(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079805
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】粒子増強凝集検出を使用するサンドイッチイムノアッセイのための試薬ならびにそれらの作製および使用の方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240604BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240604BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20240604BHJP
C07K 16/12 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
G01N33/543 581D
G01N33/53 G
G01N33/545 B
C07K16/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024052655
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2021577270の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】62/868,309
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・キュー・ウェイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハプテンのためのサンドイッチイムノアッセイにおいて使用するための試薬を、それらを含有するキットと併せて開示する。また、試料中のハプテン/薬剤を検出するための粒子増強凝集検出アッセイにおいてこれらのイムノアッセイ試薬を利用する、診断用イムノアッセイ方法も開示する。
【解決手段】粒子;該粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント;および該粒子に結合された第2の抗体またはそのフラグメント;を含み、該第1の抗体またはそのフラグメントは、分析対象の該第2の抗体またはそのフラグメントが特異的に結合する部分以外の該分析対象の部分に特異的に結合し、これによってハプテンが該診断用イムノアッセイ試薬に結合することにより、シグナル検出のための粒子増強凝集をもたらす、診断用イムノアッセイ試薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子;
該粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント;および
該粒子に結合された第2の抗体またはそのフラグメント;
を含み、
該第1の抗体またはそのフラグメントは、分析対象の該第2の抗体またはそのフラグメントが特異的に結合する部分以外の該分析対象の部分に特異的に結合し、これによってハプテンが該診断用イムノアッセイ試薬に結合することにより、シグナル検出のための粒子増強凝集をもたらす、
診断用イムノアッセイ試薬。
【請求項2】
分析対象は、ハプテンである、請求項1に記載の診断用イムノアッセイ試薬。
【請求項3】
ハプテンは、タクロリムス、エベロリムス、シロリムス、およびシクロスポリンからなる群から選択される、請求項2に記載の診断用イムノアッセイ試薬。
【請求項4】
粒子は、ラテックス粒子である、請求項1に記載の診断用イムノアッセイ試薬。
【請求項5】
第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントは、それぞれ、以下の:
(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29~C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(b)C10~C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1~C26環のC19~C27から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(c)C22においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(d)C24においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(e)C32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(f)C24およびC32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(g)C32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;ならびに
(h)C26においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原とC32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原との混合物に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント
からなる群から選択される、請求項1に記載の診断用イムノアッセイ試薬。
【請求項6】
(A)ハプテン;
(B)該ハプテンの部分に特異的に結合する、粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント;および
(C)該ハプテンの該第1の抗体またはそのフラグメントが結合する部分以外の該ハプテンの部分に特異的に結合する、第2の抗体またはそのフラグメント
を含み;
(B)および(C)の(A)への結合によって、粒子増強凝集がもたらされる、
粒子の凝集体。
【請求項7】
第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に直接結合されていない、請求項6に記載の粒子の凝集体。
【請求項8】
第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に結合されている、請求項6に記載の粒子の凝集体。
【請求項9】
第2の抗体またはそのフラグメントは、(B)の粒子に結合されている、請求項8に記載の粒子の凝集体。
【請求項10】
ハプテンは、タクロリムス、エベロリムス、シロリムス、およびシクロスポリンからなる群から選択される、請求項6に記載の粒子の凝集体。
【請求項11】
粒子は、ラテックス粒子である、請求項6に記載の粒子の凝集体。
【請求項12】
第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントは、それぞれ、以下の:
(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29~C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(b)C10~C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1~C26環のC19~C27から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(c)C22においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(d)C24においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原、に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(e)C32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原、に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(f)C24およびC32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(g)C32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;ならびに
(h)C26においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原とC32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原との混合物に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント
からなる群から選択される、請求項6に記載の粒子の凝集体。
【請求項13】
診断用イムノアッセイためのキットであって:
(1)粒子;
(2)(1)の粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント;および
(3)第2の抗体またはそのフラグメント
を含み、該第1の抗体またはそのフラグメントと該第2の抗体またはそのフラグメントとは、サンプル中に存在するハプテンの異なるエピトープに特異的に結合し、これによって、粒子増強凝集をもたらす、少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬;ならびに
