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  • 特開-熱膨張材取付具及び耐火区画貫通具 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079732
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱膨張材取付具及び耐火区画貫通具
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/16 20060101AFI20240604BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20240604BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A62C3/16 B
F16L5/04
E04B1/94 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042466
(22)【出願日】2024-03-18
(62)【分割の表示】P 2022192101の分割
【原出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】萩森 之一
(72)【発明者】
【氏名】勝部 翔太
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE04
2E001FA06
2E001FA34
2E001GA05
2E001HF12
2E001MA08
(57)【要約】
【課題】より確実に延焼することを抑制できる熱膨張材取付具、及び前記熱膨張材取付具を備える耐火区画貫通具を提供する。
【解決手段】熱膨張材取付具2は、建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するように形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設置するための熱膨張材取付具であって、耐火性を有するとともに貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体4を有し、筒状体は、筒内部に設けられる熱膨張材が熱を受けて膨張する際に熱膨張材が主として径内側へ膨張するための外壁となるよう構成されるとともに、熱膨張材の一部が筒状体の径外方の外部領域に延出することを許容する延出許容部42を備え、延出許容部は、筒状に形成された筒状体の周方向他端部の径内方に配置される内方部441に対して周方向他端側で隣り合う隣接部分442に少なくとも配置され、隣接部分は、熱膨張材を内面側に設置可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するように形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設置するための熱膨張材取付具であって、
耐火性を有するとともに前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体を有し、
前記筒状体は、筒内部に設けられる前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に前記熱膨張材が主として径内側へ膨張するための外壁となるよう構成されるとともに、前記熱膨張材の一部が前記筒状体の径外方の外部領域に延出することを許容する延出許容部を備え、
前記延出許容部は、筒状に形成された前記筒状体の周方向他端部の径内方に配置される内方部に対して周方向他端側で隣り合う隣接部分に少なくとも配置され、
前記隣接部分は、前記熱膨張材を内面側に設置可能である熱膨張材取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内外又は内部を区画する区画体を貫通するよう形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設けるための熱膨張材取付具、及び、前記熱膨張材取付具を備える耐火区画貫通具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁に形成された貫通孔への耐火工法に用いる耐火スリーブとして、特許文献1に記載の耐火スリーブが知られている。耐火スリーブは、円筒形状のスリーブ本体と、スリーブ本体の軸線方向一端部から径外方に延びるフランジプレートと、を備え、スリーブ本体は、半割れ形状の一対のスリーブ片を組み合わせて構成される。このような耐火スリーブは、一対のスリーブ片を組み合わせてスリーブ本体を構成し、フランジプレートが壁に当接するまでスリーブ本体を貫通孔に挿通することで、壁に形成された貫通孔に取り付けられる。また、スリーブ本体から径外方に延びるフランジプレートで貫通孔の外縁部分を隠蔽できる。そして、壁体に取り付けられたスリーブ本体の内部に熱膨張性耐火パックを充填することで、スリーブ本体が貫通孔の内壁に圧着するとされている。
【0003】
以上のような耐火スリーブによれば、火災が発生した際に、スリーブ本体の内部に充填された熱膨張性耐火パックが膨張し、スリーブ本体の内部空間を閉塞するため、貫通孔からの延焼を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4196383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のような耐火スリーブにおいては、熱膨張性耐火パックが膨張してもなお延焼が生じる場合があり、改善が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、より確実に延焼することを抑制できる熱膨張材取付具、及び前記熱膨張材取付具を備える耐火区画貫通具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱膨張材取付具は、建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するように形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設置するための熱膨張材取付具であって、耐火性を有するとともに前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体を有し、前記筒状体は、筒内部に設けられる前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に前記熱膨張材が主として径内側へ膨張するための外壁となるよう構成されるとともに、前記熱膨張材の一部が前記筒状体の径外方の外部領域に延出することを許容する延出許容部を備え、前記延出許容部は、筒状に形成された前記筒状体の周方向他端部の径内方に配置される内方部に対して周方向他端側で隣り合う隣接部分に少なくとも配置され、前記隣接部分は、前記熱膨張材を内面側に設置可能であるよう構成される。
