(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079800
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】禿頭症を治療するため、および毛髪の成長を促進するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240604BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240604BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/506 20060101ALN20240604BHJP
A61K 31/5575 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/14
A61P43/00 121
A61P43/00 125
A61M37/00 500
A61K31/506
A61K31/5575
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051453
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2021086186の分割
【原出願日】2011-12-06
(31)【優先権主張番号】61/420,282
(32)【優先日】2010-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/478,689
(32)【優先日】2011-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/453,919
(32)【優先日】2011-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/453,902
(32)【優先日】2011-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/513,906
(32)【優先日】2011-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.LABRASOL
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513142079
【氏名又は名称】フォリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FOLLICA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バーマン,シッハ,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ウィリアム,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ケロッグ,スコット,シー.
(72)【発明者】
【氏名】プラウティ,スティーブン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイガー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】レダーマン,セス
(72)【発明者】
【氏名】オスバッケン,メアリー
(72)【発明者】
【氏名】シナズィ,アラン,ディー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】毛髪の成長を促進するために外皮攪乱と組み合わせて用いる薬学的組成物を提供する。
【解決手段】それを必要とするヒト対象における毛髪の成長を促進するための組成物であって、育毛促進剤を含んでおり、前記ヒト対象の頭皮の領域の外皮攪乱(integumental perturbation)との組み合わせにおいて投与されるためのものであって、当該外皮攪乱が極微針を用いて行われ、前記外皮攪乱が、500μm~1000μmの皮膚の深さまでであることを特徴とする組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とするヒト対象における毛髪の成長を促進するための組成物であって、育毛促進剤を含んでおり、
前記ヒト対象の頭皮の領域の外皮攪乱(integumental perturbation)との組み合わせにおいて投与されるためのものであって、当該外皮攪乱が極微針を用いて行われ、
前記外皮攪乱が、500μm~1000μmの皮膚の深さまでであることを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2010年12月6日に出願された米国仮特許出願第61/420,282号、2011年3月17日に出願された米国仮特許出願第61/453,919号、2011年3月17日に出願された米国仮特許出願第61/453,902号、2011年4月25日に出願された米国仮特許出願第61/478,689号、および2011年8月1日に出願された米国仮特許出願第61/513,906号への優先権を主張し、これらのそれぞれの全内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
〔技術分野〕
1.前書き
本発明は、対象(例えばヒト)の皮膚の領域を外皮攪乱(integumental perturbation)に供することによって、前記皮膚領域上の禿頭症を治療する、脱毛症を治療する、毛髪の成長を促進する、ならびに/あるいは毛包の成長、および/または活性化を促進する方法に関する。外皮攪乱は、毛髪の成長を促進するための他の処置と組み合わせて使用することができる。本発明は、毛髪の成長を促進するための外皮攪乱用装置を提供し、また毛髪の成長を促進するために外皮攪乱と組み合わせて用いる薬学的組成物を提供する。
〔背景技術〕
2.
成人ヒトの皮膚は、本質的に毛包で覆われ、約500万の毛包を含み、約100,000~150,000が頭皮を覆っている。目に見える毛髪のないヒトの皮膚の部分は、ほとんどの部分については「軟毛」を生成する毛包を含むが、一方ある特定の他の毛包は、毛髪を含まないか、または生成し得ない(
図1を参照)。本質的に、手および足のそれぞれ、手掌側および足底面上の無毛皮膚、ならびに唇および陰唇のみが毛包を欠く。少数のヒト毛包のみが、容易に視認され得る毛髪繊維(「硬毛」)を生成し、これらの特殊化した毛包は皮膚の特定の領域上に局在し、正常な頭皮では、硬毛の毛包は、典型的には、7:1で軟毛の毛包の数を上回る。したがって、ヒトの非無毛皮膚上の目に見える毛髪の存在および不在は共に、特殊化した毛包の活性の調整によって媒介される。
【0002】
毛包、特に、ヒト毛包は、それぞれがいくつかの異なる特殊化した細胞からなる異なる構成要素からなる腺窩構造体である(
図2および3を参照)。毛幹を生成および固定することに関連する細胞および構造体に加えて、毛包の大部分は、皮脂腺(皮脂を生成する)と呼ばれる単位を含有する。いくつかの毛包は、それらに付着したアポクリン腺を有し、腋窩および身体の他の特定部位に位置している。
【0003】
毛幹に加えて、毛包構造体は、毛包乳頭(FP)および胚芽上皮(GE)(一緒に、毛球部)を含む。FPは、間葉細胞(および結合組織)からなる。毛包の他の細胞は、上皮であり、外毛根鞘(ORS)、付随層(CL)、内毛根鞘のヘンレ層(He)、内毛根鞘のハックスレー層(Hu)、内毛根鞘小皮(Csth)、毛幹小皮(Csft)、毛幹外皮、および毛幹髄質(Med)を含む少なくとも8つの細胞家系を含む(Stenn & Paus,2001,Physiol.Revs.81:449-494)。(
図2~4も参照のこと)。
【0004】
ヒトにおける頭皮の毛髪およびある他の毛髪は、毛包単位において成長する傾向がある。頭皮の毛髪の毛包単位は、一般に、2~4本の硬毛の毛包、1本、稀に、2本の軟毛の毛包、それらの関連した皮脂腺、神経血管叢、起毛筋(erector pilorum)、および「毛包周囲(perifolliculum)」と称される外膜コラーゲンの円周帯からなる(Headington JT,1984,Arch.Dermatol.120:449-456、Bernstein RM,2005,“Follicular Unit Hair Transplantation,”Ch.34 in Surgery of the Skin,Robinson et al.,eds.,St.Louis:Mosby,pp.549-574)。
【0005】
毛包は、毛包が、毛髪の生成、抜け毛(放出)、退行、および新しい成長のサイクルを経て進行するとき、毛包の寿命にわたって約20本の個々の毛幹を生成すると考えられている。毛髪の成長の調整および毛包の再生は、ネズミ系において調査されている。しかしながら、マウスにおける毛包の生物学は、いくつかの重要な局面においてヒトのものとは異なる。マウスでは、厚い毛のコーティングが、健康的な生活には不可欠なものである(毛髪が体温調節および他の機能における役割を果たすため)。マウス皮膚は、硬毛(毛皮)を生成する毛包で覆われているが、一方、ヒト皮膚の重要な領域は、ほとんど見えないか、または目にすら見えない軟毛を生成する毛包で覆われている。マウスおよび他の非霊長類哺乳動物は、若年期において、同期の毛包サイクルを有するが、毛包サイクルが年齢と共にあまり同期しなくなる。ヒト毛包は、非同期様式で、毛包サイクルを経て進行する。成人ヒト頭皮における、任意の特定の期間で、約80~90%が成長期であり、10~20%が退行期、および1~2%が休止期である。マウスがある特殊化した毛包(例えば、ひげ、ガード(guard)、錐状(awl)、オーヘン(auchene)、およびジグザグ(zigzag)毛)を有するが、マウス毛包は、通常、発育上および性特異的な毛髪パターニングには従っていない。対照的に、著しい数のヒト毛包が、発育および老化の異なる時期に、性特異的な様式で生成された毛幹の種類、長さ、および色に影響を及ぼす振り付けられた毛髪パターニングに個々に寄与する。
【0006】
2.1 毛包の形態形成および再生
毛包形成は一生に一度(子宮内で)生じ、そのため、哺乳動物、および特にヒトは、定数の毛包を持って生まれ、毛包は、通常、その後増加しないと考えられている。胎児の毛包を再現するための成熟哺乳動物の皮膚の再生能の提案にもかかわらず、最近まで、毛包新生は、発生または毛包新生を示すために必要とされるツールの欠如により証明されなかった(Argyris et al.,1959,Dev.Biol.1:269-80、Miller,1973,J.Invest.Dermatol.58:1-9、およびKligman,1959,Ann NY Acad Sci 83:507-511を参照)。
【0007】
しかしながら、毛包新生が動物(例えば、ウサギ、マウス)における創傷治癒に関与し得ることが提案されている。Stenn & Paus,2001,Physiol.Revs.81:449-494を参照されたい。より最近では、一連のマウス実験により、毛包由来の上皮幹細胞の前駆細胞が、毛包から移動し、傷ついた皮膚の再上皮化に寄与することを確実に示した(Morris et al.,2004,Nature Biotechnology 22:411-417、Ito et al.,2004,Differentiation 72:548-57、およびIto et al.,2005,Nature Medicine 11:1351-1354を参照されたい)。毛包発生におけるWntの役割を研究するために設計された動物研究において、Fathkeは、マウスにおける創傷治癒中のWntシグナル伝達の持続的活性化が、毛包の基盤の生成をもたらしたが、毛包の形成またはさらなる毛髪の成長をもたらさなかったことを示した(Fathke et al.,2006,BMC Cell Biol.7:4)。
【0008】
Fathkeが述べたように、全層創傷後の成熟哺乳動物における皮膚修復は、瘢痕組織をもたらし、毛包の再生能力の喪失に至ることが理解されている。重度の創傷および火傷は、通常、瘢痕組織、および毛包がない状態をもたらす形態の皮膚修復を伴う(Fathke et al.,2006,BMC Cell Biol.7:4を参照)。しかしながら、マウス実験において、Cotsarelisは、皮膚および既存の毛包を、ある確定された様式で物理的に攪乱することによって、毛包新生をもたらすことができることを示した(Ito et al.,2007,Nature 447:316-321)。Cotsarelisは、マウスにおける全層切除(FTE)によって作られた大きな治癒した創傷(1cm2の正方形の創傷)が閉じた後、新しい毛髪が創傷の中央に形成されたことを示した(Ito et al.,2007,Nature 447:316-321)。(Argyris,1976,Amer J Pathol 83:329-338)。ヒトでは、顔面皮膚の真皮のほぼ半分の約2mmの深さまで削ることによる削皮術が行われ、軟毛毛包の形成が確認された(Kligman,1956,J Invest Dermatol 27:19-23)。これらの所見は、脱毛の治療のための臨床的レジメンに生かされていない。
【0009】
他の前臨床試験は、皮膚が胚期の状態に戻る上皮の攪乱後の治療域を特定しており、化合物の添加によって皮膚および毛包の表現型を操作することができる。例えば、創傷後の新しい毛髪形が予め定められないため、毛包の形成に関連する制御経路(例えばWnt、EGFR)は、例えば、毛包の数および大きさを増加させるために、劇的な影響を及ぼすことができる。Ito et al.Nature.2007;447(7142):316-320、Fathke et al.BMC Cell Biol.2006;7:4、Snippert et al.Science.2010;327(5971):1385-1389を参照されたい。
【0010】
皮膚蘇生および瘢痕修復のために削皮術を行うための電動式装置は、数十年間存在している。その間、電動式回転砥石ホイールの従来の実施形態は、あまり変更されていない。本質的に、電力が削皮ホイールに適用されると、所望の臨床効果が達成されるまで、角質層および表皮、時には真皮の一部を研磨する。Argyris TS,Am J Pathol.1977;88(3):575-582を参照されたい。しかしながら、従来の削皮ユニットは、重大な不利点を有する。例えば、回転ホイールは、毛包の成長治療の一部として薄くなっている毛髪の領域において使用されるとき、重要な課題を示す。具体的には、
図5Aおよび5Bで見ることができるように、従来の削皮ホイール202は360度回転するため、回転ホイール202が存在する毛髪204を巻き上げて引き抜く傾向がある。また、回転ホイールの回転の慣性が、血液および残屑に移動され、それによって、削皮プロセスによって作られた血液および残屑の飛び散りを生じ、安全性の懸念および視覚的不快感を生じる。さらに、
図6で見ることができるように、回転ホイール202は、回転方向で追跡および移動または「歩行」する傾向があり、技術者による不十分な全体的な制御をもたらす。さらに、従来の削皮器(dermabrader)の軸方向の配向で提供される人間工学は乏しい。
図7で見ることができるように、従来の削皮ハンドピース210では、臨床医の手が持続的に患者に干渉し、標準的な人間工学から、精妙な器具を保持するには良くない方法であることが分かる。
【0011】
2.2 ヒト毛パターニングは、特定の特徴を有する異なる毛包型によって媒介される
光顕レベルで、ヒトの皮膚は、本質的には、毛包で覆われている。毛髪が容易に見えないヒト皮膚部分は、ほとんどの部分では、薄く、短い(即ち、長さ2mm未満および/または直径30ミクロン未満)、きめ細かいまたは「微毛のある」外観を有し得、しばしば無色である、「軟毛」を生成する毛包を含有する。ある他の毛包は、毛髪を含有し得ないか、または毛髪を生成し得ない。少数のヒト毛包のみが、目に見えるほどに容易に認識され得る毛髪繊維(「硬毛」)を生成し、これらの特殊化した毛包は皮膚の特定の領域上に局在する。別の毛包型は、「皮脂」毛包であり、これは、その発端から、非常に小さい毛幹を有する毛包、非常に大きい皮脂腺、ならびに大きい管および毛穴である。
【0012】
したがって、ヒト皮膚における目に見える毛髪の存在および不在は共に、特殊化した毛包の活性の調整によって媒介される。
【0013】
ヒト毛髪パターニングの空間的および時間的様相は、胚形成中の独自の特徴を有する特殊化した毛包の局在によって異なると考えられている。毛包のこの補体は、再生または置換されず一生を通じて維持されるとさらに考えられている。ヒト胎児毛包は、妊娠中、産毛を生成し得る。それは中間のきめ細かく、短く、低色素性であり、一般には、正常分娩時までに抜け落ちる。出産時までに、異なる特殊化した毛包型が、皮膚の特定の領域に位置付けられ、それらはそれぞれ、ヒト個人の一生にわたって毛髪パターニングにおいてプログラム化した役割を果たし、構造的に様々な毛髪型(産毛、軟毛、または硬毛)を生じるか、あるいは性ホルモンまたは他の要因等のあるシグナルに依存する(例えば、産毛は、飢餓または神経性無食欲症および過食症等の摂食障害において、また、生後に、先天性毳毛性多毛症において、後者の場合は、癌と関連する後天性毳毛性多毛症において再現し得る)。
【0014】
性別がヒト毛髪の特異的なパターニングに関連する。皮膚の特定の領域における目に見える毛髪の成長および消失は、型通りの性的二形パターンにおいて、「第二次性徴」と見なされる。この用語は、「第一次性徴」と称される性器および生殖器官への毛髪パターニング等の「第二次」特徴に関する。胚発育中に必要とされる男性および女性の異なる性器および生殖器官は、思春期および更年期/男性更年期においてさらなる変化を受ける。毛髪の成長および消失に加えて、女性における胸部はまた、第二次性徴と見なされる。
【0015】
あるヒト毛包は、特定の皮膚領域に向けられ、テストステロンおよびジヒドロテストステロン(「アンドロゲン」)ならびに/またはエストロゲン等の性ホルモンの影響下、胚形成中、特殊化した特徴を展開する。さらに、あるヒト毛包は、思春期、および更年期/男性更年期において性ホルモンによって活性を変化させるように駆り立てられる。
【0016】
ある程度、ホルモン(アンドロゲンおよびエストロゲン)のこれらの群のいずれかが、ある活性を誘発するまたは他の群の作用を阻害する(即ち、アンドロゲンはエストロゲン作用を阻害し、エストロゲンはアンドロゲン作用を阻害する)役割を果たし得るため、第二次性徴の出現および強度は、アンドロゲンとエストロゲンの比率によって調節されると説明され得る。例えば、アンドロゲンは男性特徴を誘発し、女性特徴を抑制するが、一方、エストロゲンは女性特徴を誘発し、男性特徴を抑制する。本明細書に使用される、男性および女性とは、極度の遺伝的な性的二形性を指し、言及することにより、男性および女性特徴のスペクトルを示す様々な条件および状態(XO症候群または外因性性ステロイド投与に起因する状態等)を含む。
【0017】
特殊化したヒト毛包は、活性における量的多様性および質的多様性を有する。例えば、性ステロイドは、胚形成または成人期のいずれかあるいはその両方において毛髪パターニングにおける定性的効果を有する(例えば、男性は、思春期後、硬毛を生成する顎髭の毛包を有するが、女性は、有さない)。男性および女性はまた、性特異的な毛髪パターニングの量の点でも異なる(例えば、女性の脚よりもむしろ男性の脚においてより高密度の脚の毛包が、硬毛を生成する)。また、同性の個人も、量的多様性を示す。例えば、男性の胸部および背部の毛髪は、ほとんど無毛から密集した毛まで、および硬毛を生成する毛包の小さな領域から大きな領域まで範囲として異なる個人において存在する。
【0018】
性特異的なヒト毛髪パターニングは、特定の毛包の異なる生物学的プログラミングを強調する。男性の頭皮および顔面における比較的近接した異なる毛包は、全く正反対の方法において、アンドロゲン/エストロゲンの高い比率に応答する:アンドロゲン/エストロゲンの高い比率は、男性の口髭/顎髭の皮膚における軟毛から硬毛への変換を誘発する(特に、思春期)が、男性型脱毛症において男性の前頭部/側頭部の頭皮における硬毛から軟毛への変換を誘発する(思春期後、徐々に)。
【0019】
他の領域におけるアンドロゲン/エストロゲンレベルの効果は、特定の毛包の生物学的プログラミングにおけるさらなる多様性を証明する。後頭部の頭皮における毛包は、アンドロゲン/エストロゲンの高い比率に対して比較的感受性が低い(しかし、後に、より長期のアンドロゲン暴露後、加齢による菲薄化を受ける)。腋窩および恥骨部(肛門性器部)における毛包は、口髭/顎髭の毛包よりもアンドロゲンに対してより感受性が高いように思われ、したがって、腋窩部/恥骨部における硬毛が、(a)比較的低いレベルのアンドロゲンを有する女性、(b)顎髭/口髭前の男性の思春期早期、および(c)遺伝子の5-α-レダクターゼタイプIIの遺伝子欠陥を有する患者において成長する。
【0020】
2.2.1 男性型脱毛症
男性型脱毛症(MPHL)は、一種の「アンドロゲン性脱毛症」である。アンドロゲン性脱毛症は、50歳までに男性のうちの約50%に生じる遺伝子的に媒介された障害である(Stough et al,2005の概説を参照)。女性では、この状態の組織学的特徴は、男性におけるものと同じであるが、感受性、発病時の年齢、進行速度、および脱毛パターンは、性別間で異なる(Dinh and Sinclair,2007)。
【0021】
思春期後、男性は、連続である比較的特徴的なパターンで(例えば、Hamilton Norwoodスケールによって記載される;
図8を参照のこと)、頭頂、頭頂部、および前部/頭骨頭頂部領域にわたって頭皮の毛髪を消失し始める。毛髪脱落のプロセスは、毛包が、深さおよび境界線の両方で進行的により小さくなり、生成した毛幹が、より短く、薄くなる、「縮小化」による毛包のレベルで生じる。硬毛と軟毛のような毛髪の比率は、約7:1から2:1未満に軽減され得る。縮小化は、棍毛の毛幹または軟毛の毛幹の割合の増加をもたらす。男性における頭皮の毛髪の消失は、アンドロゲンジヒドロテストステロン(DHT)によって導かれるプロセスであることが知られており、これは5-α-レダクターゼII(テストステロンをDHTに変換する)を阻害するフィナステライドによって阻害され、ある程度、元に戻され得る。MPHLの進行した段階では、頭頂部またはこめかみにおける罹患した毛包は、萎縮、または恐らく取り返しがつかないほどに退縮した(「老化した」)と見なされる。これが生じるプロセスは、完全には理解されていない。ある理論は、アンドロゲンが成長期および休止期の段階の長さを変化させ、したがって、約9:1の成長期と休止期の比率の正常比率は、MPHLにおいて約2:1以下になり得る。休止期の毛髪は、より緩く固定されており、抜け落ちやすいか、または引き抜かれやすい(例えば、毛髪を梳くまたはブラッシングすることによって)。休止期の終わりに、完全に角化した毛髪である棍毛が生成される。MPHLに罹患した領域の毛包はまた、毛包の縮小化も受け、硬毛の毛包の軟毛の毛包になる割合が増大する。さらに、アンドロゲン性脱毛症は、3本以上の硬毛を有する毛包単位のより少ない硬毛を有する毛包単位への漸進的な変換を伴うと考えられる(例えば2本の硬毛を有する単位が1本の硬毛を有する単位に進む)。若い個人に罹患することに加えて、特に、頭部の頂上部の毛髪の菲薄化は、身体においてテストステロンおよびDHTの量が減少しているとき、高齢の個人においても生じ得る。これは、より早期の年齢からのMPHLの延長であり得るか、または寿命の後期の数十年において始まる場合さえある(即ち、加齢による毛髪の菲薄化)。
【0022】
MPHLは、アンドロゲン受容体であるEDA2R遺伝子の特異的多型と関連する。II型5-α-レダクターゼが遺伝的に欠けている男性は、MPHLを経験しない(Jenkins et al.,1992,J Clin Invest 89:293-300を参照のこと)。
【0023】
いくつかの系列の研究は、男性の前頭頂部および冠状毛包のアンドロゲンへの感受性の機械的な側面を解明している。アンドロゲン活性は、アンドロゲン受容体Hic-5/ARA55への共同因子によって媒介され得る(Inui,2007,J Invest Dermatol 127:2302-2306)。Hic-5/ARA55 mRNA発現は、顎髭および禿頭の前頭皮からの皮膚乳頭細胞において高かったが、後頭部の頭皮からの細胞においては低かった。別のアンドロゲン受容体コアクチベータであるARA70/ELE1により、禿げていない領域よりも禿げている受容領域において皮膚乳頭内のスプライス変異型(ARA70ベータ/ELE1ベータ)の発現が減少した(Lee et al.,2005,J Cutan Pathol 32:567-571)。後頭部の毛包において、アンドロゲン媒介の毛髪脱落からこれらの毛包を保護し得る、Hic-5/ARA55遺伝子の増加したメチル化が存在するという証拠がある。Cobb et al.Br J Dermatol.2011;165(1):210-213を参照のこと。
【0024】
2.2.2 女性型脱毛症
MPHLの進行に加えて、男性および女性の両方は、12歳~40歳で始まる「菲薄化」と称される前頭部/頭頂部の頭皮におけるびまん性脱毛症を発症する。集合的に、男性および女性におけるMPHLおよびびまん性の菲薄化は、「アンドロゲン性脱毛症」と称される。恐らく、女性は、MPHLに苦しまず、前頭部の生え際を保持し、びまん性脱毛症が女性にとってより目立ち、かつ問題となるため、恐らく、男性よりも女性が、男性よりも中年で進行的にびまん性の毛髪の菲薄化に気づく(それを訴える)。女性において、菲薄化は、「女性型脱毛症(FPHL)」として知られ、アンドロゲンによって生じ得るか、または悪化し得る(Price,2003,J.Investig.Dermatol.Symp.Proc.8:24-27)。
【0025】
機構的に、FPHLは、最近の研究がケノゲン(kenogen)の延長を見出しているが、成長期の期間の漸減および進行性の毛包の縮小化においてMPHLといくつかの特徴を共有すると考えられている。MPHLと同様に、特に、頭部の頂上部の毛髪の菲薄化は、若い個人に罹患することに加えて、身体においてテストステロンおよびDHTの量が減少しているとき、より年齢の高い個人においても生じ得る。これは、より早い年齢からのFPHLの延長であり得るか、または寿命の後期の数十年において始まる場合さえあり(即ち、加齢による毛髪の菲薄化)。
【0026】
2.2.3 瘢痕性脱毛症
瘢痕性脱毛症脱毛症(cicatricial alopecia)としても知られている瘢痕性脱毛症(scarring alopecia)には、一次性瘢痕性脱毛症(PCA)および二次性瘢痕性脱毛症が含まれる。一次性瘢痕性脱毛症は、それ以外では健常な全ての年齢の男性および女性における、毛包の永久的な破壊および瘢痕化を生じる多様な毛髪疾患の稀な群を説明する(http://www.carfintl.org/faq.html;Price VH,2006,“The medical treatment of cicatricial alopecia,”Semin Cutan Med Surg 25:56-9)。PCAでは、毛包は、皮脂腺および毛包の幹細胞の破壊および繊維状(瘢痕)組織との置換をもたらす毛包を中心とする(folliculocentric)炎症性攻撃の初期標的である。二次性瘢痕性症は、重症感染症、腫瘍、火傷、または放射線被爆に続く毛包単位の偶発的破壊を説明する。
【0027】
一次性瘢痕性脱毛症は、永久的な毛髪脱落を生じる少なくとも8つの稀な疾患を示す。これらの疾患の臨床経過は、極めて変動し、予測不可能である。毛髪脱落は、長年にわたってゆっくりと進行し得るか、または数ヶ月以内で急速に生じ得る。かゆみ、疼痛、およびほてりは、しばしば、深刻であり、身体能力を奪う。一次性瘢痕性脱毛症は、現在、頭皮生検の病理組織学的分析によって分類され、この分析は、主にリンパ球性炎症を伴うものを、主に好中球性炎症を伴うものから、および混合浸潤物を有するものから階層的に分ける。リンパ球媒介性PCAには、毛孔性扁平苔癬(LPP)、前頭部硬化性脱毛症(FFA)、中央遠心瘢痕性脱毛症(CCCA)、および萎縮性脱毛症(Brocq)が含まれる。好中球媒介性PCAには、脱毛性毛包炎および房状毛嚢炎が含まれる。混合炎症性浸潤は、解離性蜂巣炎および頭部乳頭状皮膚炎に生じ、これらの両方は、毛包破裂に続発する。
【0028】
これらの炎症性疾患の病因および発症は、あまり理解さていない(Mirmirani et al.,2005,“Primary cicatricial alopecia:histopathologic findings do not distinguish clinical variants,” J Am Acad Dermatol 52:637-43を参照のこと)。それらは接触伝染せず、円形脱毛症およびアンドロゲン性脱毛症とは異なって、遺伝しない。PCAの臨床的特質には、罹患した頭皮に渡る毛包穴の消失、活性の臨床的指標である「引張試験」における固定の緩い成長期の毛髪の存在が含まれる。同様の特性が、マウスの自然発生突然変異株、即ち、アセビア(Asebia)において記載されており(Josefowicz & Hardy,1978,“The expression of the gene asebia in the laboratory mouse.I.Epidermis and dermis,” Genet Res 31:53-65)、および脱小胞化(defolliculated)(Porter et al.,2002,“Defolliculated (Dfl):a dominant mouse mutation leading to poor sebaceous gland differentiation and total elimination of pelage follicles,” J Invest Dermatol 119:32-37))、それらの株は形成不全皮脂腺、毛包の破壊、進行性脱毛症、および毛包の繊維性組織による永久置換を伴う。最近、マイクロアレイデータおよび患者の頭皮生検の免疫組織化学分析、他のインビトロ研究、および瘢痕性脱毛症のマウスモデルにおけるトランスジェニック研究を含む証拠の集積は、発現の低下、または特定の転写因子の機能の消失、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPAR-γ)が、ペルオキシソームの進行性消失、炎症性脂質の集積、およびLPP患者における毛嚢脂腺単位を最終的に破壊する炎症細胞の侵入を誘発するという推測を導いている(Karnik et al.,2009,“Hair follicle stem cell-specific PPAR-gamma deletion causes scarring alopecia,” J Invest Dermatol 129(5):1243-1257)。
【0029】
2.2.4 ドナードミナンス
特殊化したヒト毛包の独自の特徴は、皮膚、毛包、または毛包単位を移植するとき、「ドナードミナンス」と称されるドナー部位の特徴を示し続ける(Orentreich N,1959,Ann NY Acad Sci.83:463-479)。この原理は、アンドロゲンで誘発されたMPHLに影響されない領域(例えば後頭部頭皮)から、アンドロゲンの影響下で特殊化した毛包が軟毛を形成し始めるか、または毛髪の生成を停止している領域(例えば、前頭部/側頭部;頭頂もしくは頭頂部の頭皮)に、頭皮の毛髪(皮膚、毛包、または毛包単位)を移植する、男性において一般的に行われている処置の結果により証明されている。移植した毛包は、それらの元の位置からの、プログラム化した硬毛生成の特徴を保持する。しかしながら、より最近の研究は、被移植部が移植した毛髪のいくつかの特徴に影響を及ぼし得ることを示唆している。Hwang et al.,2002,Dermatol.Surg.28:795-799を参照のこと。
【0030】
2.3 ヒト対象における脱毛症のための現在の治療法
ヒト脱毛症は、(1)性特異的毛髪パターニング、(2)病理学的脱毛症、または(3)創傷後の脱毛症に分類することができ、これらは全て、自尊心および自己像への影響と関連し得、多くの個人が彼らの毛髪脱落プロセスを治療することができるかどうか模索している。現在、提供されている治療法は、先在する毛髪を刺激するか、または移植する化学的および外科的アプローチ等の薬剤およびレジメンの限定された選択肢を含む。
【0031】
化学治療は、あるMPHLの治療に対する薬物の使用を含む。これらは、例えば、K+チャネルを開口させる抗高血圧薬であるミノキシジル(商標名Rogaine);フィナステライド(商標名Propecia、Proscar)、デュタステリド、またはケトコナゾール等の抗アンドロゲンを含む。ミノキシジルおよび抗アンドロゲンは、軟毛の成長を刺激し、あるMPHL条件中の毛髪を小型化するのにある程度満足できる程有効である。これらの治療タイプは、MPHLを遅延させるのにある程度満足できる程有効であるが、禿頭症が、毛包のある種の最終的な老化または退行期と一致した、進行した後のMPHLの頭皮において、MPHLの防止および有意な硬毛の成長の刺激の両方にはあまり有効ではない。有効であるときでさえ、これらの薬物は、禿げる前にあったような毛包を形成せず、得られる毛包はより小さく、頭皮は、硬毛の密度が低下している。
【0032】
重要なことには、ミノキシジルおよびフィナステライドの両方は、摂取している間のみ有効であり、得られたまたは維持された毛髪は、治療法を停止してから6~12ヶ月以内に消失する。例えば、Rossi,ed.,2004,Australian Medicines Handbook.Adelaide:Australian Medicines Handbookを参照のこと。したがって、ミノキシジルおよびフィナステライドは、効果を持続するために継続的な治療を必要とする。加えて、進行したMPHLに罹患している患者は、統計的には有意であっても、美容上有意でない毛髪数の増加への不満を漏らす場合があり、そのような欲求不満は、不良なコンプライアンスおよびさらなる不満足な結果の一因となり得る。最近、ビマトプロスト(緑内障の進行の制御において、高眼圧症を治療する際に使用されるプロスタグランジン類似体)が、まつ毛を長くすることがFDAで認可され、商標名Latisse(登録商標)で市販され、まつ毛を成長させ、それらをより長く、太く、および濃くなると主張される。
【0033】
フィナステライドは、女性用には認可されていないが、ミノキシジルは、男性および女性の両方にFDA認可されている。コペキシル(Kopexil)(例えばKeranique)は、副作用がより少ないことが提案されている改良された形態のミノキシジルであり、したがって、女性における毛髪脱落の治療用に提案されている。しかしながら、統計的に有意であるが、美容上有意でない毛髪数の増加への患者の不満は、不良なコンプライアンスおよびさらなる不満足な結果の一因となる。ミノキシジルの使用は、髪の毛がごわつき、残留物を残し得るという事実によってさらに困難である。加えて、多くの患者は、5-α-レダクターゼ阻害剤の場合は、性的機能不全等の、永続的なフィナステライドまたはミノキシジル治療からの副作用への不満がある。
【0034】
頭皮上に低レベルの光エネルギーを直接使用する装置(HairMax Lasercomb)は、510K装置としてFDA認可を受けている。この装置は、「レーザー」として宣伝されているが、頭皮に低レベルの単色光エネルギーを直接適用することによって作動し、これは、毛包の「光バイオ刺激」を通して毛髪の成長を刺激すると考えられている。同様の原理に作用する様々な種類の装置は、HairMaxの述語として参照される(Lolis et al.,2006,J.Cosmetic Dermatol.5:274-276を参照のこと)。
【0035】
最終的に、毛髪脱落を治療するためのより抜本的な処置には毛髪移植術が含まれ、後頭部頭皮(AGA型脱毛症を誘発時の、アンドロゲンの効果に耐性を示す)から頭皮片、毛包、または毛包単位が切除され、ヒトの禿げつつある、または薄くなっている部位に移植される。使用されている別の外科的方法は、頭皮縮小であり、この処置では、頭皮の禿げ領域を外科的に切除し、周囲の皮膚(毛髪を含む)を一緒に引っ張り、縫合する。外科的方法は、局所の毛髪脱落には最良であり、広範な毛髪脱落にはあまり有効ではなく、女性にはあまり有効ではなく、若年患者は、将来の毛髪脱落のパターンおよび程度が変化するため、理想的な候補者ではない。全ての患者にとって、毛髪移植術は、手術の侵襲性質、回復時間、美容上効果を示す持続時間(約6~12ヶ月)、瘢痕の形成、および費用のため、不都合であり得る。毛髪移植術における外科的進歩にもかかわらず、美容上範囲は、患者のドナー部位における毛髪の領域およびその数によって限定される。
【0036】
一次性瘢痕性脱毛症(PCA)疾患は、現在、炎症性疾患として治療されている。リンパ球PCAを有する患者は、一般に、経口、局所用、または病巣内注射の抗炎症性薬物を処方されている。経口薬物には、ヒドロキシクロロキン、ドキシサイクリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、またはコルチコステロイドが含まれ、局所用薬物には、コルチコステロイド、局所用タクロリムス、または局所用ピメクロリムスが含まれ、トリアムシノロンアセトニドは、注射した薬物として使用されている。抗菌性薬物が、培養後、好中球性(好中球に媒介された)PCA用に処方され、感受性が、適切な選択を導く。その混合した浸潤物を含む解離性蜂巣炎は、イソトレチノイン治療に応答する。これらの治療のいずれも、治癒的ではなく、せいぜい、症状を抑え、臨床的症候が消失する。毛髪脱落は、多くの場合、ゆっくり、かつ知らない間に進み続ける。円形脱毛症と対照的に、迅速な診断および治療が、永久的な毛髪脱落および瘢痕化を軽減し得、これはその考慮すべき罹患率に寄与する。一部では、毛髪移植術もまた、臨床的選択肢として考慮される。
【0037】
有効な治療選択肢が限定されているため、毛包新生に至り、目に見える毛髪をもたらすものを含む、毛髪脱落のための新規の安全かつ有効な治療に対するかなりの興味が個人間にある。
〔発明の概要〕
3.
外皮攪乱を用いて、対象、特にヒト対象における毛髪の成長を促進する。外皮攪乱を用いて、毛髪の成長を促進するための装置および方法が、本明細書に提供される。ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、毛髪の成長を促進するために本明細書に提供される方法は、対象の皮膚領域における毛髪の量または厚みの増加をもたらす。ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、毛髪の成長を促進するために本明細書に提供される方法は、対象の皮膚領域における軟毛の増加をもたらす。ある特定の態様では、本明細書に提供される外皮攪乱法は、非閉塞性の局所用薬学的組成物の投与を伴う。ある特定の態様では、外皮攪乱法は、育毛促進剤を含む薬学的組成物の投与を伴う。具体的な態様では、外皮攪乱法は、軟毛の硬毛への移行を促進する薬剤を含む薬学的組成物の投与を伴う。したがって、本発明の一態様では、対象における硬毛の成長を促進するための方法が、本明細書に提供され、その方法は、具体的な一態様では、軟毛の硬毛への移行または休眠しているもしくは休止期の毛包の成長しているもしくは成長期の毛包への移行を促進する薬剤であり得る、1種以上の育毛促進剤の投与を伴う(即ち、前、中、および/または後になされる)、外皮攪乱を含む。ある特定の態様では、1種以上の育毛促進剤と組み合わせて外皮攪乱を用いて、毛髪の成長を促進するために本明細書に提供される方法は、対象の皮膚領域における硬毛の増加をもたらす。ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、その数の軟毛の硬毛への移行を促進し、続いて、そうでなければ、軟毛サイズの毛髪に戻るであろう、攪乱からのこれらの新しい硬毛の大きさを持続および/またはさらに増加させるために、1種以上の育毛促進剤を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、その数の新しい硬毛を増加させ、続いて、そうでなければ、大きさが減少し、軟毛サイズの毛髪になる、攪乱からのこれらの新しい硬毛の大きさを持続および/またはさらに増加させるために、1種以上の育毛促進剤を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、1種以上の育毛促進剤と組みあわて、毛髪の成長を促進するために本明細書に提供される方法は、対象の皮膚領域における毛髪の量または厚みの増加をもたらす。
【0038】
本明細書に使用される、外皮攪乱とは、皮膚の創傷清拭、剥離、または創傷、または他の攪乱をもたらす、皮膚および/または外皮系の他の組織のいかなる処置を指す。この処置は、表皮の一部もしくは全て、角質層の一部もしくは全て、または真皮乳頭層、真皮網状層、および/または下皮により深く、攪乱を制限するように制御され得る。一態様では、表皮が除去され、例えば、真皮乳頭層が攪乱される。一態様では、点状出血の発生は、角質層、表皮(またはその一部)、および表層の真皮乳頭層等の真皮の上層の部分の除去を示すであろう。増加した出血の発生は、深層の真皮乳頭層および真皮網状層へのより深い浸透(したがって、攪乱)を示すであろう。したがって、ある特定の態様では、外皮攪乱法は、毛髪の成長が望ましい皮膚の領域への表層創傷のみをもたらす。ある特定の態様では、創傷の範囲は、攪乱の深さを制御することによって最小限に抑えられる。ある特定の態様では、創傷の範囲は、皮膚の攪乱した領域の大きさを制御することによって、例えば、大きな領域の単一の大きな創傷よりもむしろ大きな領域の創傷に影響を及ぼす一連の小さな創傷を作製することによって最小限に抑えられる。これらの態様では、表皮の除去は、皮膚の光沢のある、白っぽい滑らかな層の出現によって検出することができる。表層の真皮乳頭層の攪乱は、例えば、処置した領域における光沢のある、白っぽい滑らかな表面上の小さな点状出血の出現によって検出することができる。深層の真皮乳頭層への攪乱は、さらなる出血をもたらし、処置した表面は、より粗いように見える。真皮網状層に侵入した後、出血は、融合し、活発になり、外観は、深部の真皮乳頭層よりも粗く、露出した皮膚コラーゲンを示す。
【0039】
ある特定の実施形態では、外皮攪乱は、上皮の部分的除去をもたらす。他の実施形態では、外皮攪乱は、上皮の完全な除去をもたらすが、真皮まで深く入り込んではいない。
【0040】
一態様では、本明細書に記載される外皮攪乱法は、30μm~200μmの深さ(例えば、30、40、50、60、70、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μmの最大深さ)、好ましくは約100~150μmの深さまで皮膚を攪乱する。一態様では、本明細書に記載される外皮攪乱法は、100μmの深さまで皮膚を攪乱する。一態様では、本明細書に記載される外皮攪乱法は、150μmの深さまで皮膚を攪乱する。
【0041】
ある特定の態様では、外皮攪乱は、化学的処置(例えば、炎症性薬剤、腐食剤等)、または削皮術(DA)、粒子に媒介された削皮術(PMDA)、微細削皮術(microdermabrasion)、極微針、レーザーによるもの(例えば、アブレーション、非アブレーション、フラクショナル、非フラクショナル、表層もしくは深層処置を行うもの、および/またはCO2ベース、もしくはエルビウム-YAGベース、エルビウムガラスベース(例えばSciton Laser)、ネオジム:イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザー等であるレーザー)、低レベル(低強度)レーザー療法処置(例えばHairMax Laser comb)、レーザーアブレーション、照射、高周波(RF)アブレーション、デルマトーム(dermatome)のプランニング(例えば皮膚プレーニング(dermaplaing))、コアニングニードル(coring needle)、穿刺器具、穿孔ツールもしくは他の外科的ツール、吸引ツールもしくは器具、電気脱毛、電磁気破壊、電気穿孔法、ソノポレーション(sonoporation)、低電圧電流、超短パルス光、または外科的処置(例えば、植皮、植毛、ストリップ収穫、頭皮縮小、毛髪移植、毛包単位抽出(FUE)、ロボットFUE等)、あるいは、毛髪の成長を促進する超音波で加速された食塩水(ジェットピール;Golan et al.,Ann Plast Surg.2005;54(4):369-374)が含まれるが、これらに限定されない機械的もしくは電磁気的もしくは物理的処置を用いて達成される。本態様に従う外皮攪乱のための方法および装置は、以下の項5.1に記載されている。
【0042】
ある特定の態様では、本発明は、外皮攪乱されるべき皮膚の領域を冷凍させること、または化学的に処置することを含まない。ある特定の態様では、外皮攪乱は、ダイヤモンドフライス(diamond fraize)を用いて行われる。ある特定の態様では、外皮攪乱は、PELおよびPELA構造体の組織学的存在下で生じる深さで行われる。ある特定の態様では、外皮攪乱は、AGA型脱毛症に罹患している対象における頭皮の過渡期な領域において行われる。ある特定の態様では、外皮攪乱は、フィッツパトリック皮膚型1~4を有する対象において行われる。
【0043】
従来の削皮装置を用いて上で論じられる不利点を対処する削皮ハンドピースに用いる改善された削皮先端部が本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、削皮ハンドピースに用いる削皮先端部は、
(a)筺体であって、この筺体の長手方向軸と実質的に整列した第1の開口部と、この長手方向軸に対してある角度で配置される第2の開口部とを有する、筺体と、
(b)この筺体中に配置される伝動ユニットであって、
(i)第1の組の歯車と、
(ii)第1の組の歯車に隣接した連結アセンブリと、
(iii)連結アセンブリに連結した第2の組の歯車と、を備える、伝動ユニットと、(c)削皮ディスクを受容するためのプラットフォームと、を備え、
(d)伝動ユニットは、この削皮ハンドピースの回転運動を、プラットフォームを往復させる往復運動に変換する。
【0044】
別の実施形態では、削皮ハンドピースに用いる削皮先端部は、
(a)筺体であって、この筺体の長手方向軸と実質的に整列した第1の開口部およびこの長手方向軸に対してある角度で配置される第2の開口部を有する、筺体と、
(b)この筺体中に配置される伝動ユニットであって、
(i)第1の組の歯車と、
(ii)第2の組の歯車と、
(iii)連結アセンブリに連結した第2の組の歯車と、を備える、伝動ユニットと、を備える、伝動ユニットと、
(c)削皮ディスクと、を備え、
(d)伝動ユニットは、この削皮ハンドピースの回転運動を、削皮ディスクを往復させる往復運動に変換し、
(e)削皮ディスクは、この筺体の長手方向軸に対してある角度で配置される。
【0045】
なお別の実施形態では、削皮ハンドピースに用いる削皮先端部には、
(a)筺体であって、この筺体の長手方向軸と実質的に整列した第1の開口部と、この長手方向軸に対してある角度で配置される第2の開口部とを有する、筺体と、
(b)この筺体中に配置される伝動ユニットであって、
(i)第1の組のかさ歯車と、
(ii)第1の組の歯車に隣接した連結アセンブリであって、入力駆動輪と、出力駆動輪と、少なくとも1つの連結棒を含む、連結アセンブリと、
(iii)連結アセンブリに連結した第2の組のかさ歯車と、を備える、伝動ユニットと、
(c)削皮ディスクと、を備え、
(d)伝動ユニットは、この削皮ハンドピースの回転運動を、削皮ディスクを往復させる往復運動に変換し、
(e)削皮ディスクは、この筺体の長手方向軸に対してある角度で配置される。
【0046】
さらなる実施形態では、削皮ハンドピースに用いる削皮先端部は、
(a)筺体であって、この筺体の長手方向軸と実質的に整列した第1の開口部と、この長手方向軸に対してある角度で配置される第2の開口部とを有する、筺体と、
(b)削皮ハンドピースの回転運動を、往復運動に変換するための手段と、
(c)削皮ディスクと、を備え、
(d)削皮ディスクは、この筺体の長手方向軸に対してある角度で配置される。
【0047】
別の実施形態では、削皮器は、
(A)制御装置と、
(B)長手方向軸を有するハンドピースであって、
(i)筺体と、
(ii)この筺体中に配置される伝動ユニットであって、
(a)第1の組の歯車と、
(b)第1の組の歯車に隣接した連結アセンブリと、
(c)連結アセンブリに隣接した第2の組の歯車と、を備える、伝動ユニットと、
(iii)削皮ディスクと、を備える、ハンドピースと、
(C)ハンドピースを制御装置に接続するコードと、を備え、
(D)伝動ユニットは、削皮ハンドピースの回転運動を、削皮ディスクを往復させる往復運動に変換し、
(E)削皮ディスクは、ハンドピースの長手方向軸に対してある角度で配置される。
【0048】
なおさらなる実施形態では、削皮術のためのキットは、
(A)以下の項5.2、5.3、および/または5.4に記載される薬学的組成物と、
(B)使い捨て削皮先端部であって、
(i)筺体であって、この筺体の長手方向軸と実質的に整列した第1の開口部と、この長手方向軸に対してある角度で配置される第2の開口部とを有する、筺体と、
(ii)この筺体中に配置される伝動ユニットであって、
(a)第1の組の歯車と、
(b)第2の組の歯車と、
(c)第1の組の歯車と前記第2の組の歯車との間に配置される連結アセンブリと、を備える、伝動ユニットと、
(iii)削皮ディスクと、を備える、使い捨て削皮先端部と、を備え、
(C)伝動ユニットは、削皮ハンドピースの回転運動を、削皮ディスクを往復させる往復運動に変換し、
(D)削皮ディスクは、この筺体の長手方向軸に対してある角度で配置される。
【0049】
別の実施形態では、削皮術のためのキットは、
(A)以下の項5.2、5.3、および/または5.4に記載される薬学的組成物と、
(B)使い捨て削皮先端部であって、
(i)筺体であって、この筺体の長手方向軸と実質的に整列した第1の開口部と、この長手方向軸に対してある角度で配置される第2の開口部とを有する、筺体と、
(ii)削皮ハンドピースの回転運動を、往復運動に変換するための手段と、
(iii)削皮ディスクを受容するためのプラットフォームと、を備える、使い捨て削皮先端部と、を備え、
(C)伝動ユニットは、削皮ハンドピースの回転運動を、プラットフォームを往復させる往復運動に変換し、
(D)このプラットフォームは、この筺体の長手方向軸に対してある角度で配置される。
【0050】
また、対象の皮膚の部位における毛髪の成長を促進するために外皮攪乱を用いるための方法も本明細書に提供され、外皮攪乱は、削皮術を含む。特定の実施形態では、削皮術は、削皮先端部、削皮器、および/または以下の項5.1に記載される削皮術のためのキットを用いて達成される。一実施形態では、削皮術は、ダイヤモンドフライス(diamond fraize)を用いて行われる。
【0051】
本発明の目的は、新しい毛包の生成(「毛包新生」)を促進すること;新遺伝子のような(NL)毛包構造体の形成を促進すること;先在する毛包の活性化(恐らく再構成によって)を促進すること;先在するような(PEL)もしくは先在するような付着した(PELA)毛包構造体の形成を促進すること;毛包の発育を促進すること、例えば硬毛の成長(軟毛よりむしろ)を促進すること;(1つの毛穴当たりの増加した毛幹数として見られる)先在する毛包の分枝を促進すること;毛包の幅を増加させること(それによって、増加した毛幹の幅の成長を促進すること);ならびに/または毛包の老化を遅延もしくは防止することである。本発明のさらなる目的は、毛髪の成長を促進すること;軟毛の成長を促進すること;軟毛の硬毛への移行を促進すること;成長期における毛包の量を増加させること、成長期を延長させること、休止期を短縮すること、硬毛の成長を促進すること;毛髪の量を増加させること;毛髪の厚みを増加させること;ならびに/または毛髪脱落を減少もしくは予防することである。
【0052】
本発明のさらなる目的は、毛包単位の活性化、再構成、もしくは再生、または新しい毛包単位の生成を促進すること;毛髪単位の発生を促進すること、例えば、毛包単位の、もしくは毛包単位において(軟毛よりむしろ)硬毛の成長を促進すること;(1つの毛穴当たりの増加した毛幹数として見られる)先在する毛包単位の分枝を促進すること;毛包単位における毛髪の幅を増加させること(それによって、増加した毛幹の幅の成長を促進すること);ならびに/または毛包単位の老化を遅延もしくは防止することである。本発明のさらなる目的は、毛包単位における毛髪の成長を促進すること;毛包単位における軟毛の成長を促進すること、毛包単位における軟毛の毛包単位における硬毛の移行を促進すること;毛包単位における硬毛の成長を促進すること;毛包単位における毛髪の量を増加させること;毛包単位における毛髪の厚みを増加させること;ならびに/または毛包単位における毛髪脱落もしくは毛髪の縮小化を減少もしくは防止することである。
【0053】
理論に束縛されることなく、本明細書に記載される治療は、新しい毛包および/もしくは新しい毛包単位を生成するための皮膚の能力を増加させること;毛包および/もしくは毛包単位の発達を再プログラミングするための皮膚の能力を増加させること;存在する毛包および毛包構造体を再構成および活性化するための皮膚の能力を増加させること;目に見える毛髪の成長を制御する独自のヒトプロセスを調節すること;特殊化したヒト毛包および/もしくは毛包単位の活性を調節すること;特殊化したヒト毛包および/もしくは毛包単位の特定の活性を調節すること;性ステロイド調節の影響下でのものを含む性特異的に特殊化したヒト毛包および/もしくは毛包単位を調節すること;時には、移植術と共に特殊化したヒト毛包および/もしくは毛包単位の活性を変化させること;皮膚の標的位置における天然の毛包(例えば、軟毛を有する予め小型化した毛包が存在する硬毛を有する正常の大きさの毛包)とは異なる特性を有する毛包を生じ得る性特異的に特殊化したヒト毛包および/もしくは毛包単位への幹細胞の分化を調節すること;性ステロイド調節の影響下でのものを含むヒト毛包および/もしくは毛包単位および毛髪における加齢による変化を調節もしくは変化させること;あるいは毛包および/もしくは毛包単位のプログラム化した老化を変化、遅延、もしくは防止することによってこれらの結果を達成し得る。
【0054】
本発明は、一部分において、ヒト皮膚が、一生を通じて、骨髄由来および組織由来幹細胞等の幹細胞によって補充されるという原理に基づいている。毛包幹細胞は、(1)他の毛包幹細胞由来、(2)「プレ毛包幹細胞(pre-Follicle Stem Cell)と称される他の組織幹細胞由来(毛包間皮膚由来)、(3)骨髄由来幹細胞(「BMST」)由来、および/または(4)脂肪幹細胞等の間充織幹細胞由来であり得る。骨髄由来幹細胞(BMST)の場合は、それらの毛包幹細胞への分化は、細胞が「ナース細胞」の役割を果たし、骨髄由来幹細胞の毛包幹細胞への分化を誘導する適切なシグナルを提供し得る無傷の毛包を必要とする。外皮攪乱は、(1)新しい毛包を形成するプロセスを開始するように対称的に分割するための毛包幹細胞のシグナルを提供し、(2)幹細胞に分化するために毛包間皮膚から組織幹細胞(「プレ毛包幹細胞」)を動員し、(3)皮膚の罹患領域への骨髄由来幹細胞の輸送を増加させ、存在する毛包におけるナース細胞による毛包幹細胞への分化を促進し、(4)毛包の活性化および発達を誘導するように前駆細胞からのシグナルを可能にし得る、毛包、毛包前駆細胞、および他の種類の誘導細胞の「混合」を促す。一態様では、本明細書に記載される方法は、前駆細胞を誘導細胞と接触させることを含む。
【0055】
したがって、理論に束縛されることなく、本発明は、一部分において、毛髪の成長は真の毛包新生によって促進され得るが、一方、ネオ毛包の新たな形成から生じる必要がない他の毛包構造体が、毛髪の成長を促進するために刺激され、活性化され、再構成され得るという発見に基づいている。育毛促進のための多くの従来の薬理学的治療は、軟毛から硬毛への変換を促す。本明細書に記載される外皮攪乱法は、硬毛でないにしろ、増加した軟毛と相関する、刺激を受けて、活性化され、再構成した毛包構造体の形成を促進する。刺激を受けて活性化した毛包および軟毛または硬毛の数を増加させることによって、本発明の方法は、これらの薬理学的治療の作用のためにさらなる土台を提供し得る。したがって、ある特定の態様では、外皮攪乱および1つ以上の薬理学的治療の組み合わせは、組み合わせてまたは連続してまたは周期的に投与され得るが、増加した毛髪、増加した毛髪の厚み、および/または長寿命の毛髪を生じる。ある特定の態様では、そのような併用療法は、薬理学的治療のみでの治療と比較して、1.25倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、または4倍もしくはそれ以上の増加を生じる。
【0056】
ある特定の態様では、本発明は、他の治療剤、例えば育毛促進剤の投与を除外し得る。ある特定の態様では、本発明は、育毛効果を生じるように、薬学的薬剤を用いるまたは用いずに、同じ治療領域における連続攪乱を含む。ある特定の態様では、本発明は、相乗効果を生じる、即ち、いずれかの治療のみの相加効果が期待されるであろうよりもより毛髪を成長させるように、1つ以上の薬学的薬剤を用いるまたは用いずに、同じ治療した領域における1つ以上の攪乱を含む。ある特定の態様では、本発明は、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせた外皮攪乱を含む。ある特定の態様では、本発明は、さらなる治療と組み合わせた外皮攪乱を含み、さらなる治療は、薬学的有効成分を含んでも含まなくてもよい(例えば以下の項5.2を参照)。いくつかの態様では、麻酔または鎮痛作用のある化合物(例えばリドカイン)のみが、さらなる治療において投与される。ある特定の態様では、さらなる治療は、軟毛または硬毛を含む毛髪の成長を促進、感染症を予防、および/または攪乱した皮膚の治癒を促進するための1つまたは複数の薬学的有効成分を含む。本態様に従って用いる方法および薬学的組成物は、以下の項5.2、5.3、および5.4に記載されている。
【0057】
一態様では、本発明の外皮攪乱法は、毛髪の成長を刺激する他の薬剤または治療剤と組み合わせて使用される。例えば、本発明の外皮攪乱法は、1種以上の育毛促進剤前、それと共に、その後、または交互に投与することができる。本態様に従って、単独でまたは組み合わせて使用するための育毛促進剤としては、プロスタグランジンF2α類似体、例えば、ラタノプロスト(商標名Xalatan)、トラボプロスト(商標名Travatan)、タフルプロスト、ウノプロストン、ジノプロスト(商標名Prostin F2 Αlpha)、AS604872,、BOL303259X、PF3187207、カルボプロスト(商標名Hemabate)等のプロスタグランジンに作用する薬剤;例えばビマトプロスト(商標名Latisse、Lumigan)等のプロスタミド;例えば、フルプロステノール(fluprostenol)等のプロスタノイド受容体アゴニスト;例えば、ラロピプラント、AM211等のプロスタグランジンD2受容体拮抗薬;例えばスルプロストン等のプロスタグランジンE2類似体;ならびに例えばブタプロスト等のEP2受容体アゴニスト;例えば、フィナステライド、デュタステリド、ツロステリド、ベキソロステリド、イゾンステリド、エプリステリド、エピガロカテキン、フルリジル(Sovak et al,Dermatol Surg.2002;28(8):678-685)、RU 58841(Pan et al.Endocrine.1998;9(1):39-43)、N,N-ジエチル-4-メチル-3-オキソ-4-アザ-5α-アンドロスタン-17ベータ-カルボキサミド(Rittmaster et al.,J Clin Endocrinol Metab.1987;65(1):188-193)、MK-386、アゼライン酸、FCE 28260、SKF 105,111等の5α-レダクターゼ阻害剤;ミノキシジル;例えばジアゾキシド等のATP感受性カリウムチャンネル開口薬;ならびに本明細書に記載されるもしくはそうでなければ当該技術分野で公知の育毛促進剤、例えばコペキシル(例えば、製品Keranique(商標))、CaCl2、ボツリヌストキシンA、アデノシン、ケトコナゾール、DoxoRx、ドセタキセル、FK506、GP11046、GP11511、LGD1331、ICX-TRC、MTS-01、NEOSH101、HYG-102440、HYG-410、HYG-420、HYG-430、HYG-440、スピロノラクトン、CB-03-01、RK-023、アバタセプト、Viviscal(登録商標)、MorrF、ASC-J9、NP-619、AS101、Metron-F-1、PSK 3841、Targretin(例えば1%ゲル)、MedinGel、PF3187207、BOL303259X、AS604872、THG11331、PF-277343、PF-3004459、ラプティバ、カフェイン、およびコーヒーが挙げられるが、これらに限定されない。他の育毛促進剤には、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ガンマリノール酸、およびポリフェノールカテキン、銅ペプチドが含まれる。毛髪の洗浄トニックとして製剤化され得る他の育毛促進剤としては、ホホバ油、リンゴ、、ノコギリヤシ、エミュー油、ベータカロチン、および緑茶の抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、本発明の外皮攪乱法は、SWITCH Biotech LLCによって開発されている脱毛症のための薬物と組み合わせて使用される。
【0058】
本態様に従って、前述のもののうちの1つ以上が、その市販の形態で使用され得る。他の態様では、前述のもののうちの1つ以上の用量を調整して、本明細書に記載される併用療法(例えば、外皮攪乱または別の1つもしくは複数の活性成分による治療)を最適化する。他の態様では、前述のもののうちの1つ以上の製剤を調整して、本明細書に記載される併用療法(例えば、外皮攪乱または別の1つもしくは複数の活性成分による治療)を最適化する。特定の態様では、前述のもののうちの1つ以上が、例えば以下の項5.2に記載される攪乱後治療のために薬学的組成物に組み込むことによって局所投与のために製剤化される。
【0059】
特定の態様では、本態様に従って使用される育毛促進剤は、軟毛の非軟毛への変換を増強する。このような一態様では、育毛促進剤は、軟毛の硬毛への変換を増強する。本態様に従って使用され得る軟毛の非軟毛または硬毛への変換を促進する例示的な育毛促進剤は、プロスタグランジンF2α類似体(一態様では、ラタノプロスト)、プロスタミド(一態様では、例えばビマトプロスト)、ミノキシジル等である。一実施形態では、ミノキシジルは、プロスタグランジンF2α類似体と組み合わせて投与される。一実施形態では、ミノキシジルは、プロスタミドと組み合わせて投与される。一実施形態では、ミノキシジルは、5α-レダクターゼ阻害剤と組み合わせて投与される。このような一実施形態では、ミノキシジルは、フィナステライドと組み合わせて投与される。本態様に従って使用される「育毛促進剤」を含む方法および薬学的組成物は、以下の項5.3に記載されている。
【0060】
ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、その数の軟毛の硬毛への移行を促進し、続いて、そうでなければ、軟毛サイズの毛髪に戻るであろう、攪乱からのこれらの新しい硬毛の大きさを持続および/またはさらに増加させるために、育毛促進剤を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、その数の新しい硬毛を増加させ、続いて、そうでなければ、大きさが減少し、軟毛サイズの毛髪になる、攪乱からのこれらの新しい硬毛の大きさを持続および/またはさらに増加させるために、育毛促進剤を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。ある特定の態様では、外皮攪乱を用いて、育毛促進剤と組みあわて、毛髪の成長を促進するために本明細書に提供される方法は、対象の皮膚領域における毛髪の量または厚みの増加をもたらす。
【0061】
ある特定の態様では、本発明は、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象の頭皮上の毛髪の成長を促進するための方法を提供し、本方法は、(i)外皮攪乱を適用すること、(ii)外皮攪乱した皮膚領域への非閉塞性創傷被覆材を任意に適用すること、および(iii)ミノキシジルを局所的に投与することの順序で含む。より具体的な実施形態では、外皮攪乱は、100~150ミクロンの推定深さまで削皮術を用いて行われ、ヒドロゲルが皮膚に投与され、ミノキシジルが5%ミノキシジル発泡体の形態で投与される。ミノキシジルは、2~5%のミノキシジルの濃度で、液体、ゲル、および/または発泡体として投与され得る。特定の実施形態では、ヒドロゲルは、約1週間、1日2回削皮した直後局所的に投与され、続いて、処置しないで3週間投与され、これは、同様にミノキシジル処置の少なくとも5ヶ月の期間続く。具体的な実施形態では、ヒドロゲルは、12日間、1日2回削皮した直後局所的に投与され、これは、同様にミノキシジル処置の6ヶ月の期間続く。一実施形態では、治療レジメンは、時間をかけて毛髪の密度を増加させるために複数回繰り返される。
【0062】
ある特定の態様では、本発明は、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象の頭皮上の毛髪の成長を誘発するための方法を提供し、本方法は、
(i)0日目、削皮術(推定深さ100~150ミクロン)、
(ii)0日目より、約11日間、ヒドロゲルの局所投与、
(iii)ステップ(ii)の直後、少なくとも3ヶ月間、または別の実施形態では、少なくとも6ヶ月間、ミノキシジル2~5%の溶液および/またはミノキシジル2~5%のゲルおよび/またはミノキシジル2~5%の発泡体の局所投与。
(iv)ある特定の具体的な実施形態では、以下の項5.1に記載されている削皮先端部が、ステップ(i)において使用される。
(v)ある特定の具体的な実施形態では、対象は、0.005%または0.01%または0.1%のラタノプロストを局所的に投与されるさらなる治療を受ける。
(vi)ある特定の具体的な実施形態では、対象は、0.01%または0.03%のビマトプロストを局所的に投与されるさらなる治療を受ける。
(vii)ある特定の具体的な実施形態では、対象は、ステップ(ii)後、ミノキシジルの代わりに0.005%または0.01%または0.1%のラタノプロストを局所的に投与されるさらなる治療を受ける。
(vi)ある特定の具体的な実施形態では、対象は、ステップ(ii)後、ミノキシジルの代わりに0.01%または0.03%のビマトプロストを局所的に投与されるさらなる治療を受ける。
【0063】
ある特定の態様では、本発明は、再上皮化が完了したらすぐにミノキシジルを開始する治療レジメンを提供する。一実施形態では、再上皮化は、外皮攪乱から11日から14日後に完了する。
【0064】
薬物噴霧装置を含む、育毛促進剤等の治療用化合物を治療した皮膚に送達するために使用することができる装置が、本明細書に提供される。ある特定の態様では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、治療用化合物が投薬されるまで、薬物成分を別々に維持する2つの別個のチャンバを有する薬物カートリッジを含む。ある特定の態様では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、高度に疎水性の閉塞マトリックスを使用せずに、育毛促進剤の持続放出を可能にする。ある特定の態様では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、育毛促進剤の持続放出および痂皮を通じて皮膚による取り込みを可能にする。ある特定の態様では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、2つ以上の薬物の同時送達を可能にする。一態様では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、1つの単一装置を用いて、外皮攪乱した皮膚の洗浄および1つ以上の薬物の投与を可能にする。本発明の本態様の実践のための例示的な装置および例示的な薬学的組成物を用いたそれらの使用は、以下の項5.5.2.1において記載されている。
【0065】
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法を使用して、毛髪移植手術のためのドナー部位として使用されたまたは使用され得る頭皮における毛髪を補充する。
【0066】
本発明の方法の成功は、例えば、以下によって測定することができる。
・改善された全体の審美的成果(例えば視覚アナログ尺度(VAS)を用いて)
・毛髪の成長の患者による評価(例えば、質問表に基づいて)
・患者における育毛の主治医の評価(例えば、評定尺度に基づいて)
・写真における育毛の患者の評価
・患者の写真における育毛の主治医の評価
・毛髪の計数の増加(例えば、皮膚の罹患領域における繊維数の増加として新しい毛髪の成長を測定することによって)
・毛髪密度の増加
・毛髪または毛幹の厚みの増加(例えば直径に基づいて)
・毛髪重量の増加
・毛髪の切断
・より長い毛髪
・硬毛量の増加(例えば、皮膚の罹患領域における繊維数の増加、または厚み(例えば直径)の増加、または毛髪繊維の長さとして新しい毛髪の成長を測定することによって)
・軟毛量の増加(例えば、皮膚の罹患領域における繊維数の増加として新しい毛髪の成長を測定することによって)(例えば写真で測定されるように)
・非軟毛、例えば、中間毛または硬毛量の増加
・硬毛と軟毛の比率の増加
・毛芽数の増加
・毛包数の増加(例えば皮膚生検によって評価されるように)
・発達のより成熟段階での毛包数の増加
・3つ以上の毛包を有する毛包単位数の増加
・毛包の分岐の増加
・新しい毛包の形成(「毛包新生」)
・軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン未満の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成
・非軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン以上の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成
・毛包の再生
・存在する毛包の活性化の増加
・毛包数の増加
・活性化した毛包数の増加
・活性化した先在する毛包数の増加
・新遺伝子のような(NL)毛包の存在またはその数の増加(例えば、生検の試験に基づいてまたは共焦点顕微鏡によって、ベースラインもしくは陰性対照と比較して毛包数を評価することによって、および/または毛包の形態を評価することによって)
・先在する毛包の存在またはその数の増加(例えば、生検の試験に基づいてまたは共焦点顕微鏡によって、ベースラインもしくは陰性対照と比較して毛包数を評価することによって、および/または毛包の形態を評価することによって)
・新遺伝子のような(NL)、先在するような(PEL)、および/または先在するような付着した(PELA)毛包構造体等の対象となる初期構造体(SOI)の存在またはその数の増加(例えば、生検の試験に基づいてまたは共焦点顕微鏡によって、ベースラインもしくは陰性対照と比較して毛包数を評価することによって、および/または毛包の形態を評価することによって、例えば以下の項5.8.4に記載されるように)
・対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹を有する先在する毛包数の増加
・対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹を有する新遺伝子のような毛包数の増加
・成長期の毛髪量の増加
・休止期の毛髪量の増加
・成長期の毛包の割合の増加または休止期の毛包の割合の減少(即ち、成長期の毛髪の休止期の毛髪に対する比率の増加)(例えば、生検の試験またはフォトトリコグラム法(phototrichogram)に基づいて)
・皮膚乳頭の増殖の増加(例えば生検の試験に基づいて)
・幹細胞の毛包への動員または増殖の増加(例えば生検の試験に基づいて)。
【0067】
本明細書に開示されている治療のための候補者であるヒト対象は、毛髪の成長の増加が望ましいいかなる対象を含み、これには、男性型脱毛症(MPHL)もしくは女性型脱毛症(FPHL)を含むアンドロゲン性脱毛症(AGA)等の非瘢痕性(nonscarring、noncicatricial)脱毛症、加齢による脱毛症(老化)、またはアンドロゲンによって引き起こされる任意の毛髪脱落の任意の他の形態、中毒性脱毛症、円形脱毛症(全身性脱毛症を含む)、瘢痕性(scarring、cicatricial)脱毛症、病理学的脱毛症(例えば、薬物、化学療法、外傷、創傷、火傷、ストレス、自己免疫疾患により生じる)、抜毛癖、栄養失調症、もしくは内分泌機能不全)、または貧毛症、あるいは以下に論じられる、および/もしくは当該技術分野で公知の毛髪脱落の任意の他の疾患、障害、または形態に罹患している対象が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
特定の態様では、そのような治療の候補者であるヒト対象は、瘢痕性(scarring、cicatricial)脱毛症を有するヒト対象である。本明細書に記載される方法に従って治療され得る瘢痕性脱毛症の形態は、原発性瘢痕性脱毛症(PCA)および続発性瘢痕性脱毛症を含む。本明細書に記載される方法に従って治療され得る原発性瘢痕性脱毛症には、毛孔性扁平苔癬(LPP)、前頭部硬化性脱毛症(FFA)、中央遠心瘢痕性脱毛症(CCCA)、および萎縮性脱毛症(Brocq)等のリンパ球媒介性PCA;脱毛性毛包炎および房状毛嚢炎等の好中球媒介性PCA;ならびに解離性蜂巣炎および頭部乳頭状皮膚炎で生じるような混合炎症性浸潤を含むPCAが含まれる。
【0069】
特定の態様では、瘢痕性脱毛症に罹患している患者において毛髪の成長を増強するための方法が本明細書に提供され、この方法には、削皮術を用いた制御された外皮攪乱、続いて、7~14日間、好ましくは12日間の1日2回のヒドロゲルの局所的投与、続いて、1種以上の育毛促進剤の投与が含まれる。ある特定の実施形態では、ヒドロゲル処置は、レーザー処置と同日に開始される。一実施形態では、この患者は、原発性瘢痕性脱毛症に罹患している。一実施形態では、この患者は、毛孔性扁平苔癬に罹患している。別の実施形態では、この患者は、前頭部硬化性脱毛症に罹患している。
【0070】
瘢痕性脱毛症のための治療の成功は、上記の方法を用いて測定され得る。いくつかの実施形態では、治療の成功は、視覚的または写真で検出された毛髪数の増加として決定される。他の実施形態では、成功した治療は、毛包構造体および瘢痕特性のために皮膚生検によって評価される。成功はまた、状態と関連するかゆみ、ほてり、疼痛、および圧痛の減少もしくは消失、または頭皮の赤み、落屑、および/もしくは膿疱の減少として測定することもできる。成功はまた、頭皮の炎症の減少または消失として測定することもできる。
【0071】
3.1 毛髪のための表現および毛髪の成長の疾患の用語集
以下の用語は、以下に要約される当該分野で認められる意味と一致して本明細書に使用される。
【0072】
脱毛症:異常な毛髪脱落:
円形脱毛症:成長期の段階で毛包に対する自己免疫応答によって生じると考える断片的な毛髪脱落;この障害の広範な形態は、全頭型円形脱毛症(全頭皮にわたる毛髪脱落)および汎発型円形脱毛症(全身にわたる毛髪脱落)と呼ばれる。
【0073】
成長期:毛包サイクルの成長期の段階。
【0074】
成長期脱毛症:活性な毛包の成長の妨害によって生じる急激な毛髪の脱落(例えば、化学療法を受けている患者において)。
【0075】
アンドロゲン性脱毛症(AGA):MPHL型(前頭部後退および頭頂での菲薄化)またはFPHL型(前頭部毛髪のsparingがある、主として頭頂部上の毛髪脱落)における遺伝的に素因のある毛包の縮小化により生じる禿頭症
毛球(Bulb):毛髪を生成する急速に増殖するマトリックス細胞を含有する皮膚乳頭(毛包乳頭としても知られている)を含む毛包の最下部分。
【0076】
バルジ(Bulge):起毛筋の挿入部の領域に位置する毛包の外毛根鞘の部分。成長期において毛包を再生するのに関与する上皮幹細胞を含有すると考えられている。
【0077】
退行期:毛包の退化および退行によって特徴付けられる毛髪周期の段階
棍毛:完全に角化された死滅下毛髪-休止期における毛包の最終生成物であり、50~150本の棍毛が正常な頭皮から毎日脱落する。
【0078】
女性型脱毛症(FPHL):女性における性特異的な毛髪パターニングの形態(時には、女性型脱毛症(female pattern alopecia)とも称される)。
【0079】
毛包の周期:それぞれの毛包における毛髪の成長は、以下の段階を含む周期で生じる:成長期(成長段階)、退行期(退行/退化する段階)、休止期(休止している段階)、離脱期(抜け落ちている段階)、毛包休止期(kenogen)、および成長期への再突入。
【0080】
毛包休止期(Kenogen):毛幹が抜け落ちた後の毛髪の周期の潜伏期であり、成長が毛包中で停止している。
【0081】
多毛症(Hirsutism):女性におけるアンドロゲン依存性領域における過剰な毛髪の成長。
【0082】
多毛症(Hypertrichosis):年齢、人種、性別、および皮膚領域に従って正常であると見なされる域を超えて(通常、拡散する)過剰な毛髪の成長。
【0083】
外皮:皮膚(表皮、真皮、下皮(もしくは皮下))、および由来にかかわらずその中に含まれる全ての細胞、ならびにその付属物(例えば、毛髪および爪を含む)を含む、外皮系に付随するもの。
【0084】
中間毛:「硬毛」の一種。毛幹直径は、通常、30μm以上であるが、60μm未満である。
【0085】
産毛:胎児の体上の細い毛髪であり、子宮内でまたは出生後の数週間以内に通常抜け落ちる。
【0086】
男性型脱毛症(MPHL):男性における性特異的な毛髪パターニングの形態(時には、男性型脱毛症(male pattern alopecia)とも称される)。
【0087】
小型化:大きな(硬毛)毛髪の小さな(軟毛)毛髪への変換をもたらす、アンドロゲン性脱毛症における一次的な病理学的プロセス。
【0088】
NL(新遺伝子のような)毛包構造体:ある特定の実施形態では、「小さな」特質である毛幹、皮脂腺、または毛穴のうちの1つのみを有する、付着していない原始的な毛包構造体。皮膚チャンネルは、不在であるか、または決定的ではない。NLのさらなる下位分類には、DP(皮膚乳頭)を含むNL/活性、DPを含むNL/不活性、DPを含まないNL/活性、およびDPを含まないNL/不活性が含まれる。
【0089】
非軟毛:「硬毛」と同じ。
【0090】
PEL(先在するような)毛包構造体:ある特定の実施形態では、毛幹、皮脂腺、または毛穴の「大きな」特質のうちの1つ以上または「小さな」特質のうちの2つ以上を有する、付着していない原始的な毛包構造体。皮膚チャンネルが存在する。PELのさらなる下位カテゴリーには、DP(皮膚乳頭)を含むPEL/活性、DPを含むPEL/不活性、DPを含まないPEL/活性、およびDPを含まないPEL/不活性が含まれる。
【0091】
PELA(先在するような付着した)毛包構造体:ある特定の実施形態では、表皮に延在するより大きな成熟した毛嚢脂腺単位に付着する原始的な毛包構造体。
【0092】
永久脱毛症:炎症、外傷、線維症、または未知の原因の結果として毛包の破壊によって引き起こされ、例には、毛孔性扁平苔癬および円板状紅斑性狼瘡が含まれる。瘢痕性脱毛症と称される疾患を含む。
【0093】
休止期:毛周期の休眠段階であり、棍毛が最終生成物であり、最終的には、抜け落ちる。
【0094】
休止期脱毛症:休止段階に入る毛包の割合の増加によって引き起こされる過剰な脱落であり、一般的原因には、薬物および発熱が含まれる。
【0095】
硬毛:頭皮および身体上の大きな、通常、色素性のある毛髪。毛幹直径は、一般に、30μm以上である。
【0096】
軟毛:非常に短い、しばしば、非色素性毛髪(例えば、硬毛の小型化の結果として顔面の髭のない領域および頭髪のない頭皮にわたって拡散的に見出されるもの)。あるいくつかの実施形態では、本明細書で使用される「軟毛」は、長さが2mm未満で、直径が30μm未満である毛髪である。ある特定の実施形態では、本明細書で使用される「軟毛」は、30μm未満の毛幹の直径を有し、その周囲の内毛根鞘の厚みを超えないことが組織学的に決定される毛髪である。
〔図面の簡単な説明〕
4.
