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特開2024-79686改変された腫瘍溶解性ウイルス、組成物、およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079686
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】改変された腫瘍溶解性ウイルス、組成物、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240604BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240604BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240604BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20240604BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20240604BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K35/76
A61K48/00
C12N15/12
C12N15/34
C12N15/53
A61K39/395 T
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024028268
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2021537461の分割
【原出願日】2019-09-10
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/104830
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521099925
【氏名又は名称】ジェネセイル バイオテック(シャンハイ)カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】セン,イ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】転移腫瘍細胞の排除のための腫瘍溶解性ウイルスを提供する。
【解決手段】免疫チェックポイント阻害因子をコードする第一異種ポリヌクレオチドと、イムノアクティベーターをコードする第二異種ポリヌクレオチドとを有する改変された腫瘍溶解性ウイルスが提供される。さらに、前記改変された腫瘍溶解性ウイルスを含む医薬組成物、および対象に前記改変された腫瘍溶解性ウイルスまたは前記医薬組成物を投与することを含む癌を処置する方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫チェックポイント阻害因子をコードする第一異種ポリヌクレオチドと、イムノアク
ティベーターをコードする第二異種ポリヌクレオチドとを有するウイルスゲノムを含む、
改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項2】
ワクシニア、アデノウイルス、レオウイルス、麻疹、単純ヘルペス、セムリキ森林熱ウ
イルス、ベネズエラウマ脳炎、パルボウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、麻疹ウイルス、
コクサッキーウイルス、水疱性口炎ウイルス、セネカバレーウイルス、マラバウイルス、
およびニューカッスル病ウイルスからなる群から選択される、請求項1に記載の改変され
た腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項3】
ワクシニアである、請求項2に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項4】
弱毒化され、腫瘍細胞において複製することができる、請求項1に記載の改変された腫
瘍溶解性ウイルス。
【請求項5】
前記ウイルスゲノムが、前記ウイルスが腫瘍細胞内において選択的複製をできるように
する、少なくとも1つの欠失または破壊を含む、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性
ウイルス。
【請求項6】
前記欠失または破壊が、前記ウイルスの複製に必須であり、かつ非腫瘍細胞より腫瘍細
胞において優先的に発現される酵素の少なくとも一部をコードするオープンリーディング
フレーム(ORF)にある、請求項5に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項7】
前記酵素がキナーゼである、請求項6に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項8】
前記酵素がチミジンキナーゼである、請求項7に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス
【請求項9】
ウエスタンリザーブ株から誘導される、請求項2に記載の改変された腫瘍溶解性ウイル
ス。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害因子が、免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結
合することができる第一抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1に記載の改変さ
れた腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項11】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-1、PD-L1/2、CTLA-4、
B7-H3/4、LAG3、TIM-3、VISTA、およびCD160からなる群から
選択される、請求項10に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項12】
前記第一抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号1に特異的に結合する、請求項1
0に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項13】
前記第一抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号2、3、および4を含む第一重鎖
を含む、請求項10に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項14】
前記第一重鎖が、配列番号5、または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同
配列を有する可変領域を含む、請求項13に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項15】
前記第一異種ポリヌクレオチドが、配列番号7の核酸配列または少なくとも80%の配
列同一性を有するその相同配列を含む、請求項11に記載の改変された腫瘍溶解性ウイル
ス。
【請求項16】
前記第一重鎖が、配列番号6のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有
するその相同配列を含む、請求項13に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項17】
前記第一異種ポリヌクレオチドが、配列番号8の核酸配列または少なくとも80%の配
列同一性を有するその相同配列を含む、請求項11に記載の改変された腫瘍溶解性ウイル
ス。
【請求項18】
前記第一抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、10、および11を含む第一
軽鎖をさらに含む、請求項13に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項19】
前記第一軽鎖が、配列番号12のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を
有するその相同配列を有する可変領域を含む、請求項18に記載の改変された腫瘍溶解性
ウイルス。
【請求項20】
前記第一異種ポリヌクレオチドが、配列番号14の核酸配列または少なくとも80%の
配列同一性を有するその相同配列をさらに含む、請求項15に記載の改変された腫瘍溶解
性ウイルス。
【請求項21】
前記第一軽鎖が、配列番号13のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を
有するその相同配列を含む、請求項18に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項22】
前記第一異種ポリヌクレオチドが、配列番号15の核酸配列または少なくとも80%の
配列同一性を有するその相同配列をさらに含む、請求項17に記載の改変された腫瘍溶解
性ウイルス。
【請求項23】
前記イムノアクティベーターが、共刺激分子に結合する第二抗体またはその抗原結合性
断片である、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項24】
前記共刺激分子が、CD137(4-1BB)、CD27、CD70、CD86、CD
80、CD28、CD40、CD122、CD27/70、TNFRS25、OX40、
GITR、ニュートロフィリン、およびICOSからなる群から選択される、請求項23
に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項25】
前記第二抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号16に特異的に結合する、請求項
23に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項26】
前記第二抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号17、18、および19を含む第
二重鎖を含む、請求項23に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項27】
前記第二重鎖が、配列番号20のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を
有するその相同配列を有する可変領域を含む、請求項26に記載の改変された腫瘍溶解性
ウイルス。
【請求項28】
前記第二異種ポリヌクレオチドが、配列番号22の核酸配列または少なくとも80%の
配列同一性を有するその相同配列を含む、請求項23に記載の改変された腫瘍溶解性ウイ
ルス。
【請求項29】
前記第二重鎖が、配列番号21のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を
有するその相同配列を含む、請求項26に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項30】
前記第二異種ポリヌクレオチドが、配列番号23の核酸配列または少なくとも80%の
配列同一性を有するその相同配列を含む、請求項23に記載の改変された腫瘍溶解性ウイ
ルス。
【請求項31】
前記第二抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号24、25、および26を含む第
二軽鎖をさらに含む、請求項26に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項32】
前記第二軽鎖が、配列番号27のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を
有するその相同配列を有する可変領域を含む、請求項31に記載の改変された腫瘍溶解性
ウイルス。
【請求項33】
前記第二異種ポリヌクレオチドが、配列番号29の核酸配列または少なくとも80%の
配列同一性を有するその相同配列をさらに含む、請求項28に記載の改変された腫瘍溶解
性ウイルス。
【請求項34】
前記第二軽鎖が、配列番号28のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を
有するその相同配列を含む、請求項26に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項35】
前記イムノアクティベーターが、NK細胞活性を刺激するNKアクティベーターである
、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項36】
前記NKアクティベーターが、NK分子に結合する第二抗体またはその抗原結合性断片
である、請求項35に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項37】
前記NK分子が、Siglec、TIGIT、KIRs、およびNKG2A/Dからな
る群から選択される、請求項36に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項38】
前記イムノアクティベーターが、マクロファージ細胞活性を刺激するマクロファージア
クティベーターである、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項39】
前記マクロファージアクティベーターが、マクロファージ分子に結合する第二抗体また
はその抗原結合性断片である、請求項38に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項40】
前記マクロファージ分子が、CSF1R、CSF1キナーゼ、PS、およびCD47か
らなる群から選択される、請求項39に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項41】
前記第二異種ポリヌクレオチドが、配列番号30の核酸配列または少なくとも80%の
配列同一性を有するその相同配列をさらに含む、請求項30に記載の改変された腫瘍溶解
性ウイルス。
【請求項42】
前記免疫チェックポイント阻害因子が、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗
原結合性断片であり、かつ前記イムノアクティベーターが、CD137に特異的に結合す
る抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性ウイル
ス。
【請求項43】
前記第一異種ポリヌクレオチドおよび前記第二異種ポリヌクレオチドが、前記欠失の位
置に挿入される、請求項4に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項44】
前記第一異種ポリヌクレオチドが、前記第二異種ポリヌクレオチドのすぐ上流またはす
ぐ下流に存する、請求項43に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項45】
前記第一異種ポリヌクレオチドが、前記第一抗体の第一重鎖および第一軽鎖をコードす
る、請求項10に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項46】
前記第一異種ポリヌクレオチドが、前記第一重鎖の発現を駆動することができる第一プ
ロモーターと、前記第一軽鎖の発現を駆動することができる第二プロモーターとをさらに
含み、前記第一プロモーターおよび前記第二プロモーターは、ヘッドトゥヘッド配向にあ
る、請求項45に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項47】
前記第二異種ポリヌクレオチドが、前記第二抗体の第二重鎖および第二軽鎖をコードす
る、請求項23に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項48】
前記第二異種ポリヌクレオチドが、前記第二重鎖の発現を駆動することができる第三プ
ロモーターと、前記第二軽鎖の発現を駆動することができる第四プロモーターとをさらに
含み、前記第三プロモーターおよび前記第四プロモーターは、ヘッドトゥヘッド配向にあ
る、請求項47に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項49】
前記第一異種ポリヌクレオチドおよび前記第二異種ポリヌクレオチドが、それらが前記
改変された腫瘍溶解性ウイルスの複製サイクルにおける同じ段階または異なる段階で発現
されるように構成された、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項50】
前記第一プロモーターおよび前記第二プロモーターが、同じである、または異なる、請
求項46に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項51】
前記第一プロモーターおよび前記第二プロモーターが、両方とも後期プロモーターであ
る、請求項46に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項52】
前記後期プロモーターがpSLである、請求項51に記載の改変された腫瘍溶解性ウイ
ルス。
【請求項53】
前記第三プロモーターおよび前記第四プロモーターが、同じである、または異なる、請
求項48に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項54】
前記第三および前記第四が、両方とも初期および後期プロモーターである、請求項48
に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項55】
前記初期および後期プロモーターがpSE/Lである、請求項54に記載の改変された
腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項56】
センス鎖の5’から3’の方向において、インフレームで以下の要素:CD137に結
合する抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチド-第一初期および後期プロモーター ―
第二初期および後期プロモーター ― CD137に結合する抗体の重鎖をコードする
ポリヌクレオチド ― PD-1に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド
― 第一後期プロモーター ― 第二後期プロモーター ― PD-1に結合する抗体の
軽鎖をコードするポリヌクレオチド、を含む、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性ウ
イルス。
【請求項57】
前記第一異種ポリヌクレオチドから発現される免疫チェックポイント阻害因子および前
記第二異種ポリヌクレオチドから発現されるイムノアクティベーターが、別々のタンパク
質として発現される、請求項1に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項58】
