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタが、回内回外運動自
由度、ヨー自由度、及びピッチ自由度それぞれで動く。
【0159】
同様に、図34Dのハンドル403''は、ハンドル軸θ7、ハンドル軸θ8、及びハンドル軸θ
9を中心に回転可能であり、このため、該ハンドル軸を中心とするハンドル403''の回転が
、1つ又は複数のセンサ410によって検出され、該センサ410が、信号を生成し、該信号を
制御システムを介してスレーブユニット501に結合された1つ又は複数のモータに送信する
。この信号により、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進
伝動システムが作動し、これにより、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタが
、回内回外運動自由度、ヨー自由度、及びピッチ自由度それぞれで動く。
【0160】
ここで図35A及び図35Bを参照すると、システム100の例示的なスレーブユニットが示さ
れている。スレーブユニット501はそれぞれ、スレーブユニット502と構造が同一であるた
め、スレーブユニット501の以下の説明は、スレーブユニット502にも当てはまる。
【0161】
上記のように、マスターユニット401は、複数のマスタージョイントによって相互に連
結された複数のマスターリンクを備える。スレーブユニット501は、複数のスレーブジョ
イントによって相互に連結された対応する複数のスレーブリンク、例えば、第1のスレー
ブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び第4のスレー
ブリンク、例えば並進器具インターフェイス503を備え、このため、スレーブユニット501
の複数のスレーブリンク及び対応する複数のスレーブジョイントによって直接的な機械結
合が形成され、これは、マスターユニット401の対応する複数のマスターリンク及び対応
する複数のマスタージョイントによって形成される動力学的モデルと同一である。例えば
、ハイブリッド遠隔マニピュレータの操作中は、第1のスレーブリンク505aは常に、第1の
マスターリンク405aに対して平行を維持し、第2のスレーブリンク505bは常に、第2のマス
ターリンク405bに対して平行を維持し、第3のスレーブリンク505cは常に、第3のマスター
リンク405cに対して平行を維持し、そして並進器具インターフェイス503は常に、誘導マ
スターリンク404に対して平行を維持する。従って、マスターユニット401の複数のマスタ
ージョイントに加えられるマクロな各並進運動は、機械式伝動装置300及び複数のスレー
ブリンクを介して、スレーブユニット501の複数のスレーブジョイントの対応するそれぞ
れのジョイントによって再現される。
【0162】
図35A及び図35Bでは、並進器具インターフェイス503は、スレーブユニット501の遠位端
部504に結合されている。ハンドル403の並進運動は、機械式伝動装置300を介してプーリP
9に伝達される。より具体的には、ハンドル403の並進運動の開始により、プーリP9が、第
1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び並
進器具インターフェイス503を介して運動をエンドエフェクタ512に伝達し、これにより、
スレーブユニット501が並進運動を再現する。第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブ
リンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び並進器具インターフェイス503は、例えば、
1つ又は複数のプーリ507を介して経路指定された1つ又は複数のタイミングベルト506を含
む、伝動システムを介してプーリP9に結合されている。従って、P9の4つのプーリのそれ
ぞれは、第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505
c、及び並進器具インターフェイス503に動作可能に結合され、これらの動きを制御する。
別法では、スレーブユニット501のプーリP9と複数のスレーブリンクとスレーブジョイン
トを結合する伝動システムは、ケーブルとプーリのシステム、及び/又は剛性伝達リンク
を含み得る。
【0163】
マスターユニット401の機械的制限部408は、ハイブリッド遠隔マニピュレータが操作さ
れているときに、第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブ
リンク505c、及び並進器具インターフェイス503が常に、仮想静止点509を中心に回転する
ことを保証する。例えば、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイス5
03のエンドエフェクタ512は常に、遠隔操作の近傍のマスターリンク404の長手方向軸θ1
に対応する長手方向軸θ4に沿って並進する。加えて、機械的制限部408は、互いに垂直な
第5の仮想軸θ5及び第6の仮想軸θ6を中心とするエンドエフェクタ512の回転を可能にす
る。スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイス503の長手方向軸θ4
第5の仮想軸θ5、及び第6の仮想軸θ6は常に、遠隔操作の近傍の仮想静止単一点509で互
いに交差する。低侵襲外科処置の間、仮想静止点509は外科切開点と整合し、患者の外傷
が減少し、手術の美容上の結果が向上する。
【0164】
内側/外側方向へのハンドル403の動きにより、スレーブユニット501に結合されたエン
ドエフェクタ512が、機械式伝動装置300及びスレーブユニット501のプーリP9と複数のス
レーブリンクとスレーブジョイントを連結する伝動システムを介して、長手方向軸θ4
中心とする内側/外側への動きを再現する。ハンドル403の上方/下方への動きにより、
スレーブユニット501に結合されたエンドエフェクタ512が、機械式伝動装置300及びスレ
ーブユニット501のプーリP9と複数のスレーブリンクとスレーブジョイントを連結する伝
動システムを介して、長手方向軸θ5を中心とする上方/下方への動きを再現する。ハン
ドル403の左/右への動きにより、スレーブユニット501に結合されたエンドエフェクタ51
