(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079707
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】バインダ含有量が低減された乾燥電極フィルムの組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240604BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240604BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240604BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240604BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240604BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240604BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240604BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240604BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240604BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240604BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20240604BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240604BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01G11/86
H01G11/42
H01M4/04 Z
H01M4/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037930
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2020563532の分割
【原出願日】2019-05-13
(31)【優先権主張番号】62/671,012
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユディ ユディ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュンホ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バインダ含有量を低減する、乾燥カソード電極フィルムを準備するための材料及び方法を提供する。
【解決手段】カソード電極フィルムは、単一のバインダを含む自立型フィルムであってもよい。バインダ充填率は3重量%以下であってもよい。第1の態様では、エネルギー貯蔵デバイス用の乾燥自立型電極フィルムを準備するための方法が提供され、カソード活物質、多孔質炭素及び任意の導電性炭素を非破壊的に混合して、活物質混合物を形成し、単一のフィブリル化可能なバインダを活物質混合物に添加し、非破壊的に混合して電極フィルム混合物を形成し、その電極フィルム混合物をカレンダ加工して自立型電極フィルムを形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵デバイスの乾燥電極フィルムを製造する製造方法であって、以下を含む製造方法:
活物質を多孔質炭素材料と混合して、乾燥活物質混合物を形成し;
前記乾燥活物質混合物を乾燥バインダと混合して、乾燥電極フィルム混合物を形成し;
前記乾燥電極フィルム混合物をカレンダ加工して、バインダ充填率が最大約2重量%である自立型乾燥電極フィルムを形成する。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記乾燥電極フィルム混合物をカレンダ加工することは、カレンダへの最大3回の通過を含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記活物質を前記多孔質炭素材料と混合すること及び前記乾燥活物質混合物を乾燥バインダと混合することの少なくとも1つは、非破壊的混合プロセスにより行う、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記非破壊的混合プロセスは、共鳴音響混合プロセス(a resonant acoustic mixing process)である、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記非破壊的混合プロセスは、先端速度が約10~約40メートル/分であるブレードタイプのミキサーにより行う、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記活物質を前記多孔質炭素材料と混合すること及び前記乾燥活物質混合物を乾燥バインダと混合することの少なくとも1つは、高剪断プロセスにより行う、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記高剪断プロセスは、ジェットミルプロセスを含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項8】
エネルギー貯蔵デバイスの乾燥電極フィルムであって、
約90~約99重量%の乾燥活物質と、
最大約2重量%の乾燥バインダとを含み、
前記乾燥電極フィルムは自立型である、乾燥電極フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
約95~約98重量%の前記乾燥活物質を含む、乾燥電極フィルム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥活物質は、D50粒子サイズが少なくとも約10μmである乾燥活物質粒子を含む、乾燥電極フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥活物質粒子は、D50粒子サイズが約10~約20μmである、乾燥電極フィルム。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥活物質は、金属酸化物、金属硫化物、硫黄-炭素複合体、リチウム金属酸化物及び硫黄含有材料のうちの少なくとも1つから選択される、乾燥電極フィルム。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
電極フィルムが、約1~約2重量%の乾燥バインダを含む、乾燥電極フィルム。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥バインダは、本質的に単一の乾燥バインダから構成されている、乾燥電極フィルム。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥バインダは、乾燥したフィブリル化可能なバインダを含む、乾燥電極フィルム。
【請求項16】
請求項15に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥したフィブリル化可能なバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、乾燥電極フィルム。
【請求項17】
請求項8~16のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、最大約8重量%の多孔質炭素材料をさらに含む、乾燥電極フィルム。
【請求項18】
請求項17に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記多孔質炭素材料は活性炭を含む、乾燥電極フィルム。
【請求項19】
請求項8~18のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電極フィルムは、最大約5重量%の導電性添加剤をさらに含む、乾燥電極フィルム。
【請求項20】
請求項19に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記導電性添加剤は、導電性炭素材料を含む、乾燥電極フィルム。
【請求項21】
請求項20に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記導電性炭素材料は、カーボンブラックを含む、乾燥電極フィルム。
【請求項22】
請求項8~21のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムを有する電極であって、
集電体と接触している、電極。
【請求項23】
請求項22に記載の電極を備えるリチウムイオンバッテリ。
【請求項24】
請求項23に記載のリチウムイオンバッテリにおいて、
最初のサイクルデバイス効率が少なくとも約90%である、リチウムイオンバッテリ。
【請求項25】
請求項24に記載のリチウムイオンバッテリにおいて、
最初のサイクルデバイス効率が約90~約94%である、リチウムイオンバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
あらゆる優先出願を参照することによる援用
この出願は、2018年5月14日に出願され、「COMPOSITIONS AND METHODS FOR DRY
CATHODE FILMS HAVING REDUCED BINDER CONTENT」と題された米国仮特許出願番号62/671,012に対する優先権の利益を主張し、これは、ここでその全体がすべての目的のために参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、エネルギー貯蔵デバイス、特に、バインダ含有量が低減された、カソード電極フィルムのための材料及び方法に関する。
【0003】
関連技術の説明