請求項1~57のいずれか一項に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルスと薬学的に許容
される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項59】
対象に有効量の請求項1~57のいずれか一項に記載の改変された腫瘍溶解性ウイルス
または請求項58に記載の医薬組成物を投与することを含む、腫瘍を処置する方法。
【請求項60】
前記対象がヒトである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記腫瘍が固形腫瘍である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記腫瘍が、黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌種、ホジキンリンパ腫、頭頚部の扁平上
皮癌、膀胱癌、結直腸癌、または肝細胞癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
投与経路が局所である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記投与経路が腫瘍内注入である、請求項63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、改変された腫瘍溶解性ウイルス、改変された腫瘍溶解性ウイルスを
含む組成物、および腫瘍の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中において、毎年1400万人を超える人々が腫瘍と診断されている。医学研究に
おける頻繁な進歩にもかかわらず、腫瘍は、全ての死亡のおよそ16%を占める。
【0003】
悪性腫瘍はしばしば、従来の治療法に対して抵抗性があり、重要な治療課題を提示する
。例えば、微小転移巣は、原発腫瘍の発生における非常に初期の段階において成立し得る
。したがって、診断の時点で、多くの腫瘍患者は、既に、微小転移を有している。腫瘍反
応性T細胞は、これらの微小転移巣を探し出して破壊し、周囲の健全な組織を温存する。
しかしながら、悪性腫瘍に対しての天然に存在するT細胞の反応はしばしば、原発腫瘍ま
たは転移腫瘍の寛解を生じさせるには不十分である。
【0004】
腫瘍溶解性ウイルスは、抗腫瘍剤としての可能性を示している。従来の遺伝子治療とは
異なり、腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルス複製および同時に生じる細胞溶解によって腫瘍
組織を通じて広がることができる。しかしながら、腫瘍溶解性ウイルス自体は、原発腫瘍
または転移腫瘍のどちらに対してもそれらを処置するには不十分である。
【0005】
したがって、腫瘍溶解性ウイルスの効力の増強および転移腫瘍細胞の排除に対する必要
性は、非常に急を要している。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本開示は、免疫チェックポイント阻害因子をコードする第一異種ポリ
ヌクレオチドと、イムノアクティベーター〔immuno activator〕をコードする第二異種ポ
リヌクレオチドとを有するウイルスゲノムを含む、改変された腫瘍溶解性ウイルスに関す
る。
【0007】
ある特定の実施形態において、前記腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニア、アデノウイル
ス、レオウイルス、麻疹、単純ヘルペス、セムリキ森林熱ウイルス、ベネズエラウマ脳炎
、パルボウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、麻疹ウイルス、コクサッキーウイルス、水疱
性口炎ウイルス、セネカバレーウイルス、マラバウイルス、およびニューカッスル病ウイ
ルスからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、前記腫瘍溶解性ウイルス
は、ウエスタンリザーブ〔Western Reserve〕株から誘導される。
【0008】
ある特定の実施形態において、前記改変された腫瘍溶解性ウイルスは、弱毒化され、腫
瘍細胞において複製することができる。ある特定の実施形態において、前記ウイルスゲノ
ムは、前記ウイルスが腫瘍細胞内において選択的複製をできるようにする、少なくとも1
つの欠失または破壊を含む。ある特定の実施形態において、前記欠失または破壊は、ウイ
ルスの複製に必須であり、かつ非腫瘍細胞より腫瘍細胞において優先的に発現される酵素
の少なくとも一部をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)にある。ある特
定の実施形態において、前記酵素はキナーゼである。ある特定の実施形態において、前記
酵素はチミジンキナーゼである。
【0009】
ある特定の実施形態において、前記免疫チェックポイント阻害因子は、免疫チェックポ
イントタンパク質に特異的に結合することができる第一抗体またはその抗原結合性断片で
ある。ある特定の実施形態において、前記免疫チェックポイントタンパク質は、PD-1
、PD-L1/2、CTLA-4、B7-H3/4、LAG3、TIM-3、VISTA
、およびCD160からなる群から選択される。
【0010】
ある特定の実施形態において、前記第一抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1
に特異的に結合する。
【0011】
ある特定の実施形態において、前記第一抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2
、3、および4を含む第一重鎖を含む。ある特定の実施形態において、前記第一重鎖は、
配列番号5または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列を有する可変領域
を含む。ある特定の実施形態において、前記第一重鎖は、配列番号6のアミノ酸配列また
は少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0012】
ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドは、配列番号7の核酸配
列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列を含む。ある特定の実施形
態において、前記第一異種ポリヌクレオチドは、配列番号8の核酸配列または少なくとも
80%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0013】
ある特定の実施形態において、前記第一抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9
、10、および11を含む第一軽鎖をさらに含む。ある特定の実施形態において、前記第
一軽鎖は、配列番号12のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有するそ
の相同配列を有する可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記第一軽鎖は、配
列番号13のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列を
含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドは、配列番号14の核酸
配列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列をさらに含む。ある特定
の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドは、配列番号15の核酸配列または
少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列をさらに含む。
【0015】
ある特定の実施形態において、前記イムノアクティベーターは、共刺激アクティベータ
ーである。ある特定の実施形態において、前記イムノアクティベーターは、共刺激分子に
結合する第二抗体またはその抗原結合性断片である。
【0016】
ある特定の実施形態において、前記共刺激分子は、CD137(4-1BB)、CD2
7、CD70、CD86、CD80、CD28、CD40、CD122、TNFRS25
、OX40、GITR、ニュートロフィリン〔Neutrophilin〕、およびICOSからなる
群から選択される。
【0017】
ある特定の実施形態において、前記第二抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1
6に特異的に結合する。
【0018】
ある特定の実施形態において、前記第二抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1
7、18、および19を含む第二重鎖を含む。ある特定の実施形態において、前記第二重
鎖は、配列番号20のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相
同配列を有する可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記第二重鎖は、配列番
号21のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列を含む
【0019】
ある特定の実施形態において、前記第二異種ポリヌクレオチドは、配列番号22の核酸
配列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列を含む。ある特定の実施
形態において、前記第二異種ポリヌクレオチドは、配列番号23の核酸配列または少なく
とも80%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0020】
ある特定の実施形態において、前記第二抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2
4、25、および26を含む第二軽鎖をさらに含む。ある特定の実施形態において、前記
第二軽鎖は、配列番号27のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有する
その相同配列を有する可変領域を含む。ある特定の実施形態において、前記第二異種ポリ
ヌクレオチドは、配列番号28の核酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有する
その相同配列をさらに含む。
【0021】
ある特定の実施形態において、前記第二軽鎖は、配列番号29のアミノ酸配列または少
なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0022】
ある特定の実施形態において、前記第二異種ポリヌクレオチドは、配列番号30の核酸
配列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相同配列をさらに含む。
【0023】
ある特定の実施形態において、前記イムノアクティベーターは、NK細胞活性を刺激す
るNKアクティベーターである。ある特定の実施形態において、前記NKアクティベータ
ーは、NK分子に結合する第二抗体またはその抗原結合性断片である。ある特定の実施形
態において、前記NK分子は、Siglec、TIGIT、KIRs、およびNKG2A
/Dからなる群から選択される。
【0024】
ある特定の実施形態において、前記イムノアクティベーターは、マクロファージ細胞活
性を刺激するマクロファージアクティベーターである。ある特定の実施形態において、前
記マクロファージアクティベーターは、マクロファージ分子に結合する第二抗体またはそ
の抗原結合性断片である。ある特定の実施形態において、前記マクロファージ分子は、C
SF1R、CSF1キナーゼ、PS、およびCD47からなる群から選択される。
【0025】
ある特定の実施形態において、前記免疫チェックポイント阻害因子は、PD-1に特異
的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり、かつ前記イムノアクティベーターは
、CD137に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。
【0026】
ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドおよび前記第二異種ポリ
ヌクレオチドは、前記欠失の位置に挿入される。
【0027】
ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドは、前記第二異種ポリヌ
クレオチドのすぐ上流またはすぐ下流に存する。
【0028】
ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドは、前記第一抗体の第一
重鎖および第一軽鎖をコードする。ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌク
レオチドは、前記第一重鎖の発現を駆動することができる第一プロモーターと、前記第一
軽鎖の発現を駆動することができる第二プロモーターとをさらに含み、当該第一および第
二プロモーターは、ヘッドトゥヘッド〔head-to-head〕配向にある。
【0029】
ある特定の実施形態において、前記第二異種ポリヌクレオチドは、前記第二抗体の第二
重鎖および第二軽鎖をコードする。ある特定の実施形態において、前記第二異種ポリヌク
レオチドは、当該第二重鎖の発現を駆動することができる第三プロモーターと、当該第二
軽鎖の発現を駆動することができる第四プロモーターとをさらに含み、当該第三および第
四プロモーターは、ヘッドトゥヘッド配向にある。
【0030】
ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドおよび前記第二異種ポリ
ヌクレオチドは、それらが前記改変された腫瘍溶解性ウイルスの複製サイクルにおける同
じ段階または異なる段階で発現されるように構成される。
【0031】
ある特定の実施形態において、前記第一プロモーターおよび前記第二プロモーターは、
同じである、または異なる。ある特定の実施形態において、前記第一プロモーターおよび
前記第二プロモーターは、両方とも後期プロモーターである。ある特定の実施形態におい
て、前記後期プロモーターは、pSLである。
【0032】
ある特定の実施形態において、前記第三プロモーターおよび前記第四プロモーターは、
同じである、または異なる。ある特定の実施形態において、前記第三および前記第四は、
両方とも初期プロモーターおよび後期プロモーターである。ある特定の実施形態において
、前記初期プロモーターおよび後期プロモーターは、pSE/Lである。
【0033】
ある特定の実施形態において、前記改変された腫瘍溶解性ウイルスは、センス鎖の5’
から3’の方向において、インフレームで以下の要素:CD137に結合する抗体の軽鎖
をコードするポリヌクレオチド-第一初期および後期プロモーター ― 第二初期および
後期プロモーター ― CD137に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド
― PD-1に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド ― 第一後期プロ
モーター ― 第二後期プロモーター ― PD-1に結合する抗体の軽鎖をコードする
ポリヌクレオチド、を含む。
【0034】
ある特定の実施形態において、前記第一異種ポリヌクレオチドから発現される免疫チェ
ックポイント阻害因子および前記第二異種ポリヌクレオチドから発現されるイムノアクテ
ィベーターは、別々のタンパク質として発現される。
【0035】
別の態様において、本開示は、本開示の改変された腫瘍溶解性ウイルスと薬学的に許容
される担体とを含む、医薬組成物に関する。
【0036】
別の態様において、本開示は、有効量の本開示の改変された腫瘍溶解性ウイルスまたは
本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む、腫瘍を処置する方法に関する。
【0037】
ある特定の実施形態において、前記対象はヒトである。
【0038】
ある特定の実施形態において、前記腫瘍は固形腫瘍である。ある特定の実施形態におい
て、前記腫瘍は、黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌種、ホジキンリンパ腫、頭頚部の扁平
上皮癌、膀胱癌、結直腸癌、または肝細胞癌である。
【0039】
ある特定の実施形態において、投与の経路は、局所である。ある特定の実施形態におい
て、投与の経路は、腫瘍内注入である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、WR-GS-600におけるチミジンキナーゼ(TK)欠失、抗PD-1および抗4-1BB抗体挿入の構造を示す。
図2図2は、WR-GS-620におけるTK欠失、および抗PD-1抗体挿入の構造を示す。
図3図3は、WR-GS-600に対する組換えステップの概略図である。
図4図4は、WR-GS-620に対する組換えステップの概略図である。
図5図5は、GS-600ウイルスゲノムに対するプライマーの位置を示す。
図6図6は、GS-610ウイルスゲノムに対するプライマーの位置を示す。
図7図7は、GS-620ウイルスゲノムに対するプライマーの位置を示す。
図8図8は、WR-GS-600のWR野生型株とのアラインメントを示す。
図9図9は、WR-GS-610のWR野生型株とのアラインメントを示す。
図10図10は、WR-GS-620のWR野生型株とのアラインメントを示す。
図11図11は、ヒトIgG発現の免疫蛍光検出の結果を示す。図11aは、U2OS細胞の位相コントラスト画像を示す。図11bは、バックグラウンド染色を示す。図11cは、WR-GS-600を感染させたU2OS細胞の画像を示す。図11dは、WR-GS-620を感染させたU2OS細胞の画像を示す。
図12図12は、細胞溶解物を使用した、組換えウイルス(WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620)によって発現されたヒト抗体のウエスタンブロットの結果を示しており、ここで、P600、P610、およびP620は、それぞれ、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620を意味する。このウエスタンブロッティング実験は、それぞれヒト抗体の重鎖および軽鎖に対応する、約50kDaおよび25kDaの分子量の2つのバンドを検出する。
図13図13は、上清を使用した、組換えウイルス(WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620)によって発現されたヒト抗体のウエスタンブロットの結果を示しており、ここで、P600、P610、およびP620は、それぞれ、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620を意味する。このウエスタンブロッティング実験は、それぞれヒト抗体の重鎖および軽鎖に対応する、約50kDaおよび25kDaの分子量の2つのバンドを検出する。