該ハプテンを内在性結合タンパク質から放出させるための置換剤を含む前処理試薬
を含む、前記キット。
【請求項14】
(3)は、粒子に直接結合されていない、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
(3)は、(1)に結合されている、請求項13に記載のキット。
【請求項16】
ハプテンは、タクロリムス、エベロリムス、シロリムス、およびシクロスポリンからなる群から選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項17】
診断用イムノアッセイ試薬の粒子は、ラテックス粒子である、請求項13に記載のキット。
【請求項18】
第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントは、それぞれ、以下の:
(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29~C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(b)C10~C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1~C26環のC19~C27から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(c)C22においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(d)C24においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(e)C32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(f)C24およびC32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(g)C32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;ならびに
(h)C26においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原とC32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原との混合物に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント
からなる群から選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項19】
前処理試薬は、ハプテンをその内在性結合タンパク質から取り除く少なくとも1つの結合競合剤を含み、該結合競合剤は、以下の:
(a)シロリムス;
(b)エベロリムス;
(c)式IV:
【化1】
によって表される化合物;
(d)式V:
【化2】
によって表される化合物;
(e)式VI:
【化3】
によって表される化合物;または
(f)式VII:
【化4】
によって表される化合物
のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のキット。
【請求項20】
サンプル中のハプテンの存在を検出する方法であって:
(i)該サンプルを前処理試薬に曝露し、該ハプテンを内在性結合タンパク質から放出させ、前処理されたサンプルを用意する工程;
(ii)(i)で形成された前処理されたサンプルを、少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬と混合して混合物を形成させる工程であり、該少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬は、粒子、該粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント、および第2の抗体またはそのフラグメントを含み、該第1の抗体またはそのフラグメントは、該ハプテンの該第2の抗体またはそのフラグメントが特異的に結合する部分以外の該ハプテンの部分に特異的に結合する、該工程;
(iii)該少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬が該サンプル中に存在する該ハプテンに結合する条件下で、(ii)で形成された混合物をインキュベートし、これによって、粒子増強凝集をもたらす工程;および
(iv)インキュベートした混合物中に存在する粒子増強凝集のレベルを検出し、粒子増強凝集の該レベルを該サンプル中に存在する該ハプテンのレベルと相関させる工程
を含む、前記方法。
【請求項21】
少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に直接結合されていない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に結合されている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する第1の抗体またはそのフラグメントと第2の抗体またはそのフラグメントとは、同じ粒子に結合されている、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ハプテンは、タクロリムス、エベロリムス、シロリムス、およびシクロスポリンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬の粒子は、ラテックス粒子である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬の第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントは、それぞれ、以下の:
(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29~C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(b)C10~C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1~C26環のC19~C27から本質的になるタクロリムスの部分に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(c)C22においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(d)C24においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(e)C32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(f)C24およびC32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;
(g)C32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント;ならびに
(h)C26においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原とC32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原との混合物に対して産生されたモノクローナル抗体またはそのフラグメント
からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前処理試薬は、ハプテンをその内在性結合タンパク質から取り除く結合競合剤を含み、該結合競合剤は、以下の:
(a)シロリムス;
(b)エベロリムス;
(c)式IV:
【化5】
によって表される化合物;
(d)式V:
【化6】
によって表される化合物;
(e)式VI:
【化7】
によって表される化合物;または
(f)式VII:
【化8】
によって表される化合物
のうちの少なくとも1つである、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
サンプル中の分析対象の存在を検出する方法であって:
(i)該サンプルを前処理試薬に曝露して、該分析対象を内在性結合タンパク質から放出させ、前処理されたサンプルを用意する工程;
(ii)(i)で形成された前処理されたサンプルを少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬と混合して、混合物を形成させる工程であり、該少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬は、粒子、該粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント、および第2の抗体またはそのフラグメントを含み、該第1の抗体またはそのフラグメントは、該分析対象の該第2の抗体またはそのフラグメントが特異的に結合する部分以外の該分析対象の部分に特異的に結合し:
(a)該少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する該第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に直接結合されていない;または