2が、機械式伝動装置300及びスレーブユニット501のプーリP9と複数のスレーブリンクと
スレーブジョイントを連結する伝動システムを介して、長手方向軸θ6を中心とする左/
右への動きを再現する。
【0165】
加えて、マスターユニット401のハンドル403に加えられた動きは、センサ、モータ、及
び制御システムを介して電気機械的に並進器具インターフェイス503のエンドエフェクタ
の関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例え
ば回内回外運動をもたらす。並進器具インターフェイス503は、その全内容が引用により
本明細書中に組み込まれている、本出願の譲受人に譲渡されたChassotの米国特許出願公
開第2018/0353252号に記載されているように構成することができる。例えば、並進器具イ
ンターフェイス503は、スレーブハブ510及び手術器具511を備える。スレーブハブ510は、
スレーブユニット501の遠位端部504に固定することができる。手術器具511は、そのシャ
フトの遠位端部に配設されたエンドエフェクタを備え、かつスレーブハブ510に取り外し
可能に結合することができる。無菌インターフェイスを、スレーブハブ510と手術器具511
との間に配置することができる。加えて、並進器具インターフェイス503は、スレーブハ
ブ510内に配置された1つ又は複数のモータからエンドエフェクタ512の構成要素まで延び
た並進伝動システムを備える。例えば、エンドエフェクタ512は、並進器具インターフェ
イス503の並進伝動システムに結合された複数のエンドエフェクタジョイントによって相
互連結された複数のエンドエフェクタリンクを含み、このため、1つ又は複数のモータに
よる並進伝動システムの作動により、エンドエフェクタ512が、複数のエンドエフェクタ
のリンク及びジョイントを介して動く。
【0166】
スレーブハブ510の構成要素及び動作に関するさらなる詳細は、図36A及び図36Bを参照
して説明する。スレーブユニット501に固定された並進器具インターフェイス503のスレー
ブハブ510は、回路基板602を介して制御システムに、例えば電気配線によって動作可能に
結合された1つ又は複数のモータ、例えば、第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモ
ータ601c、及び第4のモータ601dを備える。モータ601a~601dは、ハンドル403に結合され
た1つ又は複数のセンサ410によって測定された動きを示す信号を受け取り、ハンドル403
を作動させる。これらの信号は、制御システムによって処理され、次に、並進器具インタ
ーフェイス503を作動させるモータに信号を提供し、これにより、ハンドル403でのこれら
の入力に対応するミクロな動きを再現する。第1のモータ601a、第2のモータ601b、及び第
3のモータ601cは、エンドエフェクタ512を開/閉自由度、ピッチ自由度、及びヨー自由度
で作動させるために並進器具インターフェイス503の並進伝動システム603に直接結合され
ている。並進伝動システム603は、複数の伝動要素、例えばケーブル及び/又は親ねじを
備え、該複数の伝動要素のそれぞれは、エンドエフェクタを開/閉自由度、ピッチ自由度
、及びヨー自由度で動かすために、一方の端部で第1のモータ601a、第2のモータ601b、及
び第3のモータ601cに結合され、反対側の端部で第1、第2、及び第3のエンドエフェクタの
リンクに結合されている。並進伝動システム603は、複数の親ねじ及び/又はケーブルの
閉ループを備えることができる。第4のモータ601dは、回内回外運動タイミングベルト513
を介してスレーブ器具503を回転させる。当業者には理解されるように、スレーブハブ510
は、モータ601a~601dの任意の組み合わせ、例えば、非関節式器具が使用される場合、エ
ンドエフェクタ512を開/閉自由度で作動させるための1つ又は複数のモータ、及びエンド
エフェクタ512を回内回外運動自由度で回転させるためのモータのみを備えることができ
る。
【0167】
回路基板602はまた、並進器具インターフェイス503の望ましくない動きを検出し、その
ような望ましくない動きに抵抗するために第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモ
ータ601c、及び第4のモータ601dと電気的に通信するように設計された1つ又は複数のセン
サを備えることができる。
【0168】
本発明の一態様によると、制御システムは、並進器具インターフェイス503のエンドエ
フェクタ512の運動学を、図36Cに示されている識別子要素516、例えば、該器具に組み込
まれたRFIDトークンを読み出すことによって識別することができ、該RFIDトークンは、該
器具の運動学的構成に関する情報を含む。特に、制御システムは、識別子要素516から読
み取られた情報に基づいて、エンドエフェクタ要素を作動させるために異なって動作する
(例えば、同時に時計回り、又は一方を時計回り、他方を反時計回りに回転させる)よう
に並進器具インターフェイス503とインターフェイスする1つ又は複数のモータの動作を構
成することができる。例えば、図36Dには、平行-直列器具運動学を有する鉗子型エンド
エフェクタが示されている。この構成では、第1のモータ601aがエンドエフェクタ512'の
第1のリンクを外側/内側に動かすように、第1のモータ601aを、並進伝動システムの伝動
要素514aを介してエンドエフェクタ512'の第1のリンク、例えば第1のブレードに動作可能
に結合することがでる。第2のモータ601bがエンドエフェクタ512'の第2のリンクを外側/
内側に動かすように、第2のモータ601bを、並進伝動システムの伝動要素514bを介してエ
ンドエフェクタ512'の第2のリンク、例えば第2のブレードに動作可能に結合することがで
きる。従って、制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1
のリンクを伝動要素514aを介して外側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエン
ドエフェクタ512'の第2のリンクを伝動要素514bを介して外側に動かすことができ、これ
により、ハンドル403のトリガ412の作動に基づいてエンドエフェクタ512'が開く。逆に、