図14図14は、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620ウイルスDNAを使用したPCR増幅によって生じたバンドを示す。
図15図15は、抗huPD-1の重鎖のアミノ酸配列およびそのコード配列を示す。
図16図16は、抗huPD-1の軽鎖のアミノ酸配列およびそのコード配列を示す。
図17図17は、抗hu4-1BBの重鎖のアミノ酸配列およびそのコード配列を示す。
図18図18は、抗hu4-1BBの軽鎖のアミノ酸配列およびそのコード配列を示す。
図19図19は、WR-GS-620を感染させた上清に対するPD-1結合アッセイのELISA結果を示す。
図20図20は、WR-GS-600を感染させた上清およびWR-GS-610を感染させた上清に対する4-1BB結合アッセイのELISA結果を示す。
図21図21は、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620を感染させたHCT-116、HT-29、MC-38、およびCT-26細胞の生存率を示す。
図22図22は、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620を感染させたHCT-116、HT-29、MC-38、およびCT-26細胞の生存率を示す。
図23図23は、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620を感染させたHCT-116、HT-29、MC-38、およびCT-26細胞の生存率を示す。
図24図24は、ウイルス価特定のためのプレートのセットアップを示す。
図25図25は、WR-GS-610ウイルス価特定の代表的なプレートスキャン結果を示す。
図26図26は、WRウイルス価特定の代表的なプレートスキャン結果を示す。
図27図27は、WR-GS-620ウイルス価特定の代表的なプレートスキャン結果を示す。
図28図28は、WR-GS-600ウイルス価特定の代表的なプレートスキャン結果を示す。
図29図29は、製剤緩衝液(FB)で処理したコントロール群の代表的なプレートスキャン結果を示す。
図30図30は、腫瘍内注入後の腫瘍におけるインビボでのウイルス分布を示す。
図31図31は、腫瘍内注入後の卵巣におけるインビボでのウイルス分布を示す。
図32図32は、腫瘍内注入後の脳、脾臓、肝臓、および肺におけるインビボでのウイルス分布を示す。積算光子放出(1.928E10対1.554E10)は、腫瘍細胞の数に比例すると考えられる。当該データに基づいて、GS-600は、腫瘍成長を制御する。
図33図33は、FB、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620の腫瘍内注入(IT)後の同系CT-26マウス腫瘍モデルの腫瘍体積変化を示す。
図34図34は、様々なウイルスで処理した同系マウスの効果モデルを示す。
図35図35は、ヒトPBMCを静脈内注入したヒト化HT-29-Luc皮下腫瘍モデルのフローサイトメトリー結果を示す。
図36図36は、ヒトPBMCを静脈内注入したヒト化HT-29-Luc皮下腫瘍モデルのフローサイトメトリー結果を示す。
図37図37は、FB、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620の腫瘍内注入(IT)後のヒト化HT-29皮下腫瘍モデルの腫瘍体積変化を示す。
図38図38は、FB、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620の腫瘍内注入(IT)後のヒト化HT-29皮下腫瘍モデルの腫瘍体積変化を示す。
図39図39は、腫瘍を染色したヒト化HT-29-Luc皮下腫瘍モデルを示しており、ここで、当該マウスは、hPBMを注入されていない。
図40図40は、腫瘍を染色したヒト化HT-29-Luc皮下腫瘍モデルを示しており、ここで、当該マウスは、hPBMを注入されている。ケージ2のマウスは、WR-GS-600を感染させた。ケージ3のマウスは、WRを感染させた。ケージ4のマウスは、FBを感染させた。ケージ5のマウスは、WR-GS-610を感染させた。ケージ6において、第一マウスはWR-GS-600を感染させ、第二マウスはWR-GS-620を感染させ、第三マウスはWR-GS-610を感染させ、第四マウスはWRを感染させ、第五マウスはFBを感染させた。ケージ7のマウスは、WR-GS-620を感染させた。
図41図41は、腫瘍を染色したヒト化HT-29-Luc腹膜内腫瘍モデルを示す。
図42図42は、様々なウイルスによる1週間の処理後の化学発光強度変化の百分率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
一態様において、本開示は、免疫チェックポイント阻害因子をコードする第一異種ポリ
ヌクレオチドと、イムノアクティベーターをコードする第二異種ポリヌクレオチドとを挿
入したウイルスゲノムを含む、改変された腫瘍溶解性ウイルスに関する。
【0042】
腫瘍溶解性ウイルス
用語「腫瘍溶解性ウイルス」は、本明細書において使用される場合、インビトロまたは
インビボのいずれかにおいて、正常細胞に影響を与えずに、または最小の影響で、腫瘍細
胞内において選択的に複製することができ、かつ腫瘍細胞の成長を鈍化することができる
か腫瘍細胞の死を誘導することができる、ウイルスを意味する。ある特定の実施形態にお
いて、腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルス粒子(またはビリオン)内にパッケージされたウ
イルスゲノムを含み、かつ感染性である(すなわち、宿主細胞または対象に感染してその
中に入ることができる)。ある特定の実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、DNA
ウイルスまたはRNAウイルスであってもよく、かつ任意の好適な形態、例えば、DNA
ウイルスベクター、RNAウイルスベクター、またはウイルス粒子など、であってもよい
【0043】
用語「選択的に複製する」は、本明細書において使用される場合、腫瘍溶解性ウイルス
の複製速度が、非腫瘍細胞(例えば、健康な細胞)においてよりも腫瘍細胞において著し
く高いことを意味する。ある特定の実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、非腫瘍細
胞(例えば、健康な細胞)においてよりも腫瘍細胞において少なくとも50%、60%、
70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍、
または1000倍高い溶解の速度を示す。
【0044】
ある特定の実施形態において、本開示の腫瘍溶解性ウイルスは、肝臓腫瘍細胞(例えば
、Hepal-6細胞、Hep3B細胞、7402細胞、および7721細胞)、乳房腫
瘍細胞(例えば、MCF-7細胞)、舌腫瘍細胞(例えば、TCa8113細胞)、腺様
嚢胞腫瘍細胞(例えば、ACC-M細胞)、前立腺腫瘍細胞(例えば、LNCaP細胞)
、ヒト胚腎臓細胞(例えば、HEK293細胞)、肺腫瘍細胞(例えば、A549細胞)
、または子宮頚部腫瘍細胞(例えば、HeLa細胞)において選択的に複製することがで
きる。
【0045】
本開示の腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)、
アデノウイルス(例えば、デルタ-24、デルタ-24-RGD、ICOVIR-5、I
COVIR-7、Onyx-015、ColoAdl、H101、およびAD5/3-D
24-GMCSF)、レオウイルス(例えば、REOLYSIN)、麻疹ウイルス、単純
ヘルペスウイルス(例えば、HSV、OncoVEX GMCSF)、ニューカッスル病
ウイルス(例えば、73-T PV701およびHDV-HUJ株、ならびに以下の文献
に記載されるもの:Phuangsab et al., 2001, Cancer
Lett. 172(1): 27-36; Lorence et al., 200
7, Curr. Cancer Drug Targets 7(2): 157-6
7;およびFreeman et al., 2006, Mol. Ther. 13
(1): 221-8)、レトロウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、粘液腫
ウイルス、ラブドウイルス(例えば、水疱性口内炎ウイルス;以下の文献に記載されるも
の:Stojdl et al., 2000, Nat. Med. 6(7): 8
21-5およびStojdl et al., 2003, Cancer Cell
4(4): 263-75)、ピコルナウイルス(例えば、セネカバレーウイルス;SW
-001およびNTX-010)、コクスサッキーウイルス、またはパルボウイルスから
誘導することができる。
【0046】
ある特定の実施形態において、本開示の腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルスから
誘導される。用語「ポックスウイルス」は、本明細書において使用される場合、ポックス
ウイルス亜科に属すウイルスを意味する。ある特定の実施形態において、ポックスウイル
スは、コードポックスウイルス〔Chordopoxviridae〕亜科に属すウイルスである。ある特
定の実施形態において、ポックスウイルスは、オルソポックスウイルス〔Orthopoxvirus
〕亜科に属すウイルスである。様々なポックスウイルスのゲノム、例えば、ワクシニアウ
イルス、牛痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、粘液腫ウイルス
のゲノムの配列は、当技術分野および専門データベース、例えば、GenBank(それ
ぞれ、受託番号NC_006998、NC_003663、NC_005309、NC_
004105、NC_001132)などにおいて入手可能である。
【0047】
ある特定の実施形態において、本開示の腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルスか
ら誘導される。ワクシニアウイルスは、ウイルスが宿主細胞機構から独立して複製するの
を可能にする多数のウイルスの酵素および因子をコードする約190kbの二本鎖DNA
ゲノムによって特徴付けられる、ポックスウイルス科のメンバーである。ある特定の実施
形態において、本開示のワクシニアウイルスは、エルストリー〔Elstree〕株、コペンハ
ーゲン〔Copenhagen〕株、ウエスタンリザーブ株、またはワイエス〔Wyeth〕株から誘導
される。ある特定の実施形態において、本開示のワクシニアウイルスは、ウエスタンリザ
ーブ株である。ウエスタンリザーブ株は、十分に特性決定されており、その完全配列は、
AY243312のアクセス番号によりNCBIサイト(www.ncbi.nlm.n
ih.gov)において入手可能である。
【0048】
用語「改変された腫瘍溶解性ウイルス」は、本明細書において使用される場合、異種核
酸もしくはタンパク質の導入または天然核酸もしくはタンパク質の変更によって改変され
た腫瘍溶解性ウイルスを意味する。ある特定の実施形態において、本明細書において提供
される改変された腫瘍溶解性ウイルスは、核酸配列の欠失および/または付加によって遺
伝子操作される。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される改変された
腫瘍溶解性ウイルスは、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子の欠失を含む。ある特定の実施
形態において、本明細書において提供される改変された腫瘍溶解性ウイルスは、抗ヒトP
D-1および/または抗ヒト4-1BB抗体をコードする核酸配列の付加を含む。
【0049】
ある特定の実施形態において、本開示の改変された腫瘍溶解性ウイルスは、弱毒化され
る。ある特定の実施形態において、改変された腫瘍溶解性ウイルスは、正常細胞(例えば
、健康な細胞)において、その野生型の相対物と比較して減少された(例えば、少なくと
も90%、80%、70%、60%、50%未満の)病原性または検出不可能な病原性を
有する。
【0050】
本開示の改変された腫瘍溶解性ウイルスは、非腫瘍細胞と比較して腫瘍細胞において選
択的に複製し腫瘍細胞を死に至らしめるその性向によって腫瘍溶解性であるよう、当技術
分野において既知の任意の腫瘍溶解性ウイルスから誘導することができる。腫瘍溶解性ウ
イルスは、天然において腫瘍溶解性であり得る、または遺伝子組み換え技術によって、例
えば、腫瘍選択性および/または腫瘍細胞での優先的複製を増加させるために1つまたは
複数の遺伝子を改変するなどによって、腫瘍溶解性にされ得る。改変のためのそのような
遺伝子の例としては、DNA複製、核酸代謝、宿主指向性、表面接着、病原性、宿主細胞
溶解、およびウイルス拡散に関与するものが挙げられる(例えば、Kirn et al
., 2001, Nat. Med. 7: 781; Wong et al.,
2010, Viruses 2: 78-106を参照されたい)。
【0051】
ある特定の実施形態において、本開示の改変された腫瘍溶解性ウイルスのウイルスゲノ
ムは、ウイルスが腫瘍細胞内において選択的に複製できるようにする、少なくとも1つの
欠失または破壊を含む。例えば、欠失または破壊は、ウイルス複製にとって不可欠な酵素
の発現または機能を減少させ得、それによりウイルスは、そのような酵素の不在下におい
て複製する能力が減退する。いくつかの実施形態において、ウイルス複製は、細胞におけ
るそのような酵素の存在および/またはレベルに依存し、酵素のレベルが高いほど、ウイ
ルスの複製能力または複製速度は高い。
【0052】
ある特定の実施形態において、欠失または破壊は、オープンリーディングフレーム(O
RF)にある。用語「オープンリーディングフレーム」または「ORF」または「コード
配列」は、本明細書において使用される場合、アミノ酸配列へと翻訳することができるD
NA配列を意味する。ORFは、通常、開始コドン(例えば、ATG)で始まり、アミノ
酸コードコドンが続き、停止コドン(例えば、TGA、TAA、TAG)で終わる。
【0053】
ある特定の実施形態において、ORFは、ウイルスの複製に不可欠であって非腫瘍細胞
より腫瘍細胞において優先的に発現される酵素の少なくとも一部をコードする。用語「発
現する」は、本明細書において使用される場合、タンパク質またはペプチド配列がそのコ
ードDNAまたはRNA配列から産生されるプロセスを意味する。ある特定の実施形態に
おいて、酵素は、キナーゼである。
【0054】
ある特定の実施形態において、ORFにおける欠失は、ORFの全長の100%、99
%超、98%超、95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65
%超、60%超、55%超、50%超、45%超、40%超、35%超、30%超、25
%超、20%超、15%超、または10%超を構成する。ある特定の実施形態において、
ORFにおける欠失は、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、
50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、20
0、300、500、800、1000、1200、1500、1800、2000、2
200、2400、2500、またはそれ以上のヌクレオチド(場合により、連続するヌ
クレオチド)を構成する。
【0055】
ある特定の実施形態において、チミジンキナーゼ(TK)のORFは、欠失させられる
または破壊される。TKは、デオキシリボヌクレオチドの合成に関与する。正常細胞は一
般的に低い濃度のヌクレオチドを有するため、TKはこれらの正常細胞でのウイルス複製
において必要であるが、その一方で高いヌクレオチド濃度を含む腫瘍細胞において、TK
は必ずしも必要でない。ポックスウイルスでは、チミジンキナーゼコード遺伝子は、遺伝
子座J2Rに位置する。ある特定の実施形態において、TKは、完全に欠失させられる。
【0056】
ある特定の実施形態において、リボヌクレオチドレダクターゼ(RR)のORFは、欠
失させられるまたは破壊される。RRは、DNA生合成における重要なステップであるリ
ボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドへの還元を触媒する。ウイルス酵素は、R
1およびR2と命名された、2つの異種サブユニットで構成され、それぞれ、I4Lおよ
びF4L遺伝子座によってコードされる。I4LおよびF4L遺伝子に対する配列および
様々なポックスウイルスのゲノムにおけるそれらの位置は、公開データベースにおいて、
例えば、GeneBankの受託番号DQ437594、DQ437593、DQ377
804、AH015635、AY313847、AY313848、NC_003391
、NC_003389、NC_003310、M-35027、AY243312、DQ
011157、DQ011156、DQ011155、DQ011154、DQ0111
53、Y16780、X71982、AF438165、U60315、AF41015
3、AF380138、U86916、L22579、NC_006998、DQ121
394、およびNC_008291によって、入手可能である。本発明との関連において
、I4L遺伝子(R1大サブユニットをコードする)またはF4L遺伝子(R2小サブユ
ニットをコードする)のいずれかまたは両方が、欠失させられ得るまたは破壊され得る。
【0057】
ある特定の実施形態において、改変された腫瘍溶解性ウイルスのウイルスゲノムはさら
に、ウイルスの腫瘍特異性をさらに増加させる追加の欠失または破壊を含む。ある特定の
実施形態において、追加の欠失または破壊は、腫瘍細胞において優先的または特異的に発
現される腫瘍特異的タンパク質の少なくとも一部をコードするORFにある。腫瘍特異的
タンパク質の代表例は、VGFである。VGFは、ウイルスによる細胞感染後の早期に発
現される分泌タンパク質であり、その機能は、正常細胞でのウイルス拡散にとって重要で
あると考えられる。別の例は、ヘマグルチニンをコードするA56R遺伝子である(Zh
ang et al., 2007, Cancer Res. 67: 10038-
46)。さらなる一例は、DNA複製の正確さを維持すること、およびチミジル酸シンタ
ーゼによるTMPの産生のための前駆体を提供することの両方に関与するウイルスdUT
PaseをコードするF2L遺伝子である(Broyles et al., 1993
, Virol. 195: 863-5)。ワクシニアウイルスF2L遺伝子の配列は
、受託番号M25392によりGenBankにおいて入手可能である。
【0058】
免疫チェックポイント阻害因子
本明細書において提供される改変された腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント
阻害因子をコードする第一異種ポリヌクレオチドを有するウイルスゲノムを含む。
【0059】
用語「異種」は、本明細書において使用される場合、配列が野生型ウイルスに対して内
因性でないことを意味する。
【0060】
用語「コードする」または「コードすること」は、本明細書において使用される場合、
mRNAへ転写されることができることおよび/またはペプチドもしくはタンパク質に翻
訳されることができることを意味する。
【0061】
用語「免疫チェックポイントタンパク質」は、本明細書において使用される場合、非制
御の免疫反応を防ぐために、したがって、自己免疫寛容および/または組織保護の維持の
ために重要な免疫学的経路に、直接的または間接的に関与するタンパク質を意味する。本
明細書において使用される1つまたは複数の免疫チェックポイントモジュレーターは、抗
原特異的細胞のクローン選択、T細胞活性化、増殖、抗原および炎症の部位への輸送、直
接的なエフェクター機能の実行、ならびにサイトカインおよび膜リガンドによるシグナル
伝達を含む、T細胞媒介免疫の任意のステップにおいて、独立して機能し得る。
【0062】
用語「免疫チェックポイント阻害因子」は、本明細書において使用される場合、免疫チ
ェックポイントタンパク質の機能をネガティブな方向に調節することができる分子を意味
する。免疫チェックポイント阻害因子は、これらに限定されるわけではないが、アプタマ
ー、mRNA、siRNA、マイクロRNA、shRNA、ペプチド、抗体、球状核酸、
TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、およびCRISPR/Cas9を含む、当
技術分野において既知の分子モダリティのいずれかであり得る。
【0063】
ある特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害因子は、阻害性免疫チェック
ポイント分子、例えば、CTLA-4のリガンド(例えば、B7.1、B7.2)、TI
M3のリガンド(例えば、ガレクチン-9)、A2a受容体のリガンド(例えば、アデノ
シン、レガデノソン)、LAG3のリガンド(例えば、MHCクラスIまたはMHCクラ
スII分子)、BTLAのリガンド(例えば、HVEM、B7-H4)、KIRのリガン
ド(例えば、MHCクラスIまたはMHCクラスII分子)、PD-1のリガンド(例え
ば、PD-L1、PD-L2)、IDOのリガンド(例えば、NKTR-218、インド
キシモド、NLG919)などの、天然のまたは遺伝子操作されたアンタゴニストである
【0064】
ある特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害因子は、抗PD-1(例えば
、ニボルマブ、ピディリズマブ、ペンブロリズマブ、BMS-936559、BMS-9
36558、アテゾリズマブ、ランブロリズマブ、MK-3475、AMP-224、A
MP-514、STI-A1110、TSR-042、またはANB011)、抗PD-
L1(例えば、KY-1003、MCLA-145、アテゾリズマブ、MEDI-473
6、MSB0010718C、STI-A1010、MPDL3280A、ダピロリズマ
ブ〔Dapirolizumab〕CDP-7657、MEDI-4920、またはPCT/US20
01/020964において引用されるもの)、抗PD-L2、抗(PD-L1およびP
D-L2の両方)(例えば、AUR-012、およびAMP-224)、抗CTLA-4
(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、またはKAHR-102)、抗IDO(例え
ば、D-l-メチル-トリプトファン(Lunate)、抗KIR(例えば、リリルマブ
〔Lirilumab〕、IPH2101、またはIPH4102)、抗LAG3(例えば、BM
S-986016、IMP701、IMP321、またはC9B7W)、抗TIM3(例
えば、F38-2E2またはENUM005)、抗VISTA(例えば、VA.F6)、
抗BTLA(例えば、AF3354)、抗CD73(例えば、OSU-HDAC42また
はMEDI-9447)、抗B7-H3(例えば、MGA271、DS-5573a、ま
たは8H9)、抗A2aR、抗B7-1、抗B7-H3(例えば、MGA271)、抗B
7-H4、抗(B7-H3およびB7-H4の両方)、抗CD52(例えば、アレムツズ
マブ)、抗IL-10、抗IL-35、抗MICA(例えば、IPH43)、および抗C
D39からなる群から選択される抗体(例えば、アンタゴニスト抗体)である。
【0065】
ある特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害因子は、PD-1、PD-L
1/2、CTLA-4、B7-H3/4、LAG3、TIM-3、VISTA、およびC
D160からなる群から選択される、免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結合す
ることができる抗体またはその抗原結合性断片である。ある特定の実施形態において、免
疫チェックポイント阻害因子は、抗PD-L1または抗PD-L2抗体、あるいはPD-
L1およびPD-L2の両方の阻害因子である。ある特定の実施形態において、免疫チェ
ックポイント阻害因子は、抗B7-H3または抗B7-H4抗体、あるいはB7-H3お
よびB7-H4の両方の阻害因子である。
【0066】
PD-1阻害因子
ある特定の実施形態において、本開示の第一異種ポリヌクレオチドは、PD-1阻害因
子をコードする。
【0067】
用語「PD-1」は、本明細書において使用される場合、プログラム細胞死タンパク質
を意味し、それは、免疫グロブリンのスーパーファミリーに属し、免疫系をネガティブに
調整する共阻害性受容体として機能する。PD-1は、CD28/CTLA-4ファミリ
ーのメンバーであり、PD-L1およびPD-L2を含む2つの既知のリガンドを有する
。ヒトPD-1の代表的なアミノ酸配列は、GenBankの受託番号:NP_0050
09.2において開示されており、ヒトPD-1をコードする代表的な核酸配列は、Ge
nBankの受託番号:NM_005018.2において示される。
【0068】
PD-1は、T細胞活性化をネガティブに調節し、この阻害機能は、その細胞質ドメイ
ンの免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)に関係している(Parry
et. al, 2005, Mol. Cell. Biol. 25:9543-
53)。PD-1のこの阻害機能の妨害は、自己免疫につながり得る。PD-1による持
続的ネガティブシグナルは、多くの病的状態、例えば、腫瘍免疫回避および慢性ウイルス
感染などにおけるT細胞機能不全に関与していた。
【0069】
PD-1阻害剤は、PD-1の活性を阻害する任意の薬剤、例えば、PD-1の活性を
少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、80%、90%、95%、またはそ
れ以上に低下させるものなどであり得る。
【0070】
活性(例えば、PD-1の)は、例えば、機能性タンパク質とそのリガンドとの間の結
合(例えば、PD-1とPD-L1との間の結合)の阻害、その生物活性化の阻害(例え
ば、PD-1の活性化)、および/またはレベル(例えば、PD-1のレベル)の低下な
どの結果として、低下され得る。
【0071】
ある特定の実施形態において、PD-1阻害剤は、PD-1に特異的に結合することが
できる抗体(例えば、アンタゴニスト抗体)である。
【0072】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、本明細書において使用される場合
、2つの分子の間、例えば、抗体と抗原との間などにおける非ランダム結合反応を意味す
る。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体または抗原結合性断
片は、≦10-6M(例えば、≦5×10-7M、≦2×10-7M、≦10-7M、≦
5×10-8M、≦2×10-8M、≦10-8M、≦5×10-9M、≦2×10-9
M、≦10-9M、≦10-10M)の結合親和性(KD)でもって、ヒトおよび/また
はサルPD-1に特異的に結合する。KDは、本明細書において使用される場合、会合速
度に対する解離速度の比(koff/kon)を意味し、それは、例えば、ビアコアなど
の機器を使用した表面プラズモン共鳴法を使用して特定され得る。
【0073】
ある特定の実施形態において、PD-1阻害剤は、PD-1に対する完全長モノクロー
ナル抗体である。
【0074】
ある特定の実施形態において、PD-1抗体は、配列番号1に特異的に結合する。
【0075】
ある特定の実施形態において、PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2
、3、および4を含む第一重鎖を含む。
【0076】
用語「同一性」は、アミノ酸配列(または核酸配列)に関して本明細書において使用さ
れる場合、最大数を達成するために、配列を位置合わせし、必要であれば同一のアミノ酸
(または核酸)のギャップを導入した後での、参照配列におけるアミノ酸(または核酸)
残基と同一の、候補の配列におけるアミノ酸(または核酸)残基の百分率を意味する。ア
ミノ酸残基の保存的置換は、同一残基と見なされない。アミノ酸(または核酸)配列の同
一性のパーセントを特定する目的のための位置合わせは、例えば、公的に入手可能なツー
ル、例えば、BLASTN、BLASTp(全米バイオテクノロジー情報センター(NC
BI)のウェブサイトにおいて入手可能であり、Altschul S.F. et a
l, J. Mol. Biol., 215:403-410 (1990); St
ephen F. et al, Nucleic Acids Res., 25:3
389-3402 (1997)も参照されたい。)、ClustalW2(欧州バイオ
インフォマティクス研究所のウェブサイトにおいて入手可能であり、Higgins D
.G. et al, Methods in Enzymology, 266:38
3-402 (1996); Larkin M.A. et al, Bioinfo
rmatics (Oxford, England), 23(21): 2947-
8 (2007)も参照されたい。)、およびALIGNまたはMegalign(DN
ASTAR)ソフトウェアなどを使用して達成することができる。当業者は、ツールによ
って提供されるデフォルトのパラメーターを使用してもよく、または、例えば好適なアル
ゴリズムを選択することによってアラインメントに対して適切にパラメーターをカスタマ
イズしてもよい。
【0077】
ある特定の実施形態において、重鎖は、配列番号5または少なくとも80%、85%、
90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配
列同一性を有するその相同配列を有する可変領域を含む。ある特定の実施形態において、
重鎖は、配列番号6のアミノ酸配列または少なくとも80%の配列同一性を有するその相
同配列を含む。
【0078】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号7の核酸配列または少な
くとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、または99%の配列同一性を有するその相同配列を含む。ある特定の実施形態にお
いて、ポリヌクレオチドは、配列番号8の核酸配列または少なくとも80%、85%、9
0%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列
同一性を有するその相同配列を含む。
【0079】
ある特定の実施形態において、PD-1抗体またはその抗原結合性断片はさらに、配列
番号9、10、および11を含む軽鎖を含む。ある特定の実施形態において、軽鎖は、配
列番号12のアミノ酸配列または少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、
94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するその相同
配列を有する可変領域を含む。ある特定の実施形態において、軽鎖は、配列番号13のア
ミノ酸配列または少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0080】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドはさらに、配列番号14の核酸配列ま
たは少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、9
7%、98%、または99%の配列同一性を有するその相同配列を含む。ある特定の実施
形態において、ポリヌクレオチドはさらに、配列番号15の核酸配列または少なくとも8
0%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、ま
たは99%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0081】
イムノアクティベーター
本明細書において提供される改変された腫瘍溶解性ウイルスは、イムノアクティベータ
ーをコードする第二異種ポリヌクレオチドを有するウイルスゲノムを含む。
【0082】
用語「イムノアクティベーター」は、本明細書において使用される場合、免疫系を増強
することができる任意の薬剤を意味する。
【0083】
用語「免疫系を増強する」は、本明細書において使用される場合、T細胞活性、B細胞
活性、マクロファージ活性、および/またはNK細胞活性の発生を刺激する、薬剤の能力
を意味する。
【0084】
ある特定の実施形態において、イムノアクティベーターは、共刺激アクティベーター、
NKアクティベーター、またはマクロファージアクティベーターである。
【0085】
共刺激分子アクティベーター
ある特定の実施形態において、イムノアクティベーターは、共刺激分子アクティベータ
ーである。
【0086】
用語「共刺激分子」は、本明細書において使用される場合、抗原への結合の際のTリン
パ球の効率的な活性化および機能に必要な第二シグナルを提供する、抗原受容体またはF
c受容体以外の細胞表面分子を意味する。そのような共刺激分子の例としては、CD13
7(すなわち、4-1BB)、CD27、CD70、CD86、CD80、CD28、C
D40、CD122、TNFRS25、OX40(CD134)、GITR、ニュートロ
フィリン、およびICOS(すなわち、CD278)が挙げられる。
【0087】
ある特定の実施形態において、共刺激アクティベーターは、細胞免疫系を増強すること
ができるペプチド、ポリペプチド(例えば、抗体)であり得る。ある特定の実施形態にお
いて、共刺激アクティベーターは、共刺激分子に結合し、それによって共刺激分子の活性
を刺激する抗体、またはそのような抗体の抗原結合性断片、例えば、CD137抗体(例
えば、BMS-663513またはPF-05082566)、CD28抗体(例えば、
TGN-1412)、CD40抗体(例えば、CP-870,893、CDX1140、
BI-655064、BMS-986090、APX005、またはAPX005M)、
OX40(CD134)抗体(例えば、MEDI6383、MEDI6469、MEDI
0562、または米国特許第7,959,925号に記載されるもの)、抗GITR(例
えば、TRX-518、INBRX-110、またはNOV-120301)、CD70
抗体、CD86抗体、CD80抗体、CD122抗体、TNFRS25抗体、ニュートロ
フィリン抗体、およびCD27抗体(例えば、CDX-1127、BION-1402、
またはhCD27.15)などである。
【0088】
CD137アクティベーター
ある特定の実施形態において、本開示の第二異種ポリヌクレオチドは、CD137アク
ティベーターをコードする。
【0089】
4-1BBとも呼ばれるCD137は、細胞増殖、分化、およびプログラム細胞死の調
整に関与するタンパク質を含む腫瘍壊死因子受容体(TNFR)遺伝子ファミリーのメン
バーである(A. Ashkenazi, Nature, 2: 420-430,
(2002))。CD137は、CD4およびCD8細胞の両方、NK細胞、および
NKT細胞を含む、活性化されたT細胞において支配的に発現される(B. Kwon
et al. , Mol. Cell 10: 119-126, (2000);
J. Hurtado et al, J. Immunol. 155: 3360-
3365, (1995);およびL. Melero et al., Cell.
Immunol. 190: 167-172, (1998)を参照されたい)。
【0090】
CD137アクティベーターは、PD-1の活性を増強する任意の薬剤、例えば、CD
137の活性を少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、80%、90%、9
5%、またはそれ以上に増強するものなどであり得る。
【0091】
ある特定の実施形態において、CD137アクティベーターは、CD137に特異的に
結合する抗体である。ある特定の実施形態において、CD137アクティベーターは、完
全長抗体である。
【0092】
ある特定の実施形態において、CD137アクティベーターまたはその抗原結合性断片
は、配列番号16に特異的に結合する。
【0093】
ある特定の実施形態において、CD137アクティベーターまたはその抗原結合性断片
は、配列番号17、18、および19を含む重鎖を含む。
【0094】
ある特定の実施形態において、重鎖は、配列番号20のアミノ酸配列または少なくとも
80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、
または99%の配列同一性を有するその相同配列を有する可変領域を含む。ある特定の実
施形態において、重鎖は、配列番号21のアミノ酸配列または少なくとも80%、85%
、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の
配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0095】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号22の核酸配列または少
なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、
98%、または99%の配列同一性を有するその相同配列を含む。ある特定の実施形態に
おいて、ポリヌクレオチドは、配列番号23の核酸配列または少なくとも80%、85%
、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の
配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0096】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合性断片はさらに、配列番号24
