(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079863
(43)【公開日】2024-06-12
(54)【発明の名称】触媒交換用無人搬送装置、触媒交換システム、及び触媒交換方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/02 20060101AFI20240605BHJP
B01J 8/06 20060101ALI20240605BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240605BHJP
【FI】
B01J8/02 A
B01J8/06
G05D1/02 Y
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061474
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井口 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】西口 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 大介
【テーマコード(参考)】
4G070
5H301
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AA03
4G070AB05
4G070BB02
4G070CA06
4G070CB07
4G070CB17
4G070CC20
4G070DA30
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301HH01
5H301JJ08
5H301JJ10
(57)【要約】
【課題】無人搬送車に運搬され作業装置の停止位置の精度を向上させることができる触媒交換用無人搬送装置、触媒交換システム、及び触媒交換方法を提供する。
【解決手段】触媒交換用無人搬送装置400は、多管式反応器2の管板面4a若しくは管板面上の部材、及び/又は反応管の開口部5aを撮影可能な撮影部410、作業装置200の位置及び/又は向きを変更可能なX-Y-θテーブル420、作業装置の位置及び/又は向きを制御する制御部430を備える。撮影部は、所定の位置に誘導され停止している状態で管板面若しくは部材、及び/又は反応管の開口部を撮影し、制御部は、画像から得られた情報と予め取得した情報を比較して基準管5Kを認識し、基準管の位置に基づいて自己位置を認識し、自己位置と作業対象となる反応管5Aの位置の間の位置ずれ量を計算し、位置ずれ量に基づいてX-Y-θテーブルを稼働させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多管式反応器の触媒交換作業における作業装置を運搬するために自律走行する無人搬送車に積載及び/又は牽引される装置であって、
前記多管式反応器の管板面若しくは前記管板面に設置された部材、及び/又は反応管の開口部を撮影可能な撮影部と、
前記作業装置の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ前記作業装置を積載するX-Y-θテーブルと、
前記作業装置の位置及び/又は向きを制御する制御部と、を備え、
前記撮影部は、所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、前記管板面若しくは前記部材、及び/又は前記反応管の開口部を撮影し、
前記制御部は、撮影した画像から得られた情報と前記制御部が予め取得した情報を比較することによって、少なくとも1つの基準となる反応管を認識し、
前記制御部は、前記基準となる反応管の位置に基づいて、前記無人搬送車及び/又は前記作業装置の自己位置を認識し、
前記制御部は、前記自己位置と作業対象となる反応管の位置との間の位置ずれ量を計算し、
前記制御部は、前記位置ずれ量に基づいて前記X-Y-θテーブルを稼働させることを特徴とする、触媒交換用無人搬送装置。
【請求項2】
多管式反応器の管板面又は前記管板面に設置された部材に設けられ、多管式反応器内における作業区画の位置の情報、前記作業区画内の反応管の位置及び/又は配列の情報、前記作業区画内に設けられるマーキングの位置の情報、前記マーキングの位置に基づいて基準となる反応管の位置を決定するための情報を取得する取得部と、決定された前記基準となる反応管と作業対象となる反応管の位置関係の情報に基づいて前記作業対象となる反応管を指示する指示部と、を備える入力装置と、
前記多管式反応器の触媒交換作業を実施可能な作業装置と、
前記作業装置を前記指示部が指示した前記反応管が存在する前記作業区画の付近に誘導する誘導手段を備え、前記作業装置を運搬するために自律走行する無人搬送車と、
前記管板面若しくは前記部材、及び/又は前記反応管の開口部を撮影可能な撮影部と、前記作業装置の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ前記作業装置を積載するX-Y-θテーブルと、前記作業装置の位置及び/又は向きを制御する制御部と、を備える触媒交換用無人搬送装置と、を備え、
前記触媒交換用無人搬送装置は、前記無人搬送車に積載及び/又は牽引され、
前記撮影部は、前記触媒交換用無人搬送装置が所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、前記管板面若しくは前記部材、及び/又は前記反応管の開口部を撮影し、
前記制御部は、撮影された画像から得られた前記反応管の位置及び/又は配列の情報、並びに前記マーキングの位置の情報と、前記取得部が取得した情報と、を比較することによって、少なくとも1つの前記基準となる反応管を認識し、
前記制御部は、前記基準となる反応管の位置に基づいて、前記無人搬送車及び/又は前記作業装置の自己位置を認識し、
前記制御部は、前記基準となる反応管の位置と前記指示部が指示した情報により、前記作業対象となる反応管の位置を認識し、前記自己位置と前記作業対象となる反応管の位置との間の位置ずれ量を計算し、
前記制御部は、前記位置ずれ量に基づいて前記X-Y-θテーブルを稼働させることを特徴とする、触媒交換システム。
【請求項3】
多管式反応器の触媒交換作業を実施可能な作業装置と、
前記作業装置を作業対象となる反応管が存在する前記作業区画の付近に誘導する誘導手段を備え、前記作業装置を運搬するために自律走行する無人搬送車と、
前記多管式反応器の管板面若しくは前記管板面に設置された部材及び/又は反応管の開口部を撮影可能な撮影部と、前記作業装置の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ前記作業装置を積載するX-Y-θテーブルと、前記作業装置の位置及び/又は向きを制御する制御部と、を備え、前記無人搬送車に積載及び/又は牽引される触媒交換用無人搬送装置と、を用いた方法であって、
前記管板面又は前記反応管の位置に穴が設けられ、前記管板面に設置された前記部材を、任意の方法によって前記作業区画に区分けし、前記作業区画の各々にマーキングを施す工程と、
前記無人搬送車が、前記作業対象となる反応管が存在する前記作業区画の多管式反応器内における位置に関する第1情報、前記作業対象となる反応管が存在する前記作業区画内の前記反応管の位置及び/又は配列に関する第2情報、前記作業対象となる反応管が存在する前記作業区画内に設けられる前記マーキングの位置に関する第3情報、前記マーキングの位置に基づいて基準となる反応管の位置を決定するための第4情報、前記基準となる反応管と前記作業対象となる反応管の位置関係の第5情報を取得し、前記第1情報に基づいて前記誘導手段により前記作業装置を所定の位置に誘導する工程と、
前記触媒交換用無人搬送装置が、前記所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、前記管板面若しくは前記部材及び/又は前記反応管の開口部を撮影する工程と、
前記制御部が撮影された画像から少なくとも1つの前記マーキングを検知する工程と、
前記制御部が前記画像から検知された前記マーキングから前記マーキングの位置に関する第6情報を認識し、前記第6情報と前記第2情報及び前記第3情報とを比較することによって、前記画像から前記作業区画内の前記反応管の位置及び/又は配列に関する第7情報を認識する工程と、
前記制御部が前記第4情報を基に前記画像から少なくとも1つの基準となる反応管の位置に関する第8情報を認識する工程と、
前記制御部が、前記第8情報と前記第7情報を基に、前記無人搬送車及び/又は前記作業装置の自己位置に関する第9情報を認識する工程と、
前記制御部が、前記第8情報と前記第5情報を比較することによって、前記画像から前記作業対象となる反応管の位置に関する第10情報を認識する工程と、
前記制御部が、前記第9情報と前記第10情報を基に、前記自己位置と前記作業対象となる反応管の位置との間の位置ずれ量を計算する工程と、
前記制御部が前記位置ずれ量に基づいて前記X-Y-θテーブルを稼働させる工程と、を含む、触媒交換方法。
【請求項4】
前記管板面又は前記部材を前記作業区画に区分けする際に、
前記管板面又は前記部材は、形状及び大きさが略同一となる前記作業区画が少なくとも2つ以上存在するように区分けされることを特徴とする、請求項3に記載の触媒交換方法。
【請求項5】
前記管板面又は前記部材を前記作業区画に区分けする際に、
前記作業区画の各々は、前記管板面又は前記部材の全体を平面視したときに周期的に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の触媒交換方法。
【請求項6】
前記管板面又は前記部材を前記作業区画に区分けする際に、
前記管板面又は前記部材は、式(1)を満たす前記作業区画の各々の総面積が、前記管板面又は前記部材の総面積の20%以上となるように区分けされることを特徴とし、