【0008】
かかる構成によれば、延出許容部が隣接部分に設けられるので、筒状体の内部に設けられる熱膨張材が、筒状体の内部で径内方へ膨張するだけでなく、延出許容部を介して隣接部分において径外方にも延出する。よって、内方部が周方向他端部の径内方に位置することにより、隣接部分が周方向他端部より径内方に位置することで段が形成され、該段の部分において筒状体の外周面及び貫通孔の内壁の間に隙間が形成されたとしても、延出許容部から延出した熱膨張材によって該隙間を閉塞でき、区画体に形成された貫通孔を全体的に塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0009】
また、前記延出許容部は、前記筒状体の径方向に貫通する延出孔を備え、前記延出孔は、軸線方向に長い孔であるよう構成される、または、軸線方向に離間して複数設けられることもできる。
【0010】
かかる構成によれば、延出孔は軸線方向に連続した長い孔である、又は、隣接部分において延出孔が軸線方向に離間して複数設けられるので、軸線方向における貫通孔の内壁と筒状体との位置関係がずれたとしても、熱膨張材によって筒状体の外周面と貫通孔の内壁の間に形成される隙間を閉塞できる。
【0011】
また、本発明の熱膨張材取付具は、建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するように形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設置するための熱膨張材取付具であって、耐火性を有するとともに、前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成され、筒状に形成された状態で内部に設けられる前記熱膨張材が主として径内側へ膨張するための外壁となる筒状体を有し、前記筒状体は、筒状に形成された状態において前記筒状体の周方向他端部の径内方に配置される内方部と、前記内方部に周方向他端側で隣り合う隣接部分と、を備え、前記隣接部分は、外周面に熱膨張材を取り付けることができる外周取付部を備えるよう構成される。
【0012】
かかる構成によれば、外周取付部によって隣接部分の外周面に熱膨張材を取り付け可能であるので、外周取付部に取り付けられた熱膨張材が隣接部分の径外方に膨張することができる。よって、内方部が周方向他端部の径内方に位置することにより、隣接部分が周方向他端部より径内方に位置することで段が形成され、該段の部分において筒状体の外周面及び貫通孔の内壁の間に隙間が形成されたとしても、熱膨張材によって該隙間を閉塞でき、区画体に形成された貫通孔を全体的に塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0013】
また、本発明の耐火区画貫通具は、建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するように形成された貫通孔に挿通される耐火区画貫通具であって、耐火性を有するとともに、前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体を有する熱膨張材取付具と、熱を受けて膨張する熱膨張材と、を備え、前記筒状体は、筒状に形成された状態において前記筒状体の周方向他端部の径内方に配置される内方部と、前記内方部に周方向他端側で隣り合う隣接部分と、を備え、前記隣接部分は、前記熱膨張材が前記隣接部分において径外方へ膨張可能となるように構成されるように構成される。
【0014】
かかる構成によれば、隣接部分の径外方に熱膨張材が延出できるので、隣接部分が周方向他端部より径内方に位置することで段が形成され、該段の部分において筒状体の外周面及び貫通孔の内壁の間に隙間が形成されたとしても、熱膨張材によって該隙間を閉塞でき、区画体に形成された貫通孔を全体的に塞いで確実に延焼を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より確実に延焼することを抑制できる熱膨張材取付具、及び前記熱膨張材取付具を備える耐火区画貫通具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る耐火区画貫通具の内面を示す図である。
図2】同耐火区画貫通具の外面を示す図である。
図3】同耐火区画貫通具の側面図である。
図4】同耐火区画貫通具を筒状にした状態を示す図である。
図5】同耐火区画貫通具を貫通孔に挿入した状態を示す図である。
図6図5に示す耐火区画貫通具の内部を示す断面図である。
図7a図6に示すVII部の拡大図であって、折曲部が閉じた状態を示す図である。
図7b図6に示すVII部の拡大図であって、折曲部が開いた状態を示す図である。
図8図5に示すVIII-VIII断面図である。
図9図5に示す耐火区画貫通具の火災時における状態を示す図である。
図10図9に示すX-X断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る耐火区画貫通具を示す図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る耐火区画貫通具を貫通孔に挿入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態の耐火区画貫通具1について図1乃至図10を参照して説明する。説明の便宜上、手前側及び奥側は区画体7に形成された貫通孔7aの方向を基準に(具体的には図5に示す方向を基準に)説明する。また、軸線方向は、耐火区画貫通具1の軸線方向を基準に、周方向は、筒状に形成された耐火区画貫通具1の周方向を基準に(具体的には図1に示す方向を基準に)説明する。さらに、径方向は、筒状に形成された耐火区画貫通具1の径方向(具体的には、図1の紙面を貫通する方向)を基準に説明する。