制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1のリンクを伝動
要素514aを介して内側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエンドエフェクタ512
'の第2のリンクを伝動要素514bを介して内側に動かすことができ、これにより、ハンドル
403のトリガ412の作動に基づいてエンドエフェクタ512'が閉じる。従って、第1のモータ6
01a及び第2のモータ601bにより、エンドエフェクタ512'を開/閉自由度で動かすことがで
きる。
【0169】
制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1のリンクを伝
動要素514aを介して外側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエンドエフェクタ5
12'の第2のリンクを伝動要素514bを介して内側に動かすことができ、これにより、エンド
エフェクタ512'が、ハンドル軸θ9を中心とするハンドル403の回転に基づいて上方にピッ
チする。逆に、制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1
のリンクを伝動要素514aを介して内側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエン
ドエフェクタ512'の第2のリンクを伝動要素514bを介して外側に動かすことができ、これ
により、エンドエフェクタ512'が、ハンドル軸θ9を中心とするハンドル403の回転に基づ
いて下方にピッチする。従って、第1のモータ601a及び第2のモータ601bにより、エンドエ
フェクタ512'をピッチ自由度で動かすことができる。
【0170】
第3のモータ601cが、ハンドル軸θ8を中心とするハンドル403の回転に基づいてエンド
エフェクタ512'をヨー自由度で動かすように、第3のモータ601cを、並進伝動システムの
伝動要素514cを介してエンドエフェクタ512'の第3のリンクに動作可能に結合することが
できる。第4のモータ601dが、ハンドル403のボール413の回転に基づいて第1のモータ601a
、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び手術器具511、従ってエンドエフェクタ512'
を回内回外運動の自由度で回転させるように、第4のモータ601dを、回転可能な回内回外
運動タイミングベルト513を介して第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c
、及び手術器具511に動作可能に結合することができる。
【0171】
ここで図36Eを参照すると、直列-直列器具運動学を有するエンドエフェクタが示され
ている。例えば、第1のモータ601aが、ハンドル403のトリガ412の作動に基づいてエンド
エフェクタ512''を開/閉自由度で動かすように、第1のモータ601aを、並進伝動システム
の伝動要素515aを介してエンドエフェクタ512''の第1のリンクに動作可能に結合すること
ができる。第2のモータ601bが、ハンドル軸θ9を中心とするハンドル403の回転に基づい
てエンドエフェクタ512''をピッチ自由度で動かすように、第2のモータ601bを、並進伝動
システムの伝動要素515bを介してエンドエフェクタ512''の第2のリンクに動作可能に結合
することができる。第3のモータ601cが、ハンドル軸θ8を中心とするハンドル403の回転
に基づいてエンドエフェクタ512''をヨー自由度で動かすように、第3のモータ601cを、並
進伝動システムの伝動要素515cを介してエンドエフェクタ512''の第3のリンクに動作可能
に結合することができる。第4のモータ601dが、第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3
のモータ601c、及び手術器具511、従ってエンドエフェクタ512''を、ハンドル403のボー
ル413の回転に基づいて回内回外運動自由度で回転させるように、第4のモータ601dを、回
転可能な回内回外運動タイミングベルト513を介して第1のモータ601a、第2のモータ601b
、第3のモータ601c、及び手術器具511に動作可能に結合することができる。
【0172】
本発明の一態様によると、制御システムは、図37に列挙された方法工程700で概説され
るように、器具に組み込まれた識別子要素516、例えば、RFIDトークンに格納された情報
を読み取って、並進器具インターフェイス503のエンドエフェクタ512の運動学を識別する
ことができる。工程701で、使用者が、ハイブリッド遠隔マニピュレータで使用するべき
エンドエフェクタを有する手術器具を選択する。例えば、手術器具は、図36Dに示されて
いる並列-直列器具運動学又は図36Eに示されている直列-直列器具運動学を有するエン
ドエフェクタを有し得る。次いで、手術器具をハイブリッド遠隔マニュピレータのスレー
ブユニットに結合することができる。工程702で、制御システムは、選択されたエンドエ
フェクタの運動学的構成についての情報を検出する。例えば、制御システムは、選択され
たエンドエフェクタの運動学的構成、例えば、該選択されたエンドエフェクタが並列-直
列器具運動学を有するか又は直列-直列器具運動学を有するかに関する情報を含む、手術
器具511に組み込まれたRFIDトークンを読み取ることができる。RFIDトークンは、例えば
、スレーブハブに配置され、制御システムに動作可能に結合されたリーダによってスキャ
ンされ得る識別情報を含む誘導的に読み取られるマイクロチップであり得る。別法では、
識別子要素516の機能は、例えば、スレーブハブによって読み取られる、手術器具511に配
置されるバーコード、QRコード、Datamatrix、Aztecコード、又はSemacodeなどの光学タ
グによって提供することができる。手術器具がハイブリッド遠隔マニピュレータのスレー
ブユニットに未結合の場合、工程702の後に、手術器具を、ハイブリッド遠隔マニピュレ
ータのスレーブユニットに結合することができる。
【0173】
工程703で、制御システムが、工程702で検出された情報に基づいて選択されたエンドエ
フェクタの運動学を識別して、どのタイプのエンドエフェクタがハイブリッド遠隔マニピ
ュレータのスレーブユニットに結合されているかを決定する。工程704で、制御システム
