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特開2024-79687トリスアミド化合物およびトリスアミド化合物を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079687
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】トリスアミド化合物およびトリスアミド化合物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/63 20060101AFI20240604BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240604BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07C233/63 CSP
C08L23/00
C08K5/20
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024028655
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2022535613の分割
【原出願日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】62/947,474
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・クレマー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ベルナー・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ポール・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・デイビッド・アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】スチトラ・ダッタ
(72)【発明者】
【氏名】キース・ケラー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・メール
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター・スクリブンス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリオレフィンポリマーにおいて望ましく低いヘイズレベルをもたらすことと、透明化剤が添加されるポリオレフィンポリマーから最小限の抽出を示すことの両方が可能な透明化剤を提供する。また、このような透明化剤を組み込み、低いヘイズと透明化剤の最小限の抽出の所望の組み合わせを示すポリマー組成物を提供する。
【解決手段】3,5-ジアミノ安息香酸から形式的に誘導されたトリスアミド誘導体、例えば、N-(cis4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドが示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、R、R、およびRは、アルキル基からなる群から独立して選択される]の化合物。
【請求項2】
、R、およびRが、C~Cアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R、およびRのうちの少なくとも1つが、分枝アルキル基である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
、R、およびRのうちの少なくとも2つが、分枝アルキル基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが、分枝アルキル基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
、R、およびRの各々が、分枝アルキル基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、
N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド
およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が、N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、N-(4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、N-(4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が、N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項15】
(a)請求項1~14の何れか1項に記載の化合物と、
(b)ポリオレフィンポリマーと
を含むポリマー組成物。
【請求項16】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンポリマーである、請求項15に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンランダムコポリマーである、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
式(I)の前記化合物が、前記ポリマー組成物の総重量に対して約0.001重量%以上の量で前記組成物中に存在する、請求項15~18の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、トリスアミド化合物(具体的には、3,5-ジアミノ安息香酸から形式的に誘導されたトリスアミド誘導体)およびトリスアミド化合物を含む組成物に関する。
発明の背景
[0002]ポリマー樹脂は、数ある中でも、それらの優れた加工性、機械的特性(とりわけ相対重量基準で)および電気的特性により、様々な分野で広く使用されている。ポリマー自体が有益な特性を有し得るが、さらにポリマーの特性を高めるため、および/または不都合な点を軽減するために添加剤が使用されてもよい。
【0002】
[0003]ポリオレフィンは、特に用途の広いポリマー樹脂の群である。ポリオレフィンは半結晶性ポリマーである。比較的ゆっくり冷却したポリオレフィン(たとえば、成形プラスチック部品の製造中に行われる冷却など)は、ポリマー鎖が無作為に配置された非晶質領域と、ポリマー鎖が規則的な配置をとった結晶性領域とを含有する。ポリオレフィンのこれらの結晶性領域内では、ポリマー鎖は、一般に「結晶ラメラ」と称されるドメインに整列している。通常の加工条件下では、ポリオレフィンポリマーが溶融状態から冷却されるにつれて、結晶ラメラはあらゆる方向に放射状に成長する。この放射状の成長は球晶の形成を生じ、これは、非晶質領域によって遮られた複数の結晶ラメラから構成された球状の半結晶性領域である。球晶のサイズは、いくつかのパラメータによって影響を受け、直径で数百ナノメートルから数ミリメートルに及び得る。球晶サイズが可視光の波長よりもかなり大きい場合、球晶はポリマーを通過する可視光を散乱させる。可視光のこの散乱は、「ポリマーヘイズ」または単に「ヘイズ」と一般に称される、曇った外観を生じる。一部の用途では、かなりのレベルのポリマーヘイズが許容可能であり得るが、消費者が比較的透明なプラスチックを所望する特定の用途(たとえば、貯蔵容器)が存在し、それに応じて低いヘイズレベルが必要とされる。
【0003】
[0004]長年にわたって、ポリオレフィンにおけるヘイズを低減するために、いくつかのアプローチが開発されてきた。多くの商業的成功を収めた1つのアプローチは、透明化剤の使用を伴う。透明化剤は、ポリマーとともに溶融加工されるときに、冷却されつつあるポリマーの結晶化の核を形成し、球晶サイズを低減したり、これらの有効な光散乱物の形成を実質的に防止したりさえする添加剤(しばしば有機化合物)である。たとえば、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールは、ポリプロピレンポリマーにおけるヘイズを低減できるため、多くの商業的成功を収めた。しかしながら、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールは、その制限がないわけでなかった。特に、透明化剤は、ポリプロピレンポリマーにおけるヘイズを、より透明なポリマー、たとえば、ポリスチレンおよびアクリル樹脂のヘイズレベルに匹敵するところまで低減することはできない。ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールによって透明化されたポリマーの残留ヘイズにより、それらのポリマーの用途および最終使用が制限される。