電気エネルギー貯蔵セルは、電子的、電気機械的、電気化学的及び他の有用なデバイスに電力を供給するために広く使用されている。このようなセルには、一次化学セルや二次(充電式)セルなどのバッテリ、燃料電池及びウルトラキャパシタを含む様々な種類のキャパシタが含まれる。キャパシタやバッテリを含むエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー貯蔵容量を増やすことは、実際の使用例におけるエネルギー貯蔵の有用性を高めるために望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明及び先行技術に対して達成された利点を要約するために、本発明の特定の目的及び利点を以下で説明する。本発明のあらゆる特定の実施形態において、そのような目的又は利点のすべてが達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本明細書で示され又は示唆され得る他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書で示される1つの利点又は一群の利点を達成し又は最適化する方法で、本発明を具体化でき又は実施できることを認識するであろう。
【0005】
いくつかの実施形態では、乾燥カソード電極フィルムが提供される。この乾燥カソードフィルムは、有利には、バッテリカソード活物質を含み、バインダ充填率が約3%未満で単一のフィブリル化可能なバインダ含む、自立型電極フィルムであってもよい。
【0006】
第1の態様では、エネルギー貯蔵デバイスの乾燥電極フィルムを製造する方法が開示されている。この方法は、活物質を多孔質炭素材料と混合して乾燥活物質混合物を形成すること、乾燥活物質混合物を乾燥バインダと混合して乾燥電極フィルム混合物を形成すること、及び乾燥電極フィルム混合物をカレンダ加工して、バインダ充填率が最大約2重量%である自立型電極フィルムを形成することを含む。
【0007】
第2の態様では、エネルギー貯蔵デバイスの乾燥電極フィルムが開示されている。乾燥電極フィルムは、90~約99重量%の乾燥活物質及び最大約2重量%の乾燥バインダを含む。ここで、乾燥電極フィルムは自立型である。
【0008】
これらの実施形態のすべては、本明細書に開示される本発明の範囲内にあることが意図されている。本発明のこれらの及び他の実施形態は、添付の図を参照する好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになる。本発明は、開示される特定の好ましい実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】バインダ含有量が低減された、エネルギー貯蔵デバイスの一実施形態を示す。
【
図2】電極フィルム混合物を準備するためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。
【
図3A】実施例3に係る、唯一のバインダとしてPTFEを含む、様々なカソード活物質フィルムの電圧対比容量データを示す線グラフである:
図3A-NMC811。
【
図3B】実施例3に係る、唯一のバインダとしてPTFEを含む、様々なカソード活物質フィルムの電圧対比容量データを示す線グラフである:
図3B-NMC111。
【
図3C】実施例3に係る、唯一のバインダとしてPTFEを含む、様々なカソード活物質フィルムの電圧対比容量データを示す線グラフである:
図3C-NMC532。
【
図3D】実施例3に係る、唯一のバインダとしてPTFEを含む、様々なカソード活物質フィルムの電圧対比容量データを示す線グラフである:
図3D-NCA。
【
図3E】実施例3に係る、唯一のバインダとしてPTFEを含む、様々なカソード活物質フィルムの電圧対比容量データを示す線グラフである:
図3E-NMC622。
【
図3F】実施例3に係る、唯一のバインダとしてPTFEを含む、様々なカソード活物質フィルムの電圧対比容量データを示す線グラフである:
図3F-硫黄-炭素複合材料
【
図4】実施例4に係る、ドライコーティングされたカソード及びアノードを有する第1のセル並びにウェットコーティングされたカソード及びアノードを有する第2のセルの比較用容量保持データを示す、容量保持対放電Cレートの線グラフである。
【
図5】実施例5に係る、カソード活物質としてNMC111を含む5つのセルの2C放電率での容量保持データを示す、容量保持対放電Cレートの線グラフである。
【
図6】実施例6に係る、定電流充電及び放電率を使用して放電深度(DOD)100%でサイクルされた乾燥電極を有するセルのサイクル性能データを示す、容量保持対サイクル数の線グラフである。
【
図7A】実施例7に係る、配合1による、高い活性充填における、カソード電圧対比容量の線グラフである。
【
図7B】実施例7に係る、配合2による、高い活性充填における、カソード電圧対比容量の線グラフである。
【
図7C】実施例7に係る、配合3による、高い活性充填における、カソード電圧対比容量の線グラフである。
【
図7D】実施例7に係る、配合4による、高い活性充填における、カソード電圧対比容量の線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
バインダ含有量が低減され及び/又は損傷が低減された活物質電極フィルム混合物、電極フィルム、及びその電極フィルムを組み込んだエネルギー貯蔵デバイスのための材料及び方法の様々な実施形態について説明する。
【0011】
損傷した電極活物質は、エネルギー貯蔵デバイスの性能の低下をもたらす多くの過程を引き起こすと考えられている。典型的な乾燥電極の製造技術で行うステップは、一般に、すべての乾燥電極バインダ及び活物質に対して行われる高剪断、高圧及び/又は高速処理のステップを含む。このような高剪断処理は、電極活物質を損傷する可能性があり、したがって、原材料がエネルギー貯蔵デバイス内で電極に形をなすと、デバイスの性能を低下させ得る。エネルギー貯蔵デバイスの寿命の間、デバイスの性能の低下は、貯蔵容量の減少、静電容量の減少、デバイスの等価直列抵抗(ESR)の増大、自己放電、擬似容量、及び/又はガス形成として現れる場合がある。損傷が少ない活物質は、操作デバイスのこれらの特性の1つ又は複数を改善し得る。
【0012】
一実施形態は、少なくとも2つのステップを含む電極を製造する方法である。最初に、活物質混合物を準備する。活物質混合物は、一般に、多孔質炭素、活物質及び任意の導電性添加剤などの添加剤を含む。活物質混合物の成分を、第1に、比較的低剪断の非破壊的プロセスによって組み合わせ、混合する。第二に、電極フィルム混合物を準備する。このプロセスでは、乾燥処理した電極フィルムに構造を与えるのに適したバインダを、活物質混合物と組み合わせ、電極フィルム混合物を形成する。バインダは、フィブリル化可能なバインダであってもよく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含んでいてもよく、本質的にそれから構成されていてもよく又はそれから構成されていてもよい。一実施形態では、単一のフィブリル化可能なバインダのみが含まれる。次いで、バインダを、比較的低剪断の非破壊的プロセスによって活物質混合物と混合し、電極フィルム混合物を形成する。次いで、任意で、電極フィルムを、例えば、プレス又はカレンダ加工によって、電極フィルム混合物から形成し得る。そのようなプロセスの使用は、最終的な電極フィルムの動作特性を改善することが見出された。
【0013】
電極フィルムの形成プロセスは、乾燥電極の製造技術と相性がよい場合がある。いくつかの実施形態では、電極フィルム製造のどの段階でも溶媒は使用しない。
【0014】
自立型乾燥電極フィルムの加工性は、構成材料の粒子サイズに依存することが見出された。粒子サイズがより大きなと、バインダ含有量の低減が可能になり、それでもなお自立型乾燥電極フィルムを形成できることが見出された。特に、いくつかの実施形態では、カソード活物質の平均(D50)粒子サイズは、少なくとも約10μm以上、例えば、約10~20μmであってもよい。さらなる実施形態では、平均のカソード活物質の粒子サイズは、電極フィルムの厚さの1/10のオーダーであってもよい。
【0015】
一実施形態では、本明細書に記載の材料及びプロセスを使用して形成された電極フィルムは、従来の乾燥電極フィルムの形成プロセスを使用して形成されたものよりも低いバインダ充填率に耐えることが見出された。したがって、いくつかの実施形態では、自立型電極フィルムを提供するのに十分なバインダマトリックスは、典型的な乾燥電極プロセスと比較して、バインダ充填率が低減され得る。いくつかの実施形態では、単一のバインダのみが、自立型乾燥電極フィルムを形成するために必要とされる。
【0016】
いくつかの実施形態では、活物質は、目標の厚さを有する自立型乾燥フィルムを形成するために、カレンダを3回通過すればよい場合がある。
【0017】
エネルギー貯蔵デバイスの電極フィルムに組み込まれる活物質は、エネルギー貯蔵における性能にとって重要な粒子内構造(an intraparticle structure)を有し得る。例えば、カソード活物質の粒子、例えば、NMCなどのリチウム金属酸化物は、内部構造を有し得る。そのような材料は、一次粒子の二次粒子凝集体として存在し得る。二次粒子凝集体は、電極フィルムの製造中に分解され得る。分解は、乾燥電極フィルムの製造で一般に使用されているような、破壊的な、例えば、高剪断、高圧及び/又は高速の処理で、悪化する。いくつかの実施形態では、非破壊的処理ステップのみが電極フィルムの製造に使用される。
【0018】
実施形態は、非破壊的に処理された、例えば、損傷を受けていない及び/又は元のままの活物質粒子を電極フィルム混合物に組み込んで、改善された性能をもたらすことを可能にする。したがって、損傷が低減されたバルク活物質を組み込んだ電極フィルムが提供される。例えば、カソード活物質は、活物質が処理中に損傷を受ける方法と比較して改善された性能を示し得る。
【0019】
前述のように、バインダと活物質との混合物を処理することは、活物質の粒子を破壊し得る。エネルギー貯蔵性能の低下は、カソード活物質の損傷に起因し得るものであり、例えば、活物質における割れ目の形成及び/若しくは亀裂又はバインダ及び/若しくは集電体からの活物質の分離によるものである。デバイスの全体的な性能は、元のままの活物質を組み込んだデバイスと比較して低下し得る。したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、製造中で起こる損傷が低減する活物質を提供する材料及び方法である。
【0020】