が、ハイブリッド遠隔マニピュレータが適切に作動され得るように、選択されたエンドエ
フェクタの識別情報に基づいてそのパラメータを調整する。例えば、エンドエフェクタが
並列-直列器具運動学を有する場合、制御システムは、上述のように、第1のモータ60la
及び第2のモータ601bに命令して、第1及び第2のエンドエフェクのタリンクを同時に作動
させて、エンドエフェクタを開/閉自由度及びピッチ自由度で動かすパラメータを有する
。エンドエフェクタが直列-直列器具運動学を有する場合、制御システムは、上述のよう
に、第1のモータ60laに命令してエンドエフェクタを開/閉自由度で作動させ、そして第2
のモータ601bに命令して該エンドエフェクタをピッチ自由度で作動させるパラメータを有
する。
【0174】
図38を参照すると、すべての自由度が電気機械的に制御される遠隔作動手術ロボットシ
ステムの代替の例示的な実施態様が示されている。例えば、内側/外側、上方/下方、左
/右、ヨー、ピッチ、開/閉、及び回内回外運動の7つの自由度すべてが、センサのシス
テム、モータ、及び制御システムを介して電気機械的に制御されるが、システム800は、
マスターユニットに上記の機械的制限要素を維持し、これにより、スレーブユニットで単
一仮想静止点、例えば遠隔運動中心を形成する。従って、システム800は、スレーブユニ
ット1001を切開部に整合させるために座標変換及び複雑な制御システムを必要としない。
機械的制限部及び対応する遠隔運動中心が、この設計が一般的なロボットアームを使用す
る場合よりもはるかに単純で安全であることを保障する。
【0175】
ここで図39を参照すると、マスターユニット901は、図34A及び図34Bのマスターユニッ
ト401と同様に構成されているが、プーリP1に結合された機械式伝動装置の複数のケーブ
ル及びプーリの代わりに、マスターユニット901が、プーリP1の4つのプーリのそれぞれに
作動可能に結合された1つ又は複数のセンサ、例えば、センサ902a、センサ902b、センサ9
02c、及びセンサ902dを備える点が異なる。センサ902a~902dは、複数のマスターリンク
、ジョイント、及びケーブルを介してマスターユニット901のハンドル903に加えられる動
きに応答して、プーリP1の角度及び位置を測定することによって回転運動を測定する。4
つのセンサのそれぞれは、プーリP1の4つのプーリのそれぞれを介してマスターユニット9
01のジョイントの動きを測定し、これにより、4つの自由度におけるマスターユニット901
の動きを測定する。しかしながら、機械的制限部は、1自由度の動きをなくすことによっ
てマスターユニット901の動きを制限し、これにより、スレーブユニット1001の動きが、3
自由度の動き、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右となる。
【0176】
ハンドル903は、図34A及び図34Bのハンドル403と同様に構成されている。例えば、ハン
ドル903は、そこに加えられたミクロな動きを1つ又は複数のセンサ410、及びスレーブユ
ニット1001のエンドエフェクタに結合された1つ又は複数のモータを介して該スレーブユ
ニット1001のエンドエフェクタに伝達して、該エンドエフェクタを開/閉、ピッチ、ヨー
、及び回内回外運動の自由度で動かすことができるように、1つ又は複数のセンサ410及び
回路基板411を備える。
【0177】
マクロな動きの伝達に関して、センサ902a、センサ902b、センサ902c、及びセンサ902d
は、それぞれのセンサによって測定されたプーリP1の回転を示す信号を生成し、この信号
を、制御システムを介してスレーブユニット1001に結合された1つ又は複数のモータに送
信し、これにより、マスターユニット901に結合されたハンドル903に加えられたマクロな
並進運動を再現する。例えば、電気ケーブルを、マスターユニット901から制御システム
、例えば、制御電子器具を含むユニットまで延ばすことができ、追加の電気ケーブルを、
該制御システムから、スレーブユニット1001に結合された1つ又は複数のモータまで延ば
すことができる。
【0178】
図40A及び図40を参照すると、スレーブユニット1001は、図35A及び図35Bのスレーブユ
ニット501と同様に構成されている。例えば、スレーブユニット1001は、ハンドル903に加
えられたミクロな動きを、1つ又は複数のセンサ410、並びに第1のモータ60la、第2のモー
タ601b、第3のモータ60lc、及び第4のモータ601dを介してスレーブユニット1001のエンド
エフェクタに伝達して、該エンドエフェクタを開/閉、ピッチ、ヨーイ、及び回内回外運
動の自由度で動かすことができるように、スレーブユニット1001のエンドエフェクタに動
作可能に結合された第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び第4のモ
ータ601dを備える。スレーブユニット1001は、プーリP8に結合された機械式伝動装置の複
数のケーブル及びプーリの代わりに、1つ又は複数のモータ、例えば、プーリP8の4つのプ
ーリのそれぞれに動作可能に結合された第1のモータ1002a、第2のモータ1002b、第3のモ
ータ1002c、及び第4のモータ1002dを備えるという点でスレーブユニット501とは異なる。
1つ又は複数のモータは、マスターユニット901のハンドル903に加えられた動きに応答し
てセンサ902a、センサ902b、センサ902c、及びセンサ902dによって測定されたプーリP1の
回転を示す信号を受信するための回路基板に結合され、これにより、プーリP8が作動して
、複数のスレーブリンク、ジョイント、タイミングベルト、及び/又はケーブルとプーリ
のシステムを介してスレーブユニット1001においてマスターユニット901に結合されたハ
ンドル903に加えられたマクロな並進運動を再現する。例えば、プーリP8並びに複数のス
レーブジョイント、タイミングベルト、及び/又はケーブルとプーリのシステムを介して
、第1のモータ1002aが、第1のスレーブリンク505aに動作可能に結合されて、その動きを
制御し、第2のモータ1002bが、第2のスレーブリンク505bに動作可能に結合され、その動
きを制御し、第3のモータ1002cが、第3のスレーブリンク505cに動作可能に結合されて、
その動きを制御し、第4のモータ1002dが、並進器具インターフェイス503に動作可能に結