【0004】
[0005]ソルビトールアセタール(たとえば、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール)の限界に対処するために、他の透明化剤が開発されてきた。たとえば、トリスアミド化合物(たとえば、1,3,5-ベンゼントリアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、5-アミノイソフタル酸、またはトリメシン酸から形式的に誘導されたトリスアミド誘導体)は、相対的に低い添加量のそのような化合物が、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールによって達成されるヘイズレベルに匹敵したポリプロピレンポリマーにおけるヘイズレベルをもたらすことができるという事実により、当初、有望視されていた。それらの当初の見込みにもかかわらず、開示されたトリスアミド化合物は、依然としてより透明なポリマーのヘイズレベルに匹敵するヘイズレベルをもたらすことができない。さらに、開示されたトリスアミド化合物の多くは、それらが添加されるポリプロピレンから抽出される可能性がある。これらの望ましくないレベルの抽出により、そのようなトリスアミド化合物は、産業の選好および/または規制上の要件によりポリマーから最小限の抽出を示す添加剤が要求される、食品接触および医療用途(すなわち、トリスアミド化合物で透明化されたポリマーが食品と接触する用途[たとえば、食品の貯蔵もしくは包装]または医療装置に使用される用途[たとえば、シリンジ])での使用にあまり適していないものとなる。
【0005】
[0006]したがって、ポリオレフィンポリマーにおいて望ましく低いヘイズレベルをもたらすことと、透明化剤が添加されるポリオレフィンポリマーから最小限の抽出を示すことの両方が可能な透明化剤が求められている。また、このような透明化剤を組み込み、低いヘイズと透明化剤の最小限の抽出の所望の組み合わせを示すポリマー組成物も求められている。ここで記載する様々な態様は、このような透明化剤および組成物を提供しようとするものである。
発明の簡単な概要
[0007]第1の態様において、本発明は、式(I)
【0006】
【化1】
【0007】
[式中、R、R、およびRは、アルキル基からなる群から独立して選択される]の化合物を提供する。
【0008】
[0008]第2の態様において、本発明は、式(I)の化合物と、ポリオレフィンポリマーとを含むポリマー組成物を提供する。
発明の詳細な説明
[0009]第1の態様において、本発明は、下記式(I)の化合物を提供し、この化合物は、3,5-ジアミノ安息香酸から形式的に誘導されたトリスアミド誘導体である。式(I)の構造は以下の通りである:
【0009】
【化2】
【0010】
式(I)において、R、R、およびR基は、アルキル基からなる群から独立して選択される。
【0011】
[0010]R、R、およびR基は、任意の適当なアルキル基であり得る。好ましい態様において、R、R、およびRは、C~C20アルキル基(たとえば、C~C20アルキル基)、より好ましくはC~C12アルキル基(たとえば、C~C12アルキル基)、さらにより好ましくはC~Cアルキル基(たとえば、C~Cアルキル基)、最も好ましくはC~Cアルキル基(たとえば、C~Cアルキル基またはC~Cアルキル基)からなる群から独立して選択される。適当なアルキル基は直鎖状または分枝の何れかであり得る。好ましい態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは分枝アルキル基である。R、R、およびRのうちの1つのみが分枝アルキル基である場合、RまたはRは、好ましくは分枝アルキル基である。あるいは、R、RおよびRのうちの1つのみが分枝アルキル基である別の態様において、Rは、好ましくは分枝アルキル基である。別の好ましい態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも2つは、独立して選択された分枝アルキル基である。そのような態様において、RおよびRは、好ましくは、独立して選択された分枝アルキル基である。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびRの各々は、独立して選択された分枝アルキル基である。分枝アルキル基を含有するこれらの態様において、アルキル基は、任意の適当な数の炭素原子を含有することができ、好ましい例は、C~C20分枝アルキル基、C~C12分枝アルキル基、C~C分枝アルキル基、およびC~C分枝アルキル基である。適当な分枝アルキル基は、好ましくは、シクロヘキサンジイル部分に対してアルファ炭素またはベータ炭素に位置する分枝点を含む。
【0012】
[0011]好ましい態様において、R、R、およびRは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、n-ペンチル、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(すなわち、2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(すなわち、3-メチルブチル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、ペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)、および2-メチルブチルからなる群から独立して選択される。より好ましい態様において、R、R、およびRは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、およびペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)からなる群から独立して選択される。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびRは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、およびtert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)からなる群から独立して選択される。
【0013】
[0012]上述したように、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、好ましくは、分枝アルキル基である。したがって、好ましい態様において、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、イソプロピル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(すなわち、2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(すなわち、3-メチルブチル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、ペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)、および2-メチルブチルからなる群から選択される。別の好ましい態様において、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、イソプロピル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、およびペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)からなる群から選択される。より好ましい態様において、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、イソプロピル、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、およびtert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)からなる群から選択される。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)およびtert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)からなる群から選択される。好ましい態様において、RまたはRのうちの1つは、この段落に記載した群のうちの1つから独立して選択される分枝アルキル基である。別の好ましい態様において、RとRの両方が、この段落に記載した群のうちの1つから独立して選択される分枝アルキル基である。最後に、別の好ましい態様において、R、RおよびRの各々は、この段落に記載した群のうちの1つから独立して選択される分枝アルキル基である。
