(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079749
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】インターロイキン-2の部分アゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07K 14/55 20060101AFI20240604BHJP
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C12N 15/83 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240604BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240604BHJP
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A61K 48/00 20060101ALI20240604BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240604BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240604BHJP
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A61P 3/10 20060101ALI20240604BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240604BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240604BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240604BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240604BHJP
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A61P 17/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07K14/55 ZNA
C12N15/26
C12N15/63 Z
C12N15/83 Z
C12N1/15
C12N1/19
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A61K38/16
A61K47/60
A61P37/06
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A61P19/02
A61P29/00 101
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A61P1/04
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A61P13/12
A61P1/16
A61P25/00
A61P17/14
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044912
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2020545077の分割
【原出願日】2018-11-20
(31)【優先権主張番号】62/589,497
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516231051
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ケナン クリストファー ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ソニア エス.マジリ
(72)【発明者】
【氏名】カレブ アール.グラスマン
(72)【発明者】
【氏名】レオン リー-レン スー
(57)【要約】
【課題】本明細書には、とりわけ、IL-2受容体シグナルの部分アゴニズムの特性を示すヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテイン又はそのバリアントが開示される。
【解決手段】特に、IL-2Rγに対する結合能が低いIL-2ムテインが提供される。このようなIL-2ムテインは、たとえば、1個以上のIL-2及び/又はIL-15機能の低減又は阻害が有用である用途(例えば、自己免疫疾患又は症状の治療において)でIL-2部分アゴニストとして有用である。また、かかるIL-2ムテインをコードする核酸、かかるIL-2ムテインを作製する方法、かかるIL-2ムテインを含む医薬組成物、及びかかる医薬組成物を使用する治療方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1のポリペプチドに対し少なくとも95%の配列同一性を有するヒトインターロイキン2(hIL-2)ムテインであって、
配列番号1のアミノ酸配列に従うナンバリングによるL18R、Q22E、及びQ126Kのアミノ酸置換を含み、
hIL-2アゴニストである、hIL-2ムテイン。
【請求項2】
前記hIL-2ムテインは、L18R、Q22E、及びQ126Kのアミノ酸置換を除き、配列番号1のポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項3】
前記hIL-2ムテインは、配列番号1のポリペプチドに対し1、2、3、4、又は5個のアミノ酸残基の欠失を更に含む、請求項1に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項4】
前記1、2、3、4、又は5個のアミノ酸残基の欠失は配列番号1のN末端位置にある、請求項3に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項5】
前記欠失は、[des-A1]又は[des-A1、des-P2]、[des-A1、des-P2、des-T3]、[des-A1、des-P2、des-T3、des-S4]及び[des-A1、des-P2、des-T3、des-S4、des-S5]からなる群より選択される欠失のセットである、請求項4に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項6】
前記hIL-2ムテインは、配列番号1の位置1におけるアラニン残基の欠失を含む、請求項4に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項7】
前記hIL-2ムテインは、配列番号1の位置1におけるアラニン残基の欠失を含む、請求項1に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項8】
前記ムテインは、インビボの半減期を増加するために構造的に改変されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項9】
前記改変は、(a)ヒトFc抗体断片への融合、(b)アルブミンへの融合、及び(c)ペグ化からなる群より選択される1個以上を含む、請求項8に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項10】
前記改変は、前記hIL-2ムテインに共有結合したPEG分子を含むペグ化である、請求項9に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項11】
前記PEGは、約10,000~約40,000ダルトンの平均分子量を有する少なくとも1個の直鎖または分岐PEGを含む、請求項10に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項12】
前記PEGは、リンカーを介して前記hIL-2ムテインに結合している、請求項10又は11に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項13】
前記PEGは、前記hIL-2ムテインのN末端に結合している、請求項10~12のいずれか1項に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項14】
前記PEGは、約40,000ダルトンの平均分子量を有するPEGである、請求項10~13のいずれか1項に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項15】
前記PEGは分岐PEGである、請求項10~14のいずれか1項に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項16】
前記hIL-2ムテインは、約40,000ダルトンの平均分子量を有する分岐PEGでN末端がペグ化されている、請求項15に記載のhIL-2ムテイン。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか1項に記載のhIL-2ムテインをコードする組み換え核酸。
【請求項18】
前記核酸の配列は哺乳動物の細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項17に記載の核酸。
【請求項19】
前記核酸の配列は細菌の細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項17に記載の核酸。
【請求項20】
前記核酸は少なくとも1個の制御配列に作動可能に連結されている、請求項17~19のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか1項に記載の核酸を含む組み換えベクター。
【請求項22】
前記ベクターはウイルスベクターである、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記ベクターはプラスミドである、請求項21に記載のベクター。
【請求項24】
請求項17~20のいずれか1項に記載の組み換え核酸を含む宿主細胞。
【請求項25】
請求項21~23のいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
前記宿主細胞は原核細胞である、請求項24又は25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記宿主細胞は真核細胞である、請求項24又は25に記載の宿主細胞。
【請求項28】
核酸配列は、
(a)配列番号1のポリペプチドに対し少なくとも90%の配列相同性;及び
(b)L18R、Q22E、及びQ126Kの置換;並びに
(c)配列番号1の位置1におけるアラニン残基の欠失;
を含む、hIL-2ムテインをコードする、請求項24~27のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項29】
(a)請求項1~16のいずれか1項に記載のhIL-2ムテイン;及び
(b)医薬的に許容される1又は複数の担体を含む、医薬組成物。
【請求項30】
(a)請求項21~23のいずれか1項に記載の組み換えベクター;及び
(b)医薬的に許容される1又は複数の担体を含む、医薬組成物。
【請求項31】
(a)請求項24~28のいずれか1項に記載の宿主細胞;及び
(b)医薬的に許容される1又は複数の担体を含む、医薬組成物。
【請求項32】
前記hIL-2ムテインは、
(a)配列番号1のポリペプチドに対し少なくとも90%の配列相同性;及び
(b)L18R、Q22E、及びQ126Kの置換;並びに
(c)配列番号1の位置1におけるアラニン残基の欠失;
を含み、
前記hIL-2ムテインは、約40,000ダルトンの平均分子量を有する分岐PEGでN末端がペグ化されている、請求項29~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
自己免疫疾患を治療するための請求項29~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、ジストロフィー表皮水疱症、全身性エリテマトーデス、及び移植片対宿主病からなる群より選択される、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
(a)請求項1~16のいずれか1項に記載の1個以上のhIL-2ムテイン;及び
(b)前記(a)請求項1~16のいずれか1項に記載の1個以上のhIL-2ムテインを使用するための説明書;を含むキット。
【請求項36】
(a)請求項17~20のいずれか1項に記載の核酸;及び
(b)前記(a)請求項17~20のいずれか1項に記載の核酸を使用するための説明書;を含むキット。
【請求項37】
(a)請求項21~23のいずれか1項に記載の組み換えベクター;及び
(b)前記(a)請求項21~23のいずれか1項に記載の組み換えベクターを使用するための説明書;を含むキット。
【請求項38】
(a)請求項24~28のいずれか1項に記載の宿主細胞;及び
(b)前記(a)請求項24~28のいずれか1項に記載の宿主細胞を使用するための説明書;を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月21日に出願された米国仮特許出願第62/589,497号の優先権の利益を主張する。上記出願の開示は、図面を含めて、その全体が参照により本明細書に明示的に援用される。
【0002】
連邦政府主催の研究開発に関する声明
本発明は、National Institutes of Healthにより付与されたR37 AI051321に基づく政府の支援によってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
配列表の参照
【0003】
本出願は、電子フォーマットの配列表と共に出願されている。配列表は2018年11月14日に作成された「Sequence_Listing_078430-503001WO.txt」という名称のファイルとして提供されており、サイズは約32KBである。配列表の電子フォーマットの情報は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0004】
本明細書には、とりわけ、IL-2受容体シグナルの部分アゴニズムの特性を示すインターロイキン-2ムテイン、ならびに自己免疫疾患の治療のためにそれを使用するための方法が開示される。
【背景技術】
【0005】
インターロイキン2(IL-2)は主に活性化CD4+T細胞によって産生される多能性サイトカインであり、正常な免疫応答を生ずる上で極めて重要な役割を果たす。IL-2は活性化Tリンパ球の増殖(proliferation)および増大(expansion)を促進し、B細胞の増殖を増強し、単球やナチュラルキラー細胞を活性化する。
【0006】
IL-2は正常な免疫応答におけるその生理学的役割に加えて病理応答を促進することができ、治療目標は望ましくない自己免疫または免疫抑制応答を遮断しながら、このサイトカインの望ましい作用を維持することである。ヒトIL-2Rαに対する2つのモノクローナル抗体(mAb)、つまりダクリズマブ及びバシリキシマブ、がFDAにより承認され、腎移植拒絶反応(Vincentiら、N Engl J Med 338:161(1998))、心臓移植(Hershbergerら,N Engl J Med 352:2705(2005)),multiple sclerosis(Goldら,Lancet 381:2167(2013)),and asthma(Bielekovaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:8705(2004);及びBusseら,Am J Respir Crit Care Med 178:1002(2008))において有効性を示すが、NKおよびメモリーCD8+細胞で発現される中程度の親和性IL-2Rγ受容体を介したIL-2シグナル伝達を遮断しない(Tkaczukら,Am J Transplant 2:31(2002))。抗ヒトIL-2Rβ mAb Mikβ1は、IL-2Rγ受容体を発現する細胞へのIL-2およびIL-15のトランス提示を遮断できるが(Morrisら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:401(2006))、それらの高親和性ヘテロ三量体受容体複合体を介したIL-2またはIL-15によるシスシグナル伝達の遮断には比較的効果がない(Morrisら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:401(2006);及びWaldmannら,Blood 121:476(2013))。その結果、このサイトカインの治療的に有益な効果を促進することができるが、望ましくない自己免疫または免疫抑制応答に関連する1つ以上のIL-2機能は遮断する新たなIL-2ムテインが必要である。
【発明の概要】
【0007】
本開示は一般に、それを必要とする対象においてインターロイキン2(IL-2)が媒介するシグナル伝達経路を調節するための組成物および方法を含む、免疫学および医学の分野に関する。より詳細には、いくつかの実施形態において、本開示は少なくとも1つのIL-2受容体、例えば、インターロイキン2アルファ受容体(IL-2Rα)、インターロイキン2ベータ受容体(IL-2Rβ)、インターロイキン-2ガンマ受容体(IL-2Rγ)に対し調節された親和性を有する新規のIL-2ムテインを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、炎症などの望ましくない有害な自己免疫事象の原因となる免疫細胞の活性化を促進しないIL-2部分アゴニストを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、このようなIL-2ムテインを産生するために有用な組成物および方法、ならびにIL-2シグナル伝達経路が媒介するシグナル伝達の摂動に関連する健康状態および障害の治療のための方法に関する。
【0008】