(b)該少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する該第1の抗体またはそのフラグメントと該第2の抗体またはそのフラグメントとは、同じ粒子に結合されている、
該工程;
(iii)該少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬が該サンプル中に存在する該ハプテンに結合する条件下で、(ii)で形成された混合物をインキュベートし、これによって、粒子増強凝集をもたらす工程;ならびに
(iv)インキュベートした混合物中に存在する粒子増強凝集のレベルを検出し、該粒子増強凝集のレベルを、該サンプル中に存在する該ハプテンのレベルと相関させる工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照記述による組み入れ
本出願は、2019年6月28日に出願した米国仮出願第62/868,309号の、米国特許法第119条による利益を請求するものである。前記参照特許出願の全内容は、これにより参照によって本明細書に明確に組み入れる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載
該当なし。
【背景技術】
【0003】
身体は、複合的な免疫応答系に頼って自己と非自己とを識別している。時として、身体の免疫系は、不十分な応答を増大させるようにまたは過剰な応答を抑制するように、制御されなければならない。例えば、ヒトでは、腎臓、心臓、心肺、骨髄、および肝臓のような臓器を移植した場合、同種移植拒絶と呼ばれる過程によって、身体が移植組織を拒絶することが多い。
【0004】
同種移植拒絶の治療では、薬剤療法による制御によって免疫系を抑制することが多い。免疫抑制薬は、非自己組織の同種移植拒絶の予防を助ける目的で、移植レシピエントに慎重に投与される治療薬である。免疫抑制性薬物には(これらに限定されるものではないが):グルココルチコイド、細胞分裂阻害薬、抗体、イムノフィリンに作用する薬物、および(これらに限定されるものではないが)インターフェロン、オピエートINF結合タンパク質、ミコフェノール酸、FTY720などのその他の薬物が含まれる。特定のクラスの免疫抑制薬は、イムノフィリンに作用するこれらの薬物を含む。イムノフィリンは、生理学的な有意性を有する、高親和性の特異的結合タンパク質の一例である。現在、イムノフィリンの2つの異なるファミリー:シクロフィリンおよびマクロフィリン(macrophilin)が既知であり、このうち後者は、例えば(限定するものではないが)、タクロリムス、シロリムス、またはエベロリムスに特異的に結合する。
【0005】
移植患者において臓器拒絶を予防するために、最も一般的に投与されている2つの免疫抑制性薬物は、シクロスポリン(CSA)およびタクロリムス(FK506)である。米国およびその他の国で免疫抑制剤としての使用が見出されている別の薬物に、シロリムス、別名ラパマイシンがある。シロリムスの誘導体もまた免疫抑制剤として有用であり;そのような誘導体としては、例えば(限定するものではないが)、エベロリムスなどがある。
【0006】
タクロリムス、別名FK506は、免疫抑制活性を有し、細菌ストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)第9993号の発酵生成物から単離された、環状のポリ-N-メチル化ウンデカペプチドである。FK506の構造を、下記の式Iに示す。
【化1】
【0007】
タクロリムスは、一般的には、多くの場合、その他の免疫抑制薬物と併用されて、免疫系を抑制することによって同種臓器移植における移植片拒絶を低減させる。タクロリムスは、治療ウィンドウが狭く、よって、最適な効能のために血中薬物濃度をモニタリングすることがきわめて重要である。タクロリムスの薬物モニタリングには、単一抗体を使用する競合イムノアッセイが市販されており、また、この競合フォーマットより高い分析感度および特異度ならびにより広範なダイナミックレンジを提供するサンドイッチイムノアッセイが記載されている(非特許文献1;および特許文献1)。
【0008】
シロリムス、別名ラパマイシンは、ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって産生されるマクロライド抗生物質であり、様々な適用において、特に、例えば臓器移植拒絶および自己免疫疾患の治療および予防において使用するための免疫抑制剤として、薬学的に有用であることが明らかとなっている。シロリムス(ラパマイシン)の構造を、下記の式IIに示す。
【化2】
【0009】
しかしながら、シロリムスは、高い用量では副作用を現し、バイオアベイラビリティがやや変動しやすい。よって、薬理学的活性のために十分な最少レベルを維持するように用量を調節することができるように、また、副作用のいかなる過度のリスクも回避するように、ラパマイシンによって治療を受けている患者においてラパマイシンの血中レベルをモニタリングすることがきわめて望ましい。ラパマイシンのアッセイ法は、最近、特許文献2;特許文献3;および特許文献4に記載された。
【0010】
エベロリムス[40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン]、別名SDZ-RAD、RAD、およびCERTICAN(登録商標)(Novartis)は、シロリムスを改良する研究の中でNovartisが開発した、新規のマクロライド免疫抑制剤である(非特許文献2)。エベロリムスは、シロリムスと比べて、有機溶媒中でのより高い安定性およびより高い溶解度を有し、副作用がほとんどないより好都合な薬物動態を有する。エベロリムスの構造を、下記の式IIIに示す。
【化3】
【0011】
しかしながら、エベロリムスでも、タクロリムスおよびシロリムスの場合と同様の治療薬モニタリング(TDM)が必要である。エベロリムスのためのイムノアッセイが、例えば、米国特許文献5で開示されている。
【0012】
本明細書において上記に明記したように、これらの免疫抑制薬と関連した副作用は、患者において存在する薬剤レベルを注意深く制御することによって、部分的には制御することができる。生体サンプル中の免疫抑制薬物および関連薬物の濃度の治療的モニタリングは、最少の毒性で最大の免疫抑制を保証するよう投与計画を最適化するために必要である。免疫抑制薬はきわめて効果的な免疫抑制性薬剤ではあるが、多くの場合、有効量範囲が狭く、過剰な用量が深刻な副作用を招く恐れがあるため、それらの使用は慎重に管理されなければならない。一方で、免疫抑制剤の用量が少なすぎると、組織拒絶に至る恐れがある。免疫抑制薬物の分布および代謝は患者間で大きく異なる可能性があるため、また、有害反応の範囲および重症度は広範であるため、免疫抑制薬物レベルの正確なモニタリングが不可欠である。
【0013】
低分子ハプテン薬/ホルモンのアッセイ(タクロリムスアッセイなどであるが、それらに限定されない)は、多くの場合、単一抗体を使用する競合イムノアッセイによって測定される。このタイプのアッセイでは、シグナル検出のために粒子増強凝集を使用することが多い。しかしながら、これらのアッセイには欠点がある。第1には、これらの競合アッ
セイは、典型的には感度が低く、通常、サンドイッチアッセイより正確性が低いことである。第2には、特異度の低さであり、より多くのエピトープの認識を必要とするサンドイッチアッセイと比べて、構造類似体との交差反応性が高い。第3には、ハプテン類似体の存在下で反応混合物中のサンプルマトリックスを除去することが、より難しく;このため、多くの場合、そのようなアッセイでのサンプルマトリックスの除去には、手作業による抽出手順の使用が必要になることである。
【0014】
加えて、低分子ハプテンのサンドイッチアッセイとして、ハプテンに特異的な2つの抗体を利用するアッセイが報告されている(特許文献1を参照されたい)。しかしながら、粒子増強凝集を使用してハプテンのサンドイッチアッセイを開発することは、これまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第8,586,322号
【特許文献2】米国特許第6,635,745号
【特許文献3】米国特許第8,039,599号
【特許文献4】米国特許第8,039,600号
【特許文献5】米国特許第7,223,553号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Weiら、Clinical Chemistry(2014)60(4):621~630
【非特許文献2】Nashan,B.、Transplantation Proceedings(2001)33:3215~3230
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、従来技術の欠点また欠陥を克服する、分析対象(ハプテンなどであるが、それらに限定されない)のための新規のかつ改良されたイムノアッセイが、当技術分野において必要である。本開示は、そのようなイムノアッセイ、ならびにそこで使用される試薬およびキットを対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