【0014】
[0013]好ましい態様において、化合物は、
(i)N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(ii)N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iii)N-(4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iv)N-(4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(v)N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vi)N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vii)N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(viii)N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;および
(ix)N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-(ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;ならびに
(x)これらの混合物(すなわち、前述の化合物のうちの何れか2つ以上の混合物)からなる群から選択される。
【0015】
別の好ましい態様において、化合物は、
(i)N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(ii)N-(4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iii)N-(4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iv)N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(v)N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vi)N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vii)N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;および
(viii)これらの混合物(すなわち、前述の化合物のうちの何れか2つ以上の混合物)からなる群から選択される。
【0016】
1つの好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。
【0017】
[0014]式(I)において分かるように、各シクロヘキサンジイル部分は、1位と4位の両方において非水素置換基(すなわち、R、R、またはR基およびアミド置換ベンゼン部分)で置換されている。各シクロヘキサンジイル部分に結合した非水素置換基は、互いに対して2つの異なる空間的配置で配置され得る。両方の非水素置換基がシクロヘキサン環の平均平面の同じ側に存在することができ、これはcis立体配置に相当し、または両方の非水素置換基がシクロヘキサン環の平均平面の両側に存在することができ、これはtrans立体配置に相当する。R、R、およびR基の各々は、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対して、cis位またはtrans位の何れかに配置され得る。好ましい態様において、R、R、およびR基のうちの少なくとも1つは、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位に配置される。別の好ましい態様において、R、R、およびR基のうちの少なくとも2つは、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位に配置される。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびR基の各々は、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位に配置される。
【0018】
[0015]好ましい態様において、化合物は、
(i)N-(cis-4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(ii)N-(cis-4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iii)N-(cis-4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iv)N-(cis-4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(v)N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vi)N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vii)N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(viii)N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;および
(ix)N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-(ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド);ならびに
(x)これらの混合物(すなわち、前述の化合物のうちの何れか2つ以上の混合物)からなる群から選択される。
【0019】
別の好ましい態様において、化合物は、
(i)N-(cis-4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(ii)N-(cis-4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iii)N-(cis-4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(iv)N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(v)N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vi)N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
(vii)N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;および
(viii)これらの混合物(すなわち、前述の化合物のうちの何れか2つ以上の混合物)からなる群から選択される。
【0020】
1つの好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。さらに別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。
【0021】