1態様において、(a)配列番号2によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して低いインターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ)に対する結合親和性;及び(b)配列番号2によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して15~95%のEmax;を有するインターロイキン2(IL-2)ムテインが提供される。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、(i)配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較してIL-2Rβ結合親和性を増加させる、配列番号1のアミノ酸配列に従うナンバリングによるL80F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fから選択される1個以上のアミノ酸置換;及び/又は、(ii)配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減させ15~95%のEmaxとし、配列番号2のアミノ酸配列に従うナンバリングによる(A)L18R及びQ22E;及び(B)第126位のアミノ酸から選択される、1個以上のアミノ酸置換;を含む。いくつかの実施形態において、配列番号2の第126位のアミノ酸置換は、Q126A、Q126C、Q126D、Q126E、Q126G、Q126H、Q126I、Q126K、Q126M、Q126R、Q126S、又はQ126Tからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Q126H、Q126K、又はQ126Mのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Q126Hのアミノ酸置換を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、半減期を増加するために構造的に改変されている。いくつかの実施形態において、改変は、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合、及びペグ化からなる群より選択される1個以上の改変を含む。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Treg細胞の増大を引き起こし、潜在的炎症性T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞又は顆粒球の増大を促進しない。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、配列番号1又は配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して少ない潜在的炎症性T細胞の増殖を誘導する。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Treg細胞の増殖を少なくとも3倍増加する、及び/又は配列番号1又は配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して少ないIFNγの分泌を誘導する。いくつかの実施形態において、前記潜在的炎症性T細胞は、CD4+IFNγ+T細胞またはCD8+IFNγ+T細胞である。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、ムテインは、CD8+T細胞及び/又は他の炎症性免疫細胞サブセットからのIFNγの分泌を誘導しない。いくつかの実施形態において、ムテインは、配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較して70~95%のEmaxを有する。1態様において、(a)低いインターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ)に対する結合親和性;及び(b)配列番号1によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して15~95%のEmax;を有するインターロイキン2(IL-2)ムテインが提供される。いくつかの実施形態において、ムテインは、配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較して、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減させ15~95%のEmaxとし、配列番号1のアミノ酸配列に従うナンバリングによる(A)L18R及びQ22E;及び(B)第126位のアミノ酸から選択される、1個以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Q126A、Q126C、Q126D、Q126E、Q126G、Q126H、Q126I、Q126K、Q126M、Q126R、Q126S、又はQ126Tからなる群より選択される配列番号1の第126位のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Q126H、Q126K、又はQ126Mのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Q126Hのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは半減期を増加するために構造的に改変されている。いくつかの実施形態において、改変は、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合、及びペグ化からなる群より選択される1個以上の改変を含む。いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテインは、調節T(Treg)細胞の増殖を増加する及び/又は潜在的炎症性T細胞の増殖を最小限で誘導する。いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテインは、Treg細胞の増大を引き起こし、潜在的炎症性T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞又は顆粒球の増大を促進しない。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、配列番号1又は配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して少ない潜在的炎症性T細胞の増殖を誘導する。いくつかの実施形態において、潜在的炎症性T細胞は、CD4+IFNγ+T細胞またはCD8+IFNγ+T細胞である。いくつかの実施形態において、潜在的炎症性T細胞は、CD4+IFNγ+T細胞またはCD8+IFNγ+T細胞である。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、Treg細胞の増殖を少なくとも3倍増加する、及び/又は配列番号1又は配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して少ないIFNγの分泌を誘導する。いくつかの実施形態において、ムテインは、CD8+T細胞及び/又は他の炎症性免疫細胞サブセットからのIFNγの分泌を誘導しない。いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテインは、配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較して70~95%のEmaxを有する。
【0010】
更なる態様において、(i)本明細書に開示されるIL-2ムテインのいずれか1つをコードする核酸、(ii)上記核酸を含むベクター、(iii)上記ベクター又は核酸を含む宿主細胞、及び(iv)本明細書に開示されるIL-2ムテインのいずれか1つ、及び/又は本明細書に開示される核酸又はベクターのいずれか、並びに医薬的に許容される賦形剤を含む滅菌医薬組成物が提供される。更なる態様において、本明細書に開示されるIL-2ムテインのいずれか1つ、本明細書に開示される核酸又はベクターのいずれか、及び/又は本明細書に開示される医薬組成物を含むシリンジおよびかかるるシリンジを含むカテーテルも開示される。
【0011】
更に別の態様において、(i)本明細書に開示されるIL-2ムテインのいずれか1つ、(ii)本明細書に開示される核酸又はベクターのいずれか1つ、(iii)本明細書に開示される核酸又はシリンジ又はカテーテルのいずれか1つ、及び/又は本明細書に開示される医薬組成物、ならびにそれを使用するための説明書を含むキットも開示される。
【0012】
別の1態様において、それを必要とする個体における自己免疫疾患を治療するための方法であって、(a)(i)本明細書に開示されるIL-2ムテインのいずれか1つ、(ii)本明細書に開示される核酸又はベクターのいずれか1つ、及び/又は(iii)本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを個体に投与することを含む、方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、ジストロフィー表皮水疱症、全身性エリテマトーデス、及び移植片対宿主病からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は移植片対宿主病である。本発明に記載の方法のいくつかの実施形態において、方法は、前記IL-2ムテイン又は本明細書に記載の医薬組成物と、該ムテインを特定の細胞タイプに標的化する抗体とを組み合わせて投与することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、細胞タイプは調節T(Treg)細胞である。いくつかの実施形態において、抗体はIl-2ムテインに共有的に又は非共有的に結合する。
【0015】
別の態様において、本明細書に記載のムテインのいずれかを生産するための方法であって、該ムテインの生産に適した条件下で、本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法を提供する。他の実施形態において、方法は、上記ムテインを単離及び/又は精製することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、上記ムテインを半減期を増加するために構造的に改変することをさらに含む。他の実施形態において、方法は、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合、及びペグ化からなる群より選択される1個以上の改変を含む改変をさらに含む。
【0016】
また、いくつかの態様において、潜在的炎症性T細胞の増殖を予防する及び/又はCD8+T細胞又は他の炎症性免疫細胞サブセットからのIFNγの分泌を予防するための方法であって、インターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ)を発現する細胞を、本明細書に記載のいずれかのIL-2ムテインに接触させることを含む、方法も提供する。他の実施形態において、潜在的炎症性T細胞は、CD4+CD44+IFNγ+T細胞又はCD8+CD44+IFNγ+T細胞である。いくつかの実施形態において、方法は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで実施される。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、半減期を増加するために構造的に改変されている。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、改変は、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合、及びペグ化からなる群より選択される1個以上の改変である。
【0017】
別の1態様において、調節T(Treg)細胞の増殖を減少するための方法であって、Treg細胞を、(i)配列番号2によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して低いインターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ)に対する結合親和性;及び(ii)配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して0~50%のEmaxを有するインターロイキン2(IL-2)ムテインに接触させることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、(i)配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較してIL-2Rβ結合親和性を増加させる、配列番号1のアミノ酸配列に従うナンバリングによるL80F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fから選択される1個以上のアミノ酸置換;及び(ii)配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減させ0~50%のEmaxとし、配列番号2のアミノ酸配列に従うナンバリングによる(A)L18R及びQ22E;及び(B)第126位のアミノ酸から選択される、1個以上のアミノ酸置換を含む。
【0018】
別の1態様において、調節T(Treg)細胞の増殖を減少するための方法であって、Treg細胞を、(i)配列番号1によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して低いIL-2Rγに対する結合親和性;及び(ii)配列番号1によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して0~50%のEmax;を有するIL-2ムテインに接触させることを含む、方法も提供される。いくつかの実施形態において、Il-2ムテインは、配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較して、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減させ0~50%のEmaxとし、配列番号1のアミノ酸配列に従うナンバリングによる(A)L18R及びQ22E;及び(B)第126位のアミノ酸から選択される1個以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、配列番号1又は配列番号2の126位におけるアミノ酸置換はQ126A、Q126C、Q126D、Q126E、Q126G、Q126H、Q126I、Q126K、Q126M、Q126R、Q126S、又はQ126Tからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Il-2ムテインはQ126H、Q126K、又はQ126Mのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、Il-2ムテインはQ126Hのアミノ酸置換を含む。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、方法は、ムテインをTreg細胞に標的化する抗体と、IL2ムテインを組み合わせて投与することをさらに含む。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、前記抗体はIl-2ムテインに共有的に又は非共有的に結合する。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、方法は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで実施される。
【0019】
本明細書に記載されている各態様と実施形態は、実施形態または態様の文脈から明示的または明確に除外されていない限り、一緒に使用できる。
【0020】
前述の要約は例示にすぎず、決して限定を意図するものではない。本明細書に記載の例示的な実施形態および特徴に加えて、本開示のさらなる態様、実施形態、目的および特徴は、図面および詳細な説明および特許請求の範囲から完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、H9バックグラウンドを用いて構築された野生型IL-2およびムテインのアミノ酸配列を示す。
【0022】
【
図2】
図2は、野生型バックグラウンドを用いて構築された野生型IL-2およびムテインのアミノ酸配列を示す。
【0023】
【
図3】
図3は、IL-2バリアントの用量応答を用いたホスホ-STAT5シグナル伝達アッセイの結果を示す。ヒトNK様YT細胞を、図に示す様々な濃度(1μM~0μM、10倍希釈)でマウス血清アルブミン(MSA)に融合した種々のヒトIL-2バリアントで15分間刺激した。Y軸は、各濃度について、WT IL-2からのp-STAT5シグナルに対して正規化された各IL-2バリアントからのp-STAT5シグナルの比を示す。
【0024】
【
図4】
図4A-Bは、ホスホ-STAT5シグナル伝達アッセイの時間経過を示す。
図4Aは、図に示す濃度のIL-2部分アゴニストで15分間刺激したYT細胞に対するp-STAT5シグナル伝達アッセイの結果を示す。Y軸は、各濃度について、WT IL-2からのp-STAT5シグナルに対して正規化された各IL-2バリアントからのp-STAT5シグナルの比を示す。
図4Aはグラフに示す異なるIL-2バリアントを1μMで用いて様々な時点でYT細胞を刺激したことを示す。Y軸は、p-STAT5シグナルの中央蛍光強度(MFI)を示す。
【0025】
【
図5A】
図5Aは、マウスにおけるIL2アゴニストの投与のための実験プロトコルを示す。
【
図5B】
図5Bは、図に示す各状態についての免疫細胞サブセットの頻度を、PBS処置マウスにおける各頻度に正規化された値を示す。
【
図5C】
図5Cは、図に示す各状態についての免疫細胞サブセットの頻度を、PBS処置マウスにおける各頻度に正規化された値を示す。CD3
-CD19
+でゲートされた細胞をB細胞と定義した。CD3
-NK1.1
+でゲートされたNK細胞と定義した。Ly6g(Gr1)
+CD3
+CD11b
+でゲートされた細胞を顆粒球と定義した。
【
図5D】
図5Dは、図に示す各状態についての免疫細胞サブセットの頻度を、PBS処置マウスにおける各頻度に正規化された値を示す。
【0026】
【
図6】
図6A-Bは、IL-2バリアントの用量応答を用いたホスホSTAT5シグナル伝達アッセイの結果を示す。
図6AはヒトNK様YT細胞を示す。
図6Bは、図に示す様々な濃度(5μM~0μM)でマウス血清アルブミン(MSA)に融合した種々のヒトIL-2バリアントで15分間刺激したマウス飢餓T細胞芽細胞(B)を示す。Y軸は、各濃度について、WT IL-2からのp-STAT5シグナルに対して正規化された各IL-2バリアントからのp-STAT5シグナルの比を示す。
【0027】
【
図7A】
図7Aは、B16黒色腫マウスモデルに対するIL-2バリアント投与の結果を示す。
図7Aは、腫瘍体積の変化を示す。
【
図7B】
図7Bは、B16黒色腫マウスモデルに対するIL-2バリアント投与の結果を示す。
図7B-Eは、WTマウスにおけるそれぞれの頻度に対して正規化された図に示す各状態について免疫細胞サブセットの頻度を示す。
【
図7C】
図7Cは、B16黒色腫マウスモデルに対するIL-2バリアント投与の結果を示す。
図7B-Eは、WTマウスにおけるそれぞれの頻度に対して正規化された図に示す各状態について免疫細胞サブセットの頻度を示す。
【
図7D】
図7Dは、B16黒色腫マウスモデルに対するIL-2バリアント投与の結果を示す。
図7B-Eは、WTマウスにおけるそれぞれの頻度に対して正規化された図に示す各状態について免疫細胞サブセットの頻度を示す。
【
図7E】
図7Eは、B16黒色腫マウスモデルに対するIL-2バリアント投与の結果を示す。
図7B-Eは、WTマウスにおけるそれぞれの頻度に対して正規化された図に示す各状態について免疫細胞サブセットの頻度を示す。
【0028】
【
図8A-B】
図8A-Bは、いくつかの例示的なIL-2R部分アゴニストがインビボで細胞タイプ特異的応答を誘発できることを実証するために実施された実験結果を図でまとめて示すものである。
【
図8C】
図8Cは、いくつかの例示的なIL-2R部分アゴニストがインビボで細胞タイプ特異的応答を誘発できることを実証するために実施された実験結果を図でまとめて示すものである。
【
図8D-E】
図8D-Eは、いくつかの例示的なIL-2R部分アゴニストがインビボで細胞タイプ特異的応答を誘発できることを実証するために実施された実験結果を図でまとめて示すものである。
【
図8F-G】
図8F-Gは、いくつかの例示的なIL-2R部分アゴニストがインビボで細胞タイプ特異的応答を誘発できることを実証するために実施された実験結果を図でまとめて示すものである。
【0029】
【
図9A】
図9Aは、IL-2R部分アゴニストREHがFoxP3
+調節T細胞の頻度を増加させることを示すために実証された実験結果を図でまとめて示すものである。
【
図9B-C】
図9B-Cは、IL-2R部分アゴニストREHがFoxP3
+調節T細胞の頻度を増加させることを示すために実証された実験結果を図でまとめて示すものである。
【0030】
【
図10】
図10は、IL-2R部分アゴニストREHで処置したマウス由来のT
regがCD4
+従来型T細胞の増殖を抑制することを実証するために実施された実験結果を図でまとめて示すものである。
【0031】
【
図11】
図11はIL-2R部分アゴニストREHがCD8
+T細胞増殖を支持するが、IFNγ産生を支持しないことを示すために実施された実験結果を図でまとめて示すものである。
【0032】
【
図12】
図12は、げっ歯類EAEモデル(脳炎症の動物モデル)において、IL-2R部分アゴニストREHの前処理および同時処理が様々な自己免疫症状の保護であることを実証するために実施された実験結果を図でまとめて示すものである。疾患スコアは、健常0、肢尾1、部分後肢麻痺2、完全後肢麻痺3、全身麻痺4、死亡5であった。
【発明を実施ための形態】
【0033】
本開示は一般に、それを必要とする対象においてインターロイキン2(IL-2)が媒介するシグナル伝達経路を調節するための組成物および方法を含む、免疫学および医学の分野に関する。より詳細には、いくつかの実施形態において、本開示は少なくとも1つのIL-2受容体、例えば、インターロイキン2アルファ受容体(IL-2Rα)、インターロイキン2ベータ受容体(IL-2Rβ)、インターロイキン-2ガンマ受容体(IL-2Rγ)に対し調節された親和性を有し、それによって、それぞれのIL-2Rα、IL-2Rβ、及び/又はIL-2Rγ受容体が媒介する下流シグナル伝達を完全にまたは部分的に拮抗する新規のIL-2ムテインを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、炎症などの望ましくない有害な自己免疫事象の原因となる免疫細胞の活性化を促進しないIL-2部分アゴニストを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、このようなIL-2ムテインを産生するために有用な組成物および方法、ならびにIL-2シグナル伝達経路が媒介するシグナル伝達の摂動に関連する健康状態および障害の治療のための方法に関する。
【0034】
IL-2は免疫系に対して広範囲の作用を発揮し、免疫活性化とホメオスタシスの両方を調節する上で極めて重要な役割を果たす。免疫系刺激物質として、IL-2は癌や慢性ウイルス感染症の治療に使用されている。しかしながら、IL-2の刺激作用は、混乱を引き起こし、自己免疫および移植拒絶をも媒介する。免疫調節と疾患におけるその手段的役割のために、IL-2部分アゴニストのような新しいIL-2分子の同定は、依然として活発な研究領域である。
【0035】