例示的な文言および結果として本開示の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本開示が、その適用において、下記の説明において記載される構築物の詳細および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態、または様々な方法での実施もしくは実行が可能である。したがって、本明細書において使用される文言は、考えられる最も広い範囲および意味が与えられることを意図されており;実施形態は、例示的であること、すなわち網羅的ではないことを意味している。また、本明細書において用いられる表現および専門用語は、説明を目的とするものであり、限定とみなされるべきでないことを理解されたい。
【0019】
本明細書において別途定義がないかぎり、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別途断りがないかぎり、単数用語は複数を含むものとし、複数用語は単数を含むものとする。前述の技術および手順は、当技術分野で公知の従来方法に従って、また、本明細書を通して引用され論じられている様々な概括的な参考文献およびより具体的な参考文献に記載されているように、一般的に実施される。本明細書において記載された分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および製薬化学に関連して利用された、命名法ならび
にそれらの実験手順および技術は、当技術分野において公知かつ一般的に使用されるものである。化学的合成および化学的分析には、標準的技術を使用している。
【0020】
本明細書において言及したすべての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する当業者の技術のレベルを示すものである。特許、公開特許出願、および非特許刊行物は、本出願のどの部分で参照されていてもすべて、個々の特許または刊行物を参照によって組み入れることが具体的かつ個々に指示された場合と同程度に、本明細書において全体として参照によって明らかに組み入れる。
【0021】
本明細書において開示された組成物、キット、および/または方法のすべては、本開示に照らして、必要以上の実験をすることなく、作製し実行することができる。該組成物、キット、および/または方法は、特定の実施形態に関して説明されているが、本開示の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書において説明された組成物、キット、および/または方法に、また、方法の工程または一連の工程において、変更を加えてもよいことは、当業者には明らかとなろう。当業者に明らかなそのような同様の置き換えおよび改変はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義された本開示の趣旨、範囲、および概念の内にあるとみなされる。
【0022】
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、別途指示がないかぎり、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0023】
「a」または「an」という用語の使用は、特許請求の範囲および/または本明細書において用語「含む(comprising)」と共に使用される場合、「1つの」を意味しうるが、「1つまたはそれ以上の(one or more)」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは複数の(one or more than one)」の意味とも一致する。したがって、「a」、「an」、および「the」という用語は、文脈上明確な指示が別途ないかぎり、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「化合物」への言及は、1つまたはそれ以上の化合物、2つ以上の化合物、3つ以上の化合物、4つ以上の化合物、またはそれより多い数の化合物を指すこともある。「複数(plurality)」という用語は、「2つ以上」を指す。
【0024】
「少なくとも1つの」という用語の使用は、1つを超える、および、これらに限定されるものではないが2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む複数の任意の量を含むと理解されるものである。「少なくとも1つの」という用語は、それが付く用語に応じて、100または1000もしくはそれ以上にまで拡大していてもよく;加えて、より高い限定もまた、満足のいく結果を生み出す可能性もあるため、100/1000の量は限定とはみなされない。加えて、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、Xのみ、Yのみ、およびZのみ、ならびにX、Y、およびZの任意の組合せを含むことが理解されるであろう。序数用語(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、単に2つ以上の項目間での区別を行うためのものであり、例えば、配列もしくは順序、またはある項目に別の項目にまさる重要性、または付加の順序を含むということを意味するものではない。
【0025】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明確に示されていないかぎり、または代替物が相互に排他的でないかぎり、包括的な「および/または」を意味するために使用される。例えば、条件「AまたはB」とは、以下のうちのいずれかによって満たされるものである:Aが正しく(または存在する)Bが誤り(または存在しない)、Aは誤りで(または存在しない)Bが正しい(または存在する)、ならびに、AおよびBの両方が正しい(または存在する)。
【0026】
本明細書において使用される場合、「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「一部の実施形態(some embodiments)」、「一例(one example)」、「例えば」、または「一例(an example)」への言及はいずれも、実施形態に関連して記載された特定の要素、構成、構造、または特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、本明細書の様々な場所に現れる「一部の実施形態において」または「一例」という句は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているとはかぎらない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例への言及はすべて、特許請求の範囲に対して非限定的なものとして解釈されるものである。
【0027】
本出願を通して、「約」という用語は、値が、その値を決定するために用いられ、組成物/機器/装置、方法の誤差の固有の変動、または研究対象の間に存在するばらつきを含むことを示すために使用される。例えば、限定するものではないが、「約」という用語が利用される場合、指定の値は、指定された値とプラスまたはマイナス20パーセント、もしくは15パーセント、または12パーセント、もしくは11パーセント、もしくは10パーセント、もしくは9パーセント、もしくは8パーセント、もしくは7パーセント、もしくは6パーセント、もしくは5パーセント、もしくは4パーセント、もしくは3パーセント、もしくは2パーセント、もしくは1パーセントだけ外れていてもよく、なぜならば、このような変動は開示された方法を実施するのに適切であり、当業者に理解されているものであるからである。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」ような、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」ような、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」のような、含む(including)の任意の形態)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」ような、含有する(containing)の任意の形態)という単語は、包括的または非制限的であり、引用されていない別の要素または方法工程を除外するものではない。
【0029】
本明細書において使用される「またはそれらの組合せ」という用語は、その用語に先行して列挙された項目のすべての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は:A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうちの、また特定の状況において順序が重要であればさらにBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABのうちの、少なくとも1つを含むことが意図される。この例を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような、1つまたはそれ以上の項目または用語の反復を含有する組合せが明らかに含まれる。当業者は、特に文脈から明白でないかぎり、典型的には、任意の組合せにおいて項目または用語の数に対する制限がないことを理解するであろう。
【0030】