〔
図1〕ヒト毛包の種類。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
〔
図5〕
図5Aは、先行技術の削皮回転ホイールを示し、
図5Bは、使用中の先行技術の削皮回転ホイールを示す。
【0101】
〔
図6〕使用中の先行技術の削皮回転ホイールを示す。
【0102】
〔
図7〕使用中の先行技術の削皮ハンドピースを示す。
【0103】
〔
図8〕男性型脱毛症(MPHL)のHamilton-Norwood分類。
【0104】
〔
図9〕従来の削皮ハンドピースに装着した、本発明の実施形態に従う本発明の削皮先端部を示す。
【0105】
【0106】
〔
図11〕本発明の実施形態に従う削皮先端部の概略図である。
【0107】
〔
図12〕本発明の実施形態に従う連結アセンブリの概略図である。
【0108】
〔
図13〕本発明の実施形態に従う削皮先端部を示す。
【0109】
〔
図14〕本発明の実施形態に従う削皮先端部を示す。
【0110】
〔
図15〕本発明の実施形態に従う、使用中の発明の削皮先端部を示す。
【0111】
〔
図16〕本発明の実施形態に従う伝動アセンブリの一部を示す。
【0112】
〔
図17〕
図17Aは、本発明の実施形態に従う噴霧装置の正面斜視図であり、
図17Bは、本発明の実施形態に従う噴霧装置の背面斜視図である。
【0113】
〔
図18〕本発明の実施形態に従う噴霧装置の背面斜視図。
【0114】
〔
図19〕
図19Aは、
図17Aおよび17Bに示されるハンドピースの構成部分を示す平面図である。
図19Bは、本発明の実施形態に従うハンドピースの背面斜視図である。
【0115】
〔
図20〕
図20Aは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジの平面図である。
図20Bは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
図20Cは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
図20Dは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【0116】
〔
図21〕
図21Aは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図であり、
図21Bは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図であり、
図21Cは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図であり、
図21Dは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図であり、
図21Eは、本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【0117】
〔
図22〕対象となる毛包構造体を分類するための基準。
【0118】
〔
図23〕削皮術(「DA」)による外皮攪乱により治療された、DA前(
図23A)、DA後(
図23B)、DA後14日目(生検前)(
図23C)、DA後28日目(縫合抜糸後)(
図23D)、および点状出血の出現を示すように拡大されたDA後に撮影された別の画像(
図23E)の対象の皮膚の写真。
図23Fは、血管が新生された皮膚乳頭を囲む皮膚の表皮小稜の図を提供する。表皮網状突出(Epidermal rete pegs)、皮膚乳頭内のループ状毛細血管、および皮膚乳頭を示す。最上の点線によって印の付いた深さまでの攪乱は、点状出血を生じることが期待され得る。最下の点線によって印の付いた深さまでの攪乱は、皮膚乳頭から表層の血管叢への表皮厚みの移行として点状出血およびより均一な出血を生じることが期待され得る。
【0119】
〔
図24〕PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルに対するpHの関数としてゲル時間を示すグラフである。
【0120】
〔
図25〕
図25Aおよび25Bは、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルに対するPEG濃度の関数としてゲル時間を示すグラフである。
【0121】
〔
図26〕PEG-NHS/PELヒドロゲルに対するリン酸緩衝液(0.1M(ひし形)、0.2M(三角形)、および0.5M(正方形))中のPEI濃度の関数としてゲル時間を示すグラフである。
【0122】
〔
図27〕PEG-NHS/PEG-アミンヒドロゲル(ひし形)、PEG-NHS/PEG-アミン/キトサンヒドロゲル(正方形)、およびPEG-NHS/PEIヒドロゲル(三角形)に対するPEG濃度(x軸)の関数として膨潤度(y軸)を示すグラフである。
【0123】
〔
図28〕温度およびPVA濃度の関数としてPVA溶液の粘度を示すグラフである。それぞれの濃度に対する左側の棒(x軸)は、25℃でのせん断粘度(cP)を示し、それぞれの濃度に対する右側の棒(x軸)は、30℃でのせん断粘度(cP)を示す。
〔発明を実施するための形態〕
5.
対象(例えばヒト対象)における禿頭症または脱毛症を治療するための方法が、本明細書に提供され、本方法には、皮膚の罹患領域を外皮攪乱に供することが含まれる。また、対象(例えばヒト)の皮膚領域における、育毛を増強、刺激、もしくは増加させる、または毛髪の厚みを増強もしくは増加させる(いくつかの実施形態では、本明細書中では集合的に、育毛または毛髪の厚みを「促進する」と称する)方法も本明細書に提供され、本方法は、皮膚の罹患領域を外皮攪乱に供することが含まれる。ある特定の実施形態では、禿頭症もしくは脱毛症を治療する、または毛髪の成長もしくは毛髪の厚みを促進するための方法は、治療領域において、新しい毛包の形成(「毛包新生」)、新遺伝子のような毛包の形成、既存する毛包の活性化、既存する毛包の再構成、軟毛数の増加、非軟毛(例えば、中間毛もしくは硬毛)数の増加、および/または硬毛数の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱ステップは、第2の治療ステップと組み合わせて実行され、第2の治療ステップは、本明細書中では「攪乱後治療」と称される。いくつかの実施形態では、外皮攪乱ステップは、単独でまたは攪乱後治療ステップと組み合わせて、1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて実行される。とりわけ、毛髪の成長を促進するために使用され得る、外皮攪乱のための方法および装置もまた、本明細書に提供される。攪乱後のステップに用いる薬学的組成物、および育毛促進剤の治療ステップに用いる薬学的組成物もまた、本明細書に提供される。
【0124】
一実施形態では、本明細書に提供される外皮攪乱法は、対象の皮膚領域における毛髪の成長を促進する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における毛髪の量および厚みを増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における軟毛の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における硬毛の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における新しい毛包の形成(「毛包新生」)をもたらす。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン未満の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における先在する毛包等の刺激を受けて活性化した毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法は、対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹を有する先在する毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法は、NL、PEL、およびPELAの毛包構造体の存在および/またはその数の増加をもたらす。
【0125】
特定の実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱法は、例えば、本明細書に記載される装置を用いる削皮術を含む。他の実施形態では、外皮攪乱法は、レーザーによる処置を含む。様々な外皮攪乱法は、以下の項5.1に記載されているが、本発明は、そのように限定されるべきではなく、いかなる外皮攪乱法が、本明細書に記載される方法に従って使用され得る。
【0126】
「攪乱後」の治療もまた、本明細書に提供される。軟毛または硬毛を含む毛髪の成長を促進、攪乱した皮膚の感染症を予防、および/または治癒を促進するために、攪乱後治療を用いて皮膚の外皮攪乱領域を治療するための方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、瘢痕のない、または瘢痕の軽減を伴う治癒を促進する。ある特定の実施形態では、攪乱後治療は、局所治療である。攪乱後治療法に用いる薬学的組成物もまた、本明細書に提供される。
【0127】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療ステップは、軟毛、硬毛を含む毛髪の成長を促進、毛髪の厚みを増加、攪乱した皮膚の感染症を予防、および/または治癒、例えば傷跡を残さない治癒を促進することを目的とする薬学的組成物の局所投与を含む。いくつかの実施形態では、攪乱後治療ステップに用いる薬学的組成物は、局所投与用に製剤化される。特定の実施形態では、局所投与用に製剤化された薬学的組成物は、非閉塞性である。いくつかの実施形態では、局所投与用に製剤化された非閉塞性の薬学的組成物は、水性製剤(例えばヒドロゲル)、非水性製剤、軟膏、懸濁剤、またはクリーム(例えば乳剤)である。ある特定の実施形態では、攪乱後の局所投与用に製剤化された薬学的組成物は、薬学的有効成分(API)を含有しない。ある特定の実施形態では、攪乱後の局所治療は、APIを含有しない創傷治癒ゲルを含む。ある特定の実施形態では、創傷治癒ゲルは、外皮攪乱直後および約1週間毎日適用される。ある他の実施形態では、攪乱後の局所投与用に製剤化された薬学的組成物は、本明細書(例えば項5.3または5.4)に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で知られている任意の薬剤であり得る、薬学的有効成分または薬学的成分を含有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱直後に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱後のある期間投与される。本明細書中では、「攪乱後の」治療として称されるが、本明細書に記載される攪乱後治療法は、定義により、外皮攪乱後治療ステップに限定されない。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱前またはその中に投与される。特定の実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱前、その中、および/またはその後の1つを超える期間、存在する。
【0129】
一実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚領域における毛髪の成長を促進する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における毛髪の量または厚みを増加させる。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における軟毛の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における硬毛の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における毛包新生をもたらす。ある特定の実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法は、攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン未満の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における先在する毛包等の刺激を受けたまたは活性化した毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法は、攪乱後治療と組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹を有する先在する毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法は、攪乱後治療と組み合わせて、NL、PEL、およびPELAの毛包構造体の存在および/またはその数の増加をもたらす。
【0130】
いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、皮膚の治療領域の感染症を予防する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、攪乱した皮膚の治癒を促進する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法は、本明細書に提供される攪乱後治療と組み合わせて、瘢痕のない、または瘢痕の軽減を伴う攪乱した皮膚の治癒を促進する。
【0131】
様々な攪乱後の薬学的組成物および治療法は、以下の項5.2に記載されているが、本発明は、そのように限定されるべきではなく、いかなる局所用薬学的組成物が、本明細書に記載される攪乱後治療ステップに従って使用され得る。
【0132】
対象(例えばヒト対象)における禿頭症または脱毛症を治療する方法もまた、本明細書に提供され、本方法は、(i)皮膚罹患領域を外皮攪乱に供し、任意に攪乱後治療ステップと組み合わせて実行することと、(ii)1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせることと、を含む。対象(例えばヒト)の皮膚領域における毛髪の成長または毛髪の厚みを促進する方法もまた、本明細書に提供され、本方法は、(i)皮膚罹患領域を外皮攪乱に供し、任意に攪乱後治療ステップと組み合わせて実行することと、(ii)1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせることと、を含む。ある特定の実施形態では、外皮攪乱(任意に攪乱後治療ステップと組み合わせて)を含む、禿頭症もしくは脱毛症を治療または毛髪の成長もしくは毛髪の厚みを促進する方法は、1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、治療領域における、毛包新生、存在する毛包の刺激、活性化、もしくは再構成、NL、PEL、もしくはPELAの毛包構造体の形成もしくは増加、軟毛数の増加、硬毛数の増加、ならびに/または硬毛数の増加をもたらす。育毛促進剤の治療ステップに用いる薬学的組成物もまた、本明細書に提供される。
【0133】
本明細書に使用される「育毛促進剤」という用語は、毛髪の成長または毛髪の厚みを促進する、またはそのような用途を目的とする、および/または毛髪脱落に関連する疾患もしくは状態を治療する、またはそのようなそのような用途を目的とする、いかなる薬剤をも指す。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、軟毛の硬毛への移行を促進する、または促進することを目的とする薬剤である。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、軟毛の成長を増加させる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、硬毛の成長を増加させる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、対象の皮膚領域における硬毛と軟毛の比率を増加させる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、硬毛の成長を維持し、即ち、硬毛の縮小化を防ぐのに役立つ。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、成長期の毛髪の数を増加させるか、または成長期の毛髪の成長を増加させる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、対象の皮膚領域における成長期の毛髪の休止期の毛髪に対する比率を増加させる。
【0134】
一実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚領域における毛髪の成長を促進する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における毛髪の量または厚みを増加させる。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における軟毛の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における硬毛の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、硬毛の成長の維持をもたらす、即ち、硬毛の縮小化を防ぐのに役立つ。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における硬毛と軟毛の比率の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における成長期の毛髪量の増加をもたらすか、または成長期の成長を増加させる。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における成長期の毛髪の休止期の毛髪に対する比率の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における毛包新生をもたらす。ある特定の実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における非軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン以上の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、本明細書に提供される1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における先在する毛包等の刺激を受けて活性化した毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、対象の皮膚の治療領域における非軟毛サイズの毛幹を有する先在する毛包数の増加をもたらす。特定の実施形態では、外皮攪乱法(任意に、攪乱後治療ステップと組み合わせて)は、1種以上の育毛促進剤による治療を含むステップと組み合わせて、NL、PEL、およびPELAの毛包構造体の存在ならびに/またはその数の増加をもたらす。
【0135】
育毛促進剤を含む様々な薬学的組成物および治療法が、以下の項5.3に記載されているが、本発明は、そのように限定されるべきではなく、いかなる薬学的組成物が、本明細書に記載される育毛促進の治療ステップに従って使用され得る。
【0136】
5.1 外皮攪乱
本明細書に使用される、外皮攪乱とは、皮膚の創傷清拭、剥離、または創傷、または他の攪乱をもたらす、皮膚および/または外皮系の他の組織の任意の処置を指す。ある特定の実施形態では、外皮攪乱による治療とは、新遺伝子のような(NL)毛包数の増加、先在するような(PEL)または先在するような付着した(PELA)毛包構造体等の刺激を受けたもしくは活性化したもしくは再構成した毛包の数の増加をもたらす任意の処置を指す(これらの用語は、本明細書に記載される通りである;例えば、以下の項5.8.4を参照のこと)。ある特定の実施形態では、外皮攪乱による治療は、軟毛または硬毛または成長期の毛髪の数の増加をもたらす任意の処置を指す。外皮攪乱は、当該技術分野で知られているか、もしくは本明細書に記載される、または例えば、化学的、機械的、物理的、または電磁気的手段等を用いて、将来利用可能になり得る任意の手段によって達成することができる。一実施形態では、外皮攪乱の治療は、外皮に攪乱した皮膚部位に隣接した皮膚の領域におけるNL、PEL、またはPELAの毛包構造体の数を増加させる。別の実施形態では、外皮攪乱の治療は、外皮に攪乱した皮膚部位、例えば外皮攪乱の部位の真下におけるNL、PEL、またはPELAの毛包構造体の数を増加させる。別の実施形態では、外皮攪乱の治療は、外皮に攪乱した皮膚部位、および外皮に攪乱した皮膚部位に隣接した皮膚の領域におけるNL、PEL、またはPELAの毛包構造体の数を増加させる。一実施形態では、外皮攪乱は、対象の皮膚を攪乱すること(例えば、対象の皮膚の再上皮化の誘導をもたらすこと)を含む。いくつかの実施形態では、上皮のある領域は、部分的または全体的に攪乱する。いくつかの実施形態では、上皮および角質層の両方のある領域は、部分的または全体的に攪乱する。皮膚を攪乱し、再上皮化を誘導し、検出するための方法を含む、皮膚の破壊および再上皮化の考察については、PCT公開第WO2008/042216号および第WO2006/105109号を参照されたく、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。外皮攪乱を用いて、例えば、火傷、切除、削皮、全層切除、水膨れ、またはアブレーション(abrasion)もしくは創傷の他の形態を誘発することができる。
【0137】
外皮攪乱の化学的手段は、例えば、フェノール、トリクロロ酢酸、アスコルビン酸、基底膜を開裂する酵素(Fein et al.,Dermatol Surg.2005;31(2):139-47);考察147-8、または、炎症性薬剤を用いて、達成することができる。一実施形態では、外皮攪乱の化学的手段は、例えばアジュバントの適用によって達成することができる、炎症を誘導することによるものである。一実施形態では、アジュバントは、ドデシル硫酸ナトリウム、アルミニウム塩、モノホスホリルリピドA、またはセチルトリアンモニウムブロミド(CTAB)のうちの1つ以上である。一実施形態では、炎症は、サイトカイン(例えばIL-1ベータ)の適用によって誘導される。一実施形態では、炎症は、抗原(例えば破傷風トキソイド)の適用によって誘導される。
【0138】
外皮攪乱の物理的および機械的手段は、例えば、削皮術(DA)、粒子に媒介された削皮術(PMDA)、微細削皮術、極微針、極微針ローラー、デルマトーム(dermatome)のプランニング(例えば皮膚プレーニング(dermaplaing))、コアニングニードル(coring needle)、穿刺器具、穿孔ツールもしくは他の外科的ツール、吸引ツールもしくは器具、サンドペーパーの使用、フェルトホイール、超音波、ソノポレーション(sonoporation)、超音速で加速した生理食塩水および酸素の混合物、テープストリッピング、スパイキーパッチ(spiky patch)、またはピーリング、または外科的処置(例えば、生検、植皮、植皮、美容整形、ストリップ収穫、頭皮縮小、毛包単位抽出(FUE)、ロボットFUE等)が含まれる。
【0139】
外皮攪乱の電磁気的手段は、例えば、加熱傷または熱傷の使用を含む。いくつかの実施形態では、外皮攪乱の電磁気的手段は、レーザーによるもの(例えば、アブレーション、非アブレーション、フラクショナル、非フラクショナル、表層もしくは深層処置を行うもの、および/またはCO2ベース、もしくはエルビウム-YAG-ベース、エルビウムガラス、ネオジム:イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザー等のレーザーを用いて)、低レベルレーザー療法処置(例えばHairMax)、またはレーザーアブレーションによるものである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、毛包の「光バイオ刺激」によって媒介される。例えば、Hairmax LasercombまたはLeimoレーザーは、毛髪の成長を刺激するために使用され得、単独で、本明細書に記載される別の形態の外皮攪乱と組み合わせて、あるいは項5.2~5.4もしくは本明細書の他の箇所に記載される、または当該技術分野で公知の処置と組み合わせて使用され得る装置の限定されない例である。
【0140】
外皮攪乱はまた、例えば、照射、例えば、可視、赤外線、紫外線、放射線、またはX線の照射等の使用を通して達成され得る。一実施形態では、外皮攪乱は、Leavitt et al.,2009,Clin.Drug.Invest.29:283-292に記載される光エネルギーまたは超短パルス光によるものである。表皮の攪乱の電気的または磁気的手段は、例えば、電流の印加、電気穿孔法、高周波(RF)アブレーション、電気脱毛、低電圧電流、イオン導入法(iontophoresis)、電気泳動法、または電磁気破壊の任意の他の形態を通して達成することができる。電気的または磁気的手段はまた、電場もしくは磁場、または電磁場の誘導も含むことができる。例えば、電流は、交流磁場の適用によって皮膚に誘導され得る。高周波電源は、導電性素子に連結され得、誘導される電流は、皮膚を過熱し、皮膚の変質または攪乱をもたらす。
【0141】
いくつかの実施形態では、フラクショナルのような穴パターン(フラクショナルレーザーまたは全層切除を用いて達成されるものと同様の)は、パンチ生検針のアレイを用いることにより達成される。例えば、1-mmのパンチ生検は、1-mmの穴間隔で配置され得る。治療されるべき頭皮または皮膚の他の部位に挿入されるとき、中空皮膚試料を除去することができ、したがって、全層切除モデルに近似する効果がそれぞれの穴の内部でもたらされる。同様に、より小さな穴については、極微針(例えば19または21ゲージ針)および/またはマイクロコアニングニードルが使用され得る。
【0142】
一実施形態では、外皮攪乱は、極微針アレイを用いて達成される。そのような一実施形態では、極微針アレイは、ローラーまたはフラットプレートの形態である。一実施形態では、極微針アレイは、1.5cm×1.5cm~15cm×15cmの皮膚部位を攪乱することができる。一実施形態では、極微針アレイは、100ミクロン~4000ミクロンの深さで皮膚を攪乱することができる。いくつかの実施形態では、極微針アレイは、中空針を有する。いくつかの実施形態では、極微針アレイトップは、薬物を送達するために注射器を格納することができるルアーロック器具を有する。ある特定の実施形態では、注射器の容量は、1ml~3mlである。
【0143】
特定の実施形態では、それぞれ、2011年6月2日に公開された米国特許出願公開第2011-0130711号、第2011-0130748号、もしくは第2011-0130706号、または2011年6月10日に公開された国際特許出願公開第11/123218号(これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される外皮攪乱の装置または方法は、本発明に従って使用され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明に用いる外皮攪乱技術は、皮膚の冷凍処置を除外する。いくつかの実施形態では、本発明に用いる外皮攪乱技術は、皮膚の冷凍処置を含む。
【0145】
一実施形態では、外皮攪乱ステップおよび/または攪乱後治療ステップおよび/または育毛促進剤治療ステップのいずれかによる治療法は、皮膚の小さな領域、例えば、1×1cm、または1.5×1.5cm、または2×2cm、または2.5×2.5cm、または3×3cmもしくはそれ以上)にわたって実行される。いくつかの実施形態では、その治療法が、例えば、頭皮の禿げ領域全体等の皮膚のより大きな領域にわたって実行される。いくつかの実施形態では、皮膚の小さな領域の治療に続いて、皮膚のより大きな領域の治療を行う。いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の治療ステップは、例えば、治療により接触された領域が、処置により接触されない領域と交互になるように処置されるべき領域にメッシュまたは格子のような被覆材を適用することによって、皮膚の交互の領域にわたって実行される。
【0146】
5.1.1 削皮術
特定の実施形態では、外皮攪乱は、皮膚表面修復術(skin resurfacing technique)として数十年間使用されている定評のある皮膚科手術である削皮術(本明細書中では「DA」とも称される)によるものである(Grimes,2005,Microdermabrasion.Dermatol Surg 31:1351-1354)。機械的削皮術の人気が、近年、レーザーベースの処置の出現で減少しているが、削皮術は、にきびおよび他の外傷に起因する顔面の瘢痕を除去するために、今もなお使用されている。小型の携帯用機械的削皮術機器は、異なる皮膚の深さレベルの表皮および真皮を除去するために、異なる回転速度で操作される取替え可能なダイヤモンドフライス(diamond fraise)を使用する。削皮術により処置された成人ヒト皮膚は、5~7日で完全に再上皮化され、最長数週間、軽度の赤みを伴う。削皮術は、本明細書の他の場所に記載される(例えば実施例に記載されるような)当該技術分野で公知の、または将来入手可能になる任意の技術を用いて実行され得る。例えば、削皮術は、Aseptico Econo-Dermabrader、Advance Microderm DXシステム、またはM2-Tシステムを用いて酸化アルミニウム結晶を有する標準的なDA、およびダイヤモンドフライス、ワイヤーブラシ等を備えたBell Hand Engineを用いる標準的なDAを用いて実行され得る。具体的な実施形態では、削皮術は、点状の毛細血管出血(推定深さ100~150ミクロン、瘢痕を生じるとは予想されない)を達成するために、標準的なグリットダイヤモンドフライスを備えた手持ち式削皮器を用いて実行され得る。いくつかの実施形態では、削皮法は、アルミナ、シリカ、または氷ベースの削皮術である(例えばWeber、米国特許第6,764,493号、米国特許第6,726,693号、および米国特許第6,306,119号によって記載されるような)。
【0147】
いくつかの実施形態では、DAは、砥石車を用いて実行される。いくつかの実施形態では、砥石車を用いたDAは、点状出血を達成するために使用される。他の実施形態では、削皮術は、より大きな玉のような出血および擦り切れたコラーゲンを達成するために、砥石車を用いて実行され得る。また、任意選択の同じ終点を達成する研削布等の無動力装置も、削皮術を達成するために使用することもできる。
【0148】
いくつかの実施形態では、DAは、微細削皮術(本明細書中では、「MDA」とも称される)のために一般的に使用される装置を用いて達成される。例えば、そのようなDAプロトコルでは、微細削皮装置を使用して、一般に、微細削皮術用のものよりも皮膚のより大きな深さおよび/または領域を除去する。いくつかの実施形態では、微細削皮装置は、滅菌条件下で使用される。いくつかの実施形態では、削皮術は、真皮乳頭層への角質層および表皮の除去を示す点状出血の観察時に、治療を停止する時点まで微細削皮術用装置を用いることによって達成される。他の実施形態では、削皮術は、深層の真皮乳頭層および真皮網状層への角質層および表皮の除去を示すより大きな玉のような出血および擦り切れたコラーゲンの観察時に、治療を停止する時点まで微細削皮術用装置を用いることによって達成される。いくつかの実施形態では、この延長した使用は、皮膚除去プロセスを加速し得る、出力圧力の増加およびアブレーションの粒径の増加を伴って微細削皮装置を使用することによって軽減される。
【0149】
いくつかの実施形態では、DAは、例えば、アルミナ、氷、またはシリカ系粒子を用いた粒子衝突(本明細書中で「粒子に媒介された削皮術」(「PMDA」)としても称される)による表皮の除去によって達成される。いくつかのそのような実施形態では、ミクロンサイズに粒子は、当該技術分野で公知の粒子砲等のハンドピースの短ストロークを介して皮膚の表面に向かって噴射される。粒子の速度は、陽圧または陰圧によって制御される。粒子衝突DA(例えばPMDA)により除去された皮膚の深さは、皮膚に衝突する粒子の体積、吸気圧力または陽圧、ハンドピースの運動速度、および皮膚の面積当たりの通過数の関数である。
【0150】
いくつかの実施形態では、本発明に用いる削皮技術は、皮膚の冷凍処置を除外する。いくつかの実施形態では、本発明に用いる削皮技術は、皮膚の冷凍処置を含む。冷凍処置は、より制御され、一貫した削皮を行うために、皮膚をより強固にするために、歯車型削皮器(wheel dermabrader)とともに行われる。
【0151】
上で論じられた従来の手持ち式削皮装置の不利点に対処するために、従来の削皮器の回転出力を往復運動に変換する削皮先端部が、本明細書に記載される。さらに、本発明の削皮先端部は、ユーザのための人間工学を改善するために角度オフセットを使用する。本発明の実施形態は、改善された人間工学、出血および飛び散りの減少、より良好な臨床医による制御、毛髪が薄くなりつつある領域に用いる良好な適合性、毛髪の温存(hair-sparing)、および単回使用の使い捨てユニットを含む、従来の削皮先端部を超えるいくつかの利点を有する。
【0152】
図9に、従来の削皮器と共に使用することができ、標準的な削皮器の回転運動を往復運動に変換する削皮先端部220の一実施形態を示す。示されるように、本実施形態は、標準的な削皮先端部用の直接交換として互換性があるように設計され、標準的な削皮ハンドピース222と共に使用することができる。本発明の削皮先端部を使用することができる標準的な削皮器の一例は、
図10に示され、これはWoodinville,WAのAseptico,Inc.により製造されるTorque Plus+削皮器、Model AEU-12Cである。一般的に、削皮器は、制御装置223、削皮ハンドピース222、およびハンドピース222を制御装置223に接続するコード224を含む。
図9で示されるように、本発明の削皮先端部220は、従来の削皮ハンドピース222の前端部225を単に取り付けられ、それによってハンドピースの回転運動を往復運動に変換する。
【0153】
本発明の削皮先端部における従来の削皮先端部の回転運動の往復運動への変換は、伝動装置によって達成される。歯車をベースにした伝動、弾性リンクを使用する伝動、または歯車および弾性リンクの両方の組み合わせのような、回転運動を往復運動に変換する手段を構築する多くの方法があるが、伝動の一実施形態が、
図11を参照して説明される。
【0154】
図11で示されるように、本実施形態では、削皮先端部220は、歯車/リンクを変換する伝動部226を格納する。この実施形態では、第1の組のかさマイター歯車228が、ハンドピース222の回転出力を、ハンドピース222の駆動装置の回転方向に対して本質的には直交する回転出力に変換する。歯車228は、ナイロン、アセタールまたは他の好適な耐久性のある低摩擦性プラスチックから構成され得、直径約6.35mmであり得、一般には、1mmあたり約1.9個の歯を有する。第1の組のかさ歯車228は、例えば、ステンレス鋼から作製され得、直径約2.36mmである、駆動軸230によって駆動される。そのような駆動軸230は、ハンドピースの駆動装置への接続のためのハンドピース222の前端部225への挿入に適している。第1の組のかさ歯車228は、機関車のリンク機構に類似した連結アセンブリ232に接続する。連結アセンブリ232は、従来のハンドピース222の直交回転運動を直交往復運動に変換する。
図12で見ることができるように、連結アセンブリ232は、入力駆動輪234、出力駆動輪236、および少なくとも1つの連結棒238を含む。また、
図12で見ることができるように、連結棒238の第1の末端部は、入力駆動輪234のエッジ部に取り付け、連結棒238の第2の末端部は、出力駆動輪236のエッジ部に取り付ける。
【0155】
図12で示されるように、連結アセンブリ232では、入力駆動輪234は、出力駆動輪236の直径よりも小さい半径を通して回転する。したがって、入力駆動輪234が360度の回転を完了すると、出力駆動輪236は、+/-180度未満の動作を通して往復運動する。つまり、出力駆動輪234は、完全な360度の回転を決して完了せず、その代わりに、矢印242によって示されるように、前後に往復運動する。連結アセンブリ32の入力駆動輪234および出力駆動輪236の直径を変更することによって、+/-180度から下方に往復運動する振幅を調節することができる。本実施形態では、入力駆動輪234は、直径約6.35mm(インチ)であり、出力駆動輪236は、直径約9.53mmであり、連結棒238は、長さ約12.7mmである。好ましくは、これは、約+/-45度の往復運動する出力を提供する。しかしながら、当業者には容易に明白であるため、入力および出力駆動輪234、236の直径および/または連結棒238の長さは、往復運動の角度を変更するために変更することができ、これは1度から179度のいずれの範囲におよび得る。連結アセンブリ232は、例えば、ナイロン、アセタールまたは他の好適な耐久性のある低摩擦性プラスチップから構成され得る。
【0156】
図11を再度参照すると、連結アセンブリ232の往復運動する出力駆動輪236は、連結アセンブリ232の往復運動する出力を、本実施形態では、ハンドピース222の細長い軸に対して約45度の角度での往復運動する出力に変換する、第2の組の同様の(大きさ、材料、ピッチ等)かさマイター歯車244に接続する。45度の往復運動する出力は、例えば、ステンレス鋼から作製され得る第2の駆動輪246に接続する。この第2の駆動輪246は、例えば、ポリプロピレンから作製され得、約12.7mmの直径を有し得る円形パッド248に接続される。24、30、または36の粗い(course)CAMI粒度を有する結合した酸化アルミニウム粒子から構成され得る削皮ディスク250が、パッド248によって支持される。加えて、Johnson Abrasives,Jaffery NHのWet-Kutの研削材を裏張りした防水布が、3M-4952等の超高接着テープを用いて支持パッドに適切に固定され得る。したがって、
図13および14で見ることができるように、第2の駆動輪246の往復運動は、削皮ディスク250に移動される。本明細書に記載される歯車装置は全て、直径は、所望の伝動速度およびトルク変換を達成するために変化させることができる。
【0157】
上記の伝動部品は全て、例えば、ポリプロピレン筺体または他の好適な材料から作製される筺体中に格納され得る。筺体は、最大の人間工学を達成するために成形された外部表面を有する長さが約63.5mmであり得る。内部の近位直径は、約15mmであるように設計され、これは、
図9で示されるように、筺体、ひいては、削皮先端部220が従来の削皮ハンドピース222の前端部分225に挿入することを可能にする。ハンドピース222への固定を提供するために、約14.4mmの内径を有する同時成形された低硬度(low durometer)の熱可塑性ゴム(TPR)または熱可塑性エラストマー(TPE)挿入部252が、削皮先端部220の内側に含まれる。
図11で見ることができるように、挿入部252は、従来の削皮ハンドピース222の末端平面部254に係合し、それによって削皮先端部220とハンドピース222との間の摩擦適合を形成するように設計される。
【0158】
さらに、
図11および15で見ることができるように、本発明の削皮先端部220は、ハンドピースの長手方向軸と先端部との間に約45度の角度256を含む。既に論じられたように、そのような角度は、人間工学を改善し、ハンドピースが、むしろペンまたは画家の絵筆のような握持を可能にする。追加された角度はまた、臨床医の快適性および全体の制御を改善する。当業者には容易に明らかなように、異なる角度を用いて、削皮先端部の人間工学を変化させることができる。さらに、別の実施形態では、臨床医および/または患者および/または行われる処置に削皮先端部220をより良好に適応させるために、ハンドピース222の長手方向軸と先端部との間の角度が臨床医によって調整することができるように、削皮先端部220は、調節可能な先端部を含むことができる。
【0159】
さらに、削皮ディスク250を含む先端部が皮膚表面により良好に適合することができるように、
図16で示されるように、第2の駆動輪246は、複数のノッチ部258を含むことができる。これらのノッチ部258は、第2の駆動輪244が屈曲することを可能にし、それによって、削皮ディスク250が皮膚表面に適合することができる。皮膚表面への研削パッド250の適合性を達成するための他の方法としては、玉継ぎ手およびソケット継ぎ手または自在継ぎ手の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
削皮先端部の別の実施形態では、単回使用の使い捨て削皮先端部用に前述された全ての安価なプラスチック製の伝動部品は、ステンレス鋼から作製され、再利用可能な削皮先端部の本体に組み込むことができる。本質的には、使用後、剥離して廃棄することができる削皮ディスクを除いて往復する削皮先端部の全ての部分が再利用可能となる。したがって、再利用可能な削皮先端部を清掃した後、新しい削皮ディスクを使用前に取り付けることができる。
【0161】
臨床医へのさらなる利便性として、上記の削皮先端部は、処置で使用される薬学的組成物を含有する管(または他の同様の容器)を含むキットに梱包され得、これらの例には、項5.2に記載される攪乱後治療剤、項5.3に記載される育毛促進剤、項5.4または本明細書の他の箇所に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で公知の他の薬物が含まれる。したがって、キットには、診療所において毛包処置を行うために全ての必要な消耗品が含まれる。
【0162】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される削皮先端部で皮膚表面を攪乱し、その後、項5.2に記載される1種以上の攪乱後治療剤、項5.3に記載される1種以上の育毛促進剤、項5.4または本明細書の他の箇所に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で公知の他の薬物を適用することを含む毛髪の成長を誘発する方法を対象とする。
【0163】
5.1.2 レーザー
他の特定の実施形態では、外皮攪乱は、レーザー処置によるものである。外皮攪乱のための例示的なレーザー処置には、フラクショナルレーザー(fractional laser)(例えばFraxel)、レーザーアブレーション、エルビウム-YAGレーザー、エルビウムガラスレーザー、超パルスCO2フラクショナルレーザー、超パルスCO2アブレーションレーザー、スムースピールフル(Smooth Peel Full)アブレーションエルビウムレーザー(Candela)、またはネオジム:イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザーが含まれる。本明細書に記載される、当該技術分野で公知の、または将来記載される任意の他のレーザー処置もまた、本明細書に記載される方法に使用することができる。一実施形態では、達成された外皮攪乱が削皮術(例えば、本明細書に記載される削皮法)によって達成されたものと最も類似しているレーザー処置が選択される。一実施形態では、レーザー処置による外皮攪乱は、フラクショナルレーザーによるものである。例えば、米国仮出願公開第61/262,820号、第61/262,840号、第61/262,831号に記載されるレーザー処置を参照されたく、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。フラクショナルレーザー処置の一例は、(例えば、Fraxel(登録商標)レーザー(Solta Medical)を用いた)約1540nmまたは約1550nmでのエルビウム-YAGレーザーによる処置である。1540または1550nmでのエルビウム-YAGレーザーによる処置は、一般には、非アブレーションであり、レーザー処置に特有である点状出血は、角質層が無傷で残っているため、観察されない。レーザー処置の進路にある死滅した(表皮および/または真皮)細胞柱は、「凝塊」と称される。別の実施形態では、レーザー処置による外皮攪乱は、例えば、10,600nmでCO2レーザーを用いたフラクショナルレーザーによるものである。10,600nmでのCO2レーザーは、一般には、アブレーションであり、一般に、点状出血の出現をもたらす。別の実施形態では、レーザーは、例えば1550nmで使用されるフラクショナルエルビウムガラスレーザーである。特定の実施形態では、対象は、Lee et al.,2011,Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 25:1450-1454(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、5~10mmのチップを用いて、6mJのパルスエネルギー、800spot/cm2密度、および静的モードで、2週間間隔で1550nmのフラクションEr:ガラスレーザーによる1種以上(2~10またはそれ以上)の治療を受容する。Kim et al.,2011,Dermatol Surg 37:41-51を参照されたく、これは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0164】
標準的なCO2またはエルビウム-YAGまたはエルビウムガラスレーザーを用いて、削皮術と同様の、表層および任意に広範囲にわたる外皮攪乱を形成することができる(以下に論じられる)。(特に非アブレーション)レーザーの凝固特性により点状出血の臨床的エンドポイントが達成されない場合があるが、レーザーの使用は、角質層および表皮またはその一部を効果的に除去するために皮膚破壊の特定の深さを選択するのを可能にする利点を有する。
【0165】
一実施形態では、レーザー処置はアブレーションである。例えば、組織のフルアブレーションは、CO2レーザーによる10,600nmまたはエルビウム-YAGレーザーによる2940nmの波長で組織の水を標的とすることによって生じる。レーザー処置のこの様式では、表皮が完全に除去され、真皮は熱的組織損傷を受ける。組織アブレーションの深さは、表皮のフルアブレーションであっても、表皮の部分的アブレーションであってもよく、両方の様式は、再生のために不可欠な炎症カスケードを誘発するために皮膚への十分な創傷をもたらす。別の変形では、アブレーションの深さは、深い創傷を作出するために真皮に部分的に延在させてよい。その後、露出した皮膚表面は、1種以上の育毛促進剤により治療され、代替として、1種以上の育毛促進剤は、初期の再上皮化が既に現れてから皮膚に送達し、生物学的な残屑除去プロセスによって組織部位からの育毛促進剤含有持続性薬剤のクリアランスおよび押出を防ぐことができる。一実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、組織に適合する生体適合性のある生体吸収性ポリマーからなる持続放出型持続性薬剤によって送達される。
【0166】
標準的な全層切除モデルは、動物モデルにおいてはさみまたは外科用メスを用いて作製される(国際特許出願公開第WO2011/031990号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)の項28~30および32の例も参照のこと)。本明細書に使用するために企図されるが、全層切除は、瘢痕化のリスクを伴う。しかしながら、様々なフラクショナルレーザーの様式を使用して、格子パターンにおける同様の深い破壊を達成することができ得る。フラクショナルレーザーを使用して、例えば、1-mmの穴間隔を有する直径1-mmの穴を「開ける」ことができる(フラクショナルレーザーは、より小さな寸法の穴を作製することができる)。皮膚が1-mmの穴の内部で完全に除去されるが、周囲の無傷の皮膚は、瘢痕化を防ぎ、したがって、全層切除モデルがそれぞれの穴の内部で引き起こされる。
【0167】
いくつかの実施形態では、レーザーによる外皮攪乱は、非フラクショナルかつアブレーションである。このような一実施形態では、非フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、フルバルクアブレーションによるものであり、治療の全領域の組織が取り除かれる。一実施形態では、バルクアブレーションによる非フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、1.5cm×1.5cm~15cm×15cmの領域にわたるものである。一実施形態では、バルクアブレーションによる非フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、二酸化炭素レーザーを用いて10,600nmで達成される。一実施形態では、バルクアブレーションによる非フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、エルビウム-YAGレーザーを用いて2940nmで達成される。
【0168】
いくつかの実施形態では、レーザー処置は、フラクショナルかつアブレーションである。例えば、フラクショナル組織アブレーションは、10,600nmのCO2レーザーまたは2940nmのエルビウム-YAGレーザー(例えば、Lux2940レーザー、Pixelレーザー、またはプロフラクショナルレーザー)を用いて達成することができる。いくつかのそのような実施形態では、レーザービームは、最長4mmの深さで皮膚に熱傷のマイクロカラムを形成し、プロセスにおいて組織を蒸発させる。フラクショナルレーザーによるアブレーション処置は、皮膚の一部分のアブレーションをもたらし、表皮を迅速に再定着させるために、正常な皮膚の介在領域を無傷のままにしておく。1セッション当たり皮膚の約15%~25%が、処置される。マイクロサーマルゾーン(micro thermal zones、MTZ)の密度を変化させて、無傷の皮膚および生存細胞によって囲まれた損傷カラムの密度の高い「格子」を形成することができる。治療領域上の格子の密度は、重要な役割を果たす。格子の密度が高いほど、熱傷が多くなり、創傷の種類が完全なアブレーションに近づく。したがって、本明細書に開示される方法に用いるのに適切である「最適な」MTZ密度があり得ることが理解されよう。一実施形態では、1種以上の育毛促進剤が、創傷直後または初期再上皮化が生じた後に真皮に送達される。
【0169】
一実施形態では、フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、皮膚への100ミクロン~4000ミクロンの深さで皮膚のフラクショナルアブレーションをもたらすか、または全層切除創傷の深さに近い深さで皮膚のフラクショナルアブレーションをもたらす。このような一実施形態では、フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、1.5cm×1.5cm~15cm×15cmの領域にわたって皮膚のフラクショナルアブレーションをもたらす。別のこのような実施形態では、フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、処置の全領域のフルバルクアブレーションの深さ密度に近いフラクショナルアブレーションのマイクロサーマルゾーンの深さ密度で皮膚のフラクショナルアブレーションをもたらす。
【0170】
一実施形態では、フラクショナルアブレーション外皮攪乱は、フルバルクアブレーションによるものであり、治療の全領域の組織が取り除かれる。このような一実施形態では、バルクアブレーションによるフラクショナルアブレーション外皮攪乱は、1.5cm×1.5cm~15cm×15cmの領域にわたるものである。このような一実施形態では、バルクアブレーションによるフラクショナルアブレーション外皮攪乱は、二酸化炭素レーザーを用いて、10,600nmで達成される。このような一実施形態では、バルクアブレーションによるフラクショナルでアブレーションの外皮攪乱は、エルビウム-YAGレーザーを用いて、2940nmで達成される。
【0171】
別の実施形態では、レーザー処置の様式は、非アブレーションであり、角質層および表皮が処置後無傷であり、深い熱処理のために選択された真皮は、組織への必要な損傷を必要とされる。これは、レーザー処置中、表皮を冷却させることによって達成することができる。例えば、寒剤スプレーを用いた表皮の時限冷却を使用し得るが、一方、レーザーは、真皮に深い熱損傷を与える。この適用では、皮膚への処置の深さは、1mm~3mmであり得る。また、銅またはサファイアチップ等の接触冷却を使用され得る。非アブレーションであるレーザーは、1000~1600nmの発光波長を有し、熱傷を生じるが、組織を蒸発させないエネルギーフルエンスを有する。非アブレーションレーザーは、バルクであり得、単一のスポットビームを使用して、均一な組織部分を処置することができる。いくつかの実施形態では、所望の効果を達成するために、複数の処置が必要とされる。一実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、高分子マイクロデポー(micro-depots)において真皮に深く送達され、持続様式で放出される。非アブレーションであるレーザーは、1540nmまたは1550nmのパルス色素レーザー(血管)、1064 Nd:YAGレーザー、またはエルビウム-YAGレーザー(例えばFraxel(登録商標)レーザー)を含む。約1540nmまたは約1550nmのエルビウム-YAGレーザーの使用は、2940nmのその使用とは対照的に、真皮および表皮のゾーンを「凝固させ」(「凝固物」を形成する)、角質層を本質的には無傷の状態のままにする。
【0172】
別の実施形態では、レーザー処置の様式は、フラクショナルで非アブレーションである。フラクショナルで非アブレーションのレーザーによる処置は、皮膚の一部分の攪乱をもたらし、表皮を迅速に再定着させるために、正常な皮膚の介在領域を無傷のままとする。1セッション当たり皮膚の約15%~25%が、処置される。いかなる非アブレーションプロセスでも見られるように、皮膚の関門機能が維持される一方、真皮の深い熱的加熱を生じ得る。したがって、真皮および表皮のゾーンが凝固され、角質層が本質的には無傷のままの状態となる。このプロセスには、「フラクショナル光熱融解」という新しい名称が付されており、例えば、約1540nmまたは1550nmの発光を有するエルビウム-YAGレーザーを用いて達成することができる。一実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、組織損傷直後、真皮に深く送達される。別の実施形態では、組織損傷のバルクおよびフラクショナルでアブレーションの様式の組み合わせが使用される。
【0173】
特定の実施形態では、レーザーによるフラクショナルで非アブレーションの外皮攪乱が、1500~1590nmのエルビウム-YAGレーザーの使用によって行われる。
【0174】
特定の実施形態では、例えば、30~50歳の白人男性のためのレーザー処置の様式は、1550nmのエルビウム-YAGレーザーを、50~70J/cm2、処置レベル8~10(「ドット」の密度)、8回のパスの設定で用いたフラクショナルで非アブレーションの様式である。この点において、レーザー装置は、毛髪の成長を促進するようにレーザーを動作するためのパラメータを設定するために、選択肢のメニューを操作者に提供するタッチパッドスクリーンを装備することができる。例えば、この装置をプログラム化して、育毛対脱毛、皮膚色の選択、毛包密度、電力設定等の選択を操作者に提供することができる。
【0175】
別の実施形態では、レーザーの使用を含む治療は、光エネルギーの熱エネルギーへの効率的なチャネリングのために、1000~1600nmの波長で光を吸収する化合物の皮膚への投与を含む。エネルギーをチャネリングするこの方法は、皮膚内で熱傷のマイクロゾーンを生じ得る。化合物は、治療ゾーンにおいて均一に皮膚に送達され、続いて、赤外線の振動エネルギーを効率的に捕捉するために非アブレーションレーザーを用いて照射され得る。この方法は、組織の蒸発を生じることなく、均等に分布し、深い熱傷をもたらし得る。
【0176】
別の実施形態では、レーザーの使用を含む治療は、高親水性があり、電荷を有する、例えば、創傷治癒プロセスの一部として、マトリックスが食作用によって除去されるのを防ぐために、共有結合またはイオン結合によって真皮に結合される、マトリックス内にカプセル化される1種以上の育毛促進剤の投与を含む。
【0177】
別の実施形態では、レーザーの使用を含む処置は、特に、創傷が深く、大きな領域を覆い、バルクアブレーションされる場合、新しく形成された創傷上に生体適合性のある人工合成代用皮膚を配置するステップを含む。このプロセスは、しばしば、瘢痕組織の形成および皮膚の機能の消失に至る、組織の大きな領域の消失後に生じる急速な創傷の収縮を最小限に抑える、または防ぐのに役立てることができる。一実施形態では、生体適合性のある人工合成代用皮膚は、本明細書に記載される徐放型育毛促進剤製剤の持続性薬剤と共に浸透される。この処置方法は、治療診療所で1回のセッションで頭皮上の大きな禿げ領域を治療することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、他の分子もまた、例えば、さらなる疼痛を防ぐためおよび感染症の最小化のための麻酔剤および抗生物質、または本明細書に記載される他の化合物等の代用皮膚を通して部位で共溶出される。代用皮膚はまた、1種以上の育毛促進剤および/または本明細書に記載される他の化合物の存在または不在下で、事前に冷却され、創傷に適用されて、患者への快適さを提供することができる。この治療様式は、1種以上の育毛促進剤または他の化合物が、創傷が治癒するにつれて、創傷部位から剥がれるのを防ぐことができる。
【0178】
5.1.3 制御された外皮攪乱
前述の外皮攪乱法は、攪乱の範囲の制御および/または外皮に攪乱した皮膚が治癒する方法の制御を発揮する様式において実行することができる。一実施形態では、外皮攪乱法は、毛髪の成長が望ましい皮膚の領域への表層創傷のみをもたらす。特定の実施形態では、創傷の程度は、攪乱の深さを制御することによって最小限に抑えられる。例えば、本明細書に記載される外皮攪乱の処置は、表皮の一部もしくは全て、角質層の一部もしくは全て、または真皮乳頭層、真皮網状層、および/または下皮により深く、攪乱を制限するように制御され得る。点状出血の発生は、角質層、表皮(またはその一部)、および表層の真皮乳頭層等の真皮の上層の部分の除去を示すであろう。増加した出血の発生は、深層の真皮乳頭層および真皮網状層へのより深い浸透(したがって、攪乱)を示すであろう。
【0179】
一実施形態では、外皮攪乱は、表皮を除去しない。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、表皮の一部の除去を達成する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、全表皮を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、表皮の全ておよび真皮の一部を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、角質層の一部を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、角質層を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、真皮乳頭層の一部を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、さらに表層の真皮乳頭層の一部を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、深層の真皮乳頭層の一部を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、真皮乳頭層を除去する。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、真皮網状層または真皮網状層の一部を除去する。外皮攪乱の深さは、特定の処置領域での皮膚の厚みによって異なる。例えば、瞼の皮膚は、頭皮の皮膚よりも著しく薄い。点状出血の発生は、表皮および真皮の部分が除去されていることを示す。より深い浸透は、はるかに多い出血をもたらし得、攪乱は、下皮までも深く入り込むことができる。
【0180】
特定の実施形態では、外皮攪乱は、点状出血の臨床的終点まで行われる。いくつかの実施形態では、この深さは、毛包乳頭の血管レベルに達する。いくつかの実施形態では、この深さは、例えば、表皮突起間の真皮乳頭層の領域等の皮膚乳頭内のループ状毛細血管の血管レベルよりも深く入り込まない(
図23を参照)。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、真皮を穿孔しない。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、処置した皮膚の領域における毛包の、全て、またはいくつかの実施形態では、ほとんどを完全に除去しない。一実施形態では、外皮攪乱は、真皮網状層を穿孔しない。一実施形態では、外皮攪乱は、真皮乳頭層の半分を超えて穿孔しない。
【0181】
いくつかの実施形態では、1つ以上の前述の方法による外皮攪乱は、5~40μm、40~100μm、30~200μm、50~150μm、70~130μm、80~120μm、90~110μm、95~105μm、または100~150μmの皮膚の深さまでである。
【0182】
いくつかの実施形態では、1つ以上の前述の方法による外皮攪乱は、少なくとも30μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、1つ以上の前述の方法による外皮攪乱は、30μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、50μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、1つ以上の前述の方法による外皮攪乱は、60μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、30~100μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、60~100μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、60~200μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、100μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、100~150μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、150μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、100~200μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、30~200μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または200μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱の最大深さは、例えば30、40、50、60、70、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μmまでである。
【0183】
いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、100~500μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、500μm未満の皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、500~1000μmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、最大約1mmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、約1mm以上の皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、最大約2mmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、約2mm以上の皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、1mm~3mmの皮膚の深さまでである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、1mm~5mmの皮膚の深さまでである。特定の実施形態では、外皮攪乱の深さは、500μmを超えない。特定の実施形態では、外皮攪乱の深さは、1mmを超えない。特定の実施形態では、外皮攪乱の深さは、2mmを超えない。
【0184】
特定の実施形態では、外皮攪乱は、微細削皮術によるものではない。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、全層切除術によるものではない。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、部分層切除術によるものである。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、部分層切除術によるものではない。
【0185】
上述の方法のいずれを使用しても、正確な量の表皮組織を除去することができる。例えば、本明細書に記載される制御された外皮攪乱法を使用して、以下を達成することができる:
・最初の10~30μmのこれらの死んだ皮膚細胞の除去による角質層の除去。
・最初の30~100μmの皮膚を除去することによる、角質層および部分的または全ての表皮の除去。これは、存在する毛包構造体の皮脂腺、バルジ、または毛乳頭を除去するのに十分な深さはない。表皮の除去は、皮膚の光沢のある、滑らかな白っぽい層の出現によって検出することができる。
・角質層、全ての表皮の除去、および真皮乳頭層の攪乱(例えば100μm~150μmの皮膚)。真皮乳頭層の攪乱は、処置した領域における小さな点状出血によって検出することができる。
・角質層、全表皮、および約200μmまでの真皮の部分の除去。
【0186】
別の実施形態では、外皮攪乱の程度、およびいくつかの場合において、得られる創傷は、皮膚の攪乱領域の大きさを制御することによって、例えば、単一の大きな創傷よりもむしろ大きな領域の創傷に影響を及ぼす一連の小さな創傷を作製することによって、減少される。したがって、ある特定の実施形態では、外皮攪乱の領域は、例えば、幅0~3mm(例えば、1mm、2mm、3mm、またはそれ以上)、幅0~2cm(例えば、1cm、1.5cm、および2.0cm)、またはそれ以上(例えば、対象の表皮の10%、30%、50%、70%、90%、もしくは100%まで、または眉領域等の毛髪の成長の他の領域)の任意の所望の大きさのものであり得る。任意に、外皮攪乱の領域は、毛包間であり得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱法は、皮膚において創傷を誘発する。いくつかのそのような実施形態では、創傷した皮膚は、一次癒合によって治癒される。他の実施形態では、創傷した皮膚は、二次癒合によって治癒される。なお他の実施形態では、創傷した皮膚は、三次癒合によって治癒される。ある特定の実施形態では、創傷した皮膚は、そのような創傷に通常示されるよりもさらにゆっくりと治癒される。これは、傷跡を残さない創傷治癒を増強、および/または皮膚の創傷した領域における毛髪の成長が促進される期間を延長し得る。
【0188】
5.2 攪乱後治療
外皮攪乱後(および任意にその前またはその間)の皮膚への投与のための薬学的組成物が、本明細書に提供される。そのような薬学的組成物は、本明細書に記載される攪乱後治療ステップに使用され得る。ある特定の実施形態では、攪乱後薬学的組成物は、皮膚への局所投与のために製剤化される。特定の実施形態では、攪乱後治療は、本明細書に記載される方法に従って、外皮攪乱する、外皮攪乱している、または外皮攪乱に供された皮膚の領域に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、非閉塞性創傷被覆材である。いくつかのそのような実施形態では、攪乱後治療は、一次癒合によって外皮攪乱した皮膚を治癒するために投与される。いくつかのそのような実施形態では、攪乱後治療は、二次癒合によって外皮攪乱した皮膚を治癒するために投与される。いくつかのそのような実施形態では、攪乱後治療は、三次癒合によって外皮攪乱した皮膚を治癒するために投与される。いくつかのそのような実施形態では、攪乱後治療は、そのような創傷に通常示されるよりもさらにゆっくりと外皮攪乱した皮膚を治癒するために投与される。これは、傷跡を残さない創傷治癒を増強、および/または皮膚の創傷した領域における毛髪の成長が促進される期間を延長し得る。いくつかのそのような実施形態では、攪乱後治療は、瘢痕のない、または瘢痕を最小にする、創傷治癒を促進する。
【0189】
限定されない実施形態では、攪乱後治療用の薬学的組成物は、ゲル、ヒドロゲル、乳剤、溶液、懸濁液、クリーム剤、軟膏、粉剤、被覆材、エリキシル剤、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト剤、粉末剤、覚醒剤、泡沫フィルム、エアロゾル剤、洗浄剤、スプレー、坐薬、スティック剤、棒剤、軟膏剤、包帯、創傷被覆材、微細削皮術、または削皮粒子、点滴剤、経皮パッチ剤、または皮膚パッチ剤として局所投与のために製剤化される。特定の実施形態では、攪乱後薬学的組成物は、水性製剤(例えばヒドロゲル)、非水性製剤、軟膏、またはクリーム剤(例えば乳剤)である。一実施形態では、この組成物はヒドロゲルである。いくつかの実施形態では、この組成物は密封するものである。他の実施形態では、この組成物は閉塞しない。これらの組成物は、当該技術分野で公知の送達の任意の局所手段によって投与され得る。特定の実施形態では、この組成物は、以下の項5.5.2.1に記載されるような、包帯または他の創傷被覆材等の製品の一部として投与される。特定の実施形態では、この組成物は、以下の項5.5.4.3に記載されるような、薬物送達系を用いて投与される。
【0190】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療用の薬学的組成物は、以下の項5.3または5.4に記載されるような、活性成分または活性成分を含有する。
【0191】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療用の薬学的組成物の製剤は、組成物中に(有する場合)活性成分の放出速度を制御するために変化させられる。これは、例えば、その疎水性を変化させることなく、担体の分子可動性を変化させることによって、例えば、ペトロラタムと鉱油の比率を変えることによって達成され得る。一実施形態では、薬学的製剤は、ペトロラタム、鉱油、およびラノリンアルコールを含む軟膏剤である。そのような実施形態に従って調製される例示的な製剤は、以下の実施例に提供される。別の実施形態では、活性成分の放出は、製剤の疎水性/親水性の比率を変化させることによって、例えば、ペトロラタム/水エマルジョンを調製することによって変調され得る。そのような実施形態に従って調製される例示的な製剤は、以下の実施例に提供される。
【0192】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、以下の成分を列挙する濃度で含むヒドロゲルである:6%~10%、7%~9%で;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のCMC;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン。
【0193】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、以下の成分を列挙する濃度で含む:6%~10%、7%~9%で;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のヒアルロン酸ナトリウム;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン。
【0194】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、以下の成分を列挙する濃度で含む:6%~10%、7%~9%で;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のコラーゲン;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアロエベラゲル;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン。
【0195】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、I相およびII相からなるエモリエントクリームであり、10%~20%、12%~18%、14%~16%、15%~17%、もしくは16%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のヒアルロン酸;5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン;0.1%~1%、0.2%~0.8%、0.3%~0.6%、0.35%~0.5%、0.4%、もしくは0.32%のアラントイン;0.1%~1%、0.3%~0.7%、もしくは0.5%の塩化ナトリウム;0.1%~0.3%、0.15%~0.25%、もしくは0.2%のメチルパラベン、0.05~0.15%、0.075~0.125%、もしくは0.1%、もしくは0.096%のプロピルパラベン;pHを調整するための10% NaOH;および100%まで水を含み、II相は、10%~30%、15%~25%、18%~22%、もしくは20%の大豆油;5%~15%、7.5%~12.5%、9%~11%、もしくは10%の水素化綿実油;4%~12%、6%~10%、7%~9%、もしくは8%のポリグリセリル-10デカオレート;1%~7%、2%~6%、3%~5%、もしくは4%のポリグリセリル-6-オクタステアレート;2%~8%、3%~7%、4%~6%、もしくは5%のホホバ種子油;0.5%~8%、1%~6%、2%~4%、2.5%~3.5%、もしくは3%のシアバター;5%~15%、7%~12%、もしくは10%のオリーブ油を含む。ある特定の実施形態では、エモリエントクリームは、6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;0.25%~2.5%、0.5%~2%、0.75%~1.5%、もしくは1%のヒアルロン酸、1%~9%、2%~8%、3%~8%、4%~6%、もしくは5%のグリセリン;0.05%~0.3%、at 0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.5%、0.1%~0.4%、0.2%~0.3%、もしくは0.25%の塩化ナトリウム;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;pHを調整するための10% NaOH;100%までの水;5%~15%、7%~12%、もしくは10%の大豆油;水素化綿実油5%~15%、7%~12%、もしくは10%;1%~6%、2%~5%、3%~5%、もしくは4%のポリグリセリル-10デカオレート;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のポリグリセリル-6-オクタステアレート;1%~5%、1.5%~4%、2%~3%、もしくは2.5%のホホバ種子油;0.5%~4%、1%~3%、1.25%~2%、もしくは1.5%のシアバター;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のオリーブ油をさらに含む。