前記式(1)において、Aは、一の前記作業区画に独立して設けられる複数の作業領域の中で最も大きな前記作業領域の外周部に存在する複数の前記反応管のうち、前記反応管の中心同士の直線距離が最も長くなるように選択した、一の前記反応管の中心と他の前記反応管の中心との間の距離を示し、
Bは、前記X-Y-θテーブルのうちX-Yテーブルを稼働することによって前記作業装置が作業可能となる範囲に存在する複数の作業点のうち、前記作業点同士の直線距離が最も長くなるように選択した、一の前記作業点と他の前記作業点との間の距離を示し、
σは、平坦である環境において、前記所定の位置に停止している前記無人搬送車を中心として半径1mの円を設定し、
前記円の円周上に前記円の中心から45°毎に8か所の停止位置を設定し、
前記触媒交換用無人搬送装置を積載及び/又は牽引した無人搬送車を設定された前記停止位置の各々に前記円の中心から3回ずつ合計24回移動させたときに計測される、前記触媒交換用無人搬送装置が実際に停止した位置と設定された前記停止位置とのずれ量の標準偏差を示す、請求項4または5に記載の触媒交換方法。
【数1】
【請求項7】
前記マーキングは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び該形状要素の色、前記作業区画内の位置、前記作業区画内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、
前記作業区画に前記マーキングを施す方法は、前記作業区画の形状及び大きさ毎に予め決定されることを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載の触媒交換方法。
【請求項8】
前記マーキングは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び前記形状要素の色、前記作業区画内の位置、前記作業区画内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、
前記作業区画の各々に施される前記マーキングの各々は、前記管板面又は前記部材の全体を平面視したときに周期的に配置されることを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載の触媒交換方法。
【請求項9】
前記マーキングは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び前記形状要素の色、前記作業区画内の位置、前記作業区画内の配置数からなる構成要素から選択された要素によって構成され、
前記マーキングは、前記形状要素が非対称性を含む、及び/又は前記マーキングの配置数が2以上であるという特徴の少なくとも一つ以上を備え、
前記制御部は、前記画像から前記マーキングを検知する際に、前記マーキングを構成する前記要素を前記マーキングの種類に関する第11情報としてさらに認識し、
前記制御部は、前記第11情報により、前記触媒交換用無人搬送装置の向きを検知することを特徴とする、請求項7または8に記載の触媒交換方法。
【請求項10】
前記マーキングは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び前記形状要素の色、前記作業区画内の位置、前記作業区画内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、
前記マーキングは、独自性を含むことを特徴とし、
前記制御部は、前記画像から前記マーキングを検知する際に、前記マーキングを構成する前記要素を前記マーキングの種類に関する第11情報としてさらに認識し、
前記制御部は、前記第11情報に基づいて前記作業区画を識別可能に構成されることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の触媒交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管式反応器内を走行可能な無人搬送車に積載/牽引される触媒交換用無人搬送装置、該装置を用いた触媒交換システム、及び該装置を用いた触媒交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学工業の分野において、多管式反応器を用いた炭化水素類の分解反応、改質反応、酸化反応、アンモ酸化反応、還元反応等の接触反応は数多く実施されている。多管式反応器は、下記特許文献1に示すように、管板と該管板に接続された複数の反応管を備えている。
【0003】
多管式反応器は、反応管に触媒を充填し、反応管に気体/液体を流通させることによって接触反応を起こしている。反応管に充填された触媒は、経年により性能が低下するため、定期的に触媒を抜き出して交換する必要があり、その際反応管に充填された触媒の量を調整する必要がある。これらの作業(触媒交換作業)は、例えば、多管式反応器の内部に入った作業員が触媒交換作業を実施するための作業装置を用いて実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多管式反応器には数千から数万本の反応管が配設されているため、作業員が作業装置を運搬して触媒交換作業を実施する方法では、多くの時間や人員を必要とする。そのため、作業効率を向上させることができる装置の開発や、触媒交換システム及び触媒交換方法の構築が要望されている。
【0006】
本発明者らは、多管式反応器の触媒交換作業に関する従来技術に鑑み、他の方法によって触媒をより効率的に交換できないか鋭意検討した。そして、本発明者らは、自律走行する無人搬送車に作業装置を運搬させることによって触媒交換作業が自動化され、作業効率が向上するのではないかと着想した。
【0007】
また、本発明者らは、無人搬送車を用いて作業装置を運搬する場合に、作業装置の停止位置(言い換えれば、作業装置の作業開始位置)の誤差が無人搬送車の停止位置の誤差に依存することに着目した。触媒交換作業として、例えば反応管に触媒を充填する工程を実施する場合、作業装置(充填機)の作業部分である充填口のサイズは、反応管の開口部分のサイズと同程度であるか、やや小さい場合が多いため、作業装置の停止位置の誤差が大きいと触媒が反応管の外に零れたり、作業装置と反応管との間に詰まったりすることによって作業不良が生じる可能性が高くなる。そのため、本発明者らは、作業装置の停止位置の精度が無人搬送車の停止位置の精度より向上する(作業装置の停止位置の誤差を小さくする)方法を鋭意検討した。そして、本発明者らは、無人搬送車に積載及び/又は牽引され、作業装置を積載可能な触媒交換用無人搬送装置を開発し、無人搬送車が所定の位置に誘導された後に触媒交換用無人搬送装置が作業装置の位置及び/又は向きを変更することによって作業装置を予め設定された作業位置に適正に移動させることを支援するシステム及び方法を構築し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、多管式反応器の内部を自律走行する無人搬送車に運搬され、触媒交換作業における作業装置の停止位置の精度を向上させることができる触媒交換用無人搬送装置、触媒交換システム、及び触媒交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の形態に係る触媒交換用無人搬送装置は、多管式反応器の触媒交換作業における作業装置を運搬するために自律走行する無人搬送車に積載及び/又は牽引される装置であって、前記多管式反応器の管板面若しくは前記管板面に設置された部材、及び/又は反応管の開口部を撮影可能な撮影部と、前記作業装置の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ前記作業装置を積載するX-Y-θテーブルと、前記作業装置の位置及び/又は向きを制御する制御部と、を備え、前記撮影部は、所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、前記管板面若しくは前記部材、及び/又は前記反応管の開口部を撮影し、前記制御部は、撮影した画像から得られた情報と前記制御部が予め取得した情報を比較することによって、少なくとも1つの基準となる反応管を認識し、前記制御部は、前記基準となる反応管の位置に基づいて、前記無人搬送車及び/又は前記作業装置の自己位置を認識し、前記制御部は、前記自己位置と作業対象となる反応管の位置との間の位置ずれ量を計算し、前記制御部は、前記位置ずれ量に基づいて前記X-Y-θテーブルを稼働させることを特徴とする。
【0010】
本発明の一の形態に係る触媒交換システムは、多管式反応器の管板面又は前記管板面に設置された部材に設けられ、多管式反応器内における作業区画の位置の情報、前記作業区画内の反応管の位置及び/又は配列の情報、前記作業区画内に設けられるマーキングの位置の情報、前記マーキングの位置に基づいて基準となる反応管の位置を決定するための情報を取得する取得部と、決定された前記基準となる反応管と作業対象となる反応管の位置関係の情報に基づいて前記作業対象となる反応管を指示する指示部と、を備える入力装置と、前記多管式反応器の触媒交換作業を実施可能な作業装置と、前記作業装置を前記指示部が指示した前記反応管が存在する前記作業区画の付近に誘導する誘導手段を備え、前記作業装置を運搬するために自律走行する無人搬送車と、前記管板面若しくは前記部材、及び/又は前記反応管の開口部を撮影可能な撮影部と、前記作業装置の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ前記作業装置を積載するX-Y-θテーブルと、前記作業装置の位置及び/又は向きを制御する制御部と、を備える触媒交換用無人搬送装置と、を備え、前記触媒交換用無人搬送装置は、前記無人搬送車に積載及び/又は牽引され、前記撮影部は、前記触媒交換用無人搬送装置が所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、前記管板面若しくは前記部材、及び/又は前記反応管の開口部を撮影し、前記制御部は、撮影された画像から得られた前記反応管の位置及び/又は配列の情報、並びに前記マーキングの位置の情報と、前記取得部が取得した情報と、を比較することによって、少なくとも1つの前記基準となる反応管を認識し、前記制御部は、前記基準となる反応管の位置に基づいて、前記無人搬送車及び/又は前記作業装置の自己位置を認識し、前記制御部は、前記基準となる反応管の位置と前記指示部が指示した情報により、前記作業対象となる反応管の位置を認識し、前記自己位置と前記作業対象となる反応管の位置との間の位置ずれ量を計算し、前記制御部は、前記位置ずれ量に基づいて前記X-Y-θテーブルを稼働させることを特徴とする。