[0016]本出願はまた、式(I)の1つ以上の化合物を含有する組成物、たとえば、式(I)の2つ以上の化合物の混合物を含有する組成物を包含する(これに関連して、cisおよびtrans異性体は異なる化合物と考えられ、そのため、2つ以上の異性体の混合物は式(I)の2つ以上の化合物の混合物を含有する組成物を構成する)。このような態様において、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の60%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にあることが好ましい。より好ましくは、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の約65%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の約70%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の約75%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の約80%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の85%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の約90%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のすべての化合物のR、R、およびR基の約95%以上(たとえば、約96%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上)が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある。
【0022】
[0017]式(I)の2つ以上の化合物の混合物を含有する組成物の別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の化合物の約60モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。より好ましくは、組成物中に存在する式(I)の化合物の約65モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の化合物の約70モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の化合物の約75モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の化合物の約80モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の化合物の約85モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の化合物の約90モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の化合物の約95モル%以上(たとえば、約96モル%以上、約97モル%以上、約98モル%以上、または約99モル%以上)が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にあるR、R、およびR基を有する。
【0023】
[0018]式(I)の化合物は、任意の適当な方法または合成過程を用いて生成することができる。たとえば、化合物は、所望の4-アルキルシクロヘキシルアミンを3,5-ジニトロベンゾイルクロリド(3,5-ジニトロ安息香酸クロリド)と最初に反応させて、下記式(A)
【0024】
【化3】
【0025】
の中間化合物を生成することによって、生成することができる。
次に、式(A)の中間化合物を、既知の方法(たとえば、水素化)を用いて還元して、下記式(B)
【0026】
【化4】
【0027】
の対応するジアミン化合物を生成することができる。
次に、式(B)の化合物を所望の4-アルキルシクロヘキサンカルボニルクロリドと反応させて、式(I)の所望の化合物を生成することができる。この最後の工程で、2つの異なる4-アルキルシクロヘキサンカルボニルクロリドの混合物を式(B)の化合物と反応させて、RおよびRが異なる(または対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対して異なる空間的関係にある)式(I)の化合物を生成し得る。しかしながら、異なる4-アルキルシクロヘキサンカルボニルクロリドの混合物を使用して生成された反応生成物は、RとRとが同じである相当量の式(I)の化合物も含有し得る。したがって、所望の不斉化合物をこれらの他の成分から単離するために、その後の精製が必要となり得る。
【0028】
[0019]あるいは、式(I)の不斉化合物(たとえば、RとRとが異なる化合物)を生成するために、3-アミノ-5-ニトロ安息香酸を所望の4-アルキルシクロヘキサンカルボニルクロリドと反応させて、下記式(J)
【0029】
【化5】
【0030】
の中間化合物を生成することができる。
次に、式(J)の中間化合物をオキサリルクロリドと反応させて、下記式(K)
【0031】
【化6】
【0032】
の対応する酸塩化物を生成することができる。
次に、式(K)の酸塩化物を所望の4-アルキルシクロヘキシルアミンと反応させて、下記式(L)
【0033】
【化7】
【0034】
の中間化合物を生成することができる。
次に、式(L)の中間化合物を、既知の方法を使用して水素化して、下記式(M)
【0035】
【化8】
【0036】
の対応するアミン化合物を生成することができる。
最後に、式(M)のアミン化合物を所望の4-アルキルシクロヘキサンカルボニルクロリドと反応させて、式(I)の所望の化合物を生成することができる。
【0037】
[0020]第2の態様において、本発明は、式(I)の化合物とポリマーとを含むポリマー組成物を提供する。そのような態様において、式(I)の化合物は、本発明の第1の態様に関連して上記で論じた態様(たとえば、特定の化合物または化合物の混合物を含有する組成物)の何れかであり得る。
【0038】
[0021]ポリマー組成物は、任意の適当なポリマーを含むことができる。好ましくは、ポリマーは、熱可塑性ポリマー、たとえば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アクリルポリマー、またはこれらの混合物である。より好ましくは、ポリマーは、ポリオレフィンポリマー、たとえば、ポリプロピレンポリマー、ポリエチレンポリマー、ポリメチルペンテンポリマー(たとえば、ポリ(4-メチル-1-ペンテン))、ポリブチレンポリマー、ポリ(ビニルシクロヘキサン)ポリマー、およびこれらの混合物である。好ましい態様において、ポリマーはポリプロピレンポリマーである。より好ましくは、ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー(たとえば、アタクチックポリプロピレンホモポリマー、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマー、およびシンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー)、ポリプロピレンコポリマー(たとえば、ポリプロピレンランダムコポリマー)、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。適当なポリプロピレンコポリマーには、エチレン、ブタ-1-エン(すなわち、1-ブテン)、およびヘキサ-1-エン(すなわち、1-ヘキセン)からなる群から選択されるコモノマーの存在下におけるプロピレンの重合から作成されたランダムコポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなポリプロピレンランダムコポリマーにおいて、コモノマーは、任意の適当な量で存在することができるが、典型的には、約10重量%未満(たとえば、約1~約7重量%)の量で存在する。適当なポリプロピレンインパクトコポリマーには、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンランダムコポリマーへの、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、ポリエチレン、およびプラストマーからなる群から選択されるコポリマーの付加によって生成されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなポリプロピレンインパクトコポリマーにおいて、コポリマーは任意の適当な量で存在することができるが、典型的には、約5~約25重量%の量で存在する。好ましい態様において、ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンポリマーを含む。より好ましくは、ポリマー組成物はポリプロピレンランダムコポリマーを含む。