ほとんどの場合、IL-2はIL-2Rα、IL-2Rβ、IL-2Rγの異なる受容体を介して作用する。休止T細胞のようなほとんどの細胞は、IL-2に対する親和性が低いIL-2RβとIL-2Rγのみを発現しているので、IL-2に反応しない。刺激により、休止T細胞は比較的高い親和性のIL2Rαを発現する。IL-2がIL-2Rαに結合すると、この受容体はIL-2RβとIL-2Rγに順次結合し、T細胞の活性化をもたらす。
【0036】
本明細書に記載の開示は、とりわけ、IL-2がその同族受容体、特にIL-2Rγとどのように相互作用するかについての新しい洞察に基づく新規なIL-2組成物を提供する。本発明者らは驚くべきことに、IL-2Rγに対するIL-2結合部位における突然変異が、調節T細胞(Tregs)を活性化することができる部分アゴニストをもたらすことを発見した。さらに、これらのIL-2部分アゴニストは、CD8+T細胞および他の潜在的な炎症性免疫細胞サブセットを活性化せず、炎症細胞にインターフェロンγ(IFNγ)を分泌させない。従って、これらの分子は、自己免疫障害および状態を治療するために使用できる。
I.一般的な技術
【0037】
本開示の実施は特に指示がない限り、当業者に周知で分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学の従来の技術を使用する。このような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,fourth edition(Sambrookら,2012)及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual,third edition(Sambrook及びRussel,2001),(本明細書中で共同して「Sambrook」と称される));Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら,eds.,1987、2014までの補遺を含む);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら,eds.,1994);Beaucageらeds.,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2000,(2014までの補遺を含む),Gene Transfer and.Expression in Mammalian Cells(Makrides,ed.,Elsevier Sciences B.V.,Amsterdam,2003),及びCurrent Protocols in Immunology(Horgan K及びS.Shaw(1994)(2014までの補遺を含む)。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用を含む手順は一般に、特に断らない限り、製造業者の指定のプロトコルおよび/またはパラメータに従って実施される。
II.定義
【0038】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記および他の科学用語または用語は、本開示が関係する分野の当業者によって一般に理解される意味を有することが意図される。場合によっては一般的に理解される意味を有する用語を明確にするために、および/または容易に参照するために本明細書で定義され、このような定義を本明細書に含めることは当技術分野で一般的に理解されるものに対して実質的な差を表すと必ずしも解釈されるべきではない。本明細書で説明または参照される技術および手順の多くは、当業者によって、従来の方法を使用してよく理解され、一般に使用される。
【0039】
単数形「a」、「an」、および「The」は文脈が明らかにそわないと指示しない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「a細胞」は、それらの混合物を含む1つ以上の細胞を含む。「Aおよび/またはB」が本明細書中では以下の選択肢:「A」、「B」、「AまたはB」、および「AおよびB」のすべてを含むように使用される。
【0040】
用語「約(about)」は本明細書で使用される場合、その通常意味するところである近似である(approximately)という意味を有する。近似の程度が文脈から他の点で明らかでない場合、「約」は、記載の値のプラスまたはマイナス10%以内、または記載の値を含むすべての場合において、最も近い有意な数字に四捨五入されることを意味する。範囲が記載される場合、それらの範囲は境界値を含む。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「IL-2」は、天然であろうと組換えであろうと、野生型IL-2を意味する。したがって、IL-2ポリペプチドは組換え産生IL-2ポリペプチド、合成的に産生されたIL-2ポリペプチド、細胞または組織から抽出されたIL-2を含むが、これらに限定されない、任意のIL-2ポリペプチドを指す。成熟ヒトIL-2は、Fujita,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80,7437-7441(1983)に記載されるように、133アミノ酸配列(追加20N末端アミノ酸からなるシグナルペプチドを除く)として生じる。ヒトIL-2(配列番号17)のアミノ酸配列は、Genbankにおいて、アクセッションロケーターNP_000577.2の下で見られる。成熟ヒトIL-2のアミノ酸配列を配列番号1に示す。マウス(Mus musculus)のIL-2アミノ酸配列は、Genbankにおいて、アクセッションロケーター(配列番号18)の下で見られる。成熟マウスIL-2のアミノ酸配列を配列番号19に示す。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「IL-2ムテイン」は、インターロイキン-2タンパク質に対する特異的置換がなされているIL-2ポリペプチドを意味する。IL-2ムテインは、天然IL-2ポリペプチド鎖の他の残基の1つ以上の部位におけるアミノ酸の挿入、欠失、置換および修飾を特徴とする。本開示によれば、任意のこのような挿入、欠失、置換および修飾は、IL-2R結合活性を保持するIL-2ムテインをもたらす。例えば、本明細書に開示されるムテインはIL-2Rαおよび/またはIL-2Rβに対して高いまたは低い親和性を有し得る、あるいは野生型IL-2のものと同一または類似のこれらの受容体に対して親和性を有し得る。例示的なムテインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸の置換を含むことができる。ムテインはまた、IL-2の他の位置における保存的修飾および置換(すなわち、ムテインの二次または三次構造に対して最小の効果を有するもの)を含み得る。このような保存的置換には、Dayhoff in The Atlas of Protein Sequence及びStructure 5(1978)およびArgos in EMBO J,8:779-785(1989)に記載されているものが含まれる。例えば、以下の群の1つに属するアミノ酸は、保存的変化を表す:群I:Ala,Pro,Gly,Gln,Asn,Ser,Thr;群II:Cys,Ser,Tyr,Thr;群III:Val,Ile,Leu,Met,Ala,Phe;群IV:Lys,Arg,His;群V:Phe,Tyr,Trp,His、His;および群VI:Asp,Glu。
【0043】
「に従うナンバリングによる(numbered in accordance with)」という語句は、選択したアミノ酸を、そのアミノ酸が所定のアミノ酸配列(例えば、野生型IL-2のアミノ酸配列)において通常生じる位置を参照して、同定することを意味する。例えば、R81は、配列番号1に存在する81番目のアミノ酸であるアルギニンを指す。
【0044】
用語「同一性」は、ポリペプチドまたはDNA配列に関して本明細書中で使用される場合、2つの分子間のサブユニットの配列同一性を指す。両方の分子のサブユニット位置が同じモノマーサブユニット(すなわち、同じアミノ酸残基またはヌクレオチド)によって占有される場合、それらの分子はその位置で同一である。2つのアミノ酸または2つのヌクレオチド配列間の類似性は、同一位置の数の直接関数である。一般に、配列は、最高の順序の一致が得られるように整列される。必要であれば、同一性は公開された技術および広く利用可能なコンピュータプログラム(例えば、GCSプログラムパッケージ(Devereuxら、Nucleic Acids Res.12:387、1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschulら、JMolecular Biol.215:403、1990))を使用して算出され得る。配列同一性は配列分析ソフトウェア(例えば、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 University Avenue、Madison、WI 53705)のGenetics Computer Groupのsequence Analysis Software Package)を用いて、そのデフォルトパラメーターで測定され得る。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語はアミノ酸残基のポリマーを指し、その物質の最小の長さに限定されない。したがって、ポリペプチド、ペプチド、ポリペプチドの断片、融合ポリペプチド、オリゴペプチドなどがこの定義に包含される。完全長タンパク質又はその断片のいずれもこの定義に包含される。この用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに、本開示の目的では、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加および置換(一般に、自然界では保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は部位特異的突然変異誘発によるもののように意図的であってよく、あるいはタンパク質を産生する宿主の突然変異またはPCR増幅によるエラーによるもののように偶発的であってもよい。したがって、「IL-2ポリペプチド」という用語は、実施形態または態様の文脈から明示的または明確に除外されない限り、天然IL-2配列、並びに、IL-2アナログ、IL-2ムテインおよび断片を指す。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「潜在的炎症性T細胞」または「炎症性免疫細胞サブセット」は、インターフェロンγを産生又は分泌するか、あるいは産生又は分泌可能な1つ以上のT細胞を指す。いくつかの実施形態において、潜在的炎症性T細胞はそれらの細胞表面上でCD44を発現し、インターフェロンγを産生または分泌する。他の実施形態において、潜在的炎症性T細胞はそれらの細胞表面上でCD44およびCD4を発現し、インターフェロンγを産生または分泌する。さらなる実施形態では、潜在的炎症性T細胞がそれらの細胞表面にCD44およびCD8を発現し、インターフェロンγを産生または分泌する。さらに他の実施形態では、潜在的炎症性T細胞がそれらの細胞表面にCD4およびCD8を発現し、インターフェロンγを産生または分泌する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「調節性T細胞」または「Treg細胞」は、他のT細胞および/または他の免疫細胞の活性を、通常それらの活性を抑制することによって調節するT細胞(Tリンパ球)を指す。いくつかの実施形態において、Treg細胞はCD4+およびFoxP3+細胞である(しかし、当業者には、Treg細胞がこの表現型に完全に制限されないことが理解されるのであろう)。
【0048】
本明細書中で言及される「Emax」は、最高濃度で測定されるIL-2ムテインによって生成され得る最大p-STAT5シグナルである。WT IL-2由来のEmaxを基準として用いて、最高濃度でのWT IL-2由来のp-STAT5シグナルに対して正規化されたIL-2ムテイン由来のp-STAT5シグナルの比率を計算する。
【0049】
「アゴニスト」は、標的の活性化の増加を引き起こすかまたは促進するために標的と相互作用する化合物である。
【0050】
「部分アゴニスト」はアゴニストと同じ標的と相互作用するが、部分アゴニストの用量を増加させたとしても、アゴニストほど大きな生化学的および/または生理学的効果を生じない化合物である。
【0051】
「スーパーアゴニスト」は標的受容体に対する内因性アゴニストよりも大きい最大反応を生じることができ、したがって100%を超える効果を有するアゴニストの一種である。
【0052】
「アンタゴニスト」は、例えば、アゴニストの活性を予防、減少、阻害、または中和することによって、アゴニストの作用に対抗する化合物であり、「アンタゴニスト」はまた、同定されたアゴニストが存在しない場合でさえ、標的(例えば、標的受容体)の構成的活性を予防、阻害、または減少させ得る。
【0053】
「作動可能に連結される」とは目的のヌクレオチド配列(すなわち、IL-2ムテインをコードする配列)がヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞に導入される場合には宿主細胞において)調節配列に連結されることを意味することを意図する。「調節配列」にはプロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。例えば、Goeddel(1990)in Gene Expression Technology:Methods in Enzymology Vol.185(Academic Press,San Diego,Calif)参照。調節配列には、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、および特定の宿主細胞(例えば、組織特異的調節配列)においてのみヌクレオチド配列の発現を指示するものが含まれる。発現ベクターの設計は形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどに依存し得ることが、当業者によって理解される。本開示の発現構築物は、宿主細胞に導入され得、それによって、本明細書中に開示されるヒトIL-2ムテインを産生し得るか、またはその生物学的に活性なバリアントを産生し得る。
【0054】
用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書において互換的に使用される。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、その細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことが理解される。突然変異または環境の影響のいずれかにより、ある種の修飾が次の世代で起こり得るので、このような子孫は実際には親細胞と同一ではないかもしれないが、それでもなお、本明細書中で使用される用語の範囲内に含まれる。
【0055】
用語「ベクター」は、本明細書において、別の核酸分子を移入または輸送することができる核酸分子または配列を指すために使用される。移入された核酸は一般に、ベクター核酸分子に連結され、例えば、ベクター核酸分子に挿入される。ベクターは、細胞における自律複製を指示する配列を含んでもよく、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。有用なベクターとしては、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、およびウイルスベクターが挙げられる。有用なウイルスベクターには、例えば、複製欠損レトロウイルスおよびレンチウイルスが含まれる。1態様において、ベクターは遺伝子送達ベクターである。1態様において、ベクターは、遺伝子を細胞に移入するための遺伝子送達ビヒクルとして使用される。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「形質転換(transformation)」および「トランスフェクション(transfection)」はリン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、粒子銃、またはエレクトロポレーションを含む、宿主細胞に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための種々の技術分野で認識される技術を指す。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「対象」または「個体」または「患者」はヒト(例えば、ヒト対象)および非ヒト動物のような動物を含む。用語「非ヒト動物」は全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、並びに、非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類などを含む。
【0058】
本明細書中で使用される場合、用語「医薬的に許容される担体」は医薬投与に適合する、生理食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むが、これらに限定されない。また、補助活性化合物(例えば、抗生物質)を組成物に含めてもよい。
【0059】
本明細書で説明される本開示の態様および実施形態は、これらの態様および実施形態を「含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、および「本質的にからなる(consisting essentially of)」ものを包含することが理解される。
【0060】
当業者によって理解されるように、明細書に説明を提供することといったいかなるすべての目的において、本明細書で開示されるすべての範囲は、いかなるすべての可能なサブ範囲およびサブ範囲の組合せも包含する。ある範囲を列挙する場合は、その範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割される場合も十分に記載され、可能であるものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で論じる各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1などに容易に分割することができる。また、当業者には理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての言語は記載の数を含み、上述のように、後にサブ範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1、2、または3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群とは、1、2、3、4、または5個の物品を有する群などを指す。
【0061】
例えば、(a)、(b)、(i)等の見出しは、単に明細書および特許請求の範囲を読むのを容易にするために提示されている。明細書または特許請求の範囲における見出しの使用は、工程または要素がアルファベット順または数字順またはそれらが提示される順序で実行されることを必要としない。
III.本開示の組成物
【0062】
本開示のいくつかの態様は野生型IL-2ポリペプチドと比較して、調節された親和性、例えば、1個以上のIL-2受容体(例えば、IL-2Rα、IL-2Rβ、および/またはIL-2Rγ)に対する結合親和性の増加または低減を伴う新規IL-2ムテインに関する。特に、本開示のいくつかの実施形態は、IL-2Rα、IL-2Rβ、および/またはIL-2Rγに対する結合親和性の低減を付与する1個以上の分子改変を有するL-2ムテインに関する。別の言い方をすれば、本明細書中に開示される新規のIL-2ムテインのいくつかは、IL-2媒介シグナル伝達経路の部分アゴニストである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるIL-2部分アゴニストは炎症などの望ましくない有害な自己免疫事象の原因となる免疫細胞の活性化を促進しない。
A.IL-2部分アゴニスト
【0063】
1つの態様において、本開示のいくつかの実施形態は、部分アゴニストであるIL-2ムテインを提供する。いくつかの実施形態において、野生型IL-2(例えば、ヒトIL-2、配列番号2)と比較して、IL-2Rγc受容体に対するIL-2ムテインの結合親和性を低減させる1つ以上の突然変異を含むIL-2ムテインが本明細書で提供される。本明細書中で使用される場合、用語「共通ガンマ鎖」、「γc」、「IL-2Rγc」、「Yc」、「IL-2Rγ」、「IL-2受容体サブユニットガンマ」、および「IL-2RG」(Genbank受託番号:NM_000206およびNP_000197(ヒト)ならびにNM_013563およびNP_038591(マウス))はすべて、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、およびIL-21受容体を含むがこれらに限定されない、少なくとも6種のインターロイキン受容体に対する受容体複合体に対するサイトカイン受容体サブユニットであるI型サイトカイン受容体ファミリーのメンバーを指す。IL-2RγcはIL-2Rβと相互作用して、主にメモリーT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞上に中程度の親和性IL-2受容体を形成し、IL-2RαおよびIL-2Rβと相互作用して、活性化T細胞およびTregs上に高親和性IL-2レセプターを形成する。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるIL-2ムテインは人工組換えIL-2ムテインであり、例えば、任意の組換えIL-2ポリペプチド、操作されたIL-2ポリペプチド、またはIL-2受容体(例えば、IL-2Rα、IL-2Rβ、および/またはIL-2Rγ)に対して調節された結合親和性を有する天然に存在するIL-2ポリペプチドであり得る。