【0011】
本発明の一の形態に係る触媒交換方法は、多管式反応器の触媒交換作業を実施可能な作業装置と、前記作業装置を作業対象となる反応管が存在する前記作業区画の付近に誘導する誘導手段を備え、前記作業装置を運搬するために自律走行する無人搬送車と、前記多管式反応器の管板面若しくは前記管板面に設置された部材及び/又は反応管の開口部を撮影可能な撮影部と、前記作業装置の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ前記作業装置を積載するX-Y-θテーブルと、前記作業装置の位置及び/又は向きを制御する制御部と、を備え、前記無人搬送車に積載及び/又は牽引される触媒交換用無人搬送装置と、を用いた方法であって、前記管板面又は前記反応管の位置に穴が設けられ、前記管板面に設置された前記部材を、任意の方法によって前記作業区画に区分けし、前記作業区画の各々にマーキングを施す工程と、前記無人搬送車が、前記作業対象となる反応管が存在する前記作業区画の多管式反応器内における位置に関する第1情報、前記作業対象となる反応管が存在する前記作業区画内の前記反応管の位置及び/又は配列に関する第2情報、前記作業対象となる反応管が存在する前記作業区画内に設けられる前記マーキングの位置に関する第3情報、前記マーキングの位置に基づいて基準となる反応管の位置を決定するための第4情報、前記基準となる反応管と前記作業対象となる反応管の位置関係の第5情報を取得し、前記第1情報に基づいて前記誘導手段により前記作業装置を所定の位置に誘導する工程と、前記触媒交換用無人搬送装置が、前記所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、前記管板面若しくは前記部材及び/又は前記反応管の開口部を撮影する工程と、前記制御部が撮影された画像から少なくとも1つの前記マーキングを検知する工程と、前記制御部が前記画像から検知された前記マーキングから前記マーキングの位置に関する第6情報を認識し、前記第6情報と前記第2情報及び前記第3情報とを比較することによって、前記画像から前記作業区画内の前記反応管の位置及び/又は配列に関する第7情報を認識する工程と、前記制御部が前記第4情報を基に前記画像から少なくとも1つの基準となる反応管の位置に関する第8情報を認識する工程と、前記制御部が、前記第8情報と前記第7情報を基に、前記無人搬送車及び/又は前記作業装置の自己位置に関する第9情報を認識する工程と、前記制御部が、前記第8情報と前記第5情報を比較することによって、前記画像から前記作業対象となる反応管の位置に関する第10情報を認識する工程と、前記制御部が、前記第9情報と前記第10情報を基に、前記自己位置と前記作業対象となる反応管の位置との間の位置ずれ量を計算する工程と、前記制御部が前記位置ずれ量に基づいて前記X-Y-θテーブルを稼働させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る触媒交換用無人搬送装置、触媒交換システム、及び触媒交換方法によれば、撮影部は、無人搬送車が所定の位置に誘導された後に、停止している状態で管板面若しくは該管板面に設置された部材及び/又は反応管の開口部を撮影することができる。また、制御部は、撮影された画像から得られた情報と触媒交換用無人搬送装置が予め取得した情報(無人搬送装置が取得したマーキングの情報や基準となる反応管の情報等)を比較することによって無人搬送車及び/又は作業装置の自己位置を認識し、該自己位置と作業対象となる反応管の位置との間の位置ずれ量を計算して、該位置ずれ量に基づいてX-Y-θテーブルを稼働させることができる。そのため、作業装置を予め設定された作業位置に適正に移動させることを支援することができ、作業装置の停止位置の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る触媒交換システムを示す概略図である。
【
図2】
図1に示す触媒交換システムを多管式反応器に導入した状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す入力装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示す入力装置側制御部の機能構成を示す図である。
【
図5】多管式反応器内に設けられる作業区画を説明するための図である。
【
図6】作業区画に設けられる作業領域を説明するための図である。
【
図7】無人搬送車の停止位置精度を測定する方法を説明するための図である。
【
図8A】多管式反応器内に設けられるマーキングの仕様を説明するための図である。
【
図8B】多管式反応器内に設けられるマーキングの仕様を説明するための図である。
【
図8C】多管式反応器内に設けられるマーキングの仕様を説明するための図である。
【
図8D】多管式反応器内に設けられるマーキングの仕様を説明するための図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る触媒交換方法を示すフローチャートである。
【
図10】作業装置の位置及び/又は向きを制御する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
本実施形態に係る触媒交換システム1は、(1)反応管5の触媒Cを抜き出す工程、(2)触媒Cを抜き出した反応管5を洗浄する工程、(3)触媒Cを運搬し、触媒Cを抜き出した反応管5に新たな触媒Cを充填する工程、(4)触媒Cを充填した反応管5の触媒Cの層長と圧力損失を測定し調整する工程(言い換えれば、反応管5に充填された触媒Cの量を調整する工程)等の多管式反応器2の触媒交換作業で利用することができる。
【0016】
図1は、本実施形態に係る触媒交換システム1の構成を示すための概略図である。また、
図2は、触媒交換システム1を構成する作業装置200、無人搬送車300、触媒交換用無人搬送装置400を多管式反応器2に導入した状態を説明するための断面図である。また、
図3は、入力装置100の制御系の構成を示すブロック図である。
【0017】
また、以下において、作業装置200を初期位置に置いたときの作業装置200の前後方向を前後方向X、左右方向を左右方向Y、高さ方向を高さ方向Zと称する。
【0018】
本実施形態に係る触媒交換システム1は、
図1に示すように、入力装置100と、作業装置200と、作業装置200を運搬するために自律走行する無人搬送車300と、無人搬送車300に積載され、作業装置200を予め設定された作業位置に適正に移動させることを支援する触媒交換用無人搬送装置400と、から構成されている。
【0019】
<多管式反応器>
多管式反応器2は、
図2に示すように、蓋部3と、管板4と、複数の反応管5を備えている。
【0020】
多管式反応器2には、通常数千から数万本の反応管5が配置される。一般に、反応管5の上端部は、管板4に溶接によって接合されている。管板4の上面(以下、管板面4aと称する)は、溶接ビードやスパッタ等の溶接痕によって凹凸が生じ、平滑ではない部分が生じている。反応管5は、その上端開口部が管板面4a以上に位置するように配設され、反応管5が管板面4aから突出する量(突出量L)は、一般に、同一反応器内で概ね一定の値に設定される。
【0021】
反応管5は、例えば、粒状の触媒、粒状のセラミックス(例えば、シリカの球状体、アルミナの球状体、ジルコニアの球状体)、粒状の金属製ラシヒリング等が充填される反応管である。反応管5の高さ方向の上端には、反応管5の外部と連通する上端開口部(以下、単に開口部5aと称する)が形成されている。反応管5の高さ方向の下端には、反応管5の外部と連通する下端開口部(図示省略)が形成されている。反応管5は、目的とする接触反応にもよるが、例えば、内径が10mm~60mmで、高さが3000mm~10000mmに形成することができる。
【0022】
触媒交換システム1を構成する作業装置200、無人搬送車300、触媒交換用無人搬送装置400は、多管式反応器2の管板面4a又は管板面4aに設置された部材(図示省略)の上を移動する。
【0023】
<入力装置>
入力装置100は、
図2に示すように、多管式反応器2の外部に設けられている。入力装置100は、
図3に示すように、入力装置側制御部110と、記憶部120と、表示部130と、操作部140を備える。各構成要素は、信号をやり取りするためのバスを介して、相互に接続されている。
【0024】
入力装置100は、触媒交換作業に携わる作業員等のユーザーからの指示(入力)を受け付け可能に構成される。また、入力装置100は、作業装置200、無人搬送車300、触媒交換用無人搬送装置400と通信可能に構成される。なお、作業装置200は、直接入力装置100と通信してもよく、無人搬送車300や触媒交換用無人搬送装置400を介して入力装置100と通信してもよい。
【0025】
入力装置側制御部110は、CPU(Central Processing Unit)を備え、プログラムに従って上述した各構成要素の制御や各種の演算処理を実行する。入力装置側制御部110の機能構成については、
図4を参照して後述する。
【0026】
記憶部120は、予め各種プログラムや各種情報を記憶するROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムや情報を記憶するRAM(Random Access Memory)、各種プログラムや各種情報を記憶するハードディスク等を備える。