、25、および26を含む軽鎖を含む。ある特定の実施形態において、軽鎖は、配列番号
27のアミノ酸配列または少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%
、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するその相同配列を
有する可変領域を含む。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、さらに、配
列番号28の核酸配列または少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するその相同配列
を含む。
【0097】
ある特定の実施形態において、軽鎖は、配列番号29のアミノ酸配列または少なくとも
80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、
または99%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0098】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドはさらに、配列番号30の核酸配列ま
たは少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、9
7%、98%、または99%の配列同一性を有するその相同配列を含む。
【0099】
NKアクティベーター
ある特定の実施形態において、イムノアクティベーターは、NK細胞活性を刺激するN
Kアクティベーターである。ある特定の実施形態において、NKアクティベーターは、N
K分子に結合する第二抗体またはその抗原結合性断片である。
【0100】
ある特定の実施形態において、NKアクティベーターは、Siglec抗体、TIGI
T抗体、KIRs抗体、およびNKG2A/D抗体(例えば、モナリズマブ〔monalizuma
b〕からなる群から選択される。
【0101】
マクロファージアクティベーター
ある特定の実施形態において、イムノアクティベーターは、マクロファージ細胞活性を
刺激するマクロファージアクティベーターである。ある特定の実施形態において、マクロ
ファージアクティベーターは、マクロファージ分子に結合する第二抗体またはその抗原結
合性断片である。
【0102】
ある特定の実施形態において、マクロファージアクティベーターは、CSF1R抗体(
例えば、FPA008)、CSF1キナーゼ抗体、PS抗体、およびCD47抗体(例え
ば、CC-90002、TTI-621、またはVLST-007)からなる群から選択
される。
【0103】
抗体
用語「抗体」は、本明細書において使用される場合、特定の抗原に結合する任意の免疫
グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、または二重特
異性(二価)抗体を包含する。天然のインタクトな抗体は、2つの重鎖と2つの軽鎖を含
む。各重鎖は、可変領域と、第一、第二、および第三定常領域とからなるが、その一方で
、各軽鎖は、可変領域と定常領域とからなる。哺乳動物の重鎖は、α、δ、ε、γ、およ
びμとして分類され、哺乳動物の軽鎖は、λまたはκとして分類される。抗体は、「Y」
形状を有し、Yの幹は、ジスルフィド結合によって一緒に結合された2つの重鎖の第二お
よび第三定常領域からなる。Yの各腕部は、単一の軽鎖の可変領域および定常領域に結合
した単一の重鎖の可変領域および第一定常領域を含み、その場合、重鎖の第一定常領域は
、ヒンジ領域を介して第二定常領域に連結されている。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗
原結合特異性を担っている。両方の鎖の可変領域は、概して、相補性決定領域(CDR)
と呼ばれる3つの高度に可変なループを含む(LCDR1、LCDR2、およびLCDR
3を含む軽(L)鎖CDR、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重(H)
鎖CDR)。本明細書において開示される抗体および抗原結合性断片に対するCDR境界
は、Kabat、Chothia、またはAl-Lazikaniの慣例によって定義ま
たは特定され得る(詳細については、Al-Lazikani, B., Chothi
a, C., Lesk, A. M., J. Mol. Biol., 273(4
), 927 (1997); Chothia, C. et al., J Mol
Biol. Dec 5;186(3):651-63 (1985); Choth
ia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol., 19
6,901 (1987); Chothia, C. et al., Nature
. Dec 21-28; 342(6252):877-83 (1989); Ka
bat E.A. et al., National Institutes of
Health, Bethesda, Md. (1991)を参照されたい)。3つの
CDRは、フレームワーク領域(FR)として知られる隣接する伸縮部の間に介在し、フ
レームワーク領域は、CDRより高度に保存され、可変領域の構造を支えるための足場を
形成する。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合特異性には無関係だが、様々なエフェ
クター機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいたクラスに
割り当てられる。抗体の5つの主要なクラスまたはアイソタイプは、IgA、IgD、I
gE、IgG、およびIgMであり、それらは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμ重
鎖の存在によって特徴付けられる。主要な抗体クラスのいくつかは、サブクラス、例えば
、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ
4重鎖)、IgA1(α1重鎖)、またはIgA2(α2重鎖)などに分割される。
【0104】
用語「抗原結合性断片」は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数のCD
Rを含む抗体の一部から形成された抗体断片を意味するが、インタクトな抗体構造は含ま
ない。抗原結合性断片の例としては、これらに限定されるわけではないが、Fab、Fa
b’、F(ab’)、Fv断片、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体、ラク
ダ化単一ドメイン抗体、およびナノボディが挙げられる。抗原結合性断片は、親抗体が結
合する同じ抗原に結合することができる。
【0105】
用語「Fab」は、本明細書において使用される場合、ジスルフィド結合によって単一
の重鎖の可変領域および第一定常領域に結合した単一の軽鎖(可変領域および定常領域の
両方)からなる抗体の一部を意味する。
【0106】
用語「Fab’」は、本明細書において使用される場合、ヒンジ領域の一部を含むFa
b断片を意味する。
【0107】
用語「F(ab’)」は、本明細書において使用される場合、Fab’の二量体を意
味する。
【0108】
用語「Fv」は、本明細書において使用される場合、単一の軽鎖の可変領域と単一の重
鎖の可変領域とからなるFv断片を意味する。
【0109】
用語「単鎖Fv抗体」または「scFv」は、本明細書において使用される場合、直接
的にまたはペプチドリンカー配列を介してお互いに結合した軽鎖可変領域および重鎖可変
領域からなる、遺伝子操作された抗体を意味する(例えば、Huston JS et
al., Proc Natl Acad Sci USA, 85:5879(198
8)を参照されたい)。
【0110】
用語「scFv二量体」は、本明細書において使用される場合、2つのscFvによっ
て形成された重合体を意味する。
【0111】
用語「ラクダ化単一ドメイン抗体」は、「重鎖抗体」または「HCAb」(重鎖のみ抗
体〔heavy-chain-only antibody〕)としても知られ、2つの重鎖可変領域を含むが軽鎖
は含まない抗体を意味する(例えば、Riechmann L. and Muylde
rmans S., J Immunol Methods. Dec 10; 231
(1-2):25-38 (1999); Muyldermans S., J Bi
otechnol. Jun; 74(4):277-302 (2001); WO9
4/04678; WO94/25591;および米国特許第6,005,079号を参
照されたい)。重鎖抗体は、元々は、ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマ)
から誘導された。ラクダ化抗体は、軽鎖を欠くが、正統な抗原結合性レパートリーを有す
る(Hamers-Casterman C. et al., Nature. 36
3(6428):446-8 (1993); Nguyen VK. et al.,
“Heavy-chain antibodies in Camelidae; a
case of evolutionary innovation,” Immun
ogenetics. 54(1):39-47 (2002);およびNguyen
VK. et al., Immunology. 109(1):93-101 (2
003)を参照されたく、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)
【0112】
用語「ナノボディ」は、本明細書において使用される場合、重鎖抗体由来の重鎖可変領
域と2つの定常領域CH2およびCH3とからなる抗体を意味する。
【0113】
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、完全ヒト抗体、ヒ
ト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、またはウサギ抗体である。ある特定の実施形態にお
いて、本明細書において提供される抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、
または組換え抗体である。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗
体は、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。ある特定の実施
形態において、本明細書において提供される抗体はさらに、標識されてもよい。ある特定
の実施形態において、抗体またはその抗原結合性断片は、完全ヒト抗体であり、それは、
場合により、トランスジェニックラット、例えば内因性ラット免疫グロビン遺伝子の発現
が不活性化されたトランスジェニックラットによって産生され、かつJ遺伝子座欠失およ
びC-κ変異を有する組換えヒト免疫グロビン遺伝子座を有し、遺伝子操作された細胞(
例えば、CHO細胞)によっても発現され得る。
【0114】
用語「完全ヒト」は、抗体または抗原結合性断片に関して本明細書において使用される
場合、抗体または抗原結合性断片のアミノ酸配列が、ヒトまたはヒト免疫細胞によって産
生される抗体のアミノ酸配列に対応するか、非ヒト源、例えばヒト抗体レパートリーを利
用するトランスジェニック非ヒト動物などに由来するか、他のヒト抗体コード配列である
ことを意味する。
【0115】
用語「ヒト化」は、抗体または抗原結合性断片に関して本明細書において使用される場
合、非ヒト動物に由来するCDRと、ヒトに由来するFR領域と、適切であればヒトに由
来する定常領域とを含む抗体または抗原結合性断片を意味する。ヒト化抗体または抗原結
合性断片は、免疫原性が減少しているため、ある特定の実施形態において人の治療法とし
て有用である。ある特定の実施形態において、非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、マウス
、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、またはハムスターなどである。ある特定
の実施形態において、ヒト化抗体または抗原結合性断片は、非ヒトであるCDR配列を除
いて、実質的に全てヒト配列で構成される。
【0116】
用語「キメラ」は、抗体または抗原結合性断片に関して本明細書において使用される場
合、ある種に由来する重鎖および/または軽鎖の一部と、異なる種に由来する重鎖および
/または軽鎖の残りの部分とを有する抗体または抗原結合性断片を意味する。ある特定の
実施形態において、キメラ抗体は、ヒトに由来する定常領域と、非ヒト種、例えばマウス
またはラビットなどに由来する可変領域とを含み得る。
【0117】
用語「保存的置換」は、アミノ酸配列に関して本明細書において使用される場合、アミ
ノ酸残基を、同様の生理化学的性質の側鎖を有する異なるアミノ酸残基で置換することを
意味する。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、Met、
Ala、Val、Leu、およびIle)の間において、中性親水性側鎖を有する残基(
例えば、Cys、Ser、Thr、AsnおよびGln)の間において、酸性側鎖を有す
る残基(例えば、Asp、Glu)の間において、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば
、His、Lys、およびArg)の間において、または芳香族側鎖を有する残基(例え
ば、Trp、Tyr、およびPhe)の間において、行うことができる。当技術分野にお
いて既知のように、保存的置換は、通常、タンパク質の立体配座構造において著しい変化
を引き起こさず、したがって、タンパク質の生物活性を維持することができる。
【0118】
ポリヌクレオチド
ある特定の実施形態において、本開示の改変された腫瘍溶解性ウイルスは、PD-1に
特異的に結合する阻害抗体またはその抗原結合性断片をコードする第一異種ポリヌクレオ
チドと、CD137に特異的に結合する活性化抗体またはその抗原結合性断片をコードす
る第二異種ポリヌクレオチドとを含む。
【0119】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書において使用される場合、リボ
核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、または混合リボ核酸-デオキシリボ核酸
、例えば、DNA-RNAハイブリッドを意味する。ポリヌクレオチドまたは核酸は、一
本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAまたはDNA-RNAハイブリッドであり得る。
ポリヌクレオチドまたは核酸は、直鎖状または環状であり得る。ある特定の実施形態にお
いて、第一異種ポリヌクレオチドおよび第二異種ポリヌクレオチドは、ウイルスがDNA
ウイルスの場合には両方ともDNAであり、あるいは第一異種ポリヌクレオチドおよび第
二異種ポリヌクレオチドは、ウイルスがRNAウイルスである場合、両方ともRNAであ
る。ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドおよび第二異種ポリヌクレ
オチドは、両方とも二本鎖DNAである。
【0120】
第一異種ポリヌクレオチドおよび第二異種ポリヌクレオチドは、当技術分野において既
知の従来的方法の使用、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による合成および互換
性制御末端を有するウイルスゲノムとのライゲーションなどによって、改変された腫瘍溶
解性ウイルスに導入され得る。詳細については、例えば、Sambrook et al
. Molecular Cloning: A Laboratory Manual
(Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1
989))を参照されたく、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる
【0121】
ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドおよび第二異種ポリヌクレオ
チドは、ORFにおける欠失の位置に導入される。ある特定の実施形態において、第一異
種ポリヌクレオチドは、第二異種ポリヌクレオチドのすぐ上流またはすぐ下流にある。用
語「すぐ上流またはすぐ下流」は、本明細書において使用される場合、第一異種ポリヌク
レオチドおよび第二異種ポリヌクレオチドが、それらが0、1、2、3、4、5、6、7
、8、9、または10以下のヌクレオチドによってお互いに離間されて、ウイルスゲノム
上において非常に接近して位置されていることを意味する。例えば、上流のポリヌクレオ
チドの3’末端が、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以下のヌクレ
オチドによって下流のポリヌクレオチドの5’末端から離間されている場合、上流のポリ
ヌクレオチドの3’末端は、下流のポリヌクレオチドの5’末端にすぐ隣接している。あ
る特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドと第二異種ポリヌクレオチドとの
間にORFは存在しない。ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドと第
二異種ポリヌクレオチドとの間に制限部位が存在する。
【0122】
ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドは、第一抗体の第一重鎖およ
び第一軽鎖をコードする。ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドはさ
らに、第一重鎖の発現を駆動することができる第一プロモーターと、第一軽鎖の発現を駆
動することができる第二プロモーターとを含み、第一プロモーターおよび第二プロモータ
ーは、ヘッドトゥヘッド配向にある。
【0123】
ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドは、第一抗体の第一重鎖の可
変領域、リンカー、および第一抗体の第一軽鎖の可変領域をコードする。ある特定の実施
形態において、第一異種ポリヌクレオチドは、第一抗体の第一重鎖をコードするが、第一
抗体の第一軽鎖はコードしない。
【0124】
用語「ヘッドトゥヘッド配向」は、本明細書において使用される場合、2つのプロモー
ターがウイルスゲノム上においてお互いにすぐ近くに隣接しており、それらは反対の方向
にタンパク質発現を駆動することを意味する。具体例を図2に示す。
【0125】
ある特定の実施形態において、第二異種ポリヌクレオチドは、第二抗体の第二重鎖およ
び第二軽鎖をコードする。ある特定の実施形態において、第二異種ポリヌクレオチドはさ
らに、第二重鎖の発現を駆動することができる第三プロモーターと、第二軽鎖の発現を駆
動することができる第四プロモーターとを含み、第三プロモーターおよび第四プロモータ
ーは、ヘッドトゥヘッド配向にある。
【0126】