【0018】
耐火区画貫通具1は、建築物の内外又は内部を区画する区画体7に形成された貫通孔7aに挿通され、火災発生時に、貫通孔7aを介した延焼を抑制するために用いられる。本実施形態の区画体7は厚み方向に離間して2枚の壁体71が設けられる中空壁である。また、区画体7に挿通された耐火区画貫通具1の内部には、長尺体8(具体的には配管や配線の束)が挿通される。
【0019】
耐火区画貫通具1は、図1乃至図3に示すような板状体を、図4に示すように筒状にして形成され、筒状の状態で貫通孔7aに挿入可能である。具体的に、耐火区画貫通具1は、内部に熱膨張材3を設置することができる熱膨張材取付具2と、熱膨張材取付具2の内部に設置され、熱を受けて膨張する熱膨張材3と、を備える。
【0020】
図1乃至図4に示すように、熱膨張材取付具2は、筒状体4と、筒状体4の外周面に設けられる位置決め部5と、筒状体4の内部に取付けられる閉塞部材6と、を備える。
【0021】
筒状体4は、金属製の薄板体から構成されており、図1乃至図3に示す展開状態から図4に示すような筒状に手で丸めることができる程度の硬さを有する。また、筒状体4は、内部に設けられる熱膨張材3が主として径内方に膨張するための外壁となる外壁部41と、内部に設けられる熱膨張材3の一部が筒状体4の径外方に延出することを許容する延出許容部42と、閉塞部材6が取付けられる被取付部43と、筒外方に折り曲げることで貫通孔7aが形成された区画体7への筒状体4の取付を補助する爪部411、を備える。また、筒状体4は、周方向一端部を構成する一端部分44と、周方向他端部を構成する他端部分45と、を備える。
【0022】
図1に示すように、一端部分44における筒状体4の軸線方向他端側には、他端部分45に係止可能な一端側係止部44aが形成されている。他端部分45における筒状体の軸線方向他端側には、一端側係止部44aに係止可能な他端側係止部45aが形成されている。具体的には、一端側係止部44aは、一端部分44の軸線方向他端部に切り欠き状に形成され、周方向に沿って所定間隔離間して複数設けられている。他端側係止部45aは、他端部分45の軸線方向他端部の1か所に切り欠き状に形成され、一端側係止部44aのいずれか1つに係止するように構成されている。
【0023】
図4図6及び図8に示すように、一端部分44は他端部分45に対して筒状体4の径方向内方側に配置される。内方部441は、一端部分44のうち他端部分45の径方向内方側に配置される部分である。また、外方部451は、他端部分45における内方部441の径方向外方側に配置される部分である。以下説明においては、図4に示すように、周方向一端側に最も近い位置の一端側係止部44aが他端側係止部45aに係止する場合について説明する。
【0024】
図8に示すように、隣接部分442は、一端部分44のうち他端部分45との重なり部分に隣接する部分である。
【0025】
図1乃至図4に示すように、外壁部41は、内部に熱膨張材3が設けられるとともに、内部に設けられた熱膨張材3が径内方に膨張するための外壁となる。言い換えると、外壁部41は、内部に熱膨張材3を設けることができる空間を画定するとともに、内部に設けられた熱膨張材3を薄板材で周方向全周に亘って囲う。外壁部41は、熱膨張材3が熱を受けて膨張する力によって破断等しない程度の強度を有する。このような外壁部41は、内部に設けられる熱膨張材3が熱を受けて膨張する際に、熱膨張材3を径外方から押さえ、熱膨張材3が径外方に膨張することを抑制するように構成されており、膨張した熱膨張材3が少なくとも筒状体4と長尺体8の間を閉じる程度に内部に膨張するための外壁となる。なお、本実施形態の熱膨張材3は、熱膨張材3自体の粘着性によって外壁部41に粘着して取り付けられているが、爪部411を筒内方に折り曲げることで熱膨張材3に対して係止して、熱膨張材3の外壁部41への取り付けを補助させることもできる。
【0026】
延出許容部42は、筒状体4の内部に設けられた熱膨張材3が径外方の外部領域に延出することを許容する部位である。延出許容部42は、複数の一周延出許容部421と、周方向において一端部分44に設けられる複数の局所延出許容部425と、を備える。各一周延出許容部421及び各局所延出許容部425は、それぞれ筒状体4を構成する薄板体を厚み方向に貫通するように形成された延出孔42a,42bを1つ備える。延出許容部42は、熱膨張材3が膨張する際に、その一部が各延出孔42a,42bを介して径外方に延出することを許容する。延出孔42a,42bは、筒状体4の内部に設けられた熱膨張材3が熱膨張したときに径外方に延出可能な程度の大きさの長孔であり、孔の長手方向が周方向に沿い、短手方向が軸線方向に沿うように配置されている。各延出孔42a,42bの短手方向の幅は1mm~10mmの間で設定されている。
【0027】
各一周延出許容部421は、それぞれ周方向に延びる長孔としての延出孔42aを有しており、各延出孔42aが筒状体4の周方向に一周連続して延びるようにそれぞれの一周延出許容部421が配置されている。即ち、一周延出許容部421は、それ1つで熱膨張材3が筒状体4の一周に亘って径外方に延出することを許容するものではなく、複数の一周延出許容部421が周方向で連続して配置されることで、結果として熱膨張材3が筒状体4の一周に亘って径外方に延出することができるようになる。
【0028】
延出孔42aは、他の延出孔42aと周方向にも軸線方向にも所定間隔をあけるように配置されている。各延出孔42aは、軸線方向に隣接する延出孔42aと、周方向においてオーバーラップするように設けられている。即ち、延出孔42aは、軸線方向で離間して隣り合う他の延出孔42aと、孔の長手方向の端部同士が、周方向において一部重なり合うように配置されている。
【0029】
さらに、延出孔42aは、他の延出孔42aと軸線方向に所定距離L1だけ離間して隣り合う。延出孔42a同士の軸線方向の距離L1は、熱膨張材取付具2が設置される貫通孔7aの区画体7(特に区画体7を構成する壁体71)の厚みよりも小さく設定される。具体的に、延出孔42a同士の軸線方向の距離L1は、10mm以下に設定される。なお、延出孔42a同士の軸線方向の距離L1が区画体7の厚みよりも大きくなるように構成することもできる。