本明細書において使用する場合、「実質的に」という用語は、この用語に続いて記載された事象もしくは状況が完全に起こること、またはこの用語に続いて記載された事象もしくは状況がかなりの範囲もしくは程度で起こることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連した場合、「実質的に」という用語は、この用語に続いて記載された事象または状況が、時間の少なくとも80%、または時間の少なくとも85%、または時間の少なくとも90%、または時間の少なくとも95%、起こることを意味する。「実質的に隣接する」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、もしくは2つの項目が互いに近接した範囲にあるが互いに100%隣接していないこと、または2つの項
目のうちの1つの一部が、もう一方の項目に100%隣接してはいないがもう一方の項目に近接した範囲内にあることを意味しうる。
【0031】
「類似体」および「誘導体」という用語は、本明細書において互換的に使用されるものであり、その構造において所与の化合物と同じ基本炭素骨格および炭素官能性を含むが、そこに1つまたはそれ以上の置換を含有しうる物質を指す。本明細書において使用される「置換」という用語は、化合物上の少なくとも1つの置換基と残基Rとの置き換えを指すと理解されよう。ある特定の非限定的な実施形態において、Rには、H、ヒドロキシル、チオール、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物、C1~C4化合物を挙げることができ、該C1~C4化合物は、以下の:場合により置換されている直鎖状、分枝状、または環状アルキルおよび直鎖状、分枝状、または環状アルケニルのうちの1つから選択され、任意選択の置換基は、1つまたはそれ以上のアルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルから選択され、その各々は、場合により置換されており、任意選択の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキル、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、-NH(アルキル)、-NH(シクロアルキル)2、カルボキシ、および-C(O))-アルキルのうちの1つまたはそれ以上から選択される。
【0032】
「特異的結合パートナー」という用語は、本明細書において使用する場合、マクロフィリン結合医薬の検出のために、マクロフィリン結合医薬と特異的に結合することが可能な任意の分子を指すと理解されるものである。例えば、限定するものではないが、特異的結合パートナーは、抗体、受容体、リガンド、アプタマー、分子インプリントポリマー(すなわち、無機鋳型)、またはそれらの任意の組合せおよび/もしくは誘導体、ならびにマクロフィリン結合医薬との特異的結合が可能なその他の分子であってもよい。
【0033】
「抗体」という用語は、最も広い意味で本明細書において使用され、例えば、インタクトなモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに分析対象との結合という所望の生物学的活性を示す抗体フラグメントおよびそれらのコンジュゲート(これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、二重特異性抗体、単鎖抗体、ならびにインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部分を保有するその他の抗体フラグメントおよびそれらのコンジュゲートなど)、抗体代用タンパク質またはペプチド(すなわち、操作された結合タンパク質/ペプチド)、ならびにそれらの組合せまたは誘導体を指す。抗体は、いかなるタイプまたはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)もしくはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)の抗体であってもよい。
【0034】
本明細書において使用される「サンプル」という用語は、本開示に従って利用することができるあらゆるタイプの生体サンプルを含むと理解されるものである。ある特定の実施形態において、サンプルは、液体サンプルおよび/または流体性でありうるいかなるサンプル(例えば、流体基材と混合された生体サンプル)であってもよい。利用可能な生体サンプルの例としては、全血またはその任意の部分(すなわち、血漿または血清)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、外科的排液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液(bladder wash)、尿、スワブ、精液、糞便
、胸水、鼻咽頭液、それらの組合せなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。本開示は生体サンプルを対象としてはいるものの、当業者であれば、本明細書において開示された概念が、分析対象(ハプテンなどであるが、それらに限定されない)の濃度を決定することができるいかなるサンプルにも適用することができ、したがって、本開示の範囲が生体サンプルに限定されないことを理解することとなることを留意されたい。
【0035】
次に、本開示のかつ/または特許請求の発明概念について述べると、粒子増強凝集検出を使用する分析対象(ハプテンなどであるが、それらに限定されない)のためのサンドイッチイムノアッセイで利用される試薬、ならびにそれらを含有するキット、ならびにそれらの作製方法および使用の方法が開示され、これらは従来技術の欠点および欠陥を克服するものである。本開示のかつ/または特許請求の発明概念は、粒子上に独特な抗体をコーティングする設計とサンドイッチアッセイフォーマットとを組み合わせて、必要とされる試薬数を2試薬まで減らしつつ、アッセイシグナルを最大化するというものである。例えば、典型的なサンドイッチイムノアッセイでは、5つの異なる試薬:前処理(または抽出)試薬、標識抗体(すなわち、FITC抗体)、固相(すなわち、抗FITC抗体でコーティングされた磁性粒子)、補助試薬(すなわち、フルオレセインで標識された第2の抗体)、ならびに洗浄およびシグナル発生溶液、の製造が必要である。対照的に、本明細書において説明されたイムノアッセイは、2つの試薬の製造しか必要としない。非限定的な一実施形態において、2つの試薬とは、前処理試薬、および2つの異なる抗体でコーティングされた1つの粒子である。別の非限定的な実施形態において、2つの試薬とは、前処理試薬、および2つの抗体のうちの1つがそれぞれにコーティングされた2つの粒子の混合物を含む試薬である。さらに別の非限定的な実施形態において、2つの試薬は、前処理試薬、ならびに抗体を結合させた粒子および「遊離」形態の(すなわち、粒子に結合されていない)第2の抗体を含む試薬である。
【0036】
本開示のイムノアッセイフォーマットは、競合イムノアッセイフォーマットと比べて、より高いアッセイ感度および薬剤類似体とのより低い交差反応性を示す。加えて、本明細書において説明されたイムノアッセイは、完全に自動化することができ、手作業による抽出工程を全く必要としない。本明細書において開示されたイムノアッセイフォーマットでは、前処理試薬および粒子-二重抗体試薬の2試薬のみを必要とする。したがって、本開示のかつ/または特許請求の発明概念は、シグナル検出のために粒子増強凝集を利用する、ハプテンのための第1のサンドイッチアッセイフォーマットを含む。加えて、本開示のかつ/または特許請求の発明概念は、ラテックス粒子を2つの抗体の混合物でコーティングして、凝集のための粒子間サンドイッチを形成させる、第1のアッセイを含む。さらに、本開示のかつ/または特許請求の発明概念は、粒子凝集がハプテンによって架橋される、第1のアッセイを含む。
【0037】
(酵素または化学発光タグを利用する技術のような)その他の技術にまさる粒子増強凝集アッセイの主な利点の1つは、試薬調製の単純化である。例えば、このアッセイでは、粒子試薬は1つしか必要としない;両方の抗分析対象抗体(抗ハプテン抗体などであるが、それらに限定されない)が同じラテックス粒子に結合されている場合、分析対象/ハプテンが粒子を架橋すると、凝集は起こる。別の例では、1つの抗体がラテックス粒子に結合されている場合、もう一方の抗体をアッセイに直接使用して、粒子と結合した分析対象/ハプテンを介する凝集を誘発することができ、第2の抗体を粒子に結合する必要はない。本開示のイムノアッセイデザインのもう1つの主な利点は、アッセイプロセスの単純化である。本明細書において利用される粒子増強シグナル検出は、(両抗体が同じ粒子に結合されている場合のような)1つの免疫試薬、または1つの試薬としての抗体コーティング粒子と遊離抗体との混合物を可能とするものである。酵素または化学発光タグを使用するアッセイフォーマットは、多くの場合、複数の試薬、ならびに、様々な試薬のための試薬保存および反応環境の特有の要件に起因して複数の追加工程を必要とする。
【0038】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、分析対象(ハプテンなどであるが、それらに限定されない)のための粒子増強凝集イムノアッセイにおいて使用するための、診断用イムノアッセイ試薬を対象とする。該診断用イムノアッセイ試薬は、粒子に結合した2種の抗体またはそれらのフラグメントを有する粒子を含む。第1の抗体またはそのフラグメントは、分析対象/ハプテンの第2の抗体またはそのフラグメントが特異的に結合する部分(すなわち、エピトープ)以外の分析対象/ハプテンの部分(すなわち、エピトープ)に特異的に結合する;すなわち、第1の抗体またはそのフラグメントと第2の抗体またはそのフラグメントとは、分析対象/ハプテンの異なる(かつ実質的に非オーバーラップの)エピトープに結合する。加えて、診断用イムノアッセイ試薬の2つが分析対象/ハプテンへ結合することによって、シグナル検出のための粒子増強凝集がもたらされる。