【0027】
表示部130は、LCD(液晶ディスプレイ)や有機ELディスプレイ等を備え、各種情報を表示する。
【0028】
操作部140は、例えばボタンやジョイスティック等を備え、ユーザー等からの入力を受け付ける。
【0029】
続いて、入力装置側制御部110の機能について詳述する。
図4は、入力装置側制御部110の機能を示すブロック図である。
【0030】
入力装置側制御部110は、
図4に示すように、プログラムを読み込んで処理を実行することによって、取得部110a、指示部110b、出力部110c、学習部110dとして機能する。
【0031】
取得部110aは、多管式反応器2内に設けられる作業区画D1~Dk(kは任意の自然数とし、作業区画D1~Dkを総称して作業区画Dという。)の位置の情報、作業区画D内の反応管5の位置及び/又は配列の情報、作業区画D内に設けられるマーキングMの位置の情報、マーキングMの位置に基づいて基準管5K(「基準となる反応管」に相当する)の位置を決定するための情報を取得する。取得部110aが取得する各種情報は、操作部140を介して入力された情報及び/又は記憶部120が記憶する情報から取得する事ができる。ユーザーは、人為的及び/又は機械的な方法によって各作業区画Dの位置を予め決定し、作業区画D毎のレイアウト(X方向の反応管5の本数(行)及びY方向の反応管5の本数(列))と各作業区画Dの位置及び/又は配列、作業区画D毎に設けられるマーキングMの位置(
図8A~8Dを参照)を決定する。このとき、ユーザーは、取得部110aが記憶部120から取得した情報(例えば、入力装置100のハードディスクに情報が予め入力されている場合に記憶部120から取得可能な情報)を基に各種情報を入力してもよい。さらに、ユーザーは、作業区画Dに設けられるマーキングMと基準管5Kの位置関係を決定する。なお、ここでいう作業区画Dとは、一意の停止位置(指示部110bが指示した一か所の停止位置)において作業装置200が作業する領域を意味し、例えば、
図10に示す破線で囲まれた部分とすることができる。また、マーキングMは、多管式反応器2内に設けられるマーキングM1~Mn(nは任意の自然数とする。)を総称した表現である。
【0032】
取得部110aが取得した各種情報は、取得部110aから指示部110b、出力部110c、学習部110d、記憶部120へ送信される。
【0033】
なお、作業区画Dの配置、作業区画Dのレイアウト(作業区画Dの大きさや形状)、作業区画D毎に設けられるマーキングMの位置、作業区画DにおけるマーキングMの位置に基づいて基準管5Kの位置を決定するための情報は、入力装置100が反応管5のレイアウトを基に自動的に決定してもよい。また、マーキングMは、予め決定された反応管の開口部5aまたはその周辺に設けられていてもよい。また、作業区画Dの仕様は同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。また、作業区画D毎に設けられるマーキングMの仕様は同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。また、作業区画Dの仕様、作業区画Dに設けられるマーキングMの仕様は、種々変更することができるが、その詳細は下述する。
【0034】
指示部110bは、作業対象となる反応管5A(以下、単に反応管5Aと称する。
図10を参照)を指示する。反応管5Aの本数は1本でも複数本でも良く、作業装置200が一度の作業で行える作業管と同じ本数であることが好ましい。このとき、使用される反応管5Aの位置の情報には、反応管5Aを含む作業区画Dの位置の情報、及び作業区画D内での反応管5Aの位置の情報(作業区画D内における基準管5Kと反応管5Aの位置関係の情報)が含まれ、作業区画D内における反応管5Aの位置は、例えば、先に実施した触媒交換作業に関する情報(作業終了後に記憶部120に格納される情報)を基に自動的に決定される。例えば、入力装置100は、触媒交換作業を実施した反応管5の位置に関する情報を入力装置側制御部110にフィードバックさせ、記憶部120に該情報を自動で蓄積することによって、反応管5の作業状況(作業済、又は未作業)を判断できるデータベースを作成することができる。これにより、指示部110bは、該データベースを基に反応管5Aの位置を決定することができる。また、取得部110aは、該データベースを基に決定した反応管5Aの位置を指示部110bから取得して、出力部110c、学習部110d、記憶部120へ送信することができる。
【0035】
なお、反応管5Aの位置は、ユーザーが決定してもよい。触媒交換作業を初めて実施する場合、ユーザーが反応管5Aの位置を入力装置100に入力することによって、指示部110bがユーザーから入力された情報を出力部110c、学習部110d、記憶部120へ送信してもよい。指示部110bが反応管5Aを決定する過程で異常が発生した場合も、反応管5Aの位置をユーザーが決定することができる。また、触媒交換作業を初めて実施する場合、指示部110は、反応管5Aの位置を決定することなく、作業区画Dの一番端(触媒交換用無人搬送装置400初期位置に最も近い作業区画Dの端部)を作業対象として指示することによって触媒交換作業を開始するようにプログラムしてもよい。
【0036】
出力部110cは、各種情報を表示部130に出力する。また、出力部110cは、通信機能を介して各種情報を無人搬送車300や触媒交換用無人搬送装置400へ直接送信することができる。なお、入力装置100は、出力部110cから他の装置を介して各種情報を間接的に送信することもできる。例えば、入力装置100は、出力部110cから無人搬送車300の運行管理システムを介して各種情報を無人搬送車300や触媒交換用無人搬送装置400へ送信することができる。
【0037】
学習部110dは、指示部110bを学習させる。学習により、指示部110bのディープニューラルネットワーク(DNN)のパラメーターが更新される。
【0038】
なお、入力装置100は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでもよく、上述した構成要素のうちの一部の構成要素(例えば、学習部110d、記憶部120)を含まなくてもよい。
【0039】
<作業装置>
作業装置200は、
図1、
図2に示すように、触媒交換用無人搬送装置400に積載されている。作業装置200は、先に述べた触媒交換作業の工程毎に用意された専用の装置であってもよく、触媒交換作業の工程のいくつかを実施するために用意された装置であってもよい。作業装置200が、例えば、触媒Cを運搬し、触媒Cを抜き出した反応管5に新たな触媒Cを充填する装置である場合、作業装置200は、
図1に示すように、作業装置側制御部(図示省略)と、供給部210と、作業部220を備えることができる。
【0040】
作業装置側制御部は、CPUを備え、プログラムに従って上述した各構成要素の制御や各種の演算処理を実行する。
【0041】
供給部210は、多管式反応器2の外部に設けられているタンク(図示省略)からコンベア(図示省略)を介して触媒Cをその内部に溜めることができる。コンベアの位置は、特に限定されず、多管式反応器2の内外を連通するように設けられていてもよい。
【0042】
作業部220は、例えば、複数のノズルから構成することができ、ノズルを介して触媒Cを反応管5Aに充填することができる。ノズルの構成は、特に限定されないが、例えば、ノズルを伸縮可能に構成したり、ノズル同士の距離を変化可能に構成したりすることができる。ノズルの長さが固定である場合は、例えばノズルの下端部が管板面4a又は管板面4aに設置された部材(図示省略)の近傍となるようにノズルの長さを設定することができる。また、ノズル同士の距離が固定である場合は、例えば反応管5同士の距離(ピッチともいう)に合わせてノズル同士の距離を設定することができる。また、ノズル同士の距離が可変である場合は、例えばノズルの同士の間に伸縮機構(ノズル同士の距離を調節可能な棒状の部材等を用いた機構)を設置することによって、ノズル同士の距離を変化可能に構成することができる。
【0043】
なお、作業部220は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでもよく、上述した構成要素のうちの一部の構成要素を含まなくてもよい。
【0044】
<無人搬送車>
無人搬送車300は、管板面4a又は管板面4aに設置された部材の上を自律走行することができる装置であって、
図1、
図2に示すように、触媒交換用無人搬送装置400と作業装置200を積載している。無人搬送車300は、
図1に示すように、台車部310と、載置部320と、無人搬送車側制御部(図示省略)を備える。
【0045】
無人搬送車300は、公知の積載型(搭載型)無人搬送車を使用することができる。そのため、台車部310と載置部320の構成の説明は省略する。
【0046】
台車部310は、例えば、管板面4aから突出して設置されている反応管5に引っ掛からないように走行することができ、載置部320が管板面4aに対して平行である状態を維持しながら管板面4a及び反応管5の開口部の上端や溶接ビードやスパッタ等の溶接痕がなす略平坦面(多少の凹凸を有する面)を走行することができる。なお、管板面4aには、反応管5によって管板面4aに形成される凹凸部分が解消されるような補助部材が敷かれていてもよく、この場合、台車部310は、反応管の開口部5a(孔部)に嵌まらない(引っ掛からない)ように走行することができる。
【0047】
無人搬送車側制御部は、CPUを備え、プログラムに従って上述した各構成要素の制御や各種の演算処理を実行する。無人搬送車側制御部は、作業装置200を入力装置100が指示した所定の位置に誘導する(言い換えれば、反応管5Aが存在する作業区画Dの付近に無人搬送車300を移動させるように台車部310に指示する)ための機能として、誘導手段を備えている。
【0048】