【0065】
例示的な本発明のIL-2ムテインは、対応する野生型IL-2(WT IL-2)に対し少なくとも約50%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。突然変異は、アミノ酸残基の数または内容の変更からなってもよい。例えば、変異型IL-2は、対応する野生型IL-2よりも多いまたは少ない数のアミノ酸残基を有してもよい。代替的または付加的に、例示的な変異型ポリペプチドは、野生型IL-2に存在する1個以上のアミノ酸残基の置換を含んでもよい。様々な実施形態において、変異型IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2と単一のアミノ酸残基の付加、欠失、または置換により異なる場合もある。
【0066】
非限定的な例として、配列番号1の参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むIL-2ムテインは、配列番号2の参照アミノ酸配列に対し最大5個の改変を含むこと以外は参照配列と同一である配列を含むポリペプチドである。したがって、いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテインは、参照アミノ酸配列に対し1、2、3、4、又は5個の改変を含むこと以外は参照配列と同一である配列を含むポリペプチドである配列番号1の参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。たとえば、参照配列のアミノ酸残基の最大5%が削除されるか、別のアミノ酸で置換されたり、参照配列の総アミノ酸残基の最大5%の数のアミノ酸が参照配列に挿入される場合がある。参照配列のこれらの改変は、参照アミノ酸配列のアミノ(N-)またはカルボキシ(C-)末端位置、またはそれらの末端位置の間の任意の位置に参照配列内の残基に別個に、あるいは参照配列内の1個以上の連続した群として、散在する可能性がある。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテインは、野生型IL-2よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)低い親和性を持ってIL-2Rγに結合する。IL-2ムテインの結合親和性は、野生型IL-2のIL-2γに対する親和性よりも1.2、1.4、1.5、2、5、10、15、20、25、50、100、200、250倍またはそれよりも低いと表現してもよい。IL-2Rγに対する本発明のIL-2ムテインの結合親和性は、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して測定することができる。IL-2Rγへの結合を測定するための適切な方法には、放射性リガンド結合アッセイ(例えば、飽和結合、スキャッチャードプロット、非線形曲線フィッティングプログラムおよび競合結合アッセイ);非放射性リガンド結合アッセイ(例えば、蛍光偏光(FP)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、Drescherら,Methods Mol Biol 493:323-343(2009)参照);液相リガンド結合アッセイ(例:リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)、および免疫沈降);固相リガンド結合アッセイ(例:マルチウェルプレートアッセイ、オンビーズリガンド結合アッセイ、オンカラムリガンド結合アッセイ、フィルターアッセイ);が含まれるが、これらに限定されない。理論に縛られることなく、IL-2Rγ受容体結合部位に突然変異を構築した部分アゴニストは、野生型または他のIL-2のバリアントと比較して、用量依存性が少ないと考えられている。
【0068】
いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、IL-2Rβ/IL-2Rγ相互作用が野生型IL-2に対して約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約50%、約75%、約90%、約95%又はそれ以上(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)となるようにIL-2RβとIL-2Rγとの相互作用を破壊する。
【0069】
いくつかの実施形態において、IL-2ムテインのIL-2Rγ受容体の結合親和性を低減する1個以上の突然変異は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2ムテインは、野生型IL-2(配列番号1)と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のアミノ酸置換で構成される。置換されるアミノ酸残基は、必ずしもそうではないが、保守的な置換である場合があり得て、典型的には、次の群の置換が挙げられる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。特定の実施形態では、置換は、IL-2Rγ結合界面と接触するIL-2のアミノ酸残基にある。
【0070】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、野生型hIL-2(例:配列番号1)に従うナンバリングによる第18、22、及び126位から選択される1個以上のアミノ酸位置における置換である。いくつかの実施形態において、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減するアミノ酸置換は、Leu-to-Arg(L18R),Gln-to-Glu(Q22E),及び/又はGln-to-His(Q126H),Gln-to-Met(Q126M)又はGln-to-Lys(Q126K)のアミノ酸置換の一つ又はそれらの組み合わせを含む。
【0071】
更なる実施形態において、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減するアミノ酸置換は、L18R及びQ22E及びQ126A、Q126C、Q126D、Q126E、Q126G、Q126H、Q126I、Q126K、Q126M、Q126R、Q126S、又はQ126Tのいずれかを含む。さらに別の実施形態では、IL-2ムテインは、野生型hIL-2(例:配列番号1)に従うナンバリングによる第80、81、85、86、および192位から選択される野生型IL-2の1個以上のアミノ酸の位置に追加的なアミノ酸置換を有することができる。別の実施形態において、IL-2ムテインは、1個以上のL80F、R81D、L85V、I86V、及び/又はI92Fの1個以上のから選択される追加的なアミノ酸置換を有することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、増加したIL-2Rβ受容体に対する結合親和性をさらに有することができ、そして1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のIL-2Rβ結合親和性を増加する突然変異をさらに含むことができる。本明細書で使用される用語「IL-2Rβ」及び「CD122」(Genbank受託番号NM_000878及びNP_000869(ヒト))はいずれも、主にメモリーT細胞とナチュラルキラー(NK)細胞でIL-2Rγと相互作用して中間的な親和性IL-2受容体を形成し、活性化T細胞と調節T細胞(Tregs)でIL-2Rα及びIL-2Rγと相互作用して高い親和性IL-2受容体を形成するI型サイトカイン受容体ファミリーのメンバーを指す。いくつかの実施形態において、野生型IL-2(例えば、配列番号1)に対し、少なくとも1つの突然変異(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のアミノ酸残基の欠失、付加、又は置換)を含む本発明のIL-2ムテインは、野生型IL-2より高い親和性をもってIL-2Rβに結合する。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、IL-2ムテインは、野生型IL-2よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)高い親和性をもってIL-2Rβに結合する。IL-2ムテインの結合親和性は、野生型IL-2のIL-2Rαに対する親和性よりも1.2、1.4、1.5、2、5、10、15、20、25、50、100、200、250倍またはそれよりも高いと表現してもよい。本発明のIL-2ムテインのIL-2Rβへの結合は、上記の方法を含むがこれに限定されない、当業者に公知の任意の適切な方法によって評価できる。
【0073】
いくつかの実施形態において、IL-2Rβ結合親和性を増加する少なくとも1つの突然変異はアミノ酸置換である。いくつかの実施形態において、IL-2Rβ結合親和性を増加するアミノ酸置換は、野生型hIL-2(例:配列番号1)に従うナンバリングによるI24、P65、Q74、L80、R81、L85、I86、I89、I92、及び/又はV93のアミノ酸位置における置換を含む。いくつかの実施形態において、置換は、I24V、P65H、Q74R、Q74 H、Q74N、Q74S、L80F、L80V、R81I、R81T、R81D、L85V、I86V、I89V、I92F、及び/又はV93I、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、置換は、Q74N、Q74H、Q74S、L80F、L80V、R81D、R81T、L85V、I86V、I89V、及び/又はI93V、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、減少したIL-2Rβ受容体に対する結合親和性をさらに有することができ、そして1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のIL-2Rβ結合親和性を減少する突然変異をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、野生型IL-2(例えば、配列番号1)に対し、少なくとも1つの突然変異(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のアミノ酸残基の欠失、付加、又は置換)を含む本発明のIL-2ムテインは、野生型IL-2より低い親和性をもってIL-2Rβに結合する。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、野生型IL-2よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)低い親和性をもってIL-2Rβに結合する。IL-2ムテインの結合親和性は、野生型IL-2のIL-2Rβに対する親和性よりも1.2、1.4、1.5、2、5、10、15、20、25、50、100、200、250倍またはそれよりも低いと表現してもよい。
【0074】
更なる実施形態において、本明細書に開示の任意のIL-2ムテインは、野生型IL-2(例えば、配列番号1)と同等(例えば、1パーセント未満の違い)又は同一の親和性を持ってIL-2Rβ受容体に結合できる。
【0075】
追加的な実施形態において、IL-2ムテインは、増加したIL-2Rα受容体に対する結合親和性をさらに有することができ、そして1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のIL-2Rα結合親和性を増加する突然変異をさらに含むことができる。本明細書で使用される用語「IL-2Rα」及び「CD25」(Genbank受託番号NM_000417及びNP_000408(ヒト))はいずれも、活性化T細胞と調節T細胞(Tregs)でIL-2Rβ及びIL-2Rγと相互作用して高い親和性IL-2受容体を形成するI型サイトカイン受容体ファミリーのメンバーを指す。いくつかの実施形態において、野生型IL-2(例えば、配列番号1)に対し、少なくとも1つの突然変異(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のアミノ酸残基の欠失、付加、又は置換)を含む本発明のIL-2ムテインは、野生型IL-2より高い親和性をもってIL-2Rαに結合する。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、野生型IL-2よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含むs)高い親和性をもってIL-2Rαに結合する。IL-2ムテインの結合親和性は、野生型IL-2のIL-2Rβに対する親和性よりも1.2、1.4、1.5、2、5、10、15、20、25、50、100、200、250倍またはそれよりも高いと表現してもよい。本発明のIL-2ムテインのIL-2Rαへの結合は、上記の方法を含むがこれに限定されない、当業者に公知の任意の適切な方法によって評価できる。いくつかの実施形態において、を増加する少なくとも1つの突然変異IL-2Rβ結合親和性はアミノ酸置換である。
【0076】
更に別の実施形態において、IL-2ムテインは、減少したIL-2Rα受容体に対する結合親和性をさらに有することができ、そして1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のIL-2Rα結合親和性を減少する突然変異をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、野生型IL-2(例えば、配列番号1)に対し、少なくとも1つの突然変異(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のアミノ酸残基の欠失、付加、又は置換)を含む本発明のIL-2ムテイン、及び、野生型IL-2より低い親和性をもってIL-2Rαに結合する。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、野生型IL-2よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)低い親和性をもってIL-2Rαに結合する。IL-2ムテインの結合親和性は、野生型IL-2のIL-2Rαに対する親和性よりも1.2、1.4、1.5、2、5、10、15、20、25、50、100、200、250倍またはそれよりも低いと表現してもよい。
【0077】
更なる実施形態において、本明細書に開示の任意のIL-2ムテインは、IL-2Rα受容体に、野生型IL-2(例:配列番号1)と同一または類似する親和性(たとえば、1%未満の差)で結合できる。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記Il-2ムテインは、L80F、R81D、L85V、I86V、I92F、L18R、Q22E、及びQ126Hのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記Il-2ムテインは、以下のアミノ酸置換を有する:
APTSSSTKKTQLQLEHLRLDLEMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHFDPRDVVSNINVFVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCHSIISTLT(配列番号8)
【0079】
他の実施形態において、前記Il-2ムテインは、L80F、R81D、L85V、I86V、I92F、L18R、Q22E、及びQ126Kのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記Il-2ムテインは、以下のアミノ酸置換を有する:
APTSSSTKKTQLQLEHLRLDLEMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHFDPRDVVSNINVFVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCKSIISTLT(配列番号10)
【0080】
更なる実施形態において、前記Il-2ムテインは、L80F、R81D、L85V、I86V、I92F、L18R、Q22E、及びQ126Mのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記Il-2ムテインは、以下のアミノ酸置換を有する:
APTSSSTKKTQLQLEHLRLDLEMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHFDPRDVVSNINVFVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCMSIISTLT(配列番号11)
【0081】
別の実施形態において、前記Il-2ムテインは、L18R、Q22E、及びQ126Hのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記Il-2ムテインは、以下のアミノ酸置換を有する:
APTSSSTKKTQLQLEHLRLDLEMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCHSIISTLT(配列番号15)
【0082】
別の実施形態において、前記Il-2ムテインは、L18R、Q22E、及びQ126Mのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記Il-2ムテインは、以下のアミノ酸置換を有する:
APTSSSTKKTQLQLEHLRLDLEMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCMSIISTLT(配列番号16)
【0083】
様々な実施形態において、前記対象Il-2ムテインは、以下の式に従うアミノ酸置換を有する:
A-P-T-S-S-S-T-K-K-T-Q-L-Q-L-E-H-L-(X1)n-L-D-L-(X2)n-M-I-L-N-G-I-N-N-Y-K-N-P-K-L-T-R-M-L-T-F-K-F-Y-M-P-K-K-A-T-E-L-K-H-L-Q-C-L-E-E-E-L-K-P-L-E-E-V-L-N-L-A-Q-S-K-N-F-H-(X3)n-(X4)n-P-R-D-(X5)n-(X6)n-S-N-I-N-V-(X7)n-V-L-E-L-K-G-S-E-T-T-F-M-C-E-Y-A-D-E-T-A-T-I-V-E-F-L-N-RW-I-T-F-C-(X13)n-S-I-I-S-T-L-T、式中:
各nは別個に0又は1から選択され;
X1はL(wild-type)又はRであり;
X2はQ(wild-type)又はEであり;
X3はL(wild-type)、F又はVであり;
X4はR(wild-type)、I、T又はDであり;
X5はL(wild-type)又はVであり;
X6はI(wild-type)又はVであり;
X7はI(wild-type)又はFであり;
X13はQ(wild-type)又はH、M、K、C、D、E、G、I、R、S、又はT(配列番号20)である。
【0084】
配列番号20のIL-2ムテインのいくつかの実施形態では、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、又はX13における少なくとも1つのアミノ酸は野生型アミノ酸ではない。いくつかの実施形態において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、又はX13における少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14個のアミノ酸は野生型アミノ酸ではない。いくつかの実施形態において、ムテインは、配列番号20のIL-2ムテインに対し少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%の相同性を有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、部分アゴニストである本発明のIL-2ムテインは、野生型IL-2と比較して、1個以上の機能が低い、例えば、(i)Emaxが低い、(ii)IL-2Rβ/IL-2Rγヘテロダイマー化に依存するシグナル伝達経路を刺激する能力が低い、(iii)潜在的炎症性免疫細胞からのインターフェロン-ガンマ(IFNγ)の産生及び/又は分泌が低い、(iv)潜在的炎症性T細胞の増殖が低い。
【0086】
いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、IL-2Rβ/IL-2Rγヘテロダイマー化に依存する1個以上のシグナル伝達経路を刺激する能力が低い。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2ムテインは、野生型hIL-2と比較して、T細胞におけるSTAT5リン酸化を刺激する能力が低い(例えば、実施例1及び
図4A-4B参照)。いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、T細胞におけるSTAT5リン酸化を、野生型IL-2が同じ細胞においてSTAT5のリン酸化を刺激するレベルに対し、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)のレベルで刺激する。いくつかの実施形態において、T細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。STAT5シグナル伝達は、例えば、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用しSTAT5のリン酸化によって測定することができる。たとえば、STAT5リン酸化は、この分子のリン酸化バージョンに特異的な抗体をフローサイトメトリー分析と組み合わせて使用し測定できる。
【0087】
更なる実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、野生型IL-2のEmaxと比較してEmaxが低い。いくつかの実施形態において、ムテインは、野生型IL-2(例えば、配列番号1によりコードされるポリペプチド)のEmaxと比較して約15~95%の範囲のいずれか、例えば、約20~95%、約30~95%、約40~95%、約50~95%、約60~95%、約70~95%、約80~95%、又は約90~95%のEmaxを有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、野生型IL-2のEmaxと比較して15~95%のEmaxを有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、野生型IL-2のEmaxと比較して70~95%のEmaxを有する。別の実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、野生型IL-2(例えば、配列番号1によりコードされるポリペプチド)のEmaxと比較して約15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、又は95%のいずれかのEmaxを有する。1つの非限定的な実施形態では、Emaxは、野生型IL-2によって生成される最大p-STAT5シグナルに対する、IL-2ムテインによる免疫細胞におけるSTAT5リン酸化(pSTAT5)誘導の最大レベルの比率に基づいて算出される。
【0088】
更に別の実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、潜在的炎症性免疫細胞からのインターフェロン-ガンマ(IFNγ)の産生及び/又は分泌が、野生型IL-2(例えば、配列番号1によりコードされるポリペプチド)のIFNγの産生及び/又は分泌と比較して低い結果となりうる(例えば、実施例2及び
図5A-5D参照)。IFNγ産生及び/又は分泌の低減は、同じ条件下において同等の濃度で野生型IL-2が潜在的炎症性免疫細胞において刺激するレベルに対し、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)のレベルである。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、潜在的炎症性免疫細胞からのIFNγの分泌を誘導しない。非限定的な実施形態において、潜在的炎症性免疫細胞は、CD8
+T細胞及び/又は他の炎症性免疫細胞サブセットである。他の非限定的な実施形態において、潜在的炎症性免疫細胞は、CD4
+IFNγ
+T細胞又はCD8
+IFNγ
+T細胞である。
【0089】
更なる実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、潜在的炎症性T細胞の増殖が、野生型IL-2(例えば、配列番号1によりコードされるポリペプチド)により誘導される潜在的炎症性T細胞の増殖と比較して低い結果となりうる。潜在的炎症性T細胞の非限定的な実施形態は、CD4+IFNγ+T細胞又はCD8+IFNγ+T細胞を含む。いくつかの実施形態において、潜在的炎症性T細胞の増殖の低減は、同じ条件下において同等の濃度で野生型IL-2が刺激するレベルに対し、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)以下のレベルでありうる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは潜在的炎症性免疫細胞の増殖を誘導しない。非限定的な実施形態において、潜在的炎症性免疫細胞は、CD8+T細胞及び/又は他の炎症性免疫細胞サブセットである。他の非限定的な実施形態において、潜在的炎症性免疫細胞は、CD4+IFNγ+T細胞又はCD8+IFNγ+T細胞である。
【0090】
さらに別の実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、例えば、Treg細胞の増殖の増加といった機能が増加していることがある。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、野生型IL-2(例えば、配列番号1によりコードされるポリペプチド)により誘導されるTreg細胞の増殖量と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍のいずれかでTreg細胞の増殖が増加しうる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、野生型IL-2(例えば、配列番号1によりコードされるポリペプチド)により誘導されるTreg細胞の増殖量と比較して、約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、又は95%のいずれかでTreg細胞の増殖が増加しうる。いくつかの実施形態において、Treg細胞はCD4+Foxp3+細胞である。
【0091】
以下でより詳細に説明するように、本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に開示のIL-2ムテインおよびかかるIL-2ムテインをコードする核酸は、医薬組成物などの組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、ポリペプチドまたは核酸分子および医薬的に許容される担体が含まれる。
【0092】
核酸
1態様において、本明細書中に開示されるいくつかの実施形態は、本開示のIL-2ムテインをコードする核酸分子(発現カセットを含む)、および異種核酸配列(例えば、宿主細胞またはex-vivo無細胞発現系におけるIL-2ムテインのインビボ発現を可能にする調節配列)に作動可能に連結されたこれらの核酸分子を含む発現ベクターに関する。
【0093】
種々の実施形態において、本開示の実施において使用されるポリペプチドは、合成であるか、または組換え核酸分子の発現によって産生される。ポリペプチドがキメラ(例えば、少なくとも変異型IL-2ポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含む合タンパク質)である場合、それは、変異型IL-2の全部または一部をコードする1つの配列および異種ポリペプチドの全部または一部をコードする第2の配列を含むハイブリッド核酸分子によってコードされ得る。例えば、本明細書中に記載される本発明のIL-2ムテインは、細菌により発現されるタンパク質の精製を容易にするためのヘキサヒスチジンタグ、または真核細胞において発現されるタンパク質の精製を容易にするための赤血球凝集素タグに融合されてもよい。
【0094】
「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書では互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、およびDNAまたはRNA分子(核酸アナログを含む)を含む核酸分子を含めた、RNAおよびDNA分子の両方を指す。核酸分子は二本鎖または一本鎖(例えば、センス鎖またはアンチセンス鎖)であってもよい。核酸分子は既知ではないヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含んでもよい。本明細書で使用される「ポリヌクレオチド配列」および「核酸配列」という用語は、互換的にポリヌクレオチド分子の配列を指す。本明細書では、37CFR§1.822に記載のヌクレオチド塩基の命名法を使用する。
【0095】
本開示の核酸分子は、好ましくは約0.5Kb~約50Kbの間、例えば、約0.5Kb~約10Kbの間、約1Kb~約8Kbの間、約2Kb~約7Kbの間、又は約2Kb~約20Kbの間、例えば、約2Kb~10Kbの間、約3Kb~約15Kbの間、約4Kb~約10Kb、約5Kb~約15Kb、又は約3Kb~約9Kbの間である核酸分子を含む、任意の長さの核酸分子であり得る。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、5Kb~50Kbの間、例えば、約5Kb~約40Kbの間、約5Kb~約30Kbの間、約5Kb~約20Kbの間、又は約10Kb~約50Kbの間、例えば、約15Kb~30Kbの間、約20Kb~約50Kbの間、約20Kb~約40Kb、約5Kb~約25Kb、又は約30Kb~約50Kbの間であり得る。
【0096】
IL-2ムテインをコードするDNA配列を構築し、これらの配列を適切に形質転換された宿主中で発現させるための方法は、PCRによる突然変異誘発技術を使用することを含むが、これに限定されない。また、IL-2ポリペプチドに対するアミノ酸残基の欠失または付加からなる変異は、標準的な組換え技術を用いて作製できる。欠失または付加の場合、IL-2をコードする核酸分子は場合により、適切な制限エンドヌクレアーゼで消化される。得られたフラグメントは直接発現でき、または例えば、第2のフラグメントにライゲーションすることによってさらに操作できる。核酸分子の2つの末端が互いに重複する相補的ヌクレオチドを含むが、平滑末端フラグメントもライゲーションできる場合、ライゲーションが容易なることがある。また、PCRで生成された核酸は、種々の変異型配列を生成するために使用できる。
【0097】
完全なアミノ酸配列を用いて、逆翻訳された遺伝子を構築することができる。IL-2ムテインをコードするヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの各部分をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、その後ライゲーションできる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には相補アセンブリのための5’または3’オーバーハングを含む。
【0098】
組換え分子生物学的技術によって改変された核酸分子の発現を介して変異ポリペプチドを生成することに加えて、本発明のIL-2ムテインを化学的に合成することができる。化学的に合成されたポリペプチドは、当業者によって日常的に生成される。
【0099】
一旦(合成、部位特異的突然変異誘発または別の方法によって)アセンブルされると、IL-2ムテインをコードするDNA配列は、発現ベクターに挿入され、所望の形質転換宿主におけるIL-2ムテインの発現に適切な発現制御配列に作動可能に連結される。適切なアセンブリは、ヌクレオチドシーケンシング、制限マッピング、および適切な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認できる。当技術分野でよく知られているように、宿主においてトランスフェクトされた遺伝子の高い発現レベルを得るためには、その遺伝子が、選択された発現宿主において機能的である転写および翻訳発現制御配列に作動可能に連結されなければならない。
【0100】
IL-2ムテインをコードするDNA配列は、部位特異的突然変異誘発、化学合成または他の方法によって設けるかにかかわらず、シグナル配列をコードするDNA配列を含むこともできる。このようなシグナル配列は、存在する場合、IL-2ムテインの発現のために選択された細胞によって認識されるものであるべきである。原核生物、真核生物、あるいはそれらの組合せであってもよい。また、天然IL-2のシグナル配列であってもよい。シグナル配列を含めるか否かは、組換え細胞からIL-2ムテインを分泌することが望まれるかどうかによる。選択された細胞が原核生物である場合、一般に、DNA配列はシグナル配列をコードしないことが好ましい。選択された細胞が真核生物である場合、シグナル配列がコードされることが一般に好ましく、野生型IL-2シグナル配列が使用されることが最も好ましい。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2ムテインは、単独でもまたは上述のようなキメラポリペプチドの一部としても、核酸分子の発現によって得ることができる。IL-2ムテインは野生型IL-2ポリペプチドとの同一性に関する記載のように、それらをコードする核酸分子も必然的に野生型IL-2をコードする核酸分子と同一性を有する。例えば、本発明のIL-2ムテインをコードする核酸分子は、配列番号1に記載のアミノ酸を有する野生型IL-2をコードする核酸と少なくとも50%、少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも95%(例えば、99%)%同一である。よって、いくつかの実施形態において、本明細書に開示の本発明のIL-2ムテインをコードする核酸分子は、配列番号1に記載のアミノ酸を有する野生型IL-2をコードする核酸と少なくとも50%、少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも95%(例えば、96%、97%、98%、又は99%)であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の本発明のIL-2ムテインをコードする核酸分子は、配列番号2に記載のアミノ酸を有する野生型IL-2をコードする核酸と少なくとも50%、少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも95%(例えば、96%、97%、98%、又は99%)である。
【0102】
提供される核酸分子は、天然に存在する配列、または天然に存在する配列とは異なるが、遺伝暗号の縮重のために、同じポリペプチドをコードする配列を含みうる。これらの核酸分子は、RNAもしくはDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、または合成DNA(例えば、ホスホラミダイトベースの合成によって産生されるもの)、またはこれらの種類の核酸のヌクレオチドの組み合わせもしくは改変物からなることもある。さらに、核酸分子は二本鎖または一本鎖(すなわち、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれか)であり得る。
【0103】
核酸分子はポリペプチドをコードする配列に限定されず、コード配列(例えば、IL-2のコード配列)の上流または下流に位置する非コード配列の全部または一部を含んでもよい。分子生物学の当業者は、核酸分子を単離するための日常的な手順に精通している。核酸分子は、例えば、制限エンドヌクレアーゼによるゲノムDNAの処理によって、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の実施によって産生され得る。核酸分子がリボ核酸(RNA)である場合、分子は例えば、インビトロ転写によって産生され得る。
【0104】
本開示の例示的な単離核酸分子は、天然の状態では見出されない断片を含み得る。したがって、本開示は、核酸配列(例えば、突然変異体IL-2をコードする配列)がベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)または異種細胞のゲノム(または天然の染色体位置以外の位置における相同細胞のゲノム)に組み込まれたものといった組換え分子を包含する。
【0105】
上記のように、本発明のIL-2ムテインは、キメラポリペプチドの一部として存在してもよい。上述の異種ポリペプチドに加えて、またはその代わりに、対象核酸分子は、「マーカー」または「レポーター」をコードする配列を含むことができる。マーカーまたはレポーター遺伝子の例としてはβ-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスファーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスファーゼ(neoR、G418)、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)、ヒドロマイシン-B-ホスホトランスファーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacz(β-ガラクトシダーゼをコードする)、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスファーゼ(XGPRT)が挙げられる。当業者は、例えば、マーカーまたはレポーターの機能を果たすことができる追加の配列用のに追加的に有用な試薬を認識するであろう。
【0106】
対象核酸分子は、哺乳動物の細胞などの任意の生物学的細胞から得られるIL-2をコードするDNAに突然変異を導入することによって得ることができる。従って、対象核酸(およびそれらがコードするポリペプチド)は、マウス、ラット、モルモット、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウサギ、サル、ヒヒ、イヌ、またはネコの核酸であり得る。いくつかの実施形態では、核酸分子はヒトのものである。
【0107】
A.ベクターおよび宿主細胞
本明細書中に開示されるIL-2ムテインポリペプチドのいずれかをコードする核酸分子の1つ以上を含むベクター、プラスミド、またはウイルスもまた、本明細書中に提供される。上記の核酸分子は例えば、ベクターで形質導入された細胞においてそれらの発現を指令することができるベクター内に含めることができる。従って、本発明のIL-2ムテインに加えて、本発明のIL-2ムテインをコードする核酸分子を含有する発現ベクターおよびこれらのベクターでトランスフェクトされた細胞も、好ましい実施形態の1つに含まれる。真核細胞および原核細胞において使用するための適切なベクターは当該分野で公知であり、そして商業的に入手可能であるか、または当業者によって容易に調製される。さらなるベクターはまた、例えば、Ausubel,F.M.,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,(Current Protocol,1994)及びSambrookら,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual,” 2nd ED.(1989)に見ることができる。
【0108】
もちろん、全てのベクターおよび発現制御配列が、本明細書中に記載されるDNA配列を発現するために同等のレベルで機能するわけではないことが理解されるべきである。同様に、すべての宿主が同じ発現系において同等のレベルで機能するわけでもない。しかし、当業者は、過度の実験を行うことなく、これらのベクター、発現制御配列および宿主の中から選択することができる。例えば、ベクターを選択する際には、ベクターがその中で複製しなければならないので、宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、および抗生物質マーカーといったベクターによってコードされる他のタンパク質の発現もまた考慮されるべきである。例えば、使用することができるベクターとして、IL-2ムテインをコードするDNAのコピー数を増幅することを可能にするベクターが挙げられる。このような増幅可能なベクターは、当該分野で周知である。例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufman,米国特許第4,470,461号,Kaufman及びSharp,“Construction of a Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene:Analysis of Signals Utilized for Efficient Expression”,Mol.Cell.Biol.,2,pp.1304-19(1982)参照)あるいはまたはグルタミンシンテターゼ(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号及び欧州公開特許出願第338,841号参照)によって増幅可能なベクターが挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態において、本開示のヒトIL-2ムテインは、ベクター、好ましくは発現ベクターから発現される。ベクターは宿主細胞における自律的複製に有用であるか、または宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノム(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)とともに複製され得る。発現ベクターは、それらが作動可能に連結されるコード配列の発現を指令することができる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミド(ベクター)の形態である。しかしながら、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)のような他の形態の発現ベクターもまた含まれる。