いくつかの実施形態について本明細書にさらに開示されるのは、乾燥カソード電極の製造のための非破壊的方法である。この非破壊的方法は、低剪断、低圧及び/又は低速プロセスにより特徴付けられ得る。エネルギー貯蔵デバイスの特定の実施形態は、プロセス後の損傷が低減されたカソード活物質を提供し得る。例えば、損傷が低減されたカソード活物質を含む自立型電極フィルムが提供される。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、活性炭などのキャパシタ活物質と、電気化学的に活性な材料などのバッテリ活物質とを含むハイブリッドフィルムである。電気化学的に活性な材料の例としては、リチウム金属酸化物、リチウム金属リン酸塩、硫化リチウム及び本明細書に記載のカソード活物質が挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、材料及び方法はまた、低剪断、非破壊的処理ステップのみを使用する自立型カソード電極フィルムの製造を可能にし得る。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの一部のバインダは、フィブリル化を起こし、溶媒を使用せずに自立型フィルムの製造を可能にする。そのようなフィルムを製造するには、バルクバインダを物理的に処理して微粒子を生成する必要がある場合がある。これは、フィブリル化でき、電極フィルムに構造を提供するのに適したマトリックスを生成する。典型的には、このバインダ処理は、高圧及び高剪断力下で、電極活物質の存在下での粉砕(milling)又はブレンド(blending)の操作によって行われてきた。バインダを処理する際に加えられる力は、活物質の形態を変化させ、活物質の表面を損傷する可能性がある。例えば、活物質の粒子は、そのような処理中に、破壊され、融解され、剥離し又は化学的に変化する可能性がある。
【0022】
本明細書に記載の材料及びプロセスを使用して形成される電極フィルムは、典型的な乾燥電極フィルム形成プロセスを使用して形成されたものと比較して、改善された性能を示し得る。例えば、材料及びプロセスを使用して準備した少なくとも1つの電極を備えるリチウムイオンバッテリの最初のサイクル効率が改善され得る。例えば、電気化学的サイクル中の最初のサイクルのクーロン効率が改善され得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、電極フィルムの機械的強度を維持しつつ、典型的な乾燥電極プロセスを使用して製造されたものと比較して、バインダ充填率が低減される。
【0023】
定義
「バッテリ」及び「キャパシタ」という用語は、当業者にとってそれらの通常の及び慣習的な意味が与えられるべきである。「バッテリ」及び「キャパシタ」という用語は、互いに排他的ではない。キャパシタ又はバッテリは、単独で又はマルチセルシステムのコンポーネントとして、動作できる単一の電気化学セルを指す場合がある。
【0024】
エネルギー貯蔵デバイスの電圧とは、単一のバッテリ又はキャパシタセルの動作電圧である。電圧は、負荷がかかった状態で、又は製造上の公差によって、定格電圧を超える又は定格電圧を下回る場合がある。
【0025】
「自立型」電極フィルムとは、フィルム又は層を支持し、電極フィルム又は層が自立(free-standing)できるようにその形状を維持するのに十分なバインダマトリックス構造を組み込んだ電極フィルムである。エネルギー貯蔵デバイスに組み込まれる
場合、自立型の電極フィルム又は活性層は、そのようなバインダマトリックス構造を組み込むものである。一般に、採用される方法に応じて、そのような電極フィルムは、集電体又は他のフィルムなどの外部支持要素なしで、エネルギー貯蔵デバイス製造プロセスで使用されるのに十分な強度を有する。例えば、「自立型」電極フィルムは、他の支持要素なしで、電極製造プロセス内で巻かれ、扱れれ、そして広げられるのに十分な強度を有し得る。カソード電極フィルム又はアノード電極フィルムなどの乾燥電極フィルムは、自立型であってもよい。
【0026】
「無溶媒」電極フィルムは、検出し得る処理溶媒、処理溶媒残留物又は処理溶媒不純物を含まない電極フィルムである。カソード電極フィルム又はアノード電極フィルムなどの乾燥電極フィルムは、無溶媒であってもよい。
【0027】
「湿潤」電極、「湿潤プロセス」電極又はスラリー電極は、活物質の、バインダの及び任意の添加剤の、スラリーを含む少なくとも1つのステップによって準備される電極である。湿潤電極は、処理溶媒、処理溶媒残留物、及び/又は処理溶媒不純物を含み得る。
【0028】
「非破壊的」プロセスは、電極活物質の表面を含む電極活物質が、プロセス中に実質的に改質されないプロセスである。したがって、活物質の、エネルギー貯蔵デバイスへの組み込みなどの用途における分析特性及び/又は性能は、そのプロセスを経ていないものと同一又はほぼ同一である。例えば、活物質のコーティングは、プロセス中に影響を受けないか又は実質的に影響を受けない場合がある。非破壊的プロセスの非限定的な例は、「非破壊的混合若しくはブレンディング」、又は減圧でのジェットミル、供給速度の増大、速度(例えば、ブレンダ速度)の減少、及び/又は、活物質に与えられる剪断が、エネルギー貯蔵デバイスに実装されたときの活物質の分析特性及び/若しくは性能に悪影響を受ける閾値未満のままであるような、他のプロセスパラメータの変化である。効果的な非破壊的混合プロセスの一例は、先端速度が約10~約40メートル/分のブレードタイプのミキサーの使用である。「非破壊的」プロセスは、電極活物質の表面などの電極活物質を実質的に改質し、活物質の分析特性及び/又は性能に実質的に影響を与える高剪断プロセスと区別できる。例えば、高剪断ブレンド(ブレンディング)又は高剪断ジェットミルは、電極活物質の表面に有害な影響を与える可能性がある。活物質の表面特性を損なう高剪断プロセスを実施すると、バインダ材料のフィブリル化、又はそうでなければ自己支持電極フィルムの形成を助けるためのバインダ/活物質マトリックスの形成などの、他の利点を提供できる。本明細書の実施形態は、高剪断プロセスの過度の使用の有害な影響を回避しつつ、同様の利点を提供し得る。一般に、本明細書の非破壊的プロセスは、より速い供給速度、より遅い速度及び/又はより低い圧力のうちの1つ又は複数で行い、電極活物質を実質的に改質し、その結果性能に影響する、より破壊的なプロセスよりも、低い剪断プロセスをもたらす。
【0029】
「バインダ充填率」という用語は、最終的な電極フィルム混合物の質量に相対的なバインダの質量を指す。バインダ充填率は、単一のバインダに関して、又は最終的な電極フィルム混合物の質量に相対的なすべてのタイプのバインダの質量の合計である「総バインダ充填率」に関して、表され得る。
【0030】
バインダ含有量が低減された自立型電極フィルム
いくつかの実施形態では、バインダ含有量が低減されていること特徴とする電極フィルムの組成物及び方法が記載されている。一般に、活物質混合物は、カソード活物質、多孔質炭素及び任意の導電性添加剤を組み合わせることにより準備する。活物質、多孔質炭素及び任意の導電性添加剤の混合は、本明細書で提供される方法、又は任意の適切な方法により行い得る。その混ぜ合わせ(the combining)は、非破壊的プロセスによるものであってもよい。非破壊的混合は、ブレンディング、タンブリング又は音響混合
(acoustic mixing)を含み得る。そして、活物質混合物は、バインダと混合され、電極フィルム混合物を形成できる。混合は、非破壊的プロセスによるものであってもよい。そして、電極フィルム混合物は、カレンダ加工され、自立型電極フィルムを形成できる。本明細書で提供される乾燥した自立型電極フィルムを製造するために必要な、カレンダを通過する回数は、典型的な乾燥電極の製造方法と比較して、少なくてもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスでの使用に適した乾燥した自立型電極フィルムは、カレンダに、2回、3回、4回又は5回通過させて製造する。さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスでの使用に適した乾燥した自立型電極フィルムは、カレンダに3回を通過して製造する。
【0031】
一実施形態では、自立型乾燥電極フィルムは、所定の粒子サイズを有する粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、典型的な乾燥カソード電極フィルムと比較してより大きな粒子サイズが、自立型乾燥電極フィルムのバインダ含有量の低減を可能にすることが見出された。いくつかの実施形態では、カソード活物質粒子は、平均して、最長寸法が、約8μm、約9μm、約10μm、約12μm、約14μm、約16μm、約18μm、約20μm、約25μm又はその間の任意の範囲の値であってもよい。さらなる実施形態では、カソード活物質粒子は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム鉄リン酸塩(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムチタン酸塩(LTO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)又はカソード活物質を含み得る。さらに別の実施形態では、カソード活物質粒子は、凝集した一次粒子を含む二次粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード活物質の実質的に元のままの又は実質的に損傷を受けていない二次粒子凝集体を含むカソード電極フィルムが提供される。カソード活物質は、ハイブリッド電極フィルムにおいて容量活物質(capacitive active materials)と組み合わせてもよい。
【0032】
カソード活物質のNMC成分は、その構成要素の様々な組成を含み得る。NMCは、ニッケル、マンガン及びコバルトを様々な比率で含み得る。いくつかの実施形態は、ニッケル、マンガン及びコバルトを、それぞれのモル比約6:2:2で含む、NMC622を提供する。いくつかの実施形態は、ニッケル、マンガン及びコバルトを、それぞれのモル比約1:1:1で含む、NMC111を提供する。いくつかの実施形態は、ニッケル、マンガン及びコバルトを、それぞれモル比約5:3:2で含む、NMC532を提供する。いくつかの実施形態は、ニッケル、マンガン及びコバルトを、それぞれのモル比約8:1:1で含むNMC811を提供する。いくつかの実施形態では、NMCは、約5~10重量%のリチウム、約15~50重量%のニッケル、約5~20重量%のマンガン及び約5~20重量%のコバルトを含み得る。いくつかの実施形態は、約5~10重量%のリチウム、約15~50重量%のニッケル、約5~20重量%のマンガン、約5~20重量%のコバルト、約25~40重量%の酸素及び微量不純物を含み、リチウム、ニッケル、マンガン、コバルト及び酸素の割合が合計で約100重量%になる、NMCを提供する。
【0033】
