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特開2024-79821熱可塑性樹脂及びその製造方法並びに該熱可塑性樹脂を含む光学レンズ
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  • 特開-熱可塑性樹脂及びその製造方法並びに該熱可塑性樹脂を含む光学レンズ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079821
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂及びその製造方法並びに該熱可塑性樹脂を含む光学レンズ
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/189 20060101AFI20240604BHJP
   C08G 64/04 20060101ALI20240604BHJP
   C08G 64/20 20060101ALI20240604BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08G63/189
C08G64/04
C08G64/20
G02B1/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058426
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2020563228の分割
【原出願日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018247634
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】茂木 篤志
(72)【発明者】
【氏名】石原 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】西森 克吏
(72)【発明者】
【氏名】池田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】大島 健輔
(72)【発明者】
【氏名】神田 正大
(72)【発明者】
【氏名】村田(鈴木) 章子
(72)【発明者】
【氏名】緒方 龍展
(72)【発明者】
【氏名】末松 三豪
(72)【発明者】
【氏名】森下 隆実
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高屈折率及び高耐熱性、低いYI値を有する熱可塑性樹脂及びその製造方法並びに該樹脂を含む光学レンズの提供。
【解決手段】下記式(1)のジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物を反応させて熱可塑性樹脂を製造する方法である。前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で10000ppb以下の量で含む。

(R、Rは、H、ハロゲン、C数1~6のアルキル基等。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記式(1)で表されるジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物を反応させて熱可塑性樹脂を製造する方法であって、
前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で10000ppb以下の量で含む、製造方法。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。aおよびbは、それぞれ独立して0~5の整数を表す。)
【請求項2】
前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn及びSnを合計で54ppb以上の量で含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属が、Feを20~3000ppbの量で含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属が、Liを1~100ppb、Naを2~500ppb、Mgを1~1000ppb、Alを5~500ppb、Kを20~3000ppb、Caを5~1000ppb、Tiを1~100ppb、Crを5~500ppb、Niを1~100ppb、Znを2~100ppb、Sn を1~100ppbの量で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記式(1)で表されるジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物に、下記式(2)で表されるジオール化合物を反応させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【化2】
(式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。cおよびdは、それぞれ独立して0~5の整数を表す。)
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエステルまたはポリエステルカーボネートである、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
下記式(3)で表される構成単位と、該構成単位を構成するジカルボン酸に由来する金属とを含む熱可塑性樹脂であって、
前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で10000ppb以下の量で含む、熱可塑性樹脂。
【化3】
(式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。eおよびfは、それぞれ独立して0~5の整数を表す。)
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が7~40のYI値を有する、請求項7に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項9】
請求項7または8に記載の熱可塑性樹脂を含む、光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂及びその製造方法並びに該熱可塑性樹脂を含む光学レンズに関する。更に詳しくは、高屈折率、高耐熱性及び低いYI値を有する熱可塑性樹脂およびそれを含む光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れるが、材料コストが高く、成形加工性が悪く、生産性が低いという問題点を有している。
【0003】
一方、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有しており、カメラレンズ用高屈折率材料としてポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステル樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏光感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
【0004】