誘導手段の構成は、特に限定されず、例えば下述するように種々変更することができる。
【0049】
例えば、無人搬送車300は、レーザー照射装置(図示省略)と、多管式反応器2の内部空間6(
図2を参照)や内壁7(
図2を参照)等に設置した反射板の各々にレーザー照射装置からレーザーを照射させてその反射光を検出する検出部(図示省略)を備えていてもよい。この場合、無人搬送車側制御部は、検出部の検出結果に基づいて無人搬送車300の自己位置を判断することによって、反応管5Aが存在する作業区画Dの付近に無人搬送車300を移動させるように台車部310に指示することができる。
【0050】
また、無人搬送車300は、レーザーレンジファインダー(図示省略)を備えていてもよい。この場合、無人搬送車側制御部は、レーザーファインダーの測定結果に基づいて無人搬送車300の自己位置を判断することによって、反応管5Aが存在する作業区画Dの付近に無人搬送車300を移動させるように台車部310に指示することができる。
【0051】
また、作業区画D内に施されたマーキングM及び/又は作業区画D外に施されたマーキングが、例えば数字、文字、記号である場合、無人搬送車300は、マーキングM及び/又は作業区画D外に施されたマーキングをOCR機能(OCR:Optical Character Recognition)によって認識する認識部(図示省略)を備えていてもよい。この場合、無人搬送車側制御部は、認識部の認識結果に基づいて無人搬送車300の自己位置を判断することによって、反応管5Aが存在する作業区画Dの付近に無人搬送車300を移動させるように台車部310に指示することができる。
【0052】
なお、無人搬送車300は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでもよく、上述した構成要素のうちの一部の構成要素を含まなくてもよい。
【0053】
<触媒交換用無人搬送装置>
触媒交換用無人搬送装置400は、
図1、
図2に示すように、無人搬送車300に積載される装置であって、その上部に作業装置200を積載している。触媒交換用無人搬送装置400は、
図1に示すように、撮影部410と、X-Y-θテーブル420と、触媒交換用無人搬送装置側制御部430(「制御部」に相当する。以下、制御部と称する)を備える。各構成要素は、信号をやり取りするためのバスを介して、相互に接続されている。
【0054】
撮影部410は、少なくとも1つのカメラによって構成されている。撮影部410は、無人搬送車300の誘導手段によって入力装置100が指示した所定の位置に作業装置200が誘導された後に、停止している状態で、管板面4a若しくは管板面4aに設置された部材及び/又は反応管の開口部5aを撮影することができる。撮影された画像Pは、制御部430へ送信される。
【0055】
撮影部410は、撮影部410から被写体までの距離が変化した場合でも被写体にピントが合った状態を維持するための機能を備えており、その機能は、例えば被写界深度が深く設定されることによって達成される。これにより、撮影部410は、無人搬送車300が管板面4a若しくは管板面4aに設置された部材の上を走行する段階で撮影部410から反応管の開口部5aまでの距離(Z方向の距離)に多少のズレが生じた場合でも、反応管の開口部5aにピントが合った状態を維持することができる。また、反応管5の突出量Lは、一般に同一多管式反応器内では概ね統一されているが、異なる多管式反応器の間では異なっている場合がある。そのため、撮影部410が被写体にピントが合った状態を維持する機能を備えていることによって、ユーザー等が事前に撮影部410の設定を修正する工程を省くことができる。なお、撮影部410は、AF(オートフォーカス)機能をさらに備え、AF機能を用いて被写体にピントを合わせてもよい。
【0056】
X-Y-θテーブル420は、X方向に移動可能なXテーブル421と、Y方向に移動可能なYテーブル422と、θ方向に回転可能なθテーブル423によって構成される。X-Y-θテーブル420は、例えばレールスライダーやスラストベアリング等の介在物424を介して触媒交換用無人搬送装置400の本体部分に接続され、該介在物の作用によってX-Y-θ方向に移動することができるテーブルを意味する。
【0057】
制御部430は、CPUを備え、プログラムに従って上述した各構成要素の制御や各種の演算処理を実行する。制御部430は、画像PからマーキングMの仕様(マーキングMの種類)、マーキングMの位置、反応管5の位置及び/又は配列に関する情報を認識し、画像Pから得られた各種情報と入力装置100から送信された各種情報を比較することができる。また、制御部430は、比較した結果に基づいて無人搬送車300及び/又は作業装置200の自己位置(作業装置200の作業部220のうち反応管5Aに最も接近または接触する部位の位置。例えば、
図1に示す作業装置200の作業部220の先端部の位置。)を認識し、自己位置と反応管5Aの位置の間の位置ずれ量を計算することができる。また、制御部430は、計算された位置ずれ量に基づいてX-Y-θテーブル420を稼働させることによって、作業装置200を予め設定された作業区画D内の作業位置に適正に移動させることができる。制御部430が実行する内容は、下述する触媒交換方法にて説明する。
【0058】
なお、触媒交換用無人搬送装置400は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでもよく、上述した構成要素のうちの一部の構成要素を含まなくてもよい。制御部430が備える各種機能は、触媒交換用無人搬送装置400以外の装置(例えば、入力装置100の制御部)が備えていてもよい。
【0059】
また、触媒交換用無人搬送装置400は、無人搬送車300に牽引される装置であってもよい。この場合、触媒交換用無人搬送装置400は、台車部をさらに備えていてもよい。
【0060】
<作業区画の仕様、作業区画に設けられるマーキングの仕様>
次に、
図5、
図8A~
図8Dを参照して、上述した作業区画Dの仕様、作業区画Dに設けられるマーキングMの仕様について説明する。なお、
図5、
図8A、
図8B、
図8Dは、説明の便宜上、反応管5を省略し、作業区画DとマーキングMを模式的に示している。また、
図5、
図8A~
図8D内の作業区画Da、Db、Dcは作業区画Dの種類(タイプ)を示し、マーキングMa、Mb、Mc、Md、MeはマーキングMの種類(タイプ)を示す(マーキングMa、Mb、Mc、Mdは、作業区画D内に施されたマーキングであり、マーキングMeは、作業区画Dを囲う枠に施されたマーキングである)。
【0061】
作業区画Dの仕様及びマーキングMの仕様は、種々変更することができる。例えば、管板面4a又は管板面4aに設置された部材は、形状及び大きさが異なる作業区画Dが存在するように区分けすることができる。なお、管板面4a又は管板面4aに設置された部材は、形状及び大きさが略同一となる作業区画Dが少なくとも2つ以上存在するように区分けされることが好ましい。
【0062】
また、管板面4a又は管板面4aに設置された部材は、作業区画Dが周期的に配置されるように区分けすることができる。なお、ここでいう「周期的に配置される」とは、所定の個数からなる作業区画Dを1セットとして、該セットが管板面4a又は管板面4aに設置された部材に繰り返し配置されるということを意味する(
図5を参照)。なお、「所定の個数」は1以上でもよいし、2以上の整数でもよい。
【0063】
また、管板面4a又は管板面4aに設置された部材は、下記式(1)を満たす作業区画Dの総面積が、管板面4a又は管板面4aに設置された部材の総面積の20%以上となるように区分けすることができる。そうすることで、作業装置200が作業不可の範囲に触媒交換用無人搬送装置400が停止する回数を減らすことができ、作業の効率化を図ることができる。式(1)を満たす作業区画Dの総面積は、管板面4a又は管板面4aに設置された部材の総面積の40%以上とすることが好ましく、60%以上とすることがより好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。
【0064】
【0065】
式(1)において、Aは、一の作業区画Dの外周部に存在する複数の反応管5のうち、反応管5の中心同士の直線距離が最も長くなるように選択した、一の反応管5の中心と他の反応管5の中心との間の距離(mm)を示す。なお、作業区画Dとは、前述の通り一意の停止位置において作業装置が作業する領域を意味するが、
図6のように作業区画Dが連続した作業領域ではなく、2つの作業領域に分かれている場合がある。
図6の場合、作業領域E1、E2の間に無人搬送車300を停止させ、触媒交換用無人搬送装置400のθテーブル423を180度回転させることによって、作業装置200は連続しない2つの作業領域E1、E2の双方に対して一意の停止位置から作業することができる。このとき、制御部430は、作業領域E1、E2それぞれについて、外周部に存在する複数の反応管5のうち、反応管5の中心同士の直線距離が最も長くなるように選択した一つの反応管5の中心と他の反応管5の中心の間の距離A
E1、A
E2(mm)をそれぞれ算出し、その値が大きい方をAと見なす。
【0066】
また、式(1)において、Bは、X-Yテーブル(Xテーブル421及びYテーブル422)を稼働することによって作業装置200が作業可能となる範囲に存在する複数の作業点のうち、作業点同士の直線距離が最も長くなるように選択した、一の作業点と他の作業点との間の距離(mm)を示す。
【0067】
また、式(1)において、σは、略平坦である環境において、所定の位置停止している無人搬送車300を中心として半径1mの円Fを設定し(