【0196】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、以下の成分を列挙された濃度で含む:6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のCMC;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン。
【0197】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、以下の成分を列挙された濃度で含む:6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のヒアルロン酸ナトリウム;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン。
【0198】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、以下の成分を列挙された濃度で含む:6%~10%、7%~9%;もしくは8%でのクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%でのコラーゲン;0.05%~0.15%、もしくは0.1%でのメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%でのプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%でのアロエベラゲル;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%でのアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%でのグリセリン。
【0199】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される攪乱後治療用組成物は、I相およびII相からなるエモリエントクリームであり、I相が、10%~20%、12%~18%、14%~16%、15%~17%、もしくは16%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のヒアルロン酸;5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン;0.1%~1%、0.2%~0.8%、0.3%~0.6%、0.35%~0.5%、0.4%、もしくは0.32%のアラントイン;0.1%~1%、0.3%~0.7%、もしくは0.5%の塩化ナトリウム;0.1%~0.3%、0.15%~0.25%、もしくは0.2%のメチルパラベン、0.05~0.15%、0.075~0.125%、もしくは0.1%、もしくは0.096%のプロピルパラベン;pHを調整するための10% NaOH;および100%までの水を含み、II相が、10%~30%、15%~25%、18%~22%、もしくは20%の大豆油;5%~15%、7.5%~12.5%、9%~11%、もしくは10%の水素化綿実油;4%~12%、6%~10%、7%~9%、もしくは8%のポリグリセリル-10デカオレート;1%~7%、2%~6%、3%~5%、もしくは4%のポリグリセリル-6-オクタステアレート;2%~8%、3%~7%、4%~6%、もしくは5%のホホバ種子油;0.5%~8%、1%~6%、2%~4%、2.5%~3.5%、もしくは3%のシアバター;5%~15%、7%~12%、もしくは10%のオリーブ油を含む。ある特定の実施形態では、エモリエントクリームは、6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;0.25%~2.5%、0.5%~2%、0.75%~1.5%、もしくは1%のヒアルロン酸、1%~9%、2%~8%、3%~8%、4%~6%、もしくは5%のグリセリン;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.5%、0.1%~0.4%、0.2%~0.3%、もしくは0.25%の塩化ナトリウム;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;pHを調整するための10% NaOH;100%までの水;5%~15%、7%~12%、もしくは10%の大豆油;水素化綿実油5%~15%、7%~12%、もしくは10%;1%~6%、2%~5%、3%~5%、もしくは4%のポリグリセリル-10デカオレート;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のポリグリセリル-6-オクタステアレート;1%~5%、1.5%~4%、2%~3%、もしくは2.5%のホホバ種子油;0.5%~4%、1%~3%、1.25%~2%、もしくは1.5%のシアバター;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のオリーブ油をさらに含む。
【0200】
攪乱後治療に用いる組成物のさらなる例は、以下に従う。
【0201】
0.1%~0.5%、0.1%~0.3%、0.15%~0.25%、約0.2%、もしくは0.206%のメントール;6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のCMC;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリンを含む、組成物。
【0202】
0.1%~0.5%、0.1%~0.3%、0.15%~0.25%、約0.2%、もしくは0.206%のメントール;6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のヒアルロン酸ナトリウム;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリンを含む、組成物。
【0203】
0.1%~0.5%、0.1%~0.3%、0.15%~0.25%、約0.2%、もしくは0.206%のメントール;6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のコラーゲン;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;100%までの蒸留水;pHを調整するための10% NaOH;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアロエベラゲル;0.05%~0.2%、0.08%~0.14%、もしくは0.12%のアルギン酸塩;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリンを含む、組成物。
【0204】
I相およびII相からなるエモリエントクリームであって、I相が、0.1%~1%、0.2%~0.8%、0.3%~0.6%、0.35%~0.5%、もしくは0.4%のメントール;10%~20%、12%~18%、14%~16%、15%~17%、もしくは16%のクエン酸;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のヒアルロン酸;5%~15%、7%~12%、もしくは10%のグリセリン;0.1%~1%、0.2%~0.8%、0.3%~0.6%、0.35%~0.5%、0.4%、もしくは0.32%のアラントイン;0.1%~1%、0.3%~0.7%、もしくは0.5%の塩化ナトリウム;0.1%~0.3%、0.15%~0.25%、もしくは0.2%のメチルパラベン、0.05~0.15%、0.075~0.125%、もしくは0.1%、もしくは0.096%のプロピルパラベン;pHを調整するための10% NaOH;および100%までの水を含み、II相が、10%~30%、15%~25%、18%~22%、もしくは20%の大豆油;5%~15%、7.5%~12.5%、9%~11%、もしくは10%の水素化綿実油;4%~12%、6%~10%、7%~9%、もしくは8%のポリグリセリル-10デカオレート;1%~7%、2%~6%、3%~5%、もしくは4%のポリグリセリル-6-オクタステアレート;2%~8%、3%~7%、4%~6%、もしくは5%のホホバ種子油;0.5%~8%、1%~6%、2%~4%、2.5%~3.5%、もしくは3%のシアバター;5%~15%、7%~12%、もしくは10%のオリーブ油を含む、エモリエントクリーム。ある特定の実施形態では、エモリエントクリームは、0.1%~0.5%、0.1%~0.3%、0.15%~0.25%、約0.2%のメントール;6%~10%、7%~9%;もしくは8%のクエン酸;0.25%~2.5%、0.5%~2%、0.75%~1.5%、もしくは1%のヒアルロン酸、1%~9%、2%~8%、3%~8%、4%~6%、もしくは5%のグリセリン;0.05%~0.3%、0.1%~0.2%、もしくは0.16%のアラントイン;0.05%~0.5%、0.1%~0.4%、0.2%~0.3%、もしくは0.25%の塩化ナトリウム;0.05%~0.15%、もしくは0.1%のメチルパラベン;0.01~0.1%、0.02~0.08%;0.03%~0.06%、もしくは0.05%のプロピルパラベン;pHを調整するための10% NaOH;100%までの水;5%~15%、7%~12%、もしくは10%の大豆油;5%~15%、7%~12%、もしくは10%の水素化綿実油;1%~6%、2%~5%、3%~5%、もしくは4%のポリグリセリル-10デカオレート;1%~3%、1.5%~2.5%、もしくは2%のポリグリセリル-6-オクタステアレート;1%~5%、1.5%~4%、2%~3%、もしくは2.5%のホホバ種子油;0.5%~4%、1%~3%、1.25%~2%、もしくは1.5%のシアバター;および5%~15%、7%~12%、もしくは10%のオリーブ油をさらに含む。
【0205】
5.2.1 ヒドロゲル
一実施形態では、攪乱後薬学的組成物は、水性ヒドロゲルとして製剤化される。一実施形態では、水性ヒドロゲルは、Carbopol 980、メチルパラベン、プロピルパラベン、プロピレングリコール、グリセリン、および水を含む。一実施形態では、ヒドロゲル製剤は、クエン酸、CMC、メチルパラベン、プロピルパラベン、アラントイン、アルギン酸塩、および水を含む。そのような実施形態に従って調製された例示的な製剤が、以下の実施例に提供される。一実施形態では、ヒドロゲルは、グリコール、カルボキシメチルセルロース、アラントイン、アルギン酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、水(適量)、および水酸化ナトリウム(pHを6.5~7.5に調整)の組成物を有する。ヒドロゲルを製剤化するための方法は、以下の実施例に詳細に記載される。これらの方法は、当該技術分野で公知であり、本明細書に記載される方法を用いて他のヒドロゲル製剤を生成するように適合され得る。
【0206】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、約75%、80%、85%、90%、または95%の水を含有する。特定の実施形態では、ヒドロゲルは、90%の水を含有する。好ましくは、ヒドロゲルは、以下の特徴のうちの1つ以上または全てを有する:透明、無臭、無色、例えば、2,000~10,000cP、2,000~8,000cP、もしくは6,000~10,000cP(例えば血流計を用いて測定される)の粘度(25℃で)を有する、アッセイおよび用量統一性(例えば、炎光光度法もしくは原子吸収分析法(AAS)によって測定され得る)を有する、皮膚軟化剤の「滑らかな手触り」の質感を有する、容易に皮膚に適用され得る、表面上で容易に広がる、周囲の部位への最小の移動を有する、最小の流出を有する、中性pH(例えばpH6.5~7.5)を有する、滅菌されている、例えば、強度、粘度、および均一性に関して、1つ以上の温度条件で(例えば、4℃、25℃、および40℃)、長期間(例えば1週間以上、2週間以上、4週間以上、8週間以上、12週間以上、4ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、2年以上)安定している。一実施形態では、ヒドロゲルは、最長4週間またはそれ以上室温で安定している。一実施形態では、ヒドロゲルは、最長8週間またはそれ以上室温で安定している。一実施形態では、ヒドロゲルは、最長6ヶ月またはそれ以上4℃で安定している。一実施形態では、ヒドロゲルは、最長1年間またはそれ以上4℃で安定している。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、本明細書に記載される方法に用いる局所製剤用に所望であり得る前述または以下の特性のうちの1つ以上に寄与するように選択された賦形剤および一定量の活性成分で調製され、これらの特性は、粘度(例えばカルボキシメチルセルロースによって付与される)、表面湿潤能および「完全乾燥(dry-out)」の保護(例えばグリセロールによって付与される)、防腐剤の有効性(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン等のパラベンによって付与されるが、ある特定の実施形態では、パラベンが含まれていない製剤もまた、生成され得る)、pHの維持、安定性(例えば、ヒドロゲルに使用される界面活性剤の強度を変化させることによって付与される)、ならびに薬物動態学的特性(製剤からの活性成分の放出速度、皮膚および血液中の活性成分のピークおよびトラフ濃度)である。この製剤が創傷されるまたは創傷され得る皮膚に投与するためのものである特定の実施形態では、滅菌性、創傷治癒に寄与し、ならびに/または細胞接着および/もしくは増殖に役立つ、創傷に適合する賦形剤は、例えば、アラントインまたはアルギン酸ナトリウム等が含まれ得る。
【0207】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、活性成分(有する場合)を異なる速度で放出するように製剤化される。放出速度は、以下の項5.5.5に記載されるように、製剤を異なる足場に組み込むこと、製剤のいかなる活性成分を含む構成成分の濃度を修正すること、または賦形剤の種類および濃度を修正することのうちの1つ以上によって修正され得る。いくつかの実施形態では、活性成分の大部分または全ては、2時間以内、4時間以内、8時間以内、10時間以内、12時間以内、16時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、3日間以内、5日間以内、7日間以内、10日間以内、14日間以内、30日間、または2ヶ月以上以内に製剤から放出される。特定の実施形態では、任意の活性成分の大部分または全ては、12時間以内に本明細書に記載されるヒドロゲルから放出される。一実施形態では、活性成分の全ては、12時間以内にヒドロゲルから放出される。別の実施形態では、活性成分の大部分または全ては、24時間以内に本明細書に記載されるヒドロゲルから放出される。一実施形態では、製剤は、「即効型」製剤であり、即ち、投与の初日のうちに90~100%の活性成分を放出する。別の実施形態では、製剤は、「中間放出」製剤であり、即ち、投与から1~3日間以内に90~100%の活性成分を放出する。別の実施形態では、製剤は、「持続放出」製剤であり、即ち、投与から3~7日間以内に90~100%の活性成分を放出する。
【0208】
5.2.2 クリーム剤
別の特定の実施形態では、局所投与用に製剤化された攪乱後組成物は、例えばクリーム剤等の乳剤の形態である。一実施形態では、クリーム剤は、油/水型乳剤である。
【0209】
ある特定の実施形態では、クリーム剤は、約75%、80%、85%、90%、または95%の水を含有する。ある特定の実施形態では、クリーム剤(例えば、分散剤、懸濁剤、コロイド、または乳剤)は、以下の特徴のうちの1つ以上または全てを有する:無臭、皮膚への適用時に無色、例えば、2,000~10,000cP、2,000~8,000cP、もしくは6,000~10,000cP(例えば血流計を用いて測定される)の粘度(25℃で)を有する、アッセイおよび用量統一性(例えば、炎光光度法もしくは原子吸収分析法(AAS)によって測定され得る)を有する、皮膚軟化剤の「滑らかな手触り」の質感を有する、容易に皮膚に適用され得る、表面上で容易に広がる、周囲の部位への最小の移動を有する、最小の流出を有する、中性pH(例えばpH6.5~7.5)を有する、滅菌されている、例えば、強度、粘度、および均一性に関して、1つ以上の温度条件で(例えば、4℃、25℃、および40℃)、長期間(例えば、1週間以上、2週間以上、4週間以上、8週間以上、12週間以上、4ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、2年以上)安定している。一実施形態では、クリーム剤は、最長4週間またはそれ以上室温で安定している。一実施形態では、クリーム剤は、最長8週間またはそれ以上室温で安定している。一実施形態では、クリーム剤は、最長6ヶ月間またはそれ以上4℃で安定している。一実施形態では、クリーム剤は、最長1年間またはそれ以上4℃で安定している。ある特定の実施形態では、クリーム剤は、本明細書に記載される方法に用いる局所製剤用に所望であり得る前述または以下の特性のうちの1つ以上に寄与するように選択された賦形剤およびある量の活性成分で調製され、これらの特性は、粘度、表面湿潤能および「完全乾燥(dry-out)」の保護、防腐剤の有効性、pHの維持、安定性(例えば、クリーム剤に使用される界面活性剤の強度を変化させることによって付与される)、ならびに薬物動態学的特性(製剤からの任意の活性成分の放出速度、皮膚および血液中のピークおよびトラフ濃度)である。この製剤が創傷されるまたは創傷され得る皮膚に投与するためのものである特定の実施形態では、創傷治癒に寄与し、ならびに/または細胞接着および/もしくは増殖に役立つ、創傷に適合する賦形剤は、例えば、アラントインまたはアルギン酸ナトリウム等が含まれ得る。
【0210】
クリーム剤からの活性成分の放出速度(有する場合)は、以下の項5.5.5に記載されるように、製剤を異なる足場に組み込むこと、製剤の活性成分の濃度を修正すること、または賦形剤の種類および濃度を修正することのうちの1つ以上によって修正され得る。例えば、一実施形態では、クリーム剤からの活性成分の放出速度は、クリーム剤中の親水性ポリマーの濃度を低下させることによって低下し得る。いくつかの実施形態では、クリーム剤からの活性成分の放出速度は、使用される、セテアリルアルコール、ラノリンアルコールの濃度を変化させることによって、または水性もしくは非水性担体、好ましくは、非水性担体(例えば、シリコーン、鉱油、ペトロラタム等)の種類を変化させることによって変化し得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、活性成分の大部分または全ては、2時間以内、4時間以内、8時間以内、10時間以内、12時間以内、16時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、3日間以内、5日間以内、7日間以内、10日間以内、14日間以内、30日間、または2ヶ月以上以内に製剤から放出される。特定の実施形態では、活性成分の大部分または全ては、10時間以内に本明細書に記載されるクリーム剤から放出される。一実施形態では、活性成分の全ては、10時間以内にクリーム剤から放出される。別の実施形態では、活性成分の大部分または全ては、24時間以内に本明細書に記載されるクリーム剤から放出される。一実施形態では、製剤は、「即効型」製剤であり、即ち、投与の初日のうちに90~100%の活性成分を放出する。別の実施形態では、製剤は、「中間放出」製剤であり、即ち、投与から1~3日間以内に90~100%の活性成分を放出する。別の実施形態では、製剤は、「持続放出」製剤であり、即ち、投与から3~7日間以内に90~100%の活性成分を放出する。
【0212】
特定の実施形態では、このクリーム剤は、即時放出製剤である。そのような製剤は、(i)任意の活性成分および親水性賦形剤を溶解するための水相と(ii)疎水性ポリマーを溶解するための非水相の2相システムを用いて生成され得る。例となる一実施形態では、このクリーム剤は、油中水乳剤であり、生体適合のある皮膚エモリエント剤としての役割を果たすだけではなく、任意の活性成分の送達系としての役割も果たす。
【0213】
別の実施形態では、このクリーム剤は、中間放出製剤である。一実施形態では、この中間放出製剤は、例えば、上記の中間放出クリーム製剤について記載されるように、2相の均質化によって調製される乳剤である。
【0214】
別の実施形態では、このクリーム剤は、持続放出製剤である。一実施形態では、この持続放出製剤は、例えば、上記の即効型および中間放出クリーム製剤について記載されるように、2相(水相および非水相)の均質化によって調製されるが、非水相中の親水性ポリマーの濃度を低下させることによって調製される。
【0215】
攪乱後局所投与用の前述の製剤は、本明細書に記載される任意の実施形態に従って投与され得る。例えば、特定の実施形態では、50kgの患者は、1日2回、3つの部位で本明細書に記載される単一液滴のヒドロゲルを投与される。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、1日2回投与される。1日2回の治療レジメンのいくつかの実施形態では、投与量は、6時間おき、または7時間おき、または8時間おき、または9時間おき、または10時間おき、または11時間おき、または12時間おきに投与される。特定の実施形態では、投与量は、7~8時間おきに投与される。
【0216】
5.3 育毛促進剤
毛髪脱落のための大部分の薬物は、それらの活動周期において存在する毛包を保持すること、または活動周期の成長期まで休止期の毛包を活性化することを目的とする。他の薬物は、軟毛の硬毛への移行を促す。対照的に、それらの活動周期において毛包を保持し得る薬物治療と組み合わせた外皮攪乱治療(「新しい」毛包の成長または存在する毛包の活性化を促し得る)は、禿げつつある個人に著しい価値を提供する。そのような治療は、より有効的で、効率的な、費用効率が高い、利用しやすいものであり得る。例えば、より少ない治療が必要とされ得る。得られる毛髪は、より美容上満足でき、長寿命の、より濃く、より均一で、かつ適切に色素性のある毛髪であり得る。そのような特徴は、軟毛よりむしろ硬毛と関連する。
【0217】
上の項5.1に記載される外皮攪乱法は、単独でまたは上の項5.2に記載される攪乱後治療と組み合わせて、育毛促進剤との併用療法、および任意に以下の項5.4に記載される治療と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される育毛促進剤は、毛包の発育および成長を促進し、皮膚の部位上の軟毛の非軟毛、例えば中間または硬毛への移行をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される育毛促進剤は、外皮攪乱法と相乗的に作用して、育毛を促進する。それぞれの治療が提供する効果は、所望の最終結果を達成するために、相加的または相乗的改善、または2つの異なる生物学的に定義された効果の組み合わせであり得る。
【0218】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、育毛を促進および/または過度の毛髪脱落と関連する疾患もしくは状態を治療する治療剤である。育毛を促進、および/または当該技術分野で公知の、もしくはなお開発中である過度の毛髪脱落と関連する疾患もしくは状態を治療する任意の治療が、これらの実施形態に従って用いるために企図される。
【0219】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、例えば、ミノキシジル(例えば、RogaineまたはRegaineとして市販)、ジアゾキシド、もしくはフェニトイン等の、1種以上のチャンネル開口薬(例えば、カリウムチャンネル開口薬、例えばATP感受性カリウムチャンネル(KATP開口薬)、またはそのようなチャンネルのアクチベータ)による治療を含む。特定の実施形態では、育毛促進剤治療は、ミノキシジルによる治療を含む。これらの実施形態に従って使用され得るミノキシジルの一般的に使用される用量形態は、2%のミノキシジルまたは5%のミノキシジルを含む局所用溶液、例えば、局所用ミノキシジル発泡体5%である。
【0220】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、1種以上の5α-レダクターゼ阻害剤による治療を含む。5α-レダクターゼ阻害剤の限定されない例には、フィナステライド、デュタステリド(例えばAvodart)、ツロステリド、ベキソロステリド、イゾンステリド、エプリステリド、エピガロカテキン、MK-386、アゼライン酸、FCE28260、およびSKF105,111が含まれる。そのような治療で使用され得るフィナステライドの一般的に使用される剤形は、例えば、1mg/日で経口フィナステライドである。例えば、Physicians’ Desk Reference,2009,63rd ed.,Montvale,NJ:Physicians’ Desk Reference Inc.2095~2099頁および2102~2106頁でのPropecia(登録商標)およびProscar(登録商標)のための項目をそれぞれ参照されたく、これらは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0221】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、例えば、フィナステライド(例えば、PropeciaもしくはProscarとして市販)、ケトコナゾール、フルコナゾール、スピロノラクトン、フルタミド、ジアゾキシド、17-α-ヒドロキシプロゲステロン、11-α-ヒドロキシプロゲステロン、ケトコナゾール、RU58841、デュタステリド(Avodartとして市販)、フルリジル、またはQLT-7704等の1つ以上の抗アンドロゲン、または抗アンドロゲンオリゴヌクレオチド、またはPoulos &
Mirmirani,2005,Expert Opin.Investig.Drugs 14:177-184(これらの内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるその他を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、1つ以上のプロスタグランジンF2α類似体、プロスタグランジン類似体、またはプロスタグランジンによる治療を含む。プロスタグランジンF2α類似体の限定されない例には、ビマトプロスト(例えば、Latisse、Lumigan)、ラタノプロスト(商標名Xalatan)、トラボプロスト(商標名Travatan)、タフルプロスト、ウノプロストン、ジノプロスト(商標名Prostin F2 Αlpha)、AS604872、BOL303259X、PF3187207、カルボプロスト(商標名Hemabate)が含まれる。本明細書に記載される方法に従って使用するための例となるプロスタグランジンF2α類似体、ならびに製剤、用量、および治療レジメンについては、例えば、米国特許第8,017,655号、第5,688,819号、第6,403,649号、第5,510,383号、第5,631,287号、第5,849,792号、第5,889,052号、第6,011,062号、第7,163,959号、第5,296,504号、第5,422,368号、第6,429,226号、および第6,946,120号を参照されたく、これらのそれぞれの全内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。また、ラタノプロストに関しては、Uno et al.,2002,Acta Derm Venereol 82:7-12を参照されたく、この内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0223】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、以下の育毛促進剤のうちの1つ以上による治療を含む:コペキシル(例えば、製品Keranique(商標))、CaCl2、ボツリヌストキシンA、アデノシン、ケトコナゾール、DoxoRx、ドセタキセル、FK506、GP11046、GP11511、LGD 1331、ICX-TRC、MTS-01、NEOSH101、HYG-102440、HYG-410、HYG-420、HYG-430、HYG-440、スピロノラクトン、CB-03-01、RK-023、アバタセプト、Viviscal(登録商標)、MorrF、ASC-J9、NP-619、AS101、Metron-F-1、PSK 3841、Targretin(例えば1%ゲル)、MedinGel、PF3187207、BOL303259X、AS604872、THG11331、PF-277343、PF-3004459、ラプティバ、カフェイン、コーヒー。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、SWITCH Biotech LLCにより開発された脱毛症のための薬物を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、以下のうちの1つ以上による治療を含むハーブ(例えば、ノコギリヤシ、ツルマメ、朝鮮人参、ヨーロッパグリ、アルニカ、セイヨウキズタ、ワイルド・ゼラニウム等)、トリアムシノロンアセトニド(例えば注射用の2.5~5mg/mlの懸濁液)、局所刺激薬(例えば、アントラリン)、または感作剤(例えば、スクアリン酸ジブチルエステル[SADBE]もしくはジフェニルシクロプロペニル[DPCP])、クロミプラミン、不飽和脂肪酸(例えばガンマリノレン酸)、脂肪酸誘導体、増粘剤(例えば、カルボマー、ジステアリン酸グリコール、セテアリルアルコール等)、脱毛コンシーラー、ナイアシン、ニコチン酸エステルおよび塩、アデノシン、ならびにメチオニン。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、ニトロキシドスピン標識(例えば、TEMPOおよびTEMPOL)による治療を含む。米国特許第5,714,482号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0225】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、頭皮の毛髪の成長を刺激するのに有用であることが示されているアンドロゲン受容体阻害剤による治療を含む(Hu LY,et
al.,2007,Bioorg Med Chem Lett.2007 17:5983-5988)。
【0226】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、好ましくは、局所に適用される銅ペプチドまたはスーパーオキシド不均化活性を有する別の化合物による治療を含む。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、一酸化窒素生成を増加させる薬剤(例えば、アルギニン、シトルリン、ニトログリセリン、亜硝酸アミル、またはシルデナフィル(Viagra))による治療を含む。好ましい実施形態では、そのような化合物は、カタラーゼもしくはカタラーゼ模倣剤、他の酸化防止剤、またはフリーラジカル捕捉剤と組み合わせてさらに投与される。
【0227】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、骨髄由来幹細胞(例えば、G-CSF等の増殖因子および/もしくはプレリキサフォル(Mozobil(登録商標))等の化学剤)を動員する化合物;ならびに/または、例えば、皮膚の標的位置において天然の毛包とは異なる特性を有する特殊化した毛包の出現をもたらし得る、性特異的に特殊化したヒト毛包へのこれらの幹細胞の分化を調節する化合物(例えば、当該技術分野で公知の、フィナステライド、フルコナゾール、スピロノラクトン、フルタミド、ジアゾキシド、11-α-ヒドロキシプロゲステロン、ケトコナゾール、RU58841、デュタステリド、フルリジル、もしくはQLT-7704等の薬剤、抗アンドロゲンオリゴヌクレオチド、チオクトール、局所プロゲステロン、局所エストロゲン、酢酸シプロテロン、ru58841、5α-レダクターゼ阻害剤の併用、経口避妊薬、およびPoulos & Mirmirani,2005,Expert Opin.Investig.Drugs 14:177-184(参照によって本明細書に組み込まれる)中のその他、あるいは任意の他の抗エストロゲン、エストロゲン、もしくはエストロゲン様薬物(単独で、または幹細胞可塑性を増加させる薬剤、例えばバルプロエート等と組み合わせて)等の薬剤を用いて)による治療を含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、加齢による毛髪の菲薄化および/または毛包細胞の老化に拮抗する1種以上の薬剤(本明細書中では「抗老化剤」とも称される)、例えば、グルタチオン、アスコルビン酸、トコフェロール、尿酸、もしくはポリフェノール抗酸化剤等の抗酸化剤;スーパーオキシドジスムターゼ阻害剤等の活性酸素種(ROS)産生の阻害剤;セレニウム等のROS分解の刺激剤;ラパマイシン等のmTOR阻害剤;あるいはレスベラトロル等のサーチュインもしくはその活性剤、または他のSIRT1、SIRT3活性剤、またはニコチンアミド阻害剤による治療を含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、免疫応答を誘発するまたは炎症を引き起こす1種以上の薬剤、例えば、破傷風トキソイド、非特異的な局所刺激薬(アントラリン)、または感光剤(スクアリン酸ジブチルエステル[SADBE]およびジフェニルシクロプロペニル[DPCP])による治療を含む。いかなる理論に束縛されることをも意図するものではないが、これらの薬剤を皮膚に接触させることによって、リンパ球および毛包幹細胞は、皮膚に動員され得ることが考えられる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、皮膚において炎症プロセスを誘導する化学的または機械的(以下に論じられるもの等)治療による治療を含む。いかなる理論に束縛されることを意図するものではないが、毛髪の成長が所望される部位における炎症の誘導は、新しい毛包の形成を促進する組織に幹細胞を動員するのに役立つ。
【0230】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、抗アポトーシス化合物による治療を含む。一実施形態では、抗アポトーシス化合物は、WntでもWnt作動薬でもない。
【0231】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、幹細胞療法、毛髪クローニング、植毛、頭皮マッサージ、植皮、毛髪プラグ(hair plug)、毛包単位抽出、または育毛を目的とする任意の外科的手技による治療を含む。
【0232】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される育毛促進剤は、その薬剤のために当該技術分野で公知の用量、または用量の範囲で使用され得る(例えば、添付文書またはPhysicians’ Desk Referenceにあるような)。他の実施形態では、育毛促進剤の通常の用量を調整して、本明細書に記載される併用療法(例えば、外皮攪乱または別の活性成分による治療)を最適化する。例えば、通常の用量は、医師により指示されるように増加させても、低減させてもよい。例えば、低用量は、本明細書に記載される別の治療との組み合わせの相乗効果のため、より短期間にわたって使用してもよい。
【0233】
ある特定の実施形態では、育毛促進剤は、その市販の形態で使用してもよい。他の実施形態では、育毛促進剤の形態を調整して、本明細書に記載される併用療法(例えば、外皮攪乱または別の活性成分による治療)を最適化する。特定の実施形態では、育毛促進剤は、市販されるものとは異なる塩形態として製剤化される。特定の実施形態では、育毛促進剤は、例えば、以下の項5.2に記載される攪乱後治療のための薬学的組成物に組み込むことによって局所投与のために製剤化される。
【0234】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、軟毛の非軟毛への変換を増強する。特定の実施形態では、育毛促進剤は、軟毛の硬毛への変換を増強する。これらの実施形態に従って使用され得る軟毛の非軟毛への変換を促進する例示的な育毛促進剤は、プロスタグランジンF2α類似体(一態様では、ラタノプロスト)、ミノキシジル等である。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、休止期の毛髪の成長期の毛髪への変換を増強する。特定の実施形態では、育毛促進剤は、休止期の毛髪の成長期の毛髪への変換を増強する。これらの実施形態に従って使用され得る休止期の毛髪の成長期の毛髪への変換を促進する例となる育毛促進剤は、プロスタグランジンF2α類似体(一態様では、ラタノプロスト)、ミノキシジル等である。
【0235】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、抗アンドロゲン(例えば5α-レダクターゼ阻害剤)およびチャネル開口剤(例えばミノキシジル)による治療を含む。このような一実施形態では、5α-レダクターゼ阻害剤は、ミノキシジルと組み合わせて投与される。このような一実施形態では、フィナステライドが、ミノキシジルと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、チャネル開口剤(例えばミノキシジル)と組み合わせたプロスタグランジンF2αまたはプロスタミド類似体(例えば、ラタノプロスト、ビマトプロスト等)による治療を含む。このような一実施形態では、プロスタグランジンF2αまたはプロスタミド類似がは、ミノキシジルと組み合わせて投与される。このような一実施形態では、ラタノプロストが、ミノキシジルと組み合わせて投与される。別のそのような実施形態では、ビマトプロストが、ミノキシジルと組み合わせて投与される。
【0236】
いくつかの実施形態では、女性対象において毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、フィナステライドもケトコナゾールも含まない。いくつかの実施形態では、妊娠女性対象において毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、フィナステライドもケトコナゾールも含まない。
【0237】
いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、ミノキシジルを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、フィナステライドを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、デュタステリドを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、フルリジルを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、スピロノラクトンを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、酢酸シプロテロンを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、ビカルタミドを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、フルタミドを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、ニルタミドを含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、アンドロゲン受容体の阻害剤を含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、アンドロゲン拮抗薬を含まない。いくつかの実施形態では、毛髪の成長を促進するために本明細書に記載される治療剤は、抗アンドロゲンを含まない。
【0238】
5.3.1 育毛促進剤の用量形態
本明細書に記載される実施形態では、育毛促進剤またはその製剤は、局所的、皮下に、静脈内に、経口等に投与され得る。育毛促進剤送達に使用される投与経路に関わらず、投与レジメンは、潜在的副作用を軽減しつつ、最大利益が達成されるように、調整されるべきである。
【0239】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤の標的濃度は、皮膚または血液中に、好ましくは、皮膚中に少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも19日間、または少なくとも21日間、ある特定の実施形態では、28日間を超えないで維持されなければならない。ある特定の実施形態では、育毛促進剤の標的濃度は、皮膚または血液中に、好ましくは皮膚中に、1ヶ月以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上、3~6ヶ月以上、または6~12ヶ月以上持続される。これは、例えば、育毛促進剤の反復使用または持続放出もしくは徐放性育毛促進剤の単独使用を利用して達成され得る。例えば、放出調節形態を使用して、より短い維持期間(即ち、少なくとも1、2、または3日間)、育毛促進剤の標的濃度を達成することができる。3日間よりも長い維持期間は、育毛促進剤治療剤の反復使用を必要とし得る。いくつかの実施形態では、育毛促進剤の濃度を用量間で減少させることができることが好ましい。
【0240】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤の局所投与が、経口または皮下投与よりも好ましい。使用した製剤に依存して、局所的に投与した育毛促進剤は、血液中よりも皮膚中でより高濃度の育毛促進剤を達成し、それによって、育毛促進剤の血中濃度の上昇に関連し得る毒性のリスクを軽減し得る。反対に、使用した製剤に依存して、皮下または経口投与した育毛促進剤が、血液から皮膚への育毛促進剤の制御放出を達成するために好ましい場合がある。
【0241】
投与経路に関わらず、毒性を避けるための注意が払われなければならない。この点において、毒性を最小限に抑えつつ、有効性を最大限にする用量が、選択されなければならない。そのような用量は、項5.3に記載されるアッセイを用いて選択され得る。患者は、標準的な臨床診療に従って中毒性副作用についてモニタリングしなければならない。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、育毛促進剤の最終投与から12または24時間後、(慣例により)採血された血中濃度(血清または血漿)に基づいて調整されなければならない。単一の試験量の投与の結果に基づいて個々の患者の必要用量を予測し、続いて、ピーク濃度時間で皮膚および/または血液試料アッセイ(血漿または血清)を行い、続いて、12時間または24時間のトラフ濃度、ならびに対照値としての役割を果たす24、48、または96時間後(育毛促進剤が、通常除去されるとき)に毒性をモニタリングするために血液試料アッセイを行うことは可能であり得る。一旦投与量が患者に設定されると、毒性の日常的モニタリングが推奨される。また、ミノキシジルスルホトランスフェラーゼのレベルを確認することによって、ミノキシジルに対してより良好に応答する者を予測することも可能であり得る(Buhl et al.,J Invest Dermatol.1990;95(5):553-557)。
【0242】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療から30分から1時間後に測定される、血清または血漿中の育毛促進剤の対象濃度が、0.1nM未満、0.1~1.0nM、1.0~10nM、10~50nM、50~100nM、100~500nM、0.5~1.0μM、1.0μM~2.0μM、2.0~2.5μM、2.5~3.0μM、または3.0μMもしくはそれ以上であるように、有効量の育毛促進剤が投与される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療から8時間、16時間、1日間、2日間、3日間、1週間、2週間、または1ヶ月後に測定される、血漿または血清中の育毛促進剤の濃度が、0.1nM未満、0.1~1nM、0.5~1.5nM、1~10nM、10~50nM、50~100nM、100~150nM、150~200nM、250~300nM、100~250nM、100~500nM、200~400nM、500~1000nM;または1000から100000nM未満であるように、有効量の育毛促進剤は投与される。一実施形態では、血漿または血清中の育毛促進剤の濃度は、少なくとも1nMに達する。別の実施形態では、ピーク血漿レベルは、決して、1μMを超えない。血清中の育毛促進剤の濃度は、当該技分野で公知の液体クロマトグラフィーおよび/または質量分析の方法を用いて測定され得る。
【0243】
いくつかの実施形態では、皮膚における育毛促進剤の標的濃度が、0.1nM~1nM、1nM~10nM、10~100nM、100~500nM、500~1000nM、1~1.5μM、1~2.5μM、1~5μM、5~10μM、10~50μM、50~100μM、100~150μM、150~200μM、250~300μM、100~250μM、100~500μM、200~400μM、500~1000μM、1~10mM、10~100mM、100~200mM、または500~1000mMであるように、ある量の育毛促進剤量が投与される。いくつかの実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、0.1nMより高い。いくつかの実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、1nMより高い。いくつかの実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、100nMより高い。いくつかの実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、500nMより高い。一実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、約10~100nMである。一実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、約100~1000nMである。一実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、約1μm~10μmである。一実施形態では、皮膚において達成される育毛促進剤の濃度は、約10~100μmである。他の実施形態では、皮膚に送達される育毛促進剤の濃度が、0.0000001mg/ml~0.000001mg/ml、0.000001mg/ml~0.00001mg/ml、0.00001mg/ml~0.0001mg/ml、0.0001mg/ml~0.001mg/ml、0.001mg/ml~0.01mg/ml、0.01mg/ml~0.1mg/ml、0.1mg/ml~1mg/ml、1mg/ml~10mg/mlであるように、ある量の育毛促進剤量が投与される。いくつかの実施形態では、角質層の送達される育毛促進剤の濃度は、0.0000001mg/ml~0.000001mg/ml、0.000001mg/ml~0.00001mg/ml、0.00001mg/ml~0.0001mg/ml、0.0001mg/ml~0.001mg/ml、0.001mg/ml~0.01mg/ml、0.01mg/ml~0.1mg/ml、0.1mg/ml~1mg/ml、1mg/ml~10mg/mlである。当業者は、当該技術分野で公知の技術、例えば、質量分析、例えば、本明細書に使用されるLC/MS/MSアッセイの誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いて皮膚における育毛促進剤の濃度を測定することができるであろう。
【0244】
他の実施形態では、育毛促進剤の濃度は、当該技術分野で公知の技術、例えば、Tsanaclis & Wicks,2007,Forensic Science Intl.176:19-22(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)を用いて、毛幹において測定される。
【0245】
5.3.1.1 局所用量形態
続く小節に記載される実施形態では、育毛促進剤は、例えば、上の項5.3に記載される、局所投与用のクリーム、軟膏、懸濁剤、または他の形態として局所的に適用され得る。育毛促進剤は、局所投与用の薬学的組成物として製剤化され得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、局所育毛促進剤は、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、局所育毛促進剤は、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、局所投与用の育毛促進剤の形態(例えば、ゲル、クリーム剤、軟膏、膏薬等)は、w/w、0.000001%、0.00001%、0.0001%の育毛促進剤、0.001%の育毛促進剤、0.01%の育毛促進剤、0.1%の育毛促進剤、0.5%の育毛促進剤、1%の育毛促進剤、および10%の育毛促進剤を含む。いくつかの実施形態では、局所投与用の育毛促進剤の形態は、w/w、0.000001%~0.00001%の育毛促進剤、0.00001%~0.0001%の育毛促進剤、0.0001%~0.001%の育毛促進剤、0.001%~0.01%の育毛促進剤、0.01%~0.1%の育毛促進剤、0.1%~1.0%の育毛促進剤、1.0%~5%の育毛促進剤、5%~10%の育毛促進剤、または10%~15%の育毛促進剤を含む。一実施形態では、局所投与用の育毛促進剤の形態は、0.00001%~1.0%w/wの育毛促進剤である。
【0247】
いくつかの実施形態では、患者体重の1kg当たり0.01mg(mg/kg)の育毛促進剤が投与されるか、または0.02mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2mg/kg、5.0mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg、または1500mg/kgが投与されるように、局所製剤が製剤化される。いくつかの実施形態では、局所製剤は、約0.01mg/kg~約0.1mg/kg、0.02mg/kg~約0.2mg/kg、0.1mg/kg~約1mg/kg、0.2mg/kg~約2mg/kg、0.01mg/kg~約2mg/kg、0.1mg/kg~約100mg/kg、約1mg/kg~約20mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、約100mg/kg~約1g/kg、約125mg/kg~約500mg/kg、または約150mg/kg~約300mg/kgの範囲内の育毛促進剤の投与量を含有する。いくつかの実施形態では、局所製剤は、約0.01mg/kg~約1mg/kgの範囲内の投与量を含有する。いくつかの実施形態では、局所製剤は、約0.02mg/kg~約2mg/kgの範囲内の投与量を含有する。
【0248】
目的とする投与量の育毛促進剤を送達するための特定の局所製剤における育毛促進剤の濃度は、育毛促進剤の放出特性、育毛促進剤の疎水性、育毛促進剤の分配係数等によって異なる。前述の濃度の育毛促進剤を用いて局所製剤を生成するための育毛促進剤の量は、当業者によって容易に推測でき、例えば、その塩形態、放出特性、その疎水性、または親水性等を含む、いくつかの要因によって異なる。
【0249】
5.3.2 考察
脱毛のための大部分の薬物は、それらの活動周期において存在する毛包を保持すること、または活動周期の成長期まで休止期の毛包を活性化することを目的とする。他の薬物は、軟毛の硬毛への移行を促す。しかしながら、それらの活発に循環する状態において毛包を保持、または軟毛の非軟毛への変換を促進、または新しい硬毛を維持、または新しい硬毛のさらなる成長を増強するものと組み合わせた、新しい毛包の成長および/または軟毛の硬毛への成長(外皮攪乱等)を促す治療は、禿げつつある個人に有意な価値を提供する。治療の併用療法は、それぞれの剤形の交互の治療、または併用治療、または同時治療を含み得る。
【0250】
本明細書に記載される育毛促進剤の治療は、新しい毛髪の成長を強化する。さらに、罹患した皮膚組織における外皮攪乱は、常在する毛包が再プログラム化され得るように、先在する毛包を刺激、活性化、または再構成することが可能である。したがって、本発明がいかに作用するかについてのいかなる理論によって束縛されることなく、1種以上の育毛促進剤と組み合わせた外皮攪乱は、所望の特性を有する毛髪の成長および毛包のための環境を提供する。
【0251】
新しい毛包は、子孫が毛包の高度に分化した特殊化した細胞に分化することができる少能性前駆細胞の、毛包幹細胞(FSC)に由来する(Amoh Y,et al.Human hair follicle pluripotent stem(hfPS)cells promote regeneration of peripheral-nerve injury:an advantageous alternative to ES and iPS cells.J Cell Biochem,2009,107:1016-1020、およびAmoh Y,et al.Nascent blood vessels in the skin arise from nestin-expressing hair-follicle cells.Proc Natl Acad Sci U S A.2004 Sep 7;101(36):13291-5.Epub 2004 Aug 26)を参照のこと)。皮膚幹細胞集団は、マウスにおける毛包について特定されている(Biernaskie J,Paris M,Morozova O,et al.SKPs derive from hair follicle precursors and exhibit properties of adult dermal stem cells.Cell Stem Cell.2009;5(6):610-623を参照のこと)。
【0252】
FSCは、(i)存在する毛包(「毛包由来の毛包幹細胞」もしくは「FDFSC」)(例えば、Toscani et al.,2009,Dermatol Surg.2009を参照、(ii)皮膚(「組織由来の毛包幹細胞」もしくは「TDFSC」)(例えば、Ito M,2007,Nature 447:316-320を参照)、(iii)骨髄(「骨髄由来の毛包幹細胞」もしくは「BMDFSC」)(例えば、Fathke et al.,2004,Stem Cells 22:812-822、およびRovo et al.,2005,Exp Hematol.33:909-911を参照)、ならびに/または(iv)含脂肪幹細胞等の間葉性幹細胞のうちの1つ以上に由来する。
【0253】
FSCは、皮膚または頭皮のそれぞれの位置を象徴する毛包のタイプを順守する新しい毛包を生成する。例えば、MPHLに罹患している男性の冠状頭皮からのFSCは、一般に、軟毛または棍毛を有する萎縮性毛包を生成する。対照的に、同じ男性の後頭部頭皮からのFSCは、一般に、DHTに応答して退行にさらされていない硬毛を有する毛包を生成する。
【0254】
しかしながら、この「デフォルト」プログラムに干渉する外部信号が提供される場合、毛包形成を司るFSCが再プログラム化され得る。非対称性分裂およびそれに続く分化のプロセスにおけるFSCは、それらの分化プログラムを変更する信号(エストロゲンまたはテストステロン等)に対して感受性がある。例えば、MPHLに罹患している男性の冠状頭皮からのFSCは、エストロゲンの影響下で、DHTに応答して退行にさらされていない硬毛を有する毛包を生成することができる。そのような毛包は、通常、(i)前頭部頭皮における脱毛症前の毛包、(ii)前頭部頭皮における女性型毛包、または(iii)後頭部頭皮型毛包に関連する特徴を有する。あるいは、エストロゲンまたはテストステロンに拮抗することによって、特定の皮膚におけるデフォルト毛髪パターンをとることが、阻止され得る。例えば、女性の望ましくない口髭は、上唇の皮膚を攪乱し、テストステロン拮抗薬を投与することによって軽減することができる。
【0255】
したがって、外皮攪乱と組み合わせた1種以上の育毛促進剤による治療は、毛包発育プログラムを変更する第3の治療剤が皮膚の特定領域において毛包の数または性質を有意に変化させるために投与され得る機会を提供する。いくつかの実施形態では、Poulos & Mirmirani,2005,Expert Opin.Investig.Drugs 14:177-184(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるもの等の第3の治療剤(例えば、エストロゲンまたはテストステロンのモジュレータ)は、外皮攪乱と同時に投与される。いくつかの実施形態では、第3の治療剤は、外皮攪乱後に投与される。いくつかの実施形態では、第3の治療剤は、外皮攪乱から1日、2日、3日、5日、7日、10日、または2週間後に投与される。一実施形態では、第3の治療剤は、外皮攪乱時に投与され、その後、5日間毎日投与される(いくつかの実施形態では、この期間中、痂皮が形成される)。いくつかの実施形態では、第3の治療剤は、痂皮が剥離し始めてから5日間毎日投与される。いくつかの実施形態では、第3の治療剤は、痂皮の表面下を形成する新表皮を調節するために投与される。いくつかのそのような実施形態では、第3の治療剤は、外皮攪乱時および痂皮が剥離してからある期間まで、例えば、外皮攪乱後の5~14日間投与される。いくつかの実施形態では、第3の治療剤による治療プロセスは、短い、例えば、痂皮剥離直後の数日間に限定されか、または痂皮がなお付着している間のみ継続される。外皮攪乱、育毛促進剤の投与、および第3の治療剤のタイミングは、最良の結果が達成されるように、モニタリングし、調節され得る。
【0256】
5.4 さらなる活性成分
いくつかの実施形態では、外皮攪乱(項5.1)および/もしくは攪乱後治療(項5.2)を含む本発明の方法ならびに/または1種以上の育毛促進剤(項5.3)を含む薬学的組成物の投与は、活性成分を含む1種以上のさらなる治療と組み合わせ得る。活性成分を含む1種以上のさらなる治療は、外皮攪乱、攪乱後治療、および/または育毛促進剤の投与のステップのうちの1つ以上の前、その間、またはその後に投与され得る。ある特定の実施形態では、活性成分は、任意に同じ製剤において、攪乱後薬学的組成物と共に投与される。ある特定の実施形態では、活性成分は、任意に同じ製剤において、育毛促進剤と共に投与される。
【0257】
これらの実施形態によれば、さらなる治療のための薬学的組成物への製剤用活性成分は、例えば、細胞療法(幹細胞等)、遺伝子治療用製剤(例えば、ウイルス、ウイルス様粒子、ビロゾーム(virosome))、抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、薬草、ビタミン(例えば、ビタミンEの一形態、例えば、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)等のビタミンA誘導体、Bビタミン類、例えば、イノシトール、パンテノール、もしくはビオチン、もしくはビタミンD3類似体等)、鉱油、精油、酸化防止剤もしくはフリーラジカル捕捉剤、アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体、シャンプー成分(例えば、カフェイン、塩化アンモニウム、アンモニウムラウリル硫酸、グリコール、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ケトコナゾール、亜鉛ピリチオン、硫酸セレニウム、コールタール、サリチル酸塩誘導体、ジメチコーン、または植物エキスもしくは油)、コンディショニング剤、石鹸製品、保湿剤、日焼け止め剤、防水剤、粉末、タルク、もしくはシリカ、油調整剤、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸(例えばサリチル酸)、ポリヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、制汗剤成分、例えば、収斂性塩(astringent salt)(例えば、亜鉛ピリチオン等の亜鉛塩、アルミニウムの無機もしくは有機塩、ジルコニウム、亜鉛、およびこれらの混合物、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロヒドラート、アルミニウムクロロヒドレクス、アルミニウムクロロヒドレクスPEG、アルミニウムクロロヒドレクスPG、アルミニウムジクロロヒドラート、アルミニウムジクロロヒドレクスPEG、アルミニウムジクロロヒドレクスPG、アルミニウムセスキクロロヒドラート、アルミニウムセスキクロロヒドレクスPEG、アルミニウムセスキクロロヒドレクスPG、硫酸アルミニウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロヒドラート、アルミニウムジルコニウムオクタクロロヒドレクスGLY(グリシンに対する略号)、アルミニウムジルコニウムペンタクロロヒドラート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロヒドレクスGLY、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドラート、アルミニウムジルコニウムトリクロロヒドラート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドラートGLY、および、アルミニウムジルコニウムトリクロロヒドラートGLY、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン(KAl(SO4)212H2O)としても知られている)、アルミニウムウンデシレノイルコラーゲンアミノ酸、乳酸アルミニウムナトリウム+硫酸ナトリウム(Na2HAl(OOCCHOHCH3)2-(OH)6)+Al2(SO4)3)、ナトリウムアルミニウムクロロヒドロキシラクタート、アルミニウムブロモヒドラート(Al2Br(OH)5nH2O)、塩化アルミニウム(AlCl36H2O)、亜鉛塩およびナトリウム塩の複合体、ランタンおよびセリウムの複合体、ならびに、リポアミノ酸(R-CO-NH-CHR’-CO-OAl-(OH)2、式中、R=C6-11およびR’=アミノ酸)のアルミニウム塩、レチノイド(例えば、レチノイン酸、レチノール、レチナール、もしくはレチニルエステル)、日焼け止め剤(例えば、パラ-アミノ安息香酸(PABA)の誘導体、シンナマートおよびサリチラート、アゾベンゾフェノン(Parsol1789(登録商標))、メトキシケイ皮酸オクチル(Parsol(商標)MCX)、および、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾフェノンとしても知られており、Benzophenone(商標)、および防腐剤として入手可能である)、抗加齢剤、皮脂産生阻害剤および/もしくは毛穴サイズを減少させる薬剤(例えば、分枝状アルコールおよび/もしくはそのアルコキシラートのカルボキシアルキラート、例えば、トリデシルカルボキシアルキラート、セルレニンおよびセルレニン類似体(この薬学的に許容される塩および溶媒和物を含む)、トリクロサンもしくはその類似体等の別の脂肪酸合成酵素阻害剤、Sigma Corporation(St.Louis,Missouri)から入手可能な緑茶から抽出したポリフェノール(EGCG)、もしくはα-メチレン-γ-ビチロラクトン)、マッサージ剤、エクスフォリアント(exfoliant)、かゆみ止め剤、抗炎症剤、免疫刺激剤(例えば、サイトカイン、様々なリガンドのアゴニストもしくはアンタゴニスト、免疫系の受容体およびシグナル変換分子、免疫刺激核酸、免疫応答を刺激するおよび/もしくは貯蔵効果をもたらすアジュバント)、細胞周期調節因子、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、酢酸ロイプロリド(LUPRON)、LH-RHアンタゴニスト)、ホルモン生合成およびプロセシングの阻害剤、ステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド、ベータメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、抗ゲスターゲン(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)、および抗アンドロゲン(例えば、酢酸シプロテロン)、抗エストロゲン、抗ヒスタミン(例えば、メピラミン、ジフェンヒドラミン、およびアンタゾリン)、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、NTHE、およびCOX-2阻害剤)、レチノイド(例えば、13-シス-レチノイン酸、アダパレン、オールトランス型レチノイン酸、およびエトレチネート)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、エベロリムス、およびピメクロリムス)、抗生剤、抗癌剤(例えば、フルオロウラシル(5-FUもしくはf5U)または他のピリミジン類似体、メトトレキサート、シクロホスファミド、ビンクリスチン)、気分安定剤(例えば、バルプロ酸もしくはカルバマゼピン) 代謝拮抗物質、抗ウイルス剤、ならびに抗微生物剤(例えば、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、樟脳メタクレゾール、樟脳フェノール、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、セトリミド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、グリセリン、イミヅレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、およびチオメルサル(チメロサール))から選択することができる。
【0258】
一実施形態では、最適な薬物は、ミノキシジル、ミノキシジル硫酸塩、または塩化物、炭酸塩、硝酸塩等の別の塩形態である。別の実施形態では、最適な薬物は、プロスタグランジン、またはプロスタグランジン類似体、プロスタグランジンプロドラッグである。別の実施形態では、この薬物は、5αレダクターゼ阻害剤である。
【0259】
いくつかの実施形態では、この薬物は、毛包中に存在する特定のリガンドに標的にされるように、製剤化されよう。別例では、この薬物は、薬物を含有する持続性薬剤として毛包内に存在する正電荷を持つナノスフェアに製剤化されよう。
【0260】
いくつかの実施形態では、さらなる治療は、p-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、フェノール、クレゾール、水銀剤、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸塩、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば塩化ベンゼトニウム)、ブチル、メチルおよびプロピルパラベン、ソルビン酸、ならびに様々な第四アンモニウム化合物のいずれかが含まれるが、これらに限定されない、1種以上の抗菌剤または防腐剤を含む。
【0261】
好適な酸化防止剤は、アスコルビン酸塩、亜硫酸水素塩、およびメタ重亜硫酸ナトリウムを含む。
【0262】
いくつかの実施形態では、さらなる治療は、1種以上の麻酔用化合物を含む。麻酔用化合物は、局所的に、攪乱の部位に直接的注射によって、または全身的に投与され得る。本明細書に記載される方法および組成物に用いる麻酔用化合物の例には、リドカイン、プリロカイン、ブピバカイン(bupivicaine)、レボブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、ジブカイン、イソフルレン、デスフルレン、セボフルレン、および亜酸化窒素が含まれる。好適な局所麻酔薬としては、塩酸プロカイン、リドカインおよびその塩、ベンゾカインよびその塩、ならびにノバカインおよびその塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0263】
いくつかの実施形態では、さらなる治療は、1種以上の鎮痛剤、例えば、非ステロイド抗炎症薬またはアセトアミノフェンを含む。いくつかの実施形態では、さらなる治療は、例えば、アルフェンタニル、ベンジルモルフィン、コデイン、コデインメチルブロミド、リン酸コデイン、硫酸コデイン、デソモルフィン、ジヒドロコレイン、ジヒドロコデイノンエノールアセタート、ジヒドロモルフィン、エチルモルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、塩酸メタドン、モルヒネ、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、ニコモルフィン、ノルメタドン、ノルモルフィン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、フェノペリジン、およびプロピラムからなる群から選択される1種以上の麻薬性鎮痛剤を含む。いくつかの実施形態では、さらなる治療は、例えば、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アセトアニリド、アセチルサリチルサリチル酸;アスピリン、カルバマゼピン、アセチルサリチル酸ジヒドロキシアルミニウム(dihydroxyaluminum acetylsalicylate)、フェノプロフェン、フルプロクアゾン、イブフェナック、インドメタシン、ケトロラック、マグネシウムアセチルサリチル酸塩、モルホリンサリチル塩、ナプロキセン、フェナセチン、フェニルサリチル酸塩、サラセタミド(salacetamide)、サリシン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、およびトルフェナム酸からなる群から選択される1種以上の非麻薬性鎮痛剤を含む。使用され得る他の疼痛治療は、例えば、Lyrica(プレガバリン)またはNeurontin(ガバペンチン)等の神経ブロックまたは非伝統的な鎮痛剤を含む。
【0264】
例えば、局所投与用鎮静製剤は、重炭酸ナトリウム(重曹)およびコールタール系の生成物を含有し得る。製剤はまた、任意に、日焼け止め剤もしくは他の皮膚保護薬、または防水加工剤を含有し得る。
【0265】
5.5 薬学的製剤および投与様式
5.5.1 製剤
上の項5.2、5.3、および5.4に記載される薬学的組成物は、薬学的に許容される担体(また、薬学的に許容される賦形剤とも称される)、即ち、薬学的に許容される材料、組成物、または液体もしくは固体充填剤、希釈剤、溶媒、封入材料等のビヒクル、または錯化剤と共に製剤化され得る。一実施形態では、合理的な利益/リスク比に対応して、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒトおよび動物の生物組織または器官に接触するとき、薬学的製剤の他の成分と化学的に適合し、生体適合性であるという意味では、それぞれの成分は、「薬学的に許容される」。Remington:The Science and Practice
of Pharmacy,2005,21st ed.,Philadelphia,PA:Lippincott Williams & Wilkins、Rowe et
al.,eds.,2005,Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th ed.,The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association、Ash & Ash eds.,2007,Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.,Gower
Publishing Company、Gibson ed.,2009,Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.,Boca Raton,FL:CRC Press LLCを参照されたく、これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0266】
好適な賦形剤は、当業者には周知であり、好適な賦形剤の限定されない例が、本明細書に提供される。特定の賦形剤が薬学的組成物または剤形に組み込むのに適しているかどうかは、投与方法が挙げられるが、これに限定されない、当該技術分野で公知の様々な要因によって異なる。例えば、クリーム剤等の局所投与用形態は、経皮または静脈内投与に用いるには適していない賦形剤を含有する場合がある。特定の賦形剤の適合性は、剤形において特定の活性成分によって異なる。本明細書に記載される育毛促進剤製剤に用いる例示的な限定されない薬学的に許容される担体は、国際特許出願公開第WO2005/120451号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に提供される美容上許容されるビヒクルである。
【0267】
本明細書に開示される薬学的組成物は、水、食塩水、生理食塩水、もしくは緩衝食塩水(例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS))、注射用塩化ナトリウム、注射用リンゲル液、注射用等張デキストロース、注射用無菌水、注射用デキストロース乳酸化リンゲル液、重炭酸ナトリウム、または注射用アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない、適切な水性ビヒクルを含むように製剤化され得る。好適な非水性ビヒクルとしては、植物由来の固定油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、およびココナツ油の中鎖トリグリセリド、ラノリン油、ラノリンアルコール、リノール酸、リノレン酸、およびヤシ種油が挙げられるが、これらに限定されない。好適な水混和性ビヒクルとしては、エタノール、羊毛アルコール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えばポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、水混和性ビヒクルはDMSOではない。
【0268】
好適な等張剤としては、塩化ナトリウム、グリセリン、およびデキストロースが挙げられるが、これらに限定されない。好適な緩衝剤としては、リン酸塩、グルタミン酸塩、およびクエン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。好適な懸濁化および分散剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な乳化剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート80、およびオレイン酸トリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な金属イオン封鎖剤またはキレート剤としては、EDTAが挙げられるが、これに限定されない。好適なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、および乳酸が挙げられるが、これらに限定されない。好適な錯化剤としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、およびスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex,Lenexa,KS)を含むシクロデキストリンが挙げられるが、これに限定されない。
【0269】
頭皮または顔面への適用のための製品は、塩基性環境が毛髪ケラチン中のジスルフィド結合を破壊することによって毛髪を衰弱させるため、その製品が、すすぎ易く、皮膚/目への刺激を最低限に抑え、存在する毛髪への損傷がなく、濃厚および/またはクリーム状の感覚があり、心地良い芳香で低毒性の良好な生分解性のある弱酸性pH(pH7未満)を有するように、さらに製剤化され得る。
【0270】
5.5.2 投与様式