バインダ材料及びカソード活物質の量は、調整してもよい。例えば、カソード電極フィルムは、約95%のカソード活物質及び3%のバインダ又は95%のカソード活物質及び2%のバインダを含み得る。別の例では、カソード電極フィルムは、97%又は約97%のカソード活物質及び2%若しくは1.75%又は約2%若しくは約1.75%のバインダを含み得る。別の例では、カソード電極フィルムは、98%又は約98%のカソード活物質及び1.25%又は約1.25%のバインダを含み得る。電極の残りの質量は、例えば、多孔質炭素及び/又は導電性添加剤から構成され得る。電極フィルムは、それが製造される電極フィルム混合物と同じ量のカソード活物質及びバインダを有み得る。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約90重量%、約92重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、約99重量%又はそれら
の間の範囲の任意の値の活物質を含み得る。特定の実施形態では、カソード活物質は、NMC又はLFPであってもよい。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約7重量%、約5重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%又はそれらの間の範囲の任意の値を含む、最大約8重量%の多孔質炭素材料を含み得る。特定の実施形態では、多孔質炭素材料は活性炭であってもよい。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%又は約5重量%を含む、最大約5重量%の導電性添加剤を含む。特定の実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素であってもよい。
【0034】
一実施形態では、カソード電極フィルムは、典型的な乾燥電極フィルム形成プロセスを使用して形成されるフィルムよりも低減されたバインダ充填率を組み込み得る。いくつかの実施形態では、自立型乾燥電極フィルムを形成するために、バインダ充填率が低い単一のバインダのみが必要とされる。特定の実施形態では、その単一のバインダはPTFEである。様々な実施形態において、電極フィルム混合物及び/又は電極フィルムは、バインダ充填率を、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、5質量%又はそれらの間の範囲の任意の値とし得る。特定の実施形態では、バインダ充填率は、約1.5~約3%である。特定の実施形態では、カソード電極フィルムは、PVDFを含まない。
【0035】
一般に、バインダは、フィブリル化可能なバインダを含む。このフィブリル化可能なバインダは、PTFEを含んでいてもよく、本質的にPTFEから構成されていてもよく又はPTFEから構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、追加のバインダ成分を含み得る。さらなる実施形態では、バインダは、PTFE及びポリオレフィン、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。バインダは、セルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含み得る。いくつかの実施形態では、バインダ粒子は、選択されたサイズを有し得る。いくつかの実施形態では、バインダ粒子は、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm又はそれらの間の範囲の任意の値であってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、電極フィルムの製造プロセスは、カソード活物質、活性炭及び導電性炭素添加剤を組み合わせて活物質混合物を形成し、次いで、活物質混合物を、PTFEを含み、本質的にPTFEから構成され又はPTFEから構成されたバインダと混合し、電極フィルム混合物を形成することを含む。活物質混合物及びPTFEは、カソード活物質に損傷を与えることなくその2つの成分を効果的に混合し及び分散させる混合技術を選択することにより、最初に一緒に混合してもよい。次いで、電極フィルム混合物をカレンダ加工して、自立型電極フィルムを形成する。特定の実施形態では、本明細書に開示されるプロセスによって製造された電極フィルムは、自立型カソード電極フィルムを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプロセスによって製造された電極フィルムは、自立型の負(アノード)電極フィルムを含む。カソード活物質は処理中に粒子分解を受けやすいため、本明細書のプロセスは、カソードを用いた実施に向けて有益である可能性がある。
【0037】
いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、高剪断及び/又は高圧プロセスによって形成し得る。高剪断及び/又は高圧プロセスは、ジェットミル(ジェットミリング)
を含み得る。処理時間及び/又は供給速度は、一般に、バインダ及び/又は活物質の最終的な粒子サイズに影響を与える。例えば、より長い時間及び/又はより遅い供給速度は、より小さな粒子を生成し得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物には、米国特許公開第2015/0072234号に記載されているような1つ又は複数の乾燥電極プロセスを行う。いくつかの実施形態では、乾燥電極が提供され、その乾燥電極は、溶媒などの処理汚染物質を含まず、その乾燥電極は、本明細書で提供される方法及び材料により準備される。
【0039】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の材料及び方法を使用して製造された電極は、改善された性能によって特徴付けることができる。性能の改善は、例えば、最初のサイクル効率の向上によるものである場合がある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される材料及び方法により製造された電極の最初のサイクル効率は、約85%超えである。さらなる実施形態では、最初のサイクル効率は、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%又はそれらの間の範囲の任意の値であり、例えば、約90~約92%又は約90~約94%の範囲の値であってもよい。
【0040】
本明細書に記載のエネルギー貯蔵デバイスは、デバイスの寿命にわたって等価直列抵抗の増大が抑制されることによって特徴付けられてもよく、これは、デバイスの寿命にわたってデバイスの電力密度を増大させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のエネルギー貯蔵デバイスは、デバイスの寿命にわたって容量の損失が抑制されることによって特徴付けられてもよい。様々な実施形態で実現され得るさらなる改善には、サイクル中の貯蔵安定性の改善、電力供給及び容量減少の抑制を含む、サイクル性能の改善が含まれる。いくつかの実施形態では、容量保持は、2000サイクル後で、元の容量の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%である。さらなる実施形態では、Cレートが2の容量は、Cレートが0.1の容量の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%である。いくつかの実施形態は、活物質充填率が実質的に同じである湿潤電極完全セルよりも少なくとも10%、少なくとも20%又は少なくとも30%高い、Cレートが1の容量を有する乾燥電極完全セルを提供する。
【0041】
本明細書で提供される材料及び方法は、様々なエネルギー貯蔵デバイスに実装できる。エネルギー貯蔵デバイスは、前述の2つ以上の態様を組み合わせた、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、ウルトラキャパシタ、バッテリ又はハイブリッドエネルギー貯蔵デバイス及び/又はハイブリッドセルであってもよい。好ましい実施形態では、デバイスはバッテリである。エネルギー貯蔵デバイスは、動作電圧によって特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のエネルギー貯蔵デバイスは、約0~約4.5Vの動作電圧を有していてもよい。さらなる実施形態では、動作電圧は、約2.7~約4.2V、約3.0~約4.2V又はそれらの間の範囲の任意の値であってもよい。
【0042】
エネルギー貯蔵デバイスは、1つ又は複数の電極を含み得る。電極フィルムは、1つ又は複数のバインダ及び1つ又は複数の活性電極材料の混合物から形成し得る。電極フィルムは、様々な実施形態において、1つ以上のバッテリ、キャパシタ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、燃料電池又は他のエネルギー貯蔵システム若しくはデバイス及びそれらの組み合わせなどの、多くのエネルギー貯蔵デバイス及びシステムのいずれかと共に使用できることが理解されよう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電極フィルムは、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオンバッテリ、ウルトラキャパシタ又は前述の2つ以上の態様を組み合わせたハイブリッドエネルギー貯蔵デバイスの、構成要素であっ
てもよい。
【0043】
エネルギー貯蔵デバイスは、あらゆる適切な構成、例えば、平面、らせん状に巻かれたもの、ボタン形状又はポーチ(pouch)であってもよい。エネルギー貯蔵デバイスは、システムの構成要素、例えば、発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電システム、例えば、産業機械及び/又は輸送で使用するためのエネルギー回収システムであってもよい。エネルギー貯蔵デバイスは、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び/又は電気自動車(EV)を含む、様々な電子デバイス及び/又は自動車に電力を供給するために使用され得る。
【0044】
図1は、バインダ含有量が低減された電極フィルムを備えるエネルギー貯蔵デバイス100の一例の側面の概略断面図を示す。エネルギー貯蔵デバイス100は、例えば、キャパシタ、バッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッド又は燃料電池として分類できる。