図7を参照)、円Fの円周上に円Fの中心Oから45°毎に8か所の停止位置G1~G8(以下、停止位置の各々を総称して停止位置Gとする場合がある)を設定し、無人搬送車300を停止位置G1~G8の各々に円Fの中心Oから3回ずつ合計24回移動させたときに計測される、無人搬送車300が実際に停止した位置H1~H8と設定された停止位置G1~G8との間の位置ずれ量の標準偏差を示す。ここでいう、「略平坦である環境」とは、無人搬送車300が実際に走行する管板面4aなどの平面(物理的に実存する平面)が略平坦である、または無人搬送車300の鉛直方向軸(Z軸)に直交する平面(無人搬送車300を真上から見たときの投影面、すなわちX-Y方向の仮想平面)が略平坦である環境を意味する。
【0068】
なお、式(1)の2σは、標準偏差の±1σの領域を意図しており、式(1)で等号が成立する場合、入力装置100が指定した場所に触媒交換用無人搬送装置400を積載及び/又は牽引した無人搬送車300が移動したときに、作業装置200は、X-Yテーブルをスライドさせることにより68%の確率で作業可能な範囲に移動し得ることを意味する。作業装置200が作業不可の範囲に触媒交換用無人搬送装置400を積載及び/又は牽引した無人搬送車300が停止した場合は、触媒交換用無人搬送装置400を積載及び/又は牽引した無人搬送車300の停止位置を再調整する(触媒交換用無人搬送装置400を積載及び/又は牽引した無人搬送車300を微量に移動させる)必要がある。ただし、実用上、式(1)は不等号が成立するように作業区画Dの大きさを小さく(Aが小さくなるように)設定するため、作業可能な確率はこれよりも高くなる。また、式(1)の2σを4σ(標準偏差の±2σの領域)に置き換えた場合は、式(1)の等号成立時に作業装置200が作業可能な範囲に入る確率が95%になるためより好ましく、6σ(標準偏差の±3σの領域)に置き換えた場合は、作業装置200が作業可能な範囲に入る確率が99.7%になるためより好ましい。なお、制御部430は、入力装置100が指示した場所に触媒交換用無人搬送装置400が停止した後に、撮影部410でマーキングMを検知し基準管5Kを認識し、停止位置(自己位置)と反応管5Aの距離及び方位とX-Y-θテーブル420の可動範囲(距離及び方位)を比較することによって作業装置200による作業が可能か否かを判断して、作業不可と判断した場合に触媒交換用無人搬送装置400を積載及び/又は牽引した無人搬送車300の停止位置の再調整が必要であると判断する。
【0069】
作業区画Dに設けられるマーキングMの種類は、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び形状要素の色、作業区画D内の位置、作業区画D内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成することができる。このとき、作業区画Dに施すマーキングMの種類は、作業区画Dのレイアウト(作業区画Dの形状及び大きさ)毎に予め決定していても(固有であっても)よい(
図8Aを参照)。
【0070】
また、マーキングMは、管板面4a又は管板面4aに設置された部材に周期的に配置されていてもよい(
図8B中の例1はマーキングMの記号及び位置に周期性がある場合を示し、例2はマーキングMの位置に周期性がある場合を示し、例3は一部のマーキングM(図中のMd)の位置に周期性がある場合を示し、例4はマーキングMが作業区画Dの外周部に引かれた線で構成されており、そのマーキングM(図中のMe)に周期性がある場合を示す)。なお、作業区画D毎に複数のマーキングMが設けられている場合、マーキングMdが作業区画D内の所定の位置に配置され、管板面4a又は管板面4aに設置された部材を全体視したときにその位置が周期的であるように配置されていてもよく(
図8B中の例3を参照)、Md以外の一部又はすべてマーキングMが作業区画D内の異なる位置に配置され、管板面4a又は管板面4aに設置された部材を全体視したときにマーキングMの位置が周期的であるように配置されていてもよい(図示省略)。
【0071】
また、作業区画D毎に設けられるマーキングMの各々が共通の要素として備えている条件の範囲は、特に限定されない。例えば、マーキングMは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び形状要素の色、作業区画D内の位置、作業区画D内の配置数からなる構成要素から選択された要素によって構成され、マーキングMは、形状要素が非対称性を含む、マーキングMの配置数が2以上であるという特徴の少なくとも一つ以上を備えていてもよい。マーキングMが、形状要素が非対称性を含む、及び/又はマーキングの配置数が2以上である特徴を有する場合、制御部430は、マーキングMを検知することによって、自己位置の向きを認識することができる。例えば、
図8C中の例1はマーキングMが複数の線からなりマーキングMの形状が非対称である場合を示し、例2はマーキングMの配置数が2からなる場合を示し、どちらの場合も、制御部430は自己位置の向きを認識することができる。
【0072】
また、マーキングMは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び形状要素の色、作業区画D内の位置、作業区画D内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、マーキングMは、独自性を含むように構成されていてもよい。ここでいう、「マーキングMが独自性を含む」とは、例えば、マーキングMが数字から形成され、該数字が互いに異なる値に設定されている場合(
図8Dを参照)に、制御部430が一のマーキングMの数字を認識したときに他のマーキングMと区別できる状態を指す。
【0073】
<触媒交換方法>
次に、触媒交換システム1を構成する装置を用いた触媒交換方法を説明する。
【0074】
図9は、本発明の一実施形態に係る触媒交換方法を示すフローチャートであり、
図10は、作業装置200の位置及び/又は向きを制御する方法を説明するための図である。
【0075】
なお、下記の説明において、制御部430が予め取得した情報は、取得部110aが予め取得した第1情報~第5情報を含む。第1情報は、反応管5Aが存在する作業区画Dの位置に関する情報を意味する。また、第2情報は、反応管5Aが存在する作業区画D内の反応管5の位置及び/又は配列に関する情報を意味する。また、第3情報は、反応管5Aが存在する作業区画D内のマーキングMの位置に関する情報を意味する。また、第4情報は、作業区画D内のマーキングMの位置に基づいて基準管5Kの位置を決定するための情報を意味する。また、第5情報は、作業区画D内の基準管5Kと反応管5Aの位置関係に関する情報を意味する。
【0076】
また、下記の説明において、制御部430が画像Pから得られる情報は、第6情報~第11情報を含む。第6情報は、画像Pから認識する画像P内におけるマーキングMの位置に関する情報を意味する。また、第7情報は、画像Pから認識する画像P内における作業区画Dの反応管5の位置及び/又は配列に関する情報を意味する。また、第8情報は、画像Pから認識する画像P内の基準管5Kの位置に関する情報を意味する。また、第9情報は、画像Pから認識する無人搬送車300及び/又は作業装置200の自己位置に関する情報を意味する。また、第10情報は、画像Pから認識する画像P内における反応管5Aの位置に関する情報を意味する。また、第11情報は、画像Pから認識するマーキングMの種類に関する情報を意味する。
【0077】
また、下記の説明において、マーキングMは、多管式反応器2内の管板面4aに配置されている。ただし、マーキングMは、管板面4aの上に設置された部材(先に述べた補助部材のような多管式反応器2内に別途載置される部材であり、例えば、管板面4aの上に設置されたときに反応管5に対応する部分が穴となっているプレート)に配置されていてもよい。その場合、触媒交換用無人搬送装置400は、プレートの上を走行し、撮影部410は、プレート及び/又は反応管の開口部5aを撮影するように構成することができる。
【0078】
まず、本方法によって触媒交換作業を実施する際に必要となる第1情報、第2情報、第3情報、第4情報が人為的及び/又は機械的な方法によって予め決定され、マーキングMが作業区画D内の予め決定された位置に人為的及び/又は機械的な方法によって、管板面4a又は管板面4aに設置された部材に設けられる。
【0079】
次に、入力装置100は、無人搬送車300に反応管5A(
図10を参照)を指示する(工程S1)。このとき、入力装置100は、第1情報、第2情報、第3情報、第4情報、第5情報を無人搬送車300及び触媒交換用無人搬送装置400に送信する。
【0080】
次に、管板面4a又は管板面4aに設置された部材の上の初期位置に置かれた無人搬送車300は、第1情報を基に管板面4a又は管板面4aに設置された部材の上を移動する。なお、無人搬送車300は、管板面4a又は管板面4aに設置された部材の上を移動するときに第1情報を参照することは必須であるが、第1情報に加えて、第2情報、第3情報、第4情報、第5情報を参照するように構成されていてもよい。
【0081】
そして、無人搬送車300は、誘導手段によって、作業装置200を入力装置100が指示した所定の位置(言い換えれば、入力装置100が指示した反応管5Aが含まれる作業区画Dに応じた指定位置)に誘導する(工程S2)。このとき、作業装置200及び触媒交換用無人搬送装置400の停止位置の精度は、無人搬送車300の停止位置の精度に依存し、その位置ずれは無人搬送車300の停止位置の精度誤差の範囲内に収まる(工程S3)。
【0082】
次に、触媒交換用無人搬送装置400は、停止している状態で、触媒交換用無人搬送装置400の停止位置の付近の管板面4a若しくは管板面4aに設置された部材及び/又は反応管の開口部5aを撮影する(工程S4)。撮影部410が撮影した画像Pは、制御部430へ送信される。
【0083】