合され、その動きを制御する。
【0179】
マスターユニット901の機械的制限部が、マスターユニット901の動きを3自由度、例え
ば、内側/外側、上方/下方、及び左/右の動きに制限するため、第1のモータl002a、第
2のモータl002b、第3のモータl002c、及び第4のモータl002dそれぞれによるスレーブユニ
ット1001の第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク5
05c、及び並進器具インターフェイス503の動きが、3自由度、例えば、仮想静止点1005、
例えば遠隔運動中心を中心とする内側/外側、上方/下方、及び左/右への動きに制限さ
れる。
【0180】
スレーブユニット1001は、仮想静止点1005が外科切開点と一致し、患者の外傷が減少し
、手術の美容上の結果が向上され得るように、マスターユニット1001における機械的制限
部によって形成される仮想静止点1005、例えば遠隔運動中心を指す一時的切開ポインタ10
04を備えることができる。一時的切開ポインタ1004は、手術ロボットシステム800の操作
の前に取り外すことができる。
【0181】
ここで図41A及び図41Bを参照すると、手術ロボットシステムの制御システムの代替の実
施態様が示されている。システム100と統合することができる図41Aの制御システム1100は
、制御システム1100のプロセッサ1102によって実行されるとハイブリッド遠隔マニピュレ
ータの操作を可能にする命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばメモ
リ1101を含む。加えて、制御システム1100は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレー
ブユニット501の識別子要素リーダ517と通信することができ、従って、メモリ1101は、識
別子要素516から読み取られたエンドエフェクタの運動学的構成の識別情報を格納するこ
とができ、このため、命令が、プロセッサ1102によって実行されると、開/閉及びピッチ
の自由度でエンドエフェクタを制御するためのモータを選択されたエンドエフェクタの種
類に応じて動かす。制御システム1100は、無線で又は電気ケーブルを使用してマスターユ
ニット401の回路基板に電気的に結合され、従って、ハンドル403に加えられたミクロな動
きを示す信号を受信するための1つ又は複数のセンサ410に結合されている。加えて、制御
システム1100は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレーブユニット501の回路基板に
電気的に結合され、従って、エンドエフェクタのミクロな動きを、例えば、開/閉、ピッ
チ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で行わせるための第1のモータ60la、第2のモータ60
1b、第3のモータ60lc、及び第4のモータ601dに結合されている。
【0182】
システム800と統合することができる図41Bの制御システム1110は、制御システム1110の
プロセッサ1112によって実行されるとハイブリッド遠隔マニピュレータの操作を可能にす
る命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばメモリ1111を含む。加えて
、制御システム1110は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレーブユニット1001の識別
子要素リーダ517と通信することができ、メモリ1111は、識別子要素516から読み取られた
エンドエフェクタの運動学的構成の識別情報を格納することができ、このため、命令が、
プロセッサ1112によって実行されると、開/閉及びピッチの自由度でエンドエフェクタを
制御するためのモータを選択されたエンドエフェクタの種類に応じて動かす。制御システ
ム1110は、無線で又は電気ケーブルを使用してマスターユニット901の回路基板に電気的
に結合され、従って、ハンドル903に加えられたミクロな動きを示す信号を受信するため
の1つ又は複数のセンサ410、並びにハンドル903に加えられたマクロな動きを示す信号を
受信するためのセンサ902a、センサ902b、センサ902c、及びセンサ902dに結合されている
。加えて、制御システム1110は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレーブユニット10
01の回路基板に電気的に結合され、従って、エンドエフェクタのミクロな動きを、例えば
、開/閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で作動させるための第1のモータ60l
a、第2のモータ601b、第3のモータ60lc、及び第4のモータ601d、並びに該エンドエフェク
タのマクロな動きを、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右の自由度で作動させ
るための第1のモータ1002a、第2のモータ1002b、第3のモータ1002c、及び第4のモータ100
2dに結合されている。
【0183】
ここで図42A及び図42Bを参照すると、本発明の原理の代替の応用を、代替の遠隔マニピ
ュレータの設計に適用することができる。例えば、図42Aに示されているBeiraの米国特許
第9,696,700号に記載されているように構成された遠隔マニピュレータは、エンドエフェ
クタのミクロな動き、例えば、開/閉、ピッチ、ヨー、回内回外運動の自由度を電気機械
的に制御するためのハンドル及び並進器具インターフェイスを備えるように変更すること
ができる一方、該エンドエフェクタのマクロな並進運動、例えば、上方/下方、内側/外
側、及び左/右の自由度は、機械的伝動システムによって機械的に制御される。遠隔作動
手術ロボットシステム1200は、スレーブユニット1202に機械的に直接結合されたマスター
ユニット1201、マスターユニット1201に結合されたハンドル1203、スレーブユニット1202
に結合された並進器具インターフェイス1204、及び機械的制限部1205を含む。ハンドル12
03は、図34A及び図34Bのハンドル403と同様に構成することができ、並進器具インターフ