【0030】
図2に示すように、複数の局所延出許容部425は筒状体4の所定範囲内に、筒状体4の一端部分44における軸線方向の中途部分の所定範囲内に軸線方向で離間して配置されている。結果として、複数の延出孔42bは、前記軸線方向の所定範囲内において、軸線方向に離間して配置される。前記所定範囲は、例えば、筒状体4の軸線方向長さの1/4以上、より好ましくは1/2以上の範囲に亘って広がる範囲である。
【0031】
図4に示すように、各局所延出許容部425は、それぞれ周方向に延びる長孔である延出孔42bを有する。各延出孔42bは、内方部441から隣接部分442にわたって設けられている。具体的には、延出孔42bの周方向の一端部が、周方向で最も一端側に位置する一端側係止部44aよりも一端側に位置し、かつ、周方向他端部が、周方向で最も他端側に位置する一端側係止部44aよりも他端側に位置するように設けられている。このような構成であるから、延出孔42bは、どの一端側係止部44aを他端側係止部45aに係止させた場合であっても、周方向の一端部が内方部441に位置し、周方向の他端部が隣接部分442に位置する。また、延出孔42bの軸線方向長さ(長孔の幅方向長さ)は、延出孔42b同士の軸線方向での離間距離よりも小さい。
【0032】
図4に示すように、被取付部43は、筒状体4の軸線方向一端部に設けられている。即ち、被取付部43は、軸線方向で外壁部41よりも一端側に配置されており、外壁部41と軸線方向で隣接している。被取付部43は、閉塞部材6を内周面に貼り付けることができるように、内周面が孔や凹凸が形成されていない面として構成されている。なお、被取付部43は、閉塞部材6を取り付けることができる構成であれば、内周面に孔や凹凸が形成されている構成であってもよい。
【0033】
位置決め部5は、例えば、スポンジ、柔らかいゴム、発泡ポリウレタン等発泡材など帯状の弾性部材から構成され、最も軸線方向一端側に配置された一周延出許容部421よりも軸線方向一端側に、筒状体4の外周面に一周にわたって接着剤等により貼り付けられている。位置決め部5は、筒状体4が貫通孔7aに挿通された際に、筒状体4の軸線方向一端部から他端側に離間して配置された、位置決め部5の軸方向他端側の端面が区画体7の壁面に対して当接して貫通孔7aに対する筒状体4の位置決めを行うストッパの機能を有し(図5参照)、また、当接した状態で、筒状体4の外周面と貫通孔7aの内壁面との間の隙間を隠す。
【0034】
図1図2に示すように、閉塞部材6は、例えば、アルミガラスクロス等の耐火性を有する外力によって変形可能なシートで構成されており、被取付部43に取り付け可能な取付部61と、筒状体4の内周面と筒状体4に挿通された長尺体8との間を閉塞する閉塞本体部62と、長尺体8の外周面の形状に追従して変形可能な隙間遮蔽部64と、隙間遮蔽部64の形状を保持する形状保持部材65とを備えている。
【0035】
取付部61は、軸線方向他端側の端部に設けられている。具体的に、取付部61には、被取付部43に貼り付けるためのテープ(図示しない)が設けられている。取付部61は、被取付部43の内面に周方向全域にわたって貼り付けられている。
【0036】
閉塞本体部62は、長尺体8の外周面を覆う配管被覆部621と、配管被覆部621よりも取付部61側に位置する膨張規制部622と、を備える。
【0037】
隙間遮蔽部64は、例えば、ウレタン製のスポンジ材のような可燃性の弾性材料で構成されており、図3に示すように、閉塞部材6の径内方の面に接着剤で固定されている。
【0038】
形状保持部材65は、例えば、金属製のワイヤで構成されており、図3に示すように、閉塞部材6の先端部を折り返した部位に挟み込んで配置されている。形状保持部材65は、隙間遮蔽部64が配置されている部位を径外方から長尺体8を構成する配管に沿わせるように手で押えたときに変形可能かつ隙間遮蔽部64の形状を保持可能な硬さを有している。
【0039】
閉塞本体部62は、被取付部43に取り付けられた状態の取付部61の軸線方向他端部から径内方に延びるように設けられる(図6参照)。このような構成であるから、閉塞本体部62の外縁部分(後述の折曲部63)は筒状体4の軸線方向一端部よりも他端側に位置し、配管被覆部621で長尺体8を覆った場合に、閉塞本体部62の一部が筒状体4の軸線方向一端部と外壁部41の間に位置する。なお、配管被覆部621で長尺体8を覆った場合に、閉塞本体部62の全部が筒状体4の軸線方向一端部と外壁部41の間に位置するようにすることもできる。
【0040】
図1に示すように、閉塞本体部62の周方向他端部には、両面テープ66が設けられている。両面テープ66によって、閉塞本体部62の周方向の両端部同士を接着することで、閉塞本体部62を筒状に維持する。
【0041】
図3及び図7(a)(b)に示すように、閉塞本体部62と取付部61の連結部分には折曲部63が設けられている。折曲部63は、シート状の閉塞部材6の端部を外壁部41側(軸線方向他端側)が山となるように折り曲げられている部位である。折曲部63は、まず、取付部61を閉塞本体部62に対して軸線方向他端側に折り返し、次に、取付部61の折り返し端部を被取付部43に接着することで、軸線方向他端側が山となる折曲部63が形成されている。なお、本実施形態では、取付部61は閉塞本体部62に対して1回折り返されているが、2回以上折り返してもよい。折曲部63は、被取付部43の軸線方向他端部に配置されており、被取付部43の軸線方向長さ分だけ筒状体4の軸線方向一端部から他端側に離間して配置されている。このような折曲部63は、閉塞本体部62が径方向内方側に引っ張られた場合に、引っ張る力を受けて図7(a)に示す閉じた状態から図7(b)に示すように広がる状態になる。
【0042】
熱膨張材3は、熱膨張性があるとともに、耐火性を有する部材で、難燃性、準不燃性、又は不燃性を有している。具体的に、熱膨張材3は、火災で発生する熱を受けて、熱膨張材取付具2の内部を閉塞することができる程度の膨張性能を有する。熱膨張材3は、図1に示すように、熱膨張材取付具2の内部の複数箇所に設けられる。具体的に、熱膨張材3は、筒状体4の内部に設けられる第一熱膨張材31と、閉塞部材6の内部に設けられる第二熱膨張材32と、を備える。