【0110】
例示的な組換え発現ベクターは、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現される核酸配列に作動可能に連結された、1つ以上の調節配列を含み得る。
【0111】
発現構築物またはベクターは、原核または真核宿主細胞におけるIL-2ムテインまたはそのバリアントの発現のために設計することができる。
【0112】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術により原核細胞または真核細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview,NY)および他の標準的な分子生物学実験室マニュアルに見出すことができる。
【0113】
原核生物におけるタンパク質の発現は、構成的または誘導的プロモーターを含むベクターを用いて大腸菌で行われることが最も多い。Ecoliにおける組換えタンパク質発現を最大限にするための戦略は、例えば、Gottesman(1990)in Gene Expression Technology:Methods in Enzymology Vol.185(Academic Press,San Diego,Calif.),pp.119-128及びWadaら(1992)Nucleic Acids Res.20:2111-2118に見出すことができる。IL-2ムテインまたはそのバリアントを増殖させ、細胞から収集し、破壊し、または抽出するためのプロセスは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,604,377号;第4,738,927号;第4,656,132号;第4,569,790号;第4,748,234号;第4,530,787号;第4,572,798号;第4,748,234号;第及び4,931,543号に実質的に記載されている。
【0114】
いくつかの実施形態において、組換えIL-2ムテインまたはその生物学的に活性なバリアントはまた、真核生物(例えば、酵母細胞またはヒト細胞)において作製され得る。適切な真核宿主細胞としては、以下が挙げられる;昆虫細胞(培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターの例としてはpAcシリーズ(Smithら(1983)Mol.Cell Biol.3:2156-2165)及びthe pVL series(Lucklow及びSummers(1989)Virology 170:31-39));が挙げられる);酵母細胞(S.cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例としては、pYepSec1(Baldariら(1987)EMBO J.6:229-234),pMFa(Kurjan及びHerskowitz(1982)Cell 30:933-943),pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113-123),pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.),及びpPicZ(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)が挙げられる);または哺乳動物細胞(哺乳動物発現ベクターにとしては、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら(1987)EMBO J.6:187:195)が挙げられる)。適切な哺乳動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞が挙げられる。哺乳動物細胞では、発現ベクターの制御機能がしばしばウイルス調節エレメントによって提供される。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40に由来する。原核細胞および真核細胞の両方に適切な他の発現系については、Chapters 16及び17 of Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,N.Y.).See,Goeddel(1990,supra)参照のこと。
【0115】
本開示のヒトIL-2ムテインをコードする配列は、目的の宿主細胞における発現のために最適化できる。当該配列のG-C含量は、所与の宿主細胞で発現される既知の遺伝子を参照して計算されるその細胞宿主についての平均レベルに調整できる。コドン最適化のための方法は、当該分野で周知である。IL-2ムテインコード配列内のコドンは宿主細胞における発現を増強するように最適化することができ、例えば、コード配列内のコドンの約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、または最大100%が、特定の宿主細胞における発現のために最適化できる。
【0116】
使用に適したベクターには、細菌(例えば、Rosenbergら,Gene 56:125,1987参照)で使用するためのT7ベースのベクター、哺乳動物細胞で使用するためのpMSXND発現ベクター((Lee及びNathans,J.Biol.Chem.263:3521,1988)、および昆虫細胞で使用するためのバキュロウイルス由来ベクター(例えば、Clontech,Palo Alto,Califから得た発現ベクターpBacPAK9)が含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態では、このようなベクターにおいて本発明のIL-2ムテインをコードする核酸インサートが、例えば、発現のための細胞タイプに基づいて選択されるプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0118】
発現制御配列を選択する際に、種々の因子も考慮されるべきである。これらには、例えば、特に可能性が考えられる二次構造に関し、配列の相対強度、その制御性、および本発明のIL-2ムテインをコードする実際のDNA配列との適合性が含まれる。宿主は、選択されたベクターとの適合性、本開示のDNA配列によってコードされる産物の毒性、それらの分泌特性、ポリペプチドを正確に折り畳むそれらの能力、それらの発酵または培養要件、およびそのDNA配列によってコードされる産物の精製の容易さを考慮して選択されるべきである。
【0119】
これらのパラメーター内で、当業者は、発酵、または、例えば、CHO細胞またはCOS7細胞を使用する大規模動物培養において所望のDNA配列を発現する種々のベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせを選択できる。
【0120】
いくつかの実施形態において、発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核生物宿主のための有用な発現ベクターは例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を有するベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、公知の細菌プラスミド(例えば、大腸菌由来のプラスミド(col E1、pCRI、pER32z、pMB9を含む)、およびそれらの誘導体)、より広い宿主範囲のプラスミド(例えば、RP4)、ファージDNA(例えば、ファージλの多数の誘導体(例えば、NM989)、ならびに他のDNAファージ(例えば、M13および糸状一本鎖DNAファージ)が挙げられる。酵母細胞に有用な発現ベクターには、2μプラスミドおよびその誘導体が挙げられる。昆虫細胞のための有用なベクターには、pVL 941およびpFastBac(商標)1((Gibco BRL,Gaithersburg,Md.).Cateら,Cell,45,pp.685-98(1986))が挙げられる。
【0121】
さらに、広範な発現制御配列のいずれかが、これらのベクターにおいて使用できる。このような有用な発現制御配列には、前述の発現ベクターの構造遺伝子に関連する発現制御配列が含まれる。有用な発現制御配列の例には、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期および後期プロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、ファージλの主要オペレーターおよびプロモーター領域、例えばPL、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のためのプロモーター、酸性ホスファターゼ、例えばPhoAのプロモーター、酵母a接合系のプロモーター、バキュロウイルスの多面体プロモーター、および原核細胞または真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、ならびにそれらの種々の組み合わせが挙げられる。
【0122】
T7プロモーターは細菌において使用でき、ポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞において使用でき、そしてサイトメガロウイルスまたはメタロチオネインプロモーターは哺乳動物細胞において使用できる。また、高等真核生物の場合、組織特異的および細胞タイプ特異的プロモーターが広く利用可能である。これらのプロモーターは、体内の所与の組織または細胞タイプにおける核酸分子の発現を指示する能力にちなんで命名される。当業者は、核酸の発現を指示するために使用され得る多数のプロモーターおよび他の調節エレメントを十分に知っている。
【0123】
挿入された核酸分子の転写を促進する配列に加えて、ベクターは複製起点、および選択マーカーをコードする他の遺伝子を含むことができる。例えば、ネオマイシン耐性(neoR)遺伝子はそれが発現される細胞にG418耐性を付与し、それによりトランスフェクトされた細胞の表現型選択を可能にする。当業者は、所定の調節エレメントまたは選択マーカーが特定の実験的状況における使用に適切であるかどうかを容易に決定できる。
【0124】
本開示で使用することができるウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ベクター、ヘルペスウイルス、サルウイルス40(SV40)、およびウシパピローマウイルスベクター(例えば、Gluzman(Ed.),Eukaryotic Viral Vectors,CSH Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.参照)が挙げられる。
【0125】
本明細書中に開示される本発明のIL-2ムテインをコードする核酸分子を含み、そして発現する原核細胞または真核細胞もまた、本開示の特徴である。本開示の細胞はトランスフェクトされた細胞、すなわち、核酸分子、例えば突然変異IL-2ポリペプチドをコードする核酸分子が組換えDNA技術によって導入された細胞である。このような細胞の子孫もまた、本開示の範囲内であると考えられる。
【0126】
発現系の正確な成分は重要ではない。例えば、IL-2ムテインは原核生物宿主(例えば、細菌Ecoli)、または真核生物宿主(例えば、昆虫細胞(例えば、Sf21細胞))、または哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、NIH 3T3細胞、またはHeLa細胞)において産生できる。これらの細胞は、American Type Culture Collection(Manassas、Va)を含む多くの供給源から入手可能である。発現系を選択する際には、成分が互いに適合性であることだげが重要である。当業者は、このような決定を行うことができる。さらに、発現系を選択する際にガイダンスが必要な場合、当業者はAusubelら(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley及びSons,New York,N.Y.,1993)及びPouwelsら(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985 Suppl.1987)を参照できる。
【0127】
発現されたポリペプチドは慣用的な生化学的手順を使用して発現系から精製でき、そして例えば、本明細書中に記載されるような治療剤として使用できる。
【0128】
いくつかの実施形態において、得られるIL-2ムテインは、そのムテインを産生するために使用される宿主生物によって、グリコシル化または非グリコシル化される。細菌が宿主として選択される場合、産生されるIL-2ムテインは、非グリコシル化される。一方、真核細胞は、おそらく天然のIL-2がグリコシル化されるのと同様ではないもののIL-2ムテインをグリコシル化する。形質転換された宿主によって産生されたIL-2ムテインは、任意の適切な方法に従って精製することができる。IL-2を精製するための様々な方法が知られている。例えば、Current Protocols in Protein Science,Vol 2.Eds:John E.Coligan,Ben M.Dunn,Hidde L.Ploehg,David W.Speicher,Paul T.Wingfield,Unit 6.5(Copyright 1997,John Wiley及びSons,Inc参照。IL-2ムテインは大腸菌で生成された封入体から、または所定のムテインを産生する哺乳動物または酵母培養物のいずれかからのならし培地から、カチオン交換、ゲル濾過、および/または逆相液体クロマトグラフィーを用いて単離することができる。
【0129】
IL-2ムテインをコードするDNA配列を構築する別の例示的な方法は、化学合成によるものが挙げられる。これは、記載された特性を示すIL-2ムテインをコードするタンパク質配列の化学的手段によるペプチドの直接合成を含む。この方法はIL-2とIL-2Rα、IL-2Rβおよび/またはIL-2Rγとの相互作用に影響を及ぼす位置に、天然および非天然の両方のアミノ酸を組み込むことができる。あるいは、所望のIL-2ムテインをコードする遺伝子がオリゴヌクレオチド合成機を使用する化学的手段によって合成され得る。このようなオリゴヌクレオチドは所望のIL-2ムテインのアミノ酸配列に基づいて設計され、好ましくは組換えムテインが産生される宿主細胞において好まれるコドンを選択する。この点で、遺伝暗号が縮重していることはよく知られている。すなわち、1つのアミノ酸が複数のコドンによってコードされていことがある。例えば、Phe(F)は2つのコドンTICまたはTTTによってコードされ、、Tyr(Y)はTACまたはTATによってコードされ、his(H)はCACまたはCATによってコードされる。Trp(W)は単一のコドンTGGによってコードされる。したがって、特定のIL-2ムテインをコードする所与のDNA配列について、そのIL-2ムテインをコードする多くのDNA縮重配列が存在することが理解されるのであろう。例えば、
図2に示されるムテイン5-2の好ましいDNA配列に加えて、示されるIL-2ムテインをコードする多くの縮重DNA配列が存在することが理解される。これらの縮重DNA配列も、本開示の範囲内であると考えられる。したがって、「本開示の文脈におけるその縮重バリアント」は特定のムテインをコードし、それによってその発現を可能にするすべてのDNA配列を意味する。
【0130】
IL-2ムテインの生物学的活性は、当該分野で公知の任意の適切な方法によってアッセイできる。このようなアッセイとして、PHA芽球増殖およびNK細胞増殖が挙げられる。
【0131】
融合タンパク質
本明細書に開示されるIL-2ムテインのいずれも、本発明のIL-2ムテインおよび異種ポリペプチド(すなわち、IL-2またはその変異型ではないポリペプチド)を含む融合ポリペプチドまたはキメラポリペプチドとして調製することができる(例えば、米国特許第6,451,308参照)。例示的な異種ポリペプチドはインビボでキメラポリペプチドの循環半減期を増加させることができ、したがって、変異型IL-2ポリペプチドの特性をさらに増強することができる。様々な実施形態において、循環半減期を増加させるポリペプチドは、ヒト血清アルブミンのような血清アルブミン、またはIgG重鎖可変領域を欠く抗体のIgGサブクラスのFc領域であってもよい。例示的なFc領域は、補体の結合およびFc受容体んP結合を阻害するような突然変異を含むこともあり、あるいは溶解性のもの、すなわち、抗体依存補体溶解のような別のメカニズムを介して、補体に結合または細胞を溶解することができるものであってもよい(ADCC;U.S.Ser.No.08/355,502filed Dec.12,1994)。
【0132】
「Fc領域」は、IgGをパパインで消化することによって産生されるIgG C末端ドメインに相同で天然に存在するポリペプチドまたは合成ポリペプチドであり得る。IgG Fcは、約50kDaの分子量を有する。変異型IL-2ポリペプチドは、Fc領域全体をふくんでもよく、またはその一部であるキメラポリペプチドの循環半減期を延長する能力を保持するより小さい部分を含んでもよい。さらに、全長または断片化されたFc領域は、野生型分子のバリアントであり得る。すなわち、それらはポリペプチドの機能に影響を及ぼしてもしなくてもよい突然変異を含み得る、つまり、以下にさらに記載されるように、天然の活性が全ての場合に必要または所望されるわけではない。いくつかの実施形態において、IL-2ムテイン融合タンパク質(例えば、本明細書に記載のIL-2部分アゴニストまたはアンタゴニスト)はIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域を含む。
【0133】
Fc領域は「溶解性」または「非溶解性」であり得るが、典型的には非溶解性である。非溶解性Fc領域は、典型的には高親和性Fc受容体結合部位およびC’1q結合部位を欠く。マウスIgG Fcの高親和性Fc受容体結合部位は、IgG Fcの235位にLeu残基を含む。従って、Fc受容体結合部位は、Leu235を変異または欠失させることによって破壊できる。例えば、Leu235に対するGluの置換は、Fc領域が高親和性Fc受容体に結合する能力を阻害する。マウスC’1q結合部位は、IgGのGlu318、Lys320、およびLys322残基を変異または欠失させることによって機能的に破壊することができる。例えば、Glu318、Lys320、およびLys322に対するAla残基の置換は、IgG1 Fcが抗体依存性補体溶解を指示することを不可能にする。対照的に、溶解性IgG Fc領域は、高親和性Fe受容体結合部位およびC’1q結合部位を有する。高親和性Fc受容体結合部位はIgG Fcの235位にLeu残基を含み、C’1q結合部位は、IgG1のGlu318、Lys320、およびLys322残基を含む。溶解性IgG Fcは、これらの部位に野生型残基または保存的アミノ酸置換を有する。溶解性IgG Fcは、抗体依存性細胞傷害性または補体指向性細胞溶解(CDC)のために細胞を標的とすることができる。ヒトIgGに対する適切な突然変異も知られている(例えば、Morrisonら,The Immunologist 2:119-124,1994;及びBrekkeら,The Immunologist 2:125,1994参照)。
【0134】
他の実施形態において、キメラポリペプチドは、本発明のIL-2ムテイン、およびFLAG配列などの抗原タグとして機能するポリペプチドを含むことができる。FLAG配列は本明細書中(Blanarら,Science 256:1014,1992;LeClairら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:8145,1992も参照)に記載されるように、ビオチン化された高度に特異的な抗FLAG抗体によって認識される。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドがC末端c-mycエピトープタグをさらに含む。
【0135】
他の実施形態において、キメラポリペプチドは、Aga2p凝集素サブユニット(例えば、Boder及びWittrup,Nature Biotechnol.15:553-7,1997参照)のような、変異型IL-2ポリペプチドの発現または細胞局在の指向性を強化するように機能する、変異型IL-2ポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含む。
【0136】