【0039】
[0022]本発明のポリマー組成物は、任意の適当な量の上述した式(I)の化合物を含有することができる。好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも0.001重量%の式(I)の化合物を含む。別の好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも0.002重量%、少なくとも0.003重量%、少なくとも0.004重量%、少なくとも0.005重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.02重量%、少なくとも0.03重量%、少なくとも0.04重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%の式(I)の化合物を含む。別の態様において、ポリマー組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して、99重量%未満の式(I)の化合物を含む。別の好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、95重量%未満、80重量%未満、50重量%未満、25重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または0.07重量%未満の式(I)の化合物を含む。一連の特に好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、0.001重量%~0.5重量%(たとえば、0.01重量%~0.5重量%または0.05重量%~0.5重量%)、0.001重量%~0.2重量%(たとえば、0.01重量%~0.2重量%または0.05重量%~0.2重量%)、0.001重量%~0.1重量%(たとえば、0.01重量%~0.1重量%または0.05重量%~0.1重量%)、または0.001重量%~0.07重量%(たとえば、0.01重量%~0.07重量%)の式(I)の化合物を含む。上述したように、本発明のポリマー組成物は、式(I)の複数の化合物を含むことができる。ポリマー組成物が式(I)の複数のトリスアミド化合物を含むこれらの態様において、各トリスアミド化合物は上記に列挙した範囲のうちの1つの範囲内に含まれる量で存在することができ、またはすべてのトリスアミド化合物の合わせた量が上記に列挙した範囲のうちの1つの範囲内に含まれ得る。
【0040】
[0023]ここで記載するポリマー組成物は、式(I)の化合物に加えて他のポリマー添加剤を含有することができる。適当な付加的なポリマー添加剤には、酸化防止剤(たとえば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、およびこれらの組み合わせ)、ブロッキング防止剤(たとえば、非晶質シリカおよび珪藻土)、顔料(たとえば、有機顔料および無機顔料)および他の着色剤(たとえば、染料およびポリマー着色剤)、充填剤および補強剤(たとえば、ガラス、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムウィスカー)、核形成剤、透明化剤、酸捕捉剤(脂肪酸の金属塩、たとえば、ステアリン酸の金属塩)、ポリマー加工添加剤(たとえば、フルオロポリマーのポリマー加工添加剤)、ポリマー架橋剤、スリップ剤(たとえば、脂肪酸と、アンモニアまたはアミン含有化合物との反応から誘導される脂肪酸アミド化合物)、脂肪酸エステル化合物(たとえば、脂肪酸と、ヒドロキシル含有化合物、たとえば、グリセリン、ジグリセロール、およびこれらの組み合わせとの反応から誘導される脂肪酸エステル化合物)、ならびに前述のものの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
[0024]ここで記載するポリマー組成物は、任意の適当な方法によって生成することができる。たとえば、ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンポリマー、式(I)の化合物、および任意の付加的な任意成分の単純な混合(たとえば、高せん断または高強度混合)によって生成することができる。あるいは、式(I)の化合物および任意の付加的な任意成分(たとえば、上述したもの)を含む添加剤組成物を予めブレンドして、プレブレンド組成物を提供することができる。次に、このプレブレンド組成物をポリマーと混合して、上述したポリマー組成物を生成することができる。ポリマー組成物は、物品を製造するためのさらなる加工で使用するのに適した任意の形態で提供され得る。たとえば、ポリマー組成物は、粉末(たとえば、自由流動粉末)、フレーク、ペレット、小球、タブレット、アグロメレートなどの形態で提供され得る。
【0042】
[0025]ここで記載するポリマー組成物は、熱可塑性物品を製造するのに有用であると考えられる。ポリマー組成物は、任意の適当な技術、たとえば、射出成形、射出回転成形、ブロー成形(たとえば、射出ブロー形成または射出延伸ブロー成形)、押出し(たとえば、シート押出し、フィルム押出し、キャストフィルム押出し、または発泡押出し)、押出しブロー成形、熱成形、回転成形、フィルムブローイング(インフレーションフィルム)、フィルムキャスティング(キャストフィルム)などによって、所望の熱可塑性物品に成形することができる。
【0043】
[0026]ここで記載するポリマー組成物は、任意の適当な物品または製品を製造するために使用することができる。適当な製品には、医療機器(たとえば、レトルト用途のプレフィルドシリンジ、静脈内供給容器、および採血装置)、食品包装、液体容器(たとえば、飲料、薬物、パーソナルケア組成物、シャンプーなどのための容器)、衣装ケース、電子レンジ使用可能な物品、棚材料、キャビネットドア、機械部品、自動車部品、シート、パイプ、チューブ、回転成形部品、ブロー成形部品、フィルム、繊維などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
[0027]本発明のポリマー組成物は、式(I)のトリスアミド化合物の低ヘイズと低抽出の非常に望ましい組み合わせを示すことが認められた。式(I)の化合物を含有するポリマー組成物(たとえば、ポリプロピレンランダムコポリマー組成物)は、一般に、式(I)によって包含されない構造的に類似したトリスアミド化合物を含有するポリマー組成物によって示されるヘイズレベルより少なくとも15%低いヘイズレベルを示す。さらに、式(I)の特定の化合物を含有するポリマー組成物は、より透明なポリマー、たとえば、ポリスチレンおよびアクリルポリマーによって示されるものに匹敵する1桁のヘイズレベルを示すことが認められた。上述したように、これらのポリマー組成物はまた、ポリマー組成物からの式(I)の化合物のひときわ良好な(すなわち、低い)抽出を示す。実際、式(I)の特定の化合物を含有するポリマー組成物は、式(I)によって包含されない構造的に類似したトリスアミド化合物を含有するポリマー組成物によって示される抽出レベルより1桁~2桁小さい抽出レベルを示すことが認められた。本発明のポリマー組成物によって示されたこれらの特性により、ポリマー組成物は、低ヘイズレベルおよび低抽出を必要とする熱可塑性物品または製品、たとえば、食品接触および医療用途向けの物品および製品の製造に使用するためにとりわけよく適したものになると考えられる。
【0045】
[0028]以下の例は、上述した主題をさらに例示するが、当然ながら、その範囲をいかなるようにも限定すると解釈されるべきではない。
【0046】
例A
[0029]本例は、本発明によるトリスアミド化合物の調製を示す。
【0047】
[0030]4-cis-tert-ブチルシクロヘキシルアミンと4-trans-tert-ブチルシクロヘキシルアミンとの50/50混合物6.5g(41.8mmоl)およびスパチュラ先端量(a tip of a spatula)の乾燥LiClを、不活性雰囲気下で、200mlのテトラヒドロフランp.a.(THF)に加えた。3.3g(41.8mmol)の乾燥ピリジンを加え、溶液を5℃に冷却した。次に、8.8g(38.1mmol)の3,5-ジニトロ安息香酸クロリドを徐々に加えた。反応混合物を25℃で2時間撹拌した。その後、溶媒を除去し、固形残留物を約500mlの水中で撹拌した。水をデカントした後、固形残留物を50mlのMeOHに溶解させて、水中で沈殿させた。沈澱物をろ別し、乾燥させた。