光学用樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、耐熱性、透明性、低吸水性、耐薬品性、低複屈折、耐湿熱性が求められる。特に近年、高屈折率および高耐熱性を有する光学レンズが求められており、様々な樹脂の開発が行われているが(特許文献1~4)、更に優れた高屈折率および高耐熱性を有する光学レンズが求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-2893号公報
【特許文献2】特開2018-2894号公報
【特許文献3】特開2018-2895号公報
【特許文献4】特開2018-59074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高屈折率及び高耐熱性、更には低いYI値を有する熱可塑性樹脂及びその製造方法並びに該熱可塑性樹脂を含む光学レンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の金属を特定の量で含有するジカルボン酸を用いて熱可塑性樹脂を製造することにより、上記課題を解決することができることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
<1> 少なくとも、下記式(1)で表されるジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物を反応させて熱可塑性樹脂を製造する方法であって、
前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で10000ppb以下の量で含む、製造方法である。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。aおよびbは、それぞれ独立して0~5の整数を表す。)
<2> 前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn及びSnを合計で54ppb以上の量で含む、上記<1>に記載の製造方法である。
<3> 前記金属が、Feを20~3000ppbの量で含む、上記<1>または<2>に記載の製造方法である。
<4> 前記金属が、Liを1~100ppb、Naを2~500ppb、Mgを1~1000ppb、Alを5~500ppb、Kを20~3000ppb、Caを5~1000ppb、Tiを1~100ppb、Crを5~500ppb、Niを1~100ppb、Znを2~100ppb、Sn を1~100ppbの量で含む、上記<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法である。
<5> 前記式(1)で表されるジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物に、下記式(2)で表されるジオール化合物を反応させる、上記<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法である。
【化2】
(式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。cおよびdは、それぞれ独立して0~5の整数を表す。)
<6> 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステルまたはポリエステルカーボネートである、上記<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法である。
<7> 下記式(3)で表される構成単位と、該構成単位を構成するジカルボン酸に由来する金属とを含む熱可塑性樹脂であって、
前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で10000ppb以下の量で含む、熱可塑性樹脂である。
【化3】
(式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。eおよびfは、それぞれ独立して0~5の整数を表す。)
<8> 前記熱可塑性樹脂が7~40のYI値を有する、上記<7>に記載の熱可塑性樹脂である。
<9> 上記<7>または<8>に記載の熱可塑性樹脂を含む、光学レンズである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂は、高屈折率、高耐熱性及び低YI値を有し、特に光学レンズに用いた場合に優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1で得られたポリエステル樹脂のNMR測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、少なくとも、下記式(1)で表されるジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物を反応させて熱可塑性樹脂を製造する方法であって、前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で10000ppb以下の量で含むものである。
【化4】
式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、ナフチル基または下記からなる群より選択される置換基を表す。
【化5】
aおよびbは、それぞれ独立して0~5の整数を表し、好ましくはそれぞれ独立して0または1を表す。
式(1)で表される化合物のなかでも、2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、及び下記構造式で表される化合物が好ましく、2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルが特に好ましい。
【化6】
【0012】
前記式(1)において、1,1’-ビナフチル骨格は、熱可塑性樹脂の耐熱性と屈折率を向上させるとともに、二つのナフタレン環を結ぶ結合軸で直交するような立体配座になっているため、複屈折を低減させる効果がある。
また、ビナフチル骨格は、R体、S体、ラセミ体のいずれでもよく、好ましくは、ラセミ体がよい。光学分割する必要のないラセミ体はコストメリットがある。
【0013】
本発明において、前記式(1)で表されるジカルボン酸に由来する金属とは、前記式(1)で表されるジカルボン酸を製造する際に不純物として混入した金属成分を意味する。そのような金属としては、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn、Sn、V、Mn、Co、Cu、Ge、Sr、Zr、Mo、Ag、Cd、Sb、Ba、W、Pbなどが挙げられるが、これらのうち、V、Mn、Co、Cu、Ge、Sr、Zr、Mo、Ag、Cd、Sb、Ba、W及びPbについては検出限界(<0.005μg/g)以下であるため、本発明では、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn及びSnの合計含有量を測定する。
本発明では、前記式(1)で表されるジカルボン酸に由来する金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn及びSnを合計で10000ppb以下の量で含むことを特徴とし、より好ましくは5870ppb以下の量で含み、特に好ましくは3738ppb以下の量で含む。本発明者らは、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn及びSnを合計で10000ppb以下の量で含むジカルボン酸を反応させて熱可塑性樹脂を製造することによって、驚くべきことに高屈折率、高耐熱性及び低いYI値を有する熱可塑性樹脂が得られることを見出した。