次に、制御部430は、画像Pから少なくとも1つのマーキングMの位置に関する情報(第6情報)及び/又はマーキングの種類に関する情報(第11情報)を検知する(工程S5)。制御部430は、画像P内で複数のマーキングMが検知された場合、触媒交換用無人搬送装置400が無人搬送車300により誘導されて停止した位置と指示部110bより指定された反応管5Aのある作業区画Dの停止位置との間の位置ずれ量がない場合に想定される、画像P内における作業対象となる作業区画DのマーキングMの位置(設定されたマーキングMの位置)と実際に撮影した画像P内におけるマーキングMの位置(撮影されたマーキングMの位置)とを比較し、設定されたマーキングMに最も近いマーキングM(撮影されたマーキングM)を「作業対象となる作業区画DのマーキングMである」と認識する。ただし、制御部430は、(1)触媒交換用無人搬送装置400が無人搬送車300により誘導されて停止した位置と指示部110bより指定された反応管5Aのある作業区画Dの停止位置との間の位置ずれ量が大きく、無人搬送車300により誘導された停止位置が指示部110bより指定された反応管5Aのある作業区画Dと隣接する作業区画DのマーキングMの位置に最も近い場合、及び/又は(2)画像P内から複数の作業区画Dが認識される場合、作業区画DのマーキングMの種類を隣接する作業区画Dと異なる仕様に設定することによって、作業対象となる作業区画Dを正確に識別して作業対象となる作業区画Dを正確に検知することができる。なお、制御部430は、検知したマーキングMの種類(第11情報)と取得部110aが予め取得したマーキングMの種類に関する情報とを比較することによって、入力装置100が指示した作業区画Dと、作業装置200及び/又は触媒交換用無人搬送装置400が停止している作業区画Dとの整合性を確認してもよい。
【0084】
次に、制御部430は、画像Pから得た第6情報と、予め取得した第2情報及び第3情報とを比較することによって第7情報を認識し、反応管5Aが存在する作業区画Dのレイアウトを認識する(工程S6)。
【0085】
次に、制御部430は、第6情報及び第7情報と、第4情報とを比較することによって、画像Pから第8情報である少なくとも1つの基準管5Kを認識する(工程S7)。例えば、
図10の場合、制御部430は、第6情報及び第7情報と、「マーキングMに最も隣接する反応管5が基準管5Kである」という情報(第4情報)を基に基準管5Kを認識する。基準管5Kとは、触媒交換用無人搬送装置400が作業装置200の位置及び/又は向きを調整するとき、及び反応管5Aを認識するときに基準とする反応管を意味する。
【0086】
次に、制御部430は、予め取得した第2情報、第3情報、第4情報と、画像Pから得た第6情報、第7情報、第8情報を基に、無人搬送車300及び/又は作業装置200の向きを含めた自己位置を認識する(工程S8)。
【0087】
次に、制御部430は、予め取得した第5情報と画像Pから得た第8情報を比較することによって、画像Pから反応管5Aを認識する(工程S9)。
【0088】
次に、制御部430は、第9情報及び第10情報に基づいて、自己位置(例えば、作業装置200の作業部220の位置)と、入力装置100が指示した反応管5Aの位置との間の位置ずれ量(X1、Y1、θ1)を計算(判断)する(工程S10)。
【0089】
次に、制御部430は、計算された位置ずれ量(X1、Y1、θ1)に基づいてX-Y-θテーブル420を稼働させる(工程S11)。なお、制御部430は、X-Y-θテーブル420を稼働させた後に、停止している状態で管板面4a又は管板面4aに設置された部材を再度撮影し、工程S5以降を繰り返し実施してもよい。
【0090】
次に、制御部430は、触媒交換用無人搬送装置400に対する制御を終了する。このとき、制御部430は、触媒交換用無人搬送装置400に対する制御を終了した旨を入力装置100に送信してもよく、入力装置100は、触媒交換作業を開始する旨を作業装置200に送信してもよい。そして、制御部430は、作業装置200の稼働を指示し、触媒交換作業を実施する(工程S12)。
【0091】
最後に、作業装置200は、触媒交換作業が終了した旨を入力装置100に送信する(工程S13)。なお、作業装置200から直接入力装置100へ通信してもよいし、または、無人搬送車300や触媒交換用無人搬送装置400を介して入力装置100へ通信してもよい。入力装置100は、触媒交換作業を実施した反応管5の場所に関する情報がフィードバックされることによって、反応管5の作業済み及び/又は未作業を判断できるデータベースを作成することができる。入力装置100、作業装置200、無人搬送車300、及び触媒交換用無人搬送装置400は、工程S1~13を繰り返し実行することによって、触媒交換作業工程の各種を実施することができる。また、制御部430は、工程S13完了後に同一作業区画Dにある未作業の反応管5を「次に作業対象となる反応管」とすることも可能であり、その場合、制御部430は、直前に作業を実施した反応管5Aと次に作業を実施する反応管の位置関係に関する情報を入力装置100から取得することで、工程S2~S8を省略し、効率的に触媒交換作業を実施することができる。このとき、制御部430が入力装置100から新たに取得する第5情報は、同一作業区画Dに存在する複数の反応管5Aに関する情報であってもよい。この場合、触媒交換用無人搬送装置400は、同一停止位置から複数の反応管5Aに対して作業を実施することができ(無人搬送車300が動くことなく複数の作業を実施することができ)、制御部430がX-Y-θテーブル420をスライドさせることで順次作業を実施することができる為、作業効率が向上する。
【0092】
なお、上述した触媒交換方法は、触媒交換システム1を構成する装置を用いた触媒交換方法の一例であり、種々変更することができる。例えば、工程S1において、入力装置100は、始めに作業対象となる作業区画Dだけを指示し、入力装置100が指示した所定の位置に到着してから、作業区画D内の反応管5の位置及び/又は配列、作業区画D内のマーキングMの位置、マーキングMの位置に基づいて基準管5Kの位置を決定するための情報を指示してもよい。また、工程S6は、工程S7の後に実施されてもよい。また、工程S9は、工程S6より後に実施されればよく、工程S7の後に実施されてもよい。また、第1情報は、入力装置100が予め取得して無人搬送車300や触媒交換用無人搬送装置400に送信する情報であると説明したが、第1情報は、無人搬送車300又は触媒交換用無人搬送装置400が、管板面4a又は管板面4aに設置された部材の上を走行することによって取得される情報であってもよい。また、入力装置100の制御部が備える各種機能は、無人搬送車300又は触媒交換用無人搬送装置400の制御部が備えていてもよい。また、無人搬送車300や触媒交換用無人搬送装置400が反応管5Aを決定することによって、上述した工程S1が省かれてもよい。また、無人搬送車300や触媒交換用無人搬送装置400の各部は、教師データ(入力装置100等から送信される事前データ)がある場合であっても触媒交換方法を(当然)実施することができるが、教師データが一部ない場合であっても触媒交換方法を実施することができるように構成される。また、作業区画D及び/若しくはマーキングMの位置が同一である、並びに/又は、これらの位置に繰り返しの周期が存在する場合、教師データの数を減少させることによって、入力装置100に教師データを入力する工程を簡略化することができる。触媒交換システム1を構成する装置の各種機能や、該装置を用いた触媒交換方法の内容は、本発明の効果を奏する範囲内で種々変更することができる。
【0093】
以上説明したように、触媒交換用無人搬送装置400は、多管式反応器2の触媒交換作業における作業装置200を運搬するために自律走行する無人搬送車300に積載及び/又は牽引される装置であって、多管式反応器2の管板面4a若しくは管板面4aに設置された部材(プレート)、及び/又は反応管の開口部5aを撮影可能な撮影部410と、作業装置200の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ作業装置200を積載するX-Y-θテーブル420と、作業装置200の位置及び/又は向きを制御する制御部430と、を備える。撮影部410は、所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、管板面4a若しくは部材、及び/又は反応管の開口部5aを撮影し、制御部430は、撮影した画像から得られた情報と制御部430が予め取得した情報を比較することによって、少なくとも1つの基準となる反応管を認識し、制御部430は、基準管5Kの位置に基づいて、無人搬送車300及び/又は作業装置200の自己位置を認識し、制御部430は、自己位置(作業装置200の作業部220の位置)と反応管5Aの位置との間の位置ずれ量(X1、Y1、θ1)を計算し、制御部430は、位置ずれ量(X1、Y1、θ1)に基づいてX-Y-θテーブル420を稼働させることを特徴とする。
【0094】
また、本実施形態に係る触媒交換システムは、多管式反応器2の管板面4a又は管板面4aに設置された部材に設けられ、多管式反応器2内における作業区画Dの位置の情報、作業区画D内の反応管の位置及び/又は配列の情報、作業区画D内に設けられるマーキングの位置の情報、マーキングMの位置に基づいて基準管5Kの位置を決定するための情報を取得する取得部110aと、決定された基準管5Kと反応管5Aの位置関係の情報に基づいて反応管5Aを指示する指示部110bと、を備える入力装置100と、多管式反応器2の触媒交換作業を実施可能な作業装置200と、作業装置200を指示部110bが指示した反応管5Aが存在する作業区画Dの付近に誘導する誘導手段を備え、作業装置200を運搬するために自律走行する無人搬送車300と、管板面4a若しくは該部材、及び/又は反応管の開口部5aを撮影可能な撮影部410と、作業装置200の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ作業装置200を積載するX-Y-θテーブル420と、作業装置200の位置及び/又は向きを制御する制御部430と、を備える触媒交換用無人搬送装置400と、を備える。触媒交換用無人搬送装置400は、無人搬送車300に積載及び/又は牽引される。撮影部410は、触媒交換用無人搬送装置400が所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、管板面4a若しくは該部材及び/又は反応管の開口部5aを撮影し、制御部430は、撮影された画像Pから得られた反応管5の位置及び/又は配列の情報、並びにマーキングMの位置の情報と、取得部110aが取得した情報と、を比較することによって、少なくとも1つの基準管5Kを認識し、制御部430は、基準管5Kの位置に基づいて、無人搬送車300及び/又は作業装置200の自己位置を認識し、制御部430は、基準管5Kの位置と指示部110bが指示した情報により、反応管5Aの位置を認識し、自己位置(作業装置200の作業部220の位置)と反応管5Aの位置との間の位置ずれ量(X1、Y1、θ1)を計算し、制御部430は、位置ずれ量(X1、Y1、θ1)に基づいてX-Y-θテーブル423を稼働させることを特徴とする。