【0039】
サンドイッチイムノアッセイによって検出可能ないかなる分析対象(ハプテン/薬物分子などであるが、それらに限定されない)も、本明細書において開示された試薬および方法によって検出可能である。例えば(限定するものではないが)、ハプテンは、エベロリムス(例えば、限定するものではないが、RAD、サーティカン、ZORTRESS(登録商標)(Novartis AG Corp.、Basel、スイス));シロリムス(例えば、限定するものではないが、ラパマイシン、RAPAMUNE(登録商標)(Wyeth,LLC、Madison、NJ));タクロリムス(例えば、限定するものではないが、FK506、FR-900506、PROGRAF(登録商標)(Astellas Pharma Inc.、東京、日本));およびシクロスポリン(例えば、限定するものではないが、シクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンG、シクロスポリンH、シクロスポリンI、およびシクロスポリンL)のうちの少なくとも1つであってもよい。しかしながら、本開示がハプテンだけの使用に限定されるものではないこと、また、より大きな分析対象(タンパク質分析対象などであるが、それらに限定されない)も、本明細書において開示されたイムノアッセイによって検出可能であることが理解されよう。
【0040】
自動化診断用イムノアッセイにおいて使用するための、当技術分野において既知のいかなるタイプの粒子も、本開示に従って利用することができる。ある特定の非限定的な実施形態において、粒子は、少なくとも約0.02ミクロンでかつ約100ミクロンを超えない平均直径を有するべきである。一部の実施形態において、粒子は、約0.05ミクロンから約20ミクロン、または約0.3ミクロンから約10ミクロンの平均直径を有する。粒子は、有機または無機、膨潤可能または膨潤不可能、および多孔性または非多孔性であってもよい。特定の(ただし限定的ではない)実施形態において、粒子は、一般的に約0.7g/mLから約1.5g/mLの、水に近い密度を有し、透明、部分的に透明、または不透明でありうる材料から構成される。粒子は、有機および無機ポリマー、ラテックス粒子、磁気または非磁性粒子などから構成させてもよい。一部の非限定的な例において、粒子は、クロム粒子またはラテックス粒子である。
【0041】
ポリマー粒子は、付加または縮合重合体から形成することができる。ポリマー粒子はまた、天然に存在する材料、人工的に改変された天然に存在する材料、および合成材料から誘導することができる。特に対象となる有機ポリマーには、(これだけに限定されるものではないが)アガロースのような、多糖、特に架橋多糖、これは、セファロースとして入手可能である;デキストラン、これは、セファデックスおよびセファクリルとして入手可能である;セルロース;デンプンなど;ポリスチレン、ポリビニルアルコール、アクリラートおよびメタクリラートの誘導体のホモポリマーおよび共重合体、特に(これだけに限定されるものではないが)遊離ヒドロキシル官能性などを有するエステルおよびアミドなどの付加重合体、がある。
【0042】
粒子は、水性培地中で容易に分散しうるものであり、直接、または連結基を介して間接的に、免疫抑制薬物に対する2つのモノクローナル抗体に結合することができるように、吸着性または官能化可能でありうる。連結基が利用される場合、一部の非限定的な実施形態において、連結基は、水素は数えず、約2~約50原子または4~約30原子を含んでいてもよく、通常、炭素、酸素、硫黄、窒素、および亜リン酸からなる群からそれぞれ独立して選択される、2から約30原子のまたは3から約20原子の鎖を含んでいてもよい。連結基の部分または全部は、例えば、これだけに限定されるものではないが、ポリ(アミノ酸)上のアミノ酸残基のような、免疫抑制化合物に連結されている分子の一部分であってもよい。幾つかの例において、連結基は、オキシム官能性を含む。
【0043】
連結基におけるヘテロ原子の数は、0から約20個の、または1から約15個の、または約2から約10個の範囲であってもよい。連結基は、脂肪族または芳香族であってもよい。ヘテロ原子が存在する場合、酸素は、通常、炭素、硫黄、窒素、または亜リン酸に結合したオキソまたはオキシとして存在し、窒素は、通常、炭素、酸素、硫黄、または亜リン酸に結合したニトロ、ニトロソ、またはアミノとして存在し;硫黄は酸素に類似しており;一方、亜リン酸は、通常ホスホン酸およびリン酸モノまたはジエステルとして、炭素、硫黄、酸素、または窒素に結合している。連結基と、結合されるべき分子との間の共有結合の形成において一般的な官能性は、アルキルアミン、アミジン、チオアミド、エーテル、尿素、チオ尿素、グアニジン、アゾ、チオエーテル、ならびにカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸エステル、アミド、ならびにチオエステルである。ヘテロ原子を含む連結基の具体的な一実施形態は、上述のようにオキシム官能性である。
【0044】
大部分において、連結基が、例えば、窒素および硫黄類似体を含む非オキソカルボニル基、リン酸基、アミノ基、ハロまたはトシルアルキルのようなアルキル化剤、オキシ(ヒドロキシルまたは硫黄類似体、メルカプト)、オキソカルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)、またはビニルスルホンもしくはα-,β-不飽和エステルのような活性オレフィンなどの、連結官能性(部分との反応のための官能性)を有する場合、これらの官能性は、アミン基、カルボキシル基、活性オレフィン、アルキル化剤、例えば、ブロモアセチルに連結されている。アミンおよびカルボン酸もしくはその窒素誘導体またはリン酸が連結される場合、アミド、アミジン、およびホスホルアミドが形成される。メルカプタンおよび活性化オレフィンが連結される場合、チオエーテルが形成される。メルカプタンおよびアルキル化剤が連結される場合、チオエーテルが形成される。アルデヒドおよびアミンが還元条件下で連結される場合、アルキルアミンが形成される。ケトンまたはアルデヒドおよびヒドロキシルアミン(置換基がヒドロキシ基の水素に代わっているそれらの誘導体を含む)が連結される場合、オキシム官能性(-N-O-)が形成される。カルボン酸またはリン酸およびアルコールが連結される場合、エステルが形成される。様々な連結基が、当技術分野において周知である;例えば、Cautrecasas(J.Biol.Chem.(1970)245:3059)を参照されたい。
【0045】
診断用イムノアッセイ試薬の特定の(ただし非限定的の)実施形態において、粒子はラテックス粒子である。診断用イムノアッセイ試薬の別の特定の(ただし非限定的の)実施形態において、第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントは、それぞれ、連結基を介して粒子に結合されている。
【0046】
当技術分野においてのあらゆる抗体もしくはそれらのフラグメント、または当業者がイムノアッセイ法によって検出されるべき分析対象/ハプテン/薬物に対することが企図しうるその他あらゆる抗体もしくはそれらのフラグメントが、本開示の範囲に含まれる。特定の(ただし非限定的な)例において、診断用イムノアッセイ試薬中で利用される抗体またはそれらのフラグメントは、それぞれ、特許文献1で先に開示されている14H04も
しくは1E2モノクローナル抗体クローン;または14H04と同じ免疫原に対して産生された1H06クローンのような(これだけに限定されるものではないが)、タクロリムスに対するモノクローナル抗体である。この特許文献1では、これらの2種の抗体クローンを、以下と定義している:(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29~C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの部分(すなわち、エピトープ)に特異的に結合するモノクローナル抗体(クローン14H04);(b)C10~C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1~C26環のC19~C27から本質的になるタクロリムスの部分(すなわち、エピトープ)に特異的に結合するモノクローナル抗体(クローン1E2);(c)C22においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体(クローン14H04および1H06);(d)C24においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体(クローン1E2);(e)C32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体(クローン1E2);ならびに(f)C24およびC32においてタクロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体(クローン1E2)。
【0047】
1H06クローンは、22位のオキシムを介して結合したFKを含有する免疫原に対して産生されたものであり、C-22結合類似体を必要とする。このモノクローナル抗体は、良好な交差反応性パターンを有しており、LOCIアッセイにおいて既定された親和性はKD<3*10-9である。