他の実施形態において、変異型IL-2およびその抗体または抗原結合部分を含むキメラポリペプチドを生成することができる。キメラタンパク質の抗体または抗原結合成分は、標的化部分として働くことができる。例えば、それは、細胞または標的分子の特定のサブセットにキメラタンパク質を局在化するために使用することができる。サイトカイン抗体キメラポリペプチドを生成する方法は例えば、米国特許第6,617,135号に記載されている。
【0137】
いくつかの実施形態において、変異体IL-2は、その半減期を増加させるために、1個以上のポリエチレングリコール(PEG)分子で修飾できる。本明細書で使用される「PEG」という用語は、ポリエチレングリコール分子を意味する。典型的な形態ではPEGは末端ヒドロキシル基を有する直鎖ポリマーであり、式HO-CH2CH2-(CH2CH2O)n-CH2CH2-OH(式中、nは約8から約4000である)を有する。
【0138】
典型的には、nは離散値ではなく、平均値を中心としたほぼガウス分布を有する範囲を構成する。末端水素は、アルキル基またはアルカノール基などのキャッピング基で置換されていてもよい。PEGは少なくとも1個のヒドロキシ基を有することができ、より好ましくは末端ヒドロキシ基である。このヒドロキシ基は、ペプチドと反応して共有結合を形成することができるリンカー部分に結合させることができる。PEGの多数の誘導体が当該技術分野に存在する(例えば、米国特許第5,445,090号;第5,900,461号;第5,932,462号;第6,436,386号;第6,448,369号;第6,437,025号;第6,448,369号;第6,495,659号;第6,515,100号及び第6,514,491号及びZalipsky,S.Bioconjugate Chem.6:150-165,1995参照)。本開示のIL-2ムテインに共有結合したPEG分子は、約10,000、20,000、30,000、または40,000ダルトンの平均分子量であってもよい。ペグ化試薬は、直鎖または分岐分子であってもよく、そして単独でまたはタンデムで存在してもよい。本開示のペグ化IL-2ムテインペプチドは、ペプチドのC末端および/またはN末端に結合したタンデムPEG分子を有することができる。本明細書中で使用される用語「ペグ化」は、本開示のIL-2ムテインのような分子に対する上記のような1個以上のPEG分子の共有結合を意味する。
【0139】
医薬組成物
注射用に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のために、適切なキャリアは、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、NJ)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は滅菌であるべきであり、そして注射が容易に可能である程度に流動性であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適当な混合物を含む溶媒又は分散媒であってよい。適切な流動性は例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、およびドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は種々の抗菌および抗かび剤、例えば、パラベン、クロロプタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成可能である。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物を持続的に吸収させるには、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノコテアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることにより達成できる。
【0140】
滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、適切な溶媒中に、上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に組み込み、続いて必要に応じ濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含有する基本のビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、前もって滅菌濾過された溶液からの活性成分に加え任意のさらなる所望の成分を粉末化する真空乾燥および凍結乾燥である。
【0141】
経口組成物が使用される場合、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与の目的のために、活性化合物は賦形剤と共に組み込むことができ、そして錠剤、トローチ、またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態で使用できる。経口組成物はまた、口腔洗浄剤として使用するための流体担体を使用して調製され得る。医薬的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含有することができる:微結晶セルロース、ゴムトラガントまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel(商標)、またはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes(商標)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料などの香料。
【0142】
吸入による投与の場合、本発明のIL-2ムテイン、またはそれらをコードする核酸は適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの気体、またはネブライザーを含有する加圧容器またはディスペンサーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。そのような方法には、米国特許第6,468,798号に記載されたものが含まれる。
【0143】
また、本発明のIL-2ムテインまたは核酸の全身投与が、経粘膜または経皮手段によるものであってもよい。経粘膜若しくは経皮投与のために、透過すべきバリヤに対する適当な浸透剤を当該製剤に用いる。このような浸透剤は一般に当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与には、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用によって達成され得る。経皮投与用には、活性化合物が、当該技術分野で一般に知られているような軟膏、膏薬またはクリームに製剤化される。
【0144】
いくつかの実施形態において、化合物(変異型IL-2ポリペプチドまたは核酸)はまた、直腸送達のための座薬(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を用いて)または保持注腸剤の形態で調製することもできる。
【0145】
いくつかの実施形態において、化合物(本発明のIL-2ムテインまたは核酸)は、McCaffreyら(Nature 418:6893,2002),Xiaら(Nature Biotechnol.20:1006-1010,2002)、又はPutnam(Am.J.Health Syst.Pharm.53:151-160,1996,erratum at Am.J.Health Syst.Pharm.53:325,1996)に記載される方法を含むがこれらに限定されない、当該分野で公知の方法を使用するトランスフェクションまたは感染によって投与することもできる。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2IL-2ムテインまたは核酸がインプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤などの、変異型IL-2ポリペプチドが体からの迅速に排除されないように保護する担体を用いて調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような、生分解性の、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤は、標準的な技術を用いて調製することができる。材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販されている。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞に標的化するリポソームを含む)も、医薬として許容される担体として使用することが可能である。これらは、例えば米国特許第4,522,811に記載されているように、当業者に知られている方法に従って製造することができる。
【0147】
IV.本開示の方法
本開示のいくつかの態様は、IL-2ムテイン、例えば、本明細書に記載のIL-2ムテイン、例えばIL-2部分アゴニストを産生するために有用な方法および関連する物質、ならびにIL-2シグナル伝達経路によって媒介されるシグナル伝達の摂動に関連する健康状態および障害を治療するための方法に関する。より詳細には、本開示のいくつかの実施形態は、それを必要とする対象におけるインターロイキン2(IL-2)によって媒介されるシグナル伝達経路の調節に関する。本開示のいくつかの実施形態において、IL-2媒介シグナル伝達は、IL-2受容体、例えば、インターロイキン2アルファ受容体(IL-2Rα)、インターロイキン2ベータ受容体(IL-2Rβ)、インターロイキン2ガンマ受容体(IL-2Rγ)の1つ、2つ、または3つに対するIL-2結合の選択的な低減により調節される。
【0148】
1態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示のIL-2ムテインを産生するために有用な組成物および方法に関し、この方法は、IL-2ムテインの産生に適切な条件下で、本明細書中に記載される宿主細胞を培養することを含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、この方法は産生されたムテインの単離をさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は産生されたムテインの精製をさらに含む。原核および真核宿主細胞において産生された組換えタンパク質の単離および精製に適した技術、系、および関連材料は、当技術分野において公知である。
【0150】
いくつかの実施形態において、産生されたIL-2ムテインをさらに修飾して、インビボおよび/またはエクスビボでの半減期を延長することができる。本開示のIL-2ムテインを修飾するのに適した既知の戦略および方法論の非限定的な例には、(1)本明細書に記載のIL-2ムテインポリペプチドの、ポリペプチドがプロテアーゼと接触するのを防止するポリエチレングリコール(「PEG」)などの高溶解性巨大分子による化学修飾;(2)本明細書に記載のIL-2ムテインと、例えばヒトFc抗体断片などの抗体または抗体断片との共有結合または結合;および(3)本明細書に記載のIL-2ムテインと、例えばアルブミンなどの安定なタンパク質との共有結合または結合;が挙げられる。従って、いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテインは安定なタンパク質(例えば、アルブミン)に融合できる。例えば、ヒトアルブミンはそれに融合したポリペプチドの安定性を増強するための最も有効なタンパク質の1つとして知られており、多くのそのような融合タンパク質が報告されている。
【0151】
いくつかの実施形態において、産生された本開示のIL-2ムテインは、1つ以上のポリエチレングリコール部分(例えば、PEG化)で化学的に修飾されるか;または類似の修飾(例えば、PAS化)で化学的に修飾される。いくつかの実施形態において、PEG分子またはPAS分子は、IL-2ムテインの1つ以上のアミノ酸に結合される。いくつかの実施形態では、PEG化またはPAS化IL-2ムテインは、1つのアミノ酸上のみにPEGまたはPAS部分を含む。他の実施形態において、PEG化またはPAS化IL-2ムテインは、2つ以上のアミノ酸上に、例えば、2つ以上、5つ以上、10つ以上、15つ以上、または20つ以上の異なるアミノ酸残基に結合したPEGまたはPAS部分を含む。いくつかの実施形態において、PEGまたはPAS鎖は、2000、2000超、5,000、5,000超、10,000、10,000超、10,000超、20,000、20,000超、および30,000Daである。産生されたIL-2ムテインは、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を介してPEGまたはPASに直接連結(例えば、連結基なしで)されてもよい。
【0152】
1態様において、本開示のいくつかの実施形態は、IL-2シグナル伝達経路によって媒介されるシグナル伝達の摂動に関連する健康状態および障害の治療に有用な組成物および方法に関する。より詳細には、本開示のいくつかの実施形態は、それを必要とする対象におけるインターロイキン2(IL-2)によって媒介されるシグナル伝達経路の調節に関する。
【0153】
いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテイン、および/またはそれらを発現する核酸を対象に投与して、望ましくない自己免疫応答または免疫抑制応答に関連する障害を治療することができる。このような疾患の処置において、本明細書に開示のIL-2ムテインは、調節T細胞を刺激するとともに潜在的炎症性免疫細胞を最小限しか活性化しないまたは活性化しないといった有利な特性を有してもよい。
【0154】
いくつかの実施形態において、本開示のIL-2ムテインは、自己免疫疾患を有する患者、有することが疑われる患者、または発症するリスクが高い患者を治療するために使用することができる。この方法は、治療有効量の(i)本明細書に開示されるIL-2ムテインのいずれか1つ、(ii)本明細書に開示される核酸、又はベクターのいずれか1つ、及び/又は(iii)本明細書のに開示の医薬組成物のいずれか1つを個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、ジストロフィー表皮水疱症、全身性エリテマトーデス、及び移植片対宿主病からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、移植片対宿主病である。
【0155】
いくつかの実施形態において、IL-2ムテイン、核酸又はベクター、及び/又は医薬組成物は、単一の治療薬として、または1個以上の付加的な治療薬と組み合わせて対象に投与される。いくつかの実施形態において、1個以上の付加的な治療薬は、特定の細胞タイプに対しムテインを標的化する抗体を含む。いくつかの実施形態において、この細胞タイプは調節T(Treg)細胞である。いくつかの実施形態において、前記抗体はIl-2ムテインに共有的に又は非共有的に結合する。
【0156】
1態様において、潜在的炎症性T細胞の増殖を予防する及び/又はCD8+T細胞又は他の炎症性免疫細胞サブセットからのIFNγの分泌を予防するための方法であって、インターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ)を発現する細胞を、本明細書に記載のIL-2ムテインに接触させることを含む、方法も提供される。他の実施形態において、潜在的炎症性T細胞は、CD4+CD44+IFNγ+T細胞又はCD8+CD44+IFNγ+T細胞である。いくつかの実施形態において、この方法は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで実施される。
【0157】
上述のように、いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは半減期を増加するために構造的に改変されている。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、改変は、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合,及びペグ化からなる群より選択される1個以上の改変である。
【0158】
別の1態様において、調節T(Treg)細胞の増殖を減少するための方法であって、Treg細胞を、(i)配列番号2によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して低いインターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ)に対する結合親和性;及び、(ii)配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して0~50%のEmaxを有するインターロイキン2(IL-2)ムテインに接触させることを含む、方法も提供される。
【0159】
いくつかの実施形態において、IL-2ムテインは、(i)配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較してIL-2Rβ結合親和性を増加させる、配列番号1のアミノ酸配列に従うナンバリングによるL80F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fから選択される1個以上のアミノ酸置換;及び、(ii)配列番号2によりコードされるポリペプチドと比較して、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減させ0~50%のEmaxとし、配列番号2のアミノ酸配列に従うナンバリングによる(A)L18R及びQ22E;及び(B)第126位のアミノ酸から選択される、1個以上のアミノ酸置換;を含む。
【0160】
別の1態様において、調節T(Treg)細胞の増殖を減少するための方法であって、Treg細胞を、(i)配列番号1によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して低いIL-2Rγに対する結合親和性;及び、(ii)配列番号1によりコードされるIL-2ポリペプチドと比較して0~50%のEmaxを有するインターロイキン2(IL-2)ムテインに接触させることを含む、方法も提供される。いくつかの実施形態において、Il-2ムテインは、配列番号1によりコードされるポリペプチドと比較して、IL-2Rγ受容体結合親和性を低減させ0~50%のEmaxとし、配列番号1のアミノ酸配列に従うナンバリングによる(A)L18R及びQ22E;及び(B)第126位のアミノ酸から選択される1個以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、配列番号1又は配列番号2の126位におけるアミノ酸置換はQ126A、Q126C、Q126D、Q126E、Q126G、Q126H、Q126I、Q126K、Q126M、Q126R、Q126S、又はQ126Tからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Il-2ムテインはQ126H、Q126K、又はQ126Mのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、Il-2ムテインはQ126Hのアミノ酸置換を含む。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、方法は、IL2ムテインをTreg細胞に標的化する抗体と組み合わせて投与することをさらに含む。本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、前記抗体はIl-2ムテインに共有的に又は非共有的に結合する。
【0161】
本明細書に開示の任意の実施形態のいくつかの実施形態において、方法は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで実施される。
【0162】
医薬組成物は、意図する投与経路と適合するように製剤化される。本明細書で使用される「投与」および「投与する」という用語は、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、および局所投与、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない投与経路による生物活性組成物または製剤の送達を指す。この用語は医療専門家による投与および自己投与を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本開示の変異型IL-2ポリペプチドは経口または吸入によって与えることができるが、非経口経路を介して投与される可能性が高い。非経口投与経路の例としては、例えば、静脈内、皮内、皮下、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。非経口投与のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような張性調節剤。pHは一塩基性および/または二塩基性リン酸ナトリウム、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で(例えば、約7.2~7.8、例えば7.5のpHに)調整することができる。非経口的製剤は、ガラスまたはプラスチックでつくられたアンプル、使い捨て注射器または多数回投与バイアル中に封入することができる。