【0043】
第一熱膨張材31は、筒状体4の径方向内側となる面(長尺体側となる面)における外壁部41及び延出許容部42に対応する部位に、周方向の一端部から他端部にわたって設けられている。第一熱膨張材31は、筒状体4の内面に、第一熱膨張材31自体の自己粘着性によって貼り付けられている。
【0044】
第二熱膨張材32は、第一熱膨張材31と同様に、閉塞部材6の径方向内側となる面(長尺体側となる面)に、周方向の一端部から他端部にわたって設けられている。また、第二熱膨張材32は、隙間遮蔽部64と軸線方向において隣り合うように、隙間遮蔽部64の軸線方向他端側に設けられている。第二熱膨張材32は、閉塞部材6の内面に第一熱膨張材31自体の自己粘着性によって貼り付けられている。
【0045】
以上の耐火区画貫通具1の使用方法について図5乃至図10を参照して説明する。初めに、耐火区画貫通具1を貫通孔7aに取り付ける方法について図5乃至図8を参照して説明する。
【0046】
図5に示すように、耐火区画貫通具1は、筒状に形成されて、建築物の区画体7に形成された貫通孔7aに挿通して取り付けられる。本実施形態の区画体7は、厚み方向に離間して設けられる2枚の壁体71によって構成され、壁体71同士の間に空間が形成された中空壁である。また、このような貫通孔7aには長尺体8が挿通される。以下説明においては、予め長尺体8が挿通された貫通孔7aに耐火区画貫通具1を取り付ける場合について説明する。
【0047】
耐火区画貫通具1を貫通孔7aに取り付ける際には、まず、展開した状態の耐火区画貫通具1を手で丸めて筒状に変形させ、長尺体8の周囲を覆う。次に、筒状体4の一端側係止部44aを他端側係止部45aに係止させた後、閉塞部材6に設けられた両面テープ66の離型紙をはがして、両面テープ66の粘着面を介して、閉塞部材6の周方向一端部と他端部を接着させる。
【0048】
次に、長尺体8の周囲を覆った状態の耐火区画貫通具1を、筒状体4を貫通孔7aに対向配置させて、手前側から奥側に向かって貫通孔7aに挿通させ、位置決め部5が貫通孔7aの手前側の壁面に当接した時点で挿通完了とする。挿通完了後、筒状体4に軽く力を加えて、一端側係止部44a,他端側係止部45aの係合を解除する。すると、筒状体4は、それ自体の弾性復元力により拡径し、外面が貫通孔7aの内壁に沿う状態となる。貫通孔7aに挿通完了した筒状体4の軸線方向一端部は、貫通孔7aの手前側の壁面に対して手前側に突出した状態となっている。耐火区画貫通具1を貫通孔7a内の所定の位置まで挿通させると、図5に示すように、位置決め部5の軸線方向他端側(奥側)に隣接して設けられる各一周延出許容部421が手前側の壁体71の貫通孔7aの内壁に対向して配置される。一方、いずれかの局所延出許容部425は、手前側の壁体71よりも奥側、具体的には、壁体71,71間の中空部及び奥側の壁体71の貫通孔7aの内壁に対向して配置される。局所延出許容部425は、筒状体4の軸線方向に離間して複数設けられているので、区画体7を構成する一対の壁体71,71の離間距離が異なったり、耐火区画貫通具1を貫通孔7aに挿通する際に誤差が発生したりした場合であっても、いずれかの局所延出許容部425を貫通孔7aの奥側の内壁に対向させることができる。
【0049】
なお、耐火区画貫通具1を貫通孔7aの所定の位置に配置させると、図8に示すように、筒状体4の一端部分44の内方部441と他端部分45の外方部451とが径方向で重なり合った状態となるため、外方部451の外周面と隣接部分442の外周面との間に耐火区画貫通具1の厚み分の段4Aが形成される。そのため、貫通孔7aの内壁と隣接部分442との間に隙間が形成される。
【0050】
耐火区画貫通具1を貫通孔7aに挿通させてから、閉塞部材6で筒状体4の内周面と長尺体8の外周面との間を閉塞する。具体的には、図7(a)に示すように、閉じた状態の折曲部63を図7(b)に示すように折曲部63を開き方向に変形させ、閉塞本体部62の膨張規制部622が筒状体4の内周面から径内方に向かって延びる状態とし、膨張規制部622で筒状体4の内周面と長尺体8の外周面との間を閉塞する。ここで、折曲部63(膨張規制部622の外縁部分)は、筒状体4の軸線方向一端部から他端側に離間した位置に配置されているので、径内方に延びる膨張規制部622の少なくとも一部が筒状体4の内部に位置する。図6に示すように、本実施形態では膨張規制部622全体が径方向及び軸線方向に交差する方向に延びる(径方向に対して斜めに延びる)状態とされるが、このような構成に限らず、例えば、膨張規制部622の外縁部分から径内方の途中部分までが筒状体4の径方向に沿って延び、途中部分よりも径内方の部分が径方向に対して斜めに延びるように構成することもできるし、膨張規制部622全体が径方向に沿って延びるように構成することもできる。
【0051】
次に、配管被覆部621を長尺体8の外周面に装着させる。配管被覆部621は、それ自体の保形性によって、長尺体8の外周面に装着された状態を維持する。
【0052】
配管被覆部621が長尺体8の外周面に装着されると、隙間遮蔽部64が長尺体8の外周面の形状に追従するように変形して長尺体8と配管被覆部621の間を塞ぐ。具体的には、隙間遮蔽部64が長尺体8の外周面に形成された凹凸や、複数の配管や配線の間に形成される谷間部分の形状に追従してすることで、配管被覆部621と長尺体8との間を塞ぐ。また、隙間遮蔽部64は、配管被覆部621に長尺体8の外周面に沿わせるように力を加えると、形状保持部材65によって長尺体8側に押えられた状態が保持され、長尺体8の外周面の形状に追従する状態を維持する。
【0053】
次に、貫通孔7aの近傍で火災が発生した場合について図9及び図10を参照して説明する。
【0054】
図9に示すように、貫通孔7aの近傍で火災が発生した場合には、耐火区画貫通具1の熱膨張材3(第一熱膨張材31及び第二熱膨張材32)が熱を受けて膨張する。なお、火災発生から少なくとも熱膨張材3が膨張するまでの間は、閉塞部材6によって、筒状体4と長尺体の間が閉塞されているので、炎が筒状体4を介して貫通孔7aの手前側から奥側又は奥側から手前側に流れることを抑制できる。そのため、熱膨張材3が膨張するまでの間にも延焼を抑制できる。一方、耐火区画貫通具1のうち耐火性のない部材、すなわち、隙間遮蔽部64及び位置決め部5は燃焼又は融解(以下、焼失と称する。)する。