【0048】
別の特定の(ただし非限定的の)実施形態において、アッセイにおいて利用される抗体は、シロリムスに対するモノクローナル抗体である。その非限定的な例としては、その免疫原がC-32位にある、IgG2aKクローン;ならびに、C26とC32の混合物を含む免疫原に対して産生された、クローン3H9(IgG1λ)および165(IgG2aK)が挙げられる。よって、本開示に従って利用することができるモノクローナル抗体の、さらなる非限定的な例としては、(g)C32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原に対して産生されたモノクローナル抗体;ならびに(h)C26においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原とC32においてシロリムスに連結されている免疫原性キャリアを含む免疫原との混合物に対して産生されたモノクローナル抗体が挙げられる。
【0049】
本開示のある特定の非限定的な実施形態はまた、分析対象/ハプテン分子を介する粒子間架橋によって形成された粒子の凝集体を対象とする。これらの粒子の凝集体は、(A)分析対象/ハプテン;(B)第1の抗体またはそのフラグメントが分析対象/ハプテンの部分(すなわち、エピトープ)に特異的に結合している、粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント;および(C)第2の抗体またはそのフラグメントが分析対象/ハプテンの第1の抗体またはそのフラグメントが結合する部分/エピトープ以外の分析対象/ハプテンの部分(すなわち、エピトープ)に特異的に結合する、第2の抗体またはそのフラグメント、を含む。加えて、(B)および(C)の(A)への結合によって、粒子増強凝集がもたらされる。
【0050】
粒子の凝集体の分析対象/ハプテンおよび粒子は、それぞれ、本明細書において説明された分析対象/ハプテンおよび粒子または本明細書において企図されたその他の分析対象/ハプテンおよび粒子のうちのいずれであってもよい。加えて、第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントは、それぞれ、本明細書において説明された抗体もしくはそれらのフラグメントまたは本明細書において企図されたその他の抗体もしくはそれらのフラグメントのうちのいずれであってもよい。
【0051】
(C)の第2の抗体またはそのフラグメントは、その「遊離」形態で存在していてもよく(すなわち、抗体/フラグメントは粒子に直接結合されていない)、したがって、粒子の凝集体を形成させるために、2つの診断用イムノアッセイ試薬が必要でありうる。別法として、第2の抗体またはそのフラグメントは、(A)および(B)との混合に先立って粒子に結合することができ;この実施形態では、後述のように、1つまたは2つの診断用イムノアッセイ試薬が、粒子の凝集体を形成するために必要でありうる。第2の抗体/フラグメントが粒子に結合されている場合、(C)の粒子は、(B)と同じ種類の粒子であってもよく、または(C)の粒子は(B)の粒子と異なっていてもよい。加えて、凝集体の試薬(B)および/または(C)中で利用される粒子は、粒子に結合された第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントの両方と共に提供してもよい。例えば、試薬(B)および(C)は同一であってもよく、したがって、粒子の凝集体を形成させるために、診断用イムノアッセイ試薬は1つの種類しか必要としない(この場合、同じ診断用イムノアッセイ試薬の2つのコピーが、分析対象/ハプテンの異なる部分/エピトープに結合される)。別法として、試薬(B)および/または(C)中で利用される粒子は、(B)または(C)に列記された抗体/そのフラグメントのみを含有していてもよく、したがって、粒子の凝集体を形成するために、2つの異なる診断用イムノアッセイ試薬が必要となる。
【0052】
本開示のある特定の非限定的な実施形態はまた、サンプル中の分析対象(ハプテンなどであるが、それらに限定されない)の存在の検出のためのキットを対象とする。このキットには、本明細書において開示された診断用イムノアッセイ試薬または本明細書において企図されるその他の診断用イムノアッセイ試薬のうちのいずれか1つまたはそれ以上が含まれる。例えば(限定するものではないが)、キットは:(1)粒子;(2)(1)の粒子に結合された第1の抗体またはそのフラグメント;および(3)第2の抗体またはそのフラグメント、を含む少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬を含み;第1の抗体またはそのフラグメントと第2の抗体またはそのフラグメントとは、サンプル中に存在する分析対象/ハプテンの異なるエピトープに特異的に結合し、これによって、粒子増強凝集がもたらされる。(3)が(1)に結合されている場合、キットは、(2)および(3)が両方とも(1)に結合されている1つの診断用イムノアッセイ試薬のみ含むことになる。(3)が(1)に結合されていない場合であれば、キットは、2つの診断用イムノアッセイ試薬((1)および(2)を含有する試薬、ならびに(3)を含有する別の試薬)を含むこととなり;この実施形態では、(3)は、その遊離形態で(すなわち、直接粒子に結合していない)、第2の診断用イムノアッセイ試薬中に存在していてもよく、または異なる粒子に結合していてもよい。
【0053】
ある特定の非限定的な実施形態において、本開示のキットは、前処理試薬をさらに含有する。前処理試薬は、本明細書において下記で詳述するように、分析対象/ハプテンをその内在性結合タンパク質から放出させるように機能する、少なくとも1つの置換剤/結合競合剤または界面活性剤を含んでいてもよい。
【0054】
生体サンプル中に内在するイムノフィリンの結合によってアッセイが干渉されることを考慮すると、イムノフィリン結合薬物の治療薬物モニタリング(TDM)は著しく困難である。この干渉を克服しようとして利用された1つの方法は、薬物をその内在性結合タンパク質から取り除くことにより「置換剤」として作用する物質を加えることである。置換剤の非限定的な例は、別の免疫抑制性薬物(ISD)を取り除くための、類似の化学的構造を有するこれらのISDの使用(すなわち、タクロリムを取り除くためのシロリムスの使用および逆もまた同様)を開示している米国特許第6,187,547号;および、FK506(タクロリムス)をその内在性結合タンパク質から取り除くための、数多くのFK506誘導体の使用を開示している米国特許第7,186,518号において見出される。
【0055】
加えて、最近出願された米国特許出願第62/754,913号(2018年11月2日出願)では、ハプテン/薬物をその内在性結合タンパク質/イムノフィリン複合体から取り除くために使用される結合競合剤、およびイムノアッセイにおいて利用される第1および第2の抗体またはそれらのフラグメントには顕著には結合しない結合競合剤が開示されている。したがって、本開示の前処理試薬は、米国特許出願第62/754,913号で開示された結合競合剤のうちのいずれかを特異的に含んでもよい。
【0056】
例えば(限定するものではないが)、検出されるべきハプテンがタクロリムスである場合、前処理試薬は、シロリムスまたはエベロリムスを含んでいてもよい。あるいは、検出されるべきハプテンがシロリムスまたはエベロリムスである場合、前処理試薬は、下記の式IV、V、VI、およびVIIによって表される化合物から選択される少なくとも1つの結合競合剤を含んでいてもよい。
【0057】
【0058】
組成物/キット/方法のアッセイ成分/試薬は、本開示に従ってそれらを機能させることができる任意の形態で提供することができる。例えば、限定するものではないが、試薬はそれぞれ、液体形態で提供してもよく、バルクでかつ/またはキットでの一定分量形態で配してもよい。別法として、特定の(ただし非限定的の)実施形態において、1つまたはそれ以上の試薬を、一定分量の凍結乾燥試薬の形態でキット中に配してもよい。マイクロ流体装置での乾燥試薬の使用は、米国特許第9,244,085号(Samproni)に詳述されており、その全内容は、これにより参照によって本明細書に明確に組み入れる。
【0059】
本明細書において上記で詳述したアッセイ成分/試薬に加えて、キットは、本明細書において説明された特定のアッセイまたは本明細書において企図されるその他のアッセイのうちのいずれかを実施するためのその他の試薬をさらに含有していてもよい。これらの追
加の試薬の性質は特定のアッセイフォーマットに依存することとなり、追加の試薬の見極めは、十分に当業者の技術の範囲にあり;したがって、追加の試薬のさらなる説明は不要とみなされる。また、キットに存在する成分/試薬は、それぞれ別個の容器/コンパートメントの中にあってもよく、または、成分/試薬の交差反応性および安定性に応じて、様々な成分/試薬を1つまたはそれ以上の容器/コンパートメントの中で混合することができる。加えて、キットは、成分/試薬が配置されたマイクロ流体装置を含んでいてもよい。
【0060】