【0045】
このデバイスは、第1の電極102、第2の電極104及び第1の電極102と第2の電極104との間に配置されたセパレータ106を備えていてもよい。電極102及び104のいずれか又は両方は、本明細書に記載の材料及びプロセスにしたがい製造され得る。第1の電極102及び第2の電極104は、セパレータ106のそれぞれの対向面に隣接して配置され得る。エネルギー貯蔵デバイス100は、エネルギー貯蔵デバイス100の電極102、104間のイオン伝達を容易にする電解質118を含み得る。例えば、電解質118は、第1の電極102、第2の電極104及びセパレータ106と接触し得る。電解質118、第1の電極102、第2の電極104及びセパレータ106は、エネルギー貯蔵デバイスハウジング120内に収容され得る。第1の電極102、第2の電極104及びセパレータ106、又はそれら構成要素のうちの1つ若しくは複数は、多孔質材料を含み得る。その多孔質材料の細孔は、ハウジング120内の電解質118との反応性のための、封じ込め及び/又は増加した表面積を提供できる。エネルギー貯蔵デバイスハウジング120は、第1の電極102、第2の電極104及びセパレータ106の周りで密封され、及び周囲の環境から物理的に密閉され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の電極102はアノード(「負の電極」)であってもよく、第2の電極104はカソード(「正の電極」)であってもよい。セパレータ106は、セパレータ106の反対側に隣接する2つの電極、例えば、第1の電極102及び第2の電極104を電気的に絶縁するとともに、その2つの隣接する電極間のイオン伝達を可能にするように構成され得る。セパレータ106は、適切な多孔性の、電気絶縁材料を含み得る。いくつかの実施形態では、セパレータ106は、ポリマー材料を含み得る。例えば、セパレータ106は、セルロース材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料及び/又はポリエチレン及びポリプロピレン材料を含み得る。
【0047】
一般に、第1の電極102及び第2の電極104は、各々、集電体及び電極フィルムを含む。電極102及び104は、それぞれ、電極フィルム112及び114を含む。電極フィルム112及び114は、あらゆる適切な形状、サイズ及び厚さを有し得る。例えば、電極フィルムは、約30ミクロン(μm)~約250ミクロン、例えば、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン又はそれらの間の範囲の任意の値の厚さを有し得る。電極フィルムは、1つ又は複数の材料を含んでいてもよく、又は本明細書で提供されるプロセスを使用して製造され得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム112及び114のうちの少なくとも1つは、バインダ材料及びカソード活物質を含む電極フィルム混合物を含み得る。図示するように、第2の電極フィルム114は、カソード活物質粒子122及びバインダ材料粒子124を含み、そして、バインダ含有量が低減されている。いくつかの実施形態では、活物質は、カソード
活物質であってもよい。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、例えば、金属酸化物、金属硫化物、硫黄-炭素複合体又はリチウム金属酸化物であってもよい。リチウム金属酸化物は、例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム鉄リン酸塩(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムチタン酸塩(LTO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)及び/又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)であってもよい。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、例えば、層状遷移金属酸化物(LiCoO2(LCO)、Li(NiMnCo)O2(NMC)及び/又はLiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)など)、スピネル酸化マンガン(LiMn2O4(LMO)及び/又はLiMn1.5Ni0.5O4(LMNO)など)又はかんらん石(LiFePO4など)から構成されていてもよい。カソード活物質は、硫黄、又は硫化リチウム(Li2S)若しくは他の硫黄ベースの材料若しくはそれらの混合物などの、硫黄含有材料から構成され得る。いくつかの実施形態では、カソードフィルムは、硫黄又は少なくとも50重量%の濃度の硫黄活物質を含む材料から構成されている。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料から構成されたカソードフィルムは、少なくとも10mAh/cm2の面積正規化比容量(すなわち、面積容量)を有する。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料から構成されたカソードフィルムは、1g/cm3の電極フィルム密度を有する。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料から構成されたカソードフィルムは、バインダをさらに含む。
【0048】
少なくとも1つの活物質は、1つ以上の炭素材料を含み得る。炭素材料は、例えば、グラファイト材料、グラファイト、グラフェン含有材料、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、導電性炭素又はそれらの組み合わせから選択され得る。活性炭は、スチームプロセス又は酸/エッチングプロセスから得られる。いくつかの実施形態では、グラファイト材料は、表面処理された材料であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、活性炭を含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、階層的に構造化された炭素を含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤー及び/又は構造化カーボンナノシートを含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、グラフェンシートを含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、表面処理された炭素であってもよい。好ましい実施形態では、活物質は、グラファイトを含むか、本質的にグラファイトから構成されているか又はグラファイトから構成されている。
【0049】
第1の電極フィルム112及び/又は第2の電極フィルム114はまた、1つ又は複数のバインダを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電極フィルム112及び/又は第2の電極フィルム114は、単一のバインダを含み得る。いくつかの実施形態では、バインダは、1つ又は複数のポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、バインダは、1つ又は複数のフィブリル化可能なバインダ成分を含み得る。バインダ成分は、フィルムの他の1つ以上の構成要素に所望の機械的支持を提供するような、多数のフィブリルを与えるようにフィブリル化されてもよい。いくつかの実施形態では、バインダ成分は、様々な適切なフィブリル化可能なポリマー材料のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0050】
一般に、本明細書に記載の電極フィルムは、改良された乾燥製造プロセスを使用して製造できる。例えば、いくつかのステップは、米国特許公開第2005/0266298号及び米国特許公開第2006/0146479号に記載されている通りであってもよい。これら、及び本明細書における外部文書への他の参照は、参照によりその全体が本明細書に援用される。乾燥製造プロセスは、電極フィルムの形成に溶媒を全く又は実質的に全く使用しないプロセスを指し得る。例えば、炭素材料及びバインダを含む電極フィルムの成分は、乾燥粒子を含み得る。電極フィルムを形成するための乾燥粒子を組み合わせて、乾燥粒子電極フィルム混合物を提供できる。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、電
極フィルムの成分の重量パーセント及び乾燥粒子電極フィルム混合物の成分の重量パーセントが実質的に同じであるように、乾燥粒子電極フィルム混合物から形成され得る。いくつかの実施形態では、乾燥製造プロセスを使用して乾燥粒子電極フィルム混合物から形成された電極フィルムは、溶媒及びそれから生じる溶媒残留物などの処理添加剤を含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、得られる電極フィルムは、乾燥粒子混合物からの乾燥プロセスを使用して形成された自立型電極フィルムである。いくつかの実施形態では、得られる電極フィルムは、乾燥粒子混合物からの乾燥プロセスを使用して形成された自立型電極フィルムである。電極フィルムを形成するためのプロセスは、電極フィルムがフィブリル化されたバインダを含むように、フィブリル化可能なバインダ成分をフィブリル化することを含み得る。さらなる実施形態では、自立型電極フィルムは、集電体の非存在下で形成され得る。さらに別の実施形態では、電極フィルムは、電極フィルムが自立するように、フィブリル化されたポリマーマトリックスを含み得る。
【0051】