ェイス1204もまた、図35A及び図35Bの並進器具インターフェイス503と同様に構成するこ
とができる。例えば、ハンドル1203は、そこで加えられたミクロな動きを、1つ又は複数
のセンサ、及びスレーブユニット1202のエンドエフェクタに結合された1つ又は複数のモ
ータを介して並進器具インターフェイス1204のエンドエフェクタに伝達して、該エンドエ
フェクタを開/閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で動かすことができるよう
に、1つ又は複数のセンサを備える。従って、ハンドル1201で加えられるマクロな併進運
動は、機械的制限部1203により、3自由度、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/
右の自由度で並進器具インターフェイス1204によって再現される。別法では、遠隔作動手
術ロボットシステム1200は、電気機械的に作動される7自由度を有し得る。
【0184】
図42Bを参照すると、代替の遠隔マニピュレータが示されている。例えば、Beiraの米国
特許公開第2017/0245954号に記載されているように構成された遠隔マニピュレータは、エ
ンドエフェクタのミクロな動き、例えば、開/閉、ピッチ、ヨー、回内回外運動の自由度
を電気機械的に制御するためのハンドル及び並進器具インターフェイスを備えるように変
更することができる一方、該エンドエフェクタのマクロな並進運動、例えば、上方/下方
、内側/外側、及び左/右の自由度は、機械的伝動システムによって機械的に制御される
。遠隔作動手術ロボットシステム1210は、スレーブユニット1212に機械的に結合されたマ
スターユニット1211、マスターユニット1211に結合されたハンドル1213、スレーブユニッ
ト1212に結合された並進器具インターフェイス1214、及び機械的制限部1215を含む。ハン
ドル1213は、図34A及び図34Bのハンドル403と同様に構成され、並進器具インターフェイ
ス1214は、図35A及び図35Bの並進器具インターフェイス503と同様に構成されている。例
えば、ハンドル1213は、そこで加えられたミクロな動きを、1つ又は複数のセンサ、及び
スレーブユニット1212のエンドエフェクタに結合された1つ又は複数のモータを介して並
進器具インターフェイス1214のエンドエフェクタに伝達して、該エンドエフェクタを開/
閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で動かすことができるように、1つ又は複
数のセンサを備える。従って、ハンドル1213で加えられるマクロな並進運動は、機械的制
限部1213により、3自由度、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右の自由度で並
進器具インターフェイス1214のエンドエフェクタによって再現される。別法では、遠隔作
動手術ロボットシステム1210は、電気機械的に作動される7自由度を有し得る。
【0185】
本発明の様々な例示的な実施態様を上で説明したが、本発明から逸脱することなく、様
々な変更及び修正を本発明の範囲で行うことができることは当業者には明らかであろう。
添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を
含むことを意図している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A-5C】
図6A-6C】
図7
図8A-8C】
図9A-9B】
図10A-10C】
図11A
図11B
図12
図13
図14A-14E】
図15A-15C】
図16
図17A-17D】
図18A-18D】
図18E
図19A-19C】
図20A-20C】
図21A-21J】
図21K
図21L
図22A-22C】
図23A-23C】
図24A-24D】
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31A
図31B
図32A
図32B
図33
図34A
図34B
図34C
図34D
図35A
図35B
図36A
図36B
図36C
図36D
図36E
図37
図38
図39
図40A
図40B
図41A
図41B
図42A
図42B
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0185
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0185】
本発明の様々な例示的な実施態様を上で説明したが、本発明から逸脱することなく、様
々な変更及び修正を本発明の範囲で行うことができることは当業者には明らかであろう。
添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を
含むことを意図している。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
外科手術を行うための遠隔操作用のシステムであって:
複数のマスターリンクを備えるマスターコンソール;
ハンドルで加えられた動きが該複数のマスターリンクの少なくとも1つを動かすように
該マスターコンソールに結合された該ハンドル;
複数のスレーブリンクを備えるスレーブコンソールであって、該マスターコンソールに
動作可能に結合され、該ハンドルで加えられる動きに応答して動くように構成されている
、該スレーブコンソール;及び
該スレーブコンソールに結合されたエンドエフェクタであって、該ハンドルでの作動に
応答して動き、かつ該スレーブコンソールでの動きに応答して動いて該外科手術を行うよ
うに構成されている、該エンドエフェクタを含み;
該スレーブコンソールが、該エンドエフェクタに動作可能に結合された複数のアクチュ
エータを備え、該アクチュエータが、該ハンドルでの作動に応答して作動されると、マク
ロ同期状態中には該複数のスレーブリンクの少なくとも1つにマクロな並進運動を加える
が、マクロ非同期状態では該並進運動を加えず、ミクロ同期状態中には該エンドエフェク
タにミクロな動きを加えるが、ミクロ非同期状態では該ミクロな動きを加えない、前記シ
ステム。
(態様2)
前記マスターコンソールが、前記外科手術中に無菌を維持するように構成されている、
態様1記載のシステム。
(態様3)
前記ハンドルが、前記外科手術中に無菌であり、かつ追加の外科手術のために取り外さ