本明細書に開示される薬学的組成物、例えば、項5.2に記載される攪乱後治療に使用される薬学的組成物、項5.3に記載される育毛促進剤、または項5.4に記載される薬学的薬剤は、局所(例えば、皮膚、経皮、または皮内に直接適用される)、皮下、筋肉内、静脈内、あるいは他の非経口手段による、経口投与、舌下投与、または口内投与に適している形態で製剤化され得る。例えば、本明細書に開示される方法および用途に用いる薬学的組成物は、局所(例えば、皮膚、経皮、または皮内に直接適用される)、皮下、筋肉内、静脈内、あるいは他の非経口手段によって、経口投与、舌下投与、または口内投与に適している形態で製剤化され得る。いくつかの実施形態では、局所(例えば、皮膚、経皮、または皮内に直接適用される)投与は、例えば、イオン導入装置等の機械装置を用いて達成される。本明細書に記載される薬学的組成物はまた、遅延、拡張、延長、持続、パルス状、制御、加速、迅速、標的化、プログラム化放出、および胃貯留の剤形を含む調節放出剤形としても製剤化され得る。これらの剤形は、当業者に公知の従来の方法および技術に従って調製することができる(Rathbone et al.,eds.,2008,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,上記参照、Modified-Release Drug Delivery Technology,2nd ed.,New York,NY:Marcel Dekker,Inc.を参照のこと)。本明細書に記載される薬学的組成物は、医師によって、または必要に応じて、対象によって投与することができる。いくつかの実施形態では、対象は、彼ら自身に、項5.2に記載される攪乱後治療剤および項5.3に記載される成長促進剤を投与する。
【0271】
5.5.2.1 局所投与
好ましい実施形態では、局所投与は、皮膚表面、経皮、あるいは皮内のいずれかの皮膚へのものである。局所投与は、包帯剤または他の種類の被覆材を用いて封鎖してもよいし、封鎖しなくてもよい。いくつかの実施形態では、局所投与は、開口部または粘膜へのものであるか、または結膜、角膜内、眼球内、眼、耳、鼻、膣内、尿道、呼吸器官、および直腸投与である。局所投与用に使用される製剤は、皮膚において育毛促進剤(または他の活性成分)を保持するか、または系統的に育毛促進剤の用量を送達するように設計され得る。いくつかの実施形態では、育毛促進剤の局所投与は、上の項5.1に記載される外皮攪乱技術等があるが、これに限定されない、本明細書に記載される別の治療と組み合わせられる。
【0272】
好ましくは局所であるが、可能であれば全身的な効果のための局所投与に適している剤形には、乳剤、溶液、懸濁液、クリーム剤、ゲル剤、ヒドロゲル、軟膏、散粉剤、被覆材、エリキシル剤、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、粉末、結晶、泡製剤、フィルム、エアロゾル、潅漑、噴霧剤、坐薬、スティック剤、棒、軟膏、包帯剤、創傷被覆材、微細削皮もしくは削皮用粒子、ドロップ、および経皮もしくは皮膚パッチが含まれる。局所製剤はまた、マイクロおよびナノサイズのカプセル剤、リポソーム、ミセル、マイクロスフェア、微小粒子、ナノシステム、例えば、ナノ粒子、ナノコアセルベート、およびこれらの混合物も含むことができる。例えば、2005年11月17日に公開された国際特許出願公開第WO2005/107710号および2005年3月10に公開された国際特許出願公開第WO2005/020940号を参照されたく、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態では、ナノサイズの送達マトリックスは、ポリマー中にカプセル化された育毛促進剤を生成するためのプロセス等の明確なプロセスを通して製造される。別の実施形態では、育毛促進剤は、例えば、リポソーム、ミセル中の水溶液中に自然発生的に会合される。いくつかの実施形態では、局所投与用製剤は、シャンプーもしくは他の毛髪製品、日焼け製品、または日焼け防止剤、スキンローション、または化粧品である。
【0273】
選択された製剤は、皮膚に浸透し、毛包に達する。したがって、いくつかの実施形態では、角質層および/または表皮が、本明細書に記載される外皮攪乱法(創傷または瘢痕修正、レーザー、または削皮術もしくは削皮術のあまり激しくない形態である微細削皮術によるものを含む)によって除去され、これにより露出した真皮への直接的な局所投与のための剤形の適用を可能にする。いくつかの実施形態では、局所投与用製剤は、角質層に浸透するように、脂質系である。いくつかの実施形態では、局所投与用製剤は、例えば、プロピレングリコールまたはトランスクトール(transcutol)等の皮膚浸透物質を含有する。例えば、2004年12月2日に公開された国際特許出願公開第WO2004/103353号を参照されたく、これは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。皮膚への浸透能力は、例えば、国際特許出願公開第WO2005/107710号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される方法等の当該技術分野で公知の任意の方法を用いて試験することができる。一実施形態では、軟膏型製剤は、羊毛アルコール(アセチル化ラノリンアルコール)、固形パラフィン、白色軟パラフィン、流動パラフィン、および水の成分のうちの1つ以上を含む。例えば、上記のLangtryらを参照のこと。いくつかの実施形態では、選択された製剤は、皮膚に適用されるとき、例えば、無色、無臭、すぐに吸収するよう等、目立たないものである。いくつかの実施形態では、選択された製剤は、溶液として皮膚表面上に適用され、数分間以内にヒドロゲルに架橋結合することができ、それにより、生体適合性のある被覆材を作製する。ある適用では、ヒドロゲルは生分解性であり得る。別の実施形態では、溶液は、皮膚に吸収し、薬物を放出するデポ剤に架橋結合する。別の実施形態では、育毛促進剤は、ポリマーを架橋結合するために使用され、育毛促進剤の放出がヒドロゲルの分解速度によって制御される。
【0274】
例となる一実施形態では、薬物は、例えば、0.10ミクロン~200ミクロン、または0.20ミクロン~50ミクロンの大きさからなるマイクロスフェア内にカプセル化される。別の実施形態では、薬物は、例えば、10nm~50ミクロン、または500nm~20ミクロンの大きさからなるリポソーム内にカプセル化される。
【0275】
別の実施形態では、薬物は、0.1~100nm、100~1000nm、1~10ミクロン、10~100ミクロンの大きさからなるマルチミセル凝集体等のリポソームまたは自己組織化ベシクルの形態で適用される。
【0276】
例示的な一実施形態では、薬物(または例えば攪乱後治療剤)は、32℃~37℃の温度でゲル化する冷却液体として投与される。例えば、薬物は、液体として投与され得、これは、その後、時間をかけて薬物を送達する持続性薬剤に硬化する。別の実施形態では、薬物または攪乱後治療剤は、ヒドロゲルとして投与される。特定の実施形態では、攪乱後治療剤または薬物を含有する組成物は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはエタノールを含む。
【0277】
別の実施形態では、薬物を含有する組成物は、薬物に錯化する1種以上の賦形剤を含む。特定の実施形態では、賦形剤は、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、またはアルギン酸を含む。別の実施形態では、組成物は、皮膚内に薬物を可溶化する1種以上の浸透促進剤または担体を含む。
【0278】
局所製剤に用いる薬学的に許容される担体および賦形剤としては、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の成長に対する抗菌剤または防腐剤、安定剤、可溶促進剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔薬、懸濁化剤および分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、浸透促進剤、凍結防止剤、リオプロテクタント(lyoprotectant)、増粘剤、ならびに不活性ガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0279】
局所投与用の形態はまた、軟膏、クリーム剤、およびゲル剤の形態であり得る。好適な軟膏ビヒクルには、ラード、安息香豚脂、オリーブ油、綿実油、鉱油、および他の油、白色ワセリン等の油性または炭化水素ビヒクル;親水ワセリン、ヒドロキシステアリンスルフェート、および無水ラノリン等の乳化または吸収ビヒクル;親水軟膏等の水除去性ビヒクル;異なる分子量のポリエチレングリコール等の水溶性軟膏ビヒクル;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリン、羊毛アルコール(アセチル化ラノリンアルコール)、およびステアリン酸等のエマルジョンビヒクル、油中水型(W/O)エマルジョンまたは水中油型(O/W)エマルジョン(Remington:The Science and Practice of Pharmacyを参照、上記参照)が含まれる。これらのビヒクルは、皮膚軟化剤であるが、一般に、酸化防止剤および防腐剤の添加を必要とする。
【0280】
好適なクリーム基材は、水中油または油中水型であり得る。好適なクリームビヒクルは、水洗浄可能であることができ、油相、乳化剤、および水相を含む。油相は、「内部」相とも呼ばれ、通常、セチルまたはステアリルアルコール等のワセリンおよび脂肪族アルコールから構成される。水相は、通常、容量において油相を(必ずしもそうではないが)超え、一般に、湿潤剤を含む。クリーム製剤中の乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性界面活性剤であってもよい。
【0281】
ゲルは、半固体の懸濁系である。単相ゲルは、液体担体の全体にわたって実質的に均一に分布する有機巨大分子を含む。好適なゲル化剤としては、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、およびCARBOPOL(登録商標)等の架橋アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、およびポリビニルアルコール等の親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、およびメチルセルロース等のセルロースポリマー;トラガカンタおよびキサンタンガム等のゴム;アルギン酸ナトリウム;ならびにゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。均一のゲルを調製するために、アルコールまたはグリセリン等の分散剤を加えることできるか、またはゲル化剤を粉砕、機械的混合、および/または撹拌することによって分散することができる。
【0282】
(i)機械的手段を含む局所投与の他の手段
本明細書に開示される薬学的組成物の局所投与の他の手段(例えば、上の項5.2、5.3、および5.4を参照)もまた、企図される。局所投与のこれらの方法のそれぞれは、単独で育毛促進剤を投与しても、または本明細書に記載される1種以上の他の治療剤と組み合わせて投与してもよい。
【0283】
いくつかの実施形態では、局所投与は、電流、超音波、レーザー光線、または機械的破壊、または外皮攪乱によるものである。これらには、電気穿孔法、RFアブレーション、レーザーポレーション(laserporation)、レーザーアブレーション(フラクショナルまたは非フラクショナル)、ノンアブレーションレーザーの使用、イオン導入法(iontophoresis)、音波泳動法、超音波導入法(sonophoresis)、超音波ポレーション、または皮膚剥削術(skin abrasion)を達成する装置、または局所用噴射剤もしくはPOWDERJECT(商標)(Chiron Corp.,Emeryville,CA)、BIOJECT(商標)(Bioject
Medical Technologies Inc.,Tualatin,OR)、または超音波で加速した食塩水を使用して表皮を除去するJetPeel(商標)(TavTech,Tel Aviv,Israelから市販)等の極微針もしくは無針注射が含まれる。本明細書に記載される方法に従って使用することができる局所投与手段は、当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,957,895号、第5,250,023号、第6,306,119号、第6,726,693号、および第6,764,493号、ならびに国際特許出願公開第WO2009/061349号、第WO1999/003521号、第WO1996/017648号、第WO1998/011937号に記載されており、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0284】
いくつかの実施形態では、局所投与用装置は、継続的に装着されるが、パルス様式または間欠的に育毛促進剤または他の活性成分を送達する自動注入装置である。いくつかの実施形態では、局所投与用装置は、例えば、洋服の下、毛髪中、かつら下等で、過度の不快感を持つことなく装着することができる目立たない自動注入装置である。いくつかの実施形態では、,毛包に達するが、血液循環への侵入を最小限に抑えるように、皮膚内の制御された深さで育毛促進剤または他の活性成分を送達する。
【0285】
本明細書に記載される薬学的組成物の投与のための他の方法は、例えば、「遺伝子銃」等の経皮粒子注入システムの使用を含む。そのようなシステムは、一般に、超音速に薬物または薬物粒子を加速し、角質層を介して狭い流れの薬物を「発射する(shoot)」。いくつかの実施形態では、角質層および表皮は、本明細書に記載される外皮攪乱法を用いて予め除去され、それ故に、必要とされる出口圧力および速度を、低減させることができる。この減少は、必要とされる噴射機構の複雑性を軽減する。いくつかの実施形態では、特に、全身送達を達成するために狭い噴射の流れを使用する。他の実施形態では、粒子注射システムは、皮膚の広い領域にわたって薬学的組成物を投与する。広範囲にわたる皮膚送達に適合する例となる粒子送達装置(いくつかの実施形態では、外皮攪乱と共に用いるために、薬物が投与される皮膚の表面が攪乱した領域に対応する)は、幅広い領域に送達するように設計された噴霧ノズルを有する低圧/低速の噴射機構を含む。例えば、25-cm2の領域に送達する単一の発射装置は、全領域が治療されるまで、頭皮または他の皮膚表面上に噴射されるか、または複数回使用され得る。
【0286】
別の実施形態では、エアブラシまたは小型グリットブラスターに類似する乾燥粒子を噴霧する機構は、攪乱した領域に薬物または薬物粒子を「塗る」ために使用することができる。いくつかの実施形態では、角質層および表皮は、例えば、本明細書に記載される外皮攪乱法によって既に除去され、それ故に、低下した圧力および速度の必要条件を用いた機構の効果的利用により皮膚送達を達成することができる。
【0287】
別の実施形態では、育毛促進剤(および/またはさらなる薬物)は、水性懸濁液中に存在し、標準的なエアゾールスプレー缶技術の使用が、所望の皮膚領域に育毛促進剤を送達することを可能にする。
【0288】
別の実施形態では、薬学的組成物は、2チャンバ型スプレー装置を用いて投与することができ、育毛促進剤または他の活性成分は、これらのチャンバのうちの1つに収容される液体中に分散、可溶化、または乳化される。この装置のもう一方のチャンバは、第1のチャンバ中において薬物を含有する液体と反応させることができる液体を含有し、物理的に架橋したヒドロゲルまたは共有結合しているヒドロゲルを形成する。共溶出/または共に噴霧するとき、液体は、反応させて、薬物を含有する生体接着性ヒドロゲルを形成して、所望の領域に薬学的組成物を送達することができる。一実施形態では、薬物を含有するヒドロゲルは、細胞接着および増殖を支持するさらなる特性を有する。
【0289】
別の実施形態では、薬学的組成物は、下層組織に接着性のある乾燥粉末として噴霧される。
【0290】
外皮攪乱と薬学的組成物の送達を組み合わせる装置を用いて投与様式の特定の実施形態が続く。このような装置を用いる利点は、薬学的組成物の投与のための便利な1つのステッププロセスを提供することである。
【0291】
一実施形態では、削皮術(例えば、削皮に使用することができる微細削皮装置を含む機械装置を用いる、またはアルミナ、シリカ、もしくは氷ベースの削皮術(Weberによって、米国特許第6,764,493号、第6,726,693号、および第6,306,119号に記載されるような))が、当該技術分野で容易に知られる方法を用いた薬物粒子送達特性を含むように所望に応じて製作される。装置が、皮膚でアブレーション粒子を噴射するとき、露出した真皮に同時に埋め込まれるより小さな薬物粒子も噴射され得る。代替として、内部弁制御によって、装置は、一旦適切な皮膚破壊が生じることが決定されると、薬物粒子を噴射するように切り替えられ得る。国際特許出願公開第WO2009/061349号を参照されたく、これは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0292】
別の実施形態では、標準的な削皮装置は、改変されて、本明細書に記載される装置のいずれの、例えば、噴霧/塗装装置をも組み込むことができる。一実施形態では、噴霧ノズルは、削皮輪によって曝露されるとき、薬物が真皮に噴霧されるように、この削皮輪の後方に位置する。代替として、削皮装置は、内部制御によって、一旦適切な皮膚破壊が生じたことが決定されると、この削皮輪をオフにし、薬物塗装モードに変換するために薬物噴霧のスイッチを入れ得る。例えば、上の項5.1に記載される削皮術のための削皮先端部、削皮器、および/またはキットは、これらの実施形態に従って改変され得る。
【0293】
別の実施形態では、非フラクショナルCO2またはエルビウム-YAGレーザーが、皮膚を破壊することなく、皮膚破壊を伴って、あるいは皮膚破壊後のいずれかで噴霧する薬物と組み合わせられる。
【0294】
一実施形態では、パルス色素レーザー(585~595nm)が、皮膚攪乱前もしくは皮膚を攪乱することなく、皮膚攪乱を伴って、または皮膚攪乱後のいずれかで噴霧する薬物と組み合わせられる。
【0295】
別の実施形態では、フラクショナル非アブレーションレーザー(例えば、1540~1550nmで使用されるエルビウム-YAGレーザー)が、皮膚を攪乱することなく、皮膚攪乱を伴って、または皮膚攪乱後のいずれかで噴霧する薬物と組み合わせられる。別の実施形態では、フラクショナルアブレーションレーザー(例えば、2940nmで使用されるエルビウム-YAGレーザーまたは10,600nmで使用されるCO2レーザー)が、皮膚を攪乱することなく、皮膚攪乱を伴って、または皮膚攪乱後のいずれかで噴霧する薬物と組み合わせられる。
【0296】
別の実施形態では、皮膚のフラクショナルアブレーションレーザー処置(例えば、2940nmで使用されるエルビウム-YAGレーザーまたは10,600nmで使用されるCO2レーザー)が、薬物送達と組み合わせられる。例えば、インクジェット技術を起動させることによって、フラクショナルレーザーが、レーザーが皮膚に穴を形成するとき、インクジェットのような送達部品が、薬物でその同じ穴を充填することができるように、正確な送達手段と組み合わせられ得る。当業者は、適切な統合ソフトウェアおよびソフトウェアの制御は、レーザーアブレーションおよび薬物送達が適切に調節されて、薬物で適切に充填されたそれぞれの新しく形成された穴をもたらすために必要とされることを理解されよう。別の実施形態では、皮膚のフラクショナルアブレーションレーザー処置(例えば、2940nmで使用されるエルビウム-YAGレーザーまたは10,600nmで使用されるCO2レーザー)が、薬物送達と組み合わせられる。例えば、インクジェット技術を起動させることによって、フラクショナルレーザーは、レーザーが皮膚に穴を形成するとき、インクジェットのような送達部品が、薬物でその同じ穴を充填することができるように、正確な送達手段と組み合わせられ得る。当業者は、適切な統合ソフトウェアおよびソフトウェアの制御が、レーザー処置および薬物送達が適切に調節されて、薬物で適切に充填されたそれぞれの新しく形成された穴をもたらすために必要とされることを理解されよう。
【0297】
いくつかの実施形態では、局所投与は、薬物を含有する粒子の投与を含む。これらの粒子は、本明細書に記載される手段のいずれかと組み合わせて皮膚に送達され得る。一実施形態では、異なる放出特性を有する粒子が、薬物の制御された送達を達成するために同時に送達される。
【0298】
別の実施形態では、局所投与は、極微針技術の使用によって作製される経路を通して送達される育毛促進剤を含有する製剤の投与を含む。製剤は、例えば、液体、ゲル、または乾燥スプレーであり得る。別の変形では、局所投与は、中空針を通して育毛促進剤を含有する製剤の送達によるものであり得る。
【0299】
別の実施形態では、局所投与は、イオン導入法のパッチにより皮膚に送達される薬物を含有する製剤の投与を含む。この実施形態の一例では、薬物を含有する製剤が組み込まれるパッチが、開発され得る。
【0300】
別の実施形態では、局所投与は、極微針に成形した生分解性ポリマーに組み込まれる薬物を含有する製剤の投与を含む。このような一実施形態では、生分解性極微針は、標的とする皮膚組織を穿孔し、時間をかけて持続様式で薬物を送達するように、任意に適切な場所に残される。
【0301】
皮膚部位に治療用化合物を送達するために使用することができる装置の一例を、
図17A~21Eに示す。装置または薬物噴霧器2は、制御装置または発生機4、足踏みスイッチ6、ハンドピース8、および電力モジュール10を含む。
【0302】
制御装置4は、足踏みスイッチ6と、ハンドピース8と、電力モジュール10との間のインターフェースである。それは、接続の中心点としての役割を果たし、システムの電源をオン/オフにする、ハンドピース8に/ハンドピース8から薬物カートリッジを読み込む/取り出す、および薬物送達速度を選択する手段をユーザに提供する。この機能の全てを制御するために、制御装置4は、組み込まれたソフトウェアによってハンドピース8の操作を制御する少なくとも1つの回路基板を含む。
【0303】
図18で見ることができるように、制御装置4は、ハンドピース接続ポート14、読み込み/取り出しボタン16、薬物送達または噴霧速度を制御するための手段18、薬物送達速度を表示するための手段20、オン/オフスイッチ22、およびハンドル24を含む筺体12を備える。
図18で示される実施形態では、薬物送達速度を制御するための手段18は、一組の上/下ボタンを含み、薬物送達速度を表示するための手段20は、薬物送達速度を示すために点火する8つの異なるLED(発光ダイオード)を備える。読み込み/取り出しボタン16、上/下ボタン18、およびオン/オフスイッチ22のために使用することができる材料の例としては、シリコーンゴム、プラスチック、および金属等のエラストマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。筺体12は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン等の射出成形された熱可塑性プラスチック材料から作製することができる。
【0304】
図19Aおよび19Bは、薬物噴霧器のハンドピース8の一実施形態を示す。ハンドピース8は、筺体26、駆動モーター28、自在継手30、および少なくとも1つのプランジャー32を備える。使い捨てまたは再利用可能であり得る薬物カートリッジ34が、ハンドピース8の末端に取り付けられる。ハンドピースの筺体26は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン等の射出成形された熱可塑性プラスチック材料から作製することができる。他の材料を使用して、ハンドピースの筺体26を構築し得ることを当業者には容易に理解されよう。
【0305】
いくつかの治療用化合物は、それらの成分を混合した後すぐに不安定になり得るか、またはそれらが冷蔵保存されない限り、短い保存期間を有し得るものもある。したがって、これらの化合物の安定性を維持し、保存期間を増加させるために、化合物を一緒に混合して、例えば、ゲル、制御放出、薬物送達マトリックスを形成する際に化合物を投与する準備ができるまで、化合物の成分は、互いに別々にされる。米国特許第4,381,778号、米国特許第4,689,042号、米国特許第5,122,117号、米国特許第5,423,752号(それぞれの全体の内容はここに参照によって明示的に組み込まれる)に記載されるもの等の先行技術の装置は、別々に薬物成分を保管し、次いで、分注される前に成分を混合するように開発されている。
【0306】
図20A~21Eは、治療用化合物が分注されるまで、薬物成分を別々にしておく2つの別々のチャンバを有する薬物カートリッジの実施形態を示す。
図20A~20Dは、2つの液体成分を含む薬物カートリッジ40およびそれの関連したハンドピース42を示す。薬物カートリッジ40は、前端部46と、後端部48と、ノズル50と、混合チャンバ54およびその後端部48から延在し、混合チャンバ54と流体連通している2つの穿孔要素56を有する静的ミキサー52と、2つの液体成分チャンバ58、60と、第1の成分チャンバ58中に保存される第1の液体成分62と、第2の成分チャンバ60中に保存される第2の液体成分64と、そのそれぞれの成分チャンバ58、60内にそれぞれの液体成分62、64を後方に閉じ込めるようにそれぞれの成分チャンバ58、60の後端部48に挿入されるピストン66と、を有する筺体44を含む。ピストン66は、それらのそれぞれの成分チャンバ58、60の内壁と気密シールを形成する。それぞれのチャンバ58、60の前端部を密封するために、穿孔可能なシール68が含まれる。したがって、薬物カートリッジ40をハンドピース42に取り付けるとき、穿孔要素56は、第1および第2の成分チャンバ58、60の穿孔可能なシール68を穿孔し、それによって、静的ミキサー52と第1および第2の成分チャンバ58、60との間で流体接続を形成する。2つの液体成分62、64の混合を促進するために、混合チャンバ54は、その中に混合要素70を含む。例えば、これらの混合要素70は、混合チャンバ54の内壁に形成される経路またはチャネルであり得るか、または液体成分62、64が混合チャンバ54を通って移動するとき、旋回させて、乱流流動を得、それによって液体成分62、64を一緒に混合する混合翼であり得る。
【0307】
薬物噴霧器2を用いて2つの液体成分の薬物カートリッジ40を使用するために、
図20B~20Dで見ることができるように、ユーザは、薬物カートリッジ40をハンドピース42の前端部72に挿入する。挿入するとき、薬物カートリッジ40上の戻り止め74がハンドピース42上の戻り止め76に係合し、薬物カートリッジ40およびハンドピース42を一緒に係合する。
図20Cおよび20Dに示されるように、薬物カートリッジ40がハンドピース42に完全に挿入されるとき、それぞれのプランジャー80の接続部分78が、ピストン66中の対応する空洞82に係合し、2つの間の圧入接続を形成する。したがって、プランジャー80が移動するとき、ピストン66は、対応する様式で移動する。
【0308】
ユーザが治療用化合物を分注することを望むとき、ユーザは、制御装置4によってハンドピース42を起動させる。同様に、ハンドピース42の起動によって、駆動モーター28に動力を与え、駆動モーターは自在継ぎ手を介して作動して(
図19Aおよび19Bを参照)、薬物カートリッジ40の前端部46に向かってプランジャー80を移動させるか、または駆動する。したがって、
図20Dで見ることができるように、プランジャー80が矢印83によって示される方向に移動するとき、ピストン66は、対応する様式で成分チャンバ58、60に移動し、それぞれの別々の液体成分62、64を、穿孔要素56を通って混合チャンバ54に押し進める。液体成分62、64が混合チャンバ54を通って移動するとき、その中に形成された乱流が、液体成分62、64を互いに混合させる。次いで、新しく混合した成分は、混合した治療用化合物81としてノズル50から出る。
【0309】
別の実施形態では、薬物噴霧器2は、液体成分86および固体成分88を含有する薬物カートリッジ84と共に使用することができる。
図21A~21Eに示されるように、薬物カートリッジ84は、前端部92と、後端部94と、下方チャンバ96と、ノズル98と、液体成分86を収容する液体成分チャンバ100と、固体成分88を収容する固体成分チャンバ102と、その内に液体成分86を後方に閉じ込めるように液体成分チャンバ100の後端部に挿入される第1のピストン104と、その内に固体成分88を後方に閉じ込めるように固体成分チャンバ102の後端部に挿入される第2のピストン106とを有する筺体90を含む。第1および第2のピストン104、106は、液体および固体成分チャンバ100、102の内壁と気密シールを形成する。
【0310】
液体成分チャンバ100の前端部92は、液体成分86を閉じ込める第1の一方通行または逆止弁108を含む。固体成分チャンバ102の前端部92は、逆止弁を含まない。その代わりに、第2の逆止弁110が、下方チャンバ96の後端部で含まれる。本薬物カートリッジ84で使用され得るこのような一方通行弁の一例は、ダックビル型バルブ(duck bill valve)である。第1および第2の逆止弁108、110のこの構成は、液体成分86および固体成分88を互いに別々に保存することができ、また、液体および固体成分チャンバ100、102の前端部を封じ込めて、第1および第2のピストン104、106ならびに第1および第2の逆止弁108、110を形成する。
【0311】
薬物噴霧器2とともに液体成分86および固体成分88を含有する薬物カートリッジ84を使用するために、
図21A~21Eで見ることができるように、ユーザは、薬物カートリッジ84をハンドピース114の前端部112に挿入する。挿入するとき、薬物カートリッジ84上の戻り止め116がハンドピース114上の戻り止め118に係合し、それによって薬物カートリッジ84およびハンドピース114を一緒に係合する。上に論じられる液体-液体薬物カートリッジ40と対照的に、液体-固体薬物カートリッジ84と共に用いるハンドピース114は、固体成分チャンバ102に挿入される単一プランジャー120を含む。
図21B~21Eで見ることができるように、薬物カートリッジ84がハンドピース114に完全に挿入されるとき、プランジャー120の接続部分122を、第2のピストン106中の対応する空洞124に係合し、2つの間の圧入接続を形成する。したがって、プランジャー120が移動するとき、第2のピストン106は、対応する様式で移動する。
【0312】
ユーザが治療用化合物を分注することを望むとき、このユーザは、制御装置4によってハンドピース114を起動させる。ハンドピース114の起動により、次いで、駆動モーター28に動力を与え、駆動モーターは、自在継ぎ手30を介して作動し(
図19Aおよび19Bを参照)、プランジャー120を移動させる。初めに、プランジャー120は
図21D中の矢印126によって示される方向に引っ込められ、対応する様式で第2のピストン106を移動させる。第1および第2のピストン104、106ならびに第1および第2の逆止弁108、110によって形成される気密シールのため、
図21Dで見ることができるように、第2のピストン106が引っ込むとき、陰圧または吸引が固体成分チャンバ102において形成される。この陰圧または吸引は、第1のピストン104を矢印128の方向に移動させ、液体成分86を、第1の逆止弁108を通って液体成分チャンバ102に押し進める。液体成分86が固体成分チャンバ102に入るとき、乱流流動が形成され、これは液体および固体成分86、88を一緒に混合する働きをする。閉塞したシステム内の陰圧は、第2の逆止弁110を閉塞した状態に保つ役割を果たす。
【0313】
液体および固体成分86、88が固体成分のチャンバ102内で一緒に混合された後、ユーザは、
図21E中の矢印130によって示されるように、プランジャー120の移動する方向を逆転させることによって混合した薬物を分注することができる。これは、第2の逆止弁110を通って下方チャンバ96に混合した治療用化合物132を押し出し、ノズル98を介して出す。第1の逆止弁108の前端部に作用する圧力が、第1の逆止弁108を押し出し、分注操作中、閉塞した状態を維持する。
【0314】
固体成分88に添加される液体成分86の量、つまり、混合した薬物の濃度が、プランジャー120の移動する方向を逆転させる前にプランジャー120が分注される距離を調節することができることは、当業者には容易に理解されよう。したがって、例えば、プランジャー120がさらに後方に引っ込められると、さらに体成分86が固体成分チャンバ102に入り、したがって、治療用化合物がさらに希釈される。
【0315】
ある特定の実施形態では、第1の液体成分62は、育毛促進剤塩を含むある溶液であり、第2の液体成分64は、室温(20~25℃)およびそれを下回る温度ではある溶液であるが、32~37℃の生理的温度ではゲルとなる水溶性ポリマーを含むポリマー溶液である。育毛促進剤溶液中の育毛促進剤の濃度は、最終濃度の濃度の少なくとも1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3倍、4倍、または少なくとも5倍であり得る。育毛促進剤溶液は、水性溶液であり得る。
【0316】
ある特定の実施形態では、液体成分86は、室温(20~25℃)およびそれより下回る温度では溶液であるが、32~37℃の生理的温度ではゲルとなる水溶性ポリマーを含むポリマー溶液であり、固体成分88は、本明細書(例えば項5.1を参照)に記載される育毛促進剤を含む。
【0317】
ある特定の実施形態では、薬物噴霧装置、薬物カートリッジのいずれか、またはその両方は、使い捨て装置として製造され得る。ある特定の実施形態では、薬物噴霧装置は、電池式になるように変更することができる。
【0318】
当業者には明らかであるように、本装置の成分を改変して、分注前に一緒に混合する必要がある2種を超える成分を含む治療用化合物を分注することができる。
【0319】
ある特定の実施形態では、治療用化合物を噴霧するための装置は、
(A)制御装置と、
(B)フットピースと、
(C)電力モジュールと、
(D)ハンドピースであって、
(i)筺体と、
(ii)第1の接続部分を有する第1のプランジャーと、
(iii)第2の接続部分を有する第2のプランジャーと、を備える、ハンドピースと、
(E)薬物カートリッジであって、
(i)筺体と、
(ii)第1の液体成分を収容する第1のチャンバであって、第1の液体成分が端部に形成される第1の空洞を有する第1のピストンによって後方に閉じ込められる、第1のチャンバと、
(iii)第2の液体成分を収容する第2のチャンバであって、第2の液体成分が端部に形成される第2の空洞を有する第2のピストンによって後方に閉じ込められる、第2のチャンバと、
(iv)静的ミキサーと、
(v)ノズルと、を備える、薬物カートリッジと、を備え、
(F)第1の接続部分は、第1のプランジャーの移動が、第1のチャンバ内の第1のピストンを対応する様式で移動させるように、第1の空洞に係合し、
(G)第2の接続部分は、第2のプランジャーの移動が、第2のチャンバ内の第2のピストンを対応する様式で移動させるように、第2の空洞に係合する。
【0320】
ある特定の実施形態では、治療用化合物を噴霧するための装置は、
(A)制御装置と、
(B)フットピースと、
(C)電力モジュールと、
(D)筺体と、接続部分を有するプランジャーと、を含む、ハンドピースと、
(E)薬物カートリッジであって、
(i)前端部および後端部を有する薬物カートリッジ筺体と、
(ii)液体成分を収容する第1のチャンバであって、この液体成分は、第1のピストンによって第1の端部および第1の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第1のチャンバと、
(iii)固体成分を収容する第2のチャンバであって、この固体成分は、その端部に形成される空洞を有する第2のピストンによって第1の端部ならびに第1の一方通行弁および第2の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第2のチャンバと、
(iv)底部チャンバと、
(v)ノズルと、を備える、薬物カートリッジと、を備え、
(F)この接続部分は、プランジャーの移動が第2のチャンバ内の第2のピストンを対応する様式で移動させるように、第2のピストン内の空洞に係合し、
(G)薬物カートリッジ筺体の前端部から離れたピストンの移動が、第2のチャンバ内に陰圧を形成し、
(H)第2のチャンバ内に形成された陰圧は、第1の一方通行弁を通じて液体成分を第2のチャンバに引き込む。
【0321】
ある特定の実施形態では、治療用化合物を噴霧するための装置に用いる薬物カートリッジは、
(A)前端部および後端部を有する筺体と、
(B)液体成分を収容する第1のチャンバであって、この液体成分は、第1のピストンによって第1の端部および第1の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第1のチャンバと、
(C)固体成分を収容する第2のチャンバであって、この固体成分は、その端部に形成される空洞を有する第2のピストンによって第1の端部ならびに第1の一方通行弁および第2の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第2のチャンバと、
(D)底部チャンバと、
(E)ノズルと、を備え、
(F)筺体の前端部から離れた第2のピストンの移動が、第2のチャンバ内に陰圧を形成し、
(G)第2のチャンバ内に形成された陰圧は、第1の一方通行弁を通じて液体成分を第2のチャンバに引き込む。
(ii)架橋マイクロスフェアの送達
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、高度に疎水性の閉塞マトリックスを使用せずに、薬物、例えば、育毛促進剤または他の活性成分等の持続放出を可能にする。特に、この薬物噴霧装置は、マイクロスフェア(例えばPLGマイクロスフェア)中の薬物の送達を可能し、マイクロスフェアが長期間創傷部位でとどまり、食作用によって迅速に除去されないようになる。長期間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または少なくとも20日であり得る。
【0322】
理論に束縛されることなく、薬物噴霧装置は、組織への薬物を含有するマイクロスフェアの投与を可能にし、マイクロスフェアが組織表面で分子結合を形成する原位置で架橋結合するヒドロゲルによって創傷表面に隔離されるようになる。原位置で架橋結合するヒドロゲルは、軟膏またはクリーム剤のように「こすり(rubbed)」落とすことができない。マイクロスフェアは、持続様式で薬物を放出するヒドロゲル中に隔離されよう。したがって、マイクロスフェアの食作用の問題を克服する。
【0323】
ある特定の実施形態では、架橋マイクロスフェアを送達するために、固体成分88は、ポリマーマクロモノマー(ポリマー1)(別の成分とさらに架橋結合することができるポリマー)と、育毛促進剤を含有するマイクロスフェアと、を含む。液体成分86は、ポリマー1と反応させることが可能な別のポリマーマクロモノマー(ポリマー2)を含む。ポリマー2は、加水分解的に不安定な結合を含まず、水中で安定している。
【0324】
創傷部位に架橋マイクロスフェアを送達するために、本発明に開示された薬物噴霧装置の使用の例示説明となる実施形態を、以下の実施例に記載している。
【0325】
(iii)架橋した生分解可能な足場の送達
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、薬物、例えば、育毛促進剤または他の活性成分等の持続放出、および痂皮を通じて皮膚による取り込みを可能にする。特に、薬物噴霧装置は、送達系が痂皮に組み込まれるように、育毛促進剤の送達を可能にする。これは、新鮮な創傷上に薄いガーセのような柔軟な生分解性足場を含む育毛促進剤を設置することによって達成され得る。足場の材料特性は、そのようなガーゼが創傷からの血液および他の浸出液を吸収することができるように調節される。ある種のさらに特定の実施形態では、生分解性足場は、血液、フィブリン、およびフィブリノゲンを吸収するための高含量の空間を有する。理論に束縛されることなく、その形成中のフィブリン塊への足場の組み込みは、それを凝固した後、痂皮とも呼ばれる、繊維網へのその組み込みをもたらす。創傷への薬物を含有する生分解性足場の設置後、原位置で架橋結合するヒドロゲルは、創傷被覆材として全部位を覆うように上部に適用され得る。
【0326】
ある特定の実施形態では、固体成分88は、ポリマーマクロモノマー(ポリマー1)(別の成分とさらに架橋結合することができるポリマー)を含み、液体成分86は、ポリマー1と反応させることができる別のポリマーマクロモノマー(ポリマー2)を含む。ポリマー2は、加水分解的に不安定な結合を含まず、水中で安定している。これらの2つの成分の混合により、創傷に適用される架橋ヒドロゲルを得る。架橋ヒドロゲルは、育毛促進剤を含む生分解性足場と共に適用される。生分解性足場は、PLGポリマーのブレンドである柔軟なガーゼのような材料の形態であり得る。他のポリマーは、生分解性、柔軟性等の特性を得るために、主成分(PLG)に添加され得る。特定の実施形態では、育毛促進剤は、生分解性足場に組み込まれ得る。ある特定の実施形態では、架橋ヒドロゲルは、足場が適用される前に創傷に適用され、架橋ヒドロゲルは、足場が適用されると同時に創傷に適用され、架橋ヒドロゲルは、足場が適用された後に創傷に適用される。
【0327】
ある特定の実施形態では、生分解性足場は、細胞がそれ自体に接着し、分化し、増殖することが可能である「開細胞(open-cell)」構造体を有する。足場は、細胞接着を促すように組み込まれるRGDペプチド等の他の成分を有し得る。足場は、それを「適当な位置に」維持する生体接着特性を有し得る。
【0328】
創傷部位に架橋した生分解性足場を送達するために、本発明に開示された薬物噴霧装置の使用の例示的な実施形態を、以下の実施例に記載している。
【0329】
(iv)混合薬の送達
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、異なる溶解特性および/または物理的/化学的な不適合性(例えば、異なる賦形剤の必要条件;互いに2つ以上の薬物との結合および/または反応等)を有する2つ以上の薬物の同時送達を可能にする。
【0330】
ある特定の実施形態では、第1の液体成分62は、第1の製剤化した薬物であり、第2の液体成分64は、第2の製剤化した薬物である。ある特定の他の実施形態では、本発明に開示される薬物噴霧装置は、それぞれの薬物を別々に噴霧するために係合され得る。例えば、アルコール溶液(±薬物)を使用して、第1に、徹底的に洗浄し、続いて、本明細書に開示される育毛促進剤製剤を噴霧することによって創傷を「調製」することができる。なお他の実施形態では、両方のチャンバは、同じ薬物を含有するが、異なる形態で、別に製剤化して、異なる放出プロファイルを達成し得る。例えば、第1の液体成分62は、FDA認可された液体賦形剤中に懸濁され微粒化した育毛促進剤を含有し得、第2の液体成分64は、噴霧可能な水性ゲル中に溶解した育毛促進剤であり得る。同時に噴霧する育毛促進剤の両方の形態は、即座に生物学的に利用可能な育毛促進剤および微粒化した育毛促進剤が溶解する場合に利用される持続型育毛促進剤を提供する。
【0331】
創傷部位に架橋した生分解性足場を送達するために、本発明に開示された薬物噴霧装置の使用の例示的な実施形態を、以下の実施例に記載している。
【0332】
(v)洗浄および薬物送達
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、1つの単一装置を用いて洗浄および1種以上の薬物の投与を可能にする。これらの実施形態では、それぞれのチャンバの内容物は、別々に噴霧され得る。一旦チャンバが洗浄溶液を含有し得ると、他のチャンバ内の液体は、育毛促進剤を含有する。当業者に公知のいかなる創傷洗浄溶液は、これらの実施形態と共に使用することができる。
【0333】
創傷部位に架橋した生分解性足場足場を送達するために、本発明に開示された薬物噴霧装置の使用の例示的な実施形態を、以下の実施例に記載している。
【0334】
上述の薬物送達装置が、架橋マイクロスフェア、架橋した生分解性足場、混合薬の送達、および上述の洗浄溶液による薬物送達には好ましい場合があるが、一方、創傷または非創傷の皮膚へのそれらの送達は、本明細書に記載されるまたは当該技術分野で公知の任意の方法または装置を用いて達成され得ることは当業者には明白であろう。
【0335】
(vi) 具体例
一実施形態では、治療用化合物を噴霧するための装置が本明細書に提供され、
(A)制御装置と、
(B)フットピースと、
(C)電力モジュールと、
(D)ハンドピースであって、
(i)筺体と、
(ii)第1の接続部分を有する第1のプランジャーと、
(iii)第2の接続部分を有する第2のプランジャーと、を備える、ハンドピースと、
(E)薬物カートリッジであって、
(i)筺体と、
(ii)第1の液体成分を収容する第1のチャンバであって、第1の液体成分がその端部に形成される第1の空洞を有する第1のピストンによって後方に閉じ込められる、第1のチャンバと、
(iii)第2の液体成分を収容する第2のチャンバであって、第2の液体成分がその端部に形成される第2の空洞を有する第2のピストンによって後方に閉じ込められる、第2のチャンバと、
(iv)静的ミキサーと、
(v)ノズルと、を備える、薬物カートリッジと、を備え、
(F)第1の接続部分が、第1のプランジャーの移動が、第1のチャンバ内の第1のピストンを対応する様式で移動させるように、第1の空洞に係合し、
(G)第2の接続部分は、第2のプランジャーの移動が、第2のチャンバ内の第2のピストンを移動させるように対応する様式で第2の空洞に係合する。
【0336】
別の実施形態では、治療用化合物を噴霧するための装置は、
(A)制御装置と、
(B)フットピースと、
(C)電力モジュールと、
(D)筺体と、接続部分を有するプランジャーと、を含む、ハンドピースと、
(E)薬物カートリッジであって、
(i)前端部および後端部を有する薬物カートリッジ筺体と、
(ii)液体成分を収容する第1のチャンバであって、この液体成分は、第1のピストンによって第1の端部および第1の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第1のチャンバと、
(iii)固体成分を収容する第2のチャンバであって、この固体成分は、その端部に形成される空洞を有する第2のピストンによって第1の端部ならびに第1の一方通行弁および第2の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第2のチャンバと、
(iv)底部チャンバと、
(v)ノズルと、を備える、薬物カートリッジと、を備え、
(F)この接続部分は、プランジャーの移動が、第2のチャンバ内の第2のピストンを対応する様式で移動させるように、第2のピストン内の空洞に係合し、
(G)薬物カートリッジ筺体の前端部から離れたピストンの移動が、第2のチャンバ内に陰圧を形成し、
(H)第2のチャンバ内に形成された陰圧は、第1の一方通行弁を通じて液体成分を第2のチャンバに引き込む。
【0337】
ある特定の実施形態では、治療用化合物を噴霧するための装置に用いる薬物カートリッジは、
(A)前端部および後端部を有する筺体と、
(B)液体成分を収容する第1のチャンバであって、この液体成分は、第1のピストンによって第1の端部および第1の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第1のチャンバと、
(C)固体成分を収容する第2のチャンバであって、この固体成分は、その端部に形成される空洞を有する第2のピストンによって第1の端部ならびに第1の一方通行弁および第2の一方通行弁によって第2の端部で閉じ込められる、第2のチャンバと、
(D)底部チャンバと、
(E)ノズルと、を備え、
(F)筺体の前端部から離れた第2のピストンの移動が、第2のチャンバ内に陰圧を形成し、
(G)第2のチャンバ内に形成された陰圧は、第1の一方通行弁を通じて液体成分を第2のチャンバに引き込む。
【0338】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、高度に疎水性の閉塞マトリックスを使用せずに、育毛促進剤の持続放出を可能にする。特に、この薬物噴霧装置は、マイクロスフェア(例えばPLGマイクロスフェア)中の育毛促進剤の送達を可能にし、マイクロスフェアが長期間創傷部位でとどまり、食作用によって迅速に除去されないようになる。長期間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または少なくとも20日であり得る。
【0339】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、育毛促進剤の持続放出および痂皮を通じて皮膚による取り込みを可能にする。特に、薬物噴霧装置は、送達系が痂皮に組み込まれるように、育毛促進剤の送達を可能にする。これは、新鮮な創傷上に薄いガーセのような柔軟な生分解性足場を含む育毛促進剤を設置することによって達成され得る。足場の材料特性は、そのようなガーゼが創傷からの血液および他の浸出液を吸収することができるように調節される。ある特定のさらに具体的な実施形態では、生分解性足場は、血液、フィブリン、およびフィブリノゲンを吸収するための高含量の空間を有する。いくつかの実施形態では、創傷への薬物を含有する生分解性足場の設置後、原位置で架橋結合するヒドロゲルは、創傷被覆材として全部位を覆うように上部に適用され得る。
【0340】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、異なる溶解特性および/または物理的/化学的な不適合性(例えば、異なる賦形剤の必要条件;互いに2つ以上の薬物との結合および/または反応等)を有する2つ以上の薬物の同時送達を可能にする。
【0341】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬物噴霧装置は、1つの単一装置を用いて洗浄および1種以上の薬物の投与を可能にする。これらの実施形態では、それぞれのチャンバの内容物は、別々に噴霧され得る。一旦チャンバが洗浄溶液を含有し得ると、他のチャンバ内の液体は、育毛促進剤を含有する。当業者に公知のいかなる創傷洗浄溶液は、これらの実施形態と共に使用することができる。
【0342】
5.5.2.2 非経口投与
例えば、上の項5.2、5.3、および5.4における本明細書に記載される薬学的組成物の投与は、局所的または全身投与のために注射、注入、または移植によって非経口的に投与することができる。本明細書で使用される非経口投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、心室内、尿管内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内、膀胱内、および皮下投与を含む。非経口投与用組成物は、非経口投与に適している任意の剤形に製剤化することができ、注射前に液体中の溶液または懸濁液に適している、溶液、懸濁液、乳液、ミセル、リポソーム、マイクロスフェア、ナノシステム、および固体の形態を含む。そのような剤形は、医薬科学の当業者に公知の従来の方法に従って調製することができる(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、上記参照のこと)。非経口投与用組成物は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の成長に対する抗菌剤または防腐剤、安定剤、可溶促進剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔薬、懸濁化剤および分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、凍結防止剤、リオプロテクタント(lyoprotectant)、増粘剤、pH調整剤、ならびに不活性ガスが挙げられるが、これらに限定されない、1種以上の薬学的に許容される担体および賦形剤を含むことができる。全てのそのような組成物は、当該技術分野で公知のように滅菌されなければならない。非経口投与用組成物は、埋込みデポ(implanted depot)としての投与のために、懸濁液、固体、半固体、またはチキソトロピー液体として製剤化することができる。一実施形態では、組成物は、固体内側マトリックスに分散し、体液に不溶性である外側の高分子膜によって囲まれるが、薬学的組成物の有効成分が拡散できる。好適な内側マトリックスとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸ブチル、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタラート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えば、アクリルおよびメタアクリル酸のエステルのヒドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、ならびに架橋された部分的加水分解化ポリビニルアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。好適な外側の高分子膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルとの塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン、イオノマー ポリエチレンテレフタラート、ブチルゴム エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、ならびにエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0343】
5.5.2.3 経口投与
例えば、項5.2に記載される攪乱後治療剤に用いるか、または育毛促進剤(項5.3)および/または本明細書に開示される他の活性成分(項5.4)を含む、本明細書に記載される薬学的組成物は、経口投与のために、経口投与のための固体、半固体、または液体剤形で提供することができる。本明細書に使用される、経口投与はまた、頬、舌、および舌下投与を含む。好適な経口剤形は、錠剤、ファストメルト(fastmelt)、咀嚼錠、カプセル、ピル、ストリップ剤、トローチ、ロゼンジ、パステル、カシェ剤、ペレット、医薬用チューインガム、原料粉末、発泡性もしくは非発泡性粉末または顆粒、口腔ミスト剤、溶液、乳液、懸濁液、ウェーハ、粉砂糖、エリキシル、およびシロップが挙げられるが、これらに限定されない。1種または複数の活性成分に加えて、薬学的組成物は、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、色素移動阻害剤、甘味剤、香料、乳化剤、懸濁化剤および分散剤、保存剤、溶媒、非水性液体、有機酸、および二酸化炭素の源が挙げられるが、これらに限定されない、1種以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を含むことができる。経口投与用組成物はまた、リポソーム、ミセル、マイクロスフェア、またはナノシステムの形態で提供することもできる。ミセル剤形は、米国特許第6,350,458号に記載されるように調製することができる。
【0344】
5.5.3 エクスビボ送達
本明細書に記載される薬学的組成物はまた、エクスビボで皮膚由来細胞または皮膚組織に投与され得る。例えば、育毛促進剤治療を使用して、新しい創傷へのそれらの移植および瘢痕修正のための培地中の解離された毛包細胞の毛包およびそれらの成長および拡張への再結合を促進させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療によって促進された毛包を、外皮攪乱前、その時に、および/またはその後に、皮膚の領域に添加する。これらの方法を用いて、ヒト皮膚移植等の瘢痕修正への伝統的なアプローチを、毛包単位または皮膚からの他のより小さな付属構造体の移植と効率良く置き換えることができる。したがって、毛包は、移動、再構成、刺激、もしくは活性化、もしくは新毛包新生によって、あるいは以下の皮膚要素:全皮膚(異種-;自家移植ヒト)、毛包単位、解離細胞(ドナー優性;受容効果)、エクスビボで拡張した皮膚および/もしくは毛包単位、またはインビボでヒト皮膚同等物(万能ドナー)のうちの1つ以上を移植することによって、創傷に導入することができる。操作されたヒト皮膚または皮膚同等物はまた、毛包の形成および活性化ならびに瘢痕修正プラットフォームのために使用することもできる。
【0345】
ヒト皮膚同等物を、インビトロで成長させ、アセンブルすることができ、理論的には、いかなる大きさ/形状に成長させることができ、ケラチン生成細胞(毛包由来および非毛包由来)、真皮細胞(毛包由来および非毛包由来)、他の細胞型(例えば間葉幹細胞)を含む異なる種類の細胞から構成することができ、例えば、マーカーもしくは「誘導」シグナリング分子を含むように遺伝的に改変される細胞を含有することができ、ヒト細胞の無制限かつ均一の源を提供し、組織学およびマーカー研究に基づいた正常皮膚から、皮膚付属物が概してなく、かつ傷つき、インビボと同様の創傷治癒事象を示すことができるという利点を有する。
【0346】
5.5.4 改変放出形態
本明細書に開示される育毛促進剤および他の活性成分は、改変放出剤形として製剤化することができる。本明細書で使用される「改変放出」という用語は、同じ経路によって投与されるときに、育毛促進剤または他の活性成分の放出の速度または場所が、即時剤形(immediate dosage form)のものとは異なる剤形を指す。改変放出剤形としては、遅延、拡張、延長、持続、パルス状、制御、加速、迅速、標的化、プログラム化放出、および胃貯留の剤形が挙げられるが、これらに限定されない。改変放出剤形の組成物は、マトリックス制御放出装置、浸透圧制御放出装置、多粒子制御放出手段、イオン交換樹脂、腸溶コーティング、多層コーティング、マイクロスフェア、リポソーム、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、様々な改変放出装置、および当業者に公知の方法を用いて調製することができる。活性成分の放出速度は、活性成分の粒径および多形を変化させることにより変更することもできる。いくつかの実施形態では、制御放出は、貯留効果を生じる、即ち、活性剤もしくは抗原を徐々に放出させる、アジュバントを用いることによって達成され、標的細胞または組織への長期曝露(例えば、毛包細胞、または免疫活性化アジュバントの場合、免疫系への長期曝露)をもたらす。
【0347】
皮膚または毛髪への改変放出用製剤の例には、2008年9月25日に公開された国際特許出願公開第WO2008/115961号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものが含まれる。改変放出の他の例としては、米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、第5,639,480号、第5,733,566号、第5,739,108号、第5,891,474号、第5,922,356号、第5,958,458号、第5,972,891号、第5,980,945号、第5,993,855号、第6,045,830号、第6,087,324号、第6,113,943号、第6,197,350号、第6,248,363号、第6,264,970号、第6,267,981号、第6,270,798号、第6,375,987号、第6,376,461号、第6,419,961号、第6,589,548号、第6,613,358号、第6,623,756号、第6,699,500号、第6,793,936号、第6,827,947号、第6,902,742号、第6,958,161号、第7,255,876号、第7,416,738号、第7,427,414号、第7,485,322号、Bussemer et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.2001,18,433-458、Modified-Release Drug Delivery Technology,2nd ed.、Rathbone et al.,Eds.、Marcel Dekker AG:2005、Maroni et al.,Expert.Opin.Drug Deliv.2005,2,855-871、Shi et al.,Expert Opin.Drug Deliv.2005,2,1039-1058、Polymers in Drug Delivery、Ijeoma et al.,Eds.、CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2006、Badawy et al.,J.Pharm.Sci.2007,9,948-959、Modified-Release Drug Delivery Technology,上記参照、Conway,Recent Pat.Drug Deliv.Formul.2008,2,1-8、Gazzaniga et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.2008,68,11-18、Nagarwal et al.,Curr.Drug Deliv.2008,5,282-289、Gallardo et al.,Pharm.Dev.Technol.2008,13,413-423、Chrzanowski,AAPS PharmSciTech.2008,9,635-638、Chrzanowski,AAPS PharmSciTech.2008,9,639-645、Kalantzi et al.,Recent Pat.Drug Deliv.Formul.2009,3,49-63、Saigal et al.,Recent Pat.Drug Deliv.Formul.2009,3,64-70、ならびにRoy et al.,J.Control Release 2009,134,74-80が挙げられるが、これらに限定されず、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0348】
5.5.4.1 マトリックス制御放出手段
改変放出剤形は、当業者に公知のマトリックス制御放出手段を用いて製造することができる。Takada et al.,1999,in Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,Mathiowitz E,ed.,Vol.2,Wileyを参照のこと。
【0349】
ある特定の実施形態では、改変放出剤形は、多糖およびタンパク質等の合成ポリマーならびに天然ポリマーおよび誘導体を含む、水膨張可能な、侵食可能な、または可溶性ポリマーである、浸食され得るマトリックス装置を用いて製剤化される。浸食され得るマトリックスを形成するのに有用な材料としては、キチン、キトサン、デキストラン、およびプルラン;ゴム寒天、アラビアゴム、ゴムカラヤゴム、ローカストビーンガム、トラガカント、カラゲナン、ガッチゴム、グアーガム、キサンタンガム、およびスクレログルカン;デキストリンおよびマルトデキストリン等のデンプン;ペクチン等の親水コロイド;レシチン等のホスファチド;アルギン酸塩;アルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;コラーゲン;セルロース誘導体、例えば、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、ヒドロキシプロピルメチル酢酸セルローストリメリタート(HPMCAT)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)等;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル;グリセロール脂肪酸エステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリル酸またはメタアクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America,Inc.,Piscataway,NJ);ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート);ポリラクチド;L-グルタミン酸およびエチル-L-グルタメートのコポリマー;分解可能な乳酸-グリコール酸コポリマー;ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸;および、他のアクリル酸誘導体、例えば、ブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、および(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0350】
ある特定の実施形態では、組成物は、非浸食性マトリックス手段を用いて製剤化される。活性成分は、不活性マトリックスに溶解または分散され、投与されると、不活性マトリックスを通って拡散することによって、最初に放出される。非浸食性マトリックス手段としての用途に適切な材料としては、不溶性プラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、酢酸ビニルとの塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン、イオノマー ポリエチレンテレフタラート、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー、ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタラート、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、およびシリコーンカーボネートコポリマー;親水性ポリマー、例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、クロスポビドン、および架橋部分的加水分解化ポリ酢酸ビニル;ならびに脂肪族化合物、例えば、カルナバワックス、微結晶性ワックス、およびトリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0351】
マトリックス制御放出システムにおいて、所望の放出動態は、例えば、使用されるポリマー種、ポリマー粘性、ポリマーおよび/または活性成分の粒径、活性成分対ポリマーの比率、ならびに組成物中の他の賦形剤または担体を介して制御することができる。
【0352】
改変放出剤形は、直接圧縮、乾式または湿式造粒後の圧縮、および溶融造粒後の圧縮等の当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0353】
5.5.4.2 浸透圧制御放出手段
改変放出剤形は、一容器系、二容器系、非対称膜技術(AMT)、および押出コア系(extruding core system)(ECS)が挙げられるが、これらに限定されない、浸透圧制御放出手段を用いて製造することができる。一般に、このようなデバイスは、少なくとも2つの成分:(a)活性成分を含むコアと、(b)該コアを封入する、少なくとも1つの送達ポートを有する半透膜とを有する。半透膜は、送達ポートによる押出によって薬剤放出するように、使用の水性環境からコアへの水の流入を制御する。
【0354】
活性成分に加えて、浸透圧手段のコアは、任意に、使用の環境から手段のコアに水を輸送するための動力を作る浸透圧剤を含む。浸透圧剤の1つの種類は、水膨潤性親水性ポリマーであり、「浸透ポリマー」および「ヒドロゲル」とも呼ばれる。浸透圧剤としての好適な水膨潤性親水性ポリマーとしては、親水性ビニルおよびアクリルポリマー、ポリサッカリド、例えば、アルギン酸カルシウム、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(2-ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタクリル)酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVPコポリマー、疎水性モノマー(例えばメタクリル酸メチルおよび酢酸ビニル)を有するPVA/PVPコポリマー、巨大PEOブロックを含む親水性ポリウレタン、ナトリウムクロスカルメロース、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびカルボキシエチルセルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ゼラチン、キサンタンガム、およびデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0355】
浸透圧剤の他の種類は、周囲のコーティングのバリア全体の浸透圧勾配に影響を及ぼすために水を吸収することができる、オスモゲン(osmogens)である。好適なオスモゲンとしては、無機塩、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、および硫酸ナトリウム;糖、例えば、デキストロース、フルクトース、グルコース、イノシトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラフィノース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびキシリトール;有機酸、例えば、アスコルビン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、p-トルエンスルホン酸、コハク酸、および酒石酸;尿素;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0356】
異なる溶解速度の浸透圧剤を、活性成分がどれくらい迅速に剤形から最初に送達されるかについて影響を与えるように使用することができる。例えば、MANNOGEM(商標)EZ(SPI Pharma,Lewes,DE)等のアモルファス糖を用いて、最初の数時間の間により迅速な送達を提供し、所望の治療効果を速やかに生じ、かつ残りの量を段階的かつ継続的に放出し、長期間に渡って、所望レベルの治療的または予防的効果を維持することができる。この場合、活性成分は、代謝し、かつ排出される活性成分の量を置き換えるような速度で放出される。
【0357】
コアはまた、剤形の性能を向上するか、または安定性もしくは処理を促進するために、本明細書に記載される様々な他の賦形剤および担体を含むこともできる。
【0358】
半透膜の形成に有用な材料は、生理的に関連したpHで水透過性および水不溶性であるか、または架橋等の化学変化によって水不溶性にされ得る、アクリル、ビニル、エーテル、ポリアミド、ポリエステル、およびセルロース誘導体の様々な等級を含む。コーティングの形成に有用な好適なポリマーの例には、可塑化、非可塑化、および強化された酢酸セルロース(CA)、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、CAプロピオナート、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAカルバミン酸エチル、CAP、CAカルバミン酸メチル、CAスクシネート、酢酸セルローストリメリタート(CAT)、CAジメチルアミノアセテート、CA炭酸エチル、CAクロロアセテート、CAシュウ酸エチル、CAスルホン酸メチル、CAスルホン酸ブチル、CA p-トルエンスルホネート、寒天アセテート、アミローストリアセテート、βグルカンアセテート、βグルカントリアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセテート、イナゴマメゴムのトリアセテート、水酸化エチレン-酢酸ビニル、EC、PEG、PPG、PEG/PPGコポリマー、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリ(アクリル)酸およびエステル、およびポリ(メタクリル)酸およびエステル、ならびにそれらのコポリマー、デンプン、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハライド、ポリビニルエステルおよびエーテル、天然ワックス、および合成ワックスが含まれる。
【0359】
半透膜はまた、疎水性微細孔膜であることもでき、米国特許第5,798,119号に開示されているように、細孔は、実質的にガスで充填され、水媒体によって浸潤しないが、水蒸気に浸透できる。このような疎水性であるが水蒸気浸透可能な膜は、通常、疎水性ポリマー、例えば、ポリアルケン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハライド、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルエステルおよびエーテル、天然ワックス、および合成ワックスから構成される。
【0360】
半透膜上の送達ポートは、機械的にまたはレーザー穿孔により、コーティング後に形成することができる。送達ポートは、水溶性材料のプラグの浸食によって、またはコアの窪みに渡って膜のより薄い部分の破裂によって、原位置で形成することもできる。加えて、送達ポートは、米国特許第5,612,059号および第5,698,220号に開示されている種類の非対称膜コーティングように、コーティングプロセスの間に形成することができる。
【0361】
放出される活性成分の総量および放出速度は、半透膜の厚みおよび多孔性、コアの組成物、ならびに送達ポートの数、サイズ、および位置を介して、実質的に調節することができる。
【0362】
浸透圧制御放出剤形は、製剤の性能または処理を促進するために、本明細書に記載される付加的な従来の賦形剤または担体をさらに含むことができる。浸透圧制御放出剤形は、当業者に公知の従来法および技術に従って調製することができる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,上記参照、Santus and Baker,J.Controlled Release 1995,35,1-21、Verma et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy 2000,26,695-708、およびVerma et al.,J.Controlled Release 2002,79,7-27を参照のこと。
【0363】
ある特定の実施形態では、組成物は、活性成分および他の薬学的に許容される賦形剤または担体を含むコアを被覆する非対称浸透圧膜を含む、AMT制御放出剤形として製剤化される。米国特許第5,612,059号および国際公開第WO2002/17918号を参照のこと。AMT制御放出剤形は、直接圧縮、乾式造粒法、湿式造粒、および浸漬塗装方法を含む、当業者に公知の従来法および技術に従って調製することができる。ある特定の実施形態では、組成物は、活性成分、ヒドロキシルエチルセルロース、および他の薬学的に許容される賦形剤または担体を含むコアを被覆する浸透圧膜を含む、ESC制御放出剤形として製剤化される。
【0364】
5.5.4.3 原位置ゲル化薬物送達系
一実施形態では、上の項5.2、項5.3、および/または項5.4に記載される薬学的組成物は、室温(20~25℃)およびそれを下回る温度では溶液であるが、32~37℃の生理学的温度でゲル化する水溶性ポリマーからなるポリマー溶液として製剤化することができる。ある適用では、この溶液は、2~8℃まで冷却して、鎮静作用を与えることができる、一方、組織表面上の液体スプレーとして噴霧される。一旦噴霧されると、この溶液は、ゲルまで濃くなり、時間をかけてその中に含有する任意の薬物をゆっくりと放出する。これらの熱ゲル化ポリマーの例は、ポリ(イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(EO)x-(PO)y-(EO)x、およびポリ(PO)x-(EO)y-(PO)x(式中、EO=エチレンオキシドおよびPO=プロピレンオキシドである)である。他の例としては、PLA-PEO-PLAポリマー(式中、PLA=ポリ乳酸、PEO=ポリエチレンオキシドである)、ポリ(セバシン酸無水物)-ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ステアリン酸塩)、およびポリ(ステアリン酸塩)-ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ステアリン酸塩)が挙げられるが、これらに限定されない。この着想の一変形では、この溶液は、組織内で原位置で蓄積を形成するために、液体として注射することができる。この概念の別の変形では、この溶液は、毛包等の組織の開口部に流動し、その後、ゲルを形成して、MPHL、毛包炎等の毛包に関連する状態、または本明細書に記載される別の状態のために育毛促進剤を放出することができる。ゲル化の温度および時間は、ポリマーを構成するポリマーの濃縮とポリマー遮断の長さに対して相関性があり得る。