【0055】
第一熱膨張材31は熱を受けると、径方向及び軸線方向に広がろうとする。しかし、筒状体4の被取付部43に閉塞部材6の取付部61が貼着されているため、第一熱膨張材31は、膨張規制部622によって、軸線方向一端側(手前側)へ広がることを規制される。具体的には、膨張規制部622が軸線方向一端側(手前側)に広がろうとする第一熱膨張材31に対する抵抗として機能するので、第一熱膨張材31は、まず筒状体4の径内方に広がりつつ延出孔42a,42bを介して径外方に延出する。その結果として膨張規制部622が第一熱膨張材31の軸線方向一端側(手前側)への広がりを規制する。
【0056】
その結果、径内方に膨張する第一熱膨張材31によって筒状体4の内部を閉塞しつつ、延出許容部42の延出孔42a,42bを介して径外方に延出して膨張する第一熱膨張材31によって筒状体4の外周面と貫通孔7aの内壁の間を確実に閉塞することができる。
【0057】
図10に示すように、外方部451の内周面に位置する第一熱膨張材31が膨張すると、内方部441が径内方に押され、一端部分44全体が径内方に移動する。それにともない、内方部441に隣接する隣接部分442も外方部451から径内方に離れる方向に移動する。その結果、隣接部分442に形成された段4Aの径方向における幅が拡大し、設置時に隣接部分442と貫通孔7aの内壁の間に形成されていた隙間がさらに拡大しようとする。
【0058】
しかしながら、隣接部分442に設けられた延出許容部42(複数の一周延出許容部421のうち隣接部分442に配置されるもの及び局所延出許容部425)から径外方に第一熱膨張材31が延出するので、隣接部分442と貫通孔7aの内壁の間に形成された隙間を延出した第一熱膨張材31で塞ぐことができる。図9における、手前側の壁体71と隣接部分442の隙間を隣接部分に配置された一周延出許容部421から延出した熱膨張材3が閉塞し、奥側の壁体71と隣接部分442の隙間を局所延出許容部425から延出した熱膨張材3が閉塞する。
【0059】
また、第二熱膨張材32は、熱を受けて径方向内方に膨張し、閉塞本体部62(配管被覆部621)と長尺体8の外周面との隙間を閉塞する。
【0060】
なお、第一熱膨張材31が十分に膨張した後で、閉塞部材6及び第二熱膨張材32は、火災による熱や風で、筒状体4から脱落したり、焼失したりすることがある。このような場合であっても、第一熱膨張材31が十分に膨張しているので、延焼を抑制することができる。即ち、閉塞部材6は、少なくとも第一熱膨張材31が膨張して貫通孔7aの内部を塞ぐまで筒状体4の内面と長尺体8の外面の間を閉塞していれば、貫通孔7aを介した延焼を抑制できる。本実施形態では、閉塞部材6が筒状体4の内面に取り付けられているので、火災により発生した火が取付部61に直接あたることを抑制できるので、少なくとも第一熱膨張材31が膨張して貫通孔7aの内部を塞ぐまで閉塞部材6が筒状体4から脱落することを抑制できる。
【0061】
以下、上記実施形態の熱膨張材取付具2及び耐火区画貫通具1が奏する作用効果について説明する。
【0062】
本実施形態の熱膨張材取付具2によれば、延出許容部42の延出孔42a,42bが隣接部分442に設けられるので、筒状体4の内部に設けられる熱膨張材3を、筒状体4の内部で径内方へ膨張させるだけでなく、延出許容部42を介して隣接部分442において径外方にも延出させることができる。そのため、隣接部分442の外周面に段4Aが形成され、さらに、火災の発生により熱膨張材3が膨張して該段4Aの幅(隙間)がより大きくなり、筒状体4の外周面及び貫通孔7aの内壁の間に隙間が形成されたとしても、熱膨張材3によって該隙間を閉塞でき、区画体7に形成された貫通孔7aをくまなく塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0063】
また、延出孔42bを隣接部分442の軸線方向に離間した複数位置に設けたことにより、熱膨張材3が隣接部分442の軸線方向に離間した複数位置で径外方に延出可能であるため、軸線方向における貫通孔7aの内壁と筒状体4との位置関係がずれたとしても、熱膨張材3によって筒状体4の外周面と貫通孔7aの内壁の間に形成される隙間を閉塞できる。
【0064】
また、一周延出許容部421の近傍に位置決め部5を備えたことにより、一周延出許容部421を一方の区画体7の貫通孔7aの内壁と対向する状態で、一方の区画体7に当接させることができる。よって、筒状体4を貫通孔7aに挿通させる場合において、一周延出許容部421が区画体7に隠れて視認できなくなった場合でも、位置決め部5を区画体7に当接させることで、一周延出許容部421を貫通孔7aの内壁に対向させた適切な位置に設置することができる。
【0065】
また、取付部61が筒状体4の内周面に取り付けられているので、火災が発生した場合に火が取付部61に直接あたることを抑制できる。よって、閉塞部材6が筒状体4から脱落することを抑制できるので、耐火性能が高まる。
【0066】
さらに、閉塞本体部62が筒状体4の軸線方向の一端側の端部から軸線方向他端側に離間して配置されるので、膨張する熱膨張材3が軸線方向に広がることを閉塞部材6で抑制することができる。よって、熱膨張材3が確実に外壁部41の径内方に広がるため、確実に熱膨張材3で筒状体4の内部を閉塞して延焼を抑制できる。
【0067】
また、外壁部41と被取付部43が軸線方向で隣り合って設けられるので、熱膨張材3に近い位置に閉塞部材6を配置することができる。よって、熱膨張材3が軸線方向に広がることを確実に抑制できる。
【0068】
さらに、閉塞部材6が変形可能なシート状であるので、閉塞本体部62の径内方の端部を筒状体4に挿通される長尺体8の外形に合わせて変形させることができる。よって、長尺体8の外形にかかわらず閉塞本体部62を設けることができるので、熱膨張材3が軸線方向に広がることを確実に抑制できる。
【0069】
また、閉塞部材6に対して径内方に引っ張る力がかかった場合に、閉塞部材6が折曲部63を支点として開き方向に変形するので、閉塞部材6の取付部61に被取付部43から剥がれる方向への力が直接かかることを抑制できる。よって、閉塞部材6が筒状体4から剥がれたり脱落したりすることを抑制できる。
【0070】