れている間も滅菌可能であるように、前記マスターコンソールに取り外し可能に結合され
ている、態様2記載のシステム。
(態様4)
前記ハンドルが、クリップアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し
可能に結合されている、態様1~3のいずれか一項記載のシステム。
(態様5)
前記ハンドルが、ねじアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し可能
に結合されている、態様1、2、又は3記載のシステム。
(態様6)
前記ハンドルが、該ハンドルの作動に応答して動く格納式ピストンを備え、前記マスタ
ーコンソールの少なくとも1つのセンサが、該格納式ピストンの動きを検知して、前記複
数のアクチュエータに前記エンドエフェクタで対応するミクロな動きをさせるように構成
されている、態様1~5のいずれか一項記載のシステム。
(態様7)
前記スレーブコンソールが、前記少なくとも1つのセンサが少なくとも所定程度の前記
格納式ピストンを検知しない限り、前記マスターコンソールでの動きに応答しない、態様
6記載のシステム。
(態様8)
前記マスターコンソールが、前記複数のマスターリンクの少なくとも1つのマスターリ
ンクの動きを制限するように構成された機械的制限部を備える、態様1~7のいずれか一項
記載のシステム。
(態様9)
前記マスターコンソールに結合されたディスプレイをさらに含み、該ディスプレイが、
前記システムの操作中に使用者が前記エンドエフェクタを視覚化できるように構成されて
いる、態様1~8のいずれか一項記載のシステム。
(態様10)
前記複数のスレーブリンク及び複数のスレーブジョイントが、前記スレーブコンソール
のベースが固定されたまま、前記外科手術を行う前に該スレーブコンソールの遠位端部を
所望の水平位置に配置するために近位スレーブジョイントを中心に移動可能であるように
、該スレーブコンソールのベースが、該複数のスレーブジョイントの該近位スレーブジョ
イントを介して該複数のスレーブリンクの近位スレーブリンクに結合されている、態様1
~9のいずれか一項記載のシステム。
(態様11)
前記スレーブコンソールのベースが、前記複数のスレーブリンクの近位スレーブリンク
に結合された調整可能な垂直支柱を備え、該調整可能な垂直支柱が、前記外科手術を行う
前に該スレーブコンソールの遠位端部を所望の垂直位置に配置するために該複数のスレー
ブリンク及び前記複数のスレーブジョイントの高さを調整するように構成されている、態
様10記載のシステム。
(態様12)
前記スレーブコンソールの遠位端部と前記外科手術を受けている患者の体内に配置され
たトロカールとの整合を可能にするように構成された取り外し可能な切開ポインタをさら
に含む、態様1~11のいずれか一項記載のシステム。
(態様13)
制御装置をさらに含み、該制御装置が、前記複数のアクチュエータが該制御装置によっ
て実行される命令に応答して前記スレーブコンソールの前記複数のスレーブリンクに動き
を加えるように、該複数のアクチュエータに動作可能に結合されている、態様1~12のい
ずれか一項記載のシステム。
(態様14)
前記制御装置が、前記複数のアクチュエータに前記スレーブコンソールの前記複数のス
レーブリンクをホーム構成に移動させる命令を実行するように構成されており、該ホーム
構成では、該複数のスレーブリンクが、前記外科手術を受けている患者に挿入されたトロ
カール内で前記エンドエフェクタが配置可能であるように後退している、態様13記載のシ
ステム。
(態様15)
前記制御装置が、前記複数のアクチュエータに前記複数のスレーブリンクの角度付けス
レーブリンクを、該角度付けスレーブリンク及び該角度付けスレーブリンクの近位側の前
記スレーブコンソールのスレーブリンクが前記システムの操作中に固定されたままである
角度まで移動させる命令を実行するように構成されている、態様13又は14記載のシステム

(態様16)
前記角度付けスレーブリンクの角度では、前記スレーブコンソールの遠位端部により、
前記エンドエフェクタが、該角度付けスレーブリンクの角度に平行な角度で傾けられた半
球形手術作業空間で前記外科手術を行うことが可能である、態様15記載のシステム。
(態様17)
複数のスレーブジョイントのベータジョイントの遠位側の前記複数のスレーブリンクの
うちのスレーブリンクが、該ベータジョイントの近位側の該複数のスレーブリンクのうち
のスレーブリンク及び前記スレーブコンソールのベースが固定されたまま、該ベータジョ
イントに対して移動して該スレーブコンソールの遠位端部を前方手術作業空間と反転手術
作業空間との間で反転させるように構成されている、態様1~16のいずれか一項記載のシ
ステム。
(態様18)
前記マスターコンソールが、作動されると前記複数のマスターリンクのマクロな並進運
動を防止するように構成されたクラッチをさらに備える、態様1~17のいずれか一項記載
のシステム。
(態様19)
前記ハンドルに結合された少なくとも1つのセンサが、該ハンドルの作動パターンを検
知するように構成され、前記複数のセンサによって検知されたハンドルでの動きが、該少
なくとも1つのセンサが該ハンドルの作動パターンを検知しない限り、前記エンドエフェ
クタによる対応するミクロな動きを引き起こさない、態様1~18のいずれか一項記載のシ
ステム。
(態様20)
近位端部及び遠位端部を有する器具をさらに含み、該近位端部が、前記スレーブコンソ
ールに取り外し可能に結合されるように構成された器具ハブを備え、該遠位端部が前記エ
ンドエフェクタを備える、態様1~19のいずれか一項記載のシステム。
(態様21)
前記スレーブコンソールの遠位端部が、前記複数のスレーブリンクの角度付けスレーブ
リンクのアルファ軸を中心に回転可能であり、このため、該スレーブコンソールの遠位端
部が、使用者が前記マスターコンソールから移動して前記外科手術を受けている患者に腹
腔鏡手術を手動で行えるように配置可能である、態様1~20のいずれか一項記載のシステ
ム。
(態様22)
前記マスターコンソールがマスター制御装置を備え、前記スレーブコンソールがスレー
ブ制御装置を備え、該マスター制御装置が、前記ハンドルで検知された動きに基づいて命
令を実行して、該動きに基づいて信号を該スレーブ制御装置に送信するように構成され、
該スレーブ制御装置が、該信号を受信し、命令を実行して、該マスター制御装置から送信
された信号に基づいて前記複数のスレーブリンク若しくは前記エンドエフェクタの少なく