図1を引き続き参照すると、第1の電極102及び第2の電極104は、それぞれ、第1の電極フィルム112と接触する第1の集電体108及び第2の電極フィルム114と接触する第2の集電体110を含む。第1の集電体108及び第2の集電体110は、対応する各電極フィルムと外部電気回路(図示しない)との間の電気的結合を容易にし得る。第1の集電体108及び/又は第2の集電体110は、1つ又は複数の導電性材料を含んでいてもよく、対応する電極と外部回路との間の電荷の移動を容易にするように選択される、あらゆる適切な形状及びサイズを有する。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタル、及び銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムなどの貴金属、及び合金、及びそれらの組み合わせを含む材料などの、金属材料を含み得る。例えば、第1の集電体108及び/又は第2の集電体110は、アルミホイルを含み得る。アルミホイルは、対応する電極と外部電気回路との間で電荷の移動を提供するようなサイズの長方形又は実質的に長方形の形状を有し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵デバイス100は、カソード活物質を含むカソードを備えるリチウムイオンバッテリ又はハイブリッドエネルギー貯蔵デバイスである。いくつかの実施形態では、そのリチウムイオンバッテリは、約2.5~4.5V又は2.7~4.2Vで動作するように構成されている。
【0053】
本明細書に記載の技術は、選択された条件下での動作を可能にするために、エネルギー貯蔵デバイスにおいて別々に又は組み合わせて使用され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵デバイス100は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオンバッテリ又はハイブリッドリチウムイオンデバイスなどのリチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスであってもよい。一般に、リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスは、リチウム含有カソード活物質を含むカソードと、リチウムイオンと相互作用するのに適したアノード電極フィルムとを備える。
【0055】
いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、活物質、バインダ及び任意の導電性添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、アノードの活物質は、グラファイトカーボン、合成グラファイト、天然グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン、メソポーラスカーボン、シリコン、ケイ素酸化物、スズ、スズ酸化物、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、混合物又は前述の材料の複合材料を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約90~約98重量%又は約94~約97重量%を含む、約80~約98重量%の活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約1~約3重量%を含む最大約5重量%の導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約1.5~10重量%、約1.5~
5重量%又は約3~5重量%を含む、最大約20重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約4重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノードフィルムは、導電性添加剤を含んでいなくてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイス電極の電極フィルム、例えば、アノード電極フィルムは、リチウムイオンを可逆的に挿入するように構成された炭素を含む。いくつかの実施形態では、そのリチウム挿入炭素は、グラファイト炭素、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン及びそれらの組み合わせから選択される。例えば、電極の電極フィルムは、バインダ材料と、グラファイトカーボン、グラファイト、グラフェン含有炭素、ハードカーボン及びソフトカーボンのうちの1つ又は複数と、導電性促進材料とを含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、リチウム金属及び/又はリチウムイオンと混合される。アノード電極フィルムは、乾燥した自立型電極フィルムであってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態は、ポリマーバインダ材料を含む1つ又は複数の電極フィルムを有する、アノード及び/又はカソードなどの電極を含む。いくつかの実施形態では、バインダは、PTFEを含み得る。さらなる実施形態では、バインダは、PTFE及び1つ又は複数の追加のバインダ成分を含み得る。いくつかの実施形態では、バインダは、1つ又は複数のポリオレフィン及び/又はそのコポリマー及びPTFEを含み得る。いくつかの実施形態では、バインダは、PTFEと、セルロース、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテルの前駆体、ポリシロキサン、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物のうちの1つ又は複数とを含み得る。いくつかの実施形態では、バインダは、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、それらのコポリマーなどを含み得る。バインダは、ポリシロキサンのコポリマー、ポリシロキサン、及び/又はポリエーテル前駆体のコポリマーを含み得る。例えば、バインダは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。バインダは、セルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含み得る。ポリマーの混合物は、前述のポリマー又はコポリマーの相互貫入ネットワークを含み得る。
【0058】
バインダは、ポリマー成分を、様々な適切な比率で含み得る。例えば、PTFEは、バインダの最大約100重量%、約20~約80重量%、約30~約70重量%又は約30~約50重量%を含む、例えば、約20~約95重量%、約20~約90重量%であってもよい。さらなる実施形態では、バインダは、バインダとしての、PTFE、CMC及びPVDFを含み得る。特定の実施形態では、電極フィルムは、2重量%のPTFE、1重量%のCMC及び1重量%のPVDFを含み得る。例えば、バインダ混合物のPTFEの質量は、電極フィルムの総バインダ含有量の50%であり、電極フィルムの総質量の2%であってもよい。
【0059】
さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵デバイス100は、適切なリチウム含有電解質で充填される。例えば、デバイス100は、リチウム塩、及び非水性又は有機溶媒などの溶媒を含み得る。一般に、リチウム塩には酸化還元安定性のあるアニオンが含まれている。いくつかの実施形態では、そのアニオンは一価であってもよい。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2)、トリフルオロメタンスルホン酸
リチウム(LiSO3CF3)及びそれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態では、電解質は、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸及びヨウ化物からなる群から選択される四級アンモニウムカチオン及びアニオンを含み得る。いくつかの実施形態では、塩濃度は、約0.1モル/L(M)~約5M、約0.2~約3M又は約0.3~約2Mであってもよい。さらなる実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.7~約1Mであってもよい。特定の実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M又はそれらの間の範囲の任意の値であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスは、溶媒を含み得る。その溶媒は、デバイスの公称動作条件下で液相にあってもよい。溶媒は、電解質のすべての成分を溶解する必要はなく、また、どの成分を不完全に溶解してもよい。さらなる実施形態では、溶媒は、有機溶媒であってもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、カーボネート、エーテル及び/又はエステルから選択される1つ以上の官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒はカーボネートを含み得る。さらなる実施形態では、そのカーボネートは、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ビニルエチレン(VEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸フルオロエチレン(FEC)及びそれらの組み合わせなどの環状カーボネート、又は、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)及びそれらの組み合わせなどの非環式炭酸エステルから選択され得る。特定の実施形態では、電解質は、LiPF6及び1つ又は複数のカーボネートを含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、活物質は、処理された炭素材料を含み、ここでその処理された炭素材料は、米国特許公開第2014/0098464号に記載されているように、水素含有官能基、窒素含有官能基及び/又は酸素含有官能基の多くが減少している。例えば、処理された炭素粒子は、処理された炭素の1つ以上の表面における1つ以上の官能基の減少、例えば、未処理の炭素表面と比較して、1つ以上の官能基の、約20~約50%を含む、約10~約60%の減少を含み得る。処理された炭素は、その数が減少した水素含有官能基、窒素含有官能基及び/又は酸素含有官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約0.5%未満を含む、約1%未満の水素含有官能基を含む。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約0.1%未満を含む、約0.5%未満の窒素含有官能基を含む。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約3%未満を含む、約5%未満の酸素含有官能基を含む。さらなる実施形態では、処理された炭素材料は、未処理の炭素材料よりも約30%少ない水素含有官能基を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスを製造するための方法が提供される。