さらに、取付部61が筒状体4の軸線方向における一端部に位置するので、筒状体4に設けられる閉塞部材6の径内方の端部を長尺体8の外形に沿わせる作業をしやすい。
【0071】
さらに、閉塞部材6は、外縁部分が取付部61によって筒状体4に取り付けられ、内縁部分が配管被覆部621によって長尺体8に支持されるので、膨張規制部622の内縁側及び外縁側の両端部が支持された状態となる。よって、第一熱膨張材31が軸線方向一端側に膨張しようとした際に、膨張規制部622が確実に該膨張に対する抵抗となることができるので、確実に熱膨張材3で筒状体4の内部を塞ぐことができる。
【0072】
さらに、火災が発生した場合に、閉塞部材6によって、筒状体4の内部に設けられる熱膨張材3(第一熱膨張材31)が軸線方向に膨張することを抑制し、確実に筒状体4の内部を熱膨張材3で閉塞しつつ、貫通孔7aの内壁と筒状体4の外周面の間に形成される隙間を延出許容部42の延出孔42a、42bから延出した熱膨張材3で塞ぐことができる。その結果、貫通孔7aの内部をくまなく熱膨張材3で閉塞することができるので、貫通孔7aを介した延焼を抑制することができる。
【0073】
さらに、本実施形態の耐火区画貫通具1によれば、筒状体4の内部に設置された熱膨張材3が隣接部分442の径外方に延出できるので、隣接部分442の外周面に段4Aが形成され、該段4Aによって筒状体4の外周面及び貫通孔7aの内壁の間に隙間が形成されたとしても、熱膨張材3によって該隙間を閉塞でき、区画体7に形成された貫通孔7aを全体的に塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0074】
また、内方部441の径外方(外方部451の径内方)には熱膨張材3が位置する。よって、筒状体4における内方部441と内方部441の外方部451との間を内方部441の径外方に位置する熱膨張材3で塞ぎ、且つ、径外方に位置する熱膨張材3の膨張によって内方部441が径内方に押されることで生じた筒状体4の外周面と貫通孔7aの内壁の間の隙間を局所延出許容部425から延出した熱膨張材3で塞ぐことができる。
【0075】
さらに、取付部61が筒状体4の内周面に取り付けられているので、火災が発生した場合に火が取付部61に直接あたることを抑制できる。よって、閉塞部材6が筒状体4から脱落することを抑制できるので、耐火性能が高まる。
【0076】
また、閉塞本体部62が筒状体4の軸線方向の一端側の端部から軸線方向他端側に離間して配置されるので、筒状体4の内部に設置された熱膨張材3が軸線方向に広がることを閉塞部材6で抑制することができる。よって、熱膨張材3が確実に外壁部41の径内方に広がるため、確実に熱膨張材3で筒状体4の内部を閉塞して延焼を抑制できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0078】
例えば、熱膨張材取付具2が中空壁に形成された貫通孔7aに挿入される場合について説明したが、このような構成に限らず、区画体7は、中空壁や中空床でもよいし、中実壁でも中実床であってもよい。
【0079】
また、本実施形態では、一周延出許容部421と局所延出許容部425の両方を有しているが、このような構成に限らず、いずれか一方であってもよい。例えば、熱膨張材取付具2が挿通される区画体7が、中実壁や中実床のような1枚の壁体71を備える構成の場合には、一周延出許容部421と局所延出許容部425のいずれかのみを備える構成を採用したとしても、一周延出許容部421又は局所延出許容部425のいずれかの延出孔42a,42bから延出した熱膨張材3によって、貫通孔7aと隣接部分442の間の隙間を塞ぐことができる。
【0080】
さらに、熱膨張材取付具2は、閉塞部材6を備え、閉塞部材6が筒状体4の内周面に取り付けられる場合について説明したが、このような構成に限られず、閉塞部材6を備える場合であっても、閉塞部材6が筒状体4の外周面に取り付けられる構成とすることもできる。また、閉塞部材6を備えない構成とすることもできる。
【0081】
また、筒状体4は1枚の薄板体を筒状に手で丸めたもので説明したが、このような構成に限らず、例えば、複数の円弧状の薄板体を組み合わせて、一部が開口した円筒体に構成してもよい。
【0082】
また、各延出許容部42は、1つの延出孔42a,42bを有する場合について説明したが、このような構成に限られず、各延出許容部42が、周方向に並んで配置された径方向に貫通する複数の小孔を有し、複数の小孔のそれぞれから熱膨張材3が径外方に延出可能な構成とすることもできる。また、延出孔42a,42bを有する場合においても、延出孔42a,42bが周方向に沿って延びる長孔である場合に限られず、軸線方向に沿って延びる長孔として構成することや、軸線方向及び周方向に交差する方向に延びる長孔として構成することもできる。要するに、延出許容部42は、内面に配置された熱膨張材3が径外方に延出可能であればよい。延出孔42a,42bを軸線方向に沿って延びる長孔として構成する場合には、周方向に離間して複数配置することで、内方部441及び隣接部分442の範囲が変わったとしても確実に隣接部分442に熱膨張材3を延出させることができる。
【0083】
また、局所延出許容部425としての延出孔42bは、筒状体4の内方部441及び隣接部分442の範囲に亘るように形成されているが、内方部441には形成されていなくてもよく、少なくとも隣接部分442に設けられていればよい。
【0084】
さらに、熱膨張材3は、熱膨張材3自体の自己粘着性で筒状体4に取り付けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、板状の熱膨張材3と筒状体4が接着剤などで接着されていていたり、爪部411で係止するように構成されたりすることもできる。
【0085】
また、熱膨張材3と筒状体4はあらかじめ一体として構成されている場合について説明したが、このような場合に限らず、筒状体4を貫通孔7aに取り付けたのちに熱膨張材3を筒状体4の内部に設けることもできる。
【0086】
さらに、熱膨張材3は、板状体である場合について説明したが、このような場合に限らず、ペースト状に構成することもできるし、弾性変形する柔軟な発泡体であってもよい。ペースト状の熱膨張材3を適用する場合には、例えば、袋体に充填された熱膨張材3を筒状体4の内部に設けることができる。