【0095】
また、本実施形態に係る触媒交換方法は、多管式反応器2の触媒交換作業を実施可能な作業装置200と、作業装置200を反応管5Aが存在する作業区画Dの付近に誘導する誘導手段を備え、作業装置200を運搬するために自律走行する無人搬送車300と、多管式反応器2の管板面4a若しくは管板面4aに設置された部材及び/又は反応管の開口部5aを撮影可能な撮影部410と、作業装置200の位置及び/又は向きを変更可能であり、かつ作業装置200を積載するX-Y-θテーブル420と、作業装置200の位置及び/又は向きを制御する制御部430と、を備える触媒交換用無人搬送装置400と、を用いた方法であって、触媒交換用無人搬送装置400が無人搬送車300に積載及び/又は牽引されることによって達成される方法である。本実施形態に係る触媒交換方法は、管板面4a又は反応管5の位置に穴が設けられ、管板面4aに設置された該部材を、任意の方法によって作業区画に区分けし、作業区画Dの各々にマーキングを施す工程と、無人搬送車300が、反応管5Aのある作業区画Dの多管式反応器2内における位置に関する第1情報、反応管5Aが存在する作業区画D内の反応管の位置及び/又は配列に関する第2情報、反応管5Aが存在する作業区画D内に設けられるマーキングMの位置に関する第3情報、マーキングMに基づいて基準となる反応管の位置を決定する第4情報、基準管5Kと反応管5Aの位置関係の第5情報を取得し、第1情報に基づいて誘導手段により作業装置を所定の位置に誘導する工程(工程S2、S3)と、触媒交換用無人搬送装置400が、所定の位置に誘導された後に、停止している状態で、管板面4a若しくは該部材及び/又は反応管の開口部5aを撮影する工程(工程S4)と、制御部430が撮影された画像Pから少なくとも1つのマーキングMを検知する工程(工程S5)と、制御部430が画像Pから検知されたマーキングMからマーキングMの位置に関する第6情報を認識し、第6情報と第2情報及び第3情報とを比較することによって、画像Pから作業区画D内の反応管5の位置及び/又は配列に関する第7情報を認識する工程(工程S6)と、制御部430が第4情報を基に画像Pから少なくとも1つの基準管5Kの位置に関する第8情報を認識する工程(工程S7)と、制御部430が、第8情報と第7情報を基に、無人搬送車300及び/又は作業装置200の自己位置に関する第9情報を認識する工程(工程S8)と、制御部430が、第8情報と第5情報を比較することによって、画像Pから反応管5Aの位置に関する第10情報を認識する工程(工程S9)と、制御部430が、第9情報と第10情報に基づいて、自己位置(作業装置200の作業部220の位置)と反応管5Aの位置との間の位置ずれ量(X1、Y1、θ1)を計算する工程(工程S10)と、制御部430が位置ずれ量(X1、Y1、θ1)に基づいてX-Y-θテーブル420を稼働させる工程(工程S11)と、を含む。
【0096】
上記のように構成する触媒交換用無人搬送装置400、触媒交換システム1、及び触媒交換方法(作業区画に区分けする工程と、マーキングMを設ける工程と、工程S1~S13)によれば、撮影部410は、無人搬送車300が所定の位置に誘導された後に、停止している状態で管板面4a若しくは管板面4aに設置された部材及び/又は反応管の開口部5aを撮影することができ、制御部430は、撮影された画像Pから得られた情報と予め触媒交換用無人搬送装置400が取得した情報を比較することによって無人搬送車300及び/又は作業装置200の自己位置を認識し、自己位置(作業装置200の作業部220の位置)と入力装置100が指示した反応管5Aの位置の間の位置ずれ量を計算して、該位置ずれ量に基づいてX-Y-θテーブル420を稼働させることができる。そのため、触媒交換用無人搬送装置400は、作業装置200を予め設定された作業位置に適正に移動させることができ、作業装置の停止位置(言い換えれば、作業装置200の作業開始位置)の精度を向上させることができる。また、制御部430は、X-Y-θテーブル420を稼働させることで、一意の停止位置における作業範囲を拡大することができ、一意の停止位置で多くの作業ができることによって作業効率が向上する効果がある。
【0097】
また、触媒交換方法において、管板面4a又は管板面4aに設置された部材を作業区画Dに区分けする際に、管板面4a又は該部材は、形状及び大きさが略同一となる作業区画Dが少なくとも2つ以上存在するように区分けされているのが好ましい。
【0098】
また、触媒交換方法において、管板面4a又は管板面4aに設置された部材を作業区画Dに区分けする際に、作業区画Dの各々は、管板面4a又は該部材の全体を平面視したときに周期的に配置されているのが好ましい。作業区画Dの同一性や繰り返し性が存在することで、作業区画Dを区画分けする作業や作業区画Dに関する教師データ(第2情報)の入力が簡略化され、作業効率を向上させることができる。
【0099】
また、触媒交換方法において、管板面4a又は管板面4aに設置された部材を作業区画Dに区分けする際に、管板面4a又は該部材は、上述した式(1)を満たす作業区画Dの各々の総面積が、管板面4a又は該部材の総面積の20%以上となるように区分けされているのが好ましい。式(1)を満たす場合、無人搬送車300の停止位置Gの再調整を行う回数を減らすことができ、作業時間を短縮させることが可能となる。
【0100】
また、触媒交換方法において、マーキングMは、基準管5Kの検知に利用できるだけでなく、マーキングMを作業区画Dに設けることで、介在する作業者にとって作業区画Dの範囲(レイアウト)の視認性を高める効果も得られる。マーキングMは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び形状要素の色、作業区画D内の位置、作業区画D内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、作業区画Dに施すマーキングMの種類は、作業区画Dの形状及び大きさ毎に予め決定される(固有である)ことを特徴とする。また、作業区画Dのレイアウト毎にマーキングMの位置を予め決定しておくことで、第3情報の入力が簡略化され、作業効率が向上する。
【0101】
また、触媒交換方法において、マーキングMは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び形状要素の色、作業区画D内の位置、作業区画D画内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、作業区画Dの各々に施されるマーキングMの各々は、管板面4a面又は管板面4aに設置された部材の全体を平面視したときに周期的に配置されてもよい。マーキングMを周期的に配置することで、マーキングMを施す作業の煩雑性やマーキングMを施す際の人為的なミスが減少し、作業時間が短縮する効果が得られる。
【0102】
また、触媒交換方法において、マーキングMは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び形状要素の色、作業区画D内の位置、作業区画D内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、マーキングMは、該形状要素が非対称性を含む、マーキングの配置数が2以上でであるという特徴の少なくとも一つ以上を備え、制御部430は、画像PからマーキングMを検知する際に、マーキングMを構成する要素をマーキングMの種類に関する第11情報としてさらに認識し、制御部430は、第11情報に基づいて自己位置の向きを認識することができる。なお、マーキングMに非対称性を含ませることにより、制御部430は、正確に触媒交換用無人搬送装置400の向きを認知することができ、正確に作業を実施させることができる。
【0103】
また、触媒交換方法において、マーキングMは、文字、数字、記号、図形、線からなる形状要素群、及び形状要素の色、作業区画D内の位置、作業区画D内の配置数からなる構成要素群から選択された要素によって構成され、マーキングMは、独自性を含むように構成され、制御部430は、画像PからマーキングMを検知する際に、マーキングMを構成する要素をマーキングMの種類に関する第11情報としてさらに認識し、制御部430は、第11情報に基づいて作業区画Dを識別可能に構成されてもよい。なお、マーキングMに独自性を含ませることにより、制御部430は、多管式反応器2内における全ての作業区画Dを識別でき、指示された作業区画Dと実際に停止して作業を実施すると想定している作業区画Dの整合性を確認することができ、作業を実施するべき作業区画Dを正確に認識することができる。
【0104】
なお、本実施形態は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 触媒交換システム、
2 多管式反応器、
4a 管板面、
5 反応管、
5a 反応管の開口部、
100 入力装置、
200 作業装置、
300 無人搬送車、
400 触媒交換用無人搬送装置、
410 撮影部、
420 X-Y-θテーブル、
430 触媒交換用無人搬送装置側制御部(制御部)。