また、本発明では、前記式(1)で表されるジカルボン酸に由来する金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Zn及びSnを合計で54ppb以上の量で含むことが好ましい。
【0014】
本発明において、前記式(1)で表されるジカルボン酸に由来する金属は、Feを20~3000ppbの量で含むことが好ましい。また、Liを1~100ppb、Naを2~500ppb、Mgを1~1000ppb、Alを5~500ppb、Kを20~3000ppb、Caを5~1000ppb、Tiを1~100ppb、Crを5~500ppb、Niを1~100ppb、Znを2~100ppb、Sn を1~100ppbの量で含むことが好ましい。以下の表1に各金属成分のより好ましい含有量及び特に好ましい含有量の上限値を示す。
【0015】
【表1】
【0016】
上述した製造方法によって得られる本発明の熱可塑性樹脂は、下記式(3)で表される構成単位と、該構成単位を構成するジカルボン酸に由来する金属とを含む熱可塑性樹脂であって、前記金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で10000ppb以下の量で含むものである。
【化7】
式(3)中、R、R、eおよびfは、それぞれ前記式(1)におけるR、R、aおよびbと同義である。具体的な熱可塑性樹脂としてはポリエステル樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂であることが好ましく、特に本発明の効果の点からポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂は、高屈折率であることが特徴の一つであり、25℃で測定波長589nmの屈折率(以下、「nD」と略すことがある)は、1.650~1.720であることが好ましく、1.660~1.710であるとさらに好ましく、1.670~1.700であるとよりさらに好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂は、高耐熱性であることが特徴の一つであり、ガラス転移点(以下、「Tg」と略することがある)は、130~160℃であることが好ましく、140~155℃であることがより好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂は、低いYI値を有することが特徴の一つであり、YI値は、7~40であることが好ましく、9~38であることがより好ましい。
更に、本発明の熱可塑性樹脂は、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000~50,000であり、より好ましくは15,000~40,000である。重量平均分子量(Mw)の測定方法としては、後述する実施例に記載された方法を用いることができる。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂は、前記式(1)で表されるジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物を反応させて得られたものであれば特に制限されるものではなく、原料としていずれのジオール化合物を用いてもよい。
本発明においては、前記式(1)で表されるジカルボン酸および該ジカルボン酸に由来する金属を含有する組成物に、下記式(2)で表されるジオール化合物を反応させることが好ましい。
【化8】
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、O、N及びSから選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、もしくは炭素数7~17のアラルキル基を表す。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、ナフチル基または下記からなる群より選択される置換基を表す。
【化9】
cおよびdは、それぞれ独立して0~5の整数を表し、好ましくはそれぞれ独立して0または1を表す。
【0019】
<その他の共重合成分>
本発明における熱可塑性樹脂は、前記式(3)で表される構成単位を有し、好ましくは前記式(2)で表されるジオール化合物に由来する構成単位を有するが、それとは別に共重合成分を含んでいてもよい。共重合成分としては前記式(1)で示される以外のジカルボン酸成分、前記式(2)で示される以外のジオール成分、さらにカーボネート結合を有する繰り返し単位などが例示される。
【0020】
具体的な共重合成分としてのジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸成分、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸成分、2,2’-ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸成分、1,4-シクロジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分が挙げられる。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの誘導体としては酸クロライドやエステル類を用いてもよい。これらの中でも耐熱性と屈折率をより高くしやすいことから単環式芳香族ジカルボン酸成分、多環式芳香族ジカルボン酸成分、ビフェニルジカルボン酸成分が好ましい。
【0021】
また、具体的な共重合成分としてのジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール等の脂肪族ジオール成分、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等の脂環式ジオール成分、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビフェノール、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビ-2-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントロン等の芳香族ジオール成分等が挙げられる。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも成形性を高めつつ、耐熱性や屈折率の低下を抑えやすいことからエチレングリコールや2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルが好ましい。
【0022】
また、具体的な共重合成分としてのカーボネート結合を有する繰り返し単位としては、前記式(2)で例示したジオール成分および前述の共重合成分として例示したジオール成分をカーボネート結合させたものが挙げられる。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂は、前述の式(1)で表されるジカルボン酸およびジオール化合物をエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、得られた反応生成物を重縮合反応させ、所望の分子量の高分子量体とすればよい。
【0024】