【0365】
5.5.4.4 多粒子制御放出手段
改変放出剤形は、直径約10μm~約3mm、約50μm~約2.5mm、または約100μm~約1mmの多数の粒子、顆粒、またはペレットを含む、多粒子制御放出手段として製造することができる。このような多粒子は、マイクロ流動化(microfluidization)、膜が制御された乳化、水中油型、水-油-水型、油中油型乳化、および均質化工程、複合コアセルベーション、湿式または乾式造粒、押出/スフェロニゼーション(spheronization)、ローラー圧縮、溶融凝固、およびスプレーコーティングシードコア(spray-coating seed cores)等の当業者に公知の方法によって製造することができる。例えば、Ghebre-Sellassie,ed.,1994,Multiparticulate Oral Drug Delivery,Marcel Dekke、およびGhebre-Sellassie ed.,1989,Pharmaceutical Pelletization Technology,Marcel Dekkerを参照のこと。
【0366】
本明細書に記載される他の賦形剤または担体を、多粒子の処理および形成に役立つように、組成物と配合することができる。得られた粒子は、それ自体が多粒子を構成することができるか、または腸溶ポリマー、水膨潤性、および水溶性高分子等の様々なフィルム形成材料により被覆することができる。多粒子は、カプセルまたは錠剤として更に処理することができる。
【0367】
5.5.4.5 標的化送達
本明細書に使用される薬学的組成物は、作用部位、例えば特定の組織中の毛包に育毛促進剤または他の活性成分を送達する担体と製剤化することができる。このような標的送達は、育毛促進剤もしくは他の活性成分による両方と関連する副作用を減少する、および/または育毛促進剤もしくは他の活性成分が特定の組織の毛包のみに達することを確実にするために、全身投与用の製剤において好適であり得る。担体は、毛包中の特定のタンパク質または細胞型、抗体またはその抗原結合フラグメント、ウイルス、ウイルス様粒子、ビロゾーム、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、または任意の他の好適な化合物に標的化されるアプタマーであり得る。
【0368】
本明細書に提供される方法に用いる組成物はまた、リポソーム、再封赤血球(resealed erythrocyte-)、および抗体ベース送達系を含む、治療される対象の身体の特定の組織、毛包、または他の領域に標的化されるように製剤化することもできる。例としては、米国特許第5,709,874号、第5,759,542号、第5,840,674号、第5,900,252号、第5,972,366号、第5,985,307号、第6,004,534号、第6,039,975号、第6,048,736号、第6,060,082号、第6,071,495号、第6,120,751号、第6,131,570号、第6,139,865号、第6,253,872号、第6,271,359号、第6,274,552号、第6,316,652号、および第7,169,410号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0369】
いくつかの実施形態では、標的化は、薬物を含む送達系への特定の標的化部分の接着によって達成される。標的化部分は、特定の組織に発現する特定のタンパク質に結合する抗体、アプタマー、または小分子の形態であり得る。特定または誘導される標的化は、特定の組織型にのみ薬物を「導き(channel)」、それ故に、全ての組織への分布を最小限に抑えることができる。この概念は、薬物が副作用を生じる場合に特に有用である。毛包への薬物送達については、マイクロスフェアおよびナノスフェアが、薬物を毛包に送達するために利用されている。毛包への侵入は、薬物を含有する球の大きさによって制御され、0.5~0.7ミクロンの大きさのマイクロスフェアが侵入のためには理想的な大きさである。しかしながら、毛包からの脂肪質の流動体の流出により、毛包において送達系の短い滞留時間を生じ得る。これを最小限に抑えるために、マイクロスフェアの表面は、毛包口において特定の表面に結合する部分で官能化して、その部位でそれらを「保持する」ことができる。これらの部分は、毛包内で細胞に生体接着させるために、疎水性コーティングまたは価値オン性コーティングのように非特異的であり得る。これらの部分は、特定の細胞膜上で特異的に発現するある種のタンパク質に特異的であり、標的化され得る。例えば、毛包リンパ腫細胞表面上に過剰発現したタンパク質は、これらのタンパク質に結合するように設計される抗体またはアプタマーを有する送達系によって標的化され得る。送達系の表面はまた、細胞透過性ペプチド等の細胞を透過する部分である、アニオン性細胞表面に結合する正荷電ポリマーで官能化することもできる。
【0370】
5.5.4.6 局所送達
副作用を回避するために、任意の全身投与された薬物の用量が、厳重に制御される。このような副作用が回避され得る別の方法は、毛髪の成長の調節が望ましい部位に局所的に送達することである。
【0371】
本明細書に記載される育毛促進剤または他の活性成分は、毛髪の成長の調節が望ましい対象のいかなる部分、例えば、対象の頭部(例えば、頭皮、頬、顎、上唇、下唇、耳、鼻、まつ毛、または眉)、首、腹部、胸部、乳房部(例えば乳首)、背部、腕部、脇の下(脇毛)、腹、生殖器部、臀部、脚部、手、または足部等にも局所的に送達され得る。一実施形態では、育毛促進剤は、創傷または瘢痕した皮膚に適用または投与される。
【0372】
育毛促進剤または他の活性成分のこのような局所送達は、局所投与、経皮、皮内、皮下(デポー効果)によって、または全身的に送達された育毛促進剤を所望の毛包に標的化するための製剤で、筋肉内、静脈内、および経口投与によって達成することができる。送達のこのような様式は上に論じられる。
【0373】
5.5.5 足場による送達
いくつかの実施形態では、外皮攪乱した皮膚における毛包形成の増強は、創傷治癒を促進するために有機細胞外マトリックス(ECM)の形成を増強するための基質としての役割を果たし、それにケラチン生成細胞および上皮細胞の段階的付着を増強し得る事前に設計された生体被覆材と組み合わせて、本明細書に記載される薬学的組み合わせによる治療によって達成される。いかなる理論によって束縛されることなく、有機細胞外マトリックスの形成は、創傷の粒状上皮化の減少をもたらし、したがって、瘢痕化の減少をもたらす。さらに、またはいかなる理論によって束縛されることなく、創傷または攪乱した部位で「足場」の存在は、急速な創傷の収縮を防ぐ。急速な創傷の収縮が起こると、創傷の端部が急速な無計画な様式で収縮し、毛包もしくは汗腺等の任意の付属器の構造体を欠いている粒状のコラーゲンに富むな皮膚を生成し、2次的な意図による急速な創傷収縮は、ほとんどの場合、温度調節、引張、および圧縮強度および関門機能において準最適である線維組織をもたらす。
【0374】
本明細書に記載される薬学的組成物による治療と組み合わせて使用するための足場は、細胞が好ましくは容易に認識し、それに付着する生体適合性のある生体吸収性のある材料のメッシュからなり得る。例えば、これらの材料は、コラーゲン型I/III、ヒアルロン酸、キトサン、アルギン酸塩、またはそれらの組み合わせおよび誘導体、あるいは本明細書に記載されるまたは当該技術分野で公知の任意の他のそのような材料であり得る。メッシュ足場は、中性であり得るか、または電荷を持ち得る。メッシュが正電荷を持つ場合、細胞(負電荷を持つ)をさらに効果的にそれに接着させることが可能であり得る。メッシュ足場が負電荷を持つ場合、細胞が認識し、付着するシグナル伝達部分を含み得る。例えば、ヒアルロン酸等のポリマーは、皮膚に既に存在し、それ故に、この材料からなるメッシュは、細胞に適合すると考えられる。
【0375】
いくつかの実施形態では、足場は、細胞、例えば、足場を通して初めに拡散する赤血球細胞、または上皮細胞、および周囲組織からのケラチン生成細胞の寸法からなる微細構造体で事前に製造される。さらに、「上皮舌」が足場メッシュ上を巡回することによって、より容易に移動し、組織化することができることが想定される。
【0376】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場は、開細胞型発泡体にそっくりの細孔が相互接続される「開細胞」構造体を有する。足場の開口の相互接続される性質は、最適かつ組織的な創傷治癒が生じ得るように、酸素および細胞の遊離拡散を可能にし得る。
【0377】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場は、水和させる能力を有し、創傷治癒期間を通して水和状態にある。これは、いかなる理論によって束縛されることなく、創傷の乾燥は、ケラチン生成細胞が「はう(crawl upon)」ことができない不浸透性構造体をもたらすため、有用である。
【0378】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場は、例えば、それらの増殖を助長させる細胞への分子シグナルとしての役割を果たす分子を有する。これらの部分としては、細胞接着およびその後の増殖を促すペプチドグリカンおよびRGDインテグリン認識配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0379】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場は、その内に1種以上の活性剤、例えば小分子または核酸またはタンパク質等を組み込む。いくつかの実施形態では、さらなる活性剤は、ノギン(noggin)もしくはWNT等のタンパク質、またはノギンもしくはWNTをコードする核酸である。いくつかの実施形態では、小分子は、例えば、育毛促進剤(本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤または別の育毛促進剤等)、BMP阻害剤、またはPPARアンタゴニスト等の足場に組み込まれる。
【0380】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場に組み込まれる化合物は、本明細書、例えば、項5.2~5.4に記載される併用療法に用いることが考慮される化合物である。例えば、足場は、炎症の軽減に機能するフリーラジカルを消滅させる分子のスーパーオキシドジスムターゼを組み込み得る。他の実施形態では、化合物は、創傷治癒の動態を変化させる、例えば創傷治癒を遅延させる、メッシュ足場に含まれる。このような化合物は、当該技術分野で公知であり、本明細書の他の箇所に記載されている。メッシュ足場に組み込まれ得る他の化合物には、細胞増殖および組織再生に役立つ増殖因子が含まれる。いくつかの実施形態では、これらの化合物は、外皮攪乱または創傷した部位において毛包移動または新しいもしくは活性化した毛包構造体の形成に役立つ。
【0381】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、メッシュ足場内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、多層メッシュ足場のうちの1つ以上の層内に組み込まれる。例えば、一実施形態では、メッシュ足場は、育毛促進剤のパルス送達を達成し得る交互の層において育毛促進剤を含有する。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、足場中のマイクロスフェアに組み込まれ、これは足場からの育毛促進剤の制御放出を可能にする。
【0382】
別の実施形態では、メッシュ足場は、育毛促進剤をさらに含有するフィブリンゲルであり得る。フィブリンネットワークは、組織への外傷または他の損傷による創傷を治癒する際にその役割を果たすとき、細胞が遭遇する第1の足場である。順序付けられた様式でゆっくりと組み立てられるコラーゲン、ラミニン、およびプロテオグリカンによって形成される細胞外マトリックスおよび基底膜とは異なって、フィブリンネットワーク(「痂皮」)は、プロテアーゼトロンビンが凝固カスケードにおいて活性化されるとすぐに、血漿の豊富な成分であるフィブリノゲンからの変性重縮合反応によって急速に組み立てられ、その結果は、分枝状繊維の3次元ネットワークである。想定されることは、育毛促進剤、原位置で「ゲル化する」フィブリノゲンおよびトロンビンを含有する、フィブリン送達マトリックスである。直面する1つの問題は、フィブリン「痂皮」を通しての拡散するための育毛促進剤の能力であるが、痂皮の薬物部分がこの問題を解決する。
【0383】
別の実施形態では、メッシュ足場は、「スポンジ」としても機能し、創傷またはそうでなければ外皮攪乱した部位からの浸出液/血液を吸収する、合成生分解性被覆材および育毛促進剤の送達系である。合成足場で挿入するこれらの浸出液は、豊富なフィブリノゲン、トロンビン、フィブロネクチン、細胞接着タンパク質、増殖因子、およびヒアルロン酸を含有し、これらの全ては、細胞接着/分化および育毛促進剤の送達のための魅力的なマトリックスである組込構造体を生成する。育毛促進剤の放出速度は、合成足場またはスポンジを含むポリマー組成物を変化させることによって調節され得る。例えば、ポリ(ラクチド)-コ-(グリコリド)(PLG)およびポリ(ラクチド)(PLA)から製造された合成足場は、育毛促進剤の放出プロファイルを変化させるように発展させることができる。PLAとPLGの比率の変化は、足場からの育毛促進剤の放出プロファイルを変化させる。合成足場を生成するために利用することができる他のポリマーは、キトサン、カラギナン、アルギン酸塩、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)-コ-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-PPO-PEO)、ポリ(アクリレート)、およびポリ(ビニルピロリドン)(PVP)である。ポリマー組成物を変化させることによって、製剤(例えば足場またはスポンジ)からの育毛促進剤の放出速度は、放出されるべき育毛促進剤の大部分(例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または100%)を2時間から30日間、どこでも得られるように、制御することができる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤の大部分は、2時間以内、4時間以内、8時間以内、16時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、3日間以内、5日間以内、7日間以内、10日間以内、14日間以内、30日間以内、または2ヶ月以上以内に製剤から放出される。
【0384】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場は、持続放出様式で前述の化合物を放出し、これは上の項5.3.1に記載されるような制御放出製剤として機能する。例えば、これらの化合物は、メッシュ足場に結合され得、その後、メッシュからの脱結合速度の結果として持続放出様式で放出される。いくつかの実施形態では、化合物は、ポリマーに結合され得、その後、これはメッシュ足場に組み込まれ、化合物を低速でメッシュから拡散することが可能であり得、これは持続放出をもたらす。
【0385】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場は、ゲルとして押し出され、ゲルのある特定の成分が沈殿して、原位置でメッシュを形成する。あるいは、いくつかの実施形態では、原位置でのメッシュは、広範囲に火傷している組織等の創傷したまたはそうでなければ攪乱した表面上に噴霧することができる。大面積をこの様式で網羅することができる。
【0386】
いくつかの実施形態では、メッシュ足場は、創傷したまたはそうでなければ攪乱した組織の大面積を網羅するために、被覆材またはラップとして既製される。いくつかのそのような実施形態では、メッシュ足場は、上皮舌の好ましい動作に適合する表面を示すように、創傷したまたは攪乱した部位の大きさに合うような大きさに切断することができる。
【0387】
いくつかの実施形態では、足場は、融解紡糸、電気紡糸、マイクロマシニング、製織(weaving)、または開細胞発泡体が製造される当該技術分野で公知の他の方法によって調製される。米国薬局方(USP)で認可された出発材料を用いて、メッシュ足場は、さらなる1つまたは複数の化合物(任意に滅菌された)を任意に組込み、その後、弱性エチレンオキシド滅菌によって滅菌する、これらの方法によって製造することができる。いくつかの実施形態では、さらなる化合物は滅菌され、その後、滅菌メッシュ足場に添加される。
【0388】
特定の実施形態では、外皮攪乱、任意に、育毛促進剤製剤もしくは本明細書に記載される他の薬学的組成物の投与と組み合わせて生分解性足場を使用する組み合わせ戦略を適用し、これにより、胚幹細胞の原位置での生成、または創傷または外皮攪乱の他の形態後に治癒を必要とする細胞の動員をもたらし得る。このアプローチは、項5.1に記載される外皮攪乱(例えば、標準的な削皮器またはレーザーによって達成される削皮術、バルク切除レーザーによって達成される深部の全層切除(深い熱傷に関しては))、または急性創傷、慢性創傷、もしくは瘢痕修正のために生成された創傷による外皮攪乱の形態と共に使用することができる。本発明がいかに作用するかを示すいかなる理論によって束縛されることなく、薬物を投与する足場と組み合わせたそのような外皮攪乱は、幹細胞の原位置での生成または創傷治癒プロセスに必要とされる他の細胞の動員をもたらし、瘢痕がほとんどないまたは全くない、より有効な創傷治癒を促進することができる。
【0389】
5.5.5.1 足場の生分解性特性
一実施形態では、足場は、生分解性がある。創傷における3次元生分解性足場の配置は、細胞の付着、成長、および分化を支援する。歴史的に、組織修復は、自己細胞/組織移植術によるものであるが、自家移植片は、ドナー部位の罹患率および限定された有用性を伴う。代替法は、同種移植片であるが、これらは免疫応答の影響を受けやすく、疾病伝播の危険性も伴う。したがって、組織工学は、組織を復元するために単独でまたは組み合わせて、生体材料、細胞、および因子を使用する学際的分野として出現している。組織工学戦略は、概して、患者からの正常細胞の単離、続いて、インビトロでそれらの拡張を伴う。次いで、これらの拡張した細胞を、細胞に対して構造支柱を提供する3次元生分解性フレームワークに播種し、細胞湿潤、付着、増殖、および成長を可能にし、最終的には新しい組織をもたらす。ある意味では、自然創傷治癒も、フィブリン塊という「足場」を利用する。フィブリンネットワークは、プロテアーゼトロンビンが凝固カスケードにおいて活性化するとすぐに、血漿の豊富な構成成分であるフィブリノゲンからの重縮合反応のため、急速に形成される自然ネットワークである。次いで、フィブリン塊は、再上皮化のために付着する細胞のための3次元ネットワークを形成する。
【0390】
いくつかの実施形態では、足場の生分解性が調節される。理想的には、足場の生分解性は、創傷治癒または外皮攪乱の他の形態による新しい上皮の形成に一致しなければならない。当業者は、合成マトリックスが生分解性であるかどうかを測定するための方法を知っているであろう。例えば、生分解性は、組織学的およびHPLC分析によって、移植片におけるエクスビボで、またはラットもしくは別の動物モデルを使用して測定することができる。一実施形態では、加水分解による生分解性を評価することができる。このような実施形態では、最適な足場構造体は、リン酸緩衝生理食塩水中で、pH7.4および37℃でインキュベートされる。酵素性分解による分解のために、インキュベーション緩衝液は、酵素を含む。足場は、インキュベーション前に計量される。足場は、所定の時点で2つずつ回収され、真空オーブンで乾燥させる。足場は、それぞれの時点で計量され、重量対時間のプロットを生成して、生分解性速度を生じる。一実施形態では、足場マトリックスの生分解性を調節して、治癒プロセスと一致させて、メッシュを製造するために使用されるポリマー組成物を変化させることによって調節することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の割合は、生分解を増加させるPLGを有する組成物に含めることができる(例えば、ASTM E1279-89,2008,Standard Test Method for Biodegradation By a Shake-Flask Die-Away Methodを参照)。
【0391】
5.5.5.2 足場の生体模倣特性
生分解性合成マトリックスは、組織再生のために必要な強化された細胞付着のために細胞外微小環境を模倣するように作製することができる。いくつかの実施形態では、RGDペプチド等の細胞認識モチーフを、細胞が足場に付着するのを促すために組み込んでよい。
【0392】
当業者は、生分解性合成マトリックスが生体模倣特性を有するかどうかを測定するための方法を知っているであろう。例えば、一実施形態では、足場の生体模倣性質は、メッシュおよび得られた挿入フィブリンの内容物に基づいて判断される。
【0393】
5.5.5.3 足場の物理的特性
合成足場の特性は、3次元形状に、組織型および多孔率とマトリックスの弾性率との合致に依存する。組織型の弾性率が足場の弾性率と一致する場合、分化プロセスを調節することができることが示されている。
【0394】
当業者は、生分解性合成マトリックスが最適な物理的特性を有するかどうかを測定するための方法を知っているであろう。例えば、一実施形態では、足場の弾性率は、組織型の弾性率と一致する。一般に、足場またはヒドロゲルの圧縮率は、標準的なインストロン装置によって(例えばTA Instruments DMA Q800を用いて)測定することができる。
【0395】
5.5.5.4 足場の生体適合性
さらに、細胞によって形成された微小環境は、その部位に存在する細胞、即ち、皮膚乳頭由来のケラチン生成細胞および幹細胞に最適に高度に生体適合性がある。一実施形態では、これは、水を吸収することができる親水性成分を使用することによって達成することができる。ペトロラタム等の疎水性成分を使用すると閉塞性となり、急速な細胞増殖を妨げる可能性が高い。
【0396】
当業者は、生分解性合成マトリックスが生体適合性であるかどうかを測定するための方法を知っているであろう。例えば、一実施形態では、足場は、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)と共にインビトロでインキュベートされ、細胞がそれらの形状を維持し、適切に付着する場合に生体適合性であるとみなされる。例えば、材料の生体適合性に関する研究については、参照文献:Altankov et al.,1996,Journal of Biomedical Materials Research Part A;30:385-391を参照されたく、これは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0397】
5.5.5.5 足場の酸素透過性
いくつかの実施形態では、生分解性の足場は、水、栄養素、酸素、および増殖因子に透過性であり、組織と細胞との間の栄養素の容易な交換を可能にする(例えばASTM D39857を参照)。いくつかの実施形態では、非閉塞性で非透過性のバリアが回避される。
【0398】
5.5.5.6 深い創傷における足場の使用
一実施形態では、足場は、深い熱傷において一般的であるように、深い創傷を「埋める」ために使用され、付着、成長、および分化するために細胞のためのマトリックスを提供する。足場の存在は、深い、大きな領域の創傷で通常観察される瘢痕形成を最小限に抑えると思われる。
【0399】
5.5.5.7 組み合わせた生物学的/合成メッシュ
別の実施形態では、緩い、乾燥した、高度に多孔質のネットワークまたは足場またはメッシュが、創傷の出血部位、または別の方法で外皮攪乱した部位に、その部位で放出された血液および細胞接着タンパク質を優しく吸収するために置かれる。これは、フィブリノゲンおよびトロンビンと組み合わせた3次元足場の組み合わせからなる高度に豊かな環境の生成をもたらし、最終的には、細胞付着および成長に適している高度に生体適合性のあるヒドロゲルをもたらす。いくつかの実施形態では、ネットワークへの血液成分および細胞接着タンパク質の包含は、特に、大きな領域および深い創傷の場合には、連続的な組織内部成長を形成するために必要なECM(細胞外マトリックス)の構築のために重要である。
【0400】
乾燥した足場は、創傷またはそうでなければ外皮攪乱した部位で血液を吸収するさらなる利点を有する。したがって、処置を受ける人自身の血液成分を使用して、合わせた合成/天然ECMを作成することができる。実用上、足場は、血液吸収ガーゼとしての役目を果たすさらなる利点を有する。
【0401】
別の実施形態では、足場は、細胞をその部位およびその付着に採用するための、RGDペプチド等の細胞認識モチーフを有する。一旦付着すると、細胞は増殖する。いかなる理論によって束縛されることなく、足場への細胞の一次付着は、早期細胞死を防ぐための重要なステップである。
【0402】
一実施形態では、乾燥した滅菌の生分解性足場は、新たに形成された創傷または攪乱した皮膚部位上に置かれる。足場の特性は、それが水吸収時に、粘着性のヒドロゲルに変換するようなものである。
【0403】
5.5.5.8 足場の製造および適用
足場を製造するために使用され得る方法は、当該技術分野で公知であり、その方法にはエレクトロスピニング、微細加工等が含まれる。エレクトロスピニング、ヒドロゲルインプリント技術によって製造されたナノ繊維メッシュを使用して、組織型の超分子構造と一致する3次元微細構造が作成されている。原位置で形成する足場もまた、企図される。
【0404】
いくつかの実施形態では、活性剤(例えば、単独でまたは本明細書に記載される組み合わせの育毛促進剤)が、活性剤を含有するスプレー式のヒドロゲルを用いて投与される。このような一実施形態では、生分解性足場に配置した後、活性剤が組織上に噴霧される。活性剤(または活性剤の組み合わせ、例えば、育毛促進剤および幹細胞シグナル伝達物質)は、液体として噴霧されるが、組織上に噴霧した後、ヒドロゲルに変形するスプレー式のヒドロゲルに組み込まれ得る。これは、創傷または外皮攪乱の面積が大きく、均一に網羅することが必要とされる場合に特に有用である。
【0405】
いくつかの実施形態では、活性剤を含有するスプレー式のヒドロゲルを創傷またはそうでなければ外皮攪乱した部位上に適用し、これにより、治癒期間中にわたって、または短期間もしくは長期間によって、必要に応じて活性剤を放出する架橋結合したヒドロゲルを形成する。必要とされる放出特徴に応じて、活性剤は、マイクロカプセルまたはナノカプセルに組み込まれ、プレヒドロゲル溶液に懸濁される。活性剤はまた、プレヒドロゲル溶液に溶解させることもできる。「プレヒドロゲル」溶液は、組織上に噴霧され、また活性剤を含有する溶液として定義される。
【0406】
いくつかの実施形態では、活性剤は、真皮中に存在する負電荷を持つコラーゲンにそれ自身を急速に結合するために正電荷を持つことができるマイクロスフェア内に含まれる。真皮へのマイクロスフェアの結合は、その部位で不動の活性剤を放出する部分を提供する。
【0407】
前述の実施形態の変形例では、創傷またはそうでなければ外皮攪乱した部位を、治癒の間、感染からその部位を防ぐために、通気性のある非閉塞性スプレー式のヒドロゲルで覆うことができる。
【0408】
5.6 治療レジメン
以下に記載される治療のいずれかについても、特定の実施形態では、特定の治療が、第2(または第3の、またはそれ以上の)治療の投与前に、それと同時に、またはその後で投与することができる。ある特定の実施形態では、第2または第3またはその後の治療は、異なる(例えば、一実施形態では、より高い)用量であるが、同じ活性剤による治療を含む。
【0409】
一実施形態では、ある治療は、対象に、他の治療と適度に同じ時点で投与される。本方法は、2つの投与が、互いに1分未満~約5分間、または最長約60分の期間、例えば同じ医師の診察時に行われる。
【0410】
別の実施形態では、ある治療および別の治療は、ちょうど同時に投与される。
【0411】
なお別の実施形態では、ある治療および他の治療は、ある治療および他の治療が一緒に作用して、単独で投与される場合よりも便益の増加をもたらすことができるように、順番に、ある時間間隔内で投与される。別の実施形態では、ある治療および他の治療は、所望の結果を得るのに十分な時間投与される。それぞれは、任意の適切な形態で、任意の好適な経路によって、同時にまたは別々に投与することができる。一実施形態では、ある治療および他の治療は、異なる投与経路によって投与される。代替の実施形態では、それぞれが同じ投与経路によって投与される。ある特定の実施形態では、ある治療および他の治療は、対象の身体の同じまたは異なる部位で投与することができる。同時に投与されるとき、ある治療および他の治療は、単一の製剤、混合製剤で、または同じ投与部位に、または同じ投与経路によって投与されても、投与されなくてもよい。
【0412】
様々な実施形態では、ある治療および他の治療は、1時間未満の間隔、約1時間間隔、1時間~2時間間隔、2時間~3時間間隔、3時間~4時間間隔、4時間~5時間間隔、5時間~6時間間隔、6時間~7時間間隔、7時間~8時間間隔、8時間~9時間間隔、9時間~10時間間隔、10時間~11時間間隔、11時間~12時間間隔、24時間以下の間隔、または48時間以下の間隔をあけて投与される。他の実施形態では、ある治療および他の治療は、2~4日間隔、4~6日間隔、1週間間隔、1~2週間間隔、2~4週間間隔、1ヶ月間隔、1~2ヶ月間隔、2~3ヶ月間隔、3~4ヶ月間隔、4~5ヶ月間隔、6ヶ月間隔、6ヶ月~1年間隔、または1年もしくはそれ以上の間隔をあけて投与される。いくつかの実施形態では、ある治療および他の治療は、両方がまだ活性である期間内で投与される。当業者は、それぞれの投与成分の半減期を決定することによってそのような期間を決定することができよう。
【0413】
一実施形態では、ある治療および他の治療は、同じ患者の診察時間内に投与される。一実施形態では、ある治療は、他の治療の投与前に投与される。代替の実施形態では、ある治療は、他の治療の投与後に投与される。
【0414】
ある特定の実施形態では、ある治療および他の治療は、対象に周期的に投与される。周期的な投与は、1回または一期間の1つ以上の治療の投与、続いて、1回または一期間の他の治療の投与、およびこの連続投与を繰り返すことを含む。第1の治療は、ある治療または他の治療を伴うものであり得、これは対象の以前の治療歴、および本来の成果によって異なる。そのような周期的治療は、本明細書に記載される利点を有するだけではなく、治療のうちの1つ以上への耐性発現を減少させ、治療のうちの1つの副作用を避けるもしくは減少する、および/または治療の有効性を改善することもできる。そのような実施形態では、1つ以上の治療の交互の投与は、1年後、6ヶ月後、3ヶ月後、1ヵ月後、3週間後、2週間後、1週間後、4~6日後、2~4日後、または1~2日後、別の治療の投与(または逆もまた同様に)を行うことができ、そのような周期は、所望に応じて何度でも繰り返され得る。ある特定の実施形態では、ある(またはさらなる)治療および他の治療は、3週間以内の周期で、隔週に1回、10日間に1回、または1週間に1回、交互に投与される。そのような期間は、治療の特性に応じて、例えば、制御放出製剤を使用するかどうか、および/または治療経過の進展により延長または軽減することができる。
【0415】
特定の実施形態では、対象は、現在の治療(例えば、局所的ミノキシジルまたはフィナステライド)を中止し、治療されるべき領域を外皮攪乱し、攪乱後治療を12日間適用する。12日間後、攪乱後治療を中止し、現在の治療法(または別の育毛促進剤もしくは育毛促進剤の組み合わせ)による治療が再開される。いくつかの実施形態では、対象は、10周期のプロトコルで治療され、外皮攪乱、続いて、攪乱後治療(例えば、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月間)を行い、例えば、育毛促進剤等の他の治療と交互に行われる(例えば、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月)。
【0416】
ある特定の実施形態では、治療のタイミングまたは治療の組み合わせは、皮膚の治療領域における毛髪の成長の指標の存在または不在により調整され得る。例えば、1種以上の育毛促進剤の治療前または治療後の外皮攪乱による反復治療のタイミング(任意に、攪乱後治療と組み合わせて)または外皮攪乱による治療(任意に、攪乱後治療と組み合わせて)は、治療した皮膚部位における指標、すなわちNL、PEL、および/またはPELA毛包構造体、先在する軟毛、新しい軟毛、軟毛から硬毛への変換、硬毛、硬毛から軟毛への変換等のうちの1つ以上の出現、または予測される出現に基づいて調節され得る。
【0417】
毛髪移植術(例えば毛包単位抽出)を含む外皮攪乱が1種以上の育毛促進剤による治療を伴う例示的な実施形態では、例えばミノキシジルまたはフィナステライド等の1種以上の育毛促進剤により事前に処置された頭皮の領域は、移植した毛包の源として使用される。毛包除去前に、攪乱治療は、移植した組織が得られるであろう部位に投与される。この部位は、攪乱後治療を1週間行い、次いで、中断し、続いて、例えばミノキシジルまたはフィナステライドによる治療を3ヶ月間行う。毛髪移植術(例えば毛包単位抽出)を含む外皮攪乱が1種以上の育毛促進剤による治療を伴う別の例示的な実施形態では、前回の毛髪移植術における以前はドナー部位であった頭皮の領域がその後の毛髪移植術前に処置される。前回のドナー部位は、例えばミノキシジルまたはフィナステライド等の1種以上の育毛促進剤により事前に処置され、この部位は、移植した毛包の源として使用されよう。毛包除去前に、攪乱治療は、移植した組織が得られるであろう部位に投与される。この部位は外皮攪乱され、攪乱後治療が1週間適用され、次いで、中断し、続いて、例えばミノキシジルまたはフィナステライドによる治療を3ヶ月間またはそれ以上行う。毛髪移植術(例えば毛包単位抽出)を含む外皮攪乱が1種以上の育毛促進剤による治療を伴う別の例示的な実施形態では、前回の毛髪移植術における以前はドナー部位であった頭皮の領域がその後の毛髪移植術前に処置される。毛包除去前に、攪乱治療は、移植した組織が、例えばミノキシジルまたはフィナステライド等の育毛促進剤によるいかなる事前の処置も行わずに得られるであろう部位に投与される。この部位は外皮攪乱され、攪乱後治療が1週間適用され、次いで、中断し、続いて、例えばミノキシジルまたはフィナステライドによる治療を3ヶ月間またはそれ以上行う。毛髪移植術(例えば毛包単位抽出)を含む外皮攪乱が1種以上の育毛促進剤による治療を伴う別の例示的な実施形態では、前回の毛髪移植においてドナー部位でなかったが、将来は使用されるであろう頭皮の領域がその後の毛髪移植術前に処置される。この部位は、例えばミノキシジルまたはフィナステライド等の1種以上の育毛促進剤により事前に処置され、この部位は、移植した毛包の源として使用されよう。毛包除去前に、攪乱治療は、移植した組織が得られるであろう部位に投与される。この部位は外皮攪乱され、攪乱後治療が1週間適用され、次いで、中断し、続いて、例えばミノキシジルまたはフィナステライドによる治療を3ヶ月間またはそれ以上行う。毛髪移植術(例えば毛包単位抽出)を含む外皮攪乱が1種以上の育毛促進剤による治療を伴う別の例示的な実施形態では、前回の毛髪移植においてドナー部位でなかったが、将来は使用されるであろう頭皮の領域がその後の毛髪移植術前に処置される。毛包除去前に、攪乱治療は、移植した組織が、例えばミノキシジルまたはフィナステライド等の育毛促進剤による事前の処置を行わずに得られるであろう部位に投与され、攪乱後治療が1週間適用され、次いで、中断し、続いて、例えばミノキシジルまたはフィナステライドによる治療を3ヶ月間またはそれ以上行う。
【0418】
項5.1、5.2、および5.3にそれぞれ記載される治療ステップに関連する特定の例示的なレジメンが続く。
【0419】
5.6.1 外皮攪乱治療レジメン
いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、治療されるべき皮膚の部分におけるデピレーション(depilation)(皮膚の表面上の毛髪部分の除去)またはエピレーション(epilation)(皮膚より下の部分を含む全体の毛髪の除去)の1つ以上の技術と組み合わせて行われる。当該技術分野で公知のいかなる形態のエピレーションまたはデピレーションをも使用することができる。使用することができるデピレーションの方法としては、シェービング、研削材、機械的装置の使用、および髪にその強度を与えるタンパク鎖を連結するジスルフィド結合を破壊し、毛髪を分解することによって作用する化学脱毛剤(例えばNair(登録商標)またはチオグリコール酸)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。使用することができるエピレーションの方法としては、ピンセットを用いて引き抜くこと、砂糖脱毛、エピレーション装置、糸脱毛(threading)、ホームパルス光、レーザー、電気分解治療が挙げられるが、これらに限定されず、育毛遅延剤(例えばVaniqa(登録商標)(エフロルニチン))の使用を含むことができる。攪乱前に、皮膚を、デピレーションまたはエピレーションを施行することができる。
【0420】
いくつかの実施形態では、デピレーションは、外皮攪乱前に行われる。いくつかの実施形態では、デピレーションは、外皮攪乱直前に行われる。いくつかの実施形態では、デピレーションは、外皮攪乱の5分、10分、15分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、または5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、24時間、または2日前に行われる。
【0421】
いくつかの実施形態では、エピレーションは、外皮攪乱前に行われる。いくつかの実施形態では、エピレーションは、外皮攪乱直前に行われる。いくつかの実施形態では、エピレーションは、外皮攪乱の5分、10分、15分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、または5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、24時間、または2日前に行われる。
【0422】
いくつかの実施形態では、デピレーションは、外皮攪乱前に行われない。いくつかの実施形態では、エピレーションは、外皮攪乱前に行われない。いくつかの実施形態では、デピレーションおよびエピレーションの両者は、外皮攪乱前に行われない。特定の実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱の方法は、エピレーションもデピレーションも行わずに、実行することができる。このような一実施形態では、削皮術(例えば、本明細書の項5.1.1に記載される削皮先端部を有する装置を用いて)は、エピレーションもデピレーションも行わずに、実行される。
【0423】
ある特定の実施形態では、外皮攪乱後の皮膚は、治癒速度を促進するために擦り傷または創傷に通常投与されるいかなる物質(例えば、創傷被覆材、軟膏、包帯剤、または装置)とも長期間接触させない。一実施形態では、皮膚は、例えば、外皮攪乱が治癒するまで(例えば、1日間から3週間のいつでも)、いかなる物質とも接触させない。あるいは、皮膚は、ギブス包帯または包帯剤と接触させることができ、これは、例えば、攪乱した皮膚への血流量の増加、または経皮的な水分損失の低下、または気体(例えば、酸素、二酸化炭素、水蒸気)の皮膚へのおよび/もしくは皮膚からの物質移動の低下、皮膚からの熱移動の低下(例えば、皮膚表面の温度上昇をもたらす)、または皮膚上の圧力の増加をもたらす。
【0424】
いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、例えば、外科的瘢痕等の瘢痕を軽減する治療と組み合わせて実施され、これは、自然な皮膚張力線(ランゲル線(Langer’s line))に沿って選択的切開の配置、または「ジグザグ形の」パターンにおいて縫合を適用すること、あるいは当該技術分野で公知の他の方法によって達成され得る。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、例えば、理学療法を対象に実施すること、感染症を軽減すること、傷の端の分離を軽減すること、コラーゲン合成、沈着、もしくは集積を最小限に抑えること、またはそうでなければ、一次癒合による治癒にとてもよく類似している二次癒合による治癒のプロセスを生じることによって、瘢痕を最小限に抑える創傷(例えば、外科的創傷)の治療と組み合わせて実施される。瘢痕を軽減し、本明細書に記載される方法と組み合わせて使用され得る他の介入は、除去されるべき血腫量を減少させ、ひいては創傷治癒の炎症段階を減少させる創傷治癒の細心の止血(凝固、乾燥、またはライゲーション技術による出血の制御を含む)、皮膚閉合中に注意を払うこと(例えば、表皮および真皮の鉗子の挫滅外傷を避けること)、炎症を軽減する傷の端で壊死組織の回避、創傷の洗浄、および必要とされる皮膚移植片を適用することを含む。これらの介入は、外皮攪乱前、それと同時に、またはその後に実施され得、外皮攪乱の治療と共に、または項5.2~5.4に記載される、もしくは本明細書の他の箇所、またはそうでなければ当該技術分野で公知の別の治療の一部として、またはそれと組み合わせて使用することができる。
【0425】
5.6.2 攪乱後治レジメン
攪乱後治療は、1回、または時間の間隔を置いて複数回投与することができる。例えば、一実施形態では、攪乱後治療は、1日当たり1回、または1日当たり2回、または1日当たり3回、1週間当たり1回またはそれ以上投与される。治療の正確な用量および持続時間は、治療の種類、治療する患者の年齢、体重、および状態によって異なり得、公知の試験プロトコルを用いて、またはインビボもしくはインビトロ試験もしくは診断データからの外挿法によって経験的に決定され得ることを理解されよう。任意の特定の個人については、特定の投薬レジメンが、個人の必要性、および製剤を投与する、または製剤の投与を監視する者の専門的な判断力に従って時間をかけて調節されなければならないことをさらに理解されよう。
【0426】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱に供されていない皮膚の領域に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱前に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱前に投与され、攪乱後治療の投与は、外皮攪乱治療中、中断される。特定の実施形態では、攪乱後治療の投与は、外皮攪乱治療後、再開される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱前に投与され、攪乱後治療の投与は、外皮攪乱治療中およびその後、継続される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱と同時に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、既に外皮攪乱に供した皮膚の領域に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱直後に投与される。
【0427】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱直前に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療が、外皮攪乱から5分、10分、15分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日間、14日、または1ヶ月以内に投与される。
【0428】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱から5分以内に、または外皮攪乱から5分、10分、15分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、または5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、24時間、または2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、または1ヶ月もしくはそれ以上後に投与される。
【0429】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療開始後、治療は、外皮攪乱後1日間、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日間またはそれ以上継続される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療開始後、治療は、外皮攪乱後3週間、4週間、1ヶ月、または2、3、4、5、もしくは6ヶ月またはそれ以上継続される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療開始後、治療は、外皮攪乱後1年間またはそれ以上継続される。
【0430】
いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、攪乱後治療を行わずに、5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、または5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、1日間、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40日の期間続く。
【0431】
様々な実施形態では、外皮攪乱および攪乱後治療は、1日未満の間隔、約1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、8日間隔、9日間隔、10日間隔、11日間隔、12日間隔、13日間隔、14日間隔、または2週間以下の間隔で投与される。他の実施形態では、外皮攪乱および攪乱後治療は、2~4日間隔、4~6日間隔、1週間間隔、1~2週間間隔、2~4週間間隔、1ヶ月間隔、1~2ヶ月間隔、2~3ヶ月間隔、3~4ヶ月間隔、6ヶ月間隔、または1年以上の間隔をあけて投与される。
【0432】
一実施形態では、外皮攪乱および攪乱後治療は、患者の同じ診察時間内に投与される。ある特定の実施形態では、外皮攪乱および攪乱後治療は、対象に周期的に投与される。周期的治療は、1回または一期間の外皮攪乱の投与、続いて、1回または一期間の攪乱後治療の投与、およびこの連続投与を繰り返すことを含む。第1の治療は、外皮攪乱または攪乱後治療を伴うものであり得、これは対象の以前の治療歴、および本来の成果によって異なる。ある特定の実施形態では、外皮攪乱および攪乱後治療は、2年以下の周期で、1年に1回、6ヶ月に1回、3ヶ月に1回、2ヶ月に1回、または1ヶ月に1回、交互に投与される。
【0433】
一実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、1または2または3または4または5または6または7または8または9または10または11または12または13または14日間またはそれより長く持続される(いくつかの実施形態では、痂皮はこの期間中形成される)。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、3または4または5日間またはそれより長く持続される。一実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、7または10または12または14日間持続される(いくつかの実施形態では、痂皮はこの期間中形成される)。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、7または10または12または14日間持続される。一実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、19または21日間持続される(いくつかの実施形態では、痂皮はこの期間中形成される)。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、19または21日間持続される。一実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、最長6ヶ月、または最長1年間もしくはそれより長く持続される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、最長6ヶ月、または最長1年間もしくはそれより長く持続される。
【0434】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、痂皮の形成をもたらさない外皮攪乱の形態と組み合わされる。このような一実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱前に投与される。そのような別の実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱時に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱後に投与される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療が痂皮の形成をもたらさない外皮攪乱後に投与され、攪乱後治療は、外皮攪乱から15分間以内、または15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、18時間、1日間、2日間、3日間、5日間、7日間、10日間、2週間、または3週間後に投与される。他の実施形態では、攪乱後治療が痂皮の形成をもたらさない外皮攪乱後に投与され、攪乱後治療は、外皮攪乱から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、または1年もしくはそれ以上のうちに投与される。
【0435】
攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮形成前に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮形成中に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮剥離前に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮剥離直後に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮剥離から1時間後に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮剥離から最長6時間後に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮剥離から6~12時間後に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮剥離から12~18時間後に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、痂皮剥離から18~24時間後に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱から1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週間、3週間、または4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月後に投与される。攪乱後治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、攪乱後治療は、外皮攪乱から2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、または1年もしくはそれ以上後に投与される。
【0436】
攪乱後治療剤は、外皮攪乱と組み合わせて、1回、または繰り返して投与することができる。ある特定の態様では、攪乱後治療剤は、薬学的有効成分を含まない。ある特定の態様では、攪乱後治療剤は、薬学的有効成分を含まないヒドロゲルである。いくつかの実施形態では、攪乱後治療剤は、時間の間隔を置いて投与され、任意に、外皮攪乱による交互の治療剤はまた、時間の間隔を置いて投与される。一変形では、攪乱後治療は、複数回の別個の投与と同様にあるレジメンで、薬物(例えば、上の項5.4に記載されている)を送達することができる、制御放出形態で1回以上投与することができる。ある特定の態様では、本発明は、さらなる治療と組み合わせた外皮攪乱を含み、さらなる治療は、薬学的有効成分を含んでも含まなくてもよい。
【0437】
例えば、いくつかの実施形態では、治療間の期間は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間であり、いくつかの実施形態では、14日間を超えない。一実施形態では、治療期間は、1週間である。いくつかの実施形態では、攪乱後治療による治療期間は、少なくとも14日間、21日間、28日間、またはそれより長い。
【0438】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療剤は、痂皮の表面下を形成する新表皮を調節するために投与される。いくつかのそのような実施形態では、攪乱後治療剤は、外皮攪乱時に投与され、痂皮剥離後のある長さの期間まで、例えば、外皮攪乱後5~14日間持続される。いくつかの実施形態では、攪乱後治療による治療プロセスは、短い、例えば、痂皮剥離直後1日または数日間に限定されるか、または痂皮がなお付着している間のみ継続される。外皮攪乱および攪乱後治療剤投与のタイミングは、最良の結果が達成されるように好ましくはモニタリングされ、調節される。
【0439】
いくつかの実施形態では、外皮攪乱(例えば、項5.1に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の方法を用いて)および攪乱後治療投与のタイミングは、毛髪の成長を最適化するために調節される。したがって、一実施形態では、攪乱後治療剤は、外皮攪乱前のある時点で投与され、攪乱後治療は、外皮攪乱後(任意に、項5.3、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)、再度再開される。一実施形態では、攪乱後治療剤は、外皮攪乱と一緒に、またはその後間もなく、(任意に、項5.3、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)投与される、例えば、外皮攪乱した皮膚に直接投与される。
【0440】
いくつかの実施形態では、攪乱後治療の開始後、治療は、育毛促進剤による治療が開始された際でさえ継続される。例えば、これは、2つの治療剤が同時に投与されることによって達成され得る。これはまた、攪乱後治療用の薬学的組成物と同一である製剤において育毛促進剤を投与することによっても達成され得、この唯一の違いは、それぞれ、育毛促進剤、および/または任意の必要とされる賦形剤、安定剤等の存在もしくは不在である。
【0441】
5.6.3 育毛促進剤による治療レジメン
育毛促進剤による治療(「育毛促進剤治療」とも称される)は、1回、または時間の間隔を置いて複数回、投与することができる。例えば、一実施形態では、育毛促進剤治療は、1日当たり1回、または1日当たり2回、または1日当たり3回、または1週間当たり1回またはそれ以上投与される。治療の正確な用量および持続時間は、治療の種類、治療されるべき患者の年齢、体重、および状態によって異なり得、公知の試験プロトコルを用いて、またはインビボもしくはインビトロ試験もしくは診断データからの外挿法によって経験的に決定さえ得ることを理解されよう。任意の特定の個人については、特定の投薬レジメンが、個人の必要性、および製剤を投与する、または製剤の投与を監視する者の専門的な判断力に従って時間をかけて調節されなければならないことをさらに理解されよう。
【0442】
本明細書に記載される実施形態では、育毛促進剤による治療は、外皮攪乱と組み合わせて行われるか、外皮攪乱による治療を受けている対象に投与される。これらの治療は、任意に、上の項5.2において記載されている攪乱後治療および/または上の項5.6.2において記載されている攪乱後治療と組み合わせることができる。
【0443】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤が、外皮攪乱前に投与される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤が、外皮攪乱前に投与され、育毛促進剤の投与は、外皮攪乱治療中および治療後に継続される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤が、外皮攪乱前に投与され、育毛促進剤の投与は、外皮攪乱治療中、中断される。特定の実施形態では、育毛促進剤の投与は、外皮攪乱治療後に再開される。
【0444】
いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤が、外皮攪乱前に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤が、外皮攪乱の前の6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、または6年以内に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤が、外皮攪乱前に継続的に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱前に断続的に投与される。いくつかの実施形態では、2種以上の育毛促進剤が、外皮攪乱前に順次投与される。いくつかの実施形態では、2種以上の育毛促進剤が、外皮攪乱前に同時に投与される。
【0445】
いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤が、外皮攪乱直前に投与される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤が、外皮攪乱前の5分、10分、15分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、または1ヶ月以内に投与される。
【0446】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤が、外皮攪乱後に投与される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤が、外皮攪乱の直後に投与される。創傷した皮膚への育毛促進剤の局所投与のための特定の実施形態では、育毛促進剤が、創傷部位のほてりまたは焦燥を軽減するように製剤化される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤が、外皮攪乱の、5分間、10分、15分、20分、30分、1時、2時、3時、4時、5時、6時、7時、8時、9時、10時、12時、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、または1ヶ月後に投与される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤は、外皮攪乱後、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、または6ヶ月、またはそれより後に投与される。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、育毛促進剤を用いずに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40日もしくはそれ以上の期間続く。
【0447】
他の実施形態では、1種以上の育毛促進剤による治療のタイミングは、外皮攪乱により治療された領域の皮膚における毛髪の成長の指標の存在または不在する場合に(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせて)、調節され得る。例えば、いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚における軟毛の出現前に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚における新しい軟毛の出現前に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚部位における新しい軟毛の出現後に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚部位における軟毛の出現後に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚部位における硬毛の出現前に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚部位における硬毛の出現後に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚部位における硬毛の出現後、および硬毛から軟毛への移行前に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚部位におけるNL、PEL、および/またはPELA毛包構造体の出現前に投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の育毛促進剤は、外皮攪乱により治療された皮膚部位におけるNL、PEL、および/またはPELA毛包構造体の出現後に投与される。
【0448】
様々な実施形態では、外皮攪乱および育毛促進剤は、1日未満の間隔、約1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、8日間隔、9日間隔、10日間隔、11日間隔、12日間隔、13日間隔、14日間隔、または2週間以下の間隔をあけて投与される。他の実施形態では、外皮攪乱および育毛促進剤は、2~4日間隔、4~6日間隔、1週間間隔、1~2週間間隔、2~4週間間隔、1ヶ月間隔、1~2ヶ月間隔、2~3ヶ月間隔、3~4ヶ月間隔、6ヶ月間隔、または1年以上の間隔をあけて投与される。
【0449】
一実施形態では、外皮攪乱および育毛促進剤は、患者の同じ診察時間内に投与される。ある特定の実施形態では、外皮攪乱および育毛促進剤は、対象に周期的に投与される。周期的治療は、一期間の外皮攪乱の投与、続いて、一期間の育毛促進剤の投与、およびこの連続投与を繰り返すことを含む。第1の治療は、外皮攪乱または育毛促進剤を伴うものであり得、これは対象の以前の治療暦、および本来の成果によって異なる。ある特定の実施形態では、外皮攪乱および育毛促進剤治療は、3週間以下の周期で、隔週に1回、10日間に1回、または1週間1回、交互に投与される。ある特定の実施形態では、外皮攪乱および攪乱後治療は、2年以下の周期で、1年に1回、6ヶ月に1回、3ヶ月に1回、2ヶ月に1回、または1ヶ月に1回、交互に投与される。
【0450】
一実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、1または2または3または4または5日間またはそれより長く維持される(いくつかの実施形態では、痂皮はこの期間中形成される)。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、3または4または5日間またはそれより長く維持される。一実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、7または10または12または14日間またはそれより長く維持される(いくつかの実施形態では、痂皮はこの期間中形成される)。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、7または10または12または14日間またはそれより長く維持される。一実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、19または21日間またはそれより長く維持される(いくつかの実施形態では、痂皮はこの期間中形成される)。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、19または21日間またはそれより長く維持される。一実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱時に投与され、その後、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、最長6ヶ月、または最長1年間もしくはそれより長く維持される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮が剥離したらすぐに投与され、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、最長6ヶ月、または最長1年間もしくはそれより長く維持される。
【0451】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮の形成をもたらさない外皮攪乱の形態と組み合わされる。このような一実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱前に投与される。そのような別の実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱時に投与される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらさない外皮攪乱後に投与される、いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱から15分間以内、または15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、5日、7日、10日、2週間、または3週間後に投与される。他の実施形態では、育毛促進剤治療は痂皮の形成をもたらさない外皮攪乱後に投与され、育毛促進剤治療は、育毛促進剤治療は、外皮攪乱から1ヶ月以内で、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、または1年間もしくはそれ以上のうちに投与される。
【0452】
育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮形成前に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮形成中に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮剥離前に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮剥離直後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮剥離から1時間後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮剥離から6時間後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮剥離から6~12時間後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮剥離から12~18時間後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮剥離から18~24時間後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱から1日、2日、3日、5日、7日、10日、2週間、3週間、または4週間後に投与される。育毛促進剤治療が痂皮の形成をもたらす外皮攪乱形態後に投与される一実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱から2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、または1年間もしくはそれ以上の後に投与される。
【0453】
育毛促進剤治療は、外皮攪乱と組み合わせて、1回、または繰り返して投与することができる。いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、時間の間隔を置いて投与され、任意に外皮攪乱による交互の治療もまた、時間の間隔を置いて投与される。一変形では、育毛促進剤は、複数回の別個の投与と同様にあるレジメンにおいて、薬物を送達することができる、制御放出形態で1回以上投与することができる。
【0454】
例えば、いくつかの実施形態では、治療間の期間は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間であり、いくつかの実施形態では、14日間を超えない。一実施形態では、治療間の期間は、1週間である。いくつかの実施形態では、育毛促進剤による治療期間は、少なくとも14日間、21日間、28日間、またはそれより長い。ある特定の実施形態では、治療間の期間は、少なくとも1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、またはそれより長い。
【0455】
いくつかの実施形態では、育毛促進剤治療は、痂皮の表面下を形成する新表皮を調節するために投与される。いくつかのそのような実施形態では、育毛促進剤治療は、外皮攪乱時に投与され、痂皮が剥離してからある時点まで、例えば、外皮攪乱後の5~14日間持続される。いくつかの実施形態では、育毛促進剤による治療プロセスは、短い、例えば、痂皮剥離直後1日または数日間に限定されるか、または痂皮がなお付着している間のみ継続される。外皮攪乱および育毛促進剤投与のタイミングは、最良の結果が達成されるように好ましくはモニタリングされ、調節される。
【0456】
いくつかの実施形態では、外皮攪乱(例えば、項5.1に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の方法を用いて)および育毛促進剤の投与のタイミングは、毛髪の成長を最適化するために調節される。したがって、一実施形態では、育毛促進剤は、外皮攪乱前のある期間投与され、育毛促進剤による治療は、外皮攪乱後(任意に、項5.2、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)、再度再開される。一実施形態では、育毛促進剤は、外皮攪乱と一緒に、またはその後間もなく、(任意に、項5.2、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)投与される、例えば、外皮攪乱した皮膚に直接投与される。一実施形態では、育毛促進剤は、外皮攪乱に供されている皮膚の領域における新しい軟毛の出現後に、(任意に、項5.2、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)投与される。一実施形態では、育毛促進剤は、外皮攪乱に供されている皮膚の領域における視覚的に検出可能な新しい毛髪の出現後に、(任意に、項5.2、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)投与される。一実施形態では、育毛促進剤は、外皮攪乱に供されている皮膚の領域における写真で検出可能な新しい毛髪の出現後に、(任意に、項5.2、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)投与される。一実施形態では、育毛促進剤は、外皮攪乱に供されている皮膚の領域における新しい硬毛の出現後に、(任意に、項5.2、5.4、または本明細書の他の箇所に記載される、またはそうでなければ当該技術分野で公知の治療のうちの1つと組み合わせて)投与される。
【0457】
他の実施形態では、育毛促進剤による治療は、上の項5.2に記載される製剤を用いて行われる。
【0458】
ある特定の実施形態では、育毛促進剤による治療は、外皮攪乱と同日に開始され、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間、1日1回、2回、3回、4回、または5回継続される。ある特定の実施形態では、育毛促進剤による治療の開始時、治療は、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間、1日1回、2回、3回、4回、または5回継続される。ある特定の実施形態では、育毛促進剤による治療の開始時、治療は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、11年間、12年間、13年間、または無制限に、1日1回、2回、3回、4回、または5回継続される。
【0459】
さらに、1種以上の育毛促進剤が、本明細書(例えば、上の項5.4を参照)に記載される、もしくは参照によって本明細書に組み込まれる、または医師によって適切であると判断される任意のさらなる治療剤と組み合わせて投与され得る。追加の治療剤の量は、所望の効果および選択されるさらなる化合物によって異なる。そのようなさらなる治療剤を投与するための投薬量およびレジメンは、一般に使用される投薬量およびレジメンであり、例えば、製品ラベルまたはPhysicians’ Desk Reference(「PDR」)等の医師の手引書(例えば63rd edition,2009,Montvale,NJ:Physicians’ Desk Reference)を参考にすることによって容易に決定することができる。
【0460】
1種以上の育毛促進剤は、さらなる1種または複数の化合物と同時に、または別々に投与され得るか、または異なる薬物動態学を用いて組織部位に投与および/または送達され得る。一実施形態では、併用療法は、1種以上の育毛促進剤および一緒に製剤化されたさらなる1種または複数の化合物を含む。そのような製剤における育毛促進剤は、さらなる1種または複数の化合物と同時に、または別々に放出され得るか、または異なる薬物動態学を用いて組織部位に放出および/または送達され得る。例えば、いくつかの実施形態では、製剤中の化合物のうちの1種以上は、制御放出を経るが、一方、他の化合物のうちの1種以上は、制御放出を経ない。例えば、製剤中の化合物のうちの1種以上は、持続放出を経るが、一方、他の化合物のうちの1種以上は、遅延放出を経る。
【0461】
別の実施形態では、併用療法は、1種以上の育毛促進剤および別々に製剤化されたさらなる1種または複数の化合物を含む。別々の製剤は、同時に、連続して、または交互の順番で投与され得る。例えば、1種以上の育毛促進剤は、連続して、またはフィナステライドもしくはミノキシジル等の別の化合物と同時に投与して、毛髪の保持および成長の望ましい効果を達成することができる。
【0462】
ある特定の実施形態では、外皮攪乱と組み合わせた1種以上の育毛促進剤による治療(攪乱後治療を含むまたは含まない)は、MPHL、FPHLにおける頭皮の毛髪脱落を防ぐ、遅延する、もしくは逆行させる、および/または加齢による毛髪の菲薄化を拡散する。
【0463】
ある特定の実施形態では、1種以上の育毛促進剤による治療前の外皮攪乱による治療(攪乱後治療を含むまたは含まない)は、育毛促進剤の有効性を改善し、治療をより効果的で、効率的な、費用効率が高い、利用しやすくする。例えば、薬剤の有効性は、増加され得る。ある特定の実施形態では、治療の1つは、それ自体では美容上満足できず、利点は長続きしないか、または治療に由来する毛髪が軟毛、または他の薄いもしくは斑点状の毛髪であるか、または不十分な色素形成を有する。これらの治療の1つが、他の治療のうちの1つ以上を有する治療と組み合わせられる場合、生じる毛髪は、そのような特性が劣っている軟毛とは対照的に、より美容上満足し、より長寿命の、より濃く、より均一な、適当な色素性のある毛髪、硬毛、または頭皮毛髪であり得る。ある特定の実施形態では、1本を超える毛髪は、それぞれの毛包から出現し、これはより太い毛髪の出現をもたらす。
【0464】