図2は、エネルギー貯蔵デバイスで使用するための電極フィルム混合物を調製するための方法200の実施形態を示す。ステップ202では、活物質、多孔質炭素及び任意の導電性添加剤を組み合わせ、活物質混合物を形成する。ステップ204では、活物質混合物を、低剪断プロセスでバインダと混合し、電極フィルム混合物を形成する。ステップ206では、電極フィルム混合物に、カレンダ加工(カレンダ処理)を行って自立型電極フィルムを形成する。一般に、ステップ206は、電極フィルムが自立するように、電極フィルム内にバインダマトリックスをもたらす。ステップ208では、自立型電極フィルムを、任意で、集電体にラミネートする。いくつかの実施形態では、方法200の各ステップは、溶媒を使用しない乾燥プロセスステップである。
【実施例0063】
比較例1
活性炭を質量比4:2で乾燥PVDF粉末と混合し、混合物を10分間ブレンドした。得られた混合粉末をジェットミルで粉砕した。NMC622、追加の活性炭及びカーボン
ブラックを加え、得られた混合物を均一なタップ密度となるようにブレンドした。粉末を、ジェットミルで粉砕した活性炭/PVDF混合物と混合し、得られた混合物を5分間ブレンドした。最後に、PTFEを加え、混合物を10分間ブレンドした。最終的な電極フィルムは、88:5:2:2:3の、NMC622:活性炭:カーボンブラック:PVDF:PTFEで構成されていた。したがって、活物質の充填率は88%であり、総バインダ充填率は5%でしあった。
【0064】
比較例2
活性炭を、質量比4:2で乾燥PVDF粉末と混合し、混合物を10分間ブレンドした。得られた混合粉末をジェットミルで粉砕した。NMC811、追加の活性炭及びカーボンブラックを加え、得られた混合物を均一なタップ密度となるようにブレンドした。粉末をジェットミルで粉砕した活性炭/PVDF混合物と混合し、得られた混合物を5分間ブレンドした。最後に、PTFEを加え、混合物を10分間ブレンドし、2ロールカレンダミルでプレスして自立型フィルムを形成した。最終的な電極フィルムは、92:3.3:1.5:1.7:1.5の、NMC811:活性炭:カーボンブラック:PVDF:PTFEで構成されていた。したがって、活物質の充填率は92%であり、総バインダ充填率は3.2%であった。そのカソードフィルムをカーボンコーティングされたアルミホイルにラミネートし、充填質量16.6mg/cm2及び厚さ53ミクロンの、ドライコーティングされた電極を得た。この電極を、CR2032コインセルにおけるリチウム金属カウンタ電極に対して評価した。最初の充電及び放電の比容量は、それぞれ約224mAh/g及び202mAh/gと測定される。
【0065】
実施例1
NMC622(Umicore)、活性炭(YP-17D、Kuraray)及び導電性炭素(カーボンブラック、Ketjenblack ECP600JD、Lion Corp.)を組み合わせ、混合物を3800rpmで30~45分間ブレンドした。次いで、PTFEを加え、得られた混合物を、高剪断で3800rpmでさらに20~25分間ブレンドした。最終的な電極フィルムは、94:2:1:3の、NMC622:活性炭:導電性カーボン:PTFEで構成されていた。したがって、活物質の充填率は94%、総バインダ充填率は3%であった。
【0066】
実施例2
実施例1の方法にしたがい第2の電極フィルムを作製したが、最終的な電極フィルムは95:2:1:2の、NMC622:活性炭:導電性炭素:PTFEで構成されていた。したがって、活物質の充填率は95%であり、総バインダ充填率は2%であった。
【0067】
実施例1及び2の2つの電極フィルムのデータを表1に示す。充電容量、放電容量及び効率は、実施例1及び実施例2のカソード半電池のものである。表1において、ガーレー数(the Gurley number)は、60ポンド/平方インチの標準的な一定圧力を作用されたときに100ccの空気が1平方インチのフィルムを通過する時間(秒)である。
【0068】
【0069】
実施例3
追加のカソード電極フィルムを、実施例1の方法にしたがい製造したが、これは様々なカソード活物質を含む。PTFEは各電極フィルムにおける唯一のバインダであった。
図3A~3Fは、様々なカソード電極フィルムの電圧対比容量のデータを以下のように示す:
図3A-NMC811、
図3B-NMC111、
図3C-NMC532、
図3D-NCA、
図3E-NMC622及び
図3F-硫黄-炭素複合材料。
図3A~3Eに示すように、各NMCドライコーティング電極は、放電プロセスの最後に安定した電圧プラトーを有する放電プロファイルを示し、活物質を主要因とする対応する設計比容量をもたらし(NCAの比充電容量は約219mAh/gであり、比放電容量は約195~200mAh/gである;NMC622の比充電容量は約200mAh/gであり、比放電容量は約175mAh/gである;NMC811の比容量は約195~210mAh/gである)、いずれの場合も、ほとんどすべての活物質粒子が利用可能であったことを示している。
【0070】
実施例4
乾燥プロセスで作製された第1のセル電極及び湿潤プロセスで作製された電極を有する第2のセルの、2つのセルを準備した。両方のセルのカソードは、同じ濃度の活物質で、カソード活物質としてNMC111を、アノード活物質としてグラファイトを含んでいた。0.1Cの定電流を流して、放電前にセルを100%SOCに充電した。放電は様々なCレートで行った。少ない定電流の放電下では、両方のコーティングされた電極タイプで105mAhのセル放電容量が得られ、その結果を標準としてセル容量を正規化するために使用した。電極充填(electrode loading)は各セルで5mAh/cm
2(カソードは36mg/cm
2)であり、カットオフ電圧は充電及び放電で、それぞれ4.2V及び2.8Vであった。ドライコーティング(乾燥コーティング)されたセル及びウェットコーティング(湿潤コーティング)されたセルの容量保持データの比較を
図4に示す。乾燥プロセスの電極フィルムは、高い放電率(測定で最大1C)でより優れた容量を示した。
【0071】
実施例5
各々が、乾燥プロセスで作製されたNMC111のカソード電極フィルムを含む、5つの追加のセルを作製した。各セルには、ポーチセル構成で、ドライコーティングされたNMC111(94重量%の充填率)のカソード及びグラファイト(96重量%の充填率)のアノード電極が含まれていた。NMC111の電極充填は27mg/cm
2(面積容量4mAh/cm
2)であった。セルは定電流とそれに続く4.2Vの定電圧で、4.2Vに充電され2.8Vに放電された。
図5は、レート性能データ(rate performance data)を示す。ドライコーティングされた電極を組み込んだ5つのセルの各々の容量保持(容量保持率)は、2Cの放電率で90%を超えていた。
【0072】
図5に示すように、ドライコーティングされた電極で、より高いレート性能が見出され
た。その高いエネルギー密度及び電力性能は、ドライコーティングされた電極における低い電荷移動及び接触抵抗に起因する。
【0073】
実施例6
乾燥プロセスにより作製した電極を有するセルを、それぞれ0.5C/1Cの定電流充電及び放電レートで、放電深度(DOD)100%でサイクルした。ポーチセル形態のドライコーティングされた電極を有するNMC111/グラファイトセルで、サイクル性能を測定した。電極充填は4mAh/cm
2であった。カットオフ電圧は、充電及び放電で、それぞれ4.2V及び2.7Vであった。
図6によれば、セルの2000サイクル後、初期容量の85%超え(ほぼ90%)であることがわかる。
【0074】
実施例7
配合1~4の、バインダ含有量が少ない乾燥カソードフィルムを、表2に示す。配合1~4から作製されたカソード半電池の電圧対比容量を、
図7A~7Dに示すように測定した。それらの放電容量及び効率を表2に示す。配合1~3は、NMC811、活性炭及びカーボンブラックを、約10分間、高速ブレンドにより混合し、緻密な粉末混合物を生成することにより、調製した。PTFEバインダを緻密な粉末混合物に加え、中速でさらに10分間ブレンドした。配合4は、配合1~3と同様のプロセスで調製したが、そのフィルムはNMC622で調製し、活性炭及びカーボンブラックは共鳴音響ミキサーを使用して非破壊的に混合した。
【0075】
【0076】
本発明の特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規の方法及びシステムは、他の様々な形態で具体化できる。さらに、本明細書に記載のシステム及び方法の様々な省略、置換及び変更は、本開示の思想から逸脱することなく行うことができる。同時に提出する請求項及びそれらの同等物は、本開示の範囲及び思想に含まれるような形式又は変形をカバーすることを意図している。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項を参照することによってのみ定義される。
【0077】
特定の態様、実施形態又は実施例に関連して説明される性質、材料、特徴又はグループ
は、互換性がある限り、このセクション又は本明細書の他の場所に記載される他の任意の態様、実施形態又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されたすべての性質(同時に提出する請求項、要約及び図面を含む)及び/又はそのように開示された任意の方法又はプロセスのすべてのステップは、そのような性質及び/又はステップが相互に排他的であるような少なくともいくつかの組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(同時に提出する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された性質のあらゆる新規のもの若しくはあらゆる新規の組み合わせ、又は開示されたあらゆる方法若しくはプロセスのステップのあらゆる新規のもの若しくはあらゆる新規の組み合わせに及ぶ。
【0078】