用語「プロモーター」は、本明細書において使用される場合、コード配列の転写を制御
することができるポリヌクレオチド配列を意味する。プロモーター配列は、RNAポリメ
ラーゼ認識、結合、転写開始に対して十分である特定の配列を含む。さらに、プロモータ
ー配列は、RNAポリメラーゼのこの認識、結合、および転写開始の活性を調節する配列
を含み得る。プロモーターは、自身と同じ核酸分子上に位置する遺伝子または自身とは異
なる核酸分子上に位置する遺伝子の転写に影響を及ぼし得る。プロモーター配列の機能は
、調整の性質に応じて、恒常的である、または刺激により誘発的であり得る。「恒常的」
なプロモーターは、本明細書において使用される場合、宿主細胞における遺伝子発現を連
続的に活性化するように機能するプロモーターを意味する。「誘発的」プロモーターは、
本明細書において使用される場合、ある特定の刺激の存在下において宿主細胞における遺
伝子発現を活性化するプロモーターを意味する。
【0127】
ある特定の実施形態において、本開示のプロモーターは、真核細胞プロモーター、例え
ば、CMV由来のプロモーター(例えば、CMV最初期プロモーター(CMVプロモータ
ー))、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(H
IV)プロモーター(例えば、HIV長末端反復(LTR)プロモーター、モロニーウイ
ルスプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス
(RSV)プロモーター、SV40初期プロモーター、ヒト遺伝子由来のプロモーター、
例えば、ヒトミオシンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター、ヒト筋クレアチン
プロモーター、ヒトメタロチオネインβ-アクチンプロモーター、ヒトユビキチンCプロ
モーター(UBC)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PGK)、ヒ
トチミジンキナーゼプロモーター(TK)、ヒト延長因子1アルファプロモーター(EF
1A)、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、E2F-1プ
ロモーター(E2F1転写因子1のプロモーター)、α-フェトタンパクのプロモーター
、コレシストキニンのプロモーター、癌胎児抗原のプロモーター、C-erbB2/ne
u腫瘍原のプロモーター、シクロオキシゲナーゼのプロモーター、CXC-ケモカイン受
容体4(CXCR4)のプロモーター、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)のプロモー
ター、ヘキソキナーゼII型のプロモーター、L-プラスチンのプロモーター、ムチン様
糖タンパク質(MUC1)のプロモーター、前立腺特異抗原(PSA)のプロモーター、
サバイビンのプロモーター、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP1)のプロモーター、
およびチロシナーゼのプロモーターなど、である。
【0128】
ある特定の実施形態において、本開示のプロモーターは、腫瘍特異的プロモーターであ
り得る。用語「腫瘍特異的プロモーター」は、本明細書において使用される場合、腫瘍細
胞において優先的にまたは排他的に遺伝子発現を活性化するように機能し、非腫瘍細胞ま
たは非腫瘍細胞において活性を有さない、または活性が低下する、プロモーターを意味す
る。腫瘍特異的プロモーターの具体例としては、これらに限定されるわけではないが、E
2F-1プロモーター、α-フェトタンパクのプロモーター、コレシストキニンのプロモ
ーター、癌胎児抗原のプロモーター、C-erbB2/neu腫瘍原のプロモーター、シ
クロオキシゲナーゼのプロモーター、CXCR4のプロモーター、HE4のプロモーター
、ヘキソキナーゼII型のプロモーター、L-プラスチンのプロモーター、MUC1のプ
ロモーター、PSAのプロモーター、サバイビンのプロモーター、TRP1のプロモータ
ー、およびチロシナーゼのプロモーターが挙げられる。
【0129】
ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドおよび第二異種ポリヌクレオ
チドは、それらが改変された腫瘍溶解性ウイルスの複製サイクルにおける同じ段階または
異なる段階で発現されるように構成される。例えば、2つのポリヌクレオチドは、ウイル
ス複製の初期段階において誘導された初期プロモーターによって両方とも駆動され得る、
あるいは、ウイルス複製の後期段階において誘導された後期プロモーターによって両方と
も駆動され得る、あるいは、一方は初期プロモーターによって駆動され、他方は後期プロ
モーターによって駆動される。
【0130】
ある特定の実施形態において、第一プロモーターおよび第二プロモーターは、同じであ
る、または異なる。ある特定の実施形態において、第一プロモーターおよび第二プロモー
ターは、両方とも後期プロモーターである。ある特定の実施形態において、後期プロモー
ターは、pSLである。
【0131】
ある特定の実施形態において、第三プロモーターおよび第四プロモーターは、同じであ
る、または異なる。ある特定の実施形態において、第三および第四は、両方とも初期およ
び後期プロモーターである。ある特定の実施形態において、初期および後期プロモーター
は、pSE/Lである。
【0132】
ある特定の実施形態において、改変された腫瘍溶解性ウイルスは、センス鎖の5’から
3’の方向において、インフレームで以下の要素:CD137に結合する抗体の軽鎖をコ
ードするポリヌクレオチド ― 第一初期および後期プロモーター ― 第二初期および
後期プロモーター ― CD137に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド
― PD-1に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド ― 第一後期プロ
モーター ― 第二後期プロモーター ― PD-1に結合する抗体の軽鎖をコードする
ポリヌクレオチド、を含む。
【0133】
ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドから発現される免疫チェック
ポイント阻害因子および第二異種ポリヌクレオチドから発現されるイムノアクティベータ
ーは、別々のタンパク質として発現される。換言すると、それらは、融合タンパク質とし
ては発現されず、お互いには接続されていない(共有結合的にも、リンカーによっても)
。ある特定の実施形態において、第一異種ポリヌクレオチドから発現される免疫チェック
ポイント阻害因子は、いかなる他のタンパク質とも融合されず、ならびに第二異種ポリヌ
クレオチドから発現されるイムノアクティベーターは、いかなる他のタンパク質とも融合
されない。
【0134】
ある特定の実施形態において、改変された腫瘍溶解性ウイルスは、第一異種ポリヌクレ
オチドおよび第二異種ポリヌクレオチドを除いて、免疫チェックポイント阻害因子または
イムノアクティベーターをコードするいかなる他の異種ポリヌクレオチドをも含まない。
ある特定の実施形態において、改変された腫瘍溶解性ウイルスは、第一異種ポリヌクレオ
チドおよび第二異種ポリヌクレオチドを除いて、異種ポリヌクレオチドをコードするいか
なる他のタンパク質をも含まない。
【0135】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、本開示において説明される改変された腫瘍溶解性ウイル
スと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0136】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書において使用される場合、十分に医学的な判
断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは併発
症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触しての使用に対して好適である、合理的なベネフ
ィット/リスク比に見合った、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を意味す
る。ある特定の実施形態において、薬学的に許容される化合物、材料、組成物、および/
または投薬形態は、規制機関(例えば、米食品医薬品局、中国食品医薬品局、または欧州
医薬品庁など)によって承認されているもの、または動物、より詳細にはヒト、における
使用に対して、一般的に認定されている薬局方(例えば、米国薬局方、中国薬局方、また
は欧州薬局方など)にリストされているものを意味する。
【0137】
本発明の医薬組成物における使用のための薬学的に許容される担体は、これらに限定さ
れるわけではないが、例えば、薬学的に許容される液体、ゲル、または固体担体、水性ビ
ヒクル(例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー液、等張ブドウ糖注射液、滅菌水注射
液、またはグルコースおよび乳酸塩によるリンガー液など)、非水性ビヒクル(例えば、
野菜起源の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、胡麻油、または落花生油など)、抗微
生物剤、等張剤(例えば、塩化ナトリウムまたはブドウ糖など)、緩衝液(例えば、リン
酸塩緩衝液またはクエン酸塩緩衝液など)、酸化防止剤(例えば、重硫酸ナトリウムなど
)、麻酔薬(例えば、塩酸プロカインなど)、懸濁化剤/分配剤(例えば、カルボキシメ
チルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピ
ロリドンなど)、キレート化剤(例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはE
GTA(エチレングリコール四酢酸)など)、乳化剤(例えば、ポリソルベート80(T
ween-80)など)、希釈剤、助剤、賦形剤、または非毒性補助剤、当技術分野にお
いて既知の他の成分、またはそれらの様々な組み合わせを含み得る。好適な成分は、例え
ば、充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝液、防腐剤、潤滑剤、風味剤、増粘剤、着色剤、また
は乳化剤を含み得る。
【0138】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、経口製剤である。経口製剤としては、こ
れらに限定されるわけではないが、カプセル剤、カシェ剤、丸薬、錠剤、トローチ剤(味
覚基剤としては、通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガント)、粉末剤、粒剤、また
は水性もしくは非水性の溶液剤もしくは懸濁剤、または油中水エマルションもしくは水中
油エマルション、またはエリキシル剤またはシロップ剤、または菓子錠剤(不活性基剤と
しては、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、あるいはショ糖またはアカシアなど)、お
よび/またはうがい薬およびその類似物が挙げられる。
【0139】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、無菌の水溶液、分散液、懸濁液、または
乳濁液などが挙げられる、注射製剤であり得る。全ての場合において、注射製剤は、無菌
でなければならず、かつ注射を容易にするために液体でなければならない。製造および貯
蔵の条件下において安定でなければならず、かつ微生物(例えば、細菌および菌類など)
の感染に対して抵抗性でなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオー
ル(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール
など)、ならびにそれらの好適な混合物および/または植物油などを含む、溶媒または分
散媒であり得る。注射製剤は、適切な流動性を維持しなければならず、それは、様々な方
法、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、界面活性剤の使用など、において維持
され得る。抗微生物汚染は、様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブ
タノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)の添加によって達成することが
できる。
【0140】
ある特定の実施形態において、単位用量の非経口製剤は、アンプル、バイアル瓶、また
は針を伴った注射器にパッケージされる。当技術分野において既知であり実施されている
ように、非経口投与のための全ての調製物は、無菌でなければならず、発熱性であっては
ならない。
【0141】
処置方法
別の態様において、本開示は、有効量の本開示の改変された腫瘍溶解性ウイルスまたは
本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む、腫瘍を処置する方法を提供する。
【0142】
用語「対象」は、本明細書において使用される場合、ヒトまたは非ヒト動物を意味する
。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。「対
象」は、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ、ウサギ、またはウマ)、また
は齧歯動物(例えば、ラットまたはマウス)、または霊長類(例えば、ゴリラまたはサル
)、または飼育動物(例えば、イヌまたはネコ)でもあり得る。「対象」は、雄または雌
であり得、さらに異なる年齢でもあり得る。ある特定の実施形態において、対象は、ヒト
である。ヒト「対象」は、コーカサス人、アフリカ人、アジア人、シュメール人、または
他の人種、あるいは異なる人種のハイブリッドであり得る。ヒト「対象」は、年配者、成
人、ティーンエイジャー、小児、または幼児であり得る。
【0143】
用語「腫瘍」は、本明細書において使用される場合、腫瘍性または悪性の細胞成長、増
殖、または転移によって媒介される任意の医学的状態を意味し、ならびに、固形腫瘍およ
び非固形腫瘍、例えば、白血病など、の両方を包含する。本開示において、「腫瘍」は、
用語「癌」、「悪性腫瘍」、「過増殖」、および「新生物」と相互互換的に使用される。
用語「腫瘍細胞」は、明記されない限り、用語「癌細胞」、「悪性細胞」、「過増殖細胞
」、および「新生細胞」と相互互換可能である。ある特定の実施形態において、腫瘍は、
頭頚部腫瘍、乳房腫瘍、直腸結腸腫瘍、肝臓腫瘍、膵臓腺癌、胆嚢および胆管腫瘍、卵巣
腫瘍、子宮頚部腫瘍、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺腫瘍、腎細胞癌種、膀胱腫瘍、前立腺腫
瘍、骨腫瘍、中皮腫、脳腫瘍、軟部組織肉腫、子宮腫瘍、甲状腺腫瘍、上咽頭癌、および
黒色腫からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、腫瘍は固形腫瘍である
。ある特定の実施形態において、腫瘍は、黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌種、ホジキン
リンパ腫、頭頚部の扁平上皮癌、膀胱癌、結直腸癌、または肝細胞癌である。ある特定の
実施形態において、腫瘍は、以前の治療(例えば、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポ
イント阻害因子、および/またはイムノアクティベーターの別々の投与)に対して難治性
であった。
【0144】
状態を「処置すること」または状態の「処置」なる用語は、本明細書において使用され
る場合、状態を予防または軽減すること、状態の発症または進行速度を鈍化すること、状
態が進行するリスクを減らすこと、状態に関連する症状の進行を予防することまたは遅延
させること、状態に関連する症状を減じることまたは終わらせること、状態の完全なまた
は部分的な改善を生じさせること、状態を治療すること、あるいはそれらのいくつかの組
み合わせ、を包含する。腫瘍に関連する場合、「処置すること」または「処置」は、新生
細胞または悪性細胞の成長、増殖、または転移を阻害することまたは鈍化させること、新
生細胞または悪性細胞の成長、増殖、または転移の進行を予防することまたは遅延させる
こと、あるいはそれらのいくつかの組み合わせを意味し得る。腫瘍に関連する場合、「処
置すること」または「処置」は、腫瘍の全てまたは一部を根絶させること、腫瘍の成長お
よび転移を阻害することまたは鈍化させること、腫瘍の進行を予防することまたは遅延さ
せること、あるいはそれらのいくつかの組み合わせを包含する。
【0145】
改変された腫瘍溶解性ウイルスおよび医薬組成物は、当技術分野において既知の任意の
好適な経路、例えば、これらに限定されるわけではないが、非経口、経口、経腸、頬側、
経鼻、局所、経直腸、経膣、経粘膜、上皮、経皮、真皮、点眼、経肺、および皮下投与経
路を介して投与され得る。ある特定の実施形態において、投与の経路は、局所である。あ
る特定の実施形態において、投与の経路は、腫瘍内注入である。
【0146】
ある特定の実施形態において、改変された腫瘍溶解性ウイルスおよび医薬組成物は、治
療有効投与量において投与される。用語「治療有効投与量」は、本明細書において使用さ
れる場合、対象の疾患または症状を改善または排除することができる薬物の量、または疾
患または症状の発生を予防的に阻害または予防することができる薬物の量を意味する。治
療有効量は、対象における1つまたは複数の疾患または症状をある特定の程度にまで改善
する薬物の量;疾患または症状の原因に関連する1つまたは複数の生理学的または生化学
的パラメーターを部分的にまたは完全に正常な状態に回復することができる薬物の量;お
よび/または疾患または症状が生じる可能性を減じることができる薬物の量であり得る。
【0147】
改変された腫瘍溶解性ウイルスおよび医薬組成物の治療有効投与量は、当技術分野にお
いて既知の様々な要因、例えば、体重、年齢、既存の医療状態、現在受けている治療、対
象の健康状態、ならびに薬物相互作用の強度、アレルギー性、高アレルギー性および副作
用、ならびに投与の経路、ならびに疾患の進行の程度、などに依存する。当業者(例えば
、医師または獣医)は、これらのおよび他の状態または要件に従って投与量を減少または
増加させ得る。
【0148】
ある特定の実施形態において、改変された腫瘍溶解性ウイルスおよび医薬組成物は、約
10PFUから約1014PFU(例えば、約10PFU、約2×10PFU、約
5×10PFU、約10PFU、約2×10PFU、約5×10PFU、約10
PFU、約2×10PFU、約5×10PFU、約10PFU、約2×10
FU、約5×10PFU、約10PFU、約2×10PFU、約5×10PFU
、約10PFU、約2×10PFU、約5×10PFU、約1010PFU、約2
×1010PFU、約5×1010PFU、約1011PFU、約2×1011PFU、
約5×1011PFU、約1012PFU、約2×1012PFU、約5×1012PF