以下の実施形態は、本明細書に記載される方法を示す。外皮攪乱は、本明細書に記載されるように、表皮または皮膚深さへのフラクショナルエルビウム-YAGレーザー、表皮または皮膚深さへのフラクショナルCO2レーザー、あるいは表皮または皮膚深さへの削皮術のいずれかによる処置によって達成される。この後に、エストロゲン、フィナステライド、またはデュタステリド(Avodart(商標))の育毛促進剤のうちの1つ以上による治療を行う。この治療は、刺激、活性化、または再プログラム化される毛包(または毛包幹細胞)を生じ、例えば、男性の側頭部の頭皮毛包(または毛包幹細胞)の小型化を、女性型側頭部の頭皮毛包(または毛包幹細胞)の非小型化に変化させる。その後、任意に、硬毛は、ミノキシジル、ビマトプロスト、またはラタノプロストの適用によってさらに刺激される。代替として、この実施形態では、毛包型は、刺激、活性化、または再プログラム化され得、例えば、男性の側頭部の頭皮毛包の小型化を、男性後頭部の頭皮型毛包の非小型化に変化させ得る。その後、任意に、硬毛は、フィナステライド、デュタステリド、ミノキシジル、ビマトプロスト、またはラタノプロストの適用によってさらに刺激される。別の例示的な実施形態では、外皮攪乱は、本明細書に記載されるように、表皮または皮膚深さへのフラクショナルエルビウム-YAGレーザー、表皮または皮膚深さへのフラクショナルCO2レーザー、あるいは表皮または皮膚深さへの削皮術のいずれかによる処置によって達成される。この治療は、刺激、活性化、または再プログラム化される毛包および/またはまたは毛包幹細胞を生じて、フィナステライド、デュタステリド、ミノキシジル、ビマトプロスト、またはラタノプロスト等の育毛促進剤の効果を受け入れる新しい毛包を形成する。そのような薬物による再構成および/または新しい毛包の刺激は、その後、硬毛数の増加をもたらす。
【0465】
いくつかの実施形態では、毛髪を生成する毛包(例えば、軟毛または硬毛)を既に含有する皮膚の領域の外皮攪乱と1種以上の育毛促進剤による治療の組み合わせは、皮膚のその領域における毛髪の生成を増加させる。いくつかの実施形態では、外皮攪乱と育毛促進剤治療の組み合わせは、損傷し、もはや毛包を含有しない皮膚に投与される。そのような実施形態では、外皮攪乱と育毛促進剤治療の組み合わせは、皮膚のその領域における毛包の生成を修復し得る。このような一実施形態では、瘢痕(例えばケロイド瘢痕)等の正確に治癒していない創傷を含む皮膚の領域は、皮膚のその領域への毛包および/または毛髪の成長を修復するために、外皮攪乱と1種以上の育毛促進剤の併用療法を投与される。これらの効果は、1種以上の育毛促進剤の投薬量を調節することによって達成され得る。
【0466】
この組み合わせが、この組み合わせにおいてそれぞれの要素の単に相加的作用から期待されるものを超える効果を有するとき、例えば、分岐した毛包または1つの毛穴当たりの複数の毛幹がこの組み合わせによって生成されたが、いずれかの単独によっては生成されない場合、相助作用が生じる。
【0467】
5.6.3.1 外皮攪乱およびミノキシジル治療
この項は、頭皮上の毛髪の成長を誘発する例となる方法を提供する。より具体的には、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象の頭皮上の毛髪の成長を誘発する方法が、本明細書に提供される。さらにより具体的には、Hamilton-Norwood型3V、4、5、5A、または5V、およびFitzpatrick皮膚型1~4の、硬毛および小型化した毛髪の両方を有する領域として定義される頭頂部の移行ゾーンの存在下で、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象の頭皮上の毛髪の成長を誘発する方法が、本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、毛髪の成長を誘発するための方法は、(a)外皮攪乱と、(b)上の項5.2に記載される攪乱後治療による任意の期間の治療と、(c)ミノキシジルによる任意の期間の治療とを含む。より具体的には、毛髪の成長を誘発するための方法は、(a)外皮攪乱、(b)上の項5.2に記載される攪乱後治療による任意の期間の治療、および(c)ミノキシジルによる任意の期間の治療の順序で含む。理論によって束縛されることなく、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象における毛髪脱落の領域において、削皮術を用いて制御された外皮攪乱は、新遺伝子(neogenic)のような毛包、および/または刺激、活性化、もしくは再構成された先在する毛包をもたらし、ミノキシジルまたは1種または複数の他の育毛促進剤を用いて誘発された新遺伝子のような毛包、および/または刺激、活性化、もしくは再構成された先在する毛包のその後の治療は、より多くの長寿命の、および/またはより濃い毛幹をもたらす。いくつかの実施形態では、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象における毛髪脱落の領域において、制御した外皮攪乱前のミノキシジルまたは1種もしくは複数の他の育毛促進剤による治療は、より多くの長寿命の、および/またはより濃い毛幹をもたらす。
【0468】
特定の実施形態では、任意の攪乱後治療による治療は、外皮攪乱と同日に開始され、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間、1日1回、2回、3回、4回、または5回継続される。
【0469】
いくつかの実施形態では、外皮攪乱後には、局所治療を行わない0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40日の期間が続く(例えば、攪乱後薬学的組成物による治療を行わないおよびミノキシジルによる治療を行わない攪乱;または攪乱後に攪乱後薬学的組成物による治療を行い、その後、局所的薬剤を用いない一期間があり、続いて、ミノキシジルによる治療;または攪乱後に攪乱後薬学的組成物による一期間の治療を行い、その後、局所ミノキシジルによる治療を行い、攪乱後治療の局所適用後、その日の開始を終了する)。
【0470】
いくつかの実施形態では、局所治療を行なわない期間後、ミノキシジルが少なくとも2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、または少なくとも10ヶ月間、1日1回、2回、3回、4回、または5回適用されるミノキシジルによる治療が開始される。特定の実施形態では、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、または8%の局所ミノキシジル(例えばROGAINE)を使用することができる。
【0471】
ある特定の実施形態では、ミノキシジルによる治療は、上の項5.3および下の項5.4の他の箇所に記載される別の治療と組み合わせて行うことができるか、または例えば、項5.3.1に記載される薬物送達装置を用いて投与することができる。
【0472】
ある特定の実施形態では、毛髪の成長を誘発するための方法は、フィナステライド(PROPECIA)の投与をさらに含む。例えば、フィナステライドは、1mg/日の用量で経口投与することができる。ある特定の実施形態では、フィナステライドの投与は、ミノキシジルによる局所治療と同時に開始する。
【0473】
ある特定の実施形態では、毛髪の成長を誘発するための方法は、デュタステリドまたは当業者に公知の任意の他の5-α-レダクターゼ阻害剤の投与をさらに含む。例えば、デュタステリドは、0.05mg/日、0.1mg/日、0.5mg/日、または2.5mg/日の用量で経口投与することができる。ある特定の実施形態では、デュタステリドの投与は、ミノキシジルによる局所治療と同時に開始する。
【0474】
ある特定の実施形態では、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象の頭皮上の毛髪の成長を誘発するための方法は、
(a)0日目、削皮術(推定深さ100ミクロン)、
(b)0日目~11日目に、1日2回、上の項5.2に記載されるヒドロゲルの局所投与、
(c)12日目~14日目に、局所治療を行わない期間、
(d)15日目から開始する少なくとも5.5ヶ月間の5%の局所ミノキシジルの局所投与を含む。
【0475】
ある特定の実施形態では、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象の頭皮上の毛髪の成長を誘発するための方法は、
(a)0日目、削皮術(推定深さ100ミクロン)、
(b)0日目から開始する約14日間の1日2回の上の項5.2に記載されるヒドロゲルの局所投与、
(c)一晩、局所治療を行わない期間、
(d)ステップ(c)直後、少なくとも5.5ヶ月間の5%の局所ミノキシジルの局所投与を含む。
【0476】
ある特定の実施形態では、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性または女性対象の頭皮上の毛髪の成長を誘発するための方法は、
(a)0日目、削皮術(推定深さ100ミクロン)、
(b)0日目から開始する約14日間の1日2回の上の項5.2に記載されるヒドロゲルの局所投与、
(c)2週間、局所治療を行わない期間、
(d)28日目から開始する少なくとも5.5ヶ月間の5%の局所ミノキシジルの局所投与を含む。
【0477】
ある特定の実施形態では、本発明は、別々の容器内に、ヒドロゲルおよび局所ミノキシジルを含むキットを提供する。ミノキシジルは、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、または8%の局所ミノキシジル(例えばROGAINE)であり得る。ある特定の実施形態では、このキットは、外皮攪乱用の手段(例えば手持ち式削皮装置)をさらに含む。
【0478】
当業者に公知の任意の方法を使用して、毛髪の成長が誘発されることを示すことができる。例えば、検出可能な毛髪は、例えば、広範囲の写真記録またはフォトトリクログラフィック(phototrichographic)分析(例えば、Uno et al.,2002,Acta Venereol 82:7-12(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される)による写真によって定量化され得るか、または例えば、評定尺度(Kaufman et al.J Amer Acad Dermatol 1998;39:578-89に記載される)によって視覚的に評価され得る。さらに、写真で検出可能な毛髪の毛幹の厚みの変化を判定することができる。さらに、毛髪の成長の耐久性は、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、4年、または少なくとも5年の期間にわたってモニタリングされる。
【0479】
具体的な実施形態では、0.005%、.01%、.05%、0.1%、0.15%、または0.2%の局所ラタノプロストを使用することができる。具体的な実施形態では、0.01%、0.03%、0.05%、または0.1%の局所ビマトプロストを使用することができる。具体的な実施形態では、0.0005%、0.0015%、0.005%、または0.05%の局所タフルプロストを使用することができる。具体的な実施形態では、0.00013%、0.00033%、0.001%、0.0.00267%、0.004%、または0.01%の局所トラボプロストを使用することができる。
【0480】
本明細書に記載される方法に用いる併用療法のための他のレジメンには、この項の他の箇所に記載されるものが含まれる。
【0481】
5.7 適応症および患者集団
ヒト毛髪パターニングは、対象の人生にわたって生じ、個人間、さらに一般的には、異なる人種および民族的背景のヒト間の程度によって異なる、性特異的変化からなる。思春期前に、男性および女性は、頭皮の毛髪の同様のパターンを有し、彼らの身体の残りの部分は、大部分は目に見えない軟毛で覆われている。前腕および脚は、思春期前でさえ、徐々に薄く、細い硬毛が成長する。男性および女性では、思春期は、腋窩および肛門性器部における硬毛の成長と関連する。思春期中、男性および女性は共に、前腕および脚にわたって硬毛が成長するが、男性は、これらの領域において定量的にさらに成長を有する。思春期後の男性は、口髭/顎髭、胸部、および背部領域にわたって硬毛が成長する。その後、男性は、「MPHL脱毛症」と呼ばれるあるプロセスにおいて、頭皮(頭頂/側頭部、および前頭部/側頭部/頭頂部領域)における異なる度合いの硬毛脱落が現れる。遺伝的感受性を有する男性および女性は共に、「アンドロゲン性脱毛症」と呼ばれるびまん性の頭皮硬毛の菲薄化が現れる。男性は、耳上、鼻の中(鼻孔)、および眉の様々な度合いの硬毛の成長が現れる。更年期後、女性は、口髭/顎髭の毛髪の成長が現れる。男性および女性は共に、年齢と共にびまん性の頭皮毛髪の菲薄化が現れる。遺伝的感受性を有する男性および女性は共に、年齢と共に毛髪の色の変化が現れる。
【0482】
性ホルモンであるアンドロゲンおよびエストロゲンは、ヒト毛髪パターニングの多くにおいて重要な役割を果たす。アンドロゲン活性のエストロゲン活性に対する高い比率は、軟毛を硬毛に変換すること(思春期では、例えば、腋窩および肛門性器部;男性の口髭および顎髭)ならびにMPHL脱毛症において硬毛(および硬毛の毛包)を軟毛(および小型化した毛包)に変換することの両方のプロセスを促進する。性ホルモンは、局所的に皮膚によって合成され、そこではイントラクリンまたはパラクリン作用を発揮する。(Zouboulis CC,Chen WC,Thornton MJ,Qin K,Rosenfield,2007,“Sexual hormones in human skin” Horm Metab Res 39:85-95において再考される)。それぞれの性ステロイドの局所レベルおよび活性は、アンドロゲンおよびエストロゲンを合成する酵素の活性ならびに特異的な細胞型における適切なアンドロゲンおよびエストロゲン受容体の活性によって異なる。アンドロゲンは、5つの主要な酵素によって調節され、アイソザイムの発現において変化するか、または毛髪パターニングを調節するアンドロゲン受容体およびアンドロゲン受容体を転写促進する要因の発現において変化する。エストロゲンは、アンドロゲンを17-β-エストラジオール(E2)に変化させるシトクロムP450アロマターゼ(「アロマターゼ」)を発現する皮脂腺において生成される。エストロゲンは、エストロゲン受容体α(ERα)に作用し、ヒト皮膚におけるエストロゲン受容体α(ERベータ)は、部位特異的な局在性において発現する。毛髪パターニングおよび成長の調節に加えて、アンドロゲンは、皮脂腺の成長および分化、表皮バリアの恒常性および創傷治癒における効果を有し、エストロゲンは、皮膚の老化、色素沈着、毛髪の成長、皮脂産生、および皮膚癌を調節する(Ohnemus et al.,2006,Endocr Rev.27(6):677-706,“The hair follicle as an estrogen target and source.”)。
【0483】
特殊化したヒト毛包の位置は、生成された毛髪のタイプ(長さ、カール)を含む異なる特性ならびに生活および性ステロイドによる規制の間に出現/消失を強調する硬毛を生成するこれらの毛包の分類(表1および
図1)を導入することを可能にする。この分類は、今後の研究によって正当化されない場合がある同じようなタイプのある男性および女性の毛包として一緒にグループ化することでいくつかの仮定を立てる。例えば、頭皮の毛髪を除いて、ヒトは思春期まで少量の目に見える毛のみを有し、思春期になると、陰部(肛門性器)および脇の下(腋窩)部位に特殊化した毛包は、硬毛を生成し始める。一部では、陰部および腋窩に特殊化した毛包は、男性および女性の両方でアンドロゲンのみに応答してそれらの活性を変化させ、女性陰部および腋窩部位における毛包は、アンドロゲンに非常に感受性が高いと考えられている。分類システムは、本明細書に記載される方法を用いて変更することができるヒトにおける特殊化した毛包の様々な独特の特徴を示すのに有用である。
【0484】
【0485】
思春期後、男性は、連続である比較的特徴的なパターンで(例えば、Hamilton Norwoodスケールによって記載される;
図8を参照のこと)、頭頂、頭頂部、および前頭部/頭頂部領域にわたって頭皮の毛髪を消失し始める。本明細書に記載される方法に従って治療することができるHamilton-Norwoodスケールの異なる段階は以下の通りである:
I型は、青年期または若年期の生え際を示し、実際には禿げていない。青年期の生え際は、概して、上眉のしわにある。
II型は、一部の側頭部の後退を有する上眉のしわ上の指幅(1.5cm)にある成人または老人の生え際への進行を示す。これもまた、禿げていることを意味しない。
III型は、男性の毛髪脱落の最初期段階である。深化する側頭部の後退によって特徴付けられる。
III型の頭頂は、頭頂部(頭頂)において早期毛髪脱落を示す。
IV型は、さらに前頭部の毛髪脱落および頭頂の拡大によって特徴付けられるが、前部と頭頂部を分ける上部にわたって頑丈な毛髪の束がまだある。
V型:前部および頭頂部の禿げた領域は、拡大し続け、2つの領域を分ける毛髪の橋梁の崩壊が始まる。
VI型は、連結する毛髪の橋梁が消失するとき、頭皮の前部および上部の単一の大きな禿げた領域を残す。頭皮の側部にある毛髪は比較的高い状態である。
VII型の患者は、広範囲におよぶ毛髪脱落を有し、わずかに毛髪の冠が頭皮の後部および側部にある状態である。
A型のパターンは、通常のパターンよりもあまり一般的ではない(10%未満)が、毛髪脱落が前部において最も著しいため、毛髪脱落が最小であっても患者が非常に禿げているように見えるという事実により深刻である。
【0486】
いくつかの実施形態では、女性型脱毛症のためのLudwig分類のいかなる段階も、本明細書に記載される方法および治療剤によって治療することができる。Ludwig分類は、女性型遺伝的脱毛症を説明するために3つの段階:タイプI(軽度)、タイプII(中等度)、タイプIII(極度)を使用する。全ての3つのLudwig段階では、前頭部の生え際を相対的に維持する頭皮の前部および上部において毛髪脱落がある。背部および側部は、罹患している場合があるか、または罹患していない場合がある。毛髪脱落の程度にかかわらず、頭皮の背部および側部に安定した毛髪がある女性のみが毛髪移植手術の候補者である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療剤を使用して、Ludwig分類のタイプ1、タイプII、および/またはタイプIIIの段階にある女性型遺伝的脱毛症を治療することができる。
【0487】
いくつかの実施形態では、女性型脱毛症のためのSavinスケールのいかなる段階も、本明細書に記載される方法および治療剤によって治療することができる。段階I-1では、毛髪脱落はない。Savinスケールの段階I-2、I-3、I-4では、分け目部分の幅が次第に広くなり、これは頭皮の中央部に沿って毛髪の菲薄化を示す。Savinスケールの段階II-1およびII-2では、頭皮の上部にわたって毛髪のびまん性の菲薄化がある。Savinスケールの段階IIIでは、頭皮の上部の広範囲に及ぶびまん性の毛髪脱落があるが、一部の毛髪は生存している。Savinスケールの「進行した」段階では、広範囲に及ぶ毛髪脱落があり、脱毛症に罹患した領域において生存している毛髪がほとんどない。進行した段階に達する女性は極めて少なく、その場合は通常、顕著で異常に過剰なアンドロゲンホルモン生成を引き起こす状態にあるためである。Savinスケールの「前頭部強調(frontally accentuated)」段階では、頭皮の単なる頭頂正中部ではなく毛髪の分け目の前部および中央部により多くの毛髪脱落がある。
【0488】
いくつかの実施形態では、女性型脱毛症のためのSavinスケールのいかなる段階も、本明細書に記載される方法および治療剤によって治療することができる。Olsenスケールは、毛髪脱落が前頭部領域により著しく、中央の毛髪部分で見たとき、後頭部に向かって毛髪脱落が徐々に少なくなる前頭部の強調パターンに基づいて、3段階に女性型脱毛症を等級分けする。Olsenスケールの段階1では、軽度から中等度の前頭部強調脱毛がある。Olsenスケールの段階2では、段階1よりもさらに重度である前頭部強調と、びまん性脱毛症との混合の両方である。Olsenスケールの段階3では、脱毛がとても重度であるため、主にびまん性の菲薄化のみが目に留まる。
【0489】
5.7.1 禿頭症、脱毛症、および毛髪の成長のための患者集団
本明細書に記載される1つ以上の方法による治療のための候補対象は、毛髪脱落、毛髪の菲薄化、禿頭症に罹患している、またはそれと関連する疾患もしくは状態を有するもしくは有していた、または毛髪の成長もしくは厚みが向上することを望んでいる任意の対象である。
【0490】
対象は、いかなる対象、好ましくは、男性、女性、中間/両性具有(例えばXO)、性転換対象を含む、ヒト対象でもあり得る。ある特定の実施形態では、対象は、ヒト若者である。ある特定の実施形態では、対象は、思春期中である。ある特定の実施形態では、対象は、中高年の成人である。ある特定の実施形態では、対象は、閉経前の成人である。ある特定の実施形態では、対象は、更年期中である。ある特定の実施形態では、対象は、高齢者である。ある特定の実施形態では、対象は、1歳以下、2歳以下、2歳、5歳、5~10歳、10~15歳、例えば12歳、15~20歳、20~25歳、25~30歳、30歳、30~35歳、35歳以上、35~40歳、40歳以上、40~45歳、45~50歳、50歳以上、50~55歳、55~60歳、60歳以上、60~65歳、例えば65歳、65~70歳、70~75歳、75~80歳、80~85歳、85~90歳、90~95歳、または95歳以上のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、20~50歳の男性である。いくつかの実施形態では、対象は、20~60歳の男性である。いくつかの実施形態では、対象は、30~60歳の男性である。いくつかの実施形態では、対象は、40~60歳の男性である。いくつかの実施形態では、対象は、12~40歳の男性または女性である。いくつかの実施形態では、対象は、女性対象ではない。いくつかの実施形態では、対象は、妊娠していないか、または妊娠することが予期されない。いくつかの実施形態では、対象は、妊娠第一期の妊娠女性ではない。いくつかの実施形態では、対象は、授乳中ではない。
【0491】
一実施形態では、治療は、毛髪の成長が望ましい、例えば、頭皮、顔(例えば、眉、まつ毛、上唇、下唇、顎、頬、顎髭領域、または口髭領域)、または身体の別の部分、例えば、胸部、腹部、腕部、脇の下(脇毛の部位)、脚部、または生殖器等の領域に送達される。いくつかの実施形態では、治療剤は、頭部に送達される。いくつかの実施形態では、治療剤は、頭皮に送達される。いくつかの実施形態では、治療剤は、禿げつつある頭皮に送達される。一実施形態では、治療剤は、顔には送達されない。一実施形態では、治療剤は、通常、軟毛のみ、またはほとんど軟毛で覆われている皮膚の領域に送達されない。いくつかの実施形態では、皮膚の創傷したまたは瘢痕した部分への毛髪の回復が望ましい。一実施形態では、瘢痕は、顔の持ち上げ手術、皮膚移植術、または植毛術等の外科手術によって生じる。
【0492】
対象は、禿頭または毛髪脱落の疾患または障害(毛髪の菲薄化を含む)、MPHLまたはFPHL(例えば、毛髪の菲薄化、即ち、前頭部/頭頂部の頭皮におけるびまん性脱毛症)を含むアンドロゲン性脱毛症(AGA)等の非瘢痕性(nonscarring、noncicatricial)脱毛症の形態、またはアンドロゲンによって引き起こされる任意の他の形態、中毒性脱毛症、円形脱毛症(全身性脱毛症を含む)、瘢痕性(scarring、cicatricial)脱毛症、病理学的脱毛症(例えば、薬物、外傷ストレス、自己免疫疾患、栄養失調症、または内分泌機能不全により生じる)、抜毛癖、先天性貧毛症等の貧毛の形態、または毛孔性扁平苔癬、あるいは当該技術分野で公知のまたは以下に記載される毛髪脱落もしくは禿頭の任意の他の障害を有し得る。
【0493】
いくつかの実施形態では、対象は、アンドロゲン性脱毛症等の遺伝的または先天的疾患または障害によって引き起こされる毛髪脱落を有する。
【0494】
いくつかの実施形態では、対象は、化学療法(例えば、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、シクロホスファミド、ビンクリスチン)中に生じるような成長期脱毛症によって引き起こされる毛髪脱落を有する。化学療法薬に加えて、成長期脱毛症は、他の毒素、放射線被爆(過剰被爆を含む)、内分泌疾患、外傷、苦痛、および円形脱毛症等のある種の疾患(成長期の毛包を攻撃する自己免疫疾患)によって引き起こされ得る。
【0495】
いくつかの実施形態では、対象は、休止期脱毛症によって引き起こされる毛髪脱落を有する。休止期脱毛症は、リチウムのような薬物ならびにバルプロ酸およびカルバマゼピンのような他の薬物によって頻繁に引き起こされる。精神科薬物に加えて、休止期脱毛症は、出産、摩擦、熱性疾患、外科手術、ストレス、または栄養不足によって誘発され得る。(Mercke et al.,2000,Ann.Clin.Psych.12:35-42を参照のこと)。
【0496】
いくつかの実施形態では、対象は、化学療法(例えば、抗癌治療または細胞毒性薬)、タリウム化合物、ビタミン(例えばビタミンA)、レチノイド、抗ウイルス療法、または心理療法、放射線療法(過剰被爆によって生じ得る頭皮の毛髪脱落の横縞パターン等)、外傷、内分泌機能異常、外科手術、身体外傷、x線による萎縮、ほてり、または他の損傷もしくは創傷、ストレス、老化、自己免疫疾患もしくは障害、栄養失調、感染症(例えば、慢性深部細菌もしくは真菌感染症を含む、真菌、ウイルス、もしくは細菌感染症)、皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、妊娠、アレルギー、大病(例えば猩紅熱)、粘液水腫、下垂体機能低下症、初期梅毒、円板状紅斑性狼瘡、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、深部人工的潰瘍、肉芽腫(例えば、サルコイドーシス、梅毒性ゴム腫、TB)、炎症性頭部白癬(禿瘡、黄癬)、頭皮のゆっくり増殖する腫瘍もしくは他の皮膚腫瘍、または当該技術分野で公知または以下に記載される禿頭症もしくは毛髪脱落と関連するまたはそれらを引き起こす任意の他の疾患もしくは障害のような薬剤によって引き起こされるまたはそれと関連する毛髪脱落を有する。
【0497】
いくつかの実施形態では、対象は、毛髪の菲薄化、または「異常損害(shock loss)」、または毛髪移植術もしくは毛包単位の移植術のための組織もしくは毛包の源として優先使用によって生じた禿げた部分を有する。
【0498】
いくつかの実施形態では、候補対象は、毛髪の成長を増強する、例えば、より多くの毛髪、より迅速な毛髪の成長、より長い毛髪、および/またはより濃い毛髪を有することを望む対象である。いくつかの実施形態では、候補者は、毛髪の色素形成が増加することを望む対象である。いくつかの実施形態では、対象は、過度の毛髪脱落の状態によって影響を受けない。
【0499】
5.7.2 瘢痕性脱毛症
いくつかの実施形態では、対象は、瘢痕性(scarring、cicatricial)脱毛症を有する。本明細書に記載される方法に従って治療され得る瘢痕性脱毛症の形態は、原発性瘢痕性脱毛症(PCA)および続発性瘢痕性脱毛症を含む。本明細書に記載される方法に従って治療され得る原発性瘢痕性脱毛症には、毛孔性扁平苔癬(LPP)、前頭部硬化性脱毛症(FFA)、中央遠心瘢痕性脱毛症(CCCA)、および萎縮性脱毛症(Brocq)等のリンパ球媒介性PCA;脱毛性毛包炎および房状毛嚢炎等の好中球媒介性PCA;ならびに解離性蜂巣炎および頭部乳頭状皮膚炎で生じるような混合炎症性浸潤を含むPCAが含まれる。
【0500】
いくつかの実施形態では、治療のための候補対象において、瘢痕性脱毛症によって罹患した領域は、もはや増加していない。いくつかの実施形態では、治療のための候補対象において、罹患領域にある毛髪脱落は、停止している。いくつかの実施形態では、治療のための候補対象は、条件と関連し得る炎症活動に対して臨床的に休止している。一実施形態では、リンパ球媒介性PCAに罹患している対象について、炎症は、病変の皮膚において検出されるように、例えば、モノクローナル抗体を用いて免疫ペルオキシダーゼ細胞表面を染色することによって、Tリンパ球および/またはTリンパ球サブセットの数として測定される。別の実施形態では、リンパ球媒介性PCAに罹患している対象について、リンパ球性炎症(ケラチン生成細胞の壊死と共に見出され得る)は、頭皮の組織学的検査によって検出される。別の実施形態では、直接免疫蛍光染色法を利用して、罹患組織に蓄積する抗体を検出する。ある特定の実施形態では、頭皮の臨床評価は、炎症の臨床的休止を決定するために行われる。かゆみ、ほてり、疼痛、または圧痛の症状は、通常、活性が進行中であることを示す。頭皮の炎症の兆候には、赤み、落屑、および膿疱が含まれる。ある特定の実施形態では、頭皮の生検を行って、活動性の炎症またはその不在を示すことができる。ある特定の実施形態では、毛髪の「引張試験」を行って、毛包が容易に引っ張られる、したがって、炎症がなお継続中である活動性疾患の領域を特定する。引っ張られた毛髪を、スライド上に取り付け、毛球を、顕微鏡を用いて観察して、成長する毛髪が何本で、休止している毛髪が何本あるかを決定する。加えて、膿疱が存在する場合、培養を行って、微生物が、もしあれば、炎症に寄与され得ることを特定し得る。ある特定の実施形態では、対象は、毛髪が容易に引っ張られない場合、かゆみ、ほてり、疼痛、圧痛、赤み、落屑、および/または膿疱が罹患した領域に不在である場合、臨床的に休止している。
【0501】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して、瘢痕性脱毛症に罹患している患者において毛髪の成長を増強する。いくつかの実施形態では、患者は、続発性瘢痕性脱毛症を有する。いくつかの実施形態では、患者は、毛孔性扁平苔癬(LPP)、前頭部硬化性脱毛症(FFA)、中央遠心瘢痕性脱毛症(CCCA)、および萎縮性脱毛症(Brocq)等のリンパ球媒介性PCA;脱毛性毛包炎および房状毛嚢炎等の好中球媒介性PCA;ならびに解離性蜂巣炎および頭部乳頭状皮膚炎で生じるような混合炎症性浸潤を含むPCAのような原発性瘢痕性脱毛症の一形態を有する。
【0502】
瘢痕性脱毛症は、男性および女性の両方に影響を及ぼし、全ての年齢に影響を及ぼし得るが、最も一般的には、成人に影響を及ぼす。一般には、それらは稀である。ある家族において生じる瘢痕性脱毛症の数例の報告書がある。しかしながら、瘢痕性脱毛症に罹患している患者の大部分が同様の状態の家族暦がない。毛孔性扁平苔癬は、最も一般的には、中高年女性に影響を及ぼし得る。中央遠心脱毛症は、最も一般的には、黒人女性に影響を及ぼし得る。前頭部硬化性脱毛症は、最も一般的には、更年期後の女性に見られる。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される対象に加えて、瘢痕性脱毛症の治療用の候補対象は、黒人女性(例えば、アフリカ系アメリカ人家系)、中高年女性、または更年期後の女性である。
【0503】
いくつかの実施形態では、本発明は、瘢痕性脱毛症に罹患している患者において毛髪の成長を増強するための方法を提供し、この方法には、フラクショナルアブレーションレーザーを用いた制御された外皮攪乱、続いて、14日間、1日2回の育毛促進剤の局所投与が含まれる。ある特定の実施形態では、育毛促進剤治療は、レーザー処置と同日に開始される。ある特定の実施形態では、育毛促進剤による治療は、外皮攪乱と同日に開始され、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間、1日1回、2回、3回、4回、または5回継続される。
【0504】
具体的な実施形態では、本発明は、毛孔性扁平苔癬に罹患している患者において毛髪の成長を増強するための方法を提供し、この方法には、フラクショナルアブレーションレーザーを用いた制御された外皮攪乱、続いて、14日間、1日2回の育毛促進剤の局所投与が含まれる。ある特定の実施形態では、育毛促進剤治療は、レーザー処置と同日に開始される。ある特定の実施形態では、育毛促進剤による治療は、外皮攪乱と同日に開始され、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間、1日1回、2回、3回、4回、または5回継続される。
【0505】
別の特定の実施形態では、本発明は、前頭部硬化性脱毛症に罹患している患者において毛髪の成長を増強するための方法を提供し、この方法には、フラクショナルアブレーションレーザーを用いた制御された外皮攪乱、続いて、14日間、1日2回の育毛促進剤の局所投与が含まれる。ある特定の実施形態では、育毛促進剤治療は、レーザー処置と同日に開始される。ある特定の実施形態では、育毛促進剤による治療は、外皮攪乱と同日に開始され、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間、1日1回、2回、3回、4回、または5回継続される。
【0506】
5.7.2.1 瘢痕性脱毛症のための外皮攪乱および育毛促進剤治療
本明細書に記載される毛髪の成長を増強するための併用療法に加えて、以下のものは、瘢痕性脱毛症に罹患している患者において、毛髪の成長を増強するための外皮攪乱および育毛促進剤治療を含む例となる併用療法である。ある特定の実施形態では、併用療法は、特定の亜類型の瘢痕性脱毛症に対して特異的である。
【0507】
いくつかの実施形態では、瘢痕性脱毛症に罹患している患者において、毛髪の成長を増強するための併用療法は、任意に、項5.2に記載される攪乱後治療、項5.3に記載されるような育毛促進剤治療、および/または項5.4もしくは本明細書の他の箇所に記載されるもしくは当該技術分野で公知の1種以上のさらなる治療剤と組み合わせた、項5.1に記載されるような、外皮攪乱の一形態を含む。
【0508】
例えば、いくつかの実施形態では、皮膚の罹患領域は、非罹患領域からの毛包が移植される。いくつかの実施形態では、瘢痕毛包を含む組織を、非罹患毛包を含む皮膚の別の領域(例えば頭皮)からの組織と置換するための外科的技術が使用される。美容利点のための外科的処置は、例えば、疾患が1年から2年もしくはそれ以上休止しているような場合における選択肢である。毛髪修復手術または頭皮縮小は、これらの例において考慮され得る。したがって、いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、植皮、周囲の皮膚の連続拡張、またはレーザー処置等の瘢痕修正の一形態である。いくつかの実施形態では、外皮攪乱は、瘢痕の再切除の一形態であり、その後、一次癒合、ステロイドによる治療(例えばコルチコステロイド注入)、シリコーン瘢痕治療(例えば、ジメチコーンシリコーンゲルまたはシリコーンシート)、ブタ充填剤または他の美容用充填剤(例えば萎縮性瘢痕下に挿入される)、リボソーム6キナーゼ(RSK)アンタゴニスト、TGFβ2もしくはTNF等の炎症性サイトカインのアンタゴニスト、オステオポンチンアンタゴニストの使用、加圧服、穿刺、削皮術、コラーゲン注入、低線量の放射線療法、またはビタミン(例えば、ビタミンEもしくはビタミンCもしくはそのエステル)の使用によって治癒される。
【0509】
いくつかの実施形態では、瘢痕性脱毛症の治療のための外皮攪乱は、例えば、上の項5.1に記載されるような、瘢痕を軽減する創傷治癒を促進する手順により施行される。特定の実施形態では、瘢痕性脱毛症に罹患している患者のための併用療法には、フラクショナルアブレーションレーザーを用いた制御された外皮攪乱、続いて、14日間、1日2回の育毛促進剤の局所投与が含まれる。ある特定の実施形態では、育毛促進剤治療は、レーザー処置と同日に開始される。一実施形態では、患者は、原発性瘢痕性脱毛症に罹患している。特定の実施形態では、患者は、毛孔性扁平苔癬または前頭部硬化性脱毛症に罹患している。
【0510】
いくつかの実施形態では、瘢痕性脱毛症に罹患している患者において毛髪の成長を増強するための併用療法は、任意に、育毛促進剤治療と共に、1種以上の抗炎症薬および抗マラリア薬と組み合わせた、外皮攪乱を含む。経口投与され得る薬剤には、ヒドロキシクロロキン、ドキシサイクリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、またはコルチコステロイドが含まれる。局所的に投与され得る薬剤には、コルチコステロイド(例えば、ベータメタゾン、例えばLuxiq(登録商標)等)、タクロリムス、ピメクロリムス、またはDerma-Smoothe/FS頭皮オイルが含まれる。注射によって投与され得る薬剤には、トリアムシノロンアセトニド(コルチコステロイド)が含まれ、これは頭皮の炎症を起こした症状を示す領域に注射され得る。特定の限定されない実施形態では、このような組み合わせは、毛孔性扁平苔癬、前頭部硬化性脱毛症、中央遠心脱毛症、および萎縮性脱毛症(Brocq)を含む、リンパ球群の瘢痕性脱毛症に罹患している患者の治療に使用される。
【0511】
いくつかの実施形態では、瘢痕性脱毛症に罹患している患者において毛髪の成長を増強するための併用療法は、任意に、育毛促進剤治療と組み合わせた、経口または局所用抗生物質等の1種以上の抗生物質と組み合わせた、外皮攪乱を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、イソトレチノイン、メトトレキサート、タクロリムス、シクロスポリン、またはサリドマイド等の1種以上のレチノイドを含む。特定の限定されない実施形態では、このような組み合わせは、瘢痕性脱毛症(例えば、脱毛性毛包炎、房状毛嚢炎、および解離性蜂巣炎)の好中球群を有する患者において毛髪の成長を増強するのに使用され、成功的治療は、毛髪の成長を増強する一方、炎症プロセスに関与する微生物を減少または排除する。
【0512】
いくつかの実施形態では、混合群の瘢痕性脱毛症(例えば頭部乳頭状皮膚炎)に罹患している患者のための併用療法は、抗菌剤、イソトレチノイン、および抗炎症薬が含まれ得る。
【0513】
5.7.3 アンドロゲン性脱毛症
男性および女性の両方が、12歳~40歳で始まる「菲薄化」と称される前頭部/頭頂部の頭皮におけるびまん性脱毛症を発症する。女性では、菲薄化は、「女性型脱毛症(FPHL)」として知られており、アンドロゲンによって引き起こされるか、または悪化する (Price VH,2003,J Investig Dermatol Symp Proc.8(1):24-7,Androgenetic alopecia in women)。
【0514】
5.7.4 男性型脱毛症(MPHL)
思春期後、男性は、連続である比較的特徴的なパターンで(例えば、Hamilton Norwoodスケールによって記載される)、頭頂、頭頂部、および前頭部/頭頂部領域にわたって頭皮の毛髪を消失し始める。男性における頭皮の毛髪の消失は、MPHLと呼ばれ、テストステロンのDHTへの変換を阻害するフィナステライドによって阻害され得、ある程度、逆転され得るアンドロゲンのジヒドロテストステロン(DHT)によって決定されるプロセスであることが知られている。ミノキシジルはまた、MPHLを遅延または逆行させることもできる。
【0515】
5.7.5 老化
ヒトの老化は、プログラム化した毛髪パターニングをもたらす。後頭部頭皮の菲薄化を含むびまん性脱毛症は、老化により生じる。これは、早年からのアンドロゲン性脱毛症(MPHLまたはFPHL)の延長であり得るか、または体内のテストステロンおよびDHTの量が減少しているとき、人生の後期数十年にでさえ始まり得る。
【0516】
閉経後の女性における毛髪脱落は、エストロゲンの消失(および/またはエストロゲン/アンドロゲン比率の減少)に関連すると考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、加齢に関連した毛髪脱落のための本明細書に開示される併用療法は、1種以上の育毛促進剤による治療およびエストロゲン代償療法またはアンドロゲン阻害療法の組み合わせを含む。
【0517】
老化はまた、毛包の周期制御の変化をもたらす。男性では、眉毛が長く成長し、鼻孔の毛髪が長くなるのは、休止期および成長期の長さがもはや厳密に調節されなくなることを示唆している。つまり、加齢に伴って、硬毛を抑制する機能の消失がある。
【0518】
5.7.6 毛髪の色の変化
男性および女性の両方における毛髪の色の変化は、徐々に白髪になる(白髪の混在;白色の毛髪および黒色の毛髪)、およびより白髪になる。色の変化は、頭皮の毛髪が顎髭または体毛よりも早く変化するため、パターン化される。顎髭はまた、最終的に均一に白髪に変わる前(一般には、白髪と黒髪の混合)に、口髭ラインを追跡するパターンにおいて色を変化させ得る。これは、(毛包と関連するメラニン細胞により供給される)毛幹のメラニン含有量の減少によるものである。
【0519】
5.7.7 毛包細胞の性ホルモン感受性を調節する因子
サイトカインは、毛髪の成長のアンドロゲン調節の標的であると考えられる真皮乳頭の活性を調節する。インターロイキン-1αは、培養された皮膚乳頭細胞中のアンドロゲンに応答する(Boivin et al.,2006,Exp Dermatol.15:784-793)。TGF-β1は、培養において、アンドロゲン受容体を過渡的に発現するアンドロゲン性脱毛症(AGA)対象からのヒト皮膚乳頭細胞(DPC)がケラチン生成細胞(KC)と共培養され、KC成長を阻害したTGF-β1を分泌したため、アンドロゲンに誘発された毛髪の成長の抑制を仲介し得る(Inui et al.,2003,J Investig Dermatol Symp Proc.8:69-71)。
【0520】
ある特定の実施形態では、局所サイトカインのアジュバントおよび/または他の刺激剤は、1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせて使用される。いかなる理論によっても束縛されることなく、1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた局所サイトカインのアジュバントおよび/または他の刺激剤を投与するための1つの理論的根拠は、毛包周期の変化を誘発し、毛包への新しいFSCを採用し得ることである。
【0521】
メラトニンは、多くの種で毛髪の成長、色素沈着、および/または脱皮を調節する松果体によって分泌されるタンパク質ホルモンである。成長期におけるヒト頭皮の毛包は、余分な松果体メラトニン合成の重要な部位である。メラトニンはまた、エストロゲン受容体-α発現を阻害するため、毛包周期の制御を調節し得る(Fischer et al.,2008,Pineal Res.44:1-15)。これらの治療は、本明細書に記載される方法と組み合わせて投与することができる。
【0522】
5.7.8 ヒト毛髪パターニングを遅延または逆転させるための治療
性ステロイドによってヒト毛髪パターニングの調整を考えると、ヒトは、交配および優性等の相互作用における社会的信号を提供するために毛髪のパターニングを進化させると考えられている。しかしながら、現在の流行は、多くの男性に男性MPHLを予防する、遅延させる、または逆転させる動機を与える。
【0523】
女性もまた、例えば、女性において男性型の顔面および身体の毛髪をもたらし、これにより、毛髪の除去および軽減する動機を与える、多嚢胞性卵巣等のある条件のような様々な要因により毛髪の菲薄化および毛髪脱落に苦しんでいる。多くの女性はまた、例えば、老化のプロセスのような様々な要因から生じ得る「女性型禿頭症」の予防、遅延、または逆転を望む。
【0524】
5.8 治療の有効性を評価するための方法
5.8.1 毒性および有効性アッセイ
単独でまたは外皮攪乱と組み合わせた、本明細書に記載される育毛促進剤または他の薬物を含む組成物の毒性および/または有効性は、例えば、LD50(集団の50%が致死する用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数として知られており、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す投薬レジメンが好ましい。毒性副作用を示す投薬レジメンを使用してもよいが、他の組織への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を減少させるために、皮膚上の好ましい部位に本明細書に記載される育毛促進剤または他の薬物(例えば、局所製剤を用いて)を標的にする送達系を設計するように注意を払わなければならない。
【0525】
本明細書に記載されるインビトロアッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒト対象に用いる本明細書に記載される育毛促進剤または他の薬物の用量範囲を製剤化する際に使用することができる。本明細書に記載される育毛促進剤または他の薬物の投与量は、毒性がほとんどないまたは全くないED50を含む皮膚濃度、あるいは血中濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路によって異なるこの範囲内で変わり得る。本明細書に記載される方法による任意の治療については、治療的に有効な用量は、インビトロ(例えば細胞培養)アッセイまたは動物アッセイから最初に推定することができる。このような情報は、より正確にヒト対象における有用な用量を決定するために使用することができる。全血または血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーまたは本明細書に記載される任意の他の方法によって測定することができる。皮膚のレベルは、例えば、本明細書に記載されるLC/MS/MSアッセイによって測定することができる。
【0526】
さらに、当業者に公知の任意のアッセイは、単独でまたは本明細書に記載される併用療法において、本明細書に記載される育毛促進剤または他の薬物による治療の有効性を評価するために使用することができる。
【0527】
5.8.2 インビトロモデル
皮膚外植片モデル。本明細書に記載される治療の有効性は、例えば、皮膚生検または他の外科的処置から調製された、皮膚外植片を用いて試験され得る。例えば、上記のBallangerらを参照のこと。
【0528】
ヒト皮膚同等物は、インビトロで成長させ、アセンブルすることができ、理論的には、いかなる大きさ/形状に成長させることができ、ケラチン生成細胞(毛包由来および非毛包由来)、真皮細胞(毛包由来および非毛包由来)、他の細胞型(例えば間葉幹細胞)を含む異なる種類の細胞から構成することができ、例えば、マーカーもしくは「誘導」シグナリング分子を含むように遺伝的に改変される細胞を含有することができ、ヒト細胞の無制限かつ均一の源を提供し、組織学およびマーカー研究に基づいた正常皮膚から、皮膚付属物が概してなく、インビボと同様に外皮攪乱することができるという利点を有する。
【0529】
5.8.3 動物モデル
ヒト皮膚および毛髪は、陸生哺乳動物の中でも比較的に独特な特長を持っている。第1に、ヒト皮膚の大部分が、肉眼では無毛に見えるが、他の陸生哺乳動物の大半は、本質的には目に見える毛髪で覆われている。第2に、目に見えるヒト毛髪は、空間的および時間的な成分を有するパターンにおいて出現したり、消失したりする。第3に、目に見えるヒト毛髪のパターンは、典型的に、男性および女性で異なる(性二形性を示す)。したがって、他の哺乳動物と比較して、ヒトは、異なる毛髪パターニングを有し、ヒトが毛髪の成長を調節し、ヒト毛髪パターニングを制御する対応する異なる分子、細胞、および組織機構を有することは明らかである。ヒト毛包新生の調節、活性化または再構成された毛包構造体の形成、および毛髪の成長に関与する他のプロセスは、ヒトに特有のものであり、そのため、他の動物は不十分なモデルである場合があり得ることを考慮する必要がある。しかしながら、本明細書に記載される治療は、この項に記載され、当該技術分野で公知の動物モデルを用いてヒトにおけるそれらの可能性のある使用について評価され得ることに留意されたい。例えば、2011年3月17日に公開された国際特許出願公開第WO2011/031990号の、例えば、齧歯動物の削皮術および全層切除モデルを参照のこと。
【0530】
ある非ヒト霊長類はヒトとの毛髪パターニングの特長を共有することに留意すべきである。毛髪脱落の最も顕著かつ最大の発生は、青年期後の男性および女性における前頭部頭皮の脱毛症としてベリガオザル(Stump-tailed Macaque)において生じる。ベリガオザルおよびヒトにおける禿頭症の発症は、育毛促進剤の慢性局所投与によって両種において同様かつ部分的に可逆であるように思われる(Diani et al,1992,J Clin Endocrinol Metab,74:345-350を参照のこと)。旧世界猿(ゴリラおよびチンパンジー)は、目、鼻、および口の周辺の顔に、耳に、ならびに手および足の足底表面上に目に見える毛髪を欠いている皮膚の領域を有する。加えて、アカゲザルは、雄と雌ではパターン化した脱毛を有する。ゴリラは、有力な雄において色に対する毛髪パターニングを有する、即ち、「シルバーバック」である。ある種のこれらの機構はヒトとの同類性を共有するが、ヒトにおける毛髪パターニングの範囲および程度は比較的特有である。
【0531】
ヒト皮膚および毛髪の生物学をより綿密に模倣し得る処置を評価するのに用いる別の動物モデルがモルモットモデルである(Stenn & Paus,2001,Physiol.Revs.81:449-494を参照のこと)。本明細書に記載される処置を評価するための方法は、当該技術分野で公知の方法に従ってモルモットに適用され得る。例えば、Kramer et al.,1990,Dermatol Monatsschr 176:417-20、およびSimon et al.,1987,Ann Plast Surg 19:519-23も参照のこと。本明細書に記載される処置を評価するために用いてもよい他の動物モデルは、ブタ(例えばレッドデュロック(Red Duroc))またはネコモデルである。
【0532】
動物モデルにおける毛髪の成長を改善することを目的とする処置の成功は、改善された全体の審美的成果;毛髪数の増加;毛髪密度の増加;毛髪もしくは毛幹の厚み(直径)の増加;毛髪重量の増加;毛髪の切断;より長い毛髪;硬毛の量の増加;軟毛の量の増加;硬毛と軟毛の比率の増加;非軟毛、例えば中間毛または硬毛の量の増加;毛包数の増加;発達のより成熟段階での毛包数の増加;3つ以上の毛包を有する毛包単位数の増加;毛包の分岐の増加;新しい毛包の形成(「毛包新生」);軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン未満の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成;毛包の再生;刺激を受けたまたは活性化した存在する毛包の増加;刺激を受けたまたは活性化した毛包数の増加;刺激を受けたまたは活性化した既存する毛包数の増加;対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹を有する既存する毛包数の増加;NL、PEL、およびPELA毛包構造体の存在および/もしくはその数の増加;全体の毛髪密度が前述の非同期の毛髪の成長育毛と比較してより多いように思われるような毛包の同期化;成長期における毛包の割合の増加または休止期における毛包の割合の減少;皮膚乳頭の増殖の増加;幹細胞の毛包への動員または増殖の増加等によって測定することができる。
【0533】
当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、本明細書に記載される治療の安全性および有効性を評価し得る。一実施形態では、ヒト皮膚異種移植片が使用される。例えば、1種以上の育毛促進剤が、本明細書に記載される全層切除、レーザー、炎症性刺激、または外皮攪乱のための削皮術処置で投与され得る。外皮攪乱治療、1種以上の育毛促進剤による治療、または本明細書に記載される別の治療の相乗効果は、2種以上の治療(例えば、外皮攪乱単独で、攪乱後治療を伴い、または伴わず、1種以上の育毛促進剤単独を伴い、または伴わず)のうちの1種のみを受容する対照対象にわたる改善として測定され得る。
【0534】
5.8.3.1 ヒト皮膚異種移植片モデル
毛包新生の予備的証拠は、免疫不全SCIDマウスの背部上に移植されたヒト皮膚(顔の持ち上げ手術中に、髪の生え際から得られる)において示されている。このようなヒト皮膚異種移植片モデルは、本明細書に記載される治療の安全性および有効性を試験するのに有用である。
【0535】
当該技術分野で公知のヒト皮膚異種移植片を生成するための任意の方法、例えば、2011年3月17日に公開された国際特許出願公開第WO2011/031990号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)の127頁から始まる項26に記載される方法を使用することができ、本明細書に記載される治療方法を試験するために適し得る。
【0536】
代替として、ヒト皮膚異種移植片(皮膚付属物のない)は、瘢痕と同様であると見なされ得、創傷され、次いで、薬理学的に治療して、毛髪の成長を誘発し得る。異種移植片はまた、誘発できる遺伝的に改変された細胞と組み合わせて、毛包を形成することを知っている経路を活性化することもできる。
【0537】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療の安全性および有効性は、全層または中間層ヒト皮膚異種移植片(例えば、瘢痕修正から;包皮から;または死体から外科的に得られる)において試験されるか、またはSCIDマウスにおける3次元器官型ヒト皮膚培養において試験され得る。
【0538】
5.8.4 ヒトにおける治療を評価するための方法
本明細書に記載される治療の安全性および有効性はまた、当該技術分野で公知の方法に従ってヒト対象において測定され得る。例えば、2005年9月15日に公開された国際特許出願公開第WO2005/084621号(この内容は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0539】
当業者に公知の任意の方法を使用して、本明細書に記載される治療の成功を示すことができる。様々な実施形態では、脱毛症の治療、禿頭症の治療、または毛髪の成長の促進を目的とする治療の成功は、以下の方法のうちの1つ以上に従って測定することができる:改善された全体の審美的成果(例えば視覚アナログ尺度(VAS)を用いて)
・毛髪の成長の患者の評価(例えば質問表に基づいて)
・患者における育毛の主治医の評価(例えば、評定尺度に基づいて)
・写真における育毛の患者の評価
患者の写真における育毛の主治医の評価
・毛髪の計数の増加(例えば、皮膚の罹患領域における繊維数の増加として新しい毛髪の成長を測定することによって)
・毛髪密度の増加
・毛髪または毛幹の厚みの増加(例えば直径に基づいて)
・毛髪重量の増加
・毛髪の切断
・より長い毛髪
・写真で検出された毛髪数の増加
・硬毛量の増加(例えば、皮膚の罹患領域における繊維数の増加、または厚み(例えば直径)の増加、または毛髪繊維の長さとして新しい毛髪の成長を測定することによって(例えば、写真で測定されるように))
・軟毛量の増加(例えば、皮膚の罹患領域における繊維数の増加として新しい毛髪の成長を測定することによって)(例えば写真で測定されるように)
・非軟毛、例えば、中間毛または硬毛量の増加(例えば写真で測定されるように)
・硬毛と軟毛の比率の増加
・毛芽数の増加
・毛包数の増加(例えば皮膚生検によって評価されるように)
・発達のより成熟段階での毛包数の増加
・3つ以上の毛包を有する毛包単位数の増加
・毛包の分岐の増加
・新しい毛包の形成(「毛包新生」)
・軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン未満の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成
・非軟毛サイズの毛幹(即ち、直径30ミクロン以上の直径を有する毛幹)を有する新しい毛包の形成
・毛包の再生
・存在する毛包の活性化の増加
・毛包数の増加
・活性化したまたは刺激を受けた毛包数の増加
・活性化したまたは刺激を受けた先在する毛包数の増加
・新遺伝子のような(NL)毛包の存在またはその数の増加(例えば、生検の試験に基づいてまたは共焦点顕微鏡によって、ベースラインもしくは陰性対照と比較して毛包数を評価することによって、および/または毛包の形態を評価することによって)
・先在する毛包の存在またはその数の増加(例えば、生検の試験に基づいてまたは共焦点顕微鏡によって、ベースラインもしくは陰性対照と比較して毛包数を評価することによって、および/または毛包の形態を評価することによって)
・NL、PEL、および/またはPELA毛包構造体の存在またはその数の増加(例えば、生検の試験に基づいてまたは共焦点顕微鏡によって、ベースラインもしくは陰性対照と比較して毛包数を評価することによって、および/または毛包の形態を評価することによって、例えば5.8.4.1および5.8.4.2に記載されるように)
・対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹を有する先在する毛包数の増加
・対象の皮膚の治療領域における軟毛サイズの毛幹を有する新遺伝子のような毛包数の増加
・成長期の毛髪量の増加
・休止期の毛髪量の増加
・成長期の毛包の割合の増加または休止期の毛包の割合の減少(即ち、成長期の毛髪の休止期の毛髪に対する比率の増加)(例えば、生検の試験またはフォトトリコグラム法(phototrichogram)に基づいて)
・皮膚乳頭の増殖の増加(例えば生検の試験に基づいて)
・幹細胞の毛包への動員または増殖の増加(例えば生検の試験に基づいて)。
【0540】
例えば、ある特定の実施形態では、治療の成功は、対象の皮膚の治療領域における毛包の試験によって評価される。ある特定の実施形態では、毛包は、組織学的に、または毛包の発達または形態のあるマーカーの存在または不在の決定によって試験される。試験のための皮膚の領域は、パンチ生検等の生検によって得られ得るか、代替としてまたは加えて、低侵襲的な方法で、皮膚は、例えば、共焦点顕微鏡または皮膚の表面下で画像化することが可能な他の技術によって直接分析され得る。一実施形態では、本明細書に記載される治療方法の成功は、例えば未治療の対照と比較して(または治療前のベースラインと比較して)、治療領域における毛包数の増加によって決定される。一実施形態では、本明細書に記載される治療方法の成功は、例えば未治療の対照と比較して(または治療前のベースラインと比較して)、新遺伝子のような(NL)毛包の存在またはその数の増加によって決定される。一実施形態では、本明細書に記載される治療方法の成功は、例えば未治療の対照と比較して(または治療前のベースラインと比較して)、先在するような(PEL)または先在するような付着した(PELA)毛包構造体等の活性化したまたは刺激を受けた先在する毛包の存在またはその数の増加によって決定される。一実施形態では、本明細書に記載される治療方法の成功は、例えば未治療の対照と比較して(または治療前のベースラインと比較して)、NL、PEL、および/またはPELA毛包構造体の存在またはその数の増加によって決定される。
【0541】
いくつかのそのような実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、毛包数を5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、毛包数を5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、毛包数を5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、毛包数を5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。
【0542】
いくつかのそのような実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、活性化したまたは刺激を受けた毛包(例えば、NL、PEL、もしくはPELA毛包構造体)数を5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、活性化したまたは刺激を受けた毛包(例えば、NL、PEL、もしくはPELA毛包構造体)数を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、活性化したまたは刺激を受けた毛包(例えば、NL、PEL、もしくはPELA毛包構造体)数を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、活性化したまたは刺激を受けた毛包(例えば、NL、PEL、もしくはPELA毛包構造体)数を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。
【0543】
特定の前述の実施形態では、毛包、活性化したもしくは刺激を受けた毛包、および/またはNL、PEL、もしくはPELA構造体の数の増加は、治療領域、例えば、外皮攪乱により治療された皮膚の領域内で観察される。他の実施形態では、毛包、活性化したもしくは刺激を受けた毛包、および/またはNL、PEL、もしくはPELA構造体の数の増加は、治療領域に隣接して観察される。他の実施形態では、毛包、活性化したもしくは刺激を受けた毛包、および/またはNL、PEL、もしくはPELA構造体の数の増加は、治療領域内およびそれに隣接して観察される。
【0544】
ある特定の実施形態では、前述に従って毛包の測定は、治療レジメンの開始から3日間、または4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、3週間、4週間、または1ヶ月間以内もしくはそれ以上である。一実施形態では、前述に従って毛包の測定は、治療レジメンの開始から3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、3週間、4週間、または1ヶ月間以内もしくはそれ以上で得られた皮膚生検に基づく。特定の実施形態では、前述に従って毛包の測定は、治療レジメンの開始から11日間、12日間、13日間、14日間、または15日間である。特定の実施形態では、前述に従って毛包の測定は、治療レジメンの開始から11日間、12日間、13日間、14日間、または15日間で得られた皮膚生検に基づく。
【0545】
特定の実施形態では、前述に従って毛包の測定は、外皮攪乱(任意に、攪乱後治療と組み合わせて)方法の成功を評価するための手段を提供する。例示的な限定されない実施形態では、外皮攪乱方法の成功は、例えば、外皮攪乱ステップに供されなかった皮膚領域と比較して、外皮攪乱に供された皮膚領域内の全毛包の測定された増加に基づいて決定される。別の実施形態では、外皮攪乱方法の成功は、例えば、外皮攪乱ステップに供されなかった皮膚領域と比較して、外皮攪乱に供された皮膚領域内のNL、PEL、もしくはPELA毛包構造体等の活性化したまたは刺激を受けた毛包の測定された増加に基づいて決定される。毛包(または活性化したもしくは刺激を受けた毛包)の所望の増加が観察されない一実施形態では、この治療は中断される。毛包(または活性化したもしくは刺激を受けた毛包)の所望の増加が観察されない別の実施形態では、外皮攪乱が繰り返される。毛包(または活性化したもしくは刺激を受けた毛包)の所望の増加が観察されない別の実施形態では、外皮攪乱は、異なる方法(例えば、非機械的な手段から機械的な手段への変更もしくはその逆、またはレーザーから削皮術への変更もしくはその逆、または炎症剤を用いた化学的攪乱への変更)を用いて反復される。毛包(または活性化したもしくは刺激を受けた毛包)の所望の増加が観察されない一実施形態では、外皮攪乱が繰り返されるが、例えば、この深さを10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ミクロンもしくはそれ以上増加させてより深い皮膚の深さまで行う。
【0546】
別の特定の実施形態では、前述に従って毛包の測定は、本明細書に記載される方法による、対象が治療用の候補者であるかどうか、または治療を継続するべきかどうかを評価するための手段を提供する。例示的な限定されない実施形態では、例えば、外皮攪乱ステップに供されなかった皮膚領域と比較して、(任意に、攪乱後治療と組み合わせて)外皮攪乱に供された皮膚領域内の全毛包の測定された増加に基づいて候補資格が確立される。別の実施形態では、例えば、外皮攪乱ステップに供されなかった皮膚領域と比較して、(任意に、攪乱後治療と組み合わせて)外皮攪乱に供された皮膚領域内のNL、PEL、もしくはPELA毛包構造体等の活性化した毛包の測定された増加に基づいて候補資格が確立される。毛包(または活性化した毛包)の所望の増加が観察されない一実施形態では、その特定の対象の治療は中断される。毛包(または活性化した毛包)の所望の増加が観察されない別の実施形態では、外皮攪乱が繰り返される。毛包(または活性化した毛包)の所望の増加が観察されない別の実施形態では、外皮攪乱は、異なる方法(例えば、非機械的な手段から機械的な手段への変更もしくはその逆、またはレーザーから削皮術への変更もしくはその逆、または炎症剤を用いた化学的攪乱への変更)を用いて反復される。毛包(または活性化した毛包)の所望の増加が観察されない一実施形態では、外皮攪乱が繰り返されるが、例えば、皮膚深さを10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ミクロン以上増加させてより深い皮膚の深さまで行う。一実施形態では、ある治療方法が、皮膚の小さな面積(例えば、1×1cm、または1.5×1.5cm、または2×2cm、または2.5×2.5cm、または3×3cm以上)にわたって行われ、毛包がこれらの方法に従って測定され、候補資格が確立される場合、その治療方法が、より大きな皮膚領域、例えば、頭皮の禿げ領域全体等の皮膚のより大きな面積にわたって実行される。
【0547】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、成長期と休止期の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、成長期と休止期の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、成長期と休止期の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、成長期と休止期の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。成長期と休止期の比率のそのような増加は、治療レジメンの開始から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または1年間以内またはその後、またはそれより長く測定され得る。
【0548】
ある特定の実施形態では、治療の成功は、皮膚の治療領域内の毛髪数を測定することによって評価される。例えば、検出可能な毛髪は、例えば、広範囲の写真記録またはフォトトリクログラフィック(phototrichographic)分析(例えば、Uno et al.,2002,Acta Venereol 82:7-12(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される)による写真によって定量化され得る。さらに、写真で検出可能な毛髪の毛幹の厚みの変化を判定することができる。ある特定の実施形態では、毛髪の成長の耐久性は、少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、4年、または少なくとも5年以上の期間にわたってモニタリングされる。
【0549】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、毛髪数を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、軟毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、硬毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、25~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~75%、または75~100%の軟毛の非軟毛(即ち、中間毛または硬毛)への変換をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、毛髪の厚みを、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、毛幹の直径を、約1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、10、15、20、25、または30ミクロンもしくはそれ以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、毛幹の平均直径を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、25~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~75%、または75~100%の毛幹の平均直径の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、硬毛毛包と軟毛毛包の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。毛髪数、軟毛、硬毛、軟毛の非軟毛(例えば、中間毛または硬毛)への変換、毛髪の厚み、毛幹直径、または硬毛と軟毛の比率におけるそのような改善は、治療レジメンの開始から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または1年間以内またはその後、またはそれ以上長く測定され得る。
【0550】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、毛髪数を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、軟毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、硬毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、25~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~75%、または75~100%の軟毛の非軟毛(即ち、中間毛または硬毛)への変換をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、毛髪の厚みを、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書で外皮攪乱治療は、毛幹の直径を、約1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、10、15、20、25、または30ミクロンもしくはそれ以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、毛幹の直径を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される外皮攪乱治療は、硬毛毛包と軟毛毛包の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。毛髪数、軟毛、硬毛、軟毛の非軟毛(例えば、中間毛または硬毛)への変換、毛髪の厚み、毛幹直径、または硬毛と軟毛の比率におけるそのような改善は、治療レジメンの開始から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または1年間以内またはその後、またはそれ以上長く測定され得る。
【0551】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、毛髪数を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、軟毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、硬毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、25~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~75%、または75~100%の軟毛の非軟毛(即ち、中間毛または硬毛)への変換をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、毛髪の厚みを、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、毛幹の直径を、約1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、10、15、20、25、または30ミクロンもしくはそれ以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、毛幹の直径を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される攪乱後治療と組み合わせた外皮攪乱治療は、硬毛毛包と軟毛毛包の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。毛髪数、軟毛、硬毛、軟毛の非軟毛(例えば、中間毛または硬毛)への変換、毛髪の厚み、毛幹直径、または硬毛と軟毛の比率におけるそのような改善は、治療レジメンの開始から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または1年間以内またはその後、またはそれ以上長く測定され得る。
【0552】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、毛髪数を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、軟毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、硬毛を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、25~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~75%、または75~100%の軟毛の非軟毛(即ち、中間毛または硬毛)への変換をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、毛髪の厚みを、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療レジメンは、毛幹の直径を、約1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、10、15、20、25、または30ミクロンもしくはそれ以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、毛幹の直径を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1種以上の育毛促進剤による治療と組み合わせた外皮攪乱治療(任意に、本明細書に記載される攪乱後治療による)は、硬毛毛包と軟毛毛包の比率を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、または100%以上増加させる。毛髪数、軟毛、硬毛、軟毛の非軟毛(例えば、中間毛または硬毛)への変換、毛髪の厚み、毛幹直径、または硬毛と軟毛の比率におけるそのような改善は、治療レジメンの開始から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または1年間以内またはその後、またはそれ以上長く測定され得る。
【0553】
特定の前述の実施形態では、毛髪数、軟毛、硬毛、軟毛の非軟毛(例えば、中間毛または硬毛)への変換、毛髪の厚み、毛幹直径、および/または硬毛の軟毛に対する比率の増加は、治療領域、例えば、外皮攪乱により治療された皮膚領域内に観察される。他の実施形態では、毛髪数、軟毛、硬毛、軟毛の非軟毛(例えば、中間毛または硬毛)への変換、毛髪の厚み、毛幹直径、および/または硬毛と軟毛の比率の増加は、治療領域に隣接して観察される。他の実施形態では、毛髪数、軟毛、硬毛、軟毛の非軟毛(例えば、中間毛または硬毛)への変換、毛髪の厚み、毛幹直径、および/または硬毛と軟毛の比率の増加は、治療領域内およびそこに隣接して観察される。
【0554】