【0048】
[0031]11.7g(33.5mmol)の上記で得た沈澱物を、THF/MeOH混合物(200ml/50ml)中で、1.0gのPd/C(10重量%)を用いて水素化した。反応器を閉鎖し、撹拌しながら、窒素で3回パージし、水素で3回パージした。水素化は、35℃および3barの水素圧力で12時間行った。反応混合物を不活性雰囲気下でフラスコに移し、酸化アルミニウム(Alox N)に通してろ過して触媒および水を除去した。
【0049】
[0032]10.2g(35.2mmol)の上記で得たアミンおよびスパチュラ先端量の乾燥LiClを、不活性雰囲気下で、350mlのテトラヒドロフランp.a.(THF)に加えた。5.5g(70.0mmol)の乾燥ピリジンを加え、溶液を5℃に冷却した。次に、14.2g(70.3mmol)のcis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボン酸クロリドを加えた。反応混合物を25℃で2時間撹拌した。その後、溶媒を除去し、固形残留物を約400mlの水中で15分間撹拌した。固体生成物をろ過した後、それを1LのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に加えて、還流しながら5分間沸騰させた。室温に冷却した後、残留物をろ別し、真空オーブン内で乾燥させた。
【0050】
[0033]得られた生成物のその後の分析により、得られた生成物がN-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドであることが確認された。生成物のH NMRにより、生成物の約90モル%がN-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドであると判定された。
【0051】
例B
[0034]本例は、本発明によるトリスアミド化合物の調製を示す。
【0052】
[0035]4.3g(28.0mmol)のcis-4-tert-ブチルシクロヘキシルアミンおよびスパチュラ先端量の乾燥LiClを、不活性雰囲気下で、250mlのテトラヒドロフランp.a.(THF)に加えた。2.3g(28.5mmol)の乾燥ピリジンおよび2.7g(25.0mmol)のトリメチルクロロシランを加え、溶液を5℃に冷却した。次に、5.8g(25.1mmol)の3,5-ジニトロ安息香酸クロリドを徐々に加えた。反応混合物を25℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物を、2リットルの氷水に激しく撹拌しながら加えた。2時間撹拌した後、沈澱物をろ別し、40℃の真空オーブン内で乾燥させた。
【0053】
[0036]8.3g(24.0mmol)の上記で得た沈澱物を、THF/EtOH混合物(250ml/50ml)中で0.24gのPd/C(10重量%)を用いて水素化した。反応器を閉鎖し、撹拌しながら、窒素で3回パージし、水素で3回パージした。水素化は、35℃および5barの水素圧力で12時間行った。反応混合物を不活性雰囲気下でフラスコに移し、酸化アルミニウム(Alox N)に通してろ過して、触媒および水を除去した。
【0054】
[0037]6.4g(22.1mmol)の上記で得たアミンおよびスパチュラ先端量の乾燥LiClを、不活性雰囲気下で、250mlのテトラヒドロフランp.a.(THF)に加えた。4.2g(53.3mmol)の乾燥ピリジンおよび2.4g(22.0mmol)のトリメチルクロロシランを加え、溶液を5℃に冷却した。次に、8.3g(41.1mmol)のcis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボン酸クロリドおよび1.1g(5.6mmol)のtrans-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボン酸クロリドを加えた。反応混合物を25℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物を、2リットルの氷水に激しく撹拌しながら加えた。2時間撹拌した後、沈澱物をろ別し、40℃の真空オーブン内で乾燥させた。
【0055】
[0038]得られた生成物のその後の分析により、得られた生成物がN-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドであることが確認された。生成物のH NMRにより、生成物の約90モル%がN-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドであると判定された。
【0056】
例C
[0039]本例は、本発明によるトリスアミド化合物の調製を記載する。
【0057】
[0040]4.3g(28.0mmol)のcis-4-tert-ブチルシクロヘキシルアミンおよびスパチュラ先端量の乾燥LiClを、不活性雰囲気下で、250mlのテトラヒドロフランp.a.(THF)に加える。2.3g(28.5mmol)の乾燥ピリジンおよび2.7g(25.0mmol)のトリメチルクロロシランを加え、溶液を5℃に冷却する。次に、5.8g(25.1mmol)の3,5-ジニトロ安息香酸クロリドを徐々に加える。反応混合物を25℃で2時間撹拌する。その後、反応混合物を、2リットルの氷水に激しく撹拌しながら加える。2時間撹拌した後、沈澱物をろ別し、40℃の真空オーブン内で乾燥させる。
【0058】
[0041]8.3g(24.0mmol)の上記で得た沈澱物を、THF/EtOH混合物(250ml/50ml)中で0.24gのPd/C(10重量%)を用いて水素化する。反応器を閉鎖し、撹拌しながら、窒素で3回パージし、水素で3回パージする。水素化は、35℃および5barの水素圧力で12時間行う。反応混合物を不活性雰囲気下でフラスコに移し、酸化アルミニウム(Alox N)に通してろ過して、触媒および水を除去する。
【0059】
[0042]6.4g(22.1mmol)の上記で得たアミンおよびスパチュラ先端量の乾燥LiClを、不活性雰囲気下で、250mlのテトラヒドロフランp.a.(THF)に加える。4.2g(53.3mmol)の乾燥ピリジンおよび2.4g(22.0mmol)のトリメチルクロロシランを加え、溶液を5℃に冷却する。次に、9.4g(46.7mmol)のcis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボン酸クロリドを加える。反応混合物を25℃で2時間撹拌する。その後、反応混合物を、2リットルの氷水に激しく撹拌しながら加える。2時間撹拌した後、沈澱物をろ別し、40℃の真空オーブン内で乾燥させる。
【0060】
[0043]得られる生成物は、N-(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである。
【0061】
例D
[0044]本例は、本発明によるポリマー組成物の生成およびそのようなポリマー組成物の特性を示す。
【0062】
[0045]粉末状のプロピレンランダムコポリマー(LyondellBasell製のSA849 RCP)を、適量の各トリスアミド化合物(例Aからの試料Aおよび例Bからの試料B)と激しく混合して、2重量%のトリスアミド化合物を含有するマスターバッチを得た。得られたマスターバッチを適量のニートポリマーと混合して、0.08重量%のトリスアミド化合物を含有するポリマー組成物を得た。
【0063】
[0046]調合物の混合は、同時回転実験室用二軸スクリュー押出し機において、100rpmのスクリュー速度および約240℃の温度で、約5分間実施した。約5.0gの溶融物を、DSM Xplore 12ml(RTM) Micro-Injectorのバレルに直接移し、約6barの圧力および約240℃の温度で、磨いた型に注入した。得られた試験片は、2.5cmの直径および約1.1mmの厚さを有し、この試験片をさらなる光学的特性評価(%ヘイズ)に使用した。これらのヘイズ測定の結果を下記の表1に記載する。
【0064】
【表1】
【0065】
[0047]表1のデータから分かるように、本発明によるトリスアミド化合物(すなわち、試料Aおよび試料B)を含有するポリマー組成物は、対照より著しく低下したヘイズを示した。これらのデータは、本発明のトリスアミド化合物がポリマー(たとえば、ポリプロピレン)のための有効な透明化剤であることを示している。
【0066】
例E
[0048]本例は、本発明のトリスアミド化合物(すなわち、式(I)のトリスアミド化合物)の合成を示す。