U、約1013PFU、約2×1013PFU、約5×1013PFU、または約10
PFU)の治療有効投与量において投与され得る。ある特定のこれらの実施形態におい
て、改変された腫瘍溶解性ウイルスおよび医薬組成物は、約1011PFU以下の投与量
において投与される。ある特定のこれらの実施形態において、投与量は、5×1010
FU以下、2×1010PFU以下、5×10PFU以下、4×10PFU以下、3
×10PFU以下、2×10PFU以下、または10PFU以下である。特定の投
与量は分割することができ、ある間隔で分割された複数回、例えば、1日1回、1日2回
以上、1か月に2回以上、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1か月に1回、
または2か月以上に1回など、において投与することができる。ある特定の実施形態にお
いて、投与される投与量は、処置の過程において変わり得る。例えば、ある特定の実施形
態において、最初に投与される投与量は、その後に投与される投与量よりも多くすること
ができる。ある特定の実施形態において、投与される投与量は、投与対象の反応に応じて
、処置の過程において調節される。
【0149】
用語「PFU」は、本明細書において使用される場合、プラーク形成単位を意味し、そ
れは、プラークを形成することができる粒子の数の指標である。
【0150】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調節してもよい
。例えば、1回用量を投与してもよく、または複数に分割された用量を、時間経過におい
て投与してもよい。
【0151】
組み合わせ
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、1種または複数種の他の薬物と組み合わ
せて使用してもよい。ある特定の実施形態において、組成物は、少なくとも1種の他の薬
物を含む。
【0152】
ある特定の実施形態において、他の薬物は、抗腫瘍剤である。腫瘍に対して活性である
ことが知られている任意の薬剤は、抗腫瘍剤として使用してもよい。ある特定の実施形態
において、抗腫瘍剤は、化学薬剤、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、またはそ
れらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0153】
ある特定の実施形態において、抗腫瘍剤は、化学薬剤である。抗腫瘍化学薬剤の具体例
としては、これらに限定されるわけではないが、マイトマイシンC、ダウノルビシン、ド
キソルビシン、エトポシド、タモキシフェン、パクリタキセル、ビンクリスチン、および
ラパマイシンが挙げられる。
【0154】
ある特定の実施形態において、抗腫瘍剤は、ポリヌクレオチドである。抗腫瘍ポリヌク
レオチドの具体例としては、これらに限定されるわけではないが、アンチセンスオリゴヌ
クレオチド、例えば、bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド、クラステリンアンチ
センスオリゴヌクレオチド、およびc-mycアンチセンスオリゴヌクレオチドなど、な
らびにRNA干渉ができるRNA(低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンR
NA(shRNA)、およびマイクロ干渉RNA(miRNA)が挙げられる)、例えば
、抗VEGF siRNA、shRNA、またはmiRNAなど、抗bcl-2 siR
NA、shRNA、またはmiRNA、ならびに抗クローディン-3 siRNA、sh
RNA、または、miRNAが挙げられる。
【0155】
ある特定の実施形態において、抗腫瘍剤は、ペプチドまたはタンパク質である。抗腫瘍
ペプチドまたはタンパク質の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、抗体
、例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、エドレコロマブ、アレムツズマブ、ダクリズ
マブ、ニモツズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、およびエドレコロマブなど、タン
パク質治療薬、例えば、エンドスタチン、アンギオスタチンK1-3、ロイプロリド、性
ホルモン結合性グロブリン、およびビクニンなど、が挙げられる。
【0156】
医学的使用
別の態様において、本開示は、腫瘍を処置するための医薬の製造における、本開示の改
変された腫瘍溶解性ウイルスまたは本開示の医薬組成物の使用を提供する。
【0157】
別の態様において、本開示は、腫瘍の処置における使用のための、本開示の改変された
腫瘍溶解性ウイルスまたは本開示の医薬組成物を提供する。
【実施例0158】
下記の実施例は、本開示の理解を支援するために詳細に説明され、いかなる点において
も、その後に続く特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を制限すると解釈され
るべきではない。
【0159】
[実施例1]ウイルス構築
出発材料のワクシニアウイルスのWR株をATCC(www.atcc.org: V
R-1354)から得た。関与する同義遺伝子により、段階的な遺伝子組換え操作アプロ
ーチにおいてWR-GS-600を構築した。要するに、第一ステップでは、改変された
pSEM-1ベクター(Rintoul et al., 2011)によってWR D
NAを組み換えることにより、TK遺伝子座にマーカー/選択遺伝子を挿入した。これは
、さらなる遺伝子操作のために、野生型の親との容易な区別を可能にする。その後、TK
を完全に欠失させて抗体配列を挿入するために、J1RおよびJ3Rの隣接した配列を有
し、抗ヒトPD-1(抗ヒトPD-1のアミノ酸配列および抗ヒトPD-1をコードする
核酸配列を、それぞれ、図15および16に示す)および抗ヒト4-1BB(抗ヒト4-
1BBのアミノ酸配列および抗ヒト4-1BBをコードする核酸配列を、それぞれ、図1
7および18に示す)をコードする組換えプラスミドを、WRを感染させたU2OS細胞
にトランスフェクトした。図1は、WR-GS-600におけるチミジンキナーゼ(TK
)欠失、抗PD-1抗体および抗4-1BB抗体挿入の構造を示しており、図3は、WR
-GS-600を生成する組換えステップの概略図を示している。
【0160】
組換え反応を、特徴付けられたマスターワーキングセルバンクからのU2OS細胞を使
用して行った。U2OS細胞を使用して3ラウンドのプラーク精製を行い、HeLa細胞
を使用して1ラウンド行った。その後、選択された最終プラークがクローナルであること
を確実にするために、0.65μmフィルターを使用した濾過ステップを組み入れた。詳
細な情報を下記の表1に記載する。
【0161】
【表1】
【0162】
さらなるプラーク精製の後、免疫蛍光およびフローサイトメトリーによって抗体発現を
モニターした。U2OSおよびHeLa細胞を、別々に、模擬感染させるか(すなわち、
ウイルスを伴わないコントロール溶液によって感染させる)、抗体発現を有するコントロ
ールウイルスに感染させるか、WR-GS-600の精製クローンに感染させた。
【0163】
最後に、検証されたDNA配列と高レベルの抗体発現を有する唯一のクローンを、2つ
のローラーボトル(1700cm)において増殖させた。細胞をペレット化し、次いで
、pH9.0において1mMTrisに再懸濁させた。1ラウンドの凍結融解(-80/
37度)の後、混合物を再びペレット化した。上清を12の極低温管に1mlずつ分取し
た(プレMaster Virus Bank)。ペレット化した細胞を、pH9.0に
おいて3mlの1mMTrisに再懸濁させ、凍結/融解のさらなるラウンドを行った。
ペレット化した後に上清を収集し、次いで、ベンゾナーゼ処理を終夜行い、スクロース精
製を行った。プレMVBおよび精製したベンゾナーゼの力価を、U2OS細胞を使用して
特定した。力価は、合計5mLのストックに対して1.0~2.1×10PFU/mL
の範囲であることが見いだされ、それは、親WRウイルスと同様である。
【0164】
抗ヒトPD-1をコードする遺伝子および抗ヒト4-1BBをコードする遺伝子のどち
らもWR-GS-600に挿入されていることを除いて、WR-GS-600と同じプロ
トコルによって、WR-GS-610(抗ヒト4-1BBをコードする遺伝子を挿入)お
よびWR-GS-620(抗ヒトPD-1をコードする遺伝子を挿入)を製造した。図2
は、WR-GS-620におけるTK欠失および抗-4-1BB抗体挿入の構造を示して
おり、図4は、WR-GS-620に対する組換えステップの概略図を示している。
【0165】
[実施例2]WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620のキ
ャラクタリゼーション
これらの新規のウイルスの遺伝子操作のプロセスの際、それらのゲノムの完全性および
タンパク質発現を、詳細にモニターした。
【0166】
PCR、配列決定、および制限消化
ウイルス調製物をベンゾナーゼエンドヌクレアーゼによって処理し、スクロースによっ
てペレット化し、その後にプロテイナーゼKおよび界面活性剤処理を行い、次いでDNA
を抽出し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出を使用して回収し、エ
タノール沈殿を行うことで、精製されたスクロースクッションからウイルスのゲノムDN
Aを単離した。
【0167】
ウイルスゲノムが、設計された抗体配列を含む予想された配列を有することを確実なも
のとするために、組換え領域内のものおよび遺伝子操作セクションの外側のものを含む、
一連のプライマーを設計した。ウイルス(WR-GS-600、WR-GS-610、お
よびWR-GS-620)の同一性を、qPCR(TaqMan)によって確認した。P
CRに使用したプライマーを表2に示す。ウイルスゲノムにおけるプライマーの位置を図
5から7に示すが、ここで、PCRのバンドの予想されるサイズを図5から7に表す。W
R-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620のゲノムDNAのP
CR増幅の結果を図14に示す。
【0168】
TK欠失も、サンガー配列決定法によって検証した。図8、9、10は、抗体コード遺
伝子の挿入後における、WRからの遺伝子変化を示している。WR-GS-600におい
て抗hu4-1BBおよび抗huPD-1を発現するために設計されたDNA配列に対す
る、WR-GS-600ウイルスゲノムのサンガー配列決定のアラインメントを実施した
。アラインメントは、WR-GS-600のウイルスゲノムが設計されたDNA配列と同
一であることを示した。
【0169】
【表2】
【0170】
制限酵素HindIIIは、WRのTK領域の周りを切断し、5004bpのバンドを
生じさせた。TKが欠失して、抗huPD-1および/または抗hu4-1BB抗体がW
R-GS-600に挿入される場合、2つの余分なHindIII制限酵素認識部位が導
入され、それらは、それぞれ1638bp、2548bp、および4666bpに3つの
バンドを生じる。WR-GS-620では、野生型WRの5004bpのバンドは、19
22bpおよび4666bpの2つのバンドに置き換えられた。制限酵素消化パターンに
おけるこれらの違いは、これらのウイルスの迅速な同定のために用いることができる。結
果を表3に示す。
【0171】
【表3(1)】
【0172】
免疫蛍光
ヒト抗体のトランスジェニック発現を、ヒトIgGに対する免疫蛍光によって検証した
図11を参照されたい)。ウイルス感染U2OS細胞を染色するために、FITCコン
ジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Invitrogen,、Cat #62-8
411)を使用した。
【0173】
フローサイトメトリー分析
別々に、模擬感染させた、コントロールWRウイルス(WR-mCherry)を感染
させた、WR-GS-600を感染させた、およびWR-GS-620を感染させた、H
eLa細胞のフローサイトメトリー分析を行うことにより、WR-GS-600およびW
R-GS-620を感染させた場合におけるヒト抗体の特異的発現を確認した。ウエスタ
ンブロットにおいて感染させた上清から検出されたヒトIgGは、ヒト抗体の発現のさら
なる証拠を提供した。
【0174】
ウエスタンブロット法
感染させた上清からヒトIgGを検出するウエスタンブロットは、抗体発現のさらなる
証拠を提供した。図12および13は、ウエスタンブロットを使用することにより、細胞
溶解物および上清を使用した場合の組換えウイルス(WR-GS-600、WR-GS-
610、およびWR-GS-620)による抗PD-1抗体および抗-41-BB抗体の
発現を示している。
【0175】
PD-1結合ELISAを使用する発現された抗PD-1抗体の機能的キャラクタリゼー
ション
組換えヒトPD-1Fcキメラ(R&D Systems、ミネアポリス、MN)を、
0.2mg/mlまで、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むダルベッコのリ
ン酸緩衝食塩水(DPBS)に再懸濁させ、0.03μg/mlの最終濃度までDPBS
で希釈する。Nunc-Immuno Maxisorp 96ウェルプレートを、ウェ
ルあたり0.1mLにおいて組換えPD-L1-Fcキメラでコーティングし、非特異的
結合コントロールに対しては空のウェルのままで、4℃で終夜インキュベートする。コー
ティング溶液を除去し、プレートを洗浄緩衝液(DPBS中における0.05%のTwe
en-20、各回において1ウェルあたり200μL)で洗浄する。ブロッキング緩衝液
(5%の脱脂粉乳、DPBS中における0.05%のTween-20、各回において1
ウェルあたり200μL)を全てのウェルに加え、混合しながら4℃で1時間インキュベ
ートする。ブロッキング緩衝液を除去し、プレートを洗浄緩衝液で洗浄する。WR-GS
-620上清およびWR-GS-600上清をDPBSで段階希釈し、希釈した上清(ウ
ェルあたり100μL)をプレートに加える。プレートを室温で1.5時間インキュベー
トする。抗体を含有する上清溶液を除去し、プレートを洗浄緩衝液で洗浄する。ホースラ
ディッシュペルオキシダーゼで標識したヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)特異的F(a
b’)抗体(Jackson Immunoresearch、ウェストグローブ、P
A)を、DPBSで希釈し、ウェルあたり100μLをプレートに加える。プレートを室
温で1時間インキュベートし、洗浄緩衝液で洗浄する。ウェルあたり100μLのSur
eBlue TMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard &
Perry Labs ゲイザースバーグ、MD)を加え、室温で20分間インキュベー
トする。同量の2MのHSOを加えることによって反応を停止させ、Molecul
ar Devices Spectra Max 340(Molecular Dev
ices、サニーベル、CA)において450nmの吸光度を読み取る。
【0176】
分析のため、MOI0.05で48時間感染させたU2OSからの上清を使用し、その
結果を図19に示す。これらの結果は、GS-620において発現した抗PD-1抗体が
、PD-1に特異的に結合することができ、その結合が濃度依存性であることを示唆して
いる。
【0177】
4-1BB結合ELISAを使用する発現された抗-4-1BB抗体の機能的キャラクタ
リゼーション
ヒト4-1BBIgG1Fcキメラ(R&D Systems、ミネアポリス、MN)
を、0.2mg/mlまで、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むダルベッコ
のリン酸緩衝食塩水(DPBS)によって再懸濁させ、0.03μg/mlの最終濃度ま
でDPBSで希釈する。Nunc-Immuno Maxisorp 96ウェルプレー
トを、ウェルあたり0.1mLにおいて組換え4-1BBキメラでコーティングし、非特
異的結合コントロールに対しては空のウェルのままで、4℃で終夜インキュベートする。
4-1BB溶液を除去し、プレートを洗浄緩衝液(DPBS中における0.05%のTw
een-20)で洗浄する。ブロッキング緩衝液(5%の脱脂粉乳、DPBS中における
0.05%のTween-20)を全てのウェルに加え、混合しながら4℃で1時間イン
キュベートする。ブロッキング緩衝液を除去し、プレートを洗浄緩衝液で洗浄する。WR
-GS-610およびWR-GS-600上清の段階希釈をDPBSにおいて調製し、希
釈した上清をプレートに加える。プレートを室温で1.5時間インキュベートする。抗体
を含有する上清溶液を除去し、プレートを洗浄緩衝液で洗浄する。ホースラディッシュペ
ルオキシダーゼで標識したヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)特異的F(ab’)抗体
(Jackson Immunoresearch、ウェストグローブ、PA)を、DP
BSで希釈し、プレートに加える。プレートを室温で1時間インキュベートし、洗浄緩衝
液で洗浄する。SureBlue TMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質(Kir
kegaard&Perry Labs ゲイザースバーグ、MD)を加え、室温で20
分間インキュベートする。同量の2MのHSOを加えることによって反応を停止させ
、Molecular Devices Spectra Max 340(Molec
ular Devices、サニーベル、CA)において450nmの吸光度を読み取る
【0178】
分析のため、MOI0.05で48時間感染させたU2OSからの上清を使用し、結果
図20に示す。これらの結果は、GS-600およびGS-610において発現した抗
4-1BB抗体が、4-1BBに特異的に結合することができ、その結合が濃度依存性で
あることを示唆している。
【0179】
上記の試験は、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620
が十分に構成されており、機能的な対応する抗体(WR-GS-600およびWR-GS
-620に対する抗PD1抗体、WR-GS-600およびWR-GS-610に対する
抗-4-1BB抗体)が発現することができることを示している。
【0180】
[実施例3]WR-GS-610およびWR-GS-620組換えウイルスのインビボ研

以下の研究は、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620
組換えウイルスがマウスに安全かどうか、および組換えウイルスがマウスにおいて腫瘍を
標的化し腫瘍に入り込むことができるか否かを特定するために実施される。送達経路は、
静脈投与(IV)または腹腔内投与(IP)である。全ての動物実験は、地元の動物実験
委員会のガイドラインに従って実施した。
【0181】
CT26、MC38、HT-29、およびHCT-116細胞株でのWR-GS-600