本明細書に記載される(例えば、項5.1、項5.2、項5.3、および/または項5.4に記載される)1つまたは2つまたは3つまたは4つもしくはそれ以上の治療の組み合わせの相乗効果は、より少ない治療を受容している制御対象(または同じ対象における制御皮膚領域)にわたる改善として測定され得る。ある特定の実施形態では、1年間以上、8ヶ月、6ヶ月間、3ヶ月間、2ヶ月間、1ヶ月間、3週間、2週間、1週間、または外皮攪乱前のわずかな期間の育毛促進剤による治療は、外皮攪乱治療(単独で、または本明細書に記載される他の治療と組み合わせて)の有効性を増大させる。ある特定の実施形態では、1年間以上、8ヶ月、6ヶ月間、3ヶ月間、2ヶ月間、1ヶ月間、3週間、2週間、1週間、または外皮攪乱前のわずかな期間またはより長期間の育毛促進剤による治療は、外皮攪乱治療(単独で、または本明細書に記載される他の治療と組み合わせて)の有効性を増大させる。特定の実施形態では、外皮攪乱による単独治療(または本明細書に記載される他の治療と組み合わせて)と比較して、外皮攪乱(単独で、または本明細書に記載される他の治療と組み合わせて)による治療、続いて、本明細書に記載される育毛促進剤による治療の増大した有効性は、非軟毛および軟毛の数の増加として測定される。より特定の実施形態では、外皮攪乱による単独治療(または本明細書に記載される他の治療と組み合わせて)と比較して、外皮攪乱(単独で、または本明細書に記載される他の治療と組み合わせて)による治療、続いて、本明細書に記載される育毛促進剤による治療の増大した有効性は、非軟毛および軟毛の数の増加として測定される。
【0555】
特定の実施形態では、前述に従って毛包の測定は、本明細書に記載される方法による、対象が治療用の候補者であるかどうか、または治療を継続するべきかどうかを評価するための手段を提供する。そのような測定は、治療レジメンの開始から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月もしくはそれ以上の後、または治療レジメンの特定のステップの開始後であり得る。一実施形態では、そのような測定は、外皮攪乱ステップから2、3、または4ヶ月後である。例示的な限定されない実施形態では、例えば、1つまたは複数の治療ステップに供されなかった皮膚領域と比較して、(任意に、攪乱後治療と組み合わせて、任意に1種以上の育毛促進剤の治療と組み合わせて)外皮攪乱に供された皮膚領域内の毛髪(例えば、全毛髪、軟毛、または非軟毛)の測定された増加に基づいて候補資格が確立される。別の実施形態では、例えば、外皮攪乱ステップに供されなかった皮膚領域と比較して、(任意に、攪乱後治療と組み合わせて、任意に1種または複数の育毛促進剤の治療と組み合わせて)外皮攪乱に供された皮膚領域内の毛髪(例えば、全毛髪、軟毛、または非軟毛)の測定された増加に基づいて候補資格が確立される。毛髪の所望の増加が観察されない一実施形態では、その特定の対象の治療は中断される。毛髪の所望の増加が観察されない別の実施形態では、外皮攪乱および/または攪乱後治療および/または1種または複数の育毛促進剤による治療が繰り返される。毛髪の所望の増加が観察されない別の実施形態では、外皮攪乱は、異なる方法(例えば、非機械的な手段から機械的な手段への変更もしくはその逆、またはレーザーから削皮術への変更もしくはその逆、または炎症剤を用いた化学的攪乱への変更)を用いて反復される。毛髪の所望の増加が観察されない一実施形態では、外皮攪乱が繰り返されるが、例えば、皮膚深さを10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ミクロンもしくはそれ以上増加させてより深い皮膚の深さまで行う。毛髪の所望の増加が観察されない一実施形態では、対象は、攪乱後治療剤、例えば、炎症剤または毛包発達の薬理学的モジュレータを含む局所組成物に変更される。毛髪の所望の増加が観察されない一実施形態では、対象は、異なる育毛促進剤の治療、例えば、薬剤の用量の増加、または異なる薬剤による治療(例えば、ミノキシジルからフィナステライドへの変更もしくはその逆、またはミノキシジルからラタノプロストへの変更もしくはその逆、またはミノキシジル単独からミノキシジルとフィナステライドの組み合わせもしくはミノキシジルとラタノプロストの組み合わせへの変更等)に変更される。
【0556】
一実施形態では、ある治療方法は、皮膚の小さな面積(例えば、1×1cm、または1.5×1.5cm、または2×2cm、または2.5×2.5cm、または3×3cm以上)にわたって実行され、毛髪が前述の方法に従って測定され、候補資格が確立される場合、その治療方法が、より大きな皮膚領域、例えば、頭皮の禿げつつある領域全体等の皮膚のより大きな面積にわたって実行される。
【0557】
5.8.4.1 毛包を評価するための方法
ある特定の実施形態では、毛包は、対象となる構造体(SOI)について以下の基準に従って特徴付けられる。
【0558】
NL(新遺伝子のような):「小さな」特質である毛幹、皮脂腺、または毛穴のうちの1つのみを有する、付着していない原始的な毛包構造体。皮膚チャンネルは、不在であるか、または決定的ではない。NLのさらなる下位カテゴリーには、DP(皮膚乳頭)を含むNL/活性、DPを含むNL/不活性、DPを含まないNL/活性、およびDPを含まないNL/不活性が含まれる。
【0559】
PEL(先在するような):毛幹、皮脂腺、または毛穴の「大きな」特質のうちの1つ以上または「小さな」特質のうちの2つ以上を有する、付着していない原始的な毛包構造体。皮膚チャンネルが存在する。PELのさらなる下位カテゴリーには、DP(皮膚乳頭)を含むPEL/活性、DPを含むPEL/不活性、DPを含まないPEL/活性、およびDPを含まないPEL/不活性が含まれる。
【0560】
PELA(先在するような付着した):表皮に延在するより大きな成熟した毛嚢脂腺単位に付着する原始的な毛包構造体。
【0561】
特定の実施形態では、これらの基準は、
図31に概説される対象となる構造体を分類するためのフローチャート/アルゴリズムから算出される。一実施形態では、対象となる構造体を得るおよび分類するために以下の特定のプロトコルを使用する:
生検は、対象の皮膚の治療(および/または対照)部位から採取される。例えば、この生検は、外皮攪乱から14日後に回収され得る。1つまたは2つもしくはそれ以上のパンチ生検が、それぞれ、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mmもしくはそれ以上の直径で対象から採取される。特定の実施形態では、このパンチ生検は、直径4mmである。生検は、表皮-真皮の位置付けを無傷に維持するように、パンチ生検の正中線を縦方向に下方に二等分にし、4%のパラホルムアルデヒド中で24時間固定し、1×PBS中の30% スクロースに24時間移し、次いで、OCT(Tissue-Tek)中に二等分した側面を下向きに包埋して、ドライアイスまたは-20℃の冷凍庫のいずれかで冷凍し続ける。それぞれのcryoblockは、逐次に分割される。2つの部分が、H&Eで染色した全て3つのスライドと共にそれぞれのスライド上に収集される。
【0562】
H&Eで染色したスライドは、形態学に基づいて特定された対象となる構造体(SOI)について分析される。表皮に延在した別の毛嚢脂腺単位に付着したSOIは、先在する付着した(PELA)として分類される。次いで、付着しなかったSOIは、皮膚チャネル、毛幹(小さいもしくは大きい)、皮脂腺(小さいもしくは大きい)、および/または毛穴(小さいもしくは大きい)の存在に基づいて分類される。1つ以上の大きな特質または2つ以上の小さな特質は、PELとして分類されるSOIをもたらすが、一方、1つのみの小さな特質は、NLとして分類されるSOIをもたらす。皮膚チャネル、毛幹、皮脂腺、または毛穴のいずれも有さない、別の毛嚢脂腺単位に付着しないSOIは、AP、Ki67、Ber-EP4、およびエラスチンのために染色する。
【0563】
SOIは、それらのマーカー発現に基づいて分類される:アルカリ性ホスファターゼ活性(DPマーカー)の存在もしくは不在;Ki67(増殖マーカー)の存在もしくは不在;Ber-EP4(毛包マーカー)の存在もしくは不在;皮膚チャネル(エラスチンを用いて可視化した細胞外マトリックスマーカー)の存在もしくは不在。皮膚チャネルを有さないSOIはNLとして分類されるが、一方、皮膚チャネルを有するものはPELとして分類される。Ber-EP4が陰性であるSOIは、非毛包として分類される。NLおよびPELは、DPの有無(陽性もしくは陰性AP染色)および活性もしくは不活性(陽性もしくは陰性Ki67染色)のようなさらなるカテゴリーに精緻化する。Ber-EP4に対する決定的でない染色は、Ber-EP4に対する陽性結果として処理され、アルカリ性ホスファターゼまたはKi67に対する決定的でない染色は、NL(皮膚チャネルが存在しない)またはPEL(皮膚チャネルが存在する)として分類されるSOIをもたらす。
【0564】
5.8.4.2 走査型レーザー共焦点顕微鏡
走査型レーザー共焦点顕微鏡(CM)は、インビボで皮膚を可視化するためにレーザー光線を使用する非侵襲性画像技術である。0日目に開始する治療の進行は、CMを単独で用いてまたは写真撮影と組み合わせてモニタリングされ得る。この顕微鏡浸液は、反射したレーザー光線によって検出されるような組織内の屈折指数の変化を測定するために、油/水の浸水を必要とする。表皮、真皮乳頭層、および表層真皮網状層のリアルタイムの非侵襲性共焦点赤外線画像は、従来の光学顕微鏡検査法に相当する解像度を用いて350μmの最大深さまで可能である。皮膚は、組織学に必要とされる固定、セクショニング、および染色することなくその自然な状態で画像化することができる。したがって、動的プロセスは、長時間にわたって非侵襲的に観察することができる。研究ツールとして、RCMは、いくつかの色素性(Grimes,2005,Microdermabrasion.Dermatol Surg 31:1351-1354)および非色素性皮膚病変のインビボ評価を促進することが報告されている。Curiel-Lewandrowski,et al.,Use of in vivo confocal microscopy in malignant melanoma:an aid in diagnosis and assessment of surgical and nonsurgical therapeutic approaches,Arch Dermatol 140 (2004),pp.1127-1132、Gerger et al.,Diagnostic applicability of in vivo confocal laser scanning microscopy in melanocytic skin tumors,J Invest Dermatol 124 (2005),pp.493-498、Swindells et al.Reflectance confocal microscopy may differentiate acute allergic and irritant contact dermatitis in vivo,J Am Acad Dermatol 50 (2004),pp.220-228、Aghassi,et al.,Time-sequence histologic imaging of laser-treated cherry angiomas with in vivo confocal microscopy,J Am Acad Dermatol 43 (2000),pp.37-41、およびGonzalez et al.Non-invasive (real-time) imaging of histologic margins of a proliferative skin lesion.In Vivo.J Invest Dermatol 1998 111:538-539を参照のこと。この技術は、マウスにおける毛包新生と関連する構造体を含む、毛包を画像化するために首尾よく使用されており、ヒトにおいて同様の実用性を有し得る。本明細書に記載される治療方法へのCM画像化の組み込みはまた、治療皮膚部位の生検の最適な時期を決定するのにも役立ち得る。
【0565】
一実施形態では、ヒト研究のために使用される装置(Vivascope; Lucid,Inc.)を用いて共焦点顕微鏡検査が行われる。医師によって必要であると考えられ得る例示的なプロトコルが続く。対象は、頭皮の治療領域の可視化を可能にするために傾いたまたは座っている姿勢で位置付けられる。さらに、それぞれの対象は、1人の対象当たり最低15分間画像化するために画像化する姿勢を維持する。医療グレードの粘着剤は、皮膚の表面に流体浸漬リングを固定する。このリングは、画像期間を通して付着して残り、新しいリングがそれぞれの試験部位に適用される。一実施形態では、治療レジメンの開始から0、7、および14日目(生検が14日目に行われなかった場合、11および17日目)に、CMが行われる。
【0566】
5.8.4.3 瘢痕性脱毛症の治療を評価するための方法
瘢痕性脱毛症のための本明細書に記載される治療の安全性および有効性は、本明細書に記載される方法を用いて測定され得る。いくつかの実施形態では、治療の成功は、視覚的または写真で検出された毛髪数の増加として決定される。他の実施形態では、成功した治療は、毛包構造体および瘢痕特性のために皮膚生検によって評価される。他の実施形態では、頭皮の炎症の症状および兆候が制御され、状態の進行が停止するまで治療は継続される。ある特定の実施形態では、頭皮の炎症は、頭皮の生検によって測定される。例えば、いくつかの実施形態では、例えば、かゆみ、ほてり、疼痛、および圧痛がなくなり、頭皮の赤み、落屑、および/または膿疱がもはや存在せず、毛髪脱落が延在されなくなるまで治療は継続される。一般に、瘢痕性脱毛症は、休眠期間後に再活性され得、治療は、状態の症状または兆候の再発で繰り返さなければならない場合がある。
【0567】
6.実施例:毛包構造体における削皮術の効果の臨床評価
以下のプロトコルの目的は、ヒト皮膚において新遺伝子または新遺伝子のような毛包の形成の誘発における削皮術の効果を決定することである。
【0568】
あらゆる患者集団が治療され得るが、以下のプロトコルの患者は、20~50歳の白人男性であり、硬毛および小型化した毛髪の両方を有する領域として定義される移行ゾーンの存在下で、アンドロゲン性脱毛症に罹患しており、Fitzpatrick皮膚型1~4(これらの対象においてケロイド形成および色素沈着減少の危険性が増加するため、Fitzpatrick皮膚型等級が高い者は好ましくない)を有し得る。治療が禁忌であり得る患者(特に、臨床試験段階で)は、直接先行治療の30日以内に治験薬物を用いた任意の臨床研究に現在参加しているもしくは参加したことがある者、イソトレチノイン(Accutane)の現行もしくは最近の使用(1年未満)がある者、現在ホルモン療法もしくはステロイドもしくは他の免疫刺激剤を施行している者、または過去30日以内にこれらの薬物を摂取したことがある者(ステロイド剤吸引は許容される)、RogaineもしくはPropeciaを現在使用しているまたは過去45日間においてそれらを使用したことがある者、免疫力が低下したもしくは免疫障害を治療するための療法を受けている者、本明細書に記載されるプロトコルに干渉し得る臨床的に有意な病状を有する者、治療すべき領域における他の活性皮膚疾患(光線性角化症もしくは乾癬等)または皮膚感染(細菌、真菌、もしくはウイルス、特に HSV感染)を有する者、ケロイドもしくは肥大瘢痕の経歴がある者、リドカインへの過感受性、不良な創傷治癒、糖尿病、もしくは凝血障害、現在薬物もしくはアルコール依存症中である、精神機能障害、もしくはコンプライアンスを制限する他の要因を有する者、日焼けした皮膚を有する者、またはアスピリン以外の抗血小板薬を現在摂取している者であり得る。
【0569】
アルミナ粒子を用いた削皮術が0日目に行われる。表皮の除去および真皮乳頭層の破壊(光沢のある白っぽい外観によって検出可能)を含み、治療する領域に少量の点状出血の形成を誘発する、削皮術を約100μmの深さまで行う。頭頂部領域内の過渡期な禿げ領域(または進行しつつある辺縁部)に相当する頭皮皮膚の2つの部位において、削皮術が行われる。次いで、この部位は、操作することなく治癒させる。11日目または14日目のいずれかで4mmのパンチ生検を行い、毛包と関連する構造体は、組織学的評価に基づいてこれらの対象において調べる。組織学的対照としての役割を果たすために、治療領域から1cm離れた未治療領域上で、第3の生検を14日目に任意に行う。新しい(または新遺伝子のような)毛包と関連する毛包構造体の限定された証拠が14日目に観察される場合には、別の生検を17日目に行ってもよい。11日目の生検を予定されていて、創傷の痂皮が8日目よりも前に剥がれた対象は、その3日後に生検の予定を組み直す。反対に、痂皮が10日目までに剥がれなかった対象は、痂皮が剥がれてから3日後に生検の来院の予定を組み直す。痂皮は、およそ6~10日目に剥がれることが予測される。
【0570】
プロトコルは、所見に従って修正され得る。例えば、削皮術が、例えば、初めの15人の患者のうちの少なくとも3人において、4mmのパンチ生検において新遺伝子のような毛包の存在をもたらす場合、さらなる患者が、頭頂部上の最も大きな禿げ部位に相当するある部位および頭頂部領域内の過渡期な禿げ部位(または進行しつつある辺縁部)に相当するある部位の2つの部位において治療される。
【0571】
6.1 治療部位の決定
それぞれの対象の頭皮における2つの部位は、治療のために特定され、頭頂部領域内の過渡期な禿げ領域(または進行しつつある辺縁部)に両方とも対応する。患者の中には、頭頂部領域内の最も大きな禿げ部位内の治療する者もいる。
【0572】
6.2 削皮術
この処置は、治療する領域の存在する毛髪を剃り/刈り込み、続いて、消毒洗浄剤を用いて徹底的な洗浄を行う。しびれ薬、例えばリドカインHCL 2%およびエピネフリンを1:100,000で注入して、治療する表面を麻酔する。表皮の除去および真皮乳頭層の破壊(光沢のある白っぽい外観によって検出可能である)を含む削皮術を約100μmの深さまで行い、治療する領域に小さい点状出血を形成する。削皮された部位はそれぞれ、約1.5cm×1.5cmの正方形である。削皮術のために好適な装置は、Tiemann and CompanyからのASEPTICO ECONO-DERMABRADER、Advanced MicrodermからのDXシステム(例えばhttp://www.advancedmicroderm.com/products/tech_specs.htmlを参照)、またはGenesis BiosystemsからのM2-Tシステムである。アルミニウム結晶が眼に侵入することによる合併症(結膜浮腫、羞明、表在性点状角膜炎)を避けるために、粘着性のある眼保護シールドを、処置中患者に装着させて、医師は、安全メガネを装着しなければならない。削皮術ツールを慎重に操作して、所望のレベルに達するまで皮膚の層を慎重に除去する。この処置は、通常、ほんの数分、最長約30分しかかからない。
【0573】
削皮術前、患者は、処置中コンタクトレンズを装着しない、治療を行う3日前にレチノール、グリコール、または他のヒドロキシ酸、サリチル酸、ベータヒドロキシル酸等の市販の剥離製品の使用を中断する、治療を行う30日前にレチノイドの使用を中断する、治療を行う前の2週間、ボトックスまたはコラーゲン注入を受容しないように求められなければならない。
【0574】
処置後、治療した皮膚は、赤く腫れて圧痛があることもあり、創傷は、新しい皮膚の成長が開始する(これは、通常、7~10日間かかる)まで以下のことについて注意しなければならない:1)この領域を清潔に保ち、本日中乾燥させる。治療領域を覆ったり、包帯をしたり、あるいは処理しない、2)洗髪する際には、この領域を触らないよう注意する、3) この領域を軽くたたいて乾燥させる。治療領域を覆ったり、包帯をしたり、あるいは処理しない。
【0575】
治療領域は、新しい皮膚が成長するにつれてかゆくなることがあり、削皮術から数週間、少し膨張し、炎症を起こしやすく、鮮やかなピンク色になることがある。
【0576】
あらゆる合併症を防ぐために、以下の対策が取られる。
・担当医にいかなる黄色の痂皮形成または痂皮(これは、感染症の始まりである恐れがある)を知らせる。
・腫れおよび赤みは、数日後から1ヶ月で治まらなければならない。領域の持続的な赤みは、瘢痕を形成する兆候であることがあるため、直ちに担当医に連絡を取る。
・削皮術後から初めの7日間、水泳は許可されない。
・異常な色素沈着を避けるために、一旦新しい皮膚が治癒されたら、太陽を避け、微細削皮術後、少なくとも3ヶ月間、毎日、広域日焼け止め剤を適用する。窓ガラスを通した太陽でさえ、望ましくない色素沈着を促す場合がある。
【0577】
6.3 パンチ生検
この処置は、消毒洗浄剤を用いて生検する領域を徹底的な洗浄することから始める。リドカインHCL 2%およびエピネフリン(それぞれの部位に約0.5cc)を1:100,000で注入して、生検する部位を麻酔する。4mmのパンチ生検を行う。2 4.0のエチロン縫合糸を用いて生検部位が、閉塞される。ワセリンおよびバンドエイドが適用される。組織試料は、組織学的分析のためにホルマリン中に保存される。
【0578】
6.4 主要評価項目
削皮術後、新しいまたは新遺伝子のような毛包と関連する構造体の組織学的分析。帰無仮説は、ヒトにおける現行の定説であるため、このような構造体が形成されないことである。治療への陽性応答は、4mmのパンチ生検における3つ以上の新遺伝子のような毛包の出現として特徴付けられる。
【0579】
要因のうちで、治療の成功が決定されるときに評価されるのは、痂皮形成/痂皮、面皰、感染、色素変化(例えば、不在の色素沈着減少(軽度、中等度、もしくは重度)、または色素沈着過度(軽度、中等度、もしくは重度))、瘢痕化、再上皮化の存在または不在、あるいは巨視的観察による毛包の存在である。
【0580】
6.5 副次的評価項目
1)外皮攪乱後のいつが、新しい(または新遺伝子のような)毛包の形成が最も活性であるかを決定すること。
【0581】
2)それぞれの生検における毛包数を定量化し、毛包の形態を特徴付けること
3)攪乱部位の臨床的特徴付け
6.6 結果
上記のプロトコルに従って、臨床研究が実行された。特に、臨床研究の目的は、表皮およびいくつかの真皮乳頭層の除去を含む削皮術がヒト頭皮において毛包を誘発し得るかどうかを試験することであった。
【0582】
簡潔に言えば、0日目に、15人の対象は、アルミナ粒子を用いた、標準的な粒子に媒介された削皮術(「PMDA」;DXシステム、Advanced Microderm(商標))を受容した。表皮の除去および真皮乳頭層の破壊(光沢のある白っぽい外観によって検出可能である)を含むPMDAを約100ミクロンの深さまで行い、治療領域に小さな点状出血の形成を促した。
【0583】
15人の登録した対象のうち13人の対象が、2つの削皮部位(右側および左側頭皮)のそれぞれの皮膚生検を有した。これらの13人の対象のうち2人の対象(15%)が、26個の適切な生検の中から合計4個の陽性生検に対して、左側および右側部位の両方に存在する新遺伝子のような毛包を有した(15%)。13人の対象のうちの10人の対象は、第3の対照部位で生検を有した。10人の対象の中から1人の対象(10%)が、10個の適切な生検の中から合計1つの陽性生検に対して、新遺伝子のような毛包を有した(10%)。
この研究は以下にさらに詳述される。
【0584】
6.6.1 方法
15人の適任な対象を、無作為化することなく、この試験に採用し、2つの部位(頭皮の左側および右側)への削皮術を受容させた。登録前に、対象を、適格性についてスクリーニングし、この時、併用薬を含む完全な病歴、対象の頭皮の基礎評価、およびバイタルサイン(VS)を含む集中的な健康診断を行った。試験対象患者基準/除外基準を満たした15人の対象を登録した。有害事象および現行の病状の変化を検出するための評価がこの研究を通して行われた。適切な治療後のケアを確実にするために、全ての対象は、ベースラインとなる来院の終了時に創傷ケア指示用紙(Wound Care Instructions Form)が渡された。
【0585】
加えて、これらの対象を、Fitzpatrick皮膚型について評価し、1~4のFitzpatrick皮膚型を有する対象のみが本研究において認められた。ケロイド形成および色素沈着減少の危険性が増加するため、Fitzpatrick皮膚型等級が高い者は除外された。
【0586】
削皮部位のデジタル写真を、ベースライン、ならびに対象が診療所に戻ったPMDA後の日のいずれか、例えば7、11、14、17、24、および60日目、または対象が所定外日に戻った場合には他の中間日に撮影した。ベースライン(0日目)に、頭皮部位において1.5cm×1.5cmの正方形の対角線上に反対側の隅の2点に長さ4mmの28ゲージ針を用いて入れ墨を入れた。滅菌(プラスチック)材料のテンプレートを用いて入れ墨を誘導した。入れ墨を用いて、この研究を通して異なる時間で得られた写真を登録した。登録のための入れ墨を用いて、高解像度のクローズアップしたデジタル画像(Nikon(商標)DLシリーズカメラ)を用いて、創傷および治癒プロセスの可視的側面を記録した。
【0587】
0日目に、15人の対象は、アルミナ粒子を用いて、粒子に媒介された削皮術(PMDA)(Advanced Microderm(商標)からのDXシステム)を受容した。全ての対象は、眼保護物および処置用麻酔を与えられた。この処置は、治療領域に既存の毛髪を剃り/刈り込むことから始め、続いて、消毒洗浄剤を用いて徹底的な洗浄を行った。リドカインHCL 2%+エピネフリンを1:100,000で注入して治療する表面を麻酔した。表皮の除去および真皮乳頭層の破壊(光沢のある白っぽい外観によって検出可能である)を含むPMDAを約100μmの深さまで行い、治療領域に小さい点状出血の形成を促した。2つの削皮部位(右側および左側頭皮の頭頂部領域内の過渡期な禿げ領域または進行しつつある辺縁部)はそれぞれ、約1.5cm×1.5cmの正方形であった。対象は、その領域を操作することなく治癒させるように指示された。PMDAから得られた痂皮は、概して、PMDAから6~10日後に剥がれた。削皮された領域の位置を下の表2に列挙する。
【0588】
【0589】
使用した局所麻酔薬の容量および処置中にコンタクトレンズ装着の有無を、表3に表記する。全ての対象は、アルミニウム結晶が眼に侵入することによる合併症を避けるために、粘着性のある眼保護シールドを使用した。
【0590】
【0591】
頭皮は、ベースライン、任意の抜糸日、7、11、14、および60日目のうちのいずれかまたはその全てにおいて視診され、痂皮形成/痂皮、面皰、感染、色素変化、瘢痕化、再上皮化、および巨視的観察による毛包の存在等の特徴を分析した。それぞれの対象に対する頭皮試験の時期および結果を、表4中に見出すことができる。
【0592】
【0593】
6.6.2 安全性結果
安全性は、治療部位での局所反応の臨床的かつ写真による評価を用いて本研究を通して評価され、有害事象が報告された。表5中の、本研究の経過中に生じた報告された8例の有害事象(AE)のうち7例は、試験治療下で発現した有害事象(TEAE)であり、1例は非試験治療下で発現した有害事象(NTEAE)であり、それぞれの事象は異なる対象において生じた。7例のTEAEのうち5例(疼痛2例、炎症2例、創傷感染1例)は、PMDAに関連していると考えられ、2例(自動車事故および副鼻腔ポリープに続発する頭皮裂傷)は、PMDAに関連していないと考えられた。NTEAEの1例は、副鼻腔炎であった。重篤有害事象はなかった。全ての事象は、最後の研究の訪問時にまでには消散した。
【0594】
【0595】
6.6.3 毛包分析結果
PMDAから10~14日間で、元の15人の対象のうち13人は、診療所に戻って、彼らの右側および左側PMDA部位に4mmのパンチ生検を行った。13人の対象のうち10人の対象はまた、組織学的対照(対照)としての役割を果たす、削皮された領域から1cm離れた削皮されていない領域に第3の生検を有することに同意した。
【0596】
新遺伝子のような毛包の存在は、通常の組織学的方法を用いて生検標本において評価された。毛髪の毛穴の存在もしくは不在、毛幹の存在もしくは不在、および皮脂腺の存在もしくは不在を含む一般的な形態学的パラメータがヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)によって染色された部分から評価された。エラスチン線維の存在は、Luna染色を用いて判定された。免疫組織化学は、BerEP4(胎児毛包マーカー)およびKi67(細胞増殖マーカー)に対抗する抗体を用いて行われた。アルカリ性ホスファターゼ(AP)組織化学は、HFの皮膚乳頭を特定するために使用された。
【0597】
新遺伝子のような毛包は、以下の基準の一部または全てを用いることによって特徴付けられた:毛髪が、1)軟毛および/もしくは軟毛のような毛包よりも長さが短い、2)先在する毛嚢脂腺単位との接続を欠いている、3)皮膚表面で毛穴を欠いている、4)高分化型の皮脂腺を欠いている、5)毛幹を欠いている、6)エラスチン陰性の「ストリーマ(streamer)」または「皮膚チャネル」を欠いている、7)アルカリ性ホスファターゼ、BerEP4(胎児毛包マーカー)、およびKi67(細胞増殖マーカー)に対して陽性染色がある。
【0598】
H&E染色は、新遺伝子のような毛包に対して陰性であった場合、他の染色法は行わなかった。新遺伝子のような毛包が様々な染色によって検出された2人の対象(3番および5番)からのデータを、表6に見ることができる。
【0599】
【0600】
PMDA後に新遺伝子のような毛包を検出することができる時間も考慮された。27個の生検を14日目(PMDAから14日後)に得た。新遺伝子のような毛包の証拠となる2人の対象(3番および5番)の生検をそれぞれ、14日目に生検を得た。また、14日目に新遺伝子のような毛包に対して陰性である23個の生検があった(7個の右側PMDA領域、10個の左側PMDA領域、6個の対照領域)。10日目の生検(3個の生検)、11日目の生検(1個の生検)、13日目の生検(1個の生検)、および20日目の生検(1個の生検)は、新遺伝子のような毛包に対して陰性であった。対照領域において行われた10個全ての生検の対象(削皮されない)は、新遺伝子のような毛包に対して陰性であった(13日目に1個、14日目に6個、20日目に1個、および不明日に2個)。
【0601】
13人の対象のうち2人の対象(15%)が、26個の適切な生検の中から合計4個の陽性生検に対して、左側および右側部位の両方に存在する新遺伝子のような毛包を有した(15%)(表6)。合計で、表6に示されるように、11個の新遺伝子のような構造体が削皮された部位において同定された。対照的に、このような構造体の1個だけが、治療されていない対照部位から採取した生検において(1人の対象において)特定された。組織学的分析では、新遺伝子のような毛包の形態に類似した少数の構造体もあったが、皮膚チャネルがあった可能性が高く、これはこれらの構造体が先在する毛包から起因することを示唆している。
【0602】
7.実施例:レーザーまたは削皮術による外皮攪乱後の毛髪の成長の評価
この研究の目的は、例えば、ヒト皮膚における毛包の活性化、刺激、もしくは再構成、および/または新生によって証明される、毛髪の成長を促進する際の削皮術と比較した外皮攪乱法としての3つのレーザー処置の効果を評価することである。
【0603】
あらゆる患者集団が治療され得るが、この研究における治療のために選択される患者は、20~50歳の白人男性であり、硬毛および小型化した毛髪の両方を有する領域として定義される移行ゾーンの存在下で、アンドロゲン性脱毛症に罹患しており、Fitzpatrick皮膚型1~4(これらの対象においてケロイド形成および色素沈着減少の危険性が増加するため、Fitzpatrick皮膚型等級が高い者は好ましくない)を有する。治療が禁忌であり得る患者(特に、臨床試験段階で)は、直接先行治療の30日以内に治験薬物を用いた任意の臨床研究に現在参加しているもしくは参加したことがある者、イソトレチノイン(Accutane)の現行もしくは最近の使用(1年未満)がある者、現在ホルモン療法もしくはステロイドもしくは他の免疫刺激剤を施行している者、または過去30日以内にこれらの薬物を摂取したことがある者(ステロイド剤吸引は許容される)、RogaineもしくはPropeciaを現在使用しているまたは過去45日間においてそれらを使用したことがある者、免疫力が低下したもしくは免疫障害を治療するための療法を受けている者、本明細書に記載されるプロトコルに干渉し得る臨床的に有意な病状を有する者、治療すべき領域における他の活性皮膚疾患(光線性角化症もしくは乾癬等)または皮膚感染(細菌、真菌、もしくはウイルス、特にHSV感染)を有する者、ケロイドもしくは肥大瘢痕の経歴がある者、リドカインへの過感受性、不良な創傷治癒、糖尿病、もしくは凝血障害、現在薬物もしくはアルコール依存症中である、精神機能障害、もしくはコンプライアンスを制限する他の要因を有する者、日焼けした皮膚を有する者、またはアスピリン以外の抗血小板薬を現在摂取している者であり得る。
【0604】
適任な対象は、無作為化することなく、この試験に採用される。4つの1.5cm×1.5cmの治療部位が、頭皮の前部および後部の過渡な領域の左側および右側に選択される。これらの部位は、左前部、左後部、右前部、右後部と指定される。全ての4つの部位は、前部または後部頭皮内の過渡期な禿げ領域(または進行しつつある辺縁部)に相当する。それぞれの部位で使用されるべき外皮攪乱法は、無作為に割り当てる。
【0605】
4つの外皮攪乱法は、全表皮の除去および真皮乳頭層の破壊を含み、治療する領域に少量の点状出血の形成を誘発し得る、様々な深さに行われる。外科医は、0日目に頭皮の過渡期な禿げ領域(または進行しつつある辺縁部)に沿って治療部位のそれぞれに無作為化スケジュールに従ってそれぞれの外皮攪乱を行う。対象は、その領域を操作することなく治癒させるように指示される。対象は、戻って、14日目に4mmのパンチ生検を受けるように求められる。単一の続く来院は、28日目に行われ、パンチ生検の治癒を文書化し、抜糸を行い、あらゆる有害事象を回収する。新しい毛髪の存在、および新しい活性化した、もしくは再構成された毛包の証拠は、組織学的に検査される。この予備的な試験設計構造は、外皮攪乱のこれらの様々な方法が存在する場合、これらの後に有意な毛髪の成長または毛包の活性化、再構成、または新生を観察するより多くの可能性を提供する。
【0606】
7.1 外皮攪乱法
外皮攪乱前、患者は、処置中コンタクトレンズを装着しない、治療を行う3日前にレチノール、グリコール、または他のヒドロキシ酸、サリチル酸、ベータヒドロキシル酸等の市販の剥離製品の使用を中断する、治療を行う30日前にレチノイドの使用を中断する、治療を行う前の2週間、ボトックスまたはコラーゲン注入を受容しないように求められなければならない。
【0607】
それぞれの処置は、治療領域の既存の毛髪を剃り/刈り込みから始め、続いて、消毒洗浄剤を用いて徹底的な洗浄を行う。しびれ薬、例えばリドカインHCL 2%およびエピネフリンを1:100,000で注入して、治療する表面を麻酔する。
【0608】
それぞれの処置後、治療した皮膚は、赤く腫れて圧痛があることもあり、創傷は、新しい皮膚の成長が開始する(これは、通常、7~10日間かかる)まで以下のことについて注意しなければならない:1)この領域を清潔に保ち、本日中乾燥させる。治療した領域を覆ったり、包帯をしたり、あるいは処理しない、2)洗髪する際には、この領域を触らないよう注意する、3)この領域を軽くたたいて乾燥させる。治療領域を覆ったり、包帯をしたり、あるいは処理しない。
【0609】
治療領域は、新しい皮膚が成長するにつれてかゆくなることがあり、削皮術から数週間、少し膨張し、炎症を起こしやすく、鮮やかなピンク色になることがある。
【0610】
あらゆる合併症を防ぐために、以下の対策が取られる。
・担当医にいかなる黄色の痂皮形成または痂皮(これは、感染症の始まりである恐れがある)を知らせる。
・腫れおよび赤みは、数日後から1ヶ月で治まらなければならない。領域の持続的な赤みは、瘢痕を形成する兆候であることがあるため、直ちに担当医に連絡を取る。
・削皮術後から初めの7日間、水泳は許可されない。
・異常な色素沈着を避けるために、一旦新しい皮膚が治癒されたら、太陽を避け、微細削皮術後、少なくとも3ヶ月間、毎日広域日焼け止め剤を適用する。窓ガラスを通した太陽でさえ、望ましくない色素沈着を促す場合がある。
【0611】
7.1.1 削皮術
全表皮の除去および真皮乳頭層の攪乱(光沢のある白っぽい外観によって検出可能である)を含む標準的な削皮術を約100μmの深さまで行い、治療領域に小さい点状出血の形成を促す。削皮された部位はそれぞれ、約1.5cm×1.5cmの正方形である。削皮術のために好適な装置は、Tiemann and CompanyからのASEPTICO ECONO-DERMABRADER、Advanced MicrodermからのDXシステム(例えばhttp://www.advancedmicroderm.com/products/tech_specs.htmlを参照)、またはGenesis BiosystemsからのM2-Tシステムである。アルミニウム結晶が眼に侵入することによる合併症(結膜浮腫、羞明、表在性点状角膜炎)を避けるために、粘着性のある眼保護シールドを、処置中患者に装着させて、医師は、安全メガネを装着しなければならない。削皮術ツールを慎重に操作して、所望のレベルに達するまで皮膚の層を慎重に除去する。この処置は、通常、ほんの数分しかかからない。
【0612】
7.1.2 超パルスCO2フラクショナルレーザー
超パルス(フラクショナル様式)CO2レーザーを用いて、表皮および真皮を約100~500μmの深さまで破壊する。超パルスレーザーは、削皮術の効果に類似した効果をもたらすが、外皮攪乱は、非瘢痕製フラクショナルアブレーションにおいてより大きなエネルギー量を皮膚のより深い部分に送達する。治療領域は、約1.5cm×1.5cmの正方形である。超パルスは、パターンサイズ8、密度4を用いて、最大350mJ、最大52.5ワットを送達するように設定され、正方形の治療部位を最大5回のパスで満たす。
【0613】
7.1.3 超パルスCO2アブレーションレーザー
超パルスCO2レーザー(アブレーション様式)を用いて、表皮および真皮を約100~500μmの深さまで攪乱する。超パルスレーザーは、削皮術の効果に類似した効果をもたらすが、この外皮攪乱法は、削皮術に類似する非瘢痕性アブレーションにおいてより大きなエネルギー量を皮膚のより深い部分に送達する。治療領域は、約1.5cm×1.5cmの正方形である。超パルスは、1ミリ秒当たり最大500mJ、1ワットまで送達するように設定され、2Hzで3mmのスポットサイズを用いて、正方形の治療部位を満たすためには、最大15回のパスが必要とされ得る。
【0614】
7.1.4 CANDELAスムースピールフルアブレーションエルビウムレーザー アブレーションエルビウムレーザーは、最大15回のパスで最大500μmの深さの皮膚の攪乱を引き起こすように、240ミリ秒で最大5ジュールのエネルギーをレベル3で送達するように設定される。治療領域は、約1.5cm×1.5cmの正方形である。
【0615】
7.2 パンチ生検
この処置は、消毒洗浄剤を用いて生検されるべき部位を徹底的な洗浄することから始める。リドカインHCL 2%およびエピネフリン(それぞれの部位に約0.5cc)を1:100,000で注入して、生検する部位を麻酔する。4mmのパンチ生検を行う。2 4.0のエチロン縫合糸を用いて生検部位が、閉塞される。ワセリンおよびバンドエイドが適用される。組織試料は、組織学的分析のためにホルマリン中に保存される。
【0616】
治療を受けた対象は、生検を受けてから10日で再来院することを求められる。この来院時、抜糸、治療領域の評価、治療領域の写真撮影、対象の病歴および併用薬の見直し、有害事象の文書化、最終評価のような処置および評価が行われる。
【0617】
7.3 主要評価項目
主要評価項目は、研究14日目に4mmのパンチ生検の組織学的分析によって決定される新遺伝子のような毛包構造体の数である。
【0618】
7.4 副次的評価項目
1)研究14日目に4mmのパンチ生検において毛包の形態を決定すること。
【0619】
2)破壊された領域の臨床的特徴付けを決定すること。
【0620】
7.5 結果
下の表7に示されるように、全て4つの外皮攪乱モードは、活性化した毛包を生成した。削皮術(Tiemann and CompanyのAseptico Econo削皮器を用いて)は、最大数の活性化した毛包をもたらし、レーザー処置様式の中で、フラクショナルレーザーによる処置は、最大数の活性化した毛包をもたらした。削皮術研究からの例示的な結果を、
図23A~D)に提供し、これは削皮術(「DA」)による外皮攪乱で治療した対象の皮膚領域における毛髪の成長を示す。
図23Eは、この削皮術様式直後に得られた点状出血を示す。
図23Fは、血管が新生された皮膚乳頭を囲む皮膚の表皮小稜の画像を提供し、これは、例えば100~150ミクロンの深さへの削皮術による外皮攪乱が、どのように点状出血を生じさせるかを示す補助となり得る。
【0621】
【0622】
8.実施例:毛髪の成長における外皮攪乱の臨床的評価
この実施例は、例えば、アンドロゲン性脱毛症に罹患している男性対象におけるヒト皮膚における毛包の活性化、刺激、または再構成、および/または新生、ならびに/あるいは軟毛および/もしくは硬毛数の増加、および/または毛幹の厚さの増加によって証明されるように、毛髪の成長を促進するために外皮攪乱の使用を試験する臨床的プロトコルを提供する。使用される2つの方法には、削皮術によるより表面型の外皮攪乱およびパンチ生検を用いたより深い(皮下脂肪のレベルまで延在する)全層皮膚切除が含まれる。
【0623】
探索的ヒトデータ(項6および7の実施例を参照)に基づいて、このプロトコルの目的を支持する臨床的仮説は、外皮攪乱(この項では、「制御された攪乱」としても称される)が(i)毛包の活性化、刺激、または再構成、および/または新生を増加させる、ならびに/または(ii)軟毛および/もしくは硬毛数を増加させる、ならびに/または(iii)毛幹の厚さを増加させるというものである。制御された攪乱は、より表面的であり得る(例えば、主に表皮に影響を及ぼす削皮術を用いて)か、またはより深い部分であり得る(例えば、パンチ生検が表皮およびより深い真皮の両方に影響を及ぼすとき) この種類の刺激は、毛髪の成長の巨視的証拠をもたらすことが可能である。
【0624】
8.1 研究プロトコル
以下のプロトコルは、(i)新遺伝子のようなまたは活性化もしくは刺激を受けた毛包構造体(例えば、上の項5.8.4.1に記載されるNL、PEL、およびPELA)の形成ならびに(ii)毛髪の成長における、削皮術、ならびにヒドロゲル(カルボマー(Carbopol 980)、グリセロール、水酸化ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、および精製水)による攪乱後治療の効果を評価した第IIa相臨床研究を説明する。
【0625】
包含のための診断および主な基準は、Hamilton-Norwood型3V、4、5、5A、または5V、およびFitzpatrick皮膚型1~4の、硬毛および小型化した毛髪の両方を有する領域として定義される頭頂部の移行ゾーンの存在下で、アンドロゲン性脱毛症に罹患している、書面によるインフォームドコンセントを提供している20~65歳の白人男性である。
【0626】
8.1.1 有効性の目的
主要。削皮術(DA-より表層の外皮攪乱)+ヒドロゲルの局所適用を用いて制御された皮膚攪乱により治療された対象の皮膚の標的分析領域における写真で検出された毛髪数でベースラインから84日目までの変化を評価すること。
【0627】
副次的。(i)削皮術(DA)+ヒドロゲルの局所適用を用いて制御された皮膚攪乱により治療された対象の皮膚の標的分析領域における写真で検出された毛髪数のベースラインから168日目までの変化を評価すること、(ii)削皮術(DA)+局所ヒドロゲルを用いて制御された皮膚攪乱により治療された対象から14日目に採取された生検の対象となる組織学的に検出された新遺伝子のような毛包および他の毛包構造体数を評価すること、(iii)4mmのパンチ生検+局所ヒドロゲルを用いて制御された皮膚攪乱により治療された対象における第1の生検の部位から168日目に採取された生検(二次癒合によって治癒される)の組織学的に検出された毛包を評価すること。
【0628】
探索的項目。(i)4mmのパンチ生検+ヒドロゲルの局所適用を用いて制御された皮膚攪乱により治療された対象における写真で検出された毛髪数を、a)84日目およびb)168日目で評価すること、(ii)4mmのパンチ生検+ヒドロゲルの局所適用を用いて制御された皮膚攪乱により治療によって誘発された写真で検出された毛髪の毛幹の厚さを、a)84日目およびb)168日目で評価すること、(iii)削皮術(DA)+ヒドロゲルの局所適用を用いて制御された皮膚攪乱により治療された後の写真で検出された毛髪の毛幹の厚さにおけるa)ベースラインから84日目まで、およびb)ベースラインから168日目までの変化を評価すること、(iv)168日目の第2の皮膚パンチ生検における組織学的特徴付け。
【0629】
測定の写真の視野には、全分析領域が含まれ、これは、0日目に削皮され、ヒドロゲルによって治療され、14日目に4mmのパンチ生検を受け、次いで、ヒドロゲルによるさらなる治療を受ける領域の1.13cm2の環状領域である。全分析領域(Total Analysis Area)内には、4mmのパンチ生検を受ける0.13cm2の環状領域である環状生検領域(Circular Biopsy Area)と、全分析領域から削皮術のみを受けた1.00cm2の環状領域である環状生検領域を差し引いたものである標的分析領域(Target Analysis Area)とが存在する。
【0630】
8.1.2 安全性の目的
制御された皮膚攪乱(削皮術およびパンチ生検)の設定時にヒドロゲルの安全性および耐容性を評価すること。
【0631】
削皮術およびパンチ生検によって局所的に適用されるヒドロゲルゲルおよび表皮破壊の安全性および耐容性は、治療した頭皮部位の標的化された試験からのデータ収集物および有害事象(AE)の報告書を通してモニタリングされる。1、2、3、12、15、17、18、19、20、および182日目の来院は、部位を評価するための安全性の来院である(3、18、19、および20日目の来院が週末に当たる場合、電話で代替され得る)。有害事象はまた、112および140日目に安全性確認の電話でも報告され得る。加えて、肝臓および腎機能、Hgb-A1C、および検尿が、スクリーニング時および182日目に行われる。また、健康診断がスクリーニング時および182日目に行われる。バイタルサインおよびECGがスクリーニング時に行われる。0、14、168日目(削皮術およびパンチ生検が行われるとき)および182日目(研究の終了または早期中止時)に、バイタルサインが繰り返される。
【0632】
8.1.3 治療方法
この研究の治療は、2つの治療様式からなる:
1.物理的攪乱(削皮術および全層切除)
2.薬理学的介入
対象は、31日間ヒドロゲルを受容するように予定される:治療期間1(0日目からパンチ生検1の2日前[11日目])および治療期間2(17日目から治療終了時[35日目])。ヒドロゲルの用量は、2つの部位に1日2回適用される約0.1mLの量であり、合計で意図される量は0.4mLである。液滴サイズの変動のため、これは、実際の合計容量範囲を0.27~0.88mLに解釈する。
【0633】
対象1人につき予定された研究期間は、14日間のスクリーニング期間、および182日間の治療および追跡治療を含む196日間である。予定された研究の全期間は、約12ヶ月である。
【0634】
一旦適任性が確認されると(-6/0日目)、対象は、点状の入れ墨および毛髪染色を含むベースラインの写真撮影を有する。2つの部位が割り当てられ、それぞれ、1.5cm×1.5cmに測定され、2cmの最小距離を有する右側(R)および左側(L)を指定され、硬毛の非常に低い密度を有する頭頂部頭皮の過渡期な禿げ領域内に特定される。2つの部位の毛髪密度は、できるだけ同様でなければならない。
【0635】
対象1人につき2つの部位の削皮術が、点状の毛細血管出血(推定深さ100ミクロン、瘢痕を生じるとは予想されない)を達成するために、標準的なグリットダイヤモンドフライスを備えた手持ち式削皮器を用いて実行され得る。削皮術後、ヒドロゲルを2つの部位に適用する。
【0636】
14日目に、2つの削皮された部位は、閉塞することなく、二次癒合によって治癒される全層4mmの皮膚パンチ生検を受容する。DA(より表層の攪乱)およびヒドロゲルによる治療後、新遺伝子のような毛包および場合により対象となる他の活性化した、刺激を受けた、または再構成された毛包構造体(例えば、上の項5.8.4.1に記載されるPELおよびPELA)を検出することに加えて、4mmのパンチ生検はまた、新遺伝子のような毛包および対象となる他の毛包構造体の誘導のためにヒドロゲルを用いて試験されるより深い部分の攪乱も提供する。
【0637】
対象は、繰り返しの写真撮影および臨床的評価のために3ヶ月後(84日目)および6ヶ月後(168日目)に戻る。月1回の安全性の追跡調査の電話が、112および140日目に行われる。
【0638】
168日目に、第2の皮膚パンチ生検が、14日目に第1のパンチ生検であった2つの削皮された部位上で行われる。有効性の分析のために試料を提供することに加えて、14日目に4mmのパンチ生検から形成された任意の瘢痕組織は、168日目のこの第2の生検によって切除され、縫合によって閉塞される。主治医の判断および対象の意思に従う場合、168日目の削皮された部位の穴は、瘢痕除去および写真撮影用の入れ墨除去を確実にするために、5mmまたは6mmの皮膚生検(または手動によるもしくはエクサイダー(excisor)を用いた同様の大きさの楕円型生検)である。縫合は、安全性の追跡治療の2週間後(182日目)に除去されるように予定される。
【0639】
8.2 結果
上記のプロトコルに従って、臨床研究が実行された。外皮攪乱および有効成分を含まないヒドロゲルによって治療された対象の人口動態および特徴付けの要約を、表8に示す。
【0640】
削皮術+ヒドロゲルにより治療された対象に対して、以下のことが見出された:
・ベースラインから84日目(3ヶ月)までの、全ての毛髪の標的領域の毛髪数(「TAHC」としても称される)は、統計的に有意である実質的な増加を示す(表9を参照)。ベースラインからの全ての毛髪数のこの変化は、測定の最終日の168日目(6ヶ月、表10を参照)を通して維持され、この変化は、168日目に統計的に有意である。
・ベースラインから84日目(3ヶ月)までの、直径(写真で測定された幅)で30ミクロン以上の毛幹を有する非軟毛サイズの毛髪のみの標的領域の毛髪数は、統計的に有意である実質的な増加を示す(表11を参照)。ベースラインからの非軟毛サイズの毛髪数のこの変化は、測定の最終日の168日目(6ヶ月、表12を参照)を通して維持されない。
ベースラインから84日目(3ヶ月)までの、直径(写真で測定された幅)で30ミクロン未満の毛幹を有する非軟毛サイズの毛髪のみの標的領域の毛髪数は、わずかな増加を示す(表13を参照)。ベースラインから測定の最終日の168日目(6ヶ月)までの、軟毛サイズの毛髪のみの標的領域の毛髪数は、おおきな実質的な増加を示す(表14を参照)。
【0641】
表15および16に示されるように、6ヶ月の時点での全ての毛髪の持続的な正の変化は、主に、直径(写真で測定された幅)で10~20ミクロンの毛幹を有する毛包の目覚しい増加によって含まれる。20~30ミクロンの毛幹を有する毛包の増加は、この全体的な正の変化にわずかに貢献する(表14を参照)。
【0642】
皮膚の削皮された領域では、新遺伝子のような毛包の誘発、および活性化した、刺激を受けた、または再構成された先在する(軟毛サイズを含む)毛包が、14日目に皮膚生検によって検出され、分析されるように測定された。非創傷の頭皮皮膚に一般的に見出されるものとは対照的に、この研究において制御された攪乱は、1)新遺伝子のような毛包を誘発し、2)先在する毛包を再構成され、活性化した状態に置いた。14日目の生検において検出され、計数された対象となる構造体が、わずかに稀に非創傷皮膚において観察される。したがって、それらは、新遺伝子のような、活性化した、刺激を受けた、または再構成された構造体からなる。
【0643】
【0644】
【0645】
*CIおよびP値は、郡内平均的変化に対する結果である。
【0646】
【0647】
*CIおよびP値は、郡内平均的変化に対する結果である。
【0648】
【0649】
*CIおよびP値は、郡内平均的変化に対する結果である。
【0650】
【0651】
*CIおよびP値は、郡内平均的変化に対する結果である。
【0652】
【0653】
*対象1人当たり2つの1cm2のTAHC部位があり、毛髪数は、1cm2に対して正規化される。
【0654】
【0655】
*対象1人当たり2つの1cm2のTAHC部位があり、毛髪数は、1cm2に対して正規化される。
【0656】
【0657】
【0658】
8.3 考察
これらの結果は、外皮攪乱の削皮術の瘢痕化しない方法が、臨床的に毛髪数によって測定して、軟毛および硬毛の成長をもたらすことを示す。軟毛サイズの毛髪は、この研究の6ヶ月のエンドポイントで検出された。加えて、他の研究における削皮しない皮膚と比較して、削皮術により治療された皮膚は、削皮した皮膚試料において、新遺伝子のような(NL)、先存するような(PEL)、および先存する付着した(PELA)毛包数の増加の観察に基づいて、活性化した、刺激を受けた、または再構成した毛包数の増加があったことが見出された。このような構造体は、概して、非創傷皮膚において稀に存在する。写真による順次毛髪数において検出されるように、ベースラインと比較して、攪乱から3ヶ月後の硬毛サイズの毛髪の増加はまた、新しい硬毛が外皮攪乱によって現れるように誘発され得ることを示す。
【0659】
9.実施例:削皮術/育毛促進剤の脱毛症の臨床プロトコル
本実施例は、削皮術(DA)および育毛促進剤(HGPA)または毛髪の成長の薬剤による併用療法のための臨床プロトコルを説明する。プロトコルは、第2a相の非盲検で単一施設の無作為試験として実行され得、この場合、対象は無作為に選ばれ、頭頂部頭皮の右側または左側においてDAを施行する。DA/ヒドロゲル部位+HGPAは実験部位であり、非DA/ヒドロゲル部位+HGPAは対照部位である。したがって、それぞれの対象は、自身の対照としての役割を果たす。プロトコルにおいてこれらの対照を含むための任意のステップが、以下の説明を通して提供される。
【0660】
9.1 プロトコル設計
育毛促進剤。プロトコル1:市販のミノキシジル発泡体(5%);1日2回2mLの適用;プロトコルは、先行の刺激試験(DA+ミノキシジル)によって支持されるものである。ミノキシジル治療の選択に関しては、Olsen et al.J Am Acad Dermatol 2007;57:767-74およびOlsen et al.,J Am Acad Dermatol 2002;47:377-85(これらのそれぞれは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)を参照として使用してもよい。一変形例では、5%溶液または2%溶液を使用してもよい。5%のミノキシジル溶液は、米国およびドイツでは男性用に認可されているが、女性用には認可されていない。
【0661】
後続プロトコル2:ラタノプロスト点眼剤(現在、市場に出ている0.005%の製剤):1日1回、1滴 プロピレングリコール(20%)およびエタノール(50%)を含む0.1%の製剤をこのために使用する。ラタノプロストは、皮膚炎を生じる場合があるため、このプロトコルは、皮膚刺激の先行の動物モデル試験によって支持されるものである(DAおよび非DA部位)。ラタノプロスト治療の選択に関しては、Blume-Peytavi et al.,2010,American Academy of Dermatology,doi:10.1016/j.jaad.2011.05.026,Epub Aug 27 2011(参照によってその全体が本明細書に組み込まれ、ラタノプロスト0.1%溶液をプラセボと比較する)を参照として使用してもよい。
【0662】
これらの薬物の任意の薬物動態プロファイルを実行することができる。
【0663】
参照製品。参照製品を必要としない。任意の対照として、対象は、DAおよび非DA皮膚部位においてHGPA治療を受け得る。したがって、参照治療は、HGPAのみである(即ち、非DA部位における)。
【0664】
意図された治療期間(1人の対象当たり)。治療は、2つの様式:(i)DA/ヒドロゲル;および(ii) HGPAからなる。対象は、DA(または対照のために非DA)を受容し、続いて、ヒドロゲル(例えば、下の項10の実施例に記載のヒドロゲル)を11日間適用する。その後、HGPAの局所適用を開始し、DA部位(および該当する場合、非DA部位)に24週間継続する。対象は、14日間のスクリーニング期間、および182日間の治療および追跡治療を含む約196日間治療を受ける。治療の計画された全体の治療期間は、約12ヶ月である。
【0665】
治療のための診断および適任性 Hamilton-Norwood型3V、4、5、5A、または5V、およびFitzpatrick皮膚型1~4の、硬毛および小型化した毛髪の両方を有する領域として定義される頭頂部の移行ゾーンの存在下で、アンドロゲン性脱毛症に罹患している20~65歳の白人男性。対照のために、対象は、両方の治療部位を提供するのに十分大きい頭頂部領域を有さなければならない。
【0666】
評価のための方法および基準。一旦治療の適任性が確認されると(-6/0日目)、対象は、ベースラインとなる写真を撮影する。臨床研究のために、これには、正確な位置を示す入れ墨および毛髪染色が含まれる。治療部位は、少なくとも1.5平方センチメートルを測定し、硬毛の非常に低い密度を有する頭頂部頭皮の過渡期な禿げ領域内に位置することが好ましい。2つの治療部位は、2cmの最小距離を有する指定された右側(R)および左側(L)を指定することができ、2つの部位の毛髪密度は、可能な限り同様でなければならず、それぞれの対象において、DAに対する部位は右または左に無作為に選ばれ、それぞれの対象が自身の対照(i)DA/ヒドロゲル+HGPA(実験部位);(ii)非DA/ヒドロゲル+HGPA(対照部位)である。
【0667】
DAが、点状の毛細血管出血(推定深さ100ミクロン、したがって、瘢痕を生じるとは予想されない)を達成するために、標準的なグリットダイヤモンドフライスを備えた手持ち式削皮器を用いて行われる。
【0668】
DA後、ヒドロゲルは、11日間DA部位(および対照のために、頭皮の反対側の同様の大きさの部位)に適用される。詳細については下のスキームを参照のこと。
【0669】
【0670】
12日目に、HGPAの適用をDA治療部位(および対照のために、頭皮の反対側の非DA部位)に開始する。HGPAは、継続して24週間適用され、対象は、繰り返しの写真撮影および臨床的評価のために84日目および168日目に診療所に戻る。月に1回の安全性についての追跡調査の電話が、28、56、112、および140日目に行われ得る。
【0671】
診察に用いる皮膚パンチ生検を、治療部位(対照が存在する場合、両方の治療部位)で行い、例えば、任意に84日目および/または168日目に毛包構造体を分析することができる。生検部位は、縫合して閉塞される。縫合糸は、2週間後の追跡治療で除去される。
【0672】
臨床的研究については、プロトコルの終了は、最後の対象の最後の臨床来院として定義される。
【0673】
9.2 有効性の目的
主要目的/評価項目
DA/ヒドロゲル+HGPA(非DA/ヒドロゲル+HGPA治療との任意の比較を有する)によって治療された対象における写真で検出された毛髪数のベースラインから168日目の変化を評価すること。
副次的目的/評価項目
(i)DA/ヒドロゲル+HGPA(非DA/ヒドロゲル+HGPA治療との任意の比較を有する)によって治療された対象における写真で検出された毛髪数のベースラインから84日目の変化を評価すること。
【0674】
(ii)削皮術/ヒドロゲルによって治療された対象および削皮術/ヒドロゲル+HGPA(非DA/ヒドロゲル+HGPA治療との任意の比較を有する)によって治療された対象から治療部位の生検において組織学的に検出された毛包数を評価すること。
【0675】
(iii)DA/ヒドロゲル+HGPA(非DA/ヒドロゲル+HGPA治療との任意の比較を有する)によって治療された後の治療部位における写真で検出された毛髪の毛幹の厚さの、(a)ベースラインから84日目および(b)ベースラインから168日目までの変化を評価すること。毛幹の厚さは、写真によって取り込むことができる。
【0676】
前述に従って、測定の写真の視野(対照が含まれる場合、2つの分析領域まで延在し得る)は、HGPA(+/-DA)によって治療された部位において1.13cm2の環状領域を含むことができる。
【0677】
9.3 安全性の目的
DA(および対照が存在する場合、非DA)部位に局所的に適用されるHGPAの安全性および耐容性は、治療する頭皮部位の標的とされる試験からのデータ収集物および有害事象の報告書を通してモニタリングされる。
【0678】
安全性の来院は、1、2、3、12、15、17、18、19、20、および182日目に行われ得、3、18、19、および20日目の来院が、週末に当たる場合、電話により代替され得)、対象のコンプライアンスにより追加のまたはより少ない日にちが必要となり得る。例えば、対象は、自宅で適用させる前の4週間モニタリングされる場合がある。有害事象はまた、28、56、112、および140日目に安全性の電話でも報告され得る。加えて、肝臓および腎機能、Hgb-A1C、および検尿が、スクリーニング時および182日目に行われる。健康診断がスクリーニング時および182日目に行われ、バイタルサインおよびECGがスクリーニング時に行われる。バイタルサインはまた、0、84、および168日目(DAおよび写真撮影が行われるとき)および182日目(治療プロトコルの終了または早期中止時)にも測定される。
【0679】
9.4 データ分析のための計画/臨床研究のための統計
臨床的研究については、主要評価項目(写真によって取り込まれた1cm2当たりの毛髪数のベースラインから168日目までの変化)における試験(DA+ミノキシジル)治療と参照(ミノキシジル)治療との真の差異が、16本の毛髪/cm2である場合、79人の対象は、5%の有意性レベルで、試験治療(DA+ミノキシジル)が参照治療(ミノキシジル)に等しいという帰無仮説を否定するために90%の検出力を提供する。10%のドロップアウト率が予測され得る場合、さらに8人の対象を登録して、有効性の主要評価項目を達することを確実にし、対象の総数を87人にすることができる。
【0680】
ラタノプロストを用いた臨床的研究については、主要評価項目(写真によって取り込まれた1cm2当たりの毛髪数のベースラインから168日目までの変化)における試験(DA+ラタノプロスト)治療と参照(ラタノプロスト)治療との真の差異が、19本の毛髪/cm2である場合、57人の対象は、5%の有意性レベルで、試験治療が参照治療に等しいという帰無仮説を否定するために90%の検出力を提供する。10%のドロップアウト率が予測され得る場合、さらに6人の対象を登録して、有効性の主要評価項目を達することを確実にし、対象の総数を63人にすることができる。
【0681】
有効性の主要評価項目の分析は、フルアナリシスセット(Full Analysis
Set)(登録し、少なくとも1用量のHGPAをDAおよび非DA部位に受容した全ての対象)において行われる。
【0682】
主要評価項目。共分散分析法が、写真によって取り込まれた毛髪数のベースラインから168日目までの変化において行われる。モデルにおける要因は、治療の固定効果、年齢区分、および対象の変量効果である。対象のベースライン(-6/0日目)の毛髪数は共変量である。
【0683】
副次的および探索的評価項目。写真によって取り込まれた毛髪数のベースラインから84日目までの変化が、主要評価項目と同じように分析される(ベースラインから168日目の変化)。生検試料については、一般化線形モデルは、1つの生検当たりの毛包の平均数から推測される。これらのモデルにおける要因は、治療の固定効果、対象の年齢、および対象の変量効果、ならびに共変量としてHamilton-Norwood分類である。
【0684】
安全性および薬物動態学的評価項目。治療ごとに分類する記述統計により、それぞれの安全性、および該当する場合、薬物動態学的評価項目について集計する。
【0685】
10.実施例:ヒドロゲルの生成および特徴付け
本実施例は、創傷治癒のための治療の一部として、外皮攪乱後の投与、局所用育毛促進剤製剤等の生成のために、使用され得る局所用ヒドロゲルの生成および特徴付けを説明する。
【0686】
10.1 製剤
i.ヒドロゲルは、FDA Inactive Ingredients Databaseのように、製剤および局所使用に使用される濃度範囲内で、GRAS(一般に安全と認められる)として分類される賦形剤を用いて、約90%の水で製剤化された。
ii.製剤調製手順-100バッチ、ロット番号TH-003-098b
以下の手順は、100gのバッチのヒドロゲルを調製するためのステップを示す。この製剤を調製するためには4つのステップがある:
a)中和HCl溶液(溶液A)の調製:10.58gの10wt% HClを、撹拌しながら、ビーカーに添加した。11.93gの10wt% NaOH溶液によりこの溶液を中和する。この溶液のpHは、約7である。0.14gのアラントイン、0.11gのアルギン酸ナトリウム、および8.7gのグリセリンを、この溶液に逐次添加した。この溶液を滅菌濾過した。
b)1.5gの滅菌ヒアルロン酸を、この溶液に徐々に添加した。67.04gの水を添加した。得られた分散物は、ポリマーが完全に溶解するまで激しく撹拌した。最終溶液は、透明な外観の単一液体相である。
c)残りの材料の添加:8.7gのグリセリンをこの溶液に添加し、さらに30分間撹拌した。
d)pHの測定 混合物のpHは、約7でなければならない。
e)粘度:ゲル粘度は、Brookfield Viscometryを用いて測定した。室温での粘度は、4093cPであった。
【0687】
ヒドロゲルはまた、保存剤としてメチルパラベン(0.1%)およびプロピルパラベン(0.048%)で調製することもできる。
【0688】
カルボキシメチルセルロースを有するヒドロゲルは、以下の通りに調製した。材料を表17に記載する。100gのバッチのために、4gのクエン酸を、室温で59.7gの蒸留水に添加した。25℃で撹拌を実行した。溶解のプロセス中、二酸化炭素の気泡が発生した。この溶液は、全ての気泡がシステム(溶液1)から消失するまで撹拌した。次に、0.104gのメチルパラベンおよび0.049gのプロピルパラベンを、室温で激しく撹拌しながら、溶液1に添加した。0.165gのアラントイン、0.12gのアルギン酸ナトリウム、および2gのカルボキシメチルセルロースをこの溶液に添加し、激しく撹拌した。溶液の温度は、80℃まで上昇させ、撹拌した。溶解のために約4時間を要した。透明な溶液を室温まで冷却し、10.46gのグリセリンをこの溶液に添加した。溶液を室温で2時間撹拌して、均一溶液を得た。適切な量(体積)の10%のNaOH溶液をこの溶液に添加し、pHを6.5~7.5に調節した。
【0689】
【0690】
10.2 特徴付け
複数の100gのバッチを、上記のプロセスを用いて調製した。バッチは、特性:pH(標的:7.0±0.5℃);粘度(cP、25℃)(標的範囲6,000~10,000cP)、および外観(標的:透明度)について特徴付けされた。特徴付けデータを表18に概説する。
【0691】
【0692】
粘度の測定
製剤のせん断粘度は、Brookefield DV-III Ultra Rheometer IV、スピンドルXを用いて測定した。シリコーン油(25Cで12,400cP)を標準品として使用した。最大トルク(>98%)を有する試料は、25Cで溶解した。
【0693】
製剤の粘度は、25℃で、2,000~8,000センチポアズ(cP)として測定された。4℃、25℃、および40℃のICH温度条件下で行われた100グラムのバッチにおける安定性研究は、強度、粘度、および均一性に関して8週間安定していた。
【0694】
3つの2.5Lのバッチをまた、上記のプロセスを用いて、表19に記載されるような全ての材料のスケールアップ測定を用いて調製した。
【0695】
【0696】
スケールアップバッチの特質には、6.99のpHおよび2859cPの粘度(25℃で、98%トルク)が含まれる。
【0697】
他の特性
上記のヒドロゲル(ヒアルロン酸系)は、表面上に容易に広がる透明で無臭無色の製剤である。周囲の部位への移動および流失は最小限であった。ゲルのpHは、皮膚および創傷の適合性に対して中性(7.0±0.5℃)になるように調節された。ヒドロゲルは室温で保存され得る。
【0698】
11.実施例:ミノキシジルを含むペトロラタム系製剤
異なる軟膏製剤からのミノキシジルを、その疎水性を変化させることなく担体の分子流動性を変化させることによって異なるものとすることができる。これは、ペトロラタムの鉱油に対する比率を変化させることによって達成される。ペトロラタム製剤1~4(表20)は、(1)8.6、(2)2.85、(3)0.925、および(4)0.283の比率で鉱油/ペトロラタムを有する。製剤の規模は、10グラムである。それぞれの製剤は、5%のミノキシジルを有した。それぞれの製剤は、皮膚軟化剤および乳化剤として15%のラノリンアルコールを有する。キャップおよび回転棒を備えた4つの20mLのシンチレーションバイヤルを1~4のラベル表示を付け、それぞれ、0.500グラムのミノキシジルおよび1.500グラムのラノリンアルコールで充填した。この混合物は、流体溶解物に溶解して、容易に撹拌されるまで、80℃まで加熱する。流体溶解物は、代替として、超音波処理を行い、ミノキシジルの均一な懸濁液が得られるまで撹拌する。鉱油およびペトロラタムの成分を、さらに4つのバイアル(「ペトロラタム型1~4」)に合わせて、80℃まで加熱する。1~4のラベル表示付きのバイアルの内容物を、ペトロラタム型1~4のラベル表示付きの内容物と合わせて、80℃で約15分間撹拌する。次いで、バイアルは加熱を停止し、ローラー上に置き、混合物が濃厚になるまで中速で回転させる。製剤を、25℃で一晩均衡になるまで放置する。撹拌してから8~10時間後、製剤の一部分をへらによって回収し、皮膚感触で2本の指の間で感じられ、「容易に広がる」。製剤は安定した状態である。局所創傷の温度およびpHを模擬実験するために、インビトロ放出実験は、32℃およびpH7.4で設定された溶解チャンバ中で行われる。
【0699】
【0700】
12.実施例:ミノキシジルを有するワセリン/水エマルジョン
本実施例は、エマルジョンクリーム製剤中の疎水性成分と親水性成分の比率を変化させることにより、ミノキシジルの放出を調節することができることを実証する。上記の先の実施例からのワセリン製剤番号2を疎水性の最も高い製剤として選択し、その製剤は、5%のミノキシジル、15%のラノリンアルコール、および2.85の鉱油/ワセリン比率を有する。第2の製剤(60%親水性/40%疎水性)は、40%ワセリン/鉱油/ラノリンアルコール相に乳化された(2%のカーボポール980を含有する)水相の60%を有した。5%のミノキシジルを水相中に溶解する。第3の製剤(100%親水性)は、5%のミノキシジル、1.5%のカーボポール980、10%のグリセロール、および水を含有する100%の水性ゲルから成る。
【0701】
13.実施例:持続放出送達用のミノキシジル製剤
本実施例は、持続放出送達用のミノキシジルクリーム製剤の生成を報告する。
【0702】
本実施例に記載される製剤は全て、水中油型エマルジョンである。以下の薬物放出速度を有する3種類の製剤を製剤賦形剤を変更することによって生成した:即時放出(1日未満)、中間放出(1~3日間)、および持続放出(3~7日間)。
【0703】
13.1 即時放出製剤
即時放出製剤は、二相系を用いて生成され、その二相系のうちの一方は親水性賦形剤を溶解する水相であり、他方はミノキシジルおよび疎水性ポリマーを溶解する非水相である。
【0704】
製剤調製方法。KIC Chemicalsのクエン酸(ロット番号200203)を可溶化剤および緩衝剤として使用する。Lubrizolのカーボポール(ロット番号100655645)を水相の増粘剤として使用した。非水相について、Dow Corning Chemicalsの2つのシリコーン油の混合物(ロット番号6080660のシリコーン油350ctsおよびロット番号6019987のシリコーン油12500ctsを本明細書で「S25」と称される25:75の比率で混合した)を中間粘度の担体として使用し、セテアリルアルコール(Croda、ロット番号334447)およびラノリンアルコール(Croda、ロット番号269113)を増粘剤/乳化剤として使用した。Span80(Sigma、ロット番号114k0137)およびtween20(Spectrum Chem.、ロット番号TO0434)を、それぞれ、非水相および水相の界面活性剤として使用する。Dow Corningの乳化剤10(ロット番号5864667)を製剤のさらなる乳化剤として使用する。表21を参照されたい。
【0705】
【0706】
即時放出製剤を以下の3つのステップを用いて調製する。
【0707】
i)1.2gのクエン酸を21.3gの脱イオン水に添加する。全てのクエン酸が溶液に入るまで、この混合物をボルテックスし、超音波処理を行う。0.72gのカーボポールおよび0.048gのTween20を溶液に添加する。カーボポールが完全に膨潤して水中に分散するまで、激しい撹拌下の結果として得られる系を水浴中で最大90℃に加熱し、外観が半透明の単一液相をもたらす。
【0708】
ii)非水相(第II相、16G):50mg/mLのミノキシジル、1.6gのセテアリルアルコール、および3.2gのラノリンアルコールを、シリコーン油混合物(S25、ロット番号6080660のシリコーン油350ctsおよびロット番号6019987のシリコーン油12500ctsを25:75の比率で混合する)に添加する。0.032gのSpan80および0.32gの乳化剤10を添加した後、全ての成分が溶解するまで混合物を水浴中で最大90℃に加熱し、結果的に(熱い間は)透明な単一相溶液になる。
【0709】
c)均質化:(まだ熱いままの)16gの第II相を全て24gの第I相に添加し、それら2つの相を高速ホモジナイザーを用いてともに混合し、単一相クリームを得る。水相(第I相)と非水相(第II相)の比率は60:40である。
【0710】
即時放出製剤は、表22に要約される。混合物の水相、非水相、および最終相が表に示されており、40gのバッチ製剤に対して各相で必要とされる賦形剤の量を列記する。
【0711】
即時放出製剤中のミノキシジル含量をHPLCによって測定する。
【0712】
【0713】
13.2 中間放出製剤
ミノキシジルの中間放出エマルジョンクリーム製剤を以下の方法で開発する。エマルジョンを、即時放出製剤について上で記載されるように、2つの相の均質化によって調製した。
【0714】
製剤調製方法。この製剤で使用される原材料は、シリコーン油の代わりに鉱油を使用したことを除いて、上述の即時放出製剤で使用される原材料と同一であった。この中間放出製剤用の賦形剤のロット番号を以下の表23に列記する。
【0715】
【0716】
40gのバッチの場合、以下の調製方法を使用する。
【0717】
i)水相(第I相、24G):1.2gのクエン酸を21.32gの水を含有する溶液に徐々に添加する。全ての成分が溶解するまで、この混合物をボルテックスし、超音波処理を行った。その後、0.72gのカーボポール980および0.05gのTween20を上の溶液に添加した。カーボポールが完全に膨潤して水中に分散するまで、激しい撹拌下の結果として得られる系を水浴中で最大90℃に加熱した。第I相は、外観が半透明の単一液相である。
【0718】
ii)非水相(第II相、16G):3.23gのセテアリルアルコールおよび2.59gのラノリンアルコールを9.89gのDrakeol350鉱油に添加した。0.04gのSpan80および0.33gの乳化剤10を上の系に添加した後、ポリマーが溶解するまで、全混合物を水浴中で最大90℃に加熱した。第II相は、透明な単一相溶液である。
【0719】
ii)均質化:相を均質化してともに混合した。水相と非水相の比率は60:40である。
【0720】
【0721】
6.1.1 ヒドロゲルI
粘性のある透明なヒドロゲルが水和ゲルとして皮膚に適用される。ヒドロゲルは、レーザー処置、微細削皮術、およびケミカルピーリング等の若返り治療後に適用される。
【0722】
ヒドロゲルは、激しく撹拌しながら、15.79gの水中に1.6gのクエン酸を溶解することによって調製した。0.041gのメントールを滴加した。この溶液のpHを測定して、pHが6~8の範囲内であることを確認した。0.024gのアルギン酸ナトリウムおよび0.400gのCMCを溶液に添加し、次いで、激しく撹拌した。次いで、0.032gのアラントイン、2gのグリセリン、0.021gのメチルパラベン、および0.010のメチルパラベンを製剤に添加した。この溶液のpHを測定し、水酸化ナトリウムで中和した。
【0723】
【0724】
6.1.2 ヒドロゲルII
ヒドロゲルIIは、保湿剤としてこの製剤中の材料としてヒアルロン酸ナトリウムを添加したことを除いては、項6.1.1に記載されるヒドロゲルIと同じ方法で調製した。
【0725】