具体的には、例えば不活性ガスの存在下で、ジオール成分と、ジカルボン酸成分またはそのジエステルを混合し、減圧下、通常、120~350℃、好ましくは150~300℃で反応させることが好ましい。減圧度は段階的に変化させ、最終的には0.13kPa以下にして生成した水または、アルコール類を系外に留去させ、反応時間は通常1~10時間程度である。
【0025】
重合触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物またはアルミニウム化合物が好ましい。このような化合物としては、例えばアンチモン、チタン、ゲルマニウム、スズ、アルミニウムの酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等を挙げることができる。また、これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。この中でも、熱可塑性樹脂の溶融安定性、色相の観点からスズ、チタン、ゲルマニウム化合物が好ましい。
【0026】
エステル交換触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、マンガン、マグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、コバルト、ナトリウム、リチウム、または鉛元素を含む化合物などを用いることができる。具体的にはこれらの元素を含む酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等を挙げることができる。この中でも、熱可塑性樹脂の溶融安定性、色相、ポリマー不溶異物の少なさの観点からマンガン、マグネシウム、亜鉛、チタン、コバルトの酸化物、酢酸塩、アルコラート等の化合物が好ましい。さらにマンガン、マグネシウム、チタン化合物が好ましい。これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
なお、本発明の熱可塑性樹脂は、前述の通り、前記式(3)で表される構成単位以外の共重合成分を含有させてもよい。例えば、ポリエステルカーボネート樹脂とする場合は、ジオール成分およびジカルボン酸成分の他に、ジカルボン酸クロライドやホスゲンを反応させてもよく、またはジオール、ジカルボン酸およびビアリールカーボネートを反応させることにより製造することができる。
【0028】
ビアリールカーボネートの具体例としては、ジフェニルカーボネート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、ジ-p-クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等の炭酸ジエステルが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0029】
該ジカルボン酸クロライドやホスゲン、またはビアリールカーボネート成分の含有量は、ジカルボン酸成分100mоl%に対し、好ましくは42mоl%未満、より好ましくは30mоl%未満、さらに好ましくは20mоl%未満である。
【0030】
<添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、充填剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適宜添加して熱可塑性樹脂組成物として用いることができる。
【0031】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等があげられ、ステアリルステアレートが好ましい。
【0032】
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
【0033】
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物に配合させる離型剤としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0034】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
リン系熱安定剤において、好ましくはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
熱可塑性樹脂のリン系熱安定剤の含有量としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0035】
ヒンダードフェノール系熱安定剤において、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部が好ましい。
【0036】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
【0037】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、より好ましくは、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2.4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、特に2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)が好適である。
【0038】
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましくは0.01~3.0重量部であり、かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0039】
<光学レンズ>
本発明の熱可塑性樹脂は、光学部材、特に光学レンズに好適である。
本発明の熱可塑性樹脂を含む光学レンズを射出成型で製造する場合、シリンダー温度260~350℃、金型温度90~170℃の条件にて成形することが好ましい。さらに好ましくは、シリンダー温度270~320℃、金型温度100~160℃の条件にて成形することが好ましい。シリンダー温度が350℃より高い場合では、熱可塑性樹脂が分解着色し、260℃より低い場合では、溶融粘度が高く成形が困難になりやすい。また金型温度が170℃より高い場合では、熱可塑性樹脂からなる成形片が金型から取り出すことが困難になりやすい。他方、金型温度が、90℃未満では、成型時の金型内で樹脂が早く固まり過ぎて成形片の形状が制御しにくくなったり、金型に付された賦型を十分に転写することが困難になりやすい。
【0040】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形を用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要が無く、軽量化および成形コストの低減化が可能になる。したがって、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【0041】
また、本発明の光学レンズは、成形流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05~3.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.05~2.0mm、さらに好ましくは0.1~2.0mmである。また、直径が1.0mm~20.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0~10.0mm、さらに好ましくは、3.0~10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