キットの様々な成分/試薬の相対量は、アッセイ方法の間に起こる必要がある反応を実質的に最適化する成分/試薬の濃度を提供するように、またさらに、実質的にアッセイの感度を最適化するように、広範囲に変えることができる。適切な状況下では、キットの1つまたはそれ以上の成分/試薬を、凍結乾燥粉末のような乾燥粉末として提供してもよく、キットは、乾燥試薬の溶解のための賦形剤をさらに含んでいてもよく;このように、本開示に従って方法またはアッセイの実施に適切な濃度を有する試薬溶液を、これらの成分から得ることができる。陽性および/または陰性対照も、キットと共に含めてもよい。加えて、キットは、キットの使用方法を説明する使用説明書のセットをさらに含んでいてもよい。この性質のキットは、本明細書において説明された方法または本明細書において企図されるその他の方法のうちのいずれにおいても使用することができる。
【0061】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中の分析対象(ハプテンなどであるが、それらに限定されない)の存在を検出する方法をさらに対象とする。該方法は:(i)サンプルを、本明細書において開示された前処理試薬または本明細書において企図されるその他の前処理試薬のうちのいずれかに曝露して、分析対象/ハプテンを内在性結合タンパク質から放出させ、前処理されたサンプルを用意する工程;(ii)(i)で形成された前処理されたサンプルを、本明細書において開示された1つまたはそれ以上の診断用イムノアッセイ試薬または本明細書において企図されるその他の診断用イムノアッセイ試薬のうちのいずれかと混合して、混合物を形成する工程;(iii)診断用イムノアッセイ試薬がサンプル中に存在する分析対象/ハプテンに結合する条件下で、(ii)で形成された混合物をインキュベートし、これによって、粒子増強凝集をもたらす工程;および(iv)インキュベートした混合物中に存在する粒子増強凝集のレベルを検出し、粒子増強凝集のレベルをサンプル中に存在する分析対象/ハプテンのレベルと相関させる工程、を含む。
【0062】
特定の(ただし非限定的の)実施形態において、1種類の診断用イムノアッセイ試薬のみが工程(ii)において供給され、該試薬は、本明細書において上記で説明されたように、1つの粒子に結合された第1および第2の両方の抗体/フラグメントを含有する。この方法では、同じ診断用イムノアッセイ試薬の2つのコピーが分析対象/ハプテンの異なる部分/エピトープに結合して、凝集を起こす粒子の凝集体を形成する。
【0063】
別法として、2種類の診断用イムノアッセイ試薬が工程(ii)において供給される:第1の試薬は、粒子に結合された第1の抗体/フラグメントを含み、第2の試薬は、遊離形態の(すなわち、直接粒子に結合されていない)または粒子に結合された第2の抗体/フラグメントを含む。この実施形態では、2つの異なる診断用イムノアッセイ試薬は、粒子の凝集体を形成するために、1つの分析対象/ハプテンに結合しなければならない。方法のこの実施形態は、以下の工程を含む:(i)サンプルを(本明細書において説明されたようなまたは本明細書において企図されるその他の)前処理試薬に曝露して、分析対象/ハプテンを内在性結合タンパク質から放出させ、前処理されたサンプルを用意する工程;(ii)(i)で形成された前処理されたサンプルを、2つの診断用イムノアッセイ試薬と混合して、混合物を形成する工程であって、第1の診断用イムノアッセイ試薬は、第1の抗体またはそのフラグメントが結合した第1の粒子を含み、第2の診断用イムノアッ
セイ試薬は、(遊離形態のまたは粒子に結合された)第2の抗体またはそのフラグメントを含み、第1の抗体またはそのフラグメントは、分析対象/ハプテンの第2の抗体またはそのフラグメントが特異的に結合する部分/エピトープ以外の分析対象/ハプテンの部分/エピトープに特異的に結合する(また、第1および第2の抗体/フラグメントならびに粒子は、それぞれ、本明細書において説明された抗体/フラグメントもしくは粒子または本明細書において企図されるその他の抗体/フラグメントもしくは粒子のうちのいずれかである)、工程;(iii)2つの診断用イムノアッセイ試薬をサンプル中に存在する分析対象/ハプテンに結合させる条件下で、(ii)で形成された混合物をインキュベートし、これによって、粒子増強凝集をもたらす工程;ならびに(iv)インキュベートした混合物中に存在する粒子増強凝集のレベルを検出し、粒子増強凝集のレベルを、サンプル中に存在する分析対象/ハプテンのレベルと相関させる工程。
【0064】
当技術分野において既知の凝集検出法または当業者が企図しうるその他の凝集検出法はすべて、本開示の範囲に含まれ、本明細書において開示された方法または本明細書において企図されるその他の方法のうちのいずれかと共に利用することができる。ある特定の非限定的な実施形態において、凝集は、当技術分野で公知の方法によって、濁度測定的にまたは金属測定的に検出することができる。
【0065】
特定の(ただし非限定的な)実施形態において、粒子増強凝集イムノアッセイは、散乱光の強度の測定および吸光度の測定を含む。粒子増強凝集イムノアッセイにおいて実施される分析工程の非限定的な例は、例えば、米国特許出願公開第2019/0154674号に記載されている。特に、米国特許出願公開第2019/0154674号は、これらの工程が:分析対象含有サンプルを、分析対象の結合パートナーを運ぶ不溶性キャリア粒子と混合して、混合溶液を製造する工程;第1の時点と第2の時点との間の散乱光の強度の差異に基づき、混合溶液から散乱された光の強度の変動(i)を決定する工程;第3の時点と第4の時点との間の吸光度の差異に基づき、混合溶液の吸光度の変動(ii)を決定する工程;ならびに、散乱光の強度の変動に基づきプロットした較正曲線および吸光度の変動に基づきプロットした較正曲線を使用して、決定された散乱光の強度の変動(i)および決定された吸光度の変動(ii)を、サンプル中に存在する分析対象の量と相関させる工程、を含みうることを教示している。
【0066】
しかしながら、本開示は、本明細書において上記で示した例のいずれかに限定されるものではなく;当技術分野において既知である自動化環境における粒子増強凝集イムノアッセイの実施において利用可能な分析工程のその他のセットまたは当業者が企図しうる分析工程のその他のセットすべてが、本開示の範囲に含まれる。
【実施例0067】
以下に実施例を示す。ただし、本開示は、その適用において、本明細書において開示した特定の実験、結果、および実験手順に限定されないと理解されるべきものである。むしろ、実施例は、単に様々な実施形態のうちの1つとして示されており、包括的ではなく、例示的であることと意味される。
【0068】
診断用イムノアッセイ試薬の調製
2つの抗ハプテン抗体を使用して、抗体で(単に例示の目的として本実施例で使用する2つの抗FK506抗体で)ラテックス粒子をコーティングする方法としては、3つの方法が考えられる。第1には、2つのラテックス粒子調製品を製造するものである:1つは1E2でコーティングされたラテックス粒子であり、もう1つは14H04でコーティングされたラテックス粒子である。第2には、ラテックス粒子を1E2か14H04かのいずれかでコーティングし、第2の抗体は遊離形態のままであるものである。第3には、ラテックス粒子を1E2と14H04との混合物でコーティングするものである。どちらの
調製方法も、アッセイにおいて類似の様式で使用可能であるが、下記では、14H04と1E2との混合物でコーティングしたラテックス粒子のみを、アッセイにおいて使用する。
【0069】
粒子増強凝集を使用するイムノアッセイフォーマット
アッセイ順序は、以下の工程を:(a)全血サンプルを前処理試薬と混合する工程;(b)混合物に上述のように作製したラテックス粒子を加え、インキュベートする工程;および、(c)薬物シグナルを検出する工程、を含む。
【0070】
工程(a)において使用される前処理試薬は、内在性結合タンパク質からFK506薬を遊離させる目的として置換剤/界面活性剤を含有する。工程(b)においてラテックス粒子を加えた後、反応混合物を、このプロセスの間インキュベートし、次いで、工程(c)において読み取りを行って、粒子凝集を検出することができる。
【0071】
上述のように、本開示に従って、上記の目的および利点を完全に満足させる組成物、キット、および装置、ならびにそれらの作製方法および使用方法を提供してきた。本開示を、上記の特定の図面、実験、結果、および文言に関連して説明したが、幾つもの代替物、変更、および変形形態が当業者には明らかとなろうことは明白である。したがって、本開示の趣旨および広範囲に含まれるこのような代替物、変更、および変形形態すべてを包含することが意図される。
第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に直接結合されていないか、または第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に結合されている、または、第2の抗体またはそのフラグメントは、(B)の粒子に結合されている、請求項2に記載の粒子の凝集体。
第2の抗体またはそのフラグメント(3)は、粒子(1)に直接結合されていないか、または第2の抗体またはそのフラグメント(3)は、粒子(1)に結合されている、請求項4に記載のキット。
少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に直接結合されていないか、または、少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する第2の抗体またはそのフラグメントは、粒子に結合されている、および/または、少なくとも1つの診断用イムノアッセイ試薬中に存在する第1の抗体またはそのフラグメントと第2の抗体またはそのフラグメントとは、同じ粒子に結合されている、請求項6に記載の方法。