、WR-GS-610、およびWR-GS-620の細胞傷害性の測定(細胞致死データ

インビトロ細胞傷害性試験のために、結直腸癌細胞株CT26-LacZ(マウス)、
MC38-Luc(マウス)、HT-29-Luc(ヒト)およびHCT-116-Lu
c(ヒト)を使用した。WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-
620を、それぞれ3つの異なるMOI、すなわち、0.01MOI(3E2PFU)、
0.1MOI(3E3PFU)および1.0MOI(3E4PFU)となるように調製し
た。測定は、3つの異なる時点、すなわち、24時間、48時間、および72時間の時点
において実施した。
【0182】
細胞調製:最初に、各細胞株を2つの15cmの組織培養皿に蒔き、75~90%の間
のサブコンフルエントとなるまでインキュベートした。細胞を洗浄し、当業者に既知の従
来法を用いてカウントした。96ウェル平底プレートの各ウェルに、約3E4の細胞を蒔
いた。各細胞タイプは、9つの異なる実験条件のための9枚のプレートを必要とする。
【0183】
ウイルス希釈調製:ウイルスを氷上において解凍し、その後、完全な解凍を確実にする
ために、37℃の水浴において解凍した。解凍されたウイルスを、2回、その都度20秒
間、最大スピードでボルテックスした。WR-GS-600、WR-GS-610、およ
びWR-GS-620ウイルスを、3つの異なる濃度、すなわち、MOI1.0、MOI
0.1、およびMOI0.01となるように調製した。50μLのウイルスを、対応する
ウェルに加え、その後、混合するために96ウェル平底プレートを4象限において穏やか
に揺動した。プレートを、5%のCOを補充した37℃においてインキュベートした。
MOI1.0は、3E4PFU/50μL、または600PFU/μL、または6E5P
FU/mLに対応する。MOI0.1は、3E3PFU/50μL、または60PFU/
μL、または6E4PFU/mLに対応する。MOI0.01は、3E2PFU/50μ
L、または6PFU/μL、または6E3PFU/mLに対応する。
【0184】
当業者に既知の従来法を使用して、上記において言及した4つの細胞株におけるウイル
スの細胞傷害性を検出するために、アラマーブルー〔Alamar Blue〕を使用した各条件に
対して6回の反復試験によって細胞生存率を計算した。図21~23は、3つの異なる濃
度および3つの異なる時点において、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、
およびWR-GS-620の処理による上述した4つの細胞タイプの細胞生存率に、有意
な差が無いことを示している。このことは、ワクシニアウイルス(WR)ゲノム中への、
チェックポイント阻害因子抗体のためのポリヌクレオチド配列の組み込みが、ウイルスの
細胞傷害性を変更しないことを示唆している。図21~23はさらに、ウイルスの処理に
関して、HT-29およびHCT-116細胞株の細胞生存率が、CT-26およびMC
-38よりも著しく減少したことを示しており、これは、ヒト癌細胞が、ウイルス感染お
よびウイルス殺傷性に対してより敏感であることを示している。
【0185】
ウイルスベクターの生体内分布の測定
組織のホモジナイズ:
5つの異なる群における25Balb/Cマウス(Jackson Lab)を一度に
1匹犠牲にした。消毒スプレーの後、マウスを開腹し、そこから、腫瘍、肺、脾臓、肝臓
、脳、または卵巣のいずれかの50~100mgを切除した。残りの組織は、OCTによ
って瞬間凍結させた。切除した組織を秤量し、2.0mLのエッペンチューブに入れた。
組織試料を-80℃で終夜凍結させた。翌日、当業者に既知の方法において、組織試料を
ホモジナイズした。簡潔には、2つのオートクレーブ処理した5mmのTissueLy
serビーズを各チューブに分注した。合計で48本のチューブをTissueLyse
rに入れた。28Hzにおいて1分間、ホモジナイズを実施した。この後、アダプターの
差し込みを180°反転させ、一様なホモジナイズを達成するためにさらに1分間、均質
化を行った。この後、500μLのDMEMを各試料に加えた。チューブを、3500g
において2分間遠心分離処理した。上清を1.5mLのエッペンチューブに移し、力価測
定まで-80℃において貯蔵した。
【0186】
力価測定のための24ウェルフォーマット:
ウイルス価測定のために、U2OS細胞を使用し、ならびに10E2 PFU/mL
JX594ストック(a)および31.0 PFU/mL JX594ストック(b)を
調製して、ポジティブコントロールとして使用した。
【0187】
5種の組織、すなわち、脳(B)、肝臓(V)、肺(L)、卵巣(O)、および脾臓(
S)に対して、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-620の
各ウイルスの3つの濃度を調製した:(1)感染のための純粋な150μL;(2)21
2μLのDMEM中に(1)からの98μLを入れ、ミックスし、感染のための150μ
Lを取る;および(3)212μLのDMEM中に(2)からの98μLを入れ、ミック
スし、感染のための150μLを取る。
【0188】
コントロール(C)に対して、U2OS細胞を、(1)150μLの10E2 PFU
/mL JX594ストック(a);(2)150μLの31.0 PFU/mL JX
594ストック(b);または(3)150μLのDMEM、で処理した。
【0189】
腫瘍(T)に対して、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR-GS-
620の各ウイルスに対して6つの濃度を調製した:(1)感染のための純粋な150μ
L;(2)212μLのDMEM中に(1)からの98μLを入れ、ミックスし、感染の
ための150μLを取る;(3)212μLのDMEM中に(2)からの98μLを入れ
、ミックスし、感染のための150μLを取る;(4)212μLのDMEM中に(3)
からの98μLを入れ、ミックスし、感染のための150μLを取る;(5)212μL
のDMEM中に(4)からの98μLを入れ、ミックスし、感染のための150μLを取
る;および(6)212μLのDMEM中に(5)からの98μLを入れ、ミックスし、
感染のための150μLを取る。
【0190】
24ウェルプレートを、図24に示されるようにセットアップした。上記組織のホモジ
ナイズのセクションにおいて説明した方法を使用して、1匹のマウスから調製した腫瘍、
肺、脾臓、肝臓、脳、および卵巣の細胞を各プレートに蒔いた。
【0191】
上記において言及したように、25匹のマウスを5つの群に分け、各群は、5匹のマウ
スを有し、すなわち、5つのプレートを有した。群1における腫瘍、肺、脾臓、肝臓、脳
、および卵巣の細胞にWR-GS-610を感染させ、群2ではWRを感染させ、群3で
はWR-GS-620を感染させ、群4ではWR-GS-600を感染させ、群5におけ
る全ての細胞(ポジティブコントロールのウェル細胞を除く)を、ネガティブコントロー
ルとして、製剤緩衝液(FB)によって処理した。当該製剤緩衝液は、pH値7において
、30mMのTris、10%のショ糖、および150mMのNaClを含む。図25
、WR-GS-610ウイルスプラークが、腫瘍細胞のウェルのみに存在すことを示して
いる。図26は、WRウイルスプラークが、腫瘍細胞のウェルと卵巣細胞のウェルの両方
に存在することを示している。図27は、WR-GS-620ウイルスプラークが、腫瘍
細胞のウェルと卵巣細胞のウェルの両方に存在することを示している。図28は、WR-
GS-600ウイルスプラークが、腫瘍細胞のウェルのみに存在することを示している。
図29は、群5において腫瘍細胞のウェルにウイルスプラークが存在しないことを示して
いる。これらのデータは、WR-GS-600およびWR-GS-610は、WR-GS
-620およびWRと比較して、より特異的に腫瘍を標的化することができることを示唆
している。
【0192】
注入された皮下腫瘍および他の組織におけるインビボウイルス分布
目標:ウイルスベクターの安全性および生体内分布
研究プロトコル
i.35Balb/Cマウス(Charles River)を注文する。マウスは、
5つの処置群、すなわち、PBSコントロール(FB)、ならびにWR、WR-GS-6
00、WR-GS-610、およびWR-GS-620の群、に分けられる。
ii.腫瘍群の腫瘍が5mmのサイズに達したとき、処置を開始する。
iii.尾静脈注入によるウイルスの3回の注入(1日目、4日目、7日目に計画)
iv.マウスの体重と健康状態をモニターする。
v.9日目に、マウスを犠牲にし、脳、肺、肝臓、卵巣、脾臓から組織を採取する。U
2OS細胞におけるプラークアッセイによって、異なる組織におけるワクシニア力価を特
定する。
【0193】
下記の表3~5は、処置群、処置スケジュール、および麻酔、エンドポイントおよび安
楽死をまとめたものである。
【0194】
【表3(2)】
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
データは、群あたり5匹のマウスの平均を取ることによって提示した。図30~32は
、WR-GS-600およびWR-GS-610は、むしろ腫瘍に存在し、卵巣、脳、脾
臓、肝臓、および肺では、WR-GS-600およびWR-GS-610ウイルスはほん
のわずかしか認められなかったことを示している。対照的に、腫瘍内注入の後、大量のW
R-GS-620ウイルスが、腫瘍、卵巣、脳、脾臓、肝臓、および肺において観察され
た。これらのデータは、WR-GS-600およびWR-GS-610が、WR-GS-
620よりも非常に高い腫瘍標的化特異性を有することを裏付けている。その上、図30
~32の棒グラフにおける第二バーおよび第三バーは、WR-GS-600およびWR-
GS-610に対する組織1グラムあたりのPFUの数値が、卵巣(WR-GS-610
は、WR-GS-600よりわずかに高い)、脳、脾臓、肝臓、および肺において同様で
あり、WR-GS-600に対する腫瘍組織1グラムあたりのPFUの数値が、WR-G
S-610より約3倍高いことを示している。このことは、他の細胞にWR-GS-60
0およびWR-GS-610を同様に感染させた場合、WR-GS-600の方がWR-
GS-610よりも強く腫瘍に感染できることを示唆している。
【0198】
以前の研究は、ワクシニアウエスタンリザーブ株が、正常なマウスの臓器、特に卵巣に
感染することができることを示しており(Zhao Y. et al, Viral
Immunology, 2011, 24, 387)、これは、図31に示された結
果に一致する。
【0199】
まとめると、これらのデータは、腫瘍溶解性ウイルス、例えばWRなどへの免疫チェッ
クポイント阻害因子をコードする第一異種ポリヌクレオチドおよびイムノアクティベータ
ーをコードする第二異種ポリヌクレオチドの組み込みは、結果として、腫瘍標的化および
感染の相乗効果を生じ、そうでなければ、そのような相乗効果は、野生型腫瘍溶解性ウイ
ルス、または第一異種ポリヌクレオチドのみまたは第二異種ポリヌクレオチドのみを有す
る改変された腫瘍溶解性ウイルスによっては達成できないことを示唆している。
【0200】
異なるウイルス感染の後のCT-26マウス腫瘍モデルにおける腫瘍サイズの変化の測定
25Balb/Cマウス(Jackson Lab)に、CT26腫瘍を移植した(C
T-26 LacZ 5E6細胞、SG、右脇腹)。マウスをさらに、5つの処理群:製
剤緩衝液(剤)(FB)、WR、WR-GS-600、WR-GS-610、およびWR
-GS-620、に分けた。腫瘍群の腫瘍が5mmのサイズに達したとき、処理を開始す
る。1E7PFUの異なるウイルスを、1日目、4日目、および7日目に腫瘍内に注入し
、マウスの体重および健康状態をモニターした。腫瘍成長の後、ノギスによって腫瘍サイ
ズを測定した。
【0201】
腫瘍サイズ変化を記録し、結果を図33にまとめるが、ここで、x日目の腫瘍の体積変
化%は、1日目の腫瘍の体積とx日目の腫瘍の体積とを比較することによって計算される
図33は、ウイルス注入後の1日目、4日目、および7日目に、WR、WR-GS-6
00、WR-GS-610、およびWR-GS-620で処理した場合の腫瘍体積サイズ
の増加は、製剤緩衝液(FB)で処理した場合より著しく小さいことを示しており、それ
は、上記において言及したウイルスのインビボでの腫瘍阻害効果を示唆している。
【0202】
同系マウスモデルにおける有効性の測定
Balb/Cマウスにおける皮下CT-26LacZ腫瘍モデルを調製した。1E7の
異なるウイルスを、1日目、3日目、および7日目に尾静脈注入によって注入し、マウス
の体重および健康状態をモニターした。エンドポイントを、腫瘍>1,700mmに設
定し、31日目に研究を終了した。マウス生存の結果を図34に示す。
【0203】
異なるウイルス感染後のヒト化HT-29-Luc皮下腫瘍モデルの腫瘍サイズ変化の測

当該実験を、以下のように簡単に説明する。
【0204】
1日目:30 Rag2 -/-IL2Rgヌルマウス(Jackson Lab)
を注文し、HT-29腫瘍を移植する(HT-29 Luc 5E6細胞、SQ、右脇腹
)。
【0205】
7日目:腫瘍成長をIVISチェックする。
【0206】
8日目:静脈内注入により5.8E6ヒトPBMC IPを投与する。
【0207】
14日目:群のIVIS割り当て。
【0208】
15日目:1E7 IT処理。
【0209】
18日目:IVISおよび1E7 IT処理。
【0210】
24日目:IVIS。
【0211】
ヒト末梢血単核細胞移植の確認
処理したマウスを顎下放血させ、100μLの血液を採取し、ナトリウムヘパリンに加
えた。赤血球を溶解させ、hCD45、CD3、CD8、およびCD4に対して染色する
蛍光結果をLSR Fortessaにおいて読み取り、それを図35および36にまと
めており、それは、ヒト末梢血単核細胞が首尾よく免疫不全マウスに移植されていること
を裏付けている。
【0212】
ウイルス感染後の腫瘍体積変化を図37および38にまとめる。図37は、コントロー
ル群と比較して、WR-GS-600で処理したマウスは、WR-GS-610、WR-
GS-620、またはWRで処理したマウスと比較して、腫瘍体積において最少の増加を
示すことを示している。より興味深いことに、WR-GS-600を感染させた後のマウ
スは、HT-29-Luc注入後32日目において、腫瘍サイズはあまり増加しておらず
、WR-GS-600処理の8日目からは減少さえしている。図38は、WR-GS-6
00およびWR-GS-610より高いWRおよびWR-GS-620の毒性に起因して
、WRおよびWR-GS-620は、WR-GS-600およびWR-GS-610より
早いエンドポイントを有することを示している。図38はさらに、製剤緩衝液と比較した
場合、WR-GS-600およびWR-GS-610が腫瘍成長を制御することができる
ことを示している。まとめると、これらのデータは、WR-GS-600およびWR-G
S-610が、WRおよびWR-GS-620より低い毒性を有し、WR-GS-600
およびWR-GS-610は、ともに腫瘍成長を制御できることを示唆している。
【0213】
図39および40は、インビボイメージングIVIS測定(The IVIS spe
ctrum、パーキンエルマー)により、ヒト腫瘍HT-29が、ヒトPBMCの有無に
おけるNCGマウスにおいて成長することを示している。
【0214】
図41および42は、ウイルスが腹腔内に注入されるヒト化HT-29-Luc腹膜内
マウスモデルの場合、WR-GS-600およびWR-GS-620感染は、腫瘍の化学
発光強度を著しく減少させることができることを示しており、それは、WR-GS-60
0およびWR-GS-620の腫瘍阻害効率を示唆している。製剤緩衝液と比較して、W
RおよびWR-GS-610は、腫瘍の化学発光強度のより少ない増加を示しており、こ
れは、WRおよびWR-GS-610の腫瘍成長制御有効性を示唆している。
【0215】
前述のインビトロおよびインビボの結果は、WR、WR-GS-600、WR-GS-
610、およびWR-GS-620が、癌細胞を死に到らしめること、および腫瘍成長を
制御することができることを示している。しかしながら、WRおよびWR-GS-620
は、より高い毒性を示し、これは、薬物試験の早い終了につながっている。WR-GS-
600およびWR-GS-610は、腫瘍成長制御においてより効果的であり、この場合
、WR-GS-600は、WR-GS-610より高い腫瘍標的化特異性を有する。より
重要なことに、ヒト化HT-29腹膜内腫瘍マウスモデルにおいて、WR-GS-600
の腹腔内注入は、腫瘍サイズを減少させるが、その一方で、WR-GS-610の腹腔内
注入は、腫瘍サイズの増加を止めなかったが、腫瘍サイズ増加の百分率は、WRで処理し
た場合より著しく小さい。これらのデータは、免疫チェックポイント阻害因子をコードす
る異種ポリヌクレオチドとイムノアクティベーターをコードする異種ポリヌクレオチドの
両方の組み込みは、毒性を減少させ、腫瘍標的化特異性を増加させ、腫瘍制御有効性を向
上できることを示唆している。
【0216】
実質的に任意の複数形および/または単数形用語の使用に関して、当業者は、文脈およ
び/または適用に対して適切なように、複数形から単数形へ、および/または単数形から
複数形へ翻訳することができる。
【0217】
さらに、本開示の特徴および態様が、マーカッシュ群の用語において説明される場合、
その結果、当業者は、本開示が、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバー
のサブグループの観点からも説明されることを理解するであろう。
【0218】
本明細書において様々な態様および実施形態が開示されると同時に、他の態様および実
施形態も、当業者に明らかとなるであろう。本明細書において開示される様々な態様およ
び実施形態は、説明目的のためであり、限定であることを意図するものではなく、真の範
囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
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図14
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図16
図17-1】
図17-2】
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35-1】
図35-2】
図35-3】
図35-4】
図36-1】
図36-2】
図36-3】
図36-4】
図37
図38
図39
図40
図41
図42
【配列表】
2024079686000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫チェックポイント阻害因子をコードする第一異種ポリヌクレオチドと、イムノアクティベーターをコードする第二異種ポリヌクレオチドとを有するウイルスゲノムを含む、改変された腫瘍溶解性ウイルス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024079686000001.xml
【外国語明細書】