さらに、別個の実装の文脈で本開示に記載されている特定の特徴はまた、単一の実装において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実装の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実装で個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションでも実装し得る。さらに、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして記載され得るが、主張される組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、組み合わせから除かれる場合があり、そしてその組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形として主張され得る。
【0079】
さらに、操作は、特定の順序で図面に描かれ又は明細書に記載され得るが、そのような操作は、望ましい結果を達成するために、示される特定の順序で若しくは連続して実行され又はすべての操作が実行される必要はない。図示又は説明されない他の操作は、例示的な方法及びプロセスに組み込むことができる。例えば、1つ以上の追加の操作を、説明されている操作の前に、後に、同時に又はそれらの間に実行できる。さらに、操作は、他の実装で再配置され又は並べ替えられ得る。当業者は、いくつかの実施形態では、図示及び/又は開示されたプロセスで行われる実際のステップが、図示されているものとは異なり得ることを理解するであろう。実施形態に応じて、上記の特定のステップを除外してもよく、他のステップを追加してもよい。さらに、開示された特定の実施形態の特徴及び属性は、異なる方法で組み合わされて、追加の実施形態を構成してもよく、それらはすべて、本開示の範囲に属する。また、上記の実装における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実装においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明されたコンポーネント及びシステムは、一般に、単一の製品に一緒に統合されるか、又は複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されるべきである。例えば、本明細書に記載のエネルギー貯蔵システムのあらゆる構成要素は、別々に提供され又は一緒に統合され(例えば、一緒にパッケージ化するか又は一緒に取り付ける)、エネルギー貯蔵システムを構成してもよい。
【0080】
本開示の目的のために、特定の態様、利点及び新規の特徴が本明細書に記載されている。必ずしもすべてのそのような利点が特定の実施形態にしたがい達成され得るとは限らない。したがって、例えば、当業者は、本明細書に記載され又は示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で示される1つの利点又は一群の利点を達成する方法で、本開示が具体化又は実行され得ることを認識するであろう。
【0081】
「できる」、「場合がある」、「し得る」又は「してもよい」などの条件付き文言は、特に明記しない限り又は使用される文脈内で他の方法で理解されない限り、一般に、特定の特徴、要素及び/又はステップを、特定の実施形態は含むものの、他の実施形態は含まない、ということを伝えることを意図する。したがって、そのような条件付き文言は、一般に、特徴、要素及び/若しくはステップが1つ若しくは複数の実施形態に何らかの形で必要であること、又はその1つ若しくは複数の実施形態が、ユーザ入力若しくはプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、及び/若しくはステップが含まれるか又は
特定の実施形態で実行されるかどうかを決定するためのロジックを必然的に含むことを意味することを意図しない。
【0082】
「X、Y及びZの少なくとも1つ」という接続的な文言は、特に明記しない限り、項目、用語などがX、Y又はZのいずれかであり得ることを伝えるために一般に使用される文脈で理解される。したがって、そのような接続的な文言は、一般に、特定の実施形態が、Xの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ及びZの少なくとも1つの存在を必要とすることを意味することを意図しない。
【0083】
「おおよそ」、「約」、「一般に」及び「実質的に」という用語など、本明細書で使用される、程度の文言は、望ましい機能を実行し又は望ましい結果を達成するための、値、量又は特性に近い値、量又は特性を表す。
【0084】
本開示の範囲は、このセクション又は本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図せず、このセクション若しくは本明細書の他の場所に提示される、又は将来提示される、請求項によって定義され得る。請求項の文言は、請求項で使用される文言に基づき広く解釈されるべきであり、本明細書に記載されている又は出願の審査での例に限定されない。それらの例は非排他的であると解釈されるべきである。
【0085】
実施形態
様々な例示的な実施形態が以下に提供される。
【0086】
1.エネルギー貯蔵デバイスの乾燥電極フィルムを製造する製造方法であって、以下を含む製造方法:
活物質を多孔質炭素材料と混合して、乾燥活物質混合物を形成し;
前記乾燥活物質混合物を乾燥バインダと混合して、乾燥電極フィルム混合物を形成し;
前記乾燥電極フィルム混合物をカレンダ加工して、バインダ充填率が最大約2重量%である自立型乾燥電極フィルムを形成する。
【0087】
2.第1の実施形態の乾燥電極フィルムの製造方法において、前記乾燥電極フィルム混合物をカレンダ加工することは、カレンダへの最大3回の通過を含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【0088】
3.第1又は第2の実施形態の乾燥電極フィルムの製造方法において、前記活物質を前記多孔質炭素材料と混合すること及び前記乾燥活物質混合物を乾燥バインダと混合することの少なくとも1つは、非破壊的混合プロセスにより行う、乾燥電極フィルムの製造方法。
【0089】
4.第3の実施形態の乾燥電極フィルムの製造方法において、前記非破壊的混合プロセスは、共鳴音響混合プロセス(a resonant acoustic mixing
process)である、乾燥電極フィルムの製造方法。
【0090】
5.第3の実施形態の乾燥電極フィルムの製造方法において、前記非破壊的混合プロセスは、先端速度が約10~約40メートル/分であるブレードタイプのミキサーにより行う、乾燥電極フィルムの製造方法。
【0091】
6.第1又は第2の実施形態の乾燥電極フィルムの製造方法において、前記活物質を前記多孔質炭素材料と混合すること及び前記乾燥活物質混合物を乾燥バインダと混合することの少なくとも1つは、高剪断プロセスにより行う、乾燥電極フィルムの製造方法。
【0092】
7.第6の実施形態の乾燥電極フィルムの製造方法において、前記高剪断プロセスは、ジェットミルプロセスを含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【0093】
8.エネルギー貯蔵デバイスの乾燥電極フィルムであって、
約90~約99重量%の乾燥活物質と、
最大約2重量%の乾燥バインダとを含み、
前記乾燥電極フィルムは自立型である、乾燥電極フィルム。
【0094】
9.第8の実施形態の乾燥電極フィルムにおいて、約95~約98重量%の前記乾燥活物質を含む、乾燥電極フィルム。
【0095】
10.第8又は9の実施形態の乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥活物質は、D50粒子サイズが少なくとも約10μmである乾燥活物質粒子を含む、乾燥電極フィルム。
【0096】
11.第10の実施形態の乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥活物質粒子は、D50粒子サイズが約10~約20μmである、乾燥電極フィルム。
【0097】
12.第8~第11の実施形態のいずれか1つの乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥活物質は、金属酸化物、金属硫化物、硫黄-炭素複合体、リチウム金属酸化物及び硫黄含有材料のうちの少なくとも1つから選択される、乾燥電極フィルム。
【0098】
13.第8~第12の実施形態のいずれか1つの乾燥電極フィルムにおいて、電極フィルムが、約1~約2重量%の乾燥バインダを含む、乾燥電極フィルム。
【0099】
14.第8~第13の実施形態のいずれか1の乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥バインダは、本質的に単一の乾燥バインダから構成されている、乾燥電極フィルム。
【0100】
15.第8~第14の実施形態のいずれか1つの乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥バインダは、乾燥したフィブリル化可能なバインダを含む、乾燥電極フィルム。
【0101】
16.第15の実施形態の乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥したフィブリル化可能なバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、乾燥電極フィルム。
【0102】
17.第8~第16の実施形態のいずれか1つの乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥電極フィルムは、最大約8重量%の多孔質炭素材料をさらに含む、乾燥電極フィルム。
【0103】
18.第17の実施形態の乾燥電極フィルムにおいて、前記多孔質炭素材料は活性炭を含む、乾燥電極フィルム。
【0104】
19.第8~第18の実施形態のいずれか1つの乾燥電極フィルムにおいて、前記乾燥電極フィルムは、最大約5重量%の導電性添加剤をさらに含む、乾燥電極フィルム。
【0105】
20.第19の実施形態の乾燥電極フィルムにおいて、前記導電性添加剤は、導電性炭素材料を含む、乾燥電極フィルム。
【0106】
21.第20の実施形態の乾燥電極フィルムにおいて、前記導電性炭素材料は、カーボンブラックを含む、乾燥電極フィルム。
【0107】
22.第8~第21の実施形態のいずれか1つの乾燥電極フィルムを有する電極であっ
て、集電体と接触している、電極。
【0108】
23.第22の実施形態の電極を備えるリチウムイオンバッテリ。
【0109】
24.第23の実施形態のリチウムイオンバッテリにおいて、最初のサイクルデバイス効率が少なくとも約90%である、リチウムイオンバッテリ。
【0110】
25.第24の実施形態のリチウムイオンバッテリにおいて、最初のサイクルデバイス効率が約90~約94%である、リチウムイオンバッテリ。