【0042】
本発明の光学レンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッチングなど任意の方法により成形される。この中でも、製造コストの面から金型成形がより好ましい。
【実施例0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、各物性の測定は次に示す方法で行った。
【0044】
<金属分析>
試料の硫酸炭化を行った後、ICP-MSにより金属濃度を測定した。
即ち、合成石英ビーカーに試料2gを秤量し、炭化時2.5ml、炭化前に0.1mlの硫酸を加えながらホットプレート上で加熱し炭化した。引き続き、石英皿でフタをし、電気炉で500℃、10時間、加熱し、炭化した。さらに、硫酸を加え加熱し乾固、硝酸を加え加熱し乾固することにより、加熱酸分解を行った。硝酸水溶液を加え50mLとし、50℃に加温し、ICP-MSによる定量分析を行った。
ICP-MS装置:株式会社島津製作所:ICPE-9000
【0045】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
予め作成した標準ポリスチレンの検量線からポリスチレン換算重量平均分子量を求めた。即ち、分子量既知(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、“PStQuick MP-M”)を用いて検量線を作成し、測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。Mwは、以下の計算式より求めた。
Mw=Σ(Wi×Mi)÷Σ(Wi)
ここで、iは分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wiはi番目の重量、Miはi番目の分子量を表す。また分子量Mとは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン分子量値を表す。GPC装置として、東ソー株式会社製、HLC-8320GPCを用い、ガードカラムとして、TSKguardcolumn SuperMPHZ-Mを1本、分析カラムとしてTSKgel SuperMultiporeHZ-Mを3本直列に連結したものを用いた。その他の条件は以下の通りである。
溶媒:HPLCグレードテトラヒドロフラン
注入量:10μL
試料濃度:0.2w/v% HPLCグレードクロロホルム溶液
溶媒流速:0.35ml/min
測定温度:40℃
検出器:RI
【0046】
<屈折率(nD、νd)の測定方法>
得られた樹脂を、40φ、3mm厚の円板にプレス成形(成形条件:200℃、100kgf/cm、2分)し、直角に切り出し、カルニュー製KPR-200により25℃で測定波長589nmの屈折率を測定した。
【0047】
<YI値の測定方法>
得られた樹脂6gを60mlの塩化メチレンに溶解し、光路長6cmのセルにて、分光式色差計(日本電色工業社製、商品名「SE-2000」)を用い、JIS 7373に基づきYI値を測定した。
【0048】
(実施例1)
下記構造式で表される2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル(以下、「BINOL-DC」と呼ぶ)50.29g(0.12mol)、下記構造式で表される2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’ジフェニル-1,1’-ビナフタレン(以下、「DP-BHBNA」と呼ぶ)52.66g(0.10mol)、エチレングリコール(以下、「EG」と呼ぶ)3.49g(0.06mol)、及び触媒としてテトラブトキシチタン0.011gを撹拌器および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、250℃、0.13kPa以下まで昇温、減圧することにより重合反応を行った。内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂をNMRにより分析した結果、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がDP-BHBNA由来、20モル%がEG由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたカルボン酸成分の100モル%がBINOL-DC由来であった。NMRの測定結果を図1に示す。得られたポリエステルの樹脂の物性を表2に示す。
【0049】
【化10】
【化11】
【0050】
(実施例2)
ロットの異なる2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステルの樹脂の物性を表2に示す。なお、表2では、実施例1で用いた2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルをBINOL-DC-Aとし、実施例2で用いた2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルをBINOL-DC-Bとした。
【0051】
(実施例3)
更にロットの異なる2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステルの樹脂の物性を表2に示す。なお、表2では、実施例3で用いた2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルをBINOL-DC-Cとした。
【0052】
(実施例4)
実施例1で用いた2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル(BINOL-DC-A)50.29g(0.12mol)、下記構造式で表される9,9’-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)164.41g(0.37mol)、ジフェニルカーボネート55.95g(0.26mol)、及び触媒としてテトラブトキシチタン0.015gを撹拌器および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、1時間かけて255℃、0.13kPaまで昇温、減圧し、引き続き255℃、0.13kPaで1時間撹拌を続け、重合反応を行った。内容物を反応器から取り出し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂の物性を表2に示す。
【化12】
【0053】
(比較例)
下記表2に示す金属量を含む2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステルの樹脂の物性を表2に示す。
【0054】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂は、高屈折率、高耐熱性及び低YI値を有するため、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特に、スマートフォン、DSC、車載などのカメラ用レンズに極めて有用である。本発明の熱可塑性樹脂を用いることにより、望遠等に用いられるレンズユニットの薄型化を図ることが可能となる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。