【0067】
[0049]N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ジニトロベンズアミドは、36.07gの3,5-ジニトロベンゾイルクロリドを400mlの無水THFおよび15mLのピリジンに加えることによって合成した。反応混合物を5分間撹拌し、氷水浴中で20℃に冷却した。次に、100mlの無水THFに溶解させたcis-4-tert-ペンチルシコヘキシルアミン(28.61g)を、反応温度が30℃まで上昇するような速度で、30分間にわたって滴加した。反応混合物を一晩撹拌し、次に300mLのMeOHを加えた。THFを回転蒸発によって大部分除去し、残ったメタノール溶液を3LのDI水に激しく撹拌しながら滴加した。微細な黄色沈澱物をろ過によって単離し、水(1L、20分)で2回、スラリー状にして、各洗浄後にろ過によって収集し、次にジエチルエーテル(800mL、15分)で2回、スラリー状にした。収集した固形物を風乾し、次いで60℃の真空オーブン内で17時間乾燥させて、淡黄色粉末を得た。
【0068】
[0050]2000mLのParr Reactor(モデル4522M)を窒素でパージし、次に、1.02gの10重量%パラジウム炭素を投入した。続いて、1LのTHFを反応器に加えた。次に、14.00gの上記で得たN-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ジニトロベンズアミドを、600mLのTHFに溶解させ、反応器に投入した。反応器を密封し、窒素(4×60psi)でパージし、次に1800rpmで撹拌しながら40℃に加熱した。15分間平衡させた後、反応器を、水素でパージし(5×70psi)、次に水素で100psiに加圧し、撹拌しながら19時間にわたって温度保持した。反応物質をろ過して触媒を除去し、溶媒を回転蒸発によって除去して、明るい赤色のガラス様物質を得た。反応により、3,5-ジアミノ-N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)ベンズアミドが得られた。
【0069】
[0051]11.79g(38.69mmol)の上記で得た3,5-ジアミノ-N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)ベンズアミドを、不活性雰囲気下で、800mLの乾燥テトラヒドロフラン(THF)に加えた。7.5mLの乾燥ピリジンを加え、氷水浴を利用して反応混合物を15℃に冷却した。次に、17.26g(85.1mmоl)のcis-4-tert-ブチルシクロヘキサンカルボン酸クロリドを加えた。反応混合物を15℃で0.5時間撹拌し、21℃で21時間撹拌した。回転蒸発によって約800mLを除去し、その後、500mLのメタノールを反応スラリーに投入し、15分間撹拌した。次に、反応スラリーを、2500mLの脱イオン(DI)水が入ったビーカーにかき混ぜながら加えた。スラリーを完全に加えたら、系を10分間撹拌し、生成物を吸引ろ過によって収集した。次に、固形物を、75/25のDI水/メタノール混合物2000mL中で1時間スラリー状にし、次いで固形物を吸引ろ過によって収集した。粗生成物を300mLのジエチルエーテル中で30分間、再びスラリー状にし、吸引ろ過によって収集した。生成固形物を105℃の真空オーブン内で19時間乾燥させた。得られた生成物は、N-(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドであった。
【0070】
例F
[0052]本例は、本発明によるポリマー組成物の生成およびそのようなポリマー組成物の特性を示す。
【0071】
[0053]上述し、例A~CおよびEに示した基本手順に従って、17種のトリスアミド化合物を最初に合成した。これらのトリスアミド化合物を下記の表2に列挙する。様々な化合物の比較を簡単にするために、トリスアミド化合物はすべて同様のcis含量を有した。
【0072】
【表2】
【0073】
[0054]ポリマー組成物は、各トリスアミド化合物を12MFRポリプロピレンランダムコポリマー(LyondellBasell製のSA849 RCP)に配合することによって作成した。トリスアミド化合物(すなわち、化合物1~17)をポリマーのペレットにそれぞれ重量測定により添加し(添加剤/ポリマー混合物1000グラムあたり0.80グラムの粉末添加剤で、800ppmのトリスアミド化合物を得る)、次いでHenschel高強度ミキサで混合した。得られた混合物を、スクリュー直径25mmおよび長さ/直径比30:1を有したDeltaplast一軸スクリュー配合押出し機において240℃で溶融配合した。各試料の押出し品(ストランドの形態)を水浴中で冷却し、続いてペレット化した。次に、溶融配合したポリマー組成物を、40トン ARBURG ALLROUNDER 221K射出成形機を使用して、240℃の平坦なプロファイルのバレル温度および100barの背圧で射出成形して、約51mmx76mmの寸法で0.76mmの厚さを有したプラークを生成した。24時間エージングした後、プラーク寸法をマイクロメータで検証した。
【0074】
[0055]次に、プラーク(トリスアミド化合物を用いないで作成した対照プラークを含む)のパーセントヘイズを、ASTM規格D1103-92に従って、BYK-Gardner Haze-Guard Plusを使用して測定した。
【0075】
[0056]また、プラークを、抽出されたトリスアミド化合物の量を求めるために所定の一連の条件を使用して試験した。特に、抽出は、テフロン(登録商標)で内張りされ、ステンレス鋼の蓋を有した550mLのステンレス鋼容器を使用して、100℃で2時間行った。ガラススペーサーを使用して、移行試験中におけるポリマー試料の分離を確実に行った。抽出は25%エタノール溶液を用いた。エタノールは無水グレードであった。水は、イオン交換浄化システムを使用して、脱イオン化して得た。溶媒中における二重移行試験は、250mLの溶媒に浸漬した2つのプラークを使用して実施した。対照プラークもトリスアミド化合物を用いないで調製し、上述した条件を用いて抽出した。アリコート(約1mL)を各加熱時間後に抽出溶媒からLC分析のためにバイアルに取り出した。
【0076】
[0057]各トリスアミド化合物の1000ppm溶液は、NMP中に0.100gを溶解させることにより調製し、希釈物は100%エタノールで調製した。これらの溶液を使用して、各トリスアミド化合物のための較正プロットを得た。分析カラムとしてPhenomenex Kinetex(粒径2.6μm)および検出器としてPDAとMSの両方を用いたWater ACQUITY UPLCをLC装置として使用した。カラム温度は40℃であった。使用した移動相はメタノールおよび水であった。流量は0.4mL/分に設定した。試料注入量は1~5μLであった。質量分析計は、SQD2検出器を使用して、シングルイオンレコーディング(SIR)モードで使用した。PDA検出器における波長は、200~800nmに設定した。各トリスアミド化合物は、標準溶液における対応するピークとのその保持時間の比較、ならびにそのMSおよびUVスペクトルによって同定した。定量は、外部標準の較正プロットを使用して行った。検出限界(LOD)は、3:1の信号対ノイズ比に対する外挿によって求めた。
【0077】
[0058]ヘイズおよび抽出の測定の結果を下記の表3に示す。抽出された量の列において、「N.D.」の表示は「不検出」を意味し、測定が上記の検出限界(LOD)を超えた信号を返さなかったので、抽出されたトリスアミド化合物の量(もしあれば)を定量化することができなかったことを示す。
【0078】
【表3】
【0079】
[0059]表3のデータから分かるように、R、R、およびRがアルキル基である式(I)のトリスアミド化合物を用いて作成したポリマー組成物(すなわち、化合物2~10、12~14および16~17を用いて作成したポリマー組成物)は、R、R、またはRのうちの少なくとも1つが非アルキル基である化合物(すなわち、化合物1、11、および15)を用いて作成した組成物によって示されたヘイズレベルよりもかなり低いヘイズレベルをそれぞれ示した。トリスアミド化合物のR、RおよびR基が3つ以上の炭素原子を有するアルキル基である場合、ヘイズレベルの差はさらにより顕著である。また、トリスアミド化合物が分枝アルキル基を有する場合、とりわけ、少なくともRおよびRが分枝アルキル基である場合、ヘイズレベルの差はより大きくなる。
【0080】