とも1つ、又はその両方を動かすように構成されている、態様1~21のいずれか一項記載の
システム。
(態様23)
前記スレーブコンソールが、右スレーブ遠隔マニピュレータ、右スレーブ制御装置、左
スレーブ遠隔マニピュレータ、及び左スレーブ制御装置を備え、
該マスターコンソールが、右マスター遠隔マニピュレータ、左マスター遠隔マニピュレ
ータ、及びマスター制御装置を備え、
前方手術作業空間構成では、該マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、
該右マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを
動かし、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニ
ピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを動かし、かつ
反転手術作業空間構成では、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、
該右マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを
動かし、該マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニ
ピュレータでの動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを動かす、態様1~22の
いずれか一項記載のシステム。
(態様24)
外科手術を行うための遠隔操作用のシステムであって:
マスター制御装置、複数の右マスターリンクを有する右マスター遠隔マニピュレータ、
及び複数の左マスターリンクを有する左マスター遠隔マニピュレータを備えるマスターコ
ンソール;
該右マスター遠隔マニピュレータを操作するために該右マスター遠隔マニピュレータに
結合された右ハンドル;
該左マスター遠隔マニピュレータを操作するために該左マスター遠隔マニピュレータに
結合された左ハンドル;
右スレーブ制御装置、複数の右スレーブリンクを有する右スレーブ遠隔マニピュレータ
、左スレーブ制御装置、及び複数の左スレーブリンクを有する左スレーブ遠隔マニピュレ
ータを備えるスレーブコンソール;
該右スレーブ遠隔マニピュレータに結合された右エンドエフェクタであって、該右又は
左ハンドルでの作動に応答して動いて該外科手術を行うように構成されている、該右エン
ドエフェクタ;並びに
該左スレーブ遠隔マニピュレータに結合された左エンドエフェクタであって、該左又は
右ハンドルでの作動に応答して動いて該外科手術を行うように構成されている、該左エン
ドエフェクタを含み;
前方手術作業空間構成では、該マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、
該右マスター遠隔マニピュレータでの動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを
動かし、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニ
ピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを動かし、かつ反転手術
作業空間構成では、該マスター制御装置が該左スレーブ制御装置と通信して、該右マスタ
ー遠隔マニピュレータでの動きに応答して該左スレーブ遠隔マニピュレータを動かし、該
マスター制御装置が該右スレーブ制御装置と通信して、該左マスター遠隔マニピュレータ
での動きに応答して該右スレーブ遠隔マニピュレータを動かす、前記システム。
(態様25)
前記右スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部が、前記複数の右スレーブリンクの右角
度付けスレーブリンクのアルファ軸を中心に回転可能であり、前記左スレーブ遠隔マニピ
ュレータの遠位端部が、前記複数の左スレーブリンクの左角度付けスレーブリンクのアル
ファ軸を中心に回転可能であり、このため、該右及び左スレーブ遠隔マニピュレータの遠
位端部が、使用者が前記マスターコンソールから移動して前記外科手術を受けている患者
に腹腔鏡手術を手動で行うことができるように配置可能である、態様1~24のいずれか一
項記載のシステム。
(態様26)
前記右ハンドルが、前記右マスター遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合され、前
記左ハンドルが、前記左マスター遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合されている、
態様1~25のいずれか一項記載のシステム。
(態様27)
外科手術を行うための遠隔操作用のシステムであって:
該外科手術中に無菌を維持するように構成された、複数のマスターリンクを備えるマス
ターコンソール;
ハンドルで加えられた動きが複数のマスターリンクの少なくとも1つを動かすように、
該マスターコンソールに取り外し可能に結合された該ハンドルであって、該外科手術中は
無菌であり、かつ追加の外科手術のために取り外されている間も滅菌可能である、該ハン
ドル;
複数のスレーブリンクを備えるスレーブコンソールであって、前記マスターコンソール
に動作可能に結合され、かつ該ハンドルで加えられる動きに応答して動くように構成され
ている、該スレーブコンソール;及び
該スレーブコンソールに結合されたエンドエフェクタであって、該ハンドルでの作動に
応答して動き、かつ該スレーブコンソールでの動きに応答して動いて該外科手術を行うよ
うに構成されている、該エンドエフェクタを含む、前記システム。
(態様28)
前記ハンドルが、前記マスターコンソールから取り外されている間の外科手術間の滅菌
を容易にするために、電子機器を備えずに純粋に機械的である、態様1~27のいずれか一
項記載のシステム。
(態様29)
前記ハンドルが、クリップアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し
可能に結合されている、態様1~28のいずれか一項記載のシステム。
(態様30)
前記ハンドルが、ねじアタッチメントを介して前記マスターコンソールに取り外し可能
に結合されている、態様1~29のいずれか一項記載のシステム。

【外国語明細書】