【0087】
また、筒状体4は、鋼製の薄板体であるとして説明したが、このような構成に限らず、耐火性があり、内部に設けられた熱膨張材3を内方に膨張するよう誘導できる種々の材料で構成することができる。
【0088】
さらに筒状体4は、薄板体であって、筒状に丸めて貫通孔7aに挿通される場合について説明したが、このような構成に限らず、筒状体4は、あらかじめ筒状に構成されていてもよい。
【0089】
また、位置決め部5は、発泡樹脂製のスポンジ材である場合について説明したが、このような構成に限られない。筒状体4を貫通孔内の所定の位置に配置できれば良いので、例えば、筒状体4の外周面に位置確認用のマーキングが施されているだけでもよい。このような構成の場合には、マーキングを所定位置(例えば、貫通孔7aの手前側の壁面の位置)に合わせることで、貫通孔7aに対する筒状体4の位置を決めることができる。また、位置決め部5を備えない構成を採用することもできる。このような構成を採用する場合には、例えば、一周延出許容部421を目印として貫通孔7aに対する筒状体4の位置を決めることや、筒状体4の一端部の貫通孔7aからの突出量を目安に貫通孔7aに対する筒状体4の位置を決めることができる。要するに、筒状体4を貫通孔7aに対して適切な位置に配置することができればよく、そのための具体的な構成は限定されない。
【0090】
さらに、閉塞部材6は、折曲部63で1回折り曲げられる場合について説明したが、このような構成に限らず、折曲部63がなくてもよいし、折曲部63を複数回折り曲げた構成とすることもできる。
【0091】
また、膨張規制部622(閉塞本体部62)は、被取付部43の軸線方向他端部から径内方に延びるように筒状体4に設けられる場合について説明したが、このような構成に限らない。閉塞本体部62(膨張規制部622)が筒状体4の軸線方向一端部よりも他端側に位置していれば、膨張する熱膨張材3が軸線方向一端側に広がろうとする際の抵抗として機能して、膨張規制部622によって熱膨張材3が軸線方向一端側に広がることを抑制できる。
【0092】
さらに、取付部61は被取付部43に対して貼り付けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、種々の構成で被取付部43に対して係止する構成とすることができる。例えば、被取付部43に設けられた爪に対して係止することで被取付部43に取り付けられる構成とすることもできる。
【0093】
また、閉塞部材6は筒状体4の軸線方向の一端部にのみ設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、軸線方向の両端部に設けられるように構成することもできる。
【0094】
さらに、閉塞部材6は、外壁部41よりも軸線方向一端側の位置に取り付けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、外壁部41の内面に取り付けられる構成とすることもできる。このような構成では、取付部61が外壁部41と熱膨張材3の間に位置した状態となる。
【0095】
さらに、第一熱膨張材31は、筒状体4の内部に設けられ、熱膨張したときに延出許容部42を介して径外方に延出させる構成について説明したが、このような構成に限られず、例えば、図11に示すように、筒状体4の外周面において隣接部分442に熱膨張材3を取り付け可能な外周取付部46を備え、熱膨張材3は、外周取付部46に取り付けられる第三熱膨張材33を備え、少なくとも隣接部分442の外周面を含む範囲に第三熱膨張材33を取り付け可能な構成とすることもできる。このような構成であっても、第三熱膨張材33が筒状体4の外周面を内壁として径外方に膨張することができるため、熱膨張材3で筒状体4と貫通孔7aの内壁の間を閉塞することができる。なお、本構成において、筒状体4に外周取付部46が設けられず、第三熱膨張材33が隣接部分442の外周面に、第三熱膨張材33自体の自己粘着性や接着剤などによって貼り付けられる構成とすることもできる。
【0096】
また、閉塞本体部62は、少なくとも一部が筒状体4の軸線方向一端部から他端側に離間して配置される場合について説明したが、このような構成に限られない。例えば、図12に示すように、取付部61が被取付部43に取り付けられた状態で、取付部61と閉塞本体部62の境界が筒状体4の軸線方向一端部に位置し、閉塞本体部62が該境界から径方向内方側且つ軸線方向一端側に延びるように構成することもできる。このような構成であっても、取付部61が筒状体4の外周面に取り付けられる場合に比べて取付部61に火が直接あたることを抑制できる。なお、説明のため、図12の拡大図においては閉塞部材6を強調して記載している。
【0097】
さらに、第一熱膨張材31は、外壁部41及び延出許容部42に対応する部分にのみ配置される場合について説明したが、このような構成に限らず、外壁部41よりも軸線方向一端側まで延びるように配置することもできる。例えば、第一熱膨張材31が、筒状体4に貼り付けられた閉塞部材6の径内方に重なるように配置し、第一熱膨張材31の軸線方向一端側の端部が軸線方向における閉塞部材6の軸線方向の中途部分や軸線方向一端側部分に位置するような構成とすることもできる。このような構成の耐火区画貫通具1を貫通孔7aに設置する場合には、閉塞部材6と第一熱膨張材31の閉塞部材6に重なっている部分で筒状体4の内周面と長尺体8の外周面との間を閉塞する。
【符号の説明】
【0098】
1…耐火区画貫通具、2…熱膨張材取付具、3…熱膨張材、31…第一熱膨張材、32…第二熱膨張材、33…第三熱膨張材、4…筒状体、4A…段、41…外壁部、411…爪部、42…延出許容部、42a・42b…延出孔、421…一周延出許容部、425…局所延出許容部、43…被取付部、44…一端部分、44a…一端側係止部、441…内方部、442…隣接部分、45…他端部分、45a…他端側係止部、451…外方部、46…外周取付部、5…位置決め部、6…閉塞部材、61…取付部、62…閉塞本体部、621…配管被覆部、622…膨張規制部、63…折曲部、64…隙間遮蔽部、65…形状保持部材、66…両面テープ、7…区画体、7a…貫通孔、71…壁体、8…長尺体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12