【0163】
このような本発明のIL-2ムテインまたは核酸化合物の用量、毒性、および治療効力は、例えば、LD50(集団の50%において致死的な用量)およびED50(集団の50%における治療的有効量)を決定するといったようために、細胞培養物または実験動物における通常の医薬的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の投与量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。
【0164】
高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用してもよいが、非感染細胞に対するダメージの可能性を最小限にし、それにより副作用を減少させるために、そのような化合物を罹患組織の部位に標的化する送達システムを設計するようなケアが払われるべきである。
【0165】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための用量の範囲を処方する際に使用できる。このような化合物の用量は、好ましくは毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用する投与形態および利用する投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。本開示の方法において使用される任意の化合物について、治療的有効量は、まず細胞培養アッセイから推定できる。用量は、細胞培養において決定されるようなIC50(すなわち、最大値の半数の症状阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方され得る。このような情報は、ヒトにおいて有用な投与量をさらに正確に決定するのに用いることができる。例えば血漿中のレベルは高性能液体クロマトグラフィーによって測定できる。
【0166】
本明細書で定義されるように、本発明のIL-2ムテインの「治療有効量」(すなわち、有効用量)は、選択されるポリペプチドに依存する。例えば、患者体重あたり約0.001~0.1mg/kgの範囲の単回用量を投与することができ、いくつかの実施形態では、約0.005、0.01、0.05mg/kgを投与してもよい。いくつかの実施形態において、600,000IU/kgが投与される(IUはリンパ球増殖バイオアッセイによって決定でき、そしてWorld Health Organization 1st International Standard for Interleukin-2(human)によって確立される国際単位(IU)で表現される)。用量はPROLEUKIN(登録商標)に処方された用量と同様であってもよいが、それより低いことが予想される。組成物は1日に1回以上から1週間に1回以上投与することができ、1日おきに1回を含む。当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、これらに限定されない、特定の因子が、対象を効果的に治療するにに必要な用量およびタイミングに影響する可能性を理解するであろう。さらに、治療有効量の本発明のIL-2ムテインによる対象の治療は、単一の治療を含んでもよくあるいは一連の複数回の治療を含んでもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、8時間毎に5日間投与され、続いて、2~14日間、例えば9日間、の休止期間をあけ、続いて、8時間毎にさらに5日間投与される。
【0167】
潜在的炎症性T細胞の増殖を予防するため、低減するため、又は促進しないため、及び/又はCD8+T細胞又は他の炎症性免疫細胞サブセットからのIFNγの分泌を予防するための方法が提供される。この方法は、インターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ)を発現する細胞を、本明細書に記載のIL-2ムテインに接触させることにより実施される。潜在的炎症性T細胞の増殖及び/又はCD8+T細胞又は他の炎症性免疫細胞サブセットからのIFNγの分泌は、同様の条件下において同等の濃度で野生型IL-2が刺激するIFNγの増殖及び/又は分泌に対し、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(これらのパーセンテージの間にあるすべての値を含む)のいずれかで減少できる。いくつかの実施形態において、潜在的炎症性T細胞は、CD4+CD44+IFNγ+T細胞又はCD8+CD44+IFNγ+T細胞である。この方法は、付加的にインビトロ、インビボ、又はエクスビボで実施されることがある。
【0168】
V.システム及びキット
本開示のシステム及び/又はキットは、本開示のIL-2ムテイン、核酸、ベクター、又は医薬組成物の1個以上、並びに該IL-2ムテイン、核酸、ベクター、又は医薬組成物の1個以上を個体に投与するために使用するシリンジ(プレフィルドシリンジを含む)及び/又はカテーテル(プレフィルドシリンジを含む)を含む。キットは、本開示のIL-2ムテイン、核酸、ベクター、又は医薬組成物の1個以上、並びにそれを投与する際にシリンジ;及び/又はカテーテルを使用するための説明書も含む。
【0169】
本明細書を通して記載されるすべての最大数値の限定は、それより低い全ての数値限定を含むことが意図され、そのようなより低い数値の限定も本明細書中で明示的に記載されているものとする。本明細書を通して記載される全ての最小限数値の限定は、それより高い全ての数値限定を含み、そのようなより高い数値の限定も本明細書で明示的に記載されているものとする。本明細書を通じて記載されるすべての数値範囲は、その数値範囲内であるそれより狭いすべての数値範囲を含み、そのようなより狭い数値範囲もすべて本明細書で明示的に記載されているものとする。
【0170】
本開示において言及される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれるのと同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0171】
本明細書中に引用される任意の参考文献が先行技術を構成することは認められない。参考文献の議論はその著者が主張することを述べており、本発明者らは、引用された文献の正確さおよび適切さに挑戦する権利を留保する。科学雑誌論文、特許文献、および教科書を含む多くの情報源が本明細書で言及されるが、この参照はこれらの文献のいずれもが当技術分野の一般的な常識の一部を構成するものではないことが明確に理解されるのであろう。
【0172】
本明細書に記載される一般的な方法の議論は、例示のみを目的とする。他の代替方法や代替物が本開示を検討すれば当業者には明らかであり、本願の精神および範囲に含まれるものとする。
【実施例0173】
実施例1
本実施例は、様々なヒトIL-2バリアントがSTAT5のリン酸化を刺激する能力を示す。ヒトNK様YT細胞を、マウス血清アルブミン(MSA)に融合させた種々のヒトIL-2バリアントで、
図3に示すグラフに示す様々な濃度(1μM~0μM、10倍希釈)で15分間刺激した。昆虫細胞から精製されたIL-2REK(配列番号10)を除き、すべてのIL-2バリアントを形質導入HEK293細胞から精製した。
図3に示すグラフのY軸は、各濃度についてWT IL-2からのp-STAT5シグナルに対して正規化された各IL-2バリアントからのp-STAT5シグナルの比を示す。示されるように、IL-2H9(配列番号2)バックグラウンドにおける特定のアミノ酸による残基Q126の置換により、IL-2効力が広範に生じる結果となった。
【0174】
次に、ホスホ-STAT5シグナル伝達アッセイを、
図4Aに記載のグラフに示されるIL-2部分アゴニストの濃度で15分間YT細胞を刺激することによって時間経過的に行った。
図4AのグラフのY軸は、各濃度についてWT IL-2からのp-STAT5シグナルに対して正規化された各IL-2バリアントからのp-STAT5シグナルの比を示す。
図4Bに示されるように、YT細胞は、グラフに示されるように、1μMの異なるIL-2バリアントを用いて、様々な時点で刺激された。この図において、Y軸は、p-STAT5シグナルについての中央蛍光強度(MFI)を示す。
【0175】
図4Bのデータは、WT(配列番号1)、H9(配列番号2)および新規部分アゴニストREE(配列番号6)、REH(配列番号8)およびREK(配列番号10)(全てH9バックグラウンド上)についてのp-STAT5シグナルの大きさが、REE、REKおよびREHシグナル伝達について、それぞれ25%、50%および75%で経時的に一定であることを実証する。
【0176】
実施例2
本実施例は、マウスにおけるIL-2バリアントのインビボ投与を示す。0日目に、雌WT C57BL/6cマウスに、30μgの各MSA融合IL-2バリアントを腹腔内(IP)注射により与えた。6日目に、脾臓を回収し、細胞表面マーカー発現および細胞内サイトカインについてフローサイトメトリーにより分析した(n=3/群)(
図5A参照)。
図5B、
図5Cおよび
図5Dに描写されるグラフは、PBS処置マウスにおいてそれぞれの頻度に正規化された各状態についてグラフに示す細胞サブセットの頻度を表す。B細胞は、CD3
-CD19
+でゲートされた細胞によって定義された。NK細胞はCD3
-NK1.1
+でゲートされた。Ly6g(Gr1)
+CD3
+CD11b
+でゲートされた細胞を顆粒球と定義した。
【0177】
図5B-5Dに示されるように、IL-2バリアントの投与は、他の免疫細胞タイプ、IL-2H9_REH(REH;SEQID8)における軽度の変化をもたらし、CD4エフェクター記憶T(TEM)細胞の優先的な増殖を開始した。特に、WT(配列番号1)およびH9 IL-2(配列番号2)による処置は、IFNγ分泌性CD8 T細胞頻度の有意な増加をもたらしたが、この増加はマウスをREE(配列番号6)、REH(配列番号8)およびREK(配列番号10)のいずれかで処置した場合には見られなかった。
【0178】
実施例3
本実施例は、野生型バックグラウンドでのIL-2ムテインの産生および特徴を開示する。これらのバリアントがSTAT5のリン酸化を刺激する能力を、Phospho-STAT5シグナル伝達アッセイを用いて測定した。ヒトNK様YT細胞(
図6A)またはマウス飢餓T細胞芽細胞(
図6B)を、マウス血清アルブミン(MSA)に融合した種々のヒトIL-2バリアントで、グラフに示すように様々な濃度(5μM~0μM)で15分間刺激した。全てのIL-2バリアントを昆虫細胞から精製した。
図6Aおよび
図6Bに示すグラフのY軸は、各濃度についてWT IL-2からのp-STAT5シグナルに対して正規化された各IL-2バリアントからのp-STAT5シグナルの比を示す。示されるように、WT_REH(配列番号15)新しい部分アゴニストは、H9_REH(配列番号8)と比較して、より低いEC50とより高いE
maxを示すようである。両方の新しい部分アゴニストWT_REH(配列番号1).及びH9_REH(配列番号8)は、WTまたはH9 IL-2よりも低い有効性(E
max)を示す。
【0179】
その後、野生型バックグラウンドIL-2ムテインをB16メラノーママウスモデルに投与した。0日目に、106個のB16F10細胞をC57BL/6雌マウスに皮下注射した。5日目、9日目および14日目に、マウスを、IP注射によって30μgの各MSA-IL2バリアントで処置した。腫瘍サイズを、キャリパーを用いてD5から1日おきに測定した。mm3単位の腫瘍容積は、(長さ*(幅)2)/2として計算した。19日目に、脾臓を回収し、細胞表面および細胞内マーカー発現についてフローサイトメトリーにより分析した。(n=5/群)。
【0180】
図7Aに示されるように、腫瘍サイズは、PBS処置マウスと比較して、WT(配列番号1)またはH9(配列番号2)で処置されたマウスでは実質的に小さかった。H9_REH(SEQID8)およびH9_REM(REM)(配列番号11)投与は、PBS処置マウスに匹敵する腫瘍サイズの増加をもたらした。WT_REH(SEQID15)で処置したマウスは、WT(配列番号1)またはH9(配列番号2)で処置したマウスと比較して、より大きな腫瘍サイズを示す。PBSマウスと比較して、Foxp3
+調節T(T
reg)細胞の頻度の増加が、REM(配列番号11)処置マウスにおいて観察され、そしてマウスがWT_REH(配列番号15)で処置された場合、Foxp3
+T
reg細胞数は3倍の増加が観察された(
図7B)。WTおよびH9処置マウスはIFNγを分泌するCD44
+CD8記憶細胞の増大を示したが、新しい部分アゴニストWT_REH(配列番号15)、H9_REH(配列番号8)またはREM(配列番号11)では示さなかった。
図7Cは、NK細胞および顆粒球に対する効果を示す。IFNγ分泌CD4 CD44
+記憶細胞でも同様の傾向が認められた(
図7D)。最後に、WT IL-2(配列番号1)はCD4
+エフェクターT細胞(T
eff Ki67
+細胞)およびT
reg細胞の増殖を誘発したが、WT_REH(配列番号1)はT
reg細胞の特異的な増大を誘発したもののT
eff細胞は誘発しなかった(
図7E)。
【0181】
実施例4
本実施例は、野生型バックグラウンドにおけるIL-2R部分アゴニストがインビボで細胞タイプ特異的応答を誘発できることを実証するために行われた実験を記載する。
【0182】
これらの実験では、雌C57/BL6マウスに、3×30μg腹腔内用量(0、3、および6日目)の野生型(WT)IL-2(配列番号1)、部分アゴニストWT_REH(配列番号15)、部分アゴニストWT_RETR(配列番号21)、部分アゴニストWT_REK(配列番号22)、またはPBS対照を投与した。全てのサイトカインを、マウス血清アルブミン(MSA)に対するN末端融合体としてフォーマットした。7日目に、脾臓および末梢リンパ節を採取し、フローサイトメトリーにより分析し、昆虫細胞において分泌タンパク質として発現させた。
【0183】
これらの実験で使用したIL-2ムテインWT_RETRおよびWT_REKは、以下のアミノ酸配列を含んでいた
APTSSSTKKTQLQLEHLRLDLEMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCTSIIRTLT(WT_RETR;配列番号21)。
【0184】
APTSSSTKKTQLQLEHLRLDLEMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCKSIISTLT(WT_REK;配列番号22)。
【0185】
IL-2Rの部分アゴニストがリンパ器官の腫大を誘導することは、そのアゴニスト活性ろ一致することが観察された(脾臓と鼠径リンパ節を撮影した)。
図8A~8Bに示すように、部分アゴニストの投与は、リンパ器官の肥大を誘導することが見出された。IL-2と部分アゴニストはNK細胞(CD3
-NK1.1
+)の頻度にほとんど影響しなかったが、部分アゴニストではなくIL-2はB細胞(CD3
-CD19
+)の頻度の減少を示した。また、IL-2および部分アゴニストはT細胞(CD3
+)の頻度を変化させないことが観察されたが、IL-2はCD4対CD8 T細胞の比率の減少をもたらし、一方、1つの部分アゴニストであるREHはCD4対CD8 T細胞の比率の増加を引き起こした。
【0186】
実施例5
本実施例は、例示的なIL-2R部分アゴニストREHを用いる処置が従来のCD4+T細胞の活性化のt李厳と共にFoxP3+調節T細胞の頻度を増加させたことを実証するために行われた実験を記載する。
【0187】
これらの実験において、雌C57/BL6マウスに、3×30μg腹腔内用量(0、3、および6日目)の野生型WT IL-2(配列番号1)、部分アゴニストWT_REH(配列番号15)、部分アゴニスト部分アゴニストWT_RETR(配列番号21)、部分アゴニストWT_REK(配列番号22)、またはPBS対照を投与した。全てのサイトカインは、マウス血清アルブミン(MSA)に対するN末端融合としてフォーマットされ、昆虫細胞において分泌タンパク質として発現された。7日目に脾臓および末梢リンパ節を採取し、フローサイトメトリーにより分析し、Treg(CD25+FoxP3+)の頻度および従来のCD4+T細胞(CD25+FoxP3-)の活性化を評価した。
【0188】
IL-2R部分アゴニストREHはCD25+FoxP3+調節T細胞の頻度を増加させたが、CD25+従来細胞を誘導しなかったことが観察された。
【0189】
実施例6
本実施例は、IL-2R部分アゴニストREHで処理されたマウス由来のTregsがCD4+従来T細胞の増殖を抑制することを実証するために実施された実験を記載する。
【0190】
これらの実験において、雌B6.FoxP3 GFPマウスに、3×30μg腹腔内用量(0、3、および6日目)の野生型WT IL-2(配列番号1)、部分アゴニストWT_REH(配列番号15)、またはPBS対照を投与した。7日目に脾臓およびリンパ節を採取し、磁気選別(MACS)によりCD4 T細胞を単離した。精製したCD4+T細胞を、GFP発現に基づいて蛍光活性化細胞選別(FACS)によって選別して、Tregs(GFP+)およびTcons(GFP-)細胞を単離した。FoxP3サイトカイン処理マウス由来のGFP+細胞を、PBS処理マウス由来のCellTrace Violet標識TconsおよびaCD3aCD28被覆ビーズ(ビーズ対Tcon比1:1)と共培養した。CTVをロードしたTconの増殖を72時間後に評価した。
【0191】
REH処理マウス由来のFoxP3+細胞は、FoxP3-エフェクタ細胞の増殖を抑制することができることが観察された。
【0192】
実施例7
本実施例はIL-2R部分アゴニストREHがCD8+T細胞増殖を支持するが、IFNγ産生を支持しないことを示すために行われた実験を記載する。
【0193】
これらの実験において、CD8+T細胞を、C57/BL6マウスの脾臓およびリンパ節から、磁気単離(MACS)によって単離し、CellTrace Violetをロードし、20nM WT(配列番号1)またはWT_REH(配列番号15)の存在下または非存在下で3日間、aCD3aCD28被覆ビーズと共培養した。回収の4時間前に、さらなるサイトカイン分泌を防ぐために、ゴルジストップを細胞に添加した。72時間目に、細胞を固定し、透過性にし、インターフェロンγ(IFNγ)に対する抗体で染色した。
【0194】
IL-2R部分アゴニストREHとIL-2はともに増殖を支持しうるが、IL-2のみが細胞を増殖させることによりロバストなIFNγ生産を誘発しうることが観察された。
【0195】
実施例8
本実施例は、IL-2R部分アゴニストREHの処理および共処理がげっ歯類EAEモデル(脳炎症の動物モデル)における様々な自己免疫症状を保護することを実証するために実施された実験を記載する。
【0196】
これらの実験では、B6マウスを、10μgのMSA融合WT_REH(配列番号15)で前処理(-7日目、-4日目、-1日目)または同時処理した(0日目、3日目、および7日目)。0日目に、マウスを完全フロイントアジュバント(CFA)および百日咳毒素(PTX)中のミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(MOG35~55)で免疫し、その後2日目にPTXブーストした。体重減少と疾患スコアにより疾患スコア進行を追跡した。疾患スコアは、健常0、肢尾1、部分後肢麻痺2、完全後肢麻痺3、全身麻痺4、死亡5であった。
【0197】
IL-2R部分アゴニストREH前処理は保護作用があるが、REH同時処理はREH処理マウスにおけるTregの動態を検討した従前の実験と一致するように疾患発症を遅延させることが観察された。
【0198】
本開示の特定の代替が開示されたが、様々な改変および組み合わせが可能であり、添付の特許請求の範囲の真の精神および範囲内で企図されることを理解されたい。したがって、本明細書に提示される正確な要約および開示事項に限定する意図ではない。
前記欠失は、[des-A1]又は[des-A1、des-P2]、[des-A1、des-P2、des-T3]、[des-A1、des-P2、des-T3、des-S4]及び[des-A1、des-P2、des-T3、des-S4、des-S5]からなる群より選択される欠失のセットである、請求項4に記載のhIL-2ムテイン。
前記改変は、(a)ヒトFc抗体断片への融合、(b)アルブミンへの融合、及び(c)ペグ化からなる群より選択される1個以上を含む、請求項8に記載のhIL-2ムテイン。
前記PEGは、約10,000~約40,000ダルトンの平均分子量を有する少なくとも1個の直鎖または分岐PEGを含む、請求項10に記載のhIL-2ムテイン。
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、ジストロフィー表皮水疱症、全身性エリテマトーデス、及び移植片対宿主病からなる群より選択される、請求項33に記載の医薬組成物。