[0060]抽出に関して、本発明のトリスアミド化合物は、概して、R、RおよびRが水素原子である類似したトリスアミド化合物より低い抽出を示す。抽出レベルは、概して、アルキル基における炭素原子の数が増加するとともに低下する。分枝アルキル基の存在もまた、とりわけ、少なくともRおよびRが分枝アルキル基である場合に、抽出レベルを低下させる。
【0081】
[0061]上記のことから、本発明者らは、本発明のトリスアミド化合物が、それらの低ヘイズと低抽出の非常に望ましい組み合わせにより、ひときわ優れていると考える。このようなトリスアミド化合物を用いて作成したポリマー組成物は、低いヘイズレベルおよび抽出レベルを示すポリマー組成物を必要とする広範囲の用途(たとえば、食品接触および医療機器用途)に適するであろう。
【0082】
[0062]ここで引用される刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、あたかも各参考文献が参照によって組み込まれることが個々に具体的に示され、その全体がここで記載されているのと同程度に、参照によってここに組み込まれる。
【0083】
[0063]本出願の主題を記載する文脈における(とりわけ以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」および「an」および「the」という用語ならびに類似の指示対象の使用は、ここで別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」および「含有する」という用語は、別段の注記がない限り、制限がない用語と解釈されるべきである(すなわち、「含むが、これ(ら)に限定されるものではない」を意味する)。ここでの値の範囲の列挙は、ここで別段の指示がない限り、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値に個々に言及する簡単な方法として役立つように単に意図され、それぞれの別個の値は、それがあたかもここで個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。ここで記載されるすべての方法は、ここで別段の指示がない限り、または別段文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。ここで提供されるありとあらゆる例または例示的な用語(たとえば、「たとえば、」)の使用は、単に本出願の主題をよりよく明らかにするように意図されており、別段特許請求されない限り、主題の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる用語も、特許請求されていない任意の要素をここで記載される主題の実施に必須のものとして示すと解釈されるべきではない。
【0084】
[0064]本出願の主題の好ましい態様が、特許請求された主題を実行するために本発明者らに知られた最良のモードを含めて、ここに記載されている。これらの好ましい態様の変形物は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がこれらの変形物を必要に応じて利用することを期待し、また本発明者らは、ここで記載した主題がここに具体的に記載されている以外のように実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用可能な法律によって認められる限り、ここに添付される特許請求の範囲に列挙される主題の修正および均等物のすべてを含む。さらに、そのすべての可能な変形物における上述の要素のいかなる組み合わせも、ここで別段の指示がない限り、または別段文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、R、R、およびRは、アルキル基からなる群から独立して選択され、少なくとも一つのR 、R 、およびR は、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対して、cis位に配置される]の化合物。
【請求項2】
少なくとも二つのR 、R 、およびR は、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対して、cis位に配置される、請求項1に記載の化合物
【請求項3】
、R 、およびR の各々は、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対して、cis位に配置される、請求項1に記載の化合物
【請求項4】
、R、およびRが、C~Cアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
、R、およびRのうちの少なくとも1つが、分枝アルキル基である、請求項に記載の化合物。
【請求項6】
、R、およびRのうちの少なくとも2つが、分枝アルキル基である、請求項に記載の化合物。
【請求項7】
およびRが、分枝アルキル基である、請求項に記載の化合物。
【請求項8】
、R、およびRの各々が、分枝アルキル基である、請求項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、
N-(cis4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド;
N-(cis4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミド
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、N-(cis4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、N-(cis4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ペンチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、N-(cis4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[4cis-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が、N-(cis4-n-プロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項9記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、N-(cis4-n-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、N-(cis4-イソプロピルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-tert-ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項に記載の化合物。
【請求項16】
前記化合物が、N-(cis4-tert-ブチルシクロヘキシル)-3,5-ビス-[cis4-イソプロピルシクロヘキシルカルボニルアミノ]-ベンズアミドである、請求項に記載の化合物。
【請求項17】
(a)請求項1~16の何れか1項に記載の化合物と、
(b)ポリオレフィンポリマーと
を含むポリマー組成物。
【請求項18】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンポリマーである、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンランダムコポリマーである、請求項19に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
式(I)の前記化合物が、前記ポリマー組成物の総重量に対して0.001重量%以上の量で前記組成物中に存在する、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
式(I)の前記化合物が、前記ポリマー組成物の総重量に対して0.001重量%~0.5重量%以上の量で前記組成物中に存在する、請求項21に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
式(I)の前記化合物が、前記ポリマー組成物の総重量に対して0.01重量%~0.2重量%以上の量で前記組成物中に存在する、請求項22に記載のポリマー組成物。
【外国語明細書】