ヒドロゲルは、激しく撹拌しながら、15.79gの水中に1.6gのクエン酸を溶解することによって調製した。0.041gのメントールを滴加した。この溶液のpHを測定して、pHが6~8の範囲内であることを確認した。0.024gのアルギン酸ナトリウムおよび0.400gのヒアルロン酸ナトリウムを溶液に添加し、激しく撹拌した。0.032gのアラントイン、2gのグリセリン、0.021gのメチルパラベン、および0.010のメチルパラベンを製剤に添加した。pHを測定し、ヒドロゲルを水酸化ナトリウムで中和した。
【0726】
【0727】
6.1.3 ヒドロゲルIII
ヒドロゲルIIIは、皮膚に優しい(skin-compatible)組織再生剤としてアロエおよびコラーゲンを含有する。このゲルは、若返りゲルとして皮膚に適用される。
【0728】
1.6gのクエン酸を、激しく撹拌しながら、15.79gの水に溶解する。0.041gのメントールを滴加する。この溶液のpHを測定して、pHが6~8の範囲内であることを確認する。0.024gのアルギン酸ナトリウム、0.400gのコラーゲン、および1gのアロエを、激しく撹拌しながら、溶液に添加する。0.032gのアラントイン、1gのグリセリン、0.021gのメチルパラベン、および0.010のメチルパラベンを製剤に添加する。pHを測定し、ヒドロゲルを水酸化ナトリウムで中和する。
【0729】
【0730】
6.1.4 エモリエントクリーム
エモリエントクリームは、全てが溶解されるまで、表28(第1相)に記載される全ての材料を混合することによって作製される。10%のNaOHを用いたpH。混合は、50℃で維持される容器内で行われる。
【0731】
全てが溶解されるまで、表29(第2相)に記載される全ての材料を混合する。混合は、80℃で維持される容器内で行われる。これらの材料は、大豆油、水素化綿実油、ポリグリセリル-10デカオレート、ポリグリセリル-6オクタステアレート、ホホバ油、シアバター、およびオリーブ油である。
【0732】
第1相溶液を、振とうし、混合しながら、第2相溶液に添加する。混合物は、混合しながら、室温まで冷却させる。得られたエモリエントクリームの成分を表30に記載する。
【0733】
【0734】
【0735】
【0736】
14.実施例:ミノキシジルの小胞製剤の生成および特徴付け
従来の局所ミノキシジル製剤は、プロピレングリコール-水-エタノール溶液からなる。しかしながら、これらの製剤の1日2回の適用は、頭皮のかぶれ、火照り、乾燥、赤み、アレルギー性接触皮膚炎等の重篤な有害反応を生じる場合がある。これらの副作用を最小限に抑え、治療効果を増強するために、皮膚において有効荷重(payload)を「堆積する」製剤が好都合である。従来の剤形と比較して、伝統的なリポソーム製剤は、インビトロで高度な皮膚の薬物の蓄積を示す。
【0737】
毛包を標的とするように設計されたミノキシジルのナノリポソーム製剤が記載される。大豆レシチン、トランスクトール(transcutol)、ジセチルリン酸塩、ラブラゾル(labrasol)、およびシネオールから調製されるリポソーム小胞が開示される。
【0738】
ミノキシジル(式C9H15N5O、分子量209.25gmol-1の構造が以下に与えられる。
【0739】
【0740】
原材料は、以下の製造業者から得られる。大豆レシチン(SL)はGaleno(Potenza,Italy)から得られ、ミノキシジル(MW209.25)はSigma Aldrichから購入する。ジセチルリン酸塩(DCP)およびシネオールはAldrichから購入する。トランスクトールおよびラブラゾルはGattefosseから得られる。
【0741】
小胞は以下の方法で調製される。大豆レシチン、CDP、ミノキシジル、および浸透促進剤は、塩化メチレン中に共に溶解した。次いで、脂質薬物溶液を溶媒の回転蒸発によって乾燥させる。フィルムは、塩化メチレンの痕跡に対してガスクロマトグラフィーによって分析される。次いで、フィルムは、機械的撹拌下で蒸留水によって室温で1時間水和される。懸濁液は、超音波プローブを用いて超音波分解し、それを分散する。ナノ小胞を得るために、分散液をマイクロ流動化することができる。次いで、リポソーム分散液は、-20℃で凍結乾燥させる。凍結乾燥した小胞は水で再構成される。溶液の粘度は、再構成溶液の粘度を変化させることによって調節することができる。
【0742】
前のステップで生成されたナノ構造体は、Mavern Zetasizerを用いて大きさ順に並べる。ナノ構造体におけるミノキシジルの取り込みは、ミノキシジルの総量の割合として示される。これは、Triton X-100による構造体の破壊後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定される。小胞はまた、透過光顕微鏡法(TEM)または偏光顕微鏡法によって特徴付けることもできる。製剤を用いたインビトロ皮膚浸透および透過研究は、ブタ皮膚を用いた垂直拡散Franz細胞を用いて非閉塞的に行われる。テープストリッピングを用いて角質層を除去し、皮膚採取して、真皮から表皮を除去して、皮膚の様々な層は、除去することができる。皮膚試料を、メタノール中で均質化し、ミノキシジルを抽出する。試料を、HPLCによって定量化し、ミノキシジルの皮膚浸透を評価する。
【0743】
15.実施例:硫酸ミノキシジルのヒドロゲル製剤の生成および特徴付け
本実施例は、硫酸ミノキシジルの可溶性ヒドロゲル製剤を提供する。硫酸ミノキシジルは、ミノキシジルの水溶性塩である。20g/mLの硫酸ミノキシジルは、2%のヒアルロン酸、0.1%のアラントイン、および5%のグリセロールを含有する水溶液中に溶解する。この溶液は、水酸化ナトリウムを用いてpHを中和する。
【0744】
16.実施例:ラタノプロストのナノリポソーム製剤の生成および特徴付け
原材料は、以下の製造業者から得られる。大豆レシチン(SL)はGaleno(Potenza,Italy)から得られ、ラタノプロストはSigma Aldrichから購入する。ジセチルリン酸塩(DCP)およびシネオールはAldrichから購入する。トランスクトールおよびラブラゾルはGattefosseから得られる。
【0745】
小胞は以下の方法で調製される。大豆レシチン、CDP、ラタノプロスト、および浸透促進剤は、塩化メチレン中に共に溶解した。次いで、脂質薬物溶液を溶媒の回転蒸発によって乾燥させる。フィルムは、塩化メチレンの痕跡に対してガスクロマトグラフィーによって分析される。次いで、フィルムは、機械的撹拌下で蒸留水によって室温で1時間水和される。懸濁液は、超音波プローブを用いて超音波分解し、それを分散する。ナノ小胞を得るために、分散液をマイクロ流動化することができる。次いで、リポソーム分散液は、-20℃で凍結乾燥させる。凍結乾燥した小胞は水で再構成される。溶液の粘度は、再構成溶液の粘度を変化させることによって調節することができる。
【0746】
前のステップで生成されたナノ構造は、Mavern Zetasizerを用いて大きさ順に並べる。ナノ構造体におけるミノキシジルの取り込みは、ラタノプロストの総量の割合として示される。これは、Triton X-100による構造体の破壊後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定される。小胞はまた、透過光顕微鏡法(TEM)または偏光顕微鏡法によって特徴付けることもできる。製剤を用いたインビトロ皮膚浸透および透過研究は、ブタ皮膚を用いた垂直拡散Franz細胞を用いて非閉塞的に行われる。テープストリッピングを用いて角質層を除去し、皮膚採取して、真皮から表皮を除去して、皮膚の様々な層は、除去することができる。皮膚試料を、メタノール中で均質化し、ラタノプロストを抽出する。試料を、HPLCによって定量化し、ラタノプロストの皮膚浸透を評価する。
【0747】
17.実施例:レーザー+ミノキシジルを用いた治療プロトコル
Hamilton-Norwood型VIの男性型脱毛症を有するFitzgeraldのタイプIIの皮膚を有する30歳の白人男性ヒト対象(タイプIが最も白く、タイプVIが最も濃い(Weller et al.,2008,Clinical Dermatology,4th ed.,Malden,MA:Blackwell Publishing,pp.268)を参照のこと)は、局所ミノキシジル発泡体5%および/または1mg/日の経口フィナステライドによる治療にもかかわらず、継続した毛髪脱落の病状を示す。対象の頭皮の禿頭および過渡期な領域は、毛を剃り、1540~1550nmの発光を有するフラクショナルおよび非アブレーションエルビウム-YAGレーザーによる処置によって調製され(50~70J/cm2、8~10の治療レベル、および8回のパスに設定)、対象は、局所ヒドロゲルが与えられ、局所ミノキシジルを中断し、頭皮の治療した領域に1週間ゲルを適用するように指示される。約11日間後、ゲルによる治療は、中断し、局所ミノキシジル発泡体および/またはフィナステライドを再開し、3週間後、評価する。
【0748】
療法への応答は、新しい毛髪の成長(頭皮の罹患領域における繊維数の増加)、繊維の厚み、毛髪繊維の長さを測定すること、および毛髪の成長の患者の個人的な評価のうちの1つ以上によって決定される。罹患した頭皮の治療領域は、生検を行い、毛包周期(成長期、退行期等)の様々な段階における毛包の分布;細胞周期(例えば、G2、M等)の様々な段階における毛包細胞の分布;新しい毛包の成長、分岐毛包;毛包分割を受ける毛包;新しい毛髪繊維を成長させる毛包、毛髪繊維がない毛包について試験される。
【0749】
対象は、任意に、例えば、毛髪密度を増加させるために、さらなる10の周期により治療を行い、例えば、レーザー処置、続いて、約2週間の局所ゲルにより治療を行い、続いて、ミノキシジル発泡体による治療を再開する。療法への応答は、上記の方法によって測定される。
【0750】
上記および前述例の項8および9の治療(または上の項5に記載される任意の他の治療)は、代替的には、以下のレーザー処置のうちの1つを適用することによって達成され得る。
【0751】
17.1 アブレーションレーザー処置
アブレーションレーザー処置では、任意の攪乱後ゲルの適用は、滅菌されており、任意に、治療領域は、救急絆によって覆われる。例えば、アブレーションレーザー処置は、2940nmでエルビウム-YAGレーザーまたは10,600nmでCO2レーザーを用いて達成され得る。
【0752】
17.2 超パルスCO2フラクショナルレーザー
治療領域の既存の毛髪を剃り/刈り込み、続いて、消毒剤で洗浄した後、リドカインHCL2%およびエピネフリンを1:100,000で注入して、治療する領域の表面を麻酔する。超パルス(フラクショナルモード)CO2レーザーを用いて、表皮および真皮を約100~500μmの深さまで攪乱する。超パルスレーザーは、削皮術の効果に類似した効果をもたらすが、攪乱を引き起こすことで、非瘢痕性フラクショナルアブレーションによってより大きいエネルギーを皮膚のより深い部分に送達する。治療領域は、1.5cm×1.5cmの正方形である。超パルスは、パターンサイズ8、密度4を用いて、最大350mJ、最大52.5ワットを送達するように設定され、正方形の治療部位を最大5回のパスで満たす。
【0753】
17.3 超パルスCO2アブレーションレーザー
治療領域の既存の毛髪を剃り/刈り込み、続いて、消毒剤で洗浄した後、リドカインHCL2%およびエピネフリンを1:100,000で注入して、治療する領域の表面を麻酔する。超パルスCO2レーザー(アブレーションモード)を用いて、表皮および真皮を約100~500μmの深さまで攪乱する。超パルスレーザーは、削皮術の効果に類似した効果をもたらすが、攪乱を引き起こすことで、削皮術に似た非瘢痕性アブレーションによってより大きいエネルギーを皮膚のより深い部分に送達する。治療領域は、1.5cm×1.5cmの正方形である。超パルスは、1ミリ秒で最大500mJ、1ワットを送達するように設定され、2Hzで3mmのスポットサイズを用いて、正方形の治療部位を満たすには、最大15回のパスを必要とし得る。
【0754】
17.4 CANDELAスムースピールフルアブレーションエルビウムレーザー
治療領域の既存の毛髪を剃り/刈り込み、続いて、消毒剤で洗浄した後、リドカインHCL2%およびエピネフリンを1:100,000で注入して治療する領域の表面を麻酔する。アブレーションエルビウムレーザーは、最大15回のパスで最大500μMの深さの攪乱を引き起こすように、240ミリ秒で最大5ジュールのエネルギーをレベル3で送達するように設定される。1.5cm×1.5cmの正方形である。
【0755】
18.実施例:削皮治療の変形
前述の実施例の第8、9、および17項に記載される治療(または上の第5項に記載される任意の他の治療)を、代替的に、レーザー処置の代わりに以下の削皮治療を適用することによって達成することができる。
【0756】
治療領域の既存の毛髪を剃り/刈り込み、続いて、消毒剤で洗浄した後、リドカインHCL2%およびエピネフリンを1:100,000で注入して、治療する領域の表面を麻酔する。全表皮の除去および真皮乳頭層の攪乱(光沢のある滑らかな白っぽい外観によって検出可能である)を含む標準の削皮術をTiemann and CompanyのAseptico Econo削皮器を用いて約100~150μMの深さまで行い、治療する領域に小さい血液プールを形成する。削皮された領域はそれぞれ、1.5cm×1.5cmの正方形である。代替の実施例において、Bell Hand削皮装置を使用してもよい。別の変形例では、上の第5項に記載される削皮先端部を有する削皮器を使用し、その場合、既存の毛髪を剃るか、または刈り込む必要はない。
【0757】
19.実施例:固液原位置で架橋結合スプレー
閉塞性でもある高度に疎水性のマトリックスを使用することなく、持続した濃度の薬物、具体的には、高度に水溶性の薬物を放出する製剤を調製する際にある問題が存在する。疎水性(2超のlog P)の薬物を、水媒体中でのそれらの薬物の緩徐な溶解、ならびに細胞および組織脂質におけるそれらの薬物のその後の抽出の結果、持続した様式で組織に送達することができる。しかしながら、水溶性の高い薬物は、組織区画(皮膚または血液)からの迅速なクリアランスを経験する。薬物の放出を遅延させる方法の1つは、ワセリン/鉱油軟膏等の高度に疎水性のマトリックスの使用を伴う。これらのマトリックスは、保管中に高い安定度を提供することができ、それらを容易に皮膚または真皮創傷に適用することができる。さらに、ワセリンベースの軟膏基剤は、薬物の7~14日間の持続放出を提供し得る。しかしながら、これらの軟膏ベースの製剤は閉塞性である。閉塞性製剤は、組織に適用した後、酸素と水分の交換を低下させる。創傷治癒プロセス中および育毛プロセス中に表面が「呼吸する」ことが重要である。エマルジョン(油中水型)の閉塞特性をその親水性/疎水性の比率を変化させることによって調節することができるが、これらは、薬物のより迅速な放出をもたらす。
【0758】
ミクロスフェアカプセル化薬物が、分子の放出を持続させるための方法として使用されている。薬物をポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)マイクロスフェア中にカプセル化して、放出を調節することができる。放出速度はポリマーのL/Gの関数として変化する。しかしながら、10ミクロン未満の大きさの微粒子およびマイクロスフェアは、食作用によって3日以内に創傷部位から迅速にクリアされる。したがって、薬物の持続送達を促進するために創傷部位でマイクロスフェアを送達および維持する薬物送達系が必要とされる。
【0759】
マイクロスフェアの滞留時間を増加させる方法の1つは、組織表面との分子結合を形成する原位置で架橋結合ヒドロゲルによって、創傷表面に対して送達系を隔離することである。原位置で架橋結合ヒドロゲルを軟膏またはクリームのようにこすり落とすことはできない。マイクロスフェアはヒドロゲル中に隔離され、薬物を持続した様式で放出する。したがって、マイクロスフェアの食作用問題を打開することができる。
【0760】
さらに、マイクロスフェアと組織およびヒドロゲルを「結合する」電荷でマイクロスフェアの表面を機能化することによって隔離を強化することができる。真皮の正味電荷は負である。したがって、正に荷電したマイクロスフェアは、薬物を含有するミクロスフェアの隔離プロセスを強化する。塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、または臭化セチルトリアンモニウム(CTAB)等のカチオン性界面活性剤で被覆することにより、PLGマイクロスフェアに正電荷を付与することができる。あるいは、コーティングは、キトサン、またはポリリジン、またはポリ(アルギニン)、またはポリ(アミドアミン)(PAMAM)、またはポリ(エチレンイミン)(PEI)のコーティング等のポリマーコーティングであってもよい。
【0761】
創傷被覆材または局所用薬物製剤、例えば、本明細書に記載されるヒドロゲル等と創傷表面との分子結合の形成は、ヒドロゲル成分の反応基のうちのいくつかが真皮中に存在するタンパク質と軽く反応することができる場合にのみ達成され得る。この概念は、ヒドロゲル成分およびマイクロスフェアを創傷表面上に送達し、表面上に均一なコーティングを作成することができる噴霧装置を含む。噴霧後、液体コーティングは架橋結合ヒドロゲルになり、マイクロスフェアはその中で隔離している。噴霧される溶液は、押し出された溶液よりも高いエネルギーを有し、このことは、ヒドロゲルが組織上で架橋結合するときに、ヒドロゲルと真皮との機械的連結を支援する。ヒドロゲルは、生分解性でなければならず、薬物が送達された後に治癒中の創傷から剥がれなければならない。ヒドロゲルの特性、例えば、その生分解性、その成分の「ゲル化時間」、およびその架橋結合密度は、重要な特性であり、必須の送達系に到達するように最適化される必要がある。
【0762】
架橋結合ヒドロゲルの形成前に、薬物をヒドロゲル成分中に直接溶解することができる。
【0763】
育毛を表皮/真皮レーザーアブレーションによって達成することができる。レーザーは、2940nmのエルビウム、または10,400nmのCO2であり、フラクショナルまたはバルクアブレーション機能を有する。アブレーション後、臨床医は、乾燥固体を液体溶液で再構成することによって、第1のポリマー(ポリマー1)と第2のポリマー(ポリマー2)を混合し、アブレーションされた領域を、生体適合性かつ生分解性の創傷被覆材および送達系として作用する原位置で架橋結合ヒドロゲルで迅速に噴霧する。これを、一方のチャンバに液体を、他方のチャンバに(薬物を含有するマイクロスフェアを有するか、または有しない)凍結乾燥された固体を含有する2チャンバ型噴霧器を用いて達成することができる。1つ以上の薬物を、液体を含有するチャンバ内で溶解することができることに留意されたい。1つの薬物または薬物の組み合わせをこの方法で投与することができる。
【0764】
19.1 一方のチャンバ内に凍結乾燥された固体を有し、もう一方のチャンバ内に液体を有する2つのチャンバの噴霧器
噴霧器の設計は、凍結乾燥された固体成分と液体成分の均一混合を組み入れる。噴霧器の設計はまた、湿気から成分のそれぞれを保護することも組み入れる。噴霧器の材料は、滅菌を可能にするものから選択される。
【0765】
チャンバ1内に収容された凍結乾燥された固体成分は、ポリマーマクロモノマー(ポリマー1)(別の成分とさらに架橋結合することができるポリマー)からなる。このポリマーには、その加水分解的に不安定な結合のため、凍結乾燥することが必要である。したがって、この成分は水中に保存することができない。もう一方のチャンバ(チャンバ2)内の成分は、凍結乾燥されたポリマー(ポリマー1)と反応することが可能な別のポリマーマクロモノマー(ポリマー2)を含有する。ポリマー2は、pH6~8のリン酸緩衝液中に溶解される。ポリマー2は、加水分解的に不安定な結合を含まず、水中で安定している。したがって、ポリマー2は水中に保存することができない。この概念では、溶液を含有するポリマー2が噴霧器内で生じる混合によって凍結乾燥されたポリマー1を再構成することが想定される。次いで、混合溶液は、投与部位上に急速に噴霧される。噴霧時、溶液は架橋結合するか、またはヒドロゲルを形成する。相互に反応するポリマーの架橋結合反応は、ゲル化の臨界点まで溶液の粘度を増加させ、この時点で、溶液は、架橋結合した固体ヒドロゲルである。ポリマーは、混合溶液が時期尚早にゲル化しない、または噴霧前に噴霧チャンバ内で架橋結合しないような様式で製剤化する必要がある。
【0766】
リン酸緩衝液中に溶解したポリマー2は、ポリマー1の再構成溶液である。噴霧の調製時、チャンバ2の成分は、チャンバ1内の固体と混合して、均一溶液を形成する。成分(ポリマー1+ポリマー2)は、生分解性ヒドロゲルを形成するために相互に反応することが可能である。「ゲル化までの時間」を変化させることができる様々な手段がある。ポリマーの架橋結合の反応時間は、この反応がより高いpHによって引き起こされるため、pHによって調節することができる。再構成溶液のpHは、ポリマー1とポリマー2との反応が瞬時に架橋結合しないように、噴霧前に噴霧機内にゲルを形成することができる。架橋結合速度はまた、架橋結合基数によって調節することができる。したがって、高濃度の2つのポリマーは、低濃度のものよりも迅速に架橋結合する。ポリマー分子当たりの架橋結合基数はまた、「ゲル化時間」の調節における要因である。したがって、3重量%の濃度で4つの反応基を有する4本のアームを有するポリマーは、同じ濃度で2本のアームを有するポリマーよりも迅速に反応する。緩衝液pHおよび互いに反応するポリマー構造体の選択は、ゲル化速度を制御する。
【0767】
薬物を含有するマイクロスフェアがどのチャンバに存在するかを考慮すると、ポリマーおよびPLGマイクロスフェアの両方が加水分解的に不安定であるため、例えば、PLGマイクロスフェアが凍結乾燥されたポリマーまたは固体成分を収容するチャンバであるチャンバ1内に保存する必要があることは明白である。また、マイクロスフェア内に含まれる薬物は、マイクロスフェアが水和した後のみ放出されるため、乾燥形態での保存が必要である。したがって、チャンバ1は、ポリマー1および薬物を含有する。他の賦形剤を凍結乾燥された固体の一部に添加して、薬物の分散を助け、固体の「凝集」を最小限に抑え、再構成時間を最小限に抑えることができる。チャンバ2(液体チャンバ)は、水溶液、またはほとんど水性である溶液中にポリマー2を含有する。他の賦形剤を、必要に応じてポリマー2に添加し、得られたヒドロゲルへのさらなる特性を与えることができる。例えば、正電荷を持つ分子をチャンバ2内の水溶液に添加し、ヒドロゲルへのさらなる生体接着性を与えることができる。
【0768】
ポリマー1(チャンバ1または固体チャンバ)およびポリマー2(チャンバ2または液体チャンバ)の製剤組成物の例が以下の小項に提供される。
【0769】
19.1.1 ポリエチレングリコールの4本のアームを持つスクシンイミジルエステル(PEG-NHS)とポリエチレングリコールの4本のアームを持つアミン(PEG-AM)の反応
PEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルは、接着防止剤として認可されており、材料のそれぞれは、医薬品グレードで入手できる。さらに、ヒドロゲルは、高度に生体適合性のある創傷被覆材として機能する高い水分含有量を有し、一方、創傷は、その下で治癒する。ヒドロゲルの高い水分含有量はまた、創傷環境で湿潤を維持する。PEG-AMおよびPEG-NHSは、pH6~8で相互に反応して、生分解性のある共有結合的に架橋されたヒドロゲルネットワークを形成する。それぞれの成分は、4本のアームを持ち、それぞれのアームは反応することができる。PEG-NHSは、反応において求電子剤であり、より高いpHによって活性化する。PEG-NHSは開裂可能な結合を有し、この材料は、乾燥および固体の状態で維持しなければならない。PEG-NHSは、噴霧機のチャンバ1内で凍結乾燥された凝集状態で保存され得る。PEG-AMは、反応において求核試薬である。PEG-NHSのN-ヒドロキシスクシンイミド基は、PEG-AMのアミン基によって求核置換反応を行う。さらに、PEG-NHSは、真皮のタンパク質に存在するアミノ基に反応性があり、それ故に、ヒドロゲルを連結する分子を組織に生じさせることが可能である。これは、その部位でマイクロスフェアを用いてヒドロゲルを隔離する。
【0770】
PEG-AMにおいて開裂可能な結合がないため、この成分は、噴霧機のチャンバ2内に保存することができる。混合し、ヒドロゲルに架橋結合した後、反応によって形成されたエステル結合は、加水分解によって生分解性のあるヒドロゲルを提供する。
【0771】
ポリマー1:ポリエチレングリコールの4本のアームを持つスクシンイミジルエステル(PEG-NHS)は、Nanocsのカタログ番号4APN05122010(分子量10,000ダルトン)から購入した。
【0772】
ポリマー2:ポリエチレングリコール4本のアームを持つアミン(PEG-AM)は、Nanocsのカタログ番号PEG4A-AM-10K、ロット番号4APM09162009(分子量10,000ダルトン)から購入した。
【0773】
緩衝液成分
・ 二塩基性リン酸ナトリウム、無水、Sigma、カタログ番号S-0876、ロット番号120K0126
・ 一塩基性リン酸ナトリウム、無水、Sigma、カタログ番号S-0751、ロット番号20K0228
・ リン酸二水素カリウム、Alfa Aesar、カタログ番号11594、ロット番号B04V025
・ 塩化ナトリウム、Aldrich、カタログ番号7647-14-5、ロット番号12516HI
装備
・ 温度/RPM制御を備えた磁気撹拌機IKA LabortechnikのRET DVS1
・ Accument pHメーター25
・ 水槽
手順
(1)リン酸緩衝液の調製
0.2Mの一塩基性リン酸ナトリウム(SPM)および0.2Mの二塩基性リン酸ナトリウム(SPD)の原液は、5.0mLの水中に0.139gのSPMおよび10.0mLの水中に0.284gのSPDを溶解することによって調製した。SPMおよびSPDが必要である容積(表31)を混合し、3.0mLの水によって希釈して、pH7.0、pH7.5、またはpH8で0.1Mのリン酸塩を得た。pH値は、pHメーターによって確認され、必要に応じて、必要値に調節した。緩衝液の調製のための配合を表31に提供する。
【0774】
【0775】
(2)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の調製
1×PBSは、1.0Lの水中に8.0gの塩化ナトリウム、0.2gの塩化カリウム、1.44gの二塩基性リン酸ナトリウム、および0.24gの一塩基性リン酸カリウムを溶解することによって調製した。
【0776】
(3)PEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルの調製および特徴付け
(a)PEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルの調製
この実験では、水中でPEG-AMおよびPEG-NHSを保存する可能性を、ゲル化時間を試験することによって試験した。
【0777】
PEG-AM水溶液およびリン酸緩衝液とPEG-NHS水溶液の混合(架橋結合溶液) 5重量%のPEG-NHSおよび5重量%のPEG-AMの2つの原液は、1.0mLの水中に50.0mgのそれぞれのポリマーを溶解することによって調製した。100μLのそれぞれの原液を回収し、一緒に混合し、続いて、200μlのリン酸緩衝液を添加した。このリン酸緩衝液は、200mlの水中に二塩基性リン酸ナトリウム(5.678g)およびホウ酸ナトリウム(3.3401g)を溶解することによって調製した。緩衝溶液のpHは8であった。個々の溶液のそれぞれが3~120分間水中に保存した後、08-03-混合3~08-03-混合8の実験は、PEG-AMおよびPEG-NHSの架橋結合能を試験する。表32に概説されるように、ゲル化時間は、水中での保存時間の増加と共に増加し、これはPEG-NHSが加水分解的に不安定であることを示す。
【0778】
【0779】
不安定であるため、PEG-NHSは、周囲温度で水溶液中に保存することができず、固体形態で保存しなければならない。
【0780】
(b)PEG-AM溶液と固体PEG-NHSの混合
二段階のヒドロゲル調製法 この実験は、PEG-AMおよびPEG-NHSを水中で一緒に製剤化し、その後、凍結乾燥させることができるかどうかを試験した。この実験は、PEG-AMおよびPEG-NHSの両方を水中で一緒に溶解し、単一チャンバに凍結乾燥するという製品概念を試験するものである。次いで、もう一方のチャンバは、唯一、再構成溶液としてリン酸緩衝液を含有する。この概念は、PEG-NHSおよびPEG-AMが水中で反応しない(緩衝液を含まずに)場合のみ機能することができる。
【0781】
08-04-混合1~08-04-混合4の実験では、2.5%のPEG-AM/2.5%のPEG-NHSの溶液が調製された。混合物の最終pHは6.4であった。混合物を室温で保存し、溶液の寿命を確立した。それぞれの所定時点後の100μlのアリコートをこの混合物から回収し、pH8で100μlの0.1Mのリン酸緩衝液に添加し、ゲル化を誘発した。したがって、08-04-混合1の実験については、緩衝液を9分後に
添加し、ゲル化時間を測定した。実験08-04-混合4の実験については、緩衝液を23分後に添加し、ゲル化時間を測定した。これらの結果を表33に含める。
【0782】
【0783】
リン酸緩衝液の添加前のPEG-NHSのPEG-AMとの長時間の接触時間は、ゲル化時間の減少をもたらし、これは成分が相互に反応し始めたことを示す。表33に示された時間*は、緩衝液の添加前のPEG-NHSおよびPEG-AMを一緒に保存した時間を示す。保存してから18分後、混合物の粘度の著しい増加があった。接触時間から23分後、この溶液からアリコートを回収するのは困難であった。30分後、溶液は、架橋結合したヒドロゲルプラグを形成した。PEG-NHSおよびPEG-AMは、架橋結合の反応速度がpH6.4で低かったとしても、混合直後に互いに反応を開始し、架橋結合を形成した。しかしながら、ゲル化時間の減少は、架橋結合が生じ、ゲル化時間の減少および粘度の増加(視覚的に)をもたらすことを示した。
【0784】
この実験は、水中の2つの成分間の架橋結合反応が、緩衝液の添加前に始まることを示す。実用期間では、この実験は、凍結乾燥されるものであっても、これらの2つの成分が一緒に製剤化することができないことを示す。したがって、ポリマー1(PEG-NHS)は、製剤化され、凍結乾燥させる必要がある。ポリマー2(PEG-AM)は、別々に製剤化する必要があり、水溶液中に保存することができる。
【0785】
一段階のヒドロゲル調製法 この実験は、pH8でリン酸緩衝液中に製剤化した(および噴霧機のチャンバ2内に収容した)PEG-AMは、PEG-NHS(噴霧器のチャンバ1内に収容した)のための再構成溶液として使用することができることを示す。
【0786】
リン酸緩衝液中のPEG-AM溶液が調製され、最終pHは8であった。5%(50mg/ml)または2.5%(25mg/ml)の濃度でPEG-AMの原液は、pH8.0で1.0mlまたは2.0mlの0.1Mのリン酸緩衝液中に50.0mgを溶解することによって調製した。緩衝化したPEG-AMを固体PEG-NHSに添加した。PEG-AM緩衝液を、等しい最終濃度の両方の試薬を得るために必要とされる量で固体PEG-NHSに添加した。材料PEG-AMまたはPEG-NHSのそれぞれの濃度は、5重量%または2.5重量%であった(08-05-混合の実験、表34)。PEG-AMを付加する瞬間は、ゲル化時間を決定するための出発点として使用した。混合物は、300rpmで磁気撹拌機を用いて撹拌した。PEG-AM緩衝液が、溶解されるべきPEG-NHSを再構成するには約30秒間要した。PEG-NHSの溶解は、全ゲル化時間に含まれた。ゲル化時間は、5%および2.5%の濃度での試薬の濃度のために三重に測定された。
【0787】
【0788】
08-05-混合の実験結果は、PEG-NHSの溶解とゲル化との間に干渉がないことを示した。したがって、一段階法を、さらなる研究のために使用した。ゲル化時間は高濃度になるほど速かった。
【0789】
実験はまた、PEG-NHSが一方のチャンバ内に固体として含まれ、緩衝化したPEG-アミンを用いて容易に再構成され、チャンバ2内で再構成溶液として含まれ得ることも示す。
【0790】
(4)架橋結合の反応速度の評価基準としてのゲル化時間の決定
全てのゲル化時間の決定については、架橋結合の反応速度の評価基準としてこの試験を標準化するために、ある方法が開発された。固体PEG-NHS(10~20mg)を、中に置かれた4mmの磁気撹拌棒を用いて4.0mLの透明ガラスバイアルに添加した。固体PEG-NHSを入れたバイアルは、温度制御のために水槽に入れられた。撹拌速度は、300rpmに調節され、水槽内部の温度は、25~26℃に調節された。PEG-AM溶液を、pH7.0、7.5、または8.0でリン酸緩衝液中に調製し、固体PEG-NHSに添加した。この時点で、ストップウオッチを開始し、溶液が固体と一体化し、その内部に埋め込まれた磁気撹拌棒を用いて1つのものとして継続して回転するとき、停止した。
【0791】
(A)ゲル化時間におけるpH効果
異なるpHで緩衝化したPEG-AM溶液を固体PEG-NHSに添加した場合のゲル化時間におけるpH効果が実験(08-06-混合の実験、表35)において研究された。5%(50mg/ml)の濃度でのPEG-AM溶液は、pH7.0、7.5、および8.0で、1.0mlの0.1Mのリン酸緩衝液中に50.0mgを溶解することによって調製した。PEG-AM溶液を、5重量%の濃度のそれぞれの試薬を得るために必要とされる量で固体PEG-NHSに添加した。混合物は、300rpmで磁気撹拌機を用いて撹拌し、PEG-NHSの溶解およびゲル形成をもたらした。ゲル化時間は、それぞれのpHに対して三重に測定された。
【0792】
前に論じられたように、再構成溶液のpHを用いて、架橋結合反応が噴霧前に時期尚早に生じないように、ゲル化時間を制御することができる。表35および
図24に示されるように、7.5のpHは、3.5分間のゲル化時間を提供する。これは、臨床医がゲル化前にこの溶液を用いて創傷に噴霧するのに十分な時間を提供する。
【0793】
【0794】
図24で見ることができるように、7から8のpHの増加は、ゲル化時間を7’32’’から2’13’’に減少させる。
【0795】
(B)ゲル化時間におけるPEG濃度の効果
異なる濃度でPEG-AMを固体PEG-NHSに添加した場合のゲル化時間におけるpH効果が実験(08-23-混合の実験、表36)において研究された。2.5%(25mg/ml)、5.0%(50mg/ml)、および7.5%(75.0mg/ml)の濃度でのPEG-AM溶液は、pH7.5で、0.1Mのリン酸緩衝液中に対応する量を溶解することによって調製された。PEG-AM溶液を、2.5%、5%、および7.5%で、両方の化合物の最終濃度を得るために必要とされる量で固体PEG-NHSに添加した。混合物は、300rpmで磁気撹拌機を用いて撹拌し、PEG-NHSの溶解およびゲル形成をもたらした。ゲル化時間は、それぞれの濃度に対して三重に測定された。
【0796】
【0797】
表36および
図25AおよびBで見ることができるように、PEG濃度が増加するとき、ゲル化時間は減少する。これは、溶液が噴霧機内で時期尚早に架橋結合しないように、それぞれの噴霧チャンバ内のPEG濃度の調節を可能にする。
【0798】
19.1.2 PEG-NHS/PEIヒドロゲル
以下の実施例は、PEG-NHS/PEI ヒドロゲルを対象とする。これらのヒドロゲルは、PEG-NHS/ポリエチレンイミンネットワークであり、PEG-AM/PEG-NHS ヒドロゲルへの代替物を提供する。ポリエチレンイミン(PEI)は、高密度のアミン基を有する分岐ポリマーである。これらのポリマーは、真皮で低分子結合を形成し、組織表面からヒドロゲルの層間剥離を防ぐ。PEG-NHS/PEIヒドロゲルの形成は、前述のPEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルとして同一の化学反応を利用する。PEIは、噴霧機のチャンバ2内に含有されるPEG-AM溶液に少量で添加することができるか、または完全にPEG-AMと置き換えることができる。PEG-AMの代わりにPEIを用いるか、またはこの材料をPEG-AMに添加して、ヒト皮膚にゲルのより強力な結合をもたらす極めて正荷電を持つイミン基を導入する。
【0799】
以下の実施例では、ゲルは、リン酸緩衝液中のPEI溶液を固体PEG-NHSに添加することによって調製された。ポリエチレンイミン(PEI)は、1200ダルトンの数平均分子量および1300の重量平均分子量を有する水中の50重量%の溶液として、Aldrichのカタログ番号485595、ロット番号05329KHから購入した。5重量%のPEG-NHSを有する5重量%のPEIの使用は、即時型沈殿物形成をもたらすが、PEI濃度の10~50倍の減少は、原位置で架橋結合するヒドロゲルをもたらす。
【0800】
リン酸塩の3つの濃度、0.125重量%、0.25重量%、および0.5重量%の濃度でのPEI溶液はそれぞれ、pH7で、0.1M、0.2M、および0.5Mのリン酸緩衝液を用いた5%のPEI原液の希釈によって調製された(表37 08-13-混合の実験)。PEI溶液のpHは、pH計測記録用紙によって測定された。混合物は、300rpmで磁気撹拌機を用いて撹拌し、PEG-NHSの溶解およびゲル形成をもたらした。
【0801】
0.5重量%のPEI濃度で、リン酸緩衝液の最大容積は、その溶液のpHを7.0で維持するには十分ではなかったが、表37で見ることができるように、08-13-混合4、08-13-混合5、および08-13-混合6の実験では、pH7で測定されるであろうよりもより短いゲル化時間をもたらした。しかしながら、これは、PEI濃度の効果を変化させない、つまり、
図26に示されるように、PEI濃度が全ての3つのリン酸塩濃度に対して増加したとき、ゲル化時間は減少した。
【0802】
リン酸塩濃度は、ゲル化時間において逆効果を有するように思われた、つまり、リン酸塩濃度が増加したとき、ゲル化時間は減少した(
図26)。極端な場合、0.125%のPEIでの0.5Mのリン酸塩は、ゲル生成ができなかった(08-13-混合9、表37(0.5Mのリン酸塩中の0.125%のPEI))。
【0803】
【0804】
19.1.3 PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲル
以下の実施例は、PEG-MA/PEG-NHS/キトサンヒドロゲルを対象とする。キトサンは、皮膚へのヒドロゲルの隔離の目的でヒドロゲルへの正電荷の付与のためにPEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルに添加することができる。
【0805】
PEG-NHS/キトサンのゲル形成は、キトサンがPEG-AMで置き換えることができるかどうかを研究された。キトサン、バッチ番号FP-211-03は、NovaMatrixから購入されたが、キトサンがpH7でリン酸緩衝液中に溶解しないため、水中のキトサン溶液は、pH5~6で使用された。0.25%および0.65%の濃度でのキトサン水溶液の固体PEG-NHSへの添加は、ゲル生成ができなかった。キトサンとPEG-NHSの混合物は、反応開始から20時間後に液体形態で維持された。この実験は、キトサンがPEG-AMで置き換えることができなかったことを示した。
【0806】
次の実験は、キトサンをPEG-AMに転嫁することができるかどうかを試験するものであった。したがって、3つの成分システムが開発され、キトサン溶液をPEG-NHSおよびPEG-AMに添加した。
【0807】
キトサンをPEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルに導入する2つの方法を試験した。方法1では、2.5重量%のキトサン水溶液を、pH7で、0.1Mのリン酸緩衝液中の5重量%のPEG-AMと混合した。この溶液を固体PEG-NHSに添加した。方法2では、2.5重量%のキトサン水溶液を固体PEG-NHSに添加し、溶解した。0.1Mリン酸緩衝液中の5重量%のPEG-AMを、pH7で、この溶液に添加した。0.22~0.27%および0.57~0.64%のキトサン溶液を、これらの方法を用いて得た(表38)。PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲルについての実験条件、最終試薬濃度、およびゲル化時間を表38に示す。
【0808】
両方の方法では、キトサンの部分的沈殿が観察されたが、ゲルは、反応が進行するにつれて、透明になった。これは、反応が進行するにつれて、キトサンがヒドロゲルマトリックスに取り込まれたことを示した。3つの成分システムのPEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲルのゲル化時間は、対照-2つの成分のPEG-NHS/PEG-AMのヒドロゲルシステムと比較された。表38に概説されるように、0.22~0.27%のキトサン濃度で、ゲル化時間は、対照のゲル化時間よりも長い(キトサン導入の第1の方法)か、あるいはそれに近い(キトサン導入の第2の方法)いずれかであった。0.57~0.64%の濃度でのキトサンについては、ゲル化時間は、キトサンがゲルに導入された方法とは関係なく、対照に対するものよりも長かった。したがって、PEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルへのキトサンの取り込みは、高濃度になるほど著しく反応が低下する。
【0809】
【0810】
PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲルは、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルおよびPEG-NHS/PEIヒドロゲルと比較して不利点を有する。pH約7で、キトサンが沈殿し、ゲルマトリックスに共有結合することができない。
【0811】
(1)平衡膨潤の決定
平衡膨潤は、共有結合的に架橋されたヒドロゲルの架橋密度を測定する。高度に架橋結合したヒドロゲルは、その高メッシュ密度のため、あまり膨潤しない。平衡膨潤を有するヒドロゲルはまた、組織表面から層間剥離することもできる。したがって、組織表面からの層間剥離をふせぐためには、低い平衡膨潤が望ましい。
【0812】
平衡膨潤に影響を及ぼす要因には、PEG濃度および1分子当たりの反応基数が含まれる。したがって、4本のアームを持つPEG-NHSと反応する4本のアームを持つPEG-AMは、より低い架橋密度のため、2本のアームを持つPEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルよりも低い平衡膨潤を有する。
【0813】
この実験では、固体PEG-NHSは、PEG-AM溶液と混合した。混合溶液を1.0mLの使い捨て注射器(Henke Sass Wolf GmbH)で回収し、ゲルを注射器内に形成した。この方法は、固定形状を有するヒドロゲル型の形成を可能にした。注射器は、小さな円筒状の断片に切断された。ゲルプラグは、長さが5~6mmで直径が5mmであった。ゲルプラグは、計量し、pH7.4で、10mLの1×PBSで充填したファルコン管に入れた。ファルコン管は、37℃の水槽に24時間入れた。24時間後、ゲルプラグをファルコン管から取り出し、過剰なPBSを拭き取った。ゲルプラグは、膨潤後に計量した。膨潤の割合は、重量の変化を元の重量で割ることにより計算され、割合として結果を示した。
【0814】
膨潤の割合(%)=((膨潤後の重量-膨潤前の重量)/膨潤前の重量)×100
表39に概説されるように、一般規則として、PEG-AM/PEG-NHSヒドロゲルの膨潤は、水とポリエチレングリコールポリマーの高結合により、それぞれのPEG成分の濃度の増加と共に増加した。
【0815】
a.PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲル:2.5%(25mg/ml)、5.0%(50mg/ml)、および7.5%(75.0mg/ml)で、0.1Mのリン酸緩衝液中のPEG-AMを、pH7.5で、固体PEG-NHSに添加して、2.5%、5%、および7.5%の両方の試薬の等しい最終濃度を得た。
【0816】
b.PEG-NHS/PEIヒドロゲル:0.125%、0.25%、および0.5%の濃度で、0.1Mのリン酸緩衝液中のPEIを、pH7.0で、固体PEG-NHSに添加して、5%の濃度を得た。
【0817】
c.PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲル:キトサン水溶液を、2.5%の濃度で、固体PEG-NHSに添加した。0.1Mのリン酸塩中のPEG-AMを、pH7で、この溶液に添加した。
【0818】
d.ゲルプラグは、室温で平衡膨潤を試験するために製造された。
【0819】
【0820】
PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲル、PEG-NHS/PEIヒドロゲル、およびPEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲルについての平衡膨潤の結果を表40および
図27に示す。膨潤度は、5%~15%の全PEG濃度の増加に伴って65.3%~146.9%のPEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルに対して増加した(表40、
図27)。膨潤度は、架橋結合密度の関数であり、より高い程度はより高い密度に相当する。この場合、より高いPEG濃度の効果は、架橋結合する密度の増加を圧倒する。これは、水に対するポリエチレングリコールの高親和性によるものである。
【0821】
PEG-NHS/PEIヒドロゲルについて、PEI濃度の増加は、膨潤度を変化させず、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルの架橋結合度に近く、両ヒドロゲルにおいて同様の架橋結合密度を示した(
図27)。対照的に、PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲル(187%)の膨潤度は、10%のPEG濃度で、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲル(112%)の膨潤度よりも著しく高かった。これは、PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲルの架橋結合密度がより低いことを示し、PEG-NHSとPEG-AMとの間の反応におけるキトサンの干渉に起因する。
【0822】
PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲル、PEG-NHS/PEIヒドロゲル、およびPEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲルの膨潤試験の結果が、表40および
図27に示される。PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルの膨潤度は65.3%から146.9%に増加し、全PEG濃度は5%から15%に増加した(表40、
図27)。膨潤度は、架橋結合密度の関数であり、より高い膨潤度いは、より高い密度に相当する。この場合、より高いPEG濃度の効果は、架橋結合密度の増加を圧倒する。
【0823】
PEG-NHS/PEIヒドロゲルについて、PEI濃度の増加は膨潤度を変化させず、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルの架橋結合度に近く、両ヒドロゲルにおいて同様の架橋結合密度を示した(
図27)。対照的に、PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲル(187%)の膨潤度は、10%のPEG濃度で、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲル(112%)の膨潤度よりも著しく高く、これは、後者の系の架橋結合密度がより低いことを示し、PEG-NHSとPEG-AMとの間の反応を妨害したキトサンの干渉効果によって説明され得る。
【0824】
【0825】
19.2 皮膚上でのヒドロゲル試験
PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲル:pH7.5の0.1Mリン酸緩衝液中の5重量%のPEG-AMを固体PEG-NHSに添加した(表41)。この混合物を無傷の皮膚に適用した。液体は粘性の溶液を形成し、それは数分以内に合体して薄膜になり、皮膚にうまく付着した。この膜は、皮膚に数時間付着したままであった。
【0826】
PEG-NHS/PEIヒドロゲル:pH7.0の0.1Mリン酸緩衝液中の0.5%のPEIを固体PEG-NHSに添加した。液体は粘性の溶液を形成し、数分以内に合体して皮膚付着性の薄膜になった。ヒドロゲルを無傷の皮膚に適用し、皮膚に数時間付着したままであった。PEG-NHS/PEIヒドロゲルは、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルと比較して、速く薄膜に変わり、しっかりと皮膚に付着しているようであった。
【0827】
PEG-NHS/PEG-AM/キトサンヒドロゲル:キトサン水溶液(2.5重量%)を固体PEG-NHSに添加した。PEG-AM(pH7の0.1Mリン酸塩中)をこの溶液に添加した。ヒドロゲルを無傷の皮膚に適用した。このゲルは、皮膚にうまく付着しなかった。
【0828】
【0829】
20.実施例:薬物を放出する生分解性足場への固液原位置で架橋結合スプレー
上述は、生分解性の原位置で架橋結合ヒドロゲルを介して真皮に対して隔離されたPLGマイクロスフェアからの薬物持続放出用の製剤である。薬物送達系が動的な創傷治癒環境に適用され得るため、真皮内への薬物取り込みは、皮膚が治癒し、そのバリア機能を緩徐に再確立するにつれて限定的になり得る。したがって、真皮への薬物の持続的な輸送は、厚い線維性の痂皮が創傷上に形成されるにつれて減退し得る。結果的に、薬物は、ヒドロゲル中に隔離されるマイクロスフェアから放出されるが、痂皮を介する薬物の輸送が制限される可能性が高い。
【0830】
問題が痂皮を介する薬物の輸送である場合、解決策は、送達系を痂皮内に組み込むことであり得る。いったん送達系が痂皮内に組み込まれると、薬物は、痂皮から治癒中の真皮内に放出される。したがって、痂皮が送達系の一部になる。
【0831】
本実施例において、薬物を含有する薄いガーゼ様の柔軟な生分解性足場が新鮮創傷上に設置される。足場の材料特性を、ガーゼが創傷からの血液および他の浸出液を吸収することができるように調節してもよい。したがって、生分解性足場は、血液、フィブリン、およびフィブリノゲンを吸収するために、多くの空きスペースを有する。フィブリン塊の形成中のこの足場のフィブリン塊への組み込みは、結果的に、フィブリン塊が凝固した後に痂皮とも呼ばれる線維網への足場の組み込みになる。薬物を含有する生分解性足場を創傷内に設置した後、原位置で架橋結合ヒドロゲルは、創傷被覆材として、全部位を被覆するために上部に適用される。
【0832】
先の実施例において、薬物は、噴霧器のチャンバ1内でポリマー1(PEG-NHS)と共凍結乾燥されたPLGマイクロスフェア内に含有される。本実施例において、噴霧器は、原位置で架橋結合ポリマー成分のみを含有する。薬物は、生分解性足場内に組み込まれる。
【0833】
この概念は有利であり、創傷治癒に重要な意味を持つ。足場は、薬物系の創傷との密接な接触を可能にし、いくつかの実施形態では、薬物系は、抗菌性を有する作用物質を含む。創傷との密接な接触は、創傷感染を予防し、したがって、効果的な創傷治癒を支援し得る。フィブリンが組み込まれた薬物送達系は、細胞が付着する優れた「足場」である。
【0834】
20.1 説明
本実施例において、(a)一方のチャンバに液体を、他方のチャンバに凍結乾燥された固体を含有する2チャンバ型噴霧器、および(b)薬物を含有する生分解性の組立足場を使用する。
【0835】
生分解性足場は、PLGポリマーのブレンドである柔軟なガーゼ様の物質の形態である。他のポリマーを主要成分(PLG)に添加して、生分解性、柔軟性等の特性を付与してもよい。薬物を生分解性足場内に組み込む。
【0836】
生分解性足場は、細胞が(a)自ら付着し、(b)分化し、かつ(c)増殖することを可能にする「オープンセル」構造を有する。足場は、細胞付着を促進するために組み込まれるRGDペプチド等の他の成分を有し得る。足場は、それを「適所」に保つために生体接着性を有する。
【0837】
20.2 使用方法
足場を新鮮創傷上に設置した後、部位から滲み出る血液をガーゼに染み込ませる。その後、噴霧器に係合して、チャンバ1およびチャンバ2内に含有される2つの成分を混合する。
【0838】
チャンバ1内に含有される凍結乾燥された固体成分は、ポリマーマクロモノマー(ポリマー1)(別の成分とさらに架橋結合することができるポリマー)から成る。他方のチャンバ(チャンバ2)内の成分は、凍結乾燥されたポリマー(ポリマー1)と反応することができる別のポリマーマクロモノマー(ポリマー2)を含有する。ポリマー2をpH6~8のリン酸緩衝液中に溶解する。ポリマー2は、加水分解の不安定な結合を含有せず、したがって、水中で安定している。したがって、ポリマー2を再構成緩衝液中に保存することができる。結果的に、ポリマー2を含有する溶液は、ポリマーが噴霧器内でともに混合されるときに、凍結乾燥されたポリマー1を再構成する。その後、混合溶液を迅速に創傷部位に噴霧する。噴霧時、溶液は架橋結合し、それによってヒドロゲルを形成する。
【0839】
本実施例において、薬物送達担体およびヒドロゲル中の足場は、創傷被覆材である。
【0840】
20.3 実施例
本実験の目的は、薬物を創傷に送達するために創傷組織上に設置され得る生分解性足場パッチの原型を開発することである。「足場」は、細胞付着のために高表面積を提供し得る三次元構造である。足場マトリックスのポリマー組成物を変化させることで、薬物放出速度を3日間~14日間に調節することができる。
【0841】
薬物を50mg/mLの濃度で水中に溶解する。12000g/モルの分子量のポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)、30,000g/モルの分子量のポリ(乳酸)(PLA)、およびそれらのブレンドを使用して、線維性足場を調製した。ポリマーブレンドは、それぞれ、100/0のPLA/PLG、50/50のPLA/PLG、25/75のPLA/PLG、および0/100のPLA/PLGであった。PLAおよびPLGをPurac,Incから購入した。
【0842】
綿菓子製造機(Gold Medal Floss、カタログ番号3024)のセッティングを3に設定した(合計5つのセッティングがあり、温度は40℃~200℃の範囲である)。1gの100/0PLAブレンドおよび1mLの薬物含有溶液をホッパーに供給し、収集チャンバ内に(クモの巣によく似た)細繊維収集をもたらした。組み込まれた薬物を有するその繊維を収集し、低圧Carverプレスを用いてプレス加工して、それぞれ1gのパッチにする。その後、パッチを1インチ×1インチの正方形に穿孔する。50/50のPLA/PLG、25/75のPLA/PLG、および0/100のPLA/PLGの他のブレンドにおいても同様の手順に従う。
【0843】
パッチの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影する。SEMによって、メッシュサイズまたはオープンセルサイズは、約100~200ミクロンであると推定される。製造されたパッチの推定の厚さは、500~1000ミクロンの範囲であり得る。パッチを37℃およびpH7.4のリン酸緩衝食塩水を含有する溶解槽中のメッシュバケツ内に設置し、生理学的状態を刺激する。溶解媒体のアリコートを所定の時点で回収し、例えば、フレーム発光原子吸着分光法(AA)で薬物含量について分析することができる。
【0844】
20.4 結果
薬物の溶液を蒸留水中で、50mg/mlの濃度で調製する。12000g/モルの分子量のポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)、30,000g/モルの分子量の
ポリ(乳酸)(PLA)、およびそれらのブレンドを使用して、線維性足場を調製する。ポリマーブレンドは、それぞれ、100/0のPLA/PLG、50/50のPLA/PLG、25/75のPLA/PLG、および0/100のPLA/PLGである。PLAおよびPLGをPurac,Incから購入した。
【0845】
綿菓子製造機(Gold Medal Floss、カタログ番号3024)のセッティングを3に設定する(合計5つのセッティングがあり、温度は40℃~200℃の範囲である)。
【0846】
1gの100/0PLAブレンドおよび1mlの薬物溶液をホッパー内に供給し、収集チャンバ内に(クモの巣によく似た)細繊維収集をもたらす。組み込まれた薬物を有する繊維を収集し、低圧Carverプレスを用いてプレス加工して、それぞれ1gのパッチにする。その後、パッチを1平方インチの正方形に穿孔する。
【0847】
50/50のPLA/PLG、25/75のPLA/PLG、および0/100のPLA/PLGの他のブレンドにおいても同様の手順に従う。
【0848】
走査型電子顕微鏡写真(SEM)を用いて、パッチの質感を決定することができる。以下の特性も試験する。
【0849】
視覚および曲げモジュール。プレス加工された繊維パッチを、親指と人差し指の間でパッチを曲げる簡単な屈曲方法を用いて、曲げ強度について試験する。PEGまたはシリコーン等のいくつかの可塑化ポリマーを組み込むことによってパッチの脆度を減少させ、可塑性をパッチに付与することができる。
【0850】
放出速度。薬物の放出を、PLAとPLGの比率を変化させることによって調節することができる。大まかに言うと、ポリ(ラクチド)(PLA)の結晶化度が高いほど、マトリックスからの薬物の放出を遅延させる。ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)の非晶質性が薬物放出速度の増加をもたらす。PLAとPLGを様々な比率でブレンドする手法を効果的に利用して、マトリックスからの薬物放出速度を調節することができる。
【0851】
生分解性。パッチの生分解性を、37℃およびpH7.4のリン酸緩衝食塩水中で予め秤量したパッチをインキュベートすることにより、生体外で試験することができる。時間をかけてパッチを槽から除去し、30℃で維持した真空オーブン内で乾燥させる。T=0およびt=tでのパッチの重量は、生物分解性を提供する。ポリマーが加水分解で分解し、酵素分解で分解しないため、分解緩衝液は酵素を含有しない。
【0852】
生体接着。パッチを湿組織上に設置し、組織を反転させ、パッチが組織から剥がれる速度を測定することによって、薬物充填パッチの生体接着性を評価することができる。
【0853】
細胞粘着。薬物充填パッチが細胞に付着する傾向を、足場の存在下でのCOS細胞またはケラチン生成細胞の生体外培養によって測定する。
【0854】
21.実施例:2チャンバ型液体-液体噴霧器を介する2つ以上の薬物の同時投与
時折、複数の薬物を同時に投与する必要がある。真皮適用の場合、一方の薬物に続く他方の薬物の適用が可能であるが、第2の薬物の投与中に第1の薬物を偶発的にこすり落とす等の実践上の問題を有する。これらの薬物を共製剤化することができる場合、組み合わせた製剤の単回適用は、使用および投与の容易さを提供する。この例として、2つの薬物が共製剤化された真皮クリームが挙げることができる。しかしながら、1つの薬物と別の薬物の溶解特性の相違、または共製剤化に起因する物理的/化学的不適合性のいずれかのため、多くの薬物を一緒に製剤化することはできない。例えば、その薬物のうちの一方を安定化または可溶化する賦形剤は、他方の薬物の沈殿を起こし得る。相互に対する薬物のイオン結合は、予測不可能な生物学的利用能、吸収、およびクリアランス等のさらなる問題をもたらし得る。したがって、共製剤化することなく、2つの薬物を標的部位で共投与する薬学的に準拠した方法が必要とされる。正確な量の送達および大規模な部位を均質に被覆する能力が、さらに所望される特性である。
【0855】
2つの別個の製剤を共投与する薬物送達装置を使用して、複数の薬物の同時投与に関連した上述の問題に対処することができる。複数の薬物を同時に投与することができる薬物送達系の一例として、両方の製剤が一緒に押し出される共軟膏チューブがある。複数の薬物を同時に投与することができる薬物送達系の別の例には、それぞれのチャンバ内に製剤化された薬物を含有し、薬物製剤を正確な量で共噴霧する二重チャンバ送達噴霧装置がある。あるいは、必要に応じて、噴霧装置をそれぞれの薬物を別々に噴霧するように係合することができる。例えば、(薬物を有するか、または有しない)アルコール溶液を用いて、最初に完全に洗浄して創傷を「準備」し、その後、薬物製剤を噴霧してもよい。噴霧機構は、適用に応じて、高エネルギーまたは低エネルギーであってもよい。別の適用では、両方のチャンバは、同一の薬物であるが、異なる形態であり、異なる放出特性を得るように異なって製剤化される薬物を含有し得る。例えば、チャンバ1は、FDAに認可された液体賦形剤中に懸濁する1つの薬物またはその形態を含有し得る。チャンバ2は、別の形態の溶解薬物(例えば、持続放出のために)、または噴霧可能な水性ゲルの形態の別の薬物を含有し得る。共噴霧は、即座に生物学的利用可能な薬物および薬物の持続形態またはそれが溶解するにつれて利用可能になる第2の薬物の両方を提供する。
【0856】
複合薬を適用することができる薬物噴霧器は、皮膚病変の治療に多大な影響を与え、(a)正確に組み合わせられた複合薬を送達し、かつ(2)広い領域上で均一の被覆度を提供するために使用することができる。さらに、創傷の治療について、創傷洗浄を、薬物含有ゲルの標的部位への投与と組み合わせてもよい。
【0857】
噴霧器のチャンバ1およびチャンバ2内に含有される溶液は、(a)噴霧可能でなければならず、(b)皮膚から「流出」してはならず、(c)皮膚上に均一のコーティングを形成しなければならない。最初の2つは、粘度の調節に依存し、最後の1つは、製剤の表面湿潤性に依存する。噴霧することができる程度に流体であるが、「皮膚上に留まる」ことができる程度に粘性の製剤に関して、それらの製剤のうちの1つは、粘度をスプレーに付加するさらなる要件を有する。これを、冷たい間は液体であるが、皮膚温度に達したときに「ゲル」になる特性を有する熱可逆性ポリマーを用いて達成することができる。そのようなポリマーの1つは、PEO-PPO-PEO(ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド-コ-ポリエチレンオキシド)構造である。低温(0~15℃)で、PPOおよびPEOはいずれも完全に溶解し、ポリマーは、ランダムコイル構造で存在する。より高い温度(15℃超)で、PPOセグメントは崩壊し始めるが、PEOセグメントは依然として可溶性である。ポリマーは、より高い温度によって引き起こされる「臨界ゲル化」状態を経験し始める。物理的に、ポリマー溶液は、ゲルのようなより高い粘度を達成する。このことは、引き続き皮膚上に均質のゲルコーティングを達成しながら、薬物含有ポリマー溶液が噴霧されることを可能にする。実施例の第28項および第29項において、原位置で架橋結合反応は、事実上、共有結合性であり、pHの変化によって引き起こされた。この概念において、原位置でゲル化は、事実上、非共有結合性であり、pHの変化によって引き起こされる。「ゲル化」現象は、物理的な架橋結合であり、ポリマーセグメントの崩壊に起因し、より粘度の高い溶液を作成する。物理的な架橋結合は、事実上、共有結合性でも永久的でもないが、「流出」を最小限に抑えるか、または予防する課題を達成する。
【0858】
投与後に皮膚から「流出」しない噴霧可能な製剤を開発する別の方法は、噴霧中に原位置でゲル化を達成することである。これを、混合されると即座にゲル化するレシチン/ポリエチレングリコール/水溶液を用いて達成することができる。薬物をポリエチレングリコール/水溶液中に溶解し、第1のチャンバ内に含んでもよい。第2のチャンバ内に含まれ、かつ第1のチャンバの内容物と共噴霧されるレシチンは、結果的に皮膚上の「ゲル」になる。
【0859】
2チャンバ型液体-液体薬物送達系のいくつかの実施例を以下に提供する。
【0860】
21.1 2チャンバ型液体-液体噴霧送達系からの薬物PEO-PPO-PEO製剤の送達
本実験は、2つの形態(例えば、イオン化形態および微粒子化形態)の1つの薬物または2つの薬物を原位置でゲル化系から長時間送達することを対象とし、これは、温度の変化によって引き起こされる。ブロックコポリマーの分子量は、12,600ダルトンであり、それぞれのポリマーセグメントは、約4000ダルトンであった。ベンジルアルコールを防腐剤として使用した。アラントインおよびアルギン酸ナトリウムを創傷治癒補助剤として使用した。
【0861】
1%のベンジルアルコール、3%のアラントイン、20%のF127、および3%のアルギン酸ナトリウム、ならびに水(適量)を含有する溶液中に溶解する薬物を含有する溶液(溶液1)を調製する。78%のプロピレングリコール、1%のtween20、および10%のポリエチレングリコール400を含有する溶液中に分散した微粒子化薬物を含有する別の溶液(溶液2)を調製する。溶液1を液体-液体噴霧器のチャンバ1内に含有し、溶液2をチャンバ2内に含有することができる。それぞれの溶液の粘度を、Brookefield粘度計を用いて4℃、25℃、および32℃(皮膚温度)で測定する。それぞれの溶液を1:1、1:2、および1:3の比率で混合することによって、ゲル化時間を測定する。ゲル化概念を皮膚上で試験し、ゲル化製剤が表面上に噴霧されるかを推定する。
【0862】
溶液2は、水溶性の賦形剤を含有する。溶液2中の成分が、溶液1中の全ての成分と混和可能でなければならないという理由から、賦形剤は全て水溶性である。プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを表面湿潤剤として含む。溶液1の粘度は、温度によって変化すべきでないが、溶液2の粘度は、温度によって著しく変化し得る。最適には、1:1比の溶液1と溶液2の混合は、わずかに「流出」する溶液をもたらす。皮膚上の膜が薄いほど、「流出」の程度は低い。最適には、1:2および1:3比の溶液1と2の混合は、「流出」しない溶液をもたらす。3つ全ての混合物はゲルである。1:3比のゲルの生体外放出実験は、最適には、イオン化薬物のある程度の持続放出を実証する。
【0863】
21.2 噴霧器から噴霧することができる粘度の決定
本実験は、蒸留水中で製剤化される一連のポリビニルアルコール溶液を生成し、かつこれらの溶液が噴霧器具から効果的に噴霧することができるかを確定するためにこれらの溶液の粘度を測定するための実験である。
【0864】
材料
・ポリビニルアルコール(PVA):5、10、15、20、25、30%の溶液-ロット番号D14T017、Alfa Aesar
・蒸留水
・Brookfield Rheometer、DV III
方法
a.適切な量のPVA固体を検量し、それを蒸留水中に溶解して、6個のPVA溶液を調製した。
【0865】
b.粘度を測定するために、Brookfield DV-III超プログラム可能な血流計を利用し、Neslab RTE-111水浴を用いて温度を調整した。温度が25℃で安定した時点で、9.5、98、4800、および12500cPの鉱油較正基準を用いて、その計器を較正した。
【0866】
c.その後、溶液を適用し、粘度測定値がいくつかのRPM値にわたって安定した状態を保つまで、RPMを調節した。その後、この手順を30℃で繰り返した。
【0867】
データ
表42は、PVA溶液によって得られた粘度の範囲を要約し、25℃で測定したとき、最低粘度は約150cP(5重量/容量%のPVA)であり、最高粘度は9900cP(30重量/容量%のPVA)であった。全ての溶液が流動特性を有した。
【0868】
【0869】
図28に示されるように、ニュートン流体の特性と一致して、温度が増加するにつれて、PVAの粘度が低減する。表42は、得られた実際の粘度値を含み、それらのバイアルを流動する溶液を観察して、流動特性を質的に記録した。
【0870】
本実験の目的は、PVAの粘度を確定することであり、これを使用して、最終的に標的表面上で凝固してゲルになる液体製剤を排出するように設計された噴霧器具の限度を決定する。試験機構としてのPVAの使用は、噴霧器を故障させるか、または破損することなく、製剤がどの程度粘性であり得るかを決定する。その器具の温度が略室温であるが、体温は32℃であると理由から、選択した2つの温度は、25℃および30℃であった。PVAの結果は、温度が増加するにつれて粘度が減少するとして、ニュートン流体の既知の特性と一致する。したがって、噴霧器から排出されたPVA溶液が身体の表面に適用される場合、その粘性はより低くなる。表42に概説されるように、(a)5%および10%の濃度を有する溶液を容易に噴霧することができ、(b)15%の濃度を有する溶液は、噴霧困難であり、(c)15%を超える濃度を有する溶液(約337cP~9900cP)を噴霧することはできなかった。
【0871】
本明細書に引用される全ての参考文献は、個々の出版物または特許または特許出願がそれぞれ、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれると具体的かつ個別に示される場合と同程度に、全ての目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0872】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲を制限されるべきではない。実際に、本明細書に記載される修正に加えて、本発明の様々な修正が、前述の記述および添付の図面から当業者に明らかとなる。そのような修正は、説明的実施形態の範囲および/または添付の特許請求の範囲内に収まるよう意図される。
【図面の簡単な説明】
【0873】
【
図5B】使用中の先行技術の削皮回転ホイールを示す。
【
図6】使用中の先行技術の削皮回転ホイールを示す。
【
図7】使用中の先行技術の削皮ハンドピースを示す。
【
図8】男性型脱毛症(MPHL)のHamilton-Norwood分類。
【
図9】従来の削皮ハンドピースに装着した、本発明の実施形態に従う本発明の削皮先端部を示す。
【
図11】本発明の実施形態に従う削皮先端部の概略図である。
【
図12】本発明の実施形態に従う連結アセンブリの概略図である。
【
図13】本発明の実施形態に従う削皮先端部を示す。
【
図14】本発明の実施形態に従う削皮先端部を示す。
【
図15】本発明の実施形態に従う、使用中の発明の削皮先端部を示す。
【
図16】本発明の実施形態に従う伝動アセンブリの一部を示す。
【
図17A】本発明の実施形態に従う噴霧装置の正面斜視図である。
【
図17B】本発明の実施形態に従う噴霧装置の背面斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態に従う噴霧装置の背面斜視図。
【
図19A】
図17Aおよび17Bに示されるハンドピースの構成部分を示す平面図である。
【
図19B】本発明の実施形態に従うハンドピースの背面斜視図である。
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図20A】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジの平面図である。
【
図20B】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図20C】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図20D】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図21A】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図21B】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図21C】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図21D】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図21E】本発明の実施形態に従う薬物カートリッジおよびハンドピースの前端部の平面図である。
【
図22】対象となる毛包構造体を分類するための基準。
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図23A】削皮術(「DA」)による外皮攪乱により治療された、DA前(
図23A)、DA後(
図23B)、DA後14日目(生検前)(
図23C)、DA後28日目(縫合抜糸後)(
図23D)、および点状出血の出現を示すように拡大されたDA後に撮影された別の画像(
図23E)の対象の皮膚の写真。
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図23B】削皮術(「DA」)による外皮攪乱により治療された、DA前(
図23A)、DA後(
図23B)、DA後14日目(生検前)(
図23C)、DA後28日目(縫合抜糸後)(
図23D)、および点状出血の出現を示すように拡大されたDA後に撮影された別の画像(
図23E)の対象の皮膚の写真。
【
図23C】削皮術(「DA」)による外皮攪乱により治療された、DA前(
図23A)、DA後(
図23B)、DA後14日目(生検前)(
図23C)、DA後28日目(縫合抜糸後)(
図23D)、および点状出血の出現を示すように拡大されたDA後に撮影された別の画像(
図23E)の対象の皮膚の写真。
【
図23D】削皮術(「DA」)による外皮攪乱により治療された、DA前(
図23A)、DA後(
図23B)、DA後14日目(生検前)(
図23C)、DA後28日目(縫合抜糸後)(
図23D)、および点状出血の出現を示すように拡大されたDA後に撮影された別の画像(
図23E)の対象の皮膚の写真。
【
図23E】削皮術(「DA」)による外皮攪乱により治療された、DA前(
図23A)、DA後(
図23B)、DA後14日目(生検前)(
図23C)、DA後28日目(縫合抜糸後)(
図23D)、および点状出血の出現を示すように拡大されたDA後に撮影された別の画像(
図23E)の対象の皮膚の写真。
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図23F】
図23Fは、血管が新生された皮膚乳頭を囲む皮膚の表皮小稜の図を提供する。表皮網状突出(Epidermal rete pegs)、皮膚乳頭内のループ状毛細血管、および皮膚乳頭を示す。最上の点線によって印の付いた深さまでの攪乱は、点状出血を生じることが期待され得る。最下の点線によって印の付いた深さまでの攪乱は、皮膚乳頭から表層の血管叢への表皮厚みの移行として点状出血およびより均一な出血を生じることが期待され得る。
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図24】PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルに対するpHの関数としてゲル時間を示すグラフである。
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図25A】
図25Aおよび25Bは、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルに対するPEG濃度の関数としてゲル時間を示すグラフである。
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図25B】
図25Aおよび25Bは、PEG-NHS/PEG-AMヒドロゲルに対するPEG濃度の関数としてゲル時間を示すグラフである。
【
図26】PEG-NHS/PELヒドロゲルに対するリン酸緩衝液(0.1M(ひし形)、0.2M(三角形)、および0.5M(正方形))中のPEI濃度の関数としてゲル時間を示すグラフである。
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図27】PEG-NHS/PEG-アミンヒドロゲル(ひし形)、PEG-NHS/PEG-アミン/キトサンヒドロゲル(正方形)、およびPEG-NHS/PEIヒドロゲル(三角形)に対するPEG濃度(x軸)の関数として膨潤度(y軸)を示すグラフである。
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図28】温度およびPVA濃度の関数としてPVA溶液の粘度を示すグラフである。それぞれの濃度に対する左側の棒(x軸)は、25℃でのせん断粘度(cP)を示し、それぞれの濃度に対する右側の棒(x軸)は、30℃でのせん断粘